平成23年12月13日
金融庁

酒井重工業株式会社株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、酒井重工業(株)株式に係る相場操縦の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成23年4月12日に審判手続開始の決定(平成23年度(判)第1号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後、審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「法」という。)185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、本日、下記のとおり決定(PDF:168KB)を行いました。

決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額 金438万円

  • (2)納付期限 平成24年2月14日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

  • (課徴金に係る法178条1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

    被審人は、平成22年3月16日(以下、平成22年の日付は、その年の記載を省略する。)午後2時18分ころから4月5日午後2時20分ころまでの間、11取引日にわたり、東京都中央区所在の(株)東京証券取引所において、東京証券取引所市場第一部に上場されている酒井重工業(株)の株式(本件株式)の売買を誘引する目的をもって、B証券(株)を介し、あらかじめ前日終値よりも高値に発注していた複数の売り注文に成行で又は直前の約定値段よりも高値で買い注文を発注して対当させたり、直前の約定値段よりも高値の売り注文と成行の買い注文を同時期に発注して対当させたりするなどの方法により、合計58万7000株の本件株式の買付け及び合計58万7000株の本件株式の売付けを行い、もって、自己の計算において、取引所金融商品市場における上場株式の相場を変動させるべき一連の株式の売買をしたものである。

  • (違反事実認定の補足説明)

    • 本件の争点等

      被審人は、一連の本件株式の売買(本件取引)について、自己の資金力の乏しさからすると、相場を変動させるべき売買はできなかったし、また、他の投資家の売買を誘引する目的もなかった旨主張する(なお、違反事実に係るその余の点は、被審人が争わないから、そのとおり認められる。)。

    • 基礎となる事実

      • (1)被審人の属性、取引経験等

        被審人は、昭和22年生まれの男性で、遅くとも昭和62年ころに株式取引を始め、平成18年2月からは、B証券(株)に証券取引口座を開設し、いわゆるデイトレーダーとして、インターネットを利用した株式取引を行っていた。

      • (2)本件取引に係る具体的状況等

        • 対当売買

          被審人は、同時期に自らの売り注文と自らの買い注文とを対当させて約定させる対当売買を、56回、行った。

        • 買い上がり買付け

          被審人は、成行で又は直前の約定値段よりも高値で一定の株数の買い注文を出し、当時出されていた売り注文と順次約定させ、約定値段を直前の約定値段よりも高値に更新させる、買い上がり買付けを行った。これらのうち、約定値段が連続して2回以上高値に更新されたものは17あり、いずれにも対当売買が含まれていた。

        • 寄り付き前の売り注文

          被審人は、本件取引の期間中、一部の例外を除き、寄り付き前に、前日の終値を超える1円刻みの複数の指値で売り注文を出していた。

          被審人は、上記売り注文の後に自ら成行の買い注文を出し、両者を対当させて約定させていた。

        • 本件取引に関連する第三者の取引

          本件取引に関連する第三者の取引には、買い上がり買付けの直後に、被審人以外の者が買い注文を発注し、買い上がり買付けによる更新前の約定値段よりも高い約定値段で約定したものが相当数存在する。これら第三者からの買い注文には、被審人が出した売り注文と約定したものもあり、中には、買い上がり買付けで約定値段が引き上げられた後、被審人が新たに出した売り注文と約定したものもあった。

      • (3)本件取引に係る株価の動き及び本件株式の出来高に対する被審人の買付けの割合(総買付関与率:本件取引の期間を通じたこの割合、買付関与率:各取引日におけるこの割合)

        本件株式の株価は、本件取引が開始された直前の141円からおおむね上昇し、本件取引が終了した時点で169円となった。また、本件取引の総買付関与率は、22.3%であり、本件取引の買付関与率も、本件取引の期間中6取引日で20%を超え、そのうち4取引日では30%を超えていた。

    • 本件取引が相場を変動させるべき一連の売買といえるか

      本件取引は、総買付関与率が20%を超えているだけでなく、被審人が本件株式の売買をした各取引日の過半において、買付関与率が20%を超え、取引日によっては、買付関与率が30%をも超えている(前記2(3))。本件取引では、このような大量の本件株式が、11取引日にわたり、継続的に売買されている(前記2(2))。また、本件取引の過程では、自らが注文した指値どおりに約定値段を変動させることができる対当売買ないし約定値段を高値に更新することができる買い上がり買付けが、頻繁に行われ(前記2(2)ア及びイ)、現に、本件株式の株価は、本件取引の前後で、141円から169円まで上昇している(前記2(3))。

      そうすると、本件取引は、相場を変動させるべき一連の売買といえる。

    • 被審人が本件株式の売買を誘引する目的を有していたか

      本件取引に係る被審人の注文には、自らの意図した値段で約定させることが可能な対当売買に係るものが数多く含まれている上、これら対当売買と買い上がり買付けとの組み合わせで約定値段を上昇させたものが多数みられ、中には、寄り付き前に出していた前日の終値よりも高い1円刻みの指値による売り注文との対当売買により、約定値段を上昇させたものがいくつも含まれている(前記2(2)アないしウ)。これらの被審人の注文及びこれらに伴う約定値段の上昇を受け、被審人以外の者は、買い上がり買付けによって上昇する前の約定値段を超える買い注文だけでなく、上昇後の約定値段以上の買い注文を相当数出したもので、これらの第三者の買い注文を受け、被審人の上記注文がなかったならば約定しなかったであろう高い値段で、被審人の売り注文が何度も約定しているのである(前記2(2)エ)。このような被審人の取引手法は、人為的な操作を加えて相場を変動させ、かつ、投資者にその相場が自然の需給関係により形成されるものであると誤認させて市場における有価証券の売買取引に誘い込むものである。

      また、被審人は、その年齢等から判断能力に問題はない上、十分な株式取引の経験を有しているもので(前記2(1))、上記取引手法が持つ意味合いを理解できないはずがない。実際、被審人は、審判廷において、本件株式の株価が上がればよいと考え、対当売買を行っていたなどと陳述し、上記取引手法につき、自らの意図したとおりに相場を引き上げる有効な手法であることを認識している。

      さらに、被審人は、証券取引等監視委員会の調査に対し、本件株式の売買で利益を上げるべく、他の投資家に本件株式の株価が上昇基調にあると思わせるため、対当売買ないし買い上がり買付けを行っていた旨、供述しているのである。

      これらを総合すると、被審人は、本件株式の売買を誘引する目的を有していたものと認められる。

  • (課徴金の計算の基礎)

    被審人の違反行為(以下「本件違反行為」という。)に係る課徴金の額は、下記1及び2の合計額(438万1000円)につき、1万円未満を切り捨てた438万円となる(法174条の2第1項、176条2項)。

    なお、被審人が本件違反行為の開始時に有している本件株式(9万6000株)については、被審人が、その開始時にその時における価格(142円)で買付けを自己の計算においてしたものとみなす(法174条の2第8項、金融商品取引法施行令(以下「施行令」という。)33条の13第1号・この買付けを「本件みなし買付け」という。)。

    • 下記(1)の額から下記(2)の額を控除した額(法174条の2第1項1号)

      244万2000円

      • (1)本件違反行為に係る売買対当数量(58万7000株)に係る、本件株式の売付けの価額

        9023万9000円

      • (2)本件違反行為に係る売買対当数量(58万7000株)に係る、本件株式の買付けの価額

        8779万7000円

      本件みなし買付け及び被審人の買付けのうち、最も早い時期に行われたものから順次売買対当数量に達するまで割り当てたものの価格の合計額である(法174条の2第13項、施行令33条の14第5項)。

    • 下記(1)の額から下記(2)の額を控除した額(法174条の2第1項2号ロ・本件違反行為に係る本件株式の買付けの数量(本件みなし買付けの数量を含む68万3000株)が本件違反行為に係る本件株式の売付けの数量(58万7000株)を9万6000株超えるため)

      193万9000円

      • (1)本件違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における本件株式の売付けについての法130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格(185円)に前記超える数量(9万6000株)を乗じて得た額

        1776万0000円

      • (2)前記超える数量(9万6000株)に係る本件株式の買付けの価額

        1582万1000円

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室(内線2398、2404)

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