第1回 開示制度ワーキング・グループ 議事録

1.日時:

平成22年11月2日(火曜日)15時00分~17時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

○古澤企業開示課長

ただいまから開示制度ワーキング・グループの第1回目の会合を開催いたします。

皆様、本日はご多用中のところご参集いただきまして誠にありがとうございます。

本日の予定でございますが、副大臣が今、国会のほうに行っておりまして、16時ぐらいにこちらに参る予定でございます。ちょっとカメラが入ったりしてばたばたするかもしれませんが、その際にちょっと審議を中断させていただいてごあいさつを申し上げるという段取りでお願いできればと存じます。

それから、副大臣のほうからは、当ワーキング・グループの議事進行につきまして黒沼先生にお願いさせていただきたいという指示がございましたので、今後の議事進行につきましては黒沼先生にお願いいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○黒沼座長

東副大臣から座長のご指名を受けました黒沼でございます。

皆様方のご協力を得て審議を進めてまいりたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、まず、当ワーキング・グループのメンバーにつきまして事務局からご紹介いたします。

○古澤企業開示課長

メンバーの先生方をご紹介申し上げます。

皆様方の右側からということでまいりたいと存じます。

阿部泰久委員でございます。

石黒徹委員でございます。

石原秀威委員でございます。

上柳敏郎委員でございます。

小川祥司委員でございます。

○小川委員

よろしくお願いします。

○古澤企業開示課長

川村義則委員でございます。

○川村委員

よろしくお願いします。

○古澤企業開示課長

川本哲也委員でございます。

○川本委員

よろしくお願いします。

○古澤企業開示課長

永沢裕美子委員でございます。

○永沢委員

よろしくお願いいたします。

○古澤企業開示課長

平田公一委員でございます。

○平田委員

よろしくお願いいたします。

○古澤企業開示課長

松崎裕之委員でございます。

○松崎委員

よろしくお願いいたします。

○古澤企業開示課長

三浦裕委員でございます。

○三浦委員

よろしくお願いいたします。

○古澤企業開示課長

吉井一洋委員でございます。

○吉井委員

よろしくお願いいたします。

○古澤企業開示課長

事務局につきましては、また改めてご紹介をさせていただければと思います。

以上でございます。

○黒沼座長

どうもありがとうございました。

私、立ち上がってあいさつするのを忘れておりまして申しわけございません。黒沼です。よろしくお願いいたします。

会議に先立ちまして、当ワーキング・グループの運営につきましてご説明させていただきます。

開示制度をめぐる諸問題は、市場の実務などにも密接にかかわる問題でありまして、ワーキング・グループにおける議論は、その内容について多くの市場関係者、発行者、投資者にも知っていただきながら進めるのが適当かと存じます。

つきましては、当ワーキング・グループでの議事は原則公開とさせていただきたいと存じます。同様に、会議での配付資料及び会議の議事録につきましても原則公開とさせていただきたいと存じます。

また、必要に応じまして会議の議事内容についての記者レクを古澤企業開示課長にお願いしたいと存じます。

それでは、議事次第に沿って英文開示の範囲拡大についての審議に入らせていただくことにいたします。

まず最初に、英文開示制度の概要、論点等につきまして事務局より説明いたします。

○谷口企業開示調整官

企業開示調整官をしております谷口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

説明に入ります前に、資料のご確認をお願いしたいと思います。

お手元に資料を何点かご用意させていただいております。右肩に開示制度WG、ワーキング・グループ1-1から1-5がございまして、それから後ほど松崎委員からご説明をいただきますときに使いますレジュメ、それから石黒委員からもレジュメをいただいております。

以上、資料でございます。何かご不足ございましたら教えていただければと思いますが。

○古澤企業開示課長

資料の取扱いについて、石黒委員からは席上配付委員限りということでございますので、ホームページには掲載しない、松崎委員の資料は掲載させていただいてよろしいでしょうか。

以上でございます。

○谷口企業開示調整官

それでは、ご説明に入りたいと思います。

まず、開示制度WG1-2英文開示制度の概要というところからご説明をさせていただきたいと思います。

1枚おめくりいただきたいと思います。

これは現行の英文開示制度についての概要でございます。

有価証券報告書を提出しなければならない外国会社等、ここは外国会社以外の外国政府ですとか外国ファンド等々、いわゆる外国証券の発行者全体ということでございます。この外国会社等が有価証券報告書等にかえて、外国において開示が行われている有価証券報告書等に類する書類であって英語で記載されたもの、これは法律上は外国会社報告書と定義しておりますが、この外国会社報告書等を提出することができるということになっております。

この英文開示でございますけれども、平成17年6月に当時の証券取引法の改正が行われまして、この制度が導入をされております。

そしてこの17年の12月1日から、まずは外国ETFを対象として英文開示が実施をされております。外国ETFにつきましては、投資者にとってその投資内容やその仕組みというのは非常に投資家にとってわかりやすいと。それからまた他の有価証券との区別が非常に明確であるということで、まず、この外国ETFから英文開示というものをスタートさせようということで始めてございます。

始めたわけでございますけれども1件も出ないまま、ほかの他の有価証券につきましては、法令上21年3月31日までに政令で定める日から適用するということになっておりまして、この平成20年6月1日から対象となる有価証券をほかのすべての有価証券に拡大をすると。その際、いろいろとご指摘がございまして、後からご説明しますが、補足書類というものをつけることになっておりますけれども、それは非常に重いというようなご指摘を受けまして、この見直しを行って軽減をしたという改正を行ってございます。

そして今年の4月30日にようやくこの米国の会社から外国会社報告書、いわゆる英文開示が提出をされたという経緯でございます。

この英文開示の基本的な考え方というのがございます。2つの項目がございまして、1つはセカンダリー、ここはちょっと特別な意味で使っておりますけれども、外国において法令等に基づく開示が既に行われている場合ということですから、外国でもう開示が行われているような場合であって継続開示書類、有価証券報告書、四半期報告書等、臨時報告書は除きますけれども、こういった継続開示書類について、まず英語による開示を認めようということになっております。

したがいまして、プライマリー、ここでは外国において開示されていない有価証券が我が国において初めて開示されることとなるような場合であり、または発行開示書類ですとか臨時報告書については今のところ英文開示は認められていないということになります。

それから1枚めくっていただきまして、今、対象となっている対象書類でございますけれども、継続開示書類ということで有価証券報告書、四半期報告書、半期報告書、これらの訂正報告書、それから内部統制報告書、それから確認書についても現在対象になってございます。それから親会社等状況報告書についても対象ということでございます。

この英文での書類の提出要件でございます。ここは有価証券報告書等の提出にかえて外国会社報告書を提出することをその用語、様式及び作成方法に照らして、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないものとして認める場合ということで、法律、それから内閣府令でこのように規定をしてございます。

つまりはこの下にございますように、我が国における法定開示の内容に照らしてその開示内容が適当なものかということをまず判断をすると。

それからこの中に含まれております財務諸表については、本国または本国以外の本邦外地域において開示しているもので、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けるものではないものと認める場合のその本国または本国以外の本邦外地域の会計基準と、これは現在、日本で開示は認めている外国の会計基準によって作成された財務諸表というものであるかということを判断をするということになっております。

それから、この外国会社報告書に添付します補足書類というのが次のページでございます。

これにつきましては、もう一つの資料1-3の資料をご覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。これは今年の4月に提出をされました実際の外国会社報告書の補足書類でございます。本体のほうはちょっとお手元にはございませんけれども、こういった向こうで開示されておりますアニュアルレポートが本体ということで、これに補足書類ということでここにございます1から6の書類が添付をされてくるということでございます。

まず、ちょっと順番は逆になります。1-3を1枚おめくりいただきまして、まず1ページ目、左側でございます。これがこの1-2の資料の3ページの一番下にございます表紙でございます。これは企業内容等開示府令等々様式を定めてございます。これは外国債開示府令、それから特定有価の開示府令、それぞれに規定をしておりまして、まず、この表紙をつけるということになっております。

それから、ちょっと下からで恐縮でございます。マル5代表者証明書等は別途またつくと。

それからマル4の有価証券報告書等に記載すべき事項とこれに相当する外国会社報告書等の記載事項との対照表ということで、これは日本の有価証券報告書等で求めている内容が、この場合はアニュアルレポートのどこに書いてあるのかということを対照にしていただくというためのものでございます。これは実際、1-3の資料の右側をご覧いただきたいと思いますが、ちょっと非常にわかりづらくなっていますが、まず、有価証券報告書とありまして、第一部、企業情報、第1、本国における法制等の概要、それから会社制度等の概要、これは日本の有価証券報告書の記載項目です。

その下に、別紙に記載のとおりとございます。ここは今度1-2の資料のマル4ではなくてマル2マル3にございますように、有価証券報告書等に記載すべき事項であって、外国会社報告書に記載がない事項、ですから日本では求めている情報なんですけれども、向こうのアニュアルレポートには書いていないという事項については、マル2は、そのうちリスク情報ですとかMD&Aの情報、それから財務諸表については日本語で、それ以外の情報は日本語または英語によって記載すると。要は日本で求めている情報が書いていない場合はそれを英語かあるいは日本語で補ってくださいという性格のものでございまして、たびたびでございます恐縮ですが1-3の一番上の会社制度等の概要は、このアニュアルレポートには書いていないということでございますので、この補足書類の9ページでございます。9/19ページに、この場合は日本語で書いてございますけれども、会社制度等の概要ということで情報が補われていると、ここは英語でも構わないということですが、この場合は日本語で出されている。

ということで、この会社の場合は、有報の項目に、その下にアニュアルレポートのところに書いてあるかということと対比をしているという方法がとられている。例えば2ページの3番、事業の内容については、アニュアルレポートのITEMの1、BUSINESSというところに書いてありますということが示されているというわけでございます。

それから、1-2の資料の3ページのマル1でございますけれども、外国会社報告書等に記載されている事項のうち、公益または投資者保護のため必要かつ適当なものの要約の日本語による翻訳文ということで、特に有価証券報告書の記載事項の中で投資判断上重要であるというふうに判断をした事項、これは各開示府令の中で有価証券ごとに規定をしております。ここで示させていただいているのは、いわゆる一般的株券、社債券についてでございますけれども、そういった場合については事業等のリスク、それから財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析、それから財務書類についての要約を日本語で補足してくださいということになっておりまして、1-3の資料ですと16/19ページからつけてございます。

第3、事業の状況、4、事業等のリスク(要約)ということでこのリスク情報についてはここで要約がされ、下のほうに7、財政状態及び経営成績の分析ということで要約され、さらに財務書類の要約として貸借対照表等が添付をされている。ここは日本語が求められるということでございます。こういった補足書類で情報を補って投資家保護を図るということになってございます。

それから、資料1-2のほうに戻っていただきまして、次の4ページでございます。

この提出期限でございます。この注にございますように、外国会社等が提出をいたします有価証券報告書につきましては、通常は事業年度経過後6カ月以内に提出をするということになっております。しかしながら、英文開示ということでございますので、日本の様式に組みかえるあるいは日本語に翻訳をするといった時間をあまり考慮する必要はないだろうということで、この英文開示、外国会社報告書の提出、期限につきましては、事業年度経過後4カ月以内ということになってございます。ただ、四半期報告書、それから半期報告書につきましては日本と同様に四半期報告書であれば45日以内、半期報告書であれば3カ月以内ということでございます。

それから、4ページの6です。投資者保護上の措置ということで、これは前回、この制度を創設するときにいろいろ投資家保護、補足書類以外の保護を図るべきだということで、英語で開示が行われているということが明確に投資家に示されるべきだということを受けまして、この電子開示システム、EDINETでこの書類を閲覧する場合、その画面上に英語の英という表示が出ておりまして、この会社のこの書類は英文開示だということがわかるようになっているということでございます。

また1ページおめくりいただきまして5ページでございます。

ここは先ほど冒頭で、経緯のところで説明しましたように、17年12月1日にスタートし、平成20年6月1日に改正をしている。その改正の経緯をここでまとめさせていただいております。

先ほど申し上げましたとおり、対象有価証券をすべてに拡大する。それから、対象開示書類につきましては、従来、この20年6月1日前は外国ETFのみが対象でしたから四半期報告書とか内部統制報告書等は関係ありませんでしたが、これ以後は株券等も入ってまいりますので、四半期報告書ですとか内部統制報告書も対象になったということ。

それから補足書類も随分軽減をしております。5ページの左側の下でございまして、網かけでございますけれども、ここは外国会社報告書を出す前に、その直前に出す書類に次から提出される書類は英文開示ですよということを示してくださいという要件を設けておりましたけれども、これを廃止したということ。

それから次の6ページでございますけれども、要約、翻訳の部分でございますが、マル2でございますけれども、外国会社報告書の記載事項のうち次に掲げる事項の全文を日本語によって記載したものということで、例示は比較しやすいように外国ETFにしておりますけれども、例えばファンド情報の投資方針ですとか投資リスク、運用状況等については、全文を日本語で翻訳してくださいということにしておりますけれども、ここを改正いたしまして、右側のようにここは要約でいいということにし、日本語で求めるのはさらに限定をしまして、投資方針ですとか投資リスク、運用状況については日本語でということ、それ以外の補足情報については英語でいいということを改正いたして、それは7ページに書いてございます。

以上が現行の日本の制度でございます。

海外の状況が、次の8ページでございます。

海外、非英語圏における外国会社のここは株式に係る英文開示の状況、ここは債券はまた多少規定が違ってきて、ますます複雑なことになってしまいますので、今回は株式に限ってまとめさせていただいております。

まず、EUでございますけれども、EUのルール、目論見書指令、それから透明性指令でございます。具体的な規定はこの後ろにそれぞれ条文等をつけさせていただいておりますので、これは後でご覧いただければと思います。それに基づいてまとめさせていただいたのが、この8ページの表でございます。まず、左側が発行開示、右側が継続開示、それから適時開示ということでございます。

この表の見方でございますが、○と書いてあるのは英語、外国で開示する場合に英語のみでいい場合、それから△というのは母国語による要約を添付するような一定の要件を満たすことによって英語による開示が認められる場合、それから×というのが母国語による開示が必要な場合というふうに区分けをさせていただいております。

ちょっと時間もございませんので、簡単にご紹介させていただきますと、EUの場合の発行開示でございます。発行体の本国、この場合、EUの場合はEU域内のルールということになりますので、ここの本国というのはやっぱりEU域内の国、ですから例えばフランスとさせていただきます。発行体、フランス以外の加盟国、ですから例えばドイツとさせていただきます。フランス以外の加盟国、フランスの会社がドイツで公募あるいは上場する場合には、その加盟国の規制当局が認める、これはドイツが認めるドイツ語または国際金融の分野で慣行的な言語ということでこれは一般的には英語ということで、ドイツ語または英語で目論見書を作成しなければいけないと。

ただし、その加盟国の規制当局がその公式言語による要約の作成を求めることができるとなっていますので、仮にドイツがドイツ語の要約を求めるということもできるということであります。ですから、とりあえずここは○になっておりますけれども、要約を求められた場合には△ということになるというふうにご覧いただければと思います。

それから右側でございます。継続開示のほうは、発行体の本国、これはフランスの会社がフランス以外のドイツで上場している場合、フランスの会社が、本国では上場せずドイツで上場している場合については、その加盟国、ですからドイツの規制当局が認める言語、ドイツ語または国際金融の分野で慣行的な言語、英語で規制情報を開示しなければならないと、ここはドイツ語または英語ということでありますから○ということでございます。

以下、同じようにご覧をいただければと思います。例えば日本の会社がEU域内の国で開示をする場合どうなるか、EUのほうの目論見書指令あるいは透明性指令のほうは、この加盟国で日本の会社が上場をするということになりますと、その上場した国が本国ということになりまして、それを本国と置きかえて見ていただくということになります。

EUの中でフランスを見ていただきますと、外国の発行体、ここは日本の会社とします。日本の会社がフランスのみまたはフランス及びその他のEC、EEA、欧州経済領域の双方で公募または上場する場合には、フランス語または英語で目論見書を作成しなければならない。英語で作成した場合には、フランス語による要約が必要だということでありますから△。一方で継続開示のほうは、日本の会社がフランスで上場している場合には、フランス語または英語で情報を開示しなければならないと。ここはフランス語による要約が求められておりませんから○ということでございます。ドイツも同様でございます。

それから香港のほうは×でございます。発行開示のほうは、公募に係る目論見書を英語で作成した場合は中国語訳、中国語で作成した場合は英語訳をそれぞれ添付しなければならないということでありますから、いずれにしろ中国語でつくらなきゃいけないということで×と。

継続開示でございますけれども、香港1次上場会社、これは香港単独上場しているという会社でございますけれども、年次報告書、半期報告書は英語で作成し、中国語訳を添付するということになりますから×。第2次は、重複上場している会社についても英語と中国語版を取引所に提出しなければいけないということになりますから、×ということで整理をさせていただいております。

それから、韓国でございますけれども、外国の発行体が韓国規制当局に提出する届出書等は、韓国規制当局が必要と認める場合、英語で作成することができるということでありますから△。継続開示のほうも△ということでございます。

ちょっと簡単でございますが、以上が外国での英文開示の状況ということでございます。

それから資料の1-4でございます。

この資料は参考ということで、企業内容等開示府令様式ということで、外国会社の有価証券届出書、それから臨時報告書の様式をつけさせていただいておりますので、ご参考にご覧をいただければというふうに思います。

続きまして、今度はA4、1枚の紙、1-5の資料をご覧いただきたいと思います。

これはこれからご議論を頂く上での参考にしていただくということで、一応この英文開示の範囲拡大に関する論点ということで掲げさせていただいております。

まず1つが、この発行開示書類を英文開示の対象とすることについてどう考えるか。

仮にこの発行開示書類を英文開示の対象とした場合に、日本語の要約その他の補足資料の取り扱いについてどう考えるか。それから今度、発行開示になりますから、有価証券届出書の証券情報の部分について投資者に的確に伝えるために留意しておく点はあるか。

それから発行開示でありますので、目論見書についても有価証券届出書と同様に英文開示の対象にするかどうか、その取り扱いでよいかということでございます。

2つ目は、従来、対象になっておりました臨時報告書となっておりませんでした臨時報告書を英文開示の対象にすることについてどう考えるか。

英文開示の対象にした場合、様式については現行の臨時報告書の様式を用いるということでよいか。様式といいましても後でご覧いただければと思いますけれども、提出事由とそれから提出内容ということしか書いてございませんけれども、そういった様式を用いることについてどうかと。それから日本語の要約の取り扱いについてどう考えるかということでございます。

3つ目は、先ほどご説明したいわゆるプライマリー、本国ではいまだ開示されていない有価証券に係る書類が我が国において初めて開示される場合、このプライマリーについて英文開示の対象にすることについてどう考えるかと。

プライマリーを英文開示の対象とした場合に、セカンダリーの場合の有価証券報告書と同様に様式については特に定めないで、先ほど見ていただいたような比較表を添付することでよいかどうかということが論点になってくるのではないかということでございます。

私からは以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明についてのご質問、ご意見等につきましては、後ほど頂くことにします。

本日は、東京証券取引所の松崎委員に英文開示についてのご意見を頂くことにしておりますので、これらを踏まえて委員の皆様方から順にご意見等をちょうだいしたいと存じますので、後ほどよろしくお願いいたします。

それでは、松崎委員、よろしくお願いします。

○松崎委員

東証の松崎でございます。

本日は、このようなプレゼンテーションの機会をちょうだいいたしまして、誠にありがとうございます。

本日のテーマは、英文開示の範囲拡大ということでございまして、私どもの意見を述べさせていただきたいと思いますけれども、本ワーキングでは、新成長戦略に掲げられておりますアジアのメインマーケットを実現するために何が必要かと、こういう観点から検討がなされるものと認識しておりますので、せっかくの機会をちょうだいいたしましたので、証券市場の運営者という立場から、私どもの現状認識ですとか問題意識といったところから少しお話をさせていただきたいと思っております。

そういったことで、資料のタイトルが、外国企業が上場しやすい市場とするための提言とさせていただいてございます。

ページをめくっていただきまして、最初に外国株市場を取り巻く現状ということでございます。

皆様も既にご承知のところと思いますけれども、日本経済の低迷とともに東証に上場しております外国企業の数は減少の一途をたどってございます。1973年に外国株式市場を開設いたしまして、それから順調に上場会社数がふえました。91年の12月の段階では127社まで外国企業が上場する市場となったわけでございますけれども、その後、いわゆるバブル崩壊後、残念ながら撤退する企業が後を絶たないで、現在のところでは12社のみが上場する状態となってございます。

資料にありますように、一方、アジア諸国に目を向けてみますと差が歴然でございまして、時価総額、それから上場外国会社数のいずれを見ても、残念ながら東京だけが少し大きく取り残されてしまっている状態と言えると思います。

海外の取引所では、やはり国際金融市場としての地位獲得に向けて外国企業の上場誘致に非常に積極的に取り組んでおります。東証としましても、これまで上場する外国企業をどう増やすかということでさまざまな取り組みを行ってきておりますけれども、残念ながらいずれも効果は限定的でございまして、現状のような状態になってございます。

その要因といたしましては、1つには東京の外国株式市場の流動性が相当低下してしまいましたので、そういったこと。それから2点目としては、上場メリットの低下に比して東証といいますか東京の市場に重複上場するということに関して、そこに生じます追加的な負担感といったところが増してきたと認識をしてございます。

ページをめくっていただきまして、続いて新成長戦略と東証の上場誘致戦略と書いてございますけれども、本年6月に出されました新成長戦略におきましては、金融戦略の一つといたしまして、アジアのメインマーケット、メインプレーヤーとしての地位確立というのが目標とされております。国内外の投資家に投資魅力の高い投資物件を提供するということ、また、国内企業だけでなく外国企業にも利便性の高い資金調達の場を提供する、こういった機能を果たすことができなければ、我が国の資本市場というのは真のグローバル市場にはなれないと私どもでは考えてございます。

先ほども申し上げましたが、アジア域内の市場間競争ということでは、まさに戦国時代に突入しているわけですけれども、私ども東証といたしましても、日本の市場がアジアのメインマーケットとなると、そのことの実現に向けて外国企業の上場誘致に一層積極的に取り組んでいきたいと、そのように考えてございます。

日本で上場しないで資金調達のみを行う外国企業というのも見受けられます。その全部とは申しませんけれども、外国企業から見た市場の使い勝手という条件さえ整えば、東京市場にも上場しようというような企業もあるのではないかと思っております。

また、昨年の国内の証券会社によります外国株の売買代金、8兆円を超える規模でございまして、個人投資家を中心に外国株への関心の高さが伺えます。

しかし、その大部分は東京市場を介しない、すなわち証券会社を通じて海外市場に直接注文が発注される形態、こういった形で売買が行われているのが現状でございます。

そのような中、私どもとしましては、外国企業を流通市場に上場させることによりまして、日本の投資者に対して国内の証券会社で外国株を自由に売買できる投資機会を提供し、また、円による決済ですとか信用取引の利用など海外の魅力ある企業への投資環境を向上させることが可能だと考えてございます。

我が国の投資者が投資魅力の高い外国企業に投資やすくなれば、新成長戦略に掲げられたもう一つの目標、国民が豊かさを享受できるような国民金融資産の運用拡大という点にも寄与できるのではないかと思っております。

そこで資料にもありますように、具体的な誘致戦略でございますけれども、これまでの誘致戦略を見直しまして、海外主要取引所に既に上場していて本国において一定の投資者保護を図られているような企業を主なターゲットとしまして、そのような企業に対して東京市場への重複上場に向けた誘致戦略を展開していこうと、そのように考えてございます。

かつては上場しておりました欧米のブルーチップ企業というのは、日本経済の低迷により上場メリットが低下をいたしまして、上場に伴う負担感から東京市場からの撤退につながってございます。

それからその後、アジアを中心とした単独上場企業というのもございますけれども、本国の規制当局の管理下に置かれていないということで、何かトラブルが発生したときに投資者保護が期待できないという問題も発生しております。

このようなことを踏まえまして、やはり東証に上場すると、これによって得られるビジネスメリットに利点を見出すような企業、すなわち上場の日本における知名度の向上ですとか日本企業とのパートナーシップ、こういったものを利点と感じていただける企業であって、本国で既に投資者保護が図られているような企業、すなわち海外主要市場に上場する企業であれば、本国の規制当局の管理下にあるということで、本国の投資者と同程度に投資者保護が図られることが期待できることから、こういった企業を今後、ターゲットとして誘致活動を展開していこうと、そのように考えてございます。

具体的な取り組みといたしましては、まず、制度面の見直しといたしまして、検討中ということではございますけれども、法廷の制度のほかに、まず取引所の制度といたしまして、海外主要取引所に上場している外国企業に対する上場審査、これについては海外市場における上場実績というものを尊重した限定的な上場審査とすることで速やかな上場を可能とすることができないだろうか。あるいは取引所で規定をしております適時開示についても、これはすべて英語での開示を可能とすることができないだろうか、こういった検討を進めてまいりたいと思っております。

また、誘致活動そのものに関しましては、誘致活動に携わる人員体制の強化、それから外国人社員の採用、積極的なトップ外交など上場誘致活動をさらに強化するという予定でございます。

資料をめくっていただきまして、これからは少し法制度のお話でございます。

重複上場ということを私どもは進めてまいりたいというふうに思っておりますが、私どもの努力ももちろんでございますけれども、ぜひ法制面でのサポートが必要だというふうに考えており、お願いをしたいと思っております。その点をまとめたのがこのページでございます。

近年、アジア諸国の急速な経済発展と資本市場の対等と対象に、先ほど申し上げましたように、上場企業の減少もそうなんですけれども、そもそもやはり外国企業による日本市場への関心というのが著しく低下してしまっています。市場関係者の方々も実感されていると思うんですけれども、特にここ数年、その傾向が顕著で、相当こちらから日本市場を売り込んでいかないとなかなか関心を示してくれないと、残念ながらそのような状況だというふうに感じています。

そういったところで、東京の市場に対する関心が薄れている中にあって、日本語への翻訳とか日本の制度への対応、私どもで言えば上場審査手続といったことから、外国企業の評判としては日本への上場というのはコストに見合うメリットがないんではないかと、そんなイメージで一般的にとらえられているようでございまして、簡単に言えば敬遠されている向きがあるようでございます。

したがいまして、やはり上場に伴う負担感を取り除きまして、外国企業がストレスなしに上場できるような形で法制度を見直していただきたいということをお願いしたいと思っております。

具体的には、法改正の方向感といたしまして、次の2点をお願いしたいと思います。

1点目は、今日のテーマでもございますけれども、有価証券報告書などの法廷開示書類全般につきまして、英文のみで開示ができるようにしていただけないでしょうかという点が1点です。

それから、これは今日のテーマとは外れてしまいますけれども、そのほかの日本の制度、具体的には四半期決算報告書ですとか内部統制とか、そういったことになりますけれども、この辺についても負担をなくすようなことを考えていただけないかという2点でございます。

背景につきましては、その資料に書いてあるところでございます。

それで今日のテーマでございますので、英文開示についてより少し具体的にご提案を申し上げたいと思います。

先ほども申し上げましたように、日本で上場する際のストレスというものを軽減して上場しやすくするために、次のようなことをお願いしたいということでございます。

まず、重複上場の外国会社の継続開示書類、これにつきましては、海外市場における有報等を提示すれば足りるということとしていただきたいというものであります。

現在、求められております日本語翻訳、それとか海外の有報との対照表、それから追記書類、こういったものを不要にしていただけないかという内容が1点。

2点目といたしまして、現在、英文開示は海外市場で英語で開示している会社のみに認められておりまして、海外市場で英語以外の言語で開示している会社については英文開示ができないとされておりますけれども、それを認めてはどうかというものであります。これは英語を母国語としない企業にとっては英語への翻訳というのは日本語への翻訳に比べると負担感が圧倒的に少ないという現状を背景としております。

3点目といたしまして、有価証券届出書などの発行開示書類、臨時報告書についても有報と同様の取り扱いとしていただきたいというものでございます。

それからまた、日本に単独上場するような外国会社における法定開示についても、現在、英文開示が認められておりませんけれども、会社が日本語で開示するのか英語で開示するのか選択できるようにして頂くというのも検討いただけないでしょうかと。外国会社にとりましては、やはり開示様式などは日本の様式に従うとしても、やはり日本語というものに相当負担感がございますので、英語であればどういうことが書いてあるかわかるということでありまして、やはり海外上場していない会社にも英語での開示を許容してもよいのではないかというふうに考えます。

なお、当然のことではございますけれども、従前から議論がございますように、こういった形で英文開示を広く認めていくということになりますと、やはり一方で投資者がきちっとそういった銘柄であることを認識して投資判断をすることができる環境を整備することが必要になると思います。

そこで、末尾に記載のとおり、私どもでは、今述べたような英文開示を行うような企業については、そのような開示制度となっている旨の情報を含めて、当該企業に関する基本的な情報を私ども東証のホームページに掲載するなどそのような対応を検討してまいりたいと思っております。

以上、かなり踏み込んだご提案をさせていただきましたけれども、やはり資本市場も利用されなければその機能を発揮することができないわけでございまして、日本市場についてグローバルに多くの企業に利用される使い勝手のよい市場としつつ、また一方で投資者保護に十分留意しながら内外の投資者に投資魅力の高い投資物件をいかに提供するか、そういった思いでご提案をさせていただいた次第でございます。ぜひ前向きにご検討いただきたいと思います。

ありがとうございました。

○黒沼座長

どうもありがとうございました。

それでは、先ほどの事務局からの説明と松崎委員からのご説明を踏まえまして、委員の皆様方から順にご意見、ご質問をちょうだいしたいと思いますけれども、その前に一言、今回のワーキング・グループの検討対象のうち、英文開示についてちょっと私の感想といいますか理解しているところを述べさせていただきたいと思います。

この英文開示、平成17年改正で入って徐々に拡大されて、実際には一気に株券等の有価証券についても利用できるようになったものです。当時は、私も議論に参加していましたけれども、かなり思い切った改正をしたつもりでいたんですね。投資者保護を後退させない範囲でいかにして日本の投資者が外国企業に投資できるようにすると、利便性を高めるということに留意をして改正したつもりではあったのですが、実際にはほとんど利用例がないということなので、今回、こういう再検討のテーマが上がってきたというわけであります。

この問題は、私の理解では、基本的に今も申し上げたように、いかに投資者保護の枠組みをきちっと維持するとはいっても、実際にその投資をするような投資者があらわれない、あるいは投資対象となるような企業がないのであっては制度としては意味がありませんので、そういう投資者の利便性を高めるという方向でもう少しどこまで利便性を重視した改革ができるかというところだろうと思います。今の東証の松崎委員のご提案というのもそのうちの一つにすぎませんので、皆様から多様な意見をちょうだいしたいというふうに考えております。

それでは、順に英文開示の範囲拡大についてのご意見、ご質問等をちょうだいしたいと思います。

まず、阿部委員からお願いします。

○阿部委員

東証のご説明は、非常によくわかりますし、これで日本の市場に外国企業が参加してこなくなっているということであれば見直しが必要であると思われます。これは事務局に対して質問してみたいのですが、仮に東証のご要望にあるような、例えば特にプライマリーの英文開示を認める場合、国が採用している会計基準等の企業法制によって差別をつけられるのでしょうか。例えば会計制度が国際財務報告基準に従っている国の企業ならばいいけれども、独自性の強い制度の国の企業は認めない、といったように、A国やB国は認めるがC国は認めない、といった、要は国による差別が実態上できるのでしょうか。

○古澤企業開示課長

例えば今の資料ですと、この開示制度の1-2という資料の2ページの一番下の提出要件のところで、例えば財務諸表、「本国または本国以外の本邦外地域において開示しているもので、金融庁長官が公益または投資者保護に欠けることがないと認める場合の本国または本国以外の本邦外地域における会計基準」という書き方をしている例はあります。この例は、会計基準の話なので比較的比べればいいというところがはっきりしていますが、それをほかの制度一般に広げることができるかどうかは個別に考えてみないといけないと思います。

○阿部委員

そういうことであれば、国による差別は原則上場審査に任せるということでもいいのではないかと思います。基本的には各取引所の審査を信頼して、そこが認めるのであれば英文開示、プライマリーを認めてもいいのではないかと思います。

○黒沼座長

どうもありがとうございます。

よろしいでしょうか。

それでは、石黒委員、お願いします。

○石黒委員

私は、日本語を愛することにかけては人後に落ちないと思っておるんですが、残念ながら国際的なビジネスとかさらに金融証券、資本市場というもの、マネーがグローバルなもので国境がなくなったという中で、日本語の通用性というのは非常に低いということは厳然たる事実でありまして、母国語を熱愛するフランス人でさえも英語を使うということになっておりますから、これから日本が国際社会の中で生き残っていく上で、日本語というものが海外から日本に来るときのバリアになる、あるいは日本が海外に出ていくときの弱点になるという現実は意識せざるを得ないというふうに思っておりますのが1点です。

それから先ほど東証の松崎さんからのご説明があった中で、最近の現象で言いますと、日本の企業が日本の取引所をパスして海外の取引所に単独上場するという動きが出てきているわけでありまして、私も韓国への上場の案件、最終的に実現しませんでしたけれども幾つかご相談を受けたりというようなことがありまして、それはご相談を受ければ仕事ですからやりますけれども、非常にやっぱりゆゆしき問題であって、海外からの誘致もぜひ促進したいと思うんですが、そういった日本の企業が出ていってしまうということさえ出てきているというのが現状でございます。そういう意味では、非常に厳しい現状認識を持っております。

それで英文開示につきましては、一応ペーパーをご用意申し上げましたので、お手元でご覧になりながらお聞きいただければと存じます。

英文開示を促進していくということは、全体的な考え方として賛成でございます。そして投資者保護ということは当然忘れることはいつもできないんですけれども、ただ、これを使える制度にする必要があるということで、既に事務局からのご説明もございましたけれども、今年の4月になってやっと1社利用例が出てきたという状況で、今までは全くなかったということですから、今既に多数の利用者がいて利用しているんだけれども使い勝手が悪いからもうちょっと使いやすくしてくれというようなことが今回の議論の的ではなくて、使っている人がないに等しいものを使ってもらえる制度にしましょうということになるとすると、もう少し使いよくしますと、ちょっと改善しますというレベルの話ではなかなか難しいんじゃないかというふうに思っております。

それでペーパーの1-1、実務というところでございますが、私どもの事務所ではかなりの数の外国会社や外国投資信託証券の取り扱い、代理人としての取り扱いをいたしておりまして、その継続開示あるいはプライマリーの開示のお手伝いをしております。

実際にどういう事務をやっているかといいますと、日本の開示府令に基づく開示様式、これを英文にしておりまして、あるいはその英文でつくった日本の開示様式に従った開示の実例というのがたくさんあるわけです。先例がたくさんございます。そういったものを利用しながら海外の発行体に英文のフォーマット、開示様式を、あるいは開示実例を示しながら英文で日本の開示様式に従った書類をつくっていく。その上でこの日本の開示様式に従った英文のドラフトを最終的に私どもで日本語に翻訳するという流れになっております。翻訳につきましては、専門スタッフをかなりの数抱えておりますけれども、当然最終的には弁護士が弁護士の責任できちっと確認するというようなフローになります。

そして日本で上場した重複上場、単独上場いずれにしましても、現行制度では有価証券届出書を日本の開示様式に従って作成いたしますので、一度今のような事務フローで英文でまず開示様式に従ったものができてしまうと、その後の継続開示はそれをベースとして英文ベースで発行体と連絡をとって中身を固めて、そして日本語に翻訳するというのが比較的そんなに大きな事務負担ではない形でできてしまうというふうな印象を持っております。

それで2ページにまいりまして、1点目に現状の認識というところがございますけれども、現在、どうして英文開示が利用されていないのかということについて、私どもなりにいろいろと考えてみました。

1つは、今、申し上げたことでございますけれども、最初の黒丸で書きましたのは、発行開示が和文でございますので、今のような事務フローで一度やってしまえば継続開示の負担はそれほど大きくないということがございます。それから、現行制度ですと英文開示を採用すると、その後の発行開示で組込方式とか参照方式とか、発行登録制度とかを利用できないというのも現在までの一つの要因かなというふうに思います。これは今回の改正の一つの議題になっているところというふうに認識しております。

それから2つ目の黒ポチで書いてございますのが、日本語の要約を求められているということで、この要約をどの程度の要約にしたらいいのかと、内容と分量の点について具体的なガイダンスがございませんものですから、それについて発行体は発行体なりの、また代理人である弁護士は弁護士なりのリスクを感じる、そこに安定性がないということもまた事実だと思います。

例えば今日、お示しいただいた資料の1-3、日本で唯一の英文開示の実例でございますけれども、これの下にページ数が書いてございますが16/19、先ほど谷口様からご説明いただいたところでありますが、この16/19の一番上を見ますと、事業の状況、4、事業等のリスク(要約)ということで、これは要約の一つの実例ということでございます。これを見ますと、推測では、この発行体EMCが本国で開示されている詳細な英文のリスクファクターの表題部分のみを日本語に翻訳したのかなというふうに推測されるんですけれども、この表題の書き方も、表題だけ読んでもリスクが何であるかがわかるような書き方をするというのは、特に米国を中心としてSECの指導なんかもあってそういうふうになって来ておりますので、そういうケースであればもうちょっとわかりやすいかなというふうに思います。

ただ、このケースは体言止めになっているような形で非常にシンプルですから、これを読んで、例えば下のほうに規制法令の改正というリスク表示がございますけれども、規制法令の改正リスクというのは何なのか、まず、この会社にとってどういう規制法令の適用があるのか、非常に重い規制を受けているのかそれとも手続的な規制にすぎないのか、あるいはその改正の議論が現在目の前に迫っているような議論があるのか、抽象的に法律はいつでも改正されるかもしれないということを言っているのか、あるいは改正された内容によっては事業そのものができなくなってしまうほどのリスクがあるのか、ある程度多少の費用負担がふえるだけなのかといったようなことがさっぱりわからないということでございまして、このEMCさんを批判するつもりは全くございませんが、一般論として例えばこのような要約でいいのか、要約としてこれで十分なのか、これについて問題を指摘されるリスクはないのかというのは発行体とか代理人の弁護士としては非常に気になるところでございます。また、そもそもこれでいいとした場合には、このような要約をつけることの意味があるのかという元々のところにも戻ってくる話であって、そういったような感想をこのEMCさんのものを見たときに感じた次第であります。

私のペーパーの2ページに戻りますと、3つ目の丸ポチでございますが、既に英文開示制度の平成17年の導入以前より継続開示をやっているところについてはロジスティックスが確立しておりますので、特に英文に切りかえるに足りるようなメリット、積極的なきっかけがないということでそのまま従来どおり来てしまったというのも一つの理由かもしれません。

それからもう一つは、英文でない、ドイツやフランスという例を出してございますが、その場合に英文開示が利用しにくいということがあるのかなと。これは現実に大量に起きているというよりは理屈の上でちょっと想像したということでございます。

それから、2ページの一番下に書いてございますのは、重要部分については依然として和訳が必要であり、これは英文開示であるという理解がすっきりとはできないというふうに書いてございますが、結局なかなか外国の発行体に説明自体が大変なんですね。英文一本で大丈夫ですという説明ができるのであれば、発行体のほうもそうなのかというのでわかり易いわけですけれども、こことここについてはこういうことをやらなきゃいけないんです、こういう場合には要約です、ここは対照表をつけますというようなことを言い始めると何を言っているのかよくわからんと、今のやり方でいいんじゃないかという、英文なら英文ですっきりしてくれみたいな話がございまして、そういうところも一つの理由にはなっているのかなと思われます。

それから3ページの最初の黒丸で書いてございますが、提出期限が4カ月ということで、これは発行体にも発行内容にもよるんですけれども、確かに今でも大変簡素化ということで英語を活用して簡略にできるようにという形での英文開示制度にしていただいているんですが、ただ、それが通常年度末から6カ月認められているものに対して2カ月分も簡素化されており楽になるという保障があるかどうかというところでございまして、日本での開示のために6カ月全部準備にかけられるあるいは4カ月全部準備にかけられるということじゃなくて、本国ででき上がった時点が3カ月目であれば4引く3で1カ月しか日本での作業時間がないということになるわけでございますので、そこを4カ月もあれば十分だろうという、そういう数字ではないということでございます。

そして、やはりそこで何らかの形で時間がかかってしまったときに、ふたを開けてみたら期限に提出できませんでしたというリスクはなかなかとりにくいわけでありまして、一度やってみればわかるんですけれども、一度目で失敗しちゃったら大変なことになるというのがございますので、これもやはり一つの躊躇する原因になっているのかなというふうに思っております。

それでペーパーの1.3の今後というところでございますけれども、ともかく冒頭に申しましたように、改善するというよりはどうやれば使えるのかという観点で考えるべきだということで、2つ一応考えてみました。1つ目の1.3.1は、現行制度の枠組みを基本としつつ、発行開示及び臨時報告書に拡大する、基本的にすべて英文でできるようにするということで、一つはそこを改正したらどうかと。それから重要事項の要約は求めないこととするかまたは対象部分を最小限にとどめるという書き方にしておりますが、先ほど具体例で申しましたように、例えばリスクの部分は必要だろうといった場合でも、実は要約が本当に役に立っているのか、あるいは役に立つような要約であれば相当ヘビーな分量や内容を書かなきゃいけない、でも、相当ヘビーに書くというのはどの程度書けばそれでオーケーとされるのか、足りないとされるのかというところにリスクがあるということになってしまいますので、基本的には要約を求めないというのが一番制度としては使いやすいだろうというふうに思っております。

それから、ご提案のように、日本国内のみで発行する場合の英文開示を許容するということも必要だろうというふうに思っております。

これは現行の枠組みを基本としたものの中でのお話なんですけれども、1.3.2のもう一つの選択肢というのは、既に今、事務フローとしてご説明申し上げましたが、実態としては日本の開示府令の開示様式に従ったもので先ず英文でコミュニケートしておるわけですね。それについては、そんなに発行体から文句は出ておりません。既にあるものもそうですけれども、今後、やるとしても確かに開示の順番とかというのは国によって違うよねぐらいは発行体としても忍耐心はあるんじゃないかというふうに思うわけでございます。またそれにプラスして、私どものスタッフと弁護士が日本語に翻訳するという作業があるわけですが、これを丸々省くことができますと、現在の実務のやり方を基本は変えずに日本語翻訳部分の時間とコスト、コストというのは私どもの収益でもあるんですが、そこを大幅に省くことができ、時間的にも提出期限も短くできるということではないかと思います。

そういう意味で、目に見える現実的なメリットということが金銭的な負担も含めてこの場合には発行体に理解できるということでございます。

そしてまた、それは本邦の開示様式をそのまま利用いたしますので、様式としてある意味では比較可能性というものが得られるというメリットもまたあるのではないかというふうに思っております。

こういったことをやった場合に、投資者保護をどうするのかということについては、一応考え得るようなものということで3つほど、これは私もこうすべきであるというようなところまでの定見はございませんけれども、基本的には適合性ないし適合性に近接する問題となっていくのかなというふうに思っておりますが、マル1では、投資者の属性による制限ということで、ただ、この場合、適合性といい、あるいは投資者の属性といったときに、販売証券会社に過度な事務負担あるいは行為規制上の不明確な点等のリスク負担が発生すると、結局その制度としては使われない、機能しないということになりますので、現実のところでどこまでいけるのかということになると、例えば投資者から自分は英文読解能力が十分にあるという旨の確認書を取得すれば、この点に関する適合性の問題はクリアされるというような、そういったような方法である程度負担が生じないようにしてあげるということがないとなかなか難しいのかなというふうに思っております。

それから2番目に書きましたのは、金額による制限をつけるというのも一つの考え方としてはあるのかなということです。

それから3番目に書きましたのは、金融商品の性質による制限ということで、今既に金商法4条1項4号で外国証券売出しという制度がございますので、この下で外国証券売出しが認められるものが特定されているわけですけれども、外国証券売出しにおける外国証券情報として、発行者等が公表しているウェブサイトを参照する方法が認められるなど実質的には英文開示に近いようなものでございますので、こういったものについては丸々英文のみによる開示ということを認めるのは現行制度との整合性という観点からもそれほど大きな抵抗感はないのかなという感じがいたしております。

以上でございます。

○黒沼座長

どうもありがとうございました。

それでは、石原委員、お願いします。

○石原委員

私、発行体の立場から申し上げますと、やはり日本の金融マーケットがぜひとも隆々としていただきたいということが最大の眼目ですから、そういった観点から、もちろん投資者保護の制度は適切に手当される必要はあるでしょうけれども、英語は既に世界共通言語化しているわけですから、英文開示の範囲をできるだけ認めていくという方向で全くよろしいのではないかと基本的には思っております。

さはさりながら、先ほど東証さんからお話しいただいた中で若干違和感を感じる部分がありましたので、その点について今日に限る訳ではないのですがお聞かせ頂きたく、少し申し上げさせていただきます。資料の最初に書かれているように、日本の東証さんのポジションが相対的に低下してきているというのは、周知の事実であろうと思いますけれども、なぜほかの国のマーケットが拡大しているのか、具体的に何の違いでこれだけの差が生じているのか、ということをもう少しクラリファイしていただけないかと思っております。マーケットですから、そこに成長する企業がいなければだれも寄ってこないということは当然のことだろうと思いますけれども、それ以外にいろいろな制度的な問題等々があるのかどうか、その辺はぜひどこかの機会ででも教えていただければと思います。

そういった意味で、英文開示を活用していくということには全く違和感はないのでありますけれども、その際は、ぜひともこういった視点で物事を平等に考えていただきたいという意味で、2点ほど申し上げたいと思います。1点は、資料に書かれておりますのは、東証さんのほうに外国企業を呼び込むということでありまして、海外の企業に上場してもらいたいということは全くその通りかと思いますが、ただ、同じ東証に上場する立場として、外国企業のほうが非常に負担が軽くて、本来、中心であるべき日本企業の負担のほうが重たい、そういった不平等はぜひとも回避していただきたいということが1点であります。それからもう1点は、もちろん我々は日本国籍の企業ですから、できるだけ日本の市場でということでありますけれども、一方で海外に目を転じていく場面も非常にありますので、海外の企業が日本に上場しやすくなると同時に日本の企業も海外でより上場しやすくなるような、企業にとっての選択肢がふえるような、そういった形での平等、相互承認といった方向、視点もぜひ含めてご検討いただきたいということであります。すなわち、外国企業にとってだけいいということではなくて、結果的に、日本企業にも当然に恩恵が及んでくるんだと、そういった大きな意味での制度改正をぜひご検討いただきたいと思います。

以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

東副大臣が来られましたので、一言ごあいさつお願いします。

○東副大臣

金融担当副大臣をいたしております東祥三でございます。

委員会の都合ですみません、遅くなってしまいまして間の抜けたあいさつになるかわかりませんが一言ごあいさつ申し上げたいと思います。

まず初めに、皆様には大変お忙しいところ、開示制度ワーキング・グループへのご参加を快くお引き受けいただきましたことに厚く御礼申し上げます。また、日ごろより金融行政につきましてご理解、ご支援を賜りましてありがとうございます。

さて、本年6月に閣議決定をいたしました新成長戦略では、7つの戦略分野を掲げております。このうち金融戦略の一環として、外国企業等による我が国での資金調達を促進するための英文開示の範囲拡大が盛り込まれており、これに必要な制度整備を行うことといたしております。

この制度整備に当たりまして、外国企業にとってより使いやすい制度とする一方で、投資者保護の観点から十分に検討を行う必要があると考えております。

そこで、投資者、発行者、有識者等のそれぞれの立場を代表する皆様にお集まりいただきまして、活発なご議論をお願いさせていただくことにいたしました。

議論の進め方といたしまして、まず、英文開示の範囲拡大についてご議論いただきまして、年内をめどに一定のお取りまとめをお願いしたいと思います。そしてこの取りまとめを踏まえ、その後の対応については金融庁政務三役において責任を持って判断をさせていただきたいと思います。

なお、本ワーキング・グループの議事の進め方につきましては、座長は黒沼早稲田大学大学院法務研究科教授にお願いすることとしたいと考えております。

我が国市場の活性化及び投資者の投資判断に必要な情報を適切に提供するという観点から、皆様には幅広い見地から精力的に議論を深めていただくことをお願い申し上げ、簡単ではございますが、私のごあいさつにかえさせていただきます。

どうぞよろしくお願いいたします。

○黒沼座長

東副大臣、どうもありがとうございました。

それでは、引き続いて上柳委員からご意見を賜りたいと思います。

○上柳委員

ありがとうございます。弁護士の上柳です。

私、投資者あるいは消費者の立場からいろいろ申し上げてきたんですけれども、最初に黒沼先生がおっしゃいましたように、平成17年にこの制度を入れたときというのは、少なくとも私の気持ちとしては清水の舞台から飛び降りるつもりで、日本経済の活性化のためであれば一定の英文開示はやむを得ないんじゃないかというふうに考えた次第です。

東京証券取引所にたくさんの外国の会社が上場されるのであればありがたいわけですけれども、東証に上場しているからといって信用できる証券じゃないかあるいは株式じゃないかということで、一般の日本の国民、あくまでも日本国の国語は日本語ですので、あるいは英語、あるいはその他の外国語がわからないわけですので、中身がわからずに、あるいは会社のことがわからずに購入するというのはあり得ないんじゃないか、そこのバランスをどうとるかということで相当の議論をしたわけです。けれども、あまり活用されていない。先ほど石黒弁護士の話を伺えば利用しにくいということもそれなりに納得するわけですけれども、やはりこのバランスをいかにとるかというのが課題だろうと思います。

それで2点申し上げたいのですけれども、1点は、東証のプレゼンテーションにもありました重複上場に限るのか単独上場まで許すのかという点が大きな論点だろうと思います。私の意見は、とりあえずはやはり重複上場、つまりほかの市場でといいますかその英文なら英文あるいはドイツ語ならドイツ語でも結構なんですが、使われている言語をよくわかっている人たちによって構成される、あるいは投資者であれあるいは規制当局であれ、あるいは司法関係者であれですけれども、英語であれば英語がよくわかる人たちの市場で、あるいはその国の法律によってある程度さらされている、その人たちの関心の目が行き届いているものについて東京でも重複して上場するというのはあるかなと。そういう意味で、一定の国語のわかる人たちを担保にするというか、そういう形でしか進んでいかないんじゃないかというふうに思います。

それと同じことなのかもわかりませんけれども、セカンダリーのみなのかあるいはプライマリーまで広げるのかという論点についても、ほかの市場で上場ができていない、あるいは私の言葉で言えば母国語での開示による批判にさらされていない、その国語によって監視されたりあるいは市場の評価を受けていない、そういう中には掘り出しものがあるのかもわかりませんけれども、東京の市場に、いきなり東証に上場するというのは、不適当だと思います。東証のプレゼンテーションの中でも、とりあえずはセカンダリーを中心にあるいは重複上場を中心にと書かれておりましたけれども、それがとるべき立場だろうと思います。

そういう意味で、東京証券取引所の今日のプレゼンテーションの3ページ目の重複上場を中心にするという記載と、後ろから2枚目のところの(2)単独上場する外国会社についての記載とは、これは単独上場のほうは尚早といいますか、矛盾しているような気がいたしました。

今の点は開示の話ですけれども、もう一点は、いわゆる投資者あるいは一般市民が購入するときの問題でして、日本の中には今は大分英語のしゃべれる人もおりますし、それから例えばTOEFL何点以上であれば買ってよいと。先ほど石黒先生の確認書のお話がありましたけれども、証券会社から確認書を取るだけで許されるというのはあり得ないと思っているんですが、ある程度、TOEFLもいいんでしょうかね、何らかの客観的な証拠があれば一定の適格性があるということになるのかもわかりませんが、これは相当慎重にやらないとだめでしょう。日本語しかわからない人に販売するときには、相当販売者、証券会社なり銀行に日本語での適合性原則遵守や説明義務を十分に果たすという負担がかかるのは当然だと思っています。

私自身の意見は、仮に英文開示を広げるのであれば、英文開示を中心にしているあるいは英文開示、あるいは外国語開示しかしていない金融商品については、いわゆる不招請勧誘の禁止の対象になるべきだろうと。つまりお客さんのほうが望んで私は英語もわかりますと、あるいは中国語もわかりますと。ぜひとも世界市場に参加したいというふうに投資者あるいは消費者のほうから望んだ場合のみ買えるようにすべきです。これでも現状から比べれば大きな改善でして、東京証券取引所にたくさんの外国会社が上場されて、それを買おうと思う人は買えると、そういう選択肢を国民に提供するという意味では、一定程度のバランスがとれる施策ではないかというふうに思っております。

ですので、再度、開示というものがどういう意味があるのか、日本語で開示されるということにどういう意味にあるのかという原点に帰ることと、投資者保護を図ろうとすると不招請勧誘の禁止を一定程度及ぼすということが妥当であることと、以上指摘させていただきます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

それでは、小川委員、お願いします。

○小川委員

野村證券のキャピタル・マーケット部長をしております小川でございます。

私どもの立場は、実際にご発行をされます各種企業、ご発行体様のほうに、実際の日本でのオファリング等をお勧めするという立場でございまして、また、同時に野村證券の者として来ておりますので、当然そういった証券を今度は投資家に販売していくという、発行体の立場、投資者の立場、そしてその仲介者たる立場としての発言が求められると思っておる次第でございます。

まず、発行体を誘致する立場としまして、先ほど松崎委員からのプレゼンテーションの中にもございましたけれども、日本市場の相対的な地位の低下という部分に関しましては非常に痛感しておる次第でございます。

そういう意味で、日本の市場を何とかしていかなければ、日本の成長戦略に資することはできないという意味で、今回のテーマは非常に大きな意義のある話だと思っている次第でございますが、先ほど石原委員からのご質問にもございましたが、日本市場から撤退する企業に関して英文開示が一つの大きな問題ではある部分ではございますが、それ以外の問題というものもやはりはらんでいるのかなというふうに思っております。

その点の詳細については、この場で触れさせて頂くことはしませんけれども、先ほどの阿部委員からもありましたように、会計上の問題といったものもやはり国によってはあるということもございますし、また、会計の開示期間が違うとかいう問題もあったりしまして、幾つかの複合的な要因があります。それからそもそもの制度的な要因以外に、実際に日本の投資家がどういう商品に対してどの程度のリスクを許容できるのかという部分、ここについてのミスマッチがある部分にも起因しているのではないかというふうには思っている次第でございます。

そういった中で、ご発行体にぜひ日本市場をご活用いただきたいということでお話しさせていただきますと、開示に関しまして日本語による開示がご発行体様から見てやはり障害の一つになっているということは間違いないのかなと思っております。したがいまして、英文開示が認められるということについては、これは相当程度の効果があるのではないかなというふうに思っております。

一方で、市場仲介者の立場で投資者の観点から見ました場合、実は日本語での開示というものに対する投資家側の期待がこれもまた相当程度高いと考えております。上柳委員からもございましたように、投資者保護の観点で見た場合に、やはり日本語による投資判断を求める投資家様が数多くいらっしゃるというのも実態でございます。

そういう意味で、非常に使い勝手のいい制度にしていかなければならないということではあるわけですが、やはり両者のニーズを満たしていくということがここでは求められるということかと思います。

そうした際に、現状、継続開示で使われていない理由としまして、私どもが認識しております点は、先ほどの石黒委員からお話がございました現状の問題点というところとほぼ同じ意見でございまして、海外各拠点等をヒアリングしましても、私どものお客様からお聞きしている話は概ねこちらに集約されているのではないかと思っております。

今後、どういった形にするのかということの提案ということでございますが、まず、大きくセカンダリーとプライマリーという考え方があるということに加えまして、商品性の中で、債券と株式というものが大きく2つございまして、大きく4象限にわけてとらえる必要があると考えています。その場合、それぞれ求められる、許容される範囲がおのずと異なってくる部分があるのではないかなというふうには思っております。

そういう意味で、継続開示に関しまして、債券及び株式という部分に関しましては、この日本語の要約のガイドラインというのがあるわけなんですけれども、このガイドラインを明確化する、あるいは様式化するということが大きなポイントとしてあるのではないのかなというふうに思っているところでございます。投資家サイドから見てもやはり日本語での要約が引き続き残る部分を求めております。

一方、プライマリーという部分に関しましては、これはマーケティングという観点と同時に検討していく必要があると思います。その際にやはり適格機関投資家等のプロを対象にしている状況なのか、あるいは広く一般の個人のお客様も含めて対象にしているのかということによって、これはおのずと変わってくるかと思います。

この点に関しまして、石黒委員がおっしゃるような全面的なプライマリーにおける英文の開示を認めるという形になりますと、やはり我々販売サイドとしての負担は極めて厳しいものがあると考えます。実際に販売資料というものを使用することが認められておるわけでございますが、英文から販売資料という形で和文のものをつくるということは、賠償責任等の問題等を考えますと、実態としてまた進まないものをつくるということになるのではないかというふうに思われます。そういう意味で、この点に関しても様式化のようなものがやはり求められる部分はあるのではないのかなというふうには思っております。

このプライマリーの部分に関しましては、先ほど債券で1億円以上の券面の商品についてはどうかというようなご提案もございましたけれども、商品性で区分することができるのかなというふうには思っております。

もう1点、プライマリーに関してなんですが、社債の要項等を含めてかなり細かいところに関しましては、準拠法を日本ということで定めておる部分もございますので、その要項等に関してはその後の何らかの紛争といったことも考えますと、やはり日本語であることが求められる部分はあるのではないかなというふうには思う次第でございます。

プライマリーにおける英文開示において、投資者保護と市場活性化を両立していくためにはそういった点のご配慮をいただければというふうに思っておる次第でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

川村先生、お願いします。

○川村委員

早稲田大学の川村と申します。

専門は会計学でございますので、多少会計に近いお話につきまして、ちょっとまだ頭がまとまっていないところがありますが、お話しさせていただきたいと思います。

大きな話としては、本日の問題は、結局証券市場におけるコスト負担をどういうふうに配分していくのかという問題なのかなと思っていますが、コストは例えば証券会社に発生するとか作成者に発生するとかいろいろなところでダイレクトに発生するのですけれども、究極的には投資家が負担する仕組みであるわけです。つまり例えば作成者側でコストが発生すれば資本コストの増加となって投資家に跳ね返ってきますし、何らかの形で結局投資家が負担するということです。

そうしたときに、マーケットでコスト全体を引き下げるためにはどうしたらいいかというと、いわば相思相愛の仕組みをつくることが必要だと思います。英文で情報を提供してそれで十分に投資機会がふえて、それでもってハッピーとなる投資家にきちんとつながっていけば摩擦が減って全体としてのコストが下がるような大枠を考えています。

先ほど不招請勧誘の禁止というアイデアがございましたけれども、まさにそういうのが一つのアイデアかなと思う次第です。

あと今日の資料の中で、EMCコーポレーションの実例を拝見いたしましたけれども、先ほどご指摘あった事業等のリスクの開示のところ、例えばつぶさに見ていくといろいろ間違っていたりしていまして、会計ではGAAPというんですが、それがGAPPになっていたり、それがまたなおかつ英語のほうの開示を見ますと、その記載がないんですね。つまり英語にないのに日本語にあるというように、1行が加えられていたりしています。あとは翻訳の質の問題も当然あります。例えば、財政状態と経営成績の分析というところで、要約で4行書いてあるんですが、売上高に関する記載もないし純利益の記載もないし、それは財務諸表を見ればわかるのですけれども、果たしてこれでもって財政状態、経営成績の分析の要約と言えるのか、何の制度的な意味があるのかという点について率直に言って疑問であります。

財務諸表の本体に関しましては、英文で開示されていても基準そのものがIFRSですとか米国基準に収れんしている状況でありますので、それも一つございますが、さらにテクニカルにはXBRL化がやっぱり進んでおりますので、実務は詳しくはわからないのですけれども、そのプラットホームに乗せれば英文の財務諸表もそのまま日本語で読めるということでしょうから、もう既にそういう意味での対応はいろいろと進んでいるのかなと思います。

さらに、有価証券報告書に記載する事項で、日本で要求しているんだけれども外国で要求されていない部分についてどういう開示をするかというのが一つ問題なのかもしれません。これに関しましてはまた、国際的な統一化、調和化みたいな話が財務諸表の外側でも必要になってきているのかなと思います。もちろんもうこれまでもずっとご努力されていることだと思うんですけれども、例えばそのときに日本の企業にとって負担感が特にあるというようなものにつきましては、先ほど石原委員からもご指摘があったとおりでございますが、何か対応の仕方もあるのかなというふうに思いました。

まとまりなくて恐縮ですけれども、以上でございます。

○黒沼座長

どうもありがとうございました。

それでは、川本委員、お願いします。

○川本委員

大阪証券取引所の川本でございます。よろしくお願いいたします。

今回、このように開示制度のワーキングで開示を見直すということは、いわゆる我が国の投資家に対しまして、種々の投資運用対象を提供するということで、非常に重要な問題であろうと考えております。

まさに現代のようなグローバルな社会におきまして、海外の企業もその投資対象に含めるというのは、新たな投資手段として投資家にとって有益なものと思っています。

ただ、そのための環境づくりは大変重要ではございますけれども、やはりマーケットを預かる証券取引所といたしまして、いろいろな会社が上場される、あまねく会社が何でも上場していいのかという問題が出てまいりまして、開示実績、海外の証券取引所で一定の開示実績のあるところとそうでないところでは、我々そのものの上場管理の認識が違ってまいります。何かあったときに、本国の証券取引所の対応というところを重視しながら、我々も、ある意味、本国の対応に準じた形でやっていくというのが、今のところの筋合と思っております。

ただ、そうはいっても我が国の金融資産を活性化させるためにも、単独での上場というのも、一定程度必要かと認識しております。そのために我々としては、適時開示の制度をどのようにやっていくのが重要と考えております。今、こういう場で議論されていることを踏まえながら、取引所としても改めて検討していかなければならないと認識しておるところでございます。

やはり単独で海外の会社を上場させるとなると、一点強く感じるところは、投資家保護の問題で、投資家が十分タイムリーディスクロージャーについて理解した上で、投資判断をするのかという問題がございます。そこについては、やはり何らかの形での投資家保護の仕組み、先ほど、例えば、不招請勧誘等のお話が出ましたけれども、従前のようなワンクリックでネット証券がオーケーというだけで果たしていいのかどうかといった点等を含め、今後、この場で深く議論していただければと思っております。

そうなりますと、私ども証券会社に対する検査等の対応において、その辺十分に投資家に対して適合した投資勧誘を行っているのかどうかということも、改めて検査等で確認することが必要となってまいろうかと思います。ただ単に開示だけの問題じゃなくて、行為規制の問題も含めながら、幅広くこの場で議論を進めていただければ思っております。

私からの意見は以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

永沢委員、お願いします。

○永沢委員

市民グループ良質な金融商品を育てる会、通称Foster Forumの永沢と申します。

皆様、大変レベルの高いお話をされました後で恐縮ですが、一投資家の立場から感じたことと、それから投資家保護について思いますことをお話をさせていただきたいと思います。

まず、東京証券取引所の松崎様のお話を伺いながら2点ばかりなるほどと思う部分がございました。私も1980年代に東証上場の外国株式を持っていたことがありましたが、上場コストが高いということで上場廃止になりまして、そのために売却を余儀なくされたということを何回か経験いたしました。投資家としては、せっかく投資したのに投資を断念することを余儀なくされるというのは大変残念なことと思いますので、海外企業が上場するからには長く上場を維持していただきたいと思いますし、そのような制度の工夫が必要だと思われます。

それから、松崎様の資料の中の4ページですが、背景のところに個人投資家が法定開示の対象となっていない海外市場の外国株を我が国証券会社を通じて購入する動きが活発化しているというご指摘があります。最近、残念ながら日本の国内に魅力的な投資対象がないからか、個人の投資家でもかなり外に向かって投資に行っています。そうした中で危惧しておりますのは、投資家保護のための制度づくりが行われてきているにもかかわらず、国内に魅力的な投資対象がないからということで、この枠組みからわざわざ漏れ出ていって投資をするようなことが行われていることです。私の周囲でも、外に口座を開設して投資をするだとか、国内の証券会社を使うにしても、法定開示の資料がない銘柄に投資をしたいからということで、証券会社が適当に翻訳したようなものを使って投資をしていると話される方もあります。投資家保護を徹底していこうということで制度づくりが進められていますが、その枠の中で一般の個人投資家が魅力的な投資対象を見つけることができるよう、環境整備していくことが流れとしてもやはり求められているのではないかと、お話を伺いながら思いました。そういう意味で、英文開示の拡大には賛成です。

皆様の今までのお話を伺いながら、私として思ったことですが、英文のみの開示となるとやはり情報開示が限定的になるということを意味します。その点を考えますと、不招請勧誘は禁止すべきようにも思います。特に買う側に英語の問題がありますが、売る方にも英語の問題があるわけで、双方英語ができない状況で英文の資料を用いて勧誘するということは考えにくいことですので、やはり、今まで私ども個人投資家が考えてきたような投資商品とは一段違うものとして扱われることが望ましいのではないかと思っております。

2点目といたしまして、やはりこれも上柳先生のほうからご指摘がありました点ですが、東証に上場しているということは投資家から見れば一つの信用であり、東証に上場しているということで信頼できると思ってしまう投資家も少なくはないと思われますので、母国市場で多くの投資家の目にさらされた情報を日本に持ってきているという状況が望ましいと思います。したがって、単独上場ではなく重複して上場することを前提とすべきなのではないかと思います。

日本語の要約については、正直言って判断に迷っております。自分が投資をしておりましたときに、英文のものもいただきましたけれども、石黒先生からお話もありましたように、果たしてどこまで投資家の役に立っているのだろうかという疑問を持っております。私の個人的な感想でして、自分がすべての投資家を代表しているつもりはありませんけれども、投資判断に役立っているのかどうかは疑問に思います。

ただ、なくてよいのか、適時開示のときに本当になくてよいのかという点については悩ましいところです。ホームページでの情報提供などいろいろな場面で問題が出てくるでしょうから、要約の件については何をどのように開示させるのか、具体的な検討をすべきなのではないかと思っております。

最後に、投資家保護という言葉は非常に抽象的でいろいろなところで言われますが、英文開示の拡大によって実際にどのような問題が生じるのかということをもう少し具体的にイメージをして議論をしていく必要があるように思います。国際金融市場としての日本市場の競争力というのも非常に重要な問題だということも踏まえた上で、個人の投資家が議論から取り残されないよう、ある程度問題を具体的に想定した上でどうなのかという判断をしていく必要もあるのではないかと感じております。

以上でございます。

○黒沼座長

どうもありがとうございます。

それでは、平田委員、お願いします。

○平田委員

日本証券業協会の平田でございます。証券界の自主規制機関としてさまざまなルールメイキングやエンフォースメントをやっている組織でございます。

英文開示のいわゆる範囲の拡大に関しましては、我々としては非常に賛成するところでございますが、やはりいわゆるセカンダリーとプライマリーのあり方というのは若干違うのかなというふうに考えておりますし、また、投資家の属性によってやはり英文開示がなじむのかどうかという考え方というのも整理が必要であろうと思います。また、今までの皆さんのご議論では、野村証券の小川委員以外は概ね東証に上場する外国企業の株式をメインに議論されているように聞こえるんですけれども、それ以外にも例えばサムライ債の国内での募集等々も考えますと、一律上場する商品と上場しない商品を募集の際の開示において同じレベルで取り扱っていいのかどうかというところも少し整理が必要なのではないかなというふうに考えます。

セカンダリーの部分につきましては、確かに英文開示制度ができているのですけれども実際に使われていないというところがあり、何でそれが使われていないのかということを考えますと、やはりその日本語の要約の部分が負担になっているということなので、ここの部分の要約については抜本的な見直しというのが必要なのかなというふうに考えています。要約に関して非常に負担になっている部分に関しては、ある部分軽減をしていくということはあり得るんだろうなと思います。特に直近の法制度の見直しにおいて、石黒先生のほうからもご指摘がありましたけれども、売出しの法制度に関して、海外の商品を国内に持ち込んで販売をするセカンダリーの部分に関しては、海外の開示を参照できるという仕組みをつくっていただき相当簡素化したということもありますので、そういうところを十分勘案しながら軽減化あるいは規制緩和というところができるのではないかというふうに考えているところでございます。

一方、プライマリーに関しましては、初めて商品が持ち込まれるということになるわけでありまして、特に東証に上場するあるいは取引所に上場するということになりますと、さまざまな形で取引所の基準を満たすための募集行為という意味合いもありますので、これはもう完全に不招請勧誘の禁止ということはあり得ないだろうというふうに考えています。

したがいまして、ある部分、英文の日本語要約なり何なりということは必須ではないかなと。もしこれがないとすると、先ほど小川委員のほうから指摘がありましたように、販売用資料を証券会社のほうでつくらなくちゃいけない。これは恐らく難しいといいますか、ほとんど実質的には無理だろうというふうに考えていますので、取引所のほうで何らかのものを作っていいただくことが望ましいと思います。東証のご提案では基本的な情報をホームページに掲載することを予定しているとのことですから、こういうところで大体フォローできるものであるのなら構わないと思いますけれども、プライマリーに関しては一定の要約なり何なりというものは必要なのではないかと思います。

ただ、ここもすべての書類に関して要約が必要なのかということは十分議論が必要でありまして、届出書だとかあるいはその他の書類に関しては英文のままでいいものだとしても、例えばやはり投資家が目にする目論見書は一定部分の日本語要約が必要だとか、あるいは今、株の目論見書に関しては従来どおりかなり厚いものが利用されていますので、例えばそれを投信の目論見書並みに簡素化をしてそれを日本語化するとか、そういう議論というのはできるのではないのかなというふうに思っております。

そういうことで、かなり工夫が必要だと思いますけれども、全く日本語をなくしてしまっていいのかということについては、やはり対投資家の保護という観点では十分に慎重な議論というのは必要なのではないかなというふうに考えているところでございます。

以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございます。

松崎委員、もし補足することがあれば手短に。よろしいですか。

では、三浦委員、お願いします。

○三浦委員

ゴールドマン・サックス証券で法務を担当しております三浦でございます。

今まで委員の皆さんから出てきたところと重複になる部分もございますけれども、幾つか申し上げたいというふうに思っております。

外国会社の発行体サイドというものと国内の投資家の方というふうな両面をカバーさせていただいております仲介業者として、まず第一、ご発行体様の利便ということを考えますと、英文開示の拡大には賛成ということでございます。日本での公募もしくは上場といったものが多く起こらない理由については複合要因だというふうに考えておりますけれども、日本語の開示を要求されているという部分も重要な要素になっているというふうに思われます。実際の会話の中でも、日本語の翻訳として開示を作成していくということも結構大変な負担、もしくはコスト増につながっているという声をお聞きしますので、そこの部分はバリアとしてなくなると非常によいのかなというふうに思っております。

英文の開示については、1つこのタイミングでの議論なのかより先なのかということがございますけれども、石原委員のほうからもその平等性の問題が出ましたけれども、日本の企業の皆さんが海外で重複上場されているときに、会計基準を二本立てでされる及び開示の言語を二本立てでされるということはご負担になっている部分でもあるのかなというふうに思っています。会計基準については統一化の議論も進んでいるところではあるというふうに思いますので、開示言語についても日本の企業についても英語開示ということもあると非常によいのかもなというふうに若干思ったりもしております。

一方で、日本の投資家の保護という観点からしますと、まず、開示を審査する引き受け審査の体制というものの強化というものを証券会社として取り組んでいかなければいけないものではないかなというふうに思っております。もう一つ、適合原則の審査及び説明義務の充足といったところも積極的に取り組んでいく必要があるのかなというふうに思っております。

ただ、石黒先生のほうからも若干お話が出ましたけれども、こういったところでの証券会社の事務負担が非常に大きくなるもの、もしくは行為規制が非常に不明確であったりとかすると萎縮効果が発生してしまって、証券会社として積極的に案件に取り組めないというような効果もネガティブな効果としてあらわれてしまいますので、ここの部分は投資家保護の観点で関係者の皆さんと議論を尽くしてどういったものがよいのかといったところを探っていければというふうに思っております。

この発行開示の部分と継続開示の部分というのを基本的には同じ基準で一気通貫で考えておかないと、どちらかに一部日本語が必要だということになると、基本的には実務対応が非常に難しくなってきますので、英文開示についての統一化というものが非常に利便性を高めるのではないかというふうに思っております。

逆サイドでは、先ほど申し上げたように説明義務だとか適合性の原則というところも考えていくということだと思います。

証券会社での投資家対応のところでは、やはり投資家属性によって対処をやはり変えていくということに合理性があるのではないかなというふうに思っていますので、今までのような機関投資家とそうでない方、もしくはプロとアマという枠組みで考えるのかもう少し違った枠組みを考えるのかというのはあると思うんですが、投資家属性に合わせた形で対処を変えていければ何かそういったところが探れればいいかなというふうに思っております。

あと単独上場で日本に来られるもしくは未上場のまま例えば社債券を出されるというような方の開示の対処ということで言うと、基本的には日本の投資家の慣れ親しんだ様式で開示をしていただくということが最もやりやすいのかなというふうには思っていますので、言語自体は英語ですけれども、様式自体は維持をしたままで開示をしていただくということがよいのではないかなというふうに思っております。石黒先生のほうからも若干出ましたが、様式等についてはそれほど強い反発というものをあまり見たことがありませんので、言語のところだけ対応ができればより多様な発行体を日本の市場に呼んでこれるのではないかなというふうに思っております。

以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございます。

では、最後に吉井委員、お願いします。

○吉井委員

大和総研で制度調査担当の部長をしております吉井と申します。

私は、証券系シンクタンクで証券金融関連の制度を調査している者でございます。

わが国での英文開示のニーズについてですが、海外の企業が日本の資金、日本の豊富なキャッシュを獲得したいと思っているのは事実だと思います。ただ、そのために日本に上場する必要があるかというとそこまでは考えていないというのも実情かと思います。というのも、日本の投資家が海外の市場に投資してくれればよいからです。

英文開示のターゲットとする投資家については、ある程度絞ったほうがいいのかなと感じております。英語がわかる方ということで想定されているということですが、おそらく本人が英語がわかると思っていても、実はわかっていないということが結構あるかと思いますので、やはり一般投資家を対象に考えるのはかなり難しい面はあるのではないかと思います。そうすると、やはりターゲットとしてはプロが中心になってくるのかなと思っております。既にプロ向け市場としてはAIMがございますけれども、AIMは新興市場ということで、それ以外の企業を対象にするといった位置づけになるのかなというふうに感じております。

発行開示書類に英文開示を拡大していくということには、基本的には賛成ではございますけれども、ただその場合に、まずは投資家が開示内容をどれだけ理解できるかということが重要でありますし、そのための証券会社サイドの説明責任というのもやはり重要になってきます。英文で開示されているからといって証券会社の説明責任が免除されるわけでは決してないと思われますので、営業員の英語能力が問われるというようなこともあるでしょうし、さらに、適合性の原則から、顧客の英語力の確認まで求められたりすると対応が大変かなと思います。

発行された証券を実際に販売する際には目論見書を使うわけですけれども、この目論見書が英語のみということですと説明するサイドが正確に説明できるか、投資者サイドが正確に理解できるかというところはかなり疑問が残ります。日常用いている言語ではないので、お互いに理解していると思っていて実は理解していないということが生じる可能性は高いのかなと思います。

したがいまして、少なくとも目論見書のような直接開示書類は、重要な部分はきっちりと日本語で説明し、日本語で記載すべき項目と英語で記載できる項目と分けないと、投資者保護は図れないのかなと思います。

一方、流通市場の英文開示ですが、確かに利用例が1例しかないということから言いますと、やはり今のやり方というのは結構中途半端なところがあり、発行者にとって使い勝手はよくないし利用者から見てもよくわからないということなのかなと思います。そういったところからすると日本語の要約部分を見直していくことは必要なのかなと思います。

私はあまり英語は得意ではないのでその立場から言わせていただきますと、典型的な用語というのは英語でも対訳表みたいなのがあれば理解できるかと思いますけれども、特に記述による開示がなされている部分はやはりある程度日本語で書いてもらう必要があると思います。英語で含蓄のある表現をされますと全く手も足も出ないというようなこともございますので、その辺は工夫していただきたいと思います。

それから英文開示の対象企業ですが、東証様のほうで配られた資料の2ページ目の新成長戦略と東証の上場誘致戦略の今後のターゲット企業というところで、本国市場で既に投資者保護が図られている企業ということで、重複上場という記述がございますけれども、私もある程度本国の市場できちっとチェックを受けた会社が上場した場合に英文開示を認めるという形が望ましいのではないかと思います。

英文で開示する際の会計基準としてどういうものを使用しているか、開示内容がどのレベルかはもちろん重要で、これらの基準や内容も一定の水準は維持してほしいと思いますが、加えて、内部統制がきちっと機能していることが非常に重要であると思います。会計基準と開示内容が受け入れ可能な一定の水準を保っていたとしても、財務諸表を作成する過程が全く信頼に足るものではないということですと、仏つくって魂入れずということになります。したがって、英文開示を進める上で、特に、チェック機能の部分は一定の水準を確保してほしいと思っております。

最後に、適時開示につきましては、確かに日本語に訳すタイムラグというのがあって、その間に価格が大きく変動してしまうということがあるかもしれませんので、まずは英語での開示を行った上で、必要があれば後から日本語の要約をつけるとか、そういった形で対応したほうがいいのかなと考えます。

以上でございます。

○黒沼座長

ありがとうございました。

予定では、この後、ディスカッションをするということを予定していたのですけれども、ちょっと私の不手際もありまして時間をほとんど使ってしまいました。

阿部様。

○阿部委員

簡単に。

実は副大臣がお見えになってから申し上げようと思って、帰られてしまったんですけれども、今回、新成長戦略の中で開示の見直しとして3点挙げられております。四半期開示の大幅な簡素化と内部統制報告書の見直しとそれから取引所における業績予想開示の見直しの慫慂です。特に3点目につきましては、先ほど石原委員からもございましたけれども、日本で上場している会社をもっと上場を便利に、使いやすくするという意味でも必要かと思います。本来は任意で行うべきものであるはずでありますので、そこを徹底した見直しをしていきたいということをぜひお願いしたいと思います。

それから本題の話ですが、そもそもこの議論を何のためにやっているかというと、やはり日本の市場をアジアのほかの国の市場に競争で負けないようにするためにやっているのではないかと思います。ある意味で香港や上海、シンガポールに負けてしまいかけている日本の市場を何とか持ち直そうとする一環かと思うので、そういう意味ではそれらの市場でどういうことが行われているか子細に点検した上でできることを思い切ってやるべきだと思います。競争するに当たりまして、かなり大胆な戦略をとらないと、現在日本は完全に後手に回っている状況ではないかと思いますので、ぜひそれらの新興市場の状況についてもお調べして教えていただきたいと思います。

○黒沼座長

わかりました。

吉井委員。

○吉井委員

今の業績予想の問題ですけれども、まず、上場銘柄のすべてをアナリストがカバーしているわけではないので、カバーしていない上場銘柄においては、やはり会社が出す業績予想というのは重要です。特にリテールの投資家にとっては非常に重要な情報であると思います。次に、アナリスト自身も会社の予想数値を見て、その前提を会社に聞いて、自分が想定している前提と比べて利益予想をするといったような面もございますので、これは直ちに廃止というのは考え直していただきたいと思っております。

○黒沼座長

業績予想については別の問題ですのでこれぐらいにさせてもらいまして、しかし、今日は多様な意見をいただきまして、細かい論点からそれから大きなものまで含めて多様な意見をいただきましたので、それらを事務局で取りまとめ整理させていただいた上で、次回の会合でそれに沿ってさらにご議論していただきたいと存じます。

その他何かございますでしょうか。

石原委員。

○石原委員

1点だけ申し上げたいのですが、その前に今の業績予想の話については、別の問題とは言いながら当然自主的な開示を考えるべきなので、それは指摘させて頂きたいと思います。

それはさておきまして、1つだけ、今日、皆さんのご意見を伺っていて、特に証券会社の皆さんから比較的日本語の要約とかそういうものが重要だというような意見が少し強かったような印象を受けました。私は、あまりその辺りの実務に詳しくないのですけれども、一方でマーケットを隆々としていきたい、そのためにはある部分リスクはとらなきゃいけない、そのどちらを優先するかという問題だと思うのですね。ですから、両方にベストの解があればいいんですけれども、実際はどちらに軸足を置くのですかということだと思います。そうすると、そもそもの問題として本当に英文の開示だけが日本のマーケットの問題なのですかといえば、そうではないはずなので、したがって、英文開示においてリスクをとる、とらないと議論しても仕方がないのではないかなと思うのですけれども、そこのところについて証券会社の皆さんがどういうお考えなのか、日本のマーケットをよくするためにあきらめなくてはいけない部分はあきらめなくてはいけないのでしょうから、いまひとつどちらに軸足を置くのか、今後に向けて関心を持って議論させていただきたいと思います。

○黒沼座長

その点はまさにおっしゃるとおりなんですが、しかし、多様な軸足がやっぱりあるわけでして、例えば成長戦略のためにこれを議論するのか、それとも国民の資産運用を豊かなものにするためにするのか、立場も分かれるでしょうし、今の点も見方はいろいろあろうかと思うんですね。それを認識しつつ議論したいと思います。この場では別に多数決で決定するわけではありませんので、知恵を出し合っていい答えを出していければというふうに考えております。

ほかに何かございますでしょうか。

石黒委員。

○石黒委員

今日、英文開示の議論だったんですけれども、ほかに開示の関係で事務局から最初のころにお示しいただいたものとして届出書の効力発生待機期間の問題とか、それから目論見書の交付方法の弾力化の問題、それからライツ・イシュー、特にコミットメント型を可能にするというようなそんなテーマも考えられるんじゃないかというご示唆をいただいたんですが、いずれも大変私、開示制度の改善ということの中では重要なテーマだと思っておりまして、特にコミットメント型のライツ・イシューについては、昨今のキャピタル・マーケットにおける資金調達の中でいろいろな批判が出たことに対しての一つの現実的な答えになり得る部分がありますので、このあたりも制度の環境を改善していくということは非常に重要だと思っておりまして、このワーキング・グループでできるのかどうなのかというのは現実的な時間の問題もあるかと思いますが、ぜひそのことを要望しておきたいと思います。

○古澤企業開示課長

ご覧のとおり、今日の英文開示だけでもこれだけいろいろな論点がございますが、石黒委員からご議論がございましたコミットメント型のライツも中で検討させていただいて、議論に整理ができたところでまたご相談いたしたいと、そんな日程感を考えております。まずは副大臣からございましたように、英文開示、今日のご議論いただいただけのものを整理するところがまず最初かと思っております。

○黒沼座長

それでは、以上をもちまして本日の会議を終了させていただきます。

どうもありがとうございました。

(以上)

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3669)

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