金融仲介の改善に向けた検討会議(第4回)議事要旨及び配付資料

議事要旨

1.日時:

平成28年5月23日(月)13時00分~15時00分

2.場所:

中央合同庁舎第7号館 13階 共用第1特別会議室

3.議題:

  • (1)企業ヒアリング・アンケート調査の結果について

  • (2)企業ヒアリングを踏まえた地域銀行との対話について

4.議事内容:

議題(1)及び(2)に関する事務局による資料説明等に続いて、以下のような議論が行われた。(○:メンバーの発言、●:当庁の発言)

  • 信用保証協会が、債務者と会わず書類審査だけで貸すというのは問題だと思う。仕組みを考えた方が良い。

  • 事業性評価の取組みにおいて、地域金融機関のレベルを上げるなら、トップのレベルを上げることが必要である。すなわち、議論すべきはガバナンスの問題になり、業態を問わず、トップが年次の順番で決まっていたり、漫然と天下りを受け入れていたりするのは、昔の護送船団行政の時代は良かったかもしれないが、今はそれでは良くない。

  • 地域金融機関はリテールバンクなので、業務の効率性を追求できる部分は殆ど装置化できるはずで、機械に任せてしまえば良い。そこは差別化できない効率化追求の領域になっており、銀行間で協力するなどして、同じ設備に乗った方が良いのではないか。

  • 事業性評価の話は、地域企業のホームドクター的な機能を果たせますかということが問われている。営業店で人間がやるべき仕事は、将来もAIに置き換えることができないような仕事であり、ホームドクターが備えていなければならないのは、お金と知恵と人だと思う。それらを全部自力で備える必要はなく、専門家の力も借りてやれば良い。やる気と指導力のあるトップがいて、プロフェッショナルなサービスを提供できる人を営業店に配置すれば、他の仕事は機械化されていくのではないか。

  • 一方で、企業側が相談する相手となる地域銀行が、アベレージな情報を持って、アベレージなリテラシーで、アベレージな経営をすれば、生産性や成長性というのを底上げできると思う。

  • 地方には資金需要が潜在的にはあるのだが、多くの地域があまりにも敗北主義となっている。人口が減少して人手不足になっているからこそ、今が投資チャンスというのは地域にいくらでもある。だから、何故それを真面目に捕まえに行かないのかというのが私の根本的な問題意識である。

  • 資金が地域金融機関に滞留しており、生産性を軸にした、それを高める成長資金に回すべきで、資金需要がないというのは間違いだと思う。今の地域の企業の経営のレベル、あるいは、長年所得再分配型のマーケットに慣らされてきた人達の経営感覚で言えば、確かに資金需要はないが、それから一歩先に出て、新しい市場をつくる、あるいは生産性を高めるという視点に立った瞬間に、いくらでも資金需要はあるので、地域金融機関がそこに目が向けられるかどうかが本当の勝負となる。

  • ドメスティックな産業に関して、メガバンクにはあまりこれ以上期待できないので、地域インフラの整備には、もっと地域金融機関が積極的に出てくるべきだが、残念ながら地域金融機関は出てこない。

  • 手数料の問題というのは1つの典型例だが、金融の世界では、情報の非対称性に乗じて儲けるモデルが成り立っている。ネットの世界に移行していくと、非対称性はなくなって利益が出なくなると思うが、地域金融機関は地域、住民と長くつき合ってやっていく会社なので、そこで情報の非対称性に乗じられては利用者に不利益が生じる。

  • 頭取との対話の結果、これだけ具体的に様々な取組事例が出てきているように、いかに頭取から実態を聞き出せるか、財務局が銀行と真剣勝負をされており、この緊張感が非常に良いと思う。

  • 地方創生などで果たす金融機関の役割というものをこれから大きくしていってもらいたい。そうすると、企業の新陳代謝がもっと行われなければならないと思う反面、調査結果にもあるように、信用保証協会などに問題を丸投げしていては、真の地方再生には繋がらない。要は、地方創生に向け、生きた金を流す、或いは、畳むべき企業には廃業を促すといったように、真の意味でのプロフェッショナルな役割を果たして欲しい。

  • そのためにも、あらゆる角度から個別の金融機関を見ていくことはすごく大切である。

  • 金融分野、特に金融機関においては、情報が非開示の中、金融庁でも地銀等に対して情報開示を促す様々な取組みを行っていると認識しているが、やはり、顧客が主体となって金融機関やその商品を自主的に判断し選択できるような情報開示をしていくことが非常に重要であり、資本主義国家が進む今の時代は、そういう大事なインフラを作っていく時期と思う。

  • 企業ヒアリング及びその結果を踏まえた地域銀行の頭取との対話については、時間軸を持って継続的に取り組んで頂きたい。但し、対話の結果を見ると、対話を行った全国の財務局間で内容にバラツキがあるので、論点をある程度絞った方が良いと思われる。

  • 今回、報告を頂いた企業ヒアリングの結果と地域銀行との対話の結果を見ると、銀行を次の三つのパターンに区分できるのではないか。一つ目は、融資先企業からの評価が良く、頭取との対話においても良い取組みが確認できた銀行(Aパターン)、二つ目は、企業の評価は悪いのに、対話の中で頭取が格好のいいことを言っている銀行(Bパターン)、そして、両方共に悪い銀行(Cパターン)である。

  • この三つのパターンのうち、Aパターンの銀行に対しては優良金融機関として徹底的に表彰すれば良く、反対に、Cパターンの銀行については検査・監督でしっかりと見てもらえれば良い。問題となるのはBパターンの銀行で、相当数がここに当てはまるのではないかと考えている。Bパターンの銀行に対しては、継続的に頭取との対話を行い、徹底的に問題点を議論して頂くのがポイントになると思う。そこで、Bパターンの銀行と議論する上でのポイントを四つほど申し上げる。

  • 一つ目は、ガバナンスやサクセッションプラン、役員人事に問題を抱えており、トップのワンマン体制やお友達クラブの役員となっていないか。二つ目は、業績評価、人事考課に問題を抱えており、現場はパワーセールス、ノルマ漬けとなっていないか。三つ目は、現場が悲鳴を上げていて、若手行員の早期退職が非常に多くないか。四つ目は、業況の厳しい先については信用保証協会に丸投げ、或いは回収に奔走しているなど、事業再生支援の取組みが不十分なものとなっていないか。

  • 金融機関の支援を必要としない企業の声を聞く必要はなく、やはり業況が相当厳しい企業に対して、ヒアリングやアンケートを継続的に行い、その結果について、金融機関のトップの認識をヒアリングで確認する。そして、そこのギャップが出るBパターンの銀行に対しては徹底的に議論して頂くのが一番良いと思う。

  • 経営者保証ガイドラインの目的はリスクを取れるようにすることであり、アンケート調査では、銀行の説明責任としてガイドラインを知っているかを聞くだけでなく、積極的に借りるようになったかも聞いてはどうかと思った。

  • 優良行は定量評価よりも定性評価を重視しているということなので、同様に、金融庁が金融機関を評価する際にも、定量ではなく定性・プロセス評価を是非やって頂きたいと思う。

  • 金融機関の若手職員の退職が多いとの話があるが、昨年、私が行った銀行職員向けアンケート調査では、企業支援に対する人事評価ウエイトが高い金融機関の方が、職員も平均的にやりがいがあると答えていた。地域金融機関に勤める人は、元々地元企業を応援したいと思っている人達なので、そうした支援が出来て、実際に評価してもらえることがやりがいに繋がっていると思われる。今後の金融機関ヒアリングでは、トップだけでなく、現場・若手の職員の気持ちを聞けるようなヒアリングもできれば良いと思う。

  • また、メインバンクを最近変えた企業に、変えた理由を聞いてみるのはどうかと思う。メインバンクを変えたのは、金利が安いからではなく、他の理由によるのが多いのか否かを知ることは、金融行政的にも重要であると思う。また、地域の中核となる企業をより伸ばす観点から、地域で実際に成長した中核企業、上場した企業などに対して、成長促進の観点で金融機関に何が出来ていたかを調査してはどうかと思う。

  • 優れた取組みを行っている銀行に対して、成功や失敗とか、時間をかけてどのようなプロセスでその組織能力を身につけたかをヒアリングしてはどうか。優れた取組みのできている銀行とそうでない銀行で何が違うかをあぶり出すと、トップの資質、危機意識の強さ、人事面とかが出てくると思う。現象面が出ている奥にある、組織を動かしている根幹の一番大事なところをあぶり出していくと、銀行のどこを改善すれば良いかが見えてくるのではないか。

  • 組織は、構成員が自分の仕事は何で、何をすれば評価されるのかを分かっていて、実際に仕事をして評価されるということが順番に回って、組織は変わっていくので、時間がかかると思う。組織の構成員が正しい道を理解するまでのプロセスを、いかに丁寧に作っていくかが大事である。

  • Aパターンの銀行(良い取組みをし企業からの評価も高い銀行)については、お客様の評価、行員の評価、株主の評価を総合した企業版の360度評価を、銀行が自ら行い公表するようにできれば良いと思う。金融庁から聞かれるのは本来銀行としては情けない話であり、銀行自らがステークホルダーの声を聞き、その課題点を反省して改善するコミットメントを行うことはAパターンの銀行ならできると思う。それで金融界を引っ張っていく流れができると、他行への改善プレッシャーにもなると思う。

  • Aパターンの銀行に従業員アンケートを行えば、社員・行員のやる気が高いという結果になると思う。こうした取組みを通じて「ここがまだ低いので直していく」というコミットメントを各銀行が行っていく仕組みづくりが、金融行政の一環としてできれば良いと思う。

  • 本業支援というのは、広い意味でのコンサルティングになるのであろうが、現在の地銀が持っているスキルは低く、メガバンクと比べても圧倒的な差がある。少し難しい案件になると専門家に丸投げしてしまう傾向が強く、スキルが蓄積される環境にない。

  • その一方で、行員が顧客のところに足繁く通い悩み事を聞くなど懸命に汗をかくことである程度の結果が出るということを、企業ヒアリングやアンケート調査の結果が示していると思う。

  • 反対に、結果が出ていない銀行は、本当に何もしていないと思わざるを得ない。結局、その差は経営陣の意識に拠るところが大きく、取締役会や経営会議で実際にどのような議論がなされているか見てみれば違いがつぶさに出てくると思うので、何らかの方法でそれを確認してみると良いと思う。

  • 社会が成長している時は、成長資金を供給することで、銀行(貸し手)と顧客(借り手)との間にWin・Winの関係が出来ていたが、社会が成長しなくなった今日では、稼がなければならない銀行と必ずしも借りる必要のない顧客といったような利益相反性が高まっているという側面もある。

  • 顧客との関係は、Win・Winでなければ利益相反となる。金融機関は、顧客との信頼関係の下、長く付き合っていくことを本業としているわけであるが、目先の利益を追求するあまり、リスク商品を販売したり、顧客に資金需要が無いにもかかわらず頼み込んでお金を借りてもらっているなど、利益相反性の認識が低いと感じざるを得ない。金融機関の本来あるべき姿について一度議論する必要があると思う。

  • トップの力量に求められるものとして、経営としての捨てる決断がある。事業性評価など新たな取組みをやろうとすると、現場は忙しくて出来ないという話が間違いなく出てくる。その時に、今やっているこのサービスはやらないということをトップが決断し、かつ、現場に言い切ることで、営業現場や営業本部に新たな施策を浸透させられる。

  • 銀行が提供しているサービスの中で、顧客から見て要らないもの、優先順位が低いものを次回以降のアンケートで聞いてはどうか。営業の現場を効果的に動かすためには、今やっているものをうまく捨てさせて、時間を作らせることが非常に重要であり、そのために、こうしたアンケート結果なども一つの材料として提供できないかと思う。

  • 事業性評価、あるいは経営相談について、簡便なものから専門的で高度なものまで大きな違いがあるように受け止めている。簡便なものであっても、企業からみれば役立つことが多いと察せられる一方で、より高度で専門的なサービスを求める企業もあるはず。そうした幅広いニーズに対応できるように銀行組織のあり方を見直していくべきである。

  • データ分析についていえば、金融業界ほど分析がなされていない業界はないように思う。通信も電力も自分たちの業界についてデータ分析をしてレギュレータにあるべき論で働きかけたはず。地方銀行はそうしたことはしていない。単独行で出来ないのなら、地銀協などでそうした取組みをすべき。

  • 良い取組みをしている銀行においても、最初は失敗の連続で、効果が出るまでには何年もかかっている。取組みに即効性がないことをまずは理解しておく必要がある。

  • 企業ヒアリングの結果で問題と感じたのは、約3割の企業が金融機関に全く相談していない、或いは相談しても意味がないと回答している点である。先ほど話のあった優良な取組みをしている銀行ですら支援先のカバー率が僅かということを考えると、殆どの取引先の面倒を見れていないわけで、当然銀行の認識と企業の評価にミスマッチが出てしまう。この点については今後掘り下げていかないと解決していかないと思う。

  • ある学会で、地域金融機関の問題をテーマで取り上げた際、金融庁の方針が二転三転するので金融機関は十分に対応できていないのではないかという話が出た。発言の真意は、ルールベースからプリンシプルベースへの転換、事業性評価の取組み重視といったように、金融庁の目線が変わってきたことを捉えた発言であると思うが、学者でさえこのような受け止め方をしているのであれば、当然、民間の地域金融機関にも同様の受け止め方をされている可能性もあるので、情報の共有を徹底する必要があるということも1つの課題ではないか。

  • 顧客本意の良い取組みを行っている金融機関に、そうした取組みを始めた理由をヒアリングしたところ、トップのイニシアチブ、リーダーシップが大きいことが分かった。

  • そうした金融機関の多くは、このまま続けていたらまずいとの危機感があり、人口減少が進んでいる地域など経営環境が必ずしも良くない地域の金融機関に、ユニークな取組みをしている事例が意外と多いことも分かった。

  • 顧客のニーズに対応したソリューションの提供等リレーションシップに基づく経営方針に変更する銀行では、投信販売や貸付け額といったノルマに重きを置かなくなるので、足元の売上げは落ちていく懸念がある。多くの頭取は、それが嫌なのではないか。そうした経営者は、足元の売上げが減少しても顧客基盤が強固になるなど中期的な経営のサステナビリティにはプラスに作用することを軽視しているのではないか。

  • リレーションシップバンキングに真剣に取り組んでいる銀行には、業績評価手法や組織形態などで共通項があり、そうでない銀行と明確な差がある。そこで、ベンチマークとして、例えば事業再生のための活動をどのぐらいやっているかとか、客観的に見てとれるデータをとって、それをベースに金融機関と対話をしていくことを考えている。

  • 各銀行の取組みには相当な差があるので、良い取組みをしている銀行は、そうした取組みを積極的に開示していくことで、頑張っている銀行とそうではない銀行がお客様にとっては分かっていくような形になればよいと思っている。

  • 金融機関は未だにお客様でなく、金融庁がどう言うかというのが先になっていて、それをより顧客に向き合うよう変える必要がある。

最後に、本日の議論を踏まえた牧島内閣府大臣政務官の挨拶

  • 「Aパターン・プレッシャー」というのが1つのキーワードになるのではないかと感じている。成功しているモデルが既にあるので、プロセス含め、どの程度共有できるのか注目していきたい。金融機関全体としての情報共有、開示のあり方が大切と感じている。

  • また、生産性向上というのも、本当に重要なことなので、プラットフォームの中に効率化というキーワードも入れながら考えていきたい。それが、サステナブルな金融機関、更には成長の可能性のある地域金融機関へのエールになれば良いと思っている。

以上

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金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

監督局総務課 地域金融企画室

(内線2244、2246)

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