平成14年4月30日
金融庁

企業会計審議会第21回固定資産部会議事録について

企業会計審議会第21回固定資産部会(平成14年3月29日(金)開催)の議事録は、別紙のとおり。

(問い合わせ・連絡先)

金融庁(TEL 03-3506-6000)
総務企画局企業開示参事官室
企業会計審議会事務局


企業会計審議会第21回固定資産部会議事録

日時:平成14年3月29日(金)午後1時30分~午後3時16分

場所:中央合同庁舎第4号館9階金融庁特別会議室

○辻山部会長

それでは、定刻になりましたので、ただいまから第21回固定資産部会を開催させていただきます。本日は、皆様方にはお忙しいところご参集いただき、ありがとうございました。

さて、前回ですが、起草委員の方々と共同して事務局で作成していただきました、基準・基準注解・前文のタタキ台をもとに、さまざまな論点について議論いたしました。おおむね議論も集約されてきたのではないかと思われますので、当部会といたしましては、今回と次回の部会で、公開草案の内容を固める方向で進めていきたいと思います。

そこで、本日でございますが、前回までの議論を踏まえ、また、その後、起草委員の間でも見直しまして、タタキ台を再度修正した案を作成いたしましたので、引き続きご検討いただきたいと考えております。

なお、本日は2時間を予定しておりますけれども、議論も大分煮詰まっておりますので、もし早めに終わればそれで終了させていただきたいと思っております。

それでは、基準本文・注解・前文でございますが、これについて審議に入りたいと思います。事務局から本日お配りしました資料について、簡単にご説明いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○平松課長補佐

それでは、ご説明させていただきたいと思います。

資料でございますが、資料1の方が前文ということで、資料2の方が基準・注解ということになってございまして、まだ合体していないのですけれども、こちらの方がまだ見やすいということで、このようにしております。

資料2の「基準」の方から変更点をご説明したいと思います。

まず「対象資産」の本文のところでございますが、前回部会のものではそこに前払年金費用について言及がございました。前払年金費用ということにつきまして、他の金融資産とか繰延税金資産に比べてやや事柄として少し小さい問題ではないかということで、基準の方ではこれを落としまして、後でご紹介しますが、前文の方には残しています。この問題については、適用指針レベルの問題にしてはということで、落としております。

それから、1ページ目の下のところでございます、「減損の兆候」のところでございますが、前回のタタキ台では「資産又は資産グループ」というところですが、ここで、以下「資産グループ」という言葉にまとめようということになっていたわけでございますが、その後、起草委員会でもいろいろと検討したのでございますけれども、この「資産グループ」という言葉と、あとの方に出てきますが、いわゆる「資産のグルーピング」というところがございますけれども、そことの関係がやや不明確ではないのかという指摘がございまして、やはり資産グループというのは、そこに書いてございますが、「6.(1)における最小の単位をいう」ということで、6のところをごらんいただきたいのですが、ここで資産のグルーピングの方法ということを規定しているわけでございます。「他の資産グループのキャッシュ・フローから概ね独立したキャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行う」ということでございますが、ここで言いますところの最小の単位を言うということで、資産グループというものの考え方を整理した方がよいのではないかということでございます。したがいまして、単独の資産につきましては、この資産グループには入らないということになりますので、「資産」というのをつけ加えまして、元に戻したような形で、以下、その表記をしてはどうかということでございます。それから、この「兆候」のところだけではないのですが、資産ということの中に、共用資産とかいうようなものも含んでいるということもここで読み取るようになるということでございます。

それから、2ページ目ですが、「2.減損損失の認識」のところでございます。下線の部分がつけ加わっている部分でして、ここで言っておりますのは、減損の兆候がある資産又は資産グループにつきまして、減損損失を認識するかどうかの判定を行うわけなのですが、判定は資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額と帳簿価額を比較することによって行うということで、つまり、判定の方法を基準上も明らかにするということでございまして、内容は変わらないわけでございますけれども、文言を補っているというところでございます。

それから、3ページ目ですが、(4)のところでございます。ここは、「資産又は資産グループに関連して間接的に発生するキャッシュ・フローは、関連する資産又は資産グループに合理的な方法により配分し、当該資産又は資産グループの将来キャッシュ・フローの見積りに際し控除する」ということで、前回は「間接費用」というふうに書いてあったわけでございますが、ここではキャッシュ・フローの問題ということで、「間接的に発生するキャッシュ・フロー」という言い方に変えております。

それから、次に4ページ目でございますが、「共用資産の取扱い」でございますが、そこにつきましては先ほど少し申し上げましたが、共用資産の減損の兆候と共用資産の取扱いの関係を明確にした方がよいのではないかという議論がございまして、そこにございますように、ここに2つの方法があるわけでございますが、より大きな単位で行うという原則的な方法の場合には、「共用資産に減損の兆候がある場合に」ということで、この方法の場合には、兆候のある場合に行われる取扱いであるということを明示したわけでございます。

それから、「のれんの取扱い」のところでございますが、のれんのところにつきましても同じように、のれんのところの3行目のところでございますが、のれんに減損の兆候がある場合には、減損損失の認識をするかどうかの判定を行うということで、減損の兆候と認識の関係を明らかにしているということでございます。

それから、もう1つの例外的な方法の場合、共用資産であれば共用資産の簿価を配分する方法でございますけれども、その点につきましては「基準」では触れておりませんが、「前文」の方、また後でご紹介いたしますが、「前文」の方におきまして、共用資産に減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産グループに配分するという旨を書き加えております。配分する方法の場合には、グルーピングの際に共用資産の簿価も配分してしまうということで、配分後の資産グループ全体に兆候があるかどうかということが問題になるということでありますので、共用資産固有の兆候ではないということでございます。のれんのそれも同じで、これもまた後でご紹介いたします。

それから、次に5ページ目でございますが、三の開示の問題で、「貸借対照表における表示」というところでございますが、これにつきましては文章的な話でございますが、見出しに対応しますように、「減損処理を行った資産の貸借対照表における表示は、」という文言をつけ加えております。

それから、同じページの「リース」のところでございますが、ここも文言の整理を行っておりまして、従来は、「ファイナンス・リース取引により使用している資産について、賃貸借に係る方法に準じて会計処理を行っている場合」ということだったわけですが、そこを修文いたしまして、「借手側が賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行っている場合、借手側が当該ファイナンス・リース取引により使用している資産(以下「リース資産」という。)」ということで、借手側ということを明らかにしているということでございます。それから、前回は、「リース賃借資産」という言葉を使っていたわけですが、「リース資産」という言葉の方がより一般的であろうということで、改めております。

それから、2.のところも同じように、前回は「賃貸借に係る方法に準じて会計処理を行っている」というところに、「ファイナンス・リース取引に係る」という言葉を加えまして、より意味をはっきりさせているということでございます。

次に「前文」の方、資料1の方でございます。

まず、前文の1ページ目でございますが、経緯のところを今回は追加をさせていただいております。読み上げさせていただきます。

1.ディスクロージャー制度の中核となる会計基準は、近年の市場環境や企業行動の激変に伴って、急速な変化を余儀なくされてきた。また、市場の国際化の進展により、会計基準の国際的調和が喫緊の課題として求められてきた。

そうした状況にあって、当審議会は、我が国会計基準の整備を精力的に進めてきたが、連結財務諸表、キャッシュ・フロー計算書、研究開発費会計、退職給付会計、税効果会計、金融商品会計などの基準の整備が一段落した平成11年10月の総会で、「固定資産の会計処理について」が審議事項に取り上げられ、固定資産の会計処理について幅広い観点から検討することとされた。

2.固定資産の会計処理に関する検討は、平成11年12月以降、先ず、第一部会において行われた。第一部会では、固定資産に係る我が国の会計実務や海外の会計基準及びその動向等について審議が行なわれた。その結果、固定資産の会計処理に関し、最優先の課題は減損の処理であり、先ずその基準を整備することが必要であるという結論に達した。また、国際会計基準において投資不動産の会計処理が定められ、時価基準と原価基準の選択適用を認めることとなったため、それに対してどのように対処するかについて検討することとされた。第一部会では、このような審議を踏まえ、固定資産の会計処理について検討すべき論点をまとめ、平成12年6月に「固定資産の会計処理に関する論点の整理」を公表した。

3.平成12年7月に開催された総会において、第一部会で審議されてきた固定資産の会計処理の問題を同部会から引き継いで検討するために、固定資産部会が設置された。固定資産部会では、平成12年9月以降、固定資産の減損及び投資不動産の取扱いについて審議を重ね、平成13年7月に、それまでの議論の概要や考え方等をまとめた「固定資産の会計処理に関する審議の経過報告」(以下「経過報告」という。)を公表した。その後、経過報告に対して寄せられた意見を参考にしつつさらに審議を進め、このたび「固定資産の減損に係る会計基準」(公開草案)を取りまとめたので、これを公表し、広く各界の意見を求めることとした。

ということでございます。

それから、3ページ目でございますが、「基準」のところでご紹介しましたように、「1.対象資産」のところでございますが、「前払年金費用についても、『退職給付に係る会計基準』において評価に関する定めがあるため、対象資産から除くこととする」ということでございます。

それから、その下の「減損の兆候」のところでございますが、ここは「基準」と同じように、「資産又は資産グループ」ということで、括弧をつけまして、「((6)マル1における最小の単位をいう。)」ということで、「基準」と同じように、「資産又は資産グループ」という表現に戻しております。

それから、「兆候」のところで、4ページ目の2番目のパラグラフのところ、「兆候」の一番最後のパラグラフでございますが、そこに一文をつけ加えております。「企業は、内部管理目的の損益報告や事業の再編等に関する経営計画などの企業内部の情報及び経営環境や資産の市場価格などの企業外部の要因に関する情報に基づき、減損の兆候がある資産又は資産グループを識別しなければならない」ということで、ここは兆候の幾つかの例示があるわけでございますが、そういった例示の考え方を示した文章をつけ加えたというところでございます。

それから、次に(2)の「減損損失の認識」のところですが、そこに下線の引いてある文章でございます。「減損損失の測定は、将来キャッシュ・フローの見積りに大きく依存する。将来キャッシュ・フローが約定されている場合の金融資産と異なり、成果の不確定な事業用資産の減損は、測定が主観的にならざるを得ない。その点を考慮すると、減損の存在が相当程度に確実な場合に限って減損損失を認識することが適当である」。この文章は、前回は、「兆候」のところに置いてあったわけでございますけれども、これはいわゆる確率基準でございまして、確率基準というのは主に認識に係る問題であろうということで、認識の方に場所を移してきたということでございます。

それから、その下のところですが、「減損損失の測定」でございまして、一番下の「なお書き」のところでございます。これも場所を変えたということなのですが、「減損損失は、固定資産売却損などと同様に、固定資産に関する臨時的な損失であるため、原則として、特別損失とすることとした」ということで、従来は第1パラグラフにあったのですが、最後に移したということでございます。

それから、5ページでございます。5ページの「将来キャッシュ・フロー」のところのマル2のところですが、そこの3行目のところでございますが、「合理的な使用計画等を考慮して見積もられる必要がある」ということ、これは「基準」と表現を合わせるために修文をしているということでございます。

それから、下の方のマル4のところですが、ここは、割引前将来キャッシュ・フローにはリスクを反映させないというようなことが書いてあるわけです。前回はマル3に1つの項目として書いていたわけですが、分量も多くなりましたので、独立させたということでございます。

それから、6ページ目ですが、マル5のところでございます。これは先ほどご紹介いたしましたように、前回は「間接費用」ということでご紹介させていただいたものですが、「間接的に発生するキャッシュ・フロー」という言い方に修正をしております。

それから、マル7のところですが、まず、「基準」に合わせまして、主要な資産の定義を追加しております。括弧のところですが、「(資産グループの将来キャッシュ・フロー生成能力にとって最も重要な構成資産をいう)」、この部分でございます。また、見積期間が20年を超える資産の21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローの扱いを明らかにしております。「見積期間が20年を超える場合の21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローについては、20年間経過時の回収可能価額を算定して加算することになる」というところでございますが、その部分を明らかにしている、要するに、割引いたもの加算するということでございます。

それから、7ページ目でございますが、7ページ目の3つ目のパラグラフ、「なお書き」のところでございますが、そこに一文を追加をしております。「なお、連結財務諸表は、企業集団に属する親会社及び子会社が作成した個別財務諸表を基礎として作成されるが、個別財務諸表における資産のグルーピングの単位は、連結財務諸表においては、連結グループの見地から見直される場合がある」という文章でございまして、起草委員会でいろいろ議論があったのでございますが、「前文」でこの点を明らかにした方がよいのではないかということで、つけ加えさせていただいております。

それから、次にマル2のところでございますが、「資産グループについて認識された減損損失の配分」というところでございます。まず、資産グループについて認識された減損損失は各構成資産に配分するという旨を書き加えております。それから、前回は「帳簿価額に基づいて比例配分するという方法を原則とする」というふうに書いてあったわけでございますが、「基準」に合わせまして、例示という扱いにしまして、「原則」という言い方は落としております。それから、前回は「帳簿価額に基づく方法」以外に「時価による配分」という方法を「等」ということで書いてあったわけでございますが、時価に基づいて比例配分するということでもないということで、そこの書き方を、「各構成資産の時価を考慮した配分」というふうに書き直しております。

それから、次に「共用資産」のところでございます。まず「共用資産」のところは分量が多くなりました関係で、項目分けを行っております。

それから、「共用資産の取扱い」のマル2の「共用資産に係る資産のグルーピング」のところでございますが、先ほど「基準」でご説明しましたように、減損の兆候と共用資産の取扱いの関係を明確にしたわけでございます。すなわち、先ほど申し上げましたように、より大きな単位でグルーピングする場合には、共用資産に減損の兆候がある場合の取扱いであることを明らかにする――このパラグラフの真ん中辺でございますが――それから、先ほどちょっとお話ししましたように、共用資産の帳簿価額を配分する方法の場合には、「共用資産に減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産グループに配分することとなる」というところの文章を最後につけ加えているということでございます。

それから、8ページ目でございますが、マル3のところでございますが、「より大きな単位でグルーピングを行う方法」のことでございますが、従来は、下線部の下線のついていないところで終わっていたわけでございますが、「基準」と整合させるために、減損損失を認識するかどうかの判定、あるいは、減損損失の増加額の配分方法につきましても書き加えております。内容的には「基準」と同じでございます。ですから、以前に「基準」でご紹介した内容をそのまま「前文」にも書き加えているということでございます。

それから、マル4でございますが、「共用資産の帳簿価額を資産グループに配分する方法」、これにつきましても「基準」と同じように、今回、「前文」にも書き加えているということでございます。

続きまして、「のれんの取扱い」でございます。

まず、「のれんの取扱い」のマル2のところでございます。9ページ目でございますが、このマル2の文章の最後のところに、共用資産と同じように、のれんの帳簿価額を配分する方法の場合には、「のれんに減損の兆候があるかどうかにかかわらず、その帳簿価額を各資産グループに配分することとなる」ということを明らかにしております。

それから、マル3のところ、「より大きな単位でグルーピングを行う場合」でございますが、この場合につきましても、共用資産と同じように、減損損失を認識するかどうかの判定の問題とか、減損損失の増加額の配分問題、原則としてのれんに配分することにつきまして書き加えております。内容的には前回ご紹介しました「基準」の内容が書かれているということでございます。

それから、「マル4のれんの帳簿価額を資産グループに配分する方法の場合の会計処理」でございますが、この部分につきましても「基準」に合わせて書き加えをしたというところでございます。

それから、10ページ目でございます。「ファイナンス・リース取引の取扱い」というところでございます。ここにつきましては、ファイナンス・リース取引により使用している資産につきましても、減損会計と同様の効果を持つ会計処理が必要だということなわけでございますが、その理由につきまして、前回は、経過報告と同じ表現になっていたわけですが、ここは修文いたしまして、文章を短くしております。「ファイナンス・リース取引に係る借手側の会計処理方法としては、通常の売買取引に係る方法に準ずる会計処理(売買処理)のほか、リース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外の取引については、通常の賃貸借取引に係る方法に準ずる会計処理(賃貸借処理)が認められている。売買処理を採用している場合には、借手側が当該ファイナンス・リース取引により使用している資産(以下「リース資産」という。)は、本基準の対象資産となり減損会計が適用されるが、賃貸借処理を採用している場合であっても、売買処理を採用した場合との均衡上、減損会計と同様の効果をもつ会計処理を行う必要がある」という理由の部分を書き改めております。

それから、11ページでございますが、「投資不動産」につきまして今回は加えております。内容は経過報告とほぼ同じでございます。

まず1.のところ、ここは経過報告とほぼ同じで、「2.投資不動産の時価情報の注記」というところは、最後の段落をつけ加えているということでございます。確認のために読ませていただきます。

1.投資不動産の会計処理

国際会計基準は、企業が自ら使用するもの及び棚卸資産を除いた、賃貸収益又は資本増価を目的として保有する不動産を投資不動産としている。このような投資不動産については、他の有形固定資産と比べて、比較的容易に時価が把握可能であり、また、当該時価により売買・換金等を行うことが可能ではないかという観点から、投資不動産に関する経営成績を適正に開示するためには、時価評価が適当であるという考え方がある。

しかし、活発な市場を有する一部の金融資産に比べ、投資不動産の時価を客観的に把握することは困難ではないかという懸念がある。また、工場、本社建物のみならず外形的には賃貸収益を目的として保有されるような不動産であっても、直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上の制約がある場合等、事実上、事業投資と考えられるものがあり、このような事業投資では、一般に、時価の変動を企業活動の成果とは捉えないという考え方が妥当である。

さらに、外形的には投資不動産とみられるものでも、時価の変動により利益を得ることを目的として保有するものから、前述のように、事実上、事業投資と考えられるものまで存在するため、その保有目的等を全く考慮せずに時価評価を行うことは、必ずしも、企業の財政状態及び経営成績を適切に財務諸表に反映させることにはならないと考えられる。

むろん、有価証券のように個々の保有目的等に応じてそれぞれの会計処理を定める方法も考えられるが、棚卸資産との関係の整理、それに含まれる類似の不動産との区別など、細分化するに当たっての合理的な基準を設けることは困難であると考えられる。

したがって、投資不動産についても、時価の変動をそのまま損益に算入せず、他の有形固定資産と同様に取得原価基準による会計処理を行い、必要があれば減損処理を行うことが適当であると考えられる。

2.投資不動産の時価情報の注記

前述のように、投資不動産については、取得原価基準による会計処理を行うことが適当であるが、国際会計基準は、企業が取得原価基準による会計処理を選択した場合には、時価を注記するよう求めている。このような国際会計基準の規定との調和や、他の有形固定資産と比べ相対的に換金性が高いという性格に鑑み、投資情報として投資不動産の時価を注記することが適当であるという意見がある。

他方、投資不動産については、活発な市場を有する一部の金融資産に比べ、時価を把握することが比較的困難であり、また、直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上の制約がある投資不動産について時価を注記することは、投資者にとって有用な情報を提供することにならないのではないか、などの理由から、時価を注記することは適当でないという意見がある。

このように、投資不動産の時価情報注記に関しては、その要否や投資不動産の範囲も含め、理論及び実務の両面で、なお検討を要する問題が残されていることから、本意見書では、議論の要点を以上のように示すに止め、今後の課題とすることとした。

ということでございます。

私の方からは以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの事務局からの説明に関しまして意見交換を行いたいと思います。

本日は、全体が網羅されておりますので、全体を3つの部分に分けて議論してまいりたいと思います。

まず、経緯、会計基準の整備の必要性、以下、ここの基準の枠組みに関するところでございますが、基本的な考え方、対象資産、減損の兆候、減損損失の認識、減損損失の測定までということで、「前文」ですと4ページまで、「基準」では2ページまでということになっておりますので、その中で何かご指摘やご意見がございましたらお出しいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

品川委員、どうぞ。

○品川委員

4ページのところでございますけれども、減損損失の認識に当たって、これは既にこの部会で議論して、その結論がどうなったのか私もちょっと認識していなかったのですが、ここでは例の減価償却と減損損失のどちらを優先させるかということで、減価償却の見直しに先立って行うというふうに一応ここで結論として出されているのですが、この場で議論したときには、この方法であると法人税法上企業が不利を被るのではないかという問題点を指摘したところ、それは今後さらに検討するやにもそのときの審議では聞こえたように思ったのですが、ここはここでもう割り切って、法人税法上企業が不利なことになっても構わないということでしょうか。

と申しますのは、減損損失で損金算入すると、これは法人税法上の評価損でもないし、臨時償却等でもないということで、形式的には損金算入の道が閉ざされるわけですね。であれば、臨時償却を先に立てた方が今の法人税法の規定にはそのまま乗っかるということで、そういう問題提起をしたことがあったかと思うのですけれども、そこはもうこういうふうに割り切って、企業が税法上不利を被ってもそこはやむを得ないと、こういうふうなご認識でよろしいんですね。

○辻山部会長

ただいまの点でございますが、確認というか事実認識の問題だと思うのですけれども、まず、今回は、企業会計上、減損会計というのが適用されまして、それが、会計上の表示は減損損失という名目になっていても、税法上は臨時償却としての要件が満たされていれば、それは税法として損金に認められる、要するに、損金経理された減価償却であるという扱いができるかどうかということもあると思うんです。

それから、もう1つは臨時償却の要件について、品川委員がご指摘のように、この減損損失の対象が臨時償却の要件に合致していれば、それは既に減損損失として処理されても、税法上の減価償却に当たるという解釈ができるのではないかという、その点については品川委員はどのようにお考えでしょうか。

○品川委員

これは退職給付会計のときにも問題になったわけですね。退職給付会計のときに退職給付引当金と税法上の退職給与引当金は別個の概念で、形式的には退職給付会計に損金算入したものは退職給与引当金としては形式的には否認されるんですね。それを国税庁の取扱いで読替取扱いをして、そこは調整を図ったわけでありますが、現在の法人税法の施行令の規定も、たしか償却費として損金算入というふうになっていましたので、名目が償却費でなければ損金算入の道は閉ざされることになるのを懸念して申し上げたわけで、退職給付会計と同じように、ここのところは国税庁と掛け合って企業が不利にならないように、臨時償却の実態的要件が備わっていれば損金算入の道が開けるんだと、そういうふうにお互いに了解しているということであれば、そこは特に問題ないと思うのですけれども、後で問題が起きないようにということでちょっと申し上げているだけでございます。

○辻山部会長

ありがとうございました。

既に掛け合って了解が取れているということではございません。ただ、この点について種々検討いたしましたけれども、必ずしも減損損失という名称になっているから直ちに減価償却として否認されるということでもないのではないかということなのですが、その点について荒木委員、何かご発言はございますか。少し起草委員会の方でも検討させていただきましたので。

○荒木委員

これは税務上の解釈になると思いますので、特にこれといって意見はないのですが、例えば、固定資産の評価減であってもそれは減価償却として認められるというような通達があったと思いますので、評価減ですらそういうふうな取扱いが認められるということから考えますと、減損損失という費目であっても償却費として損金経理したというふうに認められる余地はかなりあるのではないかというふうに考えるのですけれども。もちろん税務の専門家というわけでもありませんので、ひとつの意見として申し上げます。

○品川委員

今おっしゃった件については、一応、長官通達で、こういうものは償却費として損金算入を認めるというのは全部限定的に列挙しているわけですよね。したがって、本件に関しても、そういうことがある程度了解が取れているということの方が私はその後円滑に行くのではないかと、そういうふうに申し上げているので。ただ、別な例があるからこれもというふうな税務の取扱いではないので、その辺の、取扱いの関連とか、あるいは施行令の関係等、通達の関係でそういうふうに取扱っていることについて、これもそのまま自動的にというわけにはいかないのでちょっと問題を指摘させていただいたわけですので、心配には及ばないということであればこれ以上申し上げませんけれども。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

心配に及ばないという見解ではございません。ただ、品川委員がおっしゃるように、税法上の臨時償却の要件を満たしているものであっても、それで損金算入の道が閉ざされるかどうかについては、まだ今後検討の余地があるという解釈でございます。

そのほかございますでしょうか。

秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員

「減損の兆候」のところなのですが、「前文」の場合でいくと3ページ~4ページ目にかけての部分ですが、ちょっと確認させていただきたいのですけれども。この辺は前回の部会のときとは文章がかなり変わっていまして、4ページの一番上のところでは、減損の兆候がある場合に、減損損失を認識するかどうかの判定を行う場合を限るというふうに「限る」にしておりまして、その後に「これは」という理由が4ページ目の頭に続いておりますけれども、「実務上、過大な負担となるおそれがあることを考慮したためである」というふうになっていますと、実務上の過大な負担のおそれを考慮したのであれば、「限る」というのはちょっとおかしいかなというか、つまり、兆候がなくても積極的に具体的な減損損失を行う判定をするという余地が全くないのかどうかと。通常はほとんど一致するとは思いますが、そこら辺をちょっと、この「限る」というあたりについての経緯なりが確認できればと思います。

○辻山部会長

この点は検討させていただきます。ご趣旨のとおりで、実務上過大な負担のおそれを考慮してということですが、可能性を示す事象がなくてもできるのかどうかというその辺はなかなか難しい問題だと思います。いわゆる過大な減損処理ということにも結びつきますので、ここでは、この減損処理というものを使って恣意的に簿価を落とすということを想定してこのような表現になっているということであろうと思いますけれども、ご趣旨の点はわかりましたので、ちょっと検討させていただきます。この「限ることとした」という精神はそういうことだと思います。

よろしいでしょうか。

大塚委員、どうぞ。

○大塚委員

私はしばらく大学の公務等で欠席させていただきましたので、議論があったのかもしれませんので、もしそうでしたらお許しいただきたいと思いますが。

「前文」の3ページの「四 会計基準の要点と考え方」の前のところに5行のパラグラフがあるわけですけれども、過年度修正に対する遡及修正がリファーされているわけですが、この部分というのはどうしても必要なのでしょうか。そういう議論は既になされているのでしょうか。こういう遡及修正の話ですね。要するに、言ってみれば、こういう将来のことについて「前文」で書く例というのは今まで余りなかったような記憶があるので、そういう意味でちょっとご質問させていただいているわけでございます。

○辻山部会長

これは、これまでの経緯にもございますように、まずこの問題を第一部会、それから、経過報告に至るまで議論を約2年既にしているわけでございますが、その過程で、減損とは何かということについて議論がございました。減損とは何かということについてはほぼ合意をみている。

その内容についてでございますけれども、投資期間全体を通じた投資額の回収可能性を問題にしていると。ですから、現時点で基準の中では具体的な処理といたしましては、現時点の簿価とこれから回収されるキャッシュ・フローの比較、それから、測定のところでは回収可能額との比較をやってまいりますけれども、基本的な精神に照らしますと、いろいろなパターンでキャッシュ・フローが生じてまいりますので、投資の初期にかなり早いスピードで回収が済んでいるようなものについてまでこの枠組みの中では減損の対象になってくるわけですね。ここに書いてあるとおりでございまして、そうであっても、ではそれが減損に当たるのかというと当たらないであろうということについては、この部会では既に合意をみているというふうに考えております。したがいまして、ではそれを外すのかといいますと、減損で外しても次に減価償却の見直し等々の問題がございますので、ということでこの文章に続いているというふうに理解しているわけでございますが。

○大塚委員

その趣旨はよくわかっているつもりなのですけれども、「なお」で「減損の会計処理を適用することとした」というところまでで十分理解できるのではないか、「将来」以下の文章がなくても十分理解できるのではないかなということを申し上げただけです。その趣旨は、将来の適用の話を「前文」の中に織り込むということはいかがなものかなと、そういうふうにちょっと感じたからそういう発言をさせていただいたということです。

○辻山部会長

ありがとうございました。

この点について、ほかの委員から何かご意見があればお出しいただきたいと思うのですが。

品川委員、どうぞ。

○品川委員

今のところ、遡及修正が行われるようになった場合というのは一応仮の話になっていますけれども、その可能性とか。今までの会計慣行というのは遡及修正をしない、損益が認識されたときの事業年度あるいは営業年度の損益に計上するのが1つの会計慣行だというふうに言われていたと私は理解しているのですけれども、遡及修正が行われるようになった場合にはというのは、かなり蓋然性が高いんですか、会計学的にというか会計慣行的には。

○辻山部会長

斎藤委員、どうぞ。

○斎藤委員

この部分については私がいろいろと発言をしたこともあって取り入れていただいたということがあると思いますので、責任上少し発言をさせていただきます。

まず、趣旨としては先ほど部会長が説明されたとおりであります。つまり、減損ということを考えたときに、この基準で認識される減損も、あるいは過年度の償却が原因で簿価が過大になっている部分も、切下げた場合には、現在の基準ではその期の損失ということになりますので、当面はそれを1つにまとめて減損の会計処理を適用することにしているわけでありますけれども、しかしその一方で、ここに書いてありますように、過年度の修正に関して現在行われていない遡及修正が要求された場合には、これを一まとめにすることは難しいというか不可能であります。つまり、一方は過年度の損失でありますし、一方は当期の損失でありますので、それをきちんと分けるということが必要になってまいりますので、それに備える必要があるだろうというのが第1点であります。

もう1点は、今ご発言がありましたけれども、そもそも過年度修正に対して遡及修正が行われるようになった場合にはという、その可能性、蓋然性でありますけれども、これはあくまでも将来のことですからどのぐらいあり得るかということは確定的には言えないわけでありますけれども、国際基準等でいわば遡及の問題が話題に上っておりますので、仮にコンバージェンスということで日本の基準も遡及の問題を考えざるを得なくなったときに、この現在つくっている減損の基準が遡及の問題を考える足かせになるということがないようにしていただきたいということを申し上げた結果、多分、取り入れてくださったのだろうというふうに了解しております。

○辻山部会長

この点についていかがでしょうか。

○品川委員

今のご説明は理解できましたが、ただ、法制度的に、遡及修正の場合は商法の確定決算との関係がありますから、それと、法人税法がその確定決算基準を採用していること等の問題があって、むしろ現行の法制度に直接かかわってくる問題なので、会計理論の問題と、法制度、商法なり税法の制度をどういうふうに変更するのかということにちょっと疑問を感じたのでそう申し上げたので、今のご説明のように、将来の問題だということであれば、それはそれで理解いたしました。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

大塚委員、よろしいでしょうか。

○大塚委員

私は、なくても斎藤委員のご趣旨はわかるのではないかなと思ったのですけれども、ただそれだけの話です。

○辻山部会長

そのほかございますでしょうか。

よろしですか。

それでは、少し具体的な中身について入らせていただきます。具体的な点でございますが、「前文」ですと5ページ以降になります。5ページの将来キャッシュ・フロー、割引率の問題、資産のグルーピングの問題、共用資産、のれんの取扱いということでございます。「前文」ですと5ページから9ページまでということでございます。「基準」では2ページから4ページにかけての部分となりますので、ここの部分についてご議論をいただきたいと思います。この部分が具体的な基準の中身でございますので、自由にご議論いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

委員の八木でございますが、私、この部会にノミネートされていながら、ちょっとほかの部会との関係もございまして、本日が初出席ということで申しわけございません。冒頭ございましたように、まとめの大事な会議ということで、これを適用する側として二、三ちょっとお願い申し上げにきょうは参りましたわけでございます。

いろいろ実務の連中ともやりまして、資料2で言えば3ページ、「将来キャッシュ・フロー」のところで、「前文」で申しますと6ページ、四の2のところでございますが、「減損損失の認識と測定」というところで、これはお願いなのでございますけれども、ちょっと申し上げたいと思います。

減損会計のキーが将来キャッシュ・フローの見積りだというのが書いてあるわけでございまして、それで、これまでの会計になかったこの「使用価値」というようなものを測定しなければいけないということになるわけで、そのときに減損損失の認識というものがここに書いてございまして、その過程で使われる期間が資産の経済的残存使用年数、20年という年限の短い方を使いなさいということになっております。この関係は実務的に見ても反対する理由はないと思いまして、これは結構だと思います。

ただ、ここで1つお願いがあるのは、実際の設備投資と申しますと、土地があり、建物があり、建物付属設備があり、中に生産設備があると、こういう非常にいろいろなものが複合されたものがあるわけでございまして、そうなると、それぞれにおいて耐用年数であるとか、使用するときの経営者のいろいろな考え方というものがそれぞれ違うんですね。そういうことで、ここでもいろいろございますけれども、要するに、特に生産設備、機械設備は複数の世代交代というのは当然のことで、私が過去にやってきた実務におきましても、やはり生産設備には問題があるけれども、別に建物とか土地そのものには全然問題がない。そういうところに対象が行くというようなことでございます。そうすると、キャッシュ・フローのインフローの測定なんかの場合に、こういう減損の事態を判断するときに、ぜひ経営者の判断する1つの見方や考え方とここのルールの決めるところとが相違って、かえって使い勝手が悪くなってしまうというようなことがないようにお願いしたい。これはルールでいちいち書くというよりは、むしろ適用指針においてこのあたりの取扱いについて多少細かい表現なり何なりをしていただくとありがたいなと思っておりまして、現実がそういうものの混合体であるということを念頭に置かれましてぜひ指針その他をおつくりいただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

これは適用指針の方の問題になろうかと思いますが、せっかくのご発言ですので、前回の部会で少し議論をいたしましたことを確認させていただきます。ここのところにつきましては、そういう現実の投資活動を縛らないようにということでございますが、この枠組みにつきましては3つ前回の部会で確認されました。

1つは、主要資産の決め方の問題で、ご指摘のような場合には、例えば土地・建物が主要資産になる場合には、そこで世代交代される備品・設備等についてはキャッシュ・フローの中身ということで、そこでいきなり第1世代が終わると切ってしまうということではなくて、主要資産の方でカウントをする。

もう1つは、仮に設備の方を主要資産とした場合には、今度は土地の方について、土地・建物の残存価格の方でもう1つカウントする余地があると。そのどちらにも当たらない場合には単独で、そこの寿命が尽きたらそれで尽きると、3段構えで投資の実態に合うような枠組みになるのではないかということが前回の部会で一応話し合われておりますので、確認方々ご報告いたしました。

○八木委員

わかりました。

○辻山部会長

ありがとうございました。

そのほかよろしいでしょうか。

品川委員、どうぞ。

○品川委員

これはちょっと質問で、私がキャッシュ・フローに対する認識不足のゆえにこういう質問をするのかもわからないので、ちょっとお許しをいただきたいのですが、先ほどご説明のあった今回修正した部分、「基準」の3ページの(4)、「前文」の6ページのマル5に関してですが、前回のタタキ台においては、資産グループに関連する間接費用は合理的に配分して、これを将来キャッシュ・フローの見積りから控除すると、間接費用といった場合には、キャッシュ・フローのいわゆるマイナス要因だというふうに考えられるから控除するというのは理解できるのですが、今回の改正案は、間接的に発生するキャッシュ・フローというのは何かプラス概念を見積りから控除するというふうに読めてしようがないのですが、また、この意見書の方もそういうふうになっておりまして、この辺はそもそもキャッシュ・フローとは何かということを含めてちょっとご説明いただければ大変ありがたいのですが。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

品川委員がご指摘のとおりでございますが、ここではキャッシュ・アウト・フローが含意されておりまして、したがいまして、控除するという表現になっております。資産又は資産グループ、その企業のキャッシュ・ジェネレーティング・ユニット、それが単独であれば(4)で言っている資産に当たりますし、複数の資産が1つになってキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットになっている場合にはその資産グループでございます。キャッシュ・ジェネレーティング・ユニット以外のところで発生するキャッシュ・フローということですから、それはキャッシュ・アウト・フローというのがここで考えられていることですから、キャッシュ・ジェネレーティング・ユニット以外のところで発生するプラスのキャッシュ・フローというのは想定されていないわけです。

○品川委員

それが混入した場合にはそれを排除するという、そういう考え方なんですか。別な単位以外のキャッシュ・フローが混入してきたらそれを除外するという、そういうことですか。

○辻山部会長

しかし、その場合には、それ自体が共通の1つのキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットを構成しますので、ここで言っている共通費は、それぞれの単独のキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットがありまして、それに共通するような、そこの外で発生するような、ここではネットのアウト・フローを想定しているからこのような表現になっておりますので、もしご指摘のような、確かにこれを読み直してみるとその辺が不明確であるということであれば、少し整理をさせていただきたいと思います。

ここで言っていますのは、それぞれ企業全体を見渡してみた場合に、それぞれユニットがありまして、そこでキャッシュが生成される。しかし、例えば本社で管理部門がありまして、そこではお金がどんどん出て行く、その出て行くものをそれぞれの減損の判定の際に、ユニットに――配分すると言うとちょっとまた誤解があるのですけれども――配分して控除しなさいと、そういう趣旨でございます。

○品川委員

それだったら前回の文章の方がすんなりと読めたものですから。

○辻山部会長

それがなぜこのようになったのかといいますと、その場合に、共通費といいますか、例えば本社がございます、その本社の減価償却費が共通費になります、この減価償却費はそれぞれのキャッシュ生成単位の生み出すキャッシュ・イン・フローから控除しないというのがここでの表現なんですね。本社は単独でまた減損の判定をしますので、本社の減価償却費をそれぞれ配分した上で、さらに本社の減損の判定というのは行わないわけです。ですから、減損の判定の対象になっている資産の減価償却費は他のところには配分しないということが、それを共通費としますとなかなか理解が難しいということです。ただ、ご指摘のとおり、誤解のないような文章に再度調整させていただきます。

○品川委員

減価償却のことを考えると、わかりました。

○辻山部会長

そのほかございますでしょうか。

秋葉委員、どうぞ。

○秋葉委員

ちょっと細かいのもありまして、3つほどあるのですけれども。

「前文」の方でいきますと6ページ目のところのマル7のところです。6ページのマル7は20年というところが入っている文章なのですが、ここの一番最後に前回の部会での議論も踏まえて、「見積期間が20年を超える場合の21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローについては、20年間経過時の回収可能価額を算定し加算することとになる」という文章を入れて、先ほどのお話のように、経過後の回収可能価額も算定するということを明確にしたのですが、ここのマル7というのはこの見積りキャッシュ・フローの期間の話なので、一番最後のずっと上から続いてくるところの延長線上でつけ加えたという位置づけにはなると思うのですが、同じ話で、主要な資産の方が他の構成資産よりも短いという場合にも、主要な資産の経済的残存使用年数が経過した時点において、他の構成資産の回収可能価額を算定して加算するというのが当然に加わるとは思うのですが、できればその旨もあらかじめ「前文」なりにでも加えられていた方がよろしいかなという気がいたします。それが1点であります。

もう1つはちょっと確認の点も含むのですが、「前文」でいくと7ページの上の方にグルーピングの話がずっとあるのですけれども、今までは余り気にしなかったのですけれども、改めて7ページ目の一番最初の「そこで」というパラグラフを見ますと、「キャッシュ・フローを生み出す最小の単位で行うことを原則的な考え方とした」ということがございまして、原則的ではない考え方というのがどういうことで考えられるか、ちょっとここら辺が気にすると気になったので、これは、意図があれば別ですが、確認をしたいと思います。

それともう1点、最後ですけれども、これはちょっと細かいのですけれども、その前のページに同じグルーピングの話がございまして、6ページ目の一番下の方ですけれども、グルーピングを行うということが1行目から2行目にかけて、「複数の資産が一体となって独立したキャッシュ・フローを生み出す場合には、減損損失を認識するかどうかの判定及び減損損失の測定に際して」ということで、減損の兆候の把握というのが触れられていないのですけれども、先ほどの「基準」のところとか「前文」のところでも、減損の兆候も資産グループ単位で行うという部分があろうかと思いますので、ここもその旨を入れた方がいいのではないかというふうに思いました。

以上です。

○辻山部会長

ありがとうございました。

ほぼおっしゃるとおりということでございます。2点目、3点目については、そのような形で検討させていただきたいと思います。秋葉委員も起草委員なのですけれども。

1点目でございますが、これは正確を記すという意味では入れた方がいいという、そのとおりだと思います。再度検討させていただきますが、そこまで詰めていくと、今度は、例えばその見積期間というのが20年であれば、20年間厳密にキャッシュ・フローを見積もるのかどうかというようなこととの関係、例えば使用価値の場合はどこかで切ってそれ以降はターミナルバリューを足すとか、いろいろなことがありますので、できればASBJの方でという、そういうレベルのことかなということですが、この点についてはそこまでは入れた方がいいのかなということもございますので、1点目につきましては次回までに検討させていただきます。2点目、3点目については、ご指摘を反映させていただきたいと思います。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

6ページの割引率のところでちょっとお願いなのですけれども。キャッシュ・フローの割引率から、割引率は企業の借入コストとか資本コストの両面を入れていくというのは当然だと思いますので結構なのですけれども、単純に、例えば借入コストだけを使うということも認めていただくといいなと思っているんですね。将来の事業計画というのは得てして振れ幅というのが必ずあるものでございますし、それから、当然、キャッシュ・フローのようなものも見積りに誤差というのが出てくるわけで、この辺のことについては、例えば割引率だけに細かいルールをつくってみても、それはちょっと理論に走り過ぎというのが現実になるケースもあると思うので、この辺は少し振幅を持ってお決めいただければと思っております。これが1つです。

それからもう1つですけれども、資産のグルーピングなのでございますけれども、ここで我々の方から一回以前に、たしか連結ベースの認識でやらせてくださいと、個別の方はもういいのではないですかというようなことを申し上げて、それはだめだよと、やはり二元規制があるのだから個別は個別だと、これはもちろん納得なのでございますけれども、例えば、先ほどもちょっとお話がその点に触れたかと思うのですけれども、やはり最近は親会社と子会社がほとんど一緒になって似たようなものをつくるとか、いろいろなビジネスのつながりが非常に密でもございますので、この連結決算におけるグルーピングが個別のそういうものを重視しながらも、やはり連結で見たときにまたちょっと違ったフェーズが見えてくるというような場面があるわけで、個別会社の方では減損の適用だと言っても、それを連結によって振り戻すという場面が現実としてはやはりあるのではないかと思うので、そういうことを実際の実務の上では認めていただくようなそういう適用指針づくりというのか、そういうのも必要ではないかと思うんですね。ですから、その辺はぜひご勘案いただければと。

個別を全く無視するという意味ではなくて、個別の積み上げが連結で、しかし、そこでまた見たときに、経営上、一体で見たらそこまで至っていないのだと、こういうものもあり得ると思うので、この辺をぜひご勘案いただければと思います。

○辻山部会長

1点目につきましては、また適用指針のところで反映されると思いますけれども、2点目のことは「前文」の7ページのところで、今回、その視点といいますか、ご指摘の点について、これが該当箇所でございまして、これは特に逆瀬委員のご指摘もございまして、ここに反映されていると思います。

○八木委員

ありがとうございました。

○辻山部会長

奥田委員、どうぞ。

○奥田委員

「前文」の6ページのマル7の一番最後の部分ですけれども、「短い期間又は20年間経過時の回収可能価額を算定して加算する」という記載になっておりますけれども、この文章からすると、20年以降の将来キャッシュ・フローというのは回収可能価額に本来含まれていないがゆえに加算するということなのかちょっと確認したいという点があります。

というのは、収益性の資産であれば、回収可能価額の中に将来キャッシュ・フローが含まれて算定されるというのが普通の考え方ではないかと思いますので、もしそういうことであれば、この表現は「回収可能価額の算定に含まれる」とか、そういうような表現の方が正しいのではないかというふうに思いますけれども。

○辻山部会長

ちょっと今のご指摘の趣旨がわからないのですが。ここは、割引前キャッシュ・フローを年々20年間足していきまして、それ以降生まれてくるキャッシュ・フローを21年目の期首あるいは20年目の期末まで、使用価値を計算する場合ですと、21年目以降についてはその時点までに割引いてそれを足し込むということで、そこで終わりということであれば正味売却価額になろうかと思いますけれども、そういう趣旨なのですけれども。

○奥田委員

今の文章ですと、回収可能価額にキャッシュ・フローを加算するというふうに読めるんですね。ターミナルバリューが回収可能価額ではないかというふうに思いましたので、そうであればキャッシュ・フロー自体はもう回収可能価額の中に含まれているということではないかと思いますので、文章がちょっとわかりにくいのではないかと思いますけれども。

○辻山部会長

わかりました。では、文章については検討させていただきますが、要するに、21年目以降に見込まれる将来キャッシュ・フローを回収可能価額としてまとめてこれを足し込むと、そういう趣旨でございます。

そのほかございますでしょうか。

斎藤委員、どうぞ。

○斎藤委員

これは単なる文章表現の問題です。十分に練った上のことですので、多分、問題ないだろうと思っておりますけれども、念のために確認させていただきます。

資料1ですと7ページにある「共用資産」のところで、「共用資産に減損の兆候がある場合の」という表現がございますが、これはわかるんでしょうね。つまり、減損の兆候というのは、「基準」でいきますと、常に主語は「資産又は資産グループ」であって、それについて回収が十分可能かどうかということを問題にしているわけですね。そうしますと、主語は「共用資産」で、その共用資産について別に回収可能かどうかということを直接問題にしているわけではないわけですよね、ここは。つまり、意味としては、共用資産を含めたときに関連する資産グループに追加的な減損が生じている兆候がある場合という意味ですね。

○辻山部会長

その点はちょっと違うかもしれません。

まず、今回の基準で諸外国の基準とちょっと異なりますのは、それぞれのキャッシュ・ジェネレーティング・ユニット、これで減損の兆候をとらえ、かつ、認識・測定というふうに入っていくわけでございます。そのときに、本来は、共用資産がありましたら、共用資産をまず配分して、配分した上でのキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットの減損の判定ということになるわけですが、日本基準ですと、仮に共用資産の簿価を配分できない可能性の方が高いということで、共用資産は別途の判定対象にしましょうということになっております。

ですから、まずキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットの減損の判定というのは、共用資産を外したところで判定ができますというのが原則処理になっています。そのときに、今度は共用資産を含めたより大きなグルーピングをして、共用資産を含めたところでもう一度減損の判定を、例えば本社建物ですと全社でカバーできるのかどうかそれをやってくださいと。そのときに、本社建物である共用資産に減損の兆候があるときはそちらの手続もやってくださいという意味なんですね。ですから、この場合には、ご指摘のところでいきますと、兆候としては特に本社建物の時価が著しく下落しているようなときには、大きな単位で減損の調査をもう一度しなさいと、そういう趣旨でございます。

○斎藤委員

わかりました、ありがとうございました。

ちなみに、それはのれんも同じと考えてよろしいんですね。

○辻山部会長

のれんについてというのはどのようなことでしょうか。

○斎藤委員

のれんについても同じ表現があるものですから。9ページの上から2行目に、「のれんに減損の兆候があるかどうかにかかわらず」という表現がありますので、そこもちょっと。

○辻山部会長

のれんについては、今の共用資産のように、時価が著しく下落ということはございませんので、のれんについては、絶えずそののれんを含む全体の大きな単位で、収益性が低下してきたときには測定に入るということでございます。

ただいまのご指摘の具体的な箇所でございますが、9ページですね。これは、のれんの減損の兆候があるかどうかというのは、代替処理でのれんをまず配分した後にやりなさいと言っているときには、必ず配分してからそれを込みで判定しなさいという、そこのくだりでございます、9ページの一番上のところは。

○斎藤委員

わかりました。趣旨はよくわかりますが、問題は、誤解がなければそれで十分です。

○辻山部会長

誤解が生まれるようであれば検討させていただきます。

伊藤委員、どうぞ。

○伊藤委員

意見書の6ページの(5)なのですが、「使用価値の算定における見積りから乖離するリスク」という言葉が入っているのですが、できましたらIASと同じようなリスクの例示のようなものを出していただくと理解しやすさがあるのではないかというふうに思うのですが。それが1つです。

もう1つ、一番上にありますマル5の本社等のものなのですが、私は、下から2行目から3行目の「合理的な方法により配分し」というのは、実務はそうしているのだろうと思いますが、これは恐らくキャッシュ・フローを控除しなさいということを言おうとしているのだと思いますので、「合理的な方法により配分し」というのは削除してはどうかと思うのですが、いかがでしょうか。

○辻山部会長

この点は先ほどの品川委員のご指摘の箇所とダブっておりますので、間違いのないようにもう一度修文させていただきます。配分するということと控除するという言葉は、加算するように読めたり、マイナスするように読めたりしますので、その辺は再度調整させていただきます。

リスクにつきましては、ここに書き込むということは現在は考えておりません。

清水委員、どうぞ。

○清水委員

今の箇所の、6ページの一番上のマル5なのですけれども、言葉の使い方はともかく、考え方は非常に合理的でわかるのですけれども、ただ、そもそも間接費というのはそれぞれのキャッシュ・フローの生成単位にひもつきになっているわけではないので、会社全体のキャッシュ・フローがプラスである会社においては、必ずしも配分してマイナスにしなくてもいいのではないかという考えを持っている人もいるようなので――そうなると確かに、ではどう分けるのかというのが難しくなってしまうのですけれども、少なくとも会社全体にプラスになっていれば、配分して減損の対象にしなくてもよろしいのではないかという意見が会計士さんの中からもあったということをちょっとお伝えしておきたいと思います。

○辻山部会長

これは、冒頭でも申し上げましたように、次回で、意見書という、公開草案に一応まとめる予定でございます。これまでの議論の中では、先ほど、別途の減損の判定の対象となるものの減価償却費は別ですけれども、それ以外のキャッシュ・アウト・フロー、正味の支出、これを個々のキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットの減損の判定の際に反映させるべきや否やということについて議論をしてまいりまして、これは反映させるというのが一応この部会でのこれまでの議論の結論であったかなと思いますので、ただいまの清水委員のご指摘は、それを覆す余地があるのかどうかということですので、この点についてほかの委員のご発言がございましたら検討させていただきますが、そうでなければそれは反映されない形で公開草案がまとまるということになりますので、ほかの委員はいかがでしょうか。

それぞれのキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットの減損の判定の際には、ほかで大きなキャッシュ・アウト・フローが共通してどこかで発生しているものは考慮外とするという今のご意見でございますが、しかし、大きな単位では必ず判定をいたしますが、個々のキャッシュ・ジェネレーティング・ユニットのレベルでは、共通して出ていくような経費は考慮外としてよろしいと、この点についてご意見はございますでしょうか。

太田委員、どうぞ。

○太田委員

今の論点は、「関連する資産又は資産グループに合理的な方法により配分し」という、合理的をどう考えるかというところにちょっと落とし込むという結論だったように思っているのですが、違いますか。

○辻山部会長

それはもちろんそういうことです。

○太田委員

それで解決できないのでしょうか。

○辻山部会長

清水委員の今の件については、必ず簿価で比例配分しなさいというようなことではなくて、例えば売上高等を勘案して配分すると、簿価以外のものは全然考慮外とするということではありませんよという、そういうことでございますが、いかがでしょうか。

○清水委員

考え方としては、確かにどこかで負担しなければならないと思いますのでわかるし、私も以前からそういう考え方だったのですが、ただ、ひもつきになっていないところでちょっと議論される余地があるのかなと。全体で見てプラスになっていれば間接費についてはどこかで持てるわけだから、必ずしも落とし込んで減損対象にしていかなくてもいいのではないかという考えが何人かの先生からあったものですから、ちょっとお伝えしておくという趣旨です。

○辻山部会長

本当に具体的な実務のレベルになりますと、例えば本社費、減価償却を除いた本社費をどのように各キャッシュ・ジェネレーティング・ユニットが持つのかということについてはさまざまな配分の方法がございますので、かなり多く持てるところは大きく持つようなそういう仕組みをつくれば、おっしゃるように、形式的な配分ではございませんので、その投資の意思決定と著しく乖離するようなことにはならないのではないかというのが今の太田委員のご指摘で、部会でもそのような話し合いであったと思います。ただ、個々のレベルでは全く考慮しなくてよろしいということではなかったと。

よろしいでしょうか。

ほかにご意見がなければ……。

大塚委員、どうぞ。

○大塚委員

「前文」の5ページなのですけれども、マル4の3行目なのですが、「使用価値の算定に際しては基本的に同じ結果が得られるものと考えられる」という、この文章はないとまずいですかね。2つの反映させる方法があるというだけではまずいですかね。

○辻山部会長

これにどういう引っかかりが。

○大塚委員

これをもし本当に等しいとすると、割引率を毎年毎期に全部変えなければいけないとか、いろいろなすごいケースが出てきますよね。恐らく実際は同じ単一の割引率を使うと思うんですよね、リスクを入れたものとしても。そうすると、分子の方のキャッシュ・フローで修正した場合と分母でやった場合で等しくならなくなるというケースも出てくると思われるので、厳密にこういうことを想定するとすると、割引率でもって調整する場合には毎期違ってこなければいけないということになるから、非常に面倒になってくるのではないかなということを恐れて、それでちょっと申し上げているわけです。割引率というのは、二乗とか三乗とかになってきますので、その影響が出てくる可能性があるので、毎期の割引率をリスクに応じて変えていくという前提になればいいのですけれども、恐らく現実にはそういうことはしないでしょうから、それでちょっと気になったので、もしなくても通じるのだったら余り理屈は書かなくてもいいのではないかなとちょっと思ったので。

○辻山部会長

ここは、理屈でそうしなさいと言っているわけではなくて、理屈上はそういう一致させるような方法もありますよと、しかし、割引前の方を見た場合には、どちらでもいいということですと完全に理屈上も違うことになりますよということを言っているだけですので、使用価値は同じように割引率を調整させなさいということはどこにも言っていないわけです。理屈上は同じことになる可能性がある。しかし、割引をすることを前提にしたキャッシュ・フローの場合には、リスクを反映させてもさせなくても、させない場合には割引率の方で調整されるので、それはどちらでも企業が自由に使ってよろしいと。一方、割引前の方は、割引きませんので、そこにリスクを反映させるかさせないかで2通りの異なる結論が出てきます。したがって統一したという趣旨でございますので、ご心配のようなことを書いているところではないのです。

○大塚委員

そうであれば結構です。

○辻山部会長

ありがとうございました。それでは、もう1つ重要な部分が残っておりますので、先に進めさせていただきたいと思います。

最後のところでございますが、今度は減損処理後の会計処理で、「前文」の方ですと9ページの一番最後のところから最後まででございますが、財務諸表における開示、ファイナンス・リースの取扱い、実施時期、投資不動産というところの範囲でございます。「基準」では5ページ以降の部分となりますので、この部分についてご意見があればお出しいただきたいと思います。

八木委員、どうぞ。

○八木委員

今、9ページの一番下の「会計処理」のマル1の減価償却、それから、マル2に減損損失の戻し入れとありますけれども、まず最初に後の方からいきまして、「減損損失の戻し入れは行わないこととした」。これは我々としても賛同でございまして、IASのようにどっちもというようなニュアンスがあるのとは違って、こうすべきだと思っております。

それから、冒頭のところで、これはお願いなのでございますけれども、このマル1のところの表現が非常にシンプルに2行で終わっているというのに深い意味があるんだなと思っておりまして、減損処理後の帳簿価額に基づいて減価償却を行うんだよと、それ以上細かいことはお書きになっていないので、これはまさに実務をやるものとしてはこれは結構だと思うのでございますね。減損処理を行ったもの、それから、行うような兆候があったけれども認識に至らなかったもの、いろいろな資産が実態としてあると思うのですけれども、それが今の我々のやっている、例えば減価償却計算とか、そういったものを粛々とやっているところに影響するというようなことがないようなことが望ましいなと思うわけでありまして、実際は耐用年数の問題と実際に使っている使用年数とか、いろいろ現実はあれより長く使っているケースがたまたまあるわけですが、そういうところを考えますと、シンプルな2行に非常に意味があるなと思っておりまして、ぜひ今度のこの意見書によって実務に対するものが厳格化しないように、これをお願いしたいなと思っております。

以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかございますでしょうか。

奥田委員、どうぞ。

○奥田委員

1点教えていただきたいのですが。

投資不動産の扱いについて、11ページ、12ページの方なのですが、時価情報の注記については、これはいろいろな問題、意見から今後の課題ということになっているわけなのですが、「今後の課題」という意味は、実施時期までに明確にするのか、あるいは、明確にせずに、当面確定するまでは時価情報の注記はしないという方向を示しているのか、ちょっとその辺の確認と、あと、戻ってしまうのですけれども、先ほどのご質問のあった割引率のところの記載で、6ページの「使用価値の算定」の方の記載の部分なのですけれども、6ページの(5)に使用価値の算定の方に用いられる割引率の中で、「割引率は貨幣の時間価値と将来キャッシュ・フローがその見積値から乖離するリスクの両方を反映したものとなる」というふうに書いてありまして、これはそのとおりかと思うのですけれども、ここに書いてある趣旨も、割引率を例えば割引期間に応じて変えなければいけないとか、そこまで厳密に言っているわけではないという理解でよろしいのでしょうか。

○辻山部会長

そういうことでございます。

1点目でございますが、このお示ししておりますのは公開草案でございますが、意見書の公開草案でございますので、このまま通れば、公開草案に対する意見を反映させてこれが確定するということでございますので、投資不動産に関する時価情報の注記については今後の課題になるということでございます。要するに、注記をしないということでこの部会では当面合意を得たと、今後の課題として示すに止めたという、このとおりでございます。

○奥田委員

例えば、今、不動産投信等が行われているわけなのですが、その中の報告書を見ると、期末ごとの、決算期ごとの資産となっている不動産の価格といったものが既に公表されておりまして、こういったものは投資家にとって有益でない情報とは言えないと思うわけなんですね。例えばそういったような実務で行われているようなこと等も勘案して、はっきり有益ではないという理由を重視して今回は注記しないという方向でいいのか、ちょっと若干気になるというか……。

○辻山部会長

この点でございますが、もう一度確認させていただきますと、両論があるということで、当部会において有用ではないと言っているわけではございませんで、2つの意見がありますよと。11ページ~12ページにかけて、まず、注記をすることが適当であるという意見がある、一方、注記をすることは適当でないという意見がある、適当でない意見の理由としてこういう意見が述べられていますよということで、当部会が有用でないというふうに宣言しているわけではございませんので。

奥田委員は、前者の意見ですか。

○奥田委員

そうですね。実務的にも、例えばもう既に開示されているものもあるという一方で、それはそれとして置いておきながら、こちらでは投資不動産の時価情報の注記はしないということを言っているそのバランスがちょっとどうかなというふうなことを気にしているだけで、別にこの方針を頭から否定するとか、そういうことではございません。

○辻山部会長

この問題についてはこれまで議論してきたわけでございますが、一応部会の結論としては、両論ありまして、どちらがマジョリティーというわけではございませんが、一応現段階ではやらないということで、今後さらにその機会があれば検討するという、このとおり「今後の課題とすることとした」ということでございます。ですから、この基準が実施されるまでに投資不動産についてさらに議論を詰めて、という趣旨ではございません。

この点についてはいかがでしょうか。

太田委員、どうぞ。

○太田委員

ちょっとスタンスの確認なのですが、この点について、時価を注記すべきであるということと、してもいいし、しなくてもいいという立場と、してはいけないという、大きく3つあり得るかなと思うのですが、そのうち、どちらかというと真ん中の、してもいいし、しなくてもいいというあたりなのかなというふうに個人的には思っていたのですが、そこはどうなんでしょうか。してはいけないというような、そこまでは行っていないように個人的には理解していたのですが。

○辻山部会長

太田委員のご発言は、監査の対象となる会計情報の中に、してもいいし、しなくてもいいと、こういうご発言ですか。

○太田委員

スタンスとして、逆に言うと、してはいけないという、そういう意味にとるべきということですか。

○辻山部会長

これは、現段階では、この「基準」の意見書では、注記についてはしないという、今後の課題とするということでございます。いつまでもしてはいけませんということを言っているわけではございませんが。ただ、太田委員のご発言は、監査対象になる情報の中にこれを入れて、どちらでもよろしいと、こういうご発言ですか。

○太田委員

いや、そこまで深く考えておりません。

○辻山部会長

監査対象以外で企業が独自に開示をするという、そこまで言及をしているわけではございません。

この点についてご発言はございますでしょうか。

よろしいでしょうか。

それでは、特に今回は実施時期が空欄になっておりますけれども、10ページのところでございますが、余り議論をしておりませんでしたが、残りの時間でこの点について少しご議論いただきたいと思います。もしご意見のある方がいらっしゃいましたら。

どうぞ、八木委員。

○八木委員

実務の方から、これまでもいろいろこのことについてはしつこく申し上げてきて、ここは今はブランクでございますけれども、あわせて同様の意見を申し上げたいと思うのでありますけれども。

結果的に、私どもが今まで申し上げていたのは、1年間の準備期間というのはぜひ置いてくださいというお願いと、適用指針ができるまでのかれこれ1年というのをいろいろ考えていただくべきではないかというようなことを、これまでも折に触れ申し上げてきたわけですが、それから、こっちが勝手に推算いたしますと、ちょうど今はこういう段階に来ておられて、意見書そのものがことしの夏ごろに例えば仕上がる、それから、適用指針の方にかかって、これも勝手に考えますけれども、大体1年ぐらいかかって2003年ぐらいにはそれが仕上がる、それから、周知徹底期間がまた1年ぐらいかかるのではないかと、それで2004年末ぐらいにそれが徹底する。そうすると、実務として強制適用というのを考えたら、2005年4月あたりから始まるのが妥当ではないかというふうに勝手に思っています。2006年3月期ということですね。それはもう実務界としては、ぎりぎりでもそこまでにはやらなければいけないと思っております。

ただ、昨今いろいろ新聞その他でも、土地の再評価の問題とかいろいろなことを絡めて、減損会計を適用していくというような考え方の企業が非常に多いのでございますけれども、だから、そういう前倒し適用を妨げるものではないということは当然その1年前とか何とかで、それが現実ではないかなと思っておりまして。一応、業界の方ともいろいろ話し合ったところでも、この辺がある種のコンセンサスだというふうに申し上げることができると思います。

以上でございます。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

ただいまのご意見では、強制適用ということを考えた場合には2005年の4月、早期適用はできるということでございますね。この点について、特にご発言の中で実務指針の問題が出ましたので、適用指針をご担当になる予定の都委員、何かご意見はございますか。

○都委員

今のご発言の中にもございましたとおり、基準が固まって以降、適用指針を詰め始めるわけですけれども、我々としてもこういった常設の機関でありますので急ぎますが、やはり何と言っても従来にはない内部情報に基づいたいろいろな計理処理をするということでございますので、1年という期間は十分に置かなければいけない、しかも、やはりそれで出たものをまた企業が実務にきちんと落とし込むために周知するためにも、その理解を含めて時間がかかるだろうというようなことを考えますと、今ご提案のスケジュールというのは大変リーズナブルなお考えだと思います。

○辻山部会長

いかがでしょうか。

ただいまのご意見の中では、基準、適用指針と、準備を含めて整うのが2004年の夏ということなので、2005年4月適用としてはどうかというご意見がお二方から出ました。この点についていかがでしょうか。

品川委員、どうぞ。

○品川委員

先ほどのご説明の中で、前倒し適用を否定するものではないと、その前倒し適用というのはどのぐらいのことをお考えなのでしょうか。

○八木委員

結局、昨今の実務で非常に大変なのは機械化とか、そういった意味の実務的な、特にこれは相当いろいろな減価償却も絡めてしっかりしたシステムが必要かなと思っておりまして、こういうものを構築するのにそういう面でも時間がかかるかなと思っております。

○品川委員

具体的には。

○八木委員

ですから、すっといけるのが1年というようなタイミングですね。いろいろな意味で準備をして、早めにやろうという会社がもちろん出てくるかと思うのでございますが、そういう気持ちでおります。

○品川委員

早ければ2003年でも可能だということですか。

○八木委員

そうですね。その辺は……。

○辻山部会長

逆瀬委員、どうぞ。

○逆瀬委員

その辺についてはいろいろ、実務者レベルといいますか、担当者レベルといいますか、実際にそれに携わっているレベルの方々と、既にこの数年前からいろいろな形で、再評価法なんかも絡めたものもありますが、実践としてそういうことが起きていることもあるということを踏まえて、おおむねルールが明らかになった段階という意味では強制適用の1年前――これはもちろん入りますけれども、頑張ってもそのもう1年前までに、意見書の内容等が既に出ているわけなので、実務として可能であれば、そういう企業の任意適用も含めて認めていただければ、実践のニーズからいってそういうこともありますので、できれば2年程度前倒しを認めるというような声を汲んでいただきたいということでございます。

○辻山部会長

そうしますと、早期適用については2003年の4月以降認められる。基準が、その前に当然固まっていなければいけませんけれども、ということですね。この点についてご指摘はございませんか。

川村委員、どうぞ。

○川村委員

この基準が適用される期間が、例えば4月1日からとして、減損処理を決算日にやれということは別に書いていないわけですけれども、4月1日現在で減損処理をするのか、それとも、次の年の3月31日にやれとか、要するに、期首現在で減損処理をするのか、期末でやるのか、この辺がちょっと問題にならないかと思いますので確認させていただきたいのですけれども。

○辻山部会長

減損処理は期中に随時行うというのか、期末に行うのか、この点のご確認ですか。

○川村委員

初年度適用のときに、期首で強制するのか、それも含めてでございます。

○辻山部会長

初年度適用の期首のことですか。

○川村委員

それか、その次の3月31日なのか。

○辻山部会長

期首に一斉に日本全国が減損の調査に入るということではないというふうに考えておりましたが、初年度の、したがって2005年4月からということであれば、2006年3月期に減損について処理を行うという理解でしたが、この点についてはいかがでしょうか。ほかに異なる理解があったのであればお出しいただきたいと思います。

奥田委員、どうぞ。

○奥田委員

以前にも質問させていただいたのですけれども、評価をするときには価格時点とかというのがあるわけですけれども、この減損の場合には兆候がどの時点である場合にやるのか、その辺を明確にしていただきたいというお話を以前にさせていただいたかと思うのですが、それがその後どうなったのかというのをちょっと教えていただきたいと思います。

○辻山部会長

そういうこともございますので、基準が固まりましてから、ただいまのようなことが適用指針の検討対象になろうかと考えております。

太田委員、どうぞ。

○太田委員

私は、2005年の4月1日以降開始事業年度ということですと、中間でどうするかということが委員会の方で実務指針で決まればその中間期から、そうでなければ2006年3月末に一斉にやるということをイメージしていたのですが。

○辻山部会長

わかりました。

2005年4月1日以降の中間決算というふうに、その時点の減損の兆候があれば手続に入ると、そういうことだと。その点についてはまた具体的な適用指針の問題になろうかと思います。ほぼそのような理解でよろしいのではないかと思いますけれども。

それでは、全体で、冒頭でもお話し申し上げましたように、そろそろ公開草案が確定の段階に来ておりますので、全体を通して何かご意見はございますでしょうか。

小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員

前にも申し上げたと思うのですけれども、実施時期のところで、今の間隔を聞いていますと、3年間ぐらいのうち、2年間ぐらいはどちらでもいい期間があって、最後の1年間が強制になるというふうに感じたのですけれども、やってもやらなくてもいいということになると、やはり会計基準には適合していても、おかしな事例が出てくると、アメリカで典型的に問題になったような問題が出てくる可能性がないわけでもないので。この減損の兆候を見ていると、来年の3月から開示することになる継続企業の開示と非常によく似た兆候があるんですよね。それにつながるようなことというのは積極的に開示すべきだというのは監査基準の改訂の方で入っていたりして、何かこの辺はあわせて考える点があるのではないかなという気がしています。余り言いますと自分に戻ってきますので、それ以上は言いませんけれども。

○辻山部会長

どうもありがとうございました。

そのほかいかがでしょうか。

よろしいでしょうか。

それでは、予定の時刻より多少早いわけでございますが、本日の部会はこれで終了とさせていただきたいと思います。

最初に申し上げましたように、次回の部会で公開草案の内容を固める方向で進めることにしたいと思います。

そこで、次回は、本日の議論を踏まえまして、ご指摘を反映させながら、起草委員と事務局でもう一度今日お示しした資料に基づきまして意見書として全体を一体としたものを公開草案の体裁で整えて用意させていただきたいと思います。

本日ご発言できなかった委員の中でご意見のある方は、後日、事務局の方にご連絡いただきますようにお願いいたします。

最後に、次回の当部会の日程でございますが、4月12日(金)午後2時からを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。正式には改めて事務局から皆様方にご連絡をさせていただきたいと思います。

本日は、皆様方にはお忙しいところお集まりいただきまして、ありがとうございました。

これにて散会とさせていただきます。

ありがとうございました。

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