平成26年4月21日
金融庁

株式会社オウケイウェイヴとの契約締結交渉者からの情報受領者による内部者取引に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、(株)オウケイウェイヴとの契約締結交渉者からの情報受領者による内部者取引の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成25年8月30日に審判手続開始の決定(平成25年度(判)第16号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおりPDF決定(PDF:273KB)を行いました。

1決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金86万円

  • (2)納付期限平成26年6月19日

2事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

(課徴金に係る金商法第178条第1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

被審人(A)は、遅くとも平成24年10月23日午後1時頃までに、東京都渋谷区恵比寿一丁目19番15号に本店を置き、ウェブサイトの企画、制作、運営及び管理等を目的とし、その発行する株式が名古屋証券取引所セントレックス市場に上場されている株式会社オウケイウェイヴ(以下「オウケイウェイヴ」という。)と、資本業務提携契約の締結の交渉をしていた株式会社ブリックス(以下「ブリックス」という。)の役員であったBから、同人が同契約の締結の交渉に関し知った、オウケイウェイヴの業務執行を決定する機関が、ブリックスと業務上の提携(以下「本件業務提携」という。)を行うことの決定をした旨の重要事実の伝達を受けながら、法定の除外事由がないのに、上記事実の公表(以下「本件公表」という。)がされた同日午後4時頃より前の同日午後2時18分頃から同日午後3時26分頃までの間、C証券株式会社(以下「C証券」という。)を介し、株式会社名古屋証券取引所において、D名義で、自己の計算において、オウケイウェイヴの株式(以下「本件株式」という。)合計1,300株を買付価額合計101万7,600円で買い付け(以下「本件買付け」という。)た。

(違反事実認定の補足説明)

  • 1争点

    被審人は、違反事実のうち、Bから、オウケイウェイヴがブリックスと業務上の提携を行うことの決定をした旨の重要事実の伝達を受けた点について否認しているから、この点について補足して説明する(なお、違反事実のうち、その余の点については、被審人が積極的に争わず、そのとおり認められる。)。

  • 2前提となる事実

    • (1)関係者等

      • ア被審人

        被審人(昭和51年生まれ、女性)は、平成10年頃から平成15年頃まで、企業で秘書等として稼働するなどした後、父親の営む呉服業を手伝うなどし、平成19年には、和装販売等を営む株式会社を設立し、代表取締役を務めていた。被審人は、平成21年、同社の代表取締役を退任し、父親が代表取締役に就任したが、平成24年4月に父親が意識不明の重体になると、同社は事実上閉鎖され、被審人は、その後は無職である。

        なお、被審人は、本件買付け及びその後の売付けのほかに、株式取引をしたことはない。

      • イブリックス

        ブリックスは、多言語事業、ITエンジニアリング事業等を展開する株式会社である。

      • ウB

        Bは、ブリックスの役員であった者である。

      • エオウケイウェイヴ

        オウケイウェイヴは、ウェブサイトの企画、制作、運営及び管理等を行う株式会社であり、平成24年10月23日時点において、ブリックスの株式を4%保有していた。

    • (2)被審人とその家族の生活状況及びBとの関係

      • ア被審人は、かねてより両親及び妹と同居しており、同人らは、上記和装販売等を営む会社の収益で生計を立てていたが、平成24年4月に同社が事実上閉鎖されると、親戚等の援助を受けて生活することとなった。被審人の父親は、同年10月上旬に死亡した。

        被審人とその家族は、同月中旬頃、被審人の父親を被保険者とする死亡保険金合計約2,600万円を受け取った。なお、被審人らは、うち300万円を知人からの借金の返済に充て、また、同年11月中旬以降、上記会社の取引先などから、合計約1,500万円の債権の取立てを受けたため、同月30日、弁護士に債務整理の相談をした。

      • イ被審人とBは、平成23年頃にインターネット上で知り合い、平成24年7月頃からは、オンラインゲーム上のチャット、メール、電話等で連絡を取り合ったり、食事をしたりするなどして交流し、また、被審人は、本件買付け後の同年11月中旬頃、B名義の銀行口座に133万円を振り込んだ。その他、Bは、被審人の母親や妹とも交流をするようになり、平成25年頃には、被審人の母親をブリックスで雇用したり、被審人と家族を大韓民国への出張に連れて行ったりするなどした。

    • (3)本件業務提携に至る経緯

      ブリックスの役員E及びBは、平成23年12月又は平成24年1月頃、ブリックスの株主から、ブリックス株式の持株比率を下げたい、その保有株の引受先はブリックスで探してほしいなどという要請を受けた。ブリックスの株主であったオウケイウェイヴは、ブリックスを連結子会社化することとし、同年10月17日の定時取締役会において、ブリックスから資本業務提携に係る契約書等の必要書類が提出されることを条件として、ブリックスとの間で株式の取得及び第三者割当増資の引受けを伴う本件業務提携を実施することを正式に決議する旨の条件付承認決議を行った。

    • (4)Bが本件業務提携を知った状況

      Bは、Eから本件業務提携に係るオウケイウェイヴとの交渉の経過や進捗状況について報告を受けたり、株主に説明を行ったりするなどして同交渉に関与していたところ、平成24年10月22日午後7時頃、被審人と会うために車で千葉県浦安市に向かっていた際に、電話で、オウケイウェイヴが本件業務提携の実施を決定したこと及びその事実が同月23日に公表されることにつき報告を受けた。

    • (5)被審人とBとの会食

      被審人とBは、平成24年10月22日午後7時30分頃から同日午後9時10分頃までの間、千葉県浦安市にあるホテルのレストランにおいて、2人で食事をした。

    • (6)本件業務提携の公表

      平成24年10月23日午後4時頃、TDnet(適時開示情報伝達システム)により、オウケイウェイヴが本件業務提携の実施を決定した旨の事実が公衆の縦覧に供され、本件公表がされた。

    • (7)本件買付け

      被審人は、本件公表に先立つ平成24年10月23日午後1時頃、妹であるD名義でC証券に証券口座等を開設した上、同証券口座に合計600万円を入金し、同日午後2時18分頃から同日午後3時26分頃までの間、本件株式合計1,300株を4回に分けて買付価額合計101万7,600円で買い付けた(本件買付け)。

    • (8)証券会社への電話

      被審人は、C証券のオペレーターに、電話で、平成24年10月23日午後3時34分頃、「一気に買ってしまうと問題があるものだったんでしょうか」、「もともと退職金が600万円くらいあったんですね。そうすると7,700株くらいっていう風になっちゃうとかなり上がっちゃうよという話だったんですが、今、1,000株くらい買ってもかなり変動があるという状態なんでしょうか、この会社は」、「2,000株くらい持っている分にはおかしくとも何ともないですよね」などと質問し、また、同月26日午後0時32分頃には、「売買した情報というものは企業(オウケイウェイヴ)にも行くものなんでしょうか」などと質問した。

    • (9)本件株式の売付け等

      被審人は、本件公表後である平成24年10月29日、本件株式全部を売付価額合計181万100円で売り付け、同月31日から同年11月24日にかけて、上記証券口座からほぼ全額を出金した。

  • 3検討

    • (1)被審人が、Bから、オウケイウェイヴがブリックスと本件業務提携を行うことの決定をした旨の重要事実の伝達を受けたか否かについて、検討する。

    • (2)ア被審人は、平成24年10月23日午後1時頃に証券口座を開設し、同日午後3時26分までに本件株式合計1,900株の買い注文を出し、結果として買付価額合計100万円余の買付けを行ったのであり、本件公表前の公表に近接した時期において、本件買付けを行ったものである。また、被審人は、本件買付け以前には株式取引をした経験を有していなかったところ、本件買付けの直前に証券口座を開設し、初めて株式取引を行ったものであることからすれば、被審人には本件買付け前に株式取引を特に動機付ける何らかの事情があったことが窺われる。さらに、被審人は、本件買付けの数日後に、前記のとおり買い付けた本件株式全部を売り付けて売買差益を獲得し、その後は、株式取引を一切行うことなく、証券口座から残高のほぼ全額を出金しているのであり、被審人は、特に本件株式に絞って株式取引を行ったものである。

      • イそして、Bは、本件業務提携の当事者であるブリックスの役員であり、本件公表の前日である平成24年10月22日午後7時頃に、オウケイウェイヴが本件業務提携の実施を決定したこと及びその公表時期が同月23日であることについて知ったところ、その直後に、被審人とBは、2人で会食している。また、被審人とBは、仕事上の関係はなく、被審人の家族とも交流していたのであり、被審人及びBによれば、同月22日に両名が食事をしたのは、Bが役員を務めていたブリックスが被審人の母親を障害者雇用枠で雇用することについて相談するためでもあった、被審人は、同年11月19日、Bに対し、被審人の亡父の遺志を慮って、Bが関係する音楽バンドの活動費用等に充てるため133万円を送金したというのである。このように、被審人とBは、私的生活において一定程度親しい関係にあったものであり、Bとこのような関係にある被審人には、本件買付けの前日に、本件業務提携の実施に係る事実について、Bから情報提供を受ける機会があったものである。

      • ウさらに、被審人は、本件買付け後に、証券会社のオペレーターに対し、本件買付けが問題視される可能性及び被審人が本件株式を買い付けたことがオウケイウェイヴに知られる可能性等について確認しており、本件買付けが注目されてオウケイウェイヴに知られることを警戒していたと認められるところ、被審人の上記行動は、通常の投資者の行動としては不自然というべきで、被審人が本件買付け前にBから本件業務提携の実施に係る事実を伝達されていたからこそ確認を行ったものとみるのが自然である。

      • エ以上によれば、被審人が、遅くとも証券口座を開設する前には、Bから、本件業務提携の実施に係る重要事実の伝達を受けていたことが強く推認される。

    • (3)Bの供述について

      • アこれに対し、Bは、質問調書及び参考人審問において、本件公表の前日に、オウケイウェイヴが本件業務提携の実施を決定したこと及びその公表時期について知った直後に被審人と会食したものの、被審人には本件業務提携については伝えていない、本件公表後に初めて、被審人に対し、ブリックスがオウケイウェイヴの傘下に入ったことや、その影響で株価が連続でストップ高であることについて話をした、その際、被審人が株式取引を行ったことは知らなかった、本件業務提携は被審人には全く関係ない話であったなどと供述する。

      • イしかし、Bは、被審人が株式取引を行ったことを知らず、本件業務提携は被審人には全く関係がなかったにもかかわらず、被審人に対し、本件公表の数日後になって突然、オウケイウェイヴとブリックスの関係や本件株式の株価に係る話をしたというのは、その内容自体、不自然である。また、仮に伝達したことが発覚した場合、Bが解任等の不利益を被る可能性があること、Bは、被審人と親しい関係にあったことからすれば、Bには、自身や被審人のために虚偽の供述をする動機がある。

      • ウ上記各事情に照らせば、Bの上記供述は直ちに採用することはできない。

    • (4)被審人の供述について

      • ア被審人は、陳述書等及び被審人審問において、Bから本件業務提携の実施に係る事実の伝達は受けておらず、本件買付けをしたのは、株式取引に関心を持っていた亡父の遺志に沿うものと考え株式の購入を思い立ち、占いの結果、かねてよりBからいい会社であると教えられていたオウケイウェイヴについて、平成24年10月23日に購入するのがよいとされたからであり、また、同月24日にはテーマパーク内のホテルに宿泊する予定があったため、同月23日までに株式を購入しようと考えたなどと供述する。

      • イしかし、被審人は、初めて株式取引を行い、その買付価額は100万円に達したにもかかわらず、対象銘柄に係る知識を相当程度有しているBから、前に聞いた「いい会社」ということのほかに詳細を聞くことなく、あえて占いの結果のみに頼って本件買付けを決意し、また、買付時期については、テーマパーク内のホテルに宿泊する予定があったという理由から、本件公表前の公表に近接した時期に買い付けたという供述内容自体、にわかに納得できない。

        また、被審人は、陳述書で、平成24年10月24日にホテルに宿泊する前日までに本件株式を買うつもりだった旨供述するところ、被審人審問においては、本件買付けの翌日にも本件株式を買い付けようと思っていたと矛盾する供述をし、さらに、同年9月にBと会食した際、同人から不快な思いをさせられ、あまり親しい関係にはなかったと述べながら、亡父の死因や妹の結婚相手に関する相談をするなどしており、被審人の供述には不合理な点が見られる。

        その上、被審人は、平成25年5月16日付け質問調書においては、平成24年9月4日頃、オウケイウェイヴ社内の者と思われる人からBへの電話の雰囲気からオウケイウェイヴがブリックスの取引先であると感じたものであるが、その際、景気のよさそうな話をしていたため、オウケイウェイヴのホームページなどを確認し、占いの結果もよかったので本件株式を購入してみる気になった、買うきっかけとなった出来事は他になかったと思うなどと供述していたにもかかわらず、同年5月17日、証券調査官から、Bは上記電話を受けた事実はない旨供述していると伝えられると、電話があったというのは記憶違いかもしれないなどと述べた上、Bが「これからオウケイウェイヴに行くところだ」などと言っていたので勝手に景気がよさそうであると感じ、本件株式を購入する気になった、その時期ははっきり覚えていないなどと供述を変遷させている。さらに、被審人は、同月20日には、Bにオウケイウェイヴがどのような会社か尋ねたところ、ブリックスの株主でいい会社と教えてくれたので株を買うことにしたなどと更に供述を変遷させているのであって、初めて100万円に及ぶ株式を購入する動機という重要部分について、不自然かつ場当たり的に供述を変遷させている。また、Bが「これからオウケイウェイヴに行くところだ」などと言っていたので勝手に景気がよさそうだと感じたなどという弁解は、それ自体、不自然で場当たり的というべきである。

      • ウ以上によれば、Bから本件業務提携の実施に係る事実の伝達は受けていないという被審人の供述は信用することができない。

    • (5)結語

      以上によれば、被審人は、遅くとも証券口座を開設した平成24年10月23日午後1時頃までに、Bからオウケイウェイヴが本件業務提携を行うことの決定をした旨の重要事実の伝達を受けていたと認められる。

(課徴金の計算の基礎)

課徴金の計算の基礎となる事実については、被審人が争わず、そのとおり認められる。

  • (1)金商法第175条第1項第2号の規定により、当該有価証券の買付けについて、業務等に関する重要事実の公表がされた後2週間における最も高い価格に当該有価証券の買付けの数量を乗じて得た額から当該有価証券の買付けをした価格にその数量を乗じて得た額を控除した額。

    (1,446円×1,300株)

    -(781円×700株+782円×100株+783円×400株+795円×100株)

    = 862,200円

  • (2)金商法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、860,000円となる。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室
(内線2398、2404)

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