企業会計審議会第36回監査部会議事録

1.日時:平成25年11月13日(水曜日)9時30分〜11時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○脇田部会長

定刻になりましたので、これより第36回監査部会を開催いたします。皆様にはお忙しいところをご参集いただきまして、ありがとうございました。

まず、会議の公開についてお諮りいたしたいと思います。本日の監査部会も、企業会計審議会の議事規則にのっとりまして公開することにいたしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○脇田部会長

ありがとうございました。ご了解いただきましたので、そのように取り扱わせていただきます。

事務局に人事異動がございましたので、議事に入ります前に油布課長より紹介をしていただきたいと思います。お願いします。

○油布企業開示課長

本年夏の人事異動によりまして企業開示課長を拝命いたしました油布でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

私の他にも事務局に人事異動がございましたので私からご紹介いたします。

桑原総務企画局長でございます。

○桑原総務企画局長

よろしくお願いいたします。

○油布企業開示課長

藤本企画課長でございます。

○藤本企画課長

よろしくお願いいたします。

○油布企業開示課長

渡部国際会計調整室長でございます。

○渡部国際会計調整室長

よろしくお願いいたします。

○油布企業開示課長

以上でございます。

○脇田部会長

それでは議事に入ります。まず、「監査報告書の記載内容の見直しに係る国際動向の報告」につきまして、本日は参考人としてIAASBメンバーの関口さんにご出席いただいております。関口参考人、説明をお願いいたします。

○関口参考人

関口と申します。本日はよろしくお願いいたします。

それでは私から、国際監査・保証基準審議会(IAASB)から公表されております監査報告に関する公開草案をご紹介いたします。

この監査報告の公開草案ですけれども、今年7月に「監査報告書の改善」というタイトルで公表させていただいております。公開草案を公表する前にも、IAASBではいろいろ検討を進めておりまして、2006年ぐらいから、例えば学者の先生方に学術調査を委託したり、2009年にディスカッションペーパーを公表したり、2012年にはコメント募集文書という形で広く意見を募ったりということでこれまで検討を続けてまいりました。こうした結果を踏まえ、本年7月に公開草案を公表しております。

内容ですけれども、一番大きい点が1ページの2で書いてあります、「監査上の主要な事項に関する提案」というところで、この「監査上の主要な事項」を新設するのが今回の大きなポイントでございます。

この新設に当たりまして、ISA701を新たに設けることを今回提案しており、その中で、上場企業の監査人に対して監査報告書において監査上の主要な事項、Key Audit Mattersをコミュニケーションすることを要求する提案になっております。このISA701の公開草案では、監査人の目的について、財務諸表に対する意見を形成した上で監査上の主要な事項を決定するとともに、監査報告書において当該事項についてコミュニケーションを行うこととしております。したがって、財務諸表に対する意見を形成した上でコミュニケーションを行うことが前提となっておりますので、これによって従来の無限定意見、あるいは限定意見という建て付けが変更されるわけではありません。

この監査上の主要な事項の内容については、次にございますように、「監査人の職業的専門家としての判断において当年度の財務諸表監査で最も重要な事項」と定義するとともに、監査上の主要な事項は監査人が統治責任者にコミュニケーションを行った事項から選択するとしております。

今回、この監査上の主要な事項のコミュニケーションを提案するにあたりまして、どういう趣旨で要求するかが議論のポイントになりました。具体的には、「財務諸表利用者が財務諸表を理解するに当たって最も重要と考える事項について情報を提供する」としたほうがいいのではないかという意見もあったのですけれども、一方で監査人の側から財務諸表利用者がどういう情報を欲しがっているかまでは分からないということで、「監査人が当年度の財務諸表監査で最も重要と考える事項」について情報提供することでどうかとなっております。この結果として、財務諸表利用者が企業及び監査済財務諸表において経営者が重要な判断を行った領域について理解することに資するんじゃないか、それから、財務諸表利用者に対して企業及び監査済財務諸表に関連する一定の事項について経営者及び統治責任者と議論を行う際の土台になるんじゃないかということが期待されると考えております。

監査上の主要な事項として記載すべき事項は、監査人の職業的専門家としての判断において行うことになっておりますので、選択は監査人の判断によるものとされております。また、判断にあたりまして、次の事項を含めて監査の実施において特に注意を払った領域について考慮しなければならないとされておりまして、3点挙げております。

1点目が、特別な検討を必要とするリスクが識別された領域または監査人の重要な判断を伴う領域。2点目が、監査において十分かつ適切な監査証拠の入手を含めて重要な困難に直面した領域。3点目が、内部統制の重要な不備が識別されたことによるものを含め、監査において計画したアプローチの重要な変更が必要になった状況。このような状況について考慮することが今回の公開草案では提案されております。

何について書くのかが決まったらどこまで書くのかが次のポイントでございまして、それが(3)でございます。公開草案では、マル1マル2と書いてございますように、関連する財務諸表における開示への参照をすること。それから、監査人が当該事項を監査において最も重要な事項の一つと考えた理由を必ず記載することを提案しております。

理由を説明するために必要と監査人が判断した場合には、当該事項の監査への影響、これには、例えば、実施した監査手続、あるいはその結果についても含まれるとしております。

この議論におきまして、監査手続とか結果について記載するように義務付けたほうがいいのではないかという議論があったのですけれども、例えば結果を記載するとすればいわゆるpiecemeal opinionとして受けとめられるおそれがある等の理由で、必ず記載すべき事項とはしておりません。

次に進みまして、議論の過程において監査人が企業の情報に関する一次的な情報提供者となるべきではないというコメントが多くありました。そこで、公開草案の適用指針において、監査人は企業に関する一次的な情報を提供しないように努めることが適切であるとしております。ただし、主要な監査上の事項に関する記載にとって監査人が追加的な情報を提供することが極めて重要であり、その情報の提供が法令で禁止されていない場合にはその限りではないとされております。

続いて各論的なところを少しだけお話しさせていただきます。

1点目が(4)その他のマル1で、監査上の主要な事項がない場合でございます。監査上の主要な事項は、当年度の財務諸表監査で最も重要な事項とされておりますので、相対的な概念ということで、基本的にはどの監査業務においても存在する可能性が高いとされております。ただし、議論の過程において、例えば休眠会社の場合にはどうであるかという話がございまして、そういうことで限定的な状況において監査上の主要な事項がないこともあり得るとしております。ただし、その場合には、統治責任者や審査担当者との議論を行うとともに、監査報告書において監査上の主要な事項がない旨の記載を行うことが提案されております。

マル2のところでは、意見不表明の場合に監査上の主要な事項を記載すると、記載された事項の信頼性の程度に誤解が生じる可能性があることから、監査上の主要な事項を記載することを禁止する旨が今回の公開草案では提案されております。

続きましてマル4の比較財務諸表ですけれども、先ほど申しましたとおり監査上の主要な事項は当年度の財務諸表監査で最も重要な事項とされておりまして、例えば2期比較で財務情報が記載されていたとしても、当年度の監査に関するものに限ることにされております。

マル7に行きまして、ISA701の適用対象について、上場企業による完全な1組の一般目的の財務諸表の監査に適用する旨を提案しております。従って、上場会社以外に適用することを提案しておりません。ただし、それらについても禁止するわけではないことを記載しております。

続きまして6ページに行っていただけますでしょうか。今までが監査上の主要な事項の記載に関する提案だったのですけれども、それ以外にも幾つか提案がございまして、3で記載しておりますのが継続企業及びその他の記載内容に関する提案でございます。

継続企業に関する結論のところでは、2つ目のポツにございますとおり、財務諸表監査において経営者が継続企業の会計ベースに基づき企業の財務諸表を作成していることについて監査人が適切と判断したか否かの記載、それから3ポツ目で、監査人が財務諸表監査に基づいて企業が継続企業として存続する能力に重要な疑義を生じさせるような重要な不確実性を識別したか否かについての記載をすることを提案しております。この点、今の監査基準でも重要な不確実性がある場合には強調事項で記載することを要求しておりますので、重要な不確実性がない場合にも改めて記載するということで、それほど大きな変更ではないのかもしれないと考えております。

(2)の、その他の記載内容に関する結論でございます。7ページの3ポツにございますとおり、その他の記載内容を通読して考慮した結果、監査人がその他の記載内容における重要な相違を識別したか否かなどについて記載することを提案しております。

最後に8ページの5、その他の(1)発効日でございます。発効日については、現状、2016年度の報告期間、例えば2016年12月31日に終了する報告期間に係る監査業務から適用することを想定しております。

以上がIAASBの公開草案の概要でございます。

続きまして、若干ですけれどもPCAOBの公開草案についてもご説明させていただきます。

16ページをおめくりいただけますでしょうか。PCAOBからも、ちょうど時期を同じくする形で今年の8月に公開草案が公表されております。タイトルとしては、「無限定適正意見の監査報告書」及び「監査した財務諸表及び監査報告書が含まれる特定の開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」というものです。

IAASBの公開草案と比較して違うのか違わないのかというと、ほとんど同じような内容になってございます。初めの四角の一番上に定義がございますが、IAASBの提案では監査上の主要な事項ということで、Key Audit Matters、KAMが提案されております一方で、PCAOBの提案では監査上の重要な事項、Critical Audit MattersということでCAMが提案されております。この点、名前もほとんど同じ、内容もほとんど同じことになってございます。

定義、クライテリアを含めてほとんど同じでございまして、あえて違いを申し上げるとすれば、17ページの3つ目の箱にございますような、無限定意見の場合以外の取り扱いというところで、IAASBの提案では先ほど申しましたとおり、意見不表明の場合には監査上の主要な事項の記載を禁止している一方で、PCAOBの提案では否定的意見の場合にもこれを求めていないことになってございます。

18ページに行きまして、継続企業のところでも若干の違いがございます。先ほど申しましたとおり、IAASBでは監査報告書に一定の開示をすることを今回提案しているのですけれども、PCAOBの提案には、継続企業に関する部分について特に提案されてはおりません。ただし、この点について、会計基準がIASB、FASBで動いているところでございまして、そういった状況も踏まえてPCAOBでも何らかのアクションが今後あり得るのではないかと考えております。

最後に、19ページの2つ目の行で、監査人の在任期間について記載しております。この点、IAASBの提案では監査人の在任期間について特に開示は求めていないのですけれども、PCAOBの提案では監査事務所が企業の監査人として在任している年数についての記載が要求されていることになってございます。

私からご説明は以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは関口参考人からのご説明につきましてご質問、ご意見等がございましたらどうぞご自由にご発言いただきたいと思います。では後藤委員、どうぞ。

○後藤委員

後藤です。私は格付機関で財務諸表を利用して信用力の分析をしているのですが、こういったIAASBの監査報告書の改訂については高く評価しております。利用者の多くがそう思っているかと思います。我々利用者は、もちろん監査報告書の一番大事なものは財務諸表が全体として適正に作成されているかどうかですので、その情報を読み取るのが一番大事なことだと思っています。

ただ、それだけでは若干物足りないなと思っていた面もありまして、実際、監査がどのようにされていたかとか、監査人がどういう視点でその監査をされていたかとか、場合によっては財務諸表監査において若干質に差があるのではないかとか、一般に公正妥当と認められる会計基準や監査基準に準拠したものであったとしても、判断によっては多少数字が変わってくるところもありますから、もしかしたら、立場によっては財務諸表を調整したりして見ないといけないのではないかなどといったことを考えながら、普段分析をしております。

今回、提案されているKAMの記載の中で特に我々が有益だと考えておりますのは、監査人が当該事項を監査において最も重要な事項の1つであると考えた理由を書いてくださるところだと思います。資料12ページの(2)でどのような事項を記載すべきかについて述べられていますが、特別な検討を必要とするリスクが認識された領域又は監査人の重要な判断を伴う領域は、当然、我々も数字を注意して見なければいけないところです。次の監査において重要な困難な状況に直面した領域というのは、利用者の立場によっては該当事項の数字を保守的に捉え、財務諸表を調整しなければいけないかもしれません。内部統制の不備があって、監査について計画したアプローチの重要な変更があった場合も、我々利用者は数字をそのまま真に受けるのではなくて、立場によっては多少調整したほうが有益な場合もあるかと思われます。従って、KAMに選んだ理由を書いてくださるのは、我々としては財務諸表を分析するに当たっても非常に有益だと考えます。

もちろん、冒頭の関口様からのご説明に、IAASBの検討過程で財務諸表利用者が財務諸表を理解するに当たって重要なポイントを選ぶという考え方も検討されたというご説明があったのですが、ない袖は振っていただかなくて結構なので、監査人が重要であると考えた事項を選んで記載していただけるのが我々にとっても有益なことだと思っております。

もちろん、IAASBの提案の中には、超えないといけないハードルがいろいろあると思っています。例えば、二重責任の原則の点から、監査報告書の中で一次情報を提供しないということになっていますが、実際に監査業務をするに当たっては、何を記載すべきかについて慎重な検討が必要であると思います。

あと、ゴーイング・コンサーン(継続企業)について、不確実性があるなしにかかわらず記載するというのも、利用者にとってあまり必要とされない情報が記載される場合も出てきたりすることになりますので、何か問題があるときにその記載があればいいと思っています。

資料1の7ページの独立性の規則及びその他の職業倫理に関する規則への遵守に関する記載も非常に意義あることだとは思いつつも、利用者としてはあまり必要な情報ではないと考えています。

ただ、幾つかの検討事項はあるかと思いますが、利用者としてはこういったIAASB、PCAOBの取り組みについては高く評価したいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。引き続きご意見を伺って、参考人からお答えいただきたいと思います。五十嵐委員、どうぞ。

○五十嵐委員

私はIAASBのオブザーバーとして出席させていただいております。その観点から一つだけ述べさせていただければと思います。

監査報告書に記述する内容は、各国の監査制度及びコーポレート・ガバナンスの制度と関連して議論されるべきと思っております。IAASB(国際監査・保証基準審議会)が各国のコーポレート・ガバナンスのあり方を詳細に議論されておらず、そうした視点を理解して先ほどご説明のありました内容は読む必要があると思っております。3頁の第2パラグラフに、IAASBの案では監査上の主要な事項の記載について実施した手続またはその結果に関する結論又は意見を監査人は述べておらず、また、10頁以降、監査報告書の文例が長文となっております。IAASBの議論では、KAMに対する結論がない事及び長文の監査手続きの記述が利用者への有用性に関して疑念があるとの議論がありました。私の理解では、IOSCO(証券監督者国際機構)でもこうした議論があると理解しています。監査報告の変革の議論で、IAASBの共同研究プロジェクトに加えて、フランスの会社法の事例が提示されました。

フランスのCNCCは、2011年2月に広範囲なステーク・ホルダーに対して監査報告に記載する「正当性の評価」の調査が実施されました。そして、フランス会社法の規定で該当する項目に関して監査報告書に「評価の正当性」を述べ、結論を記載しております。他方、IAASBでは、各国のコーポレート・ガバナンスを議論しないで監査基準を開発する国際的基準の側面もあると思いますが、各項目に対する結論を記述しない案を提示しておりますが、詳細な監査手続きの記述及びその結論がない記述が監査報告利用者に有用な情報を提供するかどうかは、我が国における監査制度及びコーポレート・ガバナンスの制度を基盤として議論を進める必要があるのではないかと思っております。

○脇田部会長

ありがとうございました。水口委員、どうぞ。

○水口委員

ありがとうございます。グローバル金融危機のインパクトを振り返っても、財務諸表であらわれていたものが短期間で大きく変化した事例もありまして、財務諸表ユーザーといたしましては、個別の企業の監査内容をもっと深く理解したいという思いを持っております。今お話しいただいたような監査上の主要な事項を記載していただくことによって、監査人の意見を補完してより深い洞察を得ることができるような、監査報告書のさらなる改善につながることを期待します。

IAASBによる監査報告書に関する改善の方向性については非常に有用なものだと考え、このような監査報告書の改善プロジェクトを歓迎するところでございます。

一方で、監査上の主要な事項記載の事例の中には、非常に価値があると思われるものと、先ほどの後藤委員からのお話にもありましたように、独立性や継続企業についての記載など、その付加価値について、どうであるかと思うものもあります。費用対効果も考えて、ユーザーにとってさらに有用なものにしていく余地もあるのかなとも思っております。

事務局にお伺いしたいことがあるのですが、こうしたIAASBの動きがある中で、我が国として、どういうタイムスケジュールで何を行うことが考えられるのか、今把握されている範囲でお話を聞かせていただけますでしょうか。

○脇田部会長

ありがとうございました。他にご発言ございますか。井上委員、どうぞ。

○井上委員

監査を受ける立場からの意見です。今回の公開草案は、いずれにしても監査人から財務諸表利用者に対して情報を提供するということでありますので、監査人の機能の追加という点で議論が必要になってくるのではないでしょうか。

つまり、現在の我が国の監査報告書自体は経営者に対して提出される形になっていますので、財務諸表利用者に対して提出する、情報を提供するということであれば違う観点での検討が必要になってくるのではないかと思いますし、慎重に行う必要があるのではないかと思います。

質問事項として、2つあります。本件はかなり長い期間にわたり検討されており、経緯としては、IOSCO等の国際的な規制当局からの要請もあって国際会計士連盟で進められていると聞いております。ここまでに至る間での規制当局あるいは日本公認会計士協会のスタンスは、賛同という方向で進んでいるのかどうかをまず確認したいと思います。

もう1点は、作成者の立場から申し上げます。監査報告の一部として構成される場合であっても、情報提供機能を追加することで、新たな監査手続が発生するということではなくて、現在行われている監査手続の上で把握されているものが単に公開、情報提供されていくという考え方で整理してよいのかどうかという点です。以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

本件は公開草案の段階ですから、これから議論が続けられるということでしょうけれども、十分な検討を必要とする内容であろうと思います。

幾つか具体的に申し上げますと、ゴーイング・コンサーンの開示の話とKAMとの関係については大変微妙な問題があるだろうと思われますので、混乱が生じないようにする配慮が要るのではないかと思います。

それから、今のご説明で、KAMは必ず記載すべき事項とはしないということも書いてあるわけで、理由としてご説明があった内容は、結果として決まり文句になってしまうから必ずしも記載しないこととしたという文章になっておりますけれども、その理屈は通っていないのではないか、脈絡が理解できないという点でございます。

それから3ページの第3パラグラフでは、監査人は一次的な情報提供をしないように努めるべきであるとあって、言いかえれば企業に対して財務諸表注記でもって注記をせよという要請がここに織り込まれているわけですが、かような開示要請は我が国においては今のところないわけでありまして、不安定な開示規制に結びつくのではないかという気がしております。

また、すでに強調事項区分もあるわけですから、これとの関係については説明資料にもございましたが、上場会社の場合はダブルで開示することになっております。非上場との兼ね合いも考えてダブルの開示もやむなしという格好で整理されているのですけれども、コンパクトな情報を限られた紙幅で表示すべき監査証明において、強調区分とKAMとが併記されることが本当にいいのかどうか、この辺はもっと緻密な議論をお願いしたいという気もいたします。

統治責任者とのコミュニケーションがありましたけれども、日本に転じて考えると、経営者は入るのだろうかということも含めて議論が要るのではないかという気がいたします。

適用対象のところでは、非上場とか任意監査にも展開することも条件つきで可能という前提があります。これを上場会社において実践する前にそういうところまで展開するのがいいのかどうか、甚だ疑問であります。

先ほどの資料の中に文例が4つほど具体的に挙がっているわけですけれども、この程度の内容が当該企業ないし企業集団の当年度の監査手続におけるKAMとして開示するという話になるのであろうか。のれんであったり、M&Aにおける暫定会計処理であったり、長期契約における裏契約が結果的になかった事例であります。あるいは金融商品の時価算定において企業がみずから設定した算定手法によっている云々であり、これらが果たして利用者にとって必要で意義のある例示となっているか、甚だ疑問とするところでございます。

井上さんからも話がありましたけれども、KAMを開示するためにコミュニケーションを経てということになりますし、監査のステップが増えることにも当然つながっていくわけであります。投資情報としてこれを位置付けるのか、どのような情報として位置付けるのかも曖昧でありまして、例示された情報などはどうやら格付情報のような色合いも呈しているという印象もあるわけで、慎重に対応すべき話ではないかと考えます。特に日本の場合は連結と単体がありますし、会社法、金商法もある、J−SOXもあるという状況の中でこれを形式的にわが国に持ってくるだけでは議論が足りないと思います。本番の議論は本部会で後日行われることになるのでしょうけれども、一言でいえば課題の多いテーマであるという認識であります。以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。ではこの辺で、いろいろなご指摘がありましたので、関根委員には後でご発言いただきますので、関口参考人からまとめてご発言をいただければと思います。

○関口参考人

まず後藤委員から、ゴーイング・コンサーンに関する記載、独立性の記載に関する提案は必ずしも有用ではないのではないかというご指摘をいただきました。ボードの議論でもそういう議論がございまして、ゴーイング・コンサーンについては特に、当初は例えばニアミスのようなケースを記載してはどうかというのがありました。具体的には、重要な不確実性にはなっていないのだけれども、それに近いようなケースについて情報提供をすれば情報価値としては高いのではないかという話がありまして、そういう方向も検討したのですけれども、一方で監査人が企業の一次的な情報提供者になるべきではないということから見送った経緯があって、結果的に、もしかしたらあまり意味のようない記載になってしまっているのかなと思っております。

独立性についてはおっしゃるとおりで、かなりの異なる意見が示されているところでございます。

五十嵐委員からございました、結論について書くとすれば、フランスでは書いているのではないかというご指摘があったのですけれども、我々の議論の中では、結論について記載すると義務付けても、結果として決まり文句になってしまうおそれがあるのではないかという意見も示されておりました。フランスのケースで実際に見ていきますと、やや決まり文句調にもなっておりまして、IAASBとしては、せっかく導入するのであれば企業特有の、企業の事情を反映したものになっていないと意味がないということもあって、理由については必ず記載する。ただ、手続とか結論については必ずしも記載を要求しないとしています。

逆瀬委員からございましたボイラープレート、決まり文句になってしまうのでKAMの記載が必要ない場合もあるとするのはおかしいのではないかという話もあったのですけれども、そこは私の説明が悪くて、監査上の主要な事項が記載されない状況は休眠会社のような状況で、極めて限定的なことでございます。基本的にKAMは相対的な概念なので、ほとんどの場合には記載が必要なのですけれども、一方で何もないようなこともあり得るとして、そういう場合には、監査報告書において監査上の主要な事項がない旨の記載を要求することにしております。

また、上場会社に限定して導入しつつ、非上場会社に対しても適用を禁止しないという点については、非上場会社の監査人の方から、上場会社と非上場会社との間で全く違う体系になると、結果として監査の質が全然違うように見えてしまうおそれもある懸念が示されたという背景がありまして、少なくとも今の公開草案では記載する余地は残すということでございます。

文例のほうもご指摘のとおり、この文例が必ずしも完璧なものではないと思っております。ただ一方で、こういう文例を提示することによって議論を促して、要求事項や適用指針を含め、どういうところに不足があって、どう改善できるのか、IAASBでも検討していけたらと考えております。以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。井上委員から日本公認会計士協会のスタンスはどうなのかというご発言がございましたので、それを含めて関根委員、お願いいたします。

○関根委員

ありがとうございます。私どもとしましては、IAASBがいろいろな背景を考えて監査報告書の改善に関するプロジェクトを進めていることは重要なことであると理解しております。

その一方で、今進められているプロジェクトでは、利用者の情報ニーズを満たし、監査報告書をより情報価値のあるものにすることが目的となっているかと思いますけれども、この目的を達成するためには、開示の信頼性を担保する制度全体の包括的な検討が不可欠ではないかと考えております。従いまして、監査報告の改善と同時に、企業が提供する情報開示のあり方や、今までの話にも出ていました統治責任者の役割の強化などの財務報告システムの他の側面についての改善も検討していかなければ実際には達成できないのではないかと思っております。

私どもは、IAASBがこうしたことを踏まえて会計基準の設定主体や規制当局等の利害関係者との連携を模索していると認識しておりますが、これを引き続き行うことを期待しております。

また、監査報告書の国際的な一覧性の重要性が増している今日においては、監査上の主要な事項のコミュニケーションに関する監査人の責任や、公開草案の実効性を担保するために必要な他の環境整備についての基本的な考え方については、やはり国際的な整合性も確保する必要はあると思っております。ですので、少なくともこれらに関して、まずは国際的なレベルで一定の議論が十分になされていくことが必要であり、それを期待しております。

もちろん、先ほども話に出ていましたけれども、こうした点は最終的には各国の法的な環境とか、制度においてそれぞれ対応していくことが必要とも考えておりまして、日本においても今後、日本の制度等をよく踏まえて関係者において十分な議論を重ねていくことが必要と思っております。個々の論点についての具体的なコメントは省略させていただきますが、私ども日本公認会計士協会はこのような考え方でコメントをまとめている最中でございます。私からは以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。先ほど宮本委員がご発言ということでございましたので、ご発言をいただいて大変恐縮でございますけれども、この問題は部会で他日また議論するときもございますので、重要な課題ですけれども、ここで次の議題に移らせていただきます。では宮本委員、どうぞ。

○宮本委員

ありがとうございます。2ページの4行目に、特に今回の草案の中で非常に重要であると考えられる「監査上の主要な事項」について「監査人が統治責任者にコミュニケーションを行った事項から選択する」と書いてございます。この「統治責任者」が各国の法律によっていろいろ違ってくるのだろうと思いますが、今後の議論の中で、今お話がございましたように、これが我が国において何を指すのかについて、会社法も含めて明確な位置付け、内容をご議論いただきたいと考えております。

もう1点、細かい事項になるかと思いますが、先ほどもご紹介がございましたけれども、7ページの(3)に「監査人の責任、並びに財務諸表に対する経営者及び統治責任者の責任に関する記載」がございます。それを受けた8ページの(3)の最後のフレーズに、「財務報告プロセスの監視に責任を有する者の責任についても記載する」となってございます。私ども日本監査役協会といたしましては、こういったプロセスそのもの、あるいは財務報告の内部統制について、監査役の責任や関わりを会社法と金融商品取引法との関係でどのように考えていくか、今後ご検討の中に入れていただきたいと考えるところでございます。

まだ大枠の話の中で大変細かいお話を申し上げて恐縮でございますけれども、よろしくお願い申し上げたいと思います。以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいま今後の審議すべき問題点等のご指摘がございました。水口委員からも今後のこの問題についての部会の日程についてご質問がございましたけれども、先ほど申しましたように、他日、監査部会としてはこの問題に取り組んでいかなければならないのではないかと部会長としては考えております。よろしゅうございましょうか。

それでは次の議題に移らせていただきたいと思います。

前回6月24日の監査部会では、特別目的の財務報告に対する監査の位置付けに関しまして、多様化する財務報告に対する監査ニーズにつきまして、関根委員、住田委員よりご説明をいただきました。また町田委員より、我が国の監査基準における監査の目的の経緯と準拠性意見の位置付けについてご説明をいただきました。

本日は監査法人等に対する検査を担う立場から、公認会計士・監査審査会より特別目的の財務報告に対する監査の一例といたしまして、ファンド監査の実態につきましてご説明をいただきたいと思います。

それでは公認会計士・監査審査会の千代田会長、佐々木事務局長、よろしくお願いいたします。

○千代田公認会計士・監査審査会会長

千代田です。今ご紹介いただきましたように、今回の監査基準の改訂では、特別目的の財務報告に対する監査がテーマになっているわけです。ご承知のように、この特別目的の財務報告に対する監査の代表的なものはいわゆるファンド監査でして、私たち公認会計士・監査審査会としましても、その実態把握に努めているところであります。本日はこのテーマに関しましてファンド監査の実態について佐々木事務局長よりご説明申し上げたいと思います。

○佐々木公認会計士・監査審査会事務局長

審査会事務局長の佐々木でございます。それではお手元の資料2−1、2−2の2つに沿いまして、10分程度で簡単にご説明させていただきます。

ファンド監査は審査会でこの2年弱調べておりますけれども、その契機になりましたのは、2012年に発覚いたしましたAIJの問題で一部の年金基金がAIJに投資していたこともございましたけれども、その関連で、同様に年金基金が年金信託などを使ってこうしたファンド、特に後でご説明いたします投資事業有限責任組合などに投資をしている実態もございました。そうしたことをきっかけにファンドに対する監査がどういう現状であるかということで、審査会の検査、あるいは報告徴収を通じて実態把握をさせていただいたところを簡単にご紹介いたします。

資料2−1のスライドの1ページでございますけれども、ファンドといったときに大きく3つございます。1つ目が証券投資信託、不動産投資法人に係るファンド。2つ目が投資事業有限責任組合に係る問題。3番目が海外籍のファンドなどその他のファンドの問題でございます。その中で特にこの後、マル2の投資事業有限責任組合についてご説明させていただきますが、2ページをご覧いただきますと、ファンドの監査は監査法人の中でどういう状況か、これはヒアリングベースでございますけれども、大手の監査法人、一部準大手監査法人について2012年の段階で実態把握をさせていただいたものです。

主な点を簡単にご紹介いたしますと、まず実施の状況でございますけれども、大手の監査法人の場合、特に投資信託に関連する部分かもしれませんが、ファンドの監査だけではなくて、委託会社の監査とあわせて行うケースが多いと考えております。他方、準大手監査法人の場合はファンドだけの監査という事例も比較的多いのではないかと考えております。

中小監査法人につきましては、必ずしもその際の今回のヒアリングの対象には入っておりませんので、この後触れます検査などを通じて、あるいは報告徴収を通じて一部見られる傾向でございますので断定的なところは申し上げられません。クエスチョンマークがついておりますが、中小監査法人の一部にはファンドの監査をもっぱらやっているような、例えば上場企業の監査はしないのにファンドの監査をやっている事例も一部見られております。

それから、受嘱につきましてどういうリスクを考慮しているかですが、大手の監査法人は、監査リスクといたしまして投資対象の実在性とか、時価の入手可能性を厳格に検討しているようでございます。他方準大手以下になりますと、監査リスクの検討にばらつきがあるように思われます。

監査報酬の問題ですが、この後具体的なデータをお示しいたしますが、大手の場合には委託会社の監査とあわせて行うことも多いわけですので、監査報酬につきましてもファンドと委託会社の監査の合計で決定する傾向がございます。準大手の場合にはファンドだけということもございますので、ファンド監査全体での監査報酬を検討することがあるようでございます。中小の場合には必ずしも実態が明らかではございませんけれども、比較的低廉な報酬で受嘱しているのではないかということでございます。

監査担当者、有責組合、あるいは投資信託も含めまして、通常の企業の監査とやや違う特性がございますので、大手の場合には金融部門、金融機関を監査いたしますチーム、部門から人選して、特に資産評価の体制を整備していると考えております。他方、準大手以下になりますと、必ずしもこうした点では十分な対応がとられていない可能性もあると思います。

特に5の(2)の投資事業有限責任組合の問題で投資対象の未公開株の評価の問題が出てまいりますが、この点はまた後で基準を含めまして申し上げたいと思います。

6の審査でございますが、大手の場合には先ほどの監査担当者の問題と同様、金融部門、ファンドの監査に知見を有する者が審査をしているようでございますが、準大手以下になりますと必ずしもそうではないのではないかという傾向がうかがわれます。

3ページはヒアリングとは別に、その後審査会の検査あるいは報告徴収を通じまして、特に中小監査法人のファンドの監査の状況をまとめたものでございます。対象といたしましたのは24の監査法人、検査・報告徴収を通じて把握しましたところ、188のファンドの監査の中で、法定監査としては、資産流動化、金商法及び投資事業有限責任組合、126の監査を行っております。右を見ていただきますと、平均報酬は64万1,000円で、ヒアリングでも、ファンドの場合には1本50万円から100万円と聞いておりました数字とほぼ整合するかと思っております。平均監査時間は54.9時間、審査時間は1.8時間となっております。

その詳細を下に分けて書いておりますが、特に監査報酬の問題が典型的なファンド特有の問題ではないかと思っております。

4ページ以下でファンドに関する監査手続はどうなっているのか、中でも年金基金などで現に問題になっております有責組合に対する監査の問題でございます。この点につきましては資料2−2をご覧いただきますと、別添として幾つかの法律、組合規則などを付けております。

まず有責組合は法律上の根拠といたしまして、投資事業有限責任組合契約に関する法律がございます。そこでは、資料2−2の1ページにございますとおり、組合契約書及び公認会計士又は監査法人の意見書をあわせて備えておかなければならないということで、法定監査になっているということでございます。

資料2−1の4ページ、この法令のもとで、監査上で準拠すべき指針といたしましては、日本公認会計士協会の業種別委員会実務指針38号がございます。これは資料2−2の4ページに抜粋を載せており、後でご説明させていただきます。

簡単に申し上げますと、監査手続の中心は何かということ、資料2−1の4ページにございますが、組合契約に規定する評価基準への準拠性、これだけですとちょっとわかりにくいと思いますので、資料2−2の1ページをご覧いただきますと、先ほどの法律の下に会計規則がございます。その1条を見ていただきますと、有責組合の貸借対照表などの記載方法はこの会計規則によるということです。具体的に、特に有責組合は未公開株に投資いたします。その投資につきまして7条で、投資は時価を付さなければならないと書いてあるわけですが、しかしながら3項で、前項の時価の評価方法は組合契約に定めるところによると。では組合契約ではどのように定められているのかといいますと、これは検査の中でも把握しておりますが、一部の組合契約では取得価額と書いております。他方で、この後ご説明いたしますこの資料の2ページ目以下で、経済産業省が出しております投資事業有限責任組合のモデル契約では一定の評価減を行うようなパターンが示されておりますけれども、先ほど申し上げたとおりこのモデル契約に沿わないケースもございます。いずれにしても4ページにございますとおり、組合契約に規定する評価基準、時価、その時価が取得価額と書いてあることもあるわけですが、組合が決めた評価基準への準拠性を監査するのが監査手続の中心でございまして、資料2−1の4ページにもございますとおり、投資の評価額の妥当性を含めたものではないことになっております。

この協会の実務指針38号ですが、資料2−1の5ページは策定経緯ですのでスキップさせていただいて、6ページ、監査手続のポイントでございますが、これにつきましては、まず資料2−2の4ページをご覧いただきますと、実務指針38号を抜粋しておりますけれども、監査手続のポイントといたしましては、資料2−2の5ページ、(3)の項目85の(5)にございますとおり、監査のポイントといたしましては有価証券に対する実査等、その実在性をまず検証することが一つでございます。

資料2−1の6ページに戻っていただきます。もう一つは投資しております未公開株の評価になります。その評価につきましては、先ほど申し上げましたとおり有責組合の規則の7条で時価評価となっているわけですが、その時価は組合契約で規定するものとする。ただ、この組合契約でできるだけばらつきをなくすために経済産業省が評価基準モデルを出しております。これが資料2−2の2ページで、投資事業有限責任組合モデル契約がございます。これをもとに組合契約をつくっているケースもございますが、必ずしもこれが強制されているわけではございませんので、先ほどのように取得価額という形で組合契約を規定しているものもあるということでございます。

今申し上げましたモデルを採用しない場合は協会の実務指針がどうなっているかといいますと、53項が資料2−2の4ページにございます。ここで評価基準モデルについて、経済産業省のこうしたモデルを組合契約が採用しない場合には監査の客観性の観点から問題が生じる可能性があるということで、監査法人として受嘱できないことを示唆しております。現に、先ほど申し上げましたヒアリングの中でも、大手監査法人は特に有責組合の監査については慎重である、こうした時価の入手、あるいは評価の点でリスクがあると考えているケースが多いと認識しております。

最後、資料2−1の7ページ、8ページでございますけれども、以上のような有責組合に関する監査の制度の現状で、想定される問題といたしまして2つあると考えております。一つは7ページにございます組合における投資の評価基準の有効性、先ほど申し上げましたとおり組合契約に規定する評価基準の準拠性が中心でございますが、それで十分かどうかということでございます。

この準拠性につきまして、今申し上げました監査意見が具体的には資料2−2の7ページをご覧いただきますと、監査意見のひな形がつけられてございまして、「上記の貸借対照表に計上されている投資が組合契約で定める評価基準に準拠して処理されており」となっているということで、この評価額が妥当であることを含めた意見を表明するものにはなっておりませんが、資料2−1の7ページをご覧いただきますと、この点について、妥当性の監査が行われているという誤解を生じているのではないかという懸念がございます。この点は別途、検査局の金融検査の中で、例えば年金基金から年金信託を受託しております信託銀行の検査を通じて把握しましたところ、信託銀行ですら、この有責組合の監査報告書の意味が準拠性の監査であることを十分認識していないケースが散見されております。

このように、準拠性の監査である点についての理解が不十分ではないかといった問題です。

8ページ、実務指針の運用につきまして、一つは先ほど申し上げました経済産業省のモデルを採用した場合、資料2−2の2ページのモデル契約を見ていただきますと、一定の場合には減価することが書かれておりますが、その中には評価減をする場合、この箱の中にございますが、直近ファイナンス価格または回収可能価格のいずれか低い価格ということで、直近のファイナンス価格を操作する可能性もあると考えておりまして、このモデルを採用した場合にも適正な処理がされるかどうか懸念があるということでございます。

もう1点は、資料2−1の8ページに戻りまして、評価基準モデルを採用しない場合も当然ございます。先ほど申し上げましたとおり、その場合には組合契約で取得価額と書いてあるケースもございまして、こうした点、組合ごとのばらつきがあることも懸念されております。

以上、簡単でございますけれども、特に有責組合の監査についての問題点をご紹介いたしました。

○脇田部会長

ありがとうございました。ただいまの審査会からのご説明につきましてのご質問、ご意見等は次の議事とあわせてお受けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

では、前回6月24日の部会で特別目的の財務報告に対する監査に関連いたしまして、現行の監査基準の改訂が必要ではないか等のご意見をいただきました。そこで、本日の審議に資しますように、当部会の委員の方々から随時ご意見を伺いつつ、部会長及び事務局で監査基準の改訂案、公開草案の案を作成させていただきました。改訂案につきまして事務局から説明をお願いいたします。

○油布企業開示課長

それでは私から説明させていただきますが、資料3−1でございます。「監査基準の改訂について(公開草案)」という縦の文書でございます。この点につきましては、前回が6月でございますので簡単に申し上げますと、ご案内のように現在の監査基準は金商法上の監査、すなわち上場企業などの開示義務を負うものの監査について適正性に関する意見を表明することを前提に書かれているものでございます。

他方、ただいま監査審査会からもございましたけれども、有責組合の監査の事例、これは法定で公認会計士が監査をすることが想定されている事例でございます。これにつきましては、前回、委員の方からプレゼンテーションをいただいた中では、監査報告書の取り扱いが整理されていない事例として、そちらのほうにも掲げられてございました。

また、そういうことに加えまして、そもそも公認会計士または監査法人に対して監査という形で信頼性を担保してもらいたいというニーズが増えてきております。震災の後の義援金の類いのものでございますけれども、これについては現行の監査基準が金商法の適正意見表明を基準に書かれているということで、そのままでは監査が円滑にできないというお話もございまして、具体的には日本の監査基準の下では監査を受けられない、国際監査基準、ISAに準拠した監査を行いますという契約を取り交わした上で実施しておられる事例があるというお話もございまして、そういう点を踏まえまして、特別目的の財務諸表に対する監査、あるいは準拠性の意見について監査基準の中に取り込むのが今回の公開草案の柱でございます。

ただその場合、従来の一般目的の適正意見監査が柱であることは変わりませんので、いわば母屋に小部屋を付け足しまして、準拠性意見とか特別目的の監査を監査基準の中でしっかりと読み込めるようにしたということでございますが、多少窮屈なところはございまして、もう一つの考え方としては、本来こういったものについても細かいところまで含めた改訂を別途行うべきというお考えもあろうかと思いますが、建て増しを続けている地方の温泉旅館みたいな姿にするのもあれですので、今回小部屋のような形式でやっております。多少窮屈なところはございますが、これを踏まえて、日本ではこの審議会の監査基準に加えまして公認会計士協会の実務指針の2つを合わせて監査の基準とされております。こちらの企業会計審議会で監査基準の改訂がなされれば、公認会計士協会のほうでさらにそれを受けて、もう少し詳細な指針がつくられるというスケジュール、建前を想定しているところでございます。

資料3−1がいわゆる前文と呼ばれるものでございます。4ページ弱でございますので、恐縮ですが読み上げ形式で説明させていただきます。時間の関係で早口にさせていただきます。

経緯というところでございますが、審議の背景。

従来、監査基準では、「第一 監査の目的」において、「財務諸表の監査の目的は、経営者の作成した財務諸表が、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明すること」と規定し、幅広い利用者に共通するニーズを満たすべく一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成された財務諸表(以下「一般目的の財務諸表」という。)に対して、公認会計士(監査法人を含む。)が監査を行う場合を想定してきた。そして、当該一般目的の財務諸表に対する監査では、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されているかに加え、経営者が採用した会計方針の選択やその適用方法、さらには財務諸表全体としての表示が適正表示を担保しているかといった実質的な判断を含めた意見(以下「適正性に関する意見」という。)が表明されている。一方で、近時、公認会計士に対して、特定の利用者のニーズを満たすべく特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成された財務諸表(以下「特別目的の財務諸表」という。)に対しても、監査という形で信頼性の担保を求めたい、との要請が高まってきている。特別目的の財務諸表は、一般目的の財務諸表と異なり利用目的が限定されていることに加え、例えば、財務諸表の作成基準に追加的な開示要請の規定がない場合が多いことなどから、公認会計士が監査意見を表明するに当たっては、必ずしも、適正性に関する意見を表明することが馴染まない場合が多いものと考えられる。また、一般目的の財務諸表であっても法令により一部の項目について開示を要しないとされている場合等には、適正性に関する意見は馴染まない場合もあると考えられる。このような場合、適正性に関する意見と同程度の保証水準を維持しつつも、その保証範囲等が異なることを踏まえ、財務諸表が当該財務諸表の作成に当たって適用された会計の基準に準拠して作成されているかどうかについての意見(以下「準拠性に関する意見」という。)を表明することが、より適切であると考えられる。なお、国際監査基準では、財務諸表の利用者のニーズに応じて、一般目的の財務諸表と特別目的の財務諸表という財務報告の枠組みが分類され、適正性に関する意見と準拠性に関する意見とのいずれかが表明されることが既に規定されており、実際に適用されている。以上のことから、当審議会においては、従来の適正性に関する意見の表明の形式に加えて、準拠性に関する意見の表明の形式を監査基準に導入し、併せて、監査実務における混乱や財務諸表利用者の誤解等を避けるため、特別目的の財務諸表に対する監査意見の表明の位置付けを明確にすることとした。なお、その際には、国際監査基準を踏まえつつも、適正性に関する意見の表明を中心とした従来の我が国の監査基準の枠組みとの整合性には十分に配意したところである。今回の監査基準の改訂は、特別目的の財務諸表等を対象とした準拠性に関する意見の表明の形式を導入するものであるが、当該意見を表明するに当たっては、以下に記すとおり、適正性に関する意見を表明する場合に準じた対応が必要となることについて、公認会計士はもちろん、特別目的の財務諸表等の作成者や利用者に対しても十分に周知が図られることが望ましい。

2の審議の経過等は割愛させていただきます。

2ページの下から4分の1ぐらいでございますが、「二 主な改訂点とその考え方」でございます。

「1 監査の目的の改訂」。監査基準において、これまでと同様、一般目的の財務諸表を対象とした適正性に関する意見表明が基本であることに変わりはないことから、監査の目的にかかる従来からの記述はそのまま維持することとしつつ、特別目的の財務諸表等を対象とした準拠性に関する意見の表明が可能であることを付記し、明確化を行った。監査人は、適正性に関する意見と準拠性に関する意見とのいずれかを表明することとなるが、特別目的の財務諸表に対しては準拠性に関する意見を表明する場合が多いものと考えられる。

3ページでございます。「2 実施基準の改訂」。監査の実施に当たっては、準拠性に関する意見の表明の場合であっても、適正性に関する意見の表明の場合と同様に、リスク・アプローチに基づく監査を実施し、監査リスクを合理的に低い水準に抑えた上で、自己の意見を形成するに足る基礎を得なければならないことから、「第三 実施基準」(以下「実施基準」という。)が当然に適用されることに留意が必要である。また、財務諸表に対する監査意見を表明する場合のほか、財務諸表を構成する貸借対照表等の個別の財務表や個別の財務諸表項目等に対する監査意見を表明する場合についても、監査基準が適用される。従って、個別の財務表又は個別の財務諸表項目等に対する監査意見を表明する場合であっても、単にそれらの検討にとどまることなく、意見を表明するために必要な範囲で、内部統制にかかるものを含め企業及び企業環境を理解し、重要な虚偽の表示をもたらす可能性を考慮しなければならないことに留意が必要である。なお、特別目的の財務諸表には多種多様な財務諸表が想定されることから、実施基準の「一 基本原則」において、監査人は、特別目的の財務諸表の監査を行うに当たり、当該財務諸表の作成の基準が受入可能かどうかについて十分な検討を行わなければならないことを明確にした。

「3 報告基準の改訂」でございます。「第一 監査の目的」において、適正性に関する意見に加えて準拠性に関する意見にかかる記述を付記し、明確化を行うことを踏まえ、「第四 報告基準」についても改訂を行い、監査報告書において記載すべき事項を明確にした。すなわち、「第四 報告基準」の「一 基本原則」では、適正性に関する意見の表明について特別の利用目的に適合した会計の基準により作成される財務諸表の場合を付記するとともに、これに加えて、準拠性に関する意見の表明について規定し、監査人が準拠性に関する意見を表明する場合には、作成された財務諸表がすべての重要な点において、当該財務諸表の作成に当たって適用された会計の基準に準拠して作成されているかどうかについての意見を表明しなければならないことを明確にした。

準拠性に関する意見には、財務諸表には重要な虚偽の表示がないことの合理的な保証を得たとの監査人の判断が含まれている。この判断に当たり、監査人は、経営者による会計方針の選択や適用方法の是非について、それらが会計の基準に準拠していることを形式的に確認するだけではなく、会計事象や取引の実態に照らして判断しなければならないことにも留意が必要である。

なお、準拠性に関する意見の表明については、別途の報告基準を改めて規定するのではなく、適正性に関する意見の表明を前提としている報告基準に準じることとしたが、特別目的の財務諸表の利用者の誤解を招かないようにするために「第四 報告基準」に「八 特別目的の財務諸表に対する意見に係る追記」を新設した。すなわち、特別目的の財務諸表に対する監査報告書を作成する場合には、監査報告書に、会計の基準、財務諸表の作成の目的及び想定される主な利用者の範囲を記載するとともに、財務諸表は特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成されており、他の目的には適合しないことがある旨を記載しなければならないこととした。また、監査報告書が特定の者のみによる利用を想定しており、当該監査報告書に配布又は利用の制限を付すことが適切であると考える場合には、その旨を記載しなければならないこととした。

実施時期等でございますが、改訂監査基準は、平成26年4月1日以降に発行する監査報告書から適用する。2にございますように、改訂監査基準を実務に適用するに当たって必要となる実務の指針については、日本公認会計士協会において、関係者とも協議の上、適切な手続の下で、早急に作成されることが要請されるということでございます。

監査基準の具体的な改正につきましては資料3−3をご覧いただいたほうが、今回の改正は削除はございませんで全て追加でございます。資料3−3を見ていただければおわかりになる構造になっております。

まず監査の目的のところでございますが、2項を付け足しております。財務諸表が特別の利用目的に適合した会計の基準等により作成される場合には、当該会計の基準等に準拠して作成されているかどうかについて、意見として表明することがある。

1点補足させていただきますと、この特別の利用目的に適合した会計の基準「等」と書いておりますのは、実は前文の1ページの下から4分の1ぐらいに準拠性意見について述べているパラグラフがございます。第3パラグラフの4行目で、「また」というのがありまして、また、一般目的の財務諸表であってもこれこれの場合には適正性に関する意見は馴染まない場合もあると書いてございます。そのことを受けた「等」でございまして、すなわち、一般目的の財務諸表であって、一部の項目に開示を要しないとされている場合を念頭に置いた「等」でございます。

次の改正項目、資料3−3の2ページをご覧いただきたいと思います。実施基準の中の基本原則に8項を付け足しておりまして、監査人は、特別の利用目的に適合した会計の基準により作成される財務諸表の監査に当たっては、当該会計の基準が受入可能かどうかについて検討しなければならないという記載でございます。

次の改正案は5ページになります。「第四 報告基準」の「一 基本原則」でございます。第1項は適正意見の表示に関する部分でございますが、第1パラグラフは従来の一般目的の財務諸表に関する部分でございますが、これに、「なお」ということで、特別の利用目的に適合した会計の基準により作成される財務諸表については、当該財務諸表が当該会計の基準に準拠して、上記と同様にすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについての意見を表明しなければならないというものを付記しております。

次の2つのパラグラフは準拠性に関する意見に関するところでございます。監査人は、準拠性に関する意見を表明する場合には、作成された財務諸表がすべての重要な点において、財務諸表の作成に当たって適用された会計の基準に準拠して作成されているかどうかについての意見を表明しなければならない。監査人は、準拠性に関する意見を表明する場合には、適正性に関する意見の表明を前提とした以下の報告の基準に準じて行うものとする。

次が8ページになります。これは「第四 報告基準」の中に八ということで、特別目的の財務諸表に対する意見に係る追記を追加しております。監査人は、特別の利用目的に適合した会計の基準により作成される財務諸表に対する監査報告書には、会計の基準、財務諸表の作成の目的及び想定される主な利用者の範囲を記載するとともに、当該財務諸表は特別の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成されており、他の目的には適合しないことがある旨を記載しなければならない。また、監査報告書が特定の者のみによる利用を想定しており、当該監査報告書に配布又は利用の制限を付すことが適切であると考える場合には、その旨を記載しなければならないということでございます。私からのご説明は以上でございます。

○脇田部会長

ありがとうございました。それでは、先ほどの公認会計士・監査審査会からのご説明とあわせまして、改訂案につきましてご質問、ご意見等をいただきたいと思いますが、第1議題の監査報告書に関する問題は大変重要でございましたので、皆様方にご審議をいただきました。途中で打ち切るような形になって恐縮でございましたけれども、後の時間のことを考えましたので、そのように計らわせていただきましたが、今少し予定の時間を過ぎております。少し終了時間が延びるかと思いますが、その辺、ご了解いただけますでしょうか。ご了解いただけたということで、引き続きご発言をお願いしたいと思います。水口委員、どうぞ。

○水口委員

今回の監査基準改訂において一般目的の財務諸表と適正性の意見の言及に加えて、特別目的財務諸表と準拠性に関する意見についても整理した上で、会計の基準と財務諸表の作成の目的及び想定される利用者の範囲などについても明記することを求めるなど、利用者の誤解の回避に向けた改訂を行うことは非常に意義があると考えております。

一方で、様々な問題点も散見されるケースもありますファンドなどについては、一般目的の範疇であるものもあれば、当該監査基準の改訂の内容に基づくところでは特別目的に該当するものもあると考えられますが、先ほど来お話がありましたような、投資の評価額の妥当性について利用者が誤解する可能性もあると思われますので、監査基準の整備に加えて、公認会計士協会による実効性のある実務指針の整備をすることによって、そうした誤解を回避できるような体制を強化していただけることを期待するところであります。

こうしたところは、公認会計士協会はいろいろ実務指針の更なる整備を図る方向性にあるのではないかと思慮しますが、その辺のところ、何か進展があるようでしたらお話を伺えればと思います。以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。ご発言いただきたいと思います。林田委員、どうぞ。

○林田委員

前回、特別目的というお話を初めて取り上げられて、今日2回目でこの案にまでなっていたのでびっくりしたのですけれども、前回の部会で、たしか八田先生から、そもそも適正表示というのはどういう意味なのか、長いこと研究しているけれどもいまだにわからないという非常に根源的な問いがありまして、それを受けて脇田部会長からも、適正とはそもそも何なのかと。会計士が適正意見を述べる監査報告と特別目的の監査報告との明瞭な区分が利用者に理解できないことを危惧しているというお話がありました。ここらで権威のある見解を示さないといけないというお考えも示されたと記憶しております。今回いただいたこのペーパーが、その権威ある見解を示すものだという位置付けとして当部会に示されたものという理解でよろしいのか、まずお伺いしたいということです。

それから、適正という言葉と準拠という言葉を並べてみますと、どうしても適正という表現のほうが準拠という言葉よりも保証されるランクが高いような印象を受けます。そうではないという説明がこの紙の中にもあるように思いますが、例えば資料3−1の1ページの下から5、6行目、「適正性に関する意見と同程度の保証水準を維持しつつも」と、同程度という言葉は同等ではない、やや低いのかなという印象を受ける。

2ページの審議の経過のちょっと上、3行目ぐらい、「適正性に関する意見を表明する場合に準じた対応が必要となる」と。準じたということですから、それに近いような手続でいいのだと読めるのかなということです。

何が言いたいのかといいますと、準拠と適正は保証のレベルの差なのか、違いなのか、そのあたりの位置付けがどうなっているのか、そもそもの思想をお聞かせいただけたらありがたいということです。

多くなって恐縮ですが、資料3−1の2ページの下から始まっている文章でして、「特別目的の財務諸表に対しては準拠性に関する意見を表明する場合が多いものと考えられる」。多いということは、そうでないものもあるということでして、それではどちらを選ぶのか、何をもって、誰がどう決めるのか。違いがあった場合に、財務諸表の監査を見た利用者がどういう理解をすればよいのかを解説していただけたらありがたいと思います。ちょっと散漫になりましたが以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。事務局から、お願いします。

○油布企業開示課長

今幾つかご意見をいただきました。前回ご議論がございましたものに対する権威ある見解なのかというお尋ねでして、その一部については今回この準拠性と適正性ということで、非常に書き方は難しいのですけれども、説明ないし定義みたいなものをここで整理したということでございます。

ただ、前回私は参加しておりませんでしたが、議事録等で拝見する限り、あのときに八田先生などからご議論があった適正意見というのがそれでいいのかというのは、私なりの理解ではもうちょっとさらに次元の高い見地からのご議論、定義ではなかったかと思っております。

例えば私が八田先生から伺ったお話で、適正は英語ではfair presentationであって、日本ではfairを適正と使っていることについてもいろいろとお話を伺ったこともございます。そういう中で、この適正という言葉ないし位置付けが本当に適切であるかどうかを、日本が先駆けて見直しを行うべきではないかというご議論ではなかったかと理解しておりまして、その点についてはさすがに今回これで答えたものではございませんで、非常に中期的な大きな宿題なのだろうと理解してございます。

それから、前文につきましてご質問がございまして、適正意見表示と準拠性意見表示でランクが違う、ランクという言葉をお使いになりましたけれども、その点につきましては、林田委員もおっしゃいましたように、前文の1ページの下から6行目ぐらいに一つ示しているところが「同程度の保証水準」でございます。同程度なので全く同一かどうかはちょっと苦慮したもので、基本的には同じなのだろうという認識の下での同程度という表現を選択したところでございます。

ただ、ランクとおっしゃいましたが、ランクが異なるというよりは保証範囲等が異なるという点です。保証水準が同じもしくは同程度になるにしても保証の範囲等が異なる。例えば1ページの下から11行目あたりに、「例えば」というのがございまして、そもそも財務諸表の作成基準そのものに追加的な開示要請の規定がない。つまり、こういう数字を書きなさい、こういう注記を書きなさいという指示、基準はあるけれども、そこに書かれていないが誤解を招かないためには本来書くことが望ましいものがあれば、それも書けという追加的な指示規定が作成基準にない場合があるということでございます。こういう場合について保証できる範囲がおのずと、これを範囲と表現するのがよいのか、保証水準と保証範囲で必ずしもきれいに分割できないものであることは私どもも十分認識しておりまして、言葉の選択には苦労したところなのですけれども、そういう意味で保証の範囲が異なるという表現を最終的に選んでいるところでございます。

それから、最後のご質問でございましたが、ファンドの監査などで、これが特別目的なのか一般目的なのか利用者から見て混乱が出ないのか、どこで分けたらいいのかというお話でございましたが、おそらくこれは利用者よりも、実際に監査を行われる公認会計士さん、監査法人さんで、これは一般目的の財務諸表なのか、特別目的の財務諸表なのかという仕分けをするところで、この判断は確かになかなか、機械的に出るものではありませんので、いろいろとご議論をいただく余地もあるだろうと思っております。おのずとこちらだと決まる性質のものではないかもしれません。

ただ、利用者という視点で見たときには、公認会計士さんがこれは特別目的の監査だという選択をした場合には、今回の改訂によりまして監査報告書にはその旨が記載されるわけでございます。場合によっては利用者の範囲も特定されたりします。それから一般の使用といいますか、これは特別目的の基準でできているので他の目的には当てはまらない、適合しない場合があることを必要的に記載していただくことになりますので、利用者の立場から見ればそこはどちらであるかは明白であろうかと思います。

○脇田部会長

私の発言についても今言及してくださったのですけれども。改訂案の前書きにも書きましたけれども、公認会計士が監査する以上は、どのような監査であってもその注意義務が同じでなければならない、責任も同じでなければならないということであります。その結果として保証水準ということになるのでしょうけれども、そのような形で公認会計士の監査として行われるのだというところをまとめたい。今ご指摘いただいたところによると、それが十分に表現し切れていないのかということを、今ちょっと苦慮したところだと申し上げておきたいと思います。

もう一点は、実際にこの業務分野は監査実務が先行しておりましたので、監査を実施する公認会計士の方々にもいろいろなご判断があったでしょうし、それを支える仕組みもいろいろあったでしょうし、それから今ご指摘のように、監査報告書をご覧になった方々が、「どこが違うのかな」という疑問を持たれている、少なくともそういう混乱にある種の道筋を与えようと、改訂案を作成しました。根本的な、適正性意見、あるいは準拠性意見そのものの議論の話は避けさせていただきました。

どうぞ、ご発言いただいて。吉見委員、どうぞ。

○吉見委員

今回の監査基準の改訂ですが、先ほど建て増しを続けている温泉旅館のようだというお話もありましたが、その割にはスムースに移動できる建て付けになっているのかなと思います。その中で、少し壁の色が違うかなというところもあると思うのですけれども、1点だけ、資料3−3の1ページ、監査の目的に新しく2項目を付け加えているわけですが、そもそも監査の目的は比較的最近付加された新しい部分でありますけれども、目的という大枠の中で、2で最後に、「意見として表明することがある」という書きぶりになると、これが目的なのかと言われると少し気になるところかと思います。

特にこの表現は、準拠性の意見を表明することもあれば適正性意見が表明されることもあるということを含めて書かれていると考えるところでありますけれども、この2の項目だけを読みますと、監査の中で意見を表明してもしなくてもよいとすら読めます。ご苦労された部分だろうなと思うのですけれども、例えば、「意見として表明できる」という表現ではよくなかったのかどうか、そのあたりについてもしあればお聞かせいただきたいと思います。

○脇田部会長

ありがとうございました。どうぞ、ご発言いただきたいと思います。荻原委員、どうぞ。

○荻原委員

根底を覆すような話をして申しわけないのですけれども、監査の本質論から申し上げた場合に、私の考えなのですけれども、一般目的と特別目的の監査の違いはわからないのですね。なぜかと言いますと、証券だったら買う人も買わない人も監査報告書を見られますね。ファンドもそうで、投資する人と投資しない人があると思うのですけれども、それが必ずしも直接的に見る人が受け取るものであって、それ以外の人は関係ないということ自体がむしろ問題であって、本当に公認会計士の監査をもっと確実に拡充していくためにも、一般目的とか特別目的という判断を分けること自体がおかしいのではないかと思っています。先ほど審査会の佐々木さんからお話がありましたけれども、低額でやっているわけですね。これ自体間違いで、だから世の中の問題がたくさん起きるわけですよ。一般とか特別とか分けること自体が絶対におかしいと思っています。

○脇田部会長

ありがとうございました。どうぞ、熊谷委員。

○熊谷委員

今の荻原委員の非常に本質的な問題提起からテクニカルなところに行ってしまうのですが、ただ問題意識は共有しているかなと思うのです。資料3−3の実施基準の基本原則の8ですけれども、「監査人は特別利用目的に適合した会計の基準により作成される財務諸表の監査に当たっては、当該会計の基準が受入可能かどうかについて検討しなければならない」という文章が追加されております。我々財務諸表利用者から見たときに、特別目的の監査に当たって、先ほど佐々木さんからご説明があったように、例えば時価が取得原価であるとすると、特に投資のようなものに関して時価が取得原価であって、時価と取得原価が大きく乖離しているケースが問題になってくるのだろうと思います。では、特別目的のファンドの会計基準として定められているものが適切ではないとなった場合、あるいは監査人の方々がそう判断した場合、8の規定は、当該会計の基準が受入不可能である、つまり当該会計の基準では、明らかに財務諸表が、ファンド実態を適正に、あるいは忠実に表示しないとなったときに、この規定に従って、ファンドに対してこの会計基準を変えろ、ということまで言える規定になっているのかどうかが気になりました。これはひょっとすると準拠性を超えて適正性の分野に入ってきてしまうのかもしれないのですけれども、そのあたりのお考えについてお聞かせいただけたらと思います。

○脇田部会長

事務局からよろしいですか。

○油布企業開示課長

まず最初のご質問、監査基準の監査の目的に係るところの2項の語尾の締めくくり方でございまして、前提といたしましてご指摘のとおりここは目的という項目に2項を足しておりますが、2項そのものが目的を表現しているものになっていないことについては十分認識しております。その上で、1項の目的の下にどうしても準拠性を付けたいということで、その場合も1項に取り込むのがいいのか、別項の2項にするのかという判断もございましたが、わかりやすさ、見やすさという観点から2項にあえて分離いたしました。そうしますと、2項だけを見た場合にはここはちょっと目的ではないのではないかというのはおっしゃるとおりかと思っております。

ただ、この監査基準全体を見ますと、実は小見出しと内容が必ずしも一致していないところが他にもあったものですから、語尾については、実は「意見として表明することができる」というものもご議論いただいた中にございましたけれども、そうすると、「できる」という日本語がいわば免責というか特権というか、許容する要素が若干ニュアンスとして出てしまうこともあって、「することができる」という案についても一部の先生方にご意見を伺いながら、最終的には、「することがある」という表現にしたところでございます。これはご意見をいただきまして、もう一度部会長とも相談させていただきまして、他の表現を思い付くようであれば修正したいと思いますけれども、どうしてもこれ以上我々としていい知恵が出ない場合には、原文のままということもご了承いただければと思っております。

それから荻原委員のご意見につきましては、おっしゃる趣旨はおそらく皆さん、かなり説得的なご意見として受けとめられた方も多かったのではないかと思います。ただ、実際その中で我々としましては、一つは特別目的を分ける、準拠性という表示を入れることで保証水準は同程度であるということで、部会長が例えば注意義務というお話をおっしゃいましたが、そのようなところについては適正意見表示、いわゆる上場企業の通常の監査の場合と同じ水準のものを要求するということを書いて、ただ、準拠している財務諸表の作成基準というか、会計基準そのものがどうしても監査という立場から超えられない部分がございますので、そのようなものについては注意書きなどを書くといったこと、それからその後のご意見にも出ましたが、そもそもそのような特別な会計基準が受入可能かどうかも検討するといった、留保なり条件を付けて監査基準の中に取り込んだほうがよろしいのではないかということでございます。荻原委員のご意見に対してお答えになっているかどうか、甚だ心もとないところですけれども、そのように考えて今回2つに分けて整理させていただいたところでございます。

それから最後の監査基準の受け入れに関する部分です。これは、受入可能かどうかについて検討するということで、受諾しないことも念頭に置いた表現でございます。その結果、会計基準そのものが変わるのか、あるいはファンドで申し上げると、たしか会計基準には時価は契約によることになっていますので、会計基準そのものを変えるのではなくて契約を変える対応をされるファンドさんもあり得るという気はいたします。受諾しないことをもってそういう効果が発生することは想定している表現かと思っております。

○脇田部会長

他にご発言ございますか。清原委員、どうぞ。

○清原委員

先ほどちょっとお話が出ていた特別目的という話で1点、それともう1点コメントがあるのですけれども、まず、一般の利用目的と違うと言っているときに使う「特別」という言葉の使い方がわかりにくいかなと思われます。ここでは、ある限定された目的において作成されたことを「特別」と言っているのですが、「特別」という語には特によいものという語感も含まれることがあったりいろいろするので、「特別目的」というと語感の点で内容が専門家以外の人に伝わりにくいのかなという印象がございます。

次に、準拠性などの意見についての議論の関係で、この基準改訂案の「第一 監査の目的」のところで、冒頭では、「一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して」と書いてあって、「一般に公正妥当」という言葉が入っているのですけれども、追加される2項の案では、「特別の利用目的に適合した会計の基準等」とだけ記載されていて、この基準が一般に公正妥当かどうかについては触れていません。有責法の場合には条文で入っているのですけれども、それ以外の会計の基準については、果たして一般に公正妥当じゃないような基準があって、それに基づいて作られたときに準拠性だけ監査意見を言っても意味があるのか、利用者に誤解されないか、という話になるのではないでしょうか。この問題は、後ろの方の「第三 実施基準 8」の「会計の基準が受入可能かどうかについて検討しなければならない」につながってくるので、監査の意見を述べるうえでこの点は検討することになってくるのですけれども、やっぱりわかりにくいのではないか。ここの部分について、そのつながりがはっきりしないと利用者にとっても理解しにくく、誤解や混乱の要因になるのではないか。仮にここの基準、例えば先ほどの時価の基準について、もし時価の基準に疑義が残る、もしくは何らかの意見を留保しなければいけないとすれば、限定意見という形での対応もおそらくあるのではないかと思うのです。ここは受入可能な基準ではないということで監査意見も何も出さないということで終わってしまうのか、それとも、例えば監査をしていって時価基準を見たけれども、ずれているからこのままだったらいけない、そこでどうするかといったときに、最後に限定意見とするのも一つの方法ではないかと思われますが、ここの流れ、つながりをもうちょっと整理していくと利用者にとってわかりやすくなってくるのかなと思います。若干感想に過ぎないものですけれども。

○脇田部会長

ありがとうございました。他にご発言ございますか、五十嵐委員ですか。失礼しました。八田委員が先ほど手を挙げておられましたので。

○八田委員

今回提案されている監査基準の改訂に関して、基本的に異議を唱えるものではありません。というのは、部会長もおっしゃっていたように、実務先行型で、現場において、こういうニーズがあることに対して何らかの対応をしていただくほうが社会的な信頼性が担保できるということがありますから、こうした対応について異を唱えるものではありません。しかし、期せずして油布課長が何回もおっしゃっているように、我が国の監査基準も金商法の監査基準を念頭に置いたフルスペックでの適正性監査を念頭に置いて構築されてきているということ。それに対して、つぎはぎといいますか、今回も温泉旅館の建て増しのようなものだとおっしゃっていますが、例えば消防法も変わっているし、耐震基準も変わっていますから、建物にしても全面改築が必要な時期になっているということで、監査基準についても、同様の視点が求められているのではないでしょうか。

基本的に、一番容易なのは全面適用に向けてというか、今回の課題も負うわけですけれども、林田委員がおっしゃったように、我々監査を専門とする立場から考えても、適正表示という概念から解き放たれないと、全てが繰り返しの議論になってきてしまう。よく考えてみたら現行の適正表示の監査も、いわゆる会計基準に準拠しているから適正ですよと、簡単に言えばそういう議論ですね。その意味からすれば、これも準拠性の監査でもあるわけです。ということで、適正か不適正かという抽象的な表現、つまり判決文で言うならば主文の有罪か無罪かといった表現と同様に、ぽんと1発、監査人が有価証券報告書の表紙にでもそうした表現の印鑑でも押してやればいいわけであって、さらにその内容を詳しく知りたい人には、別途、付表のような形で、るる書いてあげればいい。

この辺を誤解してもらっては困るのは、不特定多数の利用者が読みとるであろう監査報告書は短い文章で、簡にして要でなければならない。つまり長文式にいろいろなことを書くことを良しとする立場もあります。特にプロの投資家の方々、今日の前半のテーマでのご発言も、アナリストの方とか、機関投資家の方がおっしゃることは、こういう情報が増えるとうれしいと。でも一般の投資家はそんなものはあまり要らないと思うのです。この財務報告が正しく利用可能かどうか。あとは付表か何かでるる書けばいいのであって、現在の単文式の監査報告書を温存しながら、どんどん記載内容を増やしていくことは情報提供能力が増えるからいいことだとなると、一般の人にとっては却って何だかわからなくなってきてしまう。その辺の仕分けもしなければいけない。

今回の準拠性の監査と一般目的の監査の識別も、私は荻原委員と全く同じで、監査というならば同列で扱わなければいけないわけであって、保証の水準というけれども、これも少数説かもしれませんけれども、公認会計士、監査人が関わって、専門的な意見を表明する監査に対する信頼性はどんな場合であっても同じでなければいけない。違うのは対象となっている財務諸表の作成基準に精粗があるということです。監査人はその作成基準との合致の程度を見ることにより、そこでの適否につき証明しましたよというわけであって、別に監査人が、この財務報告は利用価値が高いとか低いとか言っているわけではない。特に監査人は情報の仲介人とか解釈人になってはいけないと我々は考えていますから、客観的、独立的、専門の立場でお墨つきを与えるレベルにとどめないといけない。

そうなると、結論ですけれども、将来的には、会計士の行う監査の全部が準拠性の監査でいいのではないかということです。つまりどの基準を我々は採用して、どのように判断したか。そして内部統制のどこに重要な不備があったのか、まさに昔、昭和49年に制定された商法特例法にあった会計監査人の監査報告書が望ましい姿ではないかと思われます。つまり、個人的には適正表示の監査は役割を終えたのではないかと思っていますが、国際はどうかわかりませんけれども、そんな気がします。

○脇田部会長

今大きなお話をいただいてしまったのですけれども、ただ、最後の準拠性の監査報告書については、私個人としては必ずしも同じ意見ではありませんけれども、今、ご発言いただいたように、各委員のご意見の中に共通してあったことは、公認会計士が実施した監査は一つであり、ただその監査の対象が異なったり、その監査の結果が誤解を招かないようにどう監査報告書に記載するかということだろうと思います。なお、特別というのが既に定訳になっていまして、それをすぐに変えるのは難しいこともありました。

そういう趣旨で、実務先行と先ほどおっしゃったと思いますけれども、公認会計士監査の信頼性を確保するために、この領域で実務が先行している監査業務を整理して、ある種の規範を示そうということで、このような改訂案の取りまとめをしたわけでございます。

あと、五十嵐委員のご発言が残っているかと思いますが。

○五十嵐委員

私も現在の公開草案に対して特別な反対はございませんが、幾つかコメントを述べさせていただきます。

第一点目でございますが、我が国では、保証の原則について他国と比較するとより詳細かつ明確な方向性を持った議論がなされていないように、個人的には感じられます。例えば、欧州では保証の原則の内容について詳細に議論されています。これらの議論に基づき、専門家が実施する保証基準が討議されていると理解しています。従いまして、先ほど来、議論されております保証の基本的要素はいくつかありますが、保証の範囲の議論では、第一に、主題と主題情報が討議の対象になると思います。主題とはある特性、品質又は属性と密接に関係しており、それがあらわされたものが主題情報となります。従いまして、財務諸表とは主題情報であり、主題ではありません。こうした事を前提にすると、IAASBでは一般目的と特別目的という表現になっていますけれども、「特別」と日本語で表現されると、通常以上の特別の保証が行われるというように感じられる可能性もあると思います。私の理解では、この「特別」とは一般に行われている監査業務以外という意味で、例えば、特定の会計事務所では「Comprehensive Basis of Accounting」と表示され、一般目的のGAAPとは異なる事を意図されておりました。たとえば、この「特別」の業務をについて、本案のどこかの箇所で例示などを記述されましたら、よりわかりやすくなる可能性もあると思いました。

第二でございますが、適正性と準拠性とが明確に分けられるかの議論があったと理解しています。監査報告で財務諸表の適正性を述べる際に「一般に公正妥当と認められた会計基準」の表現が含まれておりますが、この意味は、監査の「準拠枠」として入れたと理解しています。従いまして、適正性の監査は財務諸表が一般に公正妥当と認められた会計基準への準拠性の監査であると思います。こうした事を前提に考えますと、適正性の監査と準拠性の監査との記述をよく考えてみますと双方の区別がわかりにくいのかなと思いました。

一つ、細かいことで大変恐縮でございますが、会計基準の資料3−3の監査の目的の2のところと第三の一の8のところでございますが、監査の目的の2では、「財務諸表が特別の利用目的に適合した会計の基準等」と記述されておりますけれども、実施基準の基本原則の8のところですと、「特別の利用目的に適合した会計の基準」ということで、「等」が含まれておりませんけれども、もし特別な意味がありましたら教えていただければと思いますが、会議の予定時間が過ぎておりますので、別の機会で結構でございます。

○千代田公認会計士・監査審査会会長

 資料2−2をご覧いただきたいと思います。先ほど来問題になっておりますファンドに関する監査人の判断基準として、取得価額が話題になっておりますけれども、佐々木はこれが「散見される」という控え目な表現でした。そして先ほどご説明しましたように、監査報酬も5万円から数十万円で引き受けております。これは監査報告書を売り物にしているのではないかということなのです。資料2−2をご覧いただきますと、中小企業等投資事業有限責任組合会計規則は平成10年にできているのです。15年前なのです。これを作ったそもそものイニシアチブは経済産業省なのです。ベンチャー育成のためにこういうものを作って、監査報告書を添付させて信頼性を付与して、監査報酬は数十万円でというのがまだ続いているわけです。

我々は経済産業省と何度も交渉して、時価が組合契約によるということは問題であり、見直す必要があるのではないかと言っているのですけれども、馬耳東風なのです。平成10年というのは金融商品に関する会計基準の前年なのです。金融商品の会計基準は平成11年にできたのです。そこで、経済産業省は自分たちは先駆的な基準を作ったのだと言っているのです。ところが現実には先ほど言った3項があることによって、取得原価となっているものがあるのが実情なのです。その後、ご承知のように金融商品の会計基準は平成18年、19年、20年と改訂されて、現在のような基準になっているのです。こういう流れの中で準拠性監査を基準上、位置付けるのであるならば、このような規則を改正させるようなことも同時にやってほしいわけです。先ほど熊谷委員が言われたように、それは準拠性じゃなくて適正性監査になるのかもしれませんけれども、それはそれで望ましいわけです。こういう陳腐化したものをそのまま放っておくことが問題なのです。企業会計審議会も、経済産業省を呼び出して意見を聞くなりしませんと、進まないのです。実態はそうなのです。監査基準の中でよいことを盛り込むのは賛成ですけれども、日本の約60年の公認会計士監査制度を崩してしまうのではないかというぐらい我々は危機感を持ってファンド監査を見ているのです。そういう実態もあわせて理解していただいて基準に反映させてほしいというのが、今日時間をいただいた趣旨なのです。よろしくお願いいたします。

○脇田部会長

ただいま審査会のご説明をいただいたのですけれども、少なくとも今のような状況につきましては、監査人が判断しなければいけないことを基準で、基本原則の中に実施基準の一の基本原則の8に明示しました。これから公認会計士の方々が監査する中で一つの大きな注意義務として要求されると。

○千代田公認会計士・監査審査会会長

監査人は認識しているのですよ。しかし、法令でこう規定されているからというので逃げてしまっているところに問題があるのです。だから法令を改正させないといけないのです。

○脇田部会長

今の千代田公認会計士・監査審査会会長としてのご発言は重いものがございます。それでは逆瀬委員、水口委員で、ご発言を終わらせていただきたいと思います。

○逆瀬委員

いろいろご意見を伺いましたけれども、そもそも私が確認したいのは、今の会社法の会計監査人設置会社の監査、いわゆる会社法の法定監査の話とは関係ないと理解しておるのですけれども、それはそれでよろしいということでありますね。

○油布企業開示課長

会社法の監査の場合、通常、上場企業等の場合にはやはりこれは、今の監査基準の中に既に位置付けられているものであると。

○逆瀬委員

その念押しでしたが、あと1点、実施時期の話なのですけれども、今の油布課長のお話だと、新しいルールで当該会計基準が受入可能かどうかの判断を会計士に求めて、だめだとなったときには、例えば有責組合の場合だったら契約を変えるなどして対応するといったことが現場で考えられるというご説明がありました。そうすると、来年の4月から適用というと、あまり時間がないのですけれども、実務指針改正の話もありますし、その辺は大丈夫なのか懸念があります。以上です。

○脇田部会長

ありがとうございました。水口委員、どうぞ。

○水口委員

先ほど公認会計士・監査審査会からお話があったようなファンド監査などについて、投資の評価額の妥当性を含めたものであるか否かなどについて、利用者が誤解する懸念があり、こうした懸念に対する手当てをすることが非常に重要だと思っております。特別目的のファンド監査の場合、受入可能かどうか、監査の内容についてどういう範囲で証明しているか、出口についても監査人の実務はどうなるのか、利用者による誤解の回避に向けた実効性ある施策を考えるに、実務指針のあり方も重要であると考えます。公認会計士協会の対応の方向性について、既に整理を進められていると想定しますが、簡単にお話を伺うことは可能でしょうか。

○脇田部会長

ただいまの件は、本改訂案がこれからパブリックコメントに付され、改訂基準が固まってから、日本公認会計士協会から実務指針のパブリックコメントが行われる予定になっていると聞いております。せっかく日本公認会計士協会副会長の関根委員がお見えになっていますから、どうぞ一言。

○関根委員

延長しているところ申しわけございません。私どもとしましては、6月の企業会計審議会監査部会において、ニーズを説明させていただきましたところ、どのように対応していくべきかをご審議いただき、今回改訂案ということでご提示いただいて、感謝しております。

この案につきましては、今までいろいろな意見も出ておりまして、対応すべきところはあるかと思いますけれども、私ども監査を行う実務家としては、基本的に、特定の利用者のニーズを満たすべく、特定の利用目的に適合した会計の基準に準拠して作成された財務諸表に対しても監査という形で信頼性の担保の要請に応えたいということが趣旨でございます。

今回の案はそのような形で書かれていると思いますけれども、ただ一方で、今の水口委員のご発言等、今日の話にもありましたように、まだ詰めていくべき点がいろいろあると考えております。審査会からの今回のご指摘にもありましたように、実務が必ずしもきちんと対応できていないところもあるかと思います。法律の問題もあるかもしれませんけれども、監査人としましては、監査契約の受嘱等で歯どめをかけるなど、今まで実務指針等で対応してきましたが、基準ができるということで、適切に適用されるよう、実務指針等でもきちんと対応をし、また十分な理解も求めていく必要があると考えております。これは私どもがまず行うことかと思いますけれども、と同時に関係者の皆様にもご理解いただき、ぜひご意見を賜りながら対応していきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。

○脇田部会長

ありがとうございました。本日はいろいろなご意見を頂戴いたしました。ただ、一応この案の内容で基本的な方向性については合意をいただいたのではないかと思っております。これからもパブリックコメントという期間がございますので、その間にまたご意見を伺う機会もあるかと思います。そこで本日いただいたご意見等も踏まえまして、必要に応じて文言の調整を行った上で、この改定案を速やかにパブリックコメントに付させていただいてはどうかと考えますが、部会長である私にご一任いただけますでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○脇田部会長

ありがとうございました。それではそのように進めさせていただきます。本日は時間を超過してしまいまして大変にご迷惑をおかけ致しました。ご協力をいただきまして感謝致します。この辺で本日の審議は終了させていただきます。今後の予定につきまして、事務局からご発言ください。

○油布企業開示課長

今部会長からもお話がございましたパブリックコメントは約1カ月間を想定してございます。コメントの受付期間終了後に再度ご審議をお願いできればと考えております。

○脇田部会長

今後の日程につきましては改めて事務局からご連絡させていただきます。それでは本日の監査部会を終了いたします。委員の皆様にはお忙しいところをご参集いただきまして、大変ありがとうございました。これで閉会させていただきます。

以上

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