五味金融庁長官記者会見の概要

(平成16年11月8日(月)17時03分~17時35分)

【長官より発言】

本日付で監督局の総務課に訓令室を二つ設置しております。一つは「コングロマリット室」、これは金融コングロマリット、それから業態横断的な取引などに関する監督事務、これの企画立案、それからこれに必要な調整を行うことを目的にしております。もう一つは「国際監督室」、これは監督局の所掌事務に関して諸外国の監督当局などとの事務の連絡調整などを行うこと、これを目的としております。

メンバーは「コングロマリット室」の方は、担当参事官に監督局の遠藤参事官、室長には小野保険課長、調整官として北村監督調査室長を当てております。これらの者に加え、課長補佐などを含めまして14名を配置します。それから「国際監督室」これは室長に遠藤参事官、調整官として白川国際課企画官を当てます。この二人を含めまして、課長補佐などを含め11名を配置しています。事務年度の途中ということもありますので、全員兼務の発令ということになります。

この二つの室を設置いたしました背景ですが、近年金融界において、グループ内に銀行・証券など複数の業態を要するコングロマリット化の動きが広範囲にみられ、また投資信託・保険商品などの銀行窓販に見られるような製造と販売の分離の動きや、銀行への証券仲介業の解禁など、従来の業態の枠を越えた販売チャネルの多様化、これが進行しているという状況がございます。また国際的な関係につきましては、日々の金融監督行政の遂行にあたり、海外監督当局との緊密な連携が不可欠な局面が近年急増してきております。

以上のような状況に対してこれまでも職員間の連携を図るといったことで、既存の体制の中で適宜の対処をしてきておりましたけれども、組織的に必ずしも的確な対応ができる体制とはなっていなかったということは否めません。そこで今般緊急的な措置として、全員兼務という形ではございますけれども、訓令にて両室を設置することにしたという次第でございます。なおこの件に関しましては、実際に設置をいたします監督局の局長から、後ほど説明の機会を設けさせていただきます。

【質疑応答】

問)

来年度からは、専任の担当者を置く形になるのでしょうか。

答)

とりあえず現在の体制として整備をしたということでございますが、今後につきましては現時点で具体的な対応が決まっているわけではございません。今後、この活動の状況などを見ながら、また他の行政需要とのバランスなども考えながら更に検討を進めたいと思っています。

問)

国際監督室についてですが、別途国際課というのがありますが、それとの担当分野について、住み分けは変わってくるのでしょうか。

答)

国際課の場合には、個々の監督行政の対応といったことではなくて、国際的な監督機関における活動でございますとか、或いは海外監督当局との一般的な連携をどう取るかといったようなことを中心に仕事をしております。今回のこの「国際監督室」と申しますのは、海外監督当局と具体的な日々の監督行政について、例えば、個別の案件について、緊密な連携を取る必要があるといったような場面において、その連携の円滑を図ろうというものでございます。

問)

大手行の9月中間決算の特別検査が終了したと思うのですけれども、今回の検査状況を踏まえて、来年の3月期にも特別検査を行う必要が現時点であると思われますでしょうか。

答)

今9月期は、「金融再生プログラム」の目標を確実に来年の3月期で達成するという観点から、従来の特別検査フォローアップというやり方ではなくて、特別検査そのものを実施するということにしたわけでございます。今後につきましては、今回行いました9月期の特別検査の結果、同時に行っております再建計画の検証の結果、更にこれらに続きまして、こうした検査結果に対して、銀行法24条に基づく報告を徴求いたしますので、この報告に対するヒアリング、こうしたものを踏まえましてまずは大口与信管理態勢検査を実施する必要があるかどうか、この必要性の検討をするということになります。前回の特別検査と同じ手順でございます。これが当面の課題でございます。そこで、17年3月期において特別検査を行う必要性があるかどうかという点につきましては、その時々の金融経済に関わる客観的な情勢、或いは様々な政策対応がその都度出て参りますので政策対応の優先度合、こうしたものを勘案して総合的に判断する必要があると考えております。現時点で決めておりません。いずれにしましても、この9月期というのは、不良債権問題正常化を17年3月期で達成しようという目標に対して通過点という位置付けでございますので、今後とも17年3月期における目標達成に向けて、手綱を緩めずに努力をしていきたいと考えております。

問)

フロッピーディスクの紛失問題の調査状況と処分について、その後、状況に変化は見られるかどうか、その点についてお聞かせください。

答)

重ね重ね申し訳ない事態であると思っております。この件につきましては、監察官によるヒアリング、それからコンプライアンス対応室による内部管理態勢面における原因究明・再発防止策といったものの策定についての調査、これが引き続き継続中でございます。なおフロッピーディスクは見つかっておりません。また、この疑わしい取引の届出の電子化を進めるための情報システムの改良、これに関しましても専門家を含め議論を進めております。こういった状況であります。処分という話がございましたが、処分に関しましては事実関係の調査結果を踏まえて、適正に対応をして参ります。できるだけ早く再発防止策と合わせ関係者の処分についてもできるだけ早くに結論を出して公表をしたいと考えております。

問)

証券仲介業が来月、銀行などに対して解禁されます。金融庁の方で調査していればなのですけれども、取扱を予定している金融機関の数と、長官からみられて解禁によって期待される効果について御所見をお願いします。

答)

来月から、お話のように銀行等による証券仲介業が解禁されます。現時点では証券仲介業務を扱う予定があるという金融機関の数については、具体的には必ずしも明らかではありません。ただ様々な金融機関において、証券仲介業務の取扱に向けた具体的な取組みが既に行われているというふうに聞いております。

それからこの施策により期待される効果に関連してでございますが、これは昨年、金融審議会第一部会の報告において、この解禁のメリットというのが具体的に述べられております。一つは、顧客のワンストップショッピングのニーズに応え、利便性が高まる。それから、投資経験のない銀行顧客層の市場参加を促して新たな裾野の拡大が期待できる。更に、特に証券会社の店舗が少ない地域、こうした地域におけるアクセスの改善になる、こういったようなメリットが挙げられております。12月1日の改正法の施行によりまして、こうしたメリットが十分に生かされて、多様な投資家の幅広い市場参加の促進ということにつながっていくということを期待しております。

問)

国際監督室ですが、海外の当局ですと監督と検査がほぼ一体になっていることが多いと思うのですが、そういう意味では今回監督局総務課に置くということなのですが、検査局との兼任というのはあるのでしょうか。

答)

検査局においては、既に現在ですと黒澤企画官の下に国際調整係という係がございまして、この係が海外当局との検査関連の特に個別の案件についての様々な連携を行なっております。こうした機能が監督局には固有のものとしてこれを担当する組織がなかったということから、監督局にこの機能を持たせるということです。したがって、私の記憶では検査局からの併任はないということです。

問)

日本テレビが有価証券報告書の訂正を出したわけですが、調査の必要性はお感じになっていらっしゃいますでしょうか。

答)

この件については特定個別案件というお話ですから、そのこと自体としてのコメントは差し控える必要があります。一般論でございますけれども、有価証券報告書の訂正報告書が提出されたという場合には、管轄いたします財務局で訂正の内容或いは訂正の経緯といったことについて、必要に応じて確認を行うということになります。金融庁の対応としては、こうした対応が一般的に予定されるところでございます。なお併せて東京証券取引所においては、自主規制規則に基づいて今後適切な対処が行なわれるものと考えております。

いずれにしましても、適切なディスクロジャーというのは、市場に対する信認確保の上で大変重要でございますから、この点について問題がないかどうかよく確認をして適切に対処してまいりたいと思います。

問)

コングロマリット室なのですが、これは既に監督局の中ではこういうものを立ち上げないと仕事が上手くいかなくなってきているのか、それとも今後証券仲介業とかが解禁になったりとか、色々な規制緩和の中でこういうものを作っていかなければいけないということで、今のうちから作っていくということなのか、考え方としてどういう背景があるのでしょか。

答)

両方ですね、上手くいってなかったとまでは必ずしも断ずることはできませんが、こうしたコングロマリット対応の監督というものについてのニーズ、行政上の必要性というものは私が監督局長をやっておりました当時から非常に強く感じていたものでございます。先程少し申し上げましたが、したがってその時にはこうした組織としてではなくてとりあえず関係する部局、例えば銀行一課と証券課といったようなところ、こういったようなところがきちんと連携を取って対応できるようにと工夫をしていたということがございます。その程度のことで今後も続けていけばすむ話なのかということについて考えれば、これはそうはいかないという認識がございます。やはり従来の業態の枠を越えた組織形態とか、取引というのは非常に拡大をしてきておりますから、これに対してはシステマティックな対応が行政側としても必要であるというふうに考えたということもございます。

金融機関を利用する方を適切に保護するという視点から考えますと、利用者の方というのは商品を利用するのであって、その道具として銀行であったり証券会社であったりそうした金融機関を利用しているということでありまして、問題はその商品の側にあるわけで、現在のように業態別に監督当局の組織が形成されているという状態だけに頼っていたのでは、この商品を中心とした利用者の行動を適切に保護するということには限界があるだろうという考え方も非常に強く持った、その結果でもございます。

問)

2点質問があります。まず、国際監督室は、最近例えばシティバンクの問題とか、やはり不備が感じられてこういう室を設置されたのですか。シティバンクもまだ他の国の当局も色々調べているようですけれども。もう一点は、コングロマリット室ですが、意義は分かるのですが、ネーミングが何かちょっと分かり辛いと思うのですけれども、私の母国語が英語でもちょっと分かり難いと感じたのですけれども、もし日本語に訳すのでしたらどう訳すのですか。

答)

まず第1点ですが、具体的に外国の監督当局と密接に連絡を取る必要のある事案というのは幾つもございますが、中に例に上がりました行政処分に具体的に結び付いてしまっている、例えばシティグループであるとか、或いはUFJグループであるとか、UFJグループは国際基準行でございますので、こうしたようなケースにおいては殊更にこうした国際室のような機能というものが重要であると、個々の担当者の個人技に頼って海外の当局と連絡を取り合うというのは、それで済む場合も多いのですけれどもいつもそういうやり方でやっていたのでは、外国の監督当局側もコンタクトポイントが案件によって違うというのでは分かり難いでしょうし、こちら側も機能的な対応をするという点からすると元々そういう担当者というのは本来の案件の処理に忙殺されているわけでありますから、外国当局との連絡にも十全の時間を割くと、しかもタイミングよくその時間を割くということは場合によれば難しいということもございます。お尋ねに応えるとすれば、こうした案件の経験もあってこの必要性はさらに強く認識されたということでございます。

第2点ですが、英語が母国語の方に申し上げてもアレですが、上手い日本語があったら教えてほしいのですが、検討したのですがこれが中々上手い日本語訳がないのです。或いはどうせ英語で言うのならこういう言い方でしょうというのがあれば教えていただけるとありがたいと思いますけれども、ただそれが日本語で馴染んでないと具合が悪いですね、「large and complex group」というような言い方を時に聞くことがありますが、これはそれをそのままカタカナで日本語にしたのではそれこそ何のことだか分からないということもございまして、これまで例えば検査の基本方針、毎年度発表させていただいておりますがその中で繰り返し使用をしてまいりました「コングロマリット検査」といったような表現、こういったものも参考にしてこういうネーミングをしたということでございます。

趣旨はそういうことでございますので、もし記事になさるのであれば「要するにこういうグループだそうだ」というのを何か上手く書いていただけるとありがたいと思います。

問)

こういうコングロマリット室というのを作るのは、目的と言うか必然性と言うのは何となくわかるのですけれども、先程長官は利用者のことを仰いましたけれども、それでは利用者にとってこういうコングロマリット室ができることによって、今後どういう面でより良くなっていくのか、ちょっと具体的なイメージが良く分からないもので教えていただきたいのですけれども。

答)

利用者の方が直接何か便利になるとか、そういう話ではございません。これは監督をする側が監督の手法として使っているコングロマリットチェックですね。業態を跨いでグループが形成された場合、そのグループの内部で様々な取引が行われる、その取引が適正に行われているかどうかをチェックするという基本的な機能、この行政上の機能に着目して作るものであります。分かりやすい例を挙げますとかつてクレディスイスフィナンシャルグループで行われました損失先送り商品のようなものは、コングリロマリット化したグループの中でこれを製造し、更に様々なデリバティブをグループの中でかみ合わせながら次々と取引を巡らせる。そのことによって一つ一つの取引は違法性はないけれども、最終的にその仕組み債のリスクというものが、一旦買取をした人からオフバランスされているように見えても最後別の形でリスクが戻ってきているということでオフバランスはできない。結果としてそれは損失を先送りする、或いは利益を先取りする。それ以外に経済合理性のある目的は何もないといったような商品が、一見合理的な投資商品であるかのごとく組成され、そしてそれが非常に発見を遅らせるような形でグループの中で取引が行われているといったようなことが行われ得るわけで、そうしたものについてこれを早期に発見し適切な行政上の監督を施すといったようなところにメリットがある。それが行われるという事は勿論決算を隠そうとしている利用者にとっては困ったことかもしれませんけれども、そうした決算を基に投資しようとする利用者にとっては投資家保護になる話だろうと思います。

問)

コングロマリットと言うと外資系金融機関という印象が強いのですけれども、今回こういう室を金融庁の中に入れるという事は、日本の金融機関もコングロマリット化をしていくという金融庁の意思の表れだと考えていいのでしょうか。

答)

日本の金融機関をどういう方向に目指させようという政策意図があって導入したものではございません。むしろ金融機関が収益の向上を目指して競争を繰り広げていく中で、他業態に渡るような経営を行っていくという事は当然選択肢として考えられますし、最近の状況ではそういう選択肢を選ぶ大規模な金融機関が日本の場合にも多くなっているという事実があります。更に制度的にもそうした選択がしやすい様な制度改正というものが、先程申し上げましたように窓販でございますとかいったような形で進められているわけでございます。従ってこういう状況を踏まえて、それに対応するための態勢を整えておくという事で、起こっている、或いは起こるであろう事象に対する備えとしてのものであるという事でございます。

問)

話題が変わって恐縮なのですけれども、武富士事件の判決が来週に迫っておりまして、刑の確定状況次第では貸金業登録の問題が浮上してくると思われるのですが、その際被告人の実質的な持株比率をどう判断するかというところがポイントになるかと思うのですが。一般論でも構いませんので金融庁としての現時点でのお考えをお聞かせください。

答)

一般論でお答えをします。貸金業規制法上は「取締役等と同等以上の支配力を有する者と認められる者として内閣府令で定める者、これも役員に含まれる」ということにされております。この当該役員が、これが役員に含まれるという事ですが、そうした役員が「禁固以上の刑に処せられた刑が確定した」こういう場合には「貸金業の登録を取り消さなければならない」こういう規定になっているわけでございます。この同等以上の支配力を有する者として内閣府令に定める者の中に「貸金業者の25%を越える議決権を自己または他人の名義をもって所有している個人」というのが定められているわけでございます。これに該当するという事になりますと法令上はその登録の取り消し事由というものに当たってくるということになるわけでございます。自己または他人の名義をもって25%超の議決権を有するか否かということについては、個別具体の事情に照らして実質的にその個人が保有しているか否かということによってその判断をしていく必要があるということでございまして、こういうことに該当する可能性なり惧れがあるということであれば、その点を一般論でございますが確認をするという責務が当局にはございます。該当していれば登録の取消事由になるということでございます。

問)

今日、三菱自動車が決算を発表しまして、事業会社であり個別の案件なので中々お答えにくいと思うのですが、中間期で1,461億円の巨額の赤字で、通期でも2,400億円の赤字になる見込みなのですけれども、メインバンクを監督する立場として何か御見解があればお伺いしたいのですが、特にこの会社の場合は再建にあたってメインバンクの東京三菱銀行をはじめとする三菱グループの支援がなければ経営改善、事業再生に困難を来たすことになるということを言っています。不良債権、大口融資先の不良債権処理が山場を越えると言われている中で、まだ尚かつこういった問題を抱えている企業があるのですけれども、これについて金融機関を監督する立場から何か御見解があったらお伺いしたいのですが。

答)

仰るようにお答えにくいどころでなくて、お答えは控えなくてはいけない問いではありますが、一般論で申し上げておきますと大口の融資先が業績不振に陥って何らかの再建策が必要であるというような事態というのは、これは今に限らず、恐らく将来においても金融機関にとって起こり得る、或いは克服しなければならないリスクとして存在し得るものだろうと思います。そのこと事態が問題だということでは必ずしもないと思います。銀行の方針がおかしかったから悪くなったかと言うと必ずしもそうでないケースもあると思いますから。大事なのはそうした業況の悪化というものをできるだけ早く金融機関としては察知する。つまり、日頃の与信管理というものを注意深く行うということ、これが非常に大事だということでございます。その結果、決定的な事態に陥る前に金融機関側からの適切な情報発信によってそういう事態が避けられるケースもあるでしょうし、或いは、避けられないという場合には適切なタイミングでどういうような処置をとればいいのか、再建計画を立てるということで金融的な支援も含めて建て直しを図るのか、或いは別の手法を使うのか、こうしたような点の判断も適時適切に行うということができると、こういう力を金融機関はつけておく必要があります。これから起こり得る様々な話についても金融機関がそのような特に大数の法則が働きにくいような大口の先について万全の与信管理態勢を採っていること、そして問題が起こった場合に適時に抜本的な対応が採れるように、そうした経営感覚というものを常に磨いておくこと、これが求められるということであろうと思います。個別の案件のお答えにはなりませんけれども、そうしたことでしょう。これまで大口が問題ということを申し上げていたのは不良債権の問題というのが正常化に向かって着実に動いてはいますけれども、大口の与信先というものの中に非常に問題を抱えていると思われるものが数多くあった、そういった時代が段々正常化に向かってきているという中で、この大口というのが段々解決の方向に向かいつつあるけれども、先程申しました様に大数の法則というのが働きにくい大きなリスク要因になる債務者でありますから、この点についての管理態勢というものを常に確立しておかないと、真の意味で不良債権問題を克服したということは中々言えないというこういう意味で申し上げているわけでございます。冒頭でご質問のありました特別検査の必要性等ということも絡んでそうしたことを申し上げていたという事でございます。

(以上)

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