企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成23年8月25日(木曜日)16時00分~18時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成23年8月25日

○安藤会長

それでは定刻を過ぎましたので、これより企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様にはご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

まず会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様、本日の総会も企業会計審議会の議事規則にのっとり、会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ありがとうございました。そのように取り扱います。

本日の合同会議は、自見金融担当大臣にご出席いただいております。最初に大臣よりごあいさつをいただきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。

○自見大臣

ご紹介いただきました金融担当大臣の私、自見庄三郎でございます。企業会計審議会総会、また企画調整部会合同会議の開催に当たり、ごあいさつを申し上げます。委員の皆様方には格段のご協力をいただいておりまして、改めて厚くお礼を申し上げます。

前回の本合同会議では、私自身、開会から閉会まで出席させていただきましたが、委員の皆様方からさまざまなご意見をお伺いすることができました。大変ありがとうございました。引き続き国際会計基準についての議論を行っていただきますが、検討に当たっては、我が国の国益を踏まえ、戦略的思考、グランドデザインを形成することが重要であります。そのためには国際的状況を的確に把握するとともに、学術的検討を含め、広く関係者から意見を聴取し、丁寧かつ十分に時間をかけて実態、現実に即した議論を進めていくことが適当であると考えております。また、諸外国の実態については、必要に応じて調査ミッションの派遣なども考えられると思います。

企業会計は経済の基本であります。したがって、国際会計基準に関する審議に当たっては、単なる技術的議論に限定することなく、より広く、会計基準が非上場企業、中小企業を含めた多様な企業の経済活動や税法、会社法、各種業規制など、周辺に存在する制度、金融資本市場等に与える影響等をよく認識し、これらを整理した上で会計的な筋道を示しながら、議論・検討を行っていく必要があると考えております。

委員の皆様におかれましては、予断を持たず、日本経済が心から元気になるように、さまざまな立場から自由かつ活発で成熟された議論を重ねてお願いいたし、簡単ではございますが、私のあいさつとさせていただきます。ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。ここで報道の方はご退席ということになっております。

(報道退席)

○安藤会長

それでは、審議に入ります。

前回の合同会議は6月30日でございました。そこでは、国際会計基準につきまして、さまざまなお立場からのご意見を伺うことができました。本日は、まず前回の合同会議以降、新たに会計基準をめぐる国際的な動向に動きがございましたので、「会計基準をめぐる最近の国際的動向について」、事務局より説明していただきます。次いで、「今後の議論・検討の進め方(案)」につきまして、やはり事務局より説明していただきます。

その後、十分な時間をとりまして、委員の方々からご意見を伺ってまいりたいと存じます。

それでは、まず「会計基準をめぐる最近の国際的動向について」、事務局から説明をお願いします。

○栗田企業開示課長

8月2日付で企業開示課長を拝命いたしました栗田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは座ってご説明させていただきます。

お手元に資料を3点ご用意させていただいております。ご確認いただければと思います。1つ目は横の紙でございまして、資料1「会計基準をめぐる最近の国際的動向について」というもの。それから、縦の紙でございますが、資料2「今後の議論・検討の進め方(案)」。もう一つ縦の紙でございますが、参考資料「在日米国商工会議所によるIFRSの導入に関するコメント」。あわせて3つの資料を用意させていただいております。

まず、資料1「会計基準をめぐる最近の国際的動向について」という紙についてご説明させていただきます。3点ご説明させていただきます。

表紙をめくっていただきまして、まず第1点目でございます。これは、IASBと米国のFASBによるコンバージェンス作業の状況についてのご報告でございます。全体としてコンバージェンス作業が遅れているということでございます。一番上の○、2011年4月21日にIASBとFASBは、コンバージェンス・プロジェクトの数か月延期ということを公表しておりまして、これより以前におきましては金融商品会計の減損・ヘッジ、収益認識、リースにつきましては2011年6月に完了する予定ということにしておりましたが、この4月21日に、これらを2011年中に完了というふうに半年ほど延期いたしました。

さらに6月になりまして、IASBが公表いたしました作業計画によりますと、同じく金融商品会計の減損・ヘッジ、収益認識、リースについて完了時期をさらに延期しておりまして、金融商品会計の減損につきましては2012年以降、ヘッジにつきましては2011年以降、収益認識、リースにつきましては2012年前半というふうに、さらに半年から1年遅らせているということでございます。

さらに7月になりまして、もう一段延期になっておりまして、収益認識、リースにつきましては完了時期を2012年中というふうに延期しております。

この結果、今年の4月時点に比べますと、重要なMOUプロジェクトの幾つかの項目につきまして1年半から、さらに長いものでは2年以上の遅れというような状況になっているということでございます。これが1点目でございます。

2点目は、ページをめくっていただきまして、IASBの今後の戦略的方向性・作業計画に関する市中協議でございます。

IASBが今年7月26日にアジェンダ・コンサルテーションを公表いたしまして、パブリックコメントを開始してございます。コメントの期限は今年の11月30日ということになっておりますが、この市中協議は、一番上の○にありますように、IASBにおきます今後3年間の戦略的方向性、それから全体的な将来の作業計画について広く関係者の意見を求めるというものでございます。

質問事項は、幾つかあるんでございますけれども、主なものをそこに掲げさせていただいております。

1つ目がIASBの戦略的優先事項はどうあるべきかということ。また、今後3年間で優先事項のバランスをどのように調整するのかということでございます。

2つ目が、IASBの考える主要区分2つ、それから、戦略的分野5つ、これについてどう考えるかということでございます。主要区分2つと申し上げましたのは、ここにあります財務報告の開発、それからIFRSの維持管理ということでございまして、その中に戦略的分野がそれぞれ3つ、2つ書いてあります。1つ目の主要区分の中では、概念フレームワークの見直しの完了、表示・開示のフレームワークの開発、それから調査研究への投資、財務報告に関する戦略的論点への対処、さらに基準の新規開発もしくは修正によるIFRSにおける欠陥の補充。それから、2つ目の主要区分の中の戦略的分野が、新規IFRS及び主要な修正に関する適用後レビューの実証を通じたよりよい理解、それからIFRS適用の一貫性及び品質の改善ということでございます。これらについてどう考えるかという意見が求められております。

それから、3つ目でございまして、個々の基準開発プロジェクトにつきどのプロジェクトを優先すべきかということでございます。

その中で、特に我々として関心がございますのは、リサイクリングにつきまして特別に記載がある点でございます。リサイクリングについて、他の論点を検討するプロジェクトとは切り離して、その他包括利益等のプロジェクトで検討する可能性がある。要するに、他とは切り離して、リサイクリングに関するものをまとめて検討する可能性があるという言及が特になされておりまして、この点、興味のあるところでございます。以上が2点目のことでございます。

それから、第3点は、EEG(振興経済グループ)の設立についてでございます。

これに関しましては、その次のページに参考としてサテライト・オフィスの東京への設置に関する資料をつけさせていただいております。今年2月11日にIFRS財団がアジア・オセアニア地域のサテライト・オフィスを東京に設置することを公表しておりますが、つい先月、7月にIASB内にEEGというグループが設立されております。メンバーは、G20の新興経済国とマレーシアでございまして、その目的とするところは、IFRSの策定過程における新興経済国の影響を強化し、新興経済国のIFRS導入を促すことを目的とするということでございます。このグループの設立をどう捉えるかということについては、それぞれいろいろな見方があろうかと存じますけれども、その下にありますように、このグループの副議長は中国財務省の局長が就任しておりまして、本部は中国に置いてある。それから、初回の会合も中国の北京で開かれているということでございまして、全体として見ると中国がかなり主導して形成されたという印象が強いグループでございます。以上がEEGの設立に関する事項でございます。

それから、この国際的動向に関連いたしまして、米国商工会議所がIFRSの導入に関するコメントを出しておりまして、それを参考資料としてお配りしております。これについては特にご説明することはいたしませんが、参考までに提示させていただきます。私からは以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ご質問、ご意見等につきましては、この後の説明の後にまとめてお受けいたしますので、よろしくお願いいたします。

続きまして、当審議会における「今後の議論・検討の進め方(案)」について、事務局から説明をお願いします。

○栗田企業開示課長

続きまして、「今後の議論・検討の進め方(案)」についてご説明させていただきます。資料の2でございます。まず読ませていただきます。

今後の議論・検討の進め方(案)

企業会計審議会において、今後、国際会計基準について審議するに当たっては、会計基準に関する技術的議論に限定することなく、より広く、会計基準が、非上場企業・中小企業も含めた多様な企業の経済活動や税法・会社法・各種業規制など周辺に存在する制度、金融・資本市場等に与える影響等をよく認識し、これらを整理した上で、体系的な道筋を示しながら、議論・検討を行うことが適切である。

また、海外における取組みも参考にしつつ、海外視察を通じた国際的状況の的確な把握を行うとともに、学術的検討を含め、広く関係者からの意見を聴取し、丁寧かつ十分に時間をかけて、予断をもたず実態・現実に即して議論・検討を進めていくことが適当であると考えられる。

国際会計基準を巡る各国の対応は局面に応じて変化してきているところであり、その中で、現在の日本基準がどのような性格を有し、どのような国際的位置づけとなっているのか、我が国企業や金融・資本市場が今後どうあるべきか、そのために会計基準はどのようなものとすることが適当か、といった点について、我が国の国益を踏まえ戦略的思考・グランドデザインを形成することが重要である。

以上のような考え方を踏まえ、現時点で検討が必要であると考えられる主要な項目を列挙すれば以下のとおりである。もちろん、議論の進捗に従い、また、局面の変化に応じて論点が加わることは当然想定される。

ということでございまして、主要な項目として、ここでは11項目掲げさせていただいております。「我が国の会計基準・開示制度体のあり方」「諸外国の情勢・外交方針と国際要請の分析」「経済活動に資する会計のあり方」「原則主義のもたらす影響」「規制環境(産業規制、公共調達規則)、契約環境等への影響」「非上場企業・中小企業への影響、対応のあり方」「投資家と企業とのコミュニケーション」「監査法人における対応」「任意適用の検証」「国内会計基準設定主体(ASBJ)のあり方」「国際会計基準設定主体(IASB)のガバナンス」などでございます。

もちろん検討項目は、これに限定されるということではございませんで、こういう項目ももっと議論すべきであるというようなご意見があれは、ぜひお出しいただければと存じます。

それから、これに関連いたしまして、前回の会議でも少し議論になっておりましたけれども、企業会計審議会と企業会計基準委員会の役割について、前回の議論をもう一度整理させていただきまして簡単にご説明させていただきます。

IFRSのコンバージェンスのあり方など、会計基準をめぐる国際的な動きへの対応につきましては、これまで企業会計審議会で議論・検討していただき、ASBJにおいては、こうした大きな方向性を踏まえて、個々の基準開発やIASBへの対応を行ってきていただいたところでございます。

IFRSについて、国内外にさまざまな状況変化がある中で、会計基準をめぐる国際的な動きへの今後の我が国としての対応といった大きな方向性については、この企業会計審議会で議論・検討していくことをお願いしたいと存じます。また、ASBJにおいては、そうした議論を踏まえて個々の基準開発やIASBへの対応をしていていただきたいと考えております。私からは以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

これより委員の皆様からご意見を伺ってまいりたいと存じます。

ただいまの事務局の説明や国際会計基準全般について、前回ご出席でなかった方、あるいは発言されなかった方、前回言い足りないというお方がおありでしょうから、それについても自由にご意見をお願いしたいと思います。特に時間を区切って、この問題はこの時間ということをやりませんので、どうぞご自由に。前回の続きだと思っていただいても結構でございますから、今言いましたような趣旨でご発言いただきたいと思います。

ご発言のある方、挙手をお願いいたします。はい、斉藤惇委員、どうぞ。

○斉藤(惇)委員

それでは。この前、大臣からお話があり、その後もいろいろフォローアップもありましたので、それの整理といいますか、そういう感じで少し発言させていただきたいと思います。

我々はもともと2012年に方向を決めて、15年から強制適用というような考えであったわけですけれども、ご指摘のとおり、いささか時間的な問題もあり、なおかつ諸般の環境、あるいは欧米の動きの変化というものもあって、これをある程度見直すといいますか、延ばすこと自体は理解できることではないかと思うわけであります。

アメリカの動きとの関係は否定できないと思うのですが、今のところ少し延ばしていますけれども、一応、11年以内に彼らは何らかの方向を出してくると言っている。それは変わるかもしれませんが、ただし、強制に向かう時期について、従来の14年からというところを5年から7年というものを入れてきたということで考えると、そのままいけば16年から18年ぐらいで、アメリカで強制というような感じを持っているのかなと思います。

これに合わせて我が日本は、12年で方向感を決めるのか決めないのかというのは1つあると思いますが、よしんば13年になってもやむを得ないかなという感じも我々は持っております。仮に13年に方向を決めるとすると、この前の審議会での大臣のご発言にあった5年から7年の猶予ということを考えますと、18年から20年あたりが1つの目処になるのではないかと理解しております。

このことを、どういう形になるのか分かりませんが、やはり中間報告という形で出さなければならないと思います。先ほどEEGの動きについてのご説明がありましたけれども、従来と違って、韓国、中国、香港、この辺の力が非常にまさってきていて、彼らがここに戦略的に重点的な関心を持っているということは明白であります。中間報告をもし我々が発しなかった場合は、先ほど言われましたようなサテライトオフィスすらIASBのボードの間では、もう一回振り戻しされる可能性すらあるのではないかと危惧しております。

もちろん、それが正しいかどうかはわかりませんが、せっかくトラスティーの中で2つのシートですとか、河野さんとか役所の方もモニタリング・ボードなど、国際会議の中でポストを占めてきた。このことに対して中国、韓国は非常にいらだちというか、関心を持っていたわけでありまして、日本が今まで国際的な戦略の中で、まさしくご指摘のとおり、かなりの地位をとるところにきたと。サテライトオフィス論争につきましても相当激しいやりとりがあったわけでありまして、このことを逃すようなことはしないほうがいいのではなかろうかというのが1つであります。つまり、中間報告を何らかの形で出したほうが、我々が今までやってきたことを担保できて、国家戦略としては有効ではないかということが1つです。

2つ目は、前回もいろいろなご意見が出ておりまして、ごもっともなご意見も非常に多く、現場では大変だということもよくわかりますが、事業体、経営者の方からごらんになった見方と、もう一つ、やはり出資者、投資家からの見方の両方を見ていかないと、このような問題は成り立たないのだと思います。

なぜこういうことがもともと問題になってきたかというのは、釈迦に説法ですけれども、アメリカが支配したP/L中心の会計基準に対して、むしろヨーロッパは貸借対照表論で向かってきた。まさしく伝統的に日本では戦前から、先生方がたくさんいらっしゃいますけれども、私も学生時代はシュマーレンバッハの動的貸借対照表論というのを学んで入ってまいりましたが、現実の世界に入ったらSEC基準、P/Lの普遍化ということで驚いたということがあります。アメリカがP/L論争で、成長をベースとしてきたということは事実でありますが、今回の危機を見ても、このP/L主義の膨らみが見とられなかった。B/Sを分析しないままにP/Lの拡大だけでアメリカが危機をもたらしたと私は思っております。しかも、リサイクルをずっとしておりましたので、アメリカの決算なんかはおかしなくらい、例えば年金基金の膨大な利益が企業利益になって出てきて株価が暴騰している、そういうことが起こっていたわけでありまして、これに対して修正をしようという動きがあったというように理解しております。

そういう意味では、やはり透明性が高い、これは投資家だけてなくて、経営者にとっても非常に重要なことであって、自分の会社の中の資産に何か痛みが出ているか出ていないかということがB/Sのほうから見ることができるということは、経営上、非常に重要ではないかと思います。この点が2点目です。

3点目、最後ですが、一部適用というお話がこの前も出ました。そのこと自体、我々東証としては必ずしも反論はありません。段階的な適用など、いろいろフレキシブルであっていいと思っております。

ただ、1つ言えるのは、やはりその場合は、まさしく栗田さんのほうからお話がありましたが、本当にヨーロッパやアメリカの市場、取引所がどうなっているかということをしっかり勉強してからやらないと、言葉だけでやると間違いを起こす。例えばヨーロッパにおいて、規制市場の中ではIFRSが適用されているけれども、非規制市場には適用されていないというようなことがありますが、この規制市場と非規制市場という定義を日本に適用しますと、規制市場というのは1部、2部、マザーズ市場、全部が規制市場であります。日本で非規制市場というのは、証券業協会がやっているグリーンシートの取引と、私どもがロンドンとつくりましたAIM市場が非規制市場でありまして、ドイツやフランス的にやれば、日本は1部、2部、マザーズ、全部が強制適用ということになってしまいます。私どもがそういうことを言っているのではなくて、確かに欧米では十分考えながら、部分適用だとか、順次適用というのをやっておりますけれども、そのときには、どういう内容的な考え方をやっているか。新興企業を育てようということで、いきなりこういうものは求めないようにしようという考えでやっている。我々も、その辺の考え方は大いに取り入れるべきであると思っています。この3点だけちょっと申し上げさせていただきます。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかに。

○佐藤委員

よろしいですか。

○安藤会長

はい、佐藤委員。

○佐藤委員

佐藤です。前回少し物足りなかったので、追加で発言させて頂きます。

今回の資料、とりわけ資料2の今後の議論・検討の進め方につきましては、前回の審議会総会で大臣の冒頭あいさつを踏まえた提案だというふうに私は理解しておりますが、とりわけ検討項目を見ますとかなり広範囲にわたっております。これは、アメリカのSECのワークプランの取り組みに倣った、いわゆる日本版ワークプランといいますか、そう言っても過言ではないと思っています。論点が非常に多岐にわたりますので、企業や社会経済への影響を丁寧に検証して、多くのステークホルダー、関係者に納得感のいく全体像を示すことがまずは必須だと私は思っております。

そこで4点ほど要望、提案を含めて、意見を申し上げたいと思います。まず1点目は、総括的な視点ですが、ゴーイングコンサーンとしての企業、企業というのはゴーイングコンサーンなんですね。その企業、ひいては社会経済にとって真に意味のある会計思想、会計基準は何かという、こういう視点をまず基軸に置いて議論していただきたい。これが真の国益にかなう会計制度の構築につながると私は思っています。

国際情勢の話もございましたけど、表面的でなく、各国で今起こっている実態・現実、かなり悩んでいる国もございます。これをよく把握する必要があると私は思っております。どちらかというと、これまでのように総論として、いわばIFRSの受け入れを推進、推奨するかのようなスタンスでの議論は日本の方向性をミスリードする懸念があると思っておりますので、この点、よろしくお願いしたい。これが第1点目でございます。

第2点目は、2009年6月の中間報告にありました連結先行という考え方であります。当時としては、ある意味生活の知恵といいますか、次善の策としてやむを得なかったのかもしれませんが、この考え方には単体も連結に後追いするという思想が入っていますので、振り返ってみますと、これが結果として日本の会計制度の全体像に関する本質的な議論を不幸にも後退させてきたのではないかと私は思っております。

今回提案された本質的課題に取り組むに当たりましては、連結先行という考え方は、はっきり言って横に置いておくといいますか、お蔵入りさせるべきではないかと思っております。当然、2008年12月に同等性評価もクリアしていますし、その後もコンバージェンスを着実に進めてきております。さらに任意適用の受け皿もあるわけですから、ある意味では役割が終わったと考えてよいのではないかと思っております。これが第2点目であります。

これを受けて、3点目はやや具体的になりますが、日本基準をきちっと堅持する方向で検討していただきたいということであります。

これは、釈迦に説法ですが、戦後から蓄積してきました日本の会計基準の重要な思想とか、基準のストックを大切にしてほしい。例えば実現主義とか、発生主義とか、保守主義の考え方、会社法・税法とのリンケージ、それから確定決算主義、こういった考え方は既に日本の社会経済活動に深くビルトインされております。また、今日に至る日本の社会の発展に大きく貢献してきたと私は思っております。

まず、日本の基準の位置づけを明確にすれば、おのずとIFRSに関するコンバージェンスとか、アドプションの議論は取り組みやすくなるのではないかと思っております。これが3点目でございます。

4点目は、今回提案された課題の取り組み方とか、スケジュールに関する件でございます。

非常に多岐にわたる課題、論点がありますので、まずは企画調整部会で議論を尽くした上で企業会計審議会総会に諮るという手続が合理的ではないだろうかと思います。ここ2年間、企画調整部会を開催せずに、いきなり総会に諮るという手続をとってきておりますが、デュープロセスを踏む必要性からも企画調整部会で議論を尽くしていただきたいと思います。企画調整部会では、おそらくこれら多岐の論点をどのように消化していくかという問題がありますので、テーマごとに分科会等を編成することも念頭に、議論に当たりましては、ぜひ学会とか関係団体、さらには政府機関を巻き込んで進めていただきたいと思います。とりわけ電力とかガスとか、業種別に定められた別記事業がございます。別記事業の問題は中間報告にも記述されていますが、これらの影響の検証に当たりましては、やはり政府機関、関係団体の参画は必須だというように私は思っております。

また、先ほどスケジュールの件につき東証の斉藤社長のほうから発言がありましたけれども、できるだけ早いことが望ましいわけですが、それ以上に議論が尽くされることが重要だと私は思っています。2009年の中間報告でも、とりあえず2012年を目途とすることが考えられると、「とりあえず」、「考えられる」という、いわば弾力的な表現になっていますので、これはこの限りでとどめて、まずは議論を尽くすための作業計画の策定が先決だと私は考えています。以上、4点をよろしくお願いします。

○安藤会長

ありがとうございました。

はい、河崎委員、どうぞ。

○河崎委員

今の佐藤委員のお話とちょっと重複する面がありますけれども、私は、日本基準の堅持という点について少し意見を述べさせていただきたいと思います。

これまでG20からの要請であったり、あるいは同等性評価という立場から、おそらく金融庁のほうもIFRS導入の推進を一生懸命図ってこられたと思うんです。しかし、IFRS導入の推進が、ある意味で我が国の伝統的な会計の基準をさまざまな形で変化させてきたように思います。例えば持分プーリング法はなくなり、あるいは工事進行基準もなくなり、そして後入先出法まで放棄するという形で、これまで伝統的に築いてきた我が国の会計基準が相当変質していっているように思うんです。

もちろん、こういったルールの変更は、国際資本市場とでもいいますか、そういったところでプレーをする企業にとっては非常に意味のあることかもしれません。しかし、そういったルールがそうでない企業にまで影響を及ぼす形で日本基準が変わってくるというのは果たしてどうなんだろうかということです。これに関連しまして、ぜひ規制当局である金融庁のご見解を伺いたいと思います。つまり、国際的な要請というのを規制当局としてどのように受けとめておられるのかということです。また、我が国は、それに対してどうこたえようとしておられるかということをお伺いしたいと思います。

2点目は、今回は議題の中にも挙げておられる非上場企業・中小企業への影響という問題です。

非上場企業・中小企業に対しては、現在、中小企業会計指針が定められております。これは、我が国の一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行の1つとして認知されています。しかし、これは正直に申し上げて企業会計基準を簡素化し、要約したものに他なりません。その意味では、レベルが非常に高くて、現行の非上場企業・中小企業はほとんどそれを採用していないという実態があります。そういったことを踏まえまして、今、中小企業庁と金融庁の合同事務局のもとで新たな指針といいますか、ルールづくりを検討しているわけです。その意味では、国際的な要請という名のもとに変質してしまった我が国の会計基準に対して、中小企業はある意味で拒否反応を示しているのではないかと思います。その証が、まさに中小企業会計指針に対してなかなか準拠できないという現実であろうと思います。

そういったことから、今後、IFRSの導入問題を議論する上においては、公開大企業と中小企業とは切り離して議論していくべきではないかと考えています。これが2点目であります。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

お尋ねがありましたけれども、金融庁がどう考えているか。結局、企業会計の問題は、そのためにこの審議会があるんだというのが私の見解でございます。

○河崎委員

多分、そういうお答えがあるだろうということは予想はしておりました。お伺いしたいのは、1つのたたき台として、規制当局としての金融庁の考え方がもしおありであればご披露いただきたいということです。これまで推進という立場をとられておられたわけですから、我が国に対しての国際的な要請を規制当局としてどのように受けとめておられるのかということをお聞きしたいということであります。

○安藤会長

それでは、事務局、どうぞ。

○栗田企業開示課長

非常に大きな課題でございまして、なかなか簡単にお答えできるような話ではないと思っておりますけれども、会計基準の国際化に関しましては、これまで我が国はIFRSとのコンバージェンスとか、IFRSの任意適用の組み合わせで対応してきたわけでございます。やはり、これまでのご指摘にもありましたように国際的情勢をどう見るかというのが非常に重要になってきておると考えております。その点は幾つかありまして、例えばアメリカのSECは2011年中に何らかの方向性を出すと言っているわけでございますけれども、ほんとうに2011年中に方向性が出てくるのか、あるいは出てくるとすればどんなものが出てくるのかということは、我々として最も注視しないといけないことだと思っております。

それから、中国やインドがIFRSをどの程度取れ入れていくのか。彼らは、フルコンバージェンスみたいなことをおっしゃっていますけれども、実態としてどういうことがなされていくのかということを見ていかないといけない。あるいは同じアジアの中でも韓国のように、IFRSをほぼ全面的に受け入れている国の出方というものも我々は見ていかないといけないと思っています。

それから、今ご発言にありましたEUとの同等性評価につきましては、2008年12月に同等性評価が出ているわけでございますけれども、これは若干条件つきみたいになっておりまして、コンバージェンスの継続を条件にというようなことが書いてあるのと、EUは継続的なモニタリングをやるといっているということで、この点もちょっと注意していく必要があるということ。そういう国際的な情勢が非常に複雑で、利害関係もどんどん変わっていく中で、我々といたしましては、そういうことを注意深く慎重に見きわめていく必要があるということと、会計基準が我が国に大きな影響を与える項目が幾つかあるわけでございますけれども、そういうことにつきましては、IASBに対して我が国の考え方をきちんと発信していく必要があると考えております。

○河崎委員

ありがとうございました。もう少し具体的なお話が聞けるかということを期待しておりました。というのは、審議会で議論するときに、今のような総体的なお話ということになると、結局、抽象的な話になってしまって、具体的に審議会で何をどこまでどのように議論すればいいのかということが捉えづらい。もちろん今後は意見がいろいろと出てくるんだと思うんですけれども、この場では、より具体的な形で審議すべきだというように思っておりましたものですから、金融庁としてのご意見、あるいは具体的なご提案があればということでお伺いした次第です。ありがとうございました。

○安藤会長

一応、指名を受けてからご発言をお願いいたします。

○河崎委員

すみません、申しわけありません。

○安藤会長

ほかにいかがでしょうか。

○八田委員

よろしいですか。

○安藤会長

ちょっとこちらが目に入ったのが早かったので。では、逢見委員、どうぞ。

○逢見委員

ありがとうございます。私も前回の議論を聞いていて、2009年6月の中間報告の解釈について、とりわけ強制適用ということと、2012年の期限ということについて、委員の間で解釈について相違があったのではないかと思いまして、改めて2009年6月の中間報告を読み直してみました。すると、IFRSの強制適用については、諸課題の達成状況等について十分に見きわめた上で、強制適用の是非も含めて判断するということですので、やはり色々な状況の見きわめということをきちんとやる必要があるし、必ずしも強制適用ありきではないということだと思います。

それから、2012年もとりあえず目途でございますので、仮に2012年までに結論が出せなかったとしても、それは日本が国際公約に反したことにはならないのだろうと思います。文言上、そのように読めると思いますので、まず、出発点における理解を共有しておく必要があるのではないかと思っております。

その上で、今日お示しされた資料2でございますが、これは、冒頭の大臣のごあいさつにもありましたけれども、そのことが第1パラグラフにも書いてございます。「会計基準に関する技術的議論に限定することなく」ということで、より広く、いろんな経済活動、各種制度、金融市場等における影響をよく認識するということだと思います。まさにこのとおり、幅広く影響を検討する必要があるのだろうと思います。

それでいきますと、その後の具体的論点で、必ずしも1ページ目の項目によって全部カバーされた論点になっているのかという点で疑問があります。「等」というのがありますから、例えば規制環境といったときに産業規制や公共調達規制だけじゃなくて、そこには税法、会社法等の影響とか商慣行、あるいはサプライチェーン等への影響とか、そういうものも幅広く考えていく必要があるのではないかと思います。

特に私ども、従業員・労働者という観点からいいますと、会計基準というのは投資家だけではなくて、そこに働く労働者、あるいは債権者など多様な利用者が存在する。そういういわばステークホルダーといっていいと思いますけれども、そういう多様なステークホルダーにとってIFRSを取り入れたときにどのような影響、メリット、デメリットがあるのかということも十分に見きわめる必要があると思いますので、そうした点についても論点に加えていただきたい。

それから、非上場企業・中小企業への影響という論点が入っておりますけれども、上場企業も決して一様ではなくて、グローバルな経営を行っている企業もありますし、上場企業であっても、いわゆるローカルな経営、資金調達等について海外からのニーズがあまりないというところもあると思います。そういった多様な企業の中に、この国際会計基準が取り入れられたときにどのような影響があるのか。メリット、デメリットの評価を十分検証していく必要があると思います。そのためにも2012年にこだわらずに、真剣に対応について検討していくということだと思いますので、そうしたものを審議会におけるアジェンダとして項目とタイムスケジュールを示して、これから議論を進めていく必要があるのではないかと思っております。

○安藤会長

ありがとうございます。

はい、八田委員、どうぞ。

○八田委員

先ほどの河崎委員の質問の後にしゃべりたかったんですけど、私は当局ではないですから、本来、答える立場にはないですが、具体的に規制当局といいますか、国の方針というのはもう明示されているわけですよ。それは、2009年6月の中間報告を受けて年末に改正された、いわゆる内閣府令の連結財務諸表規則ですが、今回、この附則のところの米国SEC基準の適用廃止に関する部分が1回の適用もなく、また再改正さられるというような流れがあるようですけれども、その本文中にIFRS、つまり国際会計基準は指定国際会計基準として正式に認知することで、我が国における一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するといいますか、そういう扱いをすでに示しているわけですから、今さらそれが質問条項になるとは思われないということです。ですから、IFRSなついては任意適用であるとしても、国の政策はもう示されているわけです。

したがって、これも覆さなきゃいけないのかという議論がこれから始まるのかどうか。これは非常に大きな問題であると同時に審議会自体の権威にも関わるものだと思います。ということで、ほんとうは、そういう当局の答えがあるのかなと思って私は待っていたんですけれども、違っていましたので、少し補足させていただいた次第です。

○安藤会長

今の点ですけど、結局、あれは2009年6月の中間報告を踏まえて行政化しているんですよね。それはいいですよね。

はい、どうぞ、大武委員。

○大武委員

私どもは2009年のときに在籍していませんので申し上げたいんですが、この問題は一金融にかかわる話ではないと思います。先ほど自見大臣が言われたとおり、日本の国家戦略そのものに直結する話だと私は非常に強く思います。これは、上場企業であるか否かにかかわらず、中小企業だけの話でもない。はっきり言って、河崎委員も言われましたけど、ゴーイングコンサーンを前提として、利用価値ということを前提にした企業経営において、これを交換価値で評価しながら、BSを中心にして評価するという仕組みは、少なくとも経営者が株主総会を考えたとき、極めて大きなダメージを与えると私は思います。

特に日本経済は、これから人口が減ってまいります。少なくとも1人当たりGDPは守れたとしても総GDPが増えていくとは簡単には思えません。その中で、いわば交換価値を中心とした、時価を中心としてBSをメーンにする表示がこれからの日本、あるいは先進国、欧米ですらほんとうに正しいのかどうかというのは非常に強く疑念を私は覚えます。

アメリカの経済が今日、長期投資できなくなって、明らかにオバマ政権が苦衷にいるのも、このような会計に引っ張られている経営があるんではないかと私は思います。例えば日本では、具体名を出して失礼ですけど、JR東海のように一企業がリニアモーターカーを、積立金を積んであのような研究開発をもし欧米系の企業がやるとしたら、いわゆるこの基準では絶対にできません。今まではPLを重視といっていますけども、あくまでも長期投資を前提にした経営指針が株主総会でも認められてきているからだと思います。日本は、アメリカのように軍事産業がいわゆる国防という名で長期的な研究開発ができる国ではありません。これからの日本の経営を引っ張っていこうとすれば、個々の企業が長期的視点に立って研究できるような会計を考えていただきたいと思います。

特に非上場の会社は、具体名を言っては失礼ですけども、ヤマザキマザック、マザーマシン会社ですが、ここなどはあえて上場していないのはそのためであります。しかし、上場企業が、これからEUで資金調達したいんであれば、それはIFRSをおとりにならざるを得ないと思いますが、あえてEUで資金調達もしない、日本の国内で資金調達をする上場企業にまで、ほんとうにこの基準を強制するとしたら、製造業中心の日本は大変弱体化するとしか私は思えません。2009年6月の方針は、先ほど逢見委員が言われたように、あくまでも目途にすぎないと思いますし、まさに強制適用の是非も含めてと書いてあるわけですから、ぜひ腰を据えた、先ほどの金融庁の題目にあるように、特に「経済活動に資する会計のあり方」というあたりを本質論として、ぜひご議論いただきたいと私は思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。はい、西川委員、どうぞ。

○西川委員

冒頭、栗田課長から、この審議会とASBJの役割分担のご説明がありましたので、ASBJの立場からコメントさせていただきたいと思います。

国際的な動きへの我が国の対応についての大きな方向性について、審議会が議論し、検討する。ASBJは、制度の方向性などを踏まえ、個々の基準開発やIASBへの対応をするということで、その内容については従来と同様であって、特に異論はありません。

その上で、よい機会ですので、ASBJの役割についてお話しさせていただきたいと思います。

第1に、ASBJは、公益財団法人財務会計基準機構の中にありますが、この財団法人の運営費用の大半は上場企業や会計事務所、財務諸表の利用者などからの会費収入によって賄われております。したがいまして、これらの方々への責務を果たす必要があります。大半の市場関係者の方が我々の会員になっていただいておりますので、今後とも会員の方々からの負託にこたえるべく、市場関係者の方々の意見を十分聞いて議論を尽くした上で、個々の基準開発を行っていかなくてはいけないと思っております。

会計基準は、もともと資本市場の参加者の行動ルールとして定着してきたもので、市場関係者が十分議論を尽くし、意見を集約していくことが最も大事だと思っております。

海外の会計基準設定主体との関係ですけれども、IASBや米国のFASBなどとの議論については、私どもが当事者になるということだと考えております。国際ルールに対して我が国の意見を受け入れさせていくためには、これらの海外の設定主体との関係が重要になるため、我々は、年2回ずつ両設定主体と定期協議を行っております。今後、我が国の意見を十分反映させていくために、国内の関係者の意見が十分に集約されるということがまず重要であり、国際対応を進める上においても市場関係者の意見を十分集約して取り組んでいきたいと思っております。

○安藤会長

ありがとうございました。

久保田委員、お願いします。

○久保田委員

ありがとうございます。今、西川さんからASBJのお話がありましたので、それにつきまして経団連の立場でご説明させていただきます。

冒頭課長からもお話がありましたように、会計基準をめぐる対応については企業会計審議会で議論・検討して、大きな方向性を出していただく。それを踏まえて独立した民間組織としてASBJの個々の基準開発、あるいはIASBへの対応を実施してきたということでございます。これは、2001年に経団連をはじめとする関係10団体で、会計基準設定機能の拡充強化を目指して、これまで企業会計審議会が担ってきたこの機能の一部を、民間を主体とした独立の常設機関であるASBJというのを設立しまして、そこに移行したということでございます。

会計基準は、経済の重要なインフラでありまして、引き続き独立性の高い強固な民間組織がその作成を担うべきと考えておりまして、個々の会計基準の開発、あるいはIASBとの対応は、従来どおりASBJが民間の意見を集約する形で行っていただきたいと思っております。

他方、ASBJの運営についてはいろいろ批判も出ていることもありますので、それについてはASBJ、あるいは財務会計基準機構みずから運用の改善に努めていただきたいと考えております。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

はい、加護野委員、どうぞ。

○加護野委員

加護野でございます。今の点に関して補足させていただきたいと思うんですが、この企業会計審議会というのは基本的な方向を決める。具体的なところ、戦術的なところはASBJにお任せするという分業があると思うんですが、この会合に出ておりましてよくわからないのは、戦略的な目的がはっきりしないんですよね。国際会計基準を日本に導入する日本の戦略というのは一体どういうことなのか。先ほどもご質問がありましたけど、これも既に導入が決まったんだという規定路線なのか、それとも戦略を考えて、まだこれからネゴシエーションの余地があるんだということも含めて、この辺は金融庁どのようにお考えなんでしょうか。

○安藤会長

それは、要するに2009年6月の審議会の意見書、中間報告の問題ですよね。あそこで意見が分かれているという説と分かれてないというか、要するに導入は既定路線だというのと、そんなこと決めてないよと、はっきり言って2つに分かれていたんですよ。でも、正しく読めば、何人かの方が言われているけど、わかるというのが私の……具体的なことは言いませんけども、正しく読めばかなり書き込んでありますから。

だけど、あのように長文になると大体意見が分かれちゃうというのはよくあることなんですね。無責任かな。

○加護野委員

正しく読めば、どちらになるんですか。

○安藤会長

それは、私の意見を言うことになっちゃうかもしれませんが、とりあえず2012年を目途にIFRSの強制適用の是非を含めた判断を行うことが考えられると書かれていますから、決めてはいないんです。

○加護野委員

行うことも決めているわけじゃないと。目途に考える。しかし、そのときの基本的なスタンスといいますか、国家的な戦略目標は一体何なんだろうかということがちょっとよくわからない。それがわからずに、資料2の2ページ目にあるような、いろんな調査結果が出てきたとして、それをどう評価するかというのが全く見えないんです。今のうちにその辺をかなり明確にしておかないと、今後も議論の混乱が続くんじゃないかと心配しております。

○安藤会長

ありがとうございました。

はい、引頭委員、どうぞ。

○引頭委員

ありがとうございます。まず、投資家、利用者の立場から幾つか申し上げさせていただきます。従前から申し上げているように投資家、利用者としては、世界で共通な会計基準が使われることが、グローバルの投資を行う際に非常に有効である見方を持っております。

そうした中で、前回の審議会にて、自見大臣のご英断と思いますが、十分に時間をかけながら、そうした世界を実現していこうという方向性について、私ども利用者としては非常に評価させていただいている次第でございます。

現在使われているIFRSについては、コンバージェンスを進めてきたことで日本基準と比べて大きな決定的差異は少ないと理解しています。ただ、現在開発中のIFRSにつきましては、様々な論点が内包されているのも事実です。そうした論点について個別具体的な問題点を国際基準設定主体に対して、強く働きかけをしなければならないのではないかと考えております。

資料2の今後の議論・検討の進めかたの中に、情勢や影響を分析するといった記載がございますが、ぜひお願いしたいのは、日本の中のみでの議論にしないでほしいということです。国際会計基準設定主体に対して、他の諸外国と連携するなどしながら、日本としての問題意識をきちんと伝えていった方が良いのではないでしょうか。グローバルなアクションを起こすことが必要と考えます。今現在、日本経済は非常に厳しく、やはり国内のみでの成長は困難であるとの認識は、どの企業の方々も同じではないかと推察されます。このように考えますと、単に机上のみで議論するのではなく、個別具体的なエビデンスをきちんと整えたうえで、国際基準設定主体と交渉していく、ロジカルに交渉していく、こういうことがポイントになると思います。

最後に、中小企業のビジネスはドメスティックが中心であるため、IFRSは必要ないのでは、といったご意見があったと思います。ですが、日本には中小企業が400万社以上あるといわれていますが、全ての中小企業の皆様が全てそのように思っているのか少し疑問です。といいますのは、仮に直接的な納入先は日本企業であっても、その先の納入先は海外企業となっている場合もあると思います。海外企業というのは特に欧米諸国がそうですが、自社のサプライチェーンに属する個別の企業に対してのモニタリングが非常に厳しくなっているわけです。そうした中で、場合によってはIFRSを使っていたほうが有利だということもあるかもしれない。すべての中小企業様がそれに当てはまるとは言っておりませんが、そうした点においても十分実態を踏まえた上で、検討すべきではないかと思います。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

鈴木委員、どうぞ。

○鈴木委員

すみません。グローバル化する企業にはIFRSで、ドメスティックな企業には日本会計基準みたいな考え方にはあまり賛成しません。

3点あります。1つは、日本企業は大企業であろうが、中小企業であろうがグローバル化していく必要があると思います。国内マーケットはシュリンクするわけですから、どんな企業であってもグローバルにチャンスを求めていく。さらに求められていることは内なる国際化です。日本国内をどうやってグローバル化していくかということが問われているのです。

2点目は、ファイナンスをするのにどうしたらいいかという点です。グローバルにファイナンスする会社はヨーロッパへ行く必要があるのでIFRS対応をするという考えがあります。しかし、ファイナンスというのはいろいろな形があり、今、日本は一見お金が余っていますが、これからどうなるかはわからない。日本の中堅企業においても世界中でファイナンスするということは当たり前で、そういう可能性を十分持っているようなマーケットにする。つまり、海外からいろいろな人が投資したくなるような国になるということが大事です。そのことと日本基準かIFRS基準かということはちょっと分けて考えたほうがいいということです。

3点目は、それを踏まえて新しい基準をつくっていくということを基本観として持っています。そこで私の隣におられる佐藤さんに質問があるのですが、日本基準を守れというのは、新しい基準をつくっていくということはいいのか、あるいは日本基準を守れということは今の日本基準そのままでいいのではないかということなのか。佐藤さんもコンバージェンスと言いますから、その思想を守れということと具体策についてどんな感じなのかなという質問です。

○安藤会長

お答えになりますか。

○佐藤委員

回答になるかどうかわかりませんが、先ほどご説明しましたように日本基準はかなりコンバージェンスが進んでおります。ただ、今後、MOU項目等、非常にハードルの高い項目が出てくるわけですが、もう限界に来ていると私は思っております。例えば研究開発とかのれんとか退職給付の問題とか、ほんとうにコンバージェンスしていくのかという、ぎりぎりのところまで来ていると私は思っております。日本の企業、産業、経済にとってどうしたらいいかという視点で考えたときに、日本基準というのはここらできちっと維持すべきではないか。

これは、ドイツ等も全くそうで、ドイツそのものは、単体はドイツGAAP強制といいますが、単体に準拠した連結も当然ある訳です。要はドイツ基準というのを堅持しているのです。グローバルに要請されているのは連結ですので、ヨーロッパは、IFRSで連結を開示している。ドイツ基準、フランス基準を堅持しつつ、かつ投資家のためにIFRSの連結をやっているというフォーメーションを組んでいるわけです。

私のイメージは、日本基準をきちんと持つことによって、税法とか会社法とのリンケージがきちっと維持できますし、日本企業にとってはそれが極めてリーズナブルなのです。だから、先ずはそういう形で位置づけることをしていただき、

その後、MOU項目等で、日本基準に入れるべき項目があれば個々に議論した上で入れていけば良いのであって、今までのように、連結にコンバージュしたら単体にも落としていくという機械的なコンバージュはやめたほうが良いという意味です。

○安藤会長

わかりました。

一人でも多くのご発言をいただきたいんで、今まで手を挙げていた永井委員、その次、藤沼委員。

○永井委員

中間報告の議論のときに在籍した者として2点ほど申し上げたいのですが、あのときの議論に参加いたしまして、私の個人の理解としては2012年を目途として強制適用するかどうか考えるという、あくまでもペンディングの問題であると理解しておりました。ですから、このたび、このような機会を再び設けるというのは非常に意義のあることだと思っております。

前回の審議会以降いろんな意見が聞かれまして、準備期間の延長等の措置に対して製造業を中心とする企業サイドの働きかけによるものである、会計国際化の時代に逆行するものだという批判も聞かれますが、私の理解では全面的にIFRSに反対と言っているわけではなくて、もう一度原点に立ち返って議論を尽くして、作成者側の意見もきちんと取り入れて、企業の競争力強化につながる、国益にもつながる、そういったプラスの方向に向けての議論の見直しではないかと理解しております。

先ほど内閣府令の話が出ました。中間報告のときもここにおりましたが、内閣府令はあくまでも事後に承知した話でありまして、何か私の知らないところで物事が動いているといいますか、そういったことがあるのかなと。ですから、もう一度ここで議論を行うことは非常に有意義だということが私の意見でございます。

最後に、事務局の方に1つお願いですが、前から考えていたことですが、ますます人数が増えまして、このように大人数で議論するということであれば、できれば、あらかじめ審議内容と資料等を配付していただければ、もっと十分な議論が尽くせるのではないかと思います。

先ほど資料2、11点ほどの検討の進め方がありますが、これも漠然と進めたのであれば議論が混乱したままになりますので、先ほどどなたかもおっしゃっていましたが、優先順位、あるいはタイムスケジュール等を示して、時間がある程度かかっても仕方ないと思いますが、意義のある審議会になればよいかと思います。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、藤沼委員、どうぞ。

○藤沼委員

藤沼です。前回の審議会は残念ながら出席できませんでしたが、、今までの皆さんのお話を聞いていて、この審議会というのは何を議論する場なのか、もう少し焦点を絞るべきではないかと思います。金融庁に設置された審議会ですので、基本的に金融市場、証券市場に関連する分野を対象としたテーマの議論をする場と理解しているんですけれども、今までの議論を聞いていますと、中小企業の会計も含めいろいろなテーマをすべて議論しなくてはいけないのか、このまま議論していると、ほんとうに意見集約ができるのか、少し不安な感じがいたします。

私は、島崎委員と一緒にIFRS財団のトラスティーを務めているわけですけれども、今回、IFRS財団では財団の次期10年間の戦略をどうしたらいいかというレビューを実施しコメントを求め、その作業がほぼ終わりかけているところです。ここでは、我々のミッションというか、我々の使命は何かということを真剣に議論しております。結論としては、財務報告というものが公平で、中立的で、投資家をはじめとする財務諸表の利用者に公正で透明性のある情報を提供することを使命といたしました。ここでは国益という言葉は使っていませんけれども、いわゆるパブリック・インタレスト、つまり公益に資するものとしてこの使命についての議論を進めてきたわけです。

今までの議論では、皆さんが議論のテーマとして考えていることがかなり拡散しておりまして、このまま議論していて果たしてほんとうに意見がまとまるのかということを非常に危惧いたします。

この審議会の場が公開企業の連結財務諸表を議論するということであるならば非常にわかりやすいし、まずそれが第1の目的だと思います。それをベースに議論を進めないと、話がいろんな横道にそれていってしまうのではないかと思います。

次に国際的な話ですが、先ほど中国が中心になってEEGという組織が出てきというご説明がありましたけれども、実は日本にとって無関係のものではありません。東京にサテライトオフィスを設置することについては、トラスティーの中でもかなりエネルギーを使いました。日本では、金融庁も含め経済界や各界の強力なサポートを得て、やっとここまで来たというのが実情でございます。ただし、問題はこれからです。オフィスは来年10月に開設の予定ですけれども、箱物をつくっても意味がありません。ということは、実質的にこのオフィスが有効な機能を発揮しなくてはいけません。中国は、最後まで日本とサテライトオフィスについて争いました。私どもも向こうに行って何度も議論してきました。結果的にIASBがくせ球を投げ、中国は発展途上国の会計問題のリーダーあるいは取りまとめ役として、EEGという実質的に中国が主催する会議体をつくることにしました。サテライト・オフィスで機能の一つであるアジア、オセアニアの声を集めるということは、大部分の国々がこのEEGと重なってしまうので、対応を間違うと実質的にサテライトオフィスを骨抜きにするということにも繋がりかねません。このオフィスを有効に機能させるには、IASBのボードやテクニカル・スタッフの協力が不可欠です。

そういう面で国際社会というのは、ほんとうに真剣な競争関係で日々綱引きが行われているわけです。韓国は、「日本は任意適用で数社かIFRSを採用したが、実際にフル・アドプションしているのは韓国だ、資金拠出も増やしている。なぜ韓国がもっと席をとれないのだ」というようなことを主張する状況になっております。、国内でIFRS採用についての論争が国際関係にも大きな影響を与えることを皆さんに理解していただきたいと思います。以上です。

○安藤会長

和地委員にご発言願う前にちょっと。実はこの企業会計審議会とは何ぞやと私も随分勉強させていただいたんで、今の藤沼委員のご発言がありましたので一言だけ。

皆さんご存じだと思うんですけど、企業会計審議会というのは、前身は企業会計原則をつくった企業会計制度対策調査会、あれは経済安定本部の中に置かれていました。その後、大蔵省に行き、金融庁に来たわけですけども、守備範囲が非常に広い審議会なんです。それが一番わかりやすいのは、金融庁設置法には書かれていない審議会です。金融審議会は書かれている。企業会計審議会はどこにあるかというと金融庁組織令にある。すなわち、事務局は金融庁でやるんだということなんです。

それから、以前の企業会計審議会令、現在の金融庁組織令24条を読むとわかるんですけど、守備範囲は非常に広いです。今、藤沼委員のご発言は、これは金商法会計に特化すべきだというご発言と私は聞きましたけど、企業会計原則からも分かるように本来的には実はそうじゃない。ただ、事務局が今金融庁に置かれていますから、ほかのことをやっていると事務局の業績にはならないと私は見ています。ですから、どうしても金商法会計のほうに行っちゃうんですけども、この審議会は、本来、もっと広範な守備範囲を持っている。はっきり言えば会社法会計とか、立派に発言できる。そういうものです。皆さん、ご関心があるんでしたら、ぜひヒストリーを知っていただきたい。そういうことです。

それだけ申し上げて、それでは次、和地委員、どうぞ。

○和地委員

今さら発言するのは蛇足なんですが、ものづくりの経営の立場として、さっき大武委員が言われました危機感、全く同感でございます。やはり戦後、混乱の中で日本経済、特にものづくりがここまで来たというのは、ベーシックには日本の企業会計原則、あるいは企業会計の基準がきちっとあったこと、そして、それを遵守してきたからこそここまで来たんだと思います。この重みというのは非常に大事にしなきゃいけないんで、グローバルの時代だからといって軽視していいということは決してないんではなかろうかと思います。

先ほど自見大臣も企業会計は国家の基本だ、国家戦略だとおっしゃったのはまさにそのとおりなんで、グローバルの時代だからこそ自国の主体性を持ってきちっと判断する。これが他国からも評価される一番大事なことだと私は思います。

例えば税というのは、国家の主権にもかかわらず、連結先行で行ったら他国に支配されるというか、基準に従うという危険性だってあるわけです。それから、もう一度、PL基準をBS基準に変えることがほんとうにいいのかどうかということは真剣に議論しないと。会計基準は実体経済を活性化するというのが目的なんで、会計のための会計議論というのは意味がないと私は思います。そういう意味で、投資家サイドの考え方も非常によくわかりますけれども、もう一度きちっとした主体性を持った議論をしていくことが日本経済のためにいいんではなかろうかと私は思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。では、大武委員。

○大武委員

引頭委員及び鈴木委員から私に関連した質問じゃないかと思うので少し答えさせていただきたいんですが、実はドメスティックオンリーでいいなんて全く思っていません。ですけど、世界中の国が今見直しを始めています。先ほど和地委員が言われたように、それぞれの国の国益なり、課税権なり、これはドメスティックな権利ですから、ドイツだって、フランスだって、今、これはまずったんじゃないかという意見が現実に起きつつあるんです。

そういう意味でも、前回お願いしたことでありますけど、ぜひとも世界の動きを調査していただきたいと思います。今回の今後の進め方の中に、「国際会計基準を巡る各国の対応は局面において変化してきているところであり」と書いていただいているんですが、私もその実感を持っています。私も中国北京の中央財経大で名誉教授をもらって教えておりますけど、その会計学院長も中国自体はこれから見直していくということを言っています。ですから、ほかの国の動きもぜひ知った上で対応していただきたい。もちろんサテライトオフィスを誘致するとか、大変なご努力があったことは百もわかりますけど、先ほど和地委員が言われたように、これから日本国家をどうするのかということと深いつながりがあるから、ぜひとも世界の動きも見た上で慎重に検討していただきたい。

○安藤会長

ありがとうございました。

はい、山崎委員。

○山崎委員

山崎でございます。今までのお話をお伺いしていて幾つか誤解があるのではないかと思います。1つの誤解は、税の問題が出ておりますけれども、先ほどの話ではないですが、企業会計審議会の役割はともかくとしてIFRSはあくまでも上場会社の連結の問題でありまして、この中に税務を混同して議論するということは良くないと思います。税務への影響は、また別に議論する話でありまして、IFRSを取り入れるときに税と絡むからIFRSそのものがだめだというロジックは本来あり得ないと私は思っております。

それから、日本の会計、それからここまで来た日本の経済ということですが、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、実現主義、発生主義、保守主義ということです。学者の先生がいらっしゃいますので私が申し上げるのは気が引けるのですが、これはもともとアメリカの会計基準に基づくものです。アメリカでそういうロジックで会計基準が発展して、それが日本に持ち込まれたということであります。

では、日本の基準に固執する、日本の基準を守るといった場合、その日本の基準とは何なのか。コンバージェンスをここでやめたものなのか、あるいはここから先、もとへ戻るのか、昔の取得原価主義会計に戻るのか、そういう議論ですか。これはあり得ないのであって、大分前の話になりますが、日本がバブル経済に陥った原因というのは取得原価主義会計の大きな欠陥の1つだというふうに個人的に思っています。学者の先生は違う見解があるかもしれませんけれども、私の経験からして、取得原価主義会計では大きく変化する経済の中では十分対応できない。その中で世界的にみんなが新しい考え方を模索してIFRSを支える考えが出てきた。

IFRSは完全なものではありません。IFRSを金科玉条のように取り入れるというものではありませんが、少なくともIFRSの議論の中に参加できるというポジションを保持しておかないと、日本独自のものに固執するということになると、日本の国益はどうなるか。日本の今の金融市場、資本市場を守るということも重要な国益だと思います。資本市場がなくなってメーカーさんが存続できるかどうかは、私は非常に疑問に思います。

審議会全体の議論がどうも十分整理されていないような気がするのですが。以上です。

○安藤会長

要するにフリートーキングと思っていただいて結構です。

島崎委員、どうぞ。

○島崎委員

島崎です。ありがとうございます。国際的な対応ということで、私は、8月の第1週に金融庁、日本公認会計士協会、経団連等の関係者と第2回目の日印ダイアログ出席のためインドに行ってきまして、現在のインドの状況についていろいろと聞いてきました。その中で、税との問題とか連単の問題についてお話しさせていただきたいと思います。

インドは、2011年4月からインド基準とIFRSをコンバージェンスしたインド基準というものを強制適用することを表明していましたけど、結果的にこれはポストポーンされました。1年か2年延びるだろうということですが、なぜ延ばさざるを得なかったのかという話をインドの企業省の大臣以下関係者に話を聞いてきました。いろいろ理由はありますが、大きな理由の1つは、税との関係について調節がつかなかったということを言っています。インドの場合には、IFRSの完全なコンバージェンスを将来目指しておりまして、これは何年たつかわかりませんが、彼らはそう言っているわけです。それを連結にも単体にも適用することにしておりますので、そうすると税との調整が必要になってきます。その辺を精力的にやってきたけれども、なかなか調整がつかないということで延びたということなんです。

先ほど来の議論、それから大臣のお話にもありましたが、日本の会計基準について根本から議論する。税との関係とか、会社法との関係なども踏まえてということですが、そういうところまで踏み込んだ議論をここでやるのかということです。税との問題というのはなかなか難しい問題があるので、連結先行というような1つの工夫が出てきたと私は理解しているんですが、税と会計基準の問題にまで入って議論をする。たとえば税の国際化とか、そういうところまで議論していくのかどうかということです。会計を国際化したときに税も国際化していくのかとか、そういうところまで議論するつもりなのかどうなのか、この辺を少し整理する必要があると思います。2012年を目途に強制適用するかどうかを判断するという背景には、SECがロードマップで2011年度中に何らかの方向性を出すと言っているので、これに遅れをとってはいかんというのがあったと思います。先ほど来SECがどう出てくるのかという話が随分出ていますが、2011年に何らかの具体的な方向性が出てくる場合と出てこなかった場合とで対応が違ってくるかもしれませんが、この審議会においては2012年を目途に何からの方向性を出すという前提で議論を進めるべきだと思います。そのためには何を優先的に議論しなければいけないのかを決めて議論していくべきだと思います。今SECスタッフペーパーが言うコンドースメントとか、中国やインドが言っているフルアドプションだとか、

○辻山委員

フルコンバージェンス。

○島崎委員

フルコンバージェンスですね。このようなアプローチが日本においてもフィージブルなのかどうかということも含めた議論は必要なんだろうと思います。あまり議論が拡散すると幾ら時間をかけても小田原評定みたいで物事は決まらないのじゃないかと思うので、ぜひとも議論すべきポイントを絞っていただきたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員

先ほど山崎委員からも言及がございましたが、私が思いますのは、経済界としましても、国際的な資本市場の中で可能ならば国際会計基準を作っていくことについては、それほど大きな異論はないと思います。従いまして、そこから全く離れた日本独自の昔の基準をやって欲しいと決して言っている訳ではありません。これまでも先輩の皆さんのご努力でここまで来ており、これをゼロに戻すことはないと個人的に私は思っています。

ただ、一方でアメリカのこの半年強、去年暮れから今年5月のスタッフペーパーあたりを見てみますと、自国基準ということを非常に強く打ち出している訳です。それをコンバージェンス、インコーポレート、コンドースメントなど、様々な言葉で表現されていますが、何らかの調整をしながらやっていくけれども、軸は自国基準であるとの立場がこの半年ぐらいでかなり強く出てきていると私は思っています。このような考えがアメリカで出てきますと、やはり世界最大の金融大国がそのような方向のことを言い出したことをどう理解すればいいのか、よく見ていかなければならないと思います。

しかも、十分読んでおりませんが、今回のアメリカのスタッフペーパーを見ますと、やはりIFRSの適用という言葉を見ましても色々な形があるというのは意味あるスタッフペーパーではないかと思います。従いまして、今後、日本も適用という言葉をもう少し厳密にどういうやり方をするのが良いのか、これは、もちろん強制適用しないということもありますし、強制適用するにしましてもどういう形のものがあるか、そういうものをもう少し絞っていくべきと思います。

これまでの議論にありましたように、連結先行で単体はとりあえず外すことで議論を進めるのかなど、もう少し整理していかないと、今日のお話のように何かまとまらない議論が続いていく恐れがありますので、是非そのような形で整理しながら進めていただきたい。

もう一点最後に申し上げますと、我々のような自由資本主義国の企業に対し、一部の新興国においては非常に巨大な国営企業が出てきておりますが、国家の支援がありますので、彼らは資本を調達する必要は殆どありません。そういう相手と我々は競争していかねばならないという視点も踏まえ、日本の立場としてどういう会計基準を採用していくのが良いのか、これは是非よく考えていかなければなりません。彼らの力は年々大きくなっていますが、彼らが採用を表明している国際会計基準は、実際どの程度厳密に適用されているのかわかりません。

他国の適用状況をよく見ながら進めていく必要があり、是非、そのような調査を日本全体で実施していただき、これは大変難しいと思いますし、我々企業サイドでも出来ることはやりますけれども、その上での判断という形に持っていっていただければ非常に有難いと思います。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。はい、小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員

小宮山です。ご指名いただきましてありがとうございます。

やはり前回と同じような話になっているんだろうと思いますけども、資料2、10項目ぐらい列挙されているんですが、ちょっとわからないところは、前回の自見大臣のご発言の中にもコンバージェンスの方向性を示すというくだりがたしかあったと思うんですが、それについて、この中でもう少し具体的に詰めるべきじゃないかなと思います。前回3つペーパーが出ていて、21社ペーパーと経団連と連合のペーパーと3つあったんですが、いずれもコンバージェンスに反対であるという話はどこにも書いていないわけでありまして、その辺はコンセンサスが得られているのかなと思います。

最初の項目に我が国の会計基準、会計制度の全体のあり方と書いてありますと、何となく会計ビッグバン以前の1998年の時点ぐらいまで話が戻っちゃうような感じがありまして、この辺を詰めるべきではないかと思います。おそらくコンバージェンスとアドプションの準備というのは並行して動くんで、やはりあわせて議論せざるを得ないと思います。

それから、今日の発言にもあったんですが、IFRSの反対論というのを聞いていますと、時価評価ということを非常に誇張してみたり、のれんの償却とか開発費とか、それから従業員給付のOCI処理の問題ですとか、こういうのが出てくるんですけども、それだけ大きく取り上げるべき問題なのかというのをもう少し具体的、さっき技術的な議論をするなと言われたんですが、少し技術的なレベルに入って議論すべきじゃないかと思います。これらは、IFRSに単に反対するための4点セットみたいに扱われていまして、どうも感じがあまりよくないので、もう少し具体的な議論をしてはどうかと思います。

この点は、ASBJのあり方というのも関係しておりまして、私も昨年7月までASBJの委員をやっていたんですけども、ここ1年ぐらい活動がやや開店休業的な雰囲気もなきにしもあらずというか、IASBの動きがおくれているというのもあるんだろうと思いますが、彼らの今後の活動にもかなり大きく影響しますので、コンバージェンスの具体的なスピード感とか、方向性というのをもう少し示せるように、ここで検討いただきたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

ほかにご意見どうですか。それでは、宮城委員の代理の方どうぞ。

○宮城委員代理

日本商工会議所でございます。宮城の代理でまいっておりまして、恐縮でございます。ご議論の中で中小企業のお話が幾つかございましたので、一言だけ申し上げさせていただきたいと思います。

非上場企業の会計、とりわけ中小企業の会計に関しては、昨年来、会計の専門家の方々、あるいは産業界とか、中小企業の関係者が集まりまして議論しております。幾つかフェーズがある中で、今もまだ議論を続けているということでございます。非上場企業に関係する多くの方が参画して議論しているということであり、そのことを一言申しあげておきたいと思います。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

はい、辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

先輩に譲ります。どうぞ。

○安藤会長

いやいや、指名しましたからどうぞ。

○辻山委員

議長、どうもありがとうございます。いろいろご意見が出たのですけれども、私は今日の議論を踏まえて、相互に連続する問題だとは思いますが4つの問題を分けて整理していく必要があるのではないかなという感想を持ちました。

まず1つは、何人かの委員からご指摘がございましたけれども、IFRSのアドプションとかフルコンバージェンスとかフルアドプションとか、いろいろな言葉がありますが、例えばIFRSを受け入れるとしても具体的な姿としてどのようなことが想定されているのかということがまず詰められないと議論が先に進まないと思います。アドプション反対とかアドプション賛成とか、あるいはフルアドプションとかフルコンバージェンスとか、あるいはアメリカ的にコンドースメントとか、いろいろなことが出てきていますが、IFRSそのものの受け入れ方の問題と次に申し上げるあと3つの問題というのは連続しておりますので、今後の議論を進めていく場合には、まず受け入れの形について具体的に詰めていく必要があるでしょう。

この問題は、例えば賛成、反対という場合には対象となる企業、仮に強制適用となった場合でも対象となる企業はどの範囲なのか。あるいは適用する場合でも任意適用を認めるのか、あるいは連単の関係をどうするのか、この辺の一塊の議論、つまりIFRS受け入れの具体的な姿を詰めるという議論が1つあろうかと思います。

その上で2番目には、やはり国際情勢の問題。これもアドプション国とかアドプション国じゃないとか、コンバージェンス国とか、いろいろ言われていますけれども、その具体的な姿は一体どういうことになっているのかということをきちっと検証しないと、100カ国とか言われていますが、私が調査したところによれば、100カ国の中で先進国とか、あるいは市場を持っている国がどのくらいあるのかというと非常に限定的になります。この辺も問題になると思います。

第3に、国際情勢で特にアメリカの態度が変わってきたということが言われておりますけれども、具体的にアメリカがアドプション問題を考えるに当たって、これは先ほどの国際情勢とも絡むわけですが、前回、自見大臣もメンションされましたけれども、アメリカのシャピロSEC議長がウォール・ストリート・ジャーナルのCFOコンファレンスで発言されておりますが、やはり具体的にIFRS導入の問題を考える場合には国内の周辺規制、アメリカの場合ですと具体的には内国歳入庁、税の問題もありますし、それから財務制限条項とか、そういう問題との連動を考慮する必要がある。会計の数値というのは、連結財務諸表の上場企業のフィナンシャルリポーティングだけでは済まない問題がございますので、その辺の問題を詰めなければいけないということを発言されています。

そうしますと、先ほど小宮山委員からIFRSの反対の4点セットというお話がございましたし、例えばIFRSの反対派とか推進派とかいろいろなことが言われていますが、むしろ反対というより、実際にIFRSのアドプションが可能なのかどうかが問題になっていると受け止めるべきではないか。これも賛成、反対を離れて議論していかなければならないと思います。

どういうことかといいますと、例えばIFRSをアドプションするということは、具体的に言うと、アドプションされた基準をメンテナンスしていかなければいけない。それから、周辺規則との関係で、基準を海外にアウトソーシングするということはどういうことを意味するのか。その辺のことも考えないと、賛成、反対ではなくて、実際にアドプションした後に制度がもつのかどうか。それを具体的に考えていった場合に簡単にはいかない。アメリカも1つの具体策を今考えているんだろうと思います。ですから、賛成、反対ではなくて、実際に導入する際の姿の問題や、それがその後制度としてもつのかどうかということのほうがむしろ重要な問題ではないかと思います。

それと、さらに4点目。これが最後ですけれども、基準の中身の問題。先ほど来いろいろ議論が出ておりました。これは、実は一番重要な問題だと思いますけれども、BS中心の会計というのは一体何を指しているのかということ自体も問題でございますが、仮にBSに公正価値評価というものが非常に多く入ってきた場合、公正価値会計、時価会計というものの持つ意味でございますけれども、これはよく議論を聞いていますと保守主義と混同されているケースがございます。冒頭でご発言がありましたけれども、BS中心にしてこなかったからBSの毀損が見えてこなかった。これは、デフレの局面においてBSの資産、負債の毀損がいわゆる取得原価主義――取得原価主義も誤解されている面がありますけれども――のままになっていた場合に、時価会計や保守主義を適用した場合に比べると毀損状態が見えにくかったということは言えると思います。

これ逆にインフレのときはどうでしょうか。保守主義ではアップサイドの評価替えはありませんが、時価会計だったらBSが膨らんでいって、最近問題になっておりますプロシクリカリティにも繋がります。これは、ちょっと話すと長くなり過ぎますので控えますけれども、BS中心とか、PL中心といった場合に、それが正確に理解されているのかどうか。この辺は、財務会計の研究者として非常に気になるところでございます。この辺を議論する場合にはぜひ正確な議論をしていただきたい。これが最後でございます。ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、斎藤静樹委員、お願いします。

○斎藤(静)委員

すみません、時間が余りそうだったので手を挙げただけ、他意はないのですけども、前回からずっと黙っていると後で気持ち悪いと言われるのを心配して、発言させていただきます。

今回の金融庁と申しますか、金融担当大臣と申し上げるべきかわかりませんが、いずれにしても我々から見れば当局側のご提案というのは、基本的には2009年の中間報告の結論を再確認する、そして、その後のコンバージェンスの成果とアメリカの動向を踏まえて、将来に向けた議論をしようという趣旨であって、この審議会での従来の合意に沿ったごく当然の提案でしかないというふうに私は理解しております。

もちろん、申し上げるまでもなく、日本は国際化を進めなければ生きていけない国です。それは当たり前の話で、だれにも異論はないと思うのです。ただ、そのことと日本が資本市場のインフラから会計基準だけを取り出してIFRSに入れかえることとは、直接には関係のない話です。企業の情報開示というのは、会計基準だけでなく、それと密接に関係する周辺制度、周辺規制によっても国ごとに違ったインセンティブを与えられているわけです。

先ほど税は関係ないというお話もありましたけれども、関係ない国と関係ある国があって、制度のたてつけは国ごとに違っているのです。会計基準をどこまで統合したら、どこまで情報の等質性が保証されるかということは、そうした誘因とその背後の周辺制度に左右されるわけです。したがって、それらの分析も展望もなしに国際化を丸ごとIFRSの話に置きかえるのは、さすがに短絡的で情緒的に過ぎる議論ではないかと思います。

大事なことは、連単を含めて日本の制度を国際水準からおくれないように、IFRSのよいところを取り入れて、絶えず改革を進めることではないかと思います。もちろん制度というのは、いいところを取り入れると悪いところも入ってきてしまうことが少なくありません。悪いという意味は、周辺の法制や規制を含めた各国制度の体系を混乱させ、その働きを損なって、時には機能不全にしてしまうという意味です。

制度の国際化というのは、各国が自国制度全体のパフォーマンスをなるべく損なわずに進める国際的な交渉事でもあります。だからこそASBJは、民間の知恵を結集してIFRSとの共通化を図るとともに、さまざまな規制を担う政府部門との意思疎通の体制を、直接には金融庁との間で模索し続けてきたわけです。IFRSを受け入れるにも、どこまでどのように受け入れることができるかという検討が、そういう体制に求められてきたということだと思います。

いろんな議論がありましたけれども、現在までのところ、アメリカを中心とした学界指導者の間で確認されていることは、基準を国際的にどこまで統一するのが望ましいかということは事前にはだれにもわからないという、その一点であります。したがって、世界が1つの基準を共有するのが望ましい、最適だという主張についても、経験的な証拠は何一つ存在しないということです。その認識に立ってアメリカ会計学会の委員会もIFRSへの一元化には疑問を提起しておりますし、また、FASBがSECに送ったロードマップへのコメントに付録として添付された委託研究論文も、同じような立場をとっているわけです。

したがって、それでもなお世界の基準を1つにするのが望ましいとこの時点で主張するには、彼らの指摘を論駁する理論的、ないしは実証的な根拠を示す義務があるのだと思います。この審議会が仮にも専門家としての見識を求められているのであれば、少なくとも根拠のない情緒的な議論は避けるべきだと強く感じています。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。残り10分ぐらいございますが、いかがでしょうか。

それでは、ちょっと早く終わってもいいよと言われておりますので、よろしいですか。大丈夫ですよね。

それでは、まだちょっと時間があるんですけど、本日のところはご希望の委員には大体ご発言いただいたと思っております。当審議会では次回以降、引き続き委員の皆様から幅広いご意見をちょうだいしていきたいと存じております。

次回以降の日程等につきまして、事務局よりご発言ございます。

○栗田企業開示課長

次回以降の日程等につきましては、事務局より改めてご連絡させていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

○安藤会長

それでは、本日の合同会議はこれにて終了いたします。委員の皆様には、審議にご協力いただきましてまことにありがとうございました。

これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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