英語版はこちら新しいウィンドウで開きます

平成18年1月27日
金融庁

ステート・ストリート信託銀行株式会社に対する行政処分について

I .命令の内容

銀行法第26条第1項及び金融機関の信託業務の兼営等に関する法律第8条の2に基づく命令

  • (1)平成18年2月6日から平成18年3月5日までの間、信託財産の運用にかかる新規受託業務(既存顧客との業務を除く業務)を停止すること。

  • (2)信託銀行として、公正かつ適正な業務運営を実現するため、以下の観点から経営管理(ガバナンス)態勢及び法令等遵守(コンプライアンス)態勢(人的構成と体制の構築を含む。)を確立すること。

    • 法令等遵守(コンプライアンス)にかかる経営姿勢の明確化、当社の取締役及び監査役による責任ある経営・牽制態勢の構築、並びに、これらを着実に実現するための当社の組織・機構、業務運営方法の見直し

    • 当社の主要株主等(米国金融持株会社及び米国親銀行)による当社への経営関与・監視の現況を根本的に見直すことを前提とする当社の独立した経営管理・内部管理態勢の構築・整備と責任体制の明確化

    • 役職員の法令・諸規則に対する理解と遵守の徹底

    • 当社の主要株主等及び在日ステート・ストリート・グループ各社等との間の業務運営上必要な隔壁・弊害防止措置の構築、並びに、顧客情報を適正に管理する態勢の導入

    • システムの整備状況及び人的構成等を踏まえた信託財産の管理・決済業務及び代理事務の適正な業務運営・事務管理を確保するための態勢の整備・強化と責任体制の明確化

    • 業務運営上の管理失当、事務過誤、苦情等の発生状況の適切な把握、発生原因の究明、再発の防止を着実に行うための態勢の整備・強化と責任体制の明確化、並びに、信託委託者等への適切な対応や説明のための態勢の構築

    • 監査を適正に行うための態勢の整備、並びに、適正な監査及びフォローアップの実施

  • (3)法令違反を含む、下記 II .処分の理由、並びに、検査結果通知及び報告命令に記載された事項にかかる問題等の原因となった役職員の責任の所在の明確化。

  • (4)上記(2)及び(3)、並びに、検査結果通知及び報告命令に記載された事項にかかる業務の改善計画(改善計画を着実に実施するための行内の管理態勢の整備及び実効性確保にかかる責任の分担の明確化を含む。)を平成18年2月27日までに提出し、直ちに実行すること。

  • (5)上記(4)の実行後、当該業務の改善計画の実施完了までの間、平成18年6月末を第一回目とし、以後、3ヶ月毎に計画等の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、翌月15日までに報告すること。

II .処分の理由

1.経営管理(ガバナンス)態勢及び顧客情報の取扱い

  • (1)当庁の立入検査(平成17年6月29日通知)及びその後の報告徴求によると、当社の米国金融持株会社及び米国親銀行では、当庁の検査・監督権限の及ばない米国(デラウェア州)籍ペーパー・カンパニーの日本支社(東京)を設置して、代表者を任命し、対外的には在日代表兼最高経営責任者(以下、「在日代表者」という。)と称して、主に、当社及びグループ投信投資顧問会社、並びに、グループ・サービス会社など、在日グループ各社の経営を社外から実質的に掌握し、営業統括に当たらせていた事実が認められている。

    上記の特異な経営体制と在日代表者の存在により、当社には、各取締役の権限・責任や取締役会等が本来有していなければならない監督責任が形骸化する弊害が認められ、監査役監査も実施されない中で、経営及び業務運営の監視・牽制が適正に機能せず、以下の基本的な法令違反や信託委託者等の顧客の信任に反する信託業務運営上の問題が認められている。

  • (2)ペーパー・カンパニー日本支社の在日代表者は、自ら「エグゼクティブ・コミッティ・ミーティング」と称するグループ横断的な会議を主催して、当社とグループ投信投資顧問会社の経営陣及び資産運用業務責任者等を招集し、当社の大口信託委託者等の顧客の非公開情報を同意を得ずに恒常的に多数共有し、また、信託財産の内容及び運用状況などの秘密を当社が保持する等定めた特定大口顧客との信託守秘義務契約に違反して、当該情報を在日グループ各社で共有し、資産運用業務の営業推進等を図っていた業務運営の実態が認められていること。

  • (3)また、当社では、顧客情報の安全管理に必要なシステム管理態勢(内部管理規程の見直し、監視・牽制機能の導入、運用における人的構成を含む)が適正に構築されておらず、信託運用等に関する顧客の非公開情報が含まれるデータを在日グループ各社及び米国親銀行等が共有し、相互にアクセスすることが可能な状況となっていること。

    さらに、当社には、顧客情報を取り扱う外部委託先の監督・管理のための態勢が導入されておらず、当社及び上記のシステム管理を外部委託しているグループ・サービス会社においても、顧客の非公開情報や重要情報の取扱い、並びに、外部への持ち出し等をチェックできる態勢が整備されていないため、守秘義務契約違反の情報共有や漏洩などの事故が発生しても、これらを的確に認識できずに、顧客に与える影響等を想定した適切な対応が図れない業務運営の現況が認められること。

2.法令違反及び法令等遵守(コンプライアンス)態勢

  • (1)当社では、信託財産の管理・決済業務に関して、杜撰な事務管理と業務運営が長年行われてきたため、外貨資産口座の残高照合や入出金管理について、委託者に帰属すべき資金が未処理のまま、経営陣や業務管理責任者等に監督・管理されることなく放置され、また、外国税額還付金の請求・管理も必要な事務処理や照合等が適正に行われていないなど、当該業務の運営が信託法第20条(いわゆる善管注意義務)に違反していること。

    また、信託委託者等の顧客からの苦情及び指摘、事務事故等に関する問い合わせが多数発生しているが、管理部門等への報告は行われておらず、経営陣も関与しない状況となっていること。

  • (2)信託財産である株券の貸借取引業務については、ステート・ストリート銀行東京支店が他業禁止義務(銀行法第12条)違反の状態で行っているセキュリティ・レンディング業務部門を通じて当社のサービスを構成し、また、貸株の配当金処理にかかる基礎的な事務管理も適正に行われてないこと。

  • (3)当社は、銀行法及び信託法等の規制監督対象外である外国銀行(米国親銀行)のグローバル・カストディ・サービス業務を本邦の顧客との間で代理営業し、銀行法第12条に規定する他業禁止義務に違反していること。

3.信託委託者等に対する説明態勢

当社が年金信託委託者等の特定大口顧客に発出する謝罪文書や経緯説明書には、顧客に誤解を生じさせる文書や虚偽の説明がなされている事例が確認されているが、信託委託者等の信任に反する当社の説明や内部牽制が機能しない管理体制の問題が認められていること。

4.監査役及び監査役会

当社では、ペーパー・カンパニー日本支社を介した経営体制と在日代表者の存在を背景に、銀行の健全で持続的な成長を確保することが基本責務である監査役及び監査役会が適正に機能しておらず、特に、取締役の職務執行に関する業務監査が行われていない問題が認められていること。

5.監督当局への対応

当社では、経営の責任体制が形骸化して監督当局への適切かつ迅速な対応が図れない体制にあることから、当庁の検査終了後の報告徴求に対する最終的な回答・対応の完了までに半年以上も要することとなったこと。

本件に関する問い合わせ先

金融庁 TEL 03-3506-6000(代表)
監督局銀行第一課(内線3751、3752)

サイトマップ

ページの先頭に戻る