平成27年6月26日
金融庁

監査法人の処分について

金融庁は、平成26年10月24日、公認会計士・監査審査会から、同審査会が才和有限責任監査法人に対して行った検査の結果に基づき、公認会計士法第41条の2の規定による当該監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるようPDF勧告新しいウィンドウで開きますを受けました。

同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当該監査法人に対して公認会計士法第34条の21第2項第3号に基づく処分を行いました。

  • 1.処分の概要

    • (1)処分の対象

      才和有限責任監査法人(事務所所在地:東京都千代田区)

    • (2)処分の内容

      • 業務改善命令(業務管理体制の改善)
      • 1年間の業務の一部の停止命令(契約の新規の締結に関する業務の停止)
        (平成27年6月29日から平成28年6月28日まで)
    • (3)処分理由

      才和有限責任監査法人については、別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。

  • 2.業務改善命令の内容

    • (1)監査法人として、組織的な監査を実施する態勢を構築すること。

    • (2)品質管理のシステムが有効に機能するよう態勢を整備すること(品質管理に係る各業務の運用における、深度ある検証を含む。)。

    • (3)監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(指示・監督、査閲、研修の実施等、適切な監査を実施するための取組、会計上の見積りなど職業的専門家としての判断を伴う重要な項目における深度ある監査手続の実施、関連当事者取引における取引実態を踏まえた検討など、検査において指摘された事項の改善を含む。)。

    • (4)監査の基準の改正に留意した審査及び被監査会社のリスクを踏まえた批判的な審査を実施し、監査上の重要な問題点を指摘できる態勢を整備すること。

    • (5)日本公認会計士協会の品質管理レビューにおける指摘事項等の改善を組織的に行うとともに、品質管理のシステムの運用状況等の監視態勢を強化すること(指摘事項と同様の問題点が他の監査業務にも生じていないか網羅的に検証することを含む。)。

    • (6)上記(1)から(5)に関する業務の改善計画について、平成27年7月31日までに提出し、直ちに実行すること。

    • (7)上記(6)の報告後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、平成27年11月末日を第1回目とし、以後、6箇月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課

(内線3861、3679)

(別紙)

才和有限責任監査法人の運営は、下記のとおり著しく不当なものと認められる。

  • 当該監査法人においては、社員が監査の品質を向上させる必要性を感じておらず、被監査会社の主張や被監査会社が作成した資料を批判的な検討なく受け入れる傾向があるなど、監査の基本である投資者及び債権者のために監査を行うという意識が希薄である。

    加えて、ここ数年、当該監査法人は、監査法人として成立するために必要な最低限の社員数である5名で業務を実施している中、監査契約の解除等により業務収入が激減している厳しい環境にある。

    さらに、当該監査法人は、全ての社員が兼業を行っており、法人代表者を除く4名については、法人の品質管理業務にほとんど関与しておらず、監査法人としての組織的監査を実施する態勢を構築できる状況になく、また、法人代表者がガバナンスを効かせにくい環境にある。

    こうしたことから、当該監査法人には、被監査会社の立場を過度に重視する風土が醸成されている。

  • 当該監査法人においては、法人代表者が品質管理業務に係る役割について各社員に分担せず、代表者自身において主要な監査業務の業務執行社員に加え、品質管理担当社員、日常的監視担当者といった多くの法人の役割を兼務するなど、品質管理担当社員として実施すべき品質管理システムの整備に十分な時間を確保できておらず、品質管理に係る各業務の運用において、深度ある検証ができない状況になっている。

    このように、当該監査法人は、監査法人として組織的に監査の品質の向上に取り組む態勢を構築していないことから、品質管理のシステムが機能しておらず、品質管理態勢は著しく不十分である。

  • 監査業務の実施については、業務執行社員は、監査補助者を非常勤職員中心に構成している状況において、指示・監督、査閲、研修の実施等、適切な監査を実施するための取組を十分に行っていない。

    また、業務執行社員を含む監査チームにおいて、監査の基準の要求水準に関する理解・知識が不足しているため、監査意見形成に重要な影響を与える会計上の見積りなど、職業的専門家としての判断を伴う項目に対し、深度ある監査手続が実施できていない。

    さらに、業務執行社員は、前年同様の監査を実施すればよいとの認識のもと、被監査会社の主張や被監査会社が作成した資料を批判的な検討なく受け入れる傾向がある。

    このため、関連当事者取引における取引実態の理解を踏まえた検討を行っていないなど、監査の基準に準拠した監査手続が実施されていない監査業務が広範に認められる。

  • 監査業務に係る審査については、審査担当社員が監査の基準の改正に留意した審査を実施しておらず、また、審査の実施に際して、重要な論点について、独自の観点に基づき、批判的かつ深度ある検証が不足していることから、監査実施上の重要な問題点を発見・抑制できておらず、審査態勢は著しく不十分である。

  • 日本公認会計士協会の品質管理レビューの指摘事項については、品質管理担当社員が、社員会等において、指摘事項及びその改善措置について説明しているものの、指摘事項に関連した項目についての対応の周知が不足しており、また、法人代表者を含む全ての社員は、指摘事項に対する改善状況の事実確認が不足していたことから、契約リスクの評価、後発事象の検討、未訂正事項の集計等において改善が不十分な事項が認められ、改善に向けた取組状況は不十分である。

以上

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