平成25年12月11日
金融庁

株式会社ミマキエンジニアリング株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、(株)ミマキエンジニアリング株式に係る相場操縦の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成25年2月5日に審判手続開始の決定(平成24年度(判)第38号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおりPDF決定(PDF:242KB)を行いました。

決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金1,028万円

  • (2)納付期限平成26年2月12日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

  • (課徴金に係る金商法第178条第1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

    被審人(A)は、自己資金及び知人から預かった資金で株式の売買を行っていたものであるが、ジャスダック証券取引所(現在の東京証券取引所JASDAQ市場)に上場されている(株)ミマキエンジニアリングの株式(以下「本件株式」という。)につき、その株価の高値形成を図り、本件株式の売買を誘引する目的をもって、別表1記載のとおり、平成22年3月25日(以下、月日のみを示すときは、いずれも平成22年。)午前9時10分頃から4月12日午後3時9分頃までの間(以下「本件取引期間」という。)、13取引日にわたり、株式会社ジャスダック証券取引所(4月1日合併により消滅)及び株式会社大阪証券取引所において、長男であるB名義並びに知人であるC及びD名義を用いて、E証券株式会社及びF証券株式会社を介し、直前約定値より高値でB名義の売り注文とC又はD名義の買い注文とを対当させたり、直前約定値より高値でB名義の買い注文とC名義の売り注文とを対当させたり、連続した成行注文又は高指値注文を行って高値を買い上がるなどの方法により、本件株式合計1,052株を買い付ける一方、本件株式合計476株を売り付け、そのうち、自己の計算において、本件株式合計360株を買い付ける一方、本件株式合計190株を売り付けるなどし、もって、本件株式の売買が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における本件株式の相場を変動させるべき一連の売買をした。

  • (違反事実認定の補足説明)

  • 被審人は、違反事実に掲げる売買(以下「本件取引」という。)を行った事実は認めるものの、(ア)本件取引は、売買が繁盛であると誤解させ、かつ、株式の相場を変動させるべき売買に該当するものではなく、また、(イ)他の投資者の売買を誘引する目的はなかった旨主張するから、これらの点につき、以下、補足して説明する(なお、違反事実のうち、これらの主張に係る部分以外は、被審人が争わず、そのとおり認められる。)。

  • 基礎となる事実

    • (1)被審人の身上

      被審人(昭和30年生まれ。男性)は、昭和49年4月にG証券株式会社に入社し、その後、H証券株式会社等において、歩合外務員をしていたが、平成2年にJ証券株式会社を退社した後は、株式売買で生計を立てていた。

    • (2)被審人と口座名義人との関係等

      • Bは、被審人の長男である。本件取引に用いられたB名義の口座の資金は、被審人に帰属するものであった。

      • C及びDは、いずれも被審人の知人であり、本件取引当時、被審人にそれぞれの名義の口座を利用した株式取引を任せていた。本件取引に用いられたC及びD名義の各口座の資金は、それぞれ同人らに帰属するものであった。

    • (3)本件取引の内容

      被審人は、本件株式につき、本件取引期間に係る13取引日にわたり、B、C及びD名義の各口座を用いて、本件取引を行った。

    • (4)本件取引に係る四本値、出来高及び買付関与率等

      本件取引期間中の1日当たりの出来高の平均は、本件取引期間前1か月間においては21株程度であったところ、本件取引期間においては272株程度であった。本件取引期間中、各取引日における本件株式の出来高に対する被審人の買付けの割合は、約9%から約51%であり、本件取引期間中の被審人による1日当たりの買付株数の平均は、約81株であった。

    • (5)証券会社による注意喚起等

      F証券株式会社は、C名義口座及びD名義口座について、以下のとおり注意喚起等を行ったところ、被審人は、その内容の概略について把握していた。

      • C名義口座について

        F証券株式会社は、4月1日から同月12日まで4回、C名義口座について、本件株式の取引の出来高関与率が高いこと、買い上がり形態となっていること、連続して引際に関与したことないし大引け間際に買い上げていたことを指摘して相場操縦の疑念をもたれる場合があるとの注意喚起を行うとともに、その後同様の取引形態が見られた場合は、新規注文の受託を停止する旨予め通知し、同月12日の取引時間終了後、新規注文の受託を停止する措置をとった。

      • D名義口座について

        F証券株式会社は、4月12日、D名義口座について、それまでの取引が仮名・借名取引と見受けられるところ、取引内容に関する回答がない場合には、新規注文の受託を停止するとの注意喚起を行い、同月15日、D名義口座について、新規注文の受託を停止する措置をとった。

  • 争点(ア)(本件取引が、売買が繁盛であると誤解させ、かつ、相場を変動させるべき一連の売買といえるか(相場操縦行為該当性))について

    被審人は、本件取引期間を通じて、対当売買を23回、合計104株につき行い(うち16回、44株が直前約定値よりも高値によるものであった。)、また、成行又は直前約定値より高指値による買い注文に係る買付けの回数は100回を超え、本件取引期間中の買付総数に対する割合(対当売買を含む。)は60%を超えていた(なお、被審人は、制限値幅上限値や更新値幅上限値による買い注文で、売り注文と約定させる取引もしていた。)。

    また、被審人は、株価が下落基調にあるときなどに、直前約定値よりも下値にまとまった買い注文を出し、又は指値を変更し、その後、成行又は直前約定値よりも高指値による買い注文を出していた。

    さらに、被審人は、本件取引期間中、13取引日中7取引日において、大引け間際に、成行で又は直前約定値よりも高指値で数株から数十株単位の買い注文を連続して出していた。

    その上、被審人の総買付関与率は29.6%であり、各日の買付関与率は、9取引日において20%を超え、50%台に達する日もあった。そもそも、本件取引期間前1か月間の1日の出来高は、平均21株程度であったところ、被審人は、本件取引期間中、1日平均81株程度の買付けを行っていた。

    これらの被審人が行った本件取引は、買い板に厚みを持たせ、株価の下値を支えつつ、株価を高値に誘導する一連の取引である。そして、これら一連の取引により現に株価が上昇していること、本件取引中に第三者の関与が増し、本件取引期間における1日の出来高は、直前1か月間の平均の約13倍にまでになったこと、株価は、本件取引開始日前日には6万1,500円であったところ、本件取引終了時点においては9万円を超えたことに照らしても、本件取引は、第三者に買い需要が強い状況と見せ、相場を変動させる可能性の高い行為であったというべきである。以上より、本件取引は、売買が繁盛であると誤解させ、かつ、相場を変動させるべき一連の売買に当たると認められる。

  • 争点(イ)(被審人が本件株式の売買を誘引する目的を有していたか(誘引目的))について

    被審人は、審判手続において、利ざや獲得目的であったことを自認しており、被審人が他の投資者の取引を誘引する動機があった。

    また、被審人は、自らの意図した値段で約定させることが可能な対当売買を23回行っており、うち16回は直前約定値より高値によるものであった。被審人は、本件取引期間を通じて、成行又は直前約定値より高指値での買い注文を繰り返し(制限値幅上限値又は更新値幅上限値による買い注文を繰り返したものもある。)、株価が下落基調にあるときに、まとまった買い注文を出して株価の下値を支える効果のある取引をした上で、成行又は直前約定値よりも高指値による買い注文や対当売買との組み合わせにより、株価を上昇させる取引を行うこともあった。その上、被審人は、本件取引期間における13取引日中7取引日において、大引け間際に買い注文を集中させ、被審人の取引により投資者に重視される終値を高値に形成する可能性を高めたところ、4取引日において終値に関与した。そして、被審人の総買付関与率は29.6%と高かった。

    さらに、被審人は、株式売買に関する知識・経験ともに豊富である。また、被審人は、本件取引期間中、本件取引に関し、相場操縦の疑念をもたれる場合もあるとの証券会社からの注意喚起を伝え聞いていた。

    その上、被審人は、質問調書において、自己の買い注文により株価が上昇することにより、他の投資者からの注文が増え、更に株価が上昇する「いい相場」を作っていた旨述べている。

    以上によれば、被審人は、本件株式の売買を誘引する目的を有していたと認められる。

(別表1)

(単位:株)
取引年月日 B名義 C名義 D名義 合計
E証券 F証券 F証券
買付株数 売付株数 買付株数 売付株数 買付株数 売付株数 買付株数 売付株数
平成22年3月25日 50 32 45 21 0 0 95 53
平成22年3月26日 0 0 10 31 0 0 10 31
平成22年3月29日 0 0 12 0 0 0 12 0
平成22年3月30日 102 0 145 0 0 0 247 0
平成22年3月31日 34 58 57 35 70 0 161 93
平成22年4月1日 39 0 7 24 0 0 46 24
平成22年4月2日 5 5 25 25 0 0 30 30
平成22年4月5日 0 35 69 27 50 0 119 62
平成22年4月6日 60 0 24 21 21 0 105 21
平成22年4月7日 10 0 16 0 9 0 35 0
平成22年4月8日 30 0 29 0 0 0 59 0
平成22年4月9日 0 15 27 32 0 0 27 47
平成22年4月12日 30 45 25 0 51 70 106 115
合計 360 190 491 216 201 70 1,052 476
  • (課徴金の計算の基礎)

    金商法第174条の2第1項の規定により、当該違反行為に係る課徴金の額は、

    • (1)当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額

    • 及び

    • (2)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等又は買付け等の数量が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等又は売付け等の数量を超える場合、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金商法第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額、又は当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の売付け等についての金商法第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格に当該超える数量を乗じて得た額から当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額

    • の合計額として算定。

別表1に掲げる事実につき

  • (1) 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量は、190株であり、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量は、実際の買付け等の数量360株に、金商法第174条の2第8項及び金融商品取引法施行令第33条の13第1号の規定により、違反行為の開始時にその時における価格(61,400円)で買付け等を自己の計算においてしたものとみなされる当該違反行為の開始時に所有している当該有価証券の数量50株を加えた410株であることから、

    • (ア)当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量(190株)に係るものにつ いて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算 による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額
      (66,000円×9株+66,100円×2株+66,800円×2株+67,000円×4株
      +68,000円×7株+68,100円×1株+69,000円×2株+70,000円×5株
      +75,000円×2株+75,500円×10株+75,600円×5株+75,700円×5株
      +76,200円×1株+77,000円×2株+77,100円×5株+77,200円×6株
      +78,000円×1株+78,100円×7株+78,400円×4株+78,500円×3株
      +78,700円×2株+78,800円×2株+79,000円×3株+79,500円×5株
      +81,000円×18株+81,200円×10株+81,300円×2株+82,100円×2株
      +84,500円×3株+88,000円×5株+88,200円×4株+88,300円×1株
      +88,500円×10株+89,000円×10株+90,000円×15株+91,600円×3株
      +91,700円×3株+91,800円×2株+91,900円×2株+92,000円×5株)
      -(61,400円×50株+61,900円×2株+62,000円×5株+62,100円×6株
      +62,300円×3株+62,500円×10株+62,700円×2株+62,800円×2株
      +63,000円×10株+68,000円×11株+68,400円×1株+68,500円×2株
      +69,000円×1株+69,400円×5株+69,500円×1株+70,100円×1株
      +71,400円×1株+71,500円×7株+71,600円×2株+71,800円×5株
      +71,900円×5株+76,000円×25株+76,300円×5株+76,400円×5株
      +76,500円×23株)
      = 2,322,400円

    • 及び

    • (イ)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量(410株)が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量(190株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の売付け等についての金商法第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格(116,000円)に当該超える数量220株(410株-190株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額
      (116,000円×220株)
      -(72,000円×5株+72,500円×1株+72,600円×1株+72,800円×1株
      +72,900円×1株+73,000円×1株+73,300円×1株+73,500円×1株
      +73,700円×1株+73,800円×1株+74,000円×1株+74,800円×1株
      +75,000円×10株+75,500円×7株+75,900円×5株+76,000円×35株
      +76,500円×12株+79,000円×20株+79,500円×1株+79,800円×1株
      +79,900円×1株+80,000円×15株+80,500円×16株+80,800円×3株
      +81,400円×1株+81,500円×5株+81,800円×3株+82,000円×12株
      +82,500円×1株+82,800円×2株+83,000円×4株+84,900円×6株
      +85,000円×14株+87,000円×30株)
      = 7,959,700円

    • の合計額10,282,100円となる。

  • (2)金商法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、10,280,000円となる。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室
(内線2398、2404)

サイトマップ

ページの先頭に戻る