平成17年10月28日
金融庁

明治安田生命保険相互会社等に対する行政処分について

  • I .  明治安田生命保険相互会社(以下、「当社」という)については、当社に対する当庁の検査(平成17年8月8日通知)及び保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告、並びに同条同項に基づく平成12年度から16年度の過去5年分の不払事案の再検証に係る当社からの報告によると、以下のとおり、重大な法令違反等が確認され、法令等遵守(コンプライアンス)態勢及び経営管理(ガバナンス)態勢などに根本的な問題が認められた。

    • 1.  平成12年度から16年度の過去5年間において、本来保険金等を支払うべきであったにもかかわらず、支払いがなされていない保険金等が1,053件認められた。

      また、上記以外で、被保険者が癌告知を受けるまで、癌に係る割増給付金と一般給付金の差額等について、契約者等からの申し出がないにもかかわらず当社の独自の判断により支払留保するという、約款の規定にはない取扱いを行った上に、留保事由が既に消滅した後においても未払いのままとなっている給付金が1,450件認められた。

      これらは、保険金等の支払事由の適用を事業方法書・普通保険約款で定められたとおりに行っていなかったものであり、保険業法第4条第2項第2号に掲げる事業方法書、同項第3号に掲げる普通保険約款に定めた事項のうち特に重要なものに違反していたものと認められた(保険業法第133条第1号に該当)。

    • 2.  生命保険募集人が、告知妨害、特別の利益の提供など保険業法第300条第1項第3号及び同項第5号に違反する保険募集を行っていたものなどが認められた。

      また、このような法令違反行為について、保険業法第127条第1項第8号に基づく不祥事件届出を、不祥事件の発生を知った日から30日以内に行っておらず、同条に違反していたものと認められた。

    • 3.  平成17年2月の業務改善命令において「保険約款及び法令等に従い、迅速かつ適切な保険金支払いを行うための保険金支払管理態勢を確立すること」とされており、また、3月16日付で当局に提出された業務改善計画においても迅速かつ適切な保険金支払管理態勢の確立が掲げられた。しかしながら、当社の経営陣は、不適切な保険金等の不払いが詐欺無効以外にも行われていた可能性を認識していたにもかかわらず、検査開始(平成17年4月20日)に至るまで詐欺無効以外の不払事案について、過去の検証及び査定基準の見直しの実施がなされておらず、結果として不適切な不払いが散見され、上記の業務改善命令への対応が遅延したものと認められた。

    • 4.  保険金等の支払いは保険会社の基本的かつ最も重要な機能であるが、当社においては、保険金等支払管理態勢に極めて重大な欠陥が認められることをはじめ、法令等遵守態勢や内部管理態勢に重大な問題が多数認められた。

      • (1)経営管理態勢

        業務執行にあたる代表取締役、取締役及び取締役会並びに監査役及び監査役会は、下記のように本来果たすべき機能を発揮していなかったものと認められた。

        • 「死差益増の目標額(39億円)」を合併新会社における18年度の対13年度増益効果として設定し、経営統合委員会に報告した上で経営として了承し、決定した。このような方針を受けて、当社の保険金部が具体的な支払抑制目標を設定・管理するなどにより、「不払い優先の風土」が醸成されたと認められた。

        • 経営陣は、モラルリスク対策プロジェクトチームが支払抑制目標を設定し、進捗管理を実施している等の実態を把握せず、牽制機能を発揮していなかったほか、法務担当部に対する牽制・検証の必要性を認識せず、態勢も整備していなかったものと認められた。

        • 保険契約者保護に係る重要な事項である支払査定基準の改廃(重過失の適用範囲の拡大等)について、取締役会等の承認を得ずに保険金部長が決定し、担当役員への報告も簡単な要旨で報告されているに過ぎず、加えて担当役員からは特段の指示もなされていなかったものと認められた。

        • 経営陣は、支払関係の苦情件数が増加していたにもかかわらず、これを問題視することなく、投書等の形で直接に届けられた個別の苦情への対応を保険金部任せとするなど、契約者からの警鐘を正しく受け止めず、所要の実態把握や対策を講じなかったものと認められた。

        • 経営陣は、不適切な保険金等の不払いが詐欺無効以外にも行われていた可能性を認識していながら、詐欺無効以外も含めた適切な保険金等の支払管理態勢の確立などを内容とする業務改善命令の発出以降当庁の立入検査の開始に至るまで、詐欺無効に直接起因する諸課題に対する対応のみに終始した。このため組織体制や陣容の見直しを行い、経営資源を再配分するなどの抜本的対策を講じるべきところを、具体的な改善策等を作成・実施するなどの対応を何ら行っていなかったものと認められた。

      • (2)不祥事件処理態勢については、契約部において営業職員による告知義務違反教唆の事実や無面接募集などの不適切事象を把握していたにもかかわらず、調査が不十分なまま不問としている事例が認められるなど、十分に機能していないと認められた。

      • (3)苦情処理態勢については、申し出のあった苦情について、本社及び支社等において原因分析や再発防止策の検討が十分行われていないほか、告知義務違反教唆の疑いのあるもののうち、事実関係を調査しないまま保険金等を不払い等にしている不適切な事例が認められた。

      • (4)内部監査については、十分な知識・専門性をもった人材配置・育成が行われておらず、また、指摘事項をフォローするという姿勢が欠如しているほか、内部監査部門の独立性が確保されておらず業務の適切性を検証する態勢が欠如していることが認められた。

      • (5)当社の子会社である株式会社明治安田生命保険代理社(以下、「代理社」という)においては、取扱募集人の保険契約者への特別利益の提供、保険契約申込書等の代筆行為に係る組織的な関与など、不適切な業務行為が認められた(後述)。

        子会社である代理社にこのような問題が生じているのは、代理社においてコンプライアンス意識の徹底に対する取組みが不十分であることに加えて、当社の代理社に対する一元的な管理・監督を行う仕組みが構築されていないことによるものと認められた。

    • 5.  その他の不適切な取扱い

      その他、契約者保護、利便の観点から以下のような不適切な取扱いが認められた。

      • (1)告知義務違反教唆があっても告知義務違反を常に問うと解釈され得るような、不適切な記述が多数認められる顧客対応マニュアル(Q&A)を保険金部及び法務担当部において作成し、支社等の営業拠点や顧客サービスセンターに配布するなど、告知義務違反教唆を軽んじる風潮を助長したものと認められた。なお、同マニュアルは、正式な規程ではなく、お客さまサービス部による検証が行われていなかったものと認められた。

      • (2)満期返戻金、保険金等の支払いにおける時効期間が経過する前後の契約者対応については、旧明治生命契約と旧安田生命契約のいずれかであるかによって、時効に関する通知文書の内容及び発信頻度などに差異が認められ、契約者間の公平性を著しく欠いているものと認められた。

      • (3)解約処理手続については、当社側の対応に非が認められる処理の遅延等に関する苦情が多く、顧客の意思確認から支社長の承認までに長期間を要しているものが多数認められた。

  • II .  このため、本日、当社に対し、保険業法第132条第1項及び第133条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。

    • 1.  保険業法第133条の規定に基づく処分(業務停止命令)の内容

      • (1)保険業法第3条第4項の免許に係る保険契約の締結及び保険募集の業務(自動継続による契約の更新を除き、生命保険募集人に委託しているものを含む。)を平成17年11月4日から平成17年11月17日までの間停止すること。

      • (2)経営管理体制の抜本的な改善が、下記2.(5)により提出される業務改善計画の実施状況によって確認されるまでの間、保険業法第98条第2項及び第123条第1項の規定に基づく認可の申請並びに同条第2項の規定に基づく届出に関する業務を停止すること。

    • 2.  保険業法第132条第1項の規定に基づく処分(業務改善命令)の内容

      • (1)ガバナンスの改善・強化

        • 意思決定プロセスやガバナンスの抜本的な改革を実現するための経営体制を構築すること。

        • 総代会の運営方法の抜本的な改革を行うこと。

        • 内部監査部門の抜本的な改善・強化を図ること(スタッフ、監査方法の充実・強化を含む。)。

      • (2)契約者保護

        • 真に公正かつ的確な審査体制、手続きの確立を含め、保険金等の支払管理態勢を抜本的に見直すこと。

        • 苦情対応・処理に関する権限、不祥事件の調査・処理機能を各々一元化するなど、苦情対応・処理態勢及び不祥事件処理態勢の抜本的な見直し・強化を図ること。

        • 顧客保護、顧客利便を損なうような、体制・規定等の不備がないかどうかの総点検を実施した上で、問題のあるものについては直ちに是正を図ること。また、契約者保護・利便に直接関わるような各部において、毎年運営方針を作成・明らかにするとともに、同運営方針の実施状況の評価・公表の実施を行うこと。

        • 告知義務違反教唆、無断契約、早期解約・失効契約等の不適切な保険募集行為を防止するための保険募集管理態勢の抜本的な見直し・改善を行うこと。

        • 保険金部、法務部の組織態勢の抜本的な見直し・刷新を図ること。

      • (3)代理社に対して、抜本的な管理・監督の強化を図ること。

      • (4)上記の業務停止命令、業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任を明確化すること。

      • (5)上記(1)から(4)まで並びに、検査結果及び当局の報告徴求命令に応じて提出された報告書に記載された事項に関して、平成17年11月18日までに、具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を提出すること。この改善計画には、計画実施のための明確な体制及び責任分担をあわせて記述すること。

      • (6)業務改善計画の実施完了までの間、計画の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、改善計画提出後6ヶ月が経過するまでについては1ヶ月毎に、それ以降については3ヶ月毎に報告すること。

  • III .  代理社については、平成15年の旧明治生命に対する金融庁検査等を受けて、募集管理について、当社及び代理社の共同で「代理社改善計画」を策定・実施するなど対応を図ってきたところであるが、その後も当局に報告すべき不祥事件届出がなされていないなどの事実を踏まえて発出した保険業法第128条第1項に基づく当社からの報告によると、以下のような不適切な行為が認められる。

    • 1.  平成9年3月に取り扱った法人との保険契約に関し、代理社の取扱募集人が当該法人に対して特別の利益の提供を行い、代理社は当該法人に特別の利益の提供にあたる金員を送金した(取扱募集人の行為は保険業法第300条第1項第5号違反)。

      また、代理社は、特別の利益の提供の事実を把握したにもかかわらず、適時的確な調査及び不祥事件届出を行う当社への報告等の適切な対応を怠った(当社の不祥事件届出の未提出は保険業法第127条第1項第8号違反)。

    • 2.  平成11年8月に代理社が取り扱った法人との保険契約に関し、代理社の取扱募集人が特別の利益の提供を行ったところであるが、この契約を成立させるために、代理社の部長職3名、次長職1名、課長職3名を含む計11名の役職員が組織的に申込書や告知書等の代筆行為に関与していた(保険業法第307条第1項第3号に該当)。

      また、代理社は、当該不適切行為の存在の可能性につき認識したにもかかわらず、適時的確な調査等の適切な対応を怠った。

    • 3.  平成15年の旧明治生命に対する金融庁検査等を受けて、「代理社改善計画」を策定したが、上記1.及び2.に見られるように、これらの対応策は実効性を欠いていた。

  • IV .  このため、本日、代理社に対し、保険業法第307条第1項及び第306条の規定に基づき、以下の内容の行政処分を行った。

    • 1.  保険業法第307条第1項の規定に基づく処分(業務停止命令)の内容

      平成17年11月4日から平成18年5月3日までの間、全ての業務の停止。(ただし、当社の代理社への経営監視機能が発揮される態勢となり、代理社における経営管理態勢の抜本的な改善が下記2.(6)により提出される業務改善計画の実施状況により確認される場合には、それまでの間。)

    • 2.  保険業法第306条の規定に基づく処分(業務改善命令)の内容

      適切な業務運営を確保するため、以下の観点から、法令等遵守態勢及び内部管理態勢を確立・強化すること。

      • (1)組織のあり方を含めた、法令等遵守態勢及び内部管理態勢の抜本的な見直しを図ること。

      • (2)コンプライアンスの企業風土を醸成させるための徹底的な研修の実施及びその後の定期的なフォローアップ研修の実施を図ること。

      • (3)法令違反等行為にかかる実効的な調査態勢と適切な報告のための態勢を構築すること。

      • (4)代理社において当社による実効的な牽制の効く態勢を整備すること。

      • (5)上記の業務停止命令、業務改善命令に至るようになった問題等の原因となった役職員の責任を明確化すること。

      • (6)上記(1)から(5)までに関して、平成17年11月18日までに具体策及び実施時期を明記した業務改善計画を提出すること。この改善計画には、計画実施のための明確な体制及び責任分担をあわせて記載すること。

      • (7)業務改善計画の実施完了までの間、計画の進捗・実施及び改善状況をとりまとめ、改善計画提出後、1ヶ月毎に報告すること。

【連絡・問合せ先】

電話(代表)3506-6000
金融庁監督局保険課(内線3335、3344)

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