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平成18年4月5日
金融庁

JPモルガン信託銀行株式会社に対する行政処分について

I .命令の内容

銀行法第26条第1項及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第8条の2、並びに、金融機関等による顧客等の本人確認等及び預金口座等の不正な利用の防止に関する法律(以下、「本人確認法」という。)第9条の規定に基づく命令

1.不動産管理処分信託及び不動産に関連する業務の新規受託業務を平成18年4月13日から平成18年10月12日までの間は行わないこと。

2.法令等遵守(コンプライアンス)、オペレーティング及びインフォメーション・リスク管理において、JPモルガン信託銀行(以下、「当行」という。)とJPモルガン証券株式会社(以下、「証券会社」という。)等との内部管理業務の兼職体制を解消し、態勢を整備するとともに、信託受託のための調査・審査・管理の態勢を構築して、業務の適切な運営に必要な人員の確保・維持と責任体制を明確化すること。

3.信託銀行として、公正かつ適正な業務運営を実現するため、以下の観点から経営管理(ガバナンス)態勢及び法令等遵守(コンプライアンス)態勢(人的構成と体制の構築を含む。)を確立すること。

  • (1)法令等遵守にかかる経営姿勢の明確化、当行の取締役及び監査役による責任ある経営・牽制態勢の構築、並びに、これらを着実に実現するための当行の組織・機構、業務運営方法の見直し

  • (2)JPモルガン・チェース・グループによる当行への業務運営上の統括管理関係の見直し、並びに、当行の独立した経営管理・内部管理態勢の構築・整備と責任体制の明確化

  • (3)役職員の法令諸規則に対する理解と遵守の徹底

  • (4)本人確認法第3条に基づく本人確認義務及び第4条に基づく本人確認記録の作成義務等の違反を是正するため、本人確認事務及び顧客管理体制にかかる組織・運営面の抜本的な見直し

  • (5)資産流動化関連部門における信託業務の取引関係者に対する適切な説明や適正な情報開示のための態勢の構築

  • (6)業務運営上必要な情報管理のための隔壁・弊害防止措置、及び、顧客情報の管理態勢の整備・強化(適正なシステム管理態勢の整備を含む。)

  • (7)業務運営上の管理失当、事務過誤等の発生状況の適切な把握、発生原因の究明、再発の防止を着実に行うための態勢の整備・強化と責任体制の明確化

  • (8)監査を適正に行うための態勢の整備、並びに、適正な監査及びフォローアップの実施

4.法令違反を含む、下記 II .処分の理由、並びに、検査結果通知及び報告命令に記載された事項にかかる問題等の原因となった役職員の責任の所在の明確化。

5.上記3.及び4.並びに、検査結果通知及び報告命令に記載された事項にかかる業務の改善計画(改善計画を着実に実施するための社内の管理態勢の整備及び実効性確保にかかる責任の分担の明確化を含む。)を平成18年5月8日までに提出し、直ちに実行すること。

6.上記5.の実施後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、平成18年9月末を第一回目とし、以後3ヵ月毎に計画等の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、翌月15日までに報告すること。

II .処分の理由

当庁の今般の立入検査(平成17年9月22日通知)及びその後の報告徴求により、当行の法令等遵守(コンプライアンス)及び経営管理(ガバナンス)態勢などに以下の重大な問題が認められたこと。

特に、当行の資産流動化関連部門の営業、受託審査、受託後の運営・管理等については、取組方針の抜本的な見直し・改善、及び、態勢(人的構成と体制の構築を含む。)の構築・整備に専念させる必要性が確認されたこと。

1.法令違反等

  • (1)不動産を原資産(信託財産)とする流動化・証券化案件の不動産管理処分信託業務において、当行は引受けを行おうとする不動産の受託審査・査定等を行わずして(人的構成や体制を整備せずして)、その結果生じる対象物件の瑕疵やリスクを信託受益者等に転嫁して、受託による収益を収受する営業を推進している。

    当庁の今般の立入検査等により、当行が受託した信託財産(不動産)の状況や組成内容を検証した結果、適法状態への是正が困難な違法建築、収益還元法等を利用した物件評価の嵩上げ、流動化や開発等に不適の不動産や種地を使った金融取引、信託を導管体に物件を短期売買する租税回避などが多数確認され、現物不動産の実際の価値とは乖離した信託元本又は信託受益権価額、当該受益権の他者への譲渡の承諾、並びに、利益相反の営業が認められている。

    当行は、信託業務を兼営する銀行として、信用を失墜させることのないリスク管理及び内部管理態勢を整備しなければならないにもかかわらず、これを行わずに基本的な注意義務が履行できない態勢及び業務運営上の重大な問題が認められるとともに、不動産管理処分信託契約の受託者責任は免れず、信託法第20条及び信託業法第28条第2項(いわゆる善管注意義務)に違反していること。

  • (2)また、不動産の流動化・証券化案件の信託受託に伴う口座開設に関して、当行には適正な内部管理態勢や事務手順が整備されていないことから、本人確認法に規定する本人確認義務(第3条第1項及び第2項)違反、及び、本人確認記録の作成義務(第4条第1項)違反等が多数認められていること。

  • (3)加えて、上記(1)の営業推進により不動産管理処分信託の受託が急増する中で、これを適正に処理する事務管理及び内部管理態勢が整備されず、当庁への信託事務事故等の届出を行わずに、銀行法第53条及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律施行規則第12条の2(改正後は第31条第4項)に規定する届出義務に違反する事例が認められること。

2.法令等遵守(コンプライアンス)態勢

当行では、信託業務の十分な経験や知識を有する法務・コンプライアンス担当の役職員を配置せずに、内部管理業務における証券会社等との間の弊害防止措置の適用除外の承認(証券取引法第45条ただし書)の下で、不動産実務の経験等のない役職員の兼職により業務運営が行われているため、所要のチェックや監視がなされずに、上記1.の法令違反等の常態化を招いていること。

3.経営管理(ガバナンス)態勢

当行では、JPモルガン・チェース・グループの業務運営上の統括管理関係に従って、代表取締役社長が資産運用部門を統括し、資産流動化関連部門(不動産管理処分信託業務)の運営は別の代表取締役の執行権限・責任により行われているが、グループによる縦割りの統括と執行体制により、代表取締役社長及び他の取締役、並びに、取締役会による、この別の代表取締役の業務執行状況に対する適正な監視・牽制が行われずに、上記1.の法令違反等が放置されている経営管理(ガバナンス)態勢上の問題が認められること。

4.システム及び情報管理態勢

業務システム及びデータベースの運営、並びに、情報管理については、当庁の前回の立入検査において内部管理上の問題点等の指摘を受け、当行は改善計画を策定し、改善を実施したとの報告を当庁に行っていたが、今般の立入検査によって、実際の取り組みが不十分であり、監督や確認も適正に行われていないため、所要の管理態勢(人的構成と体制)が整備されておらず、引き続き同様の問題等が認められていること。

5.監査役及び監査役会

銀行の健全で持続的な成長を確保することが基本責務である監査役及び監査役会が適正に機能しておらず、特に、監査役による業務監査が実質的にはまったく行われていないため、上記1.から4.並びに、業務の改善も放置される問題などが認められていること。

お問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3751、3752)