第6節  その他の金融機関に対する金融検査
 
I  信用保証協会に対する金融検査
 
 信用保証協会は、全国で、47都道府県と5市の52ヶ所に設置されている。
 信用保証協会については、信用保証協会法に基づき、金融監督庁と通商産業省が共管しており、大蔵省財務局と機関委任を受けている都道府県又は市町村が共同又は交互に検査を実施している。
 平成10検査事務年度においては、全国52協会のうち1協会に対して共同で検査に着手し、その結果を通知している。

 

II  貸金業者に対する金融検査
 
 大蔵省財務局長の登録を受けた貸金業者は、平成10年3月末現在で1,228業者となっており、貸金業の規制等に関する法律に基づき、大蔵省財務局が検査を実施している。
 平成10検査事務年度においては、平成11年5月31日現在で196業者に対して検査に着手し、そのうち154業者に対して検査結果を通知している。

 

III  前払式証票発行者に対する金融検査
 
 前払式証票発行者のうち、第三者型発行者数は、平成10年3月末現在で1,648発行者となっており、前払式証票の規制等に関する法律に基づき、大蔵省財務局が検査を実施している。
 平成10検査事務年度においては、平成11年5月31日現在で187発行者に対して検査に着手し、そのうち166業者に対して検査結果を通知している。

 

IV  抵当証券業者に対する金融検査
 
 大蔵省財務局長の登録を受けた抵当証券業者は、平成10年3月末現在で102業者となっており、抵当証券業の規制等に関する法律に基づき、大蔵省財務局が検査を実施している。
 平成10検査事務年度においては、平成11年5月31日現在で10業者に対して検査に着手し、そのうち8業者に対して検査結果を通知している。

 

V  商品投資販売業者に対する金融検査
 
 商品投資販売業者については、商品投資に係る事業の規制に関する法律に基づき、金融監督庁、農林水産省及び通商産業省が共管しており、平成10年3月末現在では金融監督庁が共管省庁として許可している業者は118業者となっている。
 平成10検査事務年度に、大蔵省財務局においては平成11年5月31日現在で5業者に対して検査に着手し、そのうち4業者に対して検査結果を通知している。

 

VI  火災共済協同組合に対する金融検査
 
 火災共済協同組合については、中小企業等協同組合法に基づき、金融監督庁と通商産業省が共管しており、平成10年3月末現在では44組合が設置され、大蔵省財務局と通商産業省通商産業局が連携して検査を実施している。
 平成10検査事務年度においては、平成11年5月31日現在で3組合に対して検査に着手している。

 

第7節  その他の特記事項
 
I  破綻に至った銀行(特別公的管理銀行を含む。)に対する金融検査
 
.日本長期信用銀行(資料3−7−1参照)
 
(1)  主要19行に対する検査の一環として、日本長期信用銀行に対して、平成10年7月13日より立入検査を開始し、平成10年3月期の自己査定結果に基づき、その資産内容等について実態把握を行った。
 
(2)  平成10年3月期の自己査定については、一部に不正確又は不適切なものが認められ、これらを修正すると、分類資産額(「 II 、 III 及び IV 分類の合計額」を指す。以下同じ。)は4兆2,974億円(1兆4,612億円の増加)となり、要追加償却・引当額は2,747億円となった。
 ただし、平成10年3月末時点では、貸借対照表上も、また、これに3月末時点で有価証券・動産不動産等を時価で評価した場合に生じてくる含み損益(▲1,684億円)を加味した場合でも、資産の部に計上されるべき金額の合計額が負債の部に計上されるべき金額の合計額を上回っていた。
 
(3)  しかしながら、平成10年9月末については、6月末の資産査定を基準としつつ、9月末までに発生した後発事象を加味した場合、分類資産額は4兆6,200億円(3月期当局査定額と比べて3,226億円の増加)となり、要追加償却・引当額は上記約2,747億円を含め、合計7,600億円となった。
 この結果、9月末時点では、貸借対照表上は資産超過であるが、有価証券・動産不動産等を時価で評価した場合に生じてくる含み損益が▲5,000億円と見込まれたため、平成10年9月末時点における自己資本の状況については、これらの含み損益を加味して、長期信用銀行法施行規則第20条の3第3項に規定する「貸借対照表の資産の部に計上されるべき金額の合計額が負債の部に計上されるべき金額の合計額を下回る場合」に該当すると見込まれたことから、その旨を、10月19日に同行に対して通知した。
 その後、10月23日、日本長期信用銀行から内閣総理大臣に対して、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律(以下「金融再生法」という。)第68条第2項に基づき、「その業務又は財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれが生ずると認められる」旨の申出が行われ、これを受け、内閣総理大臣は、検査結果等をも踏まえ、同法第36条第1項に基づく特別公的管理の開始決定等を行った。

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.日本債券信用銀行(資料3−7−3参照)
 
(1)  日本債券信用銀行に対しても、日本長期信用銀行と同様に、主要19行に対する検査の一環として、平成10年7月24日より立入検査を開始し、平成10年3月期の自己査定結果に基づき、その資産内容等について実態把握を行った。
 
(2)  平成10年3月期の自己査定については、一部に不正確又は不適切なものが認められ、これらを修正すると、分類資産額は3兆7,464億円(5,363億円の増加)となり、要追加償却・引当額は5,615億円となった。
 この結果、平成10年3月末時点では、自己資本の4,671億円に対して要追加償却・引当額が5,615億円となったため、貸借対照表上も、また、これに3月末時点で有価証券・動産不動産等を時価で評価した場合に生じてくる含み損益(▲1,803億円)を加味した「長期信用銀行法施行規則第20条の3第3項に規定する貸借対照表」で見ても、資産の部に計上されるべき金額が負債の部に計上されるべき金額を下回ると見込まれたことから、その旨を、11月16日に同行に対して通知した。
 
(3)  その後、当庁は、日本債券信用銀行に対して、債務超過を解消するため採り得る資本充実策等について長期信用銀行法第17条で準用する銀行法第24条に基づき報告を求めてきたが、同行より実現性のある資本充実策が提示されないまま1か月近くが経過したことから、12月13日に、内閣総理大臣は金融再生法第36条第1項に基づく特別公的管理の開始決定等を行った。

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.国民銀行(資料3−7−5参照)
 
(1)  国民銀行に対する検査については、平成11年1月19日より立入検査を開始し、平成10年9月期の自己査定結果に基づき、その資産内容等について実態把握を行った。
 
(2)  平成10年9月期の自己査定については、一部に不正確又は不適切なものが認められ、これを修正すると、分類資産額は1,983億円(485億円の増加)となり、要追加償却・引当額は762億円となった。
 この結果、平成10年9月末時点では、自己資本の50億円に対して要追加償却・引当額は762億円となったため、貸借対照表上も、また、これに9月末時点で有価証券・動産不動産等を時価で評価した場合に生じてくる含み損益(▲65億円)を加味した「銀行法施行規則第21条の3第3項に規定する貸借対照表」で見ても、資産の部に計上されるべき金額が負債の部に計上されるべき金額を下回ると見込まれたことから、その旨を、4月12日(月)に国民銀行の金融整理管財人に通知した。
 
(3)  この間、国民銀行においては、預金の流出が急速に進んだ結果、資金繰りに窮し、4月11日(日)、同行から金融再生委員会に対して、金融再生法第68条第1項に基づき、「その業務又は財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがある」旨の申出が行われ、これを受け、同委員会においては、同法第8条に基づく金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分を行った。

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.幸福銀行(資料3−7−6参照)
 
(1)  幸福銀行に対する検査については、平成11年1月20日より立入検査を開始し、平成10年9月期の自己査定結果に基づき、その資産内容等について実態把握を行った。
 
(2)  平成10年9月期の自己査定については、一部に不正確又は不適切なものが認められ、これを修正すると、分類資産額は5,275億円(994億円の増加)となり、要追加償却・引当額は596億円となった。
 この結果、平成10年9月末時点では、自己資本の131億円に対して要追加償却・引当額が596億円となったため、貸借対照表上も、また、これに9月末時点で有価証券・動産不動産等を時価で評価した場合に生じてくる含み損益(▲105億円)を加味した「銀行法施行規則第21条の3第3項に規定する貸借対照表」で見ても、資産の部に計上されるべき金額が負債の部に計上されるべき金額を下回ると見込まれたことから、その旨を、4月13日に同行に対して通知した。
 
(3)  当庁では、幸福銀行に対して、検査結果を踏まえた同行の11年3月期末の自己資本比率の水準に鑑み、5月14日、早期是正措置命令(第2区分の2)を発出し、自己資本充実、大幅な業務の縮小、合併又は銀行業の廃止等の措置のいずれかを選択した上、当該選択に係る措置を速やかに実行するよう求めてきた。
 これに対し、5月21日、幸福銀行から当庁に対して銀行業の廃止等の措置を選択する旨の報告がなされた。また、同日、同行から金融再生委員会に対して、金融再生法第68条第2項に基づき、「その業務又は財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれが生ずると認められる」旨の申出が行われ、これを踏まえ、5月22日、金融再生委員会は、同法第8条に基づく金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分等を行った。

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.北海道拓殖銀行(資料3−7−7参照)
 
 北海道拓殖銀行から北洋銀行への営業譲渡等に向けて、資産内容等の実態を把握することを目的として、平成10年6月30日現在をもって同行に対する検査を実施した。この結果、総資産6兆8,196億円のうち、分類資産額は1兆2,723億円となった。

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.徳陽シティ銀行(資料3−7−9参照)
 
 徳陽シティ銀行から仙台銀行への営業譲渡等に向けて、資産内容等の実態を把握することを目的として、平成10年6月30日現在をもって同行に対する検査を実施した。この結果、総資産5,732億円のうち、分類資産額は1,759億円となった。

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.みどり銀行(資料3−7−10参照)
 
 みどり銀行が、阪神銀行との合併合意に至ったことを踏まえ、資産内容等の実態把握を目的として、平成10年8月31日現在をもって同行に対する検査を実施した。この結果、総資産2兆951億円のうち、分類資産額は7,808億円となった。

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II  コンピュータ2000年問題に関する金融検査
 
.検査の目的
 
 いわゆるコンピュータ2000年問題とは、西暦2000年にコンピュータが誤作動し、社会的混乱を招く恐れがある問題として、緊急に対応しなければならない課題である。とりわけ金融機関においては、その対応を誤ると、決済システム等に支障を生じるなど、その影響は甚大なものになることから、早急に金融機関の対応状況を把握するため、コンピュータ2000年問題に関する金融検査を実施することとした。

 

.非常勤職員の採用
 
 本検査はコンピュータに起因する問題で、専門性が高いこともあり、平成10年10月に、銀行業務に精通したシステム・エンジニアやシステム監査に従事していた専門家など4名を民間から非常勤職員として採用して常勤職員(検査官)の下に配置し、2000年問題に焦点を当てたメンバー構成の検査班を組成した。

 

.検査の実施状況
 
(1)  検査実施金融機関(資料3−7−11参照)
 平成10年10月から平成11年3月までの6ヶ月間に、主要17行(都市銀行、長期信用銀行、信託銀行)、協同組織金融機関の4中央機関(農林中央金庫、全国信用金庫連合会、全国信用協同組合連合会、労働金庫連合会)及び地方銀行1行に対して集中的な検査を実施したほか、証券会社1社に対して検査に着手したところである。
 また、自己査定の実施状況等を実態把握するために平成10年8月から実施している地方銀行及び第二地方銀行、さらには、証券会社や保険会社等その他の業態への検査に際しては、コンピュータ2000年問題への対応についても併せて実態把握している。
 
(2)  1金融機関当たりの立入日数・投入人員
 原則として、4日間の立入日数で5名を投入して、同検査を実施した。

 

.検査の重点事項
 
 平成10年8月25日に公表した「コンピュータ2000年問題に関する金融検査におけるチェックリスト(改訂版)」及び9月7日・12月18日に公表した「事務ガイドライン」に基づき、次に示す事項について実態を把握することとした。
 
(1)  金融機関の対応体制
 
(2)  現状評価及び対応策の策定状況
 
(3)  対応スケジュールの進捗状況
 
(4)  コンティンジェンシー・プランの作成状況
 
(5)  2000年問題対応に関する開示状況

 なお、検査を平成10年10月から平成11年3月にかけて実施することを勘案して、特に、システム等の修正及びテストの進捗状況、コンティンジェンシー・プランの作成状況の把握に重点を置いた。

 

.検査結果の概要
 
 主要行などの検査結果を見ると、システムリスクへの対応は概ね良好であったものの、経営リスクとしての捉え方が限定的であり、事務リスク、評判リスク、法務リスク等といったシステムリスク以外のリスク軽減策が不十分であった事例が見受けられた。
 具体的には、一部の銀行に次のような問題が認められた。なお、その大半は既に改善済みである。
 
(1)  全体として各金融機関ともシステムリスク、特にホストコンピュータに係わるリスクへの対応についてはおおよその目処が立ってきているものの、年跨ぎと閏日程度の稼働確認テストに止まっている事例などが見受けられることから、危険視されている特殊日付については、今後とも十分に確認する必要がある。
 
(2)  システム以外のリスクについては対応が不十分な事例が多く、特に、それらのリスクについては、コンティンジェンシー・プランに折り込めば良いとして、未だにリスク軽減策を採っていない事例も見られた。
 
(3)  コンティンジェンシー・プランについては、ほとんど全ての金融機関が平成11年6月までに策定するとして検討中であったが、中には、災害対策マニュアルの援用で済むといった誤認識や、2000年問題特有の誤作動を想定していないなどの問題が散見された。
 
(4)  積極的にディスクローズして、信用不安を招かないようにする努力が重要であるにもかかわらず、対応状況のディスクローズが不適切な事例が散見された。

 なお、コンピュータ2000年問題はとりわけ緊急性の高い問題でもあり、今後当庁としては、2000年に向けて、検査と監督の連携、各金融機関等に対する個別のモニタリング等を、従来にも増して一層強化し、銀行法第24条や第26条等の法律に基づく措置を含め厳正に対処していく考えである。

 

III  内部モデルに関する金融検査
 
.検査の目的
 
 平成8年1月公表のバーゼル委員会「マーケット・リスクを対象とするための自己資本合意の改訂」によりマーケット・リスク規制を平成9年末までに導入することが決定された。これを受けて、我が国においても、平成9年12月に銀行法第14条の2の規定に基づき自己資本比率の基準を定めた大蔵省告示が改正され、平成10年1月からマーケット・リスク規制が開始されている。
 マーケット・リスク規制対象行については、マーケット・リスクの計測手法として告示で定められた標準的方式とは別に、一定の基準を満たすことを条件に、金融機関が独自に開発したリスク計測モデル(内部モデル方式)を使用することが認められているため、自己資本比率基準に係るマーケット・リスク相当額を算出するに当たって内部モデル方式を使用する旨を届け出た銀行を対象に、内部モデルに関する検査を実施することとした(資料3−7−12参照)。

 

.非常勤職員の採用
 
 内部モデル方式は、例えば、分散・共分散法やモンテカルロ・シミュレーション法等の様々な手法があり、近年、急速な技術進歩を遂げている分野であるため、このような数理モデルに精通した専門家を民間から非常勤職員として採用して常勤職員(検査官)の下に配置し、検査班を組成した。

 

.検査の実施概要
 
(1)  検査実施金融機関
 内部モデル方式を採用してから約1年を経過した平成11年2月より、内部モデル方式採用行を対象に、順次、立入検査を実施しており、平成11年5月末までに都市銀行・長期信用銀行4行に対して立入検査を終了し、さらに1行に対しては検査に着手したところである。
 
(2)  1行当たりの立入日数・投入人員
 検査に当たっては、1行当たり平均して、7.0日間の立入日数で、6.6人を投入した。
 

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 資料編

 
概 要

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