企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成23年12月22日(木曜日)15時00分~17時00分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成23年12月22日

○安藤会長

定刻になりましたので、これより、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様には、ご多忙のところご参集いただきまして、まことにありがとうございます。

まず、会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様、本日の総会も企業会計審議会の議事規則にのっとり、会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ありがとうございました。そのように取り扱います。

本日の合同会議は、自見金融担当大臣にご出席をいただくことになっておりますが、少々遅れてお見えになられるとのことでございますので、お見えになられましたらごあいさつをいただきたいと思います。

それでは審議に入ります。まず、国際会計基準審議会、IASBのアジェンダコンサルテーションについてです。IASBでは、今後3年間の作業計画等につきまして、パブリックコメント、アジェンダコンサルテーションを実施しておりまして、11月30日に締め切られました。我が国からは企業会計基準委員会、ASBJなどが意見を提出されたと承知しております。当審議会の議論でも、IASBに対して、我が国として考え方を積極的に発言すべきであるとのご意見をいただいておりました。

まず、ASBJより意見提出の概要について、説明をお願いしたいと思います。

○西川委員

ASBJの西川でございます。IASBが実施いたしましたアジェンダコンサルテーションに対する、私どもASBJのコメントについて説明をさせていただきたいと思います。お手元の資料、意見募集「アジェンダ協議2011」に対するコメントというのをお開きいただけますでしょうか。

IASBは今年の7月に、議長がハンス・フーガーホースト氏に交代して、新体制となっております。このアジェンダコンサルテーションは、今後3年間、どのようなテーマを検討すべきかを問うもので、今後の国際的な会計の動向に大きな影響を与え、我が国にも大きな影響を与えるものと考えております。IASBに対して、日本としての意見発信力を強化すべきであるというご意見が、この審議会でも何回か出されておりますけれども、日本が明確な意見を持っている基準について意見発信の場をつくる。つまりアジェンダとして取り上げてもらうということが非常に重要になるかと思います。

このアジェンダコンサルテーションへの対応に当たっては、我が国の各関係者が、可能な限り整合性のとれた意見を行うことによって、IASBに対する影響力を高めることが考えられたものでございます。今回、新しい試みでございましたが、アジェンダコンサルテーションに関する協議会というのが設けられております。メンバーは経団連、公認会計士協会、東証、アナリスト協会、ASBJ、経産省、法務省でございまして、事務局は財務会計基準機構と金融庁が務めました。

このアジェンダコンサルテーションに関する協議会において意思疎通を図った後に、お手元のASBJのコメントをまとめたということでございます。1ページの真ん中あたりにありますように、このレターの見解は、我が国の主要な市場関係者の意見を幅広く反映するものとなっていますという旨を記載しております。コメントについては、経団連、JICPA、アナリスト協会等からもそれぞれ出していただいておりますけれども、今回のASBJのコメントは、私どもの意見だけでなく、日本の関係者の意見を取りまとめたものであるという旨については、IASBのハンス・フーガーホースト議長にも既に伝えてあるところでございます。

それでは、コメントの内容ですけれども、総論部分と各論部分に分かれております。総論ですが、2ページにありますように、今後3年間は新規の基準開発よりも、「既存のIFRSの維持管理」に重点を置き、これからIFRSの適用を考える企業に、安定的な土台を構築する必要がある旨を記載しております。

次に各論ですが、IASBが検討すべき項目として、4ページから5ページにある6項目を記載しております。この6項目が、日本として強い意見、あるいは懸念を有しているものになるわけでございます。

1つ目はOCIとリサイクリングで、当期純利益を概念フレームワーク等で定義づけるべきこと。そして、短期的にはリサイクリングが必要であるということを確認すべきであるということを記載しております。

2つ目は、公正価値測定の適用範囲で、現状の基準には見直すべき点がある旨を記載しております。

3つ目と4つ目は、ここ数年ASBJでも検討しているものですが、開発費の資産計上とのれんの非償却処理について、日本の関係者の意見を記載したものでございます。現状のIFRSの規定に問題がないか、実態調査をすべき旨を記載しております。

5つ目は固定資産の減損の戻し入れで、理屈上、また実務上の懸念があること。

6つ目は機能通貨でして、一定の状況では円以外の通貨での帳簿作成が求められるといったような点への懸念を記載しております。

今後、ASBJでは、これらのコメントの内容がIASBで取り上げられるように、いろいろなチャンネルを使ってIASBに働きかけていくつもりであり、関係者の方々には、今後ともご協力をお願いしたいと思っております。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして、補足、ご質問、ご意見等がございましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

谷口委員、お願いします。

○谷口委員

今、ご説明がありましたけれども、経団連といたしましても、今回コメントを出させていただいております。

基本的には、ご説明ございましたASBJのコメントと方向はほぼ一緒ということでございます。ただ、そのプロセスを少しご紹介させていただきますと、経団連では企業会計委員会の企画部会、50社ぐらいの会社が集まっておりますが、ここで意見照会を行い、二度ほど企画部会で検討いたしまして、その結果を取りまとめてコメントをIASBに出しております。今お話があったのとほとんど一緒なのですが、基本的には質問の1、つまり何をIASBの戦略の優先事項とすべきかという点でございますが、やはり過去10年間、IASBの基準開発、改訂というところについて、変化が非常に激しかったと理解をしております。そのことを受けまして、今後は、新たな基準の開発、改訂を行うのではなく、基準の安定化に資源を注ぐべきであろうということを指摘させていただいております。

また、現在進行中のプロジェクトでございますが、資源の有効利用の観点から、場合によっては、アジェンダの中止の議論も必要ではないのかということを指摘させていただいております。その上で、概念フレームワークにおいて、いろいろ、日本基準との乖離があると理解しておりますが、純利益の概念について整理をしていただきたい。それから開示の負担の軽減という観点から、表示と開示のフレームワークの策定に注力をしていただきたい。このことについて主張をしております。

それから、2つ目の質問でございます個別のプロジェクトでございますが、ここで検討すべき内容として、優先順位の高い順に申し上げますと、その他の包括利益の問題、表示・開示の基準の問題、開発費、のれん、外貨換算、固定資産の減損の戻し入れ、これを挙げてございます。

一方、基準開発を中止してもいいのではないかというプロジェクトとして、財務諸表の表示の問題、負債、退職後給付を挙げてございます。先ほど、西川委員からもご説明がありましたように、今回、アジェンダ協議を通じて、関係者が一枚岩になって意見発信ができたと思っております。今後ともASBJを中心にして関係者の連携を図っていきたいと思っております。

あと1点でございますが、我々のやってきたプロセスの中で、国際会計基準の実務への適応というところについて、経団連として、金融庁、ASBJ、四大監査法人等が入りまして、タスクフォースを立ち上げ議論をしてまいりました。その中で特に減価償却費につきまして、やはり疑義がございましたものに対してIASBに照会をいたしまして、教育文書を出していただいたというのが、今後の方向を示すものとしても非常に有益であったなということで、今回のコメントの中で感謝を申し上げているということでございます。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

関根委員、どうぞ。

○関根委員

ありがとうございます。

私、日本公認会計士協会の副会長も務めさせていただいておりますので、アジェンダコンサルテーションについて、日本公認会計士協会の対応について一言つけ加えさせていただきます。

日本公認会計士協会は、IASBに対して従来から意見発信をしておりますけれども、先ほどご説明がありましたように、今回、アジェンダ協議会を設けて行うということでございましたので、私どもも、作成者、投資家、監査人等、立場はそれぞれ違いますから、観点は違うかと思いますけれども、日本として整合性のある意見発信をしていこうという趣旨にのっとりまして、調整をして意見発信をしております。

私どもの意見につきましては、ウェブサイトにも公表させていただいておりますが、高品質な国際会計基準を開発すると共に、適用に当たっての留意が必要であること、すなわち、実際に適用されるに当たって問題点等がないかということを確認する必要があるということ、適用後レビューにおいて課題が抽出された事項について、ガイダンスの開発や基準の改訂といった必要な対応を早急に行うべきということを1つポイントとして掲げております。また、先にもございましたけれども、今まで、10年間のIASBの活動において、いろいろ開発されてきましたけれども、さらに今後は長期的な視点に立って対応するようにというような意見を述べさせていただいております。

具体的には、ひとつには、概念フレームワークの開発に焦点をあてるべきとしています。特に日本でも時々話が出ておりますけれども、その他の包括利益や純利益の概念、こちらについて概念があいまいではないかというのは、今まで個別の基準の意見募集の際にも日本公認会計士協会としてコメントさせていただきましたけれども、それを総括的にコメントさせていただいておりまして、議論をすることが必要と申し上げております。また、表示や開示に関するフレームワークを開発して、非常に注記事項が多いというような意見も聞かれますので、そういったものを検討する必要があるのではないかというコメントをしております。

それから、先ほど申し上げました適用後レビューということに関連しまして、日本でも議論が出ております開発費の資産計上や非上場株式の公正価値等について議論が出ているということを紹介しまして、こういった議論が出ていることも含めて検討が必要ではないかということを申し上げております。

私のほうからは以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

ありがとうございます。

今、会長のほうから冒頭の西川委員のご説明について、質問があればということだったので、まさに質問なのですけれども、聞き違いでなければ、OCIのリサイクリングについて、それを禁止するノンリサイクリング項目を設けることは短期的には問題であるというふうにご説明されたと聞いたのですけれども、もし聞き違いでなければ、「短期的には」というのが、どういう願意なのか教えていただきたいと思います。

○安藤会長

西川委員、お願いします。

○西川委員

もう少し補足いたしますと、OCIリサイクリングをどう取り上げるかについては、幾つかの方法があるわけですけれども、1つは、OCIについて、リサイクルする、しないを、個々の基準のプロジェクトごとに扱うやり方と、それに対して一番大きいところでは、概念フレームワークの中できちんと純利益を定義づけるというやり方があります。概念フレームワークで取り扱うべきと考えますが、議論をすると10年ぐらいかかるのではないかという話があり得ます。もし、そういうことであれば、概念からOCIの扱いを切り出したクロスカッティングな議論ということが考えられます。それでも、時間がかかるということであれば、その間は、既に各国で定着しているOCIリサイクリングという実務をIFRSにおいても続けるべきだと、そういうことでございます。

○安藤会長

辻山委員、よろしいですか。

○辻山委員

時間を頂戴しても恐縮なので、後でまたクラリファイさせていただきます。

要するに、概念フレームワークでどうなるかわからないけれども、現状、各国の実務に従ってリサイクリングすべきだという主張なのか、もともとノンリサイクリングについて疑義ありという主張をされているのか、そこのところをお聞きしたかったわけなのですが、今のご説明ですと、とりあえず実務を認めてほしいという、そういう要望だとしたらちょっと疑義がありますけれども、これはあくまでもASBJの要望なので、承りました。

○安藤会長

西川委員、何かありますか。

○西川委員

この段階ではアジェンダに取り上げてもらうということをテーマにしているわけで、そこに既に日本の主張というのはにじみ出ているし、ASBJとIASBとの議論の中では、リサイクルすべきという日本の主張を口頭では言っているわけです。ただ、アジェンダコンサルテーションにおいてどういうふうに持ち出すかという中で、こういう結論を出したいというのを先行させていないと、そういうことでございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

佐藤委員、どうぞ。

○佐藤委員

2点ほどご意見を申し上げたいと思います。

まず、このコメント表の2ページ目の、4項の(b)に、IFRSの解釈に関する取り組みの充実ということを書いていますが、私もこれは全く同感で、ひょっとしたらIASBの喫緊の課題の1つになるのではないかなと思っております。原則主義のもとで、IASBはこれまで、個別のガイダンスにかかわるIFRICの機能の機動性と対応力をあまり重視してこなかったのではないかと私は推測しているのですが、あわせて、ご承知のとおり、IASBは各国に独自のオプショナルな基準の開発を認めていません。これらの要因が相まって、各国からの要請に十分対応できるようになっているのか懸念されますので、原則主義とIFRICの機能の強化という、ある意味相矛盾する課題を、本来は整理する必要があるのではないかと考えております。

現実に直面する各国は、個別のガイダンスを求めるニーズが極めて強くて、今回、私も北米の調査に参画させてもらいましたけれども、やはりそういう個別のニーズが結構あります。IFRICの機能を強化する必要があるというのは当然でありますが、逆に強化すればするほど原則主義の思想が後退するという、自家撞着に陥るリスクがあるのではないかと思っております。もともとIFRSは原則主義を特徴の1つとして、うたい文句にしていますが、MoU項目の検討状況を見ますと、限りなくルールベースの議論もしているように思えますし、今年の3月に発信されました英国の貴族院の特別経済委員会のレポートを見ても、昨今のIASBの検討状況を懸念・指摘しているようなところもございます。IFRICの問題については、「原則主義の限界」という本質的な問題にかかわる部分もありますので、この視点からも、日本から出ているいろいろな委員の方が議論を持ちかけていただければと思っております。これが第1点です。

第2点目は、3ページ目の概念フレームワークの改善という項目がございますが、これはコメントに記載のとおり、当期純利益とOCIのリサイクリングの問題、それから慎重性の問題、この辺はぜひアジェンダに取り上げていただけるよう、日本側としてご努力をお願いしたいと思います。

また、6ページの14項目に記載のとおり、本質的な問題として、IFRSには当期純利益とか営業利益、さらには利益とキャッシュフローの関連性、これらの項目をあまり重要視しない思想が背景にありますので、この辺は、多くのステークホルダーにとってはかなり決定的な問題ではないかと感じておりますので、ぜひ、この辺の論点を重要なアイテムとしてご議論していただきたいと思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員

私のほうから今回のASBJのアジェンダに関する意見に関して、3つほど申し上げます。

1つは、重要性が高いと考えられる項目が6つほど挙がっていますが、これに対しては全くその通りと考えています。リサイクリングはすべし。公正価値測定の範囲は、私の言葉で解釈して、ある程度広いよりは狭くていいのではないか。開発費の資産計上は限定的でもよい。のれんの償却に関しては定額・減損の組み合わせがあってもいいのではないか。固定資産の減損の戻し入れはなくてもよい。それから機能通貨の使い方については総合判断で広く考えていく、ということかと思います。

2点目は、詳しくは別途機会があるかと思いますが、先週、私どものチームは韓国、中国に行ってきました。この6つの点との関わりで、現象面で一言ずつコメントします。中国では固定資産の減損の戻し入れはやっていない。大手の鉄鋼会社を訪問しましたが、開発費の資産計上はやっていない。中国はご存知のようにフル・コンバージェンスですが、公正価値評価は限定的です。

韓国においては、フル・リサイクリングには非常に共感を覚えるとの意見がありました。それから機能通貨については、既に海運では使っていますけれども、連結、単独ともIFRSを導入し、税制も変えてきています。我が国が連結中心でいくのであれば、少し考え方は違っています。

これに関連して、リースについては、海運のリースに特有の問題というのは日本と韓国に共通であるので、ここはぜひ協調してやっていきたいという意見もありました。日韓共同歩調に関して、政治的な判断をしたほうがいいのではないかということです。

これらの例に見られるように、各国にはそれぞれ固有の理由があるということです。IFRSという大きな枠組みの中で、狭義の比較可能性はむしろ低下します。営業利益はぜひ活用したいと思います。韓国では実際そうやっています。それから、IFRSの導入は、グローバルな資本市場をつくっていくという意味では非常に役に立つけれども、個々の企業にとっては、結構手間がかかってメリットは少ないという声もいろいろ出ていました。問題は、投資家にとって、それがどのぐらい意味があるかということになるかと思います。

日本にとっては、市場、企業の競争力が本当に高まるか、グローバルに通用するかという視点から考えるべきです。今、私は若干個々の事例を挙げましたけれども、もう少し全体を見て、あるべき姿を考えながら、戦略的に進めていくことが大事であると思います。その意味で、ASBJの今回の論点というのは非常によくまとまっているのではないかと思いました。

○安藤会長

ありがとうございました。もう一方ぐらいいかがですか、よろしいですか。

それでは、IASBのアジェンダコンサルテーションについての、西川委員長のご説明についての質疑、ご意見、もしも何かありましたら、また後でも結構でございます、ご発言をいただくということで、一応先に進ませていただきます。

次は議事次第の4番です。国際会計基準(IFRS)についてでございます。前回、これは11月10日でございました。ご説明と、若干審議に入らせていただきました討議資料(3)につきまして、今回、引き続きご審議いただきたいと存じます。

皆様からご意見を頂戴する前に、討議資料(3)につきまして、前回ご質問をいただいておりますので、まず事務局からその点について説明していただきます。

○栗田企業開示課長

お手元に幾つか資料を配付させていただいておりますけれども、その中で、まず、縦の紙の「国際会計基準(IFRS)に係る討議資料(3)」というものと、横の紙で「参考資料II」と書いてあるもの、それから「参考資料III」と書いてあるものについてご議論をいただきたいということでございます。

前回の会議の際に、この討議資料(3)についてご説明をさせていただきまして、3人の委員の方から意見が述べられました。その際に、この討議資料(3)の4ページにあります表7「我が国企業の資金調達構成について」において、ここ2年ほど、我が国企業が海外・国内でどういう資金調達をしているかという表を掲げさせていただきましたけれども、この点について、例えば業種別にもう少し詳しいものはないのかというご質問がありました。それについて、当方でさらに調べてまとめさせていただきましたのが参考資料IIIでございます。まず、これについてご説明させていただきます。

参考資料III、2ページものでございますけれども、1ページ目は、縦紙の資料を少し業種別に分けてみたものでございまして、製造業、商社、金融機関、その他に分けました。残念ながら、海外で発行される債券については、その内訳がとれませんでしたので、「not available」と記載をさせていただいております。

それから資料をとる都合で、国内債券につきましては公募のみということで、縦紙の資料の数字とこの数字が一致しませんのは、そういう事情によるものでございます。この資料を見ていただきますと、海外での資金調達、株でございますけれども、その大宗は金融機関の発行ということになっておりまして、平成21年でいえば約4分の3が金融機関、22年でいえば約3分の2が金融機関の発行になっておるということでございます。それから製造業のほうについて申し上げますと、資金調達の主要なものは国内での債券の公募ということになっておりまして、業種分けでいえばそういうところが出てくるということでございます。

もう1枚めくっていただきまして、これは法人企業統計より作成した資料でございますので、今申し上げた数字とリンクするものではないのでありますけれども、平成21年度と平成22年度につきまして、法人企業統計による分類でございますが、資金運用状況、資金調達状況について調べたものでございます。資金運用状況といいますのは固定資産への投資、それから運転資金、それから資金運用ということで、金融資産等への投資などが入ってくるわけでございますが、それについてどういう資金調達をしているかと、これは内部調達、外部調達に分けてあります。この数字を見ていただきますと、21年度、22年度で、大きな傾向に変わりはありませんけれども、特に目立つのは資金調達のうちの外部調達が、ほとんどの業種でマイナスになっておりまして、要するに、今は外からの借り入れ等を返している状況ということで、外部資金に依存しているのは金融業、保険業のところだけということでございます。専ら、多くの企業は今のところ内部資金で必要な資金を賄っているという状況が見られるということでございます。

これはあくまで足元の状況ということでございまして、当然、今後は国内、海外の資金需給の関係が変わりますので、このとおりいくかどうかということは定かではありませんが、足元ではこういう状況が見てとれるということでございます。

私からは以上です。

○安藤会長

審議の途中でございますが、自見大臣がお見えになられましたので、ここで大臣よりごあいさつをいただきたいと存じます。

○自見大臣

金融担当大臣の自見庄三郎でございます。本日は、師走の大変お忙しい中でございますけれども、企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議の開催に当たり、ご出席をいただきまして、また、こういったごあいさつの機会を与えていただきまして、心からお礼を申し上げる次第でございます。

皆様方には、日ごろから本当に格段のご協力をいただきまして、改めて深くお礼を申し上げる次第でございます。本日は、通例火曜日・金曜日となっております閣議が、明日はご存じのように天皇陛下のお誕生日で国民の祝日でございますので、本日の3時から繰り上げ閣議となりまして、開催をされました。そういったことで、本審議会に遅参いたしたことを、本当におわびを申し上げると同時に、また、閣議の後は定例記者会見となっておりまして、退室させていただく非礼を心からおわび申し上げる次第でございます。

冒頭、私よりオリンパス社の事案に関しまして、一言申し上げます。去る12月16日の閣議後記者会見において、私からオリンパス社の事案に関して、今後の対応等について発言をさせていただきました。こうした個別ケースをもって、我が国上場企業全体や市場全体が規律に欠けるものとして評価されることは適当でないと私は考えておりますが、内外の投資家より、我が国市場の公正性・透明性に対して疑念を持たれていることは憂慮すべきことであると思っております。

金融庁におきましては、これまでも市場の公正性・透明性を確保すべく、金融商品取引法の改正など各般の制度整備に努めてまいりましたが、今回の事案の解明が進展しつつある中で、今後、制度の運用面を含め、所要の点検・検討を行い、各関係者が連携して、適切な再発防止策を講じていく必要があると考えております。その際、基本的に、再発防止のための制度的対応に関しては、形式だけにとらわれることなく、真に実効性のある方策について検討する必要があると考えております。私は、我が国企業が健全で力強い成長を遂げるためにも、それを支える資本市場に対する信頼を回復・向上させていくことが重要であると考えております。そのためには金融担当大臣として全力を挙げて対処してまいる所存でございます。

次に、本日の議論についてでございますが、前回の本合同会議におきましても、委員の皆様方から具体的な論点についてご意見を多数伺うことができました。大変ありがとうございます。私からお願いをいたしました海外調査については、欧州は11月28日から12月4日まで。北米およびアジアは12月11日から18日までのスケジュールで実施されたところでございます。短期間のうちに、多数の調査先を精力的にご訪問いただいたと聞いております。委員の方々におかれましては、本当にありがとうございました。後日、この審議会で調査結果についてのご報告をいただくことになろうかと思いますけれども、その機会を楽しみにさせていただきます。

本日の合同会議におきましては、前回の続きとして、経済活動に資する会計のあり方等について議論をお願いすることとしております。委員の皆様方におかれましては、引き続き活発なご議論をいただくことを重ねてお願いをいたしまして、私のあいさつとさせていただきます。

最初に申し上げましたように、今から閣議後の記者会見、定例でございまして、こちらのほうに行かせていただく非礼を改めておわびをさせていただく次第でございます。よろしくお願いいたします。ありがとうございます。

○安藤会長

お忙しい中、どうもありがとうございました。

(自見金融・郵政担当大臣退室)

○安藤会長

それでは審議に戻ります。

まず、先ほどの栗田課長のご説明につきまして、ご質問等ございますでしょうか。よろしければ、前回に続きまして討議資料(3)につきまして、資料の13ページにございます、ご議論をいただきたい論点を中心にご意見をいただければと思います。

なお、本日ご欠席の藤沼委員から事前に意見をご提出いただいておりまして、席上に配付させていただいておりますのでご参照ください。それでは、ご意見等のある方は挙手をお願いいたします。

泉本委員、どうぞ。

○泉本委員

ありがとうございます。

今、大臣のご発言で、「経済活動に資する会計のあり方」という箇所の趣旨がわかりにくく、「経済活動に資する」というところがよくわからないのですが、前回までの皆様のご発言を、議事録を改めて読んできまして、雑感になってしまいますけれども、3点ほど述べさせていただきたいと思います。

1つは、連結財務諸表についてIFRSの適用を検討するということが一番の課題だと思うのですが、我が国の主張が国際会計基準の中に取り込まれるように、まずは発言権を保持することが大事ではないかと思いました。私も先週韓国に行かせていただいたのですけれども、韓国はフル・アドプションを取り入れたということで、やはりIASBに対しての発言権が増した印象があるという趣旨のご発言がありました。

もう1点は、日本基準とか、あるいは日本的なものを温存しなければいけないというご発言が前回のご発言の中にもあるのですが、もし仮にそういうものがあるのでしたら、何が具体的な問題なのか、どういうものが日本的なものなのかということを、また、それがなくなることによって何が損なわれるのかということを少し明確に議論しないと、「日本的経営」という言葉はありますけれども、「日本的会計」という言葉はあまり聞いたことがないので、この辺のところをしっかり明確にしていかなければいけないのではないかと思いました。

それから2点目ですけれども、私、前にも発言させていただきましたが、この発言権の観点からは、喫緊の課題として、来年の秋にもオープンする東京サテライトオフィスの有効活用ではないかと思います。先ほども申し上げましたように、韓国の方たちはかなり発言権が増したというふうにお思いになっていると。気がついたら東京オフィスは韓国人で埋められたということにならないように、やはり日本として、ここの場で積極的に参加して、IFRSの意見の形成ですとか議論に貢献する必要があるのではないかと思います。

前回、ASBJにおいて、若い方が非常にいい活動をしていると、日本のいい議論をしているというご発言がありましたが、今度はこういう場が設けられますので、ASBJの中だけでなく、もう少し、この東京サテライトオフィスのところにも貢献していく必要があるのではないかと考えます。

それから3点目ですが、先ほどの議論に重なるかと思いますが、自国制度で何が問題になるかというところの観点ですが、上場会社が連結財務諸表にIFRSを適用して、単体は日本基準のままだというように分離したと仮定した場合に、会社法ではなくて金商法の単体の財務諸表の開示をしないとしたときに何が問題になるかを明らかに、調査・分析していただいたほうがよろしいかと思います。会社法の単体財務諸表は、前回、岩原先生のご発言にもありましたように、これはやはり日本の制度上重要なものだと思いますけれども、金商法の単体が要るのか、要らないのかというところも議論が必要ではないかと思います。

韓国のフル・アドプションは、昨年までは単体だけだったのに、ことしからはIFRS強制適用と同時に連単同時だという、そういう制度の導入をされたそうでございます。私たちは多分、かなり積極的に運用されているところに視察に行ったので、積極的なご意見ばかりだったのですが、連単同時にやることによって連結の作業も早くなったし、それから諸外国の子会社の状況もよく見えるようになったというご発言もございました。ここで今、日本は単体を切るか、切らないかという議論もしていると思うのですけれども、その辺のところもしっかり検討していただきたいと思いました。

少し長くなって、申しわけありません。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

逢見委員、どうぞ。

○逢見委員

それでは、討議資料3の13ページにある論点に基づきまして、私はマル1マル3について意見を申し上げたいと思います。

まずマル1についてですが、今後、我が国では少子高齢化が進む中で経済成長をしていく必要があり、こうした中では高付加価値が期待できる製造業は引き続き重要だと思っております。ちょうど、討議資料3の1ページに、我が国の産業・雇用構造が簡単に記されておりますが、国際的に見ると、欧米主要国に比べて、日本は第二次産業、製造業の割合が高いことが見てとれます。そういう意味では金融に重きを置いている国とは事情が異なると思います。したがって、会計基準の検討に当たっては、こうした国による産業構造や雇用構造に配慮することが必要であると考えております。

それから論点のマル3でございますが、1つは収益と費用の関係についてです。IFRSの利益の概念である包括利益というのは、予測される将来キャッシュフローの現在価値の増加分のことであり、いわば将来の予測と言っていいと思います。我が国で成熟した労使関係を持つところでは、賃金あるいは賞与、一時金などの労働条件は、企業収益などの情報を労使で共有して協議・決定しております。こうした枠組みの中で、労働者は生産性向上を通じて利益を増大させ、みずからの労働条件の向上につなげていくように取り組んでいるわけです。ここで言う利益というのは、損益計算書に基づく過去1年間の会社の業績です。IFRSの包括利益概念、すなわち資産や負債の増減で利益を決めることになりますと、労使の努力が適切に反映されず、労働者は生産性向上の意欲を失いかねず、企業経営、ひいては我が国の国益にとって望ましいものであるとは思えません。

また、確定給付年金制度の会計処理につきまして、いわゆるステップ1の退職給付債務の貸借対照表へのオンバランスが検討されているわけでございますが、これについては、たしか2000年に会計基準の見直しが行われた際に、企業年金制度が個別企業において見直され、労働者から見ると改悪のきっかけとなったという経緯がございます。この点については、私どもは必ずしも賛成できるものではありません。

また、仮に見直しをする場合であっても、会計基準の変更はあくまで財務諸表における表示のあり方が変わるだけであるという理解に立って、企業年金制度などの実態への波及をさせないということが必要であると思います。それから、数理計算上の差異を平均残存勤務期間で費用計上するということは、長期雇用を望ましいものであると考える我が国においては、収益と費用の関係上、合理的なことであると思いますので、この点は今後もしっかりと堅持していただきたいと思っております。

それから公正価値会計についてであります。株式や債券などの金融商品は市場で活発に取引され、市場価格に関する公正価値を算出するということができるでしょうが、機械などの製造設備は、類似の資産や負債がないというものが多く、公正価値評価に不向きな資産であります。したがってこれらに公正価値会計を適用することは避けるべきであると考えております。公正価値会計の意義をすべて否定するというわけではありませんが、何でも公正価値会計ということではなくて、資産の実態に応じて柔軟に適用を検討する必要があると思います。

それから保守主義の原則についてです。ゴーイングコンサーンという観点からは、保守主義というのは必要であり、当然、過度あるいは無制限に適用する必要はありませんが、今後も維持していく必要があると考えております。

それから確定決算主義についてです。これは資料の12ページにございますが、我が国経済社会に完全に定着していて、今後も維持すべきであると思います。特に中堅企業、あるいは小規模な企業においては、税務イコール会計という実態があり、こうした点について十分な配慮が必要であると思っております。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

河崎委員、どうぞ。

○河崎委員

ありがとうございます。

私はマル3のところを中心に、3点ほどお話をさせていただきたいと思います。

まず1点目の収益と費用の対応の問題であります。当期純利益、これを何とか議論の俎上に上げていただきたいという、先ほどのアジェンダコンサルテーションの提案というのは、非常に意味のあることだと思っております。私も、先ほどの鈴木委員や泉本委員と同じようにアジア地区を調査に行かせていただきました。

韓国では、先ほどからお話がありますように、フル・アドプションでありますが、しかし、フル・アドプションと言いながら、実は営業利益の注記表示を求めている。これは投資家からの要求であったということでありました。つまり投資者であれ、あるいは経営者であれ、情報要求は営業利益、つまり企業の業績利益に対して非常に関心が高い、逆に包括利益ではなかなか判断しにくいという現状があるようです。その意味では、伝統的な収益と費用との対応関係をベースにした業績利益の計算と表示を、何らかの形で生かしていくべきではないか、これが第1点目であります。

それから2点目は、公正価値会計と保守主義との関係です。これらは、相互に密接にかかわっている問題ですけれども、調査に行かせていただいたときに、各企業、特に我々が行ったのは大企業でありましたが、公正価値会計についての取り組みの姿勢は、どちらかというと慎重な対応でした。ご承知のようにIFRSでは原価モデル、それから再評価モデル等があるわけですが、ほとんど再評価モデルは適用していない。つまり原価モデルが中心であるということでした。その意味では、ある種の保守的な会計処理に力点を置いた企業経営が行われており、調査対象が専らメーカーであったいう点があるかもしれませんけれども、そういった企業経営が行われており、また会計もそれに即した基準が採用されているということでした。

それからこの問題と関連しまして、先ほど佐藤委員のほうから原則主義とルールベースというお話がありました。ご承知のように、IFRSは比較可能性を高めるために、IFRSを推奨しているわけですけれども、しかし中国や韓国なんかのお話を聞いていると、特に韓国では、IFRSの適用によってむしろ比較可能性が損なわれたという意見が見られました。つまり、選択の余地がいろいろ広がってきたために、同一業種の間でも企業間の比較がなかなかできないということでした。しかし、そういった現象も一時的なものであって、将来的には何らかの形で選択する方法が安定化していくことから、比較可能性も高まっていくのではないかという意見もありました。しかし、このことはこれは翻って考えると、原則主義といいながら、実はある種のルールベースになってしまうということではないかと思います。その意味では、原則主義の中にも、ある種の適用の指針であったり、あるいはルールベース的な考え方を盛り込む必要があるのではないかというのが2点目であります。

それから3点目、これは非上場会社に対する対応であります。先ほど確定決算主義は、我が国の制度としてしっかりなじんでいるということから、これを維持すべきであるというご指摘がありました。私も全く同感でありまして、特に非上場会社に対しては、確定決算主義の考え方は、これまでも申し上げましたように、我が国の会計文化であって、こういったものをしっかり守っていくべきである。上場会社でも、この確定決算主義は切り離して考えることはできないはずです。韓国では、IFRSを導入したために申告調整が非常に複雑で、煩雑になってきたというお話をしておられました。ただし、韓国の場合には、IFRSに見合った形での大幅な税制改正が行われているということでありました。果たして、我が国でそういうことができるかどうかというのは大いに疑問でもあります。その意味では、税制との関係を切り離してIFRSの問題を考えることはできないのではないかということを実感いたしました。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

錢高委員、どうぞ。

○錢高委員

今の委員のお話を伺っておりまして、IFRSの問題の基準と、先ほどのこの税制との絡みという問題に関して、実際、企業経営をしている立場において考えますと、かなり、会計制度と税務というのが、1つの方向性に日本国内も収れんしてきているかと思います。細かくは私にはよくわかりませんが、おそらく時価会計における減損などに対する対応につきましても、有税引当分と無税引当分というふうな問題も一方であるのかもしれません。そういったことが、国内においてもその辺のスタンダードが、ある金額のパーセント以上に減損する場合は有税になるとか、あるいは、ある部分までは無税でいいとか、そういった問題によって、やはりスタンダードに非常にいびつな部分があるかもしれないという問題を、今の委員がおっしゃったように、もし、海外の税制との絡みと、日本国内の税制との絡みが、会計制度の結果としての数字の表記にどういう影響が出てくるのかと、立場として、企業経営の立場からいきますと、税金というものは、企業にとっては払うべきコストだと思っておりますし、またそれは、費用というふうに考える価値観もあるわけでございまして、その辺の税務、税に対するいろいろな関わり合いと、この会計制度の、一方においてずっと進行していくということが、いかにうまく、パラレルの段階で、永久にパラレルから1つの路線にクロスしていくという方向性も、何かご配慮いただければありがたいかなと思っております。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

大武委員、どうぞ。

○大武委員

確定決算主義の話が出たので、私、元国税庁長官ですので、お話をさせていただきますと、この話は多分、企業会計審議会という観点で、狭義に考えられれば、もちろん、自由な裁量はあり得るんだと思いますが、税という観点で見ると、確定決算主義をすてると実務上極めて困難が伴うと思います。特に先ほど河崎委員が言われたとおり、中堅中小企業以下は完全に確定決算主義を前提にでき上がっています。その中で、大きな会計の動きの中で、少しずつの調整は行われていますが、特にこの包括所得という概念は、全くといっていいぐらいなじまないという気がしています。

そういう意味でも、先ほどのお話にもありましたように、韓国なんかは申告調整が大変なことになるだろうと思います。特に韓国の場合は、ご存じのとおり中小企業というのはほとんどありません。むしろサムスンとか、大変大きな企業が中心で、あれだけ景気がいいと言いながら、韓国自体は失業率が1割を超えるような状態にあることはご存じのとおりだと思います。そういう意味で日本は、雇用が何なりと支えられているのは中小企業が残っているからでありまして、ある意味で言えばこれが失業を抑えている1つの理由でもあると僕は思います。

その中で、彼らが確定決算主義というものを中心に会計をつくってきた、そしてそれに、実は上場企業もかなり影響を受けていて、ある意味で言えば、これを無視した会計を税務上とるというのは極めて難しいと私は思います。もちろん、今は企業会計として進めるというお話があるように思いますけれども、私が聞く限りでは、これは辻山委員なんかにお聞きいただきたいと思いますが、アメリカという確定決算主義をとっていない国においてすら、税務会計との調整は1つのネックだというふうに、アメリカの国家税務総局から、私は内々に聞かせていただいています。そういう意味でも、そんな簡単な話ではないというのが1つです。

それからあわせて、ついでに言わせていただければ、先ほど逢見委員が言われたように、企業の利益というものについて、やはり製造業を中心に考えた場合には、資産と負債を全部あわせた包括利益という概念は、製造業にとっては極めてなじまない概念だと思います。特にこれから日本は人口減少に入り、間違いなく地方都市の工場立地地域の資産価値は下がってまいります。それが包括利益で、資産価値そのものを、所得の中に入れ込むとすれば、日本の企業の地方立地は極めて困難になると思います。はっきり言って、ドイツにおいてすら、私の聞く限りでは、これはいずれ欧州を調査された方にお聞きいただきたいと思いますが、ドイツの会計士会から内聞しているところでは、ポーランドとか、東欧にどんどん出て行っているというふうにも聞いています。その意味でも、私は、日本はやはり、各地方の自治体の力というのを活かせ、といろいろよく言われるようになっている今日、地方の地価が下がっていくときに、下がることが明らかな地方へ工場立地ができなくなるような会計をとることが本当にいいのかどうか、その点は実務家としてぜひお考えいただきたい、そのように思う次第です。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

永井委員、お願いします。

○永井委員

ありがとうございます。

主に論点の4についてお話しさせていただきたいのですけれども、先般の海外視察で、中国と韓国を訪問いたしまして、大変勉強になりました。中国はコンバージェンスで韓国はフル・アドプションと、非常に対照的な方法をとっているわけですが、今回、現地ヒアリングして初めてわかったこともたくさんありました。一番強く印象を受けたのは、中国の非常にしたたかな会計戦略でありまして、コンバージェンスは一方方向ではない、双方向だと、IASBにも中国の事情を勘案してもらう、不適当な基準は切り落とすと、そういうふうにおっしゃっておられました。

一方、フル・アドプションの韓国のほうは、比較的スムーズに導入が進んだというお話をあちこちで伺ったわけですが、個人的には、今後どうなるのかなという懸念も感じました。それと言いますのも、先ほど来、各委員の方からお話もありましたが、韓国でリースの今後の開発動向次第では非常に大きな影響を受ける産業もありますが、フル・アドプションという形をとりますと、非常に大きな影響があるのに受け入れざるを得ない、こういう、自国開発でない基準を入れるという恐ろしさというか、その点を私たちはもう少し考えるべきではないかと、そういう印象を受けました。

あと1点、ここの論点とは関係ないのですが、一言お伺いしてもよろしいでしょうか。お伺いしたいのは、この審議会の今後の大まかなスケジュールです。先般の自見大臣のご発言で、仮にIFRSが日本で強制適用になった場合も、準備期間は5年から7年とるとおっしゃったわけですが、実際、企業の財務、経理の現場では、大手を中心に、もし、強制適用になった場合ということで、再び備える動きが見られておりまして、確かに、グループ会社への周知徹底とか、遡及のことを考えますとぼんやりしているわけにもいかないということだと思います。2012年をめどに強制適用するか否かを判断するという、従来からのスタンスは変わっていないと理解しておりますが、企業、特に大手から見ると、強制か任意か、どちらかわからないので準備せざるを得ないという状況にあると思います。判断へ向けて、今後審議会をどういうふうに進めていくおつもりなのか、ご教示いただければと思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

まさにスケジュールの話は、この審議会の問題でございます。どうぞ。

○栗田企業開示課長

今、今後のスケジュールというご質問がありました。まさに、それはこの審議会の議論がどう動いていくかによってという面が大きいのでありますけれども、8月の審議会の際に11項目の検討項目を示させていただきました。今、3項目目をやっておるところでございまして、残り8項目あります。まずはこれを順次こなしていくということかと思います。当然その中で新たな論点が出てくることもあるということでございますが、そういうのが一通り終わった時点で、どれほど議論が成熟しておるかということが問題になってくるかと思います。その際に、もう議論は出尽くしたということであればまとめに入るということでありましょうし、まだまだ議論が足りないということであれば、その点については議論をしていただかないといけないということかと思います。

それから、中間報告ではとりあえず2012年をめどに判断するということが書いてありました。それ自体が消えてなくなっているわけではありませんけれども、そこの書き方は、とりあえず12年をめどということで、絶対12年中に何でもかんでも決めないといけないという趣旨ではないと理解していますので、その辺も審議会のご議論の進み方次第ということになるかと思います。

○安藤会長

ほかにいかがでしょうか。

西村委員、お願いします。

○西村委員

今お話がありましたように、基本的には、やはり会計基準の統一というのは、投資家の立場からも、あるいは我々経営の立場からも、必要なものだと思っております。最近は議論が若干拡散しているようには思いますが、いずれにしても、会計基準をグローバルに統一していくという姿勢、認識、これは基本的なものだと思っておりますし、やはりその方向であるべきだと感じているところであります。

一方、今のIFRSそのものは、やはり種々ご指摘もありましたように、あまりにも時価に偏り過ぎた基準であるというのも事実であろうと思います。我々のようなものづくりの立場から見ますと、やはり包括利益一本やりではなくて、当期純利益も重要な指標として組み入れるという、まさにそういう方向で、見直していただいてきたわけですが、今後ともIFRSの見直しをやっていく必要があるのではないかと思います。その中では、今もまさにASBJのコメントにありましたように、これは大変よくまとめていただいたと思いますが、ぜひ、このような内容についてきっちりと提言をしていただいて、これから東京にサテライトオフィスもできることですから、時価一辺倒にならずモノづくりの観点も踏まえて検討を進めていただきたいなと思っております。

なお1点、連単分離の議論について少しお話をしたいのですけれども、これはぜひ、実務ベースを踏まえてお願いしたいと思います。連結仕分け一本で処理できるものもあれば、実際のところ、業務を相当見直さないとできないものもあります。例えば収益認識については、単体は出荷ベースでいいと、連結は客先検収基準だなんてことは実務上できないわけであります。そういう面では、私どもは日本基準でコンバージェンスできるところは基本的にコンバージェンスを行ない、連単を合わせていこうということで、とりあえず、できるところはやっていくということでは進めております。いずれにしましても、グローバルに統一されるのが数年先かもしれませんが、基本的に、今申し上げましたような実務の観点からも、連単の統一を積極的に、ぜひ前向きに進めていっていただきたいと思っておるところであります。

○安藤会長

宮城委員、お願いします。

○宮城委員

宮城でございます。非上場と中小企業の立場というところで発言をさせて頂きます。

先ほど確定決算主義のお話が出ましたけれども、非上場と中小企業の立場で言いますと、やはり税と会計の調和というのが最大の課題でございます。この両者の関係が離れた場合、会計が中小企業あるいは非上場の世界できちんと守られるのかという点について危惧を覚えております。確定決算主義については、ぜひ維持をしていただきたいと私どもは思っておりまして、そのもとでの安定的な会計というのが非常に大事だと思っております。

11月10日に配付された討議資料(3)の3ページに(参考)として記載されておりますけれども、今、中小企業の会計につきましては、中小企業庁と金融庁の共同事務局のもと、「中小企業の会計に関する検討会」で検討が進んでおります。基本的には、その検討会での議論も、確定決算主義、税と会計の調和に基づいた安定的な会計を中小企業に、ということでございまして、私どもとしても、中小企業の経営者が理解できる、あるいは中小企業が経営をする上で、その経営の指標、あるいはガイドラインとなるというのでしょうか、中小企業が自社の経営を見るときに、その会計、財務諸表というものを見ながら自分で経営を考える、そういう会計であってほしいという考え方で、検討に臨んでおります。基本的にはその検討会では、中小企業の会計とIFRSとの関係については、IFRSの影響を受けない安定的なものにするということについて、合意がなされていると考えております。これは当然、非上場でステークホルダーが極めて限られているという中小企業の会計について、という条件がつくわけでございますけれども。非上場、とりわけ中小企業の立場からは、確定決算主義、税と会計の調和については、ぜひとも維持をお願いしたいと思っております。

以上でございます。

○安藤会長

八木委員、何かございますか。

○八木委員

手は上げなかったのですが、ご指名がありましたので、発言させていただきます。私の意見は、前回書面で出させていただきました。IFRS導入に関する基本的な考えは、現下の会社法・税務等を考慮すると、当面は連単分離でいくということを前段として決めて、進めていくべきだと思っております。IFRSの適用範囲については、限定的強制適用が妥当と考えております。この考え方からすると、ここに提示されている論点は、別途(専門部会で)議論すれがいいのではとの意識を持っております。本審議会でも包括利益の問題がよく取り上げられますが、包括利益を単純に純資産の増減表とみなせば、既に開示済みの情報です。むしろ企業活動を評価する時に、どの利益が評価アイテムとして重要かを明確にしていくことが必要だと考えております。企業活動の成果をきちっと評価する指標は、包括利益ではなくて、

純利益と考えます。これは我々作成者だけではなくて、それをご評価いただく投資家にとっても極めて重要な指標だと考えております。(このため、純利益とその他の包括利益の区分は極めて重要)この点については、本日西川委員のほうからIASBへのコメントのご説明がありました。IFRSの良い点は、我が国がIASBに意見を言えるところです。今回の我が国のコメントができるだけ多く受け入れれば、IFRSは連単分離で進めるとしても、かなりな部分で、連単同時でのコンバージェンスが進められるような可能性が出てくるのではないかと考えております。(注:退職給付会計のリサイクリングをマストとして、今回のコメントのかなりの部分が実現したところが、J-IFRSの落としどころと考えております)

それから、先ほど西村委員からもご指摘がありましたように、アイテムによっては、連単分離の場合でも、単体にも任意適用していただかなければいけないものが出てくると思います。一番大きなものは収益の認識かと思います。これについては単体への任意適用を認めていただかないと、実務が大変だと考えております。これは応用動作ですので、審議を進める中でご検討いただければ良いのではないかと思っております。

○安藤会長

ありがとうございました。

八田委員、お願いします。

○八田委員

ありがとうございます。

先ほど、泉本先生のほうからも、「経済活動に資する会計」って何だかよくわからないとのご発言がありましたが、これまでも何人かの方がお使いになるこの言葉、私もよく意味がわからないわけです。多分、きょう何人かの委員の方のご発言にもありましたけれども、会計基準が変更になったり、あるいは日本の現行基準からIFRSに変わると、例えば雇用関係に変動を及ぼすとか、あるいは税額計算に差異が出るとか、何か法律と同じような視点で会計の基準というのをお考えになっているのではないかなとの感想を持ちました。そもそも会計というものの前提についての共通認識を持たないと、会計基準の議論は始まらないと思います。

そのために、今日の何人かのご発言も、聞いていますと何かデジャブのように、これまでの発言と同じようなことの繰り返しで議論されていて、結局、そういう方達は現行の日本の会計基準を守ることで、IFRSはちょっとわきに置きたいというお考えの方が多いのでしょうね。そうした考えがいいとか、悪いとかといったことは差し控えますが、そもそも我が国の会計基準のスタートは、昭和24年の企業会計原則にあるということを思い起こしていただきたい。その前文に記されているように、会計基準は法ではないということ、仮に法との関係で見るならば税法とか商法、そういうものが今後改廃される場合の指導原理にならなければいけないのだと述べられています。仮に、経済活動という言葉と会計の基準をすり合わせるならば、経済活動を忠実に描写するためのルールが会計基準なんだということ、したがって、会計が描写した経済活動に対して、他の経営サイドがどう判断するかは、その指標をどのように利用するかの問題であって、会計基準の中身の議論ではないということです。現実に、我が国の場合には、戦後、まさに会計後進国からスタートして、おそらく、確定決算という考え方が非常に影響力を有して、それが会計なんだといった誤解を植え付けてしまった。特に、中小企業や個人の場合には、個々の経済活動の実態をあらわすのに、確定決算主義に依拠していた方が最も手っ取り早く、わかりやすく、そしてそれになじんできただけのことではないのかと思います。そうした確定決算に至る上位の概念として会計基準があるわけであって、今、それを国際的に考えようとしているということです。したがって、自分たちの現在の状況の思惑どおりにいかないような結果が数値として出てくることは好まないとか、こういう、何か違った、極めてポリティカルな議論がそこに潜在していると、中立的な立場での会計基準の議論ができないと思うわけです。

ただ、会計基準は決して純粋なものではなくて、これはその時点における、いわゆる関係当事者の決めごとであって、先ほど、どなたかがおっしゃったように、IFRSになると大分、給与計算とか損益の利益が変わってくるから嫌だといった考えをお持ちであるかのように受け取りましたけれども、多分、会計ビッグバン以前の、20世紀の、1990年代までの会計と今とを比べてみれば、実は劇的な変更があったと思うのです。当時は会計上も、全く認識、測定の対象になっていない事柄も、今は大分算入されてきている。そのことのほうがもっと大きなインパクトを実は与えてきたと思うのです。

現実に、現行の日本の会計基準はASBJの多大な努力によってほとんど差がなくなってきている。幾つかの項目の見直しは必要だと思われますけれども、ただ、これは今日藤沼委員が提出されている資料の中で端的に示されています。私自身、まさにそのとおりだと思うのですけれども、この資料の中で、1ページ目の六、七行目に、IFRSは、他の会計基準と同様に完成された基準ではないんだということ、つまり、これは社会規範ですから絶対的なものはないのです。特に会計は、絶対的な真実性を追求しているわけではないということを共通認識として持っているわけですから。と当時に、この末尾のところで藤沼委員が書かれている、最後のマル4、全く同感でありますけれども、「我が国の経済活動や企業経営が他の国々と比べて特異であることから、会計基準はそれに関連づけて作成されるべきであるという立場はとるべきではない」と。仮に、わが国の企業経営が特異なものであるといったような考え方を国際的に発信するならば、まさに自分たちだけで通用する基準で満足するのですねというようなふうに捉えられてしまう恐れがあります。

前回のときも少し発言しましたけれども、例えば今具体的に問題になっている、例の光学機器メーカーの会計不正での議論、あそこではのれんとか、さまざまな会計のスキームが使われています。おそらくあの会社は、経営的にも、国際的にも、まさに日本を代表する企業経営を行ってきた。しかし、会計的なスタンスから見るならば、極めて稚拙なといいますか、信義にもとるような活動がなされてきたということで、事の深刻さを強く感じています。というのも、今回の事案というのは、これまでの他の不正会計の事案、例えばカネボウとか、幾つかありましたけれども、それらと全く違うのは、海外のメディアがものすごい関心を持っているということです。それは私自身肌で感じているところであります。したがって、まさに日本は今、国際社会に対してどういう会計の姿を進めていくのか、これがやはりこの審議会に求められているのではないかと思います。個々のことは申し上げたくないのですけれども、少なくとも会計基準が何なのかということ、そして、いまだに確定決算主義でなければならないというような議論がもしまかり通るならば、非常に厳しい言い方をするならば、我が国の会計は、国際社会に肩を並べられるような、信頼し得る会計制度を維持できなくなる可能性が多分に潜在しているのではないかと、そんな危惧を抱きます。

以上です。

○安藤会長

ほかにいかがでしょうか。

五十嵐委員、どうぞ。

○五十嵐委員

ありがとうございます。述べさせていただきたいと思います。

昭和24年の企業会計原則は、私の理解では、広く内外を通ずる会計処理の実務に基づき欧米諸国の会計実務における正当な慣行もなるべく取り入れることにして策定され、国民経済の民主的で健全な発達のための科学的基礎を与えることを目的として制定されていると理解しています。また、2009年の6月のIFRS導入のための中間報告は、金融市場のグローバル化会を背景として、日本の金融市場を国際的な魅力の向上や日本企業の国際競争力の強化に資することも視野に入れると記載されていると理解しています。時代は変わっても、両者の目的は企業会計原則または会計基準の作成または導入により企業の経済活動並びに国の発展に資するためであり、また、表現方法は異なっていても、企業活動及び国の発展に資するという視点から見て、同じような考えでつくられているものと、私は理解していました。

第二に、配布されました資料の中の議論していただきたい論点のマル3の中に、収益と費用の対応というのがございます。これはIFRSのフレームワークには明確に述べておりませんが、IASBの理事の方のスピーチで、IFRSフレームワークの中で費用収益対応の原則はエクスプリストには述べていないけれども、インプリストにはそこに含まれているということを述べていると理解しております。私は、費用収益対応の原則というのは非常に重要だと思いますので、そのことを、IASBの理事の方の発言について文字通り理解するとすれば、私は費用収益対応の原則が無視されていないとないと個人的には思っています。

第三に公正価値会計ですけども、2005年に欧州でIFRSが強制適用になりまして、2007年に、ICAEWが広範囲IFRSの実態調査の結果を公表しております。その目的はEUでの第一年度の適用の分析及びIAS規則の機能の評価などであります。その中に、公正価値会計の調査があり、自社所有の有形固定資産の評価は原価で評価され、公正価値評価は非常に少なく、無形固定資産の公正価値評価はほとんどありませんでした。この調査結果によると公正価値会計か原価主義かと言ったときに、原価で評価している企業のほうが多いと理解しました。それは、今までの議論とあまり変わらない考え方と思いました。また、IFRSのもとで、公正価値との原価との選択適用が認められていれば、原価で評価することが適当と思われれば、原価を採用しているというように理解していました。

第四に、営業活動の業績を小計として含めることができると理解しています。但し、この小計、例えば、営業利益を含める場合には営業活動とみなされる活動から構成される必要がありますことと企業業績を理解するために目的適合性がある事が必要になります。従いまして、情報の有用性や信頼性が必要であると、私は理解しています。こうした条件が該当すれば、IASの下において小計を表示することが可能と規定されていると理解しています。

第五に、少し長くて申しわけありませんが、本会議で配布されたASBJのアジェンダコンサルテーションのペーパーに関する事ですが、これは2011年の11月30日に、もう公表されていらっしゃるということと理解してよろしいでしょうか。公表済みのペーパーに対してのコメントというのはなかなか言いにくいと思いますけれども、先ほどご意見があればと言われましたので、一点述べさせていただきます。2ページのポスト・インプリメンテーション・レビューにつきまして、我々は今後、これまで開発された会計基準の適用後レビューに重要性を置くべきであると考えると述べられていると理解しました。ある基準が採用されたとき、適用後レビューの実施は、一般的にしばしば行われていると思いますが、適用後レビューの意味と目的の明確性が必要と思います。つまり、レビューを行った結果、基準が適切でないとはどういう視点からその判断をするのかが重要な要素の一つと考えます。したがいまして、レビューの内容、またはその視点を本回答に述べることが望ましいと思います。その記述により、にポスト・インプリメンテーション・レビューに重要性を置くと共に追加して説明することになりIASBの人たちが読んで、その意図がより理解しやすいように思えます。これは私の個人的な観点ですが、そういうふうに感じました。

○安藤会長

ありがとうございました。

西川委員、何かありますか。

○西川委員

ポスト・インプリメンテーション・レビューというのは我々が言い出しているものではなくて、IASBが既に、これからやろうとして、現実には既にやり始めているのですけれども、そういうものですので、当然、IASB側はどういうものであるかというのはわかっているということになります。

○安藤会長

五十嵐委員、どうぞ。

○五十嵐委員

私の理解では、コンサルテーション・ペーパーといいますのは、各ステークホルダーが、各機関の視点に沿って考えを述べるというふうに理解しております。それらの情報に基づいてステークホルダーから意見をまとめ、その結果、IASBが1つのプロジェクト、または基準の改廃に進んでいくという視点で行われていると思います。従いまして、IASBがポスト・インプリメンテーション・レビューを行うと述べたときには、そのポスト・インプリメンテーション・レビューにおいて会計基準が適切でないとは、どういう視点から適切でないというのか、または、より適切な基準をつくるのであれば、どういう基準、規定、またはベンチマークのもとで、その基準をディスカッションすべきかということを提案する必要があると、個人的に思います。

○安藤会長

ご意見として承っておきます。ほかに、ご意見いかがでしょうか。

辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

ちょっとお時間があるようですので、2つに分けてお話をさせていただきます。まず、議論すべき論点として列挙されている中のマル3、これは会計基準の中身、あるいは関係する会計の考え方、基礎的な概念に関することだと思いますので、この点に関して、IASBが2001年に発足しましてからこの10年間に、IASBの議論の中で、特に会計基準を巡ってどういう議論がなされてきたのかということを、多少ご紹介しながらお話をさせていただきたいと思います。

先ほど、IASBは必ずしも対応概念を否定するものではないというご発言がありました。確かに現在はそのような方向になっております。しかしIASBの前身、IASC時代に、このIASC時代というのは、委員はパートタイムの委員から構成されておりましたので、この時代の基準案の起草というのは、主としてG4+1という団体が、これも釈迦に説法でしょうけれども、起草していたという経緯がございます。

その当時の1998年に出ました業績報告のペーパー――これは有名なペーパーでして、それがその後、IASB時代になって2001年の業績報告プロジェクトがスタートしたときから、このペーパーがリファーされながら、基本的にはその考え方に沿って基準が提案されてきたわけです。しかし、これは途中で徐々に破綻といいますか、受け入れられなかったために、結局IASBも最近対応概念を認めるようになってきたということです。

1998年の業績プロジェクトのペーパーでは、伝統的な考え方の利益概念、いわゆる純利益といわれている概念は、稼得-実現-対応利益という名称で呼ばれていました。これはFASBでは基本的にEarningsといわれている、いわゆる純利益と完全に同じではありませんけれども、いわゆるフローベースの利益だったわけです。それが明確に否定されまして、BSから利益を導いていく、ストック評価の結果として利益が導かれるモデルがそこでは主張されていた。このモデルが2001年の業績報告プロジェクトのときから繰り返し提案されました。しかしそれは受け入れられなかったので、プロジェクトの名称も途中で包括利益プロジェクトに変え、さらに最終的には財務諸表の表示プロジェクトというふうに、だんだん看板が入れかわって、今日の姿になっているわけです。

その間に一番重要なことは、収益認識についても、ストックから収益を認識しようとするモデルを開発して、2001年、2004年と、ご存じのようにそのような考え方に基づくアジェンダペーパーが出てきた。これがなかなか受け入れられなかったため、2008年のディスカッションペーパーでは、基本的にその考えは維持しているという記述は残っていましたけれども、中身は実務に配慮したものになっていた。けれども、完全にモデルを捨て切れていなかった公開草案だったので、色々と綻びが出てきた。そこで今、再公開草案になっているということですよね。その再公開草案は、現行実務になじむという形で評価されているということですが、独自のモデルに基づいて会計を全部塗りかえようとて、実際には受け入れられないという議論がこの10年間に延々と繰り返されてきた。ですから、今のIASBは「対応」を認めているというのは確かかもしれませんが、なぜ認めるようになったのかといえば、世界の会計界がそれを認めないことに対して異を唱えてきた、長い間の歴史があったことの結果です。この10年間は、そのようなことの繰り返しだったわけです。

ところがその途中でも、IASBの初期のモデルでさえ、世界が仲よくしなきゃいけないから、とりあえず日本的なものを捨てて、これを認めましょうなんていう仲よし論で、認めていってしまうような風潮があった。その結果として企業がどれだけ疲弊していくのかということは目に見えると私は考えております。

また公正価値会計と原価主義の選択適用ですけれども、これもいろいろな経緯を経まして、公正価値一本では受け入れられないところについては原価評価モデルというのは残しながら、やがて公正価値モデルで一本化するようなことをやってきた。投資不動産も当初は公正価値モデルにしようとしたけれども、なかなか受け入れられなくて途中では原価モデルというのを認め、やはりその後に原価モデルは認めないというふうに方向転換したとか、そのような経緯からみても、目指している方向性は公正価値モデルであることは明らかであると思います。

また、包括利益はBSの差額なのだから放っておいて、営業利益を見ればいいじゃないか、あるいは当期純利益を見ればいいじゃないかということもいわれますが、これは非常にトリッキーな話でして、例えば退職給付の数理計算上の差異については、今はノンリサイクルになっているわけです。その結果、当期純利益は従来のままかというと、ノンリサイクルの部分というのが当期純利益から除外されて、切り離された数値になります。そうすると、当期純利益の意味が変わるばかりではなくて、営業利益も変わってくる。最初に見積もった金額で最後まで営業利益が計算されて、途中の計算修正が反映されないので、いずれ支払われる額とは異なる金額で営業利益の計算が動いていって、営業利益の数字が異なってくる。ですから、とにかく国際的に参加していくためにはいいじゃないかみたいな議論は、あまりイージーにやると、やがて手痛い目に遭う。

それから、例えば包括利益について。今、世界の投資家の中で、一株当たり純利益ではなくて包括利益でいいと言っているアナリストがいるでしょうか。両方出ればそれはいいけれども、どちらかひとつだけというと、包括利益だけでいいのであれば、一株当たり包括利益にすればいいんだけれども、そういう意見は聞こえない。結局議論を突き詰めていくと、とにかく仲よくしましょう的な議論は非常に危険だということが第一のメッセージでございます。

それからもう一つ。制度論で申しますと、例えばアメリカは、この審議会でもアメリカの出方を見ましょうということで、これまで時間を見ていたわけです。アメリカはご存じのように、今年中には結論が出ないことになった。2011年ということは、ある意味で国際公約といいますか、そういうスケジュールで進んでいたのですが、結論が出ないことになった。

今、最も可能性のあるアプローチとして、コンドースメント・アプローチということが言われているわけですけれども、先ほどご指摘にあった後入先出法については、税との関係で、IFRSをアドプションすることができない。そういうふうに、1つ1つ吟味していきましょうということになると、結局は国内基準にせざるを得ないということですね。会計基準は法律じゃないというふうにおっしゃいますけれども、これはあくまでも制度に含まれる。それぞれの法律が包括的な斟酌規定を持っておりますから、そういうものとも結びついた、あるいは税とも非常に密接に結びついた、そういった基準、社会規範をアウトソーシングすることになる。手綱を外して、そっちで決めてもらったら日本が直ちに対応しなければならないようになる。

先ほど韓国の話が出ておりましたけれども、韓国がどういう経緯でフル・アドプションに踏み切ったのか、これは、ここで私が申し上げることでもないことですけれども、いわゆるIMFの管理下に入ったときに、国際的な会計基準をアドプションするということは、一応約束になっているので、それに従ってやってきた。各国の事情が異なるわけですよね。中国、インド、それからアメリカも。ですから、先ほど会計基準の中身の問題について、とりあえず入れておけばいいじゃないか、日本的なものに何があるのという、これは非常に危険な議論だと私は個人的に考えております。

それから制度論についても、とにかく仲よくしましょう、だから発言権をキープしておきましょうというこのアプローチも、私の耳には、何か本末転倒な議論だというふうに映ります。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

加護野委員、どうぞ。

○加護野委員

ありがとうございます。

それでは、13ページのマル1マル4について、私の意見を述べさせていただきたいと思います。この制度は、非上場会社には適用しないという基本的な方針があるのですが、かつては、非上場から上場という一方の道だけだったのですが、今は上場から非上場というMBOが増えております。ですから制度の適用をかなり上手にやらないと、会計制度が経営者の実感に合わないということであれば、そういう企業を市場からプッシュアウトしてしまうという危険もあるわけであります。そのことも考える必要があるのではないかなと思います。そういう意味で、経営者が遅れているのだという議論だけではなくて、製造業とか商業の経営者が長年にわたってなじんだ会計制度との整合性ということについてもきっちり考える必要がありますし、それから、この制度を持っていないと上場できないというような厳しい基準にしてしまうと、市場が非常に薄くなってしまう危険もありますので、そのこともぜひご考慮いただきたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございます。

根本委員、お願いいたします。

○根本委員

投資家の観点から論点2をコメントさせていただきたいのですが、先ほどのお話では、我が国企業の海外の資金調達は金融機関が中心で、製造業はそれほど多くないということでしたが、そのあたりについてなのですけれども、やはり金融機関が、この時期これだけ海外で資本を調達したということは、ある程度のロットの調達が、国内の市場ではなかなか難しいということもありまして、相当程度の調達を一度に行う、それから多様な投資家を見つけるためには海外に行く必要があったということだと思います。この表では2年だけをとっているのですが、長期的にみて製造業においてもそういうことは十分起こり得るのではないかということです。

その下の、4ページにある上場企業における外国法人の保有比率がだんだん増えているということですが、特に今後、金融機関が、今のバーゼルという規制上、株式を持つことの負荷というのが高まりますし、これは保険会社についても同様なのです。ですから持ち合いというのは今後さらに解消されていきますので、今、保険会社、あるいは銀行が主要株主となっていらっしゃる企業さんについては、どこで投資家を見つけるかということが大きな問題ではないかと思います。そういう中で、国内にある程度限りがある中では、海外の投資家がどう見ていくか、どう投資しやすい環境を整えるかということが重要な点ではないかと思います。

先ほど、いろいろお話を伺っていて、やはり企業の経営の方の見方とか従業員の方のお立場は重要だと思うのですけれども、あくまで投資家サイドから言うと、経営にとって変化が大きい、大変だから、あるいは持っている含み損が出てくるから今のほうがいいのですというのは、投資家にとっては、ある意味、今の基準では不十分ではないかというような逆の印象を持ってしまいます。例えば、固定資産の価値によって利益が変動するのはあまり実態に合致しないというのはおっしゃるとおりなのですけれども、そうはいえ、やはり持っていらっしゃる資産が減価したということは、投資家にとっては知りたい情報だと思います。

また、包括利益についても、少なくとも格付会社では、海外企業、例えば欧州の企業でもそれほど重視していません。最終利益のほか、償却前営業利益とか、あるいはキャッシュフローとか、多面的な利益を見ていまして、それを調整して計算したりしています。会計制度が大きく変わったから、重視する指標が大きく変わることはないと思いますし、ある特定の指標しかみないとか、そういう懸念は少ないのではないかと思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがですか。

荒谷委員、どうぞ。

○荒谷委員

私も2点ほど。1つは、私もこのたびの調査で中国と韓国に行かせていただいたのですけれども、率直な感想を述べさせていただきますと、韓国と中国の立場は両極端ではありますけれども、きちんとした国家戦略がありまして、それにのっとって、粛々とIFRSへの対応を進めているということでございます。この審議会でも、かなりの時間を費やして慎重に議論を進めてまいりましたが、その方向性、つまり、日本としては、IFRS導入に関してどのような国家戦略に基づいて向き合っていこうとしているのか、その方向性と申しますか、ビジョンがいま一つわかりません。もし、国家戦略として、積極的にフル・アドプションすべきであるとするならば、我が国の主張がIFRSの中に十分取り込まれるように、積極的にアプローチする必要がありますし、そうでないということであれば、また別の戦略を考えなければいけませんので、明確なビジョンのもとで議論が収斂されるように一定の方向性を示すべき時期にきているのではないかというのが今回の海外調査を踏まえた上での私の感想でございます。

もう1点は、韓国で私が非常に印象に残ったのは、IFRSを単体にもフル・アドプションしたことによってかなり混乱を来したとおしゃっていたことです。これは、IFRSの連単同時適用に伴い、商法と税制を改正せざるを得なかったからで、税制は大幅な改正がなされましたが、先ほどからお話に出ておりますように、申告調整が複雑で煩雑になったということでございますし、商法については、株式会社の外部監査に関する法律という商法の特別法をつくって対応せざるをえなくなったことから、以前より複雑な法体系になったというお話を伺いました。会計に関しては会社法のきちっとしたプリンシプルがありますので、IFRSを単体にも適用するかどうかを議論するときには、剰余金分配規制など会社法に与える影響についても考慮して議論をしていただければと思います。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがですか。

もう一つ、議事を見ていただくと「その他」というのがございます。それでは、一応先に進ませていただきまして、その他として、米国におけるIFRSの適用に関しまして、SEC幹部職員の発言など、動きがあるようですので、事務局より近時の米国の動きについて説明をしていただきます。

○栗田企業開示課長

それでは、お手元に配付させていただきました、「近時の米国の状況」と表紙に書いてあります資料に基づいてご説明をさせていただきます。

前回11月の会合以降、米国で2つ動きが出ていると認識しております。1つ目は、SECの2種類のスタッフペーパーが公表された、これが11月16日でございます。それから12月5日に、SECの事務方の責任者でありますクローカー氏が講演を行っておると、この2点でございます。ペーパーに沿ってご説明をさせていただきます。

まず、SECの2種類のスタッフペーパーでございますが、これは「米国会計基準と国際会計基準の比較」というものと、「IFRS適用状況に関する分析」という2種類のペーパーでございます。まず、前者の比較というほうでございますが、こちらはまさに米国基準と国際会計基準を比較して、個別では29項目ぐらいを比較して、ギャップ差について分析をしているわけでございますが、その総論部分に幾つか指摘がありまして、ここではそれを中心に書かせていただいております。主な指摘といたしまして、国際会計基準はプリンシプル・ベースであり、個別のガイダンスや業種別の特例が限定的であるということと、もう1点、国際会計基準の概念フレームワークと米国基準の概念書の差異があるということが指摘されております。

この点につきましては、国際会計基準の概念フレームワークは会計基準の一部と位置づけられているが、米国基準の概念書は会計基準とは位置づけられていない、このため、個別の処理において、特定の会計基準がない場合には国際会計基準では概念フレームワークに戻るということですが、米国基準では戻らないというような差異があるということが総論部分で指摘をされております。

それから1ページめくっていただきまして、「IFRS適用状況に関する分析」というほうのペーパーでございますが、こちらはIFRSを適用しております世界の企業183社の財務諸表を分析したものでございます。この183社をどうやって選んできたかといいますと、『Fortune Magazine』という有名な雑誌がありますが、そこが毎年出しておりますFortune Global 500、要するに世界のトップ500社というものがあります。そのうち、2009年版のFortune Global 500に載せられた企業の中で、国際会計基準によって財務諸表を作成しており、かつ英語によって財務諸表を公表しているものを選んできたと、そこで選ばれたのが183社ということです。その183社は22カ国にわたっておりまして、米国の企業は当然、国際会計基準の適用がまだ認められておりませんので、ないと、日本の企業もここには入っておりません。ドイツ、フランスなど、ヨーロッパが中心ですが、中国などの企業も入っているという分析になっております。その183社の財務諸表をSECが分析した結果が書いてありまして、まず、総論として財務諸表が一般的に国際会計基準、IFRSの基準に準拠していると思われるということは述べられておりますが、「ただし」として、2点ほど考慮する余地があるということが述べられております。

1点目は、財務諸表の透明性と明瞭性に向上の余地があるということで、具体的には、財務諸表において会計方針の開示が不十分・不明確である事例とか、IFRSで用いているものと不整合な用語が用いられている事例、それから具体的な内容が不明瞭な各国特有のガイドラインを参照している事例などがあったと。その結果として、企業の取引の本質や、それら取引の財務諸表への記載状況を理解する上で、困難が生じる可能性があったという指摘がなされております。

2点目として、国際会計基準の不整合な適用は国・産業の比較可能性を困難にするということが述べられておりまして、具体的には、国際会計基準のガイダンス不足やオプションの存在など、基準自体に起因する、比較可能性を困難とする不整合な適用事例があったということと、そのような不整合を調整する、軽減するために、各国ごとに個別のガイダンスが使用されていることがあったと。ただ、国別のガイダンスを用いると、各国内での比較可能性は向上するんだけれども、国際的な比較可能性は毀損される可能性があるということがペーパーで指摘されているところでございます。以上がスタッフペーパーの概要でございます。

2点目は、SECのクローカー主任会計士のスピーチでございまして、これは12月5日に、米国の公認会計士協会で行われたカンファレンスでのスピーチでございまして、ポイントとして一番大きいのは、米国のIFRS適用に関するスタッフの最終報告書を作成するためには、あと二、三カ月はかかる見通しであるということが述べられております。二、三カ月というのは、「A few months」ということなのですけれども、いずれにしてもこのスタッフの最終報告は、早くて2月、場合によっては3月、4月になるということが述べられております。当然、SECの委員会としての決定は、このスタッフの報告書を受けてということになりますので、それよりも後になるということだと思います。それから、今後の正確なスケジュールについては述べることができないということで、ここは確定的な見通しを言っていないということです。

それから3点目として、これは個人的にはと言っておりますけれども、IFRSをインコーポレートする可能性が潜在的にあるということでございまして、この点については、私も米国の調査に同行させていただきまして、直接クローカー氏から話を聞きましたけれども、SECの事務方としては、IFRSをインコーポレートするということには、まだ、全然希望を捨てていないという認識だったととらえさせていただいております。

私からは以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございます。

ただいまの説明につきまして、ご質問、ご意見等ございましたらお願いしたいと思います。

廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員

私も課長とご一緒にアメリカに行かせていただきました。FASBはSECと少しニュアンスが違うような感じを私自身は受け取りました。つまりSECのほうはワンセット・オブ・グローバルスタンダードを目標にして、コンドースメント・アプローチで時間をかけて必ず実現していきたいんだと、こういう強い意思を持っておられたように思います。

一方、FASBのほうも基本的にはそういう方向なのですが、つまりIFRSの組み込みは、米国基準とIFRSとのコンバージェンスが前提であり、当面は両基準の違いをできる限りなくしていくと。ただ、どちらかといいますと、USGAAPのほうにIFRSを寄せていくという感じでありまして、究極の目的は、会計基準の一本化ではなく、多少の違いは残るものの、比較可能な会計基準をつくることであると。今の時点においては、ニュアンスに少し差があるなと思いました。

それから世界の四大ファームでは、やはりしょっちゅう議論はしておるようです。その議論は決して、最終的にこうでしたねということをまとめるものではなく、監査の品質向上のために共通の情報を共有する、こういうことの大切さを随分主張されていまして、そういう意味では、情報の共有というのは非常に重要だなと感じました。それぞれの監査法人が判断される訳ですから、原則主義のもとでの監査のあり方等については随分苦労されておるようでございます。しかし、十分なガイダンスがない中で、訴訟問題にも関連することでありますので、どういうあり方がいいんだろうかと熱心な議論を、回を重ねてやっておられるということでした。しかし、最後はまとめない、議論し放し、こういうようなことであったように思います。

それからやはり、アメリカのほうから見て、日本というのは非常に重要な国なので、ぜひ情報交換を、いろいろな場でやりたいと。これはもう現に、我々企業の立場でも、FEI(ファイナンシャル・エグゼクティブ・インターナショナル)の方と佐藤委員が、これまでよくやっておられる、あるいは経団連事務局のほうもやっていただいているのですが、もっとよく相談しましょうよという話でした。やはり、いろいろな問題を共有するグループからIASBに対して多重的に発信をして、それをしっかりと理解してもらう、こういうことの大切さということを、今回、私は初めてでございますけれども、行きまして感じた次第でございます。これからもぜひ、それぞれのご関係のところで、それぞれの立場の方々が、お互いに海外とよく連携をする。特にアメリカは、そういう意味ではやりたいということをおっしゃっていますから、ぜひ、そういうあたりを充実していただければ非常にありがたいのではないかと、必要なことだと思っています。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

貴重な情報をありがとうございます。

今日のペーパーですと、IFRSをインコーポレートするというように表現されています。これを下手に訳しますと、例えば導入と訳されると、伝言ゲームではないですけれども、その元はアドプションという言葉だったのかなということになり、全く違う理解が一人歩きしますけれども、あくまでもインコーポレートである。インコーポレートについては、何回もいろいろなスタッフペーパーが出ておりますけれども、いわゆるIASBがつくった基準をそのまま入れるということはほとんど考えられていなくて、最低限、エンドースメント、1つ1つ吟味して国内基準にする手続は必要ですし、それとコンバージェンスもあるし、さらに、最近はコンドースメントも出てきた。これらがすべてパッケージでインコーポレートという言葉が使われていますので、我々もこの問題を考えていく場合に、言葉が一人歩きしないように慎重に対処していかなければならないと思います。そういう意味で、慎重に情報開示をしていただきまして、ありがとうございました。

○安藤会長

ありがとうございました。そろそろ時間が来るので、もう一方ぐらいいかがですか。

そうしましたら、錢高委員、お願いいたします。

○錢高委員

錢高でございます。お時間をいただき、ありがとうございます。

この会議も、自見大臣が直接参加されましてから、回数を重ねていただいているわけで、それぞれの皆さん方が大変真剣に参加され、ご意見をおっしゃっているわけでございまして、安藤会長に、もしお願いできるとするならばという1つの意見でございますが、これだけ大勢の方がそれぞれのお立場で意見をおっしゃって、何かこう、わかりやすく、会長のところでご整理していただくと議論が錯綜しないのではないかと。ですから、それぞれの方がおっしゃっているのも、意を尽くせなくておっしゃっている部分もある。それをどなたかが聞いておられると誤解されているかもしれない、そういった面を感じますと、このIFRS導入に関しまして、イエス・イエスの方も、イエス・バットの方も、ノー・バットの方も、ノー・ノーの方もおられると思うわけで、その辺の議論を、ひとつ収れんさせていかれようと思うのか、一応は、おっしゃるだけはおっしゃって、あとはご判断されるというのか、何となく、実りをもっと、我々はチームとして、やはり会計基準というのは国の根幹にかかわる、安全保障みたいなものでございますので、どうか、我々は皆それぞれ真剣に議論し、また、それぞれ国民を代表するというのは大それた言い方かもしれませんが、それぞれ、各界の方々も、それぞれの団体の方も、企業経営者も、それぞれの立場で考え方も微妙にずれざるを得ないのはしようがないと思うのです。だから、お互いにわかり合えるということはなかなかパーフェクトではないと思いますが、多少は、誤解のないように、わかり合えるように一度整理していただくと、皆様方はそれに収れんしていかれる、最後はどちらかの方が決定されればいいことだと思うのですが、若干その辺が、もう、半年近く時間を費やしておられるわりには、何となくもったいないなというのが私個人の意見でございます。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

私と事務局、場合によっては大臣も関係してくるかと思いますけれども、貴重なご意見ありがとうございました。

それでは、そろそろ時間ということで、ご意見を伺うのはここまでとさせていただきたいと思います。先ほど事務局からお話がありましたように、11項目中3項目がやっと終わったということでございますから、来年もまたよろしくお願いいたします。当審議会では、次回以降も引き続き、今後の議論、検討の進め方として、提示させていただいた主要項目について、委員の皆様から幅広いご意見を頂戴していきたいと考えております。

最後に、次回以降の日程等につきまして、事務局より説明していただきます。

○栗田企業開示課長

次回は、海外調査の結果のご報告が中心になるかとは思いますけれども、日程等については改めてご連絡をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○安藤会長

それでは、本日の合同会議はこれにて終了いたしたいと思います。委員の皆様には、審議にご協力いただきまして、ありがとうございました。

これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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