平成26年3月6日
金融庁

公開買付者との契約締結交渉者からの情報受領者による株式会社オストジャパングループ株式に係る内部者取引に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、公開買付者との契約締結交渉者からの情報受領者による(株)オストジャパングループ株式に係る内部者取引の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成25年10月29日に審判手続開始の決定(平成25年度(判)第23号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおりPDF決定(PDF:219KB)を行いました。

決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金105万円

  • (2)納付期限平成26年5月1日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

(課徴金に係る金商法第178条第1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

被審人(A)は、遅くとも平成24年12月6日までに、(株)富士薬品(以下「富士薬品」という。)と資本業務提携契約の締結の交渉をしていたBから、同人が同契約の締結の交渉に関し知った、富士薬品の業務執行を決定する機関が、北海道札幌市厚別区厚別南五丁目1番7号に本店を置き、子会社の経営管理等を目的とし、その発行する株式が札幌証券取引所アンビシャス市場に上場されていた(株)オストジャパングループ(以下「オストジャパングループ」という。平成25年5月13日上場廃止)の株式(以下「本件株式」という。)の公開買付け(以下「本件公開買付け」という。)を行うことについての決定をした旨の公開買付けの実施に関する事実の伝達を受けながら、法定の除外事由がないのに、上記事実の公表がされた平成25年1月10日より前の平成24年12月27日から平成25年1月8日までの間、C証券株式会社を介し、札幌証券取引所において、自己の計算において、本件株式合計2,300株を買付価額合計81万400円で買い付けた。

(違反事実認定の補足説明)

  • 争点

    被審人は、違反事実のうち、本件公開買付けの実施に関する事実の伝達を受けた点に関し、公開買付け、TOBとの言葉は伝えられていない、Bから伝えられた話の内容を明確に記憶していないなどと主張して否認しているから、この点につき、以下、補足して説明する(なお、違反事実のうち、その余の点については、被審人が争わず、そのとおり認められる。)。

  • 前提となる事実

    • (1)関係者等

      • 被審人

        被審人は、高等学校を卒業するまで北海道内に居住していたが、大学進学を機に東京都内に転居し、大学卒業後、不動産事業を営む会社を経営するなどした後、平成24年6月頃から、医療・介護事業を営む会社に勤務している。

      • オストジャパングループ

        オストジャパングループは、北海道内において調剤薬局事業等を営む株式会社オストジャパン等を子会社とする株式会社である。

      • Bは、北海道内に居住し、(株)オストジャパンの役員であり、被審人とは小学校から高等学校までの同級生で、現在まで被審人と交流を続けている。

      • 富士薬品

        富士薬品は、埼玉県内に本店を置き、医薬品等の配置販売、薬局等の経営等を業とする株式会社である。

    • (2)業務提携の交渉、本件公開買付けの実施等

      富士薬品は、北海道内に同社の店舗を増やしたいと考えていたところ、平成24年2月頃、Bとの間で、オストジャパングループとの業務提携について協議を始め、富士薬品の配置薬事業とオストジャパングループの調剤薬局事業とを融合する提案を受けるなどし、その後、同社との資本業務提携契約の締結に向けて、Bと交渉するなどした。

      そして、富士薬品とオストジャパングループは、同年9月、本件公開買付けを行うことを決定し、その後の協議を経て、富士薬品は、平成25年1月10日、本件公開買付けの開始公告を行った。

    • (3)本件株式の売買

      被審人は、数年ぶりに証券取引を行うため、平成24年12月21日、C証券株式会社に証券口座を開設し、同月27日から平成25年1月8日までの間、本件株式合計2,300株を買付価額合計81万400円で買い付け、本件公開買付けの実施に関する事実の公表後である同月25日、上記のとおり買い付けた本件株式全部を185万6,100円で売り付けた。

  • 争点に対する判断

    • (1)はじめに

      被審人は、Bから伝えられた話の内容を明確に記憶していないなどと主張するところ、B及び被審人の各質問調書に、被審人がBから、富士薬品がオストジャパングループの株式を取得して親会社となることを伝えられた旨の記載があるから、検討する。

    • (2)Bの供述内容

      Bは、質問調書において、おおむね次のとおり供述している。

      平成24年4月頃、被審人に、電話で、「今、富士薬品とジョイントしようと検討している」などと伝えた上で、富士薬品が行っている不動産取引に関する調査を依頼し、その一、二週間後、被審人から、その調査結果について回答を受けた。

      その後、同年11月19日又は同年12月6日、東京都内で、被審人等と会食した際、被審人から、「富士薬品とのジョイントってどうなったの」と尋ねられたので、「おかげさまで話し合いは進んでいるよ」、「考えていた薬局と配置薬やドラッグストアのコラボができると思う」、「オストが株を富士薬品に売って子会社になるらしい」、「オストの株価は上がるみたいだ」などと答えた。

    • (3)被審人の供述内容

      被審人は、質問調書において、おおむね次のとおり供述している。

      平成24年3月又は同年4月頃、Bから、電話で「富士薬品という会社と仕事の関連ができた」などと伝えられた上で、富士薬品の不動産売買に絡む調査の依頼を受けたため、その調査を行い、依頼から一、二週間後、電話でその調査結果について回答した。

      その後、同年11月下旬又は同年12月上旬頃、東京都内で、B等と会食した際、Bに、「最近、富士薬品との関係はどうなの」と尋ねたところ、Bは、「富士薬品が、来年早々に、オストの株を買って、富士薬品がオストの親会社になる話がある」、「オストと富士薬品が組めれば、富士薬品は配置薬を事業の柱にしているから、自分が以前から構想していた配置薬のシステムを、北海道で構築するビジネスモデルの実現がみえてくる」、「うまくいったらオストの株価も、倍とかにあがるんじゃない」などと答えた。

    • (4)検討

      Bは、オストジャパングループ側において富士薬品の担当者と両社の業務提携や公開買付けについて交渉を重ねていた者であり、B及び被審人の上記各供述に現れた本件公開買付けについて説明することができる立場にあった。そして、B及び被審人の上記各供述は、その内容に特段不自然不合理な点は見当たらない上、被審人は、Bの依頼で富士薬品の不動産売買に関する調査を行ったこと、Bと被審人は、東京都内で会食し、Bが被審人の問いかけに応じて富士薬品がオストジャパングループの親会社となることを伝えたこと等についておおむね一致している。

      また、被審人の取引は被審人がBと会食した時期と近接していること、被審人が数年ぶりに証券取引を行ったこと等に鑑みると、被審人は本件株式の株価の上昇に影響を与える重要な情報を聞いたことを契機に取引したと推認することができ、Bが被審人に富士薬品がオストジャパングループの親会社となるという事実を伝えたとの供述は、被審人が上記取引を行ったという客観的事実と整合する。

      さらに、上記各供述内容は、Bが被審人に本件公開買付けに関する内部情報を漏えいし、被審人が禁止された取引を行ったことに係るものであり、B及び被審人それぞれが不利益を被る可能性のあるものであるところ、あえて虚偽の供述をする動機は見当たらない。

      以上のとおりであるから、B及び被審人の上記各供述は十分に信用することができる。

    • (5)結語

      以上によれば、被審人は、遅くとも平成24年12月6日までに、Bから、平成25年早々に富士薬品がオストジャパングループの株式を買い付けて子会社化する旨の事実の伝達を受けていたことが認められ、本件公開買付けの実施に関する事実の伝達を受けていたと認められる。

      なお、被審人は、公開買付けという言葉は伝えられておらず、本件公開買付けの実施に関する事実の伝達を受けたとはいえない旨主張するが、失当である。

(課徴金の計算の基礎)

課徴金の計算の基礎となる事実については、被審人が争わず、そのとおり認められる。

  • (1)金商法第175条第2項第2号の規定により、当該有価証券の買付けについて、公開買付け等の実施に関する事実の公表がされた後2週間における最も高い価格に当該有価証券の買付けの数量を乗じて得た額から当該有価証券の買付けをした価格にその数量を乗じて得た額を控除した額。

    (809円×2,300株)

    -(345円×1,000株+350円×500株+355円×200株+365円×500株+369円×100株)

    = 1,050,300円

  • (2)金商法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、1,050,000円となる。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室
(内線2398、2404)

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