企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成24年3月29日(木曜日)9時30分~11時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成24年3月29日

○安藤会長

おはようございます。定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様にはご多忙のところご参集いただき、まことにありがとうございます。

まず会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様、本日の総会も企業会計審議会の議事規則にのっとり、会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ご異議ないということで、そのように取り扱います。

それでは、議事に入ります。本日は議事次第にありますように、非上場企業・中小企業への影響、対応のあり方、それと監査法人における対応についてご審議をいただくことを予定しております。

最初に非上場企業・中小企業への影響、対応のあり方について、ご審議いただきたいと思います。

まず、事務局よりお手元にお配りしております討議資料(5)に基づきまして、我が国及び諸外国における非上場企業・中小企業の会計について説明してください。

○栗田企業開示課長

それでは、私からご説明をさせていただきます。お手元に資料1-1がございますが、それに基づいて、あわせて資料1-2、1-3を参照しながらご説明させていただきたいと存じます。

資料1-1でございますが、ここにはまず我が国の非上場企業・中小企業に関する制度、それから2番目に海外における状況、それからご議論いただきたい論点について書かせていただいております。

まず、国内でどういうことになっておるかということでございますが、会社法上、株式会社の会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うものとされております。これはすべての株式会社に共通の原則でございます。それらのうち、会社法上の大会社に当たるもの、資本金が5億円以上、または負債総額が200億円以上の株式会社につきましては、会計監査人の監査が必要になってくるということでございます。

それで、資料の1-2をごらんいただきますと、その辺を模式的に書かせていただいております。会社法上の大会社の中には上場しているものも当然あるわけでございまして、これらの企業につきましては金融商品取引法の規制もかかってくるということで、そのあたりを含めて整理したものがこの表でございます。具体的に申しますとマル1の上場企業、それから、マル2の上場企業ではないけれども金商法上開示が求められている企業、これらにつきましては連結財務諸表と単体財務諸表の開示が必要になっておりまして、連結については日本基準が適用され、国際会計基準の任意適用もできる。単体については日本基準ということになってございます。これら以外の会社法上の大会社については、連結財務諸表の作成、提出は必要ありませんけれども、単体については日本基準でやっていただいているということでございます。

それから本日の主な議題になってくるのは、その下マル4のところかと存じますけれども、会社法上の大会社でないような会社の会計についてどう考えるかということでございます。この点につきましては、本文の資料1-1の真ん中あたりから書かせていただいておりますけれども、まず2005年8月に日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会の4団体が主体となって、中小企業の会計に関する指針、いわゆる中小指針というものが取りまとめられて公表されてございます。この中小指針は特に会計参与が設置されているような会社をまず念頭に置いて、その会計のあり方を示すものということで作成されたものでございまして、そのような目的に照らしまして、一定の水準を保ったものとするということで、日本基準を少し簡素化したということが基本になっております。そのため当然日本基準がコンバージェンスとかいろいろな要因で変われば中小指針も変わってくるということでございまして、実際に毎年改訂が行われているということでございます。

それで、中小指針ができた後でございますが、その中小指針では今言ったような国際会計基準とのコンバージェンス等の影響があるということで、非上場企業、とりわけ中小企業へはそのような影響をできるだけ回避すべきであるという問題意識から、さまざまな場でさらに検討が行われておりまして、2011年2月には中小企業の会計に関する検討会が設置されております。この検討会のメンバーは、次のページの上に書かせていただいておりますけれども、中小企業関係者、金融関係者、会計専門家、ASBJ、学識経験者等で構成されて、金融庁と中小企業庁が事務局を務め、法務省がオブザーバーとして参加するという形になっておりまして、ここで検討が重ねられまして、今年の2月に中小企業の会計に関する基本要領、中小会計要領が取りまとめられました。この資料1-2の表で申しますと、中小指針の下のところの、ある意味空白地帯のようになっていたところに中小会計要領ができたということでございます。それで、中小会計要領自体は、資料1-3の中小企業の会計に関する検討会報告書という資料の中の、ちょっとわかりにくくて恐縮ですが、ずっとページが打ってあって、21ページで1回切れて、その後名簿があって、その後ろから中小企業の会計に関する基本要領ということで、これが中小会計要領でございます。その中小会計要領の1ページから総論が書いてあるわけですけれども、そこにも書いてございますが、この中小会計要領はまず中小企業の経営者が活用しようと思えるような、理解しやすい、また自社の経営状況の把握に役立つ会計。それから中小企業の利害関係者、これは金融機関等かなり限定されるわけございますけれども、そういう方への情報提供に資する会計。それから中小企業の実務における会計慣行を十分に考慮し、会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠したものとする会計。それから作成者の負担を最小限にとどめ、過重な負担を課さないようなことにするという考え方に立っておりまして、先ほどの中小指針に比べてより簡便な会計処理ということが適当と考えられる中小企業を対象にして作成されております。

それから、その総論のところの最後、2ページ目の6ポツのところに書いてありますけれども、この中小会計要領は安定的継続利用を可能なものとするために、国際会計基準の影響を受けないものとされてございます。なお、資料1-1の注のところでございますけれども、本合同会議におきましても、これまでの審議の中で、国際会計基準の導入に関して議論する際には、大企業と中小企業とは分けて議論すべきであるという意見が出されているということでございます。これが日本の制度の概要でございます。

それから次に諸外国の状況でございます。諸外国の状況のまず初めに書かせていただいておりますのが、IFRS for SMEsという、これは国際会計基準の中小企業版といいますか、簡略版でございまして、IASBから2009年7月に出されたものでございます。その特徴といたしましては、中小企業に関連しないような項目は削除して、要求される開示の数も大幅に減らしている。それから複雑なオプションを排除しているということが特徴として挙げられておりますけれども、日本語版にして200ページぐらいあるものでございまして、簡単になったといってもかなりのボリュームがあるものになっておるということでございます。このIFRS for SMEsの適用も含めまして諸外国では非上場企業、中小企業の会計についてどのような取り扱いをしているかを書かせていただいておりますのが以下でございます。まず米国につきましては、非上場企業の財務諸表の作成がそもそも要るのかというところから各州法に任せられているということでございますけれども、実務的にはやはり非上場企業においても銀行融資を受ける必要があるというような関係で、米国基準に従った財務諸表を作成している例が非常に多いと認識しております。なお、アメリカではIFRSそのものがまだ適用されておりませんで、当然IFRS for SMEsの使用も認められていないという状況でございます。

それからカナダでございますが、非上場企業のうち、銀行とか保険など公的説明責任のある企業とされておりますところには国際会計基準が適用されております。ただ、それ以外の非上場企業につきましては、カナダの会計基準審議会が作成した私企業用のカナダ基準を使うか、あるいは国際会計基準を使うということになっておりまして、IFRS for SMEsの使用は認められていないと承知しております。

それからイギリスにつきましては、欧州統一の規制市場に上場している場合は当然IFRSですが、それに上場していない企業のうち、小企業以外の企業は国際会計基準か、あるいは英国の会計基準委員会が作成しましたFRSという基準。それからさらに小さい小企業になりますと、国際会計基準か、このFRSか、さらにこのFRSを簡素化した基準のうち、いずれかを選択するということになっております。IFRS for SMEsはその中に入っていないんですけれども、今年の1月にこのASBから提案がありまして、現行のFRSを維持はするけれども、IFRS for SMEsの要素を取り入れた新しいFRSの策定についてどうかという提案がなされているところでございます。

フランスにつきましては、これも規制市場に上場していない企業につきましては、連結は国際会計基準かフランスのANCが作成しております会計基準。それから単体につきましては、この国内基準を使用することになっておるということでございます。

それからドイツでは司法省が会計基準を定めておりますが、これはHGBと書いてありますけれども、正確に言いますと、このHGBはドイツの商法典でございまして、ドイツの商法の中に会計基準も書いてあるということでございます。規制市場に上場していないような企業のうち、大規模な企業については連結は国際会計基準かHGB。単体はHGBを使用するということになっております。それより下の中規模、小規模企業におきましては、連結財務諸表は不要でして、単体はHGBで作成するということになっております。なお、このドイツの大中小のそれぞれの区分けは、総資産とか、売上高とか、平均従業員数で規定されているということでございます。

それから1ページめくっていただきまして、中国では上場企業には新企業会計準則ということで、これは国際会計基準とコンバージェンスしたものとされておりますけれども、その基準が適用されておりまして、さらにこの新企業会計基準は非上場の大企業、中企業にも適用されておるということでございます。では、非上場の小企業はどうかということでございますが、現在は小企業会計制度が適用されておりますけれども、2013年の1月からは小企業会計準則が使われるという予定でございます。中国の場合は、この小企業というのは業種によって定義が異なってくるわけでございますが、例えばマニュファクチュアリングのほうの工業で言えば、従業員数が300人未満、あるいは売上高が3,000万元未満、あるいは総資産額が4,000万元未満のいずれかであれば、小企業という取り扱いになるということでございます。なお、この小企業会計準則というのは、中国の財務部からお伺いした話では、IFRS for SMEsに準拠するようにつくったものであるという説明でございます。

それから韓国でも非上場企業につきましては、国際会計基準を採用しているK-IFRSは適用されずに、自国基準を修正した基準を使っておるということでございます。任意でK-IFRSを適用することもできますけれども、これは一度適用すると、元の一般企業会計準則へ戻ることはできないという扱いになっておると承知しております。

このように諸外国では、非上場中小企業向けの会計基準としては、主に自国基準か、自国基準を修正した基準が使われていると考えてよいかと思っております。

それで、1ページめくっていただきまして、議論していただきたい論点でございますけれども、ここには5つ掲げさせていただいております。1番目が会計監査人による監査が求められていない中小企業においても、経営者や利害関係者が会社の経営状況を的確に把握すること等のため、適切な会計処理を行うことは重要であると考えられるがどうかということ。それから2番目といたしまして、その上で、中小企業による会計処理の特性をどのようにとらえ、またその特性を踏まえ、中小企業における適切な会計処理の確保に向け、どのような点を重視すべきかということで、ここでは中小企業における会計処理の特性と書かせていただいておりますけれども、これは例えば法人税を意識した処理がなされているとか、そういうことを念頭に置いております。それから3番目でございますが、一般に中小企業においては、経理担当の人材が限られていること、会計情報の利用者が限定されていること等を踏まえ、作成者の負担等を考慮した簡素なものとする方向で関係者の考え方が一致していると考えられるがどうか。4番目は、また中小企業の会計については、国際会計基準の影響を受けないようにすることで、関係者の考えが一致していると考えられるがどうか。5番目としまして、以上のほか、非上場企業、中小企業への影響、対応のあり方について、論点とすべき事項はないか。このあたりをご議論いただければと考えております。私からは以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。続きまして、中小企業の対応につきまして、日本商工会議所常務理事の宮城委員から説明していただきたいと存じます。

よろしくお願いいたします。

○宮城委員

ありがとうございます。日本商工会議所の宮城でございます。資料2をお手にとっていただけますでしょうか。非上場企業・中小企業への影響、対応のあり方というテーマに関しまして、中小企業の立場から発言をいたしたいと思っております。資料2については、先ほどご説明がありました資料1-1の、(議論していただきたい論点)に沿って作成をいたしておりますので、順を追って意見を申し上げたいと思います。

まず、最初1ページでございます。中小企業を取り巻く経営環境と会計との関係についてでございますが、やはり、税務のための会計という時代から、「経営に役に立つ」会計という時代に入っていると考えております。その考え方でございますけれども、ここに書いてあるとおり、デフレ下の厳しくかつ変動の激しい経営環境の中で、当然でございますけれども、従来に増して経営状況の的確な把握、あるいは利害関係者、これは中小企業の場合ですと銀行等々になりますが、ステークホルダーに対する財務情報あるいは経営状況の説明の必要性が大きくなっていると思っております。

他方で、中小企業の実情を見ると、経営状況の把握ということよりも、依然として税務申告を念頭に置いた会計処理が中心であるという実態もあると思っております。

これらのことに鑑みますと、やはり、会計というものをきちんと整備することによって、税務申告に加えて、会社の経営力や資金調達力の強化を図ることが出来るような形で会計の整備がなされることが重要ではないかと考えております。

1ページ目の下部に記載の表は、東京商工会議所などが2,000社に及ぶ企業に診断に入った結果でございます。中小企業は、なかなか黒字を出しにくいと言われておりますが、2期連続黒字を重ねている企業の属性を見ると、財務・会計管理に非常に積極的に取り組んでいるということと相関性が非常に高いという結果が出ております。経理規程や会社手続の文書化、あるいは月次の試算表ですとか、あるいは自社の粗利益率の現状の把握と傾向、資金繰り表の作成、管理など財務・会計管理に積極的に取り組んでいる企業は黒字との相関性が強いという結果が出ております。

2ページ目でございます。そういうことを踏まえて、中小企業における適切な会計処理についてどう考えるかという中身に入ってまいります。まず1つ重要な点は、400万を超す中小事業者、法人はその半分以上の260万でございますが、260万という数を考えて、その260万中小企業が、理解をして活用できる会計の整備が必要ではないか、そのためにはまず中小企業の特性を考える必要があるのではないかということでございます。資金調達の面から考えますと、資本市場というよりも、間接金融の世界でございまして、金融機関からの借り入れが依然として中心であるということ。ステークホルダーについては、計算書類等の開示先は銀行など限定的であるということ。それから経理体制については、十分な経理体制を持ち合わせていないという特性があります。

次の3ページに、中小企業の計算書類の開示先や経理体制に関する調査結果を記載してございます。これは中小企業庁が調査をした結果で、調査対象企業数は、大体2,000社の中小企業でございます。中小企業の計算書類の開示先については金融機関というところが圧倒的に多く、9割近くとなっております。それから、やはり資金調達に関連するところで、信用保証協会が3割近くになっており、取引先・顧客や、株主等についての開示割合は、金融機関や信用保証協会に比べれば低い割合となっております。それから経理体制の状況でございますが、7%以上の中小企業で経理担当の職員がいないという実態になっております。あるいは経理担当者が1人しかいないという中小企業まで含めれば、全体の7割近くになるという状況でございます。実際に行われている会計処理自体も、3ページの下に書いてございますが、中小企業においては、取得原価に基づく会計処理あるいは法人税法を意識した会計処理が中心になっております。ただ、先ほど申し上げたとおり、その実態だけで会計の体制の整備を行うというわけにはまいりませんので、適切な会計処理の確保に向けて、2つのことが重要ではないかと考えております。

2ページに戻りますが、マル1に記載してございますが、中小企業が実務で慣習として行っている会計処理の中で、会社法の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うことが、やはり一番大切な点であると思っておりますし、その上で、中小企業の経営者がみずから理解をして活用できること、中小企業の世界では、会計基準は強制ではありませんので、みずからそれを使うという観点が非常に重要ではないかと思っております。

次に4ページでございます。今申し上げたような点については、先ほど金融庁の説明でありましたが、ASBJをはじめとする「非上場企業の会計基準に関する懇談会」や、中小企業庁が設置した「中小企業の会計に関する研究会」などにおける議論でもこのような認識は共有されているものと理解をしております。その上に立って、この度、「中小会計要領」が策定されたわけでございます。「中小会計要領」ですけれども、これはどういう会計なのかということをわかって頂くために、ティピカルな例を幾つか記載させて頂きました。ここで申し上げたいのは、中小企業の実態を踏まえるということが重要ではありますが、決して緩いルールですとかレベルの低い会計処理となることがないように、「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」というのは一体どこにあるんだということについて関係者がかなり根を詰めた議論をした上で、適切な会計処理の要領を取りまとめたということでございます。

例えば貸倒引当金でございますけれども、中小企業の会計実務の中で引当金が果たしてきちんと計上されているのかというような面もありますが、まずは、中小企業といえどもきちんと貸倒引当金を計上することが重要であるということを理解して頂いた上で、この「中小会計要領」の中では、決算期末における貸倒引当金の計算方法として、取り立て不能のおそれがある場合には、取り立て不能の見込み額を区分に応じて計上するという処理のほかにも、法人税法上の中小法人に認められている法定繰入率で算定する方法も例示をしております。原則的な処理を示しつつも、中小企業の実態に即した、簡便な方式も例示として出しているということでございまして、製造業であれば、1,000分の8の法定繰入率で算定するというような方法も示しているわけでございます。

棚卸資産についても同様でございます。棚卸資産は原則として取得原価で計上するということではありますが、時価が著しく下落した場合には、回復の見込みがあると判断した場合を除き、評価損を計上するということを記載しております。一方で、評価方法として、中小企業で多く利用されている最終仕入原価法も明確化をしております。退職給付引当金についても同様な考え方でございますが、中小企業の実態も踏まえて、従業員の在職年数等企業の実態に応じて合理的に引当金額を計算し、自己都合要支給額を基礎として、例えば、その一定割合で計上することも認めているということでございます。

それから4ページの2つ目の矢印のところで記載しております「外貨建取引等」については、実は国際化のところで議論があって、ここまで入れるのかという議論もあった点でございますけれども、中小企業の国際展開が一層進んでいくであろうという実態を踏まえ、「外貨建取引等」についても項目として入れる形になっております。注記についても細かく書いてありまして、有価証券あるいは棚卸資産の評価基準について記載する必要があるとか、あるいは未経過リース料も注記することが望ましいというような記載をしております。また、具体的にどういう様式で書けばいいのかと部分についても、やはり中小企業には目で見てわかっていただくために、これは資料として今出されておりますけれども、資料1-3の後半部分、「中小会計要領」の19ページ以下で、皆さまもプロフェショナルな方ばかりですからさっと見ていただくと、どの程度のレベルで、あるいはどういうことを目指したのかがお分かりかと思いますが、中小企業が目で見てわかるような形で、様式集としてまとめられたものとなっております。それぞれの個別項目もさっと見ていただきますと、なるほど、こういうレベル感で実態も配慮をしてということを皆さまにも実感頂けるではないかと思っております。

5ページ目でございます。IFRSとの関係でございますけれども、ここは2年にわたる議論をして取りまとめたものでございます。これまでの議論で取りまとめられた関係者の意見でございますが、6ページを見ていただければと思います。この企業会計審議会でも、平成21年の中間報告の段階でございますが、IFRSに基づく財務諸表作成のための体制整備や準備の負担を考えると、非上場企業へのIFRSの適用は慎重に検討すべきだという中間報告が出されております。「中小会計要領」の検討に至る前に、2つの会議体があったわけでございますが、ASBJ等を中心としました「非上場会社の会計基準に関する懇談会」の報告書では、非上場企業、とりわけ中小企業に適用される会計基準または指針は国際基準の影響を受けず安定的なものとすべきであると取りまとめられております。また、中小企業庁が設置した「中小企業の会計に関する研究会」、これはASBJも入っておりますし、中小企業の関係者、あるいは有識者も入っている研究会でございますが、そこが平成22年の9月30日に取りまとめた中間報告書では、中小企業の会計処理のあり方について、IFRSを適用する必要はないと記載されており、また、IFRSへのコンバージェンスが進む会計基準とは、一線を画して検討が行われるべきであるという結論になっております。

その理由としては、5ページに記載してございますが、国境を越えて投資を行う投資家に対する比較可能性の高い会計情報の提供を主な目的として、その導入に多大なコストを要するとされているIFRSまたはIFRSへのコンバージェンスが進んでいる会計基準を中小企業に適用させる意義に乏しいということから、このような形で国際会計基準の影響を受けないものとする「中小会計要領」が策定をされたわけでございます。先ほどから、重ねて申し上げていますけれども、中小企業の関係者、あるいはASBJ、それから金融機関の関係者、会計の専門家、学識経験者などの皆さんの参加を得て、金融庁、中小企業庁、法務省も事務局あるいはオブザーバーという形で参画をした研究会で、そういった考え方が関係者として一致した見解、意見として取りまとめられたものと理解をしております。

私どもは、やはり260万の企業に、「経営に役立つ」会計というものを浸透させる必要があると思っております。会計というのは、企業にとって経営のインフラでありますが、会計基準自体は税法と違って強制されるものではありませんので、これを普及させることについては、官民が協力した形で進めていく必要があると思っております。中小企業の会計を普及させていくということは、私ども中小企業の成長や発展、ひいては日本企業の再生につながっていくものだと確信をしておりますので、商工会議所としても組織を挙げて、取り組んでまいりたいと思っております。

具体的にはこの7ページのところに書いてございますけれども、「中小企業の会計に関する検討会 報告書」で取りまとめられた普及・活用策にもある通り、この平成24年度からの3年間が「中小会計要領」の集中広報・普及期間と位置付けられております。初年度でございますが、この平成24年度でも、関係機関・団体など1万4,000カ所を超える拠点でパンフレット等を配布して、中小企業者に「中小会計要領」をお知らせするのと同時に、研修やセミナーも500回、2万人を超える規模で開催する計画となっております。まず3年間は集中的に普及・活用に向けた施策を実施いたしたいと思っております。いろいろな政府系金融機関の方にも金利優遇などご協力を頂戴しておりますし、政府側もいろいろな法律に基づく申請や補助金の申請をする際の計算書類の提出については、「中小会計要領」に従った形のものについて一定の評価を行うということもございます。商工会議所としても、全国の組織を挙げてその普及に努めていきたいと思っております。「中小会計要領」の検討・策定に当たっては、この審議会にご参加の委員の方々のご協力を多大に頂きましたので、そのご協力にこたえる意味でも、普及に向け、組織を挙げて対応いたしたいと思っております。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。それでは、委員の皆様からご意見を伺ってまいりたいと存じます。事務局から説明のありました討議資料(5)の「ご議論いただきたい論点」、資料1-1の最後のページです。その論点を中心にご意見をお願いしたいと思います。また、事務局及びただいまの宮城委員のご説明に対するご質問等ございましたら、あわせてご発言ください。

久保田委員、お願いします。

○久保田委員

ありがとうございます。私自身もASBJでの非上場会社の会計基準に関する懇談会に参加しておりましたけれども、今、日本商工会議所の宮城委員からお話があったとおりでございまして、中小企業にとっては、簡素で理解しやすく、必要十分な基準を開発すべく各関係者が一体となって基準の開発を行って、その結果、先ほどもご紹介がございました「中小会計要領」が策定されたということでございまして、そういった趣旨を考えますと、中小企業の会計についてはIFRSを影響させないということは関係者皆の総意であるということで、この方向で対応すべきであると考えております。以上です。

○安藤会長

河崎委員、お願いします。

○河崎委員

ありがとうございます。私は中小企業庁での中小企業会計の議論につきまして、当初から参加させていただいておりますので、少し意見を述べさせていただきたいと思います。

なぜ、中小企業の会計に固有の会計基準が必要になってきたかということなんですけれども、直接的な理由は会計基準の複雑化であります。当初この議論が始まった平成14年、2002年ごろには企業会計基準のコンバージェンスで会計基準にどんどん新しいものが出てきた。そういった会計基準の過重負担というのが中小企業にとって大きな問題になってきたという点であります。しかしもっと本質的な問題は、中小企業と大企業の企業の属性は違うという理解であります。例えば、所有と経営の分離を取り上げても、分離されているかどうか、あるいは内部統制にしてもしっかり整備されているかどうか。先ほど問題にもありました会計担当者にしても、そういった者が十分いるのかどうか。さらには情報開示という点についても、中小企業の場合には情報利用者が非常に限られているわけであります。このように企業の属性が異なれば、おそらくそこで営まれている会計の慣行も相違する。会計の慣行が異なれば、会計基準は違ってしかるべきだというのが論理的な帰結であるように思います。こういったことが皆さんの中で理解されてきたという点であります。

それから2番目、議論の論点の2に当たりますが、中小企業における会計処理の特性をどう考えるかということでありますが、2002年に中小企業庁のほうで中小企業の会計に関する研究会の報告書が公表されました。この報告書は大きな枠組みとして3つのポイントを挙げております。1つは入り口面における記帳の重要性であります。会計基準で記帳と申し上げると、ちょっと奇異に思われるかもしれませんが、実は中小企業は帳簿記録すらなかなか行われていないというのが実態であります。そこでいかにこの記帳の重要性、記録の重要性を中小企業者に知らしめるかが重要な課題といえます。もちろん計算書類の重要性も理解させることは当然のことでありますけれども、入力データであるこういった記帳の重要性をしっかり中小企業者に知らしめることが最も重要となります。中小企業の会計というのは先ほど申し上げました2002年に始まったことではなくて、実は1949年、企業会計原則が制定された当時に中小企業簿記要領というのが経済安定本部から公表されております。そこでは当時は青色申告制度の導入という問題があったわけですけれども、複式簿記をしっかり中小企業者に普及させるという使命がありました。その意味では、いまだに記帳の重要性は中小企業にとっては非常に重要な問題であるということであります。

2点目はプロセス段階において、確定決算主義を維持することです。中小企業にとっては確定決算主義というのはコスト効果的なアプローチでありますので、こういった確定決算主義をしっかり維持するという立場をとりました。

そして3点目はアウトプット面、出口面における限定されたディスクロージャーであります。中小企業の情報の利用者は、一般投資対象といったものではなくて、金融機関であったりあるいは取引先といったように、非常に限定された情報の利用者であります。このような3つの特性が中小企業の会計の特性、つまり理論構造を形づくっていると理解をしております。

それから3点目です。作成者負担を考慮した簡素なものとする方向をどう考えるかということでありますが、これは当然のことであって、中小企業の場合には先ほど申し上げましたように、会計担当者が1人、もしくはもうほとんどいないような状態にもあるわけですから、中小企業者がしっかり会計のことを理解でき、そしてみずからの経営に会計情報を利用できるような環境づくりが必要であるということで、今般、中小会計要領というまさに身の丈に合った会計基準が公表されたということであります。

それから、4点目です。国際会計基準とのかかわり合いであります。先ほど、事務局からIFRS for SMEs、中小企業版IFRSというお話がありました。IASBは、単にフルIFRSだけではなくて、SME、中小企業向けのIFRSも公表しております。これは2009年の7月に公表されました。当初これは発展途上国からの要求がありまして、発展途上国向けに会計基準をつくってもらいたいという要求があったわけです。しかし、これがだんだん変質をしてきまして、先進国の中小企業向けの基準に変わってきた。その意味でははっきり言ってIFRS並みの基準であって、セクションも35ありまして、フルIFRS並みです。もちろん簡素化して、選択肢をかなり絞ってはおりますけれども、これはかなりレベルが高い。当初、IASBでは六十数カ国がこれの採用について議論をしていると言っておりましたが、先ほどのご説明からもおわかりのように、ほとんどがこれを採用しないという状況になってきております。多分採用しているのは南アフリカぐらいじゃないでしょうか。

そういう状況の中で、IFRS for SMEsの採用を中小企業に対して適用するというのは非常に無理がある。またEUはこの採用を認めましたけれども、その適用については、各国の判断に任せるということで、各国の判断は先ほどの事務局がご説明をしたとおりでございます。

それから最後に5番目の問題でありますが、私の個人的な見解になりますけれども、今の会計制度というのは、たった1つの会計基準を何か定めて、それを強制的に適用するという時代ではなくなってきたのではないかと思います。例えば我が国の連結を取り上げても、今はIFRSの任意適用が認められておりますし、一方で日本基準、J-GAAPが存在しているわけです。同じように中小企業についても、先ほどからお話のありました中小指針というのが現在ありまして、そしてこのたび新たに中小会計要領というのが策定されました。いずれも「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」です。「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」は権威ある支持があって初めてそれは慣行として機能するわけです。これまでの企業会計原則などは、企業会計審議会のほうで議論をして、その権威ある支持を与えていたわけであります。今は企業会計基準委員会が企業会計基準に対して支持を与えている。それと全く同じように、今回は中小企業の会計に関する検討会が権威ある支持を与える形で中小会計要領が策定されました。これを広く中小企業に普及させることが、今後の課題となっています。結論的に申し上げますと、中小企業の会計は国際会計基準の影響を受けないような仕組みにしたほうが中小企業にとっては望ましいと思っております。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがですか。逢見委員、お願いします。

○逢見委員

私もASBJの懇談会に労働者の立場で参加しまして、中小企業の会計の実情についてもいろいろと勉強させていただきました。そうしたことも踏まえて、本日示された論点について幾つか意見を申し上げたいと思います。

まずマル1ですが、経営者や利害関係者が会社の経営状況を的確に把握すること等のためとあります。この利害関係者については、主に銀行等の金融機関が想定されているということですが、当然そこには従業員も重要なステークホルダーとして含まれていると思います。この点、平時はさほど問題ないのですが、企業業績が思わしくない場合、従業員や当該の労働組合が、一体自分の会社はどうなっているのかということについて疑問を持ち、労働債権者として計算書類の閲覧を要求した際に、閲覧を拒否される事例が少なからず存在しております。我々がそうした中小の労働組合から相談を受けることも多いです。先ほど日商からの報告にもありましたが、税務のための会計から、的確に情報を開示して説明するという会計にシフトしていくためにも、空白であった中小企業会計基準について一定のルールが提示され、中小会計要領が広く行き渡っていくことを期待するとともに、あわせて重要な利害関係者としての従業員の閲覧ということについても配慮すべきであるということを申し上げたいと思います。

マル2につきましては、中小会計要領のポイントにも記載がありますが、中小企業においては会計イコール納税申告という実態もありますので、税制との調和ということを考える必要があると思います。あわせて繰り返しになりますが、計算書類は中小企業の経営の実態開示とその説明のための資料として使われるものであり、それに資する会計基準であるべきだと考えます。

論点のマル3マル4につきましては、中小企業においては作成者の負担等を考慮した簡素なものとすること、国際会計基準の影響を受けないようにする方向性については、これを支持したいと思っております。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員

私もASBJの懇談会に参画いたしましたので、簡単に感想とご意見を申し上げたいと思います。

非上場・中小企業を対象とした会計基準に関しましては、先ほど栗田課長並びに日商の宮城常務理事からのご説明のとおり、これまで関係者、関係当局が熟議をしてこられ、今般「中小会計要領」という形で取りまとめられたことによりまして、260万社もの非上場・中小企業にとりましては、経営の現場にフィットした、大変意義のある指針だと思っております。

内容的には論点のマル1マル3マル4、もちろんマル2もかかわるわけですが、十分満たした指針になっていると思います。従来の「中小指針」と合わせまして非上場・中小企業の会計基準のインフラが整備されたと見てもよいのではないかと思います。また、論点のマル5にかかわりますが、今回の「中小会計要領」、「中小指針」とも会社法に準拠し、税制との調和を図ることを意図していますが、これは私どもが要望しています上場企業における「連単・分離、」、「単体は日本基準を堅持する」という思想にも相通ずるものであり、単体のあり様につきましては上場企業、非上場企業に共通したニーズがあるということでもあります。上場、非上場に加えまして、連・単という切り口からも我が国の会計制度の枠組みをとらえる必要があるのではないかと考えております。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょう。根本委員、お願いします。

○根本委員

まず、中小企業において非常に大企業、上場企業との違いがあって、IFRSの適用の利点といえる国際的な比較可能性のメリットが少ないということから、その適用外とすることについては特に異議はございません。

もう1つコメントとして申し上げたいんですけれども、商工会議所の宮城常務理事のご発言にもあったんですが、中小企業の会計力というか、クオリティーを高めるということは一方で非常に重要ではないかと思います。特に日本の場合、銀行と企業の関係は大変密接で、それは裏返せば中小企業の債券市場での調達とか、あるいは貸し出しの流動化が進んでいないということにもなっていると思います。銀行との関係があるというのは強みではあるんですが、銀行自体が何か問題を抱えるとか、流動性の危機に直面したときに非常にもろいというか、代替する手段がないという状況ではないかと思います。例えば1つの取引先金融機関に説明をされているという場合は、それ以外の金融機関なりステークホルダーへの説明をより詳しくしようというインセンティブが薄れてしまうという問題が起こるのではないかと思います。今、銀行の健全性は日本で大きな問題にはなっておりませんし、預金も潤沢で、流動性にあまり問題を感じていない状況かと思うんですが、こういう状況はいろいろな条件次第で大きく変わってしまうと思います。欧州の債務危機もまさにその状況だと思うんですが、例えば国の財政悪化と信用力の悪化で、銀行という市場の反応にさらされている業界に影響が及び、その銀行が流動性の問題を抱えると、信用力の低い企業にダイレクトな影響が及びます。そのあたりのコンティンジェンシーがあまり考えられていないのではないかというのが私の心配するところです。

また、中小企業のプレゼンテーションにも書かれていたんですけれども、海外展開というのも非常に重要な点かと思います。海外企業との取引とか、あるいは海外への現地の移転とか、こういうものがさらに増えてくると思うんですが、その場合日本の金融機関が保証なり何なりでかかわっているケースが多いと思いますが、国際化が進むにつれて、あるいはいろいろな地域に行くにつれて、それが十分にカバーされていないということもあると思います。そういう意味でも中小企業も説明力のある質の高い会計を築いていくことが重要ではないかと思います。

ちなみに私が勤めているのは格付会社なんですが、中小企業格付もしておりまして、大企業とは別の異なる基準で、異なるスケールでやっているわけです。非常に普及しているとは言いがたいんですけれども、徐々に増えていまして、その場合にメリットを感じていらっしゃるという企業は、必ずしも債券の発行をされてはいなくても、そういう格付を得て、銀行との交渉力が増したとか、あるいは人の採用がやりやすくなったということです。また、最も喜ばれているのは、やはり業界内でのポジション比較というか、財務指標その他からみた、強み、弱みの分析ができる点です。これまで、経営分析上の情報が少なかったので、そこが補われたというのが大きいメリットではなかったかと思います。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。辻山委員、お願いします。

○辻山委員

ありがとうございます。論点の5番目で、対応のあり方について論点とすべき事項はないか、とありますので、本日の議論の中では触れられていなかった点で、今後こういう問題を考えていく場合に、念頭に置いておくべきではないかなという論点について申し上げます。

まず、IFRSというものが世界で今、アドプション、コンバージェンスといろいろ議論されているわけですが、その中でIFRSのIFRSforSMEsのSMEsというのは、定義上、非上場企業ということになっています。では、これがなぜ出てきたのかといいますと、先ほど河崎委員がご指摘のとおりでございますが、簡素化ということです。コストベネフィットを考えて簡素化するということですが、IFRSと非上場IFRSの関係はあくまでも会計のモデルを共有することが前提になっています。非上場企業IFRSでは、のれんの償却というものが認められておりますけれども、これは本来認められるべきではなかったというのがIASBの基本的なスタンスであるわけです。なぜならば、のれんは理屈上は償却すべきものではないと。あくまでも、コストベネフィットの関係で償却してもいい。償却すべきだから償却するということではなくて、コストベネフィットという仕切りでそういうものが認められている。そういう意味では、IFRSと非上場企業IFRSが採用している会計モデルは共通しているというところを1つ押さえるべきである。そのことを日本の現状にマッピングいたしますと、日本の会計基準、ASBJが発出しております会計基準と中小企業会計指針との関係もまた同じような考え方で構成されていたわけです。つまり、コストベネフィットの関係で簡素化するということだったわけです。

ところが、今回、中小企業会計指針に加えて基本要領が出てきた背景、それから世界的に非上場企業IFRSがなぜ受け入れられなかったのかという本質の問題というのは、コストベネフィット、簡素化だけでは済まない重大な問題をIFRSの基本思考が抱えていたということだと思います。今我々が目にしているIFRSというのは、世界的なデュー・プロセスの中で妥協というか、コンプロマイズされておりますので、その姿はよく見えなくなっていますが、IFRSがどういう会計モデルを目指しているのかというのは、2007年にCFA協会という組織から出されたペーパーに非常に明快に示されているわけです。そこでは、金融商品だけではなくて、すべての資産、負債は公正価値にすべきであるとされています。それこそが正しい考え方だということが示されています。それから会計の目的は投資意思決定の中の、特に普通株主の投資意思決定に役立つものでなければならないということが明示されております。ですから今IFRSの改定作業が進んでいるわけですけれども、もしこれがゴールであるならば、これは今までの会計の姿と全く違うものになる。しかもこのペーパーでは会計という言葉はほとんど使われずにビジネス報告モデルというこということになっている。そもそもIFRSもご承知のように会計という言葉を使っていない。いまは僅かにIASBというところで、会計をさすAの部分が残っておりますけれども、これも今回の定款改定でIFRSボードに変えようという動きもあったぐらいですから、もう会計にこだわらない報告システムということがこのモデルです。そうしますと、そこで会計というのは一体何だったのかと。会計が本来持っていた意味、それがどんどん損なわれていることに対する危機感が世界でも共有されているし、今回日本でもその事態が起こったと私は考えているわけです。

日本には企業会計原則というものがあったわけですけれども、これが今回公表された基本要領と、ある意味ではその思想が共有されている。それはストックの評価から会計に迫るのではなくて、いわゆるトランザクション(取引)ベースとか、フローベースとかいろいろ言われますけれども、トランザクションに根差した会計記録、そこから企業を見ていくという思考です。その結果としてストックは取得原価になるわけですね。つまり、IFRSと非上場IFRS、あるいは会計基準と中小企業会計指針、さらに基本要領へと、どんどん簡素化されている、中小企業の身の丈に合ったものになっているというのはこれは一理ありますけれども、実は簡素化だけではなく断絶がこの2つの間にある。かなり大きな思考モデルの違う会計を両者は目指しているということを了解しておかないと、事の本質を見失うのではないかと思います。

この2007年のCFA協会のペーパーの源流というのは、この協会が1993年のAIMR時代に出したものから続いておりますけれども、その同じころに最近よく言われます統合報告、インテグレーテッド・レポーティングの基礎をつくったジェンキンズ・レポートでは、同じように会計から報告にかじを切っておりますけれども、会計思想は全く別のものになっています。このレポートでは、いわゆる金融商品以外の会計はフローベースでやるべきだということが明記されています。ですから、いろいろ紆余曲折はありますけれども、もしこのCFAインスティチュートが提唱しているような会計モデルをIFRSが目指しているのであれば、今後も混乱が続いていくであろうし、いわゆるフローモデルを使わなければいけない日常の会計からどんどんかけ離れたものになっていくという点を十分に理解しておく必要があると思います。論点として出させていただきました。失礼しました。

○安藤会長

大変貴重なご発言、ありがとうございました。ほかに、いかがでしょうか。山崎委員、お願いします。

○山崎委員

山崎でございます。5の論点の1つなんですが、これはこの要領というものをどう考えるかがいろいろ立場によって難しい問題があるんです。いずれにしても1つの会計のガイドラインのようなものなんですが。会計のガイドラインというのは経済状況の環境の変化によって変わらなければならない。歴史的に企業会計原則も何度か大きな変更がございましたし、結果今は、ASBJがつくっている会計基準という時代になってきているわけです。ガイドラインでも会計基準でも、当然のことながらつくっておしまいではないわけで、継続的にどこが足らない、どこを新たに加えるかということをウオッチして、責任を持って変えていくところがないといけないわけです。常に関係団体が集まって議論しましょうでは、これはちょっとまずいので、だれかが責任を持ってウオッチして管理していくというところがないといけない。この議論が今のこの要領には全然欠けておりますので、ぜひこの議論をきちんとやっておいていただかないと、つくったはいいけれど10年後には全然使えないという話になりかねませんので、よろしくお願いいたしたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。大武委員、お願いします。

○大武委員

この企業会計審議会で話すべき話なのかわからないんですが、このマル2及びマル5に関連して、実は中小企業の実態というのは金融機関の方が異口同音に言われるのは、会計帳簿を信頼できないと。改ざんされているということが一般的に言われるわけでありまして、そういう点でも実は複式簿記でも修正したときは二重赤線で直すわけですが、今や企業会計システムは完全に修正、改ざんしてもわからないのがほとんどになっています。その意味では遡及して改定した、修正したのがわかるようなシステムに強制するある種の規制法が要るんじゃないかと思っています。やはり先ほど来、辻山委員も言われたように、中小企業の場合にはフローでものをとらえて考えているのが大半でありますが、それであるがゆえに、ある意味で言えば修正を年度末にだけやればいいということで、利益が出過ぎたときは過去にさかのぼって直したり、あるいは利益が出ないときは無理に利益を出して金融機関に説明がつくようにしたり、そういうことが行われやすいわけでありまして、ある種の簡素性というのはそういう意味でも重要なのは、非常にわかりやすくして、逆に修正ができないように強制していくという大きな流れ。やはりこれは企業経営の信頼の基本でありますので、残念ながら先ほど来、それこそ商工会議所の宮城委員が言われたとおり、どちらかというと税法主導で入ってきてしまったものですから、欧米と決定的に違うのは、税務申告のための帳簿であるがゆえに、税務申告のためというモチベーションが非常に働きやすかったということがあると思います。他方で、最近のように間接金融がこれを利益が出ているか、出ていないか、法人税の申告書を出せということになって、今度は逆に金融機関に対しては利益を出さないと。特に公共入札なんていうのは利益が出ていないと資格がなくなったりするものですから、逆の意味で粉飾を起こすというようなことになります。そういう意味でも、ぜひともこの企業会計審議会の、これ基準ではないんですけれども、むしろそういう修正なり、遡及修正をしたことがわかるようなわかるシステムというものを強制するようなことが、本来一番重要になっているんじゃないかという気がします。

やはりこのIFRSの話も一番ポイントになるのは、一体何のためにIFRSの議論をしているかというところに、ぜひ戻っていただきたいという気がします。やはり先ほど来言われたように、経営者の指針という意味で、経営状況の説明というところが基本にあるとするならば、ほんとうにメーカーなりにとって、ストックだけで見ることが会計というものの原則に照らしていいのかどうかというあたりも私は非常に疑義を抱いているので、この全体の中小企業の方針はマル3マル4も含めて大賛成ですし、そのとおりだと思いますが、IFRSということに考えたとき、もう一度中小企業で議論されている観点も大企業でもう一度振り返っていただきたいという気が私はするということです。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。議事次第を見ていただくとまだ検討項目はあるんですが、今の中小企業の会計について、特にご発言はございますか。では先に進ませていただきます。

それでは、次に監査法人における対応について、ご審議をお願いしたいと思います。

この検討項目につきましては、IFRSへの監査法人への対応について、日本公認会計士協会よりご説明いただきたいと存じます。

日本公認会計士協会会長の山崎委員及び日本公認会計士協会副会長の関根委員から説明をお願いいたします。

○山崎委員

ありがとうございます。山崎でございます。まず、私から資料は特にないんですが、私どもが基本的に考えていることを簡単に述べさせていただきたいと思います。その後、関根副会長から詳しい説明をいたします。

IFRS、国際会計基準、国際財務報告基準へ対応するための能力というのは企業だけではなくて、監査人にとっても非常に重要でございます。現在、国際的には企業財務の議論はほとんどすべて、100%ということではないかもしれませんが、IFRSを前提として話されることが多いという実情でございます。IFRSを適用する場合はもちろん、日本基準においても今後我が国の公認会計士の対応能力はIFRSの知識が必須になってくるものと思われます。仮に我が国の公認会計士の国際的な能力の強化というものが進まない場合には、我が国資本市場の世界的な評価も下がり、ひいては日本の上場企業の情報開示の質に対する評価が下がるということになりますので、公認会計士がそのような事態の原因になってはならないと考えております。各監査法人や日本公認会計士協会は基本的にこういう認識で準備に取り組んでおります。大手の監査法人を中心に、各監査法人においてはIFRSに基づく財務諸表の監査の体制を、完全というわけではないんですが既に構築しつつおり、さらなる強化にも取り組んでおります。監査人として十分な対応能力を確保すべき準備は進めているところでございます。

また、日本公認会計士協会ではIFRSの複雑な問題等について、中堅法人と大手法人の情報共有の場を持ち、順次展開していく体制を構築しており、範囲と時間軸により柔軟に対応してまいっております。今後ある程度の数の企業がIFRSを適用することによって実務事例の蓄積が広がり、作成者、監査人のノウハウが蓄積することでより円滑な導入に資することになります。詳細については関根副会長からお話しいたします。

もう1つつけ加えさせていただきますのは、国際的な発言力の強化を忘れてはならないということであります。今年の2月にIFRS財団モニタリング・ボードが公表しましたIFRS財団のガバナンスレビューに関する最終報告書という中に、モニタリング・ボードのメンバーは、これに今、日本は入っていると思いますけれども、各国におけるIFRSの使用と資金拠出というものを前提にすると明確に打ち出されております。

また、2月17日の審議会でもこれは事務局からご説明があったと思いますけれども、同時に出されたIFRS財団評議会の戦略レビューに関する最終報告書においても、会計基準の設定をするIASB、それから評議委員会、トラスティーズのメンバー国はIFRSの使用に当たるか否か、IFRSを使用しているかどうかを反映する可能性が高いと明確に報告されております。国際的な発言力を強化するために、モニタリング・ボード、評議会のメンバーの席を維持することが絶対重要であること、必要であることは言うまでもございません。今後モニタリング・ボードのメンバーであり続けるためには、この基準を満たしているか、適格性の評価を常に受けることになりますので、IFRSの使用ということになければ席を失うことが明確になっていると考えざるを得ません。評議会のトラスティーズのメンバーも同じでございます。さらにIASBのボードの席も同じでございます。こういうふうな国際的な影響力を十分に考えた上で議論を進めていっていただきたいと思います。私から以上でございます。

○関根委員

それでは私からは資料3に沿って、監査法人における対応についてご説明させていただきます。

IFRSについての監査法人における対応をご説明するに当たりまして、まず監査法人の位置づけ、私ども日本公認会計士協会や会計基準との関係を含めて、簡単にご説明させていただきます。

表紙をめくってスライド2をごらんください。監査基準の第一にありますように、財務諸表の監査というのは、経営者、この図では作成者としていますけれども、その作成した財務諸表が一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうかについて、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明するということを目的としています。公認会計士は、公認会計士法第二条により、この監査を行うことを業としております。

その公認会計士による監査を組織的に行うために導入されたのが監査法人であり、公認会計士法に基づき、5人以上の公認会計士で設立される法人です。

この監査法人を含めた公認会計士、この図では左下に監査法人等としておりますけれども、これらは皆、日本公認会計士協会の会員となることが義務づけられております。日本公認会計士協会は、監査法人等の会員に対して、監査証明業務の改善、進歩を図るため、指導・連絡、監督を行っています。

したがって、監査を行う監査法人にとって、会計基準とは、監査の対象である財務諸表を経営者が作成する際に準拠されるものであり、財務諸表が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうか判断して、意見を表明するための基準ということになるかと考えております。

では、次に、監査法人が監査を実施する体制についてご説明します。スライド3をごらんください。

IFRSに基づく財務諸表の監査を行う場合も、例えば、日本において、IFRSを任意適用し、金商法に基づき監査を行う場合、監査基準及び品質管理基準は日本基準に準拠することになります。財務諸表の監査を実施する監査法人は監査に関する品質管理基準に準拠して、監査業務の質を合理的に確保することが求められています。

したがって、IFRSについての監査法人における対応も、IFRSに基づく財務諸表に対する監査業務を行うため、品質管理基準に従って、品質管理システムを適切に整備し、運用していく必要があり、各監査法人は、継続的に、監査業務の品質の維持、向上に努め、そのための品質管理体制や研修体制を構築し、運用するということになります。言いかえればIFRSに基づく財務諸表監査も、日本の会計基準に基づく財務諸表監査と同様の体制で対応することになり、基本的な部分は変わらないと言えます。

なお、監査においてある取引等に対する会計処理の妥当性を判断するためには、取引の内容、ここでは実態と書かれていますけれども、その背景にあるものを適切に理解し、それを踏まえて行う必要があり、また会計基準に照らして当該会計処理を行った財務諸表の作成者である会社の考え方、判断がどのようなものであったかについても説明を受け、必要に応じて議論を行い、理解することが重要と考えております。監査法人においてはそうした対応をすることができるような人材を育成するための研修も行っております。

それでは、もう少し具体的にこの2つの点についてお話をしていきたいと思います。スライド4をごらんください。

監査法人が監査意見を形成するためには、各段階を踏む必要がありますが、こちらはその段階についてのイメージ図と考えていただければと思います。監査契約の締結に始まり、最終的に監査意見を形成するまでの流れを一般的な形、監査基準等で使用している用語とは少々異なるところもあるかと思いますけれども、一般的にこのようなイメージで行っているということで、参考にしていただいて、次からの説明をお聞きいただければと思います。

なお、監査業務の実施においては、監査に関する品質管理の基準に基づき審査を実施する必要があり、ここの審査というのは十分な知識、経験、能力及び当該監査業務に対する客観性を有する公認会計士が行うことになっています。なお、こちらの図では監査意見表明の前に審査を行うとなっておりますけれども、必ずしもその時点のみで行うものではありません。

では、その次のスライド5に移りたいと思います。スライド3の説明でも触れましたように、IFRSに基づく財務諸表監査は、日本基準に基づく財務諸表監査と同様の枠組みで行われ、監査意見の形成は、基本的に日本の監査法人の中で完結しております。ここで基本的にと申し上げましたのは、後で申し上げますように、IFRSが国際基準であり、他の多くでも適用されていることは考慮する必要があるという意味でございます。

具体的には、次のような体制がとられています。まず、財務諸表監査を行う担当チームが組成されますが、品質管理基準により監査実施の責任者は監査業務に補助者を使用する場合、当該補助者が監査業務に必要な能力、経験などを有するとともに、十分な時間を確保できるように確かめなければなりません。したがってIFRSに基づく財務諸表監査を行う場合は、そのメンバーというのはIFRSに関する知識も有する必要があるということになります。

監査チームは監査基準に準拠して監査手続を実施し、自ら入手した監査証拠、ここでは一般的に事実と状況と表現しておりますが、こうした監査証拠に基づき結果を表明します。監査法人は先ほども申しましたように、監査に関する品質管理基準に従って、監査の品質を合理的に確保するために品質管理部門を設け、また専門的な見解の問い合わせに対応し、監査意見の形成を含む監査業務に係る審査を行っています。IFRSに基づく財務諸表監査であれば、IFRSに関する専門的な見解の問い合わせや監査意見の形成の審査など、ここではもう少し広い一般的な意味で相談などと記載しておりますが、これらに対応する部署を設置し、複雑な問題についての法人内での整合的な取り扱いに対処しています。

その内部の部署には質問への対応から財務諸表監査において判断に困難が伴う重要な事項、見解が定まっておらず判断が難しい事項などを解決するために、IFRSに関する適切な知識や経験を有している助言者を配置し、関連する事実を提供することによって、効果的に対応するように努めております。

また、監査意見の形成過程を含む監査業務の審査についても、IFRSに基づく財務諸表の監査であっても日本の会計基準に基づく財務諸表の監査と同様、監査に関する品質管理基準に従って監査を実施する監査法人が行う必要があります。したがってグローバルな組織ではなく、日本の監査法人が実施します。

このように、IFRSに基づく財務諸表の監査は日本基準に基づく財務諸表の監査と同様の枠組みで監査意見を表明しており、監査意見形成は基本的に日本の監査法人の中で完結している形となっております。

次にスライド6では、会計基準の適用に当たっての判断についてご説明します。

監査において、ある取引について会計基準をどのように適用して会計処理を行っているか、その妥当性を判断するためには、その取引が実際どのようなものであるか、その背景にあるものを適切に理解し、原則に照らして判断する必要があります。また、先ほども申しましたように、作成者である会社の考え方、判断がどのようなものであるかについての説明を受け、理解することが必要になります。監査法人において、そうしたことを直接対応可能な立場にあるのは、現場の監査チームであります。また、各監査法人では日本においてIFRSの思考方法、考え方をよく理解しているメンバーからなる専門の相談部署が現場の監査チームをサポートすることによって監査が実施されることになります。

先ほどの説明のとおり、IFRSの適用に当たっても、監査法人内での相談、意見形成など監査実施上の判断は、本質的に日本基準の適用と同様となっております。IFRSは米国基準のように特定の他の国の基準を適用する場合と違って、国際基準を日本の基準として指定して使用するものであるためです。

一方で、IFRSは国際基準であり、他の多くの国でも適用されていることを考慮する必要があります。監査法人としては首尾一貫した適用を考慮する必要があり、日常的に、提携するネットワークファームと連携・協働・意見交換をしており、必要に応じて諸外国の事例や経験を参照することもあります。また、そうした場合でも、実際に行われている取引の背景等が異なれば、適用の妥当性に当たっての判断も異なることもあるため、そうしたことも念頭に置いた対応が重要と思われます。

次にスライド7に移りたいと思います。これは前回の審議会の議論にあったものですけれども、IFRSは原則主義と言われますが、原則主義と細則主義は相対的なものと言えると思います。そこでスライド7では、IFRSの原則主義的な側面について監査法人における対応をご説明したいと思います。

IFRSについては、各監査法人がガイダンス、マニュアルと言っている場合もありますけれども、これを作成しております。こうした監査法人のガイダンスは、作成者と各監査法人の間における個別の事例と経験の積み重ねによる会計処理の事例を抽出し、一般化したものと考えていただければと思います。

監査人は複数の関与先に同様のスタンスで臨む必要があります。そのため見解をある程度統一する必要があることから、内部のガイダンスを作成しています。また内部のガイダンスは外部から見解を求められたポジションの説明としても有用であり、基準とは異なるものではありますが、各監査法人はできる限り公表、出版し、定期的に改定されております。

こうしたガイダンスについて、当初は、各監査法人のグローバルな組織の中でヨーロッパが中心となってつくっていたということから、ヨーロッパのものではないかという批判があるかと思います。これは、ヨーロッパでは2005年からIFRSが適用され、実務が先行していたことによります。私自身の経験ですが、IASBが発足間もないころから5年ほど所属事務所におけるIFRSの検討についてのグローバルなタスクフォースのメンバーとなっておりました。当時はヨーロッパ各国がIFRSの適用準備に取り組み始めたところであり、かなり実務に即した形で議論をされていました。ところが日本ではIFRSの適用予定がなく、事例も乏しかったので、私自身の能力の問題もあるかと思いますけれども、具体的な実務検討に参加するのは年々難しい状況になっていたという覚えがございます。

しかしながら、現在ではヨーロッパのみならず世界各国でIFRSが適用されるようになっていますので、こうしたガイダンスの作成、改定には日本を含めて世界各国の事務所がかかわっており、各監査法人の日本のメンバーもかかわっているとお聞きしております。

その結果、当初はヨーロッパにおける事例をもとにつくられたガイダンスも、現在ではヨーロッパとは異なる日本の事例を踏まえて改定されているものもあり、こうした事例を積み重ねることにより、ヨーロッパ等の一部の地域だけでなく、国際的な事例を踏まえたガイダンスとなっていっていると理解をしております。

なお、ガイダンスはあくまでもIFRSを適用するためのガイダンスであり、絶対的な解釈を示すものではありません。個別企業のIFRSの適用には個別の事象と状況に基づく判断が必要であり、関係者がよく理解して議論をしていくプロセスが大切ではないかと考えております。

それからスライド8に移りまして、IFRSに基づく監査業務に対する監査法人の研修体制をご説明したいと思います。監査法人では法人の品質管理の方針に従って研修体制を整えておりますけれども、ここにありますようにIFRSの概念フレームワーク、基準、解釈指針を理解し、具体的な取引に対するIFRSを適用した会計処理の妥当性について、当該取引が実際にどのようなものであり、どういった背景のもとに行われたかを踏まえて判断できるような人材を育成する必要があり、そういった形からオン・ザ・ジョブ・トレーニングによる能力開発とともにさまざまな研修プログラムを開発しています。

研修プログラムとしては、1つにはIFRSの体系的な理解といった基礎的な研修とともに、もう少し実務的なケーススタディーや、実務上の問題を取り扱い、実践力を確保するためといったより実践的、専門的な研修があります。各監査法人は集合研修やワークショップを取り入れたり、一方でeラーニングを実施するなど複線的な研修体制を整備しています。また、例えばIFRSの各基準の論点のほか、日本基準との差異とか、公開草案や新たに改定された新基準など、最近の改正の動向などアップデートした教材も用意していると聞いております。

このような研修は多岐にわたり、IFRSに基づく財務諸表を監査するチームが当該業務を実施するために必要な能力、経験を有すべきと定めている品質基準に準拠するよう、監査チームの役割に応じた研修を実施、また実践を積むような体制を整えて、浸透させようとしております。監査チームは監査責任者からスタッフまでいますので、それぞれの役割を行うためにはどういった研修や経験がどのぐらい必要か、監査法人内で定め、監査チームはそれに従い、こういった研修や経験を積んだものから構成されるという形をしております。

ここまでIFRSの適用に関する監査法人における対応を説明してきましたが、冒頭で説明しましたように、監査は監査法人以外も行っております。国際基準であるIFRSに対応するため、グローバルな組織と提携していない監査法人もあります。そうした監査法人や公認会計士も含めた監査法人等を支援するため、日本公認会計士協会では、ここにありますようなさまざまな取り組みを行っています。具体的には、IFRSデスクというものを設置し、情報を収集し、機関誌やウエブサイト、ここにウエブサイトのリンクがありますけれども、こういった情報提供を行っています。また、中小監査法人等への支援として、先ほどの山崎の話にもございましたように、大手監査法人のメンバーと情報共有をしているという状況でございます。さらに関係団体との連携や研修も実施しております。

以上、IFRSについての監査法人における対応について説明させていただきましたが、これらは私自身の監査法人での経験や、日本公認会計士協会で他の監査法人からお伺いしたことをまとめたものであります。監査法人における対応は、何度かお話ししましたように、監査に関する品質管理や監査基準とそれらの実務指針に基づき行われておりますけれども、各監査法人がそれぞれ工夫しているところがあるかと思います。また、IFRSについての日本の監査実務もまだまだ限定的なところがあり、今後適用事例が増加していくことにより、実務が浸透していくものだと考えております。そういう意味では、現場では実際、本日話したことのほかに、いろいろなことが起こっているのではないかと思います。ただ本日説明させていただいたような仕組みで実務に浸透していくよう、今まさに取り組んでいるところでございます。そういったことをご理解いただき、IFRSについての議論の参考にしていただければと思っております。私からは以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。それでは、委員の皆様から、ただいまの山崎委員、関根委員からの説明も踏まえまして、監査法人における対応について、ご意見を伺ってまいりたいと存じます。また両委員の説明に対するご質問がございましたら、あわせてお願いいたします。

廣瀬委員、お願いします。

○廣瀬委員

山崎委員、関根委員からの大変ご丁寧な、詳細なご説明をありがとうございました。監査人のあり方につきまして、我々作成者の立場から4点ほど申し上げたいと思います。

1つ目は、IFRSに基づく財務諸表に対する監査意見形成は日本の監査法人内で完結するというご説明がありました。日本の監査法人が他国のネットワークファームの意見を聞かれることは当然あるわけでございますが、基本的にはそれに左右されることなく、日本の国情や取引慣行、個々の企業の実態を踏まえて、独立した意見形成を行うことは大変重要だと考えますので、ぜひともそれらを尊重した体制構築をお願いしたいと思います。つまり、大手監査法人のグローバルマニュアル、あるいは海外での先行事例に固執することなく、原則主義のもとで企業の会計方針や判断を尊重した適切な対応をお願いしたい、これが1点目でございます。

2つ目は、比較可能性を担保する観点及び作成者側のコスト削減の観点から、何らかの形で適切な判断基準が共有されるべきであると考えておりまして、作成者と監査人などの各関係者が一体となって共通理解を形成していく、例えば2009年に開始されたIFRS導入準備タスクフォースのような取り組みを再開、継続していただければ非常にありがたいと思います。

3つ目は、日本基準とIFRSはword・to・wordの細かい点では完全に一致しているとは申せませんが、過去15年間の会計の国際化やコンバージェンスの取り組みの中で、ご案内のとおり、現時点ではEUからもIFRSと同等であるとの評価を得ており、そういう意味で非常に近いものになっております。したがいまして、現行の会計処理のほとんどはIFRSのもとでも継続可能と考えるべきでありまして、監査人におかれましても、費用対効果を踏まえたスムーズな導入を作成者とともに考えていただきたいと思います。

最後の4点目は、監査のあり方に関するご当局へのお願いであります。原則主義のもとでは、作成者と監査人が会計処理方法について対立し、あるいは調整が難航することもケースとしてあり得ると思います。近年の決算発表の早期化や開示内容の充実の流れの中で、企業と監査人は極めてタイトなスケジュールのもとで実務作業を強いられております。期日までに監査意見が出されない場合には、ご案内のとおり、監理銘柄への指定、あるいは上場廃止のリスクが伴います。このような事態は頻繁に発生するものではないと考えておりますが、どうか金融庁におかれましては、事前質問制度、プリクリアランスや、あるいは証券取引所ルールの適切な運用について、アメリカの事情等もよく調査いただきまして、制度設計の面で一段の工夫をお願いできればと思います。これは非常に大切な問題であり、今次の問題等でも非常に期間のないところで、これは作成者だけでなく、監査人の立場からも非常に重要な問題だったと思いますので、そういう点をぜひ我々作成者側からもお願いしておきたいと思います。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。永井委員、お願いします。

○永井委員

ありがとうございます。感想と質問です。もちろん企業によってスタンスは違うと思うのですが、IFRSに対して企業が感じておりますのは個々の基準に対する違和感だけでなく、原則主義への不安もあるかと思います。つまりある経済事象に対してこの会計処理でいいのだろうかということになるかと思いますが、以前、あるIFRS導入に当たっての資料のようなものを拝見しましたところ、この取引に関しては各社の状況によって個別に判断しなければならないので、監査人と早目に協議して、合意しておくことのようなことしか書かれておりませんでした。また、IFRSは原則主義ということで、解釈指針も限定的であると。結局具体的な適用に当たっては、個々の企業がばらばらに監査人とすり合わせをして、結局監査法人の見解が事実上の解釈指針となってしまうようなこともあるかと思うのですが、先ほどのご説明では、ガイダンスを可能な限りで公表されるというお話がありました。これは対企業で個別に公表されるということなのか、それとも世間一般に公開されるということなのか。それが質問の第1点目です。

2点目ですが、本来であればIFRS解釈指針委員会にもっとガイダンスを出してもらうというのが企業にとってはわかりやすいということだと思いますけれども、それは原則主義から離れていくということなので、ちょっと可能なのかどうなのか、私にはわかりません。先ほど廣瀬委員もおっしゃっておりましたが、プリクリアランス制度でしたか、適用上の疑問に答える質疑応答制度。これは韓国の海外視察でも伺って参ったわけですが、日本でもこのような制度をつくられるおつもりがあるのかどうか、それをお伺いしたいということで、以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。今の点について、関根委員から回答をお願いします。

○関根委員

ありがとうございます。1番目のガイダンスについてご説明します。先ほどの説明が明確ではなかったようで失礼いたしました。ガイダンスにつきましては、可能な限りと言っていますのは、必ずしもすべてではないかもしれないという意味ですけれども、実際に市販をする等して公表しております。

まず、国際基準ですので国際的に使用されている英語のものがございまして、それを日本語に訳している監査法人もございます。さらに、それだけですと、日本の会計基準との関係がわかりづらいということもありまして、日本の会計基準との差異なども含めた形で出版しているところもございます。これらは、もちろん基準に書いてあるそのままのことも記載していますけれども、あくまで一般的にこう考えるとこうなるというような考え方を示しているもので、先ほどお話ししましたように、状況がよく見ると違っていて違う解釈にもなるということもございますが、一般化して公表しているものと考えていただければと思います。

○安藤会長

では、事務局からお願いします。

○栗田企業開示課長

プリクリアランス制度の導入につきましては、前回も国際会計基準の原則主義に対する対応ということでご議論いただいたところでございまして、前回の会議でもIFRSを導入するのであればプリクリアランス制度があったほうがいいというご意見が幾つかあったかと承知しております。いずれにいたしましても、この論点はまずIFRSをどういう形で日本に取り込むのか、取り込まないのかというところの次に出てくる論点であると思っておりますので、そういう議論も含めまして今後検討していくべき課題であるかと考えております。

○安藤会長

委員の皆様、ほかにご意見はありますでしょうか。佐藤委員、お願いします。

○佐藤委員

監査法人と企業の関係はよく話題になりますが、私は製造業の視点から幾つかご意見を申し上げたいと思います。

具体的なテーマで話をさせてもらいますが、IFRSを現在検討している製造業が何社かありますが、特に収益認識の項目と棚卸資産、棚卸資産の中でもとりわけ減価償却に関する基準が、いわゆる連・単分離という思想が困難な項目であります。多数の企業が既に現在、監査法人との関係で幾つか問題意識を感じておりますので、ご報告いたします。

まず減価償却費についてですが、製造業にとりましてはご承知のとおり長期視点の経営やコスト構造、更には、企業の競争力に直結する将来の設備投資財源にかかわる重要なアイテムですが、従来日本基準、米国基準で採用してきた償却方法、耐用年数の考え方がIFRSでは適用できなくなる業界も出てきております。これは先ほど関根委員から説明がありました監査法人の監査業務の品質の維持、向上にも関係していると思います。現状、各企業で困っている点を申し上げますと、1つは償却方法に関しまして、IASBの教育文書が出ているとはいえ、各社とも現行定率法維持のための挙証に相当苦労しているのが実態であります。釈迦に説法ですが、固定資産の価値の減少というのは使用による減少のほかにも技術的・経済的陳腐化、さらには物理的な自然減耗等さまざまな要因がありますので、定量的実証というのは困難な面がございます。これまで認められてきた方法がIFRSではなぜ認められなくなるのかという単純な疑問を感じている企業も多く、監査法人の柔軟な対応を望む声、または我が国の国益という視点から国家的な対応が必要ではないかという声もございます。

次に耐用年数に関しましても、幾つかの企業で監査法人から耐用年数について細かなデータに基づく検証が求められている実態がございます。そもそも将来利用可能な期間を見積もること自体、実務的には困難を伴いますし、一定の仮定条件のもとで推測するしかないと思います。それならば、原則主義のもとで、実証データの平均値である税法基準も1つの選択肢としてとらえて良いのではないか。税法基準の中でも増価償却等の操業度に応じた対応もとれるようになっていますので、1つの考え方ではないかと思う次第であります。減価償却に関しては以上でございます。

次に収益認識ですが、これは非常に困っている企業が多いと思いますが、親会社や関係会社の営業ラインに具体的に展開しなければなりません。何といってもわかりやすいコンセプトが必要になります。しかしながらご承知のとおり、IFRSの権利と履行義務に関するコンセプトや、契約資産と契約負債の把握、さらには工事進行基準の再公開草案における、「履行義務の充足が一定期間にわたる場合」等の基準は、基準そのものが複雑でかつ概念的、抽象的なものが多く、会計の知識のない営業ラインに落としましても実務がうまく機能するのかどうか、極めて疑問であります。新たなIFRSの個別条文に固執して企業に必要以上の対応を求めるのではなくて、企業のコストとベネフィットの関係も斟酌していただき、これまでの実務慣行に定着した合理的な処理を継続することも選択肢としてはあり得るのではないかと考える次第です。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにご意見がありますでしょうか。鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員

私から2つほど申し上げたいと思います。1つは監査法人が日本基準で財務諸表監査を行う場合と、IFRSに基づいて財務諸表監査を行う場合に、その判断基準とかプロシージャーにどんな違いがあるのかという点です。私自身も非常に関心があったわけです。今のご説明で、判断はIFRSでも日本基準でも同様に行う。しかも日本で適切に判断していくという考え方ですから、これはいいことだと思うわけです。課題は、実務における取引の実態をどう反映させるかです。ここには日本的なよさとか、強みとかもかかわってくると思います。それをどこまで反映することができるのかという点で、作成者側と監査人の意見に相違が出てくると思います。その合意形成のプロセスも大事ですが、投資家、アナリストとしては、どういう点がどう違ったのかということはぜひ知りたい。なぜかというと、そこに経営者の意思が反映しているからです。あるいは監査法人の意見が反映しているとすれば、一体どういう違いなのだろうか。最終的に合意ができたとしても、その点についてきちっと理解しておきたいということです。その部分のディスクローズの姿勢が問われます。

もう1点は、監査法人を支援する日本公認会計士協会の取り組みの中にある中小監査法人への支援というところです。いろいろ情報交換をするというご説明もありましたけれども、さらに具体的にどういうふうにやっていくのか。IFRSの採用が大企業中心ということになると、当然大手監査法人がそれを担っていく。グローバルネットワークもあるので、そういう方向だろうとは思います。一方で、日本の中堅上場企業もかなりアジアに出ていく。その動きはサービス業においても加速していくと思われます。そうすると、中堅上場企業においてもIFRSの準備が必要になってくるので、中堅監査法人においても、そういう対応を十分行っていく必要があると思うわけです。投資家、アナリストは信頼のある監査が行われているという前提で、将来を見て投資判断をしていきますので、当然中小の監査法人においても十分な対応力をつけてほしいので、その施策についてもぜひ大いに力を入れていただきたいと思うわけです。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。今のことについて、公認会計士協会から何かございますか。

○山崎委員

では、中小監査法人に対する対応についてお答えいたします。現在、中小事務所等施策調査会という、現実に中小監査法人が監査上さまざまな問題について直面した場合にどうするかという議論をする、あるいは研修を集中的に行っていく体制をつくっております。この中でIFRSも当然そういうものが入っておりまして、それと先ほど申しましたように、大手監査法人と公認会計士協会との議論の成果も適時に中小監査法人に提供しておりますので、基本的に大きな違いはないと私どもは努めております。

○安藤会長

ありがとうございました。それでは辻山委員、お願いします。

○辻山委員

ありがとうございます。1点質問と、2点コメントをさせていただきたいと思います。質問は冒頭で山崎委員がおっしゃった国際的な発言力を担保していくべきだということは非常に貴重なご指摘だろうと思います。今回の見直しの中で、今後はIFRS財団のトラスティー、それからIASBに席を確保するためにはそれなりの条件が必要だということだそうでございますけれども、例えば日本の状況を考えてみますと、コンバージェンスにコミットして、そしてEUからも同等性評価をいただいている。これはアメリカと同じでございますけれども、それプラス、アメリカではやっていない任意適用も始めている。一方、中国にしてもフルコンバージェンスと。インドはインド版IFRSということでございますし、アメリカはコンドースメント・アプローチである。そういうような中で、今の日本の取り組みを今後続けていった場合に、アメリカとか中国とかより劣るものだという判断が下される可能性があるのかどうなのかということについてのご見解をお伺いしたいというのが1点目でございます。

2点目は関根委員のご説明の中で、米国基準を日本企業が使う場合とIFRSとでは違うと。それは当然のことでございますけれども、米国基準は相互承認という枠組みの中で認められている。一方、IFRSというのはどこかの国がお墨つきを与えるものではありませんので、日本で使う場合にはやはり日本版IFRSといいますか、任意適用であっても日本の法的なスキームの中で準拠性が与えられるものとして使われると思います。IFRSというのはどこかで宙に浮いているものではございませんで、これを国内で認めていく場合には、国内法として準拠性を持たせているということでございます。したがいまして、任意であっても、もう既に始まっているわけですけれども、別表指定されているということはそういうことであるし、日本版IFRSという位置づけが必要だと思います。今後もフルバージョンのIFRSが指定されるとは限らないということですよね。

コメントの2点目でございますけれども、仮にそうした場合に、例えばIFRSでいろいろなバージョンがある。あるいは日本基準とIFRSの間で大きな乖離があるとした場合に、果たして、監査人というのはどのように判断するのか。監査というのは、基準に従っていればいいというものではなくて、究極的には企業の情報が透明に市場に伝わらなければならないわけです。そこでいろいろな基準の中に大きな齟齬があった場合に、信念を持って監査人として判断できるのかということについて、十分な自覚を持っていただきたいというか、質問しておきたいんですけれども、例えば今、世の中で起こっている事象の1つに、企業の段階取得の場合で子会社化した場合の時価評価の問題がございます。子会社になった途端に一気に利益が出る。企業側は何で利益がこんなに出るんだろうと疑問をもつ。それに対して監査人は、いや、基準が変わったからですよと応じる。こういうことでは市場の番人としての、監査人としての立場というか、責務を本当に果たしているのかなと疑問に思うんです。ですから会計基準を使って監査をするということですけれども、その会計基準について監査人が信念を持たなければ、正しい監査がほんとうにできるのかどうかということについて、疑問に思っておりますので、コメントさせていただきます。以上でございます。

○安藤会長

大変厳しいご質問が出ましたけれども、公認会計士協会の側で、答えられる限りで結構でございます。

○山崎委員

確かに監査人は企業の実態というものを判断するわけですけれども、会計基準やルールなしに企業の実態を判断しているわけではございませんので、あくまでも会計基準に基づいて判断するということであります。会計基準が変わればそれは状態が変わってくるのは、ある程度仕方がない。そういうことがビルトインされた制度であると思っております。

それから辻山先生のお話で、発言力の問題がございましたけれども、コンバージェンス、それから同等性評価というのは今までの話でございまして、今、議論しているのはこれからどうするかということなので、これからこのまま止まっていれば、まず間違いなく日本の発言力は低下する。これは間違いないところでございます。アメリカが、これはいろいろ見方があると思いますが、後戻りをするということはないと思います。アメリカはアメリカなりに自分のところへIFRSを使っていくんだろうと思いますし、それと比べてどうだと。中国はちょっと議論はなかなか難しいところでございますけれども、これは日本の置かれた全世界的な経済の中での日本の立場ということも考えなければいけない。今までどおりにいくということはないということでございます。

○安藤会長

関根委員、何か補足ございますか。

○関根委員

若干補足させていただきます。先ほどの会計基準が変わった場合につきましては、私自身は、そもそも会計基準をつくるときに公認会計士としてもいろいろ参加をして議論をさせていただき、そういったことを考えていかなければいけないかと思っております。それでも個別の事象についてはいろいろなことが出てくるかと思いますが、その場合には会計基準の離脱、前回そういうお話がありましたけれども、そういう話にもなりうるのかとか、そういった難しい問題になりますので、このあたりにしておきたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。まだご発言希望の方がおられるかもしれませんけれども、議事次第の最後に、4として諸外国の動向についてとございますので、これについて事務局より簡単に説明してください。

○栗田企業開示課長

お手元に資料4というものを配付させていただいておりますが、先日3月2日にシンガポールの会計基準審議会から発表があったものでございます。前半に逐語訳をつけており、その後ろに英文をつけさせていただいております。シンガポールは従来からIFRSのフルコンバージェンスを2012年末までに行うという目標を設定しておりましたが、今般、当初予定していた2012年中にはフルコンバージェンスが完了しないということを公表したということでございます。その理由として、2つ目の矢羽根にありますように、フルコンバージェンスの達成前に解決すべき幾つかの重要な未解決の問題を認識したと書いてございます。それから4つ目の矢羽根のところに、フルコンバージェンスを実施するスケジュールは国際的な基準開発と並行して調整され、IASBが現在実施している幾つかの主要なプロジェクトの進捗状況により左右されるということが書かれております。それから最後のところに当然シンガポールはフルコンバージェンスにコミットメントしておりということで、フルコンバージェンスをやめるということではないと書かれております。

なぜこういうことになったのかということの背景について、当方からシンガポールの関係者に問い合わせたところ、一番大きな要因はやはりIASBとFASBとのMOUの進捗がおくれているということでございまして、ここから先の話は若干我々の推測も入ってくるんですが、シンガポールの場合に、マンション販売に関する会計処理がちょっと独特でございまして、建設している途中からどんどん顧客に販売していって、販売していく度に売り上げを立てていくというような会計処理をやっているようでございますが、それが現在の収益認識に関する基準で読めるのかどうか明確でないという問題がある。現在、再公開草案が出されております新しい収益認識基準ではそれはどうも読めるという方向のようでございますけれども、その新しい収益認識基準についていつファイナライズされるかがわからない。それはMOUのプロジェクトがおくれているからということになってくるわけでございます。そういうところが今回のシンガポールの決定の主要な背景にあるということのようでございます。私からの説明は以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ただいまの事務局の説明について、何かご質問ございますか。ないようであればそろそろ終わりの時間でございます。

それでは、本日の審議はこのあたりにさせていただきたいと思います。

当審議会では次回も引き続き今後の議論、検討の進め方として、提示させていただいた主要項目についてご議論をいただきたいと考えております。まだ数点残っておるということです。

最後に次回以降の日程等につきまして、事務局より説明をお願いします。

○栗田企業開示課長

次回は来月4月17日、火曜日の14時半から16時半を予定しておりますので、ご出席のほう、よろしくお願いしたいと存じます。

○安藤会長

それでは、本日の合同会議をこれにて終了したいと思います。委員の皆様にはご審議にご協力いただき、ありがとうございました。これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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