「貸金業制度に関するプロジェクトチーム」第一回事務局会議の概要
日時 | 平成21年11月30日(月)17時00分~19時05分 | |||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
場所 | 金融庁15階 第1研修室・第2研修室 | |||||||||||||
出席者 | 田村内閣府大臣政務官(金融担当)、泉内閣府大臣政務官(消費者担当)、中村法務大臣政務官、警察庁生活安全局 白川生活経済対策管理官、経済産業省商務情報政策局 坂口取引信用課長、日本銀行企画局 吉岡審議役 | |||||||||||||
議題 | メンバー紹介 PT、事務局会議の進め方について 貸金業法改正等の概要について ヒアリング
|
【田村政務官より開催の挨拶】
この事務局会議は様々なヒアリングを重ねて、その後のプロジェクトチームでの検討に資するような調査、分析などを行っていくことを目的としている。政策を決定していく課程であるので、与党議員には傍聴していただいている。政策決定の透明性ということもあり、また、マスコミの方にも貸金業の現状を聞いていただきたいという思いもあり、基本的にマスコミの方の傍聴は可能となっている。
【田村政務官よりメンバー紹介、PT、事務局会議の進め方について説明】
【金融庁より貸金業法改正等の概要について説明】
【質疑応答】
○ 貸金業に関する利用者のクレームが法改正後減少しているかというと、減少していない。貸金業法の改正によって、貸金業の利用者側にどのようなメリットがあったのか、そのことがわかるデータはないのか。
(答:金融庁)苦情の件数については、金融庁の参考資料にあるとおり、3年前の法改正から減少傾向にある。他にも金融庁で調べたデータの主要なものは参考資料の中に掲載している。今後のヒアリングを通じて、現状の把握、分析にも努めていきたい。
○ この法律が公布されたのが3年前。現在、信用収縮が問題となっている中、法改正により規制を厳しくすることで、消費者の利便性がかえって低下し、さらにはヤミ金が増加するなど、大きな問題が発生するのではないか。これらの状況も踏まえながら、見直しなどを検討していただきたい。
(答:金融庁)本事務局会議の目的は、いろいろな方のご意見を聞きPTの議論の土台を作っていくということ。今後は、様々な方からご意見を伺い検討を進めてまいりたい。
○ 中小企業の資金繰りが厳しい中、総量規制、金利規制の導入を延ばすべきではないかとの議論があると聞くが、実際そのような話はあるのか。
(答:金融庁)そのような意見をおっしゃっている人がいることは承知している。また、一方では、全く違うことをおっしゃっている人もいる。大臣は、来年6月の完全施行に向けて円滑な施行のために講ずべき施策があるかということを検討するとおっしゃっており、基本的にその方針に沿って検討を進めていく。
【日本貸金業協会の説明】
- 日本貸金業協会は貸金業法に基づく自主規制機関として、会員である貸金業者が守るべき基本規則を定め、貸金業者への指導、監督に努めている。
- 平成21年3月の時点で、消費者金融の総貸付残高は約38兆円。主な貸出先は年収300万円以下の低所得者層や、従業員数5人未満の小規模事業者である。
- 貸金業協会の会員である貸金業者の経営実態調査によると、貸付残高は1年半の間に16.6兆円から13.8兆円に約2.8兆円(17%)減少している。同時に、月間の貸付金額についても、前年同月比20%減程度で推移している。また、上限金利の引き下げを見越して、無担保貸付における貸出金利は低下している。
- 貸金業者の数は、ピーク時(昭和62年:約47,500社)の十分の一(平成21年8月末約5000社)となっている。また、貸金業協会の会員数は8月末時点で2589社(加入率51.1%)であり、まだまだ加入率は低い状況。
- アンケートによると、多くの業者が完全施行後は減益になると考えている。貸金業者は、店舗削減、人件費削減などコスト削減努力を進めているものの、利回りの低下等により、利息収入がそれ以上に減少している。平成20年度は、利息返還費用を除いた営業費用(貸付残高比率15.6%)が利息収入(貸付残高比率14.2%)を上回っており、事業が成り立たない状況である。このように、今後の貸金業者の経営環境は厳しいものとなっている。
- 利息返還請求を行った人のプロフィールを見ると、正常返済先と完済・残高無しの先で半数を占めている。
- 貸金業協会の相談センターに寄せられる相談の内容を見ると、融資関連(借入相談等)が増加傾向となっている。
- 貸金業者の審査姿勢について、約7割の貸金業者が既に審査を厳格化しており、その結果を受けて、成約率も低下している(平成19年9月:約37%→平成21年3月:約27%)。
- 資金需要者(経営者・個人事業主)に事業性資金の借入先を調査したところ、銀行、信金、信組が借入先の中心ではあるが、約13%が貸金業者からの借入を利用している。
- 完全施行に向けて対応すべき課題は決して少なくない状況だと考えている。協会としては特に、(1)改正貸金業法の認知度向上のための政府による広報の強化、(2)総量規制の導入による借入れできない資金需要者への対応、(3)リスクの高い個人・零細事業者等の資金需要者の利益のため、貸金業者の資金供給機能を麻痺させないための施策の検討をお願いしたい。
【日本消費者金融協会の説明】
- 日本消費者金融協会(JCFA)は、消費者金融の健全な発展を図ることを目的として1969年に設立された任意団体。現在の会員数は30社であるが、消費者向無担保貸金業者の貸付残高のシェアは約6割である。
- 2006年以降、会員数が減少しており、現在は2006年の三分の一となっている。これに伴い、会員の貸付残高合計、従業員数、店舗数も大幅に減少している。退会の理由として最も多いものは廃業で、退会会員の多くが消費者金融市場から撤退している。
- 貸金業者の経営実態に関して、金利の引き下げにより利息収入が減少する中、過払金返還請求による貸倒償却費用、利息返還費用が急増している。過払金に関するJCFAの調査によると、07年4月から09年9月までの利息返還に伴う元本毀損額(約8,400億円)と利息返還額(約1兆4,000億円)を合わせると2兆2,000億円となる。このように過払金は、中小貸金業者だけではなく、上場貸金業者にまで大きなダメージを与えている。このままでは消費者信用全体にまで影響を与える可能性もあり、資金需要者のニーズに応えられない状況である。
- 過払金返還請求の内、30%弱が完済している人からの請求である。また、95%が弁護士や司法書士を通じて返還請求を行っているが、請求が一部の弁護士・司法書士に偏っている。
- 貸金業協会による自主規制基本規則には、既に、過剰貸付の防止のための規定が整備されており、実質的な総量規制として機能している。
- 会員へのアンケートによると、既存顧客の内、総量規制に該当する者は54.5%であり、これらの者には完全施行後新たな貸付けを行うことができなくなる。
- ヤミ金利用経験者への調査によると、医療費等の緊急性が高い資金使途の場合は、相対的にヤミ金から借入れを行う確率が高くなっている。
- 4条施行に関して、指定信用情報機関の利用や、貸金業務取扱主任者の導入などは資金需要者の利益保護のために必要な措置だと考えるが、特に総量規制については、その影響は計り知れない。この改正は過剰融資の抑制が目的であり、健全な資金需要者の利用を防止することが目的ではないと考えるので、必要な見直しの検討をお願いしたい。
【日本弁護士連合会の説明】
- 2006年の貸金業法改正を契機として、政府に多重債務者対策本部が設置され、翌年4月には多重債務問題改善プログラムが策定された。現在、約9割の市区町村において相談窓口が設置されており、更に今年の9月から12月の期間において多重債務相談強化キャンペーンが実施されるなど、官民一体となり、多重債務問題の改善に向けた取り組みが進んでいる。
- 多重債務者の一つの指標である5件以上無担保無保証の借入れを行っている者の数は、2007年2月から2009年5月の間で100万人以上減少している。さらに、自己破産の件数についても、2003年の24万件をピークとして、2008年には13万件と減少している。更に、ヤミ金被害についても減少しているところである。
- 低所得者に対するセーフティネット制度である「生活福祉資金貸付」については、今年の10月に制度が改正されており、より使い勝手がよくなっている。また緊急の資金需要に対応するためにつなぎ融資の制度も創設しており、35億円の予算措置がなされていると承知している。特に、保証人が無くても貸出を行えるように制度改正を行ったことにより、より使いやすい制度となったと考えている。
- 貸金業者の貸付残高や成約率が減少しているが、これは過剰貸付となっていた者が減りつつあることによると考えられる。
- 貸金業者から借りられなくなった人の行動を調査したアンケート調査によると、希望通りの借入ができなかった場合の行動について、半数以上が「支出をあきらめる」と回答している。
- 貸金業法の施行により、中小企業の資金繰りが悪化するとの指摘があるが、金融庁のアンケート調査によると、改正貸金業法の影響・ノンバンクの融資態度により資金繰りが悪化したとの回答は1.5%であり、改正貸金業法の中小企業の資金繰りに与える影響は少ないと考えられる。事業者向け大手貸金業者が破綻した際も、中小企業から資金繰りが悪化したとの声は聞こえてこなかった。
- 中小企業に対する資金繰り支援については、公的な保証・融資制度である緊急保証やセーフティネット貸付で対応すべきであり、中小企業もノンバンクからの高利の資金を希望している訳ではない。
- 総量規制は新たな借入ができなくなるだけで、貸しはがしを許すものではない。また法人については対象となっておらず、個人事業者についても例外が規定されており、資金需要者のニーズに合わせ、柔軟な規制となっている。また貸金業者は返済に困っている者に対し、相談・助言機関を紹介する努力義務が貸金業法上課せられており、これをうまく活用し、多重債務者を相談窓口に導いていくことが重要であると考えている。
【日本司法書士会連合会の説明】
- 沖縄の自己破産実態調査から多重債務者の現状について説明したい。調査によると自己破産者の多くは、無職・主婦層、パート・アルバイトなどの収入が不安定と思われる職業についている。また、自営業者の自己破産も増加傾向にある。
- 破産者の平均収入は、月15万円以下が84%を占め、低所得層での破産が多いことを示している。また、破産者の多くは賃貸住宅居住者となっており、収入が少ない中、家賃などの支払いが大きな負担となっていると推測される。
- 破産者の平均借入件数は約10社であり、10社までの借入で破産するケースが約73%となっている。また、破産者の平均負債額は約684万円となっている。この値は住宅ローンを含む額であり、実際には400万円以下の負債で破産に至る人が62%と過半数以上を占めている。
- 破産者の借金の目的は、生活費を補うためが91%、借金返済のためが64%と大きな割合を占めている。借金の期間は、「5年以上」が76%であり、さらに43%の方が10年以上もの期間、借金を続けている。
- このような状況を踏まえ、多重債務者対策として今後求められる事項は次のとおりであると考える。
- 一つ目は相談窓口の周知・充実である。多重債務者が求めているものは生活の再建であり、法律相談だけでなく、就職相談、福祉相談等を合わせて進める必要がある。したがって、市区町村などの公的な窓口間の連携、行政と法律家との連携を進めていく必要がある。
- 二つ目は生活福祉資金貸付制度の運用改善である。本年10月の制度改正により、債務整理に必要な資金を貸し付けることができるようになったはずであるが、貸付を受けた後の破産によりこれらの借入債務がどのように扱われるか明確にされていないこと等により、当該制度の活用が進んでいない。この制度が活用されるよう、何らかの対応を図っていくことが必要である。
- 三つ目は、事業者の破産の際の予納金についてである。事業者の破産手続きにおいては、少なくとも100万円程度の予納金が必要となる。より低廉な費用で破産申立てが可能となるよう、破産管財人として司法書士なども活用していくべきだと考える。
- 最後に、弁護士・司法書士に関して、(過払金返還請求の際に多額の手数料をとるなど、)情けない報道がなされている。このような状況を改善するために日本司法書士会連合会においても指針の制定を進めている。同時に、行政等の相談窓口の広報を強化し、そこから適切に地元の弁護士・司法書士などの専門家に依頼していく流れを構築すれば、それが多重債務者の生活再建に繋がっていくと考えている。
○ 質問が4つある。
(1) 事業者数の減少が見られるが、原因としては、金利引下げの影響と過払金の影響のどちらが大きいのか。
(2) 総量規制について、年収の三分の一という要件がおかれているが、年収の三分の一以上の借入れがある者と年収の三分の一以下の借入れがある者のそれぞれのデフォルト率はどうなっているのか。
(3) 貸金業者において、融資とそれに伴う相談について、どのような取組みを行っているのか。
(4) 個人信用情報がヤミ金に流れることが問題であるとの指摘があるが、個人信用情報の保護について、貸金業法はどのような規制となっているのか。
(答:日本貸金業協会)一点目について、改正貸金業法の完全施行はまだこれからであり、現在、貸金業者の廃業・破綻、残高の減少などを引き起こしているのは、過払金の問題である。そもそも多重債務者の救済に資するものとして、過払金返還に対応してきたが、先ほど説明したとおり、過払金請求者の半分以上が完済後の残高がない人及び正常な融資先であり、返還した過払金の全てが、必ずしも多重債務者に届いていないのが実態である。現状、判例を踏まえた対応で、貸金業者、請求者ともに分かりにくく、過払金の返還負担は先が見えず、貸金業者の経営を極めて不安定なものにしている。その結果、貸金業者は廃業・縮小をせざるを得ない状況となっている。このままでは、多重債務者の救済に当てられるべき過払金の原資まで枯渇すると考えられる。利息返還請求への対応コストは、既にこの3年間で4兆円を超えており、極めて異例な事態と思われる。多重債務問題解決への対応として、過払金について、そろそろ何らかの冷静な検討が必要ではないかと考えている。
(答:日本消費者金融協会)二点目について、年収の三分の一以上の借入れがある者のデフォルト率については、そこまでのデータは把握していないが、年収の三分の一以上の借入れがある方でも返済をきちっとされている方は多いし、年収の三分の一以下の借入れの方でも延滞されている方もいる。
また、東京情報大学 堂下准教授による収入と返済余力についてのアンケート調査の結果では、収入の10%未満の借入れで返済余力なしが3.6%、20%未満の借入れで7.5%、30%未満の借入れで10.1%、40%未満の借入れで18.9%、50%未満の借入れで23.8%、60%未満の借入れで32.6%、70%未満の借入れで44%、80%未満の借入れで48.6%、90%未満の借入れで50%、100%未満の借入れで57.9%となっている。
三点目について、大手貸金業者は相談窓口をそれぞれ設けており、そこで相談を受けている。返済困難な顧客の相談も受けており、利息の免除等を実施することもある。
(答:金融庁)四点目について、貸金業法では、指定信用情報機関が有している個人信用情報を目的外に使用することに対して罰則が設けてられている。貸金業者又はその役職員は、信用情報を目的外に使用し又は第三者に提供した場合、2年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの併科となっている。
○ 日本消費者金融協会の資料では、10人以下の零細企業の30%が貸金業者を利用しているとのことであったが、日弁連の資料に記載されている中小企業向けのアンケート調査では、改正貸金業法の影響・ノンバンクの融資態度により資金繰りが悪化したとの回答は1.5%となっており、これでは議論がかみ合わない。日本消費者金融協会の資料は、零細企業に対するアンケートとなっているが、日弁連の資料は中小企業となっており、企業規模の違いから比較が難しいのではないか。
○ 金融庁に質問がある。最高裁判決によりみなし弁済規定が認められなくなったと日本消費者金融協会は言っているが、最高裁判決が下されるまでは業者に対し、どのような指導をしてきたのか。期限の利益喪失特約が付されている契約は任意性が認められないと指導していたのか。また、総量規制の三分の一の根拠は何か。
(答:金融庁)平成18年の最高裁判決により新しい判断が下されたものと認識している。それ以前は、期限の利益喪失特約が付されている契約の場合、任意性は否定されるとの指導はしてこなかったと理解している。
総量規制三分の一の根拠は、総務省の家計調査や、消費者金融の利用者の実態調査を見て仮定を置き、計算している。具体的には、消費者金融の利用者の大部分が年収600万円以下の世帯であるとの実態、及び600万円以下の世帯の収入から支出を引いた額、すなわち返済に充てることができる額が15%であるという家計調査の結果をもとに、金利18%、元利均等償還、返済期間3年という前提を置いて計算を行うと、完済できる額が年収の三分の一となるということを根拠としている。
○ これはお願いだが、全国クレジットサラ金問題対策協議会という団体からFAXが毎週のように議員に届くが、このPTを開催し関係者から意見を聴取することさえも反対であるとの内容が書かれている。これは言論を縛るという意味から良くないことであると考えている。この点について、直接は関係ないかもしれないが日弁連に是正をお願いしたい。
○ 日本司法書士会連合会は過払金返還請求についての指針の制定の準備をしていると言っていたが、いつ頃できるのか。日弁連は検討していないのか。
(答:日本司法書士会連合会)日本司法書士会連合会としては、できれば年内、遅くとも今年度中には指針を出したいと考えている。
(答:日本弁護士連合会)日弁連は本年7月17日に指針をまとめている。現在、この点についての実態調査を行っているところであり、今後結果を公表したいと考えている。
○ 本日のヒアリングを聞く限り、改正貸金業法は効果を挙げていることを強く感じた。日本司法書士会連合会に質問だが、改正貸金業法の完全施行について日弁連は粛々と進めてほしいとの意見だったが、日本司法書士会連合会はどのように考えているのか。
(答:日本司法書士会連合会)日弁連と同様に粛々と施行してほしいとの考えである。
【田村政務官より閉会の挨拶】
時間が来たので本日はここまでとしたい。次回は今週の金曜日に予定している。第3回は来週の月曜日である。来週以降は例えば月曜日、火曜日と2日連続で開催することも考えていきたい。
(以 上)
お問い合わせ先
金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室
(内線2648)