平成13年10月16日
金融庁

企業会計審議会第21回第二部会議事録について

企業会計審議会第21回第二部会(平成13年9月28日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第21回第二部会議事録

日時:平成13年9月28日(金)午後4時00分~午後5時54分

場所:中央合同庁舎第4号館11階共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第21回の第二部会を開催いたします。

本日は、奥山委員がご出席になっておりますので、一言よろしくお願いいたします。

○奥山委員

このたび委員に拝命しました奥山でございます。会計士協会の会長を7月から就任いたしまして、こういう関係の担当になりました。どうぞよろしくお願いいたします。

○脇田部会長

それでは、これより議事に入りたいと思います。

前回の部会では、とりあえず公開草案に対しまして寄せられましたご意見を紹介させていただきました。本日からは最終的な監査基準の取りまとめに向けての検討を行ってまいりたいと思っております。

お手元に「公開草案に関する検討事項」という資料をお配りしております。これは公開草案に対して寄せられましたご意見、前回の部会でのご意見などを踏まえまして、検討してはどうかという点を大まかな項目ごとに分けまして整理したものでございます。

なお、前回お配りいたしました各界からのご意見の原文はこの黒い表紙の資料集につづり込んでございますので、ご参照いただきたいと思います。

では、本日はこの資料に基づきまして検討を進めてまいりたいと思いますが、お手元の議事次第にございますように、大まかに論点を分けております。そして、その論点ごとに10分あるいは20分ぐらいずつ時間をとりまして、それぞれ検討をしていただきたいと思います。それぞれの論点につきまして事務局から簡単に説明をしていただきまして、その後、皆様からご意見をいただきたいと思います。もちろんこれ以外の点につきましても、お気づきのところは忌憚なくご意見をちょうだいしたいと思います。

では、まず、この議事次第にありますように、「監査の目的」の関係につきまして、事務局からご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○多賀谷課長補佐

それでは、資料に基づきまして、簡単に私の方からご説明申し上げます。

「公開草案に関する検討事項」、これに起草メンバーの方で対応・考え方というのを簡単につけたものでございます。

1といたしまして、「監査の目的」のところで、幾つかご意見がございます。ここは、全体としては、文章のつながりを明確にする必要があるという意見が一番多かったかと思います。ここについては、当然、その下の幾つかの点もあわせて全体を考えていくということでございます。

内容的には、例えば、お手元に監査基準の公開草案があると思いますが、18ページから「監査基準」がございまして、その冒頭が、1、「監査の目的」となっております。この文章の中で、例えば、「すべての重要な点において」という表現と、第2パラグラフにおける「財務諸表の全体として重要な……」というような用語法の関係はどうかと。ここら辺は、1つには、「すべての重要な点において」というのは、監査上の重要性との関係、あるいは無限定適正意見と限定意見を区別するというような関係、それから、国際的な基準でもこのような表現が使われているということから、基本的には必要な表現ではないかというふうに考えられます。また、「財務諸表の全体」というのは、このほかにも幾つか出てまいりますように、財務諸表の全部、注記、金額の表示、内容的なものをすべて含めた全体というような意味で使っております。この辺の文章のつながりなどがもしわかりにくいということであれば、検討してはどうかということでございます。

それから、ポツの2でございますが、「自ら入手した監査証拠に基づいて」という表現が、監査人が全部直接自分で証拠を集めるというような形にとられないかということですが、これは十分理解されていると思うのですが、当然、監査人の責任で集めるという趣旨ですので、それでも誤解されるかどうかという点がございます。

それから、次のポツとその次のポツにも関係ございますが、「保証」の意味、これは何回も何回も審議の過程でもご議論いただいて、前文のところでその趣旨がかなり詳しく説明されているということでございますので、どうしても部分をとらえると、ある一方の見方では、少し監査人の責任が強すぎる、あるいは結果責任を問うような表現になっていないか、しかしながら一方では、投資家にとっては余りにも弱い表現ですと、何らの監査における保証というか、どの程度の監査人の心証を得たのかがわからないというようなことがございまして、その全体を前文の方で詳しく説明するという形をとらせておいております。ですから、全体を読んでいただければ理解できるのではないかというふうに考えておりますが、なお特に用語等でもしご意見があれば、また検討されてはどうかと考えております。

その次の「合理的な保証」ですとか――これは用語ですが、「十分かつ適切な監査証拠」、「合理的な基礎」等の関係を明確にできないか。これも文脈的に読みますとそれぞれの意味は明確に使われていると思いますが、もし意味が不十分、あるいは使い方がまずい箇所などがあれば、同じ用語が何回も使われておりますので、これは全体として表現が適切かどうかまた検討してはいかがかと思っております。

それから、不正の摘発が監査の目的ではないことを強調する。これは当然でございまして、前文にも記載がございます。これで一応十分ではないかと思いますので、基準の方にここまで特に書くという必要はないのではないかというふうに考えております。

それから、この「監査の目的」の中に「企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を適正に表示しているかどうか」というような表現がございますが、キャッシュ・フローの状況というのは証券取引法におけるキャッシュ・フロー計算書を対象とするということですので、証取法監査だけを対象としているというふうに見られないかということでございます。ここも前文の説明で、監査の目的とする財務諸表によって意見の表明が違うということは明確に書いてありますので、そこで十分理解はできると思います。ただ、財務諸表の種類を特定する意図ではないということをあえて明確にするとすれば、例えば「キャッシュ・フローの状況等」というような「等」を入れるという工夫も考えられるわけですが、そうした場合には、後ほどの監査報告書の記載でも「等」を入れると何かちょっとおかしいというような感じもございますので、例えば前文の方だけ変えて基準の方は変えないとか、その辺は意図が間違わないように、あるいは誤解を生まないような形で検討してはどうかというようなことを考えております。

一応、「監査の目的」の部分はこのような事項でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいま事務局からご説明していただきましたけれども、事務局、そして起草メンバーの皆さん方のご検討をいただいた上で、対応あるいは考え方等をここにご説明させていただきました。どうぞ皆様方からこの点に、一応「監査の目的」とのかかわり、ほかのところでも結構でございますけれども、まず「監査の目的」を中心にご意見をいただければありがたいと思います。どうぞ、ご自由にご発言いただきたいと思います。

加藤委員、どうぞ。

○加藤委員

最初の黒丸の「すべての重要な点」というところなんですが、この対応・考え方のところに書いてある趣旨が、それと今の多賀谷さんの説明を聞いていてちょっとはっきりしなかったのは、ここには「『財務諸表の全体』という表現との関係を明確にして文章を修正する」というふうに書いてあるんですが、要するに、「財務諸表の全体」という表現に置き直すという意味なんですか、あるいは別の表現でそういうことがわかるようにするという意味なのか、どういう方向で直すかというのがはっきりしなかったのですけれども。

○多賀谷課長補佐

済みません、今の段階で具体的な文章表現まで記載してはちょっとあれかと思いましてしていないんですが。1つには、そもそもの目的、今の文章の全体のポツへの掛かりが、「すべての重要な点において」というのがどこに掛かっているのかというご意見がありまして、その掛かり方と「財務諸表の全体として」という、これは監査報告書の記載にも出てくるわけですが、そことの関係が掛かり方によっても少しおかしいのではないかと。ですから、まずそれぞれの意味を明らかにすれば、この「すべての重要な点」はどこに掛かるのかと。これはすべての重要な点において適正に表示しているということですから、そこら辺は、まず「すべての重要な点において」という言葉の意味を決めた上で、つまりこれを取ってしまえという意見もあったものですから、取ってしまわないでどこに置くかと、どういう文章のつながりにするかということを考えると。そのときには、当然、「財務諸表の全体」というのと「すべての重要な点」はイコール「全体」なのかというと、いや、それはそうではありませんということもどこかではっきりさせる、前文かどこかではっきりさせておかないと、同じことを違う言葉で言っているのか、そもそも違うことなのかということだと思います。

やはり、国際監査基準等でも入っておりますし、すべての重要な点が全部オーケーであれば無限定適正と、しかし、その中に何らかの問題があれば除外事項として限定される場合ですとか不適正意見になるというような構成で報告基準の方はつくっておりますので、やはりこれを取ってしまうというのはちょっと行き過ぎでそこがあやふやになってしまうのではないかということで、そういう幾つかの点を踏まえて全体の文章の流れも変えてはどうかというような趣旨でございます。

○脇田部会長

よろしゅうございますか。

○加藤委員

それでは、具体的なことはこれから考えるということですね。

それからもう1つ、最後の黒丸なんですが、このキャッシュ・フローの状況について証取法監査だけかという質問が出てくるというのは想定できたんですが。それで、私が前の審議のときにもちょっと提案したことなんですが、やはりこういう疑問が出てくるということを考えると、もう少し具体的に何か文章を入れた方がいいのではないかと思うのですが。私が前に言ったのは、いわゆる読みかえると、監査の種類によってここに出てくるものを読みかえるような文章を少し入れて。というのは、キャッシュ・フローだけの問題ではなくて、適正意見とか適法意見とか、ほかにもいろいろと変えなければいけないところがあるんですね。ですから、そういうところは財務諸表の種類とか監査の制度等によっては適切に読みかえるんだというような趣旨の何かを入れた方がわかりやすいかなと思うんですけれども。

○脇田部会長

ただいまの点については、「監査基準の位置づけ」のところで述べている以上にもう少し書き込むということでしょうか。

○加藤委員

そうですね。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいまの点につきましてさらにご発言がございましたら。

ただいまの加藤委員からのご発言では、ここでは、「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律に基づく監査など、財務諸表の種類や意見として表明すべき事項を異にする監査も含め」という、それからほかにも表現がありましたね、この辺を幾つか述べてはいますけれども、もう少し整理してその辺が明確になるようにと、そういうご発言でございますね。

この点でご発言はありませんでしょうか。いかがでしょうか。

奥山委員、どうぞ。

○奥山委員

奥山です。ちょっと今の加藤さんのご意見ですけれども、私はここは全然そういう意味での違和感はなかったんですよね。だから、当然、キャッシュ・フロー計算書はなければないでそれは構わないということで、位置づけでこれ以上何を言うのかなというのは、ちょっと表現としては非常に困るのではないかなというふうに思いまして、そういうふうに出てきた質問は、これはこう理解してくださいということでいいのではないかというふうにあえて発言したいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

どうぞ、ご発言いただければ。

内藤委員、どうぞ。

○内藤委員

今の点にもかかわるんですけれども、「キャッシュ・フローの状況等」としてはどうかということなんですが、私はその「等」はやはり入れない方がいいのではないかと思います。そこを読みかえるという問題もあるんですけれども、証券取引法監査で対象としている財務諸表は、財務諸表で考えられる最大限のものを、一番模範的なものを想定していると思いますので、これにさらに「等」をつけたときに、監査基準はやはり監査人の方の責任限定の意味もありますので、そうするとその「等」が拡大解釈される恐れというのも否定できないと思うんですね。ですから、この「等」はやはり入れない方がいいのではないかというふうに思います。

それから、それとはちょっと別なんですけれども、ちょうど真ん中に「保証の意味の明確化」というところがございまして、それは「心証、確証等」というふうに書いてございますが、この前文の5ページのちょうど真ん中辺より少し上に(5)というのがございまして、「合理的な保証を得たとは、監査が対象とする財務諸表の性格的な特徴や監査の特性などの条件がある中で、職業的専門家としての監査人が一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って監査を実施して、絶対的ではないが相当程度の心証を得たことを意味する」、この「相当程度の心証」が「合理的な保証」だというふうに読めるわけですね。

たしか前のご意見の中に、監査で、絶対的ではないけれども、それに近い高度の確証を得ていないと意見は表明しないという前提があるという指摘で、「相当程度の心証」というと人によってはかなり低く見る人がいて、いわゆる法律では――これは宮島先生に聞いた方がいいと思うんですけれども、証明という非常に高度の心証、確証を得た場合と、それよりも劣るんだけれども7割とか8割とかといって――法律学者によっても違うと思いますけれども、疎明に当たってしまって、疎明も監査なのかというふうにとられてはいけないというご趣旨だと思いますので、ここは「相当程度高い心証を得た」とか、何かそういう表現の工夫が要るのではないかというご指摘だったのではないでしょうか。

○脇田部会長

ありがとうございます。

宮島先生、ご発言ございましたら。

○宮島部会長代理

強調する意味では入った方がいいと思うんですが。ただ、「相当程度の心証」というのは一般に会計士として要求される水準を確保しているかどうかということですから、これでも法律上は問題はないと思いますけれども、強調する意味では、今おっしゃったように、「相当程度高い」というようなものを入れたらいいかなという気はします。ただ、「合理的な保証」という言葉が、どうも保証というテクニカルタームが僕らにはあるものですから、ちょっと引っかかってはいるので、さっきご質問しようかなとは思っていたのですが。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ほかに、これとの関連と申しますか、ご発言はございませんでしょうか。

それでは、また後ほどまとめてご発言いただくことにいたしまして、次は「リスク・アプローチ関係」に進ませていただきたいと思いますので、事務局よりまたご説明をお願いします。

○多賀谷課長補佐

では、資料の1ページの2の「リスク・アプローチ関係」のところを簡単にご説明いたします。

初めに、これは大まかな意見といたしまして、リスク・アプローチは既に導入されているんだと、ですから改めて余り言わなくていいというご意見と、やはりより明確化すべきだというご意見、この2つのお立場のご意見がございます。これは、これまでもご審議いただきましたように、また前文にも書いてございますように、リスク・アプローチが既に導入されているということを前提としてこれまでもご検討いただいてきたわけでございます。ただ、すべてが明確にはなっていないということから、定着が不十分なところもあるのではないかと、それから、この際、監査人のみならず、利用者や作成者にもなるべく理解できるような基準の枠組みを提供しようということでございましたので、やはりこれはこの公開草案のとおりの枠組みを遵守していくということで進めてはどうかと、つまり大枠は変えないという趣旨でございます。

2つ目が、統制評価手続・実証手続と固有リスクの評価との関係を明確化する。

3つ目が、「財務諸表項目自体が有する」――これは「固有のリスク」と続くのですが、は不要ではないかというところで、固有のリスクについての使い方に関するご意見が幾つかございました。

この改定案では、固有リスク全体を暫定的に評価するために情報を入手しまして、財務諸表自体が有する固有リスクを勘案した上で監査手続を決定するという流れで記述しております。これは非常に模範解答的な意味での枠組みを示すということで記述しておりますが、実務では当然区々に手続を行うというよりは、一体化あるいは総合的に行っているというところから、何か「財務諸表項目自体が有する」というような限定を加えて、特に分けるというのが少し実務的にはむしろ奇異になるというような感覚のご意見であったと思います。

したがいまして、この全体の流れがわかりにくければ、このような関係を整理する意味からも、「財務諸表項目自体が有する」とか、そういうあたりの用語を削るとか、何らかの修正をしてはどうかと、また、修正をして、固有リスク全体を検討して、またそれを勘案して手続を決定するということでも特に弊害はないのではないかというふうに思われます。ですから、この辺は少し幅広く解釈する余地を残してはいいのではないかという趣旨でございます。

2ページ目に参りますが、費用対効果を考慮して実証手続のみによることも許容するというご意見がございました。これも既に検討していただきましたが、このご指摘はそのとおりなのでございますが、これはやはりリスク・アプローチという枠組みの中ではレアケースになるということでございまして、実務的にはかなりあるということですが、枠組みからするとレアケースということで、基本的枠組みを崩すというのはいかがなものかと、あるいは、実証手続をやれば間に合うんだということを余り言うと、実証手続にその優位性があるというような誤解をされる恐れがあるのではないかと。ですから、実務をやる中でのもし事柄ということであれば、監査基準よりも今後の公認会計士協会でのご検討に委ねる方がむしろ実務に則した取扱いができるのではないかということでございます。

それから、経営者に対して不正・誤謬の事実を報告することが指示されているが、これに加えて「内部統制の重要な欠陥」を含めるか。これは含めた方がいいというご意見だったわけですが、一応この監査基準の枠組みといいますか位置づけの中では、これは不正への対処という観点からの条項でございます。したがいまして、これと並べて「内部統制の欠陥」を直接的に基準に盛り込むというのはちょっと位置づけとしてどうかということでございます。むしろ、もちろんこれは重要なことですから、統制評価手続やいわゆる内部統制を見る中のディスカッション等で、もしそういうことがあればそういうところにも注意しなさいというような形で言及するということで足りるのではないかということでございます。

それから、監査上の重要性の説明で、「会計上の重要性とは区別される」との記述は誤解を与えるのではないかというご指摘がございました。これは、公開草案では8~9ページにかけて、4、「監査上の重要性について」というのがございますが、9ページのところの最後の部分ですが、「このように」ということで、「会計上の重要性はとは区別されるべき概念である」ということですが、いろいろな考え方もあり、ここを「明確に区別される」と言い切ってしまうのはどうかということもございます。そういうご指摘もありますので、これは修正をしてはどうかというふうに考えております。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

事務局及び起草委員の方々とご意見等を検討いたしました対応をリスク・アプローチにつきましてまとめましたので、それをご説明いたしました。どうぞ、ご自由にご発言いただきたいと思います。

リスク・アプローチは、特にこの部分は非常に技術的あるいは実務の領域の問題でございますので、特にご発言ございませんでしょうか。

加藤委員、どうぞ。

○加藤委員

固有リスクのところなんですが、「財務諸表項目自体が有する」は不要ではないかというコメントが来ているわけですが、これはこれだけだとちょっとわかりにくいというか、固有リスクというのはどういうものかというのが理解できないのではないかという気もするんですね。前文の方を見ると、7ページの真ん中あたりのマル2のところでは、「特定の取引記録及び財務諸表項目が本来有するリスク」という表現になっているんですね。だから、これの方がまだわかりやすいという気もして、どうもこの19ページのこっちの方はきちんと理解されていないのではないかなという気もするので、もう少し説明を前文にあるような形で補足したらどうかなという気もするんですけれども。

○脇田部会長

多賀谷課長補佐、いかがでしょうか。

○多賀谷課長補佐

これは恐らくそういう趣旨もあり、それと、19ページの「監査計画の策定」のところでは、この7ページに書いてあります固有リスク、経営環境とか、そういうところも含んだところの全体を当然最初に評価するためにいろいろな情報を入手すると、それで、次の段階で少し狭めてという私の表現が悪いのかもしれませんが、今度、監査計画を立てるときには、内部統制の状況を把握して統制リスクをまず判断する、その統制リスクにあわせて財務諸表項目の部分の固有リスクを勘案して計画を立てるということで、非常に整理をされているわけです。ただ、現実には、監査計画を立てる段階で把握した固有リスクなりその評価を監査計画に反映させるために財務諸表項目自体が有する部分だけを特に取り出してやるのかどうか、それはもう一体的に、経営環境ですとか、そういう取引の特殊性とか、もろもろを含めたところでもうあわせて計画を実際には立てているんでしょうと。

そうすると、ここの流れで、まず全体を把握して、それから個々の項目のリスクにかかわらしめながら計画を、その項目ごとの、どういう監査手続をどういう範囲でやるのかを立ててきなさいというのは非常に順番としては整理ができているのですが、そこまで細かく言う必要があるのでしょうか。要は、統制リスクを評価して、把握した固有リスクを反映させながら、監査のどういう範囲でどういう手続をするのかという計画を立てなさいというふうに書けば十分ではないかと。何か絞り込むことによって特定の非常に強い意味が出てしまっているのではないかという感じがするということでございます。ですから、現在のままでも流れとして間違っているというふうには考えていないのですが、実務を考えますとそこまで具体的に細かく指示をするかどうかということだと思います。

○脇田部会長

友永委員、お願いいたします。

○友永委員

ここのところは19ページの「監査計画の策定」の第2項と第3項の問題だろうと思うのですが、「固有のリスクの評価のためにさまざまな情報を入手する」という記載が2番にございまして、「その影響を考慮しなければならない」という文章になっております。経営環境の影響を受ける固有のリスクの評価ということで、具体的に評価をするという表現にここではなっておりませんので、そう読めない場合は、第3項の「財務諸表自体が有する固有のリスクも勘案した上で」ということが非常に限定された固有リスクのみのを考慮して統制評価手続・実証手続に係る監査計画を策定するという読み方になってしまうということを避けるためには、今、多賀谷課長補佐がご説明になったように、ごく一般的に、固有のリスクを勘案したということになれば、勘案するには評価が前提としてございますので、そういった文章にした方が全体の枠組みがはっきりするのではないかということを思います。

○脇田部会長

山浦委員、ご発言はありますか。

○山浦委員

もともとこの19ページの2の3項を入れたのは、監査計画を策定する段階で、要するに、監査要点ごとに策定するわけですね。そうしますと、監査要点というレベルまで落とし込んでいますので、それに合わせた固有リスク・統制リスクの評価というのが頭にありましてこういった文章表現をしたわけです。そういった意味では、我々としては、当初、むしろこういう表現をした方がここの趣旨はわかりやすいという理解だったんです。ただ、それが余り限定的にとらえられるとかえってわかりにくいということであれば、この点を外すなり、あるいは加藤委員がおっしゃるような形での何らかの補足をするなり、そういうことは考えたいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

加藤委員、ご発言はございますでしょうか。

加藤委員の最初のご発言は、7ページのマル2にありますように、固有リスクは、特定の取引記録及び財務諸表項目がというか、もう少し広く規定していくという考えでご発言になったのでしょうか。

○加藤委員

結局、3番では特定の科目とか取引――サイクルと呼んでいるんですが、どうも「財務諸表項目」と呼ぶと貸借対照表のことしか言っていないような気がして。要するに、特に統制評価手続の方を採用するということになると取引記録の内部統制を評価するという方がウエートが高まるわけですから、むしろ、7ページに書いてあるように、特定の取引記録とかというニュアンスの方が大きくなるんですね。どうもこの3番の文章を読んでいるだけでは、この1番とか2番を考慮した上で、特定のサイクル、取引とか、特定の科目について、どっちの手続を採用するんだとか、統制評価手続の方にウエートを置くのか、実証手続の方にウエートを置くのかとか、あるいは両方のコンビネーションでいくのかという、そういうことをここで考えるということが何となく余りはっきり出てこないんですよね。この表現を見ると、「統制評価手続と実証評価手続に係る監査計画を策定し」と、並列的に書いていますよね。だけど、本来ここでは、いろいろなリスクとか2番で得たいろいろな情報とかを考慮した上で、特定の科目については実証手続でいくとか、サイクルについては統制評価手続を採用するんだとか、その辺のいろいろな判断がここで出てきて最終的な監査計画になると思うんですが、この平面的な表現を読むとどうもそこまで読み取れないのですけれども。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいまいただきましたご意見を踏まえ、また、先ほど多賀谷課長補佐からご説明いたしましたように修正してはどうかということでございますので、ただいまのご意見を踏まえて検討をさせていただきたいと思います。

どうぞ、山浦委員。

○山浦委員

加藤委員がおっしゃることはよくわかるんですけれども、ただ、逆に言いますと、少し透明性の高いというか、無色性の表現ということであえて通したところがありまして、おっしゃるような形の基準の内容にしますとむしろ実務指針レベルで取り上げた方がいいというのもたくさん出てきます。そういう意味では、できる限りリスク・アプローチの大きな枠組みを示すことにとどめて、実務的な対応問題は実務指針レベルで対応していただくといった趣旨もあったものですから、あえてそのあたりは無色の表現をしたところも考慮していただきたいと。しかし、いずれにしてももう一度検討いたします。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、そのほかの点でリスク・アプローチに関しまして、ご発言はございますでしょうか。

よろしゅうございましょうか。

それでは、ご発言がございませんので、引き続きまして、監査手続、これも実務の世界にかかわりが強い問題でございますけれども、「監査手続関係」につきまして、事務局からご説明をお願いしたいと思います。

○多賀谷課長補佐

議事次第の項目ではまとめていたんですけれども、少し先ほどから議論になってしまって。監査手続関係はまたより細かい点になりますので、簡単にご説明させていただきたいと思います。

統制評価手続は監査要点に関係するかどうか明確ではないということですが、直接には関係しないけれども、当然、リスク・アプローチという中では関係があるというのは前文の方でもわかるのではないかというふうに考えております。実際には複合的であるというご意見が出ておりますし、そこら辺は実務的な取扱いに委ねてはどうかということでございます。

それから、2つ目と3つ目のポツでございますが、個別手続を削除しない方がいいのではないか、これは、要は、実査・立会いといったレベルの問題ですが、それと、実証手続イコール監査手続と誤解されないようにすべき、これはちょっと裏返しのような感じのご意見でございます。ここで個別手続を削除したのは、やはり固有の監査手法の実施が実証手続と結びつけられて理解されないようにするため、すなわち、実証手続イコール監査手続という誤解をされないためにこのようにしたわけでございます。それで、削除したといっても、これは監査の手法としてなくなったということではなくて、むしろもう少し実務的なレベルの取扱いで明確にしていただくという趣旨でございますので、復活する必要はないのではないかということでございます。

それから、「認識する期間の適切性」等監査要点の例示の表現を見直してはどうか。監査要点につきましては、19ページの「実施基準」の一の「基本原則」の2に例示をしているところでございます。この「認識する期間の適切性」というのが意味するところは、いついくら認識するのかと、あるいは期間配分をどうするのかという問題でございますので、意味するところはそういうことなんですが、どうも用語が従前使っておりました「期間帰属の適切性」というものとの比較において非常にわかりにくいという趣旨のご意見でございましたので、用語法についてはまた検討してはどうかということでございます。

それから、監査要点、監査手続、監査証拠の関係を監査手続の概念を明確にすることで整理できないかというご意見がありました。これは「監査手続」という言葉使いが、監査の全体を示しているのか、ある特定の手続を示しているのか、そこら辺が文章の中で読みづらいと。基本的には、監査手続というのは手続全体を指しているのですが、個々の今申し上げましたような監査の手法との関係とかがうまく読み取れないようなところがあれば、説明が十分かどうか検討してはどうかということでございます。

それから、情報技術について、高度な情報技術を利用している場合に限って評価するように読めるが、基本的な評価対象とすべきということで、これは文章的にどうもやはりそういうふうに読めると思います。これからは情報技術というのはIT社会で非常に重要だということで、高度かどうかということではなくて、そもそもそういうものは監査の中で評価する対象になるんだというような文章に修正してはどうかということでございます。

それから、会計上の見積りの合理性について、実績との比較等が強制されるのかどうか前文と基準の表現は整合しているか、つまり、実績等の比較がマストなのかどうかということでございます。この点については、公開草案の20ページの「監査の実施」の三の3にあるわけでございます。要は、経営者の見積りをどういうふうに検証していくかということでございますが、ここでは「監査人の行った見積りや実績等の比較等により」ということで、あくまでもこれは例示であって、必ずその方法を取らなければいけないということではないということでございます。その点については前文の表現と特に齟齬はないというふうに考えております。そういう理解でよろしいかと思いますので、ご確認をしていただければと思います。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

引き続きまして、監査手続関係について、ただいまどのように対応をしていくかという考え方をまとめて説明していただきました。

この点についてご発言がございましたら、対応についてのお考え、あるいは各委員のそれぞれの問題点のご指摘をいただければありがたいと思います。いかがでございましょうか。

よろしゅうございましょうか。

それでは、このような対応をさらに検討させていただくことにいたしまして、引き続きまして、「ゴーイング・コンサーン関係」に移らせていただきたいと思います。それでは、多賀谷課長補佐、お願いいたします。

○多賀谷課長補佐

「ゴーイング・コンサーン関係」、「継続企業の前提について」というふうになっておりますが、公開草案では10ページ、前文が10ページの6にございます。ここでは幾つか問題点が指摘されております。

1つは、「企業が継続する前提」ではなくて、「継続する能力があるかどうか」ということではないかという指摘がございます。これは、「能力」というのが、恐らく英語の訳か、あるいは公認会計士協会が従前使っていたとは思うのですが、ちょっと日本語で言う「能力」というのは非常にいろいろな意味が出てきてしまいますので、変えるにしても「能力」というのは必ずしも適切ではないのではないだろうかと。今はすんなりと「継続するとの前提」ということで、非常に平易な、フラットな文書になっておりますので、そこら辺でこの定義を変える必要があるのかどうか一応はご検討いただければというふうに考えております。

2番目、ここもたびたび議論になったところかと思うのですが、継続企業の前提に関する重要な疑義そのものを監査人が検討するように読めるところがあると。重要な疑義を抱かせる事象または状況を改善するための経営者の対応を検討するのではないだろうかと。つまり、重要な疑義があるとその疑義が晴れるかどうかというような検討をするのか、それとも、どういう事象があるのか、あるいはそれに対してどういう計画があるのか、改善するための計画があるのか、ということを検討するのではないかということでございます。これは、当然、継続企業の前提にかかわる事象や状況へどう対応しているのかということが検討の対象でありまして、疑義がなくなるんだとかなくならないという判断をしてしまうとそれは監査人が結果を保証したかのようなことになりますので、それは検討する趣旨とはならないんだということが基本的な理解だったかと思います。ただ、文章の表現が、ただいまの「能力」という言葉が、若干、「事業継続能力」というふうに使われておりましたり、あるいは11ページの(3)では「継続企業の前提に係る疑義」ということで、その疑義自体を取り上げているように思われるので、この辺は「事象」とか、適切に、趣旨から逸脱しないように表現なり表題も含めて文章を少し修正してはどうかということでございます。

それから、3ページでございますが、監査は開示の適否を判断するのではないかということでございます。つまり、この意見は、開示の適否だけを判断すればいいんだというようなことかどうかということですが、ここは、当然、経営者の計画の合理性は一応見るということが前文の方にも基準の方にも書いてありますので、結果としての監査の対象は注記事項ということになるとしても、それは単に注記を見るということではないということになろうかと思います。ですから、それ以上の説明は特に要らないのではないかと思われます。

それから、ゴーイング・コンサーンにかかわる注記には、重要な不確実性があることもあわせて記述することを明確にすべきであると。これは、ゴーイング・コンサーンに関しては、二重責任の意味からも、まず経営者自らが自らの認識した事象あるいは状況を記述し、また、その対応も注記をしてくださいということが基本になっているわけですが、結局、結果については不確実なわけですから、結果は不確実であって、その結果までは当然その時点の財務諸表には織り込んでおりませんということをあわせて注記するべきではないかと。アメリカの例なんかを検討したときにはそのような形になっているので、そこまでは前文でも明確にしておく必要があるのではないかということでございます。

それから、「一定の事実」――資料がちょっとぶっきらぼうな書き方で大変申しわけございませんが、11ページの上の方で、「事業の継続は困難であり、財務諸表の前提が成立していないことが一定の事実をもって明らかなときは、不適正意見を表明する」というこの「一定の事実」というのは、例えば、会社更生法なのか、民事再生法なのか、特定をした方がいいのではないかというような趣旨のご意見だったと思います。ただ、特定するというのができるかどうかというのも非常に難しいということと、例示をすると、今度はそれだけだととらえられてしまう恐れがあるので、この辺はもう少し慎重に検討をしてみてはどうかと。当然、監査人ご自身のご判断も入るところですから、あるいは会社の状況によってもかなり違うということでございますので、そういう事実を、単純に言えるようなものもあるかもしれませんが、言えないようなものもあるかもしれないということでございます。

それから、継続企業の前提そのものを認定するとの誤解があると、監査報告書で適正意見が表明された場合、監査人が翌期末までゴーイング・コンサーンを保証していると誤解されないか。これも監査基準だけを読むとそういうふうにとられる方もいるのかもしれませんが、前文の方の全体的な説明を読んでいただければ、当然、監査人がつぶれないという保証をしているのではないということはわかると思います。併せまして、ここで、「少なくとも決算日から1年間」という表現がございまして、これについては、より長くという意見と、1年に限定するんだという意見と両方ございます。ここは、現在の表現で「少なくとも1年」ということですと1年以上は当然許されますので、そこら辺で両方の意見がありますけれども、現在の表現であれば両方の意見のご趣旨はカバーできるのではないかということで、少なくとも1年間は検討の対象であると、ただ、保証するものではないということでございます。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、早速でございますけれども、ゴーイング・コンサーン関係につきまして、どうぞご自由にご発言いただきたいと思います。いかがでございましょうか。

伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

ここのところは、経営者としては、1つだけ引っかかるところがあるんですよね。前にもちょっと申し上げたと思いますが、私は大変微妙な立場でして、会計監査人の方々が1年間のキャッシュ・フローにこだわるというのは大変よくわかるんですよ。だけど、経営というのは短期ではないので、やはりそこのところと何らかの……、もうちょっと長い目で見て、「少なくとも1年は」とおっしゃっていますが、そういうふうに理解したらいいのかどうかということなんですよね。そこのところが多少経営的にはやはり引っかかるなという感じがしますね。上場会社とか何かの場合は全く問題ないと私は思います、それでいいと思うんだけれども、やはり企業の中には幾つかあって、開発企業的なものに関して言えば、ある程度3~4年を見ないと経営というのはわからない、そういうようなものについてまでどういうふうに適用するのかということもあるんですよ。これはちょっと個人的なというか、一般的に経営者が考えているいろいろな悩みをちょっと申し上げたんですけれども。特に、だからどうこうということでは決して、変えてくれということではないのですが、そういうことがあるということはご認識いただきたいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

そのほかにご発言はございますでしょうか。

加藤委員、どうぞ。

○加藤委員

ここのコメントの「一定の事実を具体的に明らかにすべき」というところなんですが、これは一定の事実そのものもあると思うんですが、それよりも、ゴーイング・コンサーンの中で不適正意見を表明するということが非常にわかりにくいというか、どんな状況のときにどういう意見を出すんだとかそういうところがあるので、やはり「一定の事実」というものの疑問も出てくるんだと思うんですね。確かに例示をするといろいろと問題があるので慎重にということですが、基準そのものでなくてもいいと思うのですが、実務指針の中でもいいと思うんですが、特にこの「ゴーイング・コンサーンに関して不適正意見を表明する」ということについては、もう少し具体的に何らかのガイドラインというものが必要ではないかという気がします。

それから、もう1つなんですが、今回の検討事項の中に取り上げられていないコメントの中でよく理解できないコメントがあったのですが、そのコメントを出したところがそういう専門の方たちのところから出ているものですから、そちらの起草メンバーの方たちとかが検討されたときにどういうふうに解釈されたのかを聞きたいのですが。

関西監査研究会の方から、継続企業の前提に疑義が存在しないときの継続企業の監査も考えるべきではないかというコメントが出ているんですね。どうもこの言っている趣旨がよくわからないのですが、そのコメントの本文そのものを見ても何も説明がないし、ただ、出したところが関西監査研究会ですから、プロの集まりですから、何かそれなりの裏というか深い意味があるのかなと思って、その辺をどのように解釈されたのかお聞きしたいんですけれども。

○脇田部会長

この点については、山浦委員から、事情をご存じでしたらご発言していただければありがたいと思いますが。

ただ、今のご発言のように、確かに関西監査研究会の先生方のご発言で、慎重に検討いたしましたけれども、このメモには取り上げてはおりません。この辺を起草委員として山浦先生、お願いいたします。

○山浦委員

我々としては、加藤委員と全く同じように、どうも意味が通じないと。実は、これは、先週、大阪学院大学で我々の学会がありまして、この点の本来の趣旨を伺いたいと思っていたのですけれども、そのチャンスが得られなくてそのままだったのです。要するに、継続企業の前提に何ら問題がないというときには、監査人としてはどう対応するかと、そういうことも一言入れてほしいという話ではないかというふうに私は憶測をしていたのですけれども、残念ながら今言ったように、これを確かめるチャンスがなくて、これは失礼しました。

○脇田部会長

大体私どもはそのような理解に至って対応をさせていただいております。

ほかにご発言はありますでしょうか。

よろしいでしょうか。

内藤委員、どうぞ。

○内藤委員

関西監査研究会からの意見ということで、夏にこの監査基準について検討した折にある先生から提出された質問だったと思うんですけれども、それが最終的に意見書に入った経緯はちょっとわからないんですけれども、そのときのご議論では、この基準の全体的な枠組みの中で、継続企業の前提に関する疑義がある場合にはこうしましょう、ああしましょうというのには規定があるのに対して、そういうのに問題がないときはどうなるんだという一文があった方が基準として全体を整合的にあらわしているんじゃないですかと、だから、それを1つの基準として設けるべきではないですかというご趣旨のご発言があったのではないかと、だから、そういうご質問だと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

そういう今のお話もございまして、基準でございますので、問題が生じた場合ということで基準をつくっていく、ある種の例外としてつくっておりますので、ゴーイング・コンサーンに問題がない場合については当然それを前提として監査が行われる、という理解で今回は対応させていただいているということでございます。

ほかにご発言はございましょうか。

奥山委員、どうぞ。

○奥山委員

ちょっと角度が違うかもしれませんが、私どもが非常に気にしていることがありますのでちょっと申し上げたいと思うのですけれども。

不良債権の償却問題で、いわば銀行の自己査定、また、それに関する監査の問題、そして検査局の検査の問題、そこで分類あるいは区分の違いということについて今後大きな問題として出てくるだろうということが予見されるわけですけれども、その中でやはり一番大きな共通項は、合理的な経営計画、これがどのように理解できるかということになると思うんですね。

それで、もちろん起草メンバーで検討されていたら結構なんですけれども、そういう銀行等の査定の、いわゆる検査マニュアル等の中での経営計画なり再建計画なり、それと表現等――統一する必要はないと思うんですけれども、矛盾がないかどうか、あるいは、もっと言えば、民事再生法とか、やはりその中で計画があって成り立つという問題がありまして、これを突き詰めれば、多額の債務があるところは非常にみんなおかしくなる危険性もなくはないと、その辺を、これで大丈夫だということをもう一度確認していただければ大変ありがたいと思ってあえてお話し申し上げました。

○脇田部会長

貴重なご意見をいただきましたが、起草メンバーのところでもできるだけ事例といいますかそういったものを検討しながら、かつ、先ほど山浦委員からもご発言がありましたように、基準としての透明性を保つという形で検討しておりますので、ただいまのご意見も伺っておきたいと思います。

それでは、渡辺委員、どうぞ。

○渡辺委員

今の奥山委員のおっしゃったことにちょっとご質問をしたいのですが。

つまり、銀行については金融庁が示したものどおりにやっていればそれでいいではないかと、そういうふうにしたいということなんでしょうか。

○奥山委員

そうではなくて、銀行は基本的には自己査定で債務者区分をやるわけですから、その債務者区分で今一番問題になっているのは、要注意先から中に破綻懸念先があるのではないかと、要注意先が破綻懸念先に仮に区分が変わったとすると、やはりかなりの危険度でもって継続性の問題が発生してくると。そういう意味で、その区分ないし分類において……、ここで問題になるのは銀行の方ではなくて債務者の方ですから、区分された途端にうちは区分されたよということがすぐわかるわけではないので、その辺でいろいろな事例が今後も出てくる可能性もありますので、一応その辺はこういう書き方で大丈夫かということを検証してほしいと。

端的に言えば、この前のマイカルのような問題が出ましたけれども、今後もほかにも出ないとも限らない。そのときに、そちらの方の会社は当然この問題があるわけですし、監査人もこのことを意識しなければいけないわけですね。せっかく来年の4月から適用するということであればその時期が関係してきますので、そういう意味で、せっかくの内容がそちらと連動しないということでは困ると、こういう意味なんですよ。

○脇田部会長

渡辺委員、よろしゅうございますか。

○渡辺委員

大変微妙なというか、ほかにも影響のある問題だということはわかりますが、一般論で言わせていただくと、そもそも監査基準というのは銀行が突然倒れたという問題から始まっていて、そのときの監査が不適正意見だったと、一体どういう監査をしてきたのかというのが出発点ですので、ここのところで――今おっしゃったのはそういう意味ではないと思いますが、そのまま出すと影響が大きいというところに戻ってしまうと、我々利用者から見ると、じゃあ一体何だったんだという感じが少ししたものですから……、そういうことではないのですが、ちょっとお伺いしたわけでございます。

○脇田部会長

誤解があるといけませんのでもう一度私から申し上げますけれども。

起草委員の方々、あるいは事務局の方々においても、いろいろな事例等はもちろん検討しておりますし、できるだけ監査基準が規範性を持ち得るように検討しておりますので、ただいまの渡辺委員、奥山委員のご意見は当然に尊重いたしますが、同時に、監査基準としては長い生命を持つわけでありますので、そういった面での普遍性とか、あるいはそれ自体の規範性の中立性とかそういったものもございますので、もちろんそういったものを汲み取りながらも、これからの基準として生き続ける、そしてまた、基本的に国際間さ基準等との対応等を考えながら我が国の公認会計士監査基準の指針となっていくように努力しておりますので、そういった意味合いで、余り特定の事例をそのまま反映したということとはまた別の問題でございますけれども、そういった立場で考えさせていただきたいというふうに思っております。

○多賀谷課長補佐

今の奥山委員のご指摘は、起草メンバーにもご検討いただいたのですが、恐らく通常の会社ですと、当然、会社と監査人という二者の関係しかない中での例えば経営者の説明を聞くあるいは計画を聞くといった関係なわけでして、それを前提に監査基準は普通の場合はつくっているわけですが、別の基準があるような世界があるとすると、そことの整合性なり監査人の証拠の入手……。金融機関の関係で似たようなことばがあるので、その言葉使いとかで同じような状況を、例えば金融機関自体を監査している方とその債務者を監査している方は別々の立場ですから当然それは別々なわけですけれども、外から見ると何か一緒で、判断が違うとおかしいとか、だからそういうことにならないようにと、そういうふうに見られてしまうと監査人は責任がとれないといいますか責任範疇を越えてしまうような場合があります。ですから今は少なくとも二者の関係ということで、監査人と被監査会社の間において入手し得る監査証拠を前提として一応お考えいただいております。そのほかのまさに金融機関の検査との関係は、また別途、公認会計士協会でも協力体制なりをご検討いただいているということでございますので、またそれはそういう場で必要があれば調整をしていただければということでございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、ゴーイング・コンサーン問題はこのあたりにいたしまして、後にやはり大きな問題がございますので、「実質判断」あるいは「監査意見」等の問題を取り上げさせていただきたいと思います。

では、課長補佐からお願いいたします。

○多賀谷課長補佐

それでは、3ページの「実質判断」と「監査意見」を続けてご説明させていただきます。

「実質判断」のところにつきましては、要は、実質的に会計基準の適用関係を考えていくというときには、会計基準の階層、一般に公正妥当と認められる会計基準というのにはどういうランクづけがあるのか、優先順位があるのかということを明確にしないといけないというようなご意見でございます。ただ、本当はこれは会計基準自体の問題でございますし、監査基準の方で一概にどれが先でどれが後というのを全部決めるというのは難しいのではないかということでございます。

それから、経営者の財務諸表作成責任においても明記すべきということで、これは実質判断をするんだということをやはり経営者の財務諸表作成責任においても明記してくださいということで、これは当然と言えば当然のことでございますので、前文の方でちょっと不足があれば記述してはどうかということでございます。

それから、「監査意見」でございますが、ここも、1つの意見は、先ほどの監査の目的と同じように、「すべての重要な点」という表現、「財務諸表の全体」という表現、この関係の整理が必要であると。これは「監査目的」の文章表現を踏まえまして、報告基準の方にも反映をさせてはどうかということでございます。

それから、意見審査、これを実施基準の方に移すべきではないかという意見でございます。これは、当然、監査をいろいろやって最後に意見を形成して審査を受けるのだから、監査の実施の中に入れた方がいいというご趣旨だと思います。それはそのとおりだと思いますが、一応今回の監査基準の規定の置き方、位置づけという整理では、意見表明に当たってということですので、報告基準のところに置いてあるということでございます。

それから、「財務諸表の表示方法」という用語があります。これは「会計方針」という用語に概念的に含まれるのではないかというご指摘がございました。企業会計原則では、「会計方針」という用語の説明としまして、財務諸表の表示方法も含めてございますので、この辺の整合性を考えてはどうかということでございます。また、「財務諸表の表示」という言葉と「表示方法」という言葉も出てきまして、この辺をきちんと区別して文章をよく見た方がいいというご意見でございますので、用語法の整理も必要と考えております。

それから、不適正意見の場合も、影響額を記載させることを明確にしてはどうかと、また、影響額よりも、財務諸表に与える影響を記載するという方がいいのではないかというご意見がございました。これは、除外事項がある場合、あるいは不適正意見の場合、この場合の理由の書き方、影響の記述方法との関係を検討する必要があると考えております。ただ、例えば財務諸表の注記の記述に問題があるという場合には、必ず金額が記載できるということにはなりません。定性的情報も財務諸表にはございますので、そういう点も踏まえますと、「財務諸表に与える影響」という表現の方が内容に広がりがあるのではないかと考えております。

それから、「意見の除外」という用語を使っておりますが、「限定意見」というのが今までもよく使われてなじんでいるのではないかということでございます。現在のといいますか、この公開草案では、意見の除外という1つのカテゴリーに、その除外の程度によっていわゆる限定、特定の部分を除外するという限定の考え方と、全体がだめだという不適正の考え方があるという整理をしております。この関係を整理しまして、「限定意見」という用語をうまく使い得るかどうかということを少し検討してみてはどうかというふうに考えております。限定意見と言うと今度は不適正意見ではないわけですので、そこの説明とかその辺がうまくはまるかどうかということでございます。

それから、監査範囲の制約は、制約された事項の金額ではなく、それが不適切であった場合の潜在的影響の重要性より判断すべきではないかと。これは恐らく意見の趣旨としては、例えば特定の事項の監査ができなかったというときに、そこの財務諸表に書いてある金額ではなくて、それがもし不適切であったらどんな影響があるだろうということで重要性を判断するという趣旨だと思います。それはおっしゃるとおりのような状況もあると思いますが、この公開草案では、一応、監査の制約があった場合、その影響の度合いで見るというような形にしております。その金額で見なさいと、金額の重要性で監査範囲を制約するかどうか、除外意見にするのか、意見差し控えにするのかというふうな、直接的な表現はしておりません。「重要な監査手続を実施できなかったことにより」ということで、「その影響が財務諸表に対する意見を表明できないほどには重要ではない」とかそういう表現をしておりますので、「その影響」の読み方の問題かなと、そういうことで対処できるのであれば今後の実務指針等でいろいろなケースに応じてお考えいただいた方がより実務的ではないかと、ご趣旨はわかりましたが、基準に特に盛り込むまでは要らないと、そういう趣旨だということをご確認いただければということでございます。

それから、影響というのを、例えば金額を書きなさいということにすると、金額が算定できなければ意見を差し控えなくていいというような変な解釈があるやにも聞いておりますので、そういう誤解はされないようにその修正を図っていきたいというふうに考えております。

○脇田部会長

ありがとうございました。

それでは、実質判断、監査意見を含めまして、今、対応・考え方を説明させていただきましたが、どうぞご自由にご発言いただきたいと思います。

加藤委員、どうぞ。

○加藤委員

この「実質判断」のところの最初のポツなのですが、「準拠する会計基準の階層を明確にすべき」というのは、前回いただきました要約表では「適正性の判断に関しギャップの範囲が明確になっていく必要があるのではないか」という、このコメントに該当するものだと思うのですが、これは今回の改訂の中で非常に重要な実質判断というかそういうものに関するところだと思うのです。それで、どこまで……、要するに、形式的に基準に従って処理されて表示されていればいいということではなくて、その取引とか実態とかいろいろなものを考えて実質的にそれが妥当なのかということを判断するということは責任の面では非常に重いというか、あとは非常に解釈の難しい分野だとは思うのですが、それだけにこのギャップの範囲等が明確になっていく必要があるというコメントが出ているのだと思うのですが、それに対応するこの対応・考え方では、これは会計基準の問題だからということでここから外しているということなのですが、そうすると、何かこの辺の手当てということで、会計基準の方からの問題として、いわゆるヒエラルキーというか、そういうものを何か検討されるご予定があるのかどうかお聞きしたいのですけれども。

○脇田部会長

今、私どもの起草委員会あるいはこの部会でそれを直接的に手当てする予定はございません。この点については、もしあれでございましたら、会長からご発言いただきたいと思いますが。

○若杉会長

現段階では、特にそういう会計基準その他のヒエラルキーの問題は問題として提起されておりませんし、特に今検討するような動向ではないと思います。

○脇田部会長

では、課長補佐、お願いいたします。

○多賀谷課長補佐

今ここに関係します部分としましては、公開草案の14ページの「適正性の判断」のところで幾つか書いてございます。その中の(1)のマル3ですが、「会計処理や財務諸表の表示に関する法令又は明文化された会計基準やその解釈に関わる指針等に基づいて判断する」ということで、基本的な範囲は示されているというふうには考えています。ただ、その中での優先順位というのは一般的には法令が上でということになるのだと思いますが、そこにないものの順番ということになるとなかなか一概には決められない、税法を持ってきた方がいいのか、国際会計基準を持ってきた方がいいのか、米国基準の方がいいのか、それぞれに違いがありますので。ですから、ここまでが一応の示せるところではないかと。確かにアメリカの監査基準ではUSGAAPの階層化や優先順位等もかなり示してあるわけですが、ちょっとそこまでは一概にあるいは一義的に決めるというのは、たとえ会計基準の問題としてもなかなか難しいのではないかと。ですから、そこまで決めないと監査基準がつくれないということではないということで、この監査基準の中でそれ以上の細かいところまではちょっと決められないという判断であるということでございます。

○脇田部会長

今、多賀谷課長補佐に補足していただきましたけれども、現在の段階はそういう段階でございます。

それでは、会長から一言お願いいたします。

○若杉会長

規則、会計基準など、そういうものの間の階層性というのは、今、多賀谷課長補佐からご説明があったような形で理解されているわけですけれども、会計基準の中では、例えば企業会計原則は死文化されているような向きもあるんですけれども、まだあれはちゃんと生きている基準なんですね。それに対して新しく最近になって設定されましたいろいろな会計基準、例えば金融商品の基準などは、企業会計原則と食い違う部分もたくさん持っておりますけれども、それの場合にどちらを優先すべきかというのは、当然、基本法や一般法に対する特別法優先という法律的なそういうあれと同じように企業会計原則が一般的な会計基準であるのに対して、その後最近できております会計基準は特別法的な性格を持っておりますのでそちらが優先されるという、その辺はもうまず1つの常識化されていると思うのですけれども、その他、新しくできた基準の間での階層性はどうかというと、特には問題にしていないんですけれども、何か食い違い部分があった場合にどう処理するかという問題になると思うのですけれども、実際の場面におきまして何か具体的にそういうようなケースなり何なりがあるのでしょうか、いかがですか、加藤委員。

○加藤委員

余り具体的にということではないのですが、先ほど多賀谷さんが読まれたところでは、現在、会計基準等において詳細な定めがない場合とか、新しい取引がどんどん出てきて会計基準がないというときは非常に難しい問題だと思いますが、こういうことに対する対応としては、例えばアメリカではEITFというところが適宜出すとか、あるいはIASBではシックという解釈指針委員会が、今後は単なる既存の基準の解釈だけではなくて基準のないものについても――会計基準とは言えないほどだとは思うのですが、何らかのそういう基準みたいなものを出していくというふうに言っているわけですね。それに対応して、日本も今度新しいASBができたわけですけれども、こういうような、基準そのものはないけれども当面緊急に何か処理を考えなければいけないというところもある程度はきちんと手当てをしていかないと、監査人の責任みたいに、非常に実質判断、実質判断でどんどん重くなっていくと、判断のよりどころがないのに実質判断が要求されるということになるので、そういう意味でこういう会計基準の階層化というかヒエラルキーというもののウエートづけが必要になってくるのではないかなと思ったのですけれども。

○若杉会長

財務諸表等規則の1条あたりに書いてあるものが一般に認められた会計基準であり、また、今我々がつくっておりますものも会計基準ですけれども、そういうところに成文的なものとして示されていないものについては、一般に公正妥当と認められる会計――ちょっと言葉は正確に覚えていませんけれども、に従うというようなことが書いてあるんですね。それは、あとはもう実践的な解釈の問題として、その場その場でもってその問題に臨んだ方々の専門家としての解釈・意見を待つほかはないと思うんですね。それが時間をかけて1つの方向に集束していけばまた新しい会計基準化をしていくと思うのですけれども、そこまで行かないものは、要するにそれぞれの解釈の違いとか何かでもって、若干混乱があったりするかもしれませんけれども。

○脇田部会長

ありがとうございました。

山浦委員、どうぞ。

○山浦委員

起草委員の1人として、加藤委員のご指摘は非常に私どもも真剣に考えると同時に、悩むところでもありますね。新しい取引に対して具体的な基準がないと。大体、時がたてばそれなりの確立された基準等が出てくるんですけれども、やはり先ほど加藤委員がおっしゃったような、米国にも、国際会計基準の方にも、あるいはイギリスとかその他の国でも、その場その場で新しいそういった取引等に対する会計上の対応をある程度の権威を持って示す仕組みが備わっているんですね。実はそれが日本にはないために、この実質判断の要求が日本の会計士にとって非常に過度な負担、責任を課す可能性があるんですね。そういった意味では、監査基準ではこのように書きましたけれども、必要に応じてこういった制度的な手当て、何らかの権威を持った解釈指針なり等を出して、そういった仕組みが日本でもこれからは必要になってくるのではないかという気がしております。

○脇田部会長

今、ご意見をいただきましたように、監査基準がさらに機能していくためにも、それをサポートしていくといいますか、会計基準にかかわる問題として今後ご検討をいただきたいというふうにお願いしたいと思います。

渡辺委員、どうぞ。

○渡辺委員

済みません、今おまとめになった後なのでちょっと蒸し返すようで恐縮なのですが、私は短い文章で日本もギャップのような体系をつくった方がいいということを書いたことがあるものですから申し上げたいのですけれども。

体系がなくて、でも実際には当てはめられて大体似たようなものが出てくる、そのどこにも書いていない何だかよくわからない合意というのは一体何なのかというのがありまして、その典型的なのが多分税法の減価償却あたりだと思うのですが、税法が変わると減価償却方法ががらがらがらっと変わって、どうして変えたのかというと、どこにも税法が変わったからとは書いていなくて、よく考えるとこれが正しいと書いてあるので。これを見ていると、何かこれってうそをやっているという感じが非常にして、我々のような素人から見ると、会計というのはこういう屁理屈をつける作業なのかなという感じがしますので、そういう点からも、既にたくさんの基準があるのでそれを新しくきれいにまとめるというのは大変な作業だとは思いますが、すっきりしたものがあった方がいいというふうに私も思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

今、さらに渡辺委員からもご指摘いただきましたように、これは監査が実効性を保つ上でも、そして信頼性を保つ上でも必要なことでもありますので、いろいろと各方面でご検討、ご努力をいただき、また、監査基準としてもできるだけの検討をしてまいりたいというふうに思っております。

それでは、時間もあと残された時間が限られておりますので、「未確定事項」そして「追記情報」そして「その他」及び「中間監査基準」という4つをまとめて、4ページのところをまとめまして、ご指摘いただきました事項についての起草委員の方々で検討いたしましたことをまとめた対応・考え方を、多賀谷課長補佐からまたご説明いただきたいと思います。

○多賀谷課長補佐

それでは、4ページの7~10まで、簡単にご説明申し上げます。

まず、「未確定事項」でございますが、これは対応の方にもございますけれども、将来の帰結が予測できないようの場合、そういうことを前提としまして、これは監査範囲の制約がある場合に準じるというような趣旨の基準がございます。ちょっとこれは資料の文章が抜けていまして申しわけないのですが、これは、要は、偶発事象というのが追記情報にありまして、将来の帰結が予測し得ない事象とか状況というものと、例えば偶発事象と今財務省に注記をいただいております保証債務とか、それだって将来はわからないわけでございます。こういう似たような概念があるということ、特にこの「将来の帰結が予測し得ない事象又は状況」というのは今回の基準案で初めてつくったといいますか表現したことでございますので、既存の偶発事象等の考え方とどういうふうに整理されるのかと。監査範囲の制約と言いますが、わからなければ何でも制約していいというふうにはなっておりませんけれども、どの程度同じように考えるのかということで指摘がございます。これはやはり非常に難しい問題である。未確定事項は非常に難しい問題であるというのはこれまでの審議でも発表していただいたことがあると思うのですが、少なくともこの基準の上では偶発事象との関係を整理していかなくてはいけないのではないかということでございます。

それから、未確定事項が複雑多岐の場合のみ範囲限定となるとしてよいかというふうになっております。これは、基準の方では、いろいろわからない事項がたくさんあるか少ないかということではなくて、そのわからない事項の影響が非常に複雑である、あるいはいろいろな場面に影響すると、それで監査人としてももう判断ができる状況にないというようなときには意見を表明しないという余地もあり得ますよという趣旨の基準を書いておりますので、単に原因が複雑かどうか、複合的であるかということを言っているわけではないので、基本的には現行のままで読めるのではないかというふうに考えておりますが、将来の帰結が予測し得ない事象又は状況というものの定義といいましょうか、それをどうするかということが基本にはございます。

それから、8の「追記情報」ですが、1つは、追記情報というのは特記事項から変わったわけですが、位置づけをもう少しはっきりした方がいいのではないかということでございます。現在の前文では、「説明事項又は強調事項」という整理をしておりますが、なお、この範疇に当てはまらないような追記情報があるのかどうか、あるいは、追記情報の記載方法と何らかの関係が出てくのかどうかという点は検討をする必要があるのではないかということでございます。

次のポツもそれに関係いたしまして、監査の立場から、財務諸表注記と同一の記述をすべきではない、すなわち、企業がした注記を繰り返すという方法はよくないというご意見でございました。これも、企業のした注記を強調するのか、独自に判断をするのか、その辺の位置づけによりましても記載方法というのは変わってくると思われますが、その具体的な記述要領まで基準で定めるという必要はないのではないかというふうに考えております。

それから、その他の記載内容との重要な相違に関する監査手続が必要かどうか。これは、財務諸表以外の記載事項と財務諸表の内容に重要な相違があった場合には追記情報として記載するというふうになっているのだから、それに対する監査手続が要るのではないか、明記すべきではないかというご趣旨の意見かと思います。ただ、これは、財務諸表以外はそもそも監査対象ではありません。したがいまして、監査手続をつくるというのはちょっと趣旨が違うのではないかと。ただ、監査人の注意義務としてほかの部分も見て、これは財務諸表の方が正しいのだけれどもほかのところの記述に重大なおかしいところがあれば、それは財務諸表における監査意見とは別にここに追記情報として記載するという趣旨でございます。ただ、どういう場合があり得るのかというのを類型化するのもなかなか難しいかと思いますので、実務上の対応は実務指針等で取扱ってはどうかということでございます。

それから、「その他」といたしまして、幾つか用語の問題ですが、専門家の注意義務と職業的懐疑心の内容。この辺は前文で会計士の注意義務に含まれるということを書いてございますが、その中身までは踏み込んでおりません。この辺はむしろ実務指針で、懐疑心というのがどういうふうに展開されるのかというのはご検討いただければというふうに考えております。

それから、監査の限界や独立性について強調すべきではないかと。これは文章表現の上で大事だというような、強調という意味であれば表現を変えればいいということだと思うのですが、その中身に踏み込んでより厳しくしろということになりますと、これは公認会計士協会の倫理に関する規則・規定ですとか実務指針にもかかわる問題ですので、監査基準の中で直接定めるという形にはならないのではないかということでございます。

それから、新規契約の締結における前任監査人との引継ぎは明示すべきではないか。これは、最近、監査法人の変更というのもいろいろな事情で生じているようでございまして、非常に重要なことだというご指摘であると思います。ご指摘はそのとおりだと思いますが、監査基準では品質管理という大きなくくりの中の1つとしてとらえておりますので、その個々の品質管理の中身については公認会計士協会の方で対応されているという今の枠組みでよろしいのではないかということでございます。

それから、他の監査人の監査結果の利用における提携ファームの位置づけ。これは加藤委員からもご指摘がありましたが、監査法人ごとに提携の状況というのが区々でありますので、一律に監査基準で定める、つまり、ここまでは仲間です、ここからは仲間ではありませんというのはなかなか言いがたいという点もございますので、別途、個々の監査手続等の中で公認会計士協会の方で対応が可能であれば、何とかそちらの方で少しご検討願いないかなというふうに考えております。

それから、「窃用」という用語ですとか、「実務指針」、「職業的専門家」、この辺は表現を変えた方がいいのではないかという意見がございました。用語法につきましては、全般的な整合性を踏まえて、また見直してみてはどうかと思います。

それから、前回、会長から、用語の定義集を置いてはどうかというご意見をちょうだいしました。前文等の修正範囲も踏まえましてどの程度必要かどうか、余り今度は定義が長くなってもあれですので。ただ、今の前文ですと1つの言葉にかなり丁寧な説明を加えておりますので、そういうふうな形がいいのか、また、全体を通して検討をしてはどうかということでございます。

それから、最後に、「中間監査基準」、これはこの中には直接盛り込まれないものでございますが、レビューの導入を視野に入れるべきではないかというご意見がかなりございました。これは、そもそもは、事業年度途中での開示制度がある場合に、どういうふうに監査は対応するのかという大きな問題になろうかと思います。ただ、現在のところは、中間財務諸表というのが証取法だけで制度化されておりますので、また、全体の業務という話になりますと公認会計士法に関係しますことから、当面は現行の中間財務諸表を前提に中間監査というものをとらえて検討してはどうかということでございます。

それから、その場合ということですが、証取法の現行の中間監査の目的や位置づけ、あるいは監査手続、継続企業の前提、報告書の記載等について、今回の年度の監査基準と異なる取扱いをする必要があるのではないか、全く一致させるということでは対応できないのではないかというご意見がございました。これは確かにそういう点もあろうかと思いますので、まず年度の監査基準の改訂を踏まえまして、別途その内容についてはまた検討していただければというふうに考えております。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

一番最後の10番の「中間監査基準」につきましては、今、多賀谷課長補佐からご説明いただきましたように、この監査基準自体の検討の後で、この監査基準を踏まえて改訂を検討していくという方針でおります。

それでは、「未確定事項」、「追記情報」、「その他」――「その他」は対応でございますけれども、どうぞ、どこからでも結構でございますので、ご発言いただけたらありがたいと思います。

渡辺委員、どうぞ。

○渡辺委員

当初から独立性ということを何回も申し上げてきたのですが、寄せられた意見の中でも、独立性をもっと強調した方がいいという意見もかなり寄せられていたように思いますので、少しまた意を強くしましてもう一度言わせていただきますが。

倫理規則や実務指針で独立性をより具体的に定められるというのは大変いいことだと思うのですが、それにとどまらずというか、それとはちょっと別に、監査というのは要するに独立した人がやるから監査なので、そこがそうでなくなればそれはそもそも監査ではないんだと、インディペンデントオーディターについての監査基準であるということですので、「監査の目的」の中の3行目のところに「監査人が自ら入手した」という一文がありますが、独立性を強調するという、あるいは、かけがえのないものであるという意味で、「監査人」の前に「独立した監査人が」というふうにいただけたらいいなというふうに思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。

ただいまの独立性につきましてはご指摘のとおりで、監査は独立性が原点で、独立性を失えば監査は成立しないわけですから、ただいまのご意見はもう一度検討をさせていただきますし、ご意見も……。ただ、今出ております「独立性について強調すべきではないか」というご意見はむしろどちらかというと非常に個別の問題などがございまして、それは、監査基準というよりは、倫理規則や実務指針で示されるべきであろうということでございます。

ほかにこれらの点につきましてご発言はございませんでしょうか。

友永委員をご指名して恐縮でございますけれども、全体を通じまして非常に「実務指針」という言葉が使われておりますし、実務指針でお決めいただくというようなことも対応として述べておりますので、協会としていかがお考えかということをお聞かせいただければと思います、あるいは、奥山委員にお願いいたします。

○友永委員

前回のときに協会の意見として申し述べた中で、「監査の基準」という言葉はこの監査基準と協会の策定します実務指針をあわせたものだという表現から、監査基準で記載がない部分については協会の実務指針で取扱っていこうということでございまして、私が担当している監査基準委員会の方では、それぞれこの監査基準の改訂後、見直しをしたり、新規に作成したりしなくてはいけない実務指針につきまして既に検討を始めておりますので、基準の抽象度といいますか、そこから外れて、より具体的、実務的な部分で、ただ実務をやっていく上で必要なものというものは実務指針で対応したいというふうに思っております。

○脇田部会長

どうぞ、伊藤委員。

○伊藤委員

通常の会計基準の場合は、ここで大きな大枠をつくり、実務指針が出て、それは実際には企業との間においては経営者にほとんど上がってこないんですよね。つまり、実務部隊と審議されておしまいと。審議というのは、そこでチェックして問題ないだろうと。ところがこの監査の問題に関しては、今回の場合は、経営者との関連の問題とか、二重責任の問題とか、原則の問題とかいろいろあって、私は、経営者にとってみれば、今回の監査の会計というのは決してないがしろにしているわけではなくて大変重要に思っていますし、やはりむしろ厳しくしてもらって大いに結構だと思っているんですよ。したがって、できれば実務指針というものはある程度、きょうこういう形でやったような形で、重要なものはもう一遍ここに上げていただいて、経営者というか、例えば経団連の方にも出すとか、我々にも検討させるとか、この監査に関してはちょっとやっていただいた方が大変ありがたいと思っていますけれども、というふうにお願いいたします。

○脇田部会長

奥山委員、どうぞ。

○奥山委員

ありがとうございました。実はこの問題は私どもは大変大きくとらえておりましてこれから一生懸命やろうと思っていますけれども、お話しのように、経済界とも意見を交わしますし、それから、なるべく公開草案も実務指針とはいえやはりそれなりの公開草案もあれしてパブリックコメントをいただくということも考えなければいけないかなと思っておりまして、そういう意味では、協会とはいえ実務指針の作成についてかなり透明性を高めてやっていこうと思っておりますので、またお知恵をお借りしたいと思います。

○脇田部会長

よろしくお願いいたします。

それでは、ほかにご発言はございますでしょうか。

どうぞ、全体にわたってでも結構でございますから、「未確定事項」、「追記情報」、「その他の事項」と参りましたけれども、全体を通じましてご発言いただければと思いますが。

○伊藤委員

先ほどのにもちょっと関連するんですけれども、例えば13ページに「経営者からの書面による確認」というのがあって、実際、この監査については、経営者に確認事項ということで、社長の名前とか私の名前を出したりするわけですよね。変な話、通り一遍で形式書類をぱっと出すわけですよ、もちろんこれは文章を出すし、それなりに社内に規定をしていく責任もあるんですけれども。やはり、今後の監査のあり方というのは、先ほどのリスク・アプローチの問題にしても、ゴーイング・コンサーン基準に関しても、今までの日本における問題点というのをこの際明らかにして直していこうというわけだから、経営者との二重責任の問題もあるんですけれども、やはり対話というのをきっちりとどこかに厳しく要求すべきではないかと思うんですがね。

私はこれにタッチしているときからいろいろなことを申し上げて皆さんを混乱させたこともあったかもしれないけれども、大変過重な負担を会計士の方々に課せるようなことを申し上げたと思うんですね。つまり、経営の質とか企業というのはやはりブランドというのが極めて重要ですから、企業が本当につぶれるかどうかというのは会計上の問題で大体わかるんですけれども、本当につぶれるときというのはブランドが崩れていけばつぶれるわけですよ、どんなにいい企業でもあっという間に。それは幾つかの例があるわけですね、名前は申し上げませんけれども。そういうような問題というのは、単に数字だけではなくて、やはり経営者が本当に会計士の方々の対応をきちんとしなければいけないということですよね。そのあたりで何かうまく一言入りませんかというお願いなんですけれども。

○多賀谷課長補佐

事務局が余り余計なことを言ってはあれなんですけれども。住友電工さんの西村さんがこの前雑誌に米国基準の監査を受けた状況というのを詳しくご紹介していたと思うんですが、その中でもリスクの評価の統制評価手続に係る部分だと思いますが、そこについては非常にディスカッションなり対話というもので、監査を受ける側も非常に得るものが大きかったというようなご趣旨のことが書いてあったと思います。ですから、そういう観点がより重要であるということであればまた――今、前文には非常に短くしか書いてございませんので、またご意見として承らせていただいて検討させていただきたいと思います。

○脇田部会長

今、多賀谷課長補佐からもお話しいたしましたように、8ページのところに、前文のところで「経営者等とのディスカッションが有効であると考えられる」という一文で以前に比べるとこういう強調もいたしておりまして、今、伊藤委員のご指摘の点についても取り込んでおりますので、今後いろいろとご指摘があるかと思いますけれども、ご意見を反映するようにさせていただきたいというふうに思っております。

そのほかにご意見はございませんでしょうか。

加藤委員、どうぞ。

○加藤委員

中間監査基準についてなのですが、会計士協会の方からはこの中間監査基準についてかなりたくさんのコメントを出しているわけですけれども、それに対してのこちらの対応・考え方は「監査基準の改訂を踏まえ別途検討する」ということになっているわけでございますが、そのタイミング的なものを考えたときに、監査基準そのものが改訂されたものが出ますと、中間監査基準については、例えば一期ずらすというようなご趣旨なのか、あるいは、同じ期に始めていくとなると時間的に同時平行的にやっていかなければ間に合わないということがあると思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えなんでしょうか。

○脇田部会長

その辺のスケジュールにつきましては、多賀谷課長補佐からちょっとご説明させていただきます。

○多賀谷課長補佐

私というよりも、公認会計士協会からのご意見では、一期ずらすという、年度監査をやった後に、その次の期首からの開始で新しい中間監査ということが実務的にはいいんだというご意見をちょうだいしておりますので、ご異論がなければそのような形になろうかと思います。

○脇田部会長

やはり本体の監査基準がしっかりと固まった後の方が整合性がございますので。また、お寄せいただいた中間監査基準に関するご意見もその折にまたさらに検討させていただきたいと思いますし、皆様方のご協力を得たいというふうに思っております。

それでは、そろそろ予定された時間となってまいりましたけれども、特にご発言がございませんでしたらこの辺で意見交換を終了させていただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

それでは、本日は検討すべき論点につきまして一応ご検討いただいたわけでございまして、私といたしましては、今後の検討課題につきまして、修正の方向等についてご意見を大体いただけたというふうに考えております。そこで、本日のご意見を踏まえまして、今後、起草委員の方々にもご協力いただき、公開草案を修正する案を検討させていただきたいと思います。そして、次回までに具体的な文章を勘案いたしますので、それを具体的にご検討いただくというような段取りで進めたいと思っておりますが、よろしゅうございましょうか。

ありがとうございました。

それでは、最後に、今後の日程でございますが、皆様お忙しいと思いますので、10月と11月についてお伝えさせていただきます。次回は10月19日というふうに最初にご案内したと思いますけれども、日程を変更させていただきたいと思います。10月26日(金)を予定させていただいております。この間に今のようなご了承いただきました方向で文章化の作業を進めまして、10月26日(金)に部会を開かせていただきたいと思います。さらに11月でございますけれども、11月は16日を予定しておりますので、この点もお含みおきいただければありがたいと思います。なお、詳しいことにつきましては事務局からご連絡をさせていただきます。

本日の部会はこれで閉会させていただきます。

どうもありがとうございました。

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