平成26年8月22日
金融庁

フィンテックグローバル株式会社株式に係る相場操縦に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、フィンテックグローバル(株)株式に係る相場操縦の検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成26年3月11日に審判手続開始の決定(平成25年度(判)第48号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)金商法第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおり決定(PDF:235KB)を行いました。

決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金614万円

  • (2)納付期限平成26年10月22日

事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙)

(課徴金に係る金商法第178条第1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

被審人(A)は、東京証券取引所マザーズ市場に上場されているフィンテックグローバル(株)の株式(以下「本件株式」という。)につき、本件株式の売買を誘引する目的をもって、別表記載のとおり、平成25年3月26日午後0時45分頃から同月27日午後2時59分頃までの間(以下「本件取引期間」という。)、2取引日にわたり、株式会社東京証券取引所において、B証券株式会社(以下「B証券」という。)を介し、成行の買い注文と高値の売り注文を発注して直前約定値より高値で対当させたり、成行の買い注文を発注して株価を引き上げるなどの方法により、本件株式合計2,043株を買い付ける一方、本件株式合計2,383株を売り付け(以下、これらの売買を「本件取引」という。)、もって、自己の計算において、本件株式の売買等が繁盛であると誤解させ、かつ、同市場における本件株式の相場を変動させるべき一連の売買をした。

(違反事実認定の補足説明)

  • 被審人は、(ア)本件取引は、売買が繁盛であると誤解させ、かつ、株式の相場を変動させるべき売買に該当するものではなく、また、(イ)他の投資者の売買を誘引する目的はなかった旨主張するから、これらの点について補足して説明する(なお、違反事実のうち、その余の点については、被審人が争わず、そのとおり認められる。)。

  • 前提となる事実

    • (1)被審人の身上

      被審人(昭和24年生まれ、男性)は、昭和48年に大学卒業後、歯科医院勤務等を経て、昭和62年3月から自宅でパソコン教室を開設している者である。

      被審人は、昭和60年頃から株式取引を行っていたところ、平成17年頃、インターネットを利用した株式取引を始め、本件株式については、同年6月頃から取引している。

    • (2)本件取引の内容等

      被審人は、本件株式につき、本件取引期間の2取引日にわたり、本件取引を行った。

    • (3)本件取引に係る出来高等

      本件取引期間開始日の1か月前から本件取引期間終了日までの本件株式の出来高は、4,374株から8,452株であった。ただし、本件取引期間初日における本件取引期間開始後の本件株式の出来高は、1,975株であった。

      本件株式の株価は、本件取引期間開始直前においては3,590円であったところ、本件取引期間終了時においては3,975円であった。

    • (4)証券会社による注意喚起等

      B証券は、平成20年8月6日から平成25年1月31日までの間に、被審人に対し、9回にわたり、電話又はパソコンの画面に表示する方法で、本件株式について、仮装取引や見せ玉、買い上がりと評価される取引を行っていること等を指摘し、このような取引を控えるよう注意喚起をし、又は、再度同様の取引を行うと取引制限措置や罰則が適用されることがあることを告知した。さらに、B証券は、本件取引期間終了日の翌日、被審人に対し、2回にわたり、パソコンの画面に表示する方法で、同年3月27日までの本件株式の取引に仮装取引や終値関与とみなされる取引があることを指摘し、注意喚起や取引制限措置の予告をした。

  • 争点(ア)(本件取引が、売買が繁盛であると誤解させ、かつ、相場を変動させるべき一連の売買といえるか(相場操縦行為該当性))について

    • (1)取引内容

      被審人は、本件取引期間を通じ、本件株式合計2,043株を買い付けた(後記対当売買を含む。)ところ、これらの買付けは、1回、41株を除き、12回にわたり、成行買い注文を出し、場に晒されていた売り注文と約定させるなどして、直前約定値より高値を買い上がる買い上がり買付けを繰り返したものであった。その上、これらの買い注文の注文株数は、おおむね1回当たり100株から400株(平均約170株)であり、他の投資者の注文と比べ大口のものであった。

      また、前記買い上がり買付けには、自ら売り注文を出した後、その注文株数を超える株数の買い注文を成行で出すなどし、前記自己の売り注文株数の限度で自己の売り注文と自己の買い注文を約定させる対当売買を行うとともに、買い注文株数の残部を既に場に晒されていた他の投資者の売り注文と約定させるものがあった。被審人は、対当売買を8回、合計1,612株につき行い、いずれも被審人が対当売買とともに行った買い上がり買付けによる約定値の直前約定値より高値で約定させた。その上、対当売買に係る約定株数は、121株から336株(平均約200株)であり、他の投資者の注文と比べ大口のものであった。

      さらに、前記買い上がり買付けには、大引け間際に成行で買い注文を出して既に他の投資者が出していた売り注文と約定させ、終値に関与し、又は、実質的に終値に関与するものがあった。そして、被審人は、実際に、終値を形成し、又は、実質的に終値を形成した。

    • (2)検討

      被審人は、買い上がり買付けを行い、そのうち多くの取引において、併せて対当売買や終値関与等を行い、人為的に株価を高値に誘導することができる可能性のある取引を繰り返し行ったものである上、その取引の規模は、他の投資者による取引と比べ、大口のものであった。

      そして、本件株式の株価は、本件取引期間開始直前に3,590円であったところ、本件取引期間終了時には、3,975円まで上昇したことに照らしても、本件取引は、第三者に買い需要が強い状況と見せ、相場を変動させる可能性の高い行為であったというべきである。

      以上より、本件取引は、売買が繁盛であると誤解させ、かつ、相場を変動させるべき一連の売買に当たると認められる。

  • 争点(イ)(被審人が本件株式の売買を誘引する目的を有していたか(誘引目的))について

    • (1)取引の態様

      被審人は、本件取引期間を通じ、買い上がり買付けや対当売買を繰り返し、終値に関与し、又は、実質的に終値に関与した。

    • (2)株価

      本件株式の株価は、本件取引期間開始直前に3,590円であったところ、本件取引期間終了時には、3,975円まで現に上昇した。

    • (3)取引経験等

      被審人は、本件取引までに約28年間にわたり株式取引を継続的に行っており、特に、平成17年からは、本件取引と同様、インターネットを使用して取引を行っていた。また、被審人は、本件取引以前に、対当売買、仮装売買、買い上がり等について、相場操縦行為等の疑念をもたれるおそれがある旨、証券会社から繰り返し注意喚起を受けていた。

    • (4)被審人の供述状況等

      被審人は、質問調書において、他の投資者の売り注文を買い浚うとともに、自己の売り注文と自己の買い注文を高値で対当させて約定させたのは、株価が上がった後に、他の投資者の買い注文に売り注文をぶつけることで少しでも利益を出すことができると考えていたからである旨、終値を高くしたのは、終値を高くすれば、翌日の取引開始時には、「いい感じの相場」になるからであったと供述する。そして、被審人は、当審判廷において、同調書に関し、自分のものが少し高めになったとしても、リスクを抱えてもやったと供述し、利益を出すことができると考えていたことを自認し、また、終値が高いと気分的にはいいかもしれない、気持ちがいいと供述し、終値が高値になることが被審人の利益になることを自認し、現に、終値を直前約定値より高値に形成するなどしている。

      また、被審人は、書面を提出し、本件取引は、高値の売り注文が他の投資者の買い注文と約定しなかった際に、自らの買い注文で約定させ、高値で取引するという観点から行ったものであると供述し、当審判廷においても同旨供述する。

    • (5)まとめ

      以上によれば、被審人が本件株式の売買を誘引する目的を有していたと認められる。

(別表)

(単位:株)
取引年月日 売付株数 買付株数

平成25年3月26日

796

1,038

平成25年3月27日

1,587

1,005

合計

2,383

2,043

(課徴金の計算の基礎)

課徴金の計算の基礎となる事実は、被審人が争わず、そのとおり認められる。

金商法第174条の2第1項の規定により、当該違反行為に係る課徴金の額は、

  • (1)当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額

  • 及び

  • (2)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等又は買付け等の数量が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等又は売付け等の数量を超える場合、当該超える数量に係る有価証券の売付け等の価額から当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の買付け等についての金商法第130条に規定する最低の価格のうち最も低い価格に当該超える数量を乗じて得た額を控除した額、又は当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の売付け等についての金商法第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格に当該超える数量を乗じて得た額から当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額

  • の合計額として算定。

別表に掲げる事実につき

  • (1)当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量は、2,383株であり、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量は、実際の買付け等の数量2,043株に、金商法第174条の2第8項及び金融商品取引法施行令第33条の13第1号の規定により、違反行為の開始時にその時における価格(3,610円)で買付け等を自己の計算においてしたものとみなされる当該違反行為の開始時に所有している当該有価証券の数量2,124株を加えた4,167株であることから、

    • 当該違反行為に係る有価証券の売買対当数量(2,383株)に係るものについて、自己の計算による当該有価証券の売付け等の価額から、自己の計算による当該有価証券の買付け等の価額を控除した額

      (3,680円×156株+3,715円×305株+3,730円×335株

      +3,765円×41株+3,775円×100株+3,785円×200株

      +3,790円×242株+3,845円×495株+3,940円×509株)

      -(3,610円×2,134株+3,665円×7株+3,670円×3株

      +3,680円×162株+3,685円×3株+3,700円×15株

      +3,725円×2株+3,730円×57株)

      =448,305円

    • 及び

    • 当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の買付け等の数量(4,167株)が、当該違反行為に係る自己の計算による有価証券の売付け等の数量(2,383株)を超えていることから、当該違反行為が終了してから1月を経過するまでの間の各日における当該違反行為に係る有価証券の売付け等についての金商法第130条に規定する最高の価格のうち最も高い価格(7,000円)に当該超える数量1,784株(4,167株-2,383株)を乗じて得た額から、当該超える数量に係る有価証券の買付け等の価額を控除した額

      (7,000円×1,784株)

      -(3,630円×1株+3,635円×2株+3,640円×4株

      +3,645円×42株+3,650円×80株+3,690円×3株

      +3,695円×2株+3,700円×14株+3,705円×5株

      +3,710円×5株+3,715円×312株+3,720円×6株

      +3,725円×63株+3,730円×278株+3,735円×3株

      +3,840円×21株+3,845円×485株+3,850円×3株

      +3,910円×10株+3,915円×22株+3,920円×31株

      +3,940円×337株+3,965円×40株+3,970円×10株

      +3,975円×5株)

      = 5,696,175円

    • の合計額6,144,480円となる。

  • (2)金商法第176条第2項の規定により、上記(1)で計算した額の1万円未満の端数を切捨て、6,140,000円となる。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局総務課審判手続室(内線2398、2404)

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