企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議議事録

1.日時:平成25年4月23日(火曜日)16時30分~18時30分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議

平成25年4月23日

○安藤会長

定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会・企画調整部会合同会議を開催いたします。皆様にはご多忙のところご参集いただき、誠にありがとうございます。

まず、会議の公開についてお諮りいたします。従来と同様本日の合同会議も、企業会計審議会の議事規則にのっとり会議を公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

ご異議ございませんので、そのように取り扱うことにいたします。

それでは、議事に入ります。最初の議題であります、会計基準アドバイザリー・フォーラムについてです。前回の当合同会議でもご審議いただきましたが、IASB(国際会計基準審議会)と、各国基準設定主体との意見交換を行う場として新たに設立されました会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)の第1回会合が先般開催されました。この第1回会合には、企業会計基準委員会(ASBJ)から委員長の西川委員が出席しておられますので、西川委員より会計基準アドバイザリー・フォーラムの現状、状況等につきましてご報告をいただきたいと存じます。西川委員、よろしくお願いいたします。

○西川委員

企業会計基準委員会の西川でございます。先々週ロンドンで開催されました第1回の会計基準アドバイザリー・フォーラム、これをASAF(エイサフ)と呼ぶこととしたのですけれども、これについてご報告をさせていただきます。

資料1をごらんいただきたいと思います。ちょっと大部なものですので若干時間がかかるかもしれません。ご容赦いただければと思います。

前回の審議会で、ASAFの設置の経緯等については、金融庁の事務局のほうからご説明いただいておるということでございますが、ASAFの目的の中で特徴的な点は、資料の1ページの目的の2つ目にありますように、各国の会計基準設定主体及び地域団体とIASBとのマルチラテラルな関係を公式なものとし、各国からのインプットをIASBの議論において考慮するということでございます。IASBはこれまでFASB、それからASBJ、EFRAGとの間でMoUなどを締結して、バイラテラルな議論を行なってきておりますけれども、これをマルチラテラルなものとして公式な会合を開催するということが、今回の目的とされております。

第1回の出席メンバーということでございますけれども、表に記載のとおりでございまして、FASBのレスリー・サイドマン議長、EFRAGのフランソワーズ・フローレス議長はじめグローバルな会計基準設定主体等において影響力の大きいメンバーにより構成されているというふうに思っております。IASBサイドでは、ハンス・フーガーホースト議長がASAFの議長を務めるという形で会合が行われております。

第1回の会合では、2ページにありますとおり、概念フレームワークを8時間、金融資産の減損を2時間議論しております。このASAFのアジェンダについてはIASBだけではなく、各メンバーも提案することができるという建て付けになっておりますが、当面はIASBで進行中のテーマが選ばれるというふうに思っております。

今後の日程ですけれども、次回の会合は9月に予定されており、その後は3カ月に1回行われるということが決まっております。後ほど説明します概念フレームワークのディスカッションペーパーが7月ごろに公表されるという予定がございますので、今年の6月はASAFは行わず、9月のところで、この期間は順調にいけばこのディスカッションペーパーのコメント期間中になろうかと思いますけれども、ここで引き続き概念フレームワークの議論が行われることになると思っております。

ASAFの対応、国内の対応に関してですけれども、ASAFのメンバーについては、IASBのボードのように個人として参加するということではなくて、各国会計基準設定主体としての団体として選ばれているということがあります。したがいまして、ASAFに参加するに当たりましては、メンバーは可能な限り各国における意見を聴取した上で参加するということが望まれております。今回、第1回のASAFはかなり急いで開催されたということもあり、時間的な制約があったのですけれども、我が国においては2ページにありますように、事前にアジェンダ協議会を開催して、意見交換を行なっております。また、今後ASBJ内に、ASAFに対応するための専門委員会を設置することも予定しており、今後毎回、関係者の意見を事前によくお伺いした上で、ASAFに参加したいというふうに思っております。

それでは、第1回のASAFで議論された具体的な内容を少しご紹介したいと思います。まず概念フレームワークでございまして、3ページをごらんいただきたいと思います。概念フレームワークにつきましては、IASBは「アジェンダ協議 2011年」に対して、世界から寄せられたコメントを踏まえ、2012年9月以降、財務報告に関する概念フレームワークの見直しに向けた検討を開始したということでございます。概念フレームワークがどういう意味を持つか、あるいは概念フレームワークの目的、パーパスの方ですが、これは何かといいますと、将来のIFRSの開発、あるいは見直しの指針として用いられるということが、まず挙げられます。またIFRSでは、IAS第8号のところで、個々のIFRSに規定がない事項については、財務報告の作成者が概念フレームワークにおける概念を参照するというようなことも記されております。

これまでの概念フレームワークについての取り組みですけれども、もともとのIASBの概念フレームワークは1989年にできたものがあります。2004年以降、IASBは、FASBと共同で新たな概念フレームワークの開発に向けた取り組みを行なってきており、2010年9月に両者共通の概念フレームワークということで、3ページの真ん中あたりの目次で見ていただきますと、第1章の財務報告の目的と、第3章の有用な財務情報の質的特性について公表したということがございます。当時は部分的に確定させていくということでございますので、第1章と第3章だけが新しくなっているという形でございます。

その段階で、MoUプロジェクトに注力をしなければならないということから、共同プロジェクトによる議論は、2010年のところで作業が中断されたままということになっていたわけでございます。これを今回再開するに当たって、IASBは次の方針を示しているわけですけれども、扱うプロジェクトといたしましては、目次でいう第2章と第4章を取り上げ、構成要素、認識及び認識の注視、測定、表示及び開示、それから報告企業といったようなところをまとめて行うということです。既に確定させた目的と質的特性については、基本的に見直しは行なわないということがございます。

今回は、FASBとの共同プロジェクトではなく、IASB単独のプロジェクトということになります。ただしということで、FASBのスタッフがプロジェクトに参加するということになっていて、既に参加しているわけですけれども、こういった他の会計基準設定主体からのスタッフの参加ということもありますので、ASBJとしてもそういうことを考えていこうとしているところでございます。

今後の予定ですけれども、今年の7月ころにディスカッションページを公表し、それから来年の8月に公開草案を公表し、再来年の9月に最終化するということで、極めて野心的なスケジュールということになっております。

今回、重点的に審議が行われた項目についてお話しさせていただきますけれども、特にそのマル1ですね。当期純利益とOCI、それからマル2の測定というのは公正価値の範囲などですけれども、ここら辺のところは2011年に実施されたアジェンダ・コンサルテーションにおける我が国のコメントとして、IASBとして検討が必要というふうにコメントしたところでございますので、特に重要と考えられ、本日もそこを中心にお話をさせていただければと思っております。

ここから各論に入ります。6ページをごらんいただけますでしょうか。最初に当期純利益とOCIの問題でございます。現在の概念フレームワークでは、資料に記載のとおり財務諸表の構成要素として財政状態計算書、バランスシートでは、資産、負債、その差額としての資本を定義し、包括利益計算書では資産、負債の期中増減として収益と費用が規定されているということで、当期純利益は、財務諸表の構成要素とはされず、定義がなされておりません。この当期純利益が定義されていないということにより、IFRSでは当期純利益が軽視されているのではないかという点が、我が国では問題意識の強いところであります。

なお、IFRSでは当期純利益について、プロフィット・オア・ロスという言葉を使う関係で、この資料上では純損益という表現が出てきますが、当期純利益と同じ意味で使っております。当期純利益やOCIについての問題意識は、我が国だけでなく各国から指摘されたところであり、今回の概念フレームワークの見直しでは、IASBはこの問題に取り組むということを明確に言っております。

資料のASAFにおけるIASBの提案というところをごらんいただければと思います。今回、IASBは3つの原則というものを提案しております。原則の1番は、純損益に表示する項目は、報告期間についての企業の財務業績のプライマリーピクチャーを伝達するというふうにいっておりまして、これは当期純利益は不要だというような議論を行なっていた時代に比べますと、当期純利益を正面から議論しようという意欲を感じるわけです。ただ、当期純利益を定義するまでには至っていないということがあります。

次に、原則の2番として、ある項目をOCIに表示することが、財務業績のより適切な描写となる場合を除いて、すべての収益及び費用の項目は純損益に認識すべきであるということがございます。これを「すべての」というところで懸念する方もいる一方で、OCIに表示するということがある、ということが明示されているという点を積極的なものとして見るのか、そこら辺は議論があろうかと思います。

原則の3は、当該期間の財務業績に関し、目的適合性のある情報をもたらす場合には、以前にOCIに表示した項目を純損益に振りかえる、リサイクルすべきであるというふうに言っております。目的適合性、これはレレバントの訳でここでは使っておりますけれども、そういうレレバントな情報をもたらす場合にはという条件はついておりますけれども、

リサイクルすべきという記述が入った点、最近はノンリサイクルという基準書が主流だったかと思いますので、この点についても今回、IASBのスタンスがちょっと変わっているのかなという感じはしております。

リサイクリングすべき場合として2つのケースを挙げておりまして、1つが橋渡し項目と言っていますけれども、ブリッジングアイテム。もう一つが、再測定のミスマッチ。ミスマッチド・リメジャメントという考え方を挙げております。ブリッジングアイテムですけれども、認識される資産または負債が2つの異なる測定基礎、1つは財政状態計算書における使用のための、例えば原価に基づかない測定基礎。もう一つは、純損益における使用のための原価に基づく測定基礎を有すべきであるとIASBが決定する場合に、橋渡し項目が生じるということでございます。この例としては、負債性金融商品について、IFRS9の直近の改正作業の中で、いわゆるフェアバリューOCIという分類を設けようとしているわけですけれども、それについてはBS公正価値測定、PL用には償却原価で測定するということがありますので、そのようなものがこのブリッジングアイテムに入ってくるということでございます。

一方、再測定のミスマッチというものについては、収益・費用項目を純損益に表示すると、目的適合性のない情報を提供することになる場合があるということで、キャッシュフロー・ヘッジの例を挙げているということがございます。この場合も、純損益にリサイクルすべきであるということを言っております。

8ページを見ていただきますと、どういうものがブリッジングアイテムに当たり、どういうものがミスマッチド・リメジャメントに当たるかという例を挙げております。この表については個々の内容については触れません。全体としての各メンバーからの意見ですけれども、純利益の概念を維持することについて、大きな反論はなかったのですけれども、純利益についてパフォーマンスのプライマリーピクチャーとしている内容を明確化すべきであるという意見や、OCIの意味合いについてさまざまな意見が聞かれたということがございます。

ASAFにおけるASBJの発言要旨ということで9ページのところに書いてございますけれども、原則1から3というのは、議論の出発点として有用であるというふうに思いますけれども、原則1において、業績と純損益については定義すべきであるということがございます。純損益の定義というのは必ずしも易しくないということですけれども、測定のチャプターの測定との関係で、目的適合的かどうかを決定する判断プロセスに役立つよう、何らかの努力が必要であるということを言っております。リサイクルすべきというのが日本の主張ということになるわけですけれども、メカニズムの観点と規律の観点からそれが必要であるといっております。

ドアをあけたら閉めなくてはいけないと私が言っているところは何を言っているかおそらくわからないと思いますが、要は、後始末をつけるべきであるということです。ここら辺の理屈の議論をするのは大変難しくて、口頭でいきなり十何人を前にして理解させるということは難しいので、時間をかけてペーパーをつくって、できれば次回に説明をしたいということがあります。まずはリサイクルすべきという立場を明らかにしたということでございます。

それから、この純損益の議論というのは、独立的に今回は時間をとって議論をしているのですけれども、ディスカッションペーパーで書かれるチャプターは、表示と開示のところに書くということを予定されているということがございます。それはそうではなくて、構成要素のチャプターで定義すべきであるということを言っております。ブリッジングアイテムとかミスマッチド・リメジャメントというのはわかりづらかったと思いますし、私自身もわかっているわけではありません。全部ブリッジングアイテムに見えますので、両方ともリサイクルするのであれば、1つでいいのではないか。基本的にリサイクルされるというのが残っていけばいいので、1つにこだわるところではありませんけれども、必ずしもこの2つはわかりやすい概念ではない。特にミスマッチド・リメジャメントのあたりはそう感じでおります。

それから、資本性金融商品について、IFRS9のところでは、OCIオプションというのがありまして、これはノンリサイクルで売却時までOCIのままですけれども、これについて先ほど8ページの表のところでは、ブリッジングアイテムにもミスマッチド・リメジャメントにも当てはまらないというスタンスを彼らはとっておりますので、これについてはブリッジングアイテムに該当すると考えるという発言をしております。この表というのは、どういう趣旨で丸、バツ、ハテナがついているかわかりませんけれども、現状維持をしようとしているのか、あるいは何らかの思いがあるのか、いずれにしろここの判断について大分相違があると言えるかと思います。

次が測定でございまして、11ページをごらんいただけますでしょうか。端的に言うと、公正価値で測定するか原価で測定するかということでございまして、この点について、現在の概念フレームワークでは、いつどういうときということについては何も決めていません。その点、我が国からだけでなく、各国から考え方を明確にすべきという意見が多く、これに取り組もうとしております。

ここでも3つの原則を提案しておりまして、2つ目の原則が重要だと思っておりまして、測定は財政状態計算書の項目から始まるが、その情報がどのように包括利益計算書に影響を及ぼすかも注意すべきであるということをいっておりまして、具体的に個々の項目を公正価値とするか原価とするかについて、資産の価値がどのように実現されるかというようなことを保有のケース、売却のケース、使用のケースなどについて分析しております。

これまでのIASBの議論では、BSの金額が先に公正価値と決まるということになると、それがそのまま利益となるというような基準書も見られたわけですけれども、今回この点が、概念フレームワークの中でどういうふうになっていくかというのがポイントだと思っております。

ASBJの発言につきましては12ページにあるわけですけれども、この原則2のところと、それから包括利益のところにも原則2があって、この両方を関連づけるべきであると。2つの測定基礎があり得て、それがBSとPLで違うことがあり得るというところまでいけば、かなりOCIというのが認知されるし、さらにリサイクルにもなっていくということがありますので、この関連づけが重要だというふうに思っておるところでございます。

大体時間もきておりますので、あとは簡単にお話しさせていただきます。資産、負債の定義のあたりにつきましては、若干紆余曲折はあったのですけれども、この段階では、それなりに改善されていると思います。ただ、若干の懸念事項として、認識のところでprobableを削除するということがあります。probableを認識全体にかけることが難しいというのは理解しますけれども、その一方で、また何でもかんでも期待値というような話になってもいけませんので、その懸念を申し上げてきたということであります。また、自己創設のれんの計上に関しては認めないということで世界的に一致していますけれども、それをコストベネフィットの観点から説明しているのですけれども、本来第一義的には、財務報告の目的に照らして計上を認めないと。企業価値評価は投資家が行うのであって、自己創設のれんを計上するという行為自体が、経営者が役割を超えて企業価値評価をやっていることになるという発言をしてきております。

あとは第3章に、質的な特性というのがありまして、この質的特性とか目的というのは、今回は基本的には触らない部分ではありますけれども、慎重性、保守主義、prudenceについて、2010年の改正で削除しているとともに、削除理由がよろしくないという意見が出てきておりまして、それに関しては日本も同調する立場です。結論の背景で説明していることを変えるべきではないかということを言ってきております。

以上で、概念フレームワークについては説明を終わりたいと思いますけれども、もし何かご質問があればお答えしたいと思います。

もう一つ、2時間かけた金融資産の減損については、一言だけ触れさせていただきますと、この問題は金融機関における貸倒引当金の計上方法の問題ということで考えていただければいいかと思いますけれども、最終段階でIASBとFASBが異なるモデルを提案するという形、最後に泣き別れになったという方向性が今出ているわけです。今回のASAFのところでは、IASBとFASBの双方がそれぞれ提案するモデルを説明して、メンバーがそれぞれについて意見を述べたということでございます。内容には触れませんが、両方とも改善の余地があるのではないかということで申し上げてきたところでございます。

大体以上が第1回のASAFの模様でございます。非常に世界中からの関心が強いなということが感じられました。今後ともASAFの場でしっかりと我が国の立場について発言するということが、我が国の影響力を強めていくために重要であると考えた次第でございます。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ただいまの西川委員からのご報告につきまして、ご質問、ご意見を伺ってまいりたいと思います。ご質問等のある方は挙手をお願いいたします。

鈴木委員、お願いいたします。

○鈴木委員

ご説明ありがとうございます。質問が一つあります。これまでこの場も含めまして、私自身が疑問に思っていた利益などについて、今回かなり前向きに議論がなされるように感じます。いろいろな意見が出されてきたのを踏まえて、IASBがそういうものをきちっと取り上げていこうという意味では、かなり改革といいますか、方向性が前向きに進むというような理解でとらえてよいのでしょうか。それとも、まだ行方はわからないということなのか、この辺はどんな感じでしょうか。

○安藤会長

西川委員、お願いします。

○西川委員

まず、このASAF自体はアドバイザリー・フォーラムでございますので、何か決定するということではなくて、ボードに対して影響力を与えるということが考えられるわけです。ボードに対して影響力を与えるためには、一番いいのは12人のメンバーが同じことを言えば、それは相当影響力があるというふうに思えるわけですけれども、必ずしもそうはならないだろうということがございます。例えば、OCIリサイクルについて、きちんと概念フレームワークの中で位置づけようということを、IASB議長はじめ、この段階では皆思っているわけです。

そして、相当議論がなされていくと思うわけですけれども、一方で、例えば2つの測定値があるということを認めたとしても、金融商品の会計基準で言えば、償却原価とフェアバリューという2つを認めたとしても、BSとPLを違える必要はないと考えている人たちも多いので、そういう考え方から、OCIそのものが出てこないと。OCIが出てくる場を空振りにすべきと考えている人たちもいますし、仮にOCIが出たとしても、前のIASBの考え方にあったような、収益、費用というのは一度だけ発生するのだから、リサイクルは発生しないという考え方の国もあります。それはASAFの中ですけれども、ボードの中はさらに個人になりますので、どういう考え方が有力かというのは、必ずしもこの段階では明確にわかっていません。ただ、この段階では、きちんと議論しようというスタンスがあるということが、前進だと思っております。

○安藤会長

よろしいでしょうか。ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。辻山委員、お願いします。

○辻山委員

それでは、時間が多少あるようですのでご質問させていただきます。本日の西川委員のご報告、大きく2つあると思うのですけれども、1つは、ASAFの第1回会合以降は、これまでのIASBの世界の会計基準設定主体に対する対応は2004年に明確にFASBだけをカウンターパートにするという宣言をして、ここまでFASBだけとMoUというものを進めてきたのに対し、今回それが大きく変わり、FASBはワン・オブ・ゼムになってASAFがそれに代わったということ。バイラテラルなもの、その中でもFASBがIASBに対する主たるカウンターパートとしてのプレイヤーだったのが、明確にIASBのとらえ方がマルチラテラルに変わったということ。これをどういうふうにとらえるのかということについて、西川委員のお考えをちょっと聞かせていただきたいのが1点。

もう1点よろしいでしょうか。

○安藤会長

はい、どうぞ。

○辻山委員

もう一つは、概念フレームワークの問題です。純利益とかいろいろなものが真剣に取り上げられるようになったということですけれども、実は私、2001年から2008年までIASBのSACという、Standards Advisory Council、名前はちょっと似ているのですけれども、そこに出席しておりまして、今日今日のお話を伺って、まさに2001年の議論そのままだなという印象を持ちました。2001年の段階で、ご存じのようにコンバージェンスプロジェクト4つがスタートしまして、そのときには、その中に業績報告プロジェクトというのが入っておりました。PLのフォームを世界で統一するということで、直ちに業績とは何かという議論が始まりまして、純利益とは何か、全く同じ議論が13年後に再スタートしたのかということですね。

この間を振り返りますと、例えば今日、時々先ほどのご報告の中に出てまいりましたように、負債の問題、金融商品の時価評価益をめぐっては、一時はリーマンの後の金融機関で時価評価益がそのまま5,000億利益に算入されたということがありました。それがアメリカでも今、見直しが進んでいる状況です。IASB、IFRSのほうでも一時同様の基準があって、それが負債の時価評価益算入が認められるのは資産との対応関係があるものに限定されるような修正が行われた。それを振り返りますと、何か驚くような会計基準が出てきて、それがいろいろな紆余曲折を経て、適切と言うのかどうかわかりませんけれども、ともかく市場の直感に合うように改良されている。そういうことがこの13年間繰り返されてきているというのが、私の印象です。

そうしますと、どこかできちっと総括をしないと、あの負債の時価評価益を全額利益算入していたという考えがどこからきて、それはなぜいけなかったのかという、そこからスタートしないと、一つ一つのものが、ああ、よかった、もとに戻った、あるいはそこだけ認めてもらったということが、延々これから続いていくのかなという、ちょっとそういう危惧を持ちました。

そういう中で、今日驚いたことなのですけれども、概念フレームワークの時間軸ですね。これは2004年から概念フレームワークの見直しの共同プロジェクトが始まっておりまして、そして2010年に中断した。6年間かかって、目的と質的特性だけ纏まったのですね。そして最も難題である認識と測定については、とりあえず先送りされていた。それが今回始まって、今年の7月ですか、ディスカッションペーパーが出て、そして最終基準にいくというこの時間軸が、果たして現実的なのか。世界で受け入れられるものになっていくのか。これが非常に懸念されるところです。

質問としては2点で、1点目はマルチラテラルになったということをどういうふうに理解したらいいのか。2番目は、いろいろ申し上げましたけれども、そういう総括のない中で時間軸だけが、野心的というご指摘がありましたけれども、設定されて、さらなる混乱にならないのかどうかですね。その辺の感触といいますか、感想をまずはお聞きしたいと思います。

○安藤会長

西川委員、お答えをお願いいたします。

○西川委員

マルチラテラルな関係に関してどういう理解をしているかということですけれども、今回の話として一番感じられることは、一番善意に解釈していきますと、各国の会計基準設定主体というのは、それぞれの国、あるいは地域の市場関係者の意見を一番よく聞いていて、会計基準などをめぐる問題の所在についての情報を一番持っている人たちであり、または常にそういう問題についての解決法を考えているという組織であるから、そこのメンバーを集めてインプットを得るということは、非常に大きな意味があるというふうに解釈したと。そういうことを考えて、この組織を立ち上げたということであれば、我々としてはぜひそこに乗っていくべきであるということになるのではないかと思っております。

ただ一方で、あくまでもアドバイザリー・フォーラムですから、ボードに影響力を与えるということのために、ただ言ってくればそれが受け入れられるかというとそうはならないと思いますので、どういうふうにしたら受け入れられるのかと。意見が分かれているときにどうすればいいかというのは、常に考えていかなければならないだろうと。

その一方で、ASBJも公式的にIASBと定期協議を1年に2回行なってきたわけですけれども、これはFASBとIASBの共同ボードでの議論がMoUの終了とともに終わるという中では、公式的に続けることはできないというようなことがあって、今年の5月に東京での会議が最終回となると考えているわけです。マルチラテラルになったときに、自分の声が、今回でいうと12分の1になるわけですけれども、そのことはやはり避けられないわけで、1人で言えていたものが12分の1になるということのマイナスを補うということを考えていかないといけないということがございます。公式的な関係はともかく、非公式にIASBに対して、ASBJとしてはいろいろなレベルで直接的に意見発信をしていくことが必要だろうと考えているところでございます。

次に、総括がないままに同じような議論を繰り返しているのではないかと。それから、時間軸的にかなり無理があるのではないかということかと思いますけれども、我々としてもこれが相当程度かなりきつい日程であるということは理解しておりまして、トゥイーディーさんが2011年6月までにMoUを全部終わらせると言ったのと、どっちが野心的かという感じがしないでもなくて、あちらはその後2年たってもまだ終わっていないわけですけれども。ただ、議論を始める段階からこれは無理だよということを口に出して言っていくべきかどうかとなると、やはり同じ設定主体としてはジェントルマン的な対応もしないといけないので、これはこの段階では言っておりませんし、まだまだそれを言う段階ではないのではないかと思っています。

総括がなくて、その場その場でよかったねというような話になるのではないかというご指摘ですけれども、今回の概念フレームワークプロジェクトは、概念フレームワークが個々の基準を決めるわけではないものの、個々の基準の例も取り上げて、それを見ながら議論を進めていくということがありますし、現にOCIが基準に存在しているということはやはり大きいわけで、ハンス・フーガーホーストさんも、今おっしゃったような負債の時価評価益がおかしいという、そういう立場は明確です。そういった実際の会計処理というのを見ながら議論していく中で、我々がこれからASAFのアジェンダペーパーをつくる可能性もあるわけで、基準の議論のことも取り上げると思っています。そういう中で過去のIASBの議論の中で結局こうなったというようなことも、可能であれば取り上げていくことになると思います。それは、IASBに反省しろとかそういう話でもなく、結局こうなったでしょうという形で示していければいいのかと思っております。

○安藤会長

ありがとうございました。辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

ありがとうございます。ジェントルマン的にというのは非常に理解できますし、ぜひそういう国際的な場で西川委員長にご尽力いただきたいと思いますが、少し個別のことで。

実はトゥイーディーさんが、たしか2001年だったと記憶していますけれども、来日されたときに、その2001年の段階で、既に純利益を自分は熱烈に支持する、自分は純利益支持派なのだということを発言されておりました。これはどこかの講演録で残っているかもしれないのですけれども。その一方で、OCIのリサイクルには断固として反対だと。そうすると、その場合の純利益って何でしょうか、OCIのノンリサイクルがあるところの純利益とは何でしょうかということになりました。

ですから、概念フレームワークを議論する場合には、かなり慎重に議論しなければいけない。それがどういう影響が出るのかということが非常に懸念されるわけですけれども、過去の経験から申しますと、得てして概念フレームワークをめぐる議論には、例えば個別基準ですと、保険であるとかリースであるとか、あるいは個別基準ですといろいろな意見がストレートに出てまいりまして、実務からの意見が吸い上げられますけれども、概念フレームワークはあまりそういった反応が出てこない。先ほどのSACなんかでも概念フレームワークの議論になると少しトーンダウンして、提案がそのまま通っていくという印象があります。

ですから、基準委員会がそこで非常に重要な役割を果たせると思いますので、ぜひこれもご尽力いただきたいと言うしかないのですけれども、概念フレームワークの議論は、それ自体では利害が絡まないことであるだけに、非常に慎重な対応が望まれるというふうに常々思っておりますので、重ねてよろしくお願いしたいと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。よろしいでしょうか、西川委員。何か特にご反論ございますか。

○西川委員

トゥイーディー議長が当期純利益を支持する一方で、OCIリサイクルについては全然考えていなかったというのは、トゥイーディー議長が特別なわけではなくて、やはりイギリスとか、英国圏の人がわりとそういう考え方が多いということがあります。OCIが明確に入ったからそれでいいということにはならないので、そこはリサイクルまで入れないといけないという、そういうことを主張していくということになろうと思っています。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかに。小宮山委員、どうぞ。

○小宮山委員

ご指名ありがとうございます。今の辻山委員のご質問とちょっと関係しているのですけれども、11ページの測定方法の議論がありますね。資産の価値がどのように実現されるかとか、債務がどのように充足または決済されるか。多分このまま進めると、何でも時価、時価という議論は大分減りますよね。特に日本の企業の場合、時価評価が困るみたいな議論をしているので。ただこの予定を見ると、7月にディスカッションペーパーを出すという流れになっていて、その間、多分議論する時間というのはないのでしょうから、両論併記みたいなDPが出てくるのか、結論が見えるような、そういうことが多いわけですが、DPが出てくるかはよくわからないのですが。

そうすると、この場でどういう雰囲気であったのかというのですかね、資料にも紹介してあるのですが、全体の雰囲気がちょっとわからないので、西川さんが受けた感触だけで結構なのですが、そのイメージを少し具体的に。みんなとんでもないという話だったのか、これいいねという話だったのか、そういう感触をちょっと教えていただけるとありがたいのですが。

○安藤会長

西川委員、よろしくお願いします。

○西川委員

はい。おっしゃるように、例えば11ページに、使用ということを通じて価値が実現するということがありますように、これだと原価かなという感じがするわけで、こういった考え方がずっと残っていけばいいわけですけれども、ASAFはディスカッションペーパーまでは議論する場がないということがあって、ちょうど我々が議論したときが、わりと理解しやすくなっていて、またもとに戻るということも考えられないわけではないので、そこを注意深く見ていかないといけないと思います。また、5月に定期協議もあるので、そこで相当インプットしないといけないという感じはしています。

さっきもちょっと申し上げましたように、同床異夢みたいなところがありますので、どこまでOCIリサイクルということに理解があるのか。一番極端なのは、OCIリサイクルは認めるけれども、基準作りにおいては空振り規定にさせるといった意見をお持ちの人もいるみたいなので、どこまでいってもなかなか安心できるということありませんが。我々としてできることは、知恵を絞って理屈で説明していくということしか言えなくて、この段階で大分よくなったからいいねとか、そういう感じでは全くないと思っております。

○安藤会長

よろしいでしょうか。ほかにお一方ぐらい。関根委員、お願いします。

○関根委員

ありがとうございます。ご説明をお聞きしていまして、会議の雰囲気と、かなり難しい会議だということ、西川委員の苦労がよくわかりましたけれども、1つだけ私のほうからも確認させて下さい。議長はフーガーホースト議長が務められていまして、そのほか、副議長の方、それからIASBの理事の方も参加されていますが、この方たちというのは、この会議ではどういった役割をされているのでしょうか。各設定主体の代表がまずは話されるのかと思うのですけれども、そのあたりの雰囲気も少し教えていただければと思います。

○安藤会長

西川委員、お願いします。

○西川委員

想定されているのは、議長、副議長がずっと参加し、それからテーマごとにボードメンバーの中でボードアドバイザーが決まっておりまして、その人たちが参加するという形になっていると思います。基本的には彼らは聞き役で、確認のための発言とか、あまり自分の意見をここで押し出したボードメンバーはいませんでした。その中で司会以外に一番発言していたのはハンス・フーガーホースト議長かと思っております。

○安藤会長

ありがとうございました。

これは報告事項でございますので、いろいろご質問等あるかもしれませんけれども、その次の議題のほうが審議事項という雰囲気でございますので、そちらへ移らせていただきます。

それでは、次でございますが、前回会合におけるご意見等を踏まえて、国際会計基準への対応について当面検討すべき課題について、事務局において整理していただきましたので、事務局より説明をお願いします。

○栗田企業開示課長

それでは、資料2「国際会計基準への対応について当面検討すべき課題」というものをごらんいただきたいと存じます。

表紙をめくっていただきまして、まず国際会計基準に関する内外の現状ということでございまして、この辺の話は大方既にご説明済みのことではありますけれども、もう一度簡単にご説明をさせていただきます。

まず初めに、日本は単一で高品質な国際基準を策定するという2008年のワシントンサミットにおける首脳宣言にコミットしているということで、日本の会計基準はこれまでのコンバージェンスの結果、高品質かつ国際的に遜色のないものになっており、同等性評価も受けているということではありますけれども、さりとてIFRSの内容すべてについて満足しているということではなくて、2011年のアジェンダ・コンサルテーションに際しましては、日本の意見として、そこに書いてありますようなリサイクリングの必要性等について意見を出しているということでございます。

さらに、これは前回のご議論でもありましたけれども、IFRSの任意適用会社については、現在適用済みの会社、それから適用予定を公式に発表されている会社をあわせると、下の17社になると承知しておりますけれども、前回日本経済団体連合会の事務局の推計ということで、適用を検討している企業を入れると、大体60社ぐらいにはなるのではないかという話がございました。

それから、めくっていただきまして海外でございますが、まず米国につきましては、昨年7月にSECの最終スタッフ報告が出されております。その内容につきましては、そこの下のほうに書いてございますけれども、IASBが公表したIFRSを米国でそのまま取り込む方向は、多くの米国資本市場関係者から支持されなかった、さらに、IASBが公表したIFRSを米国でそのまま適用する方法への支持は少ないものの、単一の高品質でグローバルな会計基準という目的に、米国がコミットしていることを示すことができる別のIFRS取り込み方法を検討することには、潜在的に多くの支持が得られると考えられるということになっておりまして、かなり抽象的な表現で、具体的な方向性を示すものにはなっておりません。

さらに将来的なスケジュールというようなものも示されなかったということでございまして、米国につきましては、この後特段の動きは、今のところ出ていないという状況でございます。

片やIASB等では、今、お話のありましたASAFが設置されたということ。さらにIFRS財団のモニタリング・ボードが3月1日にプレスリリースを公表しておりまして、モニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの使用」について明確化したということがございます。その定義についてはそこに書いてあるとおりで、これも前回ご説明を差し上げたとおりでございますけれども、このメンバー要件を使用して、本年から既存メンバーの評価及び新規メンバーの選定を開始し、既存メンバーの定期的な見直しは3年ごとに行うということにされておりますので、今年メンバー評価を行うと、次は2016年に見直しが行われるということでございます。

それから、めくっていただきまして、5ページ目はIFRS財団の組織図でございますので省略させていただきまして、6ページ目でございます。昨年7月の中間的論点整理において、今後検討すべき課題というふうに書かれていた事項について、抜粋したものでございます。幾つかございますけれども、まず任意適用に関しましては、現行制度の下でIFRS適用の実例を積み上げるとともに、その中でどのような点が具体的にメリット・デメリットとなるのかを十分に把握し、それに対応するための取組みを検討・実行していくべきであると考えられる。単体の取扱いにつきましては、単体開示のあり方については、会社法の開示をも活用して、企業負担の軽減に向け、どのような対応が可能かに関して検討を行うことが適当である。原則主義への対応につきましては、各会計関係者における実務的な取組みについて、各関係者間において適切な連携を行いつつ、任意適用企業において新たに把握される問題点を含め、検討を深めていくことが必要であると考えられるとされております。

さらにめくっていただきまして、国際会計基準の適用に関しましては、我が国におけるIFRS適用のあり方についての議論を深めるためには、まずIFRSのどの基準・考え方が我が国にとって受け入れ可能であり、どの基準・考え方が難しいかを整備することが必要である。このことは、国際的に我が国の立場を明らかにすることにも資するものである。この点については、アジェンダ・コンサルテーションへの我が国の意見発信で示された内容や、それに対するIASBの対応を踏まえて、さらに実務的に検討を進め、今後の審議会の検討に際してそれを参考にしていくことが重要であると考えられるとされております。

それからもう1点、IFRSの適用に関しては、投資する際の利便等を踏まえ、市場開設者において、IFRSを適用する市場と日本基準を適用する市場とを区別することについて検討してほしいとの要望が聞かれたということでございます。

それから、次のページは、前回の本審議会において、委員の方々からいただきましたご意見を、適宜まとめさせていただいたところでございます。まず任意適用に関しましては、IFRSの任意適用に関して、企業の経営実態を踏まえた制度上の改善を図りつつ、自然体で適用会社が増加していくことが肝要であるというご意見、IFRSの任意適用を指向する企業が、より機動的・効率的にIFRSを適用できるような手当を行うことが妥当ではないかというご意見がございました。また、日本基準のコンバージェンスだけでは不十分であり、IFRSへの移行を促進する仕組みが必要というご意見もございました。さらにちょっと飛ばしていただきまして、今後も現行の枠組みが維持されることの明確化が必要、IFRSの任意適用要件に緩和の余地はないか、あるいは、我が国の企業会計制度の枠組みの方向性を明確化するタイミングにきているのではないかというご意見をいただいております。

それから、次のページは、当審議会でのご意見ではございませんけれども、IFRSの任意適用に関しましては、金融庁に対して直接に企業のほうからご意見をいただいているところでございます。具体的には、上場と同時にIPOを目指す企業において、IPOの際に必要となる財務諸表をIFRSに基づいて作成することを認めてほしいということでございまして、これは下にありますIFRS任意適用要件のイにあります、「上場されていること」という要件を不要にするということだと考えられます。それから、その下、海外に子会社がない企業についても、IFRSの使用を認めてほしいということでございます。これは下にあります任意適用要件のニに関して、これを緩和、あるいは削除するということだというふうに考えておりますが、そういう意見が寄せられております。

それから、審議会のご意見に戻っていただきまして、10ページでございますが、開示負担・単体の取扱いに関しましては、開示負担に関しては明らかにIFRSが過大な負荷となっている、日本基準を適用している企業であっても開示負担が大きく、見直す時期にきているのではないか、単体開示の廃止・抜本的簡素化が必要というご意見をいただいております。

それから、国際会計基準の適用等に関しましては、IFRSにはマネジメントの考え方としても受け入れ難い基準があることも事実、最終的に日本として受け入れ困難となるIFRSについては、日本国内での取り扱いプロセスを明確化していく必要がある、運用・解釈が困難な事例が積み重なった場合は、日本国内においてタイムリーにガイダンスの作成を行うことや、実務を共有する仕組みの充実が必要というご意見をいただいております。

以上のようなこれまでの経緯、現状、それから当審議会でのご意見等を踏まえまして、今後の検討についてということで、マル1マル2にまとめさせていただいております。マル1は、どちらかというと総論的な部分でございまして、マル2のほうが各論的な部分だと考えております。

まずマル1のほうでございますけれども、2008年のワシントンサミットの首脳宣言における単一で高品質な国際基準を策定するという目標がグローバルに実現されていくことは、世界経済の効率化・活性化を図る観点からも有効であり、我が国もこれに協力していくことが重要なのではないか。引き続き会計基準の国際的な調和に向けた努力は継続する必要があり、日本基準を高品質化するような会計基準の変更については前向きに対応することが適当ではないか。

国際的には、日本のIFRSに対する立場や方針が不明確であるという指摘もある。IFRS策定への日本の発言権を確保するため、IFRS財団モニタリング・ボードのメンバー要件である「IFRSの使用」を勘案しながら、IFRSへの対応の方向性をより明確にすることを検討すべきではないか。その際、現在のIFRSの内容については、基本的考え方として受け入れ難い項目や、日本の経営、事業活動の実態にそぐわず、また導入コストが過大であると考えられる項目が存在し、また開発中の項目も存在することを念頭に置く必要があるのではないか。また、米国の動向など、国際情勢に不確実性が存在することを十分に勘案する必要があるのではないか。

さらに、我が国の各企業において、IFRSの適用を検討する前提を明確にするためにも、企業の予見可能性を高め、IFRSへの対応の方向性をより明確にすることを検討すべきではないか。ただ、各企業においては、資金調達手段や事業展開の範囲等により、IFRS導入のメリットとコストのバランスは区々であることを考慮する必要があるのではないか。

そういうことを踏まえまして、中間的論点整理において検討すべき課題とされている事項を中心に、日本の当面の対応の方向性について検討すべきではないかというふうに考えております。

それでは、具体的にどういう点が当面検討の課題となってくるかということでございますけれども、13ページ以下でございますが、IFRS適用の具体的なメリット・デメリットに関する議論を深めていくためには、まずはIFRS任意適用企業の積み上げを図ることが必要ではないか。このような観点から、任意適用要件の緩和などについてどのように考えるか。

原則主義のもとで、IFRSの任意適用に際しての実務的な不確実性に対応するために、具体的にどのような方策を講ずることが適当か。引き続きIFRSに関し、我が国が的確に意見発信していく観点から、例えばサテライトオフィスを有効活用するための方策等についてどう考えるか。

ピュアなIFRSを念頭に置いている現行の指定国際会計基準のほかに、我が国においても個別基準を一つ一つ検討して採択するプロセスを設ける必要があるのではないか。我が国が考える「あるべきIFRS」あるいは「わが国に適したIFRS」といった観点から、IFRSの個別基準について、その適用の是非を具体的に検討する必要があるのではないか。

単体開示のあり方については、中間的論点整理を踏まえ、企業負担の軽減に向け、どのような対応が可能か。会社法の開示の活用や、連結財務諸表(注記を含む)から必要な情報を入手できるような場合に、単体開示を求めないこととするといった方向性についてどう考えるか。

以上のほか、市場開設者における対応を含め、IFRSの適用に関して当面検討すべき事項は何かということでございまして、この審議会で、まずはこういう検討課題の設定がいいのかどうか、あるいはその検討課題についてどういう方向で考えるべきかということについて、ご議論を賜ればと考えております。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。ただいまの事務局からの説明につきまして、ご質問、ご意見等を伺ってまいりたいと存じます。ご質問等のある方は挙手をお願いいたします。

水口委員、お願いします。

○水口委員

どうもありがとうございます。総論のところで、中間的論点整理において検討すべき課題とされている事項を中心に、日本の我が国の当面の対応の方向性について検討すべきというのはおおむね妥当だと考えております。具体的な今後の検討について2に関して、2つほど意見を述べさせていただきたいと思います。

第1点目として、事務局にお示しいただいたIFRS任意適用要件の中には、指定国際会計基準に関する十分な知識を有する役員または使用人を置くこととか、当該基準に基づいて、連結財務諸表を適正に作成できる体制の整備など、必須だと思われるものもあると思います。一方で、例えば、外国に資本が20億以上の連結子会社を有していることなどを当該要件から外したとしても、財務諸表の質などの観点から支障をきたすものではないものもあると思います。当該要件を緩和することで、IFRSの任意適用を指向する会社の機動性の向上につなげることは、大いに考察に値するのではないかと思います。

第2点目の意見ですが、開示のあり方について、財務諸表ユーザーにとって単体開示は連結開示と同様に重要であると考えておりまして、十分に慎重な検討をすることが妥当であると考えます。例えばですけれども、格付会社の分析対象とする債券を発行する会社が約定どおりの支払いにつながるキャッシュフローを創出できるか否かの分析をする際に単体開示を活用しておりまして、これを分析の一貫と位置づけております。もちろん連結データによって企業グループの財務状況を判断したり、グループ内でのキャッシュフロー管理の状況なども分析対象といたしておりますが、連結、単体情報の両方を分析上活用しているという状況です。

こうした財務諸表ユーザーの視点を踏まえ、単体開示にかかわる企業負担の軽減の可能性について、財務諸表ユーザーが重要と考える単体開示項目などについてしっかり議論することが妥当であろうと考えます。

○安藤会長

ありがとうございました。ご意見でよろしいですか。

では、山崎委員、次にお願いします。

○山崎委員

今後の検討についての2の最初に、任意適用要件の緩和ということで、任意適用を広めていくという考え方が出されておりますけれども、これは非常に重要なことだと思います。既にIFRSを適用している会社が得たいろいろなノウハウ、知見を産業界で共有していただくことは非常に有効であると考えております。日本公認会計士協会としても、そのような取り組みには賛意を表したいと思います。

監査法人の対応というのがいろいろ懸念があるかもしれませんけれども、各監査法人では、監査人として十分に対応可能なように準備を鋭意進めているところでございます。まだ完成品というようなことではございません。IFRSに対応した体制の構築に取り組み、さらなる強化に努めているところでございます。公認会計士協会も、それを大きく支援していくということでございます。

協会の対応としましては、IFRSの各論点、先ほど示された論点も含めて、こういうような論点も検討するためのチーム、委員会も設置しております。このような状況の中で、IFRSを適用した実務事例というのが増えれば、監査人側も知見が蓄積されて、より円滑な業務に資することになると思います。

当日本公認会計士協会としましては、大手の監査法人ばかりではなくて、中堅、中小規模の監査法人、監査人に対しても、IFRSが十分適用できるように強力に施策を実施していくこととしているという決意表明のようなものでございます。ありがとうございます。

○安藤会長

ありがとうございました。手を挙げておられました順番にご指名いたします。佐藤委員、お願いいたします。

○佐藤委員

多少長くなりますが、2点ご意見を申し上げたいと思います。第1点目は、前回も申し上げましたが、IFRSのあり方を考えるときに、まず我が国の会計制度のグランドデザインをどうするのかという論点を念頭に置く必要があると思います。これまでの議論でおおむねコンセンサスができつつあると思っておりますが、まず基本は、企業に選択の自由を与えること。そして、任意適用を前提としたIFRSと米国基準の選択適用を認め、かつ是々非々のコンバージェンスを前提とした日本基準を堅持すること。

次に連単分離の問題。すなわち、連結IFRS及び連結米国基準に対して、単体は日本基準を選択するという組み合わせを容認すること。以上のような点を確認した上で、IFRSについて現行の指定国際会計基準を我が国としてどう考えるかということだと思います。

栗田課長よりご説明のありました13ページの資料で、「現行の指定国際会計基準のほかに、我が国においても個別基準を一つ一つ検討して採択するプロセスを設ける」及び「我が国が考える、あるべきIFRS、あるいは我が国に適したIFRS」という点に関しましては、確かに現行の指定国際会計基準に基づく任意適用の運用は、エンドースメントプロセスを踏まないフルアドプションでありますので、リスク含みと言えると思います。現行の基準や、将来開発される基準で、我が国の国益上受け入れ難い基準につきましては、リスク回避対策を講じておく必要があると考えます。これまでのIASBによる基準開発の状況を見ても、我が国の意見が必ずしも反映されるとは限らず、結果的に作成者サイドに負担がかかったり、場合によっては社会的コストが増加したり、さらには企業経営にも影響を与えることも想定されます。

先ほど西川委員長のほうから、概念フレームワークのお話もございましたが、どうしても受け入れ難い基準というのは、由って来る会計思想とか社会慣行や法制度の違い等からくる要因もございます。どうしても差異が出ることは想定されます。こうしたことから、我が国としてもエンドースメントプロセスを入れて、一部の基準をカーブアウトしたIFRSの任意適用を容認する制度を保持しておくということは、意味のある指向だと思います。

ただその時は、現行のピュアIFRSと、一部カーブアウトしたIFRSが併存するということになりますので、国際的にこれをどう説明するのかという新たな課題が発生することになります。また国内的にも、比較可能性の観点から議論を呼ぶところだと思います。とりわけ国際的説明に関してどう対処されるつもりなのか?、現時点での心づもりをお聞かせ願えればと思います。

それから2点目は、単体開示のあり方についてでありますが、これは「金商法における単体開示の有用性の評価の問題」と、「金商法上の開示と会社法上の開示の二重開示の解消の問題」という2つの論点があると思っています。

まず「単体開示の有用性」に関しましては、例えば持株会社の普及や、グローバル化に伴う連単倍率の上昇等を勘案した場合、単体財務諸表の経営上の位置づけや意味合いは大きく低下してきております。売上高の連単倍率につきましては、日本の上場企業の75%が2000年前後から急激に拡大しているというデータが出ております。また、機関投資家やアナリスト、マスコミ等に対するIRの現場でも、全くと言って良い程、単体への関心はなくなってきているというのも現実であります。さらに昨今の欧米の「開示フレームワークに関するディスカッションペーパー」の中でも、情報開示量の削減が提唱されており、これが世界の潮流になってきていると認識しております。

2010年3月19日に日本アナリスト協会から公表されました「個別財務諸表の開示に関するレポート」の中で、単体開示の要求が出ておりますが、IR等に関する現場感覚との乖離が余りにも大きいと感じております。稀にしか使わないデータを、一律的に全企業に負担させてまで開示する必要があるのか、改めて「情報活用」という視点から、また投資家の真のニーズも含めて、検証を望むところであります。ちなみに今年の1~2月にかけて、一橋大学の加賀谷准教授の研究室で実態調査したデータによりますと、上場企業の264社のうち約80%が、単体開示の廃止ないしは縮小を期待しているという結果が出ております。

次に、「二重開示の解消」という論点に関しましては、テクニカルには様式、注記事項、附属明細表等で開示内容に差異があったり、作成のタイミングが違ったりしている等で、相応の企業負担が発生しており、コストとベネフィットのバランスがとれていないというのが実態であります。作成者側としては、決算の過密スケジュールの中で、前向きな作業としてとらえ難く、ある意味「規制緩和による開示量の削減」という視点からも、単体開示の抜本的な統合、簡素化を実現していただきたいと切に願う次第であります。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。それでは、岡田委員、手を挙げておられました。

○岡田委員

本日から参加させていただきます岡田と申します。よろしくお願いします。

2点ほど意見を申し上げます。まず1点目は先ほどから話が出ております任意適用の積み上げのための要件緩和、単体の開示の簡素化ということでございますが、やはり任意適用の積み上げは日本が今まで持っていたIFRSに対する影響力を維持・向上するためにもぜひ必要ですので、これに結びつくのであればぜひ推進をお願いしたいと思います。さらに、例えば有価証券報告書作成負担のさらなる負担の軽減など、より踏み込んだ措置を講じることをご検討いただければありがたいと考えております。

それから2点目ですが、先ほど話に出ておりましたけれども、ピュアなIFRSを念頭に置いた指定国際会計基準のほかに、我が国においても個別基準を一つ一つエンドースしていくということですが、これは日本基準、米基準、ピュアなIFRSいわゆる指定国際会計基準に加え、カーブアウトされたIFRSがあることになると理解しましたが、それはよろしいですか。

○安藤会長

ご発言、続けてください。

○岡田委員

4つ基準ができるということであるとすると、海外から見て、日本の資本市場は非常にわかり難い資本市場であると思われてしまうのではないかと大変危惧をしております。先ほど、国際的にどう説明するのかというお話がありましたけれども、当面この4つの基準を併存させるということはやむを得ないとしても、中長期的にこの4つの基準を収斂するのか、何らかのロードマップをつくらないと企業側もどの基準を採用して、どういう方向性でいけばいいのか、ということが大変わかりにくいのではないかと思います。方向性を示すロードマップを作成いただけたらと思います。

○安藤会長

先ほどの佐藤委員のご質問もございましたので、今の岡田委員の後のほうのご質問ですね。事務局から答えていただきます。

○栗田企業開示課長

この論点に出ております個別基準を一つ一つ検討して採択するプロセスを設けると、その結果としては、エンドースメントしたIFRSというものができるということになるわけでございまして、そうすれば、ピュアなIFRS、エンドースメントされたIFRS、日本基準、米国基準という4つの基準が一時的に並び立つことになるのはご指摘のとおりだと思います。

4つの基準というのはわかりにくいのではないかというご指摘があるのは事実だと思いますけれども、我々として考えておりますのは、4つの基準のうち、既に日本基準も、先ほど少しご説明いたしましたけれども、IFRSと同等性評価を受けるぐらい、IFRSとそんなに大きく差があるものではないということでございます。新たにエンドースメントしたIFRSを導入するということになれば、それはもっとIFRSに近いものになるであろうというふうに考えられますので、ピュアなIFRS、日本基準、このエンドースメントしたIFRSというのは、確かに全く同じではないですけれども、かなり似ているものになってくるということでございます。そういう意味では、米国基準を入れて4つといっても、ばらばらな全く違うものが4つということではないと考えております。

それから、これはアナリスト等の方から見た場合にということになると思いますけれども、現在でも指定国際会計基準を使用する場合は、日本基準を使用した場合との主要な差異の概算額等を開示することになっておりまして、当然、IFRSと日本基準とエンドースメントされたIFRSがあるといっても、その差異の中身は全くわからないということではないというふうに考えております。

そういうような状況のもとで、先ほどからご説明しておりますように、我が国としては単一で高品質な国際基準というサミットの首脳宣言にコミットメントをしておりますし、会計基準の国際的な調和が必要であるということにもコミットメントしているというわけでございまして、今後そういう方向をとりつつ、他方で我が国としては、先ほどの委員のご指摘もありましたけれども、会計思想的、あるいは制度論的になかなかIFRSの中で受け入れ難いところもあるということで、その両者を調和させるという観点から言えば、やはりこのエンドースメントしたIFRSというのがどうしても必要になってくるのではないかというふうに考えております。

そういうことで考えてはおりますけれども、先ほども申しましたように、そんなに大きな差があるものではないし、日本基準を高品質化するような会計基準の変更、あるいはコンバージェンスと言ってもいいかもしれませんけれども、そういうものは引き続き当然やっていかなければいけないということで、さらに、先ほど西川委員長からお話がありました、ASAFでは日本の主張をしていって、できるだけIFRSを日本の思想に近いものに近づけていくという努力をする。そういう努力によって、これらの基準が将来的にある意味で収斂していくことを期待しているというのが、我々の考え方でございます。

ちょっと米国基準の位置づけは難しくて、これは米国政府がどういうご対応をされるかによって変わってくるわけですけれども、米国も別にIFRSを放棄したわけではなくて、一定のことは考えているということで、もし米国基準がそういう方向になっていけば、これも収斂の方向に向かうのではないかということを期待しているということでございます。

○安藤会長

手を挙げておられる方で、本田委員、お願いします。

○本田委員

2つ意見を述べさせていただきたいと思います。

まず、11ページの最初の、単一で高品質な国際基準の策定する目標がグローバルに実現されていくは、我が国にとっても大変重要なことだと思います。これには大賛成です。しかし、賛成の理由が、違います。基本的に会計基準というのは、経営管理、税の算定、資金調達等々いろいろな目的があるわけでございますが、その中で対外的に特に大事なのが資金調達だと思っております。我が国におきましては、外銀の融資におけるシェアは1.4%しかないので、いわゆる日本で決めた基準で借り入れというのはできるわけでございますが、一旦目を資本市場、エクイティのほうに向けますと、東証の上場している企業におきましては、30%の保有は外人です。日本の企業のほうがトレーディングの量が少ないので、トレーディングにおいては外国人の占めるシェアが50%を超える日がかなりたくさんあると、こういう状態にございます。加えまして、アベノミクスの中、成長の矢の1つの中に入っていくのではないかと思っております新興企業の育成に関しましては、借り入れももちろん大事ですが、上場(IPO)を目標に頑張っていらっしゃる企業も多いので、そういう企業を後押しするためにも、ここの部分は非常に重要だと思っております。したがいまして、外国人、特にエクイティというリスクをとってくれる投資家を今後も維持する、ないしは拡大していくためには、単一の国際基準というのは非常に重要なのではないでしょうか。その観点でいきますと、さっきの米国基準(US GAAP)、IFRS、IFRSのちょっとエンドースしたもの、日本基準の、4つが並行に存在するというのは非常にわかりにくく、エクイティの投資家から嫌気をさされる可能性があるのではないかと思っており、なるべく早い段階で1本に絞れないでしょうか。

もう一点は、先ほど来岡田様もおっしゃった、任意適用積み上げが大事は、新興企業を育てるという観点におきましても非常に重要だと思っており、適用条件の緩和、特に上場会社以外にも、上場準備をしている会社を中心に認めるのは、建設的なことではないでしょうか。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。釡委員、お願いします。

○釡委員

事務局から本日提示ありました資料につきましては、前回経団連としてご説明した項目が多々取り上げられておりまして、まことにありがとうございます。経団連といたしましても、本審議会との議論と並行いたしまして、産業界の意見を6月をめどにまとめるように議論を開始したところでございますので、まずそれを報告いたしたいと思います。

その中でも、やはり任意適用の会社を増やすということが大きなディスカッションになると思っておりまして、それが任意適用の円滑化という表現になるのか、促進といった表現なのかは別としまして、適用する会社を増やすという観点からも、任意適用の条件の緩和についてはぜひ踏み込んでいただきたいと思っております。

一方で、前回の審議会でも指摘しているところでございますけれども、任意適用を予定しない企業もあるわけでございまして、そういった会社にとりまして、こういった企業活動の基盤、あるいは根幹であります会計制度の方向性が見えないというのは、やはり経営の観点からいっても非常に不安定な状況が続くと思われますので、国際情勢が変化する中で、強制適用しないということを断言するのは難しいという先般の栗田課長のようなご発言もありましたけれども、そういった断言をすることは困難とは思いますけれども、少なくとも安心して日本基準や米国基準を使い続けられるといったことを明確にするような形での論点をまとめてあれば幸いだと思っております。以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。泉本委員。

○泉本委員

ありがとうございます。任意適用が今後拡大していくとなると、また監査人の問題というのが出てくるのではないかということで、資料2の13ページの「原則主義のもとで実務的な不確実性」について述べます。この「実務的な不確実性」というと、多分、監査人の対応のところが一番念頭になるかと思います。また、任意適用が拡大されて小さいIPOの会社まで適用が可能になると、かなり対応する監査人の幅も広がってくるのではないかと思います。

ただ、実際の監査業務という面では、IFRS基準に基づく財務諸表監査も、日本基準で実施する財務諸表監査も、監査の枠組みということでは同じかと思います。監査人はどのような指針であれ、それに基づいた財務諸表が適正に作成されているかどうかを監査いたしますので、監査法人の監査における判断は、IFRS基準でも日本基準でも同様のプロセスを踏むというふうに考えております。

先ほど山崎会長のほうから、中小の法人でも対応できるようにしっかり協会のほうでは準備するというお話がありまして、現に私どもの監査法人でもしっかりこの辺のIFRSへの対応として、IFRSの概念フレームワークや種々の基準、またさまざまな解釈指針を理解し、しっかり事実に基づいたIFRS適用の判断ができる人材を育成しているところでございますし、特に若手の監査人はIFRSに関する関心はとても高く、研修でも積極的に吸収しています。

最後にもう一つつけ加えてお話ししたいのは、先ほど日本基準でもIFRS基準でも監査のプロセスは同じと申し上げましたけれども、ここで1つご認識をお願いしたいのは、同一の外観を持つ取引であったとしても、関与先様の置かれている取引背景ですとか、事実関係ですとか、そういうことが異なれば、異なる会計処理の判断となることもあるということでございます。たとえガイダンスが出てきたとしても、それぞれの立場によって監査上は利用者の意思決定を誤らせないという前提のもとで、また重要性の基準も加味しながら意見形成をしていくことになります。

そういう意味で、IFRSでも日本基準でも同様だと先ほど申し上げたことでございますけれども、なかなかそういう局面に立ってくると、また実務的な不確実性ですとか、原則主義であるということが、作成者(会社)と監査人の間で喧々諤々になる面もあるかと思います。ここのところは今後もつきまとう問題ではないかと考えてございますので、よろしくお願いいたします。

○安藤会長

ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。万代委員。

○万代委員

金融庁に1つお伺いしたいことがございます。我が国は会社法会計制度と金商法会計制度という2つの会計制度があって、上場会社は両方に縛られているという。大体負担が大きいねということで話題になるわけですけれども、むしろIFRSを導入する上で、この2つの制度があるということを、逆にメリットとしてうまく受け入れられないのかなと。利用してうまく受け入れられないのかなと。そういうことを法務省と情報交換、あるいはいろいろ話し合いを持つようなことはお考えなのかどうかということを、1つお伺いいたします。

○安藤会長

どうですか、お答えになりますか。

○栗田企業開示課長

金商法会計と会社法会計があって、これをどう整理するかということは非常に大きな課題の1つでございまして、会社法上、もしIFRSを使うとするとどういうところに問題が出てくるのかということについては、法務省と議論をしておりました。

現実にIFRSを入れるとなると、これは会社法だけではなくて税法とかもあって、そういうところをどう整理するのかというのが大きな課題になるということです。この点につきましては、会社法、税法は基本的には単体の会計が問題になってくる一方で、金商法の会計は、最近は連結重視の方向になってきているわけでございますので、まずは当面連単を分離して、その中でIFRSをどう取り入れるかというのを議論しましょうということに整理されたというふうに認識しております。会社法とか税法との関係をうまく整理することができればそれに越したことはないし、そのために財務省とか法務省とか我々は議論をしているわけでございますが、審議会としては、昨年7月の段階で、一応そこは連単分離の方向で考えようということになっているというふうに認識をしております。

○安藤会長

勝尾委員、お願いします。

○勝尾委員

どうもありがとうございます。12ページに、米国の動向など、国際情勢に不確実性が存在することを十分に勘案する必要があるのではないかという指摘がございますけれども、その次の13ページ及び、14ページにおける「今後の検討についてマル2」における提案内容に、この点が十分に勘案されていると言えるのかどうか、という点について質問させていただきます。

○安藤会長

よろしいですか。

○栗田企業開示課長

この国際情勢に不確実性が存在するというところでございますけれども、例えば極端な話を申し上げれば、日本がIFRSの適用はしないんだと決めた翌日に、米国がIFRSをやりますといったら、日本は完全に孤立してしまって、おそらく国際的に立ち行かなくなります。そういうようなことを考えますと、極端な結論を周りの情勢をよく考えないで出すことは非常に難しいのだろうと思います。他方で、国際的なコミットメントというものもあるわけでございますので、そういう方向に、ある意味ゆっくりした歩みになるかもしれませんけれども、一歩一歩積み上げていって、海外の情勢が大きく変わっても困らないようにしていくということで、この具体的な検討項目というのを提示させていただいているということでございます。

○安藤会長

川村委員、お願いします。

○川村委員

主としてこの何年間か、IPOの金融商品取引所におけます上場審査に絡んできた立場から二、三申し上げたいと思うのですけれども、先ほど11ページの一番最初の、いわば一見のりとのように見える非常に大変重要な考え方。これを私流に解釈すると、グローバルなマーケットに共通するプラットフォームをどうやってつくっていくかということが、今後の東京の国際金融市場等々の大きな出発点になり、そのプラットフォームの言語が、やはり会計なのだと思うのです。そういう点に過去10年近いIFRSの議論というのを当然位置づけなければいけないし、そこから出てくるものは、基本的にはポジティブに考えるということではないかというふうに認識しております。

そして、そういう中で見たときに、特に先ほどもエクイティもそうですけれども、日本における海外からのデッドファイナンスも非常に少ないわけでありまして、時として増えますけれども、デッドもエクイティも、自慢できる状況じゃないというのが現状だと思います。私の記憶する限りでも、四半世紀ぐらい国際金融都市ということが言われてきていてもなかなか進んでこないということの理由の1つに、やはりそういう制度インフラの部分もあって、この観点からもIFRSというのをとらえていかなければいけないんじゃないか。

これに絡んで、先ほど栗田課長のご説明の揚げ足取りみたいにとられると困っちゃうのですが、4つの基準がよしんばあっても、あまり変わらないのだということであるならば、1つにしたらいいんじゃないですかというようなロジックも出てきてしまうのじゃないか。現実問題としてそんな簡単な差異ではないし、技術的には非常に難しいということは承知しておりますけれども、やはりできることならば、シンプルな1つのスタンダードに収斂させていくという、そういう意味でのコンバージェンスみたいな努力が、今後必要なんじゃないかと思います。

もう一つ各論的に、13ページの丸の2つ目、原則主義のもとで実務的な不確実性に関する、これは実際問題として、多分フロントラインの一番頭の痛い問題ではないかと思いますし、また例えば、機関投資家等がいろいろ比較をするときにも、それぞれがある一定の枠組みの中で、社内のマネジメントの基準でやっていくと言われていても、そこの違いののりしろが大きいのか小さいのかによっても大分判断が変わってきてしまう。こういう点、今具体的にこうすべきというのがあるんじゃないですが、1つ参考になるのは、かつて金融監督についても、ルールベースからプリンシプルベースということが言われて、そういうものを補うために自主規制団体でさまざまなルールをつくって、相当詳細なものができてきている。そういう学習効果みたいなものも、こういう分野でもひょっとしたら活用できる部分もあるのかなと思っています。

最後に任意適用に関しては、当然これは促進する、必要な範囲で緩和していくということだと思います。また60社なのか、正確な数字は承知しておりませんが、少なからぬ金融機関も含めて、企業が適用の方向に今後何年も走っていて、相当な時間とコストと手間もかけていて、ある意味では後戻りができないという部分もあるんじゃないかと思うんです。今私が申し上げたのは、上場会社に限定してでありますけれども。そういうような状況も勘案しながら、基本的には前向きに進んでいくということではないかという印象を持っております。ちょっと意見というか、感想めいたものですけれども。

○安藤会長

ありがとうございました。関根委員、お願いします。

○関根委員

ありがとうございます。まず総論としては、今まで幾つか意見が出ていましたように、今後はIFRSの円滑な適用に向けて、前向きな環境整備を進めるべきであると思っております。そこで、私からは、実務的な対応の観点から若干コメントをさせていただきたいと思います。

IFRSの実際の適用に際しては、個別の論点について具体的に検討して議論していく必要があります。個別の論点についての具体的な議論というのは、結局は個別の基準の内容を深く検討することになり、そうした検討の結果、前回も少し出ていましたけれども、ガイダンスが必要ではないかとかといった議論も出てくるのではないかと思います。こうした点につきましては、我が国において関係者と、総論ではなく、具体的にこういったところはどうしても必要なのかどうかということをきちんと議論をして、必要性の有無を検討していく必要があると思っています。

なお、IFRSの具体的な適用については、日本に限ったことではなく、他の国でも様々な対応が行われております。ガイダンス的なものを出しているという話もあったりしますけれども、そういったことも含めて検討することが有用と思われます。

例えば、前回の審議会で説明のあったカナダでは、一昨年、この審議会の北米調査出張でも訪問してきましたが、国内の関係者で構成されるIFRSディスカッショングループというのをつくっています。そこでは問題点を共有して、対応案を検討して、内容によってはIASBやIFRS解釈委員会に提案するなどの対応を実施しています。このグループは、ガイダンスは出してはいないということですけれども、公開の場に関係者が集まり議論することにより、解決策を探っていき、一定の共通理解を得るということもできるとのことです。これがすべていいというわけではないですけれども、こういったことを参考にしながら、どういった方法が一番日本に合っているのかというのを検討していくことが必要ではないかと思います。

なお、このように実務的な具体的な検討というのは、こちらの13ページの論点の中で、3番目にある的確な意見発信ということにもつながるのではないかと思っております。先ほどのASAFの報告でもありましたように、国際的に意見を伝え、それを通していくというのはなかなか難しいものです。こうした検討も活用しつつ、私ども関係者が、ASAFに出席しているASBJの方を、我が国としてしっかり支援していく必要かあると考えております。

その際、1つの方法として、ここにあるようにサテライトオフィスを意見発信の場として有効に使っていったり、逆に、アジアのサテライトオフィスですので、アジアの人たちの派遣なども検討して、海外を巻き込んだ上で日本の意見を伝えていく、こういったことも必要ではないかと思っています。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。水口委員、お願いします。

○水口委員

既にご意見出された方もいらっしゃるところでもありますが、私もやはりピュアIFRSと、我が国に適したIFRSが併存するということというのは、ユーザーの立場からいたしましても、財務諸表の比較可能性という観点から、ちょっと懸念するところがございます。事務局からいろいろ手当のご説明もあったところではありますが、意見をここで述べさせていただいてみました。以上です。

○安藤会長

辻山委員と黒川委員が手を挙げておられますが、まずはレディファーストで。

○辻山委員

恐れ入ります。先ほど発言し過ぎちゃったのですけれども。この件について、本日の議論で2つ分けて考えておく必要があるのかなと。1つは、任意適用を増やしていくという議論と、日本で強制適用がありやなしやというという議論です。先ほど何人かの委員のご指摘がありましたけれども、任意適用企業の問題と、強制適用の国際的な位置づけは分けて議論する必要がある。今日いただいた資料の5ページをごらんいただきますと、ここにモニタリング・ボードに入っている機関、それから、本日のASAFに入っている機関、これは必ずしもIFRSを強制適用している国ばかりではなくて、むしろ中国もコンバージェンスの方針を打ち出しておりますし、アメリカは、これは私が個人的に得ている情報では、IFRSフルアドプションというのは、限りなく可能性が低いというふうなことでございます。

さて、そういう中で日本はどういうスタンスでアプローチしていくのかということですけれども、任意適用を積み増していくという議論は傾聴に値しますが、もう一方で、いつか強制適用があるのではないかということでどんどん時間が過ぎていくという認識の下での、企業の対応、不安定な立場もございます。そこで、強制適用というのはおそらくないというふうに、私は個人的には思っておりますけれども、もし万一そうなったとしても、それが決まってから十分な準備期間がある。決まってからでも遅くないのだということを明確にしておく必要がある。これは、国際的にも外交的におかしなことではありませんので、そういうことを手当、考えていただきたい。任意適用を積み増していくという議論に巻き込まれて、いつか強制適用があるのではないかという論調にならないよう注意する必要がある。本日は多少そういうニュアンスが出ていたように思えましたので、念のため。

それから、最後に1つですけれども、これまでのこの場の議論の中で、高品質で単一な基準というのは何ですかというのはわからないんだということになっているんですね。ですから、それがあたかもあるかのような議論はおかしい。今日の前半の議論をよく思い返していただきますと、それをめぐって世界がここまで13年きているということを認識しておく必要がある。ですから、高品質な単一の基準があって、それを日本に入れるべきだ。あるいは、そうすることで比較可能性が高まるという、そういう議論は危険だと思います。もうちょっと慎重にきちんと議論すべきだと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。黒川委員、どうぞ。

○黒川委員

ありがとうございます。私は2つ、簡単に意見を述べさせていただきます。1つ目は、我が国のこの問題に対する姿勢を、今、明確にすべきかどうかという問題です。これについては我々会計の世界だけの話ではなくて、その前提となっている経済社会全体の状況、我が国の現在の置かれている状況というものも判断して考えるべきではないかと思います。私自身は少なくとも今、態度を明確にすることが、今政府がやろうとしていることに対してプラスになるのかどうかを判断することは大変難しいと思います。特に国際社会からの信任という問題がありますので、ここはもう少し、当審議会として、現状維持をしておくほうがいいのではないかと思います。

それから2番目は、先ほどから議論に出ている13ページのピュアなIFRSと、それからカーブアウトしたIFRSの問題で、議論はどうも4つの基準が生まれてしまうということに向かってしまったようです。そこで、ここの読み方、理解の仕方なのですけれども、これは辻山委員が今おっしゃったことにも関係しています。現在のところ、我が国は、併存ということを言っていないし、また今は言うべき時期ではないと思っています。ということになりますと、まだまだ強制適用という可能性もあるわけです。

IFRS強制適用になるという状況が生まれたときに、個々の基準を一つ一つ検討して、採択するプロセスというようなものが必要になるかもしれない。あるいは、個々の基準をそれぞれ判断をして、我が国に合ったIFRS基準であるのかどうかということを識別しなければいけないということになるのかもしれない。要するに、ここの2つの項目は、強制適用という事態が生じたときに、特に必要になってくる項目と私には読めるわけです。

そこで、強制適用になるという状況の可能性が高まったときに、こういう2つの項目について、やおら検討するというのもいいのかもしれませんけれども、おそらく事務局は、もし仮にそうなった場合に備えて、もしそうなったならば、どういう機関で、例えば、この企業会計審議会がチェックするのか、あるいはどこか別のところがするのか、そういうような機関やプロセスというものを、今から少しずつ検討しておいたほうがいいのではないかというようなつもりで、お書きになったのではないかと、私は理解をした。

したがって、この文章を見て即座に、結果として4つの基準の並存の状況となり、これはけしからんということではなくて、もし仮にということを念頭に置きつつ、もしそうなった場合に備え、今から具体的なプロセスとして、どういうものがあり得るのかを検討するというように読んだらどうかと思いました。以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。では、五十嵐委員。

○五十嵐委員

ありがとうございます。2点だけ述べさせていただきます。レジュメでお配りいただきました内容は、財務報告制度のありかたを述べておられると理解いたしました。第一点目でございますが、13ページの丸印の4点目と5点目の内容はエンドースメントメカニズムを記述されていらっしゃると思います。エンドースメントメカニズムは、基準が完成してから、それを採択するかどうかということになりますと、IFRSの実際の導入にあたり困難な側面もあると理解しています。したがいまして、基準の作成前の議論の段階で、ASAF(会計基準アドバイザリー・フォーラム)で、日本で議論した考え方に基づき、意見を述べていただいて、その基準の中に反映させるという手続が必要だと思います。課長さんもおっしゃられていましたように、そのことの手続があると理解いたしましたので、ASAFでぜひそこに焦点を当ててやっていただければと思います。

2点目は、財務報告制度への導入において、現在、多くの企業や国が課題としている中には、IFRSが公正価値会計をどこまで適用するかどうかということが議論になっていると理解しています。現在の公正価値会計は、広範囲なモデルの使用、将来情報の不確実性、確率を適用するなどを含みますので、それが我が国の財務諸表にどこまで影響を与えるかということの評価が必要だと思います。こうした内容を考慮しますと、会計基準の基盤として、一般的に公正価値会計と言われるものが、どこまで適用したらいいかということを、何らかの形で調査をされたほうが良いのではないかと思っております。これはASBJさんの仕事かもしれませんけれども、その課題の検討を進めることの視野も入れられたほうが良いのではないかと個人的に思っています。また、この内容は、財務報告制度における財務諸表の検証可能性と監査における監査可能性とに、非常に密接に結びついており、どのような思考方法がよいかが議題になっておりますので、現在、IAASBとIASBとの間で特定の会計基準について話し合いが行われています。これらの内容を、ある視点でまとめられることが必要ではないかと思っております。

○安藤会長

ありがとうございました。そろそろ時間なんですけれども。今、手を挙げておられたのは鈴木委員でございますけれども、これでよろしいでしょうか。もう一方、永井委員までいきまして、それで一応本日のところは打ち切らせていただきます。それでは、鈴木委員、お願いします。

○鈴木委員

すみません。IFRSの中で受け入れ難いものがあるということに対して、それが個別なのか、そもそも総論なのかというところをこれまでもずっと具体的に議論してきたわけです。我が国に適応したIFRSを導入しようという議論がありました。そういう中で、それを乗り越えるにはどうしたらいいかという方策をもう少し議論したほうがいいと思います。今出ているエンドースメントする採択プロセスを入れたIFRSみたいなものをもう一つというと、4つ目が出てきます。これは投資家としての、私のアナリストとしての感じでいえば、多すぎます。いろいろなものが出ても、我々プロは使いこなしていきます。違いがあったらそれなりに咀嚼していきます。

でも、いかにも4つは多いです。それはいずれ収斂するという抽象的な話ではなくて、今回、4つ目を増やすということであれば、同時に2つに絞り込んでいくというような議論もやっていただきたい。我々がこの場で問われているのは哲学です。抽象論の哲学ではなくて、具体論が必要です。もう少し絞り込んでいくという議論を一緒にしていったほうがいいのではないかと思います。

○安藤会長

ありがとうございました。では、最後に永井委員、お願いします。

○永井委員

事務的な質問ですから、手短に済ませます。先ほどの釡委員のご発言とも重なる部分がありますが、今後のスケジュールと議論の進め方についてお伺いをしたいと思います。今回配付された資料2の11ページ目から12ページまでにありますように今後の検討についてということで、方向性が示されたのはプラスだと思います。今後の議論の進め方としては、特に今日この課題について異論があったように思えませんので、この13ページから14ページのマル2について順番に議論するおつもりなのかというのが1点と、もう一つは、今後どういうスケジュールで議論を進めるのか。それは作成者側の企業も投資家も非常に興味があるポイントだと思いますので、いつごろ結論――結論は多分出すのは非常に難しいとは思いますが、区切りをつけるおつもりなのか、お示しいただきたいと思います。

○安藤会長

それでは、最後に事務局より答えてもらいます。

○栗田企業開示課長

本日、いろいろご意見もいただきまして、例えば任意適用要件の緩和など、検討課題の中にはほとんどご異論のなかったものもあるわけでございまして、次回以降、そういう個別の論点についてもう少し深くご議論をいただきたいと考えております。ただ、そんなに時間をかけないで、ある程度のところについては近いうちに、審議会としてのご意見の取りまとめをいただきたいというふうに考えております。強制適用か否かというような大きな話はもう少し時間がかかると思いますけれども、当面できることについては、早目にご議論をまとめていただければというふうに考えております。

○安藤会長

時間を過ぎておりますので、本日の審議はこのあたりにさせていただきたいと思います。当審議会では、引き続き国際会計基準への対応について、当面検討すべき課題について審議してまいりたいと思いますので、ご協力くださいますようお願い申し上げます。

次回以降の日程について、事務局より説明してください。

○栗田企業開示課長

次回以降の日程につきましては、事務局より改めてご連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

○安藤会長

それでは、本日の合同会議はこれにて終了いたします。委員の皆様には、審議にご協力いただき誠にありがとうございました。これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3672、3656)

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