コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議(第9回)議事録

1.日時:

平成27年3月5日(木)10時00分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第一特別会議室

○池尾座長

それでは、定刻になりましたし、ご出席予定のメンバーの方は全員おそろいになりましたので、ただいまより「コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議」第9回会合を開催いたしたいと思います。皆様におかれましては、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、早速ですが、本日の議事に入らせていただきたいと思います。お手元の議事次第にありますように、本日は大きく2点に関して議論をしていただきたいと思っております。

まずは、昨年末の前回会合で取りまとめられたコーポレートガバナンス・コード原案のパブリックコメント案ですね。パブリックコメント案では、その序文に、東京証券取引所において関連する上場規則等の改正を行うとか、制度整備を期待しているという記載がありますので、それを踏まえた上での上場規則等の改正案等につきまして、東京証券取引所からまずご説明をいただいて、その後、意見交換をするというのが第1部です。

第2部が、このコーポレートガバナンス・コード原案自体につきまして、広く国内外の関係者のご意見を求めるために、年末年始にかけて和英両文によるパブリックコメントを実施したところです。このパブリックコメント案に対し寄せられたご意見の概要と、それに対する回答案といいますか、答えですね。それから、そうしたものを踏まえたコード原案の修正点につきまして、事務局からご説明をいただいて、その後、意見交換をするということですね。

その上で、本日、本有識者会議としてコーポレートガバナンス・コード原案を最終確定させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。ということで、大きく2点に関して議論をしていただきたいと思います。

それでは、まず1点目の制度整備に関しまして、東京証券取引所からご説明をお願いいたします。

○渡邉東京証券取引所上場部課長

それでは、お手元の資料1を使ってご説明をさせていただきます。

1枚おめくりいただきまして、2ページ目は説明資料の目次になります。今回の制度改正のポイントは4つございますけれども、順にご説明させていただきます。

3ページ目は1つ目のポイントです。コードの適用開始についてでございます。コードは本年の6月1日から適用を開始いたします。5月いっぱいで既存の東証の「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を廃止して、下の枠囲いに記載してありますが、その尊重を求める現行の上場規則の規定につきましては、6月1日より、新しい「コーポレートガバナンス・コード」の趣旨・精神の尊重を求める規定に置きかえます。

これは、私どもではOECDのガバナンス原則に準拠した「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を2004年に策定しておりますが、今回のガバナンス・コードも同じくOECD原則に準拠したものでございまして、内容的に重複しておりますので、既存の原則は廃止して、新設するコードに置きかえるというものでございます。

おめくりいただきまして、2つ目のポイントがコードの一部を実施しない場合の理由の説明でございます。これを上場ルール上で義務づけることによりまして、コンプライ・オア・エクスプレインの規律が働くようになります。

コンプライ・オア・エクスプレインのエクスプレインにつきましては、上場会社のコーポレートガバナンスの状況について記載をお願いしておりますコーポレートガバナンス報告書で説明を求めることにいたします。この説明義務につきましては、市場第一部・第二部、マザーズ、JASDAQの上場会社全社に課すということにいたします。

ここで次のページをごらんいただきますと、5ページ目は、ご参考ですが、コードの適用対象を国際比較した図になっております。ごらんのとおり、イギリス、ドイツ、フランスといったコードの採用国では、新興企業向け市場は説明義務が課されていないという状況になっております。

このように、海外では新興企業向け市場には説明義務を課さないというのが主流でございますが、内外の投資家と話をしますと、せっかくのコードができたのだから、何らかの形で新興企業にもちゃんと普及したほうがいいんじゃないかというご意見も寄せられております。そこで、新興企業にもコードの普及を図るために、マザーズ、JASDAQの上場会社についてもコードのコンプライ・オア・エクスプレインは対象にいたします。

一方で、説明義務を求める原則の範囲につきましては緩和をいたしまして、コードのうち基本原則部分を実施しない場合に限定することを予定しております。

なお、外国会社につきましては、本国において別途ガバナンスに関する規制を受けていることなどを前提にいたしまして、エクスプレインの対象外としております。

次に3つ目のポイントは、コードの一部を実施しない場合の理由の説明を行う媒体と適用時期になります。まず、コンプライ・オア・エクスプレインの媒体につきましては、先ほどご説明したとおりですが、ガバナンス報告書でその理由を説明していただきます。

また、資料には書いておりませんが、今回のコードでは政策保有に関する方針など開示そのものがコンプライ・オア・エクスプレインの対象となっているものがございます。これらの原則をコンプライするために、例えば政策保有に関する情報を開示するということになりますけれども、その開示の受け皿となる記載欄も、コーポレートガバナンス報告書に設ける予定でございます。

先ほどの原則をコンプライしない場合のエクスプレインについては、報告書に必ず書いてもらうということを想定しておりますけれども、こちらの、開示が求められる原則をコンプライするために行う開示については、いわゆる参照方式といいますか、どこか別の場所に記載している場合に、どこにどういうふうに書いてあるというのをコーポレートガバナンス報告書に書いてもらうというような取扱いもできるようにしたいと考えております。

次に、2点目の時期でございますけれども、本年は適用初年度でございますので、各社の準備が整い次第、速やかにご提出いただければよいということにしたいと思っております。ただ、準備ができなければ、いつまでも出さなくていいということではなく、来年の株主総会に向けた対話には間に合わせていただく必要がありますので、遅くとも年内にはご提出をいただくということを想定しております。

4つ目のポイントは、独立性に関する情報開示の見直しでございます。ガバナンス・コードでは2名以上の独立社外取締役の選任を掲げることになりますが、その円滑な選任に資するために独立性に関する情報開示を見直そうというものでございます。

7ページは、その現状を図にしたものでございまして、横軸が左から右に上場会社・子会社の業務執行者、親会社、近親者、主要な取引先などと並んでおりまして、こちらは取締役の属性と書いていますが、いわば会社との関係性の軸でございます。

一方で、縦軸は、現在とか最近とか10年以内とか過去10年以前とか、そういった形で並んでおりまして、こちらは取締役の方がいつ会社との間でそうした関係に該当していたかという、いわば時間軸でございます。

取締役の方がこのマトリクスのどこに位置するかによりまして、独立性が認められるか否か、独立性が認められる場合に情報開示が必要かどうか、情報開示が必要な場合にはどの程度の情報開示が必要かといった点が変わってくるような仕組みになっております。

まず、赤に該当する取締役の方については独立性が認められないということになっています。例えば、上場会社の業務執行者はもちろんですけれども、その親会社・子会社・兄弟会社の業務執行者も独立性は認められないということです。

次に、赤以外に該当する場合は、いずれも独立性は認められるところですけれども、情報開示の要否という点で差がございます。まず、色がついていないところにつきましては、独立性に影響を与えるような関係というのはもともとありませんので、何の情報開示も要らないということでございます。

これに対して、青か黄色に該当するような場合には、独立性に影響を与える可能性のある関係がありますので、その度合いに応じた情報開示が必要になります。

どんな情報開示が必要かといいますと、青に該当する場合には、その独立性に影響を与える可能性が比較的少ないので、会社との関係について、その概要を開示すれば足りるということになりますが、黄色のところに該当する場合には、独立性に影響を与える可能性が比較的大きいので、会社との関係に加えて、それでもなお独立性ありと判断した理由もご説明いただいております。

仕組みは以上のとおりなのですが、現在、上場会社ではこれよりずっと慎重に運用が行われているという話を伺っております。具体的に申し上げますと、黄色に該当する場合は、仕組み上は、青や色がついていないところと同じく独立性ありということなのですが、運用上は赤と同じく独立性なしとして取り扱われているということでございます。

独立社外取締役の実際の選任に当たって、上場会社のニーズが高いのは、ビジネスバックグラウンドをお持ちで、上場会社のビジネスについても一定の理解のある主要取引先の元経営者あたりなのですが、現在の上場会社さんの運用のままでは、そうしたニーズが高い層が、事実上は一律に選べないということになってしまいます。

また、今回のコードでは、各社が取引所の独立性基準を参考に自社の独立性判断基準を策定すべきとされておりますので、各社で策定する上でも参考としていただく取引所の独立性基準についての誤解を解く必要がございます。そこで、この黄色の要説明という類型は廃止をいたしまして、要開示という類型と統一をすることにいたしまして、会社との関係は開示をさせつつ、独立性の判断は、それを見た株主と会社の対話に委ねるということにいたしまして、そうした過度に保守的な運用を是正することにしたいと考えております。

8ページ目は、参考として、見直し後の全体像を載せてございます。

最後、9ページ目は今後のスケジュールを記載しております。先月の24日に今ご説明しました内容を公表いたしまして、パブリックコメントを行っております。

制度改正の正式な決定は5月上旬ごろ、施行は6月1日からとなりますが、それに先立って3月中旬より、関係団体の皆様にもご協力をいただきながら、コードの概要ですとか上場制度の見直しについて、全国で上場会社向けの説明会を開催してまいりたいと考えております。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明に関連して、何かご質問あるいはご意見がございましたら、どなたからでも結構ですので、よろしくお願いします。

○中村メンバー

ありがとうございます。私から、コードの適用開始時期の運用につきまして、ちょっと確認的にご質問させていただきたいと思います。

コードは6月1日から適用開始ということでございまして、こちらの6ページの図を拝見いたしますと、6月が株主総会の会社におきましては、準備ができ次第、12月末までの間に速やかに提出ということでございますけれども、その際に、このいわゆるコーポレートガバナンス・コードにかかわる部分でない部分についても、株主総会絡みで変更されるという会社さんも多々あろうかと思いますが、その場合につきましては、その部分については従来どおりの日程で報告をした上で、このコンプライ・オア・エクスプレインのエクスプレインの部分ということにつきまして順次開示をしていくと。

その部分につきましても、例えば、この部分について会社としての見解がまとまったということであれば、そのできたところから順次開示をしていくと、そのようなイメージで私は理解しているのですが、そのような理解でよろしいかどうかということについて教えていただければと思います。

○渡邉東京証券取引所上場部課長

ご理解のとおりでございます。

○池尾座長

そうすると、やや五月雨式に開示が行われるという可能性はあるんだけど、それは許容するというか、構わないということですね。

○渡邉東京証券取引所上場部課長

はい。

○池尾座長

ほかにご意見、ご質問いかがでしょうか。

○森メンバー

ご説明いただいた適用時期、適用となる市場の範囲、コンプライ・オア・エクスプレインについて記載する場所、あるいは独立性については理解できました。

それで、コードの原案の補充原則1-2③の背景説明のところですが、ここはコードとして補充原則には落とし込めなかったということで、具体的には運用に当たってその趣旨を斟酌しながらといいますか、生かしながら行っていくという説明をいただいたと思います。ここの背景説明につきまして、やはり東京証券取引所の運用においてできる限り生かしていただきたいと考えております。これはお願いでありますが、例えば、基本原則1のところにある総会開催日の柔軟化について、株主との対話については日常的な対話も非常に大事ですが、多くの株主にとっては、やはり株主総会での対話というものが非常に重要でありますので、現状の株主総会開催日の集中化を避けるような、分散化を促進させる手段をぜひ講じていただければと考えております。

○池尾座長

よろしいですか。ほかにご意見、ご質問いかがでしょうか。

それでは、東証においても迅速に制度整備をしていただけるということで、説明会等も開催していただいて、そこで今ありました趣旨と背景等についても徹底していただくということでお願いしたいということだと思います。

それでは、東京証券取引所における上場制度の見直し、制度整備に関しましては、以上ということでよろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

それでは、コーポレートガバナンス・コードの原案そのものに関するパブリックコメントを踏まえた議論に移りたいと思います。それで、まず、パブリックコメントにおいて寄せられたご意見の概要と、それに対する回答案ですね。それから、それを踏まえたコード原案の修正点につきまして、金融庁からご説明をまずお願いいたします。

なお、パブリックコメントでは、日本語で80件、それから英語で41件の計121件に上る非常に多くの団体・個人からご意見をお寄せいただきました。それは大変ありがたいんですが、それを全て紹介するわけにはいきませんので、代表的なご意見のみを説明資料に記載させていただいているということはご承知ください。

それでは、事務局からご説明をお願いいたします。

○油布企業開示課長

ご説明申し上げます。それでは、まず、資料2、3、4についてご説明申し上げます。

資料2は、日本語と英語で寄せられましたコメントから選んで全体的なスタンスに関する部分だけを抜粋したものです。資料3は、日本語でお寄せいただいたコメントから選んで、各論的なコメントだけを抜粋したもの。資料4は、英語でお寄せいただいたコメントのうち、各論的なものだけを選択して載せているものです。

まず、資料2からごらんいただきたいと思います。資料2の1ページの点線の中になります。先ほど座長からもお話もございましたが、ここではスチュワードシップ・コードとの比較で申し上げますが、日本語でのパブリックコメントは80の個人及び団体から意見を頂戴いたしまして、スチュワードシップ・コードのときは26でございました。それから、英語でお寄せいただいたコメントは41の個人及び団体からいただいております。スチュワードシップ・コードでは19でございました。都合、合わせますと121の個人・団体からということです。スチュワードシップ・コードのときも45頂戴いたしまして、随分多いなという印象だったんですが、この3倍近くにあたる方々からご意見をいただいております。

この121につきまして、おおむねごく簡単にまとめさせていただいたのが1ページ目の真ん中です。まず、コードの策定に対してサポートする、歓迎・賛成のスタンスであるということを明らかにした上で、ここはこう直したほうがいいとか、ここは削除したほうがいいとか、ここはどういう意味ですかというようなお尋ねがあったものが全体の3分の2ございました。

それから、はっきり書いているもの、それから、はっきりはお書きになっておられなくても、全体のトーンからして、おそらくこのご意見はコード策定そのものに反対なんだろうなと思われるものは全部で数件ございまして、数件といっても片手におさまる範囲の数件でございます。いずれも個人の方からのご意見でした。

残りの3分の1は、コード策定に反対とか賛成とか、そういうことを示さずに、「ここの等というのはどういう意味ですか」とか、あるいはここはこういうふうに直したほうがいいのではないでしょうかといったようなコメントの提出の仕方でございます。

この1ページ目の下に3つ、まず、日本語でお寄せいただいたサポーティブなコメントをつけております。ルールといたしまして、どの団体あるいはどなたからコメントをいただいたかというのは当庁から対外的には申し上げられないことになっておりますので、この場ではそれは控えさせていただきます。

この3つについて趣旨だけご紹介しますが、1つ目のコメントは、ステークホルダーとの協働ですとか非財務情報の開示について記載していることを評価していただいております。

2つ目のコメントでございますが、これは文の終わりのほうを見ていただきますと、短期的な利益を求める株主のためではなくて、会社の持続的な成長、中長期的な企業価値の向上のためであるというふうに目的を位置づけたことは、かねてこの会がお考えになっていることと共通するので高く評価する。これは経済団体からのご意見でございます。

3点目、これは、実態を踏まえた上で、上場会社のあるべき姿を網羅的に定めた功績は大きいということで評価していただいております。

次のページ、2ページ目は、英語でお寄せいただいたサポーティブなコメントです。右側に仮訳をつけておりますので、仮訳のポイントだけご紹介しますが、1つ目のものは、2行目、このコードが進歩的・実践的で、事業活動にとって優しい内容になっていることを称賛する。意外に思われるかもしれませんが、これは外国の大手機関投資家のグループからのサポーティブなコメントでございます。

それから、2つ目のポイントにつきましては、右側の欄の終わりのほう、コーポレートガバナンス・システムの構築に向けた日本の取り組みがこの数年間で加速し、このコードの策定につながったと認識している、と評価いただいています。

3つ目のコメントですが、これも後半の部分だけごらんいただきますと、スチュワードシップ・コードと相まって、国内外の投資家に対して、投資の意思決定に役立つ重要な情報などを与える枠組みを提供するものであるということを評価いただいています。

3ページ目をごらんください。ここでは、数件の否定的なコメントのうち、2件抜粋して一部を載せています。ここについては右欄に回答案も用意しております。

まず、一番上の欄の左側ですが、これはポイントとしましては、文の末尾をごらんいただけると結構かと思いますが、「コードを定めて企業を一方向に誘導する必要はないと考える」というコメントでございます。右側の回答案では、むしろそうであるからこそ、法令のルールベースではなく、ソフトローという形でコンプライ・オア・エクスプレイン、プリンシプルベース・アプローチのコードでもって対応しているということを書いております。

2つ目の否定的なご意見、左側の欄をごらんいただきますと、これはかいつまんで申し上げますと、準備期間が例えば約1カ月程度しかないとすると、この日程はちょっと現実的ではない、こういう日程には断固反対であるというご意見でございます。これは右側の欄に答えぶりを書いておりますが、先ほど東証から説明がございましたように、6月の定時総会を予定している会社におかれましては速やかにということを基本としつつも、6カ月間ぐらいは猶予が事実上とられるということでありますので、ご懸念には及ばなくなっているのではないかと考えられます。

続きまして、資料3をごらんいただきたいと思います。日本語で寄せられました各論的なコメントです。全部で12個載せていたと思いますが、かいつまんでご説明いたします。

左側に番号を振っております。まず、ナンバー1のコメントにつきましては、これはコードの趣旨について、投資家サイドにもしっかり情報発信を行い、趣旨を徹底してほしいということであります。

ナンバー2につきましては、先ほど東証から説明がございましたけれども、ガバナンス報告書を使って統一的に開示を求めるのはいいけれども、そこに直書きすることを求めてしまうと、二重掲載、二重開示になってしまうと。例えば、別途アニュアルレポートで既に開示していることもあったりするので、その場合はURLを引用するような参照方式でいいのではないかというご提案でございます。これは東証から説明がございましたように、基本的にそのような方式で検討なされているということでございます。

なお、これと関連いたしまして、ガバナンス・コード原案の中で、「開示」という言葉と「公表」という言葉、若干使い分けのニュアンスを出しておりましたが、これはどちらも基本的にガバナンス報告書を用いつつも、直接記載でも良いし参照方式でも良い、という対応になりそうだということを踏まえ、「開示」にそろえてはどうかということを提案させて頂いています。

3番目は、「すべからく」という言葉を全てというニュアンスで使っておりましたが、これは誤用であるというご指摘をいただいておりまして、汗顔の至りでございます。

2ページ目ですが、4番は割愛いたしまして、5番でございます。これはいわゆる実質株主と言われる方の総会への出席や議決権行使については、発行会社は信託銀行とよく検討してくださいということをコードで求めております。それに対しまして、信託銀行としては、機関投資家すなわち実質株主に委任状を発行するなどの方法で対応を検討しているというコメントをお寄せいただいておりますので、そのような方向で合理的な対応をお願いしたいということを右側に書いてございます。

3ページですが、6番は、政策保有に関しまして、もっと厳しく規律すべきであるというご意見と、やや厳し過ぎる、合理的ではないのではないかというご意見、相反するご意見をいただいておりますので、それを両方載せております。答えぶりとしましては、右欄に書いてございますが、この点については現状維持としたいということを書いております。この問題については、開示の規律を強化して市場との対話によって解決を目指して欲しいところです。

7番は、「女性の活用」という用語の使い方について、「活躍」に変えたほうがいいというご指摘でございまして、そのように対応させていただとこうと思っております。

8番も、相反するご意見を2つ載せております。中期経営計画について、もっと各社に中期経営計画をしっかり書かせるような対応が望ましいというご意見と、中期経営計画を一律にしょうようするかのように誤解されるのもよくないのではないかという、2つの相反するご意見でございます。

これは右側の回答欄に書いてございますが、そもそもこのコード原案では、いわゆる中期経営計画を作成したほうがいいとか、策定しないほうがいいとかいうことは書いておりませんので、もし作って公表するのであれば、しっかりとコミットしてほしいということを書いているに過ぎないということであります。

9番です。独立社外者のみの会合についてコード原案に記載がございます。これにつきまして、やや誤解かとも思われる、ただし無理からぬ誤解かというようなコメントをお寄せいただいたので、答えぶりを用意しております。ここでのご指摘は、社内者を一切入れないで会議を開催せねばならないというふうに誤解されているようなコメントを若干いただいております。これにつきましては、社外者を構成員とする会合が自らの判断で社内の方を呼ぶ、例えば部長さんを呼ぶとか、あるいは社長さんに来てもらって意見交換をする、説明を求めるというようなことは当然考えられることでありまして、いかなる場合も社外者だけで会合せよという趣旨ではないというお答えを用意しております。

10番は割愛いたしまして、5ページになりますが、11番は末尾をごらんいただきたいと思います。内部監査部門のことについて、このコード原案では、例えば取締役と連携していただきたいというように、連携を図るべきであるということで数カ所、内部監査部門について記載をしておりますが、そもそも連携だけではなくて、内部監査部門の体制整備についても記載してほしい、そういうご意見でございます。

これは右欄のほうに書いてございますが、このコード原案はもともとプリンシプルベースの記載でございます。確かに記載上は、内部監査部門は取締役会や監査役と連携をしっかりやるべきであるということを書いておりますが、これはもちろん連携そのものが最終目的であるというわけではございませんで、連携して効果を生み出すためには、最低限、そもそも内部監査部門の体制がある程度整っているということは当然の前提であると考えられます。このような答えぶりを用意させていただいております。

12番は割愛いたしまして、資料4をごらんいただきたいと思います。資料4は、英語でお寄せいただいた各論的なコメントでございまして、真ん中の欄にご参考で日本語の仮訳をつけております。ナンバー1のコメントは1ページの一番下から次のページにかけて書いてございますが、上辺だけのコンプライであるとか、ひな型的なエクスプレインというのは、よくよくそういうことに陥らないように気をつけたほうがよいという助言でございまして、これはそのとおり、広く周知、ご理解を図ってまいりたいと考えています。

2ページ目のナンバー2は、英文での開示の促進についてコメントをいただいております。

ナンバー3は割愛いたしまして、3ページ目、ナンバー4ですけれども、ナンバー4でお寄せいただいたご意見は、いわゆるCEO・社長さんと取締役会議長・チェアマンの分離に関するご意見でございまして、分離すべきと書いたほうがいいのではないかというようなご趣旨かと思います。これにつきまして答えぶりは、右側の欄にございますが、「なお」書きのところをごらんいただきますと、OECD原則では、CEOとチェアマンを分離することを奨励しておりますが、分離しない場合の代替策として、例えばエグゼクティブ・セッションでありますとか筆頭独立社外取締役の選任というのが書かれております。今回の日本のコードにつきましては、基本的にこの代替案のほうをもって構成されているということを記載しています。

そして、5番は割愛いたしまして、4ページをおめくりいただきたいと思います。6、8、9番については、実は答えぶりはほぼ同じ書き方にしております。

6番につきましては、まず、エグゼクティブ・セッション、社外者だけの会合ですけれども、これにつきまして、今回あるいは将来このコードを改訂するときには、エグゼクティブ・セッションの開催自体を規律の内容にすべきである。今のコード原案では、「例えば」という例示になっておりますが、これをそういうふうに変えたらどうかというご意見でございます。

こういったご意見につきましては、6番のところの右側の回答欄をごらんいただきますと、「ご指摘の点については、我が国では今後の議論や実務の集積が必要な事項と考えられることから、今後の議論に向けた貴重なご意見として承ります」、そのような答えぶりにさせていただいております。

5ページの8番、9番についても答えぶりは同じでございますが、8番でお寄せいただいたご意見は、任意の諮問委員会、これについて次回のバージョン、将来の改訂後のバージョンのことだと思うんですが、次回のバージョンではそれ自体を規律にしたらどうかというご意見をいただいています。

9番につきましては、社外取締役ないし独立社外取締役の兼任数の具体的な上限についてご提案をいただいているものですが、これについても答えぶりは右側に記載しているとおりでございます。

そして、最後のご意見が6ページ目、10番でございます。これは株主との対話について、コード原案では章を1つ割いて、いろいろ議論した上でその結論を記載しておりますが、そのことについて、真ん中の欄の3行目ぐらいからご紹介いたします。これは国際的な機関投資家の団体からのご意見ですが、「真の対話とは相互の尊敬・理解に支えられたものであり、時間と努力を積み重ねることによって実現されるものである。会社と投資家との間の長期的な関係は全てのステークホルダーにとって有益である」、こういうコメントをいただいておりまして、右側には当有識者会議もご指摘のとおりと考えますということを記載してございます。

以上を踏まえまして、資料の5をごらんいただきたいと思います。パブリックコメントも踏まえまして、コード原案の修正点を若干提案させていただきます。

まず、表紙でございますが、真ん中のところ、(案)というのはとれる形になります。これは本日ご了承いただいて、本有識者会議としての結論が出た場合には、ここの(案)がとれるわけであります。

ただ、その下の「コーポレートガバナンス・コード原案」というのは、これは最後まで「原案」が残ると考えております。これは、コードそのものは取引所のほうで形式行為として本コード原案を取り込むような形で取引所のコードというものができることが想定されるわけです。当然、その内容はこのコード原案を内容としたものでしょうけれども、一応、コード自体は取引所さんのほうのものになりますので、ここでは「コード原案」という表現のまま行かせていただきたいと思っております。

次に中身についてでございますが、まず、2ページをごらんください。ここは時点修正と、それからパブリックコメントにかけたということを踏まえまして、やや機械的な修正を施しております。中身はご紹介を省略させていただきまして、次の修正箇所は、9ページに飛んでいただきたいと思います。

9ページの真ん中のところですが、先ほど申し上げました「すべからく」を削除させていただいております。

そして、その次は12ページになります。12ページの意図しておりますことは、いわゆる「株主共同の利益」という、これが1つのまとまったくくりでございまして、それを念頭に置いた記述でございますが、パブリックコメントにかけた文章をごらんになった方の中に一部、会社と株主の間の共同の利益だというふうに誤読される方がいらっしゃいましたので、誤読を防ぐように修正させていただいております。

そして14ページです。先ほど申し上げた「女性の活用」という表現を「活躍促進」に変えさせていただいています。

それから17ページでございますが、これは先ほどパブリックコメントのときにご紹介いたしましたとおり、「開示」と「公表」で若干ニュアンスの使い分けめいたものを目指しておったわけですが、今回、東証の対応が決まりましたので、基本的には「公表」という言葉は、文脈上どうしても避けられない箇所を除いて使わないように、「開示」に極力そろえるということを考えております。

あとは、同じ趣旨の修正が繰り返しになります。22ページが株主共同の利益。23ページと28ページも「公表」を「開示」にそろえる。こういう修正になっております。

それでは、資料につきまして事務局からのご説明は以上でございます。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明を踏まえた上でご意見あるいはご質問をいただきたいと思います。あるいは、これが最後の会合ということを予定しておりますので、これまでの審議を振り返ってのご感想とか、今後のあり方、そういうことについてご意見をいただくこともお願いしたいと思います。

○小口メンバー

ありがとうございます。最初に感想からですけれども、きょうパブリックコメントを拝見しまして、とりわけ英文のコメントを拝見しますと、次回バージョンに期待する部分というものもあるのですけれども、総じて肯定的な前向きなお話を数多くいただきまして、もともとこの会議が始まったとき、「『日本再興戦略』改訂2014」で、国際的にも評価が得られるものとするという要請があって、どうなっていくのかなというふうに思っていたのですが、事務局とメンバー各位のご尽力で、短期間で一定の答えができた点、会議の一員として率直にうれしく、誇らしく思っております。

これから、前文8にあるように、企業の自律的な取り組みと、株主・機関投資家との建設的な対話という実際の場面に移っていくわけですけれども、外国人投資家と話す中で、とりわけ前半で議論された東証の上場制度の整備について彼らに説明する中で、やはり声が大きかったのは、先ほどご説明では割愛されたような気がしますけれども、資料4の2番のところ、英文での情報発信への要望です。これは補充原則3-1の②に書いてあるわけですが、「上場会社は自社の株主における外国投資家との比率を踏まえ、合理的な範囲で英文での情報の開示・提供を進めるべきだ」ということで、ぜひこれを、実際にコードが始まった、有効になった後には進めてほしいという声が多くあります。

ここから先はお願いになるのですが、前半でお話しされた上場規則の中で、コーポレートガバナンス報告書でエクスプレインしていくということになるわけですけれども、以前からコーポレートガバナンス報告書そのものを英語で開示してほしいという声がありまして、今回、エクスプレインをここでもしていくということになりますと、さらにその声も強くなってくると思いますので、この機会に、すぐにとは申しませんけれども、前向きにご検討いただけないかなと思っています。

前文8で中長期保有の株主について触れられていて、ガバナンスの改善が実を結ぶまで待つことができる中長期保有の株主ということが出ているのですが、これは外国人投資家からも大変評価を受けているのですが、ガバナンスの改善が実を結ぶまで待つことができる中長期保有の株主には英語しかわからない機関投資家も多く含まれています。今後、実際にこのコードを実践的なものにしていくためにも、対話の前提として情報開示がある訳で、情報を英語で開示することについては、もちろん企業さんの負荷とか、いろんな問題もあると思いますけれども、そういった投資家と建設的に対話するには、どうしても英文開示というのは必要になってくると思いますので、ぜひご検討いただきたいと思います。

以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。引き続きご意見をお願いいたします。

○堀江メンバー

1点、スチュワードシップ・コードとの関連で、事業会社の方に今後書かれる上でちょっと機関投資家のほうからお願いをさせていただきます。スチュワードシップ・コードは、先ほどご説明ありましたように、既に175の機関投資家がサインアップしているという状況で、署名という形では非常に多くの機関投資家に署名していただいています。一方で、記述内容に改善の余地がある機関投資家が見受けられます。例えば、原則1で投資哲学等を明確に記述し、どういう投資スタンスで投資をしているのかを明確に書くべきなのに、そこを十分に記述しないままコンプライをしていると記述して済ましている機関投資家が散見されます。同じようなことがコーポレートガバナンス・コードでも起こらないかという、そういう懸念を持っています。

コーポレートガバナンス・コードに敷衍して言いますと、トップマネジメントの方が企業価値をどう考え、どう改善するのかを記述することが、先ほど言いました機関投資家の投資哲学の記述に対応するものだと考えております。

従って、企業価値に対する考え方を十分にトップマネジメントに書いていただいた後、どういう形でその企業価値を改善するのかということが書かれないと意味がありません。「コンプライします」というだけで、その手立てをどういうふうにするという手段が明確に書かれませんと、先ほどのパブリックコメントの中にもありますように、投資家との建設的な対話が促進されないというふうに私は強く信じております。トップマネジメントの方がまず企業価値をどういうふうに考えているのかを明確に述べていただき、それを改善するためにどのような行動を取りどう改善するのかが明確に書かれませんといくらコンプライすると言われても、全く投資家の観点からすると意味のないコンプライになります。この点に、ただコンプライするということだけでよしとすることを考えている人がいるかもしれませんので、そういうことがないようにということで、ぜひお願いしたいと思います。

金融庁さんと東証さんのほうからもぜひ、上場会社の方にその点を徹底していただきたいというふうに考えております。

以上でございます。

○池尾座長

ありがとうございました。同様の趣旨のことは以前、武井さんからもご発言いただいて、それから資料4にあります英文コメントのナンバー1もそういう趣旨だと思いますが、くれぐれも法務部に丸投げとかいうことにならないようにお願いしたいと思います。

いかがでしょうか。

○冨山メンバー

多少、産業界・経済界側からという感じで。先ほどメンバーの方からもありましたけれども、とにかく限られた時間でここまで深くて広い問題領域をカバーするテーマについて、これだけのものをつくったということはほんとうに私もすばらしいことだと思っています。

ある意味、いい意味で期待を裏切った部分もあるんじゃないかというふうに思っていますが、ただ、これ、ある種、規制する制度をつくる側が政策的に今の日本のような成熟した自由主義経済の中でできることというのは、むしろ枠組みの整備なわけで、ということは必然的に、やることは形式なんですよね。逆に実質にかかっちゃうと、これ社会主義経済になっちゃうので、むしろ形式にかかわっていくことが正しい姿だと私も思っているので、よくこういう議論で、形式論で実質が伴わないのは云々かんぬんという批判がありますが、あれはそもそも実はナンセンスな議論で、日本みたいに成熟した自由主義経済国家においては実質に政策がかかわっちゃうのは逆におかしいわけであります。ですから、むしろ形式の議論であることはある意味で当然のことです。逆に形式の議論じゃなきゃいけないわけで。

裏返して言いますと、ここから先は実質の議論、実質をちゃんと充実していくということになるわけで、これはどちらかというと、先ほど来言っている投資家の側、それから企業の側、両方がどういうふうにちゃんとした結果を出せるかということになると思います。そこも、実は同じくで、形ばかり会話すりゃいいというものでもないですし、これもやっぱり形だけのアリバイで終わってはいけないわけで。

何でこのテーマが改訂版の「日本再興戦略」に入ったかというと、要は、日本の企業の伸びしろはまだあるのではなかろうかという、そういう期待感が当然あるからであります。ですので、この会議の中でも申し述べましたが、この過去20年間あるいは25年間かな、残念ながら、少なくとも客観的事実として世界における売り上げシェアを失ってきたわけです。フォーチュン500に140社あったのが今、60社ぐらいしかなくなっているわけです。この間、欧米企業は実は大体一、二割しか減っていないんですよね。ということは、新興国の勃興分はほとんど日本の企業がやられてしまったわけで。

じゃ、そんなに日本の企業って潜在力ないのかといったら、そんなことはないわけで、少なくとも私が知る限り、例えば生産現場に行きますと、多分日本のものづくりの生産現場の物的生産性は間違いなく世界最強ですから。ですから、そういうことを考えると、60社に減ったものを70、80、90と盛り返せるかどうか。

それから、ROS、ROEにしても、少なくとも伊藤レポートでいえば、ROE8%を超えるような水準、あるいはROICでもそういった8%、10%という水準に私は絶対できると思っているので、これは現場感覚として。あるいは私の経営者としての肌触り感覚として、できると思っているので、それが実際そうなっていくのか、どうなのか。

それからやはり社会にとって非常に重要な雇用ですね。雇用における量と質の問題。今、賃金が大分上がってきていますが、こういった賃金上昇というのが持続的なものになり得るかどうか。それから、上場企業が結局担っている就労者比率が下がってきたという事実も、これはやっぱり客観的事実としてあるわけで、それももうちょっと持ち直していかないと、生産性の高いセクターというのは大きな、基本的には大企業、上場企業は非上場、中小企業よりも生産性高いわけで、賃金水準も高いわけですから、それがもう1回雇用を取り戻せるかどうか。ここは全てまさに成長戦略の成果になるわけであります。

ですから、それができるかどうかがこれからのほんとうの実質なので、むしろそういった観点からこの先モニタリングしていく必要があるでしょうし、逆に実質のレベルが上がってくるのに並行して、逆に形式も当然絶えざる改革・改善をしていくべきですので、そういったいい意味での相互波及の運動論として、そういうダイナミズムが今後これを景気に持続することが大事だと思うので、もちろんこの後、コードの見直しも不断に進めるということであります。その実質と形式というものを並行的に高いレベルに上げていくということが、今回、我々に課せられた今後の課題だと思うので、これは経済界の側も、それからもちろん投資家の側も、それから金融庁さん、東証さんも含めて、関係者みんなで不断の努力をしていくことが大事だと思います。最後に、これは自分に言っている部分が半分ぐらいなんですけど、我々自身がそういった自覚を持ってこれから頑張っていくことが大事なのかなというふうに思う次第です。

以上です。

○池尾座長

大変ありがとうございました。

ほかに引き続きご意見お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

○キャロンメンバー

ありがとうございました。私は、当コードがパブコメに付されて以降、お会いした国内外の投資家、アセットオーナーの方々には、最終案になる前に、厳しいご意見を含め、ぜひご意見・ご指摘いただきたいとお願いしてきました。しかし、原案を読んだ皆さんからは、一貫して大変高い評価をいただいてきました。

その理由は主に2つですが、1つは、これは大改革であり、非常に大きな進展であるということ。そしてもう一つは、現実的であるということ。日本の価値観や商習慣がありますので、非現実的なものになっても意味がない。ですので、結論として、良くバランスがとれたコードであるとのことでした。このような高い評価を得られるコードを日本から発信できたことに、一市民として誇りに思っております。お集まりのメンバー、事務局、座長をはじめ、皆さんに感謝の意を申し上げたいと思います。

また、2点目ですが、ここは日本なので、皆さんが英文を読まれることはあまりないだろうと思いますので、あえて申し上げますと、英語版の文章がとても美しい。これは特に事務局の方々にお礼を申し上げたいと思いますけれども、日本語と英語は構造も異なり、言葉も違うので、和文の意味を尊重しながら自然な英訳を作るのは至難の業です。しかし本コードの英語は、とても美しく、読みやすく、分かりやすく、日本から世界に向けて日本の改革の意思を発信できています。日本の価値観やステークホルダー重視の姿勢も十分表現されておりますので、お集まりの皆さんには、ぜひ自信を持って海外の方に、これは日本の改革の表れだと言っていただきたい。英語版に関しても誇りの持てる、レベルの高いものになったと思います。

最後ですが、私も、このように意義深く、日本の改革のためになる会議に参加させていただいたことを大変嬉しく思っております。本当にありがとうございました。以上です。

○池尾座長

ありがとうございました。

それでは、ご意見をお願いしたいと思いますが、引き続き。大場さん、お願いします。

○大場メンバー

ご指名がございましたので、2点申し上げます。

1つは、私は運用会社の社長として仕事をしているわけですが、2つの点で大きな変化を感じているということであります。1つは、海外の投資家の方の訪問が非常に増えていることです。聞かれている内容は、日本の企業のスタンス、考え方、これが変化し始めているということを感じているんだけれども、これが本物になるのかどうかということです。

一方、もう1つ変化を感じているのは、上場企業との対話の話でありまして、もちろん、堀江さんからご指摘がありましたように、こんなことで十分なのかという意見もあろうかと思いますが、企業によって相当真剣さが変わってきているということも感じています。具体的にどのような形で価値創造に邁進するのか、手立ては何なのかという議論が具体的に起き始めているということを感じています。したがいまして、これがどのように拡大し浸透していくかということをやはり世界は注目しているんだろうなと思っています。

このコードは何のためにやっているかということでありますが、別に対話をするためでもありませんし、目的はあくまで中長期的な企業価値の向上のためにということでありますので、この目的に向かって投資家と企業が切磋琢磨するということが大変大事だろうと思っています。

資本主義市場経済において価値創造をする主体は何かというと、それは企業でしかありません。企業が価値創造に邁進するからこそ投資家も報われる。こういうことでございますので、そこに焦点を当てた真摯な議論が今後深まっていくことをぜひ期待したいというふうに思います。

もう1点は、これは自らの話でありますが、これ上場企業のコードでありますが、では、投資家はどうなのかということです。スチュワードシップ・コード受け入れを宣言する投資家のほうは、どうなのかという議論に間違いなくなるんだろうと思います。自らのガバナンスを含めて、対話をすることがお互いにウィンウィンの関係になるんだということを実感してもらえるようにしていかなくてはいけないということだと思いますので、投資家自らもどのようにしてそれを鍛え上げていくかという大きな課題を背負って、このコードを受け入れるということではないかと思います。その点を自らも実感した会議だったということを感想として申し上げたいと思います。

以上であります。

○池尾座長

ありがとうございました。

○森メンバー

ありがとうございます。感想につきましては、他のメンバーの方と全く同感でありまして、注文も幾つかあるにしても特に海外の評価が高かったということは、当初の「日本再興戦略」での目的が達成されたということだと思います。

今までお話がありましたとおり、個々の企業がそれぞれに合ったやり方で中長期的な成長あるいは継続的な価値創造に向けて、しっかりこのコーポレートガバナンス・コードを活用していくということが何よりも大切なのだろうと感じている次第です。

1つ申し上げたいのですが、投資家との深度ある建設的な対話を進めていくに当たって、これは基本原則3にも書かれておりますが、非財務情報の充実、これがキーになるであろうと考えております。この非財務情報につきましては、海外でもいろいろ検討が進められているという状況とは思いますが、基本的な枠組みであるとか、責任のあり方であるとか、そういったところも今後我が国においてもしっかりと検討していくことが必要になってくるのではないかと考えている次第です。

いずれにしても、この有識者会議、非常に成果が出せたのかなということで、私も非常に満足している次第であります。以上でございます。

○池尾座長

ありがとうございました。

○内田メンバー

感想ですが、今回のコードのキーワードとしては、ステークホルダーとの協働が明確に謳われたことが挙げられます。また、企業というのは、短期的な利益を求めるのではなくて、中長期的な企業価値向上を求めるものだということもはっきり書かれました。それから、建設的な対話ということも記されました。

この3つは、もともと企業自身がそういう方向でやらなければならないと思っていたことであり、こういう形でコードとして書き込まれたということは、企業にとってもこれからやりやすくなるということだと思います。

先日、海外の投資家と個別ミーティングを行いました。今まではあまり日本のコーポレートガバナンスについて議論することはなかったのですが、今回はかなり先方が関心を持っていて、ミーティングの半分ぐらいはコードの話になりました。その投資家はコードの内容をあまり詳しく知らなかったので、こちらからいろいろ説明したのですが、結構いい印象を持ったようでした。特にステークホルダーとの協働という点は、最近はあまりそこで紛糾することはないのですが、投資家さんによっては、その考え方になっていない方もまだいらっしゃいます。そういう方と対話する際に、こういうコードがあって、日本の企業はこういう考え方でやっているのだということを説明できるというのは、非常に大きなバックアップになると思います。

これからの課題については、先ほどのパブリックコメントにもありましたが、我々企業は、上辺だけのコンプライではなくて、このコードの趣旨を踏まえて、きちんとしたコンプライをしなければならないということだと思います。もっとも、原則毎に、これはどう考えるべきかを決めるだけでも結構大変な作業になると思います。今、各社ではプロジェクトを立ち上げるなどして検討を開始していると思いますが、どうしようかということで、各社とも非常に関心が高まっています。悩みながら深く考えて、上辺だけのコンプライではないものにしていくことがこれから我々企業の使命だと思います。

コーポレートガバナンス報告書への記載・開示時期について、12月末までということで時間的余裕をいただきましたので、真剣に取り組んでいきたいと思います。どうもありがとうございました。

○池尾座長

ありがとうございました。

いかがでしょうか。武井さん、いかがでしょうか。

○武井メンバー

皆様おっしゃるとおりでして、PDCAで言いますと、今年Pができて、これからはDの年になっていくのだと思いますけれども、まさに実質を現場の皆様にいかに理解していただくかが大切になってきます。その観点から、ガバナンス・コードに関して、分量も長いので、最初1回だけ読んでもどこが大切なのかなかなかスッと頭に入りにくいのかもしれませんけれども、よく読んで理解が進んでまいりますと、ほんとうにこれは企業さんの中長期の企業価値向上に活かせるものであるという理解が進んでいくのだと思っています。

特に、ガバナンスというテーマに関して、今回のコードは、一つの共通の言葉というか、プラットフォームというか、そういったものを整備したものであって、逆にそういうものを整備して頂いてよかったという、感謝のような声を聞くこともあります。今回のガバナンス・コードをベースに、自社の経営課題とか経営戦略について、どこをどう強化し、どこをどう見直すのか、そういったことの頭の整理を経営現場で行うときに、一つの良い参考資料なりプラットフォームができたと評価する声も聞いています。

先ほど非財務情報のお話もありましたけれども、まさに非財務情報の一番大事な根幹でもありますガバナンスに関しまして、今回のガバナンス・コードを契機に、一種の統合的な報告ができていくことにつながっていくのだと思います。企業の皆様にはもともと中長期の目線で経営をなさっている方が多いので、中長期目線で整理したコードの内容は良く理解できるという声も聞いています。

あとは機械的対応を防ぐため、ベスプラといいますか、実質を伴った良いコンプライなりエクスプレインをしている例をいろいろ広く紹介し、皆さんに広く共有していく取り組みが、今後、中長期的にこのプロジェクトの一環として行われていくことを期待します。

以上です。

○池尾座長

どうもありがとうございました。どうぞ。

○太田メンバー

きょうは控えようと思っていたんですが。ここ一、二カ月、あるいはこの先一、二カ月を含めまして、いろんな場でシンポジウムであったり、さまざまなセッションが開かれる予定も聞き及んでおりますし、こういうコーポレートガバナンス・コードの問題、あるいはスチュワードシップ・コードとの関係、あるいは企業の開示姿勢、責任、とりわけ取締役会の責務あたりについて大きくさまざまな広報、研修の機会があるだろうというふうには理解していますが、ぜひ、先ほどもご説明があったとおりなんですけれども、大多数の企業にとってはまだ、全身全霊で考えているかというと、そういうことでは必ずしもない部分が相当あるかなと。さっきご指摘ありましたけども、法務部でだけ考えている向きも少なくないというふうには思います。これは別に実証的なデータでも何でもありませんが、印象論です。

したがって、さまざまなそういう場に当有識者会議のメンバーも出られたり、あるいは金融庁、東証の方々が主催で、あるいはパネリストとして参加される場面がたくさんあるだろうと思います。ぜひ、意のあるところを、うまく理解活動を繰り返し繰り返し進めていただきたいというふうに重ねてお願いをしておきたいと思います。

それともう2点なんですが、ハードロー、ソフトローという議論も従前からございますけれども、今年はその大きな1つの節目の年になるわけであります。5月1日の施行、会社法ですね。それと6月1日の今回のガバナンス・コードの適用開始という意味で、企業にかかわる法制度といいましょうか、ルールだとか、あるいはコードという観点についていえば、大きな転換点の1つになる。過去を後々振り返ると、そういう年になる可能性があるなというふうに思いますので、前段で申し上げた、ぜひ適正な理解活動をうまく進めていってほしい。むろん、それを実行していくのは企業側の責任、あるいはガバナンスにかかわる人間ということだろうというふうに思います。

それと今回、私は監査役協会といいましょうか、大多数の機関設計の会社が採用されている監査役制度というか、このことの理解をどのようにこの中にうまく盛り込めるのかなということで、実は腐心をしていたものであります。そういう意味では、この原則4-4の中に、非常に簡潔ではありますけれども、明確に監査役制度の抱える問題点、あるいはこれから果たすべき役割、足らざるところをどのように補っていくのかということについても、きちっと明記をしていただいているというふうに思います。

したがいまして、今、監査役さんというのは全国たくさんおられるわけです。事業数でいえば、繰り返しになりますが、98%の企業は監査役制度を採用している、こういうことでもありますので、こういった監査役自身のこれからのあり方についても、もう一度見直していくというようなことを協会としても取り組んでいくという決意表明をしておきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。

○池尾座長

どうもありがとうございました。

○中村メンバー

簡単にお話ししたいと思いますが、まず、今までのお話にありましたように、私どもの会社でも法務部だけで対応するということではなくて、トップを巻き込み、それから取締役会の中でぜひこの内容について議論をして、十分な議論のもとで会社としてどうやっていくのかということを固めていきたいというふうに考えております。

また、全般的なところで申しますと、今回のコードというのは、これは私の個人的な見解ですけれども、日本の企業というのは海外の企業に比べると口下手といいますか、自分たちのよさというのを外に説明するということについて若干消極的というか、あまりできていなかったのかなと感じております。

たとえば、今、ご指摘のありました監査役会制度についても、それがいいのだという認識は持っていても、そこをきちっと説明ができていなかったのではないかと思っておりまして、コードがそうした日本の企業あるいは個々の企業の強みであったり、良さであったりというところを積極的に説明をするきっかけになるといいと思いますし、また、ステークホルダーと対話することによって、そうではなくて、ここは間違っているんだというところを対話の中で認識をし、改善をしていくことで、日本の企業がこれからより強くなっていくということにつながっていくといいのかなというふうに考えております。

以上でございます。

○池尾座長

ありがとうございました。

ほか、追加にご意見、ご質問ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。

特にございませんようでしたら、パブリックコメントに対する回答案といいますか、それと、それを踏まえたコーポレートガバナンス・コード原案の修正案、資料5、6に対してご賛同いただいたということで、これで確定するということでよろしいでしょうか。

どうもありがとうございました。それでは、確定ということにさせていただきます。

本有識者会議は昨年8月7日以来、9回の会合を重ねてまいりました。それで本日1つの区切りを迎えることができましたのは、メンバーの皆様方のおかけで、大変にご多忙のところ精力的なご議論を賜りまして、まことにありがとうございました。この場をかりまして厚くお礼を申し上げたいと思います。

それで、既にメンバーの方々が口をそろえておっしゃいましたけれども、出発点としては一応合格点が得られるようなコード原案ができたのではないかというふうに思います。

これは、繰り返しですが、メンバーの方々のご尽力と事務局の奮闘のおかげだと思いますので、繰り返しお礼を申し上げたいと思います。ただ、あくまでも出発点としての合格点ではないかと思いますので、今後、これを企業サイドで実践していただいて、内容を豊富なものにしていただく中で、すでに指摘がありましたように、コード自体も見直していくということで、もちろん経済状況とか、そういう作業や実践がどういうペースで進むかということがあらかじめわかっているわけでありませんので、機械的に何年後に見直すとかいうことは明記しておりませんが、定期的に見直すということはコード自体の中に書かれていることであって、そういうサイクルを回していくということで日本のコーポレートガバナンスがよりよいものになっていくこと、それとコーポレートガバナンスにかかわっていろんな関連した制度が整合的に見直されていかないと、コードだけつくって、それで全て解決するということは決してあり得ないので、関連した問題に関する改革とか見直しもぜひ進めていただくことを期待して、締めくくりとさせていただきます。それでは、本日の有識者会議はこれで終了ということにさせていただきたいと思います。

まことにありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3836、3671)

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