平成18年5月25日
金融庁

株式会社損害保険ジャパンに対する行政処分について

  • 1.株式会社損害保険ジャパン(以下「当社」という。)については、当庁検査の結果(平成18年3月8日通知)及び保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告によると、以下のような事実が認められた。

    • (1)保険金等支払漏れに係る調査態勢等

      当社の付随的な保険金の支払漏れに係る自主調査の結果(27,273件、908.9百万円)について、その内容を再度検証したところ、当該自主調査において支払不要としていた案件の中に支払漏れが多数(1,128件、120.5百万円)認められた。また、この他、自主調査対象外の自動車保険の搭乗者傷害保険金の支払漏れが少なからず(206件、25.7百万円)認められた。

      このように多数の追加の支払漏れが発生しているのは、当社の経営陣が、自主調査全般の正確性を確保し、全ての顧客に支払うべき保険金を公平かつ適切に支払うために、部門横断的な社内体制を整備することを怠っていたことによるものと認められる。

    • (2)賠償責任保険の引受に係る不正行為等

      当社の海外拠点(香港)において、建設工事に係る賠償責任保険契約の引受に当たり、工事の受注者である保険契約者の要請を受け入れ、発注者用に本来の契約内容と異なる保険証券を発行する一方で、契約者と合意した契約内容に基づく保険証券を二重に発行するという不正行為が発覚している。

      当社の本部各部は本件不正行為について長期間把握しておらず、また、本件不正行為の発覚後も十分な調査を行わないなど、不適切な対応を行っている。さらに、本件不正行為について、担当部長から社長への報告ルールが長期間にわたって遵守されず、担当部と担当役員限りで処理されている。このようなコンプライアンス上重大な問題が生じたことは、(a)当社の海外拠点における法令等遵守態勢が十分機能していないこと、(b)海外拠点に対する本部各部の管理・監督機能が不十分であること、(c)経営陣による内部統制が機能していないこと、等によるものと認められる。

    • (3)受託業務である生命保険の募集管理態勢

      生命保険会社から受託している生命保険の募集事務について、法令違反となることを知りつつ社員自らが保険料の負担等を行っている事例が多数(社員280名、431契約)認められる(保険業法第300条第1項第5号等に違反)。

      このような法令違反が発生した要因としては、営業推進担当役員及び担当部が、代理店等の実際の販売力と乖離した過大な目標額を設定し、例えば社長自らが部支店長に対して目標達成のための取り組み強化を強く促すメールを送信することにより、営業現場に対して強いプレッシャーを与えるなど、当社の業務運営が営業偏重となっていることによるものと認められる。

      また、不祥事件発覚後の調査が実効性を欠いた、不十分なものとなっている。

    • (4)顧客の名前の印鑑の大量保有等

      当社の複数の支社及び代理店において、顧客の名前の印鑑を大量に保有しており、当該印鑑を不正に使用して、顧客に無断で契約の継続処理等を行っている事例(23件)や顧客の最終意思を確認しないまま保険申込書や保険金請求書等に押印している事例(2,947件)が認められた(前述の23件は、保険業法第307条第1項第3号に違反)。

      また、検査実施通知後に山口支社において顧客の名前の印鑑が大量に発見されたが、山口支店長が、当局検査中との事実を知りながら独自の判断で、印鑑を廃棄処分させている事例が認められた。このような行為は当社の社内規程等に違反する行為であるが、本件に係る当社のその後の調査・対応が十分行われておらず、当社の法令等遵守態勢の機能発揮は極めて不十分なものと認められる。

      さらに、顧客に無断で行った契約の継続処理等に係る苦情は以前より当社の苦情案件の上位を占めており、印鑑の不正使用等が行われていることを認識していたにもかかわらず、顧客の名前の印鑑の保有に係るリスクが重大な問題であるとの認識が欠如していた。このため、個別の苦情対応にとどまり、実態把握のための徹底的な調査や不正使用防止のための実効性のある対策を講じていない。

    • (5)個人情報管理態勢

      当社の個人情報管理態勢については、技術的安全管理措置が適切に講じられていないことなどから、センシティブ情報を含む個人情報について、当社及び関係グループ各社の社員が担当業務に関係なく容易に閲覧や複写をすることが可能な状態となっている。

      このような事例が認められるにもかかわらず、当社は、技術的安全管理措置に係るシステム開発について、システム基盤変更を伴う規模の大きなものとなることから、慎重な検討が必要と判断し中期課題と位置付けるなど、技術的安全管理措置に対する重要性の認識が希薄となっている。

      また、システムの利用停止の処理が適切に行われていないことから、当社との代理店委託契約を解除した旧代理店の一部において、個人情報の閲覧等をすることが可能な状態となっている事例が多数認められる。さらに、個人情報の管理態勢について、実態解明に向けた調査及び深度ある調査を行っていない。このように、当社の個人情報管理態勢は極めて不適切なものと認められる。

    • (6)監査態勢

      当社の内部監査は、上記のような経営上極めて重要な問題等について、適切な指摘や改善勧告を行っておらず、機能発揮は極めて不十分なものとなっている。

      この要因としては、十分な要員が確保されていなかったこと、内部監査人の監査技能・知識が不十分であったこと、本部各部との連携が不十分であることなどによるものと考えられる。

    • (7)不祥事件の調査及び処理態勢

      法令違反の事実が発覚しているにもかかわらず、誤った法令解釈による部内限りの規程を定めていることから、不祥事件として取り扱っていないなど、当社の不祥事件の調査及び処理態勢は極めて不十分となっている。

    • (8)業務改善計画等の実施状況

      前回検査の結果、業務改善命令(平成14年8月2日)を受け、当社は保険募集管理態勢及び法令等遵守態勢に係る業務改善計画等を策定し、新たにコンプライアンス・ホットラインの設置、コンプライアンス統括部による募集文書の審査、及び営業店における法令等遵守態勢の見直しを図ることとしたところであるが、その実施状況をみると、以下のような問題点が認められた。

      • (a)コンプライアンス・ホットラインの利用実績が少なく、有効に活用される態勢となっていない。

      • (b)契約者に誤解を与え、不利益を生じさせるおそれのある募集文書が使用された事例が認められる。これは、コンプライアンス統括部による審査が事前に行われていないこと、当該審査における修正のフォローアップが不十分なことなど、同部の審査が十分に機能していないことによるものと認められる。

      • (c)団体契約に関して、営業店における規程遵守のための社員教育・指導や実効性を確保する方策が不十分なことなどから、過大な保険料割引を適用している事例が認められる(保険業法第300条第1項第5号に違反)。

  • 2.このため、本日、当社に対し、保険業法第132条第1項及び第133条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。

    • (1)保険業法第133条の規定に基づく命令

      • (a)保険契約の締結及び保険募集の業務(保険業法第3条第5項の免許に係るもの)並びに保証証券の業務(同条第6項)について、平成18年6月12日(月)から平成18年6月25日(日)までの間停止すること(損害保険代理店又は他の保険会社に委託しているもの及び他の保険会社から受託しているものを含む。ただし、自動継続による契約の更新及び自動車損害賠償責任保険に係るものを除く。)。

      • (b)山口支店(管下の課支社及び管轄する損害保険代理店を含む。)においては、上記(a)の業務について、平成18年6月12日(月)から平成18年7月11日(火)までの間停止すること。

      • (c)生命保険業務の代理・代行に係る保険契約の締結及び保険募集の業務について、平成18年6月12日(月)から平成18年7月11日(火)までの間停止すること(自動継続による契約の更新を除く。)。

      • (d)新規の保険商品の認可の申請、既存の保険商品の改訂の届出、他の保険会社等金融機関の代理・代行業務の認可の申請、外国における子会社の設置認可の申請、外国における支店・事務所・駐在員事務所の設置の届出、に関する業務について、平成18年5月26日(金)から平成18年8月25日(金)までの間停止すること。

    • (2)保険業法第132条第1項の規定に基づく命令

      • (a)業務運営の状況を適確に把握し、適切な対応・指示を行い得るような経営管理態勢・内部管理態勢を構築すること(内部監査態勢の抜本的な改善・強化を図ることを含む。)。

      • (b)本部による海外拠点の管理・監督機能を強化すること。

      • (c)法令等遵守(コンプライアンス)態勢の抜本的な見直し・改善を図ること。

      • (d)苦情対応処理態勢及び不祥事件の調査・処理態勢の抜本的な見直し・改善を図ること。

      • (e)適切な保険募集を行うための管理態勢を確立すること(海外拠点を含む。)。

      • (f)不正な印鑑使用、保険料負担等の募集上の法令等諸規則の疑義事案について、徹底的な調査を実施し、再発防止のための抜本的な改善策を講じること。

      • (g)個人情報管理態勢について、全社的な見直しを行い、抜本的な改善策を講じること。

      • (h)上記の業務停止命令及び業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任を明確化すること。

      • (i)上記(a)~(h)等に係る事項に関して、平成18年6月26日(月)までに、具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を提出すること。

      • (j)業務改善計画の実施完了までの間、計画の進捗・実施・改善状況をとりまとめ、改善計画提出後3ヶ月毎に報告すること。

お問い合わせ先

金融庁 Tel:03-3506-6000(代表)
監督局保険課(内線3375、3772)

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