スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議(第13回)議事録

1.日時:

平成29年12月21日(木)9時30分~11時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【池尾座長】
 定刻になりましたので、ただいまよりスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議第13回会合を開催いたしたいと思います。皆様にはご多用中のところ、ご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

 本日は、まず金融庁から説明をまとめてやっていただくということで、4点ぐらいあります。まず、12月8日に閣議決定されました新しい経済政策パッケージに関しまして説明をしていただきます。それから、本年5月のスチュワードシップ・コードの改訂を踏まえた機関投資家の対応状況についても説明していただきます。これが2つ目です。3つ目が、コーポレートガバナンス改革に関する海外の機関投資家からのご意見を紹介していただきます。最後、4番目に、企業と投資家の間の対話に係る論点として、前回までの議論を踏まえて、さらに議論を深めていただきたい論点に関して説明をしていただきます。

 それでは、説明をよろしくお願いします。

【田原企業開示課長】
 おはようございます。それでは、お手元の資料に従いまして、順次ご説明をさせていただければと存じます。

 まず、資料1は、先ほど池尾座長からご紹介いただきました、12月8日閣議決定の「新しい経済政策パッケージ」の抜粋でございます。前回11月の当会議の際、金融行政方針におきまして、投資家と企業の対話の深化を通じて、企業による取組みを促すためのガイダンスを策定することについて述べられている旨ご説明させていただいたところですが、この経済政策パッケージにおきましても、投資家と企業の対話の際のガイダンスを策定するとともに、必要なコーポレートガバナンス・コードの見直しを行うことが閣議決定されております。その内容は、これまで当会議でご議論いただいた5項目でございます。こちらにつきましては、また後ほど出てまいりますので割愛させていただきますが、ご覧いただければと存じます。

 2点目は、資料2の「スチュワードシップ・コード改訂への対応状況について」です。先般、当会議でご議論いただいたスチュワードシップ・コードの改訂につきましては、「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」において、改訂について最終的に決定いただき、本年11月末までに、各機関投資家が改訂内容に対応した公表項目の更新を行うことを期待するとされていたものでございます。それについて、現時点での更新状況を取りまとめさせていただきました。

 2ページ目をご覧いただくと、現在、コード受入れ機関214のうちの約8割超が更新をしているという状況で、178機関が更新済み、13機関が更新予定になっております。

 次に、主な更新の状況についてご説明させていただきます。まず、アセットオーナーにつきまして、改訂版スチュワードシップ・コードにおいては、アセットオーナーによる実効的なスチュワードシップ活動、その際に運用機関に求める事項や原則の明示、運用機関に対する実効的なモニタリングの各項目が新たに加えられました。コードの改訂を受けて、公的年金などにおいて見られた方針の見直しを例示させていただいております。まず、GPIFにおいて、「スチュワードシップ活動原則」や「議決権行使原則」が策定・公表されました。同様の取り組みは、国民年金基金連合会においてもなされており、また、その他の公的年金においては、もともとこうした原則やガイドラインといったものを策定しているところもあったわけですが、そういった原則等に従ってスチュワードシップ活動を行うように運用機関に指示するという形で、コードの受入れ方針の見直し等が行われております。また、運用機関がしっかりとスチュワードシップ活動をしているかどうかについてのモニタリングの実施についても方針に盛り込むかたちで、対応が進んでいると承知しております。

 続いて、運用機関の取組みでございますが、まず、利益相反の管理ということで、改訂版スチュワードシップ・コードにおいては、方針の中で利益相反が生じ得る局面を特定することが求められております。資料では3社ほど例を挙げさせていただいておりますが、親会社との関係、社内の他部門との関係、グループ会社との関係などにおきまして、利益相反が生じ得る局面を具体的に特定し、方針の中で明示しています。

 また、改訂版コードにおいては、そういった利益相反を回避するための方策についても具体的に明示することが求められていますが、典型的に見られますのが、過半数を社外取締役とする第三者委員会を設置し、議決権の行使結果を監督するといった取組みでございます。また、社内の部門間での人事異動制限などを設けている例も見られます。

 次に、個別の議決権行使結果の公表についてご説明させていただきます。今年の株主総会シーズンの前から、一部の機関においては、個別の議決権行使結果の公表が開始されていたところでございます。現在、ほぼ全ての国内大手運用機関を含む70を超える機関が公表を実施しており、一部の機関においては、賛否の理由も公表されております。また、今後公表を行っていくとしている機関もありますので、数はこれからも増えていくと認識しております。公表を行っている運用機関につきまして、私どもで把握できた範囲で列挙させていただいております。もし事実誤認等があれば、ご指摘を頂戴できればと思います。

 こうした公表は、コンプライ・オア・エクスプレインの下で求められているものでございますので、個別の議決権行使結果の公表をしていない機関投資家につきまして、エクスプレインの例を掲げさせていただいております。一番上のD社をご覧いただきますと、個別の議決権行使結果の開示が、利益相反懸念の払拭の観点から有効な方法の一つであることは認識している一方、投資先企業との対話活動に悪影響が生じないかなどについて見極める必要があるということを理由に、個別開示の実施を見送るといった説明をしている例もあるということで、紹介させていただきます。

 最後に、8ページをご覧ください。アセットオーナーの対応でございますが、その多くが、運用受託機関に対して個別の議決権行使結果の公表を要請しており、実際に公表を要請しているアセットオーナーについて、私どもで把握できた範囲で列挙させていただいております。また、下に記載されております海外の機関投資家につきましては、自家運用分については、自ら個別の議決権行使結果を公表しています。

 スチュワードシップ・コードへの対応状況につきましては、こういった形でまずは第一報をさせていただいたわけですが、引き続き注視させていただくとともに、必要に応じて、この場でもご議論をいただければと考えております。

 3点目として、資料3の「コーポレートガバナンス改革の深化に向けた論点に関する海外投資機関家の意見の概要」について、ご説明させていただきます。こちらは、これまでご議論いただいた論点につきまして、海外の機関投資家から聴取しました意見をまとめたものでございます。スチュワードシップ・コードの受入れを表明している海外機関投資家のうち、コード改訂の際に行ったパブリックコメントにご意見をお寄せいただいた機関投資家などを対象に、9月から11月にかけて私どもからクエスショネアを送り、それに対して回答のあった17機関の意見を取りまとめたものでございます。

 まず、2ページをご覧ください。経営環境の変化に対応した経営判断がしっかりできているかという論点につきましては、主に2つの意見があり、一点目は、日本企業の資本コストへの意識は低いのではないか、資本コストを意識してリターンを上げるべきではないか、また、経営指標としてROEは重要であるが、他の指標も重要であるといった指摘でございます。二点目は、多くの企業が複合企業となっている中で、競争優位性を持つ分野に集中したほうがいいのではないかという指摘でございまして、個別の意見につきましては、下のところに「主な回答」として記載させていただいております。

 次に、投資戦略・財務管理の論点につきましては、資産を有効に活用して、設備投資・研究開発投資・人材投資等を行うことが重要ではないかという指摘がございます。また、資産の使途等について十分な説明がなされていないのではないか、開示が十分ではないのではないかという指摘もあり、こういったことが、資産が有効に活用されているかの判断の前提になっている面もあるのではないかと考えられます。

 続いて、CEOの選解任・取締役会の機能発揮等の論点でございますが、当会議でのご指摘と同様に、CEOの選任は重要であり、その際には、将来を見据えた計画や透明性のあるプロセスに基づくべきであるといった指摘があります。また、独立した指名委員会がこういったものに関与することが重要ではないかという指摘もあります。さらに、取締役会が必要な資質・多様性を備えていることが重要であり、そうした観点から、独立社外取締役がその役割を実効的に果たしていくことが大切だという意見もあります。

 次に、政策保有株式の論点でございます。政策保有株式についても、株主への説明や開示が不十分であるといった指摘があり、一番上のAberdeenの意見でも、政策保有株式は企業のバランスシート上活用されてない資金ではないかという指摘がありますように、機関投資家からは、可能な限り縮減すべきではないかといった指摘がなされています。また、保有のコストと得られる利益の分析に基づいた事業上の利益について、しっかりと説明すべきであるといった指摘もございます。

 最後に、アセットオーナーの論点でございますが、企業年金のスチュワードシップ・コードの受入れが少ないことについて、問題意識が提示されているほか、企業年金に運用に当たっての専門知識が不足しているのではないかといったことや、企業年金は母体企業のためではなく、加入者・受益者のために行動すべきであるといった指摘がなされております。

 ご参考ではございますが、12月の上旬に、証券取引等監視委員会の25周年を記念し、田中メンバーをモデレーターとするセミナーが開催された際にも、関連した議論がありましたので、紹介させていただきます。

 まず、果断な経営判断の論点について、取締役会のディスカッションで、部門・企業のパフォーマンスを評価する際に、投下資本に対するリターンなども評価する必要があるが、そのための指標が適切に設定されてないという意見がありました。また、CEO・取締役会の論点に関連し、CEOの後継者指名について、現CEOの意向が不透明に反映される場合があるなど、本来あるべき姿になってないのではないかという指摘がありました。政策保有株式については、コーポレートガバナンス・コードが入っても状況はあまり変わっておらず、その背景に「保有させている側」の問題があるのではないかといった指摘がありました。田中メンバーからその他ご指摘がございましたら、頂戴できればと存じます。

 それでは、資料4についてご説明させていただきます。先ほどご説明させていただいた資料1や、先般の金融行政方針にも記載されておりますが、投資家と企業の対話の深化を通じて、企業サイドのコーポレートガバナンスに係る取組みを実質化させる観点から、どのようなことを企業と投資家の間で対話するべきかについて、これまでのご議論や、先ほどご紹介させていただいた海外投資家からのご意見、先般のセミナーでのご議論など、いろいろとお伺いしているご意見を踏まえてまとめさせていただいたものが、資料4でございます。

 主な論点は、先ほどと同様に5つとなっており、まずは1ページ目の経営環境の変化に対応した経営判断について、対話の際にどのようなことが議論されるべきかについてでございます。

 1点目は、先般、内田メンバーからも経営理念の話がございましたが、経営理念や経営戦略・経営計画といったものが、中長期的な企業価値の向上に向けた具体的なものとして確立されているかという論点です。その際、右の備考にも書かせていただいておりますが、具体性が大事であることに加えて、どういった点に着眼して話し合うことが、企業による中長期的な企業価値の向上に向けた取組みを促すことになるのかということについて、ご指摘を頂戴できればと存じます。

 2点目は、資本コストを経営陣が的確に把握しているかということで、この点については非常に多くのご指摘を頂戴しています。そして、企業価値の向上という観点から、資本コストを意識した経営が行われているか、また、中長期的に資本コストに見合うリターンが上げられているかということが論点です。

 この点については、日本の企業では資本コストが必ずしもしっかり認識されていないのではないかというご指摘をいただいている中で、どのような取り組みを促していくことが重要であるかということについて、ご議論いただければと存じます。例えば、右欄に書いておりますが、収益力や資本効率等に関する指標を設定することの有効性についてもご指摘を頂戴できればと存じます。

 3点目は、事業を取り巻く経営環境やリスクを的確に把握して、事業ポートフォリオの組替えなどの果断な経営判断が行われているかということです。コーポレートガバナンス・コード策定の目的の1つである果断な経営判断を促すことに、対話が実効的につながっているかということが重要ではないかと考えています。例えば、事業ポートフォリオの見直しが行われる際に、見直しのプロセスが実効的なものとして機能しているかという点についても対話していただくことが重要かと考えております。

 次に、投資戦略・財務管理の論点でございます。先ほどご説明しましたとおり、海外投資家からもご指摘を頂戴し、この場でもご議論いただいておりますように、果断な経営判断の結果として、中長期的に資本コストに見合うリターンを上げる観点から、設備投資・研究開発投資・人材投資等が戦略的・計画的に行われているかについて対話が行われることが重要ではないかと思っております。また、そういった経営戦略や投資戦略を踏まえて、財務管理の方針が適切に策定・運用されているかということについても、問題意識をいただいております。右欄の、内部留保として現預金等が増えている一方ではないかということについては、会社によって事情が異なることをこの場でもご指摘いただきましたが、そうした点をどのようにチェックしていくべきかについて、ご議論を頂戴できればと存じます。

 CEOの選解任・取締役会の機能発揮等の論点につきましては、既に集中的にご議論いただいておりますが、この点についても、再度重要な論点ということで確認させていただきますとともに、先ほどご紹介したセミナーでもご指摘があったように、CEOの選任プロセスを、社内の内向きな論理でなく、経営環境の変化に対応できるものとしていくためにどういうことが重要かについて、ご指摘を頂戴できればと存じます。

 次に、経営陣の報酬についてでございます。経営陣の報酬制度が、中長期的な企業価値の向上に向けたインセンティブとして適切に機能するように設計されているかどうか、また、その際にどのような仕組みが必要かについてご議論をいただければと存じます。また、実際に報酬制度に沿って報酬額の決定がされているかという点も重要ではないかというご指摘も頂戴しており、報酬について、全体としてどのような対話が行われるべきかについてご指摘を頂戴できればと存じます。

 また、独立社外取締役の選任・機能発揮につきましても長く議論を頂戴しており、特に資質・役割としてどのような点に着眼することが重要なのかということや、選任に当たってどういうことに着眼すればよいかということについてもご意見があるかと存じます。また、独立社外取締役と並び、監査役等も重要ではないかというご指摘を頂戴しており、この点についてもご議論を頂戴できればと存じます。

 続いて、政策保有株式の論点でございます。政策保有株式につきましては、保有目的について明確に説明されることが重要であるというご指摘を頂戴しており、それがしっかりと出来ているか、また、保有の適否について適切な意思決定が行われているかが重要ではないかと考えます。この点についてもご指摘を頂戴できればと存じます。

 また、縮減に関する方針や考え方が明確化され、そうした方針・考え方に沿って適切な対応がなされているかということが、縮減を進めていくに当たっては重要であると考えておりますので、この点についてもご指摘を頂戴できればと存じます。

 加えて、政策保有株式が減らない理由として、「保有させている側」についてご指摘をいただいております。この点についても、企業と投資家の対話の内容としてしっかりと明示していくことが、政策保有株式の合理化につながっていくのではないかということで、論点として挙げさせていただいております。この点につきましては、保有している側ではなく、「保有させている側」と投資家の間の対話のテーマになろうかと存じます。

 最後に、アセットオーナーの論点でございます。企業年金によるスチュワードシップ・コードの受入れにつきましては、残念ながらまだ7基金にとどまっており、うち事業会社は1基金であり、なかなか取組みが進んでおりません。それ以外にも、運用に当たっての専門性などについてご指摘を頂戴しています。

 一方で、日本株式を非常に多く保有している主体の一つということもあり、企業年金の取組みが進まないと、なかなか日本全体のコーポレートガバナンス改革も進まないのではないかという問題意識も頂戴しており、そういった観点から、対話のテーマとして掲げさせていただいております。

 企業年金は、母体企業により実施されており、母体企業が非常に大きな役割を担っております。下に「参考」として掲げさせていただいた例は、ある企業年金において、どういった取組みが行われているかということを紹介させていただいたものでございます。実際に、母体企業側はかなり企業年金の活動をサポートされており、企業年金の専門性を高めるとともに、運用に当たって実効性を高めるための取組みが行われているということでございます。こういった取組みを参考にして、母体企業において、企業年金のアセットオーナーとして期待される機能の発揮に向けて、人事面、運営面で取組みを行っていくことが重要ではないかと考えており、対話内容として上のような事項を掲げさせていただいております。

 ただ、その際に、備考にあります利益相反の点も論点になると考えられますので、母体企業の関与のあり方や、あるいは、スチュワードシップ・コードを受け入れている企業年金が現状少ないことについてどう考えるかについても、ご指摘を頂戴できればと存じます。

 私からの説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。それでは、これからメンバーの皆様からご意見をお伺いするディスカッションの時間にさせていただきたいと思いますが、前回までの議論をまとめていただいた資料4の内容をさらに深める議論をしていただきたいということですが、そのほか、スチュワードシップ・コードをめぐる状況等のご報告もいただきましたので、それらを踏まえた形でご意見、ご質問をお出しいただければ幸いだと思いますので、ご自由にお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

 じゃ、どうぞ。お願いします。

【冨山メンバー】
 じゃ、何か言います。まず、スチュワードシップ・コードなんですけれども、これは感想です。ページ7かな。D、E、F社、ひょっとすると、私、このうちのどれかの保険契約者だと思います。かつ、私は、この会社が大株主であるところの某企業の社外取締役である可能性が高いのですが、その両方の立場から言って、これ、何を言っているんだかわかりません。大丈夫かなというぐらいな感じですね。要は、契約者としては、ぜひぜひ開示してもらったらいいと思うし、社外取としてはぜひぜひ、例えば、私の選任決議に反対してもらって結構です。むしろそれをやってもらったほうが、おそらく建設的な対話は深まります。これは断言しちゃっていいです。私、喜んで対話します、もし私の選任決議に反対してくれるんであれば。 あと、スチュワードシップ・コードを受け入れてない年金基金があるんですか。これ、全部公表しちゃったらだめなんですか。

【田原企業開示課長】
 ここに掲げている企業年金以外は採択していただいていないので、実態としてスチュワードシップ・コードを採択している企業年金は公表されています。

【冨山メンバー】
 いや、だから、それを官報かどっかに全部公表して、やっちゃえばいいんじゃないですかね。個別議決権行使結果を公表してないところも、別に公表しちゃっていいんですよね。

 要するに、議決権行使の結果を公表しないって、コンプライアンス上、特に公表しちゃって構わないですよね。公表するのはまずいんですか、何か。

【田原企業開示課長】
 ここに載せていただいていないところは、私どもとしては個別の議決権行使の結果を公表するという発表はされてないということで、資料を公表させていただいています。

【冨山メンバー】
 これ、だから、D、Eとか言わないで、正々堂々と公表していただいたほうが。なぜ、こういうことを言っているかというと、我々、保険契約者なんで、やっぱりそこはちゃんと開示していただかないと、契約者だけじゃなくて、これから契約する人も、議決権行使を開示している会社の生命保険に入るべきなのか、開示してない会社に入るべきなのかというのは、やっぱり選択をする機会を与えるべきなので、信託銀行はみんなそうですよね。だって、お金を預けるわけだから、どういう会社に私たちがスチュワードシップを委託するのかというのは、やっぱりちゃんと国民に開示すべきなので、これは公表すべきだと思いますよ。

 もし彼らの言うことがほんとうだとすれば、ある加入者は議決権行使を開示してないところを選ぶかもしれない。だって、これはそういうことでしょ。自分たちは開示してない保険会社を選んでくれると信じているから開示していませんと言っているわけだから。だから、これ、僕は正々堂々と開示すればいいと思いますよ。これが1つ。

 あと、ガバナンス・コードのところなんですけれども、まず、最初の理念のところ、これ、私もそのとおりだと思うのですが、実際、これ、どういうところでとられるかというと、ほとんど問題は不祥事です。不祥事が起きたときに、言っていることとやっていることが違うだろうということが出ちゃうんですよ。これ、有名なジョンソン・エンド・ジョンソンの話ですよね。最近、いろんな数字をごまかしちゃったりとか、いろんな事件が出ていますけれども、あれ、大体、会社が書いている理念からするとあり得ないことが起きているんですよ、こっちで、結論から言っちゃうと。なので、そういう会話をちゃんと突っ込んだらいいんじゃないかな。具体性って多分、わけのわかんない制度とか、わけのわかんないイベントをやっていますかという話じゃないですよ。ほんとに本音が出るのは、ああいう不祥事のときなんです。だから、なぜ不祥事が起きたか起きないか、なぜ理念と違うようなことが起きちゃうのかというところがほんとうの突っ込みどころだと思うので、そこは逆に投資家にそういうところをちゃんと突っ込んでもらったほうが、企業の長期的な発展には絶対プラスに働くと思います。

 現状、これは言うまでもなく、ほとんどの会社の理念、ちゃんと読むとわかるんですけど、その理念どおりやったら、絶対、持続的に会社はよくなるはずなんですよ。そういうことが絶対書いてあるはずなんです。だから、そのとおり、それこそ短期的に、多少損失が出たりとかそういうことは、ある意味では、ちゃんと、むしろ出すべき話だし、ジョンソン・エンド・ジョンソンの有名な例はそうですよね。実は問題なかったんだけど、全部回収したわけですから。だから、そういうことをやるかどうかというのは、むしろ投資家から見たら、やってもらったほうがいいわけなんで。だって、JJってすごい会社でしょ、あれ。多分、アメリカで最も長期的に成長している、かつ社会的にすごく意義深いことをやっている会社で、たしか私の記憶では、この何十年間か、唯一ずっと時価総額トップ10に入っている会社。JJが、目ん玉がドルマークのとんでもない会社という意味じゃ全くないわけで、むしろ社会的にすばらしい仕事をしていることで有名な会社ですから、ここは私はそのとおりだと思うので、そこは大事かなと思います。

 あと、2ページ目、CEOの選解任云々かんぬん、これ、議論が深まってすばらしいと思うのですが、ずっと見ていたら、この話がこれだけ深く強くやるのと、コーポレートガバナンス・コードの裏打ち、この対応関係がよくわかんないんですよ。要は、ここでこれだけ突っ込むところが、どっかに明確にこういうことが書いてあるかと言われると、何か知らないけど、ぼんやりとちらちら、ちらちらと書いてあるだけで、これ、すごく大事なイシューだとすれば、私はコーポレートガバナンス・コードをやっぱり改訂すべきだと思いますよ。要するに、これをリフレクトしているように。

 実は、全て言っちゃうと、CEOの選解任の問題は、前回作るときにいろいろあって、こういうことは言いにくいんだけど、ある意味で寸どめで終わらせたわけですよね、これ。すみません、私、役人的言い回しが得意じゃないのでストレートに言っちゃいますけど、寸どめでとめたわけだけど、だけど、その後、例のOBガバナンスの問題が噴出し、やっぱり昨今、また、いろんな不祥事がいっぱい出ている中で、きのう、朝のNHKでもしゃべりましたけど、私はもろもろのいろんな不祥事の問題、起きていることは現場なんだけど、なぜ現場で起きるかといったら、結果的に現場に無理を強いているのはやっぱり経営者なんですよね。故意じゃないかもしれないけど。

 例えば、儲からないビジネスで、顧客からの要求が厳しいから、その要求にミートできなくてそうなりましたという説明がよくあるんですけど、だったら、やめりゃいいじゃないですか、もうからない商売。もうからない商売をやめるって、現場はできないですよ。だって、現場、ずっと一生懸命営業をやっているんだから。この事業から撤退するのを決断するのはトップの責任ですよ。そこでまたこういうことを言うと、供給責任があるとか言うんですよね。供給責任があるほど欲しいものだったら、もっと高く売ればいいじゃないですか。相手が困るとかって言うんですよ、お客さんが。困るんだったら、高く売ればいいじゃんね。ほんとに困ったら高く買ってくれますよ。だから、結局、こういう話って、全部戻るのはトップの問題なんですよ。トップが、ある意味ではほんとの問題を、あるいは痛みを伴う果断な意思決定をしないせいで、結果的に、それこそROIC的に言っちゃうと、絶対10%とか8%とか達成できないような低収益の事業をだらだら、だらだらやっているんですよ、多くの会社が。

 なので、その結果として、この問題と中長期的なR&Dでやる話をすぐすりかえるんですよ、日本の経営者。全然違います。だって、経産省の人もいると思うけど、今、世界的に見て、圧倒的に日本の会社のR&Dは少ないんです。圧倒的にアメリカや中国の会社がR&Dに投資しているんですよ。理由は簡単で、彼らは日本の会社より圧倒的に付加価値率が高い商売をやっているからです。付加価値率を上げられないとR&Dに回す金ができないんですよ。付加価値率を上げるために一番大事な方法は、高く売ることなんです。高く売れないことはやめることなんです。だから、これ、結局、経営トップの問題ですよ。

 なので、話がちょっと遠回りしちゃったけれども、やっぱり(3)の問題は極めてクリティカルです。僕はますますクリティカルになっていると思う、この一連の、今年噴出したいろんな問題をリフレクトしたときに。あれ、現場が弱っているなんて言っているのは、はっきり言って、うそですよ。現場は一生懸命やっていますよ。必死になってやっていますよ。必死の工夫として、しようがなくて数字をごまかしているんだから。なので、そう考えちゃうと、やっぱりこの(3)のCEOの議論は、コーポレートガバナンス・コードにはちゃんと対応する明確な規定を置くべきだと思う。ここは今回、僕は妥協しません。どこの経済団体が反対しようが、妥協しません。

 あと、監査役のところ、これは紙で出しましたが、これもあれに書いたとおりで、やっぱり残念ながら多くの会社で、特に社内常勤監査役というのは、現実問題として、取締役になれなかった人の充て職ポストになっています。だから、ずっと営業をやってきましたとか、ずっと生産畑一本でした、会社法も人生の中で読んだこともない、簿記会計もわかんないという人が監査役になるんですよ。これじゃ話にならないんで、ここはやっぱりどっかの投資家のとかに出ていましたけれども、やっぱりそういった領域の会計原則なり法務なり、それなりの見識を持った人、あるいは、そういった訓練を社内でやってきた人のゴールポストというか、むしろCEOというか、社長、一番出世したゴールのポストにすべきで、このことも、ひょっとするとガバナンス・コードに明記してもいいくらいだと思います。

 だって、今、結構どの会社もコンプライアンスとか社内業務監査は強化しているはずで、そういった人たちのモチベーションという意味でも、絶対そういうふうにしたほうがいいです。普通、そのラインから社長とかならないでしょ。なんだけど、やっぱりモチベーションで考えたら、英光あるゴールのポストを用意することは大事だと思うので、それが実質的な強化につながると思っています。

 それから、ページ4、これ、昔から思っているんですけど、政策保有株式の問題で、保有させる側の企業の問題で言っちゃうと、どうしてもよくわかんないの。今、わかりやすい持ち合いってないんですよね。片持ち型でぐるっと回っているケースが圧倒的に多いでしょ。これ、安定与党株主として株を持ってもらっていることと営業上のメリットというものが対価的に向き合っているとしたら、どう考えても特別利益供与なんですよ。神田先生もいらっしゃるので、これ、何で特別利益供与にならないのか昔から不思議で、だって、同じでしょ。変な話、総会屋にお金を渡すのと、株式を持ってもらっているから、営業上便宜を払っていますというのって、それって経済的には同じとしか昔から思えなくて、これ、どうなっているのかなと思って。

 そういう意味で言っちゃうと、これ、コンプライアンス的におかしいんですよ。仮に完全に会社法上の構成要件に該当しなくても、僕はグレーだと思うので、今のコンプライアンスの常識というのは、要は、疑わしきは罰するでしょ、今の日本の会社のある種のモラルスタンダードというのは。だとすると、要は、営業上大事なお客さんだから、何か知らないけど持ち合いになっていますというのは、くどいようだけど、どう考えても利益供与なんですよ。なので、これ、コンプライアンス的にどうなっているのかなと、私はずっと前から不思議に思っていて、私が社外役員をやっている場合には、とにかく商売は商売として完全にちゃんと対価性があって、ちゃんと自分の会社が選ばれているという理由がない限り、その会社の株を持つなと言っています。じゃないと、おかしいんで。

 あるいは、もし持っている場合は、特に、ある会社の法人を持っていて取引がある場合のほうが、余計に議決権行使は厳格にやってくれと言っています。要は、おかしいと思ったら、正々堂々と反対の議決権行使をしてくれと。それで商売に響くとしたら、結局、それって特別利益供与だったということなんです、結果的に。なっちゃうでしょ。そうなっちゃうんです。それでもし商売が切られちゃうんだったら、結果的に特別利益供与だということになるんですよ。だから、そう言っているので、ひょっとしたら、これ、僕は売る会社があってもいいと思うんですけど。要するに、むしろ李下に冠を正さずなんだから、むしろ私はそういうのをどっかルール化してもいいと思うんですよ。これ、反対する理由ないはずなので。と思います。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 どうぞ、大場メンバー、お願いします。

【大場メンバー】
 冨山委員の内容にも関連しますが、私からは2点申し上げます。

 1点目は、政策保有株式についてです。今日の議論は、閣議決定された内容を踏まえていろいろ議論を集約していくというようなことだと思いますので、そういったことも頭に入れながらご意見申し上げたいと思いますが、まず、政策保有株式については、コーポレートガバナンス・コードの基本原則1で、「上場会社は株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うべきである」と明記されて、多くの企業がコンプライしているわけです。そして原則1-4.を読むと、政策保有株式については3点書かれています。

 まず1つ目は、どういう合理性があるかということを説明してください。2つ目は、持っている政策保有株式に係る議決権の行使について、基準を策定してください。3つ目は、その基準を開示してください。こういうふうに書いてあるのに、そういうことについてのメディアの報道を見たことがありません。スチュワードシップ・コードを踏まえた運用会社の議決権行使の個別開示に係る取組みの内容は相当程度報道されている一方で、企業の政策保有株式についての基準はどうなっているのか、それに基づきどのような議決権行使をしたのかというのは、企業はコンプライしているとは言われているのだけれども目にしたことがない。したがって、当該原則についてコンプライしたのであれば、明確にこのルールに沿って、指針に沿って開示されるべきではないかと思います。実態、開示されているのかもわかりませんので、ここは少し事実の確認が必要ではないかと思います。これが第1点です。

 2点目は、今日の論点で言うと、5番目のアセットオーナーに関することです。これも冨山さんの意見と少し似通っているかもしれませんが、私どもの協会では、スチュワードシップ・コードに関して、運用会社がどのような行動をとっているのかというのをアンケート調査しております。今年度の概要が最近まとまったのですが、その中に「お客様への議決権行使の結果はどのように報告しておりますか」という質問があります。それに対し半分ぐらいの会社が、お客様の要請に基づいて報告していると答えているのですが、要請されるお客様というのがものすごく限られています。言ってみれば、多くのお客様は全く関係なく、要請もしないという実態が、このアンケート結果では明らかです。

 したがいまして、多くは企業年金ではないかと推定されるのですが、企業年金の取り組みについてどのような形でコーポレートガバナンス・コードの中に記入できるかが一つの焦点ではないかと思います。コーポレートガバナンス・コードの基本原則1には、先ほど申し上げたように、株主がその権利を適切に行使することができる環境の整備を行うと書かれているわけですから、みずからの企業年金が株主の行使が適切にできるように環境整備する一環として、企業年金の取り組みについての指針を示すことはあり得るのではないかと思います。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 じゃ、三瓶メンバー、お願いします。

【三瓶メンバー】
 ありがとうございます。まず、この論点整理、今の段階では論点整理なんだと思うんですが、最終的に、もしガイダンスとしてまとめるときには、前文のようなものが入るんだろうと思います。前文で私が大事だと思うのは、この1つ1つの項目全て、1個1個見れば、それなりに重要でリーズナブルなんですけれども、全部網羅的にせよというと、ちょっと違ってくるだろうと思います。個々の企業ごとに重要な課題が違っていて、重要な課題に焦点を当てて対応していかないと対話がぼけます。ですから、ここにあるのは1つ1つ大事だけれども、それを選択するのは運用機関のスキルでもあるし、それで大事なものをまず深掘りしていくことをしないと、いわゆる形式から実質ということが進まないと思うので、これは単なるチェックリストであるというような形で捉えられてはいけないと思います。

 今、企業年金のスチュワードシップ責任という話も出ていますけれども、もし企業年金さんがどんどんスチュワードシップ責任を果たそうとしたときに、例えば、これをチェックリストのように使っていって、これ、やったか、やったかということだけ聞いていくと、運用機関もそれで誘導されて、やった、やった、やったという丸をつけるだけだと深化しないということです。

 内容についてなんですけれども、(1)の「経営環境の変化に対応した経営判断」、並んでいる言葉は全部それっぽく聞こえるんですけれども、よく見ると、経営理念が具体的なものとして確立されているかというのは、ちょっとつながりが違うかなと思っています。大抵の企業は、先ほど冨山メンバーもおっしゃっていましたけれども、企業理念というのは掲げています。ただ、そこから先、事業に落とし込んでいくところが非常に曖昧だと思います。

 例えば、創業から何十年もたっている会社ほど、なぜ今、複数の事業をやっているのか。その事業をやるかやらないか、どう選択したのか。その事業をやると企業価値が向上するのかについて書いてある、または公表している会社は、残念ながら、ほとんど見つかりません。もうこの事業、前からやっているからやっているというのがほとんどです。そこで、企業価値向上という視点が生まれてくるんだろうかというのを疑問に思うことがよくあります。

 そこにさらに、成長性が鈍化してくると、新たな事業を加えていきます。新たな事業は加えるんだけれども、それ自体はいいです。ただ、その事業を加えたときの先行投資期間とか収益化のめどとか、または規模感で、それが将来の柱にするために大事なのか、そういう規律は緩い。同時に、そういったものを増やしていくのにもかかわらず撤退をしない。そうすると、事業数的にどんどん、どんどん膨れ上がってくるんですね。そうすると、重要な経営資源は分散していくしかなくて、新しい将来の柱にするんだったら、相当集中投下しなきゃいけないものが、それができないので、時間がたってもなかなか育たないという状況だと思います。ですから、(1)は経営の全体的なことを言っていると思いますけれども、やっぱりなぜその事業を営むのか、どう選択したのか、それが企業価値にどう結びつくのかということをもっとはっきりと対話していかないといけないと思います。

 今、撤退ということを言いましたけれども、撤退イコール従業員の失業と捉えられることが多いんですけれども、これは全然そんなことはないと思います。というのは、英語で、海外ではよく言いますけれども、その事業を営んでいるペアレントは適切、ふさわしいのか。「A good parent of the business」という言い方をしますけれども、ビジネスが悪いんじゃなくてペアレントが悪いと、そのビジネスが育たない。ところが、ふさわしいペアレントのもとでそのビジネスをやると非常にすくすくと育つ、競争力がつくと。だから、その組み合わせをもっと考えていかなきゃいけないので、組み合わせが合えば、従業員はもっと報われます。そういう発想がまだ足りないし、そういう突っ込み、対話が足りてないのだと思います。

 あと、資本コストのところで、生保協会のアンケートだったと思いますけれども、企業側が見ている資本コストと投資家が見ている投資コスト、または資本コストを超えたリターンを上げているかどうかというところについてかなりギャップがあります。なので、これは資本コストを意識して経営していますかと聞いたところでしようがなくて、投資家が考えている資本コストはこのぐらいですよということを言っていかなきゃいけないんだと思います。それを言われて、なぜそうなのかというところのギャップを詰めに行く、対応しないと、あんまり先に進まないと思います。投資家が、私はこういう資本コスト、あなたの会社はこの資本コストだと思いますよというレベルを提示して説明ができる、議論ができるようでなければ、今度は投資家側にその資質がないということだと思います。

 次の(2)の財務管理のところで、私は「財務管理」という言葉があんまり響かなかったんですけど、「財務規律」とかいうほうが個人的にはしっくりする感じがするんですが、ここでも大事なのは、企業価値向上の要素はすごく単純に分けると、競争力と成長性だと思います。それについて、例えば、会社の競争力維持強化のためにどれだけ必要な資源を投入しなきゃいけないのか、それをしているのか。その投入量が多ければ、今度はこれが成長につながっていくわけですね。だから、そういうことを考えた上でやっているのかどうかというふうにしていかないと、やはり対話の焦点もぼけがちかなという感じがします。

 そのところで、先ほど冨山さんのおっしゃったのと重なるかもしれませんけれども、いくら資源を投入しても競争力が強くならないとか、または成長しないというのは、もはやそういう状況に陥っているので、そこにとにかくキャッシュがあるからどんどん投入せよというのは無駄遣いになってしまうので大きな間違いだと思います。

 (3)のところは、果断な経営判断ができるか否かにつながるんですけれども、ここは果断な経営判断の反対側にあるのは、多分、無作為の責任だと思います。そういう意味では、無作為、何もしないということに対しての、それが判断の結果であって、責任をとる覚悟があるのか。または、ほんとうに果断なという、何かをやって、それの責任をとる覚悟があるのか。責任をとる覚悟があるということは、それなりにちゃんとリスクリウォードがないといけないので、そうすると、報酬の問題になると思います。ただ、報酬設計について、私が今のところ、とてもわかりにくいなと思うのは、業績連動賞与について非常にわかりやすい計算式を出していただいている会社ですら、支給率が約60%でした、計算上の支給率が。ところが、そこに特別賞与を加算して、最終的な支給率は98%になっています。そうすると、外から見ていて、企業価値向上の達成度は一体60%だったのか98%なのかよくわかりません。計算上の答えは60、ただ、最終的には上乗せしたので98。だから、そういう意味で報酬、インセンティブ、非常に大事なんですけど、大事だからこそ、その設計がどうなっていて、外から見ても企業価値向上に取り組んだ達成度がこのぐらいで、だから、支給率もこのぐらいだということが明確にわかるようにしてほしいと思います。

 政策保有のところですが、政策保有で1つ、これも例をお伝えします。ある対話先の会社、A社、これはTOPIXの上位500に入っている会社です。この会社の大株主、トップ10に入っているXとY社があります。それぞれ第5位の株主Xは2.59%保有、第9位の大株主Y社は1.6%保有。A社はというと、X社の株を0.04%持っていますが、これはみなし保有株式の第1位です。そして、Y社の株も3.67%持っていますが、これがみなし保有株式の第2位です。というのは、X社というのがTOPIXの上位30社の大きな会社なので、金額は相当あるけれども、0.04%の保有比率になっているということです。

 これが、みなし保有ですから、退職給付信託で議決権を持っている分なんですね。退職給付信託の資産の何%かというと、X社の保有は、退職給付信託を分母にしたとき23%なんですね。Y社は13%。これ、ポートフォリオと言えるのか。こうなると、企業年金の受託者責任の問題になってくるんではないかと思います。非常に疑問があり、こういうことを企業の方に聞いても、そんな質問を受けたことがないということで即答いただいたケースは今までなくて、いつも持ち帰りです。なので、それだけ見てないということ。あと、そもそもこのみなし保有株式ってとても変ですよね。退職給付信託という大事なアセットの中に入れておきながら、議決権だけは母体企業が欲しいからといって取り返して確保しているわけですね。この時点で、これは純投資じゃない。純投資じゃないからリストに載っけるんですけれども、じゃ、退職給付信託に純投資じゃないものが入っているのかという、いろんな矛盾があって、ですから、企業年金さんがスチュワードシップ・コードにサインする、しないとかに関係なく、そもそもの受託者責任を果たしているのかと、それを力ずくで、ある種誘導しているのは母体企業になっているというところは、コーポレートガバナンス・コードからも十分にガバナンスしていけるんではないかと思います。そういう意味では、コーポレートガバナンス・コードの前文のところの目的7ですかね、ここに受託者責任がうたわれているんですから、それに即して見ていく必要があるだろうと思います。

 それと、最後になりますけれども、政策保有株式について、取締役会で確認していかなきゃいけないということになっていますが、であれば、取締役会の実効性評価の対象になるはずで、必ずチェックして、しかも、取締役会でどういう評価をしたのか、それをほんとうにやっているんだということを実効性評価に絡めて開示してもらうという方法があるのではないかと思います。どういうふうに見直しをしていったのかということを株主がわかる形での何らかの開示についてコード改訂をしていただければと思います。

【池尾座長】
 ありがとうございました。いろいろとご発言いただきたいので、なるだけ簡潔にお願いします。

 小口さん。

【小口メンバー】
 ありがとうございます。いただいた資料4ですが、この論点を読んで、基本的に考え方に同意した上で、私のほうで具体的に提言させていただきたい部分に絞ってお話ししたいと思います。

 後半3ページの守りのガバナンスのところですけれども、最近起こっています企業不祥事について海外から厳しい目が注がれていますが、企業不祥事が発生すると、事後的に企業から独立した委員のみをもって構成して、独立した立場で中立公正で客観的な調査を行う第三者委員会が設置されるケースが多いわけです。その第三者委員会がいろいろ調べるということですけれども、これは実は2年前のフォローアップ会議で申し上げたのですが、企業不祥事が後を絶たないことに鑑み、こういった第三者委員会的なものを事後につくるのではなくて事前に常設化するという観点で、3ページに出ています監査役会、監査委員会、監査等委員会を見直すことを改めて提言させていただきたいと思っています。

独立取締役による監査というときに、業務に精通してないのにできるのかという声はよく聞くのですけれども、日弁連が出しています第三者委員会ガイドラインによると、第三者委員会に直属する適切な人数の従業員等による事務局の設置を要求するということで、そういった懸念への対応を図っていると思うのです。第三者委員会を、事後的ではあるが一定の役割を果たしているという前提に立つのであれば、内部監査部門が事務局の役割を果たして、そして、独立性の高い監査役会、監査委員会、監査等委員会が第三者委員会の役割を果たすというレポートラインがきっちりできれば、この場合、第三者委員会にはない法的な権限があるわけなので、守りのガバナンスの強化が期待できるのではないかと思っています。

 ここまでは形式論ですが、ある独立取締役の方と議論する中で、なかなか社外の人に現場のことはわからないということで、では具体的にどうしているのですかという話を聞いたときに、むしろわからないのは強みであって、自分で現場におりていくとおっしゃっていました。そうすると、内部では通常行われていることが何かおかしいのではないかということぐらいはわかる、それがわかれば、あとは内部部門を使って社内にチャレンジしていくということでした。資質の部分にかかわるのですけれども、そういうチャレンジできる資質というのが、社外取締役には必要なのかなと思っています。

 2点目は政策保有株式です。これは皆さんがおっしゃった部分と近いのですけれども、簡単な数字でリターンとコストで考えますと、キャピタルゲインはプラスにもマイナスにもなるので除いて考えるとして、配当利回りは大体2%ぐらいで、例えば資本コストを8%とすると、投資として普通に考えたら6%の赤字になるわけです。そこで、その赤字を保有させている企業がビジネスで埋めにいっているのではないか、その対価として、保有している企業の議決権が行使されているのではないかという懸念が、この数字だけ見るとどうしても生じてしまうわけです。

 先ほど冨山メンバーもおっしゃったように、そうすると、法律的なところは専門外ではありますが、利益供与の疑義はほんとうにないのかというところに行き着いてしまうわけですね。ほんとうにあるかどうかは外部からわからないのですが、ないのであれば、既に機関投資家が実施しているように、また今回の「コーポレートガバナンス改革の深化に向けた論点に関する海外機関投資家の意見の概要」8ページで、ACGAやAPGから、保有している側の企業が個別の保有ごとに議決権行使を開示すべきという声が出ているように、個別開示による説明がやはり合理的じゃないかなと考えています。これは、機関投資家による個別開示のときの議論と同じだと思うのですけれども、株式を持っている以上、対外的に合理的に説明できるというものでなければいけないと思うので、コーポレートガバナンス・コードに入れられるのであれば入れていただきたいと思っています。

 最後3点目はアセットオーナーの問題です。海外投資家からの意見の概要の9ページ、一番下でLegal&Generalが述べているのですけれども、企業年金のリソースは乏しい一方で、市場や運用機関の行動に対する影響力は大きい。前回も議論が出たと思うのですけれども、こういうアンバランスな部分がある現実を踏まえると、新しい政策パッケージの中で、アセットオーナーの機能発揮が大事であるということですが、本来は個々のアセットオーナーの問題であるものの、インベストメント・チェーン全体の問題として考えないといけないのではないのかと思っています。インベストメント・チェーンとして考えたときに、リソースのないアセットオーナーにおいて、年金コンサルタントの存在はすごく大きいのですね。ですから、年金コンサルタントがスチュワードシップ活動を適切に評価できるような体制をとる、あるいは、適切なアドバイスをすることによって、インベストメント・チェーンの機能発揮につながるのではないかと考えています。

 アセットオーナーに関しては、これもLegal&General、あわせてUSS、イギリスの年金基金も指摘しているのですけれども、母体企業との利益相反の問題、これは対応が必須な問題だと思います。一方で、母体企業による人事面や運営面での関与を高めるという提案もあるので、ここはジレンマですよね。関与を高めれば利益相反の懸念が高まるので、アセットオーナーの利益相反防止とか透明性の確保は、より避けて通れない問題になる。そこで、スチュワードシップ・コード改訂への対応状況についての資料5ページで、同じように利益相反を抱えている運用機関が何をしているかということが参考になるのではないかと考えています。例えば、過半数を社外取締役とする第三者委員会、これはスチュワードシップ委員会ということですけれども、こういったスチュワードシップ活動に対する監督機能導入を、執行機能の強化とセットで議論すべきじゃないかと思っています。

 ただでさえ執行に人を割くのが大変なのに、監督部門までという声はあると思うのですが、監督機能の強化あるいは透明性、公平性の確保については、母体企業がガバナンス改革によってかなり取り組まれている、知見もあると思うので、運用専門人材を送ることに加え、アセットオーナーの独立した客観的なガバナンス構築についても、母体企業の知見が生かせるのではないかと思いまして、セットで議論したらどうかと思っています。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 じゃ、佃委員。

【佃メンバー】
 ありがとうございます。私は2点コメントさせていただきたいと思います。

 まず1つ目が、資料4の(3)で、冒頭、冨山さんがおっしゃったことは、そのとおりだと思います。(3)のところはCEOにしても、次のページ、独立社外取締役にしても、監査役にしても、適切な資質を有するかどうかが一番大事ですということが書かれてあると思うのですが、問題は、では、時代環境が大きく変わる中、今の時代に求められる資質とは何かが一番大事なわけです。したがって、ほんとうに果断な経営判断を行うことのできるCEOってどんな資質を備えていなきゃいけないかというのを、企業が投資家との対話の中できっちりと説明していく。投資家は、企業にそういうことを聞いていく。具体的に誰がいいかという話じゃなくて、どういう資質を求めているのかと。その資質は、今の経営戦略と整合性があるのかについては、きっちり具体的に対話していかないと、実効性の向上は望めないと考えます。今回ガイダンスを出す上で、この点はぜひともご留意いただきたいと思います。これがまず1点目です。

 2点目に、手元の資料1の新しい経済政策パッケージのところで、「必要なコーポレートガバナンス・コードの見直しを行う」とありますので、1点コメントをさせていただきますと、手元のコーポレートガバナンス・コードの18ページの一番下にございますけれども、やっぱり原則4-8、ここはぜひとも見直しの検討をお願いしたいと思っています。

 形式は充実してきました。今後、実質をどう向上させていくかと考えたときに、やはり原則4-8の前段の「少なくとも2名以上選任すべきである」というのは見直すべきだと思います。今日的な状況の中で、2名以上がミニマムスタンダードであるのかと。当然ながら、じゃ、過半数というのがミニマムかというのは、いろんな議論があるかもしれませんが、少なくとも3分の1以上というのはありなんじゃないかなと考えています。

 なぜかというと、やはりプロポーショナリティの問題があると思うのですね。コーポレートガバナンス・コードは幅広い企業を対象にしていますから、取締役が15人のところもあれば、5人のところもある。そこの中で絶対数としての2名というのは、ある企業にとっては負担が非常に重いという話があると思います。これが3分の1以上という話になると、例えば、取締役が9人のところは3人、12人のところは4人、こういう形になってきますので、そういう形は一度ぜひご検討いただきたい。

 なぜこの話を言っているかというと、この二、三年、いろんな企業のコーポレートガバナンス改革を見ていると、やはり独立社外取締役の数の多さは質の高さにつながる。これは、かつてこの会議で小口さんがおっしゃっていましたけれども、何が説明係数で何が結果なのかという話はあると思います。問題意識を持った経営者が独立社外取締役をたくさん呼んでいる。そもそもそういう問題意識を持った経営者が経営している企業だから、企業価値が向上しているという話はあると思います。でも、やはり「数は力なり」。今後、実質を高めていくためには数は大事だというのが実感です。そういった意味で、この前段を見直して頂きたいと思います。

 それから、もう一つ、後段の業種・規模・事業特性云々等を総合的に勘案して「自主的な判断により、少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要と考える上場企業は、上記にかかわらず、そのための取組み方針を開示すべきである」とありますけれども、これ、私、まだ腹に落ちないんですよ。少なくとも3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要だと考えている企業は、別に取り組み方針を開示せずとも自らの判断で3分の1以上の独立社外取締役を選任すれば良いわけです。むしろここはその逆で、3分の1以上の独立社外取締役を選任することが必要ないと考えている企業こそがちゃんと説明しないとおかしいんですね。この後段は日本企業の企業統治を前進させているかといったら違うような気がするので、ぜひとも今回、見直しの必要性を検討していただければと思います。

 以上です。

【池尾座長】
 どうもありがとうございます。

 じゃ、高山メンバー、お願いします。

【高山メンバー】
 私からは2点コメントさせていただきます。

 まず、論点の一番最初にあります、「企業の経営理念や経営戦略・経営計画等が、中長期的な企業価値の向上に向けた具体的なものとして確立されているか」というところです。ここで経営理念を挙げていることはとてもいいことだと思います。経営理念は企業のよって立つところで、そのもとでさまざまな戦略・計画が成り立ちます。そして、確かに、多くの企業において、経営理念は、中長期的な企業価値の向上に向けた内容となっています。ただし、この文章にあるように、それが具体的なものとして確立されているかということになると、ここのところは、私自身は違和感を感じます。

 というのは、企業の経営理念というのは、その企業のカルチャーや歴史を反映した、より抽象的、哲学的な概念から構成されるものだと思うからです。そのような経営理念と経営戦略・経営計画を並列に並べて表現するのは若干違和感を感じます。ただし、そうは言っても、経営理念と経営戦略・経営計画は整合性がとれるべきものだと考えます。幾つかの日本企業では、経営理念は経営理念としてあって、それとは別に経営戦略・経営計画があって、双方がリンクしてないケースも散見されますが、経営理念がきちんとあって、そのもとで整合性がとれる、きちんとリンクしている経営戦略・経営計画が立てられるべきだろうと考えます。

 次の点は、3ページにあります独立社外取締役の選任・機能発揮という点です。「独立社外取締役として、適切な資質を有する者が選任され」というところが、この選任にかかわる箇所ですが、この選任のプロセスが重要だと考えます。現在、ほとんど場合、CEOが外部の立派な方にお願いして社外取締役としてお迎えするというように、経営陣が中心になって社外取締役を選任されていると思います。社外取締役自身も最初はそういうふうに選任されているので、みずからが社外取締役の選任にかかわることに対して若干精神的なハードルを感じている方も多いようです。しかし、CEOの選任プロセスと同様に、社外取締役の選任プロセスにおいても、独立性のある指名委員会の役割は非常に大きいと思います。CEOはもちろん企業価値創造において一番重要な存在ではありますけれども、そのCEOの経営を監督する社外取締役も極めて重要な存在だと思いますので、その選任プロセスについてももう少し充実した書きぶりをしてもいいのではないかと思います。

 それから、機能発揮というところについては、もちろん適切な資質を有する方を選ぶのが重要ですが、ここは私、佃メンバーの意見に賛成で、そういった方たちが実質的な機能を発揮するためには、最低限必要な形式、形があると思います。それはやはり取締役会全体における社外取締役の割合・人数になります。このあたりについては、今度のコードにおいては、もう少し踏み込んだ書きぶりが必要であると考えています。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。高山メンバーがご指摘になった1点目は、私も同じような感じがありまして、企業理念にかかわる議論というのは、三瓶メンバーがおっしゃった前文というか、総論に回して、1番目のものは、経営理念が具体的に経営戦略とかに落とし込めているかというのを聞くという形にしたほうがすっきりするかなと思っています。

 じゃ、内田メンバー、お願いします。

【内田メンバー】
 どうもありがとうございます。私からは6点ほど発言させていただきます。申しわけございません。

 まず初めに、新しい経済政策パッケージで、「必要なコーポレートガバナンス・コードの見直しを行う」ということが記載されています。「必要な」という言葉が入っていますので、今回は大幅な見直しは想定されていないと理解しています。

 現在、各企業においては、2015年6月に適用を開始したコードに沿って、対話を通じて、今まで取り組んできた対応の質を高めることに取り組み、いろいろ模索している最中だと思います。こうした中でコードを拙速に改訂しますと、企業サイドに混乱が生じ、また、とりあえず形を作ってしまうという方向に走る可能性があると思います。まずは、これまでの、あるいはこれから先の企業のコード対応、これが企業価値向上に繋がっているかどうかを検証することが重要だと思っています。従って、コードの見直しについては、今回の検討によって、大きな修正がどうしても必要であり、緊急かつ重要というものに絞って、最小限の見直しに止めていただきたいと思います。

 次に、資料4に関しては、まず1番目の「経営環境の変化に対応した経営判断」の1番目の経営理念について申し上げます。私が申し上げたいのは、先ほど高山メンバーがおっしゃったことに近くて、経営理念と経営計画・経営戦略がリンケージしてないケースが多々あるということです。従って、その点について企業と投資家がよく話し合うことが重要だと思います。それから、冨山メンバーがおっしゃった問題については、私の出身企業でも問題がありましたので反省を込めて申し上げているのですが、非常に重要な点だと思います。実際、IRの場で、このような非財務的な面の議論は今まであまりなされてこなかった印象があります。これからはそういう非財務面的な側面も対話の中の一つのポイントになると思います。

 もう一つ、財務面で言うと、三瓶メンバーがおっしゃった経営資源の配分の問題も重要です。経営戦略・経営計画が企業理念にしっかりリンケージしている場合、今度は経営戦略・経営計画の実現に向けて経営資源をどう投入するか、研究開発投資や設備投融資、人材投資、マーケティング投資などが経営戦略・経営計画に沿っているかどうかという経営資源の配分をきちんと議論することが必要であり、この両者(経営戦略・経営計画と経営資源配分)とがリンクしているということが重要です。これに関連して、先ほどエグジットの問題について、今までの日本企業は、どちらかというと雇用の問題を気にして対応が遅かったということが指摘されましたが、それは確かに事実だと思います。ただ、最近、M&Aも、大分「慣れてきた」という言葉はよくないかもしれませんが、日本企業でもよく話題になるようになってきて、売却するケースが徐々に増えてきていると思います。少し時間はかかるかもしれませんけれども、そういう流れになっていると私は思っています。

 それでもなお、ある事業を本当に止める場合は、日本では雇用は企業の社会的責任と捉えている経営者が圧倒的に多いと思いますので、本当に止める場合のスピード感は、アメリカの企業に比べると遅いということが、アメリカの投資家と話すとよく指摘されます。これは日本の労働市場の、流動性がないという特殊性が一因ではないかと思っています。

 次に、「収益力・資本効率等に関する指標」の設定に関して、収益力、資本効率の重要性については、日本企業の認識もかなり深まってきたと思います。ただ、資料3の海外の投資家の意見にも書いてある通り、ROEは確かに重要であるものの、企業の全体像をあらわすものではありません。ROE単独で評価すると、株主資本を減らして数値を上げるといった短期的な対応をするということも可能性として出てきますので、やはりROICやROA、そうした指標を全部含めて包括的に評価することが重要です。さらに、企業の継続性という点から考えると、D/Eレシオなどもセットで見ていくべきだと思います。

 それから、投資戦略・財務管理のところの手元資金の問題についてです。ここでは、不測の事態への備えの懸念から手元資金が過大に保有されていないかどうかという過大性の評価が問題となりますが、これは企業によって異なると思います。直接金融で資金調達できる会社とできない会社で異なるし、直接金融で調達できる会社でも金融市場が大混乱した時は、大企業でも、トリプルAの格付けの会社でも、資金調達できなくなることがあったわけです。従って、そうしたことを考慮しながら、個別企業ごとに手元資金が過大かどうかを判断すべきで、一律にはなかなか言えないと思います。

 政策保有については、2つ目のマルで「縮減に関する方針・考え方を明確化」という記載がありますが、従来から申し上げている通り、政策保有株式には企業の事業戦略の一環として行っているものがあり、全ての政策保有を縮減するという考え方で議論されると少し違和感があります。前回のこの会議でプレゼンテーションされた、コーポレートガバナンスの取り組みでかなり進んでいるオムロンさんからも、「上場株式を持つこと自体が悪であるとは思っていない。戦略的な業務提携等々で行う政策保有はある。ただ、不必要なものは縮減していく。」という説明がありました。このような考え方に立つ日本企業はかなり多いと認識しています。また、前回のフォローアップ会議で、日経225のデータについて申し上げましたが、コード適用を契機に、企業は自社の企業価値向上に繋がらない政策保有は解消し、減らしている状況にあります。そういう動きも出ているので、議論の対象は全ての政策保有株式ではなく、合理性がない政策保有株式に限るべきであり、1つ目のマルがあれば十分ではないかと思います。2つ目のマルは全ての政策保有株式を対象にすると読めてしまい問題なので、削除していただきたいと思います。

 次に、「政策保有株式を『保有させている側』の企業」として取り上げられている問題についてです。「保有させている」ということは、裏を返すと、保有している企業は「保有させられている」ということです。「保有させられている」と考えているということは、合理性がないということなので、そうであれば、保有させている側の企業の圧力に関係なく、売却すればいいと思います。保有している側は保有している意義があるのかどうかを基準に判断すべきで、「保有させられている」ということは関係なく、合理性がなければ売ればいいということだと思います。

 最後に、スチュワードシップ・コードを受け入れている企業年金が限られているという点についてですが、資産運用担当の職員の人数が2名以下の企業年金が約8割を占めるということが企業年金連合会の調査で出ています。従って、全ての企業年金がスチュワードシップ・コードを受け入れて、原則に規定された体制整備を行うことは実質的には困難だと思います。やはり企業年金のそれぞれの実態に応じて受け入れの可否を判断させるべきです。企業年金に求められるのはコードの受け入れよりも、運用機関によるスチュワードシップ活動を企業年金がしっかりモニタリングすることではないかと思います。

 ただ、モニタリング中心とは言っても、実質的に意義のある形にしようとすると、それなりに工数がかかります。それから、今、企業年金も基金型だけで600ほどありますが、その600の企業年金が、モニタリングのために個別に運用機関に一度に押し寄せると、逆に今度は、運用機関のコスト増になる可能性もあります。これは、企業年金にとっても困ることになります。従って、企業年金と運用機関双方にとって効率的で、かつ形式的にならないような、そういう共通的な枠組みが何かできないのかなと思います。

 例えば、重要項目に絞ってガイドラインを作ることや、報告書のフォームを作るなど、何かそういう共通的な枠組みを考えていただけないのかなというのが私の意見です。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 それでは、川北先生、お願いします。

【川北メンバー】
 1点目は、今日の議論はいずれにしても、社外取締役を含めた取締役会の資質の問題にかかわっているのかと思います。社外取締役の人数の問題も非常に重要ですし、人数を増やせば、当然、質の問題も出てくると思います。やはり質のところの議論を回避するのはあまりよろしくない。どういう人たちをどういう理由で社外から呼んだのか、取締役として選任したのか、今も有価証券報告書に書いているわけですけれども、非常に一律のおざなりの書き方が多いと思います。やっぱりそこはきちんと、まず議論すべきで、コードの中でも、「質」という言葉をぜひ入れていただければと思います。

 2点目は、資本コストの問題です。これはやっぱりトップの意識だろうと思いますし、トップが意識してないことが結構あると思います。やはり取締役会、特に社外取締役がきちんとそういう問題を提起して議論すべきことだろうと思います。

 それに対して投資家は、クオータリーベースの開示に左右されるのでなくて、もう少し中長期の観点から議論すべきで、それができる投資家がきちんと育つべきです。そういう中で事業の環境とか競争条件とか、そういうことも含めた議論を投資家自身がやっていく。もちろん取締役会の中でもそういうことをやらないといけないのですけれども、それを促す意味で、投資家自身がその呼び水として率先してやっていく。お互い切磋琢磨することが重要じゃないのかと思います。

 3点目は、現預金、それから、その同等物に関しましては、これは最初に言いましたように、金融機関が雨の日も傘を差し出せるような形にしないといけない。これは、この場の議論じゃないので、別途、金融行政としてやっていただくことだと思うんですけれども、その上で、では、なぜ企業が現預金をため込んでいるのかということに関しては、やはり資本コストとの関係で議論すべきです。そうすると、内部留保でため込んでいるわけなので、その裏側にある配当政策、この議論をやっぱり取締役会でやることになると思います。その上で、じゃ、配当性向をどうするのかという議論と、それから、今までため込んでいる現預金をどう使うのか、その議論です。それを使わないのであれば配当に回さないといけないし、使えるのであれば、どういう事業領域にそれを注ぎ込むのかという、その議論になっていく。そうすると、新しい事業分野の利益率の問題にも発展するでしょうし、もう1点重要なのは、使え、使えと言うだけでは、これは某T社のようなことになってしまうので、使うとすれば、利益率だけじゃなくて、リスクがどうなっているのか。その議論もやはり必要になってくる。これは取締役会の議論でもあり、投資家としても新しい事業領域に展開していく企業に対して議論を吹っかけていく、その必要性があるんだろうと思います。

 あと、政策保有に関して、純投はよろしくないという議論を以前に申し上げましたが、当然、今日の三瓶さんの意見にもありましたように、年金ではいいんじゃないか、そういう議論があると思うんですけれども、これは純投と同列の話です。純投資もしくはみなし保有を企業がやっていることはよろしくない。もう1点、これも前回申し上げたように、政策保有の問題を議論していくと、一般投資家としてのガバナンスが効かないという観点からしますと、親子上場がどうなのかという、そういう議論にも発展していくことに少し留意が必要だろうと思います。

 最後にアセットオーナーの問題ですけれども、これは年金としてみなし保有をやっているということ、それに象徴されるように、専門家がいない、むしろ、かつての監査役と同じように、一種の上がりの人事として、そこの理事長に企業が誰かを選任していく、そういう形が行われてきたと思います。だから、もしも企業が年金として独自の制度を持つのであれば、これも前に申し上げたように、今、企業年金が企業財務に与える影響はかなり大きいので、それなりのコストをかけるべきです。そうすると、外部から専門家を選ぶなり、もしくは、先ほど、どなたかがおっしゃったように、人事に関してきちんとしたゴールの設計を社内でやっていかないといけない、そう思います。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 では、岩間メンバー、お願いします。

【岩間メンバー】
 ありがとうございます。私は今まで大場さんの立場で出させていただいておったんですけれども、今、アセットオーナーの立場でございまして、その観点からお話を申し上げたいと思います。

 1つ、問題点として出されております企業年金の問題についてでございますけれども、企業年金について言うと、根底には、やはり三瓶委員がおっしゃったように、受託者責任の問題が極めて問題を内包していると。そこから出てくる問題が、運用の面にも非常に影響を与えていて、ガバナンスというか、スチュワードシップの面についても影響を与えているんじゃないかと私は常から思っておりまして、じゃ、企業年金がちゃんとそれができるかということになりますと、内田委員がおっしゃったような問題が当然あるわけで、それをどう解決するかは極めて簡単ではないのが今の状況だと思いますが、これは実は、モデルになった英国においても、企業年金という立場でのアセットオーナーのコミットメントは非常に弱い現状があって、それをどうして改良していくか、改善していくかという努力はなされているわけですね。

 その象徴的な出来事というのが、投資顧問業協会に当たるインベストメントアソシエーションと、ペーションとライフタイムセービングスの協会が一緒にレポートを出しているんですね、スチュワードシップサーベイというのを。去年から……、今年からかな、しておるわけです。要するに、そういった意味での努力を結集するという観点で、非常に合理的、現実的な取り組みじゃないかと思っておりまして、これは日本でもできないことはないんじゃないかと思います。これは別に、全体がよくなるためにどういう努力をするかと。企業サイドもそうだし、企業の業績が上がることによって裨益する投資家サイドもそうだと思うんですけれども、そういう努力を少し促すようなガイドラインみたいなものがどういう格好でできるか、私もまだすぐクリアにはわかりませんけれども、出てきてもいいのではないかということを1つ思っております。そういうことでございまして、そういった格好で進んでいけば、少し問題も明らかになってくる面が出てくるんじゃないかと思っております。感想めいた話ですが。

【池尾座長】
 それでは、田中メンバー、お願いします。

【田中メンバー】
 それでは、幾つか申し上げます。先ほど、川北先生がおっしゃっていました社外取締役が適任かどうか、適切性といいますか、そのお話なんですけれども、コーポレートガバナンス・コードができて社外取締役がかなり増えてきた中で、やっぱりここに来て幾つかの課題が出てきているんじゃないかという気がいたしています。

 1つは、資質の適切性の前に、そもそも基本的な知識を持っているのかという問題があります。例えば、公開会社の社外取締役として知っておくべき会社法の条文を読んで理解しているのかと言う点。それから、ROICとかROEとかいう議論、これ、財務の基本ですけれども、ROEが一体何か知っている人が一体どれぐらいいるんだろうかと言う点。また、キャピタルコストの計算式、この前も言いましたけれども、WACCのやり方とか、ほかにもいろいろなやり方がありますけれども、そういうのを理解している人がどれだけいるんだろうかと言う点など、一遍統計をとってみたら、おそらくかなり寂しい答えになるんじゃないかという気が1つはいたします。

 金融界にいますと、証券ビジネスをやるとか、いろんなビジネスをするときに、実は金商法に絡みまして、ありとあらゆる資格を取らされるわけです。試験を受けるわけです。そうした業務は試験に合格しないとできません。その観点からすれば、社外取締役も試験を受けさせたらどうかと思います。例えば、東京証券取引所で、基礎知識として、こういうものは社外取締役として、上場会社の取締役になるためには、最低これぐらいのことは必要なんだというぐらいのことは、試験をされても良いし、そこまでいかなくて資格をおつくりになると言う方法もあるかと思います。ある意味のミニマムスタンダードですね。それで、試験までいかないのであれば、例えば、社外取締役が選任されるに当たって、公開会社ですから、候補者はその試験を受かったのかどうかを公開する、もしくは、持っているかどうか公開するというぐらいのことを考えたらどうかと思います。その上で、その人たちが適切な人材なのかどうかを考える。ミニマムスタンダードがそろそろ考えられてもいいんじゃなかろうかと思います。

 その背景にはいろんなことがあるんですが、そのうちの1つに外国人の取締役というのも最近増えてきているんですが、この人たち、ほんとうに日本の会社法をわかってやっているのか、それとも、それぞれの国のやり方だけでいろんな判断をされているのかというところもあると思いますので、ミニマムスタンダードということを少し考えてもいいんじゃなかろうかという時期に来ているんじゃないかという気がいたします。

 もう一つは、社外取締役を一生懸命新しく選ばれている企業はたくさんあるんですけれども、ある意味じゃ、やってみたら失敗だったというのも結構あるんですね。ところが、なかなかやめてくださいと言えなくなっちゃっている。これ、どうするのかという問題が、また別途あると思います。欧州型は任期制度をつくることが多いですよね。それはあまり長い事取締役を勤めることは、馴れ合いになりやすく独立性の問題を発生させると見るからです。一方で、この前も申しましたけれども、アメリカ型は定年制度があります。そうしたことも1つ入れ込んでおくと比較的スムーズに、ちょっと時間がかかるかもしれませんけれども、そうした問題にも対処できるかもしれない。取締役の独立性という問題に対応するためにも非常に役に立つんじゃないかと思います。

 2つ目は政策投資株式なんですけれども、前回、ちょっと発言をした結果、あちこちからいろんなお話をいただきまして、私は、この政策投資株式の議論については、金融機関が保有する政策投資株式の問題と一般事業における持ち合いの問題は分けて考えたほうがいいんじゃなかろうかという気がいたしています。

 例えば、今年の金融庁の金融レポートですと、そこにははっきり出ていますけれども、3メガだけでも、欧米の金融機関と比較しますと、政策投資株のTier1比率で、3メガは35.5%ですよね。それに対して、欧米は4.8%となっています。それに対して、金融レポートの中では2つの問題点を指摘されておられまして、1つは、株価下落時の自己資本に及ぼす影響は無視できなくなっていると言う点です。これはまさに20年前に金融危機が起きたときに、これがものすごく大きな問題になったわけですね。

 2つ目は政策保有株式の縮減というのは、銀行の財務の健全性の向上のみならず、まさにコーポレートガバナンス改革を進める視点からも重要なテーマであると記載されています。この2つを金融レポートではっきり書いておられるわけです。したがって、縮減を進めるべきであると結論づけている。特にこの第1点は、これは必ずしも事業会社の持ち合いとは関係ないんです。先ほどちょっと申しましたように、川北先生も内田さんも触れられましたけれども、まさに今から約20年前の1998年に金融国会がありました。私、そのとき、全銀協会長の補佐をやっていまして、ほんとうにひどい目に遭ったわけです。そのときに言われたのは、まさに貸し渋り、貸しはがしというご批判が随分ありまして、当時、なぜそんなことが起きたかというと、一つには、やっぱり保有している政策投資株式の価格がものすごく下がったと言う事があります。しかしながら、自己資本を保全するために銀行はその株式を売らなきゃいけない状況でした。中小企業の皆さんに、例えば、上場している会社に売らせてくださいと行くと、ものすごく抵抗される。もし今、この状態で銀行が株を売ったということになると、銀行がその会社を見放したと見られると心配されるわけです。そういう議論がまさに現場でされていたわけですね。そういうふうになる前に、今みたいに、むしろ株価が高いときに対応しておかないと、次にもし起きたときには対応できなくなる、同じような問題が発生することがあると思います。私は、そういうことは起こしちゃいけないと強く思っています。

 それから、上期の銀行の決算を見ますと、業務純益、特に国内部門はみんな非常に惨憺たる形になってきて、リストラが発生するみたいなことになっていますが、一方で、株の売却益が非常に役に立っている部分があるんですよね。このフォローアップ会議のおかげで、みんな売ることになったわけですから。それでみんな最終利益が支えられておりますが、私は、それをもっと進めて、株価が良いときにそれを売って、それをまさにリストラに充てて、そして、金融機関が強くなっていくと言う循環にならないかと思っています。そのことによって、先ほど来指摘されているような点ですが、いざというときになったら、やっぱり銀行が助けてくれるんだと思うようになってもらって、だから今、現預金を使ってくださいという、そういう流れになるのがほんとうはいいんだろうと思っています。

 じゃ、これ、どうやってやるのかというのが1つ、議論していただければと思うんですが、実は銀行等保有株式取得機構というのがあります。これは、昨年の改正法で、平成44年3月まで存続を延期されました。ここには、銀行が保有している対象株式の処分をできることになっていまして、したがって、銀行が今持っている政策投資株式をここに売ると言う事ができます。先月、先々月はたしか実績ゼロなんですね。ここに売りますと、銀行等保有株式取得機構は、その株を信託銀行等に預けて、それで運用してもらうことになりますから、これはある意味では政策投資株式がインベストメント・チェーンに戻ってくる形になるわけですね。信託銀行は議決権の行使の開示とかそういうことをやりますから。これをもっと一生懸命やったらどうだろうかと思います。そして、この取得機構で持っている株は、取得機構が株式市場を混乱させないように徐々に売っていくと言うことになっています。売る先は、できれば、例えば、NISAの対象になる優良な投資信託等に売っていくとなれば、それによって長期保有の道筋をつけると言うことになると思われますので、そういうことを考えていったらいかがなものでしょうかという気がいたしております。そういうことで、金融機関が保有する政策投資株式というものと一般事業会社の保有する政策投資株式は、このコーポレートガバナンス・コードにおいても少し分けて検討したらどうかという気がいたしております。

 最後に、ここに役員報酬の話が書いてあるんですが、これは全くそのとおりなんですけれども、実はこれをやるに当たっての大きな問題というのは、1つは、上場会社の役員の報酬開示、1億円以上というのがありますね。あれがやっぱり非常に大きな心理的なネックになっているんじゃなかろうかと思います。私も昔副社長をやっていますときに、1回だけ1億円を超えたことがありまして、なぜか小中学校の同級生もみんなそれを知っていまして、その結果、その後の飲み会の分担がすごく高くなったりした経験があります。

 もう一つは、海外と日本との差ですね。外国人の報酬は、グローバルスタンダードですから非常に高い。日本人だけ低い。私、アメリカの銀行の頭取をやっていましたときに、私の直属の部下はアメリカ人が10人ぐらいいたんですが、全員私より報酬が大幅に高い水準でした。直属の部下は、大体5倍ぐらい高いんですね。ところが、みんなでビールか何か飲みに行くと、なぜか最後に僕が払っているわけです。この差を無視して、これだけの議論をしても、やっぱり心理的な壁みたいなものがどうしてもあるものですから、1億円の壁みたいなものが何とかならんのかなというのは、おそらく日本の企業の役員の皆さんは思っておられますし、それから、やっぱり日本の企業において外国人がどんどん入ってきた場合に、そこのギャップの問題はどうしてもありますので、その問題もそれなりの、何らかの対応をしないと、報酬体系の改革がしっかり進んでいくことにはならないだろうと思っております。

 以上です。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 じゃ、スコットさん。

【キャロンメンバー】
 ありがとうございます。政策保有株の話になりましたので、その話に参加させてください。これは、非常に厄介な状況になっていると思っています。と申しますのは、私は現在、投資家と上場企業の経営を兼務していますが、同時に社外取締役も務めています。これらの役割を果たす中で実感しているのは、「いわゆる政策保有株(持ち合い株)の縮減」こそが、おそらくコーポレートガバナンス改革の中で最も進んでない部分だということです。理由は、一部の発行会社の方々が納得していないためで、そのために各社が形式的な対応にとどまっているのだと思います。やはり、何が問題なのかを改めて整理した上で進めるべきなのではないでしょうか。

 持ち合い株については、3つの弊害があると認識しています。1つは、先ほど冨山メンバーからもご指摘があった部分ですが、最大の懸念は、株主民主主義そのものを害するおそれがあることです。「政策保有株」ではなく、「株主総会対策株」と言ったほうが正確かもしれませんが、要は議決権行使のバーターです。議決権行使が利害関係者間で行われており、必ずしも純投資家、純株主のための行使がされているとは限らないのです。これは、企業価値・株主共同の利益を害する議決権行使の可能性が存在するということであり、価値創造という次元とは全く異なる、民主主義そのものに関わる問題です。

 あと2つの弊害は、もう少し伝統的な、企業価値論の問題ですが、1つは、価値創造の企業活動を害するおそれがあることです。新しい経済政策パッケージ(配布資料1)の二つ目の中黒では内部留保に関して記載されていますが、その「保有する現預金等」の「等」には持合い株も含まれます。要は、持合い株も金融資産の一部であり、本業への投資で生産性を高めるべきであると明記されているのです。海外機関投資家の意見(配布資料3)にもありましたが、デットマネーとして本業から離れたものとして放置するのではなく、賃上げや設備投資などへ有効活用されるべきなのです。

 そして3つ目は、先ほど田中メンバーがおっしゃっておられましたが、不況時には株価も下落するため、金融機関では株主資本の減少を抑えるために貸し渋りなどが発生します。そして、自己資本が減るのは金融機関に限ったことではなく、一般事業法人でも同様です。つまり、金法でも事法でも、持合い株を保有している限り、株価の下落で株主資本の価値が大きく毀損するリスクを内包しているのです。企業の財務基盤の安定性と持続的成長を阻害しかねない懸念材料と言えるでしょう。

 もちろん、内田メンバーのおっしゃるとおりで、場合によっては合理性の高い本物の政策保有もあるかもしれませんが、それでもこの弊害がある限りは、申し訳ないのですが、「原則としては保有しない」という判断は十分にあり得ると思っています。私の経験では、感覚的には、持合いの縮小もしくは解消が打診された際に快諾する上場企業は約1~2割、約半分は縮小には応じるもののある程度の保有は継続して欲しい、そして残りの3~4割は縮小にも解消にも応じない。そしてここで忘れてならないのは、例えばサプライヤーが顧客企業に株式を保有させられている場合、顧客企業の反対があればサプライヤーには「売る」という選択肢は存在しません。言ってみれば、政策保有株式版の下請法があったほうがいい。力関係があるので、売りたくても売れないのです。そういう問題が実はかなりあります。身近な話で恐縮ですが、我々の投資先企業でも抱えている問題であり、対話をする中ではそういった話もよく伺います。

 最後ですが、形式的なコーポレートガバナンス・コード対応の実例として有価証券報告書をご覧いただきたいと思います。ほとんどの企業の特定投資株式の保有目的は全ての株式に対して同じ書きぶりです。そしてコーポレートガバナンス報告書では、中身のある実質的な説明がなされていないにもかかわらず、それらの「説明」によって、コードをコンプライしたことになってしまっています。

 なので、持合い株の縮減に対して納得して頂いていないということは、我々改革派はもっと啓蒙活動しないといけないし、何らかの折衷案となり得るようなものをまとめる必要があると思います。持合い株はガバナンス・コードの中でも最も進化が遅れている部分であり、だからこそ深化もできない状態にあるので、ぜひ皆さんと取り組みたいと思います。

【池尾座長】
 ありがとうございました。

 では、武井メンバー、お願いします。

【武井メンバー】
 手短にいたします。まず、取締役会と社外取締役の資質の話ですけれども、大変重要な点だと思います。現行のガバナンス・コードの中で既に「取締役会は」という主語で書いてあるところがたくさんあって、そう言った各原則を果たせる機能をきちんと自社の取締役会が持っていますかという点が問われるのだと思います。

 現行のガバナンス・コードでは全部で73個原則があるわけですけれども、コンプライ・オア・エクスプレインでなくコンプライ・アンド・エクスプレインしているものが11個あり、その11個の中に4-1①として、取締役会で何をするんですかということをきちんと方針を開示してくださいという原則が含まれています。この4-1①については、大半の企業がコンプライと開示しているかと思いますが、取締役会で何をするんですかということをきちんと説明することが重要だと思います。また原則4-1では、今日のペーパーに出てきています経営理念とか経営戦略とか経営計画を取締役会できちんと立ててくれということも書いてありますし、あと資本政策の話も5-2で、経営戦略、経営計画に関して、収益力・資本効率等に関する目標も提示してくれということが書いてありますので、こうした事項を議論できる人が取締役会でいるのかということは4-1や5-2で既にカバーされているわけですね。

 また、4-11①において、先ほどの4-1①との表裏で、そういった取締役会で議論すべきことにふさわしい多様性・規模が備わっていますかということが書かれています。この4-11①もコンプライ・アンド・エクスプレインの一つですしまた多くの企業さんがコンプライとして開示して説明しているわけですね。さきほど実効性評価の話が出ましたけれども、そうした取締役会の機能性を毎年評価してくださいというのが4-11③として既に書かれてあります。これらの多くの原則についてすでに大半の企業がコンプライとして開示している以上、そこの実質をどう深めるのかという話なのだと思います。

 企業さんには、ガバナンスコードで「取締役会は」という主語で書かれてある箇所について今一度読み直していただいて、実質を深めていただくことが重要だと思います。たとえば最近はやりのサステナビリティー課題にしても、2-3①で、取締役会がリーダーシップをとってリスク管理の一環としてやってほしいということが書かれています。これらの諸原則について多くの企業が既にコンプライであると開示しているのならば、問われるのはその実質なわけで、実質を改めて見直していただく旨を注意喚起することが今回考えられるかと思います。ガイダンス自体はあまり細かい内容にしないほうが良いと思いますが、そういったメッセージを送ることが大事かと思いましたというのが1点めです。

 あと、細かい点ですが、今日のペーパーの3ページ目の役員報酬の箇所で、「報酬制度の設計や報酬額の決定のための実効的なプロセスが確立されているか」を判断するのに何が必要かという箇所です。ペーパーではその前に収益力とか資本効率等に関する指標の設定が書かれていますが、その指標が持続的な成長に適う指標になっているのかについて、取締役会等できちんと議論されているのかという問いが最初にあると思います。原則の4-1がコンプライなのであればきちんと議論されているはずなのですが。そしてそうした議論されたものを踏まえ、次に、報酬の設計とかにおいても、取締役会や報酬委員会等で設定した指標とのリンク等について説明や議論をしていただくということが重要なのだと思います。この箇所もまだ多くの企業さんにおいてまだ道半ばかと思いますので、そういった点なども注意喚起をした方が良いかと思います。ガイダンスとしてはあまり細かく書かないほうが良いと思いますが、意識していただければということでございます。

 以上です。

【池尾座長】
 それでは、神田先生、お願いします。

【神田メンバー】
 どうもありがとうございます。簡単に3点、感想を申し上げたいと思います。あまり名案もないのですけれども、難しい問題が残っているように感じます。

 1つは政策保有株式です。既にご指摘がありましたように、金融機関が持っている場合と事業法人が持っている場合とでは全然違うので、金融機関が持っている場合には、田中さんからご指摘がありましたように、縮減というか、削減を後押しするような政策を国としてもとるという方向があると思います。

 事業法人が持っている場合には、政策保有であれ何保有であれ、スチュワードシップ・コードの受け入れということはないので、スチュワードシップ活動をしてくださいというわけにもいきません。そうしますと、これは保有している側のほうで言うとコーポレートガバナンス・コードの問題になるわけで、現在の原則1-4になるのですけれども、どうも情報開示を求めることだけでは限界があるように思いますので、情報の開示を超える何らかの規範というものを求めることができるのか。いずれにしても、この1-4は改訂を検討するに値するように思います。

 保有されている側というか、させているというか、保有してもらっているというか、そちら側の企業については、情報の開示を求めることもあり得るのかもしれないですけれども、法的にというのでしょうか、持株を売ることを妨げることはできないので、保有させているといいますか、保有してもらっている企業に何らかの情報開示を求めるのは簡単ではないような気がいたします。

 2点目は企業年金の話です。これもご指摘がありましたように、運営体制とエキスパタイズの問題が大きいと思います。これは考え方としては、全部自分で体制を整えてくださいというのは無理だと思いますので、全部自分でやらなくてもいいので、外に任せてやってもらうと、運用自体は運用機関に任せてやってもらっているわけですから、アセットオーナーとしてのスチュワードシップ活動そのものを外に、「やってもらう」という言い方がいいかどうかよくわからないのですけれども、そういう工夫が何かできるといいと思います。

 3点目、これ、私には一番わからないところなのですけれども、こういう場で議論していますと、株式市場を株式市場らしくしましょうということで議論の筋は1本通っているのですけれども、その話と日本の将来の経済社会というものをどういうものとして展望すべきかという話都の間には距離があると思うのですね。経営戦略とか経営計画の具体性についての指摘は全くそのとおりだと思うのですけれども、結局どの企業も似通ったもので、会社によって示している数字だけが違うということになりがちなような印象があります。上場会社をもうちょっと区分して、処方箋の違いを出していけないかなということを感じます。今までも既に指摘があったことだと思いますけれども、自動車をつくっている会社と、サービス業というか、インターネットの会社では大分違うのであって、同じ企業価値の中長期的な向上とか、変化した経営環境に応じた果断な経営判断といっても大分違うと思います。それから、規模もそうでして、何兆円も時価総額がある会社もあれば100億円の時価総額がない上場会社もたくさんあるので、処方箋は違うなと思います。それから、2割弱ぐらいの上場会社には、親会社ないし支配株主がいる上場会社だと思いますので、こういうところへの処方箋は大分違うと思います。

 ついでにもう一つ、余計なことかもしれませんけれども、諸外国を見ると、グーグルとかフェイスブックという会社は多分、時価総額で日本のどの上場会社よりも上だと思うのですけれども、支配権は固定されていて、創業者が完全に支配権を持っている会社なのですね。そういう上場会社は日本にはほとんどないのですけれども、ほとんどないというのは、グーグル、フェイスブック規模の会社ではないという意味ですけれども、そういう会社もあっていいのかとか、株式市場から我々は見ているのですけれども、もう少し産業から見た議論もあわせてしていけるといいと思います。

 長くなって恐縮ですが、以上です。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。そろそろ時間になりましたので、まだまだ議論があるかとは思うのですが、本日はここまでにしておきたいと思います。なお最後に、オブザーバーの経済産業省の坂本課長からご発言の希望があるということなので。

【坂本経済産業省産業組織課長】
 貴重なお時間を、すみません。一言だけ。経済産業省としても、こちらのフォローアップ会議の議論の方向性と歩調をそろえる形で、コーポレートガバナンス改革を形式から実質へということで取り組みを進めております。直近の動きを、一言だけご紹介させていただきます。

 今年の5月に、投資家と企業の対話を促進しようということで、価値協創ガイダンスというものをスチュワードシップ・コードの改訂と同日付で発表させていただいておりましたが、今般、このガイダンスを使って建設的な対話を促進し、そういったベストプラクティスを積み上げていこうというような目的で、今年の成長戦略及び今月8日に閣議決定された生産性革命の政策パッケージに沿った形で、新しく「統合報告・ESG対話フォーラム」というのを今週の18日にスタートさせております。今後ともこういった取り組みが、こちらのフォローアップ会議での取り組みと相まってコーポレートガバナンス改革が進んでいくようにということで、一言ご紹介をさせていただきました。ありがとうございます。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。本日いただいたご意見を踏まえて、事務局でさらに整理をしていただいて、引き続き次回以降、またメンバーの皆様方にご議論を行っていただきたいと思っております。

 それでは、最後に事務局からご連絡等ございましたら、お願いします。

【田原企業開示課長】
 本日はご議論ありがとうございました。また、本年は大変お世話になりました。次回の開催は来年になるかと存じますが、決定した段階でご連絡いたします。来年もまたよろしくお願いいたします。

【池尾座長】
 どうもありがとうございました。それでは、以上をもって本日の会議を終了とさせていただきたいと思います。よいお年をお迎えください。

 

―― 了 ――

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金融庁Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課

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