企業会計審議会総会議事録

1.日時:平成22年6月8日(火曜日)14時00分~16時03分

2.場所:中央合同庁舎第7号館 13階 金融庁共用第一特別会議室

○安藤会長

ほぼ定刻になりましたので、これより企業会計審議会総会を開催いたします。

皆様には、ご多忙のところご参集いただきまして、誠にありがとうございます。

なお、本日の会合も、企業会計審議会の議事規則に則り公開することにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(「異議なし」の声あり)

○安藤会長

それでは、ご異議がないということでご了解いただきましたので、そのように取扱わせていただきます。

事務局からクールビズについて連絡があるとのことですので、お願いします。

○三井企業開示課長

毎年恒例でございますけれども、6月から9月までの間、クールビズ、夏季の軽装の期間と政府全体でさせていただいております。地球温暖化対策のために上着はなし、それからノーネクタイということで対応させていただいております。皆様方におかれましても、軽装でご審議にご参加いただければ大変ありがたいと存じます。

○安藤会長

それでは、最初の議題であります、単体の会計基準のあり方(コンバージェンス)について、ご審議いただきたいと存じます

当審議会が昨年6月に公表いたしました「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書(中間報告)」においては、2007年の東京合意を踏まえ、コンバージェンスの継続・加速化をしていくこととされています。中間報告では、いわゆる連結先行の考え方が示され、その後、金融庁からはダイナミック・アプローチの考え方が説明されています。これらを踏まえつつ、企業会計基準委員会(ASBJ)では具体的な会計基準の検討が行われていますが、その過程では、連結と単体の関係について様々な議論があるものと承知しております。

そうした議論においては、連結財務諸表の会計基準と単体の会計基準のあり方を、連結先行を提示した企業会計審議会で改めて議論してはどうかとの要望も寄せられております。こうしたことを背景に、当該テーマを当審議会においてご審議させていただくこととしたものです。

当審議会では、個々の会計基準の検討はASBJが行っていくことを大前提とし

て、ASBJの今後の議論を前向きに行っていただくため当審議会で議論を行い、今後、ASBJで議論を行う際の論点を明確にしていただければと考えております。

なお、本日は本議題を中心にご議論いただければと考えております。

ASBJでは、本議題に関連しまして「上場会社の個別財務諸表の取扱いに関する検討会」を開催し、検討を行っておられます。その議論や個々の会計基準において行われている議論を踏まえつつ、ASBJから本議題についてのプレゼンテーションをお願いします。

ASBJ委員長でもいらっしゃいます西川委員、参考人としてご出席いただいております新井副委員長、都常勤委員、よろしくお願いいたします。

○西川委員

西川でございます。

資料1にあります、連結先行の考え方に関する検討会の概要の報告でございますけれども、この議論のメインのところは個々のケースへの当てはめというところで、これについては私の後に、新井ASBJ副委員長の方から引き続きご説明をさせていただくということにしまして、経緯のところを簡単に触れさせていただきます。

既に、今お話がありましたように、中間報告に連結先行という考え方が示され、ダイナミック・アプローチという考えがその後出てきたという中で、個々の基準にどのように適用していくかはASBJの中で議論をしていくということで、プロジェクトごとに議論をしてきています。その中で、包括利益の表示の議論がございまして、公開草案の段階では連・単同じ形の表示を行うということで、これ自身が連結先行の対象となる基準であるかどうかということも、あまり意識していなかったのですけれども、公開草案後の最終的な公表の直前あたりから急激に、包括利益の表示は単体では不要ではないかという議論が大きく起きてきました。そういう声が大きくなりましたので、議決を強行するよりも少し落ち着いて、そもそも連結先行というのはどういうふうに当てはめていくべきだろうかということを、連結先行の候補となるような基準をまとめて、どういうふうな考え方で整理していけばいいかといったことを議論してみてはどうかということで、この検討会を起こしたものでございます。

2ページ目のところにメンバーが書いてございますけれども、ASBJの委員は全員参加しておりまして、加えて産業界、それから財務諸表ユーザーとしてアナリストの方にご参加いただき、また、各省庁にもオブザーバーとして参加いただいたという形でございます。

検討会で個々のケースへの当てはめの議論を開始しようとしたんですけれども、最初に出てきたご意見としては、金商法における個別財務諸表の開示のあり方といった非常に大きな論点を含めて、この個別ケースへの当てはめ以前に議論すべきことが多々あるのではないかということがあり、それを議論する前に個々のケースへの当てはめの議論をすることはできないのではないかといったことがございました。金融庁がオブザーバーとして参加していらっしゃったということもあって、より大きな論点を議論するために、本日の審議会の開催ということにつながっているというふうに考えておるわけでございます。

ASBJでは制度的な議論はできませんので、審議会のようなものを開くということが話として出たところで、個別ケースの議論に入っていったわけですけれども、そこでは元々の前提として、単体の会計基準をコンバージェンスしていくというのは、連結よりは多少難しいかもしれないということはあったわけです。ただ、その一方で、金商法という枠の中に両方がある中で、連単で違う会計処理を、当然に違っていて当たり前の部分は投資資本の消去とか内部取引の消去とか、そういうこと以外の部分で差異が当然あるべきだというような議論というのはなかなか難しいということがあります。議論の仕方としては、一般的な会計の議論とちょっと違った特殊な議論になるということがございます。

そして、そこで議論された中で、単体の会計処理について、コンバージェンスを止めてしまうとか、全体の単体に関する会計基準を止めてしまうといった議論はなかったということがございます。

ただ、そういう中で、これから審議会でいろいろな議論が出てくるかと思いますけれども、制度に関係する話も含めまして、会計基準というのは制度との関連性もあるでしょうから、特に単体の場合はそれが大きいということがあるので、2ページのところにちょっと書いてございますけれども、これは当面ということになろうかと思いますけれども、私どもの方はもう既に検討会の議論を終えておりまして、個々のプロジェクトは通常の委員会の議論に戻るわけですけれども、そういう中でプロジェクト計画に従って結論を出していくときに、連結財務諸表については結論を出すけれども、個別財務諸表については判断を留保するということもあるという方向で、今現在考えているところでございます。

それでは、個別ケースについては新井さんの方からお願いします。

○新井参考人

では、お手元の資料1の2ページ目のところから、概要についてご説明をさせていただきます。

2ページ目の上から2つ目の「●」のところをご覧いただければと思いますが、この資料は、個々の基準策定の検討におきまして、連結と個別を一致させた場合と、連結先行した場合にどのような懸念、これはコスト・デメリットというような捉え方もできますが、こういう点を比較衡量することが有用であると考えられることから、主に6個のケース、具体的には包括利益の表示、開発費の資産計上、のれんの償却等々でございますが、こういうケースにつきましてダイナミック・アプローチの適用の可否の検討の概要を取りまとめたものでございます。

なお、2ページ目の注3に掲げてございますように、この検討会の中での議論として、連結財務諸表においてコンバージェンスを進めていくことについては、特にご異論は聞かれなかったということをお示ししております。

また、この資料の性格付けでございますが、「2.個々のケースの検討」のところの一番下の行をご覧いただければと思います。本検討会のメンバーから出された意見等を集約したものであるということで、これからご説明いたします個々の懸念につきましては、ASBJとしての意見ではないという点につきましても、合わせて申し添えさせていただきます。

また、この資料に記載しております想定する連結財務諸表上の会計処理や表示につきましては、仮に連結財務諸表においてそれらの会計処理や表示が改正された場合を仮定したものでございまして、今後のASBJの会計基準開発の方向性を必ずしも示したものではないということでございます。

そういう前提で、いくつか個別のケースについてご紹介したいと思います。

まず包括利益の関係でございます。この包括利益につきましては、前期末から当期末への純資産の変動額のうちで、持分所有者との直接的な取引によらない部分、これを包括利益というふうに定義をしておりまして、このような包括利益の表示を導入するかどうかということでございます。

現在、ASBJでは二計算書方式または一計算書方式で包括利益の表示を求める公開草案を公表しております。二計算書方式ですと、当期純利益をボトムラインとする損益計算書に加えて、包括利益を計算する包括利益計算書をもう1つ記載をしていただくものです。一方、一計算書方式では、当期純利益の計算と包括利益の計算を1つの計算書で表示をするというものでございます。

この辺につきまして、連結財務諸表と個別財務諸表に同一の会計基準を適用した場合の懸念として出されたご意見をご紹介させていただきますと、包括利益及びその他の包括利益を表示する場合、その意義が周知されないと、重要な業績指標であるとの誤解を与えかねない。また、例えばOCIノンリサイクリング処理、これは、その他包括利益に計上されたものが、その後、損益計算書上を通さず直接利益剰余金にチャージされるという、そういうようなことをここではOCIノンリサイクリング処理というふうに示しておりますけれども、こういうような処理が行われた場合に、当期純利益の意義を変質させる可能性があり、会計処理と関連付けて導入を議論すべきであるという意見がございます。更には、現行の会社法上の損益計算書におきまして注の5、3ページ目の下に掲げてございますが、現在、会社計算規則95条におきましては、損益計算書等ということで、損益計算書または連結損益計算書を指しておりますが、包括利益に関する事項を表示することができると、こういう規定がございます。ASBJで検討しております現時点の公開草案段階の整理といたしましては、この包括利益にかかる計算は損益計算にかかるものの外出しで表示することを考えておりますので、そうしますと、会社計算規則との整理が必要になってくるという状況でございます。

一方、ダイナミック・アプローチを採用した場合の懸念ということで、ここでは4点ほど掲げてございます。まず、財務諸表の有用性の観点からは、連結財務諸表と個別財務諸表で異なる表示とする理由がない。連結財務諸表と個別財務諸表の比較分析上、個別財務諸表の包括利益も利用すると考えられ、表示されない場合、財務諸表利用者自身で算定する必要がある。また、貸借対照表の純資産の部において、連結財務諸表でその他の包括利益累計額と表示する一方で、個別財務諸表では現行の評価換算差額等の表示にした場合に投資家に理解しづらい情報になる。

さらに、作成者は一定の連結修正の作業を要することになるということで、利用者は連結財務諸表と個別財務諸表の関連性を分析する上で、個別財務諸表の数値を調整する作業が必要になる。

その他、個別財務諸表のみを開示している会社もございますので、そういう会社の包括利益が開示されず、上場会社の中に包括利益を開示している会社としていない会社が混在し、投資実務に混乱を招く。また、コンピュータによって全上場会社をスクリーニングする投資家が多いわけでございますけれども、包括利益という重要な指標について企業間比較を用いることができなくなるというようなご指摘がございます。

続きまして、4ページ目に移りまして、2つ目のテーマとして開発費の資産計上がございます。

これは、研究開発のうちで開発局面の一定の要件を満たすものを資産計上するという形でございまして、現在、ASBJではIAS38号と同様の方向で検討を進めております。なお、米国におきましては、現在この開発費については費用処理という状況でございます。

こういう開発費の資産計上につきまして、連結財務諸表と個別財務諸表に同一の会計処理を適用した場合の懸念、これは資産計上の懸念というふうに言い換えることができるかと思いますが、いくつか挙がっております。

まず、IFRSにおける方法で開発費の資産計上を行った場合、資産計上の要否及び計上のタイミングが企業により異なることが想定され、比較可能性が担保されない可能性がある。

また、恣意性が高くなる可能性があり、保守主義の観点からは資産計上に懸念がある。

さらに、会社計算規則158条に定められております、のれん等調整額の分配制限との関係を整理する必要がある。そのほか、税務面との関係ですが、これは業種にもよりますけれども、研究開発投資がかなり大きな会社においては、法人税法上の取扱いに特に重要な影響を与える可能性があると、こういうようなご意見がございます。

また、ダイナミック・アプローチを採用した場合の懸念として、ここでは3点ほど掲げております。まず、1点目は、投資家の意思決定に関する有用性の観点からは、連結財務諸表と個別財務諸表で異なる会計処理とする理由がない。連結財務諸表上の利益や株主資本の金額と個別財務諸表の利益や株主資本の金額が、資産計上の有無により大きく変わる可能性があり、場合によっては投資家に誤解を与える可能性がある。

また、原価計算の観点からでございますが、開発費は有形資産よりも製品との結び付きが強いと考えられ、償却費は1対1に近い形で個別財務諸表において紐付けされるべきである。連結上のみ資産計上して、償却費を何らかの基準で棚卸資産と売上原価に配分するなどの調整で対応することは実務的には可能としても、企業の経営においてよいかどうかは疑問であるというものです。

さらに、連結財務諸表作成上、ケースによっては在庫の原価計算を再計算する必要が生じ、原価計算に関するシステム対応を含め実務負担が生ずる可能性があるというご指摘もございます。

次に3点目でございますが、のれんの償却でございます。この点については、企業結合において取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を上回る場合、その超過額をのれんとして、計上しております。こののれんについて償却するかどうかということでございます。現在、ASBJでは、のれんを非償却するということも念頭に置きつつ検討を進めているわけでございます。

この点につきましては、現行のIFRSと米国基準は同じ形で、のれんは非償却という状況になっております。この点につきまして、連結財務諸表と個別財務諸表に同一の会計基準を適用した場合の懸念という点につきましては、5ページ目のところに3点ほど掲げております。まず、のれんは投資原価の一部であり通常はその価値が減価するため、投資から得られる成果と関連付けて償却されるべきである。非償却にした場合には、利益計算に重要な影響を与える。また、経営管理上ものれんの償却を行うべきであるというものです。

会社計算規則の関係では、やはり158条に定められております、のれん等調整額の分配制限の見直しについて整理する必要があるということがございます。

また、法人税法上の取扱いに影響を与える可能性があるということでございます。法人税法との関係では資産調整勘定の絡みが一つ指摘されているところでございます。

一方、ダイナミック・アプローチを採用した場合の懸念でございますが、ここでは2点ほど掲げております。投資家の意思決定に関する有用性の観点からは、連結財務諸表と個別財務諸表で異なる会計処理とする理由はない。連結財務諸表と個別財務諸表で償却の有無が異なる場合、場合によっては投資家に誤解を与える可能性があるというものです。

また、連結財務諸表と個別財務諸表で異なる減損会計の適用が必要となる可能性があり、その場合、実務上の負荷が生ずるということでございます。

時間の関係もございますので、検討対象といたしまして残りの3項目につきましては、簡単にその概要だけご説明をさせていただきたいと思います。以下の3項目につきましては、現在、IASBとFASBで検討を進めておりますMOU項目の中からピックアップしたものでございます。

まず、OCI、つまり、その他包括利益のノンリサイクリング処理でございます。この点につきましては、IFRS9号、金融商品でございますが、この金融資産に係るOCIオプションを導入し、ノンリサイクル処理するというケースで検討しております。

また、IASBより公表されました改正退職給付公開草案で提案されております再測定部分、これはいわゆる数理計算上の差異に相当する部分でございますが、この部分について、即時OCI認識及びノンリサイクル処理を導入するとした場合にどういう懸念があるのかという点も検討しております。

また、6ページ目をお開きいただければと思いますが、(5)で収益認識を掲げてございます。現在、IASBとFASBが提案しておりますモデルにおきましては、支配の移転を基礎として収益を認識するという収益認識モデルでございまして、履行義務の充足時に収益を計上するということで、財やサービスの支配が顧客に移転した、言い方を変えますと、顧客が支配を獲得したときに収益を計上するというモデルでございます。この点につきましても、今までご説明いたしました連結財務諸表、個別財務諸表で同時に適用した場合の懸念ですとか、ダイナミック・アプローチを適用した場合の懸念につきまして、ここでは6ページのところから7ページにかけてまとめさせていただいております。

さらに7ページをご覧いただきたいと思います。負債と資本の区分でございます。現在IASBとFASBが検討を進めております内容を踏まえますと、負債と資本の区分について現行の日本の基準とかなり異なることがございます。例えば、償還義務のある株式については、資本ではなく、負債に計上されるという形になります。そうしますと、会社法の規定等との関係でいろいろな検討が必要になってくるということでございます。そういう点を踏まえて、ここでは連結財務諸表と個別財務諸表に同時に適用した場合の懸念ですとか、ダイナミック・アプローチを採用した場合の懸念というものをお示ししております。

そして、こういう6つのケースを検討した上で、これに加えまして7ページ目から8ページ目にかけて、ダイナミック・アプローチを採用した場合の追加論点というものをお示ししております。検討会では時間の関係もあって、事務局から追加論点の提示を行い、その後の限られた時間の中での意見交換であったということで、必ずしも網羅的な整理はできておりませんが、どういう意見があったのかという点につきまして8ページ目にご紹介をしております。

なお、この追加論点につきましては、検討会の場ではこれについての検討は時期尚早とそういうようなご意見もございました。

どういう点を検討したかという点についてご説明したいと思いますが、1つは8ページ目の追加論点1でございます。仮にダイナミック・アプローチを採用し、個別財務諸表を従来のままとした場合、個別財務諸表においてどのような開示を必要とするのかという点です。

追加論点2といたしまして、仮にダイナミック・アプローチの考え方を採用した場合に、個別財務諸表について任意に連結財務諸表と同じ会計処理や表示方法を認めるか否かという点です。

最後に、追加論点3ということで、仮にダイナミック・アプローチを採用した場合に、個別財務諸表のみを開示している会社についての取扱いをどうするかという点でございます。

これらの点につきましても、基準開発においては検討が必要となる箇所でございます。

最後に、ASBJといたしましては、連結財務諸表上、企業会計審議会の中間報告に沿ってコンバージェンスの継続加速化に努める一方で、個別財務諸表の取扱いにつきましては、企業会計審議会での審議を踏まえて、関係者のコンセンサスを得ながら取り組んでいきたいと考えております。

資料の説明は以上でございます。

○安藤会長

都常勤委員のご発言はよろしいですか。

○都常勤委員

私の方から特に補足することはありません。以上で結構です。

○安藤会長

只今のご説明に対するご意見等は、後ほど時間をお取りしていますので、その際にお願いいたします。

次に、単体の会計基準のあり方をご議論いただくに際して参考になると考えられます、欧州における開示制度や会計基準の相違点等につきまして、事務局から説明していただきます。

○三井企業開示課長

事務局からお配りしている資料は資料4から8、それから参考資料として1から3-3まで大変大部なものがございます。この中で連・単の関係に関わるものといたしましては資料4、それから資料5-1、5-2でございます。そして、実際の開示事例を参考資料として、英独仏の開示事例を複数お付けしてございます。

専ら、これは単体の財務諸表についてどのようなものが開示されているのかということからの参考でございます。

それでは、資料4に入らせていただきます。これは過去の企業会計審議会でのご議論や報告書からの抜粋でございまして、先ほどASBJからご説明のありました、いわゆる連結先行と言われていることについての中間報告からの抜粋でございます。注としてありますけれども、その下の文章の2行目で「他方、」のところでございますが、コンバージェンスの推進にはこれまでの会計を巡る実務、商慣行、取引先との関係、さらには会社法との関係及び税務問題など、調整を要する様々な問題が存在するということから、実務上の工夫として連結財務諸表と個別財務諸表の関係を少し緩め、連結財務諸表に係る会計基準については、情報提供機能の強化や国際的な比較可能性の向上の観点から、我が国固有の商慣行や伝統的な会計実務に関連の深い個別財務諸表に先行して機動的に改訂する考え方というふうになってございます。

2ページが、そのときに席上配付した資料でございまして、その後3ページに、基本的には変えていませんが、その後若干、ダイナミック・アプローチというふうに名前を改めさせて配らせていただいた資料がございます。

これが過去のいきさつでございまして、次に資料5-1に移らせていただきたいと思います。

資料5-1は、これは法令上の規制体系でございまして、とりわけ連結と単体の会計基準が分離していると思われます英独仏について整理したものでございます。資料があまりにも大部になりますので、条文の抜粋は今回割愛させていただいていまして、ここにあります該当条文、例えばイギリスの一番左上、作成義務の「○」の下に、Companies Act2006(Article399)というのは英国会社法の399条、こういう趣旨でございます。

この表の見方ですけど、1ページ目が規制市場レギュレーテッド・マーケットという、EUのシングルマーケットに上場されている会社について、上の段が会社法、下の段が日本の金融商品取引法に対応する、ここでは資本市場法というふうに仮に名付けさせていただいていますが、2つの法体系でそれぞれどのように規定されているかというものを整理したものでございます。

一番左の欄がイギリスでございまして、4つ欄が作ってございます。作成の義務、それから作成に当たって使われる会計基準、それから開示義務、そして開示の方法というふうに4つに切り分けてございます。従いまして、作成義務に「○」が付いているということは、会社法上、例えば大会社とか既成市場への上場会社とかカテゴリーとか分類は様々でございますが、これこれしかじかの会社は財務諸表を作らなければならないという規定があると、こういう趣旨になります。

また、その会計基準は何かという作成基準でございまして、例えばイギリスのところで言いますと、Companies Act2006(Article403)、403条というところでIFRS、国際会計基準に基づいて作らなければならないという規定がある。あるいは単体ですと、この395条というところでUK GAAPかIFRSかいずれかで作成することが要求されていると、こういうふうに読んでいただくわけでございます。

下の段に行きますと資本市場法、イギリスの場合では資本市場法がまた別に存在しまして、そこにDisclosure Rules and Transparency Rules、こういうものがございます。ここの規程の4.1.3という規定で連結の財務諸表を作ってくださいと、グループアカウントですね。その会計基準はIFRSであるというのが4.1.6にありますと。それを開示してくださいというのが、また4.1.3にあって、実際の開示の仕方は電子開示になっています。これがルールの6.3.5にあると、こういう趣旨でございます。

1つ特色は、単体の扱いでございますけれども、フランスの欄をご覧いただきたいと思います。会社法も資本市場法も、それぞれにおいて同じように連結財務諸表、それから単体財務諸表の作成義務、開示義務について、各々規定を置いております。会社法と金融商品取引法に相当する法律でそれぞれ作成しろと、それから開示しなければならないと、こういう規定が置かれています。その場合の作成の会計基準は、会社法と資本市場法それぞれにおいて連結はIFRSであると。

フランスの単体の財務諸表についてはFrench GAAPによって作らなければならないという規定があります。ドイツも同様でございます。従いまして、英国ですと単体につきましては英国基準とIFRSが選択適用できるということでございますが、フランス、ドイツですと、それぞれの自国基準を単体において要求しているということになります。

それから、特色的なことは、会社法で自国基準、資本市場法でIFRSということではなくて、まず会社法において連結はIFRS、単体は自国基準ということが書かれており、また、資本市場法でも並列的に連結ではIFRS、単体では自国基準との規定がなされているということになります。

日本では、例えば会社法会計は利害調整のためにある。それから、証券取引法会計は情報提供機能にあるということが長らく議論されてきたわけでございますが、EUにおけるこの連・単の開示の法制度の関係は今説明いたしたとおりとなっており、いずれも会社法と金融商品取引法に相当する法律で、連結も単体もともにイーブンに位置付け、かつ適用すべき会計基準について同一の法律の中で明確に書き分けていると、こういうことになります。

次のページは非規制市場と言いまして、EUのシングルパスポートの得られない各国におけるアンレギュレーテッド・マーケットと言われているものでございます。興味深い点については、フランス、ドイツにおいてはいわゆるアルタ・ネクスト代替市場、ドイツの自由市場と言われている非規制市場が存在しまして、そこに上場される場合には単体は自国基準であるのは規制市場と変わりありませんが、連結についてはIFRSと自国基準、French GAAP、German GAAPの選択制になっていると。実際には、取引所規則においてどちらで上場を申請することを求めるかを決めているというふうに聞いてございます。

以上が、この資料5-1でございます。

それから、資料5-2でございまして、これは会計基準の比較表でございます。会計の専門家の先生方を前にして、大変釈迦に説法で恐縮でございますが、非常にラフな形で一覧表にまとめさせていただいております。先ほどのASBJの説明に関連する項目としましては、例えば上から2つ目の列、包括利益の報告というところでございますが、例えばUK GAAPですと必要となっていますが、連結を作っている場合には省略できる。あるいは、French GAAP、German GAAPでは不要というふうになっている。

あるいは、開発費のところですと、国際会計基準では一定の範囲で資産計上が義務付けになっております。日本ではかつて資産計上は認められていましたが、10年前に費用処理一本に改正されている。UK GAAP、French GAAP、German GAAPでは、資産計上と費用処理の選択が認められているという状況にあろうかと思います。

次のページをお開きいただきまして、のれんでございます。国際会計基準、ご案内のとおり、非償却で減損ということでございますが、日本基準を飛ばしまして、イギリス基準、原則20年以内の規則的な償却で減損のテスト。それから、フランス基準は非償却で減損と。ドイツ基準は見積経済耐用年数で償却し減損もあると。こういったことになろうかと思います。

少し飛ばしまして、例えば最後のページでございます。4ページの上から3段目、(有形固定資産)減価償却という欄がございます。国際会計基準、日本基準は少し飛ばしまして、イギリス基準、経済的実態を反映するということで、「一定の要件を満たした場合、減価償却を実施しないことを認める」の次でございまして、括弧内で「(税務上、減価償却費の損金経理要件なし)」という記述がございます。これは重要でございまして、税務上、いったん会計で計上した減価償却費を取り消しまして、改めて税務上規制されている税務上の減価償却費を損金算入する、こういうものになっております。

フランスの会計ですけれども、経済的実態を反映すると。ただし、税務上の増加償却を特別損失で計上することが認められるということでございますけれども、原則的には依然、従来どおり税務上の損金経理、いわゆる日本でいう損金経理要件に近いものが存在しています。

ドイツ基準でございますけれども、先般の改正で、逆基準性とか言われている規定がなくなり、日本でいうところの損金経理要件的なものが外れました。脚注の3でございますけれども、税務上の選択権というのを行使して、会計上とは異なる減価償却費を計上できるというふうになっていると、こういう状況であるというふうに承知してございます。

それから、これらに関しまして参考1から参考3-3まで、詳細な説明は省略いたします。参考1というのがイギリスでございまして、単体の開示の事例でございます。先ほど申しましたようにイギリスの場合には連結を開示していますと、イギリス基準と国際会計基準が今の表でご覧いただいたとおり、随分中身は違うんですけれども、なぜか、イギリス基準とIFRSというものを連続的なものと捉えられているようでございまして、連結で開示した場合には一定程度の単体の開示の省略は認められています。これはかなり、そういう意味では簡潔な開示のものになってきているというものの典型的な事例を取り上げてございます。

他方、フランスとドイツでございますけれども、複数事例がございますが、先ほどのイギリスと違いまして、IFRSとは連続的であって、従って選択可能というふうには捉えられておりません。どちらかというと、フランスはフランスの基準、ドイツはドイツの基準というものを非常に重視して、単体では自国基準を義務付けているということでございます。

例えば参考1とか2をお開きいただきたいと思います。言葉がフランス語だったりして、大変恐縮でございますが、日本の有価証券報告書の単体セクションに近いような詳細な勘定項目の財務諸表に加えまして、後ろの方には細かい注記がございます。1つ1つの注記の説明は省略いたしますけれども、かなり日本の有価証券報告書の個別財務諸表と注記事項に近いようなイメージのようなものが続いてございます。

それから、参考3-1から3-3というのがドイツでございまして、3-1というのは企業登記簿、従いまして登記所のWebページに行きますと、日本の金融庁のEDINETのような情報が取れるというもので、実際に単体について、このような財務諸表を取ることができます。これはダイムラーですので英文で作成されております。これがいわゆる登記所の電子開示システムで取れる情報でございます。

それから、もう1つ登記簿上、次の参考2のような入り口のページみたいなのがありまして、ここから3-3のダイムラーというか発行企業のページにもリンクしています。3-3ですと、中身は企業登記簿に登記されている情報ですが、アニュアル・レポートの形で、会社のWebページからも取れると、こういうふうな形になっております。

従いまして、日本の金融庁の運営していますEDINETに相当するようなものを法務局の電子登記所のようなところが運営しているという状況で、開示についてはドイツ、フランスではかなり詳細なものを求めてしまっているという状況でございます。

ちょっと駆け足で恐縮でございますが、以上がヨーロッパの状況の説明でございまして、1点だけ補足でございます。資料6で、国際会計基準の基準開発や適用につきまして、これはASBJを中心として、私どもも日本の声を反映させるべくいろいろな取り組みをしているというものでございます。最近ですと、ここにありますようないくつかの会計基準につきまして、実際に、例えば退職給付信託の取扱いについてはインフォーマルなものと位置づけつつも、IASBのメンバーなりスタッフなりが考え方を示しておりますし、それから有形固定資産の取扱いについては、一部に定額法がデファクトで定率法は証明がないと使えないというふうなご意見がありますが、国際会計基準の考え方はそうではなくて、定率法も定額法も優劣はなく、イーブンであるという基準の趣旨を確認しておるところでございます。

それから、次のページでございます。これは、会計基準、日本では民間がリードして作るということでございますけれども、当然のことながら規制当局としても官民一体で会計外交に取り組んでいく必要があります。また、ガバナンスの改善の観点からモニタリング・ボードというものが設置され、金融庁としては長官がこのモニタリング・ボード、国際会計基準委員会財団、まだ登記はされていませんのでIFRS財団ではなくて、ここではIASCFというふうに書かせていただいていますけれども、そのモニタリング・ボードのメンバーとして実際にアメリカ、それからヨーロッパの資本市場規制当局と並んで3人のうちの1人として、そしてIOSCOの代表者とともに、ガバナンスについて議論に参加してございます。先般4月には長官自らこの会議に出席したという次第でございます。

それから、もちろんモニタリング・ボードと、このトラスティの間の合同会合であるとか、その際の対面での議論、あるいはグローバル・ネットワークを有する監査法人のグローバルな本部の方々との意見交換なども取り組んできているところでございます。モニタリングボードについての実際の過去の取り組みなどについては、3ページに要約としてまとめさせていただきました。

あと、資料7、8でございますが、7については国際的な動向でございます。1点だけ申し上げますと、資料7の最後のページでございまして、読み上げるのは省略いたしますけれども、先週末の6月5日、G20のコミュニケで会計についてシングルセットのハイクオリティ・グローバル・アカウンティング・スタンダードへのコミットがされているということでございます。

資料8は、4月に公表しました「IFRSに関する誤解」でございます。詳細についての説明は省かせていただきます。

私の説明は以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

続きまして、本日は経済界より3名の方に参考人としてご出席をいただいておりますので、単体の会計基準のあり方等につきましてご意見をいただきたいと思います。

最初に、三菱電機常任顧問でいらっしゃいます佐藤参考人、お願いいたします。

○佐藤参考人

私の方は、資料2-1、資料2-2、資料2-3と3種類ございます。

2-1は、経済産業省の支援で編成しました企業財務委員会の中間報告のポイントをまとめたものでございます。資料2-2は、その一環で先般3月の終わりから4月の初めにかけて欧州の企業を中心とした実態調査に行ってまいりましたので、そのレポートをご報告させていただきます。それから2-3は、「連・単分離及び開示に関する企業経営の視点」ということでまとめております。ちょっと資料が多いので、できるだけ簡潔にご説明いたします。

まず、資料2-1の企業財務委員会中間報告、ポイントを見ていただきます。この委員会は昨年の11月から今年の4月にかけまして、精力的に議論してまとめたものでございます。委員としては後ろの2枚に委員名簿、ワーキンググループの名簿を添付いたしておりますが、日本の主要企業23社に加えまして、経団連、日本商工会議所等4団体が含まれております。

議論は個々の会計基準というよりも、経営者の目線、企業現場の目線から議論をしてきました。中間報告書のポイントとして、そこに3項目、マル1マル2マル3と書いておりますが、1つ目は、やはり連・単の問題、特に国内制度と密接な関わりのある単体のあり様の検討を急ぐ必要があると、こういう認識でございます。それから2点目は、企業にとって負担が最近非常に大きくなってきている開示制度のあり様の問題について提案をしております。それから3点目は、260万社とも言われる中小非上場企業を対象とした会計基準の問題。これは既にASBJの方で中小企業を対象にした懇談会を開いておりますので、その議論に委ねるということになると思います。

以上が中間報告書のポイントでございますが、2番目に資料2-2に、私ども、この委員会の一環として欧州の実態調査に行ってまいりました。訪問国はフランス、ドイツ、イギリスでございます。訪問先はドイツ、フランスの製造業に加えまして、あと政府機関、証券取引所、アナリスト協会、監査法人、こういうところを訪問してまいりました。総括的には、特にドイツ、フランスにおいて、肩の力を抜いた弾力的な対応をしているなという印象を持ちました。ドイツ版IFRS、フランス版IFRSというのを実践しているような印象を持ちました。製造業の訪問先は、そこにフランス、ドイツで7社、かなり大きな会社を訪問して話を聞いてきました。

それから、2項目の欧州のIFRSの適用状況、実は製造業の対応ということで、いくつか日本で話題となっている項目についてヒアリングをしてきました。各社ともプリンシブル・ベースだというのをしきりと言っておりまして、全部はご説明しませんが、例えば開発費の資産計上等につきましては、フランスのルノー社は開発費総額の50%を計上しております。ドイツのMANという、これはトラックの会社なんですが、これは約5%というような説明がございました。現実に有価証券報告書でチェックしてみますと、大体こんな数字になっております。

ご承知のとおり、ヨーロッパは排ガス規制とか電気自動車対策等で自動車メーカーは大変な開発費がかかっているわけですが、こんなに企業によって違うということで、それぞれ社内で開発費計上のガイドラインを持っているというような説明がありましたけれども、自国基準、先ほど三井課長の話もありましたように、要は、自国GAAPで費用計上できるというルールがあるので、やはりIFRSの連結というのは投資家向けの開示資料だという前提に立っているような気がします。

その他、借入費用の資産計上とか、収益認識等についても日本でいろいろ話題になっておりますが、監査法人と早目にタイアップしながら、うまくクリアしているという印象を持ちました。

興味深かったのは、訪問先全てに実は包括利益の質問をしましたら、何とほとんどのところが、これはイギリスにおいてもそうだったんですが、非常にネガティブな意見でございました。業績指標としての有用性とか、また関心はほとんどないというような意見が支配的でありまして、ある会社は「社長に包括利益の説明なんてできませんよ」と、そんな意見がありました。

それからあと、証券取引所の関係は、先ほど三井課長がご説明されたとおりでございますので、コメントしませんが、要は全ての上場企業がIFRSを適用しているというわけではないということでございます。これは、フランスのユーロネクス、ドイツ証券取引所とも同じでございます。

それからあと4項目に、個別財務諸表の取扱い、ここは非常に私ども、目から鱗のような話が聞かれたんですが、先ほど三井課長の話がありましたように、ドイツの近代化法、BilMoGについては、逆基準性が1月から撤廃されたというようなことでございますが、この辺も税法、BilMoGの関係も話を聞いたんですが、やはりまだかなり保守性を維持しているというような見方が一般的なようでございます。

ドイツの連邦政府に行って話を聞いたんですが、IFRSに基づく財務諸表の目的というのは、あくまでも投資家に対する情報開示であると。ロンドンに拠点を置く、民間の設定する会計基準であるIFRSに基づいて配当計算や課税所得計算、また債務超過の判定を行うことはしないというようなことをきちっと言われました。特に税は国家主権に関わる問題なので、自国基準を堅持していくということを非常に明解に説明されました。

フランスもほぼ同じような問題で、これはフランスの会計基準庁の長官とお会いして、彼がコメントをしたんですが、要はIFRSの個別財務諸表の適用というのは課税ベースを大きく変えるし、元々計算も非常に難しいと。税を巡る大きな国内議論が起こって、とても収拾がつかないようになるだろうと。自国基準をきちっと堅持したいというようなことをおっしゃっていました。

それからあと、これは四半期報告制度、内部統制報告制度、これももう皆さんご承知のとおりだと思いますが、いわゆる欧州では日本が導入したような四半期報告制度や内部統制報告制度は存在しておりません。この辺がかなり日本と違うところで、各企業の負担度も考えると相当な差が出ているというふうに認識しております。

最後の感想ですが、ドイツ、フランスとも、先ほど申しましたようにIFRSに対しては非常にしたたかで弾力的な対応をしているというような印象を持ちました。それから、やはりここにも書いていますように、IFRSは投資家に対する情報開示目的で連結ベースが対象。それから、単体はあくまでも配当課税目的で、自国基準を堅持するというコンセプトが非常に明確。このような枠組みの下でフランス、ドイツとも商法典、税法ともかなりしっかりしたものを持っておりまして、それと、どうも製造業の競争力というのがうまく噛み合っているんじゃないか、私はそういう印象を持ちました。イギリスは、もうほとんど製造業はございません。やはり単体のコンセプトで、自国基準を保持するか否かというのがその辺を左右しているんじゃないかなという印象を持ちました。

それから、資料2-3でございますが、これは今までの私どもの委員会の議論や私自身の問題意識も踏まえてまとめたものでございます。連・単分離及び開示に関する企業経営という視点からまとめたものでございますが、まずは日本の成長戦略を支援するための会計制度の枠組みをということで、成長なくして日本の将来はないと。そのためには、やはり日本の製造業が強くならなければ恐らく日本の将来はないだろうというような基本認識の下にまとめているのですが、会計制度というのは国のインフラに関わる問題ですから、国益上、国家戦略に相当するテーマだと思います。中長期的な視点というのを、今後、日本として考えていく必要があるのではないだろうかというふうに思っております。

そこで、2項目に、単体での日本基準の必要性ということで、特に企業の場合は成長という点では、開発力とか設備投資というのがキーファクターになるわけですが、「○」の2つ目に、IFRSでは研究開発費や設備投資に関わる減価償却の会計基準が、現行の日本基準と異なっています。加えて、現在MOU項目の中で審議中の年金会計とか収益認識、これは製品保証等の問題も含まれますが、この辺は製造業の原価計算にかなり関わってくる項目で無視できないような状況になってきております。製造業のコスト形成、それから製品価格の形成に影響を及ぼすということで、これは企業経営そのものを直撃する、ひいてはやはり国益という観点からも、極めて憂慮すべき問題を引き起こすのではないかというふうに思っております。

このような状況をどうしても避けるためには、これはドイツ、フランスの方式になるわけですが、単体では税法と会社法の親和性の高い日本基準を堅持することが重要であるだろうと。これは、保守主義の思想とか重要性の原則とか、あと税法等の確定決算主義、損金経理要件、この辺の親和性というのは、やはり長い日本の戦後の歴史の中で特に製造業を支えてきた基本的な要因ではないかというふうに思っております。

それから次に、会計制度の枠組みという問題でございますが、そこにポンチ絵らしきものを書いていますが、金商法上の枠組みの概念として、仮にIFRSのアドプションを想定したということを前提にして、こんなイメージのような形を私どもとしては想定したいと。連結はIFRS、単体は日本基準ということでございます。これはまさに現在、米国基準を採用している企業と同様なフォーメーションを考えてほしいというようなお願いでございます。

そのときの上場企業、非上場の連・単の取扱いについて表に書いていますが、「◎」が原則適用、「○」が例外適用というような形になるのではないだろうかというふうに思います。ただ、上場の連結は全てIFRSを適用するのかと。やはり一部、例えばヨーロッパ等では自国基準を認めるというようなことになっていますので、日本も恐らくそんな検討をしないと、マザーズ、ジャスダックまで本当に対応できるのだろうかというような気がいたしております。

それで次に、このような枠組みの下で考えたときの喫緊の要望とか課題について、3ページ目にまとめております。6項目ございます。これは非常に大事な視点なので、読ませていただきます。

1点目は、金商法上の上場企業の開示につきましては、国際的な要請及び基準の相違から、連結のみ開示するという、そういう方向で検討をお願いしたいということでございます。

それから2点目は、非上場・中小企業の日本基準については現行の「中小企業の会計に関する指針」とは別に、中小企業の身の丈に合った基準の作成というのが望まれるというふうに思います。これは、既にもうASBJの懇談会で議論しているところでございます。

それから3点目は、日本基準の単体につきましては、やはり会社法、税法との関連、国内の諸々のステークホルダーとの関わりもありまして、連結とは別の手続きで会計基準の設定が必要となるだろうと。従って、今後の話ですが、会計基準設定主体のあり様も課題となると思います。

それから4点目でございますが、日本基準の連・単の関連性、連結先行とかダイナミック・アプローチというような話が先ほども三井課長からありましたけれども、今後のことを考えると、現下のコンバージェンスという観点だけではなくて、将来的な対応をやはり考えておく必要があるだろうということで、準拠制を完全に維持するのか、またそれが国益に合致するのか、ダイナミック・アプローチという概念を維持していくのか、それからアドプションを前提にしたとき、改めて日本基準のあり様につき見直しを行うのか、例えばのれんの問題をこのまま日本基準としてやっていいのか等、会社法、税法との関連も含めて方向付けすることが喫緊の課題だというふうに思います。

それから5点目は、IFRSを単体に例外適用するという、もしそういうことを想定するならば、やはり会社法との関係とか税法との関係も喫緊の課題になる。

それから6点目が、2009年12月の内閣府令で、実はUS GAAPを採用している企業が門戸を閉ざされました。これは現実的な対応としては、アメリカの動き等々も考えて、米国、日本がIFRSを仮に強制適用するというまでの間は、米国基準の採用をぜひ認めていただきたい。本件は、製造業の方からすごい不安と不満がたまっております。

それから最後になりますが、開示制度の簡素化と短期的業績開示ということで、これも日本企業の負担が非常に重く、開示については日本はグローバルに見ても、フルスペックの状況にあると思っています。企業負担の増加、社会的コストの増加が顕在化していますので、やはり開示についても競争条件をイーブンにしていただきたいというお願いでございます。

あと、四半期開示の導入、これも負担が大きくなっているのですが、企業の業績評価が短期指向になっております。経営というのはやはり中長期指向が重要でありまして、短期指向の社会から中長期指向の社会に転換することが国益上も望まれるのだろうというふうに思っております。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

続きまして、JFEホールディングス監査役でいらっしゃいます山﨑参考人、お願いいたします。

○山﨑参考人

山﨑でございます。簡単なメモを作って資料3としておりますが、これと同じ順番かどうかは別にして、私の考えをご紹介したいと思います。

IFRSが導入されていくということで、我々もグループ会社も含めてそろそろ具体的な準備に入っていかないといけないことになっているわけですが、その中で先ほどから出ていますように、連結先行だということで、単体がその後についていくことに今はなっていると理解されております。しかしながら、私どもといたしましては、なぜ単体を連結に合わせなければいけないのかということについて十分に検討をしていただきたいと思っている次第であります。

元々IFRSを拝見したときは、これは全く私自身、理解不能でありました。私は1968年の入社以来、ずっと財務諸表の作成に関わってまいりましたが、その作成の目的は多くの利害関係者のニーズに応えるものだと信じてまいりました。従って、事業年度における営業の成果を正しく表す、これが最も重要だと理解していました。ところがこのIFRSを拝見いたしますと、それと全く違う観点から設定されていると。いくら投資家のための基準だと言われても、当時は全く納得できなかったということであります。

最近になりまして、このIFRSに規定されている基準の考え方は、これはM&Aにおける企業価値評価の手法と同じだということに気が付きました。つまり、この基準は、企業の買収価格を財務諸表に表すのが目的でありまして、当年度の業績は前年度の買収価格との差額にすぎないということになります。従いまして、減価償却というのはいい加減な評価だということになりますし、資産も負債も限りなくその時点の時価で表すということになると。従って、償却というようなものよりも減損ということが重んじられる手法になっているということだと思います。

このようなコンセプトで設定された基準に基づく財務諸表は、企業の経営にはほとんど役に立たないと思います。もちろん一部例外で、資産回転率の高い企業、業態ではある程度は使えると思いますが、私どものような製造業ではほとんど使えない。つまり、売却を目的として企業を経営している経営者はほとんどいらっしゃらないだろうと思います。普通は会社の経営というのは、お客様のニーズに応えるために、より良いものをリーズナブルな価格で提供しつつ、事業に投下した資金を回収して再生産に備えるというのが、これが経営だと思います。従って、投下資金が間違いなく回収されていることをチェックすることが財務諸表の重要な目的だということでありまして、たとえば一定期間での償却というのは、償却期間自体に完全なものはないわけですけれども、償却によって費用化して、投下資金を回収していくことが非常に重要だということになると思います。

たまたま期末の金利水準や株価で資産や負債の評価額が変化をいたしましても、それは企業の経営の成果とは全く無関係であります。企業を経営する観点からは、経営者や社員が努力すれば解決できる事象と異なるわけですから、そういう意味では関心の程度は低いですし、経営の観点からIFRSの財務諸表を作成するニーズは低いのではないかと考えております。

しかしながら、世界の投資家がIFRSに基づく財務諸表を必要としているのであれば、株式を公開して投資対象となっている上場会社は、そのニーズに応えざるを得ません。投資家が対象としているのは連結財務諸表でありますし、IFRSそれ自体当然に連結を対象とした規定であります。従って、上場会社の連結財務諸表は原則としてIFRSに従った開示をするということになるべきだと思います。

しかしながら、単体についてIFRSを適用するニーズは存在しないと思います。上場している会社の買収価格の算定というのがIFRSの目的でありますから、その会社のグループとしての価値に興味があるのでありまして、そのコンテンツの単体がどうなっているかは全く関心の外になるはずであります。連結に含まれている単体の財務諸表につきましては、それに責任を負う経営者がそれぞれ存在しております。彼らは、親会社から与えられたミッションの下でベストを尽くしているわけでありまして、その成果を正当に評価されることを望んでおります。従ってIFRSに基づく財務諸表は、彼らのニーズに合わないと言えます。

連結は、元々単体に所要の調整を加えて作成されております。IFRSへの組替えは、いわゆる連結調整として実施すればよろしいと思います。各グループ企業から、調整に必要なデータを入手すれば、連結手続きの中でIFRSに従った連結財務諸表を完成することができます。従って、単体は経営の成果が判断できるように作成されるべきであります。単体にIFRSを適用するニーズは存在しないし、適用しても役に立たないと考えます。

また、税務上の確定決算主義は、我が国の企業のガバナンスの維持にとても重要であります。企業の経営者は、成果をできる限りよく表したいと考えるわけですが、一方納める税金はできる限り少なくしたいと考えるわけです。税務の損金経理要件は粉飾決算の予防に効果が大きいと考えます。確定決算主義からの離脱は、会計と税務の完全二重帳簿制となりまして、会計数値と税務数値の相互検証が不可能になります。

税務当局の調査能力は、反面調査ができることもあり、会計士のそれとはかなりの差がございます。また、刑事罰を科されることからも、牽制の能力は非常に高いと思っております。私のアメリカでの経験からも、税と会計の分離は相互検証不能の点で経営者の関心が税から離れ、会計数値を良くすることに向かいがちになります。会計士が関与している会社でも心配なのに、二百何十万社もある法人を考えると、確定決算主義は堅持すべきと考えております。

元来、IFRSは、世界中の企業は単体も含めた会社の決算をこの基準で実施すべきと言っているわけではございません。上場している企業の買収価格を表した財務諸表が欲しい、見たいと言っているだけであります。ただし、世界中の上場企業が横並びで評価されることになりますので、我が国企業が不当に低評価にならないために、IFRSへの働きかけはやはり重要であると考えます。従いまして、今の関係各位のご努力は継続することが重要であります。

ただ、それと、単体をIFRSで作成することは全く関係ございません。単体の会計基準は我が国にとって最適なものとすべきであります。人々が安心して暮らしていける社会を作るためにも経済成長は必要であります。そのためには、企業が経営の成果を正しく評価し、次の進歩のために何をなすべきかを判断できることが重要と考えます。従って、企業の買収価値ではなく、企業の活動の成果を正しく表し、次になすべきことが読み取れる会計基準が必要であると考えます。

従いまして、我々がやるべきことは、上場会社の連結財務諸表に適用されるIFRSそのものの改善と、我が国の発展に役立つ日本の会計基準の設定ではないかと考える次第であります。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

続きまして、三井住友銀行執行役員・財務企画部長でいらっしゃる境参考人、お願いいたします。

○境参考人

三井住友銀行の境でございます。本日は、このようなご発言の機会をいただきまして誠にありがとうございます。

本日議題の個別財務諸表に関わります会計基準の取扱いにつきまして、簡単ではございますが、私ども銀行業に与える影響等を中心に、個別行の財務担当の立場で意見を申し上げさせていただきたいと存じます。

まず、本論に入ります前に、三井住友銀行が属します私どもの三井住友フィナンシャルグループの概要について簡単にご説明いたします。組織形態は、持株会社であります三井住友フィナンシャルグループの傘下に三井住友銀行、リース会社、カード会社、証券会社等を擁する複合金融グループでございます。持株会社は上場しておりますが、三井住友銀行をはじめとしました大半の子会社は非上場でございます。連結ベースの総資産は約120兆円ございまして、うち中核でございます三井住友銀行が約85%を占めております。この結果、バランスシート、損益の双方におきまして銀行単体、連結ベースともに、銀行主要プロダクトでございます金融商品の占める割合が非常に高くなっている状況にございます。

このような状況を踏まえまして、2点申し上げさせていただきたいと存じます。

まず1点目は、バランスシート、損益に占めます金融商品、とりわけ有価証券、貸出金の割合が高く、かつそれらに関します会計が、現在IFRSにおきまして大きく変更されようとしている点に起因いたします論点でございます。

ご高尚のとおり、現在、金融商品がIFRSの見直しの対象となっておりますが、今回の金融危機を受けましたG20の要請もございまして、今後その内容が大きく変更となる可能性がございます。具体的に申し上げますと、昨年、有価証券の測定区分を含みますIFRS9号が公表されましたが、債券や株式の会計処理が現状と大きく変わることとなっております。

また、銀行の主要業務でございます貸出金に関する引当ての方法や、収益の認識方法を大幅に変更する案が検討されておりますほか、金利、為替、信用リスク等のリスクヘッジのために使用しております、デリバティブ取引に適用するヘッジ会計につきましても、今後、現行基準を大幅に変更する内容の提案がなされる可能性がございます。

この結果、詳細のご説明は割愛させていただきますが、IFRSを適用した場合、貸出金利息、与信関係費用の計上方法、ヘッジ会計の適用範囲・方法等の変更によりまして、現在の日本基準対比では相当程度の変動が生じる可能性がございます。

一方で、冒頭申し上げましたとおり、私どもの場合は連結財務諸表に占めます三井住友銀行単体の割合が非常に大きく、経営成績の開示は銀行単体を中心に行っております。従いまして、仮に連結財務諸表はIFRS、非上場であります三井住友銀行単体の財務諸表は日本基準となった場合、会計基準の内容に大きな差異がございますと、連・単の差異によりまして、経営成績の開示という観点からは困難さが生じる懸念がございます。また、行内の収益管理等の管理会計は、業務運営そのものと密接な関係にありますとともに、財務会計とは表裏の関係にありますことから、業務運営上、IFRS、日本基準の双方との関係をどう考慮し、設計していくべきかという経営上の論点も生じてまいります。

2点目は、銀行の特徴でございます国内外の各種規制への対応という論点でございます。

銀行業に課せられます各種規制は、連結ベース、銀行単体ベースの双方が対象となることが一般的でございまして、会計とも密接にリンクしております。例えば銀行の自己資本比率に関する規制でございますBIS比率規制について申し上げますと、当社グループは国際的に活動する金融機関としてBIS規制上の国際統一基準を選択しておりますが、連結ベースだけではなく、非上場の三井住友銀行単体も規制の対象となっております。このBIS自己資本比率規制の算出は、連結ベース、銀行単体ベースともにそれぞれの財務諸表を基に行いますが、グループ内の連結と単体、上場・非上場で適用されている会計基準が大きく相違した場合には、BIS比率の算定において何らかの手当てが講じられない限り、BIS比率にもその影響が及ぶことになります。

BIS比率を含めまして、国際的に活動する金融機関に対する規制強化の方向にある現状を踏まえますと、従来以上に国際間、連結単体間での会計基準の平仄の問題に留意する必要性が生じてくるのではないかと考えております。

以上が、銀行業の特徴を踏まえました私どもの考えでございます。今申し上げましたとおり、現状はグループ内の連結・単体、上場・非上場の財務諸表で適用する会計基準に大きな差異がないことが前提となっております。仮に相応の差異が生じました場合には、差異の調整等何らかの措置が必要となりますが、財務諸表作成者等に相応のコストが発生するという問題に加えまして、財務諸表の利用者である株主、投資家等、あるいは財務諸表に基づく各種規制における比較可能性の担保といった問題などが生じる懸念がございます。

従いまして、会計基準変更や各種規制の議論の今後の動向にもよりますが、私どもといたしましてはグループ内の連結・単体、上場・非上場で同一の会計基準を選択することが、国内外の規制ルールとの平仄確保の観点や財務諸表の作成者やステークホルダーに発生する問題を抑制する観点から必要となる可能性がございますので、税法、会社法といった制度面等での手当てが必要となる点は認識しておりますが、個別財務諸表や、上場子会社へ連結財務諸表と同様のIFRSを適用可能とする選択肢は確保しておく必要があるのではないかというふうに考えている次第でございます。

簡単でございますが、私からの説明は以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

それでは、これまでのASBJ、事務局、それから只今の参考人の方々からのご説明を踏まえまして、単体の会計基準のあり方に関してご自由にご意見を伺えればと思います。ご意見等のある方は挙手でお願いいたします。

斎藤静樹委員。

○斎藤(静樹)委員

今日の議論の目的が、連結先行の枠内での連・単の関係なの

か、そうではなくて、連・単分離を含めた日本の制度のあり方そのものを問うているのかは、よく分からないのですが、一応それはあまり厳密に区別しないで印象を申し上げたいと思います。

私は連結先行という議論には賛成いたしました。ただ、連結にIFRSを適用する一方で、税制や会社法制との関係が難しくなるから連・単を分けるという議論には、私は強い懸念を感じています。難しい結果になるのは最初から分かっていたわけですから、連結はIFRSにしようと決断するのであれば、単体もIFRSに一元化していこうと主張するのが本当だと思いますし、それができないというなら、元々の決断に無理があったのですから、そこに戻って考えるべきだと私は思います。

一時的な連結先行はともかく、連・単を完全に分離した事態を固定するのは疑問ですし、しかも今後どんなIFRSが出てくるか分からない現状で、IFRSの採用とセットで決めてしまうというのは、取り返しのつかない結果になるのではないかと思っています。

ご承知のように、日本の戦後の会計制度改革の主眼は、商法と証取法の二元的な会計制度を一本化することでした。連・単の調整もその延長上にありました。ほぼ半世紀をかけて達成した感のあるその成果を、今度はご破算にしようというのは、いかにも場当たりな感じがしないではありません。もちろん、それしか方法がないというなら別ですが、昨年のこの審議会での中間報告は、アメリカがIFRSへ移行するなら仕方がないという合意でありました。しかし、その後のアメリカは、まだ分かりませんけれども、少なくとも移行するということは考えにくい客観情勢になりつつあるようですし、他方で中国が移行する方針ではないということは今や明白であります。

それでもといいますか、だから逆に日本はIFRSと心中しようというのはちょっと理解しがたい議論ですし、しかも、それを可能にするためにさらに連・単を分離しようというのであれば、さすがに通りにくい話じゃないかなという感じを受けております。

申し上げるまでもないことですが、グローバリゼーションというのは、各国が国際標準を取りに行く戦争、競争でもあります。その競争に参加できる立場を失えば、その国は三流国になるしかないわけです。その観点から言いますと、会計基準もコンバージェンスを図りながら、連結ベースの自国の基準を自国の市場で絶えずテストをして、その結果を国際的に発信する、そういう体制を失うべきではないと私は思います。単体の基準というのは基本的にそれと整合させるべきであって、両者の分離というのは、これまでと同じように基本的には例外と言える範囲にとどめるべきだと考えます。

国際標準化というのは会計基準だけの問題ではなくて、これからはそれと密接に噛み合った周辺制度にも及んでいくはずです。会計制度はその先駆けでして、そこで我々が対応を誤ったために、今後の国際化をゆがめるということはないようにしたいと私は思います。

先ほど佐藤参考人がおっしゃられたドイツ、フランスの例のように、一方が50%、他方が5%という感じですと、これは基準の解釈が全く違うということです。そうなれば基準の統一は比較可能性を全く保証しない。従って、投資家のためにならないことは明らかです。また、先ほど山﨑参考人がおっしゃったように、IFRSを単体に適用しても意味はないというのであれば、それは連結にも意味がないということかなという感じもいたします。

現在の不確かな条件の下で私どもにできるのは、IFRSを使うニーズのある企業をできる限り支援することであって、原則として連・単を一体化した日本基準の下で、従来からの例外的な扱いを拡張することだろうと私は考えております。

○安藤会長

ありがとうございました。

他にいかがでしょうか。錢高委員、どうぞ。

○錢高委員

先ほどからいろいろとお話を承りながら、私も実業の世界にいる立場から、先ほどの佐藤、山﨑参考人のご意見を非常に共感を感じながら伺いました。いろいろな立場からいろいろな見方もありますし、このIFRSが世界的な一つの潮流ということは理解しておりますが、まず、我々がそれぞれ、先ほど佐藤参考人から説明がありましたように、ヨーロッパでもイギリスと、フランス、ドイツがまた違うということから、製造業を非常に重視している国と、製造業は非常に疲弊しているイギリスでも考え方が違うということも、将来の日本の行く末のことを考えなければならない。国益というお話がございましたが、非常に投資家の立場、資本市場の立場から見る立場と実業の立場と、どうしても考え方が相克するというようなことはやむを得ない環境かなというふうに思います。

そういった意味で、あくまでベースになるものは実業の世界においてはBtoBあるいはBtoCという、根幹のビジネスの目的は消費者のためであり、あるいは企業対企業が信頼できるという、そういったベースがきちっとできているならば、それほどIFRSのような資本市場的な投資家の立場だけで物事を考えなくても解決できる部分もあるかもしれないというのを、ヨーロッパのいろいろな経営者の面談の中のご報告で非常に感じたところでございます。

私自身も、いろいろな考え方をもう少し聞かせていただきたいという立場で、今日のこの総会におきまして、もしできれば、佐藤参考人、山﨑参考人の実業の方々のご意見を、委員の方と同じようにこの会議で挙手して討議に参加できるように、会長、お願いしたいと思います。それは私の希望であり意見でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

他にどうぞ。泉本委員、どうぞ。

○泉本委員

連・単分離にしろ連結先行にしろ、今日の議論というのは、単体と連結と違う基準を作れと言っているのか、あるいはASBJで現在日本基準を改訂しながら、それはIFRSの改訂に倣いながらコンバージェンスで走っているわけですよね。常に周回遅れで走っているわけですけれども、理論的にはいつかIFRSに追いついてしまうわけですね、日本基準が。そうすると、連結と単体が違う基準ということにはならないし、最初の斎藤先生のご懸念もあるのですけれども、私も今日の会議の目的がよく分からないんですけれども。連結と単体が違うということがもし仮にあるとしたら、今、ASBJで開発しているコンバージェンスの日本基準の改正をストップしようという、そういう議論を今日は目的としているのでしょうか。その辺がよく分からないのと、今、先生が言われたように、参考人の方もご発言をと言われましたけれども、今日は何か多数決で決めることが目的にはなってないですよね。

何が議論の目的で、どこがポイントなのかが、最初のところを会長の方からもう一度ご説明いただけたらと思うんですけれども。

○安藤会長

私の理解する限りでは、今日、最初にASBJのご報告がありました

が、あれが出発点になって、この審議会がこの会を開いているということだと思います。要するに、ASBJで今、いろいろコンバージェンスに向けてやっているんだが、はっきり言えばデッドロックに乗り上げてしまった。さあどうしましょうということで、昨年6月のこの審議会総会で決めた意見書、中間報告をこの総会が出したわけですから、もう一回こちらでその辺の枠組みといいましょうか、議論してほしいということだと思います。

事務局からありますか。

○三井企業開示課長

私の方から申し上げるのは僭越かもしれませんけれども、ASBJでのご議論というのは、先ほどの資料でいいますと資料4にありますように、この審議会で1年前ないし2年前に議論された連結先行ないし連・単のダイナミック・アプローチという、時間軸の中での連・単のずれを許容すると、こういう議論の枠の中で議論しましょうということを、多分ASBJの常勤委員の方を中心に議論を立てていただいたのだろうと推測してございます。

他方、実際にASBJでの基準開発の議論においては、大陸EUにおける例えばドイツ、フランスのように、連結と単体というのは完全に分離しているようなイメージを持って、例えば包括利益計算書であれば、包括利益計算書の会計基準の導入は連結だけで、単体は例えば現行の基準のままいくといった議論も、反対側というか別案として出されて、それに対して連結先行の枠組みの中で対応できる案なのか、あるいはそこから逸脱するものなのかと、そんな議論もあり、もし連結先行の枠に入らないとすれば、それは連結先行という案を提示した企業会計審議会にもう一回議論を戻して、さらにもう少し幅広いというか、既に出された連結先行、ダイナミック・アプローチという枠組みの是非も含めた議論を求めるという趣旨だったのかというふうに思っています。

事務方としては、特定の結論を今、念頭に置いているわけでもありませんし、こうしたいからこうするという議論の目的を現時点で意図的に持っているわけではございませんで、ASBJにおける議論、あるいは昨年までの企業会計審議会の議論、それからヨーロッパの状況といった材料をしっかりテーブルに出させていただいて、まさにこの企業会計審議会の先生方にしっかりした議論をお願いできればありがたいと、こういった趣旨でございます。

○安藤会長

島崎委員。

○島崎委員

産業界の方からも意見が出ていましたし、先ほど斎藤先生の方からも、昨年度のこの中間報告が出るときの連結先行の考え方についてお話がありましたので、その点に関して少し私の意見を申し上げたいと思います。

まず連結先行につきましては、私も昨年、この審議会でその方向で行くことについては賛成をしたわけであります。ただ、そのときに、単体は連結にいずれついて行くんだと。従って、コンバージェンスは進めるという前提であったろうと理解していますので、そういう前提に基づいてASBJが粛々と作業を進めていると思います。

先ほど、連・単分離の話も出ていますが、一方、金融界、あるいは我々のような卸売業等とでは若干意見も違うわけですが、連・単の基準ができるだけ一致している方が決算の作業上も、あるいは財務諸表の質を高める上でも好ましいのではないかという意見もあります。また、単体にIFRSを選択的に認めるべきだという意見も中にはあるわけであります。

先ほど来議論になっていますが、IFRSで決算をすると、その決算書は投資家に対するレポーティングが目的であるため、経営に全く使えない代物だということについては、基準そのものの中身を見ていくとそうではないし、既にヨーロッパではそれを使って経営しているわけです。中国、インドをはじめアジアの諸国、製造業の拠点となる国がIFRSを採用しようとしています。中国については、確かに国の制度上アドプションという方法はとれないということです。先週、中国の財政部の幹部と意見交換してきましたが、中国は限りなく全面的なコンバージェンスをするんだと、こういうことを言っており、来年度完了すると言っています。国の制度が違うので方法論は違いますが、中国語での発言を英語に直す時は、何故かアドプション、アドプションと言っていますから、アドプションぐらいのつもりでコンバージェンスを進めているのではないかと思います。その辺は、私は素人なのでどこまで厳密に考えているのか、ちょっと分からないところがあります。5月の連休明けにシンガポールで行われたアジア・オセアニア地域のリージョナル・ポリシー・フォーラムがありまして、出席したんですが、フォーラムのテーマの1つがアドプションとコンバージェンスについてということで、中国でのコンバージェンスを対象にした議論がなされました。中国は限りなくIFRSに近い、それに一致したものを自国の基準としていこうとこういう動きであることは確かであろうかと思います。

そういう中で、完全に連・単を分けた形で進むということについては、経営上の観点から本当にそれがいいのかどうか、もっと議論する必要があるのではないかなとこう思います。

それから、先ほど来、産業界の方から話が出ております開示の簡素化という点についてですが、私も昨年の中間報告が出るときに、IFRSを連結決算に、国際対応ということで導入を考えていくのであれば、個別の開示については限りなく簡素化してほしい、場合によっては止めてほしいというようなことまで申し上げております。

また、確定決算主義、損金経理要件については、これまた意見がいろいろあるところでありまして、私は個人的には上場会社、金商法会社については、世界に類のない立派な内部統制システムが入っておりまして、そういう企業においては、確定決算主義というのを義務付けなくても、財務諸表の信頼性というのは担保できるのではないかと思っております。そこのところは確定決算主義から離れる考え方があっていいのではないかという意見を持っています。

以上です。

○安藤会長

武井委員、どうぞ。

○武井委員

私も産業界の一員として、せっかくの機会でございますので、2点ほど申し述べさせていただきたいと思います。

基本的に連結財務諸表についての取扱いは、この場での議論と私も全く同感でございます。特段、異論はございません。個別の取扱いでございますけれども、基本的には先ほどの佐藤参考人、山﨑参考人のご発言に、私も同感でございます。関係者が長い時間をかけて、それぞれがご苦労されて会社法ですとかあるいはまた税法、それからまた本日議論になっております金融商品取引法、それぞれが親和性というものを求めてやっと、非常に調和のとれた三位一体の制度ということで、実務の中で活きているというところに来たわけでございます。ここでまた連結財務諸表を世界の潮流に合わせるという観点から、いわゆる会社法ないしは税法を突き放す形で、あるいはついてくるかどうかそこは見極めがつかない形で、整合性という観点からそれを求められてもいない単体財務諸表を右に倣えとするのは、いささか私は時期尚早ではないかなという気がします。

それともう1つ、私どもはいわゆる財務諸表等規則でいいます別記事業でございます。別記事業と申しますのは、私どもは電気事業でございますけれども、連結財務諸表を電気料金の原価算定に用いるのではなくて、日本基準に基づいたいわゆる個別財務諸表、これを基に電気料金の原価というのを算定するわけでございます。

従いまして、おっしゃられておりますように、会社法とか税法との親和性に加え

て、私どもの場合は別記事業であるということから、現在のいわゆる単体のベースでの作成基準というのが非常に大事なわけでございます。

よしんば、議論が出ておりますとおり、ここでIFRSを採用することによって、例えば課税所得が増加したり、あるいは配当可能利益、あるいは電気料金の原価というものが予想せざることによって増減したりするというようなことは、これは単なる会計上の話ではなくて、いわゆる経営の根幹を揺るがしかねない大問題、ゆゆしき問題になり得るわけでございますので、やはり私としては現在の単独の財務諸表というものを当面は大事にしていただきたい。

佐藤参考人もおっしゃっておられますけれども、この場でどうかは別として、これは三井課長がおっしゃられたダイナミック・アプローチというのがあるいはそういうことを含意するのかもしれませんが、単体の取扱いというのは時間をかけて、会社法あるいは税法との親和性、あるいは私どもでいいますと業法というのがございますけれども、そういうものとの親和性というものを担保する中で将来の扱いというものをご議論していただくのであれば、これは私ども別記事業に属する人間としても基本的には同意できる話なんだろうなとこう思っておりますので、当面はぜひ現在の単体の基準というものを大事にしていただきたいなというのが1点です。

それからもう1点は、実務負担が非常に重くなっているということを、今度のいわゆるIFRSの問題を含めてちょっと申し上げたいと思います。再三出ている話ではございますが、ここ数年のいわゆる金商法、会社法、あるいは取引所の開示規則というものがおびただしいボリュームになっておりまして、決算の取りまとめ時期を含みまして、もう年がら年中、実務担当部門というのは大変になっていて、恐らく繁忙感と疲弊感というのはピークに達していると思います。そこに加えてこの問題で、単体財務諸表までフルスペックでやるかやらないかという議論でございますので、その問題は先ほど申し上げた第1点目の問題にもなろうかと思いますけれども、ぜひやはり既存の開示制度というものも一緒に棚卸しをしていていただいて、本当に投資家は全てを同じように求めているのかどうなのか、これは時代の変化の中で必要性がかなり希薄になったんじゃないかということはぜひ真剣に検討をしていただければなと思います。

私は、会社の方では若い方たちに、経理部門は経営の羅針盤たれということで高い目標を掲げて呼びかけておりまして、できるだけ優秀な人材を経理部門に集めまして、いわゆるいきいきと気概のある仕事をして、なおかつ経営に直結する価値創造的な仕事をやらせたいなと思っているんですが、どういうわけか最近、経理部門を敬遠する若手社員が多くなってきております。やっぱり一企業ではなくて産業界全体として、優秀な会計マンを今後も維持しなくてはいけませんし養成しなくてはいけません。また、自ら作った財務諸表の伝道師となって、IR業務ですとかあるいは投資家に責任を持ってご説明をするということまでやりませんと、作ったら作って出すだけでもうへとへとというのでは、これは本末転倒ではないのかなと思います。既存の開示資料も含めてボリュームの棚卸しというのはぜひお願いしたいなとこう思います。

2点、よろしくお願いします。

○安藤会長

ありがとうございました。

久保田委員、どうぞ。

○久保田委員

ありがとうございます。

まず、現状の認識ですけれども、先ほど斎藤先生からお話がありましたアメリカの動向等もありますが、特に経団連会員企業と申しますか上場企業は、今後の、まさにIFRSのアドプションを念頭において、いろんな準備を開始しているというのが現状でございます。そういった中で、やはりこの単体の基準の姿というのが明確にならない限り、なかなか本格的な準備に進めないということで、ぜひこの企業会計審議会等でもご議論いただきたいと思っておりまして、今般こういう形で議論を開始されたということは、我々、評価しているところでございます。

それと、佐藤参考人の方からご提示されました資料2-1の、経産省企業財務委員会中間報告書につきましては、特に製造業の認識としてはまさにこういうことだろうというふうに思っております。まさに連・単分離のところ、それから、開示制度のところは、これは別な場でございますけれども、私も先般、内部統制については簡素化という意味でレビューにしてもらいたいというようなこととか、それから四半期の簡素化もやってもらいたいということを言っているところでございますし、それから、非上場のところについては、別途会計基準の議論が今進められているとこういうことでございます。

他方、産業界の中にも、今日の三井住友の境参考人、あるいは島崎委員のお話がありましたように、単体の基準については意見が分かれているというところでもございまして、なかなかこの辺、経団連としては非常に苦慮するところでございます。この辺については幅を持った柔軟な方向性というのが示されることが望ましいと、こういうことでございます。

あと、現場の実務負担のところについては、今、武井委員からもお話がありましたように、まさにこれは今大問題でございまして、経団連としても今、調査も開始していまして、もう少し包括的にいろいろ簡素化を提言していきたいというふうに思っているところでございます。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

他にいかがですか。辻山委員、どうぞ。

○辻山委員

ありがとうございます。

3点についてお話しさせていただきたいと思います。まず連・単の話をする場合には、IFRSアドプションを前提に議論する場合と、IFRSへのコンバージェンスを前提にする場合とでは、連・単の関係も自ずとかなり異なった姿になるのではないかと思います。

そしてアドプションを前提に議論する場合は、アドプションの範囲が見えていないと連・単の話に結び付かない。と申しますのは、今のご指摘もありましたように、このところ、いろいろ制度改正があったわけですけれども、会計基準については一度アドプションしますと後戻りできない。これはかなり継続性のあるものであるわけですね。従いまして、結果として後悔しないためには、ニーズのあるところにまずIFRSをアドプションすべきで、ニーズのないところに強制的にアドプションするということは後に禍根を残す。そうすると、ニーズのあるところはどこなんでしょうかということになりますが、例えば今、米国基準を使われているような企業でIFRSを使いたい、そういう企業にIFRSを適用するということはこれは好ましいことであろうと思います。

そうすると、そういう範囲が非常に限定的であれば、今の米国基準を採用している会社のように、連・単が必ずしも一致していなくても、それなりのコストを払ってIFRSを連結に適用するということは合理的であろうと思います。従って、IFRSのアドプションの範囲ということが分からないと、連・単の問題というのを一律に議論することはできないのではないかというのが第1点目です。しかもアドプションの範囲は、ニーズというものを見極めて、ニーズのないところに入れるということはできない。特にこれは企業のニーズだけではなくて投資家のニーズ、後ほど3点目で申し上げますけれども、必ずしも企業に常時M&Aのような情報を求めている投資家がマジョリティなのかどうか、この辺も見極めなければいけないと思います。

2点目に、コンバージェンスの話に移りますと、連結についてコンバージェンスを念頭において議論する場合は、先ほどのアドプションとは異なりまして、今度はコンバージェンスの中身の問題になってくると思います。どういうコンバージェンスをするのか。何もかも、IFRSの方が先進的だということでそちらにただ合わせていくのではなくて、主体的にといいますか、主体的なコンバージェンスをするのであれば連・単を分離する必要性は必ずしも高くないというふうに思います。

そこで、最後の問題ですけれども、結局、主体的なコンバージェンスというのは何でしょうかということですが、コンバージェンスを究極的に進めるにしてもアドプションするにしても、IFRSを考えていく場合には何人かの方からご指摘がありましたけれども、MOU項目というものを念頭に置いてIFRSについていかなければいけないというふうに思います。

MOU項目というのは、既に1980年代から世界的な論争が続いて、30年間決着がつかない問題が今凝縮されているわけですね。ですから、これがどういう方向に進むのかということが一番重要なのですけれども、最も象徴的なのは、もし日本がアドプションする場合はもとよりのこと、コンバージェンスすることを考える場合にも、負債の評価というものを、今は公正価値オプションですけれども、本業の業績が悪化すると自己が発行している社債を時価評価して利益が出るという、この会計モデルにどこまでついて行くのか。自主的にアドプションする企業はニーズがあってやりたければ構いませんが、それは限定的にアドプションする場合を考えた場合ですが、日本基準そのものをコンバージェンスするときには、そういう会計モデルにコンバージェンスするのか。この辺はかなり原理原則、会計モデルの問題そのものをきちっと議論しないと、1つ1つこれも合わせる、あれも合わせるというと、かなり不整合な会計基準を日本が受け入れていくという姿になるのではないかということを懸念しております。

以上、3点でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

平松委員、どうぞ。

○平松委員

1年前の議論のときに、連・単分離を述べましたが、そのときには産業界からもあまり支持を得られませんでした。只今、製造業の方お二人が全く同じ発想でご発言なさいましたので、びっくりしました。今日のお二人の考え方を、私は今日、改めて支持させていただきたいと思っております。

といいますのは、現在の会社法、税法の規制を前提とする限り、連単分離でないとしかたがないと1年前にも考えていたわけであります。先ほどご提案がありましたように、税法との関わりの中で、一部の内部統制がしっかりしている企業には確定決算主義が要らないということになるのであれば考えはまた変わるのですが、現状を考える限りは連・単分離で行かざるを得ないだろうと考えます。

それから、現在ASBJがコンバージェンスをしておりますのは、元々はEUとの関わりの中でコンバージェンスをする、そして東京合意の下で2011年、そしてそれ以後も続くんでしょうけれども、ひとまず、コンバージェンスは2011年を目指しているわけです。その途中でアメリカの態度の変化があってこの中間報告につながり、そこでアドプションに向かう方向性が示されたと理解しております。そのために議論がやや錯綜しているところがあると思うのです。

今、辻山委員から適用企業の範囲についてご発言がありました。アメリカでも範囲を3段階に分けて適用しようとしておりますが、それは別途考えるとしても、やはり上場会社の連結にIFRSを適用し、単体については日本の考え方を適用する、そのあり方をまた検討する必要があります。

そして、もっと極論するならば、私どもは今、この審議会としては、アドプションを2012年に決断しようとしているわけで、そして、アドプションを決断すれば2015年または16年に適用と言っているわけです。この議論が、産業界をいらつかせている。それは、2012年と言いながら、現在もう準備をしないといけない。そうするならば、ちょっと極論で、これまた支持は得ないと思いますが、少し早めて2011年6月にアドプションを決めればいいんじゃないかと思います。その場合でも適用は2015年または16年にすること、個人の意見として一言申し上げておきたいと思います。以上でございます。

○安藤会長

西村委員。

○西村委員

私もどちらかというと、連結先行という考え方で昨年は考えておりました。現在もその考え方は変わりませんが、今の産業界のお二人のご意見に全く同意見であります。一方で、やはり私ども、それほど大きな会社じゃありませんが、海外に20ぐらいの会社がありますと、会計基準の統一というのは必要なのではないかなと。これはそういうふうに考えております。

ですから、我々としては、例えばIFRSそのものかどうかは別にして、私どもの会社ですと東海ゴムと申しますけど、東海ゴムGAAPのようなものを作って、それをベースにしてきちっと連結経営をやっていこうというふうに思っているのは事実でございます。

とはいえ、IFRSそのものが現状、先ほど山﨑さんがおっしゃったように、やっぱりこれはM&Aのための会計で、あるいはそのための表示の仕組なので、それをそのまま実際の我々の経営に適用できるかというと、基本的には難しいんだろうなというふうに思います。まさに我々の評価、営業の成績が、極端に言うと期末1日の変動によって大きく変わってしまう、それでは経営は当然できません。例えばいくらのものをいくらで買ってきて、それを原価計算をしてしっかりとコストとして積み上げ、また、そのコストをどうやって1円2円下げていくかというのが、経営そのものだと思いますが、そういう努力を全くないがしろにするような考え方では、企業経営はできないでしょうし、どこもそんな形で経営している会社はまずないと思います。そういう面で、IFRSの考え方をそのまま適用するのではなくて、やはりコンバージェンスをきっちりやって、日本の考え方あるいはものづくりの考え方をベースにして、そこへ、時間はかかるかもしれませんけれども、日本の基準も含めて落とし込んでいくというところが、やっぱり基本的な進め方になるんじゃないかなというふうに思っておりまして、このような連結先行の進め方をぜひお願いしたいというふうに思っています。

それと、もう1点は、一般の投資家に対して本当に単体が必要なのかというのは、ぜひこれは議論してもらいたいというふうに思っています。我々自身もそうですが、只今現在、足元で単体がどうだとか、子会社の1つ1つの業績がどうだというのはもちろん見ますけれども、経営全般としてはやっぱりグローバルにどういう事業がどういう業績なのかという見方をしておりまして、経営そのものはむしろ連結の見方になっております。

また、佐藤参考人もおっしゃっていましたけれども、IRなどで国内は勿論いろいろ海外にも行っても、単体のことを聞く人なんかまずいません。単体の業績がどうですかなんて質問されたことは、ここもう10年ぐらいないと思いますね。ですから、やっぱりそういう面からも、本当に単体の公表が必要なのかということは、ぜひよく考えていただきたいというふうに思っております。逆に言えば、必要ないじゃないかと思います。

以上です。

○安藤会長

増田委員が手を挙げておられましたね。

○増田委員

監査人の立場で、前回、連結先行ということに賛成をしております。その前の年に、今回の佐藤参考人たちが行かれたヨーロッパの方にも調査に行ってきて、実情については報告をここでもさせていただいたと思います。

我々会計士、監査人としましては、先ほど経団連の久保田さんがおっしゃられましたけれども、監査する対象はメーカーさんもあれば金融業もあれば商社もあるという中で、これは考えていく必要があるだろうと思いますし、特に上場している会社の実際の東証等における外国人株主の取引高50%を超しているというようなことを聞いておりますので、そういう状況の中を考えてみますと、連結財務諸表についてはIFRSを使うことにする。これは、佐藤さんも山﨑さんもやむを得ないだろうというふうにおっしゃっておられますし、それから、そういう意味では日本基準を現状のコンバージェンスの段階で止めていき、連・単をとりあえず分離をしていく。分離という言い方はよくないので、連結先行ということでですね。

我々は元々、連結財務諸表というのは、個別財務諸表の集積であるというふうに考えておりますので、経済効率、監査効率から考えても、当然これは同じ会計基準で作ってもらいたいというのが当たり前ですし、それを主張してきているわけですけれども、そういった中でも現状の税法だとか会社法の日本の実情を踏まえて日本の会計基準というのが今あるわけですから、その中でできる範囲で考えていく必要があるだろうというふうに思っています。

ただ、残念ながら、先ほど来ちょっとお話がございましたけれども、こういった国際会計基準だとか日本の会計基準に対する認識というのが、日本国内でこの2、3年でやっと高まってきたということになって、先ほどもちょっとお話がありましたけれども、日本経済のインフラだと言っていただいて非常に喜んでいるわけですけれども、今まではそういうことはなかったわけです。そういう意味ではこういう認識を持っていただいて、今の国際情勢だとか経済状況を踏まえながら日本の会計基準はあるということです。日本の会計基準として考えていくというのは、連・単分離になりますけれども、それはある程度やむを得ないだろうと思いますし、IFRSがそれなりの基準になっていけば、別にそれはコンバージェンスするなりアドプションするなり、別に構わないんだろうというふうに思いますので、現状はやはりこういう連結先行という言葉で行かざるを得ないのかなというふうに、私は思います。

○安藤会長

ありがとうございました。

他に。八田委員、どうぞ。

○八田委員

ありがとうございます。

先ほど、山﨑さんの報告の中に、IFRSは会計基準じゃないといった旨のご発言がありました。私の記憶による限り、かつてのIASといった基準がこのIFRSに変わったとき、まさに財務報告に係る基準だということで、細かい議論は割愛しますけれども、あくまでもマーケットのステークホルダーとしての投資家に適った情報開示を促進しなくてはいけないという視点から、呼称も変わったと思います。それは、私なりの理解でいくと、旧来の国際会計基準、あるいは一般的な会計の基準というのは、作り手側の理論が先行していたということです。つまり、読み手側あるいは利用者側についてはそんなに考慮に入れられていなかったということです。確かにこれは、歴史の本を紐解くともっと長い歴史があるかもしれませんけれども。

そのときに、上場会社ないしは公開会社の場合、利用者は誰なのかということが問題になります。アメリカも、実は舵を切って国際会計基準の受け入れに傾くときの1つの大きな要因は、アメリカのマーケットの投資家は米国人だけじゃないんだということ、かなりの部分が外国人投資家であるということで、これはグローバルでボーダレスでどこの国の投資家がいるかわからないということです。従って、我が国でもそういうのを前提で連結先行で入ったということですと、そこでの企業は元々やはり国際的な視点で対応しなくてはならないとなってきたときに、私は全部理解できているかわかりませんけれども、先ほど斎藤先生がご指摘になったように、この方針を我が国である程度示したということは、時間的なずれがちょっとあるかもしれませんけれども、単体のレベルも当然そっちについていくだろうと思います。

どうも連・単分離の1つの根拠として、会社法とか税法が親和性が高いということですが、これは作り手側にとって親和性があるわけであって、別に読み手側は関係ないわけです。もっと言うと、やはり日本の場合、税法との断絶といいますか、それと手を切る覚悟がないと、このIFRSアドプションの流れというのは確たるものにならないんじゃないかと思います。従って、ここはやはり時間がかかるかもしれないけれども、そういった勇気が必要であるということです。

それからもう1つは、少なくとも私が会計を勉強していたときに、この国際会計基準はやはり日本の製造業を中心とする業態には結構不向きじゃないかということを感じました。これは90年代のソフト化、あるいはサービス業化、もっと言うと製造業、商業を念頭においた混合属性モデル型の伝統的な財務報告に対する批判が基準作りの前提あるということですから、金融業には非常に向いているのではないかと思います。従って、多分、今日、製造業の方が非常に違和感をお持ちだというのは当然予測された問題だと思うんです。ただ、これはどれにとっても最適なものということは無理でしょうから、ある程度時間の中で受け入れ体制を構築しつつ、やはりIFRS一本化の方向に行くべきではないかと思います。

○安藤会長

藤沼委員、どうぞ。

○藤沼委員

皆さんがいろいろとご意見をお述べになっているので、別の視点からの意見を述べさせていただきます。私は、国際会計基準財団のトラスティーという役割を務めているわけですけれども、日本の影響力というか日本の国際基準に対する関与度合い、影響力が以前に比べどうなっているのかということについてお話ししたい思います。やはり昨年6月のこの企業会計審議会の決定によって、国際社会の日本に対する見方ががらりと変わったと感じております。これはASBJの今迄のIFRS基準の設定に対しての貢献や努力、その他いろんな方々の協力もあるわけですけれども、昨年6月の審議会報告書の公表に大きな意味があり、その後の国際基準の設定にあたって日本の意見にかなり耳を傾けるようになったということは事実なのではないかと思っております。

今までの議論を私なりに聞いていますと、どうも国内事情のために国際基準は取り入れることが難かしいという議論が多くなってしっていると感じております。。どの国であってもこれから国際社会の中で生きていかなくてはいけないという環境下に置かれているわけですから、国内基準をいかに国際基準に合わせていくかということをきちっと念頭に置いて考えなくてはいけないのではないかと思います。そういう面では、まず連結基準が先行して、個別財務諸表に使われる日本基準については、国内事情に起因するものについては、その理由を徹底的に分析し、国内制度の変更が必要なものがあれば必要に応じて改革していくというアプローチを取るべきだと思います、先ほど親和性のあるというお話がありましたけれども、親和性のある形で国内基準をコンバージェンスしていくという考え方が正しいのではないかと思っております。それによって連・単財務諸表の作成基準の違いによる混乱の縮小と、作成コストの削減にも結び付きます。

ちょっと気になっている点は、これは先ほどの参考人のお話の中で、連・単分離ということになると会計基準の設定主体のあり方ももう一度考えなくちゃいけないという発言があったかと記憶しています。その内容について詳細はわかりませんが、ASBJの役割の見直しであるならば、これは、基本的に私は反対でございます。ASBJは国内のいろいろな問題を考えつつ、国際基準を作っているIASBに対して適切な意見を発信し、時には日本の意見を強く主張するという役割があります。これは非常に大事なことでございまして、国内基準は別なところで作って、国際基準はASBJが担当すればよいということにはならないと思います。

また会計基準設定に携わる我々のリソースも限られていますから、基準設定主体の枠組みの見直しには慎重であるべきであると思います。

以上です。

○安藤会長

ありがとうございました。

今日は、あとお一人にさせていただきます。なお、継続審議を予定しております。

では、引頭委員どうぞ。

○引頭委員

すみません、最後になってしまいました。

利用者側からということで、少し意見を言わせていただきます。いろいろなご意見を伺いましたが、利用者側としては、連結と単体の会計基準が一致している方が使いやすく、また分析しやすいという基本的な大きな考え方を持っております。

しかしながら、ちょうど1年前の中間報告のときにも私申し上げたのですが、やはり税法とか会社法といった様々な日本の制度がきちっとついていっていない中で、個別で無理にIFRSに合わせていくということは必ずしも好ましいことではないと思っております。先ほど八田委員のご発言で、読み手側は関係ないとおっしゃいましたが、読み手側には投資家の方々もいるわけで、そういう新しい基準に合わせることによって税金を多く払わなければならなくなり、それがもし企業価値を減価するようなことであればそれは問題だと思いますので、その点については投資家も気にすると思います。こうしたことから、やはり周辺の制度整備は不可欠と思っていた次第です。

このようにみると、少し疑問が出てきまして、今回の論点が基準の話なのか制度の話なのかということでございます。といいますのは、1年前の中間報告の際にもこうした問題がすでに想定されており、この総会でもその認識は一致していたと記憶しております。しかしながら、今回の議論では、1年経って、周りの制度のいわゆる改正の動きがあるのか、今後予定されているのか、そうでないのかといった情報が全くないように感じます。もちろん一部の委員の方は大変よくご存じの方がいらっしゃると思いますが、そういう意味ではここに出ている委員間において情報の非対称性というか、そうしたことが起こっているように思います。

武井委員が先ほどおっしゃったように、業法の問題もあるでしょうし、それから連

・単分離ということになってしまえば、そもそもの金商法上の考え方とか、様々なところに影響があると思うのです。それを議論するには、少し材料不足なのかなという感じがしておりまして、やはり利用者にとってもどういう会計基準を採用されていくのか、それが企業の経営、あるいは業績を測る上で影響があるのかというのは非常に大きい問題でございますから、その辺をもう少し整理していただければ非常にありがたいなと思いました。

最後に一言ですが、単体については、本日ご意見をおっしゃったほとんどの方々が要らないということでした。ですが、前回申し上げさせていただきましたように、利用者側としては、単体については普段は、質問はしませんが、有事のときに非常に必要なものであるということを再度確認させていただきたいと思いました。

以上でございます。

○安藤会長

ありがとうございました。

一応、終了の定刻になりました。

私が拝見したところ、まだまだご発言があろうかと思いますが、そろそろ終了したいと思います。単体の会計基準のあり方につきましては、次回も引き続きご審議をお願いすることにいたします。

○辻山委員

会長、1つだけ質問してよろしいですか、1つだけ。簡単な質問で、資料が次回出てこないといけないので、1つだけいいですか、質問。

○安藤会長

それではどうぞ。

○辻山委員

資料5-1ですけれども、ドイツ、フランスで上場企業の中でIFRSが強制されている企業の比率、この資料はドイツ、フランスでも上場企業の中でIFRSを使っていない企業があるという資料のようですけれども、どのぐらいの比率でIFRS強制適用の企業があって、どのぐらいの比率でIFRSを使っていない企業があるのか。上場企業の中で。それだけちょっと教えていただきたいのですが。資料5-1です。

○三井企業開示課長

次回、数字は用意いたします。規制市場がIFRSが強制されていて、非規制市場が強制されていないマーケットになりますので、その上場会社の数ということだろうと思います。

ちなみに1つ補足しますと、ドイツのこの非規制市場の自由市場というのは、上場会社が上場申請をしないで勝手に取引されるというものが含まれた数字です。恐らく、ここにいらっしゃる日本企業の中でも、上場されていることを知らないで、このドイツの自由市場で取引されて、いつの間にか裁判に巻き込まれるとか、TOBをかけられたというご経験もあるかもしれません。要するに、アンスポンサーと言いますが、勝手上場については必ずしも件数がはっきりしないかもしれません。いずれにしろ次回調べてご報告させていただきます。

○安藤会長

なお、次回までに発言しておきたいという方がいらっしゃれば、ご意見を文書で事務局あてにご提出いただきたいと思います。最後に、次回の予定について事務局からお願いいたします。

○三井企業開示課長

今日も議論が半ばでございまして、早急に委員の皆様方の日程調整をさせていただきまして、できるだけ早い機会に次回の日程をセッティングさせていただきたいと思います。目標といたしましては、今月の終わりから来月の半ばまでに、あと2回ぐらいは設定をさせていただけるように調整したいと存じ上げます。

なにとぞよろしくお願いいたします。

○安藤会長

それでは、本日はこれにて総会を終了したいと思います。

審議にご協力いただきましてありがとうございました。これにて閉会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課
(内線3672、3656)

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