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会計監査の在り方に関する懇談会(第2回)議事要旨

1.日時:

平成27年11月20日(金)15時30分〜17時30分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

3.議題:

今後の会計監査の在り方について

4.議事内容:

議論の要旨は以下のとおり。

  • 監査品質は、経営者、監査役等、利用者、規制当局等の監査の利害関係者からの協力と、利害関係者との適切な相互作用が存在することが重要である。この相互作用は重要であるにも関わらず、これまでは監査法人や監査実務について、利害関係者に理解してもらうことがなかなかできていなかったのではないか。

    監査については、監査法人や会計士がしっかりやっていくことが前提であるが、高品質な監査は、次のことを満たすような監査チームによって達成される可能性が高いと考えられる。まずインプットとして、適切な倫理等を有し、知識・経験等が豊富で、監査作業の実施に十分な時間を割り当てていること。そして実施プロセスとして、法令や監査の基準に準拠した厳格な監査プロセスと品質管理手続を経て、あるいは、適用していること。アウトプットとして、有用かつ適時な監査報告書を提出していること。

    以上を踏まえると、監査の実効性を高めるためには、どういった監査が必要なのか、経営者、監査役等、利用者、規制当局等といった財務報告サプライチェーンの中で関係者が議論していくことが適当と考えている。

    透明性向上という観点からは、監査の透明性の確保が必要であり、監査法人のガバナンス・コードの適用について検討する必要があるのではないか。また、諸外国では検討が進められ、また、EUの一部では既に採用されている監査報告書の長文化も、どこに留意して監査を行ったのかということが利用者に提供されることから、監査業務の透明性の確保に大きく寄与すると考えている。

    経営者、監査役等と会計監査人のコミュニケーションの一層の充実を図るため、米国公認会計士協会(以下「AICPA」という)の外部団体である監査品質センターや、米国公開会社会計監査委員会(以下「PCAOB」という)が、監査品質指標(以下「AQI」という)の案を出している。その効果については今後よく見ていかなければならないと思うが、これも監査法人、監査業務の透明性の確保に繋がってくるのではないかと考えている。

    深度ある監査を実施するための環境整備という観点からは、日本は欧米諸国と比べて相当に短い期間で監査を実施している実態があることから、こういった環境を改善することも必要ではないか。

    公認会計士協会(以下「協会」という)の品質管理レビューや公認会計士・監査審査会(以下「審査会」という)の検査については、レビュー・検査対応のための監査手続になっていないかという論点があるものと思っている。

    ローテーションについては、対象を監査法人にするのか、監査チーム全体にするのか等を含めて、メリット、デメリット、実行可能性を十分に検討する必要があると思う。

    品質管理レビュー制度については、コーポレートガバナンス・コードの導入等の様々な環境変化を踏まえた、継続的な改善が必要と考えている。

    監査先企業のガバナンスという観点からは、内部統制監査の一環として、コーポレートガバナンス・コードの適用状況を会計監査人が監査するということも必要なのではないかと思う。

    内部統制報告制度については、企業も会計監査人も慣れてきて、一部形骸化しているのではないか。例えば、重要な事業拠点の選定に係る数値基準や、開示すべき重要な不備の定義が制度の形骸化に繋がっている面があるのではないか。また、アメリカで採用されているダイレクト・レポーティングについても検討する必要があるのではないかと思う。

    開示制度について申し上げると、上場会社において、会社法と金融商品取引法の開示における財務情報を一元化することが開示・監査の質の向上にも繋がるものと考えている。また、会計基準の運用に関して、例えば収益認識の会計方針や会計上の見積もりの前提等についての経営者の考え方をより詳細に示すことで、経営者がそれらの会計処理についてしっかりと考えることに繋がるのではないか。

    IT技術を活用した監査技術の改善、独立した審査体制の構築等、監査の品質を低下させないために必要となるコストに基づく適正な監査報酬を確保することも非常に大事なことであると考える。

    会計監査人の教育研修については、そのレベルに応じて備えるべき要件・業務範囲を明確にすることや、監査チームの中での報告・伝達体制の在り方を再整理すること、各レベルに応じた教育体制がいかにあるべきかを明確にすることが必要ではないかと思う。

  • 現在、アメリカで行われているPCAOBによるモニタリングの前身は1970年代から始まった同僚審査(ピア・レビュー)であった。ただし、それだけでは業界のお手盛りになる可能性があるということで、AICPAの外郭団体として米国公共監視委員会(以下「POB」という)が1977年から1978年頃に設置され、独立公益機関としてピア・レビューの状況をモニタリングしてきた。しかし、POBが業界の資金拠出により運営されていたこともあり、エンロン事件等を機に、公益性、独立性が乏しいのではないかという批判が起こり、企業改革法の中でPCAOBが設立された経緯がある。

    当時も、事務サイドから見て、重複したモニタリングは大変だという意見があった。日本でも、審査会の検査と協会の品質管理レビューを1本化してもらいたいという声がある。今後、例えば、協会の品質管理レビューはやめて、全て審査会の検査で対応できるのかどうか。

    個人的な意見を申し上げると、やはりプロフェッションの業界というのは、自主規制の柱を失うと無力化するので、何らかの形で自主規制機関としての協会の機能が担保されなければいけない。そのためには、協会を、自主規制機関と互助会的な組織として改編することが必要ではないかと考える。例えば日本の取引所も、自主規制機関が独立している形となっている。自主規制機関である協会と審査会がもっと密な連携を図って、役割分担すべきと考えている。

  • 今の日本の監査環境、200を越える監査法人が乱立している状態は、やはりマーケットの規模からしても適切ではない。おそらく上場会社1社程度しか担当していない監査法人もかなりある。そうした中では質の高い監査は担保できない。当然、検査当局も中小の監査法人まで手が回らないこととなろう。

    したがって、日本の監査制度の品質を高め、国際競争力を持たせるためにも、良い意味で監査法人が淘汰されることが必要であると思う。そのためには、監査法人のガバナンス・コード等によって、上場会社を監査することのできる監査法人の実態を踏まえた適切なハードルというようなものを、第三者が納得できる形で設けるという流れは、当然あって然るべきではないかという気がしている。

  • 審査会の検査と協会の品質管理レビューに重複感があるのは確か。アプローチは違うにしても、ほぼ同様のレビューを受けているという感覚があり、両方が本当に必要なのかを検討するタイミングではないかと思う。特に、大手の監査法人については、協会の品質管理レビューに関係なく、相応の品質管理の体制を自ら構築している。

    もちろん、これが完璧でないから色々問題も起きるわけだが、まずは、監査法人としての内部統制を評価してほしいと思う。テストとして何社かの個別企業の監査について検査を受けるのは当然だと思うが、監査法人自らが品質向上のための環境を作るべきだという前提に立って、そのための仕組みがきちんと整備・運用されているのかという観点で見ていただきたい。

    企業のビジネス状況や財務諸表の重要な項目の中で、どこにリスクがあって、どの程度監査の手続をすれば良いのかをきちんと把握しているのか、決めたことを最後まできちんと使命感を持ってやり遂げているのか、監査の結果が出てきたときに、妥協することなく監査報告書に反映しているのか、といった大きなポイントを是非検査で見ていただいて、監査法人側も議論したいと思っている。

    各監査のプロセスや手続の数等に重点を置いていないことは分かるが、そういったところはそろそろ個々の監査法人の内部統制に依拠してはどうかと思っている。

  • 各監査法人において力量ある会計士をいかに育成するか、メリハリある監査が実施できるための環境をいかに確保するかが議論の本質だと思う。監査法人のガバナンス・コードの策定が1つの方策になるのであれば、イギリス及びオランダの監査法人のガバナンス・コードを参考にして、日本独自の監査法人のガバナンス・コードについて議論することが重要ではないか。是非、具体的な考え方や骨子のようなものをご提示いただいて、議論させていただきたい。

    監査法人に対する検査態勢の在り方については、監査法人自らがガバナンス・コードに基づいてきちんとした体制を構築したうえで、当該体制が実効性あるものとして機能しているのかを検査していくという考え方が筋ではないかと思う。

  • 先程からお話を伺っていると、問題は2つある。1つは、株主のためとは違った誘因で監査が行われたという誘因ベースの問題、もう1つは、会計監査人の品質を含む認識能力の問題である。後者の認識能力については、基本的には、監査法人等において監査の品質を高めるための努力をしていくことに尽きると思う。

    監査法人のガバナンス・コードというのは、イギリスやオランダの例を見ると、プロフェッションである会計士がこの程度のことを言われなければ分からないのかと驚くが、実益は不透明でも実害はなさそうだから導入するならそれでもよいと思う。また、先程のお話に出た監査の質の評価をするAQIのような指標は、検討されて然るべきだと思う。

    他方、前者の誘因ベースのエラーについては、我々が直面しているのは株主のためとはいえないインセンティブが会計監査に働いて、重大な事態に繋がったという話だと思う。そうした事象に対処するためには、順序として株主のガバナンスが監査や財務報告に働くような仕組みを考えるのが先ではないか。日本では制度上、会社役員の選解任も会計監査人の選解任も株主が決める仕組みになっていて、株主のガバナンスは形式上整っているものの、株主に情報や知識がなければ、権限は実質的なものにならない。だとすれば、株主が必要な情報や知識を実益に引きあうコストで入手できるような仕組みを、まず考えるべきではないのか。

    そういった仕組みを整えた上で株主の判断を待つことが重要であり、株主が十分な知識や情報に基づいて監査法人のローテーションは不要と判断しているときにまで、一律の制度でローテーションを強制するのは非効率だと思う。海外においては、株主が必要な情報を取得できる仕組みという観点から、保険を使うアイデアも出されている。会社の財務報告が原因で株主が損害を被った場合に、保険会社が損害賠償に対応する仕組みを作り、この保険の料率や支払い限度額を株主総会に提示する。株主が割に合わないと考えれば、別の監査法人に変える等の対応を考えるだろうという話である。また、先程のAQIが情報として提供されることになれば、株主はそれを参考に会計監査人を選解任できることになろう。

    また、日本においては海外と異なり、審査会の検査結果のフィードバックは協会どまりとなっていると認識している。合理的な理由があればそれでよいのだが、普段は外国の制度をそのまま受け入れたがる人々が、この部分については海外と違った仕組みにすることにこだわっているのだとすれば、その理由が良く分からない。

    他に方法がないのであれば仕方ないが、監査法人のローテーションに代表されるような画一的な制度は非常に危険だと思う。規制する側を含めて正しいやり方が事前にわからない以上、市場で多少とも異なるシステムが同時に使われているときに比べて、すべてが同じように画一化されている場合は、選択が間違っていたときの影響が大きく、対応は難しくなる。不必要な画一化が生じないような方法で、株主に情報とインセンティブを与えることこそが必要である。

    昨今コンプライ・オア・エクスプレインとかプリンシプルベースといったことがよく言われているが、これらについても、一度制度で決めてしまえば、結局大きな違いは無くなると思う。エクスプレインといっても、それを誰が審査するのかによって制度はすぐに画一化されるし、プリンシプルベースといっても、規制に使われていけば、事実上、必ずルールベースに収束する。そういった意味では、制度に組み込まれてしまうと、その選択が間違っていた時に大変なことになるので、画一化は必要最小限にとどめて、上手くインセンティブを付与する仕組みを工夫した方が良いと思う。

  • 監査法人は第三者的立場で監査をする一方で、監査先企業の内部の機関という性格も併存しており、そういった曖昧さが問題の背景にあるのだと思う。

    会計不正事案において、監査法人が適正意見を出さないと、株主や被監査先企業から訴えられるのではないかとの議論がなされることがあるそうだが、このような議論がなされるのは、監査の支えが弱いからであろう。そのような観点からすると、銀行の監督行政とは同列に論じられないかもしれないが、金融庁が金融検査マニュアルのようなものを作れば良いのではないか。これは官の力が非常に強くなるので、確かに自主規制の方が理想だとは思うし、その点で言えば、監査法人のガバナンス・コードが1つの選択肢になるのではないかと思う。監査法人だけではなく、企業の経営側も緊張感を持って対応するようになる効果があるのではないか。

    不正リスク対応基準では、「監査人は、不正リスクに対応する手続として積極的確認を実施する場合において、回答がない又は不十分なときには、代替的な手続により十分かつ適切な監査証拠を入手できるか否か慎重に判断しなければならない」とされているが、結局何をしなければならないのかがよく分からず、基準として実際に機能しているのか疑問である。また、監査事務所検査結果事例集をみると、監査事務所の最高責任者が品質管理基準の内容を理解していないために指摘を受けた事例が見受けられるが、これは大変驚きであり、通常の企業ではあり得ないことである。

  • 最近、監査役会等に会計監査人の選任議案の決定権が付与されたことなどにより関心が高まっていることもあり、監査法人が現在監査を行っている企業の監査役会等、あるいはこれから監査契約を結ぶかもしれない企業の監査役会等に対して、審査会の検査結果を開示する枠組みが明確にされている。今後、このような検査結果の開示は増えていくだろうと思う。

  • 3点申し上げたい。

    1点目は監査法人のガバナンス・コードについてである。監査法人のローテーションについては、海外でも必ずしもすぐ実施することとなっていないことを考えれば、それだけが解ではない可能性があると考えている。監査法人の仕事の中身がブラックボックスとなっていることから、それが改善しているということが外から分かる取組みが必要。この観点から、監査法人のガバナンス・コードの策定について検討することは大変重要。マーケットが重視しているのは監査の品質であるため、品質に重点を置く必要がある。そのためにも、監査法人の業務の効率を高めて品質管理のための時間を生み出す必要がある。IT投資や教育投資等が必要なのではないか。赤字法人ではこれらの投資を行うことができないため、監査法人がきちんと利益を上げながら、更に監査の品質を高めていくためのガバナンス・コードが必要。

    コーポレートガバナンス・コードに基づく開示状況は会社によってかなりのばらつきがあるが、荒削りながらも努力して開示しようとする会社が出てきており、利用者としては良い方向に進んでいるものと認識している。監査法人のガバナンス・コードにおいても、こうやれといったような押付け型ではなく、監査法人が自ら考え、実践し、ブラッシュアップできるようなソフト・ロー型にすべきである。

    2点目は当局の監査法人に対する検査態勢の在り方についてである。協会の品質管理レビューと審査会による検査という現在の2重のレビュー態勢については見直す必要があるかもしれない。現在の協会の品質管理レビューは、細かい手続の確認に終始し、チェックシート形式とでも評すべきものになっているという印象がある。これに鑑みれば、当局の検査について、監査の手続に重点を置くのか、それとも、監査法人全体の考え方や人材育成、あるいは審査などの監査手法をブラッシュアップしているかといったより大きな視点に重点を置くのかをよく考える必要がある。

    3点目は協会についてである。まず、協会が業界のまとめ役として監査のIT化の旗振り役となることを期待したい。例えば、伝票の突合等の作業のデータ化等について業界全体で検討する研究会の設置を協会において検討するとか、それに対して金融庁でモニタリングをするということができないか。あわせて、監査基準についての判断をどう行うか、不正の端緒をどう見るか、職業的懐疑心をいかに発揮するかといった監査の本質に関わる教育に力を入れることと、品質管理レビューの在り方を見直していただくことを期待したい。

    監査法人に対する信頼は、正に瀬戸際の状況にあると思っている。ここで各監査法人及び協会が襟を正して、自分達でより適正な監査をなし得る体制を作らなければならないのではないか。現在の状況については、非常に危惧している。

  • 2重のレビュー・検査については、両者の目的は異なるのだという声もある。協会の品質管理レビューはもともと各監査事務所の品質管理のレベルアップの目的からスタートして、それから指導、監督と変化してきた。確かに大手監査法人はレビューと検査をそれぞれ2年に1度受けることになって負担となっている面もあると思うが、協会の品質管理レビューと審査会の検査は、それぞれ内部管理体制の強化に役立つという話も聞いている。これはおそらく様々な意見があるところだとは思う。

    我が国では上場会社を監査する監査事務所は現在160事務所あり、共同事務所と個人事務所も監査ができることになっていることから、上場会社の監査をしている監査法人の数が非常に多いのではないかという意見があった。この点、アメリカにおいては、正確ではないものの、上場会社の監査を行っている事務所は、PCAOBに登録している1,000程度の事務所のうち、500程度ではないかと聞いているので、調べてみてほしい。

    協会としては、監査を強化する、資本市場の信頼性をしっかり守っていくという視点に立って、品質管理レビューの改善を行うとともに、倫理に重点を置いた教育を行ってきているところである。

    ITの活用についても、フォレンジック調査だけではなく、全件に対しITを使ってスクリーニングをかける、スクリーニングについて今までの監査の経験等を加える、更に外部のデータと繋げるといった手法について、現在IT委員会において検討を進めているところである。また、国際監査・保証基準審議会も同様の検討を行っており、大手の監査法人においては実務において試験的に進め始めているところである。日本がこの分野でイニシアチブを取れるよう対応していきたいと考えている。

  • 企業同士が結託して不正が起きるようなケースについて、反面調査の必要性が主張されることがあるが、そもそも被監査会社の経営サイドがどのような視点で財務報告に向き合っているのか、それに対して会計監査人がどのように厳格に対峙して、本来の使命を達成することができるのか、というのが議論の本質だと思う。少なくとも社会的に問題になる不正というのは経営上層部が関与した不正であって、それに対して内部統制が機能しているかどうかという点が重要。

    内部統制がパーフェクトだったとしても不正は無くならないと思っているが、できるだけ事前に防止する観点からは、経営トップに対して監視ができる機構・システム、具体的には、監査役、社外取締役、あるいは内部監査部門等がどのように真摯に役割を果たし、誠実な企業活動に貢献しているのかが重要である。

    三様監査(外部監査と監査役監査と内部監査)が本来の目的を達成するためには、3者の密な連携が必要である。会社法改正等に伴って、現在は、監査役や監査委員会が会計監査人の選定に当たって様々な情報を入手し、評価をしている。これからは評価基準をより具体的に作って対応するかもしれない。それはあって良いと思うが、逆に会計監査人が、統制環境の重要な一翼を担っている監査役会・監査委員会、取締役会、内部監査部門について十分に検証する必要があると考える。

    この点、旧来の財務諸表監査は、表示の監査であって、実態、行動、行為の監査とは違うという学術的な考えもある。しかし、ディスクロージャーの背後には人間の行動、活動、意識が必ず介在しているのだから、そこにきちんとメスを入れなければいけないと思う。

    そのために、監査役会、内部監査部門の信頼性の評価を内部統制の評価の中に入れていただきたい。その場合、監査役会が自ら内部統制の番人として意見表明を行い、会計監査人がその方たちと同等ないしはそれ以上の立場で意見交換をすることが重要だが、こうしたことはなかなか行われていないようである。形式的な監査計画の説明や監査報酬の決定に際しての事前説明などに留まり、形骸化している部分がある。なぜそうかというと、力量ある会計士が少ないからだということもある。堂々巡りになるが、やはり、然るべき能力と教育・教養、情報を持った、会社側からも一目も二目も置かれるような熟練した会計士が育つことが重要ではないか。

    そのためにどうするかとなると、今の制度ではなかなか難しいが、教育研修における形式的な単位認定だけでなく、研修内容の充実化が必要。そのためにも、協会の役割は大きく2つあり、互助会としての協会と、規制監督強化のための自主規制機関としての協会。そして、後者については、会員の規律を十ニ分にチェックするために、専門性を入れて、会員との利害関係を断ち切ったプロフェッションが介在するという方向性があるのではないか。

  • 反面調査については不正リスク対応基準のときにかなり議論・検討されたと聞いている。現状でも、反面調査とは言えないかもしれないが、例えば、継続企業の前提に関する評価において、取引先に対して直接確認をする手続は行っている。ただし、これは経営者が了解しないとできないし、取引先が拒否している場合は経営者の了解があってもできない。反面調査を監査のための権利として加えることは監査の強化には繋がるとは思うが、法制度上の問題、また、海外との関係の問題をクリアする必要がある。

  • まず、日本人のメンタリティというか、精神構造として、当事者、つまりクライアントを差し置いて、会計監査人が抜き打ち的に第三者の方に質問を行い、あるいは情報を入手するということが果たして、現実的に受け入れられるのかどうか。反面調査というと、我々はどうしても税務調査のような、官憲の力で事前に情報を入手する、あるいは途中で取引先に対して調査するということを思い浮かべるが、それは監査とは役割が違う。

    日本の場合、外部の会計監査人が関与する監査制度を導入したときも抵抗感があった。日本の監査制度は協調と協力、ないしは互助の精神の中で構築されてきたと理解している。それが結局馴れ合いのような関係になってしまったという批判もあるかもしれないが、そういった状況の中で、ただ単に何か疑義があったときに反面調査をして良いというのはなかなか無理があるのではないか。

    ただ、そういう要請ないしは手続上の課題があるならば、法律的な問題もあると思うが、何らかの正式な監査手続の1項目として書き込むことが必要だと思う。そうせずに単なる実務上の対応として現場に任せたり、特定の監査法人に任せたりするのは、会計監査人にとって非常に辛いものがあるのではないかと思う。

    正式な監査手続として書き込むことが可能ならば、また、会計監査人も実際にはそれに近いことをしていて抵抗感がないならば、そして、経済界に対しても説明がつくならば、必ずしも否定するものではない気がしている。

  • 反面調査は、色々な調査の中の1つとして位置付けられるのであれば、やっても良いのではないかと思う。ただし、そもそも反面調査に行く前に色々な基礎的な調査ができていないといけない。例えば工事進行基準について言えば、工程会議の情報をきちんと取れば、その工事が具体的にどう進捗していて、工事進行基準をどう適用すべきかは分かるはずである。

    最近の会計不正事案を見ても、会計監査人において、数字の背景にある事実を集める努力が相当不足しているのではないか。工事進行基準に限らず、分かろうとすれば分かるものについて、きちんと事実の確認を行うプラクティスを確立することが必要であり、そのための一環として反面調査もあるという位置付けかと思う。内部統制システムの話になるが、数字の背景にある事実をどう確認するかという議論をする必要があるのではないかと思っている。

    それがないと会計監査人は経営者や監査役、監査委員と実質的な対話ができない。会計監査人と経営者・監査役等との連携は、日常的に行うことが重要であり、不正が見つかったらすぐに手を打つということが会計不正を防ぐ要諦である。まとまった数字を見て、その監査をどうするかというのではなく、不正が起こっている最中にリアルタイムで手が打てるような、会計監査人として不正を防止できるような監査の在り方が非常に大事なのではないかと考えている。

    そういったことを監査法人のガバナンス・コードに書いて徹底していくことが、力量ある会計士の育成、各会計士が職業的懐疑心を適正に発揮できる環境の整備に繋がると思う。監査法人のガバナンス・コードの中身をどうするかが本論ではないか。

    現状では、日常的に会計監査人の相手をしているのは企業の課長クラスである。監査法人のガバナンス・コードを作るのであれば、会計監査人が経営者や監査役等と日常的にどのような連携をしているのかをきちんと書かせて、監査法人の評価に織り込むところまでやるべきだと思う。

  • 会計監査を巡る状況は危機的状況にあるという指摘について同感である。ただ、今初めてこういった事態になったわけではなく、過去にも問題事案が発生し、不正リスク対応基準の整備等の対応をとってきたにもかかわらず、同基準の中で典型的な不正リスク事案とされているような問題がまた起きている状況である。度重なる不正会計事案を見ると、この危機感が果たして監査法人において共有されているのだろうかと疑問に感じることがある。

    こうした事態の背景の1つとして、監査法人に対する外からの眼がないからではないかという議論がしばしばされる。そのため、第三者による検査や、ローテーションによってやがて別の会計士の眼に触れることが、監査法人に緊張感を与えるのではないかという指摘がある。監査法人において経営陣に社外の者が入っている例は少ないと思うし、多くの場合は会計士という同一の職業の人達でマネジメントが形成されている。監査業務も外からは中身が分かりにくく、外からの批判に晒されることも比較的少ないので、これだけ色々な問題が発生しても監査法人に変化が起きないのではないかという議論がある。

    このような議論についてどのように考えるか。これは監査法人のガバナンス・コードにどのような内容を含めるのかという話にも影響してくると思う。

  • 監査法人は日本独特のものだと思っている。監査法人は公認会計士法に基づき設立される特別法人であり、国家が背景にある。したがって、昔で言うならば親方日の丸的な発想で自分たちのグループだけの目線で物事が進んでいる面があるのではないか。また、監査権限を独占的に担っており、健全な批判を浴びるかもしれない競争関係の中に置かれていないという状況が要因としてあるのだと思う。

    少し飛躍した話かもしれないが、もっと大きな監査の枠組みの中で、監査業務を担う会計士を今よりもっと厳しい規律の中に置く一方、もう少し収益性が得られるような業務については、法人内にウォールを作って行うということが考えられるのではないか。つまり、1つや2つクライアントを失っても問題ないという財政的基盤を担保しないと、厳格な監査対応も上手くいかないのではないか。

    有限責任の監査法人は財務情報を公開しているものの、必ずしも潤沢な財政基盤が担保されているとはいえない。そういったことも総合的に考えれば、自ずから、外からの眼によってどのようなガバナンスを利かせるのかという議論に繋がっていくのではないか。監査法人をもっと競争関係の中におくことが必要なのではないかと思う。

  • 監査法人の中でも、自分達は閉ざされた世界にいるという危機感を持って、例えば外部の有識者をアドバイザリーボードや、マネジメントを監視する監視委員会に迎え入れているところもある。このような有識者の方々からは、監査法人の業績のレベルや社会の一員としてあるべき姿等について非常に有用な意見をいただいた実感があるが、監査の業務について、監査のやり方は十分であったか、出てきた問題点についての対応が十分であったかといった議論をするのは非常に難しいと思う。

    また、仮にそういった監査についての議論に入ってもらうとなると、会計監査人が守っている独立性の基準を同様にすべて守ってもらう必要があり、実際はかなり難しい。

  • 監査法人内がチームに分かれていて一体となっていないことが、内部管理がうまくいかない一因ではないか。また、会計不正があった場合に、役員が株主から提訴される一方で会計監査人は訴えられないケースがあるが、これも監査の緊張感を失わせる一因ではないか。

  • 大手監査法人は大体、監視委員会のようなものを設けて、そこに外部の方を入れていると認識している。やはり外から見て、監査法人がどういうものか分からない、監査業務もブラックボックスなのではないかというところが、未だにあるのだろうと思う。

    監査法人にも監査業務にも一定の透明性が必要だと思う。情報公開をするということはそれに対して責任を持たなくてはいけないことになるので、監査法人がやっていることを外に晒して何らかのチェックを受けることが重要だろう。監査法人の透明性向上を図る観点からは、監査法人のガバナンス・コードは、イギリスやオランダと同様、一定規模以上の監査法人に対象が限られるとしても、1つの施策として効果があるのではないかと考えている。

    監査業務のブラックボックスについても同様で、監査報告書にどういうところに着目して監査をしたかということを書くだけでも、かなり透明性の確保に繋がると思う。企業との軋轢がかなり生じるのではないかと想定されるので、十分に検討しなければならないとは思うが、監査の透明性の観点からすると、自分たちが何をやってきたかを外に明らかにするという意味でかなり効果があるのではないか。

(以上)