平成13年7月24日
金融庁

企業会計審議会第10回第一部会議事録について

企業会計審議会第10回第一部会(平成13年6月1日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第10回第一部会議事録

日時:平成13年6月1日(金)午後2時02分~午後3時58分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○斎藤部会長

定刻になりましたので、これから第10回の第一部会を開催いたします。委員の皆様方には、お忙しいところお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

本日は、前回ご説明いたしましたように、本日はお手元にお配りしております論点整理の原案についてご審議いただく予定にしております。

この原案は、これまでの議論を踏まえて論点を文章化したものでありますが、あくまでも論点整理のたたき台でありまして、本日のご審議を踏まえて修正を加える予定でおります。その点につきましてはあらかじめ申し上げておきたいと思います。また、文章等も既に非常に気になるところがたくさんありまして、これから多々修正することと思いますので、その点をあらかじめお含みの上、ごらんいただきたいと思います。

原案の準備に当たりましては、黒川委員、小宮山委員、西川委員、山田委員、大日方委員、金井委員、松岡委員には特にご協力をいただいております。各委員におかれましては、お忙しい中ご協力いただきましてまことにありがとうございました。

それでは、原案について事務局から簡単に説明していただきたいと思います。

○辻前企業会計専門官

お手元の「委員限り」とある資料について簡単に説明させていただきたいと思います。

まず最初に、全体に関することから説明させていただきます。まず、この原案の趣旨ですが、基本的には企業結合会計について検討すべき論点を整理して、提示するというスタンスに立って準備しております。そのため、個々の論点につきましては、意見や結論を記載するよりも、検討の必要性や検討に当たってのポイントを記述しております。また、重要な論点につきましては必要な説明をしなければならないという観点から、それに付随する派生的な論点については集約して書いてあります。

それから、部会で出ました皆様からのご意見については、原案の全体にわたって組み込んでいる形になっておりまして、まとめてどこかという形はとっておりません。

それから、これを公開するという観点から、一般の方が論点を理解するに当たって、その前提になる事項とか、検討の背景について説明する必要がありますので、簡単に記載しております。その上で補足的に必要な情報と思われるものにつきましては、参考資料として末尾につけることを考えております。

原案全体として、簡素化する作業を重ねてきたわけですが、そもそも企業結合会計の論点自体が相当のボリュームがあり、それぞれ難しい内容があることと、企業結合会計の検討自体が既存の基準を改訂する作業ではないので、基本的な事柄の説明から必要になってくるということで、現状このような量になっております。

特に用語の使い方や文章の表現については、まだ校正の余地が残っている面がありまして、それらについては次回までに手を入れたいと考えております。

それから、最終的に公表するに当たり、体裁をこれから変更する予定でおります。

次に、全体の構成ですが、1番目に検討の経緯、2番目に基本的な認識、それから、3番目「企業結合会計の論点」が論点整理の本体でございまして、重要な論点を(1)、(2)、(3)、(4)と大きく4つに分けた上で、その中のそれぞれについての論点を整理しております。記載していない細かい論点については、今後これらの論点を検討していく中で検討が進められていくという考え方に立っております。

最後の4番目が参考資料ですが、本日はまだ準備ができておりませんので、次回の部会の際にはご提示できるようにしたいと思います。

非常に簡単ではありますけれども、事務局からの説明としては以上でございます。よろしくお願いします。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

事前にこの論点整理ペーパーのたたき台はごらんいただいていると思います。本日は特に順番を設ける予定はありませんので、どの点からでも結構でございますし、また、どなたからでも結構でございますので、どうぞご自由にご発言いただきたいと思います。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

1つは、3ページの「基本的認識」の「企業結合の重要性の増大」でございます。ここに企業結合会計を検討する動機や目的が書かれていますが、もう少し書き込んだらどうかと思いますのは、企業結合に関するディスクロージャーが、我が国ではまだ課題をたくさん含んでいるということと、一連の商法改正や税制改正の説明のくだりがございますけれども、例えば商法の時価以下主義と改正税法の時価または簿価主義をはっきりお書きいただいたらどうかという点でございます。税を前提に、今の企業の統合・結合、いろいろな判断なり事務処理をやっているつもりでございますけれども、4月1日から新ルールができて、これからいろいろな細目その他できてくるわけでございます。こういう税の関係等に対して、企業会計の取り組みに追加して書き込むことが必要かと考えます。商法の時価以下主義については、後でこれは3項か何かに出てくるのですけれども、税法への言及はこの後余りないものですから、実務界は税も頭にあるということをご認識いただければと、これは感想でございます。

それからもう一つ、5ページ目に気になる表現があるのですけれども、5ページ目の(2)のところで「最近の国際的な動向」というところの2行目に、「最近では会計処理方法を一つに限定しようとする議論が国際的に広まっている」というのは、書き過ぎかと考えます。まだ米国FASBの公開草案が実態だと思うのでありまして、例えば米国FASBの公開草案では、会計処理方法を1つに限定することを提案している程度の客観的な端的な表現にとどめておいたらどうかというのが、感想的でございますが、とりあえず2点でございます。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

ほかにご発言はないでしょうか。どうぞ。

○辻前企業会計専門官

今の2番目の方ですが、「国際的に広まっている」とした趣旨は、G4+1の何カ国かの有識者の方々が集まって、パーチェス法に統一しようという方向で議論を行ったという点をみて書いておりまして、議論自体は国際的によく知られているという認識でございますので、表現は検討いたします。

○八木委員

G4+1は、われわれはあくまでも非公式な団体だと認識しております。

○斎藤部会長

どうぞ、安藤委員。

○安藤委員

まず関係者の方のご尽力には敬意を表します。今回は論点整理なので、これは「案」を取ってエクスポージャーするわけですね。それで、論点整理という形で1回さらして、2段目で基準の案をつくってという2段階方式というのは何回行われたかわかりませんが、これを見た限りでは、着地点が全然わからないですよね。この審議会ではこういうところを注目してというか、論点として意識して議論していますよという、むしろメッセージ効果の方が高いのではないかと私は拝見したんです。フレッシュスタート法はとらないということだけは私は読めたのですが、そういう読み方でよろしいでしょうか。

○斎藤部会長

今後のスケジュールについては、事務局の方でお願いします。

○辻前企業会計専門官

最近やってきた方法だと、次に公開草案というスタイルをとっていたんですが、今回の論点整理はそれよりは前段階的な位置づけになりますので、この先の審議のやり方は、従来のやり方を踏襲するのも1つの選択肢ですし、また別のやり方というか、中間報告のようなものを出すやり方も考えられないわけではありませんので、その点はこれから検討していきたいと思います。

ただ、これまでの部会の審議をお聞きしている限りでは、それほど細かい点について総意が得られているというようでもありませんし、企業結合会計自体非常に論点も多いし、難しい面が多いということで、このような論点整理というのも十分社会的な意義はあるのではないかと考えております。

○斎藤部会長

安藤委員が指摘されたメッセージについて強いて言えば、八木委員のご発言もございましたけれども、世界的に見て従来よりはパーチェスへの傾斜が進んでいる。そのときに、パーチェスをなぜ選択するかという議論を十分検討していくと、その議論の結果から、1つはパーチェスへの完全な一本化というのはやはり理屈の上で難しいということと、もう一つは、フレッシュスタートはやはり理論的に無理があるという2点がはっきりしたメッセージになるのかなという感じがいたしますが。

万代委員、どうぞ。

○万代委員

2点お伺いしたいんですけれども、1点は17ページののれんの本質のところです。合併会社の既存事業の超過収益力がある場合にのれんが発生するというところが、よくわからないので教えていただきたいということと、もう一点は、18ページの下「負ののれん」のところですが、ここでは直接間接いずれにせよ、利益処理としか書かれていなのですが、従来我が国の個別ですと、合併差益という問題もあったかと思うんです。これはもうパーチェス法は取得だから資本取引とは関係ないということで、合併差益についての検討がここではなされないのか。そのあたりのことを少しお教えください。

○斎藤部会長

これは該当部分の起草に当たられた大日方委員からお願いします。

○大日方委員

まず、ご質問の第1点目です。合併会社の側の既存事業の超過収益力が合併の会計処理の貸借差額に入り込むというのは、一番単純な例は、1つの財を現物出資で受け入れて、それで新株を交付するという状況をお考えいただければいいわけです。そのときに、もしも自分でその資産を買ってくれば、当然そのときの支出額・フェアバリューで評価されることになりますけれども、現物出資を受けた場合にはさまざまな測定方法が考えられ、ここでの株式の交換による企業結合になぞらえて言うと、新株を発行したときに、その新株の株価で現物出資で受け入れた資産を評価する。その場合には、資産のフェアバリューではなくて、その企業がビジネスに投下して得られるであろう超過収益力を、出資段階から織り込んでしまうのが普通なわけです。したがいまして、合併のときにも受け入れた資産が、その被合併会社において既に生じていたのれんを当然含むということは、皆さんもよくご理解いただけると思います。その後、合併会社の側で生じるであろうのれん部分が、株式交換でプレミアムを払うという方法によって、合併の会計処理の貸借差額を大きくする方向でそこに入り込む可能性があるということです。もちろんご説明したときにもお話しいたしましたが、この3つの要素を数量的に分けることはできません。これは渾然一体となって入ってきてしまっているということであります。

なぜこのことが書いてあるのかというと、貸借差額にあたるのれんの全部が費用であって、だからそれを償却するんだというのは先入観にすぎないのであって、本来は当初から計上させるべきでない部分、つまり、これは前の方で書いてあるわけですけれども、増加する資本と受け入れる純資産のフェアバリュー等を比べて、いずれか低い方に取引総額を規定した場合には差額が生じないのでのれんも生じないわけです。そういうことも視野に入れつつ、のれんが計上されるのが当たり前であって、それは必ず費用になるというわけではないことを確認しているところでございます。

2番目ですけれども、この書き方は(2)で「のれんの会計処理方法」という書き出しになっておりますが、正ののれんを念頭に置いて会計処理を一通り書いてあるわけです。負ののれんはどこに書いてあるかというと、長いので柱を変えまして(3)で書いてあります。合併減資差益は、恐らく負ののれんについて、ミラーで言うと正ののれんが払い込み資本から控除される関係上、逆に足すことになるのかと思います。それに触れていないわけではないのであって、負ののれんについては、負ののれんに固有の論点をここに書き出してあるということです。したがって、従来のその部分については、A、B、Cのところで控除すると書いてありますけれども、これがミラーになれば足せばいいということですから、ここにすべて含まれているという理解です。

○斎藤部会長

八木委員、どうぞ。

○八木委員

利益留保性引当金が19ページの上から4行目に書いてあるんですけれども、この利益留保性引当金という、我々の実務の常識であってはならないようなものも、ここでまたそれについて格別な議論をしていくという趣旨でお書きになっているのか、理論的なことを表現しておられるのか、その辺が実務の面からすると気になったところでございます。

○斎藤部会長

大日方委員、ご発言はございますか。

○大日方委員

これは原案であった文章を差し障りがあるのではないかということで書き変えているのですけれども、これは当初の原案ではリストラ引当金としておりました。利益留保性引当金があってはならないことということですが、現にやられておりまして監査上も適正扱いされております。したがいまして、その点、要らぬ議論を惹起しないように、利益留保性引当金ということにさせていただいております。

○斎藤部会長

引頭委員、どうぞ。

○引頭委員

のれんの償却の(2)のC3の減損処理の問題について、これはもう本当にこのとおりだと同感しますが、この中で、のれんを償却しないことによって、要するに総資産がずっと膨らんだままになってしまうという論点を入れることはできませんでしょうか。利用する側としては、償却の仕方がどうかよりは、トータルな資産がこれからどうなるかが大事なことだと思います。

○斎藤部会長

即答は難しいので、検討させてください。

中島委員、どうぞ。

○中島委員

全体のまとめ方は、私は全く異論がありませんので結構だと思うんですけれども、1つ、15ページの一番上のところに、パーチェス法で前のページにある時価発行して現金を取得して購入したという擬制をするとということで、ただ、その擬制を採用するなら、識別可能無形資産の取得が認定された場合、通常は繰延べが認められていないものについては即時に償却しなければならなくなると書いてあるんですが、こういう擬制を用いた場合に、なぜ即時に償却しなければいけないということになるのか。その辺の結びつきが必ずしもよくわからないので教えていただきたいのと、それから、13ページの真ん中のパラグラフに持分の継続の話が書いてあります。持分が継続しているという意味で企業が継続性を絶たれていないかぎり云々と、こう書いてあります。何となくわかるような気がするんですけれども、正確につかめないところもありまして、全体として、先ほど万代先生がおっしゃられたり、あるいはそれから八木さんからもう少し書き込んだらどうかというお話もありました。論点整理として、私は多少長くなっても構わないので、一般の方が読んだときにわかりやすいように、少し丁寧に書き込んでいただいてもいいのではないかという感じがいたします。

以上です。

○斎藤部会長

第1点については、大日方委員、ご発言がありますか。

○大日方委員

これも私のご報告のときに説明申し上げたことの繰り返しになるんですけれども、現行のアメリカの草案ですと、識別可能無形資産をできるだけ積極的に計上する。つまりそれはのれんを減らすという方向ですけれども、その結果、無形資産はそれぞれの性格に応じて償却期間を定めて償却されていく。その際に、パーチェス一元化のときに使っていた説明の仕方が、現金買収と同じだということです。そこでは、無形資産も現金購入取得したということになるわけです。そうしたときに、現金購入取得した無形資産について、例えば法律上の権利、その他に分離して転売可能な法律上の権利であれば、通常は繰り延べが認められているわけです。例として適切なのかどうかわかりませんが、審議会で例として出てきたソニーさんのアーティストの契約権。契約していることによってオプションの価値があるということで計上されているかと思いますけれども、それは通常は契約するときに付随した事務手続費用みたいなものは計上できても、それ以外の継続、維持にかかわるものについては営業費用になっているはずである。繰り延べられていないわけです。つまり、全部自分で支出して買ったのと同じだということであるとするならば、その繰り延べが認められていないものに振り当てられた無形資産の対価、つまり取得対価という形で振り分けられた部分は即時償却しないと、パーチェスを一元化するために使ってきた説明原理と矛盾してしまう。つまり、現行のFASBの草案は、その内部矛盾を含んでいるということのメッセージなんです。

○中島委員

その前のページにある時価発行云々の擬制ということと、そういう説明の仕方をするとということなんですか。

○大日方委員

そうです。その擬制を採用すると即座に償却しなければならなくなってしまって、アメリカ基準そのままという方針は最初からあり得ないということです。

○中島委員

識別可能資産でなければ、差額としてのれんに行くわけですよね。のれんの場合も自己創設のれんは認められない。ただ、取得した場合は、それはのれんとして資産計上できるわけですよね。それとの関係というのはどうなるのですか。

○大日方委員

つまり、それはパーチェスを現金買収になぞらえているから間違っているわけです。伝統的にはそういう形でのれんを考えてきたわけではないわけです。つまり、基本的には有形財に配分し切れなかった差額であって費用性支出であるとは見ているわけですけれども、現金支出だという言い方をしていないわけですよね。あくまでも対価としての取引価額のうち割り当てられなかった部分であって、それはいずれ費用になるとは言っているのですが、現金支出に殊さら還元していないわけです。ですから、ことさら現金支出だというフィクションを置くと、ご指摘のとおり、のれんの処理も非償却で減損だけで対応するという点についても、つじつまが合わない可能性もあるのかもしれません。

○中島委員

いずれにしても、何かもう少し説明を加えていただいた方がいいかなという気はします。

○斎藤部会長

中島委員がおっしゃられた第2点ですね。13ページの、持分が継続しているという意味で企業が継続性を断たれていない限りというところも、なかなか説明の難しいところでありまして、これは基本的にはゴーイング・コンサーン、つまり継続企業であれば、その資産等についての評価替えは普通しないということを言っているだけなんですね。ただその場合の問題は、継続企業ということを言う表現の仕方で、しばしば事業は継続していると言われることがあるんですが、事業の継続ということですと、例えば継続企業が事業の中身を全部変えることもあるわけです。となると、ゴーイング・コンサーンの基本的な要件というのは、従来からの持分が一たん清算されることなく継続しているということで、そのゴーイング・コンサーンとしての条件を満たしている場合については、通常は保有資産等の評価替えが行われないということを言いたいだけなんですね。それを言うのに大変苦労している部分でございますので、もう少し考えさせていただきます。

○辻前企画会計専門官

中島委員からお話があった、わかりやすく書いてほしいところは、このあたりというのがあったらお教えいただきたいと思います。

○斎藤部会長

山田委員、どうぞ。

○山田委員

19ページの、先ほども話題になった、上から4行目のなお書きの「負債の評価に関連して、偶発損失や利益留保性引当金の問題にも留意しつつ検討する」、この「留意しつつ検討する」ということの意味ですけれども、その1行目からの文章ですと、いわゆる直接利益に発生時に配分する(一時か、配分か)、それから間接的に償却するかという2つの方法がここに例として挙がっているんですが、IAS22号ですと、このリストラ引当金のようなリストラするときにかかるコストを前提にして、受け払いの対価が低くなったがために負ののれんが生じた部分については、そのリストラならリストラという行為が起こった時点にまで引っ張って、それが起こった時点で償却をするという、内容を分けた償却を規定として持っておりますけれども、留意しつつ検討するというのは、そういう方法についても検討するという意味合いを含んでいるのでございましょうか。

○斎藤部会長

非常にあいまいな表現ですが、網を非常に広く打っているという感じですね。

○山田委員

上のところで直接に利益処理する方法か、間接的に利益処理する方法という書き方で、いずれにしろ利益に戻しますが、その配分が非常に異例なものが念頭にあることさえ確認できれば、文章に入れていただく必要はありません。

○斎藤部会長

わかりました。検討させてください。

西川委員、どうぞ。

○西川委員

負ののれんの2行目のところに「負債の評価との関連に留意して」、なお書きの方でもまた「負債の評価に関連して」という言い方をしているのですけれども、評価というと、現実に受け入れた識別可能負債の評価のようなとらえられ方になるのではないかという感じもしますので、逆の方から言って、認識されていなかった引当金を新たに認識する必要性といったような、無形資産を新たに認識すると同じような感覚で、法律上の債務でない引当金を立てるのと関連していると思うんです。そういう書き方にした方がクリアになるのではないかというのが1つと、先ほどから出ています利益留保性引当金が何だろうという疑問がわきますので、例示的に挙げていただければという感じがします。

○斎藤部会長

リストラ引当金のような概念を出してしまうことについて、多少ヘジテートして抽象的な表現にしているわけですが、それがあいまいであるから明確にしろということになりますと、トレード・オフが非常に難しいですね。この利益留保性引当金という、従来から言われているタームがそのまま出てくることについて、多少違和感をお持ちだということでしょうか。これは仮に実質的に利益留保に近い性格を持つと言ってもいけないんでしょうね。

○西川委員

恐らく利益留保の考え方が学者の先生方と我々との感覚で、違うのかもしれません。

○斎藤部会長

どうぞ、八木委員。

○八木委員

リストラ引当金の話が出ましたけれども、損失の前倒し認識という意味で、負債性という性格というわけにはいかないのですか。特別損失などを先に落として、発生は翌期というのは、これは往々にしてあることなんですが。

○斎藤部会長

この問題は非常にデリケートな問題で、現在でもSECが合併のケースで一番マークしている論点なわけですね。それだけにストレートに出すことについては多少心配があるように思うんですが。

○西川委員

要するに引当金を立てれば負ののれんが出てこないということはあると思うので、引当金を立てられないから負ののれんが出てくるという話であれば、例えば将来の損失、将来発生が見込まれる損失の問題といったような言い方はあるのかという感じはします。

○斎藤部会長

今のご発言ですと、負債の評価に関連して、将来に発生が見込まれる損失にも留意し検討すると、そうすればいいということですか。1つのご意見として承って検討させていただきます。

どうぞ、梅山委員。

○梅山委員

9ページから10ページに、プーリングの場合には原則簿価で引き継ぎますと。ただ、過去必ずしもすべてが簿価でないということから、そういうバリエーションの許容範囲を定める必要があると記載をいただいております。私も一定のバリエーションが必要だと思っておりますが、例えばこういうケースというのは、その中で視野に入っているのかどうかという質問でありまして、金融商品の時価会計が導入されて、13年度から持合株式に時価評価が適用される。例えば企業によっては、時価評価するときに期末月1カ月平均で時価を算出しまして評価差額を出すというケースが考えられるわけです。このときに例えば合併会社と被合併会社の計算の方式が違って、例えば合併会社が期末のスポットでやっている。こういう場合には、やはり会計基準の統一ということから、もし仮に期末の時価の方が低ければ、その段階では何らかの基準の統一のために時価評価額を見直す。結果として資本も動くということが考えられるのかなと、そういう資産負債が動くと同時に資本も動くというバリエーションも、この中では今後は考えられる可能性があるのかどうか疑問に思いましたので。

○斎藤部会長

そのレベルまでの議論は現時点ではしていないというのが率直なご返事だと思いますが、確かに実務レベルの話になりますと非常に大事な論点だと思いますので、それは恐らく将来どこかの時点で検討することになるんでしょうね。審議会がいいのか、あるいは実務指針がいいのか、そこはわかりません。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

私が3月にご報告したときに、ある想定をしたわけですね。日本においてはプーリングに該当するようなケースが多いのではないかという前提で、やはりプーリングとパーチェスと両方が必要ではないかという議論をしたわけです。そのような意味での実質的なチェックが必要ではないかということをこのレポートの中のどこかに書き加えていただけないかなというのが1つ。

それから、実務からすれば、コストとベネフィットという問題が絶えずつかず離れず頭にあるわけです。例えばとかくパーチェスは金がかかると、評価だ何だと、そういう先入観があるわけでございます。ここで何人かの利用者側の参考意見のご発表がありました。私も折々質問していましたけれども、例えば何が何でもパーチェスでなければいけないという、ある種の強いご意見は余りなかったように記憶しているわけです。ですから、今回も論旨の中では両論併記でずっとやっていただいて、極めてバランスがとれているとは認識しているのでございますけれども、そういうことからすると、日本の実態のようなものを見きわめるということ、それから、コストとベネフィットみたいな観点も必要ではないかなということを感じた次第でございます。

それから、これは余りこれまでの議論では出ていなかったのですが、最近決算も年1回ではなくて中間決算という時代になってまいりますと、こういうパーチェスならパーチェスという事実が起こったときのタイミングが、会計的にもいろいろなインパクトを及ぼしてくると思うんです。具体的な名前を出して恐縮ですが、たしか以前、米国基準を採用されている松下さんがアメリカで映画会社か何かをお買いになったときに、最寄りの決算のときには、まだ値段がはっきりしないということで、たしか数字をディスクローズするのは翌期に延ばすということで了解を得たような経緯もあったように思うんですね。特に半年ごとにいろいろ締めている時代になると、そういう大きなものになると、そういうタイミングと、例えば締め直前に何か起きたときの対応みたいなものも必要になってくるのかと。実務の面からの気付事項でございます。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

第1点の、プーリングが適当する事例が日本に多いのではないかというご意見、確かに承りましたけれども、この論点整理は、どういう状況がプーリングに適当するかということも、これからの検討課題としているわけですね。ですから、そこが決まらないうちに、日本にその状況の当てはまるケースが多いと言うことは多分できないし、逆にそれを見込んでそう言ってしまいますと、そこで想定されたケースだけにプーリングが限定されるという結果にもなりかねないわけですね。その意味でその論点は外してあります。

それから、第2点のコストベネフィットの問題ですね。これは当初のラフ・ドラフトには書き込んでいたんですけれども、これも全体が非常に長くなるということと、ディスクロージャーが、基本的には広い意味のコストベネフィットのトレード・オフの上に成立していることは、ある意味で皆さんの共通の了解ではないかという考えもありまして、短くする上でそれは割愛いたしました。

第3点は、おっしゃるとおり問題はございますが、やや実務に寄った問題でございますので、現時点の論点整理ではカバーし切れないというのが差し当たってのお答えでございます。

○八木委員

これまでの議論に出ていないところでございますので、結構だと思います。

○斎藤部会長

どうぞ、葛馬委員。

○葛馬委員

パーチェスという言葉の意味ですけれども、13ページの中ごろに「前述のとおり、プーリング法とパーチェス法の定義の仕方は多様である」という表現があって、9ページのところあたりにいろいろな考え方が書いてあるわけですけれども、まず、5ページの最初の段のところにパーチェスの話が出てまいりますね。そこで「一般には交付した株式の時価総額をもって」云々ということが書いてあって、その段落が「その差額はのれんとして認識される」という言葉で締められているので、私は「一般には」という言葉が最後までかかるのであれば、これでいいかなと思うんですけれども、細かく文章を見るとそういう構成にはなっていないわけで、これに関しては、この場でもいろいろ議論があって、ある人からは、資産の方の公正価値で評価するのか、単純に株券を発行して取得した場合、その株券の方の価値で評価するのか。その場合には株券の方にはボラティリティーの要素が大きな問題であるという話があったし、一方で、価値が定まっていないものを交換したときには、流動性の高い方の時価で評価するのが正しいというお話もあって、そうなると株券で評価してということになる。ここで書いてあるのは、まさに株券の方で総額を評価するということになっているわけですね。したがって差額はのれんが出てくるよと。そもそも取引の価値そのものを資産の価値で評価するのであれば、こういう差額という形ではなくなるのではないのかと。それから、パーチェスの価値そのものを株券ではかるのか、資産の方ではかるのかということも議論が分かれているというのであれば、その差額はのれんとして認識されるというところまでが「一般には」がかかるような表現にしておいた方がいいのではないのかという気がするんです。とにかくパーチェスをここに書いてあるものと定義してしまって問題はないということなんでしょうか。

○斎藤部会長

今の文章、パラグラフの一番最後ですね。「資産及び負債の正味受入価額と取得の対価に差があれば」、それがのれんになるということですね。取得の対価は、株式を交付した場合には、一般にはその株式の時価総額であって、「一般には」と言っていますから、そうではないケースもあるわけですね。

○葛馬委員

わかりました。ということは、この「一般には」が、その差額はのれんとして認識されるというところまで結果的にかかってくるという趣旨の文章なわけですね。

○斎藤部会長

私が申し上げたのは、「一般には」という文章の構造は「一般には交付した株式の時価総額をもって資本の増加とする。」そこで切れますね。ですから、それから先に「一般には」はかからないと思います。

ただ、最後の文章にある取得の対価は、これはあくまでも取得の対価であって、発行した株式の時価総額とは特定していないわけですね。通常は発行した株式の時価総額になりますけれども、この文章はそれを特定せずに、取得の対価と言っているだけでありますので。

○葛馬委員

おっしゃる意味、よく読めばわかります。すっと読んだときに、一般には株式の時価総額をもって資本の増加とすると。ただし、対価として現金またはその他の資産を支出する場合もあるのでとつなげて読んでしまうと、おかしくなるということですね。

○斎藤部会長

ただしではないですね。

○葛馬委員

「ただし」ではないということですね。だから、株式の時価総額をもって資本の増加とし、結果的に差額がのれんになるというのは、そういうケースが多いというだけであって、それがパーチェスのすべての定義ではないということですね。要するに、資産の方でまず取引の額が決まってしまうのであれば、その差額は出てこないということですね。

○斎藤部会長

そういうことになりますね。例えば現在の日本の商法では、受け入れる資産の評価によって増加する資本が決まるわけですね。その場合に、受け入れる資産の中にのれんは含まれ得るわけですね。ですから、のれんを取得した場合には、それは取得した資産の中に入ってくるわけであって、その結果として増加する資本が決まってくるというのが、現在の日本の商法の基本的なストラクチャーではないかと思うんですね。

○葛馬委員

わかりました。こだわるようですけれども、そういう考えでいった場合には、差額としてのれんが発生するのではなくて、まずのれんありきで、のれんを足した金額でもって取得対価の方の価値が決まってくるわけですから。

○斎藤部会長

そういう考え方もあると思うんです。しかし、これは受入額と取得の対価に差があればという文章ですので、よろしいのではないかという気がしますが。

○辻前企業会計専門官

補足的に説明しますと、ここは別に定義を書いているわけではなくて、ここはセクション自体が、海外では一般には何かこういう理解になっているとか、海外の基準だと書いてあることをかみ砕くとこういう形になっているという説明ですので、後の論点整理の中でパーチェス法とかプーリング法の説明も、借方から見ていくとか、貸方から見ていくとか、そういう議論が後に続いている。その前段階として、雑誌や新聞でパーチェス法と言っているのは大体こういうものだということを書いております。

○葛馬委員

理解できます。非常にくどいようで恐縮なんですけれども、まず資産の方の価値が決まった場合に、その資産の方にのれんも入ってき得るという場合には、のれんも含めて資産になるわけですね。そうですよね。のれんも含めて資産になって、その資産の価値でもって対価が決まってくるという場合には、資産と対価に差がないわけですね。にもかかわらず、のれんが資産の方に含まれているということがあると。したがって、この差額は、資産と対価に差がないにもかかわらず、のれんが発生しているケースがあるということがあり得るわけですよね。

○斎藤部会長

しかし、この文章は、その差額はのれんとして認識されるというだけで、そののれんが出てくる以前にのれんが存在しないとは言っていないですね。差がさらにあれば、またのれんが出てくるということであって、既に取得した資産の中にのれんが含まれている場合には、増加する資本はそれに合ってしまうのが普通ですよね。ですから、葛馬委員の今のお話は、なおかつ合わない場合にということですね。

○葛馬委員

そうではなくて、合ってしまった場合には資産と対価に差がないわけですね。にもかかわらずのれんを発生しているわけですね。

○斎藤部会長

それは構わないのではないでしょうか。

○葛馬委員

だから、そういう場合があるという意味で、ここに差があればと言うけれども、差がない場合にものれんが発生し得るということですよね。

○斎藤部会長

もちろんそうですね。

○葛馬委員

だから、ここは差があればのれんが認識されると。差があって初めてのれんが認識されるような誤解を生む余地があるのではないでしょうか。

○斎藤部会長

差があって初めてとお読みになればそうですね。

○葛馬委員

その辺、誤解の余地がないようにした方がいいんではないのかということです。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

どうぞ、中島委員。

○中島委員

16ページの一番上のところに「上述したパーチェス法における持分の継続の考え方を完全に否定しないかぎり、プーリング法を完全に否定することはできないであろう」というところも、わかりにくい。これはパーチェス法でも合併法人については持分が継続していることを否定しない限り、プーリング法を完全に否定することはできないと、そういうことを指しておられるんでしょうか。ここのところがわかりにくかったのと、それから、そのすぐ下の方に「リース取引の会計処理基準に見られるように、異なる方法を状況別に使い分けるという解決案が模索されてきた」。これはオペレーティングリースと、それからファイナンスリースのことを言っているのか。何となく私の頭の中に所有権移転外ファイナンス・リースの話があるので、異なる方法、あるいは状況別にかかわってくるのかなという気がします。

それから、あと1つ、6ページの2番目のパラグラフのところで、パーチェス法に統一しようという考え方は「状況の違いを超えて企業結合を単一の事実と見なし」という、こういう観点だと、状況が実際には相当違っているのに、それを無視して1つにしてしまうというニュアンスが強過ぎるのではないか。恐らくアメリカなどの考え方は、ほとんど企業結合はパーチェスというか取得で、本当にプーリング法の対象になるものは非常に少ないと。ここで参考人の方がアメリカの状況を説明されたときも、たしかそんな感じだったと思いますので、この言い方は強過ぎるのかという気がいたしました。

以上です。

○斎藤部会長

ありがとうございました。まず16ページ、第1点でありますけれども、上から2行目に書いてある、「上述したパーチェス法における持分の継続の考え方を完全に否定しないかぎり、プーリング法を完全に否定することはできないであろう」という文章の意味でありますけれども、これは、ここでずっと言っていますように、パーチェス法においても、一方の会社をゴーイング・コンサーンと見て、持分が継続していると考えて従来の簿価を承継しているわけですので、そもそも持分の継続というコンセプトそのものを否定してしまうということは多分できないだろう。現在、持分プーリング法の可能性に対して否定的な議論は、持分の継続はないという話をしているんですね。いずれにしても合併すれば、持分が従来のリスクプロファイルと違ってくる。明らかにリターンとリスクに対するシェアリングが違ってくるわけだから、その意味で持分の継続は存在しないと言っているわけなんですが、そうだとすると、パーチェスにおいて取得会社の簿価を承継するという根拠も失われてしまうということを強調している文脈ではないかと思います。

それから、その次のリース取引等で異なる方法を状況別に使い分けるのは、多分中島委員がおっしゃった最初の方のノーマルなケースが想定されているんだと私は思っております。

それから、6ページの状況の違いを超えて企業結合を単一の事実と見なしというのは、確かに状況の違いがどのぐらい大きいかという判断の違いはあり得ると思いますね。ただ、アメリカのFASBの公開草案の中でも、いわゆる純粋のマージャー、トゥルー・マージャーというものが存在し得る。そういうことはあり得るんだけれどもという話をしているわけですよね。そこは状況ないし事実は違うんだけれども、それを無視していいという話をしているわけだと思うんです。ですから、単一の事実に対して単一の会計方法を対応させるというロジックだけですと、ほとんど無視していいんだけれども、もしそこでそういう事実が存在するときに、その事実をどう考えるのかという議論は依然として残るんではないかということを言っているつもりですけれども、少し強過ぎますでしょうか。

○中島委員

多少そんな感じでしたけれども、特にこだわりません。

○斎藤部会長

検討させてください。

伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

先ほど、八木さんが申し上げましたが、我々産業界の考え方等を十分入れていただいていると思うんでございます。先ほどの16ページのところで非常に論理的にまとめていただいているので、全体が大変レベルの高いものになっていることはよくわかるんでございます。つまりプーリングの必要性についても、パーチェスとともに非常に公平に取り扱っていただいていることもよくわかるんですけれども、これの考え方でいけば、山田さん等が要するに海外で説明したときに、日本は何かやはり国際的な流れと異なるように受け取られるという危惧は全くないですか。私が言っているのは、企業会計は、やはり経営の実態をある程度踏まえて、我々の日本の立場を話してもいいんではないか。もちろん会計理論的に精緻につくられることは重要だけれども、そこにはやはり――つまり日本が論理的に特殊なことを考えているんではなくて、日本の社会の実態を、あるいは経営の実態を踏まえて日本の会計制度が形づくられているんだということが多少あった方がいいんではないかとも思うんですね。その点のところをお聞きしたい。

○斎藤部会長

今の伊藤委員のご発言の趣旨を体して、ほとんど即答みたいで恐縮ですけれども、1つの対処案は、16ページの上から4行目でございますが、「企業結合の中には、被合併会社の持分の継続を無視できない状況もありうる」。この文章の「企業結合の中には、」の後に「日本に多いと言われる対等合併など」という文言を入れれば、今の伊藤委員のご趣旨は生きると思いますけれども、いかがでしょうかね。

○伊藤委員

私は結構でございます。

○斎藤部会長

もしご異論がなければ、そう修文することも可能だと思います。

西川委員、どうぞ。

○西川委員

対等合併がどういうことを指しているのか――対等合併イコールプーリングというイメージが出るとまずいのではないかという気がするんですが、どうでしょうか。

○斎藤部会長

プーリングが該当する状況を対等合併だと言ってしまいますと、逆に対等合併とは何か。そこで言う対等合併にプーリングが限られるのかとか、そういう問題が次々と発生いたしますね。そういう書き方は私は避けるべきだと思います。ここでもし仮に対等合併などということを入れるとしても、それは単なる例示でありまして大した意味はないので、その前に「日本に多いと言われる」と言っておけば、なるほど、日本にはそういうのが多いのかという、その程度のメッセージにとどまるような気がするんですね。

会長、どうぞ。

○若杉会長

結局基準づくりをするときに、つまり、例えば学問の世界でもって理論的水準の高い、そういう性格を持った基準づくりとなるのか、それとも海外のIASとか、あるいはFASBの基準とかといったものにほぼ倣ったものになるのか。それとも日本の企業の実践、日本的ないろいろな企業慣行が、多少特色を持ったものが結構ありますので、そういうものに配慮していくのかという、いわばこれは会計基準作成哲学の問題なんですね。ですから、具体的な問題以前の、もっと基本的な問題と私は理解したんです。

○伊藤委員

そのとおりですね。

○若杉会長

そういう意味では、個々の問題を論ずるに当たりましては、基本的な姿勢をしっかり持っていますと、議論の進め方が幾らかスムーズになるのではないかと感じております。

○斎藤部会長

山田委員、どうぞ。

○山田委員

IASBでの議論の状況を少しだけ申し上げたいと思うんです。IASCの時代から企業結合の検討は進んでおりまして、その中でアメリカの動向もにらみながら、近いうちに多分イシューズ・ペーパーが出てまいります。その中でプーリング、つまり持分の継続という事態を見解の中では否定はしておりません。ただ、それが起こるケースは非常にまれだという認識になっておりまして、このあたりが多分伊藤さんが言われる経済実態の問題だと思うんです。アメリカ等々ですと、対等であっても一、二年たつと、どちらが購入した方か、どちらが買われた方かが大体すぐわかってしまうということがございまして、実は前回の議論のときも、伊藤さんがおっしゃったような社長が交代で出たり、取締役の数がずっと維持されたというようなことがあるということは、経済合理性があるかどうかは別としまして、私は議論の中で主張してみまして、一部の中に、やはりそういう一種の文化といいますか、そういうものを反映したものがあることはあるという理解は得ております。

ただ、欧米の中では、そういうケースは非常に限られていて、したがって、今議論が、この前も申し上げましたように、いわゆる投票権が50:50というような非常に限られたケースを今はやはり念頭に置いておりまして、その中で、ここで整理しているような被合併会社の持分の継続とみなせるケースをどのような形で言えるかなということになるかと私は考えております。

○斎藤部会長

大変ありがとうございました。

○辻前企業会計専門官

先ほど八木委員からご指摘のあったことと、それから伊藤委員からご指摘があったことなんですが、この論点整理の中だと、要するに経済実態が同じだったら会計処理は同じでしょうというのがこの論点整理のスタンスなんですが、その中に産業界からの意見も含まれているので、別に無視しているということはないと思います。

○斎藤部会長

葛馬委員、どうぞ。

○葛馬委員

前回のこの会議でも――前回というのは、前回私が出席させていただいたという意味ですけれども、そこでもはっきりと部会長の方から、会計学と会計基準は違うというのが1つ。会計基準というのは、単にロジカルに詰めるだけではなくて、その基準を採用した場合にどういう作用や副作用が出てくるのかということを現実的にきちんと詰めた上でつくるものだというご発言があったと思いますので、この部会のスタンスは非常にはっきりしているんではないのかなと私は理解しているんですけれども、確認させていただければと思います。

○斎藤部会長

確かにそういうことを私は申しましたけれども、部会のスタンスがはっきりしているかと言われると、私が申し上げたというだけですので。

○葛馬委員

それだけの重みのあるものだということで、私は理解しております。

別件で、これは質問ですけれども、これで使われているゴーイング・コンサーンの意味は、もう一つの監査の方で使われているゴーイング・コンサーンと全く同じと見ていいんでしょうか。といいますのは、監査の方でゴーイング・コンサーンという場合には、持分の継続という観点はほとんどなくて、アビリティー・トゥ・コンティニュー・アズ・ア・ゴーイング・コンサーンということで事業継続というニュアンスが強いので、持分というのは余りないのではないのかなという感じがするんですけれども、いかがでしょうか。

○斎藤部会長

私自身は二部会には出席しておりませんので、その議論は直接には承知しておりませんけれども、それは会社が倒産せずに生きていくかどうかという問題でありまして、資産の評価において、その基準となるコンセプトをつくるという局面で言うゴーイング・コンサーンとは必ずしも同じではないと考えております。むしろ二部会に出席していらっしゃる先生方の方から、もしご発言があれば補っていただければと思いますが。

どうぞ、神田先生。

○神田部会長代理

前に申し上げたかもしれませんけれども、税の分野では持分の継続という考え方と事業の継続という考え方は違って、両方を要件にしているんですね。適格組織再編成と言っておりますけれども、その場合における持分の継続というのは、ここに書かれている考え方と比較的近い、緩やかな意味での持分の継続なんです。事業の継続という考え方は、例えば何でもいいですけれども、おもちゃをつくるという業をやっていたんだったら、それが移った先でもその業が行われているということで、それを構成している資産がばら売りされない。例えばですけれども、そういう意味での事業が事業として、商法の言葉で言えば営業の全部または一部になりますけれども、それが継続されるという意味ですので、その意味で概念として、企業の継続というのはおっしゃるような意味で、二部会の意味でゴーイング・コンサーンだと思うんですけれども、何か塊としての事業というか営業というか、そういうものは果たして発想として入ってくるかどうかというのが1つ。

それに関連して申し上げますと、これはやや法律家だけがひっかかる表現なのかもしれませんが、先ほど修正案が出ました16ページにしても、それから13ページから14ページでも書いてありますけれども、持分の継続が13ページで定義してありまして、14ページの4行目ぐらいに、結局被合併会社について持分の継続を認めるかどうかという違いだと。これは16ページにももう一遍出てくるわけですが、商法的な感覚から言うと、被合併会社は合併しますと消滅してしまいますので、経済実態を言うと、被合併会社の資産に対する持分の継続というように恐らく考えるんだと思うんです。これは表現の問題で、会計の方でそう考えて、こういう表現で被合併会社についての持分の継続という言い方で、よろしいならそれで結構だと思います。

ついでですから、2点ほど関連してよろしゅうございますか。

1つは、14ページの一番下の方に、下から2行目からなんですが、「株式の交換による合併を『いったん時価発行増資をし、そこで払い込まれた現金を支払対価として、被合併会社の資産と負債を購入した』と見る擬制である」云々と書いてあるんですが、まず、現在株式の交換によらない合併は商法は認めていないんですね。つまり株式を渡さない合併は認められていませんで、例外的に比率を調整したり、配当を調整したりするために現金を渡すことは認めているんです。したがって、ここはそういう意味でおっしゃっているのではないと思いますけれども、合併の場合は原則必ず株式交換になる。

そしてより重要なことは、この括弧書きに書かれている擬制というのは、従来から恐らく分割が導入されるまではこちらの方が多かったと思うんですけれども、分割が導入された後は、もう一つの方の擬制の方が多分有力で、それはどういう擬制かといいますと、合併の場合で言いますと、被合併会社の財産を現物出資して、それでもちろん増資はするわけですが、合併会社が増資した株を被合併会社に与えて、そしてその被合併会社がその株を株主に配る。従来、現金で増資をして、その現金でもって買収する、ここに書いてある擬制と、今私が申しました擬制と両方あって、こちらに書いてある方が法律家の言葉で言うと多数説と多分考えられていたと思うんですが、分割法制が入ってから逆転しまして、後者の考え方の方が多数だと思うんですね。それはアメリカの分割なんかとの比較にもよりますし、それから、また税法は今回、法人税法61条の2で後者をとって明文化しているわけです。

もう一点だけついでに申させていただきます。この報告書は合併についての記述が非常に多いんですけれども、それでいいかということなんですよね。つまり吸収分割とか、あるいは企業結合全般について書くのであれば、これは今のところも合併については書かれていますけれども、一番わかりやすい例で言いますと、17ページののれんの本質というところは被合併会社、合併会社という言葉しか出てこないんですね。ですけれども、営業譲渡の場合とか吸収分割の場合等も仮に含めて書くとすると、上位概念というんでしょうか、被結合会社、結合会社、あるいは被取得会社、取得会社とか、合併についてだけ書くのか、そういう分割・営業譲渡等の場合も含めた企業結合全体について書くのかが結構大きな話で、もちろんこれまで合併について議論があったし、今のプーリング法だ、対等合併だという日本の特殊性だという話は、もう合併が中心であることはよくわかるんですけれども、余りに合併が出過ぎている感じを受けます。表現だけの問題で、余り中身にかかわりませんけれども、ついでに申しました。

以上です。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

まず、第1点の事業の継続と持分の継続ということですが、例えば従来、おもちゃか何かやっていたのを全部ばら売りしてしまったのが、このケースでいいのかという話ですが、これは例えば合併の場合でなくても、従来やっている事業のかなりの部分を全部売却して別の事業に特化するというケースは幾らでもあるわけで、そのときは、従来の事業は大半は継続しないということがあり得るわけですね。にもかかわらず、それは継続企業と見られて、会計上の資産の評価では、従来の資産はその簿価を承継しているということになってまいりますので、資産の評価という観点からいきますと、やはり企業ないし持分の継続の問題が中心になっているんではないかという感じがするんですね。それがまず第1点です。

それから第2点の14ページの上から4行目で、被合併会社について持分の継続を認めるか認めないかというところ。被合併会社、合併会社がわかっているんだったら、これはもうパーチェスの問題だからということになってしまいますので、ここは文章を変えて、私としては3行目のところから、結合する会社の一方について持分の継続を認めた上で、他の会社について持分の継続を認めるかどうかという、そういう表現にした方が神田先生のご指摘の趣旨に合うんではないかと思います。

それから、第3点ないし第4点にかかわることなんですが、多分合併という言葉の使い方が、ここは法律的に厳密に使っていないと思うんですね。さっきおっしゃられた、現金でよその会社の株式を取得してくるような企業買収というのは、多分法律的には合併と言わないんだと思うんですね。しかし会計的には何となく大ざっぱに合併と言ってしまっているために、法律家の観点からごらんになると、やや厳密さを欠いた表現になっていると思いますので、これもできる限り上位概念を使えるところは使って修文をしたいと思います。

それから、さっきのフィクションの話ですが、私は即答できる立場にありませんので、もし関連して各委員からご発言があれば承りたいと思いますが。14ページの一番下に書いてあるような、一たん時価発行増資をして、払い込まれた現金を支払対価として、被合併会社の資産と負債を購入するという、神田委員の表現を借りれば、従来の多数説的なフィクションと、むしろ被合併会社の方から現物出資を受け入れ、株式を交付した上でその株主に分配をするという合併ないし分割等の法律構成ですかね。そのフィクションが併存していて、むしろ後者が分割法制以降は支配的になりつつあると、そういうご指摘だったかと思いますけれども、この点については特にご発言はないでしょうか。これは従来のパーチェスの考え方の1つのジャスティフィケーションとして出ているものを説明している部分ですので、ここはここで生きていると思うんです。

どうぞ、辻前さん。

○辻前企業会計専門官

ここのところもそうなんですけれども、例えば我々がふだんよく接している国際会計基準でも、この辺はまだ基準が整備されておらず、海外でも分析が進んでいないし、国内でもまだ余り分析が進んでいない面がありまして、この論点整理でも、独立企業間というか、大きな会社同士が合併するとか株式交換するというケースが前面に出てきてしまっているのはいたし方ない点があるかと思います。

それと、先ほどの最初のところの持分の継続と、それから事業の継続のところなんですけれども、これについても部会で余り突っ込んだ議論はしていないので、ここは余り書き込んでいくのも難しい面があるかと思うんですけれども、これまでよく言われてきたのは、どちらかというと持分の継続のことでありますので、どうしてもそちらの方に軸足が移ることになるかと思います。

以上です。

○斎藤部会長

西川委員、どうぞ。

○西川委員

先ほどの葛馬委員ののれんの話に戻りたいのですけれども、神田先生がいらっしゃったので、お聞きしたいんです。識別できないからのれんだというつくり方だと、差額のれんしかあり得ないのですが、商法上は何かしら積極的に認められるのれんがあるらしいということになりますと、例えば、個別財務諸表と連結財務諸表でパーチェス法上も違う会計処理をしないといけないということがあり得るのかどうかですね。そのあたり、お教えいただければと思います。

○斎藤部会長

どうぞ、神田委員。

○神田委員

これはもう商法は、ご存じのように条文があるだけでして、あとは関係者が勝手に解釈論を展開しているというもので、現在では差額説の方が私は多数説だと思います。私もそう思っていますし、筑波大学の弥永さんもそうです。なぜ昔、超過収益力を生む事実関係があって、そういう実態をもってのれんというんだという説が一時多数説になったかといいますと、税の営業権についての最高裁の余り有名でない判決があるんです。何も言っていなくて、下級審の高等裁判所が下した文はそのままでよろしいと言った有名な判例でありまして、それがついそう書いてしまったようなんですね。事実関係であって、その後超過収益力を生むものを営業権というと。それの影響を受けまして、昭和51年ぐらいだったかと思いますけれども、そのときに商法も、そういうものなんだと。商法上は有償で譲り受けたときに限りと書いてあります。いかに超過収益力が事実関係か立証できてもそれだけは当然制約になり――法律的に言えば――無償で取得した場合とか自家創設のものは商法上は計上できないということになります。あとはそういう制約だという見解が多数説になったのは、その影響なんですね。ただ、それは商法の判例では決してありませんし、したがって、商法の解釈論は分かれているので、いろいろな考え方が可能だと言っていいと思います。ただ、その後、いろいろ議論があって、企業再編の法制も整備されまして、そういう中で分割の場合ですとか何かの場合にも当然のれんの規定は入ってきているわけですけれども、恐らく現在商法の考え方は差額でやるという、ここで書かれているような考え方と比較的整合的だと思います。そういう意味で、こう整理すると、何か商法から異論が出るとかいうことはまずないと言っていいと思います。

○斎藤部会長

大変安心いたしましたけれども、ただ、商法の条文には株式の交付に伴って増加する資本の額について明文の規定がないわけですね。価値をもってと書いてあるだけで、差額を取ろうにも取りようがない規定になっております。資産の評価では、のれんを取得したときにはという規定になっていますから、それはのれんに該当する財産を取得したという概念構成にはなっているわけですね。しかし、神田委員がおっしゃるように、解釈の多数説がそうなっているということであれば、もう我々が余り心配しなくてもいいというふうに安心いたしました。

○神田部会長代理

そう言っていいと思いますね。もちろんそれをどこかで決まっているような状況ではありません。

○斎藤部会長

小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員

ちょうど4月1日から分割ができるようになったばかりでして、いろいろな形で分割があって、単純に会社を2つに分けるというのもありますし、事業再編上使うというのもありますし、あるいは会社を買って、それを分割して1つをさようならしてしまうという仕組みもあるし、どうもいろいろな事例があって、最後に4つぐらい書いてあるあたり、関係している部分があるんです。ある程度の段階で出ている分割の事例で、本当に検討すべきものがないかどうかというのを少し詰めてもいいだろうと思うんですね。実際にこの基準が外に出る段階を考えますと、場合によってはほかに検討すべきような事例はないかどうかみたいな問いかけをして、それについて詰めてもいいのかなという感じもします。

○斎藤部会長

それは論点整理を終えた上での作業というお考えでおっしゃっているんでしょうか。

○小宮山委員

論点整理の仕方なんです。読み方によって自分によく読む人と悪く読む人と、実は2つ読める書き方になっているんですね。これについて検討すると書いてあるけれども、海外のものを見てみますと、こういうことについて答えてほしいと具体的に質問が最初に出ていますよね。ああいう問いかけをするのか、それとももう少し問題とすべき事例とか考えていることを答えやすい問いかけの仕方もあるのかなという気がしているんですね。

○斎藤部会長

どうぞ、神田委員。

○神田部会長代理

小宮山さんのおっしゃった内容の実質の方にかかわることなんですが、19ページの今後というか「以下の論点も検討する」の「第二は」というパラグラフは、私は意味がわからないんです。例えば共同新設分割は分割と結合が複合された取引であり、そのような分割と結合に同じ会計処理を適用すべきか。ここがロジカルによくわからないんです。例えばAという会社があって、営業の一部をBという会社に吸収分割した場合に、Bという会社で受け入れる営業を、ここの言葉で言えばパーチェス法かプーリング法かということが問題になるわけですね。分割と結合が複合された取引はそうなのかもしれませんが、その分割と結合に同じ会計処理といったって、取引は1つなので、要するに営業が移っていくわけですね、A会社からB会社に。要はパーチェス法かプーリング法か、どういう会計処理をするんでしょうかというのが問題だと私は思っていたものですから、ここの意味がよくわからない。

○斎藤部会長

恐らく今のお話は、A、B、2つの会社があって、合併することを考えている。だけれども両方の会社は、自分を脱け殻にして共同新設分割をしても合併の結果は同じことになりますね。そういう共同新設分割のようなものは、分割という形態をとっていても、実態においては合併とほとんど変わらない。その場合に分割について適用される会計方法と、合併ないし企業結合について決められている会計方法との間に、もし違いがありますと、その2つの取引形態を使い分けるという一種のアービトレージが生ずる可能性がある。したがって、その2つを整合的に処理できるようにしておきたいという趣旨ではないかと思っているんです。

○神田部会長代理

そういう趣旨だと思うんですけれども、ただ、分割というのは結合ではないですか。ここで議論しているのは受け取る方からですよね。営業である程度譲り受け、入ってくる資産をどう評価するかが問題ですから、分ける方から見ると分割かもしれませんし、営業譲渡からして見ると営業の一部譲渡で全部譲渡していないかもしれませんけれども、それは確かにそういう問題はそっちとしてあると思うんです。受け入れる方は、さっきの事業の継続がどうかはともかくとして、入ってくるものをどう処理するかは企業結合会計の問題であって、言葉の問題なのかもしれません。

○斎藤部会長

もう少し文章を整理させていただきたいと思います。ありがとうございました。

どうぞ、引頭委員。

○引頭委員

のれんのところの(4)の「識別可能無形資産」、19ページ目なんですけれども、ここに「ディスクロージャーの観点からも」という文言を入れていただければと思います。外部からのチェック機能ということで入れていただければいいなと思うんです。

以上です。

○斎藤部会長

検討させてください。ありがとうございました。

安藤委員、どうぞ。

○安藤委員

今後の日程ともかかわることですけれども、このペーパーですと5ページから6ページに、FASB、それからIASBの関係のことに言及しておりますが、要するにまだ検討が進んでいる段階だということを書いております。そうしますと、果たしてFASBとかIASBが結論を出す前に、この審議会は結論を出すのか、どうかは非常に気になるところなんです。

○斎藤部会長

これは事務局からお願いいたします。

○辻前企業会計専門官

アメリカとIASBの動向ですが、アメリカの方は、今公開草案が最終段階に来ていますので、もう最終基準が出るのではないかと見ています。そうなると、アメリカと国際会計基準で大分違った基準が並立するようになると思いますが、いずれにしろ、この部会では続けてご審議いただくしかないと言うしかないのではないかと思います。

○斎藤部会長

よろしゅうございましょうか。

○大藤参事官

そこは今後の各委員のご議論だと思うんですけれども、結局外側の帰趨を見きわめた上でつくっていくのか、あるいはそこにむしろこちらから発信していくのかというところもあるんだと思いますね。恐らくアメリカはアメリカのペースでやっていくことになるんだと思いますけれども、国際会計基準も、今、どんなプログラムでやるかということをまさに彼らも議論しているわけでございますので、そこに向けて日本の考え方を発信していくということに立てば、こちらの方でできるだけ意見が集約できる部分は集約して、むしろそちらに日本の考え方を発信していくということになろうかと思います。そこら辺はまさに各委員のご議論でありますが、ご意見を踏まえながら決めていく話ではないかと思います。

○斎藤部会長

山田委員、どうぞ。

○山田委員

当事者ですので少し答えさせていただきますと、議題の正式決定は、アドバイザリー・カウンセルとの協議を待って決めるということになっております。したがいまして、7月23、24にアドバイザリー・カウンセルと意見交換をしまして、その直後の3日間で開く理事会で、最終的にどういうプロジェクトをどう取り上げていくかを決める予定になっております。したがって、正式な決定はその時点になると思います。ただ、既に先ほど言いましたようにIASCの時代にステアリング・コミッティがスタートしておりまして、そこがつくっておりますイシューズ・ペーパーは近々に出る予定でございます。その後、企業結合は間違いなく取り上げることになっておりますので、特にこのプーリングかパーチェスかという問題は、実務が多様化しているので、できるだけ早く結論をつけたいと考えてはおります。ただ、7月からスタートしまして、イシューズ・ペーパーが出て、従来からのスケジュール感からいきますと、どんなに早くても公開草案を出すまでに1年、場合によるともっと早くなるかもしれない部分があるんですが、いずれにしても、それぐらいのになるんではないかと思います。ただ、これは私の個人的な推測でございまして、最終的には7月の時点でアドバイザリー・カウンセルと相談の上決めていくという形になるかと思います。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

どうぞ、中島委員。

○中島委員

先ほどの神田先生のご指摘も関連するんですけれども、この論点整理では企業結合とは何かとか、企業結合会計の対象は何かを正面から取り上げていないような気がするんですよね。4ページの国際的な動向の第2パラグラフで、企業結合にはこういうものがありますということが書いてあって、それを受けた形で最後に適用範囲のところで子会社との合併ですか。それはよろしいんでしょうか。

○斎藤部会長

中島委員のご意見は、企業結合とはそもそも何であって、かつ企業結合会計というのは基本的にどういう考え方の上に成り立っているかということから説き起こして論点整理をせよと、そういうご発言でしょうか。

○中島委員

それができると非常にいいですねということなんです。

○辻前企業会計専門官

企業結合の説明のところなんですが、例えばIASとかアメリカの基準書を見ていますと、非常に難しいので、こういう形でかみ砕いて、要するにこういうことを言っているんでしょうと書いているんですけれども、日本で意見書を書くときには、いろいろ考えていかないといけないんですけれども、そうなると、境界線にある特殊なケースを検討をしないといけないんです。今からそれをやる必要性は余りないのではないかというか、そもそもそういう珍しい事例があるのか、ないのかとか考えると、今ここに書いてある内容で、今の段階では意味があるんではないかと考えて、こういう形になっております。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

若杉会長、どうぞ。

○若杉会長

これだけのものをまとめるには、やはり最初に概念の説明がどうしても必要だと思うんですね。もう既にきょうの議論の中でもそういう問題は提起されておりますし、これは学術的そのものではないかもしれませんけれども、グロッサリーは最初に押さえるというか、はっきりさせる必要があるのではないかと思いますが。

○斎藤部会長

当初の私どもの案は、最初のページにグロッサリーをつけるという案であったわけですが、どうも評判がよくないようでありまして、どこからかの段階で立ち消えになったということであります。

大日方委員、どうぞ。

○大日方委員

出席されている方々に共通意識を持っておいていただきたいのですが、この論点整理で苦労したのは要するに、どういう根拠でプーリングを残すかということです。それには、2つの方法が考えられたわけです。1つは、海外の議論を論破する。しかし、それは審議会の態度として適当ではないので、案としてとれないということです。したがって、難しい表現になっていますけれども、間接的に非常に皮肉っぽくFASB案には否定的なメッセージを出してあります。

もう一つは、産業界の方々からご指摘をいただいているんですけれども、日本の状況にマッチした会計基準の必要性ということからプーリング法を残すということも考えられなくはないんですけれども、そこが強調されると日本特殊性論というのが突出してしまいかねない。そのときに、国際的調和から真っ向から対立するだけの道具を我々は一体持っているかといったときに、これもかなり厳しいかもしれないということだったわけです。そこで、この方法は従来にはないわけですが、従来はとり得るべき選択肢がある程度わかっていて、そのアレンジで何とかなるのかという論点整理だったのですが、ここではプーリングとパーチェスをゼロから積み上げて定義し直す。その中で、アメリカ流の議論がパーフェクトではないということと、産業界の方々が指摘されているように、明確に定義できませんけれども、日本流の対等合併みたいなものにきちんとプーリングが当てはまる余地が十分にあるんだということを伝えたいということなんです。その点、ご了解いただければ、その意味では伝わるのではないかと思うんです。

○斎藤部会長

山田委員、どうぞ。

○山田委員

そういう分類の仕方自体はそれでいい面もあると思うんですが、実際の会計処理を考えていくときには、やはり数量的な条件とか、そういうものがもう少し見えてこないと、あくまでも抽象的なレベルにとどまっていて、そのレベルではなかなか、海外で議論するのは難しい。したがいまして、今回の分類というか、この分け方は、その議論のための本当のスタートとして整理をした。これからそれに向けて、もう少しどのような条件の絞り込みをしていくかが、最終的にはワーカブルな基準で説得力があるかにつながるのではないかなと感じます。

○斎藤部会長

ありがとうございました。

どうぞ、伊藤委員。

○伊藤委員

山田さんのご意見も聞きたいところなんですが、日本の独特なといろいろ言われるかもしれませんけれども、私がヨーロッパの人たちとよく話をすると、ヨーロッパなんかもいろいろありますけれども、ドイツだとかフランス、ベルギーあたりの学者とか実業界の人たちは、必ずしもイギリスというか、アメリカ方式に賛成をしているとは思えないんですね。日本から発信する場合に、前にも申し上げたと思うんですが、やっぱりヨーロッパとよく話をしつつ、日本の意見を形づくっていくことも必要ではないかと思うんですね。

○斎藤部会長

山田委員、どうぞ。

○山田委員

今のボードの人以外の意見は知らないんですが、ダイムラー・クライスラーからきた方とかスイスの方は、実は意外とパーチェスに賛同されているので、私は驚いております。特にこれから出てくるイシューズ・ペーパーを前回少しさわりだけ議論した中で、イシューズ・ペーパーの分類をずっと見ていけばいくほどパーチェスに傾くというような表現を実はスイスの方がおっしゃっておられて、私はそれに驚くと同時に、まだ議論を実は本格的に始めていないので、今後始めていく中でその辺を明確にしていかなければいけないかなという感じを覚えております。したがいまして、それ以外のことは知らないんですが、私はボードに関しては、むしろアメリカ的な判断をする方が多いのに驚いているという状況でございます。

○斎藤部会長

よろしゅうございますか。

特にご発言がないようでしたら、おおむね予定の時刻になりましたので、本日の部会はこれで終了させていただきます。

私といたしましては、細かい表現は別にして、次回の部会で論点整理をお取りまとめいただければと考えておりますので、本日十分にご発言いただけなかった方は、ご意見等がございました場合には、来週の水曜日、6月6日までに事務局にお送りいただきたいと思います。皆様からのご意見を踏まえて本日の原案を修正いたしまして、極力次回の審議に先立ってご送付できるようにしたいと存じます。

次回、6月15日の部会につきましては16時から18時を予定しておりますけれども、詳細につきましては改めて事務局からご連絡申し上げます。

本日はお忙しいところ、まことにありがとうございました。これで散会いたします。

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