平成26年10月6日
金融庁
インスパイアー株式会社に係る有価証券報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定について
金融庁は、証券取引等監視委員会から、インスパイアー(株)に係る有価証券報告書等の虚偽記載に係る検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告を受け、平成26年9月2日に審判手続開始の決定(平成26年度(判)第20号金融商品取引法違反審判事件)を行ったところ、被審人から課徴金に係る金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第178条第1項第2号及び第4号に掲げる事実並びに納付すべき課徴金の額を認める旨の答弁書の提出があり、これを受けた審判官から金商法第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおり
決定(PDF:174KB)を行いました。
記
1決定の内容
被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。
(1)納付すべき課徴金の額金4,336万円
(2)納付期限平成26年12月4日
2課徴金に係る金商法第178条第1項各号に掲げる事実
(1)課徴金に係る金商法第178条第1項第4号に該当
被審人は、東京都中央区入船一丁目9番8号に本店を置き、その発行する株式が東京証券取引所ジャスダック市場に上場されていた会社(平成26年9月13日上場廃止)である。
被審人は、実際は、カード事業に係るソフトウェアの開発を行っていなかったにもかかわらず、同事業のためのソフトウェアを開発するなどとして、「ソフトウェア仮勘定」等の架空の資産を計上していた。
これらの結果、被審人は、関東財務局長に対し、下表のとおり、重要な事項につき虚偽の記載がある有価証券報告書及び四半期報告書(以下「開示書類」という。)を提出した。
番号 | 開示書類 | 虚偽記載 | ||||
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提出日 | 書類 | 会計期間 | 財務計算に 関する書類 |
内容(注) | 事由 | |
1 | 平成21年 11月16日 |
第19期事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成21年4月1日~平成21年9月30日の第2四半期累計期間 | 四半期 損益計算書 |
四半期純損益が▲354百万円であるところを▲194百万円と記載 | ・ソフトウェア仮勘定の架空計上 等 |
平成21年7月1日~平成21年9月30日の第2四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が216百万円であるところを376百万円と記載 | ||||
2 | 平成22年 2月15日 |
第19期事業年度第3四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成21年4月1日~平成21年12月31日の第3四半期累計期間 | 四半期 損益計算書 |
四半期純損益が▲459百万円であるところを▲301百万円と記載 | ・ソフトウェア仮勘定の架空計上 等 |
平成21年10月1日~平成21年12月31日の第3四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が192百万円であるところを351百万円と記載 | ||||
3 | 平成22年 6月28日 |
第19期事業年度会計期間に係る有価証券報告書 | 平成21年4月1日~平成22年3月31日の会計期間 | 損益計算書 | 当期純損益が▲698百万円であるところを▲535百万円と記載 | ・ソフトウェア仮勘定の架空計上 等 |
貸借対照表 | 純資産額が97百万円であるところを259百万円と記載 | |||||
4 | 平成22年 8月16日 |
第20期事業年度第1四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成22年4月1日~平成22年6月30日の第1四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が17百万円であるところを180百万円と記載 | ・ソフトウェア仮勘定の架空計上 |
5 | 平成22年 11月15日 |
第20期事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成22年7月1日~平成22年9月30日の第2四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が▲101百万円であるところを44百万円と記載 | ・ソフトウェア仮勘定の架空計上 |
6 | 平成23年 2月14日 |
第20期事業年度第3四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成22年10月1日~平成22年12月31日の第3四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が▲192百万円であるところを▲46百万円と記載 | ・ソフトウェア仮勘定の架空計上 |
7 | 平成23年 6月28日 |
第20期事業年度会計期間に係る有価証券報告書 | 平成22年4月1日~平成23年3月31日の会計期間 | 貸借対照表 | 純資産額が▲276百万円であるところを▲158百万円と記載 | ・ソフトウェア仮勘定の架空計上 |
8 | 平成23年 8月15日 |
第21期事業年度第1四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成23年4月1日~平成23年6月30日の第1四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が▲343百万円であるところを▲228百万円と記載 | ・ソフトウェアの架空計上 |
9 | 平成23年 11月14日 |
第21期事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成23年7月1日~平成23年9月30日の第2四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が▲383百万円であるところを▲275百万円と記載 | ・ソフトウェアの架空計上 |
10 | 平成24年 2月14日 |
第21期事業年度第3四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成23年10月1日~平成23年12月31日の第3四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が▲439百万円であるところを▲337百万円と記載 | ・ソフトウェアの架空計上 |
11 | 平成24年 6月29日 |
第21期事業年度会計期間に係る有価証券報告書 | 平成23年4月1日~平成24年3月31日の会計期間 | 貸借対照表 | 純資産額が▲85百万円であるところを10百万円と記載 | ・ソフトウェアの架空計上 |
12 | 平成24年 8月14日 |
第22期事業年度第1四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成24年4月1日~平成24年6月30日の第1四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が▲99百万円であるところを▲9百万円と記載 | ・ソフトウェアの架空計上 |
13 | 平成24年 11月22日 |
第22期事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書 | 平成24年7月1日~平成24年9月30日の第2四半期会計期間 | 四半期 貸借対照表 |
純資産額が▲116百万円であるところを▲31百万円を記載 | ・ソフトウェアの架空計上 |
(注)金額は百万円未満切捨てである。▲は損益計算書では損失であることを、貸借対照表では債務超過であることを示す。
(2)課徴金に係る金商法第178条第1項第2号に該当
被審人は、以下のとおり、重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させた。
イ平成24年2月20日、第20期有価証券報告書及び第21期第3四半期報告書を組込情報とする有価証券届出書(株式)を提出し、同有価証券届出書に基づく募集により、同年3月30日、307,977株の株式を322,759,896円で取得させた。
ロ平成24年2月20日、第20期有価証券報告書及び第21期第3四半期報告書を組込情報とする有価証券届出書(新株予約権証券)を提出し、同有価証券届出書に基づく募集により、同年3月30日、1,250個の新株予約権証券を107,562,500円(新株予約権の行使に際して払い込むべき金額を含む。)で取得させた。
3課徴金の計算の基礎
2の(1)の表に掲げる事実につき
- 番号1、同2及び同3
金商法第172条の4第1項本文及び第2項前段の規定により、被審人の第19期事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第19期第2四半期報告書」という。)、同事業年度第3四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第19期第3四半期報告書」という。)及び同事業年度会計期間に係る有価証券報告書(以下「第19期有価証券報告書」という。)に係る課徴金について、個別決定ごとの算出額は
イ被審人が発行する算定基準有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて得た額
第19期第2四半期報告書 31,748円 第19期第3四半期報告書 20,844円 第19期有価証券報告書 30,455円 が
ロ6,000,000円
を超えないことから、
第19期第2四半期報告書及び第19期第3四半期報告書については、それぞれ6,000,000円の2分の1に相当する額である3,000,000円
第19期有価証券報告書については、6,000,000円
となるが、第19期第2四半期報告書、第19期第3四半期報告書及び第19期有価証券報告書が、いずれも第19期事業年度に係るものであることから、金商法第185条の7第6項の規定により、6,000,000円を個別決定ごとの算出額に応じて按分することとなり、
第19期第2四半期報告書及び第19期第3四半期報告書に係る課徴金の額は、それぞれ
6,000,000×3,000,000/(3,000,000+3,000,000+6,000,000)
=1,500,000円
第19期有価証券報告書に係る課徴金の額は
6,000,000×6,000,000/(3,000,000+3,000,000+6,000,000)
=3,000,000円
となる。
- 番号4、同5、同6及び同7
金商法第172条の4第1項本文及び第2項前段の規定により、被審人の第20期事業年度第1四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第20期第1四半期報告書」という。)、同事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第20期第2四半期報告書」という。)、同事業年度第3四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第20期第3四半期報告書」という。)及び同事業年度会計期間に係る有価証券報告書(以下「第20期有価証券報告書」という。)に係る課徴金について、個別決定ごとの算出額は、
イ被審人が発行する算定基準有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて得た額
第20期第1四半期報告書 23,697円 第20期第2四半期報告書 19,544円 第20期第3四半期報告書 13,289円 第20期有価証券報告書 17,019円 が
ロ6,000,000円
を超えないことから、
第20期第1四半期報告書、第20期第2四半期報告書及び第20期第3四半期報告書については、それぞれ6,000,000円の2分の1に相当する額である3,000,000円
第20期有価証券報告書については、6,000,000円
となるが、第20期第1四半期報告書、第20期第2四半期報告書、第20期第3四半期報告書及び第20期有価証券報告書が、いずれも第20期事業年度に係るものであることから、金商法第185条の7第6項の規定により、6,000,000円を個別決定ごとの算出額に応じて按分することとなり、
第20期第1四半期報告書、第20期第2四半期報告書及び第20期第3四半期報告書は、それぞれ
6,000,000×3,000,000/(3,000,000+3,000,000+3,000,000+6,000,000)
=1,200,000円
第20期有価証券報告書に係る課徴金の額は
6,000,000×6,000,000/(3,000,000+3,000,000+3,000,000+6,000,000)
=2,400,000円
となる。
- 番号8、同9、同10及び同11
金商法第172条の4第1項本文及び第2項前段の規定により、被審人の第21期事業年度第1四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第21期第1四半期報告書」という。)、同事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第21期第2四半期報告書」という。)、同事業年度第3四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第21期第3四半期報告書」という。)及び同事業年度会計期間に係る有価証券報告書(以下「第21期有価証券報告書」という。)に係る課徴金について、個別決定ごとの算出額は、
イ被審人が発行する算定基準有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて得た額
第21期第1四半期報告書 6,846円 第21期第2四半期報告書 8,219円 第21期第3四半期報告書 7,537円 第21期有価証券報告書 7,788円 が
ロ6,000,000円
を超えないことから、
第21期第1四半期報告書、第21期第2四半期報告書及び第21期第3四半期報告書については、それぞれ6,000,000円の2分の1に相当する額である3,000,000円
第21期有価証券報告書については、6,000,000円
となるが、第21期第1四半期報告書、第21期第2四半期報告書、第21期第3四半期報告書及び第21期有価証券報告書が、いずれも第21期事業年度に係るものであることから、金商法第185条の7第6項の規定により、6,000,000円を個別決定ごとの算出額に応じて按分することとなり、
第21期第1四半期報告書、第21期第2四半期報告書及び第21期第3四半期報告書に係る課徴金の額は、それぞれ
6,000,000×3,000,000/(3,000,000+3,000,000+3,000,000+6,000,000)
=1,200,000円
第21期有価証券報告書に係る課徴金の額は
6,000,000×6,000,000/(3,000,000+3,000,000+3,000,000+6,000,000)
=2,400,000円
となる。
- 番号12及び同13
金商法第172条の4第1項本文及び第2項前段の規定により、被審人の第22期事業年度第1四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第22期第1四半期報告書」という。)及び同事業年度第2四半期会計期間に係る四半期報告書(以下「第22期第2四半期報告書」という。)に係る課徴金について、個別決定ごとの算出額は、
イ被審人が発行する算定基準有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて得た額
第22期第1四半期報告書 24,208円 第22期第2四半期報告書 21,836円 が
ロ6,000,000円
を超えないことから、
第22期第1四半期報告書及び第22期第2四半期報告書については、それぞれ6,000,000円の2分の1に相当する額である3,000,000円
となる。
- 2の(2)に掲げる事実につき
金商法第172条の2第1項第1号の規定により、重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により取得させた株券等の発行価額の総額の100分の4.5に相当する額が課徴金の額となることから、
イ平成24年2月20日提出の有価証券届出書(普通株式)に係る課徴金の額は、
322,759,896円×4.5/100=14,524,195円
について、金商法第176条第2項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて、14,520,000円
ロ平成24年2月20日提出の有価証券届出書(新株予約権証券)に係る課徴金の額は
107,562,500円×4.5/100=4,840,312円
について、金商法第176条第2項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて、4,840,000円
となる。
以上により、納付すべき課徴金の額は、
1,500,000円+1,500,000円+3,000,000円+1,200,000円+1,200,000円 +1,200,000円+2,400,000円+1,200,000円+1,200,000円+1,200,000円 +2,400,000円+3,000,000円+3,000,000円+14,520,000円+4,840,000円
=43,360,000円
となる。
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総務企画局総務課審判手続室
(内線2398、2404)