平成27年6月26日
金融庁
経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に係るフィールドテストの結果について
今般、金融庁では、全保険会社を対象に経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に係るフィールドテストを実施し、結果の概要を取り纏めましたので、公表します。
本件の概要は以下のとおりです。
I.経緯
平成23年5月、第1回目の「経済価値ベースのソルベンシー規制の導入に係るフィールドテスト」(以下「フィールドテスト」)を公表した。
平成26年6月、第2回目のフィールドテストの実施を公表するとともに、全保険会社(生保43社、損保53社)に試行を依頼した。
今般、その集計及び分析の結果が取りまとまったことから、概要を公表するものである。
II.目的
全保険会社を対象に、経済価値ベースの保険負債等の計算の実施を要請し、各社の対応状況や実務上の問題点等を把握すること。
III.結果概要
1.概要
(1)今回のフィールドテストは、複数の手法を用いた試算など、前回よりも多岐にわたるものであったが、対象としたすべての会社から計算結果等についての回答があった。また、引き続き各社においては経済価値ベースのソルベンシー規制やリスク管理に対する関心が高く、また、体制整備も進んでいることが確認された。
(2)一方で、各社のアンケートからは、実際の導入に当たっては今後十分な準備期間が必要であり、システム構築や実務負荷等の観点から解決すべき課題が多いことなどの意見も見受けられたところ。また、内部モデルの使用なども含め、各社の対応体制等の違いを踏まえた仕組みの構築を求める声もあった。
2.経済価値ベースの保険負債評価について
(1)経済価値ベースの保険負債については、現在の低金利状況下にあっても、現行の保険負債と比べてそれほど大きく乖離することはなかった。しかしながら、保有する保険契約の構造等の違いにより各社で傾向の違いが見られ、今後割引率の設定方法等が保険負債に与える影響については、引き続き十分に検討する必要がある。
(2)保証とオプションのコストについては、今回全社に対して計算を求めたが、確率的手法を用いていること、金利シナリオの作成手法の複雑さなどが理由となって、特に内部モデルを用いた場合には比較可能性が大きな問題になることが認識された。今後どのような手法が適切かといった点について、検討が必要であると考えられる。
3.リスク量について
(1)今回のフィールドテストでは、99.5%VaRを用いているが、
- 99.5%VaRという水準の適切性
- TVaRなどVaR以外の手法との比較
といった問題について、今後も検討が必要である。
(2)リスクの計測手法については「各社の商品内容・保有ポートフォリオ・リスク管理手法といった実態を踏まえたリスク量の計測」と「簡明性・比較可能性」はトレードオフの関係になることが多く、内部モデルの取扱いを含め、どのように両者のバランスを取っていくのかという点については、引き続き検討課題であると考えられる。
IV.今後の検討の方向性
1.上記のとおり、今回のフィールドテストでは前回に引き続いて様々な課題が認識されたところであり、その結果を踏まえつつ、経済価値ベースのソルベンシー規制について、今後更に具体的な制度策定に向けた検討を進める必要がある。
2.国際的にも、IAISにおいてICSのフィールドテストが実施中であること、欧州においてはソルベンシーIIの導入に向けた準備が進んでいることなど、経済価値ベースのソルベンシー規制における議論は進展しているところである。また、会計制度においても、国際会計基準審議会(IASB)において、IFRS第4号「保険契約」の検討が進められている。このような状況において、さらにはわが国の保険市場の特性なども踏まえながら、わが国にふさわしい規制内容を構築することが重要であると考えられる。
3.経済価値ベースのソルベンシー規制の導入は、これまでの保険会社における経営管理手法やリスク管理手法に相応の見直しを伴うものである。したがって、今後の円滑な制度導入に向け、様々な場面において関係者との対話を重視し、着実に新たな枠組み作りを進めていきたいと考えている。
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