企業会計審議会 第38回監査部会議事録

1.日時:平成29年10月17日(火)14時00分~16時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○伊豫田部会長  
 定刻よりまだ少し時間がございますが、委員の皆様おそろいですので、これより企業会計審議会第38回監査部会を開催いたします。皆様にはご多忙の中ご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 私は、本年9月の企業会計審議会総会におきまして、平松会長より監査部会長の指名をいただきました甲南大学の伊豫田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

 それではまず、会議の公開についてお諮りいたします。監査部会の審議につきまして公開することとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)

○伊豫田部会長  
 ありがとうございます。ご了解を頂戴いたしましたので、そのように取り扱わせていただきます。

 議事に入ります前に、今回新たに就任されました委員の皆様をご紹介させていただきたいと思います。

 井口譲二委員です。

○井口委員  
 よろしくお願いします。

○伊豫田部会長  
 今給黎真一委員です。

○今給黎委員  
 今給黎でございます。よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 大瀧晃栄委員です。

○大瀧委員  
 大瀧でございます。よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 岡田譲治委員です。

○岡田委員  
 岡田でございます。よろしくお願いします。

○伊豫田部会長  
 小畑良晴委員です。

○小畑委員  
 よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 紙谷孝雄委員です。

○紙谷委員  
 紙谷です。よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 永田雅仁委員です。

○永田委員  
 よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 中西和幸委員です。

○中西委員  
 中西です。よろしくお願いします。

○伊豫田部会長  
 初川浩司委員です。

○初川委員  
 初川でございます。よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 弥永真生委員です。

○弥永委員  
 弥永と申します。よろしくお願いします。

○伊豫田部会長  
 幹事といたしまして、竹林俊憲幹事です。

○竹林幹事  
 竹林でございます。よろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 お手元に委員名簿をお配りしておりますので、ご参照いただければと思います。事務局につきましては、お手元の配席図をもちましてご紹介に代えさせていただきたいと思います。

 それでは審議に入っていきたいと思いますが、ご案内のように、近時の不正会計事案などを契機といたしまして、会計監査の信頼性向上が強く求められている状況にございます。そのような問題意識のもと、9月8日に開催されました企業会計審議会の総会におきまして、会計監査の信頼性向上に向けた取組みについての審議が行われました。その中で、会計監査の透明性を向上させる必要性についてご意見が出されまして、特に会計監査の透明性向上に関するもののうち、「監査報告書の透明化」については、当面この監査部会において審議を行っていくべきこととされました。こうした経緯のもとで今後この「監査報告書の透明化」についてのご議論をこの部会で行っていただければと思っております。

 それでは審議に入ります。事務局からどうぞ。

○田原企業開示課長  
 ありがとうございます。それではお手元の資料1に従いまして、「監査報告書の透明化」についてご説明をさせていただきたいと思います。

 1ページおめくりいただきまして目次がございまして、もう1ページおめくりいただければと存じます。先ほど部会長からもお話がございましたように、東芝の不正会計問題ですとか、あるいは当時、IPOなどをめぐりまして会計監査にいろいろ問題が指摘されたというようなことを踏まえまして、一昨年から昨年にかけて会計監査の信頼性をいかに確保していくかという観点から、「会計監査の在り方に関する懇談会」を開催させていただいたところでございます。昨年3月に提言を頂戴いたしまして、以下の5つの柱からなる会計監査の信頼性確保のための施策というものが提言されたわけでございます。この中には、1にございますように、監査法人のマネジメントの強化を行うことで監査の信頼性を確保する、具体的には監査法人のガバナンス・コードを導入するといった施策ですとか、右側の4にございますように、第三者の眼による会計監査の品質のチェックが重要であるということでございまして、監査法人の独立性を確保していくといった観点から、監査法人のローテーション制度についての調査を実施するなどの施策が盛り込まれたわけでございますけれども、大きな柱の1つとして、2の会計監査に関する情報の株主等への提供の充実というものを提言いただいたわけでございます。この中には、企業による会計監査に関する開示の充実とともに、会計監査の内容等に関する情報提供の充実ということで、本日ご議論いただきます「監査報告書の透明化」についても盛り込まれたということでございます。こうした施策を通じまして、下の囲みの中にございますように、監査法人が有効なマネジメントのもと、高品質で透明性の高い会計監査を提供するということによって、それが評価・選択される環境が確立される、それが監査の品質の持続的な向上につながるということが期待されるというご提言を頂戴したわけでございます。

 1ページおめくりいただきまして、懇談会の提言の中で、先ほど申し上げました会計監査に関する情報の株主等への提供の充実というものがどのように書かれているかということでございますが、この中では、企業の株主は会計監査の最終的な受益者であり、株主総会において監査人の選解任を最終的に決定する役割を担っているということでございまして、このような株主の判断が適切に行われるためには、監査役会、監査委員会、監査等委員会による監査人の評価を含め、株主に必要な情報提供が行われることが前提となる、とされております。そして、諸外国においてもこのような観点からさまざまな取組みが行われており、我が国においても、企業、監査法人、当局のそれぞれにおいて、会計監査に関する情報の株主等への提供の充実に取り組み、会計監査の透明性向上に努めるべきであるとされているわけでございます。

 1ページおめくりいただきまして、その方法ということで、企業による会計監査に関する開示の充実とともに、会計監査の内容等に関する情報提供の充実というのが提言されたということは、先ほど述べさせていただいたとおりでございますけれども、こちらの中では、監査法人等が積極的にその運営状況や個別の会計監査等について情報提供していくべきであるという提言をいただいたところでございます。この中には、先ほどのガバナンス・コードに関連しまして、監査法人等のガバナンス情報の開示ですとか、監査人の交代時における開示の在り方、それから当局による会計監査に関する情報提供の充実といったものを提言されているわけでございますけれども、②で「監査報告書の透明化等」とされまして、現在の監査報告書におきましては、財務諸表が適正と認められるか否かの表明以外の監査人の見解の記載は限定的となっているわけでございますが、イギリスでは、会計監査の透明性を高めるために、財務諸表の適正性についての表明に加えて、監査人が着目した虚偽表示リスクなどを監査報告書に記載する制度が導入されております。欧州連合(EU)も本年から同様の制度を導入する予定であり、ここでいう本年というのは昨年でございますが、アメリカにおいても導入に向けた検討が進められているということでございまして、こういったことについては我が国でも検討を進めるべきとされたということでございます。

 1ページおめくりいただきまして、現行の我が国の監査報告書でございますけれども、いわゆる短文式というふうに言われているものでございまして、この中の監査意見のところに書いてございますように、適正に表示していると認められるか、適正でないかということを端的に示すものということにされているわけでございます。

 1ページおめくりいただきまして、こういった報告書の導入の経緯でございますけれども、昭和31年の監査基準の設定時の大蔵省企業会計審議会中間報告におきましては、監査報告書というものは、監査の結果として、財務諸表に対する監査人の意見を表明する手段であるとともに、監査人が自己の意見に関する責任を正式に認める手段であるとされております。したがいまして、その内容を簡潔明瞭に記載して報告するとともに責任の範囲を明確に記載して意見を表明することは、利害関係人ばかりでなく監査人自身の利益を擁護するためにも重要であるということで、短文式が導入されたものと承知をしております。

 また、監査報告書にいろいろな情報を書くに当たりまして、例えば追記情報が平成14年1月25日に導入されたわけでございますけれども、この中でも、本来、意見表明に関する監査人の責任は自らの意見を通しての保証の枠組みの中で果たされるべきものであり、その枠組みから外れる事項は監査人の意見とは明確に区別することが必要であるとされております。こういう経緯の中で、短文式という形でこれまで監査報告書を記載していただいたわけでございますが、6ページをご覧いただきますと、「監査報告書の透明化」というものが諸外国で導入が進んでいるということでございまして、これは後ほどご説明いたしますけれども、Extended Auditor’s Report、長文化などと呼ばれる、あるいは拡張された報告書などと呼ばれることもございますけれども、主要な監査事項、いわゆるKey Audit Mattersを同時に記載をする報告書ということでございます。こちらの導入につきましては、2000年代後半の金融危機を契機といたしまして、やはり監査の信頼性の確保、透明性の向上という観点から、まずイギリスで2012年10月以降開始事業年度から適用されることになりました。その後、国際監査・保証基準審議会、国際監査基準を設定する主体でありますこの審議会におきまして、2016年12月15日以降終了事業年度から適用することが基準としてまとめられたということでございます。その後、EUでは2016年6月17日から関連規則適用開始ということで、決算としては12月末決算であれば、2017年12月期から適用されるという予定になっております。それから、先ほどアメリカでも検討が進んでいるということでございますが、こちらも検討が進みまして、本年6月にアメリカのPCAOBが大規模早期提出会社においては2019年6月15日以降終了事業年度、ですから12月末決算ですと2019年12月期から、それ以外につきましては2020年12月15日以降終了事業年度からの適用ということを提言する監査基準をまとめまして、こちらについては現在SECで最終的な審査を行っている状況であるというふうに伺っております。

 1ページおめくりいただきまして、各国の状況について透明化の内容とともにご説明をさせていただければと思います。イギリスにおきましても、先ほど申し上げましたように、金融危機の反省から、コーポレート・レポーティングや監査を通じて、取締役会、監査委員会の有効性を強化するという観点から、取締役会、監査委員会と並びまして監査人の報告の拡充が提言されたということで、2013年6月に監査基準が改訂されたわけでございます。こちらにつきましては、当初はイギリスのコーポレート・ガバナンス・コード適用会社の監査に適用されるということでございましたが、今はいわゆるPIE、社会的影響度の高い事業体について適用されているというふうに伺っています。これに何を記載することとされたかといいますと、一番下でございますが、当初は、監査人が識別して評価した最も重要な虚偽表示リスクの中で、監査の基本的な方針、監査資源の配分、監査チームの作業の方向性に最も重要な影響を与えたものについて記載をすることとされたわけでございます。ただ、現在の記載事項は、後ほど申し述べますIAASBのKey Audit Mattersと同様になってございます。

 1ページおめくりいただきましてEUでございますけれども、やはりこちらにつきましても金融危機を契機として、監査報告書の透明化を含めた法定監査の改革に関する議論が始まりまして、2014年6月にEU法として発効したと承知をしております。適用対象は、先ほどイギリスのときに申し述べましたが、PIEの監査に適用するということでございまして、具体的にどういったことを記載するかと申しますと、財務諸表の重要な虚偽表示リスクのうち最も重要であると評価したものの説明、それから当該リスクへの監査人の対応の要約、該当がありましたら、当該リスクに関する主な見解、それから上記の情報について、財務諸表に関連する開示事項があればその参照箇所を記載することとされているわけでございます。

 1ページおめくりいただきまして、国際監査基準を設置する主体であります国際監査・保証基準審議会でも、こういった国際監査基準を設定しておりまして、こちらについては2011年5月から議論を開始いたしまして、2015年1月にISA701という形で公表がされております。適用対象は上場企業の監査ということでございまして、1ページおめくりいただきまして、具体的にどういうことを書くかといいますと、監査上の主要な事項、Key Audit Mattersということで、監査人が統治責任者にコミュニケーションを行った事項から選択され、当該事業年度の財務諸表監査において監査人の職業的専門家としての判断によって最も重要と判断された事項を書くというふうにされているわけでございます。これは具体的には2に決定方法が書いてございますけれども、監査人が統治責任者の方々とコミュニケーションを行った事項の中から、以下の点を考慮して特に注意を払った事項をまず決定するということでございまして、具体的な考慮事項としては、重要な虚偽表示リスクが高い、あるいは特別な検討を必要とするリスクが識別されている、重要な経営者の判断を伴う領域について監査人が重要な判断をするということ、あるいは重要な事象ですとか取引が監査にどういう影響を与えるかというようなことを考慮して、こういう特に注意を払った事項を決定するということでございまして、これを決定した上で、当事業年度の財務諸表の監査において最も重要な事項を、KAMとして決定するというふうにされているわけでございます。

 1ページおめくりいただきまして、具体的に記載する事項は、先ほどEUで述べたものと同じというか近いということになっておりまして、ここに書いてあるとおりでございます。IAASBにおきましては、意見不表明の場合につきましてはKAMの記載を禁止しているということでございます。それから同じ2011年5月の検討開始時のコンサルテーションペーパーには、その他のいろいろな事項についても提言が書かれておりまして、例えば監査報告書の記載順序について監査意見を冒頭に書くですとか、継続企業の前提に関する記載を、追記情報における強調事項ではなく独立した区分を設けて記載するとか、あるいは財務諸表以外の情報に関する監査人の手続についても基準を設けるといったことが提言をされておりまして、これらについても改訂が行われているというふうに承知をいたしております。

 1ページおめくりいただきまして、最後に米国の事例をご紹介させていただきます。米国におきましては、金融危機に先立ちます2007年から検討が始まっているというふうに承知をしておりまして、2011年6月にPCAOBがコンセプトペーパーを公表したと聞いております。内容については、今年6月に最終化をされて、現在SECで審議を行っているということでございます。具体的には、この米国監査基準「監査人が無限定適正意見を表明する場合の財務諸表監査における監査人の報告書」というものでございまして、この中では、アメリカではKey Audit Mattersではなくて、Critical Audit Matters、CAM(キャム)と読むのかと思いますけれども、これにつきまして強調して記載するということになるわけですが、これについてはSEC登録企業の監査に適用されるということになってございます。適用時期につきましては先ほど申し述べたとおりですので、省略させていただいて、1ページおめくりいただきまして、アメリカにおけるCAMの定義でございますけれども、監査人と監査委員会との間でコミュニケーションが行われた、または行うことが求められた事項であり、かつ、以下の双方に該当する事項とされておりまして、1つ目が財務諸表の重要な勘定科目または開示に関連していること、2つ目が特に困難、主観的または複雑な監査人の判断を伴うこととされているわけでございます。CAMの決定に当たりましては、特に困難、主観的または複雑な監査人の判断を伴うかということで決定するわけでございますけれども、以下の要因を含めた事項を考慮するということで、重要な虚偽表示リスクがあるか、経営者の重要な判断ですとか見積りの適用を伴う財務諸表の領域に関連した監査人の判断の程度がどの程度か、それから重要かつ通例でない取引の内容や時期といったようなことが記載をされているということでございます。

 1ページおめくりいただきまして、CAMの記載事項自体は、先ほど来申し上げていますKAMとかなり似ておりまして、内容、判断した理由、どのような対応を監査人がとったか、関連する財務諸表の勘定科目または開示への参照ということとされているわけでございます。アメリカにおきましては、不適正意見と意見不表明の場合には、CAMに係る規定は適用されないとされておりますので、書くこと自体は禁止をされないということであろうかと思います。また、アメリカにおきましても同じ監査基準の中で監査人の在任期間に関する記載を追加するですとか、監査人が企業から独立した立場である旨の記載を追加する、あるいは監査意見を監査報告書の冒頭において記載するよう変更する、監査報告書の宛先を「株主と取締役会」等とする旨を明確化するといったようなことも改訂されているというふうに承知いたしております。

 15ページ以降はIAASBの文例を掲げさせていただいておりまして、具体的にKAMというものがどういうふうに記載されるかについて例示をさせていただいております。一番上の四角の中をご覧いただければと思いますが、まず、当該事項がKAMであると判断した理由ということで、のれんであれば、ここに書いてございますようなことを書くということが1つの例として書かれているわけでございます。下のほうには退職給付資産及び債務の評価の場合ですとか収益認識についての例も合わせて記載させていただいております。

 16ページが当該事項に対する監査上の対応ということで、具体的に監査人の方がどういう監査上の対応をとったかということについて記載するということにされているわけでございます。以下、収益認識などについても同様でございます。

 それから17ページでございますけれども、財務諸表上どういうふうにもともとの開示情報が書かれているかということへの参照ということで、どの部分に会社側が開示をしているかということについても記載をするということがIAASBの基準の中では書かれているということになってございます。

 18ページは、これもご参考といたしまして、最初に導入されましたイギリスにおいて具体的にどういった事項がKAMとして書かれているかについて、1年目と2年目の例を掲げさせていただいたもので、書かれている内容は多岐にわたるわけですけれども、2年目の記載事項として多いものは、例えば左から3番目ののれんの減損ですとか、6番目の税務、それから7番目の収益、これは不正以外ということでございますが、収益認識における不正については左から2番目に書いてございます。それから8番目の引当金などが数としては多いということになってございます。

 1ページおめくりいただきまして、透明化につきましては、「会計監査の在り方に関する懇談会」の提言を頂戴いたしまして、日本経済団体連合会、日本監査役協会、日本証券アナリスト協会、日本公認会計士協会と私どもで意見交換を実施させていただきました。その議論の取りまとめの内容につきましては、今年6月に公表させていただいておりまして、原文につきましてはお手元に配らせていただいておりますので、ご参照いただければと存じます。議論の概要につきましては、ここのところに「期待される意義・効果」として書かせていただいておりますけれども、KAMに関する情報が示されることによりまして、監査報告書の情報価値を高めて財務諸表利用者の理解を深めるのではないか、あるいはKAMの記載が企業と財務諸表利用者の対話の充実を促すのではないか、KAMの記載が監査計画に組み込まれることが企業と監査人のコミュニケーションのさらなる充実、監査品質の向上につながるのではないかというご意見が寄せられた一方で、やはり実務上の課題といたしまして、KAMの選択、記載内容、財務諸表利用者にとって有用な情報となり得るのかといったようなご指摘や、監査人、それから企業で必要となる手続、KAMについて質問を受けた場合の説明責任は誰が負うのかということ、あるいはKAMの開示と企業による開示との関係、調整が必要となる場合に必要となる手続にどんなものがあるのか、それから上記手続によって追加的にどれくらい時間を要するのかといったことについて課題として挙げられたということでございます。

 我が国においては、冒頭、「会計監査の在り方に関する懇談会」で提言をいただきましたとおり、会計監査の透明性向上というものは重要な課題でございますので、これにつきましてこの部会でご検討いただくことにさせていただいたわけでございます。また、実務上の課題を抽出するために、公認会計士協会におきまして、企業の皆様と連携していただいてKAMを試行的に作成する取組みを今やっていただいているということで、後ほどご紹介をいただけると承知をしております。

 20ページに本日ご審議いただきたい事項を記載させていただいております。まず、「監査報告書の透明化」の意義・目的及び注意点ということで、監査報告書における情報提供を充実させていくことについてどのように評価いただけるかということ、それから現行の我が国の監査報告書、短文式のものについてどういうふうに考えていったらいいかということについてご審議いただければと存じます。また、ご紹介させていただきました諸外国における監査報告書の見直しにつきましても、お考えがあれば伺わせていただければと存じます。またその他、幅広く今日は議論をいただければというふうに存じます。

 以上、私からのご説明とさせていただきます。ありがとうございました。

○伊豫田部会長  
 どうもありがとうございました。それでは続きまして、日本公認会計士協会の住田委員より、KAMの作成に係る試行の実施状況についてご報告をお願いします。どうぞよろしくお願いします。

○住田委員  
 それでは、お手元の資料2を使いまして、KAMの試行の概要について簡単にご説明させていただきます。

 まず、スライド1の「試行の概要」ですが、今ご紹介いただいたように、KAMの導入に当たり実務上の課題を抽出するということを目的といたしまして、7つの監査法人を通じて合計26社の被監査会社に試行に参加いただいております。対象期は2016年12月期から2017年3月期の連結財務諸表の監査を対象としてKAMを試しに選定してもらうというようなやり方を実施しております。今回、実施期間は非常に限られておりまして、監査法人と監査法人を通じて会社にお願いをして、IAASBのKAMの目的とか概要をご理解いただいた上で試行に参加いただくということで、8月の中下旬から10月2日までの約1カ月間の期間で実施いただきました。また、対象期は、終了した事業年度の監査においてKAMを選定するならばどういう項目が該当するだろうかという試行をやっていただきました。適用している財務諸表の作成基準ですけれども、26社のうち、日本基準を採用している会社が17社、IFRSまたは米国基準を採用している会社が合計で9社というような内訳になっております。試行の結果については、会社用と監査チーム用それぞれに質問票を用意しまして、選択式の質問と、それから例えば困ったことがあった場合は、それがどういう状況でしたかというような記述式の項目を含めたスタイルで行いました。

 続いてスライド2の「質問の項目」ですが、会社向けの質問項目としては、今回の試行に当たってKAMの協議に要した時間、それから、今回非常に限られた期間でしたので、仮に制度導入された場合の会社側の増加時間を占うには情報としてちょっと足りないかもしれませんので、KAMの協議に要する時間としてどういう要因がありますかという質問も加えております。それからKAMの導入により想定される変化として、実際やってみて困難と感じた状況がありましたか、あればその内容、経営者、監査役等、監査人とのコミュニケーションへの影響をどう感じましたかとか、開示への影響の有無、株主との対話への貢献度合いですとか、あるいは監査役の監査報告書への影響についてどう考えますかという質問を並べています。また、「その他」として、適用対象、適用時期についてご自由に記載いただく質問票にしております。

 続いてスライド3の監査法人向け、監査法人となっておりますけれども、監査チーム向け質問項目です。各試行に参加してもらった監査チームが各自記入して協会に提出していただいております。一番のポイントはKAMの中身です。非常に限られた時間でしたので、全てのKAMの該当事項をしっかりワーディングまで詰めるということは必ずしもできないかもしれないという前提で実施しており、できる限りということでKAMを選定してもらいました。国際監査基準の要求事項に基づいてKAMの項目の内容や選定の理由、監査上の対応、財務諸表に参照が付せるかどうかということを特定してもらいました。それから監査チーム向けに、先ほどの会社向けの質問と同様にKAMの選定あるいはドラフト作成時に困難と感じた状況の有無、あった場合はその内容、それから、これは国際監査基準上では要求されていませんが、KAMとして選定した項目それぞれに対して、監査上の対応の結果あるいは監査人の見解、これは監査意見ではなく見解ですが、それらを書いてもよいということになっておりまして、それらを書いたほうがいいと思ったかどうかということも合わせて聞いております。

 それから会社とのコミュニケーションに及ぼす影響、それからKAMの協議に要する時間、これは試行に当たっての時間と、実際に制度化されたときにかかるであろう時間の推定といいますか、感想を聞いております。また「その他」で会社向けと同じく、適用対象、適用時期などについて自由記載してもらっています。

 多少提出時期がずれた部分もありますが、単純集計は現在終了しておりまして、KAMの記載内容についていろいろな観点から検討、分析を協会内でしている状況です。

 続いてスライドの4、5、6は、今回試行を実施するに当たって、協会で試行に参加していただく会社に監査チームを通じて説明をする必要があるだろうということで、KAMの趣旨等を説明したものです。これらは、試行のためにつくったというよりは、従前から、監査上の主要な事項はIAASBの大きな動きでしたので、その概要に関する説明スライドを協会のホームページに掲げていたものからの抜粋です。
スライドの4ですが、従来の監査報告書は定型的なものでありまして、定型的でない情報が記載されるのは非常に例外的でした。結果、定型的でない情報は注意を喚起する情報と位置づけられていました。右側が新しい監査報告書ですが、今までの定型的な記述のよいところはそのまま生かした上で、個々の会社の監査に特有の事項を常に記載するというスタイルに変更してはどうかということです。ですので、常に何か固有の情報を書くということが行われますと、必ずしも注意喚起をするという性質のものではないということにもなりますし、監査人がどこに注目して監査を実施したかという監査の透明性を高めるというところに重点が置かれているというふうに考えております。それから、このスライドのKAMの性質のところにありますけれども、意見を形成した上でということで、財務諸表の注記を代替するものでもありませんし、監査意見に付す除外事項を代替するものでもありませんし、継続企業の前提に関する重要な不確実性がある場合の従前の強調事項の代わりをするものでもありません。あるいは一つ一つのKAMについて個別の意見を述べるものでもありませんということを記載しております。この辺のKAMの性質を誤解されますと、試行に参加していただいた会社の方々も混乱を招くかと思いましたので、最初にご説明させていただきました。

 スライドの5、6はIAASBで行われた監査プロジェクトの目的、受益者、便益をまとめたものです。目的はあくまでも監査の透明性、監査プロセスの向上にありますということで、監査報告書のコミュニケーション価値を向上させる、それを通じて監査の品質に関する情報を利用者に提供することになります。また、期待される便益としては、監査報告の利用者の監査品質に対する認識にも影響を与える、理解を促進するという意味で使っておりますけれども、そういう効果もあるのではないか、それから、監査に関する情報を提供して監査に対する信頼が増すということは、結果、監査済財務諸表の信頼性も増すということが期待されますので、結果的に公共の利益にも貢献するのではないか、職業的懐疑心が監査人にとっても高められる効果があるのではないかということが想定されています。それから監査人と統治責任者、あるいは会社の経営者の方とリスクについて従前以上に充実したコミュニケーションが図られるのではないかということが期待されます。これをやりませんと、外に出ていくKAMの記載内容が表層的になってしまう可能性もありますので、このコミュニケーションの強化ということが期待されている、あるいはKAMを有意義なものにするための前提条件にもなると考えております。それから最後のところに書いておりますのは、監査人が監査報告書で書くKAMに対して、やはり経営者、監査役等も注意を払うことになり、結果、財務報告の品質向上にも寄与するのではないかというような効果も期待されているということです。

 このような概括的な趣旨説明を踏まえて試行に参加していただいたということですけれども、こういう効果についてどういうふうに思われましたかというような質問項目が入っておりますので、次回に結果をご報告させていただきたいと考えております。

 以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ただいま事務局の説明、それから日本公認会計士協会からのご報告をいただいたわけですが、これらを踏まえまして、我が国として、今後「監査報告書の透明化」に対してどのように臨むべきか、委員の皆様の忌憚のないご意見を頂戴できればと思います。本日1回目ということもございますので、ブレーンストーミング的にいろんな意見を頂戴できればと思います。挙手の上、ご自由にご発言いただけますでしょうか。今給黎委員、どうぞ。

○今給黎委員  
 日立製作所の今給黎でございます。ご説明ありがとうございます。本日は初回ということで、私ども企業の実務の立場から少し課題認識につきまして何点かコメントさせていただきたいと思います。

 会計監査全体の有効性を高めるために、企業と監査人の緊張感と透明性を高めて、いかにこれを維持するかということの仕組みづくり、基本的には企業と監査人の二重責任が大前提だと認識しておりますけれども、これが極めて重要な課題ということにつきましては、異論がないわけでございます。一方で、ただいまご紹介いただいたKAMという手法につきましては、新たなコストもかかるということで、コストと有用性、あるいはリスクと便益の観点でどう判断していくのかというようなことが重要であるかと思いますが、現時点では私どもとしては非常にネガティブに考えております。KAMについて、本日も海外のご説明が中心だったかと思いますが、やはり海外の制度の導入ありきというテクニック論の議論というのは望ましくないと思っておりますし、本当にこのKAMの手続が監査の透明性を高めることにつながるのかということで、目的の明確化と評価のフィードバック、プロセスの有効性を慎重に見極めることが必要ではないかと考えております。

 今回、新しい手続でございますので、懸念もございまして、新たなリスクとしてどのようなものが発生する可能性があるのか、例えば監査法人の新たな法的な責任が増えるのか、仮にKAMの記載内容に重大な齟齬や過失があった場合にはどういうことが起きるのか、監査委員会などとの関係もございます。また、監査の手続というのは非常に膨大な手続でございますので、その一部を記載することによってかえってそうした情報が市場に無用な混乱を誘発するようなリスクはないのか、また、記載内容に関する訴訟リスクは発生するのか、そういったことも懸念されるわけでございます。

 一方で、KAMの受益者は利用者ということでクローズアップされているわけでございますけれども、後でまたご説明あるかもしれないですけれども、利用者の方がこれをどういうふうに使って、これによって何が変わるのかというあたりをはっきりすべきではないかと思っております。KAMもそれなりに作業が発生するわけでございますので、監査情報の有用性とかフィードバックの方法について、例えばアナリストはこういったものを見て何かアナリストレポートを発行されるようなことを想定されているのかとか、あるいはKAMという新たな情報によって企業評価が変わるような可能性があるのかといったようなことについては、ぜひこの議論を詰めていく中で明確化していただければと思います。

 以上でございます。

○伊豫田部会長  
 どうもありがとうございました。井口委員、どうぞ。

○井口委員  
 井口でございます。私は利用者の立場から意見を言わせていただければと思っています。日本だけではなく、グローバルでも今スチュワードシップ活動は非常に重要なことになっておりまして、企業をしっかり中長期で見るということが大事になっております。その中で、企業報告に対する重要性というのは、これは日本だけではなく、グローバルにもすごく高まっており、適正性を担保する監査ということも非常に重要になっていると思います。ですから、説明力を高める「監査報告書の透明化」というのは、私は一人の投資家としても大賛成ですし、私が活動しているICGNというグローバルの機関投資家団体も賛成ということで、ぜひ前向きに進めていただければと思っています。

 あと、時期に関しても大変なこともあるかもしれませんが、既に先ほど事務局からご説明ありましたように、グローバルで導入されている中で日本だけが、ということもありますので、これは日本の投資家だけではなくてグローバルな投資家もそうだと思いますが、ある程度早期に導入していただければと思っております。

 事務局からご質問のあった監査報告書(短文式)に対する評価というところですが、これはもう言い尽くされたことかもしれませんが、短文式というのは監査人のご意見というのが載っているということで、一目で見れば明確ということはありますが、ただ、適正か不適正かの間のご意見とか見解がないということで、例えば実際起こっていることだと思いますが、投資家はのれんの減損で突然驚くということがあります。また、監査人のご意見に関しても、周りの説明があればもう少し意見に対して納得性が湧いてくるということもあると思います。

 もう1つつけ加えると、何かあったとき、我々投資家は監査報告書のせいにはできないわけでして、結局、最後はそれを踏まえて投資家が全て判断して、受益者の人にご説明することになります。私の場合は年金基金の方にご説明するということになっております。ですから、そういう意味でいうと、意見だけじゃなくていろんなその周りの分析とか出していただけると、意見に至る過程ですね、それは非常に、特に企業をしっかり見ようとする機関投資家にとってはありがたいことかと思います。

 今、利用者はどういうふうに使うんだというご質問がありましたので、お答えします。3つほど大きくあると思っています。1つが、リスクをよく理解できるということ、これは今ほど申し上げましたように、最近、会計基準、のれんもありますが、あと収益認識基準もかなり見積りというのが入ってまいりますので、そういうところに関してしっかり投資家として確信度をもって知りたいというのがあります。それは意見だけじゃなくて、やっぱりその周りの説明やいろんな分析結果があればよくわかるということかと思います。

 2点目は、のれんとかですと、経営者の方の見積りが入ってくるということですので、それを投資家と別の観点から監査人の方が見ていただいてチェックしていただけるというのは1つの重要な参考意見になってくるのではないかというふうに思っています。

 最後3点目は、外部監査人のクオリティーチェックになると思っています。私は議決権行使の責任者でもありますが、外部監査人の交代のときの議案をどういうふうに判断していいのか難しいというのが事実です。本当でしたら、これはここでは関係ないですが、外部監査人の解任とか新任の時だけじゃなくて毎年議案に上げていただけると一番ありがたいと思います。外部監査人のクオリティーがこういう報告書を読めばわかるようになってくるのではないかと思います。

 最後ですが、外部監査人のクオリティーチェックのところで言いますと、最近、企業の会計の不正というか、盲点を突いて売りを仕掛けるヘッジファンドがいました。そういうときに我々が何をしたかというと、外部監査人がしっかり見ていらっしゃるのかということをチェックして、その中で売り、あるいは保有継続を決めるというようなことをやりました。そういう意味から言いますと、外部監査人のクオリティーチェックというのは、こういう投資家も出てくると思いますので、我々のような長期で保有したいと思っている投資家にとっては非常に重要な部分になってくるのではないかと思います。

 以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。弥永委員、どうぞ。

○弥永委員  
 監査に非常に興味を持っている、会社法の研究者の立場という観点から今日はご発言させていただきたいと思っております。もちろん、私が会社法の研究者を代表できるというわけではありませんが。
 
 ただいま、井口委員が指摘されたように、たしかに、KAMには投資家にとって有用である、あるいは報告書の情報価値を高めるという面があると思います。けれども、会社法的に申せば、やはり、在り方懇談会が指摘されているように、コーポレート・ガバナンスの観点からの意義は結構大きいのではないか、適切なKAMの記載がなされれば大きいと考えております。監査人と監査役等とのコミュニケーションは既にかなり充実してきているとは思いますけれども、それをさらに促進するという効果があると思います。また、経営者や株主も、これまでの監査報告書ですと読んでもしようがないなと思うところですけれども、KAMが記載されるということになると、監査報告書の内容に関心をもっと持つという可能性があるのではないかと思います。

 また、三、四十年前には、商法の研究者の間では、現在の監査報告書のように監査の方法として一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠したという記載、これでは不十分だ、もっと具体的に監査の方法を書くべきだということがかなり強く言われておりました。このようなKAMは、このような数十年前の指摘と申しますか問題提起に対してより洗練された形で解決を与えるものと言えるのかもしれないと感じております。

 さらに、井口委員がご指摘なさったところと重なると思いますけれども、現在、監査役等には、監査人のパフォーマンス等について評価をするということが一般的に求められていると思われるのですけれども、現在の監査報告書には、監査人の能力などを判断する手がかりは全く含まれていないと思うのです。けれども、KAMの記載は、監査人が適切に問題を把握できているのかを反映するので、監査人の能力を監査役等が評価する大きな手がかりになるかもしれません。このような意味においても、やはりコーポレート・ガバナンスの観点からかなり意味があり得るかもしれないと考えております。もっとも、現在の開示スケジュールや会社のリソースを考えますと、現在の段階で、会社法でも要求するということにいたしますと、KAMの記載がボイラープレート化する、あるいは、表面的なものになるというリスクがありえ、KAM導入の意義が失われてしまうおそれもあるように思われます。これから、この部会で、委員の方々あるいは参考人の方々のお話を伺ってぜひ勉強していきたいと思っているのですけれども、内実のあるKAM記載のプラクティスが形成されるようにするためには、当面の間は、金商法上、場合によっては大規模な会社から導入してグッドプラクティスを形成していただいて、会社法で要求するというのは中期的な目標だと最初から設定しておくことのほうが、ひょっとしたら現実的なのではないかと現時点では感じております。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。紙谷委員、どうぞ。

○紙谷委員  
 ありがとうございます。私は監査人という立場から発言させていただければと思います。
 自戒の念を持って言えば、これまで監査法人というのは守秘義務が身にしみているところがありまして、いろんな意味で説明が足りない部分があったのではないかと思っております。今年の3月、監査法人のガバナンス・コードが公表され、そこでは監査事務所としての説明責任に関連して透明性報告書の話が含まれています。これを踏まえ、現在、大手監査法人を中心に監査品質に関する報告書を公表しており、事務所レベルの説明が一歩踏み出した段階かと思っております。これに対して、今回のKAMは監査業務における説明ということになろうかと思っております。事務所レベルの説明に加えたところで、監査業務レベルでの説明を監査人の義務としてどのように果たしていくのかという意味において、当審議会におきましてKAMの導入に向けた議論が行われるということについて賛同しているところでございます。

 1点、弥永委員のご指摘とも重複するところですが、今回議論を進める中で、まずはKAMを導入するかどうかという議論であるとは思いますが、仮にKAMを導入する場合、どのような会社に係る監査業務を対象にするのか、ISA701ですと上場企業が対象とされていますが、我が国では金商法と会社法があり、また金商法でも上場している会社もあれば非上場の会社もあるといった状況でどのような会社を対象にするのか、それも連結だけなのか単体なのか、そういった会社の会社法をどうするのかが課題になると思います。弥永委員からご指摘ありましたとおり、おそらく会社法の監査報告書を発行する時点までにKAMの議論を実務的に詰めるというのは、特に初年度は非常に難易度が高いかなと思います。かなりいろんな議論が入ってきますので。こなれた頃であればそういうタイムラインでも間に合ってくるのかもしれないのですけれども、仮にKAMを導入するとした場合、当初の期間はかなり難しいのかなと思います。そういった実務上の困難さも含めたところで、対象をどうするかについてこの審議会で慎重にご議論いただければと思っております。

 私からは以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。大瀧委員、どうぞ。

○大瀧委員  
 SMBC日興証券の大瀧でございます。私も利用者の立場からコメントを申し上げます。井口委員からも利用者のメリットをコメントいただいておりますが、私からも若干補足という意味でコメントいたします。

 現在、財務諸表利用者は、会計監査に関して非常に高い関心を持っておりまして、本日から議論が始まりますKAMに関しても、大いなる期待を持っているところでございます。そのような高い関心を持った背景というものは、1つは、従来から何か会計不祥事の問題があると会計監査には目が向くわけですけれども、もう1つ、やはりコーポレート・ガバナンスとかスチュワードシップですとか、利用者が会社のガバナンスをきちんとチェックしていこうと。ESG投資等もありますけれども、やはりガバナンスも業績だけではなくてしっかり見ていきましょうという機運が高まっていることが背景にあると思います。私は、そういったガバナンスの観点からも、通年を通じて財務諸表利用者がガバナンス、特に守りのガバナンスと言われますけれども、会計監査に関心を持って情報開示のもとに企業と積極的に対話していく必要があるのではないかと考えております。

 この対話に関しましては、企業、会計監査人、そして我々どもというのは、それぞれ規範となるコードが制定されたわけですけれども、その中で共通して求められているもの、それはコミュニケーションを深めていきましょうということかと思います。その会計監査に関するコミュニケーションを考えたときに、この三者の中心にあるのが監査報告書ということになります。コミュニケーションしましょうといっても、やはりその議論のスタートとなるものが監査報告書に記載されることは、コミュニケーションの大きな前進になるのではないかと考えております。

 KAMに関しては、監査上の主要な事項を記載されるということで、会計監査のプロフェッショナルである会計監査人がどこに留意したか、そのこと自体が財務諸表利用者にとって有用な情報であると考えております。欧州の事例を見ますと、KAMの記載内容についてはかなり詳しく書いているところもあれば、ある程度書かれているところもあるということでばらつきがあるかと思いますけれども、事例が出てきているということで、今後の記載内容の具体的な検討に大いに役立つのではないかと思っております。

 もう1つ、KAMの使い方ということで申し上げますと、比較可能性の観点から有用性があると思っています。例えば時系列的にとっていくこと、今回からこの項目がKAMとして上がってきたみたいなものとか、あと同業他社比較というのも非常に大きな示唆が得られると思っております。

 この比較可能性に関してですが、やはり適用対象となる範囲が今後議論されていくことになるかと思っています。できれば法制度として、やはり任意ですとどうしてもする会社、しない会社とばらつきが出てしまうので、ある程度範囲が決まったのであれば、そこは法制度として適用していくような方向でお願いしたいと思っております。

 それと、先ほど来から少し話が出ていますけれども、日本固有の話として、会社法の監査報告書と金商法の監査報告書というものがあるかと思います。これらについてはこれから議論がされていくかと思いますけれども、利用者としましては、会社法も含めて前広に議論をお願いしたいところでございます。

 また、適用時期につきましても、井口委員もおっしゃっていましたけれども、欧米で既に開始され、米国でも議論が進んでおりますので、国際比較の観点からも、できれば平仄を合わせるような方向性で議論をお願いしたいと考えております。

 あと、現状の監査報告書に関する意見ですが、私は、今までの監査報告書というのも十分機能を果たしていると考えていますし、KAMの情報はそれに新しい情報を付加するということになりますので、さらなる有用性が高まると考えております。

 もう1つ私が考えるのは、この「監査報告書の透明化」というのは、会計基準の変遷と密接に関連しているのではないかと考えております。かつて単体決算で税務と結びついた、ある意味で固い財務数値というのが公表されていたわけですけれども、連結となって税効果、減損と将来キャッシュフローの見積りというような見積り要素が入ってきました。その中で、監査実務等も当然に変わってきたと思われるのですが、監査報告書は従来から同じスタイルでやってきました。そういう将来見積りのようなものが業績に与えるインパクトが大きくなってきましたので、やはり我々としましても、適正意見が形成される過程で何に注目して、特に力を入れて監査した項目を開示していただくというのは非常に有意義ではないかと思っております。

 長くなりましたけれども、最後にもう一度お伝えしたいのは、財務諸表利用者はKAMに大きな期待を寄せておりますので、ぜひ前向きな議論でお願いできればと思います。

 以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。中西委員、どうぞ。

○中西委員  
 弁護士の中西でございます。今日は弁護士であるという立場で、企業の方のサポートなどをよくさせていただいておりますけれども、そのほかに社外役員を引き受けるという立場もございますし、また個人でも株を持っているということもございまして、いろんな視点からお話をさせていただければと思います。

 まず、株主という立場から見ますと、個人の方ともいっぱい知り合いがおるのですが、お土産優待とか短期的なネット投資家ばかりではなくて、やはり株を持って長期的な視点で投資をされている方もたくさんいらっしゃいます。ただ、残念ながらこうした方々が有価証券報告書についた監査報告書まで読むかというと、まあまず読まない、読んでも同じことしか書いてないからと。たまに何か事件があると、このとき読んでみる、そういった具合ですので、本当に監査報告書はどこまで機能しているかというと、個人の方との関係ではあまり機能していないのではないかと見えるわけです。そうしますと、投資判断に際して、やはり長期的に株を持っていいかどうか、急に粉飾決算で株価が大きく下がってしまったら困るというときに、残念ながら監査報告書は役に立っていないのではないかということです。こうした個人の株主が安定して長期間持つというためにも、やはり会計情報ということが非常に重要になります。ただそのときに、読んでもわかりにくい専門用語ばかりでは困るので、KAMの充実というところもありますけれども、やはり個人の長期投資家などにもわかりやすいような内容ができればと思います。

 ただ一方、今給黎委員がおっしゃったように、私は社外役員の立場としては急に責任がと言われても困るという微妙な立場です。こうした責任につきましても、やった責任だけなく、やらなかった責任、つまり不作為による責任もあり得ると思います。ですので、こうした責任がどんなときに発生するのか、やったときに何が発生するのか、あるいはやらなかったときにどんな責任が発生するのか、責任が発生しないためにどうすればいいのか、そういったところまでも含めて今回の議論でいろいろ積み重ねることで、大きな貯蓄から投資への流れといったことも踏まえて、よい流れの方向に今回の議論に参加できればと思います。よろしくお願いします。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。小畑委員、お願いします。

○小畑委員  
 ありがとうございます。4点ほど申し上げさせていただければと思います。

 まず1つ目は、皆さんからKAMに対するご期待等のご表明がいろいろとありましたけれども、ここにいらっしゃる方々はよくご存じだと思いますが、KAMは、あくまでも監査プロセスにおいて監査人が、何が重要な事項で、それに対してどう対処したのかという監査のプロセスを説明するお話でありまして、監査意見を書くという話であるとか、あるいは問題事象を発掘するというプロセスではなく、通常の監査プロセスをどのように行ったかを対外的に説明するものであるということを前提としてご議論いただければと思っております。

 2点目でございます。米国の事例のご紹介が金融庁からございましたけれども、2007年からプロジェクトが始まって10年かかっている。2011年にコンセプトペーパーが出されてからですら、6年かかっているということで、これは議論が相当錯綜したのではないかと思っておりまして、日本においてKAMを採用するかどうかについても、議論に相当時間のかかる話ではないのかと感じておるところでございます。事実、本日ご説明のありました資料の19ページに意見交換会の概要がご紹介されておりますけれども、それをご覧いただきましても、KAMのメリットに関してはこういうものがあるのではないかという一方、なかなかそう実感がないというお話もあって、意見がいろいろと分かれており、必ずしも意見が一致してみんなやりましょうということで、この取りまとめがされたわけではないということもありますので、改めてこの監査部会において、よくご検討いただければと思っております。

 それから3点目でございますけれども、先ほど申し上げましたように、KAMが、通常行っている監査プロセスを対外的に説明するものであるということからすれば、今回の監査部会におけるご議論が、直接的に監査基準とか不正リスク対応基準等の見直しに結びつくものではないということを確認したいと思っております。これは「会計監査の在り方に関する懇談会」でも、これら基準の実施を徹底するということが指摘されているにとどまっていて、監査基準自体に問題があるという指摘はなかったということでありまして、監査基準にしたがい、しっかりとリスクアプローチに基づいて、どこが重点事項なのかというところを踏まえながら監査計画を立てている企業であれば、基本的には監査プロセスに何ら影響はないと思っておるところでございます。したがいまして、監査部会における議論は、通常、行っている監査プロセスを説明するという観点から、監査報告書に何を書くかに尽きるのではないかと感じております。

 最後に、先ほど来、会社法の関係のお話もございましたけれども、あくまでもこの場は企業会計審議会の監査部会でございますので、会社法のご議論、会社法に対する影響については、この部会における議論の対象外であるということを確認させていただきたいと思っております。併せて、今回は監査というお話でございますので、財務諸表における開示項目の増加とかあるいは縮小とか、そういった開示項目に直接議論が及ぶものでもないと考えておりますので、その辺も踏まえて、今後のご議論の対象もきっちり絞り込んでいただければと思っております。

 以上でございます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。岡田委員、よろしくお願いします。

○岡田委員  
 ありがとうございます。三井物産の監査役をやっています岡田と申します。このKAMの議論をするに当たっての大前提として、この制度が本当に目的を達するためには、利用者、作成者、監査人と、加えて監査役等も、これがメリットあるいは目的とするところをよくすり合わせた上で、本当に有用なものになるかどうか、こういう議論を尽くしていただくことが私としては望んでおるところでございます。

 そこで、私なりに課題認識を申し上げますと、まずKAM自体は、リスク情報など監査人が特に注意を払った事項を監査報告書に記載するわけですが、そういう事項がIAASBの規定によれば、財務諸表に記載すべき注記を代替するものではなく、そもそも注記として開示されている、あるいは注記でなくてもよいですが、開示されているということが大前提であります。例外もあるかもしれませんけれども。その場合に、日本の今の開示がそれに耐えられる、あるいは十分なものであるかということは一度整理する必要があるのではないかと思っております。私どもの会社は今IFRSをベースに開示しております。IFRSベースの注記等は、ある意味ルールベースではなくプリンシプルベースですので、かなり企業の裁量によって開示をしており、KAMで議論されるべきものは既に開示されているという前提でよいと思います。それがもし足りなければさらに開示しなければなりませんが。そういう意味では、KAMは、どこに注記されているかという参照事項で済むという場合も考えられるのではないかと考えております。ただ一方で、日本基準の開示を見ますと、比較的ボイラープレート的なところがあるのではないかと感じておりますので、そういうものについてのKAMの対応というのは果たしてどうなるのかと思います。これについては今、会計士協会でまとめられている試行の結果を見てみたいと思っております。

 先ほどは、IFRSで開示していれば参照のみでよいのではないかと申し上げましたが、結果はそうであっても、開示に至る過程で執行側、監査人、監査役等が開示内容について十分議論を尽くした結果がKAMとなることが一番大切なところではないかと思います。

 したがって、その導入に当たっては、会計監査人、経営者、監査役等の三者の緊密な連携が不可欠だと思っております。

 関係者の議論を経てもなお、企業側の開示がKAMの内容と合わず、執行側と監査人の意見が対立する場合には、執行側に監査人と監査役等が共同して開示を促すことになると思います。それでも開示されない場合に、監査人がKAMに何らかの形で記載することが出来るようにするかどうか、検討が必要ではないでしょうか。

 ところで多少論点が変わりますが、先ほど会社法ではなくて金商法のみで対応するのがとりあえずはよいのではないかというご意見がございましたが、私もこれに賛成であります。ただその場合、当該期のKAMは有価証券報告書に記載されるということになります。今ほとんどの会社は総会の後に有価証券報告書を提出している現状ですが、総会におけるKAMに関する議論はどうなるのかと懸念します。望ましいのは総会前に有価証券報告書を提出することですが、現行の規定ではそうでなくてもよいわけで、そういうところの考え方も議論していただきたいと思います。これは総会でのKAMに関する質問対応にとどまらず、株主・投資家にとってはKAMにどういう記載があるのか、議決権を行使する前に知りたいという要請が出てくる可能性もあると思います。このあたりの具体的な対応、考え方について議論が必要ではないかと思います。

 私からは以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。初川委員、どうぞ。

○初川委員  
 冒頭ご説明いただきましたように、主要な諸外国の動向を見ておりましても、このKAMに関する日本における議論は、大筋これを制度として導入するという方向で進んでいくのではないかというふうに思っております。しかしながら、今回の議論に当たりましては、まずは原点に立ち返って、この「監査報告書の透明化」を制度化することの目的は何か、ステークホルダーにどのようなニーズがあるのか、誰がどういう便益を受けられるのか。もっと言いますと、最終的に監査の透明化・信頼性の向上に結びつくのか、そして、財務報告の信頼性の確保という目的に結びつくのか、そこの議論をしっかりとやっていく必要があるのではないかと思っております。

 私は、監査の立場からではありますけれども、このKAMの議論に期待しているところがあります。監査人と経営者・監査役のコミュニケーションは、最近相当深化してきていると感じておりますけれども、このKAMの議論、協議を通じて、より一層そのコミュニケーションが推進される。特に監査リスクの識別と対応に関する議論が更に深化していく、そして、的を外さない実効性のある監査の実施に繋がっていくことが非常に重要だと思います。そういう流れに、私は大きな期待を持っております。

 一方で、KAMの制度化に当たって懸念される事項も多々あります。先ほど他の委員の方からもご発言がありましたが、まず頭に浮かぶのは、諸外国の事例を踏襲するかたちで、形式的な導入になってしまうのではないかという懸念です。そういう意味でも、まず、誰にどのようなニーズ・便益があるのかということをしっかり議論すべきだということを先ほど申し上げたわけです。個別領域に関しても、例えば何をKAMとして選定するのか、どのような記載内容にするのか。これらについては、諸外国の例にもありますように、一定のガイドラインを策定した上で、基本的には監査人の判断で進めていくことになると思います。従って、このKAMの記載内容は、基本的には監査に関する追加情報の提供ということで考えていくことになるのかと思いますが、先ほども少し話が出ていましたように、このKAMの記載内容そのものに関する責任の在り方については、一定の議論をしておく必要があると思います。中西委員からもご発言がありましたように、KAMとして記載した内容についての責任ということもありますが、逆に、監査上の重要事項があるにもかかわらずKAMとして記載しなかった場合はどのような責任が生じるのかといった点についても議論をしておく必要があろうかと思います。

 それから、監査人がKAMを記載する一連のプロセスにおいて、経営者・監査役はどのように関与していくべきなのか、または関与すべきでないのか。こういったことも議論する必要があろうかと思います。

 それからもう1点、KAMで記載される事項というのは監査上の重要事項ですから、財務諸表の注記においても、財務・会計上の重要事項として記載されているというケースが多いという状況を想定するわけですが、場合によってはKAMの中で説明される事項がオリジナル・インフォメーションといいますか、未公開の情報を開示することになるケースも想定されます。そういうケースがあるとするならば、監査人の守秘義務との関係がどうなるのかということも整理しておく必要があると思います。

 このような事項も含めまして、冒頭申し上げましたように、制度導入の目的、メリット、懸念事項等をしっかりと議論していく必要があろうかと思います。

 以上です。

○伊豫田部会長  
 どうもありがとうございました。林田委員、どうぞ。

○林田委員  
 ありがとうございます。従来の短文式の監査報告、4ページに文例が出ていますけれども、適正、不適正の判断を明確に示しているという点で果たしてきた役割は大きいのかなと思いますが、これを改めて読みますと、ややそっけないと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、ごく簡単にしか出ていないと。ですので、監査法人が何に着目して監査をしたのかという情報を新たに公にして監査の透明性を高めるということ、これは監査報告書の情報価値をやはり高めるということになりますでしょうし、会計監査について投資家や株主など利用者が理解を深める意義というのもあるのではなかろうかと思います。企業と株主らが対話をするというその1つの契機にもなるのではないかと、前向きに捉えたいなと思っています。

 その場合、やはりどなたかもおっしゃいましたけれども、この出てくるものが何か紋切り型、定型句あるいは専門用語の羅列のようなものになってしまっては、せっかくの透明化の意義が薄れてしまうと思いますので、そこは工夫が必要かなと。この資料で15ページあたりから国際監査基準におけるKAMの文例が出ていますが、これは翻訳なので大目に見なければならないとは思いますけれども、日本語としてちょっとこなれていない感じがあると。このあたりはもう少しわかりやすくなるといいなというふうに思っております。

 以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。八田委員、どうぞ。

○八田委員  
 さきほど初川委員もおっしゃっていたんですけれども、今日のこれまでの発言を聞いていますと、利用者の立場という言い方をされていますが、利用者といってもこれは一般投資家ではなくて、いわゆるプロの関係者の方々ですが、そうした方たちから見て当然に従来より多くの情報が発せられることに対してノーと言う人は多分いないと思うんですね、この情報化社会においては至極当然です。問題は、まず今回の監査報告書の長文化が誰のための議論なのかということ。それから、それをいつの時点で開示すべきかという問題。さらにはどのようにそれを開示していくのか。そして当然ながら、中身としてどのような内容のものを何のために開示するのかといった、いわゆる基本的な視点でこの議論を考えていかなくてはならないと思っています。世界的な動向として、特に住田委員などが責任を持って活動されているIAASBの流れは日本の監査基準委員会報告の領域において、もはや99%影響を受けていますから、これに抗うことはできないと思っています。ただ、本当にそのまま無条件で受け入れていいかとなると、私は非常に懐疑的であります。

 幾つかの点で考えなくてはならないことがあります。まず1つは、日本の金商法、旧来の証券取引法上の監査報告書は、法律上は監査証明といっているんですね。今でも監査証明府令といって、その中に厳格に監査報告書の記載内容が示されているわけです。この考え方は、先ほど資料の中の5ページでもご説明いただいて、昭和31年の監査基準、ここで監査報告って一体何なのかということのその真意が示されていて、この考え方はさらさら現在も変わっていないと思います。どういうことかというと、ここに書いてありますように、2行目ですけれども、監査人が自己の意見に関する責任を正式に認める手段なのだと、ここに全ての責任が盛られていますよということなんですね。したがって、そこには余分なことは書いてはならず、また、いろいろ書くとかえって雑音になるということです。余分な情報はほかの伝達チャネルを通じてすればいいということになると思います。したがって、どなたかおっしゃっていましたけれども、今回のこれが制度化されるときでも、監査基準は修正にならないでしょうと。とんでもないと思います。監査基準の中には報告基準があるわけであって、そしてそれを踏まえて府令があって、そして監査基準委員会報告書があるわけですから、ここの中身を変えていくわけですから、いわゆるパラダイムの転換が起きるわけですから、概念的な議論が変わるわけですから、当然にここのところは全面的に見直さなくてはならないし、また、監査関係者に対しても正しい理解を求めていく必要があると思っています。では、なぜこの監査報告書が議論になるのかというと、監査人と利用者、まあこれは一般投資家でいいですが、彼らとの唯一の接点となる手段は監査報告書しかないということです。しかし、この監査報告書が非常に無味乾燥であって、紋切り型であって、定型句であって、ほとんど情報価値がないのではないかといった批判は従来からもなされてきています。加えて、監査理論的にも我が国の監査制度の改革の中においても、どうすればいいのかと何度も何度も議論に出てきています。そして1991年、25年ぶりに大改正されたときの監査基準の中では、ご記憶がある方はあると思いますが、いわゆる特記事項という形で、特に監査人が留意すべき事項に関してはこれを読者に知らしめるべきだということで、利害関係者の判断を誤らしめないために新設されたのですが、実はこれが大失敗に終わるんですね。先ほどどなたかご紹介あったように、これに何を盛ったらいいかということの監査人サイドの意見統一ができていなかった。そして人によっては奇をてらって、人様より目立つような監査報告書を書きたいということで、あれもこれもそれも書きたくなる。あるいは逆に企業から見るならばそれは書いてもらっては困るということで、この落差があったこともあり、こうした実務は10年後に廃止になり、それに代えて、今度は追記情報の記載になったということです。したがって、百歩譲って今ある追記情報の中で解決できないのかどうか、これも1つ考える道があるのかなという気がしているわけです。さっき申し上げたように、日本の金商法上の監査報告書は、短く記載することこそがベストなんだと、こういう理念で来ているわけですから、これを覆すだけの本当の理由があるのかどうか。つまり、KAMというような情報の発信を私は否定するのではなくて、違った形で発信すること、例えばウェブサイトにおいてアクセスできるような環境、あるいはプロの投資家あるいは仲介者がそれを利用して一般大衆投資家にそれを用意する、これは十分にあっていいと思います。でも、一般の方々、それも金商法は一般大衆投資家保護というのが基本理念ですから、数の上では比率が低いかもしれないし、読んでいないかもしれないけれども、概念的には、あるいは理念的にもこれは一般大衆投資家を守らなくてはならないわけですから、そのためには投資家は、この財務諸表は正しいんですか、正しくないんですか、この1点さえ明確にされれば、それで十分なのではないかと思っています。まさにシンプル・イズ・ザ・ベストで、この短文式監査報告書は半世紀以上の歴史を持っていますが、これを覆すだけの積極的な理由はないのではないかと思っています。ただ、そうではなくて、これは長文化ではなくて、プラスアルファの情報が増えるだけなんだということだと、さっき申し上げたように、今ある追記情報を少しアレンジする形で、導入することもあるのかなと思います。

 ただ問題は、どうも具体的な監査の基準がIAASBのほうに大きく偏ってきているので、世界の動向と背反するんじゃないかとの危惧もあるかもしれません。でもこれも誤った理解でありまして、実は最近の簡単な例を申し上げると、日本の監査報告書の中には、旧来から監査報告書の署名欄に、かつては個人の名前、今は監査法人のパートナーの業務執行社員の名前、個人名が記載されています。これは私が知る限り日本だけだと思います、これまでは。これが書いてあるがゆえにかえってこの担当監査人と企業との間に癒着が生じたりなれ合いが生ずるんじゃないかという議論があって、私などはかつてエンロン事件が起きたときには外すべきじゃないかという議論をしたこともあったのですが、今は全く逆になりまして、ちゃんと担当した人の責任を明らかにしろということで、ISA700で、正式に監査報告書には個人名まで書けという、まさに日本流になってきたわけです。したがって、日本の制度のどこが悪いのかということです。私は国粋主義者でも何でもないですが、我が国の場合、やはりそれなりの議論をしてこうやって培って醸成してきている制度があるわけですから、この中でうまく落とし込むような方法を考えていただきたいと思っています。

 問題は開示の時期です。いつの段階でこのKAMの情報を発信するか。私は、会社法は関係ないという議論がありますが、そうではなくて、監査役にこれを伝えて、監査役のほうで会計監査人の監査の結果相当性を判断するわけです。その中に織り込んでもらって、そしてでき得れば、監査役の報告書の中でそれを開示することのほうが日本的には合っているのではないかという気がするわけです。したがって、ちょっとちゃぶ台をひっくり返すかもしれませんが、金商法ではなくて、私はこの議論は会社法の中に大きく取り入れなくてはならないと考えています。そのためには、監査役制度がそれを受け入れるだけの担当者としての監査リテラシーを持った集団であるのかどうか、あるいはそれをちゃんと覚悟を持って吟味できるかどうか、あるいは監査人との円滑なコミュニケーション、すなわち監査人と丁々発止の議論ができるような体制が整っているのか。不思議なことに、会計監査人の責任ばかり問われていますけれども、監査役の責任が問われることはあまりない。もしもこれが導入されたら、私は監査役の責任は少なくとも会計監査人と同等以上の責任を負わなくてはならないわけで、監査役もこういう覚悟を持ってこの制度を導入するならば、私は大賛成です。

 以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。永田委員、どうぞ。

○永田委員  
 私は監査役協会の永田ですけれども、皆さんいろいろ議論が出されていまして、私からは、監査役等の立場から見てどう考えるか、これについて少しお話したいと思います。

 いろんな議論が出ているんですが、こういったKAMの導入というのがコーポレート・ガバナンスの充実にとって意味がある、これは私どもも認めるところでありまして、ただ、その中で導入したらどういうことが起こるかといいますと、おそらく監査役等の負担は増えるだろうと思います。負担が増えることについてノーと言うつもりも全くないのですが、やはり増えるからにはそれなりに得るもの、それは監査役等に返ってくるという意味ではなくて、日本のコーポレート・ガバナンスにおいて意味のあるものにしていただきたいと思います。そう考えていきますと、1つは、これは今までもお話が出ていますけれども、海外の制度をそのまま入れるのはいかがなものかと。やはり欧州と日本では制度が違います。お話の出ている金商法と会社法という問題もありますし、それだけではなくて株主総会等で誰が説明するのか、説明責任は誰が負うのか、そういったことも出てきます。そういった中で、先ほど八田委員からも、監査役等の責任についてお話がありましたが、監査役等の責任が増えてはいけないということを言うつもりはありませんが、一体どういう責任が出てくるのか、責任を果すためにはどういう行動をしなければいけないのか、この辺を明確にする必要があります。いざ導入しても、関係者それぞれの思惑や考えが違うのでは、1つの方向には進まず、結局何のために導入したかわからないということにもなりかねません。そういった意味では、監査役等だけではないのですが、関係者の役割を明確にして、その中でそれぞれ自覚を持って行っていくという体制をしっかり作ることがぜひお願いしたい点です。

 私からは以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、ご意見いかがでしょうか。町田委員、どうぞ。

○町田委員  
 ありがとうございます。本日、これまでの委員の皆さんのお話をずっと伺っていて、議論はKAMの問題に集中していたかと思います。基本的に、私も学生のころから、短文式の監査報告書の意義ということを勉強してきました。監査報告書でたった一文だけの監査意見があることがいいのか悪いのかという点については、20世紀から、学術的にも制度的にも、もうずっと長い間にわたる議論があったことも承知しています。ただ、その議論は、やはり今日、もはやパラダイム転換したんだろうなと思っています。

 それはどういうことかというと、今回、国際監査基準もアメリカのPCAOB基準も、世界的に挙って監査報告書を全面的に改訂する方向にあるわけですが、もしも従来の短文式の、監査意見が一文だけ述べられる監査報告書を改善しようという議論だけだったら、ここまでの動きになっていなかったと思うのです。海外でこんなふうに、一気に監査報告書を変えようという議論が起きたのは、基本的には、金融危機があったからなんだと思うんですね。日本でも影響はなかったとは言いませんが、直接的に何か大きな、例えば取り付け騒ぎが起きたとかそういうことはなかったのに対して、イギリスやアメリカでは実際に、取り付け騒ぎやリーマンブラザーズのような大規模金融機関の破綻が生じて、大きな社会問題になったということがあった。その中で監査人は何をやっていたんだ、適正意見を出していたけれどもそれだけで十分に役割を果たしたといえるのか、適正意見といってもそこにはピンからキリまで大きな幅があるのではないか、そうだとしたらそのことを何も事前に言わないというのでは監査人は手抜きなんじゃないか、そういった厳しい批判に晒されたわけです。

 先ほどご発言がありましたけれども、KAMの記載内容を通じて外部監査のクオリティーを評価したいという観点もたしかにあるのかもしれません。しかしながら、それよりも、会社に何かあったときに、いきなりそれがどんと出てくるのではなくて、その前の段階からきちんと、会社側はもちろんのこと、ガバナンスに責任を有する人、つまり日本でいう監査役等や、それこそ財務諸表利用者に対して、十分なコミュニケーションをとってほしいという要求があるのだと思います。在り方懇の座長であった脇田良一先生などは、KAMのことを「インフォームド・コンセント」だという言い方をされていますけれども、そういう趣旨が強くあったんだろうなと思うんですね。まずは、その趣旨について、確認しておきたいと思いました。

 では、一体どうするんだということですが、先ほど、これも、じっくり時間をかけて議論をすべきというご意見がありましたけれども、アメリカも確定基準ができて、国際監査基準に至っては昨年の12月から適用するとされていて、各国が対応している中で、日本は、主要国の中で一番最後のランナーとして議論を始めるわけです。そのときに、議論は尽くさなくてはならないにしても、各国での議論を踏まえて検討できるメリットを活かして、一定のスピードをもって判断していかなければいけないんだろうなと思います。

 ただ、監査報告書の問題というのは、ほかの監査手続の議論と違って、先ほど八田先生が言われたように、日本独自の路線をいくということはできる領域なのです。報告又は監査証明の問題というのは、何より各国の法規が優先しますので。ですから、皆で合意するのであれば、日本はやらない、KAMの議論には与しない、従来通りの監査意見を一文書く報告書でいくんだ、ということで、一種の「鎖国化」を図るということもあってもいいのかもしれません。もちろん、それは議論とあり得るというだけであって、私自身の主張は、先ほど述べたように、監査報告のパラダイム転換が起きているのであるから、積極的にこれに取り組んだほうがいい、という立場です。

 さて、そのときに、先ほどから、事務局からのご説明も、皆さんのご発言も、ほとんどKAMのことに集中していたんですが、今般の監査報告の改革の議論は、KAMの問題だけではないんですね。例えば、先ほどの金融庁の資料では、ゴーイング・コンサーンについては、独立区分を設けるということだけのように書かれていますが、それだけではありません。ゴーイング・コンサーンに至る直前の状況、つまり重要な不確実性に至らない状況についても監査報告書に記載することが求められているのですね。あるいは、「その他情報」への監査対応の問題といって、例えば日本でいえば、有価証券報告書における財務諸表と注記以外の部分に記載されているさまざまな情報について、監査人が検討して、自らが監査のプロセスで得た理解と齟齬がないかどうかを監査報告書上でコメントする、ということも求められています。そして何よりも、先ほどから少し議論が出ていますけれども、ガバナンス当事者である監査役等とのコミュニケーションの問題が大きな問題としてあって、今回の監査報告書改革の隠された非常に大きなテーマなんだろうなと思っています。ですから、監査基準の改訂の議論をしていくわけですが、報告基準の中に、KAMを書きなさいということを例えばワンパラグラフ入れればいいという問題ではなくて、報告基準に限らず監査基準全体の問題、もしくは先ほどお話のあった会社法の問題にも撥ねていくんだろうなと思っています。

 会社法や監査役等との関係ということについて、もう少しだけ申し添えますと、例えばKAMは、監査役に対して情報提供した事項の中から絞り込んで監査報告書に記載されるわけですけれども、監査報告書に何が記載されるかという問題の前に、監査役等は監査人から受け取った情報をそのままにしておくわけにはいかないわけです。例えばイギリスなどでは、監査委員会が監査人から情報提供された事項に対してどのように対応したかを監査委員会の監査報告書に書き、さらに監査委員会が書いた報告内容について外部監査人が外部監査人の監査報告書においてコメントをする、といったことが行われていて、レポーティング・サイクルがぐるぐる回っているわけです。今回の監査報告書改革については、適用対象を上場企業に限るとか大会社にも適用するとか、そういう問題もありますけれども、私としては、それ以前に、何よりも監査役等との連携の問題が焦点となってくると思っています。2013年に不正リスク対応基準が新設された際には、監査人は監査役等と一緒にやっていかないと不正に対応できないという議論があったわけです。今回の監査報告書改革の議論は、当然にリスク情報に対応する外部監査人の対応がテーマなわけですから、監査役等も巻き込んだ形で制度を考えていく必要があるはずです。

 また、経営者サイドについても、先ほど岡田委員からは、IFRSの企業ではすでにリスク情報が開示されているから、という話がありましたけれども、もしもIFRS適用企業以外の企業で、そうした情報が開示されていなくて、今後は、監査人の監査報告書にKAMとして書かれるということになれば、経営者としても、自らリスク情報を開示して、自らの説明を付していくということになるかもしれません。このように、いろいろなことが起きるんだろうと思うんです。

 経営者側、財務諸表の作成者側の立場からは、先ほど幾つか懸念事項のご指摘があったと思います。例えば、経営者側としては、いきなりKAMに記載されるようなリスク情報が出てきては困るという話がありました。けれども、海外では、先ほどお話があったようにIFRSが適用されているからなのかもしれませんけれども、そうしたことはほとんど懸念事項というふうには考えられていないようなのです。どちらかというと、KAMがボイラープレート化、つまり紋切り型の報告内容になってしまうことをいかにして防ぐかという議論とか、あるいはプレーン・イングリッシュの議論、つまり、監査人に固有の言葉ではなく読者に分かる平易な文章で書くべきだという議論、そういったほうに焦点があるように見受けられます。それどころか、KAMに記載されるリスクのリスクマップを書いたり、時系列比較を行っている場合があったりするのです。そうした観点からすると、今後、海外で行われている実務を参考に、実例集やガイドラインをつくるといったことはあるのかもしれません。

 このように考えてみると、今般の監査報告書の議論というのは非常に多角的な問題を含んでいるんだと思います。

 ですから私は、今般の監査報告書改革の議論に当たっては、KAMだけではなく、いろいろな議論を、監査役等との連携をどう図るかという問題や、ゴーイング・コンサーン問題、その他情報への対応の問題等々も含めて、いろいろな議論を全て俎上に載せた上で、日本としてはどこまでやるんだということを包括的に議論すべきだと考えています。ちょっと言い方は雑ですけれども、KAMを入れるか入れないかという、そんなワン・イシューの議論に矮小化するのではなくて、私としては、どうせやるのであれば監査報告に関連する事項全般、会社法も含めた報告のサイクル、それからガバナンス当事者である監査役等の役割といったことの全てを検討の対象とするような議論をしていただきたいですし、制度改革としては、「満額回答」というか、理想とする監査制度、財務報告制度を考えていくことから始めてはどうかと考えています。

 長くなって恐縮ですが、これで最後にしますので、あと1点だけ。今般の監査報告書の改革というのは、監査の価値を再獲得するラストチャンスではないかと思っています。私は、隣りの松本先生と一緒に、10年以上にわたって、監査報酬の研究を公認会計士協会からの委託研究としてやっていますけれども、企業の経営者の方からは、監査報告書のたった1行の監査意見のために、あの定型文のために、何千万、何億円というお金を払うのはどうなんだ、法律に定められているから仕方なくやっているだけだ、ということをよく言われます。あるいは、監査役等の方でさえ、そういうことを平気でおっしゃる方も一部にいるのです。このKAMの議論や、監査報告書に関連する先ほどから申し上げている多岐にわたる改革の議論というのは、監査がコモディティー化、日用品化することを避け、その価値を、会社側や利用者側、ひいては社会に対して認知してもらうための、最後の議論なんじゃないかなと思うのです。

 中には、結局は、KAMはボイラープレート化して、文例どおりのものが跋扈するんじゃないか、そんなもの書けないんじゃないかというシニカルな見方もあるとは思います。しかしながら、私としましては、我が国の現場の監査人の方々の力を信じておりますので、ぜひ、この機会を活かして、監査の価値を再獲得できるような対応をお願いしたいというふうに思っています。

 先日お話しした、私が尊敬する監査の実務家の方は、「もしもKAMが入ることになったら心を込めて監査報告書を書く」と仰っておられました。私としましては、ぜひ、現場の監査人の方を信じて、この制度改革をプッシュする立場から、今後議論に参加したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。関根委員、どうぞ。

○関根委員  
 ありがとうございます。既に皆様から出た意見に重なることが多いと思いますが、審議会の総会の場でも申し上げたことも含め、意見を述べさせていただきます。

 私ども公認会計士は、監査業務を担う者として、社会の期待に応えて監査品質をどうすれば向上できるかを大きなテーマとして、これまでさまざまな取組みを行ってきているところであり、これからも行っていかなければいけないと思っています。その中で感じているのは、監査人は守秘義務が非常に大切であるとして、あまり多くを発言していなかったということから、なかなか理解が進んでいないということです。これには、専門家が行っているので、しっかりやってくれるだろうから任せておくという意味合いもあるかもしれませんが、他方で、自分達が一人よがりになってはいけないと思っています。したがって、一定の説明をしっかりと行い、透明化をしていく必要があるのではないかと思っております。
監査法人のガバナンス・コードでも、説明を行っていくことが重要であり、先ほども発言がありましたように、自分たちだけで考えると、ついつい専門用語とか難しい言葉を使いがちになりますが、外に対して説明し、批判をいただくことによって、わかりやすさというのもわかるのかと思っております。

 監査法人のガバナンス・コードにより、監査法人の運営についてはそういった手当てがなされましたが、他方で、監査業務そのものについてはどうか、これをどう説明していくかということも考えていく必要があります。この点は、会計士協会でもまだまだ足りていないところであり、監査業務や会計士協会が何を行っているのかという説明については、充実に向けて今まさに取り組んでいるところです。ただ、やはり一般論だけではなくて、個々の監査業務がどうだったのかというのは、今の監査報告書ではそっけないという話があり、監査人としては心を込めて作成しているつもりではありますけれども、その監査報告書でも何かすることができないかということを考えるところであります。

 現在の監査報告書は、配付資料にも書かれているとおり、監査人の意見をはっきりと表明し、明瞭に記載し、責任を正式に認める、これ自体は揺るがしてはいけないことと非常に強く思っています。したがって、これが最も重要であることはこれからも変わらないと思っていますが、同時に、それだけで監査人の説明責任は済むのかというのを常に考えております。監査人からのそれ以外の情報の提供がないことから、監査はブラックボックスだという批判もありまして、これを真摯に受けとめたいと思っています。

 したがいまして、日本公認会計士協会としても、先ほど住田委員から説明がありましたとおり、IAASB等の国際的な動向も踏まえて、分析・検討を進めてきました。資料にも書かれているとおり、監査プロセスを開示することによって、監査の透明性を高めることができるのではないか、市場関係者に対して品質を判断する情報を広く伝えることができるのではないか、また、作成者と監査人の間で緊張感を持ってこれまで以上にコミュニケーションできるのではないかと思っております。もちろん今もコミュニケーションをしていますけれども、他の人に伝えることにより、これまで以上に緊張感を持って行うことになるというのは一般論としてもよくある話だと思いますし、結果としてコーポレート・ガバナンスの強化にもつながるのではないかと思っています。私どもは、監査品質の向上をすることを目的としていますが、さらには財務報告の質の向上をもたらすという好循環の流れが期待できるのではないかと思っています。

 ただし、導入する場合に懸念することもあります。守秘義務との関係はもちろんですけれども、諸外国で導入されたものをそのまま入れるというスタンスですと、気持ちが込められていないというところが出てくる可能性があると思います。先ほどから話に出ていますが、日本では、開示や監査制度が会社法と金商法に分かれている等の特徴がありますので、単に海外の制度を形式的に導入することではなく、日本の事情も踏まえて日本で実効性のあるものにする必要があります。またそれと同時に、紋切り型となってしまうと、今の報告書が長くなっただけであまり変わらないということになってしまい、導入する意義が半減しかねません。そのためには、本質にいかに迫っていくか、監査報告をどういう意義のあるものにしていくのかということが重要と考えております。そういう意味で、試行についても今取り組んでおります。限られた時間の中でどこまで本質に迫れるかというところはあるかと思いますが、この監査部会の場で議論をすることによって、よりよい基準の設定に向けて、皆さんの懸念も含めて議論をし、殻を破っていかなければいけないのではないかと思っています。また、諸外国でも簡単に導入されたわけではなく、おそらく、本日のような議論が当然にあったと思います。今はもう導入されているので結果だけを参考にしてしまいがちですけれども、そういった議論も参考にしながら、日本においての議論を進めていければと思います。

 なお、適用範囲について議論がありましたけれども、そもそも監査報告書が、会社法と金商法が分かれていることについても、本当は見直していく必要があるのではないかと考えております。そういう意味では、例えば金商法だけの導入でいいのかという議論が当然あるとは思いますけれども、本質的にしっかりと導入されていくためには、あまり範囲を広げて一気に導入してしまうと、結果的に本質的なところに迫れないということになってもいけません。したがいまして、例えば金商法の連結といった、まずはニーズの高いところから始めてみるというのが実務的なところなのではないかと思っております。

 以上です。

○伊豫田部会長  
 どうもありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。松本委員、お願いします。

○松本委員  
 ありがとうございます。八田委員からも少しありましたが、今現在議論されているKAMを含む監査報告書の拡張に関する議論というのは、やはり監査報告書に関するパラダイムシフトが起きたんだというふうに理解しています。特に日本は戦後ずっとアメリカの監査基準と監査報告書を追いかけてきた歴史があります。実際、先ほど弥永委員からもありましたが、1941年のSECとアメリカ会計士協会の議論で、一般に認められた監査の基準、いわゆるGAASですが、に準拠して監査を実施した、という記載にしました。このとき、実施した監査の範囲や監査手続の詳細を書いたほうがいいという議論も実際にはありました。でもそういうふうにならなかったのは、想定されている利用者が監査手続の詳細を書いてもわからないでしょうし、書いた結果、かえって誤った監査報告書の使い方がされては困る、ということから、GAASに準拠して監査を実施したという形におさまってきたというのがあります。

 もう1点、その結果、短文式監査報告書というふうに言われていますが、現在、短文式といいながら、もう日本の監査報告書はA4判1枚から2枚にわたっているんですよね。ですから、形式上、短文式ではなくなっているんです。何でそういうように短文式でなくなってきたかというと、意見と違う後ろ向きの情報が数多く書かれるようになったからです。後ろ向きの情報というのはどういうものかというと、監査に対する想定利用者たちの過大な期待を正すための啓蒙的な情報を監査報告書にわざわざ追加的に書く、ということです。想定利用者である投資者の側からすると、そういう啓蒙的な情報を書いてもらったところで、その投資意思決定の質が改善されるわけではありません。しかし、監査に関する誤った投資者の理解は改善できるというような、監査人側の都合で啓蒙的な情報がこれまで監査報告書に追加的に書かれてきたのです。つまりこれは、情報の後ろ向きの開示のパターンで来たといえます。ところが、今回初めて前向きの議論になるんですね。監査人から監査人しか知らない監査に関する情報が追加的な情報開示によって提供されることで、投資者の意思決定が改善される可能性が出てくる可能性があります。このような投資者にとっての前向きな情報が提供されるという点で、本当にこれは監査報告書に関するパラダイムシフトが海外では起きているんだというふうに私は理解しています。

 もう1つ、会社法上、監査役と会計監査人は連帯責任を負う旨の規定が入っています。にもかかわらず、会計監査で失敗が起きると、常に会計監査人だけが矢面に立って、監査役が別に責任をとっていないとは言っていないんですが、会計監査人だけの責任がいつもマスコミに注目されて、その後ろで会計監査の相当性を判断したはずの監査役の責任に関する批判がマスコミや株主からは上がってこない。もしKAMという明示的な形で会計監査人と監査役との実質的な連携が図られるのであれば、ここでも会社法の運用が法の意図する本来の方向へパラダイムシフトを起こさせるのだと思います。ですから、KAMの議論が盛り上がっていって、会計監査人の監査報告書あるいは金商法の監査報告書の改訂議論が高まっていけばいくほど、監査役の会計監査の相当性判断に対するパラダイムシフトが、私は起きるというふうに期待しております。

 以上です。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。ほか、いかがでしょうか。特にございませんか。

 委員の方々のそれぞれのお立場から、今回の問題に関するネガティブあるいはポジティブなご意見、さらには、今後議論を進めていく上での視点の明確化の必要性、さらには審議プロセスにおいて留意すべき事項等々について貴重なご意見をいただいてまいりました。こちらからの問題提起として、資料1の最後に書いておりますように、「監査報告書の透明化」の意義・目的及び留意点を中心に、監査報告書における情報提供を充実させていくことに対する評価、現行の我が国の監査報告書に対する評価といった点が、今回の議論の一番の出発点になっていくものと思います。本日はこれらについての議論をいただいてきたわけでありますが、ただ今の松本委員のご発言は、特に現在の監査報告書に対する1つの評価が示されているのかなと思っております。我が国の場合には、特に会社法上の問題ということもつとに指摘されてまいりましたし、最後に松本委員から、会計監査人との関連というご意見も出てきましたけれども、指名するようで恐縮なんですが、弥永委員、この点に関してコメントいただければと思いますが、いかがでしょうか。

○弥永委員  
 発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。たしかに、なかなか難問だと思います。けれども、我が国の仕組みにおきましては、松本委員が想定なさっているほど、会社法は会計監査について監査役等の責任を非常に重く捉えているわけではなく、監査役等は基本的には会計監査人の監査結果に依拠できるということをスタートポイントとしていると思うのです。ですから、KAM記載が要求されることによって、監査役等の方々が民事責任を負うリスクが大きく高まることは直接的にはないのではないかと考えております。もっとも、松本委員がご指摘の点は非常に重要でして、KAMに記載されるような事項がコミュニケーションされたということが外から見えるようになることの効果は大きいと思います。もちろん、私は、監査役等と会計監査人との間でのコミュニケーションは格段になされるようになったと思いますし、実際にも、そのような実感を持っているのです。けれども、全ての会計監査人設置会社で十分なコミュニケーションがなされているかどうかは、やはりわからないのです。しかし、KAM記載によって、コミュニケーションの内容の一部でも外部から観察可能になれば、当然のことですが、たとえば、株主たちからは、ここに書かれているようなことがコミュニケーションされたのに対して監査役等の方々はどのように対応しましたかというような反応が出てくると思うのです。したがって、監査役等の方々の行動、お仕事のなさり方に対して、KAMの記載は非常に大きなインパクトを与えることになるのではないかと私は予想しています。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございます。このKAMの導入をトリガーにして、監査にかかわるさまざまな方々の責任を含めた、いわば立ち位置というものが明確になってくるということかもしれません。

 今日の議論でいろいろ賛成論、反対論、あるいは慎重論等々ございましたけれども、基本的に、監査報告書の透明性を高めていく、そしてそれを通じて監査の信頼性を確保していくということについてのご異論というのはないわけでございまして、これについては皆様基本的に同意されていると思っております。あとは、やはりそれぞれのお立場から、このKAMの導入に対していろいろな懸念があるのではないか、あるいは八田委員からご指摘ございましたように、IAASBを含め、単に国際的な動向とか事情だけを考慮して制度化していくのはいかがなものなのか、我が国独自の事情も斟酌しながら対応していくことが必要なんじゃないかといった事柄が指摘されております。おそらくこういった事柄を踏まえながら、議論をこれから深化させていくということになるかと思いますが、何かほかにご意見等ございませんでしょうか。八田委員、どうぞ。

○八田委員  
 一気に具体的な話になりますけれども、例えば今日いただいた資料1の18ページ、ここでもう既に先行する英国企業の監査報告書に記載されたKAMの内容というのが20項目ぐらい列挙されていますよね。これを見ると、いかにも会計上の見積りとか予測とか評価という形で、まさに会計判断が重要な部分が列挙されているわけです。そして当然ながら、その適否を判断する監査判断においてもこの部分の項目というのは、監査人にとっても極めて重要だということです。これだけ実績があるわけですから、例えばこれを監査報告書の最後にペラ1枚でつけて、この会社は実はのれんと税務に重要な点がありましたと、チェックボックス方式で書くということも考えられるのではないでしょうか。そうすると読者はそれに目を払って会社のガバナンス状況、あるいは注記事項を見て、指摘された項目が実際にはどうなっているかということで確認できるはずで、そういう実務対応もあるのかなと。つまり、申し上げたいのは、さっき林田委員がおっしゃったように、これは翻訳だからしようがないのでしょうが、例として出ているこのKAMの文章を読んで、何か情報価値が高まって、ふむふむと利用者の方が納得できると思いますか。私は全然そういう感じがしないんですね。確かにのれんの問題、収益認識の問題、リストラクチャリング、引当金の問題、みんな重要な案件です。特に経営判断の部分にもかかわってきて。これを監査人が全て担うというのは荷が重過ぎるし、果たしてそれが本来の監査人の役割なのか、こういう初歩的な、あるいは原理的な疑問もありますので、その辺もこの機会に今後考えていただきたい。監査人によるチェックボックス方式でもいいのではないかということをあえて申し上げておきます。

○伊豫田部会長  
 ありがとうございました。事務局、どうぞ。

○田原企業開示課長  
 本日は幅広いご意見を頂戴し、誠にありがとうございました。海外で導入されたものでございまして、海外で広がっているものを我が国でどう受け入れるかということで、これについては本当に幅広いお考えを頂戴いたしましたので、今日いただいたご意見を整理させていただいて、また次回以降議論を深めていただければというふうに考えているところでございます。どうも本日はありがとうございました。

○伊豫田部会長  
 ほか、よろしいでしょうか。

 それでは、本日の審議はこれで終了させていただきます。次回の日程につきましては、事務局から改めてご連絡いたします。それでは、本日の監査部会を終了いたします。委員の皆様にはお忙しいところ、充実したご審議をいただきましてありがとうございました。これにて閉会いたします。
 
以上

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