(1)証券会社の破綻処理制度等の整備に係る法改正について

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┃  項    目    │      証取審・市場仲介者WP報告書(抜粋)    │    証取法等の改正に当たっての考え方│          備     考         ┃

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┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │9.破綻処理制度等の整備                      │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃1  基本的考え│(1)  基本的な考え方                           │                                    │                            ┃

┃  方          │    証券会社間の競争が行われる過程で、新たに参│                                    │                            ┃

┃              │  入する証券会社が増加すると同時に、個別証券会│                                    │                            ┃

┃              │  社の中には退出する証券会社の出現も予想される│                                    │                            ┃

┃              │  。従って、今後は、投資家保護を図りつつ、破綻│                                    │                            ┃

┃              │  処理制度等の環境整備を十分に行うことが必要で│                                    │                            ┃

┃              │  ある。このような環境整備が不十分なままで自由│                                    │                            ┃

┃              │  化が進んだ場合には、投資家保護が図られないだ│                                    │                            ┃

┃              │  けでなく、証券市場に対する国民の信頼が大きく│                                    │                            ┃

┃              │  損なわれる虞がある。                        │                                    │                            ┃

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┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃2  分別管理の│(2)  顧客資産の分別の徹底                     │[有価証券の分別管理]              │                            ┃

┃  徹底強化につ│  (a)  証券市場の投資家は証券市場にアクセスする│                                    │                            ┃

┃  いて        │    際には、市場仲介者である証券会社を通じて取│○  顧客が預託した有価証券についての│・  外債等については、海外保┃

┃              │    引を行うこととなる。投資家は、取引に当たり│  分別管理義務を証券取引法において定│  管機関の制度等を踏まえて、┃

┃              │    、現金や有価証券等を証券会社に一時的に預け│  める。                            │  顧客の権利保護に欠けること┃

┃              │    ることが通常である。証券会社が破綻した場合│                                    │  のない管理を徹底することが┃

┃              │    に、投資家の資産が適切かつ迅速に返還されな│                                    │  必要。                    ┃

┃              │    いこととなれば、投資家に予期せざる損害が生│                                    │                            ┃

┃              │    じる可能性がある。従って、証券会社の顧客資│                                    │                            ┃

┃              │    産の分別義務の徹底等により、顧客資産が顧客│                                    │                            ┃

┃              │    に適切に返還されるための制度を整備すること│[現金部分の分別管理]              │                            ┃

┃              │    が、市場に対する信頼を維持する上で不可欠で│                                    │                            ┃

┃              │    ある。                                    │○  預り金等現金部分についても、証券│                            ┃

┃              │                                              │  取引法上、分別管理を義務付けること│                            ┃

┃              │  (b)  同様の観点から、米国や英国においては、顧│  とする。但し、預り金等を日々各顧客│                            ┃

┃              │    客資産を証券会社の資産から明確に分別するこ│  毎に分別管理することは、資金利用の│                            ┃

┃              │    とを要求している。これらの国では、分別され│  非効率、過大な事務手続きのコストを│                            ┃

┃              │    た顧客資産について、証券会社破綻の際に、本│  考えると現実的ではない。          │                            ┃

┃              │    来の所有者たる顧客に早期に弁済されることを│                                    │                            ┃

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┃  項    目    │      証取審総合部会報告(9年6月13日)            │    証取法等の改正に当たっての考え方│          備     考         ┃

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┃              │    担保する制度を設けている。我が国においても│○  こうしたコストを勘案しつつ、顧客│・  信託の運用果実については┃

┃              │    、このような法制度を参考にして、証券会社の│  の預り金等の確実な返還を法的に担保│  、委託者たる証券会社に帰属┃

┃              │    顧客資産の分別を強化するとともに、分別され│  するため、                        │  するものとする。          ┃

┃              │    た顧客資産の顧客への的確な返還を担保するた│  (a)  顧客全体への純債務相当額を信託│                            ┃

┃              │    めの制度を早急に整備することが必要となる。│    の形で外部預託し、              │・  分別管理の導入にあたって┃

┃              │                                              │  (b)  原則として週に1回、顧客全体の│  は、証券会社のシステム対応┃

┃              │  (c)  具体的な分別義務の強化の方法としては、顧│    取引を一括して清算して、その預託│  や信託銀行の協力体制の整備┃

┃              │    客の有価証券を証券会社の資産から区分して顧│    額の更新を行う。                │  を早急に行なうことが必要。┃

┃              │    客名義での管理を強化することが求められる。│                                    │                            ┃

┃              │    さらに、証券会社の破綻の際に一般債権として│[信用取引に関連した分別管理]      │                            ┃

┃              │    取り扱われる虞の高い預り金、証拠金、保証金│                                    │                            ┃

┃              │    等を証券会社の資産から明確に分離して証券会│○  信用取引等に係る代用有価証券及び│・先物、オプション取引の証拠┃

┃              │    社の外部で管理することが必要となる。      │  本担保株券のうち、証券会社が借入の│  金については、既に証券取引┃

┃              │                                              │  担保としているものは、担保相当額の│  所の規則で分別管理を導入済┃

┃              │  (d)  このように適切に分別した顧客資産について│  外部預託が必要。                  │  。                        ┃

┃              │    は、証券会社の破綻の際に、既存の法制度との│                                    │                            ┃

┃              │    整合性に留意の上、顧客に返還されることが法│○  但し、顧客に融資するための借入の│                            ┃

┃              │    制上明確にされることが必要である。また、分│  担保となっている代用有価証券につい│                            ┃

┃              │    別管理の重要性に鑑み、分別管理に関する違反│  て、例えば、借入先との契約により、│                            ┃

┃              │    行為に対しては、厳格な行政処分等を課すこと│  証券会社自身の借入債務に充当しない│                            ┃

┃              │    が必要であると考えられる。                │  こととされているものについては、分│                            ┃

┃              │                                              │  別管理されているとみなすことが可能│                            ┃

┃              │                                              │  か。                              │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │[分別管理義務違反への罰則]        │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │○  分別管理義務違反は、投資者への損│                            ┃

┃              │                                              │  害を与えるのみならず、証券取引その│                            ┃

┃              │                                              │  ものへの投資者の信頼を損なうことか│                            ┃

┃              │                                              │  ら、罰則で義務の遵守を担保する必要│                            ┃

┃              │                                              │  があるのではないか。              │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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┃  項    目    │      証取審総合部会報告(9年6月13日)            │    証取法等の改正に当たっての考え方│          備     考         ┃

┠───────┼───────────────────────┼──────────────────┼──────────────┨

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │[倒産手続の特例の創設等]          │                            ┃

┃3  証券会社の│(3)  顧客資産の返還手続の迅速化               │                                    │                            ┃

┃  倒産手続の特│    顧客資産の顧客への返還手続は、現行の破産等│○  証券会社の経営が悪化した場合、仮│                            ┃

┃  例の創設    │  の倒産処理手続によった場合には、債権者となる│  に顧客資産が分別管理されているとし│                            ┃

┃              │  関係者の数が膨大であること等により、相当の時│  ても、一般債権者の抜け駆け的差押え│                            ┃

┃              │  間と手間がかかることが予想される。顧客資産の│  等により、顧客資産の迅速な返還や債│                            ┃

┃              │  顧客への返還が法制上明確になったとしても、返│  権回収が害されるリスクがあり、これ│                            ┃

┃              │  還手続に相当の時間を要する場合には、市場価格│  に対処するためには、適時に司法上の│                            ┃

┃              │  の変動により顧客が損害を被る可能性がある。従│  倒産手続に入ることが必要又は有効と│                            ┃

┃              │  って、証券会社の破綻処理の特殊性に鑑み、顧客│  なる場合が多いと考えられる。また、│                            ┃

┃              │  資産返還のための手続規定を整備することが必要│  顧客が基金の補償限度額を超えて損失│                            ┃

┃              │  である。さらに、このような返還手続の過程で、│  を被る場合には、司法上の倒産手続に│                            ┃

┃              │  次項に述べる寄託証券補償基金の利用を検討する│  おいて、権利回収を図っていくことが│                            ┃

┃              │  ことが必要である。                          │  通常想定される。                  │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

┃              │                                              │○  破産及び会社更生手続について、以│・  銀行等についても、円滑か┃

┃              │                                              │  下の手当が必要ではないか。        │  つ迅速な破綻処理が行なわれ┃

┃              │                                              │  ・  破綻証券会社につき、適時の破産│  るよう、破産手続及び会社更┃

┃              │                                              │    手続が開始されるよう、当局の破産│  生手続について特例が設けら┃

┃              │                                              │    の申立権を認める。              │  れている(「金融機関の更生┃

┃              │                                              │  ・  破産及び会社更生手続について、│  手続の特例等に関する法律」┃

┃              │                                              │    債権届出や議決権行使等を、顧客に│  (平成8年6月))。      ┃

┃              │                                              │    代理して、基金が行なえることとし│                            ┃

┃              │                                              │    、顧客の保護及び手続の迅速化を図│・  証券会社の地域経済に及ぼ┃

┃              │                                              │    る。                            │  す影響に鑑みれば、銀行等の┃

┃              │                                              │                                    │  場合と異なり、当局に会社更┃

┃              │                                              │○  更に、倒産手続外においても、破綻│  生の申立権まで付与する必要┃

┃              │                                              │  証券会社の顧客資産(保護預かり有価│  性は乏しいのではないか。  ┃

┃              │                                              │  証券等)につき、基金が顧客に代理し│                            ┃

┃              │                                              │  て、その保全を行なうことができるこ│                            ┃

┃              │                                              │  ととする(第3者異議の訴えの提起や│                            ┃

┃              │                                              │  や取戻権の行使等)。              │                            ┃

┃              │                                              │                                    │                            ┃

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[続きがあります]