平成22年6月8日
金融庁

第2回コーポレート・ガバナンス連絡会議 議事要旨

1. 日時:

平成22年5月24日(月曜日)17時00分~19時15分

2. 場所:

中央合同庁舎第7号館12階 金融庁共用第二特別会議室

会社法制の見直しについての参加者の主な発言は以下のとおり。

機関決定については各社が自主的に考えるべきものであり、一方が他方よりも優れているとの事実関係が明かでない限り、義務付けをするのではなく、各社の自主的選択と開示で十分だと考える。

「インセンティブのねじれ」問題については、現状の仕組み・実態に何か不都合が起きているのかを検証して欲しい。

簡易型の組織再編における親会社や存続会社の株主に株式買取請求権を認める必要はないのではないか。

ライツ・イシューについて、割当通知から2週間は権利行使できない制度では時間がかかりすぎるため、上場会社については改善すべき。

上場会社の採用するガバナンスのメニューを増やす観点から監査役を置かずに監査委員会のみを設置する会社を検討してもよいのではないか。

多重代表訴訟を認めるべきではないか。

少数株主の救済策が日本の法制度上不足しているので、差止め制度の導入を積極的に考えていくべきではないか。

公開買付規制の対象に市場内取引を入れても良いのではないか。

強圧性の問題や全部取得条項付種類株式を用いたスクイーズアウトに係る問題に対応するため、公開買付けによって90%の株式を取得した場合には、株主による買取請求権や買付者による売渡請求権を認めるべきはないか。

監査役設置会社から委員会設置会社になるためのハードルが非常に高い。機関設計の自由度を高め、両者の垣根を低くして欲しい。

独立取締役の法制化を行うべき。新興企業や支配株主を有する上場会社については、2名以上の独立取締役の設置も要検討。併せて独立監査役の法制化も必要。

エンフォースメントの複線化のため、公開買付規制・5%ルール違反の株式について議決権の凍結等を要検討。

エクスチェンジ・テンダー・オファーを円滑に行うための環境整備として、現物出資規制を一部緩和してもよいのではないか。

スクイーズアウトとの関係で、会社が90%以上の株式を保有しているような場合、当該会社が少数株主から株式を強制的に買い取る権利(バイアウト権)、少数株主が当該会社に株式を売りつけることができる権利(セルアウト権)を導入すべきではないか。

監査役設置会社の取締役も監督機能を発揮できるような仕組みとすべき。

独立取締役が過半数を占める委員会であれば、取締役会機能の一部の委譲を可能とする法制が考えられるのではないか。

議決権の代理行使が認められている機関投資家等実質株主に対しては、総会出席権や株主提案権など名義株主が持っている権利が担保されるべき。

ライツ・イシューについては、日程面では実務的な問題も多いことは明らかになってきているところであるが、それと併せ、ライツ・イシューのハードルを下げるため、新株予約権の無償割当における割当通知について、行使期間の最終日から二週間前の通知で足りることとすべきではないか。

ストック・オプションとして株式や新株予約権を利用する場合、会社法が必ずしも使い勝手のよい制度になっていないことから、見直しが必要。

社外取締役・独立取締役の地位の強化策を考えるべき。

付属定款を通じた会社のガバナンス機構について、法的基礎付けを会社法の中に置いた上で、株主総会からも一定のコントロールが及ぶような検討をすべき。

監査役設置会社では、代表取締役が取締役から選定されることとなっているところに執行と監督の分離を妨げる素地があるのではないか。

監査役設置会社においても、委員会設置会社における指名・報酬に係る適正なガバナンスと同様の機能を果たす仕組みを導入し、両者の平仄を図る必要。

監査の実効性確保のためにも、監査役のサポート体制について、取締役にコントロール権がある実態を見直す必要。

監査法人の監査に不当な圧力がかからないよう会社法上の手当が必要。また、監査法人の辞任の場面では、監査役・監査委員会が監査のプロセスをリードできるような制度設計と、辞任について説明責任を尽くす義務を明記すべき。

支配株主の責任についての一般原則を会社法において規定すべき。

組織再編における対価の相当性については、本来、取締役の善管注意義務の範囲内であるということをベースとして規定を考えていくべき。

少数株主の利益保護の観点から導入されている株式買取請求権について、現実には不必要な場面についてまで認められており、適用範囲の見直しが必要。

会社法上の組織再編に係る備置資料は開示書類としては不十分であり、金商法の法定開示に統一すべき。

会社法における罰則・過料は実効性を欠くため、上場会社については会社法でも課徴金制度を検討すべき。

代表取締役の指揮・監督下にある取締役は代表取締役等の選解任を十分に行うことができないため、上場会社の取締役の過半数を業務執行を担当しない取締役とし、モニタリングモデルの徹底を図るべき。

会社法上、監査役には強力な権限が付与されているが、どれだけ強力な権限を与えても、取締役・執行役の解任権がなければ、監視・監督の実は上がらない。また、会社法上、監査と監督の機能がうまく整理されていない。監査役(会)制度を廃止し、監査役、監査役会の機能を委員会設置会社における監査委員会の制度に統合すべきではないか。

支配権の移転に際して少数株主保護の規定を会社法において整備した上で、金商法の公開買付け・全部買付義務を廃止する方向で整理すべき。

一番重要なことは、取締役会、ガバナンスをどうするかということ。グローバルスタンダードに近いモニタリングモデルに変えるべきなのか否かという点に焦点を絞ってこの場できちんと議論すべき。

独立社外取締役で構成される委員会に取締役会の意思決定を公式に委ねることができることとすべき。当該委員会は、いかなる状況においても柔軟に対応できるよう、任意に設置することを可能とするが、日本株式の投資家から納得が得られるよう、独立性を会社法上明確化したうえで、独立社外取締役が過半数を占める取締役会とすることを義務付けるべき。

株式持合等の問題に対処するため、公的年金運用基金、投資信託、保険会社、銀行等に議決権行使について開示を求めるべき。役員の選任議案について、社内役員候補者よりも社外役員候補者の方が反対の議決権数が多いが、透明性に問題があることに原因があると思われるため、透明性を高める必要がある。

内部統制システムが適切に機能・運用されるため、内部統制システム構築の基本方針のみならず、その運用状況について事業報告書への記載を求め、監査役(会)の監査報告にも意見を記載するようにすべき。

第三者割当についても、買収防衛策と同様、事業報告書への記載を求め、監査役(会)の監査報告に監査意見を記載することにより、監査役が一定の役割を果たせるようにすべき。

ガバナンス向上のために創設された委員会設置会社制度の利用が進んでいない実態を踏まえ、法制度を実態に合わせて改めるべき。

ガバナンスの問題は、日本の企業をどうするかという根本にかかわる話であり、様々な論点と相互に補完性がある中で、どうすればバランスを取りながら全体をうまく動かしていくことが出来るかという点について方向性を出すことが重要。

委員会設置会社において、執行権限が取締役会から執行役に大幅に委任され、経営者の暴走が起こりやすいことから、指名委員会、報酬委員会といった機関設計により執行役を監督する制度となっている。そのため、委員会設置会社の制度設計を柔軟化するにあたっては、執行役の監督の強化についても考慮しなければならない。

世界経済の中で日本の経済が相対的に縮小しているのは、それだけ日本のマーケットがグローバルな競争原理で動いていないためである。これを打開するには、企業経営の市場のグローバルスダンダード化を行い、真の資本市場の自由化を行う必要がある。

最終的に企業価値が向上するか、あるいは日本の株式市場が活性化するかといった観点から、コーポレート・ガバナンスについて議論する必要がある。

国内の企業で対外的に出て行く必要がないのだから、国内のルールというものがあってもよく、コーポレート・ガバナンスのグローバルスタンダードに従う必要があるのかという疑問を呈される経営者もいる中で、当該実態に合わせ、どのように考えていくべきか検討する必要がある。

単なるコンプライアンスだけではなく、コーポレート・ガバナンスを充実させることにより、日本に投資を積極的に呼び込むことや、金融市場を活性化させることが大きな課題である。

日本においてはROEが上がらない中で、少なくともコーポレート・ガバナンスはしっかりして欲しいという要求が出てきているという状況にある。そのような状況下において、コーポレート・ガバナンスに関し、立法化により押し付けられることで逆に真のROEの向上の足かせになるという考えと、立法化により真のROEを向上させることが必要だという考えがあるが、企業側が自由度をもって自らのコーポレート・ガバナンス体制を決定し、積極的に投資家にアピールすることが本来あるべき姿である。

委員会設置会社があまり利用されていないが、モニタリングモデルや社外取締役の使い方がうまくカップリングして新しい方向性が見えてくるのであれば、それは一つの新しい打開策になるのではないか。

業績が良ければ、コーポレート・ガバナンスは必要ないのではないかという議論があるが、他方で、業績が良かったとしても、コーポレート・ガバナンスが欠如していれば、企業の体制が収益性を維持できないという見方もある。

日本において、業績があがらない理由について経営に問題があるということであれば、本来は経営陣の責任を追及すればよいだけの問題であるが、実際にそれが日本でなされていないということは、コーポレート・ガバナンスが欠如しているからではないか。

議決権行使を中心とした機関投資家の受託者責任についての参加者の主な発言は以下のとおり。

機関投資家の受託者責任に関する議論は、年金基金・共済制度その他の個人・年金受給者を委託者として資金を運用する立場にある機関等に広くあてはまるのではないか。

機関投資家による議決権行使結果の開示について、米国では2003年にSECに届けることが義務化され、英国でもスチュワードシップ・コード制定の検討を進める中で議論されているところ。

日本でも、機関投資家の議決権行使結果の開示(開示しない場合はその理由の開示)を義務付けることを検討してはどうか。

日本では、過去10年をとってみてもエンロンや金融危機等の際立ったイベントもないのに、日本企業の株は元本すら確保できていない。議決権行使等を通じて行動を起こせる立場にある機関投資家の不作為・受身の姿勢もその一因なのではないか。

日本の機関投資家の責任遂行を妨げる要因として、機関投資家にコスト負担のインセンティブがなくフリーライダー論があてはまる状況になってしまうことや年金基金等からの積極的なサポートがないことがあげられる。また、機関投資家が注意義務や忠実義務を適切に果たすための規範が不十分なのではないか。

機関投資家が建設的に発言できる環境という観点で見ると、実質株主となる機関投資家は株主権を行使することができるか不明確な状況にある。EU指令のような名義株主と実質株主の同一取扱いの方向性を示してほしい。

また、大量保有報告制度との関係で、重要提案行為や他の機関投資家との実質的共同保有者に当たるのではないかとの懸念から、機関投資家の行動が萎縮してしまう。

議決権行使結果の開示について、アメリカでは投資信託の場合は開示されているが投資一任の場合は開示されていない。また2004年のOECDコーポレート・ガバナンス原則の改訂にあたっては、顧客に守秘義務を負う投資顧問業者の本質に照らせば公に開示することは許されないという意見が出されて、それが反映されたようだ。日本では、投資顧問業協会の会員のうち顧客から議決権行使結果の開示を求められているのは3分の1にとどまる。

生命保険会社の場合、会社の固有財産として資産を運用しているが、実際の運用が、契約時に保証した予定利率を下回った場合には、保険契約者ではなく、生命保険会社が負担する。尚、受託者責任については、その意味することは様々であると考えるが、生命保険会社としては、支払い責任を全うするという、保険契約者からの負託には応えている。

信託の場合、業法や私法上の枠組みがまずあって、議決権行使についてのガイドラインや類型別の結果を公表している。また、金商法下で利益相反管理体制を整えており、この体制は監督・検査でチェックされるものであるし、この体制の中で議決権を行使している。

議決権行使の結果を個別に開示するかどうかは、注意義務や忠実義務を高めるという目的を達成するためにどういった方法を選択するかという方法論の議論なのではないか。

持株比率の高い銀行・保険会社が、一般株主と異なる独自のビジネス上の利益のために権利行使を行うことがガバナンスに歪みを与えていることもあるのではないか。

議決権行使のプロセスや基準は、各々の投資家のスタンスや運用スタイルによって区々だと考えるが、実態として、長期の資金運用者としての特質に応じて、議決権行使をしっかりと行っている。

議決権行使をきちんと行っているのであれば、開示しても問題ないはず。受託者責任については、日本のためになるような法制度の姿についてこの場で議論すべきだと思う。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課・企画課調査室(内線3814、3510)


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