平成28年4月15日
金融庁

監査法人の処分について

金融庁は、平成28年1月12日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、明誠有限責任監査法人(法人番号6010005011688)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるようPDF勧告新しいウィンドウで開きますを受けました。

同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法第34条の21第2項第3号に基づき、以下の処分を行いました。

1.処分の概要

  • (1)処分の対象

    名称:明誠有限責任監査法人(法人番号6010005011688)

    事務所所在地:東京都中央区

  • (2)処分の内容

    業務改善命令(業務管理体制の改善)

  • (3)処分理由

    別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。

2.業務改善命令の内容

  • (1)監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢を構築すること(監査を実施するための人的資源の十分な確保、入手した監査証拠の深度ある査閲、監査調書の査閲を通じた監査補助者への十分な監督及び指導の実施など審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。

  • (2)監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること(監査リスクの高い被監査会社の監査を実施するための監査チームの適切な組成、継続企業の前提に関する注記について、重要な不確実性の有無を判断するための検討、関連当事者から取得した株式の取引価格やのれんの償却期間の妥当性についての検討など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)。

  • (3)被監査会社のリスクを踏まえて実効性のある審査を実施し、監査実施上の重要な問題点を指摘できる体制を整備すること。

  • (4)審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビュー等において不備を指摘された事項について、網羅的に改善策を講ずるとともに、その改善状況を組織的に検証し、当該改善策が浸透・定着する態勢を整備すること。

  • (5)上記(1)から(4)に関する業務の改善計画について、平成28年5月末日までに提出し、直ちに実行すること。

  • (6)上記(5)の報告後、当該計画の実施完了までの間、平成28年10月末日を第1回目とし、以後、6箇月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課(内線3861、2764)

(別紙)

明誠有限責任監査法人の運営は、下記のとおり著しく不当なものと認められる。

  • 当監査法人は、誠実でかつ高度な専門技能を有する人材を育み、チームワークにより高品質なサービスを生み出す旨の経営理念を掲げ、赤字が継続している会社や継続企業の前提に疑義が生じている会社など、監査リスクの高い監査業務の受嘱を続けている。また、当監査法人の統括代表社員を含む全社員は、当監査法人は監査リスクの高い被監査会社に対応できる監査の品質を維持していると考えている。

    しかしながら、当監査法人は、監査を実施するための人的資源を十分に確保していないなど、監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢を構築できていない。

  • 品質管理責任者である統括代表社員は、監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢を構築していない。また、各社員は、監査リスクに見合った組織的監査を実施する態勢がないことを認識していない。

    このため、当監査法人においては、監査リスクが高い監査業務を新規で受嘱し続けているにもかかわらず、入手した監査証拠の十分性及び適切性の観点を踏まえた深度ある査閲を実施しておらず、監査調書の査閲を通じて、監査補助者に対して、監督及び指導を十分に行っていない監査業務が認められるなど、品質管理において広範に不備が認められる。

    このように、当監査法人においては、品質管理態勢は著しく不十分である。

  • 当監査法人は、現場での監査を担う監査補助者について極めて脆弱な体制であるなど、監査リスクの高い被監査会社の監査を実施するための監査チームを適切に組成できていない。

    このため、個別監査業務において、監査チームは、被監査会社において前年度から継続して付されている継続企業の前提に関する重要な不確実性が認められる旨の注記について、重要な不確実性の有無を判断するための検討を行っておらず、また、関連当事者から株式を取得し、当該取得した株式の金額的重要性が高いにもかかわらず、取引価格やのれんの償却期間の妥当性について検討していないなど、監査の品質の水準を確保するために必要な手続を行うことなく監査を完了させており、監査の基準に準拠していない監査手続が広範に認められる。

  • 当監査法人においては、監査リスクの高い被監査会社に対応できる審査の体制を構築できていないことから、審査担当社員は、監査チームが十分な監査手続を実施していないことに気付かないまま審査を終了するなど、実効性のある審査を実施していない。

    このため、審査担当者は、今回の公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)の検査で発見された監査実施上の重要な問題点を発見・抑制できていないなど、当監査法人の審査体制は、著しく不十分である。

  • 前回の審査会検査での指摘事項について、当監査法人は、指摘事項の改善策を周知し、定期的な検証を通じて改善状況を確認しているものの、定期的な検証の対象とならなかった業務については、改善状況の検証を実施していない。

    また、日本公認会計士協会の品質管理レビュー等での指摘事項についても、同様に定期的な検証の対象とならなかった業務については改善状況の検証を実施していない。その他にも、指摘事項の一部については、改善すべき事項はないと判断し、改善策を講じていない。

    このため、今回の審査会検査においても、個別監査業務において、前回の審査会検査等で指摘を受けた継続企業の前提、会計上の見積りの監査、不正リスクへの対応等に不備が検出されており、改善に向けた取組状況は著しく不十分である。

以上

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