English新しいウィンドウで開きます

平成27年12月22日
金融庁

監査法人及び公認会計士の懲戒処分等について

金融庁は、本日、新日本有限責任監査法人及び公認会計士7名に対し、下記の懲戒処分等を行いました。

1.監査法人

  • (1)処分の対象者

    新日本有限責任監査法人(所在地:東京都千代田区)

  • (2)処分の内容

    • 契約の新規の締結に関する業務の停止 3月

      (平成28年1月1日から同年3月31日まで)

    • 業務改善命令(業務管理体制の改善。詳細は下記4参照)

      ※併せて、同日、約21億円の課徴金納付命令に係る審判手続開始を決定

  • (3)処分理由

    • 新日本有限責任監査法人(以下「当監査法人」という。)は、株式会社東芝(以下「東芝」という。)の平成22年3月期、平成24年3月期及び平成25年3月期における財務書類の監査において、下記7名の公認会計士が、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

    • 当監査法人の運営が著しく不当と認められた。

2.公認会計士

  • (1)懲戒処分の対象者及び内容

    • 公認会計士 (登録番号: 事務所所在地:

      業務停止6月(平成27年12月24日から平成28年6月23日まで)

    • 公認会計士 (登録番号: 事務所所在地:

      業務停止3月(平成27年12月24日から平成28年3月23日まで)

    • 公認会計士 (登録番号: 事務所所在地:

      業務停止3月(平成27年12月24日から平成28年3月23日まで)

    • 公認会計士 (登録番号: 事務所所在地:

      業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

    • 公認会計士 (登録番号: 事務所所在地:

      業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

    • 公認会計士 (登録番号: 事務所所在地:

      業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

    • 公認会計士 (登録番号: 事務所所在地:

      業務停止1月(平成27年12月24日から平成28年1月23日まで)

  • (2)処分理由

    • A会計士、C会計士及びD会計士は、東芝の平成24年3月期及び平成25年3月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

    • B会計士は、東芝の平成22年3月期、平成24年3月期及び平成25年3月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

    • E会計士、F会計士及びG会計士は、東芝の平成22年3月期における財務書類の監査において、相当の注意を怠り、重大な虚偽のある財務書類を重大な虚偽のないものとして証明した。

3.事案の概要

  • (1)東芝の財務書類に対する虚偽証明

    当監査法人においては、

    • 監査チームのメンバー構成が、長期間にわたり東芝や東芝の子会社の監査を担当した者が中心となっていることなどにより、東芝のガバナンスへの過信が生じ、東芝側の説明や提出資料に対して、批判的な観点からの検証が十分に実施できなかった。

    • 監査対象事業ごとに分業体制で監査を進めていたにもかかわらず、チーム内での情報共有や連携がうまく機能しなかった。

    等の背景事情を原因として、下記アからウに記載した事実などが認められた。

    • パソコン事業(平成22年3月期、平成24年3月期及び平成25年3月期)

      東芝は、パソコンを外部に製造委託するにあたって、海外子会社を通じて仕入れた部品を外部製造委託会社に調達価格を上回る価格で販売し、その差額分を、海外子会社は東芝に対する未払金として計上し、東芝は海外子会社に対する未収入金として計上することによって、同額の製造原価を減額して計上していた。

      東芝は、平成21年3月期第2四半期以降、四半期末ごとに正常な生産行為に必要な数量を超えた部品を外部製造委託会社に販売した結果、パソコン事業の製造損益は四半期末月に利益が拡大し、翌月には悪化する状況が繰り返され、時期を追うごとに製造損益の振れ幅は拡大し、平成24年3月期には、四半期末月の製造原価が非常に低い水準に、さらに、平成25年3月期には、四半期末月の製造原価がマイナスとなる異常値となった。

      監査の担当者は、毎四半期末月の製造利益が他月に比べ大きくなっている状況や四半期末月の製造原価がマイナスとなる異常値を認識するとともに、その理由を東芝に確認し、「部品メーカーからの多額のキャッシュバック」があったためとの回答を受けていたが、監査調書に記載するのみで、それ以上にチーム内で情報共有をしていなかった。

      監査チーム内において不正の兆候を把握した場合の報告義務を課すなどの適切な指示、指導及び監督を十分に行っていなかった結果、必要な監査手続が実施されず、自己の意見を形成するに足る基礎を持たずに監査意見を表明していた。

    • 半導体事業(平成24年3月期及び平成25年3月期)

      東芝の半導体事業社内カンパニーでは、標準原価(以下「TOV」という。)を用いた原価計算を採用していた。また、半導体事業の製造工程は、前工程と後工程とに分かれており、両工程で発生する原価差額(TOVと実際に発生した原価との差額)を合算した上で、期末に完成品原価や在庫に割り振る手法を採用していた。

      • (ア)監査チームは、平成24年3月期の期末において、半導体事業社内カンパニーが前後工程の費用分担について見直しを行い、前工程で発生した原価差額を減額し、後工程の原価差額を同額増額する旨の説明を東芝から受けていた。

        前工程の原価差額を減額した場合は、後工程の原価差額について同額の増額が行われるべきところ、東芝はこれを行っていなかったが、監査チームは、前工程における原価差額の減額が行われていたことを監査手続において認識しながら、後工程における原価差額の増額が行われているかを、十分かつ適切な監査証拠を入手し裏付けをもって確認する必要があるにもかかわらず、後工程における原価差額の増額は当然に行われていると勝手に思い込み、その確認を怠った。

      • (イ)平成25年3月期中に東芝が当監査法人に対して説明や相談することなく実施した臨時のTOV改訂においては、前工程のTOVのみを増額改訂し、後工程のTOVの改訂を行っていなかった。これにより、後工程において架空の原価差額が発生し、その一部を在庫に割り振ることにより、完成品原価に割り振られる原価差額が減少した結果、完成品原価が減少し、過大な利益が計上された。

        監査チームは、臨時的なTOV改訂が行われれば、当然に東芝から報告や相談があるものと思い込み、また、前後工程のTOVは整合しているという勝手な思い込みのもと、これらの確認を怠った。

    • 工事進行基準適用事案(平成25年3月期)

      ETC設備更新工事事案について、監査法人は、工事進行基準売上や受注工事損失引当金を特別な検討を必要とするリスクとして識別したにもかかわらず、東芝の説明を鵜呑みにし、また、東芝から提出された発番票などの資料を確認するにとどまり、見積工事原価総額の内訳などについて、詳細な説明や資料の提出を受けておらず、経営者が使用した重要な仮定の合理性や見積りの不確実性の検討過程を評価していないなど、当然行うべき、特別な検討を必要とするリスクに対応した十分かつ適切な監査証拠の入手ができていなかった。

  • (2)当監査法人の運営

    当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、平成27年12月15日、金融庁は、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から行政処分勧告を受け、調査の結果、下記アからエに記載した事実が認められた。

    • 当監査法人の理事長、品質管理本部長及び事業部長など経営に関与する社員は、過去の審査会の検査、日本公認会計士協会の品質管理レビュー等で、リスク・アプローチに基づく監査計画の立案や分析的実証手続等の監査手続の不備を繰り返し指摘されてきたことを踏まえ、社員の品質管理に対する意識改革や期中レビューの強化、定期的な検証の実施担当者の選任方法の変更等、改善に向けた取組を強化してきたとしている。

      しかしながら、下記イにみられるように品質管理本部及び各事業部等においては、原因分析を踏まえた改善策の周知徹底を図っていないことに加え、改善状況の適切性や実効性を検証する態勢を構築していない。そのため、社員及び監査補助者のうちには、監査で果たすべき責任や役割を十分に自覚せず、審査会検査等で指摘された事項を改善できていない者がいる。また、下記エにみられるように審査態勢も十分に機能していない。

      経営に関与する社員はこうした状況を十分に認識しておらず、審査会検査等の指摘事項に対する改善策を組織全体に徹底できていない。

      こうしたことから、下記ウに記載のとおり、これまでの審査会検査等で繰り返し指摘されたリスク・アプローチに基づく監査計画の立案、会計上の見積りの監査、分析的実証手続等について、今回の審査会検査でも同一又は同様の不備が認められており、当監査法人の改善に向けた取組は有効に機能していないなど、地区事務所も含めた組織全体としての十分な改善ができていない。

    • 当監査法人では、品質管理本部及び各事業部等において、検査結果等に対する原因分析を踏まえた改善策の周知徹底及び浸透を十分に図っていない。

      品質管理本部は、定期的な検証及び期中レビューにより、全ての監査の品質を一定水準以上に向上できているかを検証することとしている。しかしながら、これらの手段を組み合わせて用いても、早急に改善を要する監査業務や監査手続への適時な対応となっていないなど、実効性のあるモニタリングを実施する態勢を構築していない。また、定期的な検証において、監査手続の不備として指摘すべき事項を監査調書上の形式的な不備として指摘している。そのため、監査チームは指摘の趣旨を理解しておらず、審査会検査等で繰り返し指摘されている分析的実証手続等の不備について、改善対応ができていない。

      さらに、品質管理本部は、問題のみられる一部の地区事務所への改善指導を実施しているものの、前回の審査会検査で検証した地区事務所が担当する監査業務において、今回の検査においても重要な監査手続の不備が認められている。

      監査での品質改善業務を担っている各事業部等は、品質管理本部の方針を踏まえて監査チームに監査の品質を改善させるための取組を徹底させていない。また、一部の業務執行社員は、深度ある査閲を実施しておらず、監査調書の査閲を通じた監査補助者に対する監督及び指導を十分に行っていない。

      このように、当監査法人においては、実効性ある改善を確保するための態勢を構築できていないことから、監査手続の不備の改善が図られない状況が継続しており、当監査法人の品質管理態勢は著しく不十分である。

    • 個別監査業務においては、業務執行社員がリスクの識別、リスク対応手続の策定等にあたり、職業的懐疑心を十分に保持・発揮しておらず、また、実施した監査手続から得られた監査証拠の十分性及び適切性について検討する姿勢が不足している。

      このため、識別されたリスクに対応した監査手続が策定されていないなどリスク・アプローチに基づく監査計画の立案が不十分であり、重要な会計上の見積りの監査における被監査会社が用いた仮定及び判断について遡及的に検討をしていないほか、被監査会社の行った見積り方法の変更や事業計画の合理性について批判的に検討しておらず、分析的実証手続の不備が改善されていないなど、これまでの審査会検査等で繰り返し指摘されてきた監査手続の重要な不備が依然として認められる。加えて、重要な勘定において多額の異常値を把握しているにもかかわらず、監査の基準で求められている実証手続が未実施であり、また、経営者による内部統制の無効化に関係したリスク対応手続として実施した仕訳テストにおいて抽出した仕訳の妥当性が未検討であるなど、リスクの高い項目に係る監査手続に重要な不備が認められる。

    • 監査業務に係る審査においては、審査担当社員が、監査チームから提出された審査資料に基づき審査を実施するのみで、監査チームが行った重要な判断を客観的に評価していない。また、監査チームが不正リスクを識別している工事進行基準に係る収益認識について、監査調書を確認せず、監査チームが経営者の偏向が存在する可能性を検討していないことを見落としているなど、今回の審査会検査で認められた監査実施上の問題点を発見・抑制できていない。

      このように、当監査法人の審査態勢は、監査チームが行った監査上の重要な判断を客観的に評価できておらず十分に機能していない。

4.業務改善命令の内容

  • (1)今回、東芝に対する監査において虚偽証明が行われたことに加え、これまでの審査会の検査等での指摘事項に係る改善策が有効に機能してこなかったこと等を踏まえ、経営に関与する責任者たる社員を含め、責任を明確化すること。

  • (2)その上で、外部の第三者の意見も踏まえ、改めて抜本的な業務改善計画を策定すること。また、改善策を実施するにあたり、その実効性につき、経営レベルの適切な指導力の発揮の下、組織的に検証する態勢を構築するとともに、不十分な対策が認められた場合には、必要に応じて追加的な改善策を策定・実行すること。

  • (3)品質管理本部に加え、監査の品質改善業務を担っている各事業部の責任者等は、監査チームに対し、業務改善策が浸透・定着するよう、より主体性と責任を持って取り組むこと。

  • (4)審査体制の機能を強化することに加え、監査実施者が、監査チーム内で十分な情報共有・連携を確保するとともに、求められる職業的懐疑心を保持し、深度ある分析・検討を行う態勢を構築する観点から、監査法人内の人事管理や研修態勢を含め、組織の態勢を見直すこと。

  • (5)今回の事案の発生及び審査会から行政処分の勧告が行われるに至った背景として、監査法人の風土及びガバナンス体制等の面でいかなる問題があったのかを検証し、上記業務改善計画の中で改善に取り組むこと。

  • (6)上記(1)から(5)に関する業務の改善計画を、平成28年1月31日までに提出し、直ちに実行すること。

  • (7)上記(6)の実行後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、平成28年6月末日を第1回目とし、以後、6か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課

(内線2764、3861)

公認会計士の個人名等については、処分期間経過後に削除しております。