平成29年2月3日
金融庁

株式会社オプトロムに係る四半期報告書等の虚偽記載に対する課徴金納付命令の決定について

金融庁は、証券取引等監視委員会から、(株)オプトロムに係る四半期報告書等の虚偽記載に係る検査結果に基づく課徴金納付命令の勧告新しいウィンドウで開きますを受け、平成27年9月18日に審判手続開始の決定(平成27年度(判)第13号金融商品取引法違反審判事件)を行い、以後審判官3名により審判手続が行われてきましたが、今般、審判官から金融商品取引法(以下「金商法」といいます。)第185条の6の規定に基づき、課徴金の納付を命ずる旨の決定案が提出されたことから、下記のとおり決定(PDF:380KB)を行いました。

1 決定の内容

被審人に対し、次のとおり課徴金を国庫に納付することを命ずる。

  • (1)納付すべき課徴金の額金9,962万円

  • (2)納付期限平成29年4月4日

2 事実及び理由の概要

別紙のとおり


(別紙1)

(課徴金に係る金商法第178条第1項各号に掲げる事実(以下「違反事実」という。))

被審人(株)オプトロム(以下「被審人」という。)は、宮城県仙台市青葉区上愛子字松原27番地に本店を置き、その発行する株式が名古屋証券取引所セントレックスに上場されていた会社(平成27年10月1日上場廃止)である。

  • 被審人は、平成26年6月第1四半期から同年12月第3四半期において、衛星放送送信事業の譲受のための預託金の支払を装うなどして、新株予約権の割当先である合同会社会社コンシェルジュ(以下「コンシェルジュ」という。)のグループ会社ないしその実質的経営者等に資金を流出させていたが、同流出資金について適切な貸倒引当金繰入額の計上等をしなかったほか、インターネット広告事業に係る提携先に対する長期貸付金について適切な貸倒引当金繰入額の計上等をしなかった。

    これらの結果、被審人は、東北財務局長に対し、下表のとおり、重要な事項につき虚偽の記載がある四半期報告書(以下「開示書類」という。)を提出し、


開示書類

虚偽記載

提出日

書類

会計期間

財務計算に
関する書類

内容(注)

事由

1

平成26年
8月13日

第29期事業年度第1四半期連結会計期間に係る四半期報告書

平成26年4月1日〜平成26年6月30日の第1四半期連結累計期間

四半期連結
損益計算書

連結四半期純損益が▲249百万円であるところを▲170百万円と記載

・貸倒引当金繰入額の過少計上

平成26年4月1日〜平成26年6月30日の第1四半期連結会計期間

四半期連結
貸借対照表

連結純資産額が▲348百万円であるところを▲269百万円と記載

2

平成26年
11月14日

第29期事業年度第2四半期連結会計期間に係る四半期報告書

平成26年4月1日〜平成26年9月30日の第2四半期連結累計期間

四半期連結
損益計算書

連結四半期純損益が▲519百万円であるところを▲424百万円と記載

・貸倒引当金繰入額の過少計上

平成26年7月1日〜平成26年9月30日の第2四半期連結会計期間

四半期連結
貸借対照表

連結純資産額が▲521百万円であるところを▲426百万円と記載

3

平成27年
2月13日

第29期事業年度第3四半期連結会計期間に係る四半期報告書

平成26年4月1日〜平成26年12月31日の第3四半期連結累計期間

四半期連結
損益計算書

連結四半期純損益が▲754百万円であるところを▲646百万円と記載

・貸倒引当金繰入額の過少計上

平成26年10月1日〜平成26年12月31日の第3四半期連結会計期間

四半期連結
貸借対照表

連結純資産額が▲646百万円であるところを▲538百万円と記載

(注)金額は百万円未満切捨てである。また、▲は損益計算書では損失であることを、貸借対照表では債務超過であることを示す。

  • また、被審人は、東北財務局長に対し、

    平成26年2月27日、第一部【証券情報】第3【第三者割当の場合の特記事項】1【割当予定先の状況】「(6)割当予定先の実態」の欄において、割当予定先であるコンシェルジュについて、信用調査会社から、コンシェルジュの親会社に反社会的勢力等や違法行為との関わりに懸念がある人物との関係が指摘され、コンシェルジュが増資引受先として適格な相手方と言うことはできない旨の調査結果を得ていたにもかかわらず、その事実を記載することなく、当該欄に調査結果として「当該割当予定先の…主要株主が反社会的勢力等や違法行為に関わりを示す情報に該当はありませんでした。」と記載し、あたかもコンシェルジュの上記親会社が反社会的勢力等や違法行為と何らの関係も有していないことが確認されたかのように記載するとともに、第一部【証券情報】第1【募集要項】2【新規発行による手取金の使途】「(1)【新規発行による手取金の額】」の欄の「発行諸費用の概算額」に掲記された「(注)3.」において、割当予定先の新株予約権の行使に際して払い込まれた金額の5.5%相当額(消費税別)のファイナンシャル・アドバイザリー費用のうち、同払込金額の5%相当額(消費税別)は、ファーストメイク・リミテッド(株)(以下「ファーストメイク」という。)を通じて、上記反社会的勢力等や違法行為との関わりに懸念がある人物が預金口座や会社印を管理、利用することができる立場にあった(株)ヴォロンテ(以下「ヴォロンテ」という。)に支払うことを企図していたが、その事実を記載することなく、「本新株予約権の行使に比例し、割当予定先の当該行使額の5.5%(消費税別)が株式会社ファーストメイク・リミテッドに対するアドバイザリー費用となっております。」と記載した有価証券届出書(新株予約権証券)を提出し、同有価証券届出書に基づく募集により、平成26年3月31日、2万9500個の新株予約権証券を5億353万5500円(新株予約権の行使に際して払い込むべき金額を含む。)で取得させ、

    平成27年3月9日、第29期第3四半期報告書を組込情報とする有価証券届出書(株式)を提出し、同有価証券届出書に基づく募集により、同年3月27日、5036万株の株式を8億1583万2000円で取得させ、

    平成27年3月9日、第29期第3四半期報告書を組込情報とする有価証券届出書(新株予約権証券)を提出し、同有価証券届出書に基づく募集により、同年3月27日、4万4532個の新株予約権証券を7億6149万7200円(新株予約権の行使に際して払い込むべき金額を含む。)で取得させ、

    もって重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により有価証券を取得させた。

(違反事実認定の補足説明)

  • 争点

    • 被審人は、各違反事実の対象とされた各四半期報告書(以下、「本件各四半期報告書」という。)及び各有価証券届出書(以下、平成26年2月27日提出に係る有価証券届出書を「本件有価証券届出書」といい、平成27年3月9日提出に係る有価証券届出書と併せて「本件各有価証券届出書」という。)について、いずれも「重要な事項につき虚偽の記載」があることを争っており、具体的には、以下の点を争っている。

      • (1)本件各四半期報告書及び第3四半期報告書を組込情報とする平成27年3月9日提出の有価証券届出書について

        違反事実第1記載のインターネット広告事業に係る提携先に対する長期貸付金につき、適切な貸倒引当金繰入額の計上等をしなかったこと(以下「争点(一)」という。)

      • (2)本件有価証券届出書について

        違反事実第2の第1項において引用されている各記載に虚偽があったこと(以下「争点(二)」という。)

    • 以下、上記争点(一)及び(二)について検討するとともに、本件各四半期報告書及び本件各有価証券届出書につき「重要な事項につき虚偽の記載」があったと判断したことについて、補足して説明する。

  • 争点(一)について

    • 前提となる事実等

      • (1)関係者等

        • 被審人

          被審人は、昭和42年7月31日に設立された株式会社であり、コンパクトディスク及びミニディスクの製造及び販売等の事業を行っていた。

          被審人の株式は、平成18年10月、名古屋証券取引所セントレックスに上場されたが、平成27年10月1日、上場廃止になった。

        • A社及びB社

          A社及びB社は、平成26年4月23日に被審人の全額出資によって設立され、それぞれ被審人の連結子会社となった(なお、以下では、被審人と連結対象となるA社及びB社を総称して「被審人ら」と表すことがある。)。

        • C社

          C社は、平成26年4月14日に資本金800万円で設立された。

      • (2)被審人らとC社らとの間の取引等

        • 平成26年3月頃、被審人は、D社より、インターネットなどにより農業の支援ないしプロモーション活動等を行う事業(以下「農業支援関連事業」という。)につき、事業資金の提供を要請された。当該農業支援関連事業については、D社より、設立後のC社に承継された。

        • 被審人は、同年4月10日及び同月16日、D社の依頼により、E社に対し、農業支援関連事業に関し、合計3240万円を支払った。これらの支出に際して、被審人とD社又はE社との間で、支出の根拠となる個別の合意成立を示す契約書等は作成されなかった。

        • 同年5月から8月にかけて、被審人らより、別表記載のとおり、農業支援関連事業に関し、D社又はC社に対する金員の支出が行われた。ただし、このうち、A社からC社に支出された200万円(別表の番号1)については、農業支援関連事業に関するものではない(なお、同支出は、実質的にA社から金員の転送を行ったに過ぎないものであった。)。これらの支出に際して、被審人らとD社又はC社との間で、支出の根拠となる個別の合意成立を示す契約書等は作成されなかった。

        • 被審人らは、遅くとも同年7月中旬頃になって、C社に対し、それまで農業支援関連事業に支出した資金の使途の状況につき情報提供を求めたが、当該資金の使途に係る領収書等の証憑を得られなかった。

        • 同年9月1日、B社とF社は、紹介店斡旋契約を締結した。同契約は、B社がF社に対して、F社が販売する携帯電話を購入する顧客をF社に紹介する団体及び企業等(以下「紹介店」という。)を斡旋し、紹介店がF社に紹介した顧客がF社から携帯電話を購入すると、その顧客数に応じた紹介手数料をF社がB社に支払うというものである。

        • B社とC社は、同月29日付けで基本合意書(以下「本件合意書」という。)を、同月30日付で債務弁済契約書(以下「本件弁済契約書」という。)を取り交わし、これらに基づく債務弁済契約を締結した(以下「本件債務弁済契約」という。)。

          本件合意書では、上記オの紹介店斡旋契約に基づいてB社が受け取る金員(インセンティブ)の一部をいったんC社に配分し、一定割合を債務の返済分としてB社に戻すことなどが定められた。

          本件弁済契約書では、B社がC社に対して、上記イ及びウの支出の一部に、同契約書作成日に交付した1000万円を加えた合計1億740万円を貸し付けていることが確認され、商事法定利率6%の利息をC社が完済に至るまで支払うことが定められたものの、弁済に関しては、B社がC社に支払う業務報酬の一部を反対債権として当該貸金債権と相殺することにより弁済を受けることができる旨は定められたが、弁済の確定期限や最低額等は定められなかった。

        • 同年10月10日及び24日、B社は、C社に対し、農業支援関連事業に関し、合計1200万円を貸し付けた。

        • B社は、平成27年1月30日、F社より、上記オに係る紹介手数料として、3240円の振込入金を受けた。これは、平成26年12月中に、上記オの紹介店斡旋契約に係る携帯電話の販売が1台あったことによる。その後、同様の販売に基づく入金は確認されていない。

        • C社は、平成27年3月末時点で、債務超過の状態にあった。

      • (3)各四半期における被審人の会計処理(連結ベースのもの。)

        被審人は、上記(2)のとおりC社らに支出した金員に関し、次のとおり各計上した。いずれの四半期においても各会計処理に係る貸倒引当金繰入額の計上はされていない。

        • 第1四半期報告書に係る財務諸表

          被審人は、平成26年4月から同年6月までに被審人及びB社が支出した合計6760万円(上記(2)イ及びウのうち別表の番号2ないし7)のうち、3520万円をソフトウェア仮勘定(資産)、3000万円を広告宣伝費(費用)、240万円(広告宣伝費3000万円の消費税相当額)を仮払消費税(資産)に計上した。なお、A社が支出した200万円(上記(2)ウのうち別表の番号1)については、ソフトウェア仮勘定(資産)として計上され、相手勘定に雑収入及び仮受消費税が計上された。

        • 第2四半期報告書に係る財務諸表

          被審人は、平成26年7月から同年9月までに支出した合計4360万円(上記(2)ウのうち別表の番号8ないし14及びカの交付分)及び第1四半期に計上した上記アのソフトウェア仮勘定のうちA社の計上分を除く3520万円の合計7880万円を長期貸付金(資産)に計上した(ソフトウェア仮勘定について、当該金額分修正した。)。

        • 第3四半期報告書に係る財務諸表

          被審人は、平成26年10月に支出した合計1200万円(上記(2)キ)を長期貸付金(資産)に計上した。

    • 争点(一)の検討(本項で、平成26年の出来事については年を省略する。)

      • (1)本件では、被審人らが農業支援関連事業に関しC社(D社に対する支出及び同社より依頼を受けた支出を含む。)に支出した金員のうち、上記1(2)ウのA社が支出した200万円を除く(訂正について、その相手勘定とともに消去され、貸倒引当金の対象とはならない。)、合計1億2320万円について、被審人が上記1(3)のとおり、貸倒引当金繰入額の計上をしなかったことにつき、貸倒引当金繰入額の過少計上に当たるかが問題となっている。

        被審人は、第1四半期、第2四半期及び第3四半期のいずれにおいても貸倒引当金繰入額を計上しなかった会計処理は適正である旨主張し、各四半期における上記過少計上を争っているので、検討する。

        本件では、以下の会計基準等により、まずは支出金に係る債権の区分が金融商品に関する会計基準(企業会計基準第10号・以下、「金融商品会計基準」という。)の定める貸倒懸念債権に該当するかを判断し、これに該当すると判断された場合には、貸倒引当金として繰り入れるべき金額(貸倒見積高)を算定することになる。

        • 金融商品会計基準は、貸倒懸念債権を(一)「経営破綻の状態には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか」、又は(二)かかる問題が「生じる可能性の高い債務者に対する債権」と定義する(同基準第27項(2))。

          また、「債権の元本の回収及び利息の受取りに係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権」以外の貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定方法は、「債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法」(いわゆる財務内容評価法)によるとされている(同基準第28項(2))。

        • 金融商品会計基準の適用にあたって「参照する必要がある」(同基準第2項(1))とされている金融商品会計に関する実務指針(日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号・以下「実務指針」という。)では、(一)「債務の弁済に重大な問題が生じているとは、現に債務の弁済がおおむね1年以上延滞している場合のほか、弁済期間の延長又は弁済の一時棚上げ及び元金又は利息の一部を免除するなど債務者に対し弁済条件の大幅な緩和を行っている場合が含まれる。」とされ、また、(二)「債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高いとは、業況が低調ないし不安定、又は財務内容に問題があり、過去の経営成績又は経営改善計画の実現可能性を考慮しても債務の一部を条件どおりに弁済できない可能性の高いことをいう。財務内容に問題があるとは、現に債務超過である場合のみならず、債務者が有する債権の回収可能性や資産の含み損を考慮すると実質的に債務超過の状態に陥っている状況を含む。」とされている(同指針第112項)。

          さらに、財務内容評価法を採用する場合について、「債務者の支払能力を総合的に判断する必要がある。債務者の支払能力は、債務者の経営状態、債務超過の程度、延滞の期間、事業活動の状況、銀行等金融機関及び親会社の支援状況、再建計画の実現可能性、今後の収益及び資金繰りの見通し、その他債権回収に関係のある一切の定量的・定性的要因を考慮することにより判断される。(中略)個別に重要性の高い貸倒懸念債権については、可能な限り資料を入手し、評価時点における回収可能額の最善の見積りを行うことが必要である。」などとされている(同指針第114項)。

      • (2)第1四半期について

        • 貸倒懸念債権に該当するか

          被審人らは、第1四半期において、設立されたばかりで資本金800万円であるC社が携わる農業支援関連事業に関し、合計6760万円もの多額の金員を支出したものである。

          それにもかかわらず、上記1(2)の経過によれば、各支出において、支出の根拠となる個別の合意成立を示す契約書等は作成されていなかったものであり、支出の性質を裏付けるやりとりや、多額にわたる支出金の使途が具体的に確認された形跡も見当たらない。そうすると、後に本件債務弁済契約が締結されるまでの間、被審人らの各支出の性質はあいまいとされ、C社による弁済の要否すら明確にされていなかったばかりか、支出の合理性を裏付けるに足りる確認すらなされていなかったというほかない。かえって、後に同契約で弁済の対象とされた3000万円が当初は費用として計上され、また、支出の実態のないものまでソフトウェア仮勘定の名目で資産に計上されていたこと(上記1(2)ウのA社が支出した200万円に係る会計処理)からすれば、被審人において、一部の支出金が返還されないことを容認していたことすらうかがえる。

          一方で、上記1(2)エの事実から、C社が、第1四半期の時点から、支出を受けた資金を使途不明のまま費消していたことを推認できることからすれば、C社において、上記支出金の返済が困難であったことも指摘できる。そうすると、当該支出にかかる債権は、弁済の可能性が不確かで、そのため回収方法の取り決めもなく、さらには債務者が支出金を費消して返済が困難な状態にあったものであって、客観的に見て、少なくとも、債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高いものと評価すべきであり、貸倒懸念債権に該当する。

        • 貸倒引当金繰入額について

          C社において、第1四半期の時点から支出金の返済が困難な状態にあったことは上記アで認定したとおりである。なお、第1四半期から第3四半期を通じて、各支出について担保や保証が存在したことを認めるに足りる証拠はない。

          上記アでも認定したように、被審人は、支出時点でなすべき確認等を怠っていたものであり、支出金の返還を根拠づけるに足りる合意等もなく不合理な支出をしていたというべきであって、これにより支出金の返還が見込まれない相手に資金を支出したものと評価せざるを得ない。

          そうすると、上記のような支出金を債権として資産計上する判断をする場合には、被審人において、全額について貸倒のおそれがあったと見積もることができたというべきである。

          したがって、貸倒見積高は債権全額とすべきである。

      • (3)第2四半期について

        • 貸倒懸念債権に該当するか

          被審人らは、第2四半期において、C社に対し、第1四半期での支出に加え、さらに合計4360万円もの多額の資金を支出したものであるところ、上記1(2)オ及びカの経緯を除けば、第1四半期における貸倒懸念債権該当性判断の基礎とした状況(上記(2)ア)と同様に評価される状況においてさらに支出金を追加したものである。

          そして、本件債務弁済契約により定められた弁済条件では、弁済の確定期限や最低額等は定められておらず、B社がC社に支払う業務報酬の一部を反対債権として相殺することで弁済することができる旨が定められるなど回収方法が不安定なものである上、F社との間の紹介店斡旋契約に基づいてB社が受け取る紹介手数料収入だけが弁済の原資とされており、第2四半期中に同契約による手数料収入の実績はなく、将来その見込みがあったと認めるに足りる事情もうかがわれないことにも照らすと、本件債務弁済契約の対象となった貸付金について、同契約により、具体的な回収の見込みがあったとは評価できない。

          このように本件債務弁済契約の対象となった貸付金の回収の見込みが乏しいことに照らせば、第2四半期時点でのC社については、貸付金を返済することが困難な状態にあったものというべきである。

          そうすると、第2四半期までの支出に係る債権は、貸付金として回収の見込みがある弁済条件が定められていたものとはいえず、さらには債務者において従前から支出金を使途不明のまま費消しており、支出金を返済することが困難な状態にあったものであって、客観的に見て、少なくとも、債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高いものと評価すべきであり、貸倒懸念債権に該当する。

        • 貸倒引当金繰入額について

          C社が第2四半期の時点においても支出金を返済することが困難な状態にあったことは上記アで認定したとおりである。被審人は、第2四半期の時点で、支出に係る金員の使途をC社が明らかにすることができないことを現実に把握しており、上記アで述べたように、第1四半期における貸倒懸念債権該当性判断の基礎とした状況と同様に評価される状況においてさらに支出金を追加したこと、債務弁済契約により定めた弁済条件による具体的な回収の見込みがあったとは認められないことにも照らすと、全額について貸倒のおそれがあったと見積もることができたというべきである。

          したがって、貸倒見積高は債権全額とすべきである。

      • (4)第3四半期について

        • 貸倒懸念債権に該当するか

          被審人らは、第2四半期において貸倒懸念債権該当性判断の基礎とした状況(上記(3)ア)から特段状況の変化が認められない中で、第3四半期において、C社に対し、第1四半期及び第2四半期での支出に加え、さらに合計1200万円の資金を支出しているところ、F社との間の紹介店斡旋契約に基づいてB社が受け取る紹介手数料収入の実績はあったものの、本件債務弁済契約で定めた利息分にも到底及ばない金額であったこと(上記1(2)ク)も考慮すると、具体的な回収の見込みがあったとはいえず、客観的に見て、少なくとも、債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高いものと評価すべきである。

          したがって、第3四半期までの支出に係る債権は、貸倒懸念債権に該当する。

        • 貸倒引当金繰入額について

          被審人は、第2四半期において貸倒引当金繰入額に係る判断の基礎とした状況(上記(3)イ)と特段状況の変化が認められない中で、さらに追加で資金を支出しているのであるから、全額について貸倒のおそれがあったと見積もることができたというべきである。

          したがって、貸倒見積高は債権全額とすべきである。

      • (5)上記検討の結果によれば、被審人が上記1(3)のとおり、各支出金の貸倒引当金繰入額の計上をしなかったことにつき、同支出金全額分の貸倒引当金繰入額の過少計上が認められる。

  • 争点(二)について

    • 新株予約権の割当予定先に係る記載について

      • (1)前提となる事実

        • 被審人とコンシェルジュとの関係

          被審人は、平成25年11月上旬頃、G社の実質的経営者であったHらの紹介を受け、G社及びそのグループ会社から資金調達をする協議を開始した。被審人とG社との協議を経て、G社のグループ会社であるI社の完全子会社であるコンシェルジュ(なお、I社はG社の完全親会社でもある。)が新株予約権の割当先の候補となった。

        • 被審人による調査依頼

          被審人は、平成25年11月、コンシェルジュ及びその関係者について、信用調査会社に反社会的勢力との関係の有無及び違法行為の有無に係る調査を依頼した。

          なお、上記調査依頼に基づくコンシェルジュ及び同代表者の調査に係る同年12月6日付け調査報告書においては、コンシェルジュ、同代表取締役及び同人が経営する法人についていずれも反社的懸念はないとされている。

        • コンシェルジュの関係者の調査結果の内容

          信用調査会社は、上記イの依頼に基づき調査を行い、平成25年12月17日付け調査報告書(以下「本件調査報告書」という。)において、コンシェルジュの親会社ないしグループ会社について、概要、以下のような調査内容を示した。なお、本件調査報告書の調査結果を表示する欄(報告書冒頭に対象となる法人または個人の基本情報及び結果が表形式で表示され、その後に文章で内偵調査の詳細等が記載される形式となっていた。)においては、G社及びI社の反社会的勢力との関係の有無並びに両会社の代表取締役であったJの反社会的勢力との関係の有無及び違法行為の有無について、いずれも「<該当なし>」との表示がされていた。

          • (ア)Hについて

            Hは、平成2×年×月以降、約40社の会社分割を手掛けたが、その手口は窮地に陥っている経営者の弱みに付け込んだ悪辣な詐欺的行為として社会問題にまで発展した。また、Hや関連会社の代表者が平成2×年×月に弁護士法違反(非弁行為)により逮捕されている。暴力団や金融ブローカー等に詳しい経営コンサルタントは、Hが暴力団と関わりを持っているとの噂を述べていた。内偵調査では、暴力団等反社会的勢力との関わり・同勢力とのトラブルは当局に把握されていないようであるが、当局担当者は「暴力団と何らかの関わりを持っているものと見ているが、なかなか尻尾を出さないことから証明できかねている。」と述べた。

          • (イ)Jについて

            Jについては、暴力団等反社会的勢力とのかかわりについての情報や噂は認められないが、Hの傀儡としてG社の代表取締役に就任しているものであり、G社の実質的経営者はHである。

          • (ウ)G社の割当先としての適格性について

            Jについての反社的懸念はないものと判断されたが、Hは反社的にも人物的にも懸念を要する人物と判断される。Hの傀儡であるJについてはHの影響下にある人物と認められることから、Hと同様に要注意人物と判断すべきであり、G社及び代表取締役のJは、増資引受先として適格な相手方と言うことはできない。

        • 上記ウの調査報告書の記載を受けて、被審人は、平成25年12月24日、上記ウ(ア)ないし(ウ)のうち、Hに関する記載を大幅に削除した修正案を信用調査会社に送付し、調査報告書の修正を求めたが、同月25日、同社は、修正を拒絶した。

        • 本件有価証券届出書における記載内容

          被審人は、平成26年2月27日に東北財務局長に対して提出した有価証券届出書の「(6)割当予定先の実態」の欄において、「当社はコンプライアンスの遵守から、第三者の信用調査会社(略)に調査を依頼しました。その内容は、対象企業・対象個人に係る各関係機関への行為情報、訴訟歴確認の照会等です。その調査結果として、当該割当予定先の役員又は主要株主が反社会的勢力等や違法行為に関わりを示す情報に該当はありませんでした。」と記載した。

      • (2)新株予約権の割当予定先に係る記載に虚偽があること

        上記(1)ウ(ア)ないし(ウ)のとおり、本件調査報告書の記載中には、割当予定先であったコンシェルジュの完全親会社であるI社の代表取締役であったJについて、逮捕歴があり反社的懸念を要するHの影響下にあることなどが指摘され、「増資引受先として適格な相手方と言うことはできない」と明示されている。

        それにもかかわらず、上記(1)オのとおり、本件有価証券届出書には、割当予定先に係る調査結果として、「割当予定先の役員又は主要株主が反社会的勢力等や違法行為に関わりを示す情報に該当はありませんでした。」と記載されたものであるから、本件有価証券届出書には事実と異なる虚偽の記載があったものと認められる。

    • 新規発行による手取金の使途に係る記載について

      • (1)前提となる事実

        • アドバイザリー業務契約等の締結

          • (ア)G社と資金調達を協議していた被審人の役員であったKは、平成25年11月10日、被審人の代表取締役社長であったLらに対し、ファイナンシャル・アドバイザーとしてG社が検討されており、手数料として行使金額の5%が予定されている旨のメールを送信した。

            その後、同年12月16日までの間に、Kは、Lらに対し、ファイナンシャル・アドバイザーをファーストメイクに変更する旨のメール及び手数料を5%から5.5%に変更する旨のメールの送信を行い、Lは了承した。なお、上記1(1)アのとおり、G社のグループ会社が新株予約権の割当先候補となり、被審人とG社との協議を経て、最終的にコンシェルジュが同割当予定先となったものである。

          • (イ)一方で、Kは、コンシェルジュやファーストメイクの役員との間でファイナンシャル・アドバイザーのアドバイザリー業務に関する協議を行い、その結果、同年12月末頃、被審人とファーストメイクとの間でアドバイザリー業務契約書が取り交わされ、その後、平成26年1月上旬頃、ファーストメイクとヴォロンテとの間でこれを前提とするアドバイザリー契約書が取り交わされた。

            両契約においてアドバイザリー業務として定められた内容は同一であり、ファーストメイクが受託したアドバイザリー業務がそのままヴォロンテに委託される内容であった。

            両契約のアドバイザリー手数料は、ファーストメイクが被審人から受け取る成功報酬につき取引金額の5.5%、ヴォロンテがファーストメイクから受け取る成功報酬につき取引金額の5%と定められた。

          • (ウ)ファーストメイクは、上記(イ)の時点で、被審人との取引関係はあったものの、ヴォロンテないしG社との取引はなく、被審人をG社に紹介した者やHとの関わりも無かった。

          • (エ)Hは、ヴォロンテにおいて、同社の預金口座の一部や会社印を利用することができる立場にあった。

          • (オ)上記(イ)で定められたアドバイザリー手数料は、被審人からファーストメイクの口座に入金後、平成26年4月から5月にかけて、1053万円がヴォロンテ口座に送金され、さらに、同年9月11日には、ファーストメイク口座から出金された805万9500円が現金でヴォロンテに支払われている。

        • 本件有価証券届出書における記載内容

          • (ア)被審人は、本件有価証券届出書の「【新規発行による手取金の額】」の欄の「発行諸費用の概算額」に掲記された「(注)3.」において、「本新株予約権の行使に比例し、割当予定先の当該行使額の5.5%(消費税別)が株式会社ファーストメイク・リミテッド(中略)に対するアドバイザリー費用となっております。」とだけ記載し、上記ア(オ)のようにファーストメイクに支払われたアドバイザリー手数料の大部分が、ファーストメイクを通じ、ヴォロンテに支払われることは記載しなかった。

          • (イ)被審人は、上記(ア)の記載に続けて、アドバイザリー費用が行使額の5.5%となったことについて、払込金額の総額とファイナンシャル・アドバイザーの業務量を勘案し、協議の上決定したなどと記載した。

      • (2)新株予約権の割当予定先に係る記載に虚偽があること

        上記(1)ア(イ)の各契約の内容や同(ウ)に係るファーストメイクとヴォロンテとの関係及び同(オ)の資金の流れからすると、形式的には、被審人とファーストメイク、ファーストメイクとヴォロンテの間でそれぞれ契約が締結されているものの、両契約においては、新株予約権の行使額の5.5%とされたアドバイザリー手数料のうち、その大半を占める5%をヴォロンテが最終的に受領することが合意されており、また、同(ウ)に係るファーストメイクとG社らとの関係や、同(ア)の経緯及び同(エ)に係るHとヴォロンテの関係等を併せ考えると、G社ないしHとの交渉に係る実際のアドバイザリー業務を担う立場もヴォロンテであることが合意されていたというべきであり、ファーストメイクは、形式的に介在しているだけであったというほかない。

        以上によれば、実質的には、同(イ)の契約締結時点で、被審人とファーストメイク及びヴォロンテとの間で、被審人からヴォロンテに本件アドバイザリー費用の大半を支払うことが合意されており、そのことが被審人において企図されていたとみるのが相当である。

        一方で、上記(1)イ(イ)の記載内容を見ると、手取金の使途に係るアドバイザリー費用については、ファイナンシャル・アドバイザーの業務量に関連するものとして特定されており、その支払先として表示すべき相手は、まずはヴォロンテであったといわざるを得ない。

        それにもかかわらず、本件有価証券届出書の上記(1)イ(ア)の部分には、アドバイザリー費用の支払先がファーストメイクのみであってヴォロンテではないかのような記載がされており、アドバイザリー費用とされた新株予約権の行使額の5.5%全てがファーストメイクに支払われるかのように記載された本件有価証券届出書には、事実と異なる虚偽の記載があったと認められる。

  • 「重要な事項につき虚偽の記載」があるかについて

    • 「重要な事項」について

      開示制度は、現に投資している者だけでなく、これから投資することを検討している者を含めた投資者全体が正確な情報に基づき投資できるなどの利益を享受できる市場の前提である。法は、このような開示制度の実効性を確保するため、虚偽記載のある開示書類等を提出した発行者に対し、課徴金を課すこととしたものである。

      そうすると、金商法の「重要な事項」とは、投資者一般を基準として、投資者の投資判断に影響を与えるような基本的事項、すなわち、その事実について真実の記載がされれば投資判断が変わるような事項をいうものと解するのが相当である。

    • 本件各四半期報告書及び第3四半期報告書を組込情報とする平成27年3月9日提出の有価証券届出書について

      本件においては、上記第2のとおり認められる争点(一)に係る貸倒引当金繰入額の過少計上のみならず、関係各証拠によれば、被審人において、衛星放送送信事業の譲受のための預託金の支払を装うなどして、新株予約権の割当先であるコンシェルジュのグループ会社ないしその実質的経営者であるHに4000万円の資金を流出させ、預託金名目で支払を受けたG社ないしHによって当該資金が費消されたこと、また、これに関連してコンシェルジュに対してコミットメント・フィーが支払われたかのように装うなどした経過で167万1000円の不明金が発生していたこと、これらの各事実に対応して、第1四半期において4000万円、第2四半期においてさらに167万1000円の貸倒引当金繰入額の計上がそれぞれ必要であったこと、これらが貸倒引当金繰入額の過少計上にあたることが各認められる(被審人は、争点(一)以外の貸倒引当金繰入額の過少計上については争わない。)。

      これらに係る連結四半期純損益及び連結純資産額の記載が虚偽記載の対象となる。

      かかる虚偽の記載が「重要な事項」に該当するか、以下、検討する。

      • (1)本件における虚偽記載の内容(以下の各金額は、100万円未満を切捨て。差異率は、差額を訂正前の金額で除し、小数点第2位を四捨五入)

        • 第1四半期報告書

          四半期連結損益計算書の連結四半期純損益が2億4900万円の損失であるところを1億7000万円の損失と記載(差額7900万円、差異率46.5%)し、四半期連結貸借対照表の連結純資産額が3億4800万円の債務超過であるところを2億6900万円の債務超過と記載(差額7900万円、差異率29.4%)した。

        • 第2四半期報告書

          四半期連結損益計算書(第2四半期累計期間)の連結四半期純損益が5億1900万円の損失であるところを4億2400万円の損失と記載(差額9500万円、差異率22.4%)し、四半期連結貸借対照表の連結純資産額が5億2100万円の債務超過であるところを4億2600万円の債務超過と記載(差額9500万円、差異率22.3%)した。

        • 第3四半期報告書

          四半期連結損益計算書(第3四半期累計期間)の連結四半期純損益が7億5400万円の損失であるところを6億4600万円の損失と記載(差額1億800万円、差異率16.7%)し、四半期連結貸借対照表の連結純資産額が6億4600万円の債務超過であるところを5億3800万円の債務超過と記載(差額1億800万円、差異率20.1%)した。

      • (2)「重要な事項」に該当すること

        本件においては、連結四半期純損益額及び連結純資産額について虚偽の内容が含まれていたところ、これらは当該企業の財政状態や経営成績を端的に示すものであるから、投資者が投資判断をする上で重要な要素であるといえる。そして、虚偽の金額と真正な金額との乖離の程度も、金額にして、7900万円から1億800万円と多額であり、差異率をみても、小さくて16.7%、最も大きいもので46.7%に及んでいる。

        このように虚偽記載に係る項目及び各項目の差額や差異率に鑑みると、本件各四半期報告書及び第3四半期報告書を組込情報とする平成27年3月9日提出の有価証券届出書に係る虚偽記載は、いずれも、投資者一般を基準として、真実の記載がされれば投資判断が変わるような事項についてのものといえるから、「重要な事項」につき虚偽記載があると認められる。

    • 本件有価証券届出書について

      上記第3のとおり、被審人が提出した発行開示書類には、新株予約権の割当予定先の実態及び新規発行による手取金の使途について虚偽の記載が含まれていたものである。

      かかる虚偽の記載が「重要な事項」に該当するか、以下、検討する。

      • (1)関連する規則等

        • 企業内容等の開示に関する内閣府令(以下「開示府令」という。)の定め

          • (ア)開示府令においては、暴力若しくは威力を用い、又は詐欺その他の犯罪行為を行うことにより経済的利益を享受しようとする個人、法人その他の団体を「特定団体等」と定義し、有価証券届出書の割当予定先の実態について、割当予定先が特定団体等であるか否か、及び割当予定先が特定団体等と何らかの関係を有しているか否かについて確認した結果並びにその確認方法を具体的に記載することが求められている(開示府令第8条第1項第1号、第二号様式「記載上の注意」(23-3)g)。

          • (イ)また、開示府令においては、有価証券届出書の提出者が取得する手取金の使途について、設備資金、運転資金、借入金返済、有価証券の取得、関係会社に対する出資又は融資等に区分し、手取金の総額並びにその使途の区分ごとの内容、金額及び支出予定時期を具体的に記載することが求められている(開示府令第8条第1項第1号、第二号様式「記載上の注意」(20)a)。

        • 名古屋証券取引所(以下「名証」という。)における規則等

          • (ア)適時開示等に関する規則及びその取扱い

            名証は、上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則(以下「適時開示規則」という。)第40条において、「上場会社は、その経営に反社会的勢力関与を受けているものとして当取引所が定める関係を有してはならない。」旨定め、当該関係として、上場会社、上場会社の親会社等、上場会社の子会社又は上場会社の役員について、いずれかが暴力団等反社会的勢力(暴力団、暴力団員又はこれらに準ずる者を指す。)である関係若しくはこのほか暴力団等反社会的勢力が上場会社の経営に関与している関係と規定している(上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則の取扱い19)。

            また、適時開示規則第46条は、「上場会社は、反社会的勢力による被害を防止するための社内体制の整備及び個々の企業行動に対する反社会的勢力の介入防止に努めなければならない。」と定める。

            なお、これらの定めは、企業行動規範として定められたものである。

            さらに、第三者割当(新株予約権の募集を含む。)にあたっては、取引所所定の「割当てを受ける者と反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」の提出が定められており(上場有価証券の発行者の会社情報の適時開示等に関する規則の取扱い10(1)a(g)、適時開示規則第2条(1)a)、当該確認書では、「当社が、平成○○年○○月○○日に適時開示を実施する第三者割当に関し、割当て先、当該割当て先の役員又は主要株主(中略)が暴力団、暴力団員又はこれらに準ずる者(以下「暴力団等」という。)である事実、暴力団等が割当て先の経営に関与している事実、割当て先、当該割当て先の役員又は主要株主が資金提供その他の行為を行うことを通じて暴力団等の維持、運営に協力若しくは関与している事実及び割当て先、当該割当て先の役員又は主要株主が意図して暴力団等と交流を持っている事実は、当社の把握する限りありません。」「したがって、当社の把握する限りにおいて、割当て先、当該割当て先の役員又は主要株主と暴力団等とは一切関係がないことを確認いたします。また、新聞報道その他により割当て先、当該割当て先の役員又は主要株主と暴力団等との関係について当社が新たに情報を得た場合には、直ちにその旨及びその内容を貴取引所に報告するとともに、可能な限り速やかに当該情報に係る事実関係を把握・確認し、貴取引所に報告いたします。」などと記載すべきことが定められている。

          • (イ)上場廃止基準

            名証の株券上場廃止基準(被審人が上場していたセントレックスにつき、第2条の2第1項(5)、第2条第1項(12)及び同(19))では、「上場会社が上場契約について重大な違反を行った場合(後略)」または「上場会社が当取引所が定める反社会的勢力との関係を有している事実が判明した場合において、その実態が当取引所の市場に対する株主及び投資者の信頼を著しく毀損したと当取引所が認めるとき」には、「その上場を廃止するものとする。」とされている。

        • 上記イに係る名証の公表内容

          名証は、平成27年8月31日、被審人の株式を整理銘柄に指定すること等を公表したが、その中で、企業行動規範及び上場廃止基準で上場会社の反社会的勢力等との関与の禁止等を定めていること、第三者割当を行う際には割当予定先及びその関係者が反社会的勢力等との関与がないことの確認書を上場会社が当取引所に提出することを義務付けていることを挙げ、本件調査報告書の調査結果を踏まえると第三者割当の実施を到底容認できるものではなく、被審人がその内容の真偽につき十分な検証を行うことがその実施の前提となるものであったことなどから、被審人が上場契約について重大な違反を行った場合に該当するとして、被審人株式の上場を廃止するのが適当であるとの見解を示した。

      • (2)「重要な事項」に該当すること

        • 開示府令において、割当予定先の実態につき、特定団体等の該当性を確認することなどを求めているのは、市場の公正性を担保するためのものであり、手取金の使途につき、区分に応じた具体的な記載が求められていることについても、第三者割当に係る開示の充実を図るためのものであると解されることからすれば、開示府令によって記載が求められている各事項は、投資者の投資判断に影響を与えるものであることが前提とされているものである。

          その上で、上記(1)イの名証の規則等もみると、反社会的勢力との関係について関与の禁止のみならず関与を避けるための体制整備や介入防止への努力も企業行動規範の一内容となっている上、第三者割当にあたっては、当該上場会社が把握した限りで割当先が暴力団等と関わりがないことなどを保証する確認書の提出まで求めていることからすると、上場会社において、反社会的勢力等との関与の有無については、確認を適正に経たかを含め、株式の上場維持等にあたって重要なものと捉えられていたものといえ、投資者の投資判断にも少なからず影響するものであったというべきである(なお、上記(1)ウの名証の公表内容もかかる理解を裏付けるものである。)。

        • 本件についてみると、被審人は、新株予約権の割当予定先の実態や新規発行による手取金の使途を偽ったものであるところ、新株予約権の割当先の実態に関する虚偽記載は、その前提となる本件調査報告書の内容(上記第3の1(1)ウ)に割当先と特定団体等との何らかの関係を懸念する内容が含まれ、調査を行った信用調査会社によって当該内容の修正が拒絶されている(同エ)のであるから、市場の公正性を担保するために適正な確認を経る必要があったといえる。それにもかかわらず、被審人は、かかる確認をせずに安易に問題がない旨の表示をしたのであるから、これが上場契約違反の一要素ともなったことも併せ考慮すれば、開示府令や名証の規則等の趣旨に反して、投資者の投資判断に必要となる重要な情報を与えない結果となったことは明らかというべきである。また、新株予約権の新規発行による手取金の使途に関する虚偽記載も、新株予約権の割当先の実態の記載において確認結果に問題が残る人物(H)に関連する法人に対し、発行による手取金の一部が支払われるとの事実を隠ぺいする表示となっていたのであるから、新株予約権の割当先の実態に関する虚偽記載と相俟って投資者の投資判断に必要となる重要な情報を与えない結果となったというべきである。

          そうすると、両虚偽記載は、投資者において到底容認できる内容ではなく、真実の記載がされれば投資判断が変わるものというべきである。

        • したがって、本件有価証券届出書に係る虚偽記載は「重要な事項」に係るものと認められる。

別表


支払元

支払先

年月日

金額

1

平成26年5月15日

200万円

2

平成26年5月21日

200万円

3

平成26年5月30日

150万円

4

平成26年6月2日

100万円

5

平成26年6月3日

950万円

6

平成26年6月13日

500万円

7

平成26年6月24日

1620万円

8

平成26年7月1日

300万円

9

平成26年7月7日

480万円

10

平成26年7月11日

1100万円

11

平成26年7月31日

180万円

12

平成26年8月6日

100万円

13

平成26年8月8日

1000万円

14

平成26年8月28日

200万円


(別紙2)

(課徴金の計算の基礎)

別紙1の第1の事実の表に掲げる事実につき

  • 番号1、同2及び同3

    金商法第172条の4第2項の規定により、当該法人の第29期事業年度第1四半期連結会計期間に係る四半期報告書(以下「第29期第1四半期報告書」という。)、同事業年度第2四半期連結会計期間に係る四半期報告書(以下「第29期第2四半期報告書」という。)及び同事業年度第3四半期連結会計期間に係る四半期報告書(以下「第29期第3四半期報告書」という。)に係る課徴金について、個別決定ごとの算出額は、

    当該法人が発行する算定基準有価証券の市場価額の総額に10万分の6を乗じて得た額

    第29期第1四半期報告書 72,764円

    第29期第2四半期報告書 62,649円

    第29期第3四半期報告書 112,586円

    6,000,000円

    を超えないことから、

    第29期第1四半期報告書については、6,000,000円の2分の1に相当する額である3,000,000円

    第29期第2四半期報告書については、6,000,000円の2分の1に相当する額である3,000,000円

    第29期第3四半期報告書については、6,000,000円の2分の1に相当する額である3,000,000円

    となるが、第29期第1四半期報告書、第29期第2四半期報告書及び第29期第3四半期報告書が、いずれも第29期事業年度に係るものであることから、金商法第185条の7第6項の規定により、6,000,000円を個別決定ごとの算出額に応じて按分することとなり、

    第29期第1四半期報告書に係る課徴金の額は

    6,000,000×3,000,000/(3,000,000+3,000,000+3,000,000)

    =2,000,000円

    第29期第2四半期報告書に係る課徴金の額は

    6,000,000×3,000,000/(3,000,000+3,000,000+3,000,000)

    =2,000,000円

    第29期第3四半期報告書に係る課徴金の額は

    6,000,000×3,000,000/(3,000,000+3,000,000+3,000,000)

    =2,000,000円

    となる。

別紙1の第2に掲げる事実につき

  • 金商法第172条の2第1項第1号の規定により、重要な事項につき虚偽の記載がある発行開示書類に基づく募集により取得させた株券等の発行価額の総額の100分の4.5に相当する額が課徴金の額となることから、

    平成26年2月27日提出の有価証券届出書(新株予約権証券)に係る課徴金の額は、

    503,535,500円×4.5/100=22,659,097円

    について、金商法第176条第2項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて、22,650,000円

    平成27年3月9日提出の有価証券届出書(株式)に係る課徴金の額は、

    815,832,000円×4.5/100=36,712,440円

    について、金商法第176条第2項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて、36,710,000円

    平成27年3月9日提出の有価証券届出書(新株予約権証券)に係る課徴金の額は、

    761,497,200円×4.5/100=34,267,374円

    について、金商法第176条第2項の規定により1万円未満の端数を切り捨てて、34,260,000円

    となる。

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局総務課審判手続室

(内線2398、2404)

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