平成28年8月12日
金融庁

監査法人の処分について

金融庁は、平成28年3月24日、公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という。)から、KDA監査法人(法人番号7010005003932)に対して行った検査の結果、当監査法人の運営が著しく不当なものと認められたとして、当監査法人に対する行政処分その他の措置を講ずるようPDF勧告新しいウィンドウで開きますを受けました。

同勧告を踏まえ、金融庁は本日、下記のとおり、当監査法人に対して公認会計士法第34条の21第2項第3号に基づき、以下の処分を行いました。

1.処分の概要

  • (1)処分の対象

    名称KDA監査法人(法人番号7010005003932)

    事務所所在地東京都中央区

  • (2)処分の内容

    業務改善命令(業務管理体制の改善)

  • (3)処分理由

    別紙のとおり、運営が著しく不当と認められるため。

2.業務改善命令の内容

  • (1)品質管理責任者も兼ねる総括代表社員は、組織的監査を実施するために、監査契約の新規締結及び更新時における的確な判断、十分な人的資源の確保、監査実施者の教育・訓練の充実、実効性のある定期的な検証の実施態勢の整備を含め、実効性のある品質管理のシステムを構築するなど、貴監査法人の監査品質の向上に責任を持って取り組むこと。

  • (2)業務執行社員は、監査リスクの高い上場会社の監査業務を行っていることの責任を自覚し、被監査会社の状況に応じて経営陣とのコミュニケーションを密にするとともに、職業的懐疑心を十分に保持・発揮した監査の実施に取り組むこと。

  • (3)現行の監査の基準に準拠した監査手続を実施するための態勢を強化すること。(継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を認識した場合の経営者の主張の妥当性の検討、内部統制に開示すべき重要な不備が認められる場合の監査手続の見直しの検討、通例でない重要な取引に対する重要な監査手続の確実な実施など、審査会の検査において指摘された事項の改善を含む。)

  • (4)被監査会社のリスクを踏まえて批判的な審査を実施し、監査実施上の多くの問題点を発見・抑制・指摘できる態勢を整備すること。

  • (5)審査会の検査及び日本公認会計士協会の品質管理レビュー等において不備を指摘された事項について、網羅的に改善策を講ずるとともに、その改善状況を組織的に検証し、当該改善策が浸透・定着する態勢を整備すること。

  • (6)上記(1)から(5)に関する業務の改善計画について、平成28年9月末日までに提出し、直ちに実行すること。

  • (7)上記(6)の報告後、当該計画の実施完了までの間、平成29年2月末日を第1回目とし、以後、6か月ごとに計画の進捗・実施及び改善状況を取りまとめ、翌月15日までに報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課(内線3654、3813)

(別紙)

KDA監査法人の運営は、下記のとおり著しく不当なものと認められる。

  • 当監査法人においては、品質管理責任者である総括代表社員が、組織的監査を実施するために必要な実効性ある品質管理のシステムを構築していないことから、監査契約の新規締結及び更新、監査実施者の教育・訓練及び選任、監査業務に係る審査、定期的な検証など品質管理全般に多くの不備が認められている。

    また、監査業務の実施において、リスク・アプローチに基づく監査計画の立案や会計上の見積りの監査等について、重要な手続に多くの不備が認められている。

    さらに、監査リスクの高い複数の上場会社の監査を実施している状況において、業務執行社員は、監査調書の深度ある査閲をしておらず、監査現場での監査補助者への指導も十分に行っていないことから、監査調書の作成において、結論だけが記載されているもの又は資料を綴じ込んだだけのものが多数みられるにもかかわらず、これを看過している。このように、当監査法人の品質管理態勢は極めて不十分である。

  • 当監査法人の業務執行社員は、監査リスクの高い複数の上場会社の監査業務を行っているにもかかわらず、被監査会社の主張を批判的に評価していないなど、職業的懐疑心を十分に保持・発揮していない。また、現行の監査の基準で要求される水準を十分に理解していない。

    このため、被監査会社において、重要な営業損失、マイナスの営業キャッシュ・フロー、主要な得意先の喪失等、監査の基準に例示されている継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が複数存在することを監査チームは認識しているにもかかわらず、当該事象又は状況は識別していないとする経営者の主張の妥当性を検討していない。

    また、全社的な内部統制及び業務プロセスに関する内部統制に開示すべき重要な不備があると経営者が評価していることを認識しているにもかかわらず、監査手続の見直し等を検討していない。

    さらに、不動産取引において買い手が当該不動産の売戻し権を保有するなど通例でない重要な取引について、当該取引の事業上の合理性を十分に検討していないなど、複数の監査業務において重要な監査手続を行うことなく監査を終了させており、監査の基準に準拠していない監査手続が広範かつ多数認められている。

  • 監査業務に係る審査について、審査担当者は、監査チームが監査上の判断や監査意見の形成を十分かつ適切な監査証拠に基づいて実施しているかを批判的に検討せずに、監査チームの実施した監査手続及びその結果や判断を容認している。

    このため、審査担当者は、上記2で記載した重要な監査手続に関して、審査資料に監査上の重要事項等として記載されているにもかかわらず、審査で重要な不備を指摘していないほか、今回の審査会の検査で認められた監査実施上の多くの問題点を発見・抑制できておらず、当監査法人の審査態勢は、極めて不十分である。

  • 品質管理責任者である総括代表社員は、前回の審査会検査及び日本公認会計士協会による品質管理レビューでの指摘を踏まえ改善措置を行ったとしているが、指摘の趣旨を十分に理解せずに、研修による周知や、改善事項チェックリストによる点検等の指示を行っているなど形式的な対応にとどまっており、実効性ある改善措置がとられていない。

    また、定期的な検証を行う担当者は、監査チームの判断を批判的に検討していないことから、多数の監査調書の不備や、継続企業の前提に係る検討において、監査チームが被監査会社の事業計画を検証していないといった重要な不備を指摘できていない。

    このように、当監査法人の改善に向けた取組は実効性がなく、極めて不十分である。

以上

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