監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会(第1回)

1.日時:

平成28年7月15日(金)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 共用第1特別会議室

【原田開示業務室長】

少し時間前ですけれども、遅れて来られる國廣メンバー以外はおそろいになったようでございますので、始めさせていただきます。

本日は、冒頭のみカメラ撮影が行われます。それでは、関座長、よろしくお願いいたします。

【関座長】

それでは、今から監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会、第1回の会合を開催いたします。皆さん、大変お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。

このたび、当検討会の座長ということで、おそらく一番年を食ってるということでこういうことになったのではないかと思いますが、ひとつメンバーの皆様にはよろしくお願いいたしたいと思います。

初めに、事務局の池田総務企画局長よりご挨拶をいただきたいと思います。池田総務企画局長、よろしくお願いいたします。

【池田総務企画局長】

金融庁総務企画局長の池田でございます。監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会の開催に当たりまして、一言ご挨拶を申し上げたいと思います。

監査法人を、あるいは会計監査をめぐりましては、昨年の東芝事案などを契機に改めて会計監査の信頼性が問われることとなり、その中で会計監査のあり方に関する懇談会において、今後の会計監査のあり方についてご議論をいただき、この3月に総合的な提言をいただいたところでございます。

この提言の中では、高品質な監査を確保するためには、監査法人のマネジメントの強化が必要であるとの考え方に立ち、監査法人のガバナンス・コードの策定が重要施策の1つとして盛り込まれ、金融庁のリーダーシップのもと、幅広い意見を参考にしながら検討が進められていくべきであるとされました。これを受けて今般この有識者検討会を開催させていただくこととしたものであります。

金融庁におきましては、国民の安定的な資産形成の拡充というものを通じた富の増大ということを重要な政策課題の1つとして掲げているところであります。この実現のためにも会計監査の信頼性の確保は不可欠であると考えております。

今般お集まりいただきましたメンバーの方々には、会計監査の信頼性確保に向けて、これまでもさまざまな形でご指導をいただいてきたところでありますけれども、本検討会におきましても引き続き幅広いご意見を賜りますようお願い申し上げまして、ご挨拶とさせていただきます。どうかよろしくお願いをいたします。

【関座長】

それでは、引き続きまして、事務局から有識者検討会のメンバーのご紹介をお願いいたします。

【原田開示業務室長】

事務局を務めさせていただきます金融庁企業開示課開示業務室長の原田でございます。これからもよろしくお願いいたします。

まず、本有識者検討会のメンバーの皆様をご紹介させていただきます。座席順にご紹介させていただきます。

メンバーの皆様の右側から、引頭麻実様でございます。

【引頭メンバー】

引頭でございます。よろしくお願いいたします。

【原田開示業務室長】

斎藤静樹様でございます。

【斎藤メンバー】

斎藤でございます。

【原田開示業務室長】

初川浩司様でございます。

【初川メンバー】

初川です。よろしくお願いいたします。

【原田開示業務室長】

八田進二様でございます。

【八田メンバー】

八田でございます。よろしくお願いいたします。

【原田開示業務室長】

森公高様でございます。

【森メンバー】

森でございます。よろしくお願いします。

【原田開示業務室長】

なお、資料1のメンバー表にあります國廣正様におかれましては、ご都合により少し遅れての参加になります。また、本日はご欠席でございますけれども、新日鐵住金執行役員でございます石原秀威様にもご参加いただくことになっております。

事務局につきましては金融庁が務めさせていただきますが、時間の都合もあり、お手元の配席図をもってご紹介にかえさせていただきます。

【関座長】

どうもありがとうございました。

引き続きまして、運営要領(案)について、事務局から説明をお願いいたします。

【原田開示業務室長】

皆様、お手元、資料2の資料でございます。運営要領(案)ということでございます。かいつまんでご説明させていただきます。

まず、2条でございますけれども、検討会の会議は座長が招集されると。日時につきましても座長がお決めになります。それから、検討会の議長、議事の整理も座長において行われます。

4条になりますけれども、座長は必要に応じ、学識経験者、関係者等、出席を求め、その意見を聞くことができるということになっております。

5、6、7条でございますが、会議、それから議事録、資料、いずれにおきましても原則公開ということでございますが、座長が必要と認められるときには、会議の一部または全部を非公開にすることにできるということになってございます。また必要な事項は座長がお定めになるということでございます。

【関座長】

ありがとうございました。

こういった進め方でよろしいでしょうか。

ありがとうございます。それでは、こういう形で進めさせていただきます。

続きまして、監査法人のガバナンス・コードの策定に関する討議資料につきまして、事務局から説明していただきます。

【原田開示業務室長】

説明の前でございますけれども、メンバーの國廣正様、いらっしゃいましたのでご紹介いたします。皆様の右側、引頭メンバーの左側にいらっしゃいます國廣正様でございます。

【國廣メンバー】

國廣です。よろしくお願いいたします。

【原田開示業務室長】

よろしくお願いいたします。

それでは、お手元の資料3、資料4を順に簡単に説明させていただきます。まず、お手元の資料3をごらんください。

おめくりいただいて1ページ目でございますけれども、昨年末、処分いたしましたが、東芝事案におきまして、新日本監査法人のかかわった事案で発見された問題点についてかいつまんで書かれてございます。個別監査業務につきましては、メンバー構成が長期間にわたり東芝を担当した者が中心となっていました。これにより、当社のガバナンスへの過信が生じ、批判的な観点からの検証が不十分であったという点が1つ。それから、対象事業ごとに分業体制で進められていたにもかかわらず、チーム内での情報共有、連携が不十分であったということでございます。

監査チームだけではなくて、審査におきまして、チームから出された資料だけしか見ておらず、客観的な評価を行っていなかったとか、品質管理におきまして、審査会等から求められる改善策について周知徹底、浸透を十分に図ってこなかったとか、こうしたことにつきまして、経営陣におきましても状況把握が不十分、それから改善策が不徹底ということがございました。

このようにそれぞれのレイヤーにおきまして、会計士個人の力量不足、それから、それぞれの部署の機能不全ということもございましたが、これは、そもそも根本的には、監査法人のマネジメントにも問題があったのではないかということが考えられるということでございます。

1ページおめくりいただいて、2ページ、3ページ、4ページになりますけれども、先だって在り方懇でお取りまとめいただいた提言の中から監査法人のガバナンス・コードに関連する部分を抜き出してございます。

まず、監査の信頼性確保のための取り組み、そのためのマネジメントの強化という項目がございます。5人以上の会計士がいればよいというパートナー制度が前提になっており、経営に直接関与して相互監視することが基本となっているわけでございますが、実際は、企業活動が複雑化・国際化しておりまして、監査法人自体も大規模化してございます。人員が数千人を超える大規模大手法人、それから、準大手でも会計士が100人を超える規模という非常に大きな規模になっているところでございます。こうした大規模な組織において、マネジメントが対応しきれていないのではないかということが監査の品質確保に問題を生じさせている1つの要因となっていると考えられる、その中で実効的なガバナンスを確立し、組織全体にわたってマネジメントを有効に機能させる必要がある。また、組織的な運営が有効に機能している監査法人が評価されるようになるために、監査法人の運営の透明性をまず向上させる必要がある。それから、2ページの最後でございますが、大手上場企業等の監査を担う能力を有する監査法人をふやしていくために環境整備に取り組む必要があるということが背景として述べられております。

1ページ、おめくりいただいて、では、ガバナンス・コードをどうつくるかということでございますが、監査法人において実効的なガバナンスを確立し、マネジメントを有効に機能させていくためには、まずもってプリンシプル、原則を確認することが必要ということでございます。そのプリンシプルを確立して、各法人による組織運営の開示を充実させることによって実効性を担保します。これが企業、投資家、その他外部からも見えやすくするということが1つ重要で、監査法人の切磋琢磨も促すということでございます。

具体的な内容としては、大手上場企業等の監査を担う一定規模以上の監査法人への適用を念頭に置きつつ、例えば、職業的懐疑心の発揮を促すための経営陣によるリーダーシップの発揮、運営・監督態勢の構築とその明確化、人材啓発、人事配置・評価の実施等について規定することが考えられると述べられております。

さらにもう1ページめくっていただいて、大手だけではなくて準大手も含めて上場企業を監査することができる監査法人をふやす環境整備ということでございますが、準大手におきましてもガバナンスの確立、マネジメントを機能させると。それから、市場参加者や当局が外部からしっかりチェックすることで監査品質を維持向上させるということで、より多くの監査法人が大手上場企業等の監査を担えるようになることが期待されるとされています。

最後に、こうした取り組みにより、まず監査法人でマネジメントの充実により高品質で透明性の高い監査が実施され、これについて企業や株主が適切に評価して、質の高い監査法人を選別して、監査法人のほうでは、より高い監査の品質を確保するインセンティブを高め、それが例えば報酬等につながると。これが好循環につながって、監査品質の持続的な向上につながっていくという、少し大きな絵が描かれております。

以上が懇談会の提言でございます。

1ページおめくりいただいて、監査法人の規模の話、それがパートナー制とかけ離れているということでございましたけれども、実際にどれぐらいの数字なのかということを比較した表がついてございます。

先ほど触れたとおりでございますが、例えば新日本、トーマツ、あずさといった大手監査法人におきましては、パートナー600人、それから公認会計士3,000人という非常に大きい規模になっております。それより小さな準大手で6個ぐらい書いてありますが、これぐらいの規模の監査法人におきましても、公認会計士は100人規模ということになっておりまして、これぐらいの規模になれば組織的なマネジメントがあったほうがより高品質な監査ができるのではないかなということが推定される規模ということになっております。

また、1ページおめくりください。

このような事情につきましては、突然監査法人が大きくなったわけではなくて、監査法人のマネジメントの方々もここ数年来どのようにガバナンスの充実をしたらよいかということを工夫されてきた経緯がございます。6ページには、特に東芝の事件を受けまして、みずから、それから被監査会社の監査役の方々等と意見交換をしながらということかと存じますけれども、特に新日本監査法人におきましては、ガバナンスの強化ということを強く外にも打ち出さなければならない事情があったと認識しておりますが、その中でいろいろな工夫が行われています。例えば、今年の1月からでございますけれども、経営執行部を一新するという中で、単に変えるということではなくて、そのシステムを変えるということで、理事長を選任する指名委員会に社外の有識者を参加させる。それから、全法人的に理事長の候補を拾い出した上で、社外の有識者の方がチェックしたり、全パートナーが投票したりして決めていくと。理事長以外の方々の執行部の方々についても社外の有識者の同意を求めるなどの指名手続を行ったということでございます。

それ以外に、例えば、監査品質につきましては、監査品質監督会議を設置して、個別監査におきましても意見表明や契約更新等、重要な局面に関与していくと。それから、その下になりますが、社外の有識者を非常に多く、7名と認識しておりますが、いろいろな局面、例えば公益の観点からの経営執行の監視として社外ガバナンス委員会、おそらくこれは3名だったと記憶していますが、これと、監査品質監督会議、先ほど申し上げた社内の個別監査における監査品質のチェックに社外の方を1人、それから、組織風土改革にも複数の方々を入れて、いろいろな局面から社外の方々のご意見を反映する態勢をつくられているということかと存じます。

それから、パートナーローテーション、これは平の業務執行社員は法定では5年の継続監査に5年のインターバル、筆頭の方々は7年、2年だったと思いますが、それよりも少し厳しい、例えば筆頭業務執行社員については、継続期間5年後の後はもう戻れないというような制度を入れたと伺っております。

それから、例えば検討中の事項でありますけれども、1つ目ではありますが、変化に対応できない社員に対して退職を勧奨する仕組みの導入など、意欲的な取り組みを検討されていると認識しております。

1ページおめくりいただいて、新日本とは状況が若干異なって、他の4大と言われているほかの3つの監査法人におきましても自律的にいろいろな工夫をされていると認識しております。

例えば、トーマツにおきましては、3つ目の項目ございますけれども、去年の12月から経営会議の体制を変更しておりまして、会社法における例えば指名委員会等設置会社等をモデルにしたガバナンス体制を導入されていると。例えば、経営会議をボードということにして、これは多分取締役会というものに近いものだと思うんですが、この下に常設の推薦・報酬・監査委員会を設置して、その方々は評議員2名ということですが、一番上の項目だと思うんですけれども、現役の執行役ではないパートナーの中から選任してこうした委員会を設置されているということかと存じます。

それから、検討中の事項でございますけれども、社外の方をさらに登用しようとか、監査品質に関する透明性報告書の作成・開示等を検討されているとか、こういった状況にあると認識しております。

それから、あずさにおかれましても、これも3つ目の項目ですが、今年の7月から経営監理委員会が設置されていて、これは公益の観点からアドバイスを与えるような機関と認識しておりますけれども、外部委員4名ということを取り入れて始めようと考えられているようでございます。助言機関でありますけれども、法定監査の品質管理に関する重要事項については、事前に理事長から説明を行って委員の意見を求めるという形になってございます。このあずさにおかれましても、監査品質に関する報告書の作成・開示を検討されているようでございます。

あらたにおきましては、この監視委員会を設置するとともに、目を引くのは、去年12月から既に監査品質に関する報告書を開示されているということでございます。それから、社外に有識者の活用・選任においても検討中ということでございます。

また、1ページおめくりいただいて、では、海外の例はどうなっているのかということを少し触れておきたいかと思います。海外で監査法人のガバナンス・コードを導入している国は、イギリス、それからオランダとあるわけでございますけれども、少し立てつけが異なってございます。例えば、公表主体におきましては、イギリスはFRCと協会が共同でということになっておりますが、オランダでは協会がつくるということになっています。導入時期は2010年、2012年ということでございますが、適用対象は、イギリスが7法人、オランダが9法人、これぐらいの対象の規模になっております。適用の枠組みでありますけれども、一番大きく違うのは、イギリスはコンプライ・オア・エクスプレインアプローチを採用していると。それから、オランダにおきましては、コンプライ・オア・エクスプレインではなくて、全体として遵守が求められているという状況でございます。

少しイギリスのコード、オランダのコードの中身を見ていきたいと思いますけれども、1ページおめくりいただいて、経緯でございますが、イギリスでは、監査市場の寡占ということが問題意識として上げられて導入されたと認識しております。(注)でありますけれども、上位350社の上場企業のうちの99%がBig6で占められているという非常に寡占が進んだ状態でございまして、この中、こういった寡占の中から1つの監査法人が退出すると、撤退するということになりますとリスクとして大きいのではないかということが懸念されまして、コードをつくろうというふうになったと認識しております。

項目におきましては、全部を申し上げる形ではございませんが、例えば、経営陣のリーダーシップとかガバナンス機構の構築、それから価値観。これはプロフェッショナリズムと書いてありますけれども、職業的懐疑心みたいなところもここに含まれると思っております。

それから、1ページおめくりいただいて、社外の有識者の活用、INEです。独立非業務執行役員、社外の有識者の活用でありますとか、オペレーションの分野で、コンプライアンス、リスク、人事管理、内部通報。

それから、またおめくりいただいて、報告とありますけれども、コンプライ・オア・エクスプレイン方式で、どのようにコードを適用しているかと、その状況の公表とか、コードで求められている開示内容を含む透明性報告書の公表などが書かれております。さらに、対話という項目で、監査先企業、株主等との対話。それから、監査先企業におきましても経営陣もしくは監査委員会等とどのように対話しているかというようなことに触れられております。

また、おめくりいただいてオランダでございますけれども、オランダは2008年の金融危機について、監査法人はしっかり役割を果たせなかったのではないかというような問題意識からコードがつくられたというふうに認識しております。

項目につきましても、最初の価値観、これは経営陣のリーダーシップ、トーン・アット・ザ・トップであるとかガバナンス機関、それからオペレーション、運営の原則のところでも社外の活用でありますとか、人事方針の策定でありますとかリスク管理、内部通報。基本的には、イギリスの項目とかなりかぶるような項目が書かれております。

1ページおめくりいただいて、また第三者のメンバー、これも社外の方々の活用でありますとか、それから、透明性報告書によるコードの適用状況でありますとか、ステークホルダーとの対話ということで、オランダのコードも、少し構成とか力点に違いはありますが、項目としては近い内容ということになっております。

資料3については以上でございます。

次に、お手元にあります資料4をごらんください。

資料4につきましては、我が国における監査法人のガバナンス・コードの策定の意義と、最初に少し触れておかなければならないであろうと思われる論点について幾つか、10個ぐらい並べてございます。順に少し読ませていただきます。

まず、最近の事案における問題点、東芝でございますけれども、東芝事案で明らかとなった問題点をどのように評価するか。単なる会計士個人の力量や審査態勢、品質管理態勢の問題だけではなく、監査法人のマネジメントの問題と捉えるべきとの指摘についてどのように考えるか。

それから、監査法人における近時の取り組みの評価。大手監査法人においては、近時、マネジメントの強化やガバナンス改革、透明性の向上などに向けて取り組みが進められているが、こうした取り組みについてどのように評価するか。

それから、パートナー制と実態の乖離。5人以上のパートナーシップを前提とした公認会計士法上の制度と大手監査法人の実態との間に大きな乖離があるのではないか。この乖離に監査法人の経営陣が対応しきれていないことが監査品質に問題が生じている主な原因の1つであると考えられるのではないか。

乖離を埋めるコード策定の必要性。この乖離を埋め、監査法人の経営陣によるマネジメントの変革の取り組みをサポートするため、監査法人のガバナンス・コードを策定すべきであるとの指摘について、どのように考えるか。

監査法人の組織的な特性。特に、我が国の大手監査法人においては、人員が数千人規模に拡大していることに加え、従来合併等を繰り返し行ってきたこと、それから、法人内の各部門がそれぞれ特定の関与先企業を継続的に担当することが多かったこと、個々のパートナーの専門職業士としての自律性が殊さらに強調されてきたことなどの事情から、全体のマネジメントが機能しにくい組織となりがちであるとの指摘について、どのように考えるか。

その次に、経営陣のマネジメントの知見の重要性。一方で、監査法人の経営陣にはマネジメントの経験が豊富な者が必ずしも多くないとの指摘についてどのように考えるか。こうした中で、各法人では、外部のマネジメント経験者の知見等を活用する動きも見られるが、これについてどのように考えるか。

人材啓発・人事評価。近時、監査現場における担当者の士気の低下等を指摘する向きもあるが、人材啓発、人事配置、人事評価面での課題について、どのように考えるか。

マネジメント・ガバナンス機能強化、透明性の向上。イギリス及びオランダにおいて、監査法人のマネジメントやガバナンス、透明性の向上について、こうしたことを目的としてガバナンス・コードが導入されているが、我が国においても監査法人のガバナンス・コードを策定し、マネジメントやリーダーシップの強化、マネジメントの充実を支えるガバナンス機能の強化、それから透明性の向上を図っていくことが考えられるが、どのように考えるか。

監査の担い手の多様化との関係。我が国においては、大手監査法人による監査市場の寡占化が進んでおり、大手上場企業等の監査を担える監査法人の数の増加が重要な課題とされている。その際、ガバナンス・コードの導入は、準大手監査法人等の監査品質の向上にもつながるものであり、大手上場企業等の監査の担い手の拡大に資することが期待されるとの指摘について、どのように考えるか。

最後に、その他、監査法人のガバナンス・コード策定に当たり、留意しておくべき点があるか。

このような観点、もちろんこれ以外の点もございますと考えますけれども、とりあえずこのような点を論点として申し上げたいと思ってございます。

以上でございます。

【関座長】

ありがとうございます。

それでは、ただいまの事務局からの説明を踏まえまして、これより皆さんからご質問・ご意見をお伺いして討議をさせていただくということで進めさせていただきたいと思います。今日は初回ですので、皆さんの腹蔵のない活発なご意見をぜひ聞かせていただきたいと思っております。資料4で指摘した我が国における監査法人のガバナンス・コード策定の意義、論点というようなものを出しておりますが、この論点について、さらに、これにこだわらずに監査法人のガバナンス全般にかかわる問題、あるいは今後の進め方に関するご提言等を含めて、ぜひご自由にご発言いただきたいと、今日は全員からお話を伺いたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

どなたからでも結構ですからお話しいただければありがたいと思いますが、いかがでしょう。森さんからぜひ。

【森メンバー】

ご指名をどうもありがとうございます。公認会計士協会としてこういった有識者会議を設置、開催いただきましてありがとうございます。

会計監査の在り方に関する懇談会でも高品質で透明性の高い会計監査、これが必要であるということでさまざまな提言が出たわけであります。その中で、資本市場における関係者として、昨年は上場企業が透明性を求められ、コーポレートガバナンス・コードができました。その1年前には、市場関係者である機関投資家に対してスチュワードシップ・コードができているということであります。会計監査人、監査法人もその市場の担い手でありまして、その一翼を担っており、情報の信頼性について市場の番人と言われていますので、その機能というのは非常に重要だと考えております。

そういった中で、懇談会において、その監査自体の透明性が十分でないのではないかというご意見が出ております。これは懇談会の提言を見ればわかるとおりです。その透明性、これは、それぞれが市場の中で役割を果たす上で、当然自分たちが役割を果たすことも大事ですが、相互で理解し、連携をしなくてはいけないということの大きな前提になるのだと考えています。つまり、企業も透明性を求められる、機関投資家も透明性を求められる、したがって、監査人も透明性を持って、市場の中でそれぞれの役割について機能できているかどうかというのを、それぞれがお互いに、確認するということが必要なのではないかと考えております。その中で、懇談会では、1つは、その監査法人自体の運営、経営自体がよくわからないですねというお話がありました。同時に、監査業務自体もよくわかりませんというお話がありまして、何人かの有識者の方からブラックボックスではないかというご意見もいただいたということでございます。

監査業務については、監査報告書にKey Audit Mattersという、監査上重要とした事項について監査報告書に書いていこうではないかというところで検討が進められるわけでありまして、これも非常に重要なことでありますが、監査法人の透明性、これも非常に重要なことでありまして、この有識者会議は、監査法人の透明性についてしっかり検討していこうという会議体だと私は認識しているわけであります。

その際に、当然のことながらそのガバナンス・コードをつくるということではあるんですけれども、企業のガバナンス・コード、これが参考になるとは思いますが、監査法人というのは、先ほど事務局からもご説明がありましたけれども、公認会計士法上、公認会計士が5名集まって監査法人が組成できるわけであります。この前提となる制度、これはパートナーシップ制度でありますが、実は非常に相互監視の効く制度であります。これはなぜかといいますと、パートナーがそれぞれのパートナーの業務をチェックして相互監視を働かせる。パートナーが何か対外的にいろいろな、例えばその損益責任もそうですけれども、法的な問題もそうですが、そういった問題を起こすと別のパートナーも責任を負わなければならないんです。ですから、当然のことながら、非常に強い相互牽制が働くわけであります。しかしながら、先ほどご説明がありましたように、500名、600名のパートナーで顔が見えるわけはないですね。その公認会計士法の中で有限責任監査法人制度というのができたのですが、それでもパートナーシップ制度をベースにしているわけでありますので、このパートナーシップ制度の中では、500人のその共通の認識というのがなかなか難しいのではないかと考えるわけであります。

しかしながら、有限責任監査法人制度であったとしても、監査チームの責任者、これはパートナーですけれども、パートナーは無限責任を負うという、そういうリスクを負いながら業務をやっているという事実があります。では、公認会計士法はなぜパートナーシップ制度なのか。国によってパートナーシップ制度でないところもありますが、UKもUSもパートナーシップ制度で行っているわけであります。これは、職業的専門家として、職業的専門家が求められるプロフェッショナリズムに基づいてしっかりとした業務を提供する、そういう役割が必要であるということでパートナーシップ制度のもとの監査法人制度ができているということだと思います。

規模が大きくなり、顔が見えなくなるとそれぞれの監視ができなくなりますので、その監視をどのように行っていくのかというのが、このガバナンス・コードの策定に当たってのベースになっていくのかなということだと思います。そのためには、一人ひとりの専門性がしっかりと発揮できる環境、そして発揮していることが確認できる、そういった組織でなければならないということだと思います。

今ご説明いただきましたが、各監査法人では、かなり準備が進められているということでありまして、その1つはマネジメントの強化ということだと思います。500人、600人のパートナーがどのように業務を行っていくのかということになると、強力なマネジメントが必要だということだと思います。それと同時に、強力なマネジメントが必要だとすると、強力なその監視も必要になってくるということだと思います。マネジメントとモニタリング、執行と監視は、それぞれバランスがなければならないので、マネジメントを強くするということは、監視も強くならなければならないということです。

それと、監査法人というのは、公認会計士法上で決められた法人組織であります。この目的はパブリック・インタレストでありますので、運営において手前勝手にならないような、そういう仕組みが必要であるということで、これは外部の方の力も必要になってくるのかなということだと思います。公益の視点における監視、アドバイスといいますか、そういったものが何らかの形で効くような、そういう組織体の組成が必要なのではないかと考えるわけであります。各法人がそれぞれ工夫をされているということと、公認会計士法上、パートナーシップという制度のもとで監査法人ができているということがありますので、ここは各監査法人の創意工夫を最大限生かしたいと考えているわけであります。

しかしながら、今回の目的は、外からのわかりやすさという点も求められていると思います。したがいまして、こういったコードとして一定の横串を入れるということは、これは資本市場から求められることではないかと考えているところであります。

それと、規模の問題も先ほどご説明がありましたけれども、順番にいろいろ話していけばいいとは思うんですけれども、まとめてお話し申し上げますと、パートナーシップ制度、これは顔が見える範囲であればかなり牽制が効くわけですね。ですから、そういうことからすると、全ての上場会社を監査している監査事務所に対してこういったコードを入れても、なかなか、本来市場が求めるガバナンス、実効性あるガバナンスができるのかというと、ここはよく検討しなければならないところではないかと考えています。

また、後ほどお話しさせていただく機会があればと思いますけれども、今回、ぜひこのガバナンス・コード、これは民間の創意工夫のもとで、各監査法人が実効性を担保できるしっかりとしたものをつくっていく必要があると考えております。

どうもありがとうございました。

【関座長】

どうぞ。

【初川メンバー】

私も懇談会の議論の中でも申し上げましたけれども、今、監査法人にもガバナンス・コードが必要だろうと思います。残念ながら監査の信頼性が揺らいでいるという状況がありますので、ここで仕切り直しをするという意味で、ガバナンス・コードを導入することの目的が2つ、私の頭の中にあります。1つは、資本市場に向かって、監査法人がしっかりと会計監査の信頼性確保と、その資本市場における社会的責任を果たすのだと、こういったことをしっかり世の中に宣誓をするという意味で仕切り直しのタイミングかなと思います。

それと同時に、先ほどもありましたけれども、監査法人は、もう会計士で3,000人、会計士以外を入れると五、六千人の組織になっていますので、このガバナンス・コードを法人内部の職員にも示すことが大切です。五、六千人ということになりますと、それぞれ異なる価値観を持った人たちが、またバックグラウンドも違う人たちが働いているわけですから、何もかも細かいルールでその五、六千人を動かすということは困難だと思います。大きなところについて、こういうガバナンス・コードのようなもので、我々は法人として、集団として何をする人たちなのだということを明確に内部に対して発信して、その価値観を共有するためにもこのガバナンス・コードは非常に大切なのではないかと思います。

ガバナンス・コードの中身についてはこれからの議論になると思いますけれども、私も過去監査に関与してきた人間として感じますのは、決してそれぞれの法人、それぞれの監査人がいいかげんなことをしているわけではなくて、それぞれ社会的使命を感じて一生懸命やろうとしていると思います。けれども、残念ながら、その方向性と価値観が、必ずしも十分に一体化されていない、体系化されていない。したがってそのほころびが出る、力が発揮できないという面が多分にあると思います。基本となるその部分を示して、法人によってそれぞれ運用の仕方は違うかもしれませんけれども、皆でそれに取り組むということが信頼性確保のためには非常に大事なのではないかなと思っています。

以上です。

【関座長】

どうぞ。

【國廣メンバー】

2点ありまして、まず第1点ですけれども、資料3の3ページにガバナンス・コードの必要性ということ、全くそのとおりだと思います。ただ、気をつけなければいけないのは、例えばコーポレートガバナンス・コードにおいてもきちんとそれを自分で消化して対応している企業もあるけれども、あえて言いますけれども、多くの企業は、形の上で社外取締役を2人入れなければいけない、しようがないねという形。あるいは、コンプライ・オア・エクスプレインというと、どのようにエクスプレインをするかという書式集で書くと、このような実態がコーポレートガバナンスの場合でも起きています。きちんとやっている会社もあるけれども。

そうしたときに、この監査法人のガバナンス・コードというのは、とても方向性としてはいいと思うのだけれども、同じ轍を踏んではいけないというところがあるだろうと思います。しかし、現実は、一部の監査法人かもしれませんが、漏れ聞こえてくるところによると、さらに紙をふやす方向、あるいはチェックリストをいっぱいつくる。これは何人かから聞いたんですけれども、「ノーペーパー、ノーワーク」だという形で、とにかくぶったたかれないために自分たちのアリバイをどうつくるのかという方向に、僕は間違った方向だと思うんだけれども、行こうとしている兆候も見えなくもないと思います。すなわち、責任を問われないための仕組みみたいなね。そうではないと思います。そもそも何のためのガバナンスか、何のための監査法人かというと、市場のゲートキーパーというとても大事な役目を果たしていて、その中でCPAとしての誇りを持ち、プロ意識を持ち、そして結果としていい監査をすると、このための仕組みですよね。ところが、仕組み自体が自己目的化することにならないようにこの仕組みをどうするかというのはなかなか難しい部分ではあるのだけれども、そこだと思うんですね。したがって、形ばかりに走らせないで、実質的にプロ意識を高め、監査の水準を高めることに資するにはどうすればよいのかというところに常に戻っていく必要があると思います。

ただ、若干危惧するのは、例えば6ページ、7ページを見ると、4大監査法人はどこもそろって外部委員を入れますと。いいんだけれども、何かみんな横並びで同じようなことをするように、見えてしまいます。もちろん外部を入れるということも大事だと思うけれども、入れることというのではなくて、その外部をどう利用するのかと。例えばガバナンス・コードで「外部を入れなさい」というだけだとだめでしょうね。何のための外部なのか、その外部がどう実質的に動くのかというところが私は必要になってくるのではないのかなと、そのように感じます。

これが第1の問題。つまり、怒られるのが嫌だからさらに萎縮してチェックリストと紙に行くという方向にしないためにどういう仕組みをつくるのかという観点が大事なのかなと思います。

大きく言って今度は2番目ですけれども、監査法人のガバナンス・コードという発想はいいと思いますけれども、これだけ分離して考えるのではなくて、コーポレートガバナンスなどとどう有機的に結びつけるのかという観点が必要になってくるのだろうと思います。

例えば、東芝の事例などを見ますと、一方ではコーポレートガバナンスがきっちりできていると言われている委員会設置会社で、社外役員がたくさんいたけれども機能していなかった。あの事件が起きたわけですからね。他方、新日本の問題もある。ただ、あの東芝の報告書を幾ら読んでも、「社外取締役たちと監査法人が日々どんな議論をし、どんなビビッドな議論をしていたのか、いなかったのか」あるいは、「監査法人が感じた疑問点をCFOに押さえ込まれようとしたときに、社外取締役がそこで牽制効果を発揮したのか、しなかったのか」といったことが大事なことです。おそらく全く発揮してないのだろうと思うんですが、東芝の報告書にはこの点は何も書いていない。つまり、東芝の事件は、形の上での委員会設置会社という東芝の「形だけのガバナンスの問題」と、もう一つ監査法人問題があったと思います。したがって、いかに社外取締役、社外監査役の役割というこれからのコーポレートガバナンスの問題と、今我々が考えようとしている監査法人のガバナンスの問題をどう連結させるのかというところが大事になってくるように思います。

私自身、あまり理論的な人間ではないんですけれども、例えば自分自身の経験で言えば、ある企業の社外取締役をやっていてイの一番にやったことは、監査法人と面談をさせてほしいということと、横にCFOを置いて、CFOが間違ったことをしておかしいと思ったときには社外取締役である自分のところに言ってきてくれと、社外取締役というのはそのためにあるんだと。社外監査役も同じですけれどもね。というようなコーポレートガバナンス側からの働きかけというか、逆に監査法人側からのコーポレートガバナンス、つまり社内のみならず社外取締役や社外監査役に対する働きかけ、そういった日々のコミュニケーションがあるから何か困ったときにそれを利用する。つまり、監査法人の中だけのガバナンスで頑張ろうとせずに、企業のコーポレートガバナンスも上手に使うというような、そういった発想も必要なのかなと、このように感じます。

以上、2点です。

【関座長】

どうもありがとうございました。

引頭さん、どうぞ。

【引頭メンバー】

ありがとうございます。今の國廣メンバーと意見が似ているところも多いので続けてさせていただきます。全部で4点ございます。

まず1点目は、現在のマーケットの状況を申し上げますと、市場環境は大変不安定になっていると言わざるを得ません。不正会計の話のみならず、ブレグジットを初めとして国際情勢や金融情勢がダイナミックに変化しています。そうしたなか、市場のインフラとしての、監査の品質や監査の信頼について、大変厳しい状況にあると認識しております。

本日、事務局からのご紹介をいただきまして、監査法人の方々が新しい取り組みを始められたというのは認識しておりますが、今、國廣メンバーもおっしゃったように、外形的には進んではいるかとは思いますけれども、本質的に変わったかについては、外から見てはまだよくわからないというのが実感です。

釈迦に説法ですが、監査というのは、資本市場の重要なインフラです。先ほど申し上げたように、マーケットを取り巻くリスクは多く、仮に何か大きなショックがあった場合、インフラ自体が揺らいでいますと、そのショックか倍増してしまう可能性も否定できません。インフラをきちんと整えておくということが非常に重要となっており、その重要な構成要素として、監査の品質を上げていくことが喫緊の課題の1つであると認識しております。

2点目ですが、不正会計問題の本質は何だったのかという点です。これは提言にも書いてありましたが、これまで様々な監査基準を策定するなど、不正会計を防ぐ制度作りに取り組んできました。ですが、今回不正会計事案ではその制度が必ずしも機能しなかったということであれば、基準をさらに精緻に策定していくというよりも、その運用について、よく見ていく必要があるのではないでしょうか。監査法人において、監査基準がどのように運用されているのか、きちんと実効性あるものになっているのかといった、実装、つまりインプリメンテーションの問題であって、それを見ることが重要ではないかと考えております。これが2点目です。

3点目、そのように考えますと、監査法人のガバナンス・コードですが、これは監査法人が法人としてどのように監査基準を運用しているかということを見るための、大きい意味でのガイドラインの1つであり、重要な役割を果たすものと思っております。その中で、1つ申し上げたいことがありまして、現在上場企業が取り組んでいるコーポレートガバナンス・コードとこれから設定する監査法人のガバナンス・コードとは、性質が全く違うということを私たちは理解していなければいけないということです。つまり、現在の企業のコーポレートガバナンス・コードは資本市場に上場している企業が上場を維持するために必要な義務として取り組んでいるわけです。一方で、監査法人はそもそも金融庁への登録制で行っている士業であり、そう考えますと自由度というのは上場企業とは少し違うわけで、よりしっかりした、実効性のあるコードでなければいけないと考えるわけです。そうなりますと、海外事例や、すでにあるコーポレートガバナンス・コードを参考にはできますが、それらだけでは今回の目的は達成できないのではないかと考えています。

では、どうしたらいいかということですが、まず、ただガバナンス・コードを策定するということではなく、何が足りなかったのかと、どういう部分が必要なのかということについて、この検討会できちんと認識を固めてから、どういうガバナンス・コードであればそれが効果的に実現できるのかについて議論すべきではないかと思っております。先ほど國廣メンバーもおっしゃったように、外形をつくることではなくて中身が大変重要なのだと思います。さらにその具体的なやり方については監査法人に考えてもらって、自主的にやってもらうということが大事なのだと思います。

これは個人的な意見ですが、監査法人の人事についてですが、例えば審査をどのような方々が行っているかというと、監査の経験を随分やってこられたシニアの方々が中心になっている。また、パートナーになられた方でも審査の経験が少ない方もいらっしゃるように聞いています。懸念しているのは、実際に審査というのはどういう意味を持っているのかといったことを、監査人の方々がわかるような、身を持って理解できるような、人事になっているのかという点です。あるいは、現在の教育の考え方で十分なのかといったこともあります。そうしたことも念頭に置きながら実効性のあるものをつくっていくべきではないというのが3点目でございます。

4点目ですが、これは監査法人だけの取り組みでよいかということです。國廣メンバーと同じ意見で、それだけでは機能しないと思います。資本市場の関係者、つまり財務諸表の利用者、そして財務諸表を作成する上場会社、そして監査法人を監督する監督官庁、それぞれがそれぞれの立場で見ていく必要があるのではないでしょうか。それぞれがただ開示された情報を見ていくということだけではなく、それを評価し、その内容をフィードバックしていくという、PDCAの動きをつくっていかなければいけないと思います。このPDCAとは何かといいますと、監査の価値、つまり監査のバリュー・チェーンであり、これを今申し上げた関係者で形成していくということに他ならないと考えます。

このように考えますと、例えばコーポレートガバナンス・コードの中には、監査役会あるいは監査委員会、監査等委員会が、監査法人を選定する際の基準をつくるべきという項目があったり、あるいは、十分な監査時間を確保しなければいけないというものや、監査役と監査人がより対話をしなければならないというものがあったりします。つまり、コードには監査に関連する項目もあるわけです。ですので、今あるコーポレートガバナンス・コードとの連携も十分にとれると思いますし、そうしなければならないと思います。さらに、ご案内のとおり会社法改正によって、従来の監査委員会に加えて、監査役会および監査等委員会においても、監査人選任等の議案を株主総会に付議できる権限が付与されました。このように法的には整ってきていますので、それを積極的に活用していくということが非常に大事なのだと思います。

最後になりますが、できていないという視点ももちろん大事ですが、それ以上にどのようにしたらよくなるのか、どのようにしたら監査の価値を資本市場の関係者や上場会社が認めてくれるのか、あるいは認めてくれるような流れになるのかというポジティブな視点というのも忘れてはいけないのではないかと思います。

以上でございます。

【関座長】

どうもありがとうございました。

それでは、八田先生、いかがですか。

【八田メンバー】

ありがとうございます。前回の懇談会に参加させていただきましたので、それなりに、日本の監査制度の歴史について少し振り返ってきてみました。驚いたことに、実はちょうど10年前の平成18年、今日も持ってきていますけれども、金融審議会の公認会計士制度部会で、公認会計士・監査法人制度の充実・強化についてという議論がなされて、皮肉にも関座長が部会長をされていて、非常に立派な報告書ができ上がっております。私自身、記憶をたどると実は臨時委員で末席をけがしていたということで責任があると思いますが。実はそのときの議論というのは、時代的には2006年ですので、カネボウ事件とか、日興コーディアル、西武鉄道、あるいはライブドア、こういった問題があって、どうすべきかという議論であったかと思います。その前の2003年には公認会計士法が改正になっていますが、どうもそれがうまく機能していないのではないかという問いかけの中で部会が設置されたわけですが、今それをるる申し上げることはしませんが、ここでの問題意識、あるいはそこに盛られている問題の論点、それは先般の懇談会の論点とほぼ8割、9割整合するというか、一緒だということです。つまり、簡単に申し上げると、この10年、わが国の監査制度は何も変わっていなかったのかなということで、私自身、徒労感といいますか、無力感、そんなものを感じており、ではどうすればいいのかなと自問しているところです。おそらく監査の信頼性確保に向けた議論の1つに、今回新しいキーワードでガバナンス・コードというのが出てきているわけですけれども、これを策定する目的は何なのかということが、多分、最初の議論になると思います。

ただ、日本の監査制度全般を振り返ってみたときに、こういう表現がいいかどうかわかりませんが、おそらく今日のわが国における監査態勢、具体的には監査法人でいいのですが、これはスポーツに例えるならば、これまでは個人競技で行われていた監査だったものが、団体競技の監査の世界へとパラダイムの転換が明確図られたということです。つまり、個人のレベルというのは単に個々の会計士というだけでなくて特定の先生を中心としたチームであってもいいのですが、スポーツに例えるならば、相撲部屋レベルのものかもしれません。一方、団体競技はサッカーとかバスケットボール、バレーボールなのかもしれません。そういうふうに考えたときに、その特定の個人競技の場合の選手ないしは部屋に関しては、おそらく当事者同士の相対で評価することが可能だということです。多分一挙手一投足まで見えますから。ところが、団体競技の場合には、何か共通の指標を示さないと、それを取り巻く関係者、あるいはそれにかかわっている監査人全体について、当事者の評価が十分に行えないということでもあり、今まさに、監査法人の評価ということに関しては、過渡的な間段階に来ているのではないのかなと思います。したがって、従来は監査業務の品質に関しても、あるいは監査業務の内容に関しても、相対での個別の尺度で評価できていたであろうものが、今はある程度、画一的ないしは形式的かわかりませんが、一定の指標、KPIでもいいんですけれども、そういうものを示すことでそれを遵守してもらう必要があるのだろうと思います。

ただ、同じように団体競技といっても、野球に例えますと、草野球なのか、あるいはメジャーリーグなのかによってもレベルが全然違うわけで、おそらく日本の監査法人全体を見ても、規模だけでなく品質についても大きな差があるのではないかと思っています。つまり、草野球レベルの監査法人とメジャーリーグに対応できるような監査法人。おそらく後者レベルの監査法人に関して、社会的ないしは公共的な責任が大きいということで、そこにまずガバナンス・コードの議論も当てはめていくのではないかと思います。多分、諸外国もそのような議論をしていますから、日本もそういう方向に行くのかなという気がします。

私自身、あまり形式に走る方向性が見えるような議論は好きではありませんが、昨年、一昨年とマーケットにおいスチュワードシップ・コードとか、あるいはコーポレートガバナンス・コード、これが導入されたことで何が起きたかというと、皮肉なことに、日本の企業の関係者あるいは機関投資家は、今までは四の五の言っていた立場の方々が、まず形式だけに関しては一斉に用意ドンでスタートしてくる。日本はそういう風土、あるいはメンタリティがあることを前提にするならば、公共性の高い、そして世界に冠たる東京マーケットを信頼し得るものとして向上させていくためには、ある程度強化された規律づけのガバナンス・コード、これは必要なのかなと思っています。わが国監査の発展の歴史を見てみると、今のこの時点で10年前の轍を踏んではいけないということがありますから、見える形、あるいは実効性のある形の具体的・効率的な対応策を講じることが必要であり、その1つがおそらくガバナンス・コードの制定ではないのかなと思っています。

ただ、誤ってならないのは形式論に走ってはならないということであり、このガバナンス・コードの設定目的、これを明確にしておくことが重要だということです。つまり、いたずらにイギリスとかオランダのものに依拠すればいいというわけではないと思っています。日本の置かれている監査環境、あるいは将来、監査制度の信頼性確保に向けて目指すべきビジョン、こういったものをきちんと踏まえて策定することが必要なのではないか。それはほかのメンバーの方も同じだと思います。

もう一つは、監査法人に外部の委員を入れるとかいろいろな議論をしていますが、日本だけではないと思うのですが、例えば職能の部分でスペシャリストとゼネラリストという分類がよく経営学ではございます。あるいは、会計の世界ではテクニシャンとプロフェッショナル、こういう分け方も実はするんですね。おそらくスペシャリストとかテクニシャンというのは、専門的な技能、知見は十分に持っている。しかし、それ以外の例えば幅広い知識あるいは経験、組織運営のためのマネジメント能力、管理能力、こういったものは必ずしも持ち合わせてない。それでも十分だというのもあるでしょうが、やはり、組織的な監査を実効性あるものとするためには、専門知識以外の能力も養成することが不可欠だと思います。実は、アメリカでも証券取引法監査が始まって新しい時代の会計専門職の世界が求められているときに、ジョン・L・ケアリーという会計士倫理の研究の先駆者が書いた『会計プロフェッションの発展』という本において、From Technician to Professionalという副題付きで、これからの時代は、単なる専門技術だけではなくて、今で言うところのプロフェッションですよね、そういった識見を持っていること、その中でも特に高い倫理観を持っているということでの資質面での適格性が必要になってくるということを主張しています。

日本はどういう状況にあるかというと、現在の公認会計士試験は、あくまでもスペシャリストないしはテクニシャン、会計知識や監査知識をひな得た専門技術者の養成が主眼となっている。したがってその集団である監査法人のメンバーの方々に、例えばゼネラリスティックな知見、あるいは真のプロフェッショナルとしての識見がほんとうに備わっているかとなると、必ずしもそういう点で鍛えられる場面があまりないということで、おそらくそれを外部の力で補強することが求められるのかなと思います。多分、先の提言書の中での指摘も、マネジメントの知見の重要性の中に、外部からの補佐、サポートが求められているのではないかと思います。ただ、それは一過性のものなのかもしれないし、部分的なものなのかもしれない。会計専門職は、プロとして自分たちの世界の業務は、自分たちで切磋琢磨して向上させなければいけない。そのための補佐的な仕事として外部の人が入るわけであって。あるいは逆に、ドラスティックな改革をするならば、中継ぎの意味を持って一気に外部のメンバーを多くして組織風土を全面的に見直し、その後のメンバーに引き渡すという、こういう流れがあってもいいと思います。監査法人の場合、恒常的にあるいは定型的に企業ガバナンスのように社外取締役は何名以上だとか、ああいう形式的な議論はそぐわないのではないかと思っています。特に人事とか労務とかリスク管理、こういったものは、これから監査法人は非常に重要になってきますから、これにたけた知見を持った外部の方、そういったことを受け入れるということは当然あってしかるべきだと思っています。

それから、人の育成という問題もあると思います。教育の現場にいるものから見て、なぜこの10年、20年、日本の監査社会が、いつもいつもマーケットから信用ないということで、引頭メンバーからも、とても厳しい批判を受けています。では、それはなぜなのかというふうに見ると、日本の国の会計プロフェッションの育成プロセスに欠陥があるのではないかということです。現行の会計士試験は、筆記試験重視の、そして受験者も低年齢化が進む試験制度において合格者が輩出されているという問題があります。先ほど申し上げたように、ゼネラリスティックな知見とか、あるいはプロフェッションたる者としての教養、あるいは国際感覚、こういったものを問う場面は教育のいずれの現場にもないということです。そういう教養的なものをある程度義務化するようなレベルで導入していかないと、先ほどから皆さんおっしゃっているように、形式だけ整えてもそこには魂が入らないということになりかねない。この部分をどういうふうに解決するか。ただ、形式の部分と実質の部分は車の両輪にも例えられるでしょうから、どっちが重要でどっちが重要ではないとは思いません。内部統制の議論のときもそうでしたが、両方がうまく機能することが重要だということです。ただ、ここで議論をするのは、まず形式的なところの足並みをそろえようということだと思いますので、ぜひ日本の監査法人が国際的にも高い評価が得られるように、明確な方向性を持ったガバナンス・コードの策定、これをお願いしたいと思います。

以上です。

【関座長】

どうもありがとうございました。

では、最後になりましたけれども、斎藤先生、お願いいたします。

【斎藤メンバー】

私は監査の問題が必ずしも専門ではありませんので、あまり詳しいことを申し上げることはできないと思いますが、まず、ガバナンス・コードというものをつくってどのくらいいいことがあるかということについて、私は現時点ではまだ確信を持つには至っておりません。ただ、もともと監査法人というのは、専門家の親方といいますか、一国一城の主の方が集まったような組織でありましたから、お互いの分野についてなかなか口は出しにくい仕組みであったと思うのですね。大学の教授会ほどひどくはないと思いますけれども、そういう仕組みであったと思います。そういうところにもう少しマネジメントという観点を導入していく。マネジメントの面が組織の拡大化についていけなくなったことは確かですから、その観点からマネジメントの強化を図るのは大事なことだろうと思っております。

ただ、その面と同時に、もう一つどうしても忘れてはいけないのは、単にマネジメントを強化するというだけではなくて、被監査会社の株主との情報の交換といいますか、情報の提供をいかに充実させるかということだろうと思います。今、たまたまイギリスのガバナンス・コードの文章を読んでおりましたら、The Code in practiceというところに、監査法人と株主の対話は本コードの重要な特徴であるというメッセージが入っておりまして、これは忘れてはならない観点だと思うのです。

ご承知のように現在の日本の会社法制上の権限分配では、監査法人あるいは監査人の評価とか選解任の権限というのは、基本的には株主に与えられているわけですね。もちろんその中間に監査役とか、監査役会、監査委員会、監査等委員会などがありますけれども、そうした機関のメンバーを選ぶことも含めて最終的には株主に権限が与えられている。しかし、株主が情報や知識を十分に持っていないためにその権限が実質化されない。それは長いこと日本の監査制度の問題であったと思うのです。株主に十分な知識や情報がないから、結果として株主の側から情報に対するニーズが強く出てこない。そのために、例えば会社側が不十分な情報開示をしても、あるいは監査法人が、言葉は悪いですけれども、必ずしもクオリティーが高くない監査をしても、マーケットからのサンクションがない。結果としてますます株主側の知識、情報は不足する。それがまた株主の情報ニーズを低めてしまうという悪循環がずっと繰り返されているわけで、この悪循環をターゲットにしなければ問題は解決しないだろうと思っております。その意味で、監査法人のマネジメントの強化と同時に、マネジメントのプロセスで出てきた問題をいかにして被監査会社の株主にきちんと情報として伝えるか、その観点から考えていくということが大事だろうと思っております。さしあたりそのくらいを申し上げたいと思います。

【関座長】

どうもありがとうございました。

どうぞ。

【國廣メンバー】

今の株主との関係というのは、一番基本で大事なところだと思うんですね。市場のゲートキーパーであるということというのは、投資家、株主、潜在的な投資家も含めて、そのために監査をやっているということですけれども、現実においては、監査法人は誰を見ているかというと、CFOを見ていますよね。ですから、そこのところで、もちろん一番のカウンターパートはCFOであるし、でもそれは緊張関係を持たなければいけないんだけれども、むしろ、従属関係とまでは言わないけれども、雇い主みたいなイメージを持っているという現実が少なからずあるだろうと思います。そのような意味において、そもそも監査は誰のためというところであるとか、そこを明確にすること。そして、それを制度的にするためには、その株主の代表である社外取締役や監査役との間のコミュニケーションの制度的な確保が大事なのかなと、そのように感じました。

【関座長】

ありがとうございました。

どうぞ。

【森メンバー】

今の議論は非常に大事なところだと思います。確かに仕事を進めていく上ではCFOが窓口になりますので、CFOと対話をしながら仕事をしているわけですが、目的は資本市場の参加者といいますか、投資家であります。冒頭監査の透明性が足りなかったというお話をさせていただいたんですが、機関投資家の方、今はそんなことはないと思いますけれども、機関投資家の方とお話をしても、数年前までは監査報告書を見たことがないという方がたくさんいらしたんですね。おそらく何もなければ当然これは問題ないのだろうということで見てないのかもしれませんが、確かに機関投資家が見ないという状態は、ある意味で十分だったのかという問題があるかもしれませんが、監査のところを見ても何だかよくわからない、やはり監査の透明性というのが十分でなかったのだということだと思います。ブラックボックスというお話がよく出ますけれども、これは監査がどういうふうに行われているのかもわからないし、監査で具体的にその監査の結果として無限定適正意見というのが出ていることが多いんですけれども、それがどういう意味を持っていて、その過程の中でどういうことがあったのかということが、今の開示情報の中ではわからないという状況になっています。ですから、こういったところを改善していくとともに、このガバナンス・コードが必ず外に対する説明につながるものになっていかなければならないと考えています。

そのほかの制度の整備も必要だということでありますので、そのほかの制度の整備とも連携をしていくことが必要なのではないかなと考えています。例えば監査報告書の充実、強化といいますか、そういったものに結びつけていく必要があるだろうと考えています。

【関座長】

ほかに。

随分貴重なご意見が出たと思います。お話を伺っていますと、少なくともコードをつくったほうがいいだろうということについては、皆さんのご認識は一致していると思います。そのコードをどういうふうにほんとうに実効性のあるものにしていくのかということが課題であるということだろうと思います。私もいろいろ言いたいこともあるんですけれども、差し控えることにいたしまして、それで、今日いろいろ先生方から出されたご意見で、相互になお議論、ご意見がございましたらぜひ、せっかくの機会ですからご披露していただきたいと思いますが、いかがですか。

【八田メンバー】

いいですか。

【関座長】

どうぞ。

【八田メンバー】

スチュワードシップ・コードもコーポレートガバナンス・コードもコードという形で、イギリス型の遵守すべき指針ということで導入されたものです。ただ、日本ではコードという言葉自体については、今では、企業関係者の方の間では日常茶飯事に耳にしますけれども、皆さん、本質的な意味がわかっているのだろうかと疑問を感じています。あるいは意識のレベルですが、おそらくコードはソフトローと称すべき範疇のものなのか知りませんが、法律や規則、基準よりは規範性が低いということで、コンプライ・オア・エクスプレインなのだと説明されているようです。しかし、私が知る限り、例えばイギリスのロンドンのシティーで策定されているコーポレートガバナンス・コードについては、実は制定法よりも厳格な適用が求められているということです。つまり、コンプライ(遵守)することが大前提にあって、エクスプレイン(説明)するという場面というのは、例外的な場合しかないということです。ただ、日本の場合には、コードを「遵守しなさい、さもなくば、説明しなさい」ということから、従ってない場合には説明すれば事足りるということで、非常に安直なといいますか、気楽な捉え方をしているのではないでしょうか。したがって、いずれの取り組みが正しいのかというのではないのですが、例えば、監査法人のガバナンス・コードが制定された場合に、これにどの程度の遵守性ないしは規範性を求めるのかということは大変重要なことだと思います。

諸外国の大手の事務所をベースに、例えばベンチマークだとか、ベストプラクティスという言い方で策定をしていますから、かなり高い水準のレベルのものを念頭に置いているのではないかと思われます。したがって、遵守しない場合もままあるよねというような理解があると思うのですが、私は、諸外国の例と違って、これは当局がかかわって策定に関与しようとしているわけですから、おそらくは、それよりは、ずっと遵守性ないし規範性の高いものになるのではないかと捉えています。したがって、それから逸脱したりそれを離反するというような場合はほとんどないのかなと。そうすると、結局は、どの程度のレベルのものが制定されるのかという点に強い関心を持っているところです。

それは、おそらく国際的なレベルから見ても遜色のないといいますか、あるいは、日本の監査態勢のほうが一歩も二歩も諸外国に比べて先んじているということを標榜できるようなレベルのものにするのか。となると、それに対応できるのは、今日ご紹介があった監査法人の中で上位10ですか、9ですか、よくわかりませんが、そのレベルまでなのかなという気がするんですね。逆に言うと、そこが日本の上場会社ないしは大会社の大半の監査を担っていることから、このガバナンス・コードについての制度についても、その範囲までの適用でよしと考えるのか。そうではなくて、その下にあるところの監査法人に対しても適用を求めることで。対応できないところは完全に淘汰してもらうということの強いメッセージを出すのか、その辺はどういうふうに理解するのかというのは、多分現場サイドでは戦々恐々とするのではないでしょうか。この点、どういう方向で考えているのか、確認させていただきたいと思います。

【國廣メンバー】

今の八田先生の提起されたポイントというのは非常に大事なポイントであろうと思っています。実は混乱していて、コーポレートガバナンス・コードであれ何であれ、コードというのは法律ではないから、司法や行政の力をもって、強制力をもって強制するものではないという意味では、確かに法形式としては強制力はないんですよ。じゃあ価値が乏しいかというと、実は一番本質的なことを書くべきものだと。それは、もう言うまでもなくプロ倫理としてやることだよねみたいなね、そういった位置づけにしないと。つまり価値の重要性の問題と、国家権力で強制される問題というのは、違うレベルの話なんだというところの整理が要るような気がするんですよね。

ところが、結構そのコーポレートガバナンス・コードでも誤解しているのは、これはコードで、エクスプレインすればいいでしょう、だから形だけ守ればいいでしょう、仮に守らなくても罰則はないしみたいなね、そんな発想でやるから、コードの本質の理解をしないまま形だけの対応になることだと思うんですね。ですから、我々が作ろうとしているコードは、いかに公認会計士の業務の本質で一番大事なのは何なのか、というところと密接なものでなければならないという感じがします。

これは、監査法人側もそこを明確にしないといけない。また「怒られるから形の上だけ守りましょう」とか、「怒られないためにチェックリストを作ろう」という発想を非常に強く感じてしまいます。「やらされる」「怒られる」「しようがなく守る」ではなくて、公認会計士としての誇りを高める方向のものでなければならないと思います。例えば三菱自動車のデータ偽装事件をみても、ただただ、コンプライアンスだ、おまえ守れ、こらこらと言うだけでは、結果的にコンプライアンスも守られないということです。ですから、いかに本質論にアクセスしていくのか、近づいていくのかという観点がこのコードには必要なのではないのかなという感じがいたします。それが1点。

もう1点は、先ほどの議論に出た、監査の透明性、ステークホルダーの部分ですけれども、少し突飛かもしれませんけれども、例えば、監査法人が何らかのIRに同席して、投資家とディスカッションというか、質問を受けるなんていうのは、僕はあってもいいような気がするんですよ。多分それをやっている監査法人はいないと思うんだけれども、でもそれをやっていけない理由はどこにもないし、まさに市場にダイレクトに、もちろん細かい一個一個の監査の内容まではもちろん守秘の問題とかいろいろあるかもしれないけれども、そういうことも考えて、あり得るべしということでもいいのかなとも感じました。

【関座長】

先ほどのこのコードの遵守性について、どの程度のレベルを求めていくのかということについて、当局がどう考えているのかということを局長からお話しいただきます。

【池田総務企画局長】

当局がといいますか、事務局をしている当局として、現時点で感じているところのご説明をしたいと思いますが、今日の、室長のほうから説明させていただいた資料3の3ページ目に、これは懇談会の提言からの引用ですが、まず1つ、八田先生からあった、対象の監査法人というものについては、下から5行目になりますけれども、大手上場企業等の監査を担う一定規模以上の監査法人への適用を念頭に置くということが、そのラインがどこかというのはありますが、こういう考え方で、決して全ての監査法人に適用するという考えではないと。

ただ、八田先生の問題提起で若干論点として生じ得るかもしれないなと感じたのは、この一定規模以下の監査法人でも、自分はこういうコードに従ってやりたいという人がコードに従ってやってはいけないということではないでしょうということ。そういうものをどう考えるかという問題はあるだろうとは感じますが、コード策定は、一定の規模の人を念頭に置くということが大前提だと思っています。

それから、もう一つ上の段落で、何のためにコード策定をやるかという中で、監査法人の組織の運営のためのプリンシプルを確立するということが目的とあるので、このコードは、先ほど國廣先生からあったように、プリンシプルの確立が目的であると。

若干難しいのは、コードだとかプリンシプルだとかいっても、これは程度の問題があって、先ほど来出ています、例えばコーポレートガバナンス・コードは73も原則があると。その中には、補充的なものとそうではないものと段階が置かれていますが、全部足すと73あると。スチュワードシップ・コードは、それに対して7つだということなので、一口にプリンシプル、コードだと言っても、つくり方によって濃淡があり得る。その全部が全ての監査法人に当てはまるのかどうかというのは、その内容いかんというところが正直あろうかと思っていますが、いずれにしてもプリンシプルを確立するのが目的でつくっていくのだと。

それから、法規範性について諸先生からありましたが、またそのときに当局が運用するものであるということについてもご指摘がありましたが、当局もこの手のものの運用については、かなり金融行政の手法を変革させているところです。例えばこれはよく地域金融機関の方に、例えば地方銀行ですと百数行あるわけですけれども、その方々には、地方銀行のベストプラクティスというのは百数行あれば百数通りあるのだということを我々は申し上げているので、監査法人の場合も、そのプリンシプルの程度がどの程度かによりますが、全てが画一的だということではない。我々、そういった極端な画一性を求めるような監督なり審査会の検査なりはやってきていないと言いたいけれども、過去やったじゃないかと指摘する人がいますので、少なくともこれからはそういうことはしないというふうに考えているところです。我々は、別に当局が管理しているから画一的でなければならないとも思っていませんし、また、ある意味当局が監督をしますので、非常に柔軟なつくりでプリンシプルをつくっていても、どうしてそういう考えでその監査法人は運営されているのかということを個々に監査法人と対話をしていくことが十分可能なので、その対話の出発点としての1つの目安というものが存在していれば、決して画一的な運営にはなることなく、当局と監査法人の対話にも資するものになりうると考えているところです。

【関座長】

どうぞ。

【斎藤メンバー】

今、池田局長のお話が出たので一安心をいたしました。非常に慎重で的確なご指摘と思いますけれども、念のために申し上げたいのですが、先ほど来のコードの強制力、あるいは規範性の強さという問題は、例えば倫理にかかわるような原則、ルールと、組織のマネジメントに関するルールとではかなり違うと思うのですね。倫理という観点なら、これはかなりの共通性がありますけれども、組織のマネジメントなどの問題は環境に応じてさまざまでありまして、どうすれば社会全体が一番うまくいくかという正解は、事前には誰にもわからないわけです。その問題をあまり画一的な形で決めてしまうと、結果として非常な不効率を招くことになりますから、その辺は問題によって規範性の強さが違ってくるということに注意しなければいけないと思います。なんでも一律に強制する仕組みをつくるのであれば、その場合のプリンシプル、あるいはルールというのは、極めて少数の抽象的なものにならざるを得ないと思いますので、そのバランスは非常に大事な論点になると思います。

【関座長】

どうもありがとうございます。

ほかには、どうぞ。

【八田メンバー】

意見というよりも確認をさせていただきたいのですが、ここに、資料3の5ページに示されている監査法人、10までの数があります。おそらく今ですと大手4法人といったような言い方をするのではないかと思いますが、この10法人全部がそれなりの国際ネットワークのカウンティングファームと何らかの形で手を結んでいると思います。中には、ニューヨークに本部事務所がある国際的な会計事務所の日本100%出資子会社ではないかと思われるような監査法人も実はあると思うんですね。あるいは民族系ともいえるような監査法人の場合、国際会計事務所と提携はしているけれども緩やかな提携で、いわば名前だけ、つまり名刺の片隅にそのロゴだけ入っているというのも実はあるんですね。こうした国際対応のレベルで考えたときに、例えばこれから策定していくガバナンス・コードの中の1つにリーダーシップという議論が多分出てくると思うのですが、具体的にトップマネジメントのリーダーシップというときに、その100%出資子会社レベルの監査法人の場合に、例えば、アシュアランス業務全般に関しても、海外からリモートコントロールで操作されていると思われるような場合に、日本の監査法人向けのガバナンス・コードの遵守について、本当に対応が可能なのでしょうか。大手監査法人であっても、そういう懸念が実はあるんですね。これは、全世界共通の議論ではないですから、日本の監査法人のありようについて議論していくわけなので、それは関係ないよと、日本で登録されている監査法人だけの部分で議論すれば事足りるよという議論も一方にあると思うのですが、実態は、リモートコントロールで動かされている部分が私はあると思っています。そういうところはどうやって対応していくことがあり得るのか、悩ましい問題だと思うんですね。

特に、これを民族系と言っていいのかどうかわかりませんが、日本の監査環境をベースに大きくなってきている幾つかの監査法人、おそらく中堅、中小の監査法人というのは、大体民族系と言ってもいいと思います。そんなに強く国際的なレベルの会計事務所からの影響があるわけではないですから。ところが、上位4つの監査法人は、ほとんどが国際ネットワークの会計事務所の傘下にあり、特に4番目の事務所は、明確に法人名の中にPwCという英語表記が入っているわけですから、これはどう考えても、本部事務所の強い影響下に置かれていると思われます。これは初川先生に伺ったほうがいいかもしれませんが、どのぐらいの締めつけがあるのか、あるいはないのか。その辺を明確にしていただかないと、これも形式に過ぎてしまって、実態的に機能しないのではないかという気がするのです。それは、策定するに当たっての前提とも言えます。もし伺える範囲であればお願いします。

【初川メンバー】

私もファームを離れて大分経っていますので正確なお答えができるかどうかわかりませんけれども、もちろんPwCのネットワークの中で活動するということになりますと、PwCのポリシーに従うということが大前提で、品質管理につきましてもそういうことになると思います。これはほかの法人も同じだと思うんですけれども。ただ、日本国内で法律があるとか、またこういうコードがあるというときに、それを無視してでもネットワークのポリシーを貫けということはほとんどないように思うんですね。どちらにしても、例えばPwCであれば、PwCのポリシーと比べてこのコードが厳しいということであれば、別に構わないわけですね。より厳しいルールを採用するわけですから。日本のコードのほうが緩やかだということであれば、当然PwCの厳しいほうをとりますので、これは日本のコード上もあまり矛盾は起こらないのではないかと私は思っています。八田先生がご指摘の、コンフリクトが起きるようなケースというのは、あまり思い浮かばないですね。

【國廣メンバー】

今のポイントに関連することですけれども、例えばアメリカの大監査法人があり、日本というのはその傘下にあるわけです。監査対象となる日本企業ということから見ると、日本に本社があり、グローバル展開しているわけですね。そうすると必ず連結ですし、特に海外での会計不正のリスクというのはとても大きいということになります。そうすると、例えばアジアでもどこでもいいんですけれども、そういう日本企業の子会社あるいは投資先を監査するのは、当然このグローバルネットワークということになるんだけれども、日本の東京の本部がどれだけコントロールできているのか。言ってみれば子(日本の監査法人)が孫(新興国の監査法人)をコントロールしなければならない、でも親(米国)がいるよねみたいなところで、そういうまさに監査対象というのは連結であるし、海外法人も監査対象になっている。そうしたときに、もちろんアメリカなりどこだかの監査水準がとってもきっちりしていて、東南アジアもきちんとやっているというならいいけれども、必ずしも現実はそうではなくて、孫だけど子(日本の監査法人)の言うことはあんまり聞かないということだってあるかもしれないし、そのような意味において、欧米から見ると遠いところのさらに遠いところというところのその監査水準をどうやって確保するのか。それは日本がやるとしてどれだけできるのかというね、そういった現実の問題があるだろうと思います。日本企業は、ほとんどの上場企業は、海外子会社を20も30も100もぶら下げているという現実がある。大手監査法人はどこも国際ネットワークを売りにしている。では、国際ネットワークに乗っかれば絶対安全かというと、そこには質のばらつきがあるという現実の中で、どうしていくのかという観点も要るように思います。

【関座長】

ありがとうございます。

ほかにございませんか。どうぞ。

【引頭メンバー】

八田メンバーや森メンバーが御指摘されましたとおり、資本市場の利用者、関係者から見ますと、監査業務というのはよくわからないし、そしてその監査法人のマネジメントもわからないというのは、そのとおりでございまして、今後ぜひ情報開示についても検討をお願いしたいと思っております。監査に関しては、別の場での検討ということになるとは思いますが、監査報告書の長文化といったこともあるかもしれません。こちらの検討会に関係するところでは、監査の品質に関する報告書ということになり、あらた監査法人などがすでに作成されているということですが、一つお願いがございます。コーポレートガバナンス・コードにおいて、ボイラープレートといいますか、他社と全く同じような文面になっている報告書が散見されます。先ほどの事務局のお話ですと、全ての監査法人にコードを適用するわけではなく、大規模かつ上場会社を多く監査しているところが対象とのことで、数も限られているわけでございますので、ボイラープレートにさせない、しないということは、スターティングポイントとして大事なのではないかと思っております。

もう一点ですが、これからどのように監査法人のガバナンス・コードをつくっていくのかはまだわかりませんが、監査の質をめぐる問題については多くの課題があり、あれもこれもと全部盛り込んで果たして良いのかということです。中長期の視点を持ちながら、一歩ずつやっていくというのも必要ではないかと思います。一気に全部できればいいですが、あまりにも高みを望み過ぎてアブ蜂取らずの結果になってしまうこともあり得ます。そこで、例えば、短期的にある部分が達成できれば、そしてそれが外部から確認できるのであれば、次のステップに進むというステップ・バイ・ステップの考え方もあるのではないかと思われます。大切なことは、外形的に立派なコードを策定することではなく、実際に監査法人の品質が上がるということを中心に置くべきなのではないかと思われます。ですので、品質を上げるための阻害要因は何か、何が問題なのかという、そのリアリティに則った問題意識というのがまずは必要ではないかと感じた次第です。

以上でございます。

【森メンバー】

今の件に関係してですけれども、現状、監査法人はパートナーシップ制でありますので、組織としても社員総会と各パートナーの業務執行、その相互監視という中で成り立っている組織であります。コーポレートガバナンス・コードの場合、池田局長からお話がありましたが、73の原則があります。これは、機関設計が複数あるということと、機関設計がかなりしっかりしているということの中で、それぞれのものに対応するのでそういう原則が必要だったというふうにも考えています。そういうことからすると、監査法人のガバナンス・コードについては、こういう単純な仕組みの中でそれぞれ求められる機能というものがこれから議論されてくるのだろうと思いますので、求められる機能というものを明確にして、そういったものを原則に落とし込んでいくのかなと思っています。ですから、そういう意味では、それぞれの監査法人が、十分かどうかわかりませんし、形式的かどうかもまだ見えないところがありますけれども、それなりに特徴を出して創意工夫はしているのだろうということであります。したがって、そういったものを、もう少し本質的な機能としてどう考えるのかというところのヒアリングも必要なのかなと考えています。

それと、そういう単純な組織体に原則を、コードを設けるということになると、それぞれの違いというのが当然出てきてしまうことになるわけでありますので、先のコーポレートガバナンス・コードがうまく機能しているのかどうかというのは、これからの課題だとは思いますけれども、コーポレートガバナンス・コードと同様にコンプライ・オア・エクスプレインといった考え方が入ってくるのかなと考えています。

また、もしそれぞれの創意工夫だということになると、ソフトローというものになってくるのかなと思います。これからの議論だと思いますが、どういうコードの位置づけにも十分に検討していく必要があるのかなと考えています。

【関座長】

ありがとうございます。

【八田メンバー】

監査法人に対するガバナンス・コードの中身がそうなのかどうかわかりませんが、今日の事務局のほうで出していただいている幾つかの問題提起の中に、我々にとっても今一番深刻なのは、公認会計士の魅力がそがれているということです。したがって、会計士の予備軍についてはほとんど底を突いてきているという状況にあります。つまり、人気がないということです。それはいろいろな事情があって一言では言えない部分もあります。

ただ、私ども教育の現場にいて2つのことを感じています。その1つは、将来、パブリック・インタレストを守るということで社会的な貢献をしたいということで公認会計士を目指す学生は結構いるのですが、実際に試験に合格して3年から5年ぐらいの間、これは修了試験とか業務補助の問題もありますから、その間は特に問題なく監査法人に勤務するのですが、その後、全体の半分、場合によったら過半が、もう監査は嫌だと言って相談に来るのです。これはどういうことなのかと。

実は、私自身、大学院の授業で監査関連科目を担当しているわけであって、監査の社会的意味とか、あるいは、プロフェッションとして社会からこのようなリスペクトを受けるに値する職業であるということをとうとうと説明しているわけですが、それに応えきれないで監査業界から脱退してしまうのです。つまり、この業界に魅力がないということなのです。当然ながら、業界の発展のためにはある程度自然増で予備軍的な、将来を担う人たちがふえてほしいのですが、実際は、数が増えないという負のスパイラル現象が起きて減っているわけです。したがって、当局のほうも心配になっていろいろな広報活動をされてようであり、ここにきて、少し下げどまったとかそんな議論もありますけれども。

つまり、何を申し上げたいかというと、2つ目の議論として、こういうコードとか規制という言葉が出てくると、また第一印象として、この業界はもっと息苦しくなるのか、もっとやりづらくなるのかということで魅力をそがれてしまう可能性があるのではないかということです。そうではなくて、その中には監査人にとってのインセンティブがきちんと含まれているような、つまり、このような業務にかかわって、このような社会を構築していくことでこのような喜びがありますよという。少し青臭い話かもしれませんが、そういったプロアクティブな視点も盛れるような工夫がないのかなと思っています。それは、実際に考えられているガバナンス・コードに合うかどうかわかりませんが、優秀な人材を多く輩出し、かつ彼らが質の高い、結果的にガバナンス・コードであれ、最後に行き着くところは、監査の質を高め、信頼し得る監査を確立したいという点に目的があるわけですから、そのために必要な施策を講じることが大切だと思います。そのためにもいい人材に来てもらいたいと願っています。大変難しいでしょうが。その辺の思いを少し含めていただけないかなと思っています。つまり、少し矛盾しているかもしれませんが、あまりにも息苦しいような議論だけは避けていただけないかなという気がします。

【関座長】

どうぞ。

【初川メンバー】

八田メンバーのほうからもお話がありましたが、今、私たちがガバナンス・コードの議論をしている中で一番大切といいますか、ぜひとも達成したいことは、監査の実効性の確保、品質管理ということになると思います。その意味から2つ思っているところがあります。監査の実務をやっていますと、何が一番監査で大事かと考えます。いろいろと大切なことがあると思いますが、的を外さない監査というのがまず実務的には大事。膨大な財務資料の中で、限られた時間で、どこを見に行くのか、この判断によって監査のクオリティーは相当変わってきます。そういう意味では、先ほどお話がありましたけれども、そういう部分を監査人側だけで達成しようと思わないで、これからは企業の監査役であったり、社外取締役であったり、そういうところともっともっと接触の機会を増やすべきだと思います。何を議論するかというと、監査のスケジュールや監査で発見したことを説明するということも大事ですけれども、監査のリスクがどこにあるか、財務諸表が間違ってしまうかもしれないリスクがどこにあるかということをぜひ議論をすべきだと思うんですね。そういう方向に監査人が今後より一層目を向けるように、ガバナンス・コードの中でどう書いていいのかわかりませんけれども、何等かの指針を示すことも必要だと思います。多分、監査の透明性確保という観点からすると、監査をブラックボックス化しないためにも、企業側がもっともっと前に出ていくということが1つ大事なのかなと思います。

これは多分、監査品質に関する報告書をどう作成するかという議論以上に実質的に重要なことかも知れません。こんなことを言うと怒られてしまうかも知れませんが、監査法人は上手ですから、報告書などはきれいに書いてきますけれども、ほんとうに監査をミスらないといいますか、的を外さない監査をするためには、どこにリスクがあるのかということをビジネス側と監査人側がしっかりと議論をするということをぜひ推し進めていかなければいけないと思います。

それから、もう1点、監査の質を高めるということになりますと、それは監査に従事する人に尽きると思います。先ほど八田先生もおっしゃいましたけれども、このコードの中に人材の採用、教育、それから評価、昇進、こういったことを、監査法人としてどういう方針でやるんだということを表明してもらうといいますか、そういう要求をコードの中に1つ入れたらいいのではないかなと私は思っています。

以上です。

【関座長】

そのほかにございませんか。せっかくですから。どうぞ。

【國廣メンバー】

若干これまで出た議論とダブるところがあるんですけれども、やらされるというのではなくて、監査という仕事に魅力を持たせるような方向にどう持っていくかというのは、それを、コードそのものの中に何条で書くかどうかはともかくとして、大きな目的とすれば、それは基礎にあるべきだろうと。とにかくおまえたち、ミスったから許さんぞ、締め上げるというものではないなと思います。それは、その倫理観なりやる気なり、プロ意識が高まることが一番の監査水準を上げる本来のポイントになっていくのだろうということも言えるからだと思います。

それと、監査が見にいく部分をどうするかというのは、監査法人だけが頑張って考えるのではなくて、そこをまさにコーポレートガバナンスという形で、社外取締役と重点監査事項を議論するとか、例えば、海外子会社というのがなかなか目が行き届かないと、大丈夫だろうかという懸念を共有することにより、監査法人としてもむしろ海外子会社のほうにしっかりとリスクベース、リスクベースというのは単に金額という意味ではなくて、危なさというところからめり張りをつけるとか、そういった方向に持っていくことが大事かなと思います。

それから、監査人というか、公認会計士というのは、数字というか、きちっとした人が多いから、リスクを全部埋めるみたいな発想になりがちになるんですよね。でも、そうなると、広く薄く監査資源が分散します。逆に、有限な監査資源のポイントを絞るというと今度は逆に薄いところが出てくるわけですよね。でも、それはよしとすることが必要だと思います。例えばこれはFSAが言ってやることが必要です。そうしないと、薄く広くやれ、かつ深くやれなんていうと、形式に走らざるを得ないということになる。不備指摘型というよりはめり張りをつけることにアシュアランスを与えることが大事。そして、めり張りをつけると不正は防げているから何も起こっていないように見えるけれども、実はそれが一番いいことですよね。それを小さな見落としがあることをがみがみ怒ると、とにかく全部を薄く広くという方向にどうしてもなっていく。そうすると仕事がおもしろくない。そうすると優秀な人が来ないという悪循環になってしまう。したがって、めり張りをつけることを制度的に保証し、めり張りをつけた結果、少し見落としがあったからといってがみがみ怒らないとか、何かそういったアプローチも必要なような気がします。

【関座長】

そのほか、ございませんか。どうぞ。

【池田総務企画局長】

当局の対応も含めていろいろ意見をいただいたところですが、私どもの現時点での思いについて若干コメントをさせていただければ、今日の室長からご説明しました論点の中では、この4のところに若干その一端を伝えさせていただいているのですけれども、今日のご議論の中で、なお形式的に過ぎる、あるいは実質がどうなのかは外からわからないというご指摘もいただきましたけれども、各法人では、それぞれにガバナンス、マネジメントの変革の努力はされていて、あるいはされようとしていて、形式的だという意見もあろうかと思いますけれども、それなりに真剣な取り組みをされている法人も少なくないと我々は受けとめているところがございます。そして、そういう中で法人の中の若手の会計士の人もそうした動きに期待しているという方も少なくないと受けとめています。一方で、そうした変化は、監査法人内にいろいろなあつれきを生むケースというものも、これは皆無とは言えない。そうした中で、真に変革意欲のあるマネジメントの方々を支援できるようなものの1つとして今回のコードが機能できればいいなという思いがあります。また、逆にコードを幾らつくっても、そういう真に変革意欲のあるマネジメントの方があらわれないと、また10年後に今日のようなご批判を浴びることにならないかと。10年前も関さんの横で課長として事務局をやっていた者としても複雑な思いです。そうした真に変革意欲のあるマネジメントをサポートするコードをつくり、そうした中で、我々としてはほかの項目に書かせていただいたと思いますが、監査現場の士気というものも上がっていくという、そうしたものにつなげていければなというふうに思いとしては持っております。ぜひ諸先生から、そのためのお知恵を授けていただきたいと思います。

【関座長】

よろしゅうございますか。ほかにご意見はございませんでしょうか。

それでは、ほかにご意見などがございませんようでしたら、今日の討議はこれで終わらせていただきたいと思います。

本日は、いただきましたご意見を踏まえまして、事務局とも相談いたしまして、本検討会を運営してまいりたいと思いますので、今後ともひとつよろしくお願いいたします。

なお、次回以降につきましては、事務局とも相談し、今日いただいたご意見を少し整理をきっちりいたしまして、監査法人のガバナンス・コードに何をどう盛り込んでいけばいいのか、より具体的な内容につきまして順次ご議論をいただきたいと思っております。

最後に事務局から連絡等がございましたらお願いいたします。

【原田開示業務室長】

ありがとうございます。

まず、次回の有識者検討会の日程でございますけれども、皆様のご都合の調整を踏まえた上で、後日、事務局よりご案内させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

私からは以上でございます。

【関座長】

どうもありがとうございました。

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。ありがとうございました。

―― 了 ――

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