企業会計審議会第26回監査部会議事録

1.日時:平成24年5月30日(水曜日)14時00分~16時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより監査部会を開催いたします。皆様にはお忙しいところをご参集いただきましてありがとうございました。私は、監査部会長の脇田でございます。

本日より、新しいテーマについて監査部会を開催させていただきます。部会の円滑な運営に努めてまいりたいと思いますので、どうぞ委員の皆様にはご協力をお願いいたします。

まず、会議の公開についてお諮りいたしたいと思います。本日の監査部会も企業会計審議会の議事規則にのっとりまして、公開することにしたいと思いますがよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

○脇田部会長

それではご了解をいただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。

議事に入ります前に、前回の監査部会、これは昨年の6月24日でございましたけれども、それ以降、委員等の異動がございましたので、事務局から紹介をお願いいたします。

○栗田企業開示課長

事務局を務めさせていただきます企業開示課長の栗田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

前回の会議以降、多くの委員の方がご異動になられましたので、改めて当部会所属の委員の皆様方を順番にご紹介させていただきたいと存じます。

まず、五十嵐委員でございます。

○五十嵐委員

五十嵐でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

泉本委員でございます。

○泉本委員

泉本でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

引頭委員でございます。

○引頭委員

引頭でございます。よろしくお願い申し上げます。

○栗田企業開示課長

関根委員でございます。

○関根委員

関根でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

八木委員でございます。

○八木委員

八木でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

井上委員でございます。

○井上委員

井上でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

伊豫田委員でございます。

○伊豫田委員

伊豫田でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

清原委員でございます。

○清原委員

清原でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

荻原委員でございます。

○荻原委員

荻原でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

熊谷委員でございます。

○熊谷委員

熊谷でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

後藤委員でございます。

○後藤委員

後藤でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

住田委員でございます。

○住田委員

住田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

田中委員でございます。

○田中委員

田中でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

八田委員でございます。

○八田委員

八田でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

林田委員でございます。

○林田委員

林田でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

宮本委員でございます。

○宮本委員

宮本でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○栗田企業開示課長

吉見委員でございます。

○吉見委員

吉見でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

林委員でございます。

○林委員

林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

布施委員でございます。

○布施委員

布施でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

それから、坂本幹事でございますが、本日はご欠席でございまして、代理として法務省から高木局付にご出席いただいております。

○高木局付(坂本幹事代理)

坂本の代理で高木と申します。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

それから、本日は、逆瀬委員、企業会計審議会の安藤会長にもご参加いただくことになっておりましたけれども、本日は所用によりご欠席でございます。なお、お手元に委員の方々の名簿を配付させていただいておりますので、ご参照いただければと存じます。

続きまして、事務局側の出席者をご紹介させていただきます。中央から森本総務企画局長でございます。

○森本総務企画局長

森本でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

池田審議官でございます。

○池田審議官

池田でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

中澤開示業務室長でございます。

○中澤開示業務室長

中澤でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

長岡国際会計調整室長でございます。

○長岡国際会計調整室長

長岡でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

公認会計士・監査審査会より友杉会長でございます。

○友杉公認会計士・監査審査会会長

友杉でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

廣本委員でございます。

○廣本公認会計士・監査審査会委員

廣本でございます。よろしくお願いいたします。

○栗田企業開示課長

佐々木事務局長でございます。

○佐々木公認会計士・監査審査会事務局長

佐々木でございます。よろしくお願いいたします。

○脇田部会長

ここで、森本総務企画局長より、ごあいさつをお願いしたいと思います。

○森本総務企画局長

企業会計審議会監査部会の開催にあたりまして、一言ごあいさつを申し上げます。

委員の皆様ご承知のとおり、近年、オリンパスをはじめといたします数々の会計不正事案が発生しておるところでございます。これらの事案におきましては、結果として公認会計士監査が有効に機能しておらず、より実効的な監査手続を求める指摘がなされているところでございます。

この点に関して、昨年12月の自見金融担当大臣は記者会見におきまして、会計監査のあり方については、今回の会計不正に対して、監査人がその機能を有効に発揮し得なかった要因について分析を行い、それを踏まえ、日本公認会計士協会等とも連携し、今後、会計不正に対応するための監査手続等の充実を図っていく必要があると考えますという発言をされているところでございます。

従来より、本監査部会におきましては、公認会計士の行う監査の規範であります監査基準について、ご検討をいただいてきたところでございます。ただいま申しました最近の状況を踏まえまして、委員の皆様方には会計不正等に対応した監査手続等のあり方について改めてご議論をいただきまして、所要の見直しについてご検討いただければと考えております。

私どもといたしましては、最近の会計不正事案が我が国市場の公正性、透明性に影を落しているとすれば、それは憂慮すべきことであると考えております。そうした意味で、これからの本監査部会におけるご審議は、我が国市場の信頼性回復、向上に向けた取り組みの一環として重要な意義を有していると考えておりますので、どうか十分なご検討をよろしくお願いいたします。

簡単ではございますが、私からのあいさつとさせていただきます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

では議事に入ります。まず最初に、当面の監査部会の運営につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○栗田企業開示課長

それでは、お手元に資料1「会計不正等に対応した監査基準の検討について(案)」という1枚の紙をお配りさせていただいております。これについてご説明をさせていただきます。

はじめの2つのパラグラフは、今、森本局長のほうからお話をさせていただきましたように、本監査部会の開催の趣旨について述べさせていただいたところでございまして、私のほうから、3つ目のパラグラフの今後のスケジュール等についてご説明をさせていただきます。

本監査部会におきましては、全体として1年程度を目途ということでご検討をお願いしたいと考えております。当面につきましては、まず、7月までに3回程度会議を開催させていただきたいと考えておりまして、その3回において、委員の方からのプレゼンテーション、自由討議を行っていただいて、それを踏まえて、本監査部会として今後検討すべき論点をおおよそ決めていただくというところぐらいまでをお願いしたいと考えております。その論点につきまして、秋以降に個別にご議論をいただくというふうな段取りを今のところ考えております。

私からは以上でございます。

○脇田部会長

ただいまの事務局からの説明につきまして、ご質問等ございましたらご発言いただきたいと思います。いかがでございましょうか。

よろしゅうございますか。それでは、ただいまの事務局からの説明にもございましたけれども、当部会での審議にあたりましては、まず、近時の会計不正事案等を踏まえまして、公認会計士監査についてどのような問題点があるのか、さまざまな方々からのご意見等を伺った上で、幅広く検討し、討議してまいりたいと考えております。

そこで、本日はお二人の委員からプレゼンテーションをしていただき、その上で意見交換をしてまいりたいと思います。

初めに、株式会社格付投資情報センター格付本部のチーフアナリストであり、また、公認会計士でもいらっしゃる後藤委員から、公認会計士監査に関する論点などについてプレゼンテーションをお願いいたします。

後藤委員よろしくお願いいたします。

○後藤委員

どうもはじめまして。私、後藤と申します。本日は、お手元の資料2というパワーポイントに沿ってご説明させていただきます。

会計不正への対応について、監査に対する財務諸表利用者の期待~格付アナリストの立場から~という題目です。

私どもがやっております信用格付業務でどのように財務諸表を利用して、そして我々が監査にどのような期待を抱いているか。そういったところを簡単ではありますがご説明させていただきます。

まず、そもそも信用格付とは何かと申し上げますと、格付対象、これはいろいろあるのですが、企業そのものであったり、企業が発行している個別債券といったものがあるのですが、こういったものの信用リスクに関する格付会社の意見が信用格付です。

言いかえますと、発行体が負う金融債務についての総合的な債務履行能力とか、また、個々の債務が約定どおりに履行される確実性、いわゆる信用力ですが、こういったものに対して意見をするのが信用格付というものになっております。

パワーポイントの2枚目になりまして、そこで、格付というのは大体どのようなふうにつけられているかというプロセスですが、発行体のほうから受注がありまして、担当アナリストを決定して、財務諸表とかその他いろいろな情報収集をした上で、格付委員会という独立した機関で格付を決定して、公表するといったような流れになっております。

そこで、3ページのところですが、我々、信用格付をする信用格付機関というのは、格付をするにあたって、金商法上さまざまな規制を受けております。これは信用格付業務が信用たるものであるために、さまざまな規定があるのですが、ここにありますとおり、金融商品取引業等に関する内閣府令第306条第1項第6号ロで、信用格付の付与のために用いられる情報について十分な品質を確保するための措置がとられていることが求められてます。これは信用格付をつけるときに、その使う情報というのはやはり十分な信用たるもの、品質を確保されたものを用いなさいという意味の条文であります。

私の会社R&Iでは、公認会計士による監査済みのもの、またはそれに準じた信頼性が確保されている決算書を主な情報として利用することで、この情報についての十分な品質を確保するための措置をとっております。

これは私どもの会社だけではなく、国内では日本格付研究所、スタンダード&プアーズ、こういったところも同じような形で、十分な品質確保のために、監査済みの財務諸表を使うということで措置をとっているというふうに、リリース等々で読みとれます。

そういったことで、分析の対象となる決算書に不正・誤謬による重要な虚偽表示がないということが格付分析の前提となっており、我々が財務諸表にある種求めていることでございます。

次の4枚目のスライドですが、こういったことで重要な虚偽記載があって、財務諸表が誤っていたということになりますと、その影響というのはやはり甚大です。

格付の分析は、定量的な分析、いわゆる財務諸表の分析と、営業基盤などの定性的な分析をあわせて総合的に判断して格付を見ていくのですが、まず、そもそも粉飾決算、重要な虚偽記載があったということが後からわかりますと、これは我々が見ていた判断の根拠が間違っていたものということになりますから、財務基盤の評価の変更にまずつながります。

そしてもう一つ、こういったことで粉飾をしていたということで、不正による信用の失墜といったものが起こりますから、そうしたことで売り上げの減少、取り引きの停止といったことから、営業基盤の棄損とかそういったことが起こり得ますので、こういった点で営業基盤の評価というのも変更されます。

重要な虚偽記載があって粉飾が発見されると、格付というのは、通常大きくこの両方のファクターから引き下げることが多いと考えています。

格下げされるとどういう影響が起こるかというと、ご説明するまでもありませんが、債券価格の下落や、あとは格付を借り入れ等々のコベナンツにしているケースもございます格付トリガーを設けている場合、実際貸し手のほうもそれなりの財務諸表だと思って、それなりの財政状態だと考えて貸していたわけですから、貸し手のほうも損失をこうむる可能性があります。

そこで、5ページのところで、オリンパスを例とりまして、どのように格付が動いたかというと、弊社で2011年以降かなり動かしているのですが、まず、2011年8月に、シングルAという格付をつけていたんですが、こちらについてはオリンパス自体の財務が悪化していたということで、不正に関係ないところなんですが、方向性をネガティブ、ネガティブというのは格付が将来格下げになる可能性が高いということなんですが、方向性をネガティブに変更しております。

そして、この後ですが、いわゆる社長の解職をめぐる経営の混乱というのが明らかになりまして、ここで2011年の10月にレーティング・モニターということで、レーティング・モニターというのは、格付を見直しに入りますということなのですが、これにまず指定します。

その後ですが、過去の投資有価証券等の損失の先送りというのが段々発覚してきまして、この時点で我々はシングルAフラットから、格付を2段階引き下げましてトリプルBプラスに格下げしております。ここでまだ引き続き格付の見直し続けるというモニターを継続しています。

その後ですが、第2四半期の決算で、過年度修正といったところで、ここでもういわゆる財務諸表が間違っていたということがよりはっきりするのですが、これを受けてトリプルBマイナスに格付を引き下げております。

その後、新経営陣が固まっていますが、一連の今度の事件に関しては訴訟等の損失リスクもまだあると考えて、レーティング・モニターという状況を続けております。

こういったことで財務諸表が誤っていると、急激に格付が引き下げられます。、オリンパスの場合は個別債券を発行していなかったので債券の下落はなかったのですが、これが債券の持っている会社で起こった場合というのは、相当のインパクト、投資家に与える影響は大きいと考えます。

6ページのところなのですが、オリンパスの監査というのはほんとうに十分だったのか。これは実施された公認会計士の方、いろいろな事情があると思いますので、あくまでも外から見て投資家が見てどう思うかといったことなのですが、例えば銀行への確認手続、預金についての残高確認状を送付していると思うのですが、それには担保に対する情報を記入してもらうフォームだったのが、送ったら担保の情報なしで返ってきた。これは銀行とオリンパスで握っていたという話もあるかと思うんですが、ただ、要求したものについて答えが返ってきていないのに、監査手続としてそれで終わりにしていいのかといったところには、疑念を抱かざるを得ません。報告書では当時の慣行としては問題ないということですし、今の評価についてもよくわからないのですが、一般に我々が外から素人目で見ますと、これについては少しいかがなものかなという感じはせざるを得ません。

「飛ばし」取引の監査手続ですが、これは我々、評価は非常に難しく、いろいろなスキームは確かに駆使しているとは思うんですが、多々不審な点等あったかと思いますので、実際にやはり発見できなかったのか。できれば発見してほしかったというのが投資家、財務諸表利用者の感覚と思われます。

あともう一つ、外部専門家による報告書に依存と書いてあるのですが、2009年に無限定適正意見をあずさ監査法人から出されているかと思うのですが、こちらについてもさまざまな経緯はあったかと思うんですが、基本的にはその監査役会の依頼した外部専門家の報告書を受けて、問題なしという形で無限定適正意見が出されている。こういったことについては、外の限られた情報から見る人間にとってはほんとうに十分な手続きだったのか。そういったことを考えてしまうわけです。

こういったことで、次の7ページのところですが、やはり監査の役割というのは、私も7年半と短い間でしたが、監査法人に身を置いた期間がありまして、こういったことから監査の役割というのは、まず基本的に財務諸表の適正性についての意見を表明することであり、監査基準は監査人に重要な虚偽記載がないかどうかの合理的な保証を得ることを求めていまして、違法行為の発見自体は、監査人の責任ではないということは理解しているつもりです。

ただ、財務諸表利用者という立場に立ちますと、我々は財務諸表に重要な虚偽記載がないことを証明するのがやはり監査の役割だと考えておりまして、重要な虚偽表示につながるような違法行為というのは発見してほしい。発見する体制を持っていなければいけないのではないかと、やはり考えずにはいられません。

格付だけではなく、株式のアナリストもそうですし、あらゆる投資家もそうですが、やはり財務諸表、監査された財務諸表をベースに、いろいろな判断をしております。ですから、財務諸表における重要な虚偽記載が発見されないということは、公認会計士制度の存立基盤を損ねるというか、存在意義を問われかねない。そういったものだと考えております。

これは少し余談になりますが、我々有価証券報告書を利用するにあたって、監査報告書のページを必ず見るようにしています。それは監査法人がどこかということをチェックするのですが、やはりそういったところで、これは一概には言えませんが、4大監査法人だと、どちらかというと若干やはり安心できて、そうでないと安心できない。監査手続が十分に実行できていないのではないか、監査基準に準拠していないのではないか、中小だと若干その疑念があります。

そういったところで、こういった期待ギャップと同時に、少し監査に対する信頼というのが揺らいでいる。こういった面がやはりあるのではないかなと考えております。

最後のスライドになりますが、これは残念ながら監査人の方たちが思われている、事業会社の方が思われているよりもあるかと思うのですが、監査の役割と我々財務諸表利用者が考えている監査への期待との間には、残念ながら期待ギャップがあるというのは間違いないと思います。これを埋めるにあたってどういった手立てが必要か。これは、この部会の主題だとは思うのですが、監査手続のあり方とか監査基準の見直すことを検討する必要もあるのではないかなと考えております。

もちろんこれについては国際的な監査基準との整合性とか、そういったものにいろいろ配慮しなければいけないかと思うのですが、ひとたび立ちどまって、こういった手続自体、基準自体を見直しを検討する必要があるのではないかと思っています。

その他としては、少し監査基準とは別のファクターも入ってきますので難しいのですが、監査法人の体制とか、監査報酬、監査時間、被監査会社の監査の受け入れ態勢、昔から言われている問題ではありますが、こういったところも幅広に検討して、監査基準の検討もあわせて監査の実効性を高めていくことが、やはり期待ギャップを埋めるためには必須だと考えております。

私のプレゼンテーションは以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。

続きまして、株式会社豆蔵ホールディングス代表取締役社長であり、また、公認会計士でもあられます荻原委員より、近時の公認会計監査において問われております論点等についてプレゼンテーションをお願いいたします。

荻原委員、お願いいたします。

○荻原委員

荻原でございます。私は、過去に現新日本監査法人の国際事業部、そしてその後は8年間、あずさ監査法人ということで都合13年間監査業務に携わってまいりまして、12年前に会社を立ち上げまして8年前にマザーズに上場させていただきました。

今回のオリンパス事件もそうなんですが、不正会計による問題が起きますと、非常に迷惑をこうむるのはその他の健全な企業であるということを、しっかりと会計士の先生方にはわかっていただきたいというふうに思っております。

特に、私ども、ライブドア事件のときには、なんと株価が数週間で8分の1でございます。新興市場というものが皆不正をしているのではないかという目で見られたわけでございます。

リーマン・ショックのときには、リーマン・ショックが起きる1週間後にちょうど上の市場へ上げるための申請書を出す準備が整っておりまして、出すばかりになっていたときにリーマン・ショックがおきまして、株価が3分の1になったということでございます。

特に、今回のオリンパス事件の場合は、内部統制の枠外でございますので、発見がおくれるのもやむを得ない側面はあるものの、このようなことが10年以上にわたり発見されなかったということは、大変ゆゆしき問題でございまして、資本市場の信頼性を損なうということになるかと思っています。私は、後輩という言い方はいけないかもしれませんが、後輩の会計士の人たちにもう少しあり方について真剣に考えていただきたいというふうに思っております。

また、被害はそれだけに及ばず、私どもの投資先であります会社が韓国のKOSDAQ市場に上場しようとしましたところ、昨今、中国企業が多く粉飾事件を起こしまして、外国企業の上場を制限し始めたためにできないという事態にもなっております。

つまり、不正や粉飾事件を起こすことによって、それが国内だけではなく海外の市場あるいは海外の企業に対してまでも迷惑をかけるということでございまして、これは日本だけにとどまる話ではないというふうに考えております。

やはり不正の摘発ができないということは、市場の信頼性を大きく揺るがすことになって、経済全体に与える影響は計り知れないというふうに考えていただきたいと思っております。

続きまして、会計監査の限界という話でございますが、確かに数年前、私ども、参加させていただきましたが、内部統制というものをつくり上げてきて、かなり会社の中身、それから各いろいろな企業の社員の人たちも、そういうことを意識して日々活動されているということになりまして、そういう面ではコンプライアンスが守られて、かなり日本もきれいになってきたのではないかというふうには思うものの、確かに経営者そのものの不正というのは枠外でございます。

そのように考えたときに、今の不正会計への影響を考えたときに、この枠組みそのものに限界があるのではないか。不正の解明に向けてより広範な監査手続ということも踏み込んで議論すべきではないかというふうに思っています。

少し余談にはなりますが、実は私はこの監査基準云々という前に、では、私が監査をしているときにどんなことをしていたかと申し上げますと、不正があるとわかったときに、あるとき、役員を部屋に缶詰にしまして絶対出さないようにいたしまして、自白するまで追及した記憶がございます。また、3晩にわたりまして倉庫の張り込みを3交替でいたしまして、不正が起きているということを発見いたしまして摘発したこともございます。

つまり、それは開示がどうのこうのという以前に、正しいことをしているのかしていないのか。不正をしているのかということがやはり最大の問題でございまして、そういうことを摘発する気概がないのかということを私は思っております。これは単に基準だけの問題ではないのではないかと意識の問題も非常に大きいのではないかというふうに思っております。

ただ、今日は私、これからまたきつい話をさせていただきますけれども、特定の監査法人や特定の会計士の方の話をしているわけではないので、誤解がありませんようによろしくお願いしたいと思います。

ただし、この不正という問題があったときに、すべての会社において不正がある可能性があるから、監査時間をすごく増やして徹底して監査しなければいけないという問題にはならないのではないか。今、経済状況において不正を起こしそうな可能性のある状況に置かれている会社でありますとか、役員の方あるいはその周り方のレベルを見て、知らない間に不正を起こしてしまうのではないかといった場合もあるかもしれませんが、そのような総合的な観点から、やはりリスクのある会社につきましては、そういう監査手順を広げるということは、あってしかりだと思っています。

過去に私がやっていたときも、そういう問題があった会社というのは、通常の慣例で想定される2倍、3倍の監査時間をかけて監査をいたしまして、しっかり監査報酬もいただいていたという記憶がございます。

そこまで範囲を一律にやってしまいますと、範囲を広げて監査時間数が増えたり、監査報酬の金額が大きくなってしまう。それは企業側にとって決して本意ではないというふうには思っています。

あと、独立性の観点から考えた場合なんですけれども、昨今、監査法人のほうも経営基盤がかなり厳しく揺らいでいるということはよく聞いておりまして、日本も縮小化していきますので、会社数も減ったりとか、なかなか上場してこなかったりということで、会計士の数も増えるということで、直接契約ということは心理的な圧迫感があるのではないかと。そういう状況が避けられない状況にあるのではないかというふうに思っております。

ただ、もし不正があれば、監査報告書を出さないという手もございますので、そこはしっかりと気持ちを強くやっていただきたいなというふうに思っております。

それともう1点、現状の会計士監査の問題点についてお話をさせていただきたいと思います。

昨今、コンピューター技法監査、CATTと言うらしいんですけれども、その導入で、システムに頼り過ぎているのではないのかというふうに私はちょっと感じております。本来あるべき職人的勘が磨かれていないのではないかというふうに思っています。

これはやはり職業的懐疑心の重要性を確認するということです。どのようなときに発揮するのか。やはりこういうことを具体的に検討する必要があるのではないかというふうに思っております。

それから、定められた時間、要するに監査時間というのは定められているんですけれども、昨今、いろいろな監査法人の方あるいはその現場の方に聞いてみますと、書類作成の時間がかかり過ぎて実際に監査する時間はむしろ減っているのではないのかというふうに思われる。

これはあまり大きな声で言う話ではないかもしれませんが、金融庁や公認会計士協会のレビューが厳し過ぎるのではないかというのも、この一因としているのではないかというふうに感じる次第でもございます。

また、監査契約の問題になりますけれども、最近は問題のない会社でも新たな視点から監査を受けるべく監査法人を変更する場合もあります。そのような場合に、現状問題になっていないんですけれども、ただ単に形式的な引き継ぎだけではなくて、将来その会社のことを考えた場合にこういうリスクがありますよということまで言及されているんだろうかということを考える次第でございます。

さて、最後になりますが、問題解決に向けての提言でございます。やはり自分自身の職業的勘を養えるような土壌づくりを監査法人の皆様に努力をしていただきたいというふうに思っています。その上で、現行の監査基準で足りないのかどうかということを検討されるべきではないかと思います。

あと過去の概念は捨てて、監査法人が交替するということは日常茶飯事のことなんだというふうに考えていただいて、引き継ぎにおいてはルール化が必要なのではないかというふうに思っております。

それから、開示監査より実態監査により工数を割けるような何らかの工夫をしていただく必要があるのではないかというふうに思っております。

契約という観点から見た場合に、例えば財団法人監査契約協議会のようなものをつくりまして、被監査企業がそこと契約をし、監査報酬を払う。監査法人はこの協議会を経由して監査報酬を受領するということで、極端な契約そのものが行われないことを確認するとか、やはりそこで何らかの心理的圧迫感がなくなって、会計士の先生方が自由に強く監査ができるような土壌づくりも、もしかしたら必要なのかもしれません。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

では、後藤委員、荻原委員からのご説明を踏まえまして、委員の皆様方から近時の会計不正に対応するための公認会計士監査に関する論点について、幅広くご意見を伺ってまいりたいと思います。両委員のご説明に対するご質問なども含めましてお願いをいたします。どうぞこれからかなり時間がございますので、ご自由にご発言をお願いしたいと思います。いかがでございましょうか。

どうぞ口火をお切りいただく方がいらっしゃいますと、部会長としては大変助かるんでございますけれども、いかがでしょうか。清原委員どうぞよろしくお願いいたします。

○清原委員

細かな専門的な話に入る前に、法律家として昨今の状況をどう考えているかというところを含めて、簡単に少しお話しさせていただきたいと思います。

今、お話がありましたように、利用者の側の視点から見たときに、今の監査制度がどういうふうに見られているか、ここの観点がやはり重要ではないかと思います。

今、ここに私は証券六法を持ってきたんですが、公認会計士法の第1条では、公認会計士の使命というふうにはっきりあって、そこでは「財務書類その他の財務に関する情報の信頼性を確保することにより、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することを使命とする」とあります。

この「使命」ということを言われている中で、その使命が果たせないものがもしあるとすれば、それはやはり大きな問題で、その意味で先ほど期待ギャップという言葉がありましたけれども、むしろ利用者からの期待に沿った形での監査報告が出る。そのためのプロセス、そこの議論につながれば、というふうに期待しているところであります。

法律家として考えるときに、日本はやはりまだ欧米に比べて、訴訟という面でいうと、監査法人自体の責任を追及するものは、案件の数としてはまだ多くないといえます。ただ、弁護士の数が増えている中で、また、投資家の中には海外の投資家が増えている中で、責任の問題は当然出てくると。それは逆に言うと、監査基準自体が必ずしもきちっとできていなかったと仮に仮定して、それにのってやったからいいんだという理屈が通るか、という問題になる。

そこは、やはりしっかりとした基準がまずあって、それに従ってやった。そのときに監査基準として、行為規範として、これだけのものがあった。そしてそれに従ってやった。だから、こういう監査意見であったというふうな話にもっていかないと、責任という面から見てもやはり欠けてくることが出てくるのではないかと。

ですので、今回の議論というのは、監査法人の側からすると、少し厳しい意見が出るような、そういった議論になるんだと思うんですけど、今回の議論にはむしろ積極的に、前向きに法に規定され、また社会的に求められている使命や役割、そこに適合した形の基準に向けて議論が集約できればいいのではないかなというふうに思います。

少し雑駁ですけれども。

○脇田部会長

ありがとうございました。林田委員、どうぞよろしくお願いいたします。

○林田委員

オリンパスのいろいろな報告書が出ていましたけれども、そういったものも事前に読んでみたりしたんですが、まず、不正を発見するということ自体が会計士の方々の書かれたものを読むと、どうも不正の発見ということ自体は会計士の使命ではないのではないかという、まずベースにそういった前提があって、あわよくば職業的懐疑心を持って注意深く見て、気づけたらなおいいけれども、気づかなければならないということではないんだというところに議論のスタートが多分ある。

だから、今回の議論を進めるにあたって、そもそも不正の発見自体が会計士に求められた使命であるのかどうかというところで、皆さんの議論する方々のベースにある程度の共通認識がないと、どこまで道を分け入って細かく議論していっても、結局大もとが、入り口が違うと、出口は非常に遠くなってしまう、ばらばらになってしまうという危惧を非常に持っています。

ですから、まず小道に入って具体的な提言をいろいろ考える前に、今指摘した観点だけではないんですけれども、そういった大きな話を皆さんでしてみてはどうかなというのを感じましたので、その指摘だけまず、したいと思います。

○脇田部会長

ただいま清原委員と林田委員から大変提言的なご発言がございましたけれども、いかがでございましょうか。両委員のご発言も踏まえながら、どうぞご意見をお述べいただきたいと思います。引頭委員どうぞ。

○引頭委員

今、両委員、そしてさらにプレゼンターで2人の委員からご発言がありましたが、非常に共感する部分が多くございました。

利用者の立場からみますと、監査というのはブラックボックスで、後藤委員がおっしゃったように、監査人を信じて、監査人が保証している財務諸表を使うということしか選択肢がないというのが実情でございます。

しかし、後藤委員がおっしゃったように、マーケットが期待する監査と実態のギャップが大きいという点も事実かと思います。これをいかに埋めていけるかというのが、今日、日本の監査が置かれている状況であると認識しております。

今回のオリンパスの事件は、正直申し上げまして、マーケットの関係者の間でもかなり驚いた事件です。前代未聞という表現ができるような事件であり、その影響も非常に大きかったと思います。

ただ、ここで申し上げたいのは、オリンパスの不正がなぜ起こったかという個別事案の研究はもちろんすべきですが、もしかしたら氷山の一角ではないかという懸念も当然ございます。これが特殊事案であったかどうかという点でございます。

このように見ますと、単にオリンパスの問題の個別解決というよりは、先ほど林田委員もおっしゃっていましたが、もう少し大きな視点で問題を捉えるべきではないかと思っております。その観点から本日は4点、少し毛色の異なるものも交えまして、議論のたたき台とすべく、問題提起をさせていただきたいと存じます。

1点目は、監査報告書の改善でございます。これは今、国際的にも監査報告書の改善について議論がなされていますが、日本としてもその改善に対しての考え方を整理し、それをグローバルに意見発信する必要があると思います。

監査報告書が改善すれば、完全に利用者と期待ギャップが埋まるというわけではないですが、助けにはなるかと思います。

2つ目は、監査リスクのある企業に対する監査についてでございます、。監査基準においては、契約を受嘱する際に監査リスクを十分に勘案した上で受嘱するとしており、これはつまり、監査リスクがある場合には監査契約を受嘱しないということになっております。この考え方がいい悪いはひとまず置いておきまして、現実問題としては、大手監査法人が受嘱リスクがあると判断し、監査契約を結ばなかった企業についての監査を、中小監査法人が引き受けるという構図になっております。

先ほど後藤委員から、監査報告書を見るときにはどの監査法人が監査しているかを見て、大手だったら安心するという率直なご発言がありましたが、マーケット参加者の大半はそういう視点で見ていると思います。そうした中で、先ほど申し上げた監査受嘱の構図を放置していいのかということでございます。

公開企業にとって上場を維持できるかどうかというのは、信用リスクの問題等々を含めて非常に大きな問題であると認識しております。そうした背景もあり、実態としては、たとえ同じ無限定適正意見を獲得していたとしても、それには質的な開きがあるのではないかと推察しております。無限 定適正のレンジに入っていても、質的にはぎりぎりのレベルの企業と、余裕を持って無限定適正意見を獲得している企業があるのではないかと思っております。

このようにみますと、投資家に潜在的なリスクを知らしめるための何らかの仕組みづくりが、やはり必要なのではないかと思っております。そのためには、東証など各取引所の上場廃止基準とも密接な関係があるかと思いますので、このあたりも是非議論すべきではないかと思います。

3点目でございます。自主規制機関であります公認会計士協会に対するモニタリングの必要性についてでございます。あくまでも私見でございます。監査基準というのは憲法のようなものと認識しておりまして、個別具体的な手続あるいは解釈については、協会の実務指針にゆだねられているのが実情でございます。実務指針を策定する際において、金融庁と全く相談なしに策定されているわけではないという事情は承知してはおりますが、そうした活動に法的な根拠があるわけではございません。実務指針を金融庁が何か認可するわけでもございません。

実務指針が監査基準の法意、法の意図に照らして適切であるかという点、あるいは協会が行っている教育に継続的専門研修制度、CPEというシステムがありますが、その内容が、そのときどきの会計監査をめぐる外部環境に照らして、適切かどうかといった点などについて、金融庁のほうで改めて正式な法的根拠のある形でチェックする仕組みというのも必要になってきているのではないかと思います。

ここで誤解なきように申し上げますと、自主規制機関による統治、つまりこれまで協会がされてきた統治につきましては、非常にいい意味で機能してきたことには疑いはございません。しかしながら、どんなにいい仕組みであっても、あまりにも長きにわたり同じ仕組みで動いているという場合には、やはり外部からのチェックが必要な時期もあるのかと思います。最近の監査をめぐる諸問題を見てみますと、その時期に来ているのかもしれないということが率直な見方でございます。

最後の点になりますが、企業会計審議会の別の部会のほうで、今、IFRS適用についても議論されております。ここで少し問題の質は違うかもしれませんが、監査の質という観点から見ますと、IFRSの監査実態につきまして、見るべきではないかということでございます。グローバルでもIFRSを採用している国が多々ございますので、そうした国々の監査の質がどのようにして担保されているのか、また、担保するための努力をどのようにされているか、という点について、もう少し日本も考えるべきではないかと思っております。

どうも最近の議論を見ていますと、会計基準そのものに議論が集中しており、その会計基準を使った財務諸表が適正かどうかについての質的保証についての議論が、日本ではあまりされていないような印象を受けております。このようにみますと、当部会としても、そのIFRS監査の実態をよく認識して、必要であれば何か措置を講じるという点につきましても、ぜひご議論賜れればと思います。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。具体的に、また論点を整理してご発言いただきました。引き続きましてどうぞご発言いただけますか。八木委員どうぞ。

○八木委員

今、各プレゼンテーション伺いまして、常日ごろ少し感じていることを2点だけ申し上げたいと思います。

1点目は、監査法人の交代理由と引継ぎのルール化を明確にしていかなければいけない

(チェック項目を明文化)という問題です。

監査法人が交代することが、積極的な意味でプラスであればいいのですけれども、今の実態を見ていますと、会計処理の判断に対する見解の相違があり交代させる事例があります。これは監査法人側から見れば、被監査会社の会計処理にリスクがあるということになります。

交代のもう一つの理由は監査報酬の問題です。(監査報酬を引き下げたい)結果的に何が起こっているかというと、監査法人には現在格付はありませんが、仮に格付けがあったとすれば、監査法人の交代が、格付の高いところから低いところへ、比較的“やさしい監査”をしてくれて、監査報酬も安いところへという流れがあるように思います。これは依頼人(被監査会社)と監査法人の関係が、依頼人と弁護士の関係と本質的に異なる点です。本来資本市場の健全性を求める真の依頼人(投資家)と金を払う人(被監査法人)と監査法人との関係の捻じれの問題です。現実をみると被監査法人と監査法人との関係に“逆信性”が存在します。本来は監査リスクが高まっているにもかかわらず、監査法人が変われば変わるほど、信頼性の低い監査が行われているのではないか。このような実態をみると、監査法人の交代・選任について、一定の歯どめをかける必要があるのではないかと感じてしまいます。

2点目は、監査の最終判断のための時間と意見表明の問題です。

上場会社ですと45日以内で監査内容をまとめなければいけないということから、最終判断にあたって、若干疑問や納得できないことがあっても時間切れになっているのではないか。監査法人をサッカーのレフェリーに見立てるとレッドカードしか持っていない状態かと思います。(注:レッドカードしかないサッカーの試合は考えられない)レッドカードを出して、これがもし間違えた場合には大変なトラブル(訴訟リスク)ということになります。これを解消するには、レフェリーにレッドカード以外に、サッカーで言うところのイエローカードのようなものを武器として与えないと、結局監査法人は、決定的な問題が立証できなければ、適正意見を書かざるを得なくなります。監査法人の意見表明をするうえで、限定付適正意見に幅を持たせることが必要ではないか。サッカーに例えると、レッドカードだけではなく、イエローカードを用意する必要があります。(注:ペナルティエリアの設定も必要か)

合わせて、監査判断における時間切れとなった留意事項をどうフォローするかの問題があります。監査の現場は、四半期毎に調書を漏れなく作成することに追われていています。(これが問題)このため、問題点についてはきちっとペンディング事項として、本決算までにはそれがきちっと解決されるような形の、期中監査のあり方についても検討が必要ではないか。期末集中型でやるのではなくて、期中に問題点を拾い出して、年度末までには解決していくような形のフォローアップをしていく仕掛けが、今後必要かなと思います。

時間切れで意見表明となり、若干問題あるけれども、なかなかレッドカードは出せないという状況があるのではないか。今回いろいろあるけれども適正意見を表明する、すると後任の監査法人は、前任の監査法人の意見を尊重(踏襲)する。何か疑念のあるものが、引継がれていくということが起こり得るのではないかと。疑問点については、時間切れにならないように、限定付適正意見のレンジとか、調査期間の申請など監査のスケジューリングのあり方の中で検討されてもいいのではないかなというふうに思っております。

○脇田部会長

ありがとうございました。

先ほどお二人にプレゼンテーションしていただきましたけれども、もちろんお二人もどうぞご意見をここでご発言いただきたいと思いますし、また、お二人へのご質問も含めて、先ほど申しましたように、ご発言いただいて結構でございますので、どうぞよろしくお願いします。五十嵐委員どうぞ。

○五十嵐委員

どうもありがとうございます。2つ述べさせていただければと思います。会計不正の発生は監査報告書と利用者の期待ギャップに影響を与えるものと思います。こうした考えに立ちますと、一最初にプレゼンテーションをしていただきました内容に財務諸表利用者の監査への期待のお話の中に、監査人と利用者の間でのエクスペクテーションギャップがあると記述されておりまして、そのお考えはそのとおりだと感じております。例えば、監査の発展過程で、証明と言う言葉は、絶対的な保証を意味していると理解しています。現在は、監査は合理的な保証を基盤として監査人の意見を公表することになっておりますので、こうした専門用語について、監査報告書の利用者側の誤解がないような説明をさらに行うことが必要に思えます 。

第二に、重要な虚偽表示につながる違法行為を発見できる体制を構築することは重要でありまして、記述されておられます内容はよくご理解できるところでございます。 会計不正の視点から、重要な虚偽表示につながる違法行為を発見するのか、または違法行為により重要な虚偽表示となるのかを発見するのかという2つの議論があると理解しています。現在の監査基準の枠組みでは違法行為による重要な虚偽表示に関する監査が重要と理解しております。違法行為に関する監査人の手続きの実施と報告については、複雑な側面もありますので、こうした内容が、監査報告書と利用者側の視点とのエクスペクテーションギャップになる可能性もあると思います。こうした専門的内容について一般的に理解されるようなさらなる説明が必要に感じました。専門用語の使用が一般的に理解されるようにすることは、海外でも議論されているところでございます。

次のご説明いただきました荻原委員からのところで、問題解決に向けての提言ということで、きちっと書いていただきましてありがとうございます。この1ページ一番目に記述されている内容で、自分自身の職業観を養えるような土壌づくり、これはそのとおりだと思いますので大変参考になると思います。こうしたことを踏まえ、監査法人はさらにシステマティックなアプローチを採用することが、会計不正への対応で重要なことと思います。

こうした監査法人のアプローチは、リスクベースド・アプローチとかビジネスリスク・アプローチとして採用されていると理解しております。こうした状況の下で、経済的な実質を監査するようなアプローチをさらに推進し、さらに深めていって、その具体的な指針のようなものが作成され、会計不正などの可能性に対処することが望まれると思います。このアプローチはいくつかの研究書が公表されていますので、さらなる進展が行われ効果的な監査を期待しております。

○脇田部会長

ありがとうございました。井上委員どうぞ。

○井上委員

ありがとうございます。既に委員の方からいくつかお話をいただいてダブりますけれども、何点か申し上げたいと思います。

まず、監査部会が開始されたわけですけれども、市場における不正事案の発生、これはその企業の株主のみならず、市場の信頼低下によって、ほかの多くの投資家であるとか、資金調達をしている企業、ひいては経済全体に多大な影響を与えますので、その信頼性回復に向けて監査がどういう役割、どういう貢献ができるかということを、ぜひこの部会で検討を進めて頂きたいとお願いをしたいと思います。

その上で、先ほどから既に出ておりますけれども、やはり信頼性に関して期待ギャップというのが非常に大きい問題だということは、おそらく委員の皆さん、同じようなご意見をお持ちだと思います。けれども、やはり入り口のところで、何を期待するのか、どこまでこたえるのか、そのギャップを埋めていく上で監査側を変えるのか、あるいはその期待するほうの期待値を変えるのかというところは、やはりある程度整理をしながら進めていかないとなかなか前へ進まないのではないかなと思います。

本日ご発言いただいている方はほとんどプロの利用者の方ですけれども、おそらく市場の信頼性といった場合には、もっと一般の方々が監査に対する持っている期待というのも、漠然と市場全体の信頼感というものの創造に非常に重要な役割を持っていると思いますので、その世論としての期待のようなものをどう考えていくかというのもちょっと重要な視点かなというふうに思います。

それと、これも指摘がありましたけれども、オリンパスの事案というのは、経営層の故意による極めて悪質で特殊な事案だと思っております。したがいまして、これがすべての企業に起きるんだという前提で過度に一般化して議論をすると、少し逆の弊害のようなものも出かねないという点は留意が必要かなというふうに思います。

オリンパスの第三者委員会の報告書などを読みますと、どうも途中で監査法人が変わっているようですけれども、前任の監査法人のときに、少なくとも何らかの兆候は、わかっていたのではないかというようなことが、その報告書の中で読み取れるわけでございまして、前任の監査法人は、監査役会とか金商法の第193条の3の発動というのをほのめかしたと書いてありましたけれども、なぜそれが結果的にそういうところで 活かせなかったのかというのは少し気になる点かと思います。

それと監査法人の交替がありましたけれども、その理由とか引き継ぎの状況というのはどうだったのかということも課題だなというふうに考えております。

なお、何人かの先生から、監査契約の問題というのがいくつか出ておりますけれども、いわゆるインセンティブのねじれに関しましては、現在、法制審の会社法制部会のほうで議論が進められていると思いますので、そこの議論の推移も見守るということが必要ではないかなというふうに思います。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。八田委員どうぞ。

○八田委員

ありがとうございます。いくつかあるのですが、まず最初に1つ、本日のプレゼンテーションに関して、先ほど五十嵐委員からも指摘のあった後藤委員の資料の7ページの期待ギャップの話に関してのことです。私たち、そこそこに監査とか会計のことを知っている者から見ると、期待ギャップというと、ああ、ああいう内容のことだよねと分かり合えると思います。つまり、監査人が果たすべき役割と社会が監査に対する期待に齟齬があるのだということです。

一般にもそういう教科書の説明があるのですが、実はこの言葉が正式に学術的な用語で使用されるようになったのは、私の知る限りアメリカの1978年公表の監査人の責任に関する委員会報告書であったということです。

では、何でギャップがあると認識したのか。それは例えばメディアとか、利用者からの批判、具体的には監査結果ないしは監査人に対しての訴訟が提起されたというところに、期待ギャップの議論の前提があると思うのです。そして、期待ギャップという用語が意味するところは、私の理解に間違いがなければ、会計士側あるいは監査人側から見た評価概念として、監査ないしは監査人の役割に対しての期待にギャップがみられると言うのです。

しかし、おそらく利用者から見たら、いや、私たちの期待はこうなので、それを果たしていないのであれば、それはギャップではなくて、期待外れでしょうということになるのではないでしょうか。あるいは私たちが思っている監査とは異なっているのであれば、それは約束違反じゃないのというネガティブなメッセージを、実は示されたのではないかと思うのです。

実はこの本が日本で翻訳されたのは1990年であります。そのときに、日本でもそろそろ期待ギャップが存在しているなんて言うことを、だれ言うともなく言われていたようですが、私はそのときにあえて、日本には残念ながらノンエクスペクテーションギャップがあるんだと言ったことがあります。つまり、社会の人々は監査に対してほとんど何も期待していないのではないかと。監査人自身、のどかな監査環境の中での時代を過ごしてきて、何も訴えられていない。ほんとうはもっと期待してほしいぐらいなんだけれども期待されていないということで、期待がないということでのギャップがあるのは日本の不幸な状況だということを申し上げたことがあったのです。

21世紀に入って、やはりアメリカと同じような状況がでてきた。そのときに繰り返し使われた言葉が期待ギャップという言葉です。この期待ギャップという言葉が正当性を持つのは、私はいわゆるプロフェッション側の意識ですから、このプロフェッション側において、自主規制能力が磐石に備わっているとき、つまり我々にはそういった問題を解決する能力があるし、あるいはこれまでにやってきたし、これからもそれに対してコミットする用意があるんだと、こういうメッセージが示されるならば、監査人サイドにおいて期待ギャップという言葉は使ってもいいと思うのです。

しかし今は、監査自体、まったく質を変えていると思うわけです。と同時に、当時の1970年代、そして日本の20世紀までの監査というのは、少なくとも日本で言うなら戦後始まった証取法監査、米国で言うならば1933年、34年法の証券2法に基づく監査から、何も監査概念が変更のないままに来ているときの状態での監査ギャップなのです。

つまり、監査導入の時には、まずは正しい財務諸表を企業の責任に基づいてつくってくださいということ。そしてその結果がオーライかどうかについて判定しましょうという、言うならば成果物、結果に対して監査意見を述べるということ、これに特化してきた。

ところが、その後、監査対象は広がり、あるいは頻度も高まり、あるいはそこで盛り込まれている情報が、過去の検証可能な数字情報どころか、記述情報が入り、文字情報が入り、そして将来予測情報が入り、財務報告自体、もう全然変わってしまっている状況にありながら、それを全く度外視して、期待ギャップ、期待ギャップと言っていると言っている。これは議論の前提が全くずれた状態でなされ続けていると思うんですね。

本日の冒頭にそういう発言をされた方がおられますけれども、不正の発見を監査人の使命ととらえるのかとらえないのか。これは制度の問題ですから、監査に対する期待の公約数が不正の発見にあるというならば、そう認識しても構わないと思うのです。そのときに実際に、現在の監査人ができるのかできないか。あるいは、そうした監査をやるのかやらないか。これはまた別の問題だと思います。あるいは制度的にどういう手当をつけるのか。

ところが、大変不幸にも、そういった議論が一気に監査人のところへ来てしまうということです。よく理解しなくてはならないのは、不正を行うのはあくまでも企業だということです、張本人は監査人ではないということ。にもかかわらず、なぜか監査に対して責任を求めようとします。ただ期待が大きいということは、社会的な信頼度も高いからそこに求められていくところはあると思うのです。

そういった整理をしておかないとだめなのであって、そのためにも、日本の場合に、この公認会計士監査制度をどのように再定義するかということが課題だと思っています。つまり、従来のように、不正・誤謬の発見は二次的だということ。これは私たち教育の現場でも研究の現場でも、昭和25年に最初にできた日本の監査基準の前文の1行目にしっかり書いてあるわけです。当時であって、今はもうそういう役割を担わない。それは内部監査、内部統制、内部牽制、こういった企業内の自主組織によって、防止、抑止できるから、監査人はそれは主たる使命としないんだと明確に書いてあるわけです。

ただ、これを私は引きずるわけではなくて、その後の経済環境は、高度化し、情報化し、国際化し、IT化してきている。その中での議論ですから、全くもって比較にできないぐらいの状況になっているわけですから、私は当然変更があっていいと思います。

実際にアメリカの場合も、70年代、訴訟の嵐の時代を経て、1988年でしょうか、歴史に残るぐらいに、一気に9つの監査基準書を制定しています。まさにエクスペクテーションギャッププロジェクトということで、アメリカ公認会計士協会が101年目を迎えるときの改革の一環であり、あえて言うならば、当時のアメリカ公認会計士協会は、過去の歴史の中でも自主規制機関としての黄金期であり、そのときに彼らが示したメッセージだと言えますが、そこでもやはり不正を二次的なものとして考えていたのです。しかし今、状況は全く変わってしまっているわけです。その変わった中で不正問題をどういうふうにとらえていくかということをやはり考えるべきだと思います。

多分この初回の議論では、おそらく利用者側の方が何となく多いような気がするんですけれども、そういった人たちが公認会計士監査に対して心底何を期待しているのか。それをつまびらかにしていただいて、それが現行の制度の中で受け入れ可能なのか。できないのかできるのか。仮に、監査人側から見れば、受け入れることができるとしても、到底監査時間は現在の2倍から3倍になりますというのか。

あるいは、私たち監査人は、不正教育なんか何も受けていないから、あるいは、不正の勉強なんかしていないから無理ですというのか。実際に公認会計士の試験にも、不正に関連する科目はないわけですから、したがって、素人同然の立場で不正のチェックなんかできるわけないから、それは別途違う人にやってもらいましょうというニーズか出るのか。その辺を識別して、制度に落とし込んでいく必要が私はあると思うのです。

ということで、まず最初に期待ギャップについて、やはり正しい理解をする必要があるのかなということと、もう一つはそれを敷衍させるならば、私たちがこれから新しい時代に見合った我が国の公認会計士監査制度、そして国際社会に説明できる公認会計士監査制度はどうあるべきかということを議論することが必要だと思います。そのときの監査の定義、役割、これをどのように位置づけるかということがまず必要なのではないかと思います。

ただ、私は、自分のつたない経験とアメリカの研究をベースに考えてみますと、まさに今は企業不正、つまり財務報告不正、とりわけ今般のようなオリンパスのような事件は象徴的ですけれども、これが見抜けない監査だったら不要ではないかと思っています。

実際に私の仲間、監査の専門家であれ、素人であれ、経済人であれ、100人中99人は、今回のような事案がもしも許されるような状況ならば監査は要らないよねというメッセージを発していますので、これに対してやはり謙虚に受けとめる必要があると思います。

では、そのためにどうあるべきか。一番大事なのは、公認会計士の先生方が不正という問題に対して真正面から取り組むためにも、基本的な勉強ないし学習と、トレーニングを踏まえながら、実践的なツールを身につけて技能を高めていくこと。いわゆる不正教育を促進させること。こういったこともあるのではないかということで、まず最初に指摘させていただきました。

まだまだ、申し上げたいことはいっぱいあるわけですけれども、私だけ時間を使っても何ですから以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいまご発言いただきましたけれども、さらに加えてご発言をいただけるとありがたいと思います。吉見委員どうぞ。

○吉見委員

吉見でございます。今、八田委員からもお話がありまして、学者の立場といいますか、研究者の立場から、まとめられた発言がいただけたのかなと思います。多少重なる部分がございますけれども、まず、監査の位置づけといいましょうか、その監査が期待されているような役割について、時代の中でかなり変化が起こってきている。そのときに、現在、その監査がどういう位置づけなのかということは確認する必要があるのかなと考えているところでございます。

先ほど来、例えば不正につきまして、その発見が監査にとっての役割あるいは使命なのかといったような議論もございましたけれども、そうなのかという位置づけも確認しなければならないでしょう。また、今、不正という言葉が使われておりますけれども、これは英語ではfraudになるのだろうと思いますが、もともとは大変広い概念でありまして、一口に不正と言っても、さまざまなものがある。

今日ご報告をいただきました中でも、違法行為という言葉も出ておりましたが、違法行為と言ってもこれまた非常にさまざま。こういったようなものをもう少し分析した上で、このうちどういう不正に対して監査が対応しなければいけないのかを改めて確認する必要があるのかなと考えるところでございます。

そういう意味では、監査で使われている様々な専門用語の再確認も、もしかすると必要なのかもしれません。すなわちそれは誤解がないようにする用語の使い方、選び方も考えねばならないのかなと思います。

保証という言葉をよく使いますが、保証という言葉は監査の我々専門家からしますと、かなり広い概念で、保証の中でも最もその水準の高いものが監査なのだという理解をいたしますけれども、一般に考えれば保証のほうはむしろかなり強い言葉なのではないか。

我々は保証していますというふうに監査人が言われれば、それはほんとうに何の問題もなく、まさに品質保証したというようにもとらえられかねない言葉なのかもしれないと思うところでございます。これは一例でございますけれども、こういうような用語の問題も含めて再確認が必要な段階に来ているのかもしれないと考えるところでございます。

一方、基準に関しては、これはもうご案内のように国際監査基準が既に導入され、公認会計士協会のほうでは、昨今その国際監査基準を実務指針に全面的に導入して監査が始まっているという状況でございます。

これは今後監査基準を考える上で、必ず国際監査基準に従わねばならないということではないと思いますが、少なくとも国際監査基準があることを念頭に置いた上で、我が国の監査の基準のあり方を考えねばならないということも、また一方であるかなというふうに考えるわけであります。

監査の位置づけや監査の基準の問題とは少し離れるのかもしれませんけれども、専門職、公認会計士ですが、この位置づけの問題というのは、やはりどうしても関連してこざるを得ないのかなというふうには考えてございます。

私自身は、先ほどの八田委員のご発言とも重なりますけれども、会計士が監査人として財務諸表監査を行うことができる根幹として、社会的に独立している、その独立性があることを社会の中で認められるということが極めて重要であって、そのためには、会計専門職が自主規制をきちんと行って、その自主規制が社会的に認められることが大変重要なポイントになっていると考えております。

そのため、今日は荻原委員のご報告にもございましたけれども、もしかすると例えば金融庁ないし公認会計士・監査審査会ということになりましょうか、その調査等のチェックが厳しいことがマイナス要因になっているのかもしれないというようなご報告もございましたけれども、専門職の自主規制をむしろ公的機関がどうサポートしていくのかということですね。つまり厳しくチェックするというよりは、サポートしていく体制を考えていくことが重要なのではないかなと考えるわけでございます。

さらに最後でございますけれども、監査と市場との関係でございます。すなわち財務諸表監査におきまして、公認会計士が不適正意見を出しますと、これは上場廃止にすぐに結びつくということが実質的にはかなり大きな問題になっているといいますか、監査人にとりましても、企業にとりましても、大きなポイントになってございます。

これは一見明確なリンクのようにも見えますけれども、今般のオリンパスのケースでもわかりますが、それは必ずしも明確でもない。すなわち粉飾決算だろうと思われるような問題があったとしても、さまざまなそのときの状況によって、証券取引所の判断もございましょう。上場廃止に至る場合もそうでない場合もある。そのような不明瞭さもあって、企業としては、やはり上場廃止を恐れるあまり、監査に対しての協力体制が薄れてしまう。

監査というのは基本的には企業との間できちんとした信頼関係をつくって行わなければならないものですから、市場規制と監査との関係、監査意見との関係、こういったことも念頭に置いて考えなければいけないことかなと考えているところでございます。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。ほかにいかがでございましょうか。宮本委員どうぞ。

○宮本委員

ありがとうございます。日本監査役協会は、この審議会に初めて参加させていただいたわけでございますけれども、委員のメンバーを拝見いたしますと、公認会計士の方を含めて会計のご専門の先生方が非常に多い中にあって、私ども監査役の考え方を簡単にお話をさせていただきたいと思います。

例えばオリンパス事件の中で、監査役というものは一体どういう責任を感じていたのか、あるいは感じていなかったのか。こういった厳しいご質問があった場合には、そのときにお答えをさせていただこうと思っておりましたが、ご配慮いただいているのか、あるいはそういう議論に至っておらず、会計の専門分野の議論が進んでいることから、少し監査役あるいは監査役協会という立場でお話をさせていただきたいと思います。

まず、オリンパス事件というものが1つのきっかけとなってこの監査基準だけではなく、いわゆるガバナンスの問題でいろいろ議論を呼んでいるところでございますけれども、私どもでもこの事件は極めて特殊性のある事件ととらえておりますが、一方で、ガバナンスの一翼を担う監査役あるいは監査役会というものがきちっと機能していなかったということで、協会でも会員に向けて、あるいは社会に向けても、まずもって反省をするとともに、監査役の仕事というのは、あるべき姿を求めて健全な懐疑心というものを持って、きちっと仕事に臨むべきだと発信しております。

こういうメッセージを出すとともに、もう一つは、本日の会議の関連でお話をさせていただきますと、このオリンパス事件で、金商法の193条の3といった考え方で、監査法人から監査役あるいは監査役会に通知があったのかなかったのか。それはどういう状況だったのかというようなお話もございましたけれども、私は公認会計士協会等とお話をする中で、どちらに責任があったとか、あるいはその一定の個別の事件でどちらがよかった悪かったというような、後ろ向きのお話をしてもあまり意味がないことであろうと申し上げております。

協会としては、その反省に立ってといいますか、公認会計士という専門的な知識を持っておられる方とガバナンスを健全に導いていくという監査役あるいは監査役会という機関が、いかに実質的に連携をしてガバナンス体制をよくしていくかについて、昨年の12月来お話をさせていただいております。

従来は、形式的に連携をすることに終始していた部分がございますが、形式的ではなく、監査役あるいは監査役会が、自分の役割を果たす時代あるいは社会的な要請がもうそこまで来ており、それに気づかないと大きな責任を伴うことになるんだということについて、会員に理解を求めているところでございます。

この考え方に立ちまして、今回臨時委員として任命をいただきました監査部会での監査基準の考え方、もちろん国際監査基準という枠組みの中で、監査役との連携というものがどのような考え方で 活かせるのかというような点があると思いますけれども、今申し上げましたような考え方で、私どもは議論に参加をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いを申し上げます。

○脇田部会長

ありがとうございました。引き続きまして伊豫田委員どうぞ。

○伊豫田委員

先ほど八田委員から期待ギャップのお話がありまして、期待ギャップについての理解、これをもっと明確にすべきだというお話があったわけでございます。今般のオリンパスの事例というのは、確かに極めて極端な事例かもしれませんけれども、例えばああいう証券市場なり金融市場を揺るがすような大きな事件、市場を傷つけるような行為が起こってしまいますと、期待ギャップ以前の問題で、こんなことがあっていいのかどうかという、非常に素朴な問題として、いわゆる素人のレベルでは話があるんじゃないかなという気がいたします。

マーケットでそもそも情報開示が必要になるというのは、その情報が期待以上に分布しているからの話でありまして、それを埋めるためにいわゆる情報の提供ということが行われていくわけですが、そこで信頼性が担保されなければ当然金融市場というのは成り立たないという話なんです。

ですから、監査の世界、我々テキストベースでは、財務諸表の監査の目的は適正性に関する意見表明であると。財務諸表に対する保証を付与することであるというふうに言っておりますけれども、ただ、不正摘発というのは、仮にそれを1つの大きな目的としても、不正摘発をどう位置づけるかというのは、これは歴史的に長く議論されてきた問題であります。非常に重要な問題ではあるんですが、この点については少なくとも我が国ではもう明確にされているのではないかなと思います。

つまり、2002年の監査基準の中で、経営者不正を中心とした不正問題については、従来よりも踏み込んだ形でコミットしていくという方向性は出ているんじゃないかなと。その線に沿って監査というのが行われているということは、例えばある意味、社会的にも浸透してきているということを考えますと、もはや、副次的意味として、そういうレベルでとらえていていいのかなという気がいたします。

ましてこの10年間に、その改正後10年間同じような問題が連続して起こっているということを考えますと、今般、この監査基準に所要の改正を加えるということがございましたけれども、そうすると、やはりこの不正の問題というのをもう少し踏み込んだ形で、明確に監査基準の中でとられていくというのが1つの共通の考え方の出発点になるんじゃないかなという気はいたします。

以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。田中委員どうぞ。

○田中委員

会社法の研究者としまして、これまでのご議論をお聞きしての感想めいたことをお話しさせていただきます。

最も興味深くお聞きしたのは、期待ギャップというものですけれども、今日のご議論をお聞きした感じですと、期待ギャップといったときには、2つの種類のものがあるのかなと思っています。1つは、公認会計士監査そのものの目的の中に違法行為の発見があるのかということです。違法行為の発見そのものが監査の目的であるという期待が世間にあり、それが公認会計士自身の監査の考え方とギャップが生じている、これが期待ギャップと言われているものの一部にあるのかもしれません。

ただ、これについては、おそらく、ちょっとした言葉の行き違い程度のことである可能性が高いと思います。世間の期待というのも、公認会計士に警察的な役割を求めているわけではなくて、やはり基本的には、虚偽記載がないかどうかについて合理的な保証を求めているだけであって、違法行為をした人をつかまえてくれと期待しているわけではないと思います。

そこで、より重要なのはもう一つの期待ギャップであって、それは、公認会計士監査の目的であるところの、虚偽記載がないかどうかの「合理的な保証」というもの、この「合理的」という中に、違法行為がされる可能性をどの程度考慮に入れて、それを考慮したことを前提として監査をするかというところについて、いわば監査の程度に関して期待ギャップがあるのではないかと。これがおそらく問題の本質なのかなと思います。

この合理的というのは、多分リーズナブルという言葉の訳であると思いますが、法律的にはよく「相当」という言葉を使います。あるいは「社会通念上相当」という、これは裁判所の常套文句なのです。ですから、相当性というのは社会通念によって決まるということになってまいりますから、社会が監査法人の監査に期待するものが高くなると、それは社会通念上の相当性という経由をして、法的な判断にも関係してくるということかと思います。

私が監査基準の文言を読んで理解した限りでは、「合理的な保証」の中には、やはり、不正が行われる可能性も考慮しなければならない。それは、財務諸表の重要な虚偽記載の有無に当然影響してくるのですから、それを考慮しなければならないというふうになっております。ですから、現在の監査基準でも、不正の発見というかどうかはともかく、不正が行われる可能性を考慮して合理的な保証を行えるかどうか判断せよという点においては、現在の監査基準の中にすでに織り込まれているといってよいと思います。ただ、そのような趣旨をより明確に打ち出すことは必要になってくるのかもしれません。

ただ、その際に、いくつか公認会計士・監査法人の責任が問われた裁判例を読んだときの感想を申し上げますと、裁判所としては、具体的な基準もなく公認会計士・監査法人の責任を認めるというのは、相当勇気のある判断になるように思います。例えば、今回のオリンパス事件を例に挙げれば、銀行に残高証明を求めたところ担保の欄に記載がなかった場合に、重ねて回答を求めなかったことによって、監査法人に過失があるかどうかという判断を、裁判所は判断しなければならなくなる可能性が高いです。

そうなりますと、そのようなことについて書かれた基準がありませんと、実際にはもうそれ以上証拠調べはできないということになって、もう裁判所が判断するしかなくなるんですね。というふうに非常に苦しい中でも、これまでの裁判所は頑張って判断をしてきているんですけれども、このような部分でもう少し具体的な行動指針に落とし込めるようなものがないのかと。裁判所が依拠できるような明文のものがないのかということを検討課題に挙げてもいいのではないか。

そのように、不正が起こる可能性についてまで十分に考慮した監査を要求した場合、当然監査のコストが上がるのですから、それは監査報酬が高まるんだと、そういう可能性もやむを得ないという一定の価値判断のもとに、もう少し踏み込んだ、まさに不正の発見ということまで考慮に入れたような、より具体的な行動指針をとるかどうかということを、政策的な判断として今後は考えていかなければならないのではないかと思います。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。引き続きまして、熊谷委員どうぞ。

○熊谷委員

みずほ証券の熊谷と申します。冒頭ユーザーの立場といいますか、アナリストの立場で後藤委員、特に格付アナリストという立場でお話しになられました。私は今は違う業務をしておりますが、長年、株式のアナリストをやっておりました。

本件に関しまして、期待ギャップということが随分言われていて、不正を見抜くことが監査人に期待されているのかどうか。多分多くのアナリストが不正を見抜くということに関して、期待しているかどうかということはともかくとして、無限定適正意見というものがついた場合に、それこそ期待するものは、少なくとも会計のプロセス、財務諸表をつくるプロセスにおいて、何らかの不正がなかった。あるいは虚偽の記載はないという前提で投資判断あるいは財務諸表の分析を行い、投資判断を行うということであると思います。

本件に関しまして、やはり非常に残念かなと思いますのが、少なくともいろいろな記録を見る限りは、オリンパスの前監査法人から、少なくとも内部の監査人、監査役会に対してある種のウォーニングは発せられていた。

しかし、それもやはりこれはまさに内部で判断するか、外部で判断するかということにもなりますけれども、第三者委員会の調査報告書をもって特に問題がなかったという結論になってしまったということです。

結果として、本件に関しましては、むしろ外部のある種のメディアの報道が先行する形で、それを受けまして元社長が告発するような形で進んでいった。こういうことが起こりますと、このオリンパスの件そのものは特殊事例であるにせよ、市場全体の透明性なり明瞭性ということに関しまして、やはり大きな疑義がついてしまう。その結果、ある種の負の外部性のようなものが発生してしまったということだろうと思います。

そういった意味では、やはりほんとうに本件に関しまして、無限定適正という意見が会計士といいますか、監査のプロの方々の判断として妥当であったのかということに関しましては、やはり財務諸表のユーザーからしますと、素朴な疑問としてございます。

本件は、やはり少なくとも多分内部から告発のような形でメディアの報道はあったように思われます。また外部監査人も、それと同等の情報、ある種インサイダー的な情報に迫る能力もあるというふうに思われます。そういう監査人の方々がそういう努力をしっかりしていただいたのかなというところに関しまして、やはり市場からの疑問というのはそういうところに集中しているのではないかなというふうに考えております。

以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。ほかにご発言はいかがですか。五十嵐委員どうぞ、もう一度よろしくお願いします。

○五十嵐委員

エクスペクテーションギャップのことにつきまして、最近のIAASBでの議論では、最近2つの用語が使用されております。先ほど八田委員がおっしゃられましたように、エクスペクテーションギャップについては、アメリカでも明確な定義はないということが議論されています。 現在、監査報告書の内容と監査報告書の利用者のパーセプションの差異を、エクスペクテーションギャップと、もう一つはインフォメーションギャップというこの2つに内容を分けて議論されています。会計不正の議論を行われる中で、こうした内容もさらに議論されるとおもいましたので、2つの種類があることをご説明させていただきました。

○脇田部会長

ありがとうございました。住田委員どうぞ。

○住田委員

先ほど来、各立場の委員の方々から期待ギャップに関する定義を明確に冒頭ですべきではないかというご発言が続いておりますが、私ども、公認会計士協会といたしましても、この監査に対する世間的な期待というものと、それに対して監査人がちゃんとこたえられているかどうかということはきちんと認識した上で、この部会で監査基準そのものの内容についてご議論いただきたいというふうには思っているところです。

先ほど伊豫田先生のほうからお話がありましたように、財務諸表監査において、監査人は誤謬または不正による重要な虚偽表示がないということを合理的な保証を提供するという責任を負っております。

それは平成14年の監査基準の改正において明確にされている点でございまして、私ども監査人が監査をやる場合、それは会社による意図的なものであろうが、単なるエラーであったとしても、重要な虚偽表示がないということを監査の計画段階から実施、報告、証拠の評価に至るまで、そういう観点から監査を実施することが求められております。実施しているつもりでございますというふうに言わなければならないのが非常に残念なところなんですけれども、そういう気概で監査は行われることになっております。

監査基準のほうで財務諸表監査における不正の取り扱いが明確にされておりますので、日本公認会計士協会のほうでも実務指針の中で、不正に対応する実務指針を整備し、いろいろ改正も加えておりますし、その対応に取り込んできているつもりでございます。

先ほどこの合理的な保証というのが英語で言えばリーズナブルアシュアランスで、法律的には社会通念上相当というような言葉が該当するのではないかというようなお話もありましたけれども、それにほぼ等しいのかもしれませんけれども、我々はやはり監査基準に照らして職業的専門家としての正当な注意を払って監査を実施することが求められていると考えています。財務諸表の虚偽表示は不正によるものと誤謬によるものも含まれますが、誤謬によるよりも、経営者の意図的な重要な虚偽表示の発見の難易度というのは飛躍的に監査上高くなりますので、不正による重要な虚偽表示は、監査人が正当な注意を払ってもなお発見できないという状況があり得るということを、それが財務諸表監査の性質であるということを少しご理解いただいた上で、監査基準のあり方、手続の拡充の方向性ということを議論いただけたらというふうに思います。

先ほど国際監査基準というお話もありましたけれども、この2012年の4月1日以降開始する事業年度から、協会で開発しています新しい実務指針が発効しておりまして、その中でも、従来は例示であった手続が要求事項として監査人が実施しなければならないものとして明瞭化をはかっている側面があり、不正対応のほうもそのような改正を織り込んでいる側面がありますので、その辺の実務指針の状況も勘案していただいた上で監査基準にどう取り組むかということを議論いただければというお願いでございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

残り時間がまだございますけれども、部会長がご指名するというのは慣例に反するし、私自身、以前しかられたことがありますので、今までの議論を通じてみますと、会計士の使命ということが議論されておりますので、申しわけないのですけれども、最初に問題提起されました林田委員にこういう議論をお聞きになって、どういうようなご意見をお持ちかということを、よろしければご発言いただいて、そして泉本委員にお願いいたします。いかがでしょうか。ご指名して申しわけないんですけれども。

○林田委員

林田です。いろいろお話をお伺いしていて、もう少し聞きたいなと思ったのは、実際にその監査にあたっていらっしゃる方々が、どういう使命感を持って監査の実務にあたられているのかなと。つまり、先ほどどなたか最初のプレゼンで張り込みをしたり、相手を缶詰にしてまで真実に迫ろうとしたという話があったかと思うんですけれども、それを突き動かしている動機というのがどこにあるのかと。

我々新聞記者もどちらかというと、その話したくないことを話させて新聞記事にするというのを職業にしておりまして、そういった同じような局面に立たされることがあります。我々の場合は、特ダネを書けば上司にほめられたり、うまくすると何か賞をもらえたり、あるいは何がしか将来出世できるかもしれないと考えたりとか、それなりのインセンティブがありますけれども、先ほどからのお話をお伺いしている限りは、何か職業的な自負心とか誇りのようなものを支えにやられているのかなと。

それを今出てきたように、反対に訴えられてしまうようなリスクも負いながら、そこを追及していくというのは、その方々の自覚にだけ任せているのではなかなか難しかろうかなと思いまして、そのあたり、実際の方々がどういう気持ちで監査にあたられていて、それに対する見返りがあるのか。むしろ、余計なものを見つけやがって監査時間が長くなって迷惑だというようなことも起こり得るのか。あるいは相手から監査報酬をもらえないでただ働きするようなことがあるのか。ただ働きというか、長くやっても同じ料金しかもらえないというようなことがあるのかないのか。

そういった地に足のついたご意見を今後ぜひ伺って、そういった実態を踏まえないと机上の空論になってしまう可能性もあるので、そんなことをちょっと聞いてみたいなということを感想として持ちました。

○脇田部会長

ありがとうございました。ご指名して失礼いたしましたけれども、では泉本委員どうぞ。

○泉本委員

どうもありがとうございました。今、林田委員のご質問に全部は答えられません。

○脇田部会長

それは、今日はご意見をいただく場ですので、どうぞ泉本委員はご用意になった発言で結構ですから。

○泉本委員

その答えは次回に少し整理して自分も経験があるところもございますけれども、不用意に発言するといろいろなところに波及してしまうと困りますので、そこのところは今日はご容赦いただきます。私の意見の1つは、監査基準は、今回、不正ですとか監査人がどういうふうに交替していくかというところを含めて、ご議論したいということですけれども、監査基準本文は、かなり短くて、多分いろいろなところで使われています。上場企業や会社法監査だけの監査基準ではないと思います。それこそ監査基準ということで会計士が今いろいろな分野で監査ということを求められてきていますが、監査基準自体にかなりがちがちにいろいろなものを入れてしまうと、動きにくいというところがございます。

もっとやはり監査基準には、理念とか、基本的な概念のところをしっかり抑えていただいて、あまり動きにくいものをつくられますと動きにくくなります。いろいろな業種別の監査もありますが、金商法ではなく、会社法でもなく、会社法を少し落した形でいろいろな情報が成り立っているという、そういう監査もあります。監査基準自体を厳格にすればよいということではないのではないかというところを少し感じてございますので、そこのところもお含みいただいた上でご議論いただきたいと思います。

あとは次回ということでよろしくお願いいたします。

○脇田部会長

ありがとうございました。関根委員はいかがですか。

○関根委員

ありがとうございます。私は日本公認会計士協会の仕事をさせていただくと同時に、監査法人にも所属しておりますが、監査を長年行ってきた公認会計士として、皆様のご意見をいろいろ聞かせていただきまして非常に参考になりました。

先ほど使命という話がございましたけれども、私どもは、今般の企業不祥事を踏まえ、資本市場のより高い信頼性を確保すべく、監査もしくは制度等、いろいろなことについて考えていく必要があると考えております。本日の話にもありましたように、監査というのは資本市場に提供される情報の信頼性の確保のための重要な位置づけにあると考えておりまして、不正にどのように対応するのかというのも重要な課題と認識しております。

これも先程お話のありました使命ということにも関連するのかもしれませんけれども、問題ではないかと思ったことを指摘するというのは、思い起こせば、新人のころ等はなかなか難しいと感じていたものでした。けれども、長年経験をしていきますと、何か気づいたことや気になったことというのは、指摘せずにそれをそのままにしておいても、必ずしもそのままで済むというものではないのだと感じるようになってきました。もちろん、言い方とかタイミングとかはいろいろ考えなければいけないですけれども。これはもしかしたら職業的専門家としての考え方がだんだん養われてきたのかなとは思っているんですけれども、 そういったことを大切にしながら、やはり気になったことはきちんと対応しなければいけないという思いでやってきたと考えています。きちんとしたお答えにはなっていませんので、泉本委員が発言されましたように、もう少しきちんとしたお答えができるように、次回以降していきたいと思っております。

また、これも先ほど来の話にございましたように、現在の監査基準において、財務諸表の表示が適正である旨の監査人の意見は、財務諸表には全体として重要な虚偽の表示がないということについて合理的な保証を得たという監査人の判断を含んでおり、監査人は不正によるか誤謬によるのかを問わず、全体として財務諸表に重要な虚偽表示がないことについて、合理的な保証を得る責任があります。ここで、従業員でなく、経営者が公表財務数値を操作するようなことを意図して行った経営者不正がもしあった場合、非常に難しい判断になる場合もございますが、経営者不正というのは、先ほど来から投資家の方々、アナリストの方々からのお話にもありますように、投資家の意思決定に重要な影響を及ぼすような重要な虚偽表示になる可能性が高いため、このような経営者不正による重要な虚偽表示がないことについて合理的な保証を得る責任を負っていると考えております。

ここでやはり、これも先ほど来話が出ていますように、この合理的な保証を得る責任ということについては、監査基準には記載されていますけれども、一般的に、何を一般的と言うのかは難しいのですけれども、どのように考えられているのかということになるかと思います。例えば先ほども話が出ていましたように、監査を行えばすべての不正が見つかるはずではないのかとか、監査をしていて何故このような大きな不正が見つからないのかというような、非常に素朴な疑問と申し上げていいのかわからないんですけれども、そういったことにも何故なのかというのをきちんと答えていく必要があるのではないかと思っております。

また、監査の基準というのは、実務の基準でございますので、先ほど来の話でも出ていましたけれども、不正に対してどのように対応していくかということを常に検討して、改正を繰り返してきたと考えております。私どもは今後、この部会で検討された監査基準を使っていく立場でもありますから、そういう意味では自身に密接に関係することでございますけれども、自身がやりやすいとかそういうことではなくて、この部会で検討をすることによって、どのようにしたら、市場の信頼性の確保のため、監査というものを皆様に理解いただいて、有効に機能させていくことになるのかということを、いろいろな立場の方から議論いただくと共に、監査の現場、先ほどもご質問がありましたけれども、こういったことに対してのご質問も出てくるかと思いますので、そうした質問について答えながら、検討していきたいと思っております。

皆様、お忙しい中、1年かけて検討してくださるということで非常にありがたく思っております。また、私ども日本公認会計士協会では、監査の実務指針も作成しておりますので、ここでの議論も踏まえて、指針の方でもいろいろと検討していきたいと思っております。

私のほうから以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。

そろそろ終了の時間も近づいてまいりました。本日は今後、議論をしなければならない重要な論点を数々ご指摘いただきました。失礼しました。八田委員どうぞ。

○八田委員

すみません。さきほど申し上げたかったことが1点あったんですけれども、どなたかもおっしゃっていましたけれども、監査人と投資家を中心とした利用者の接点、つまり連結環機能を持ったものとしては、たった一つ監査報告書しかないわけです。 その報告書の内容がやはり絶対的な意味合いを持つということのゆえに、先ほどどなたかもおっしゃったように、無限定適正意見というものが出たときに、利用者側はかなりの期待を持っていると思うんですね。要するに、当該財務報告の内容には何も問題ないと。我々も監査論的には無限定適正というのは、監査人の視点でみると、監査人が考え得るべき必要不可欠なすべての合理的な証拠、基礎を得たということで、堂々と意見を述べるんだよというふうに言っているんですが、現実問題はどうもそうではなさそうだということです。

それともう一つは、では、一部できなかった手続があるという場合です。それは不可抗力による場合もあるし、いろいろな他の理由もあるでしょうが、仮にそれに重要性があるとなると、ご案内のとおり現行制度では意見不表明になってしまう。そうした場合には、自主規制機関の証券取引所のほうから株券上場廃止処分になってしまうという、監査人にとっては全く意図しないサンクションが働いてしまうことによって、おそらく通常の監査人はまず意見不表明の報告書は出せないと思います。

となると、無限定意見か除外事項を付した限定意見になる。そこの除外事項のところにどういうふうに書くかということがあると思うんです。例えば今回のあずさ監査法人の状況をすべて知っているわけではないですが、どうも調査報告書を見ると、いくつかの点で不正の片鱗、端緒について気がついている。そうした疑念をどうやって解消したのか、できなかったのか。ほんとうに実施すべき監査手続を全部実施した上で、20年以上、無限定適正意見を表明できたのですかというと、多分違うんではないのかなと。それはやはり監査人にとって少し無理な部分がある。

今日の後藤委員の話を聞いていて、格付機関だって10ぐらいの格付ランキングあるわけです。同様に、おそらくそのぐらいの監査報告書の格付ランキングがあってもいいんではないかと。当然に、世界の動向にマッチさせるためには、それは枠組みとしては無限定と除外事項付限定なんだけれども、この除外事項のところにもう少し丁寧な書きぶりをすること。そして、ほんとうに無限定適正の場合には、正真正銘納得してやったんですよということの気概と自負、責任感を監査人に持たせる。こういう方向もあっていいのかなと思っています。これがおそらく利用者との意識のギャップを防ぐ1つの一番直近の課題なのかなということで、先ほど申し上げようと思ったんですが、追加させていただきました。どうもありがとうございます。

○脇田部会長

どうも部会長というのは時間がちゃんと終わるということを非常に気をつかっておりますので、八田先生のお顔が見えなくて大変失礼いたしました。

それでは、時間もだんだん迫ってまいりましたし、先ほどの八田委員のご発言につきましては、先ほど引頭委員もおっしゃったんですけれども、監査報告書における監査意見の表明の方式で、国際的にも議論が非常に行われているところでございます。

このように議論しなければならない重要な論点を数々皆様方からご指摘をいただきました。今後の審議の中でそれを引き継ぎまして、さらに議論を深めてまいりたいと思います。

本日の審議は、このあたりにさせていただきたいと思います。

次回の日程につきまして、事務局よりご説明いただきたいと思います。

○栗田企業開示課長

次回は6月27日水曜日の16時半から18時半を予定しております。メール等で改めてご連絡させていただきます。ちょっと遅い時間になりますけれども、ご出席のほう、よろしくお願いしたいと存じます。

○脇田部会長

それでは、5分残しておりますけれども、本日の監査部会を終了いたします。お忙しいところをご参集いただきまして、まことにありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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