金融審議会金融分科会第二部会(第31回)・「情報技術革新と金融制度に関するWG」(第17回)合同会合議事録

平成18年6月28日(水曜日)15時30分~17時40分

中央合同庁舎第4号館11階 金融庁特別会議室

○岩原部会長

それでは、そろそろ時間でございますので、ただいまから第31回金融審議会金融分科会第二部会と第17回情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループの合同会合を開催いたします。

皆様、本日はお忙しいところをお集まり頂きまして誠にありがとうございます。

会議に先立ちまして、本日の会議は公開ということになっておりますので、その点のご了承をまずお願いしたいと存じます。

本日の議題に入ります前に、情報技術革新と金融制度に関するワーキンググループの専門委員として佐藤良治委員がご就任になられましたので、ご紹介申し上げます。

また、本日は前回に引き続きまして、元金融庁金融研究研修センター専門研究員の徐煕錫参考人にお越し頂いております。

それでは早速でございますが、お手元の議事次第に従いまして議事を進めさせて頂きます。本日の予定でございますが、第1に韓国における類似制度について徐研究員から前回の補足説明をお願い頂くとともに、第2に法制審議会電子債権法部会におきます検討状況についてのご説明を頂きまして、皆様からの率直なご意見、ご質問を頂戴するという形で進めたいと存じます。

なお、前回、木村裕士委員からご質問のございました電子手形サービスの概要等につきましては、野村委員からのご説明のとおりITワーキングでは昨年4月にご報告を既に頂いておりますが、今回は時間の制約もございますので、次回の会合時に改めてご説明を頂きたいと考えております。

それではまず徐参考人より、韓国の類似制度について前回ご提出頂きました資料2に基づいて補足説明をお願いしたいと存じます。

○徐参考人

それでは始めさせて頂きます。

前回は用意した資料を駆け足ながら一応一読させて頂いたつもりでございますので、本日は資料のポイントだけを触れながら、前回できなかった部分を補足させて頂く形で進めたいと思います。

まず、資料の1番ですが、電子売掛債権の開発背景から始めます。

2つのニーズがありましたが、まず企業間の決済手段を電子化する要求があった、それから手形の代替手段として開発する要求があったということであります。

そんなニーズにこたえて2000年9月に電子売掛債権ということが国の金融情報化事業の一環として正式に議決されました。それを受けまして2002年3月から電子売掛債権のシステムが稼動を始めた次第でございます。今年の4月に電子債権について規定を置いている電子金融取引法ということが成立しました。この成立によって、電子債権譲渡の対抗要件が電子化することになって、電子債権は完全な電子化を実現することになりました。この法律は来年度の1月から施行をされることになっています。

この電子売掛債権は実務の制度ですけれども、この業務のフローですが、図に見られるように購買企業と販売企業がそれぞれの物品、契約による物品代金関係につきましてそれぞれの取引銀行との間で電子債権による代金の決済等を約定します。その約定に基づいて、購買企業がまず自分の取引銀行、発行銀行に対してマル4で電子債権の発行を申請するとそれが発行銀行を通じて金融決済院、つまり管理機関に登録される。その登録とともに、発行通知が保管銀行、販売企業の取引銀行に通知される形で登録が完了するという形であります。

次に2ページで満期の決済ということですが、満期になるとその満期の債権内訳が管理機関からそれぞれの取引銀行に伝送されます。購買企業が満期まで入金するとそれが登録されて、即時に入金される形です。銀行間には差額決済システムによって韓国銀行の当座預金口座によって差額決済が行われます。

担保貸出という部分ですが、これは販売企業が自分が持っている電子債権を担保にして取引銀行から貸し出しを受けるということですが、現在の法律上は債権譲渡が行われますが、そのときは民法上の債権譲渡の対抗要件を具備する必要があります。しかし、現在は法律上それが、例えば内容証明郵便によるオフライン上によって行うしかないという限界があります。そのために今回の電子金融取引法では、それを電子化する方法が立法化されたわけでございます。

これについて先取りして5ページの図をまず説明して頂きますと、今回の法律によって対抗要件の電子化はこのような形になります。右側の販売企業が担保貸し出しを申請すると、保管銀行がその代理人として電子債権譲渡の通知を管理機関にします。それが公認認証機関の時点確認ということを受けていわば確定日付を付与される形で登録がされると、譲渡について対抗要件が具備される、そんな形になります。

また前に戻りまして、2ページのこのような制度のシステム構成上の特徴と法理構成上の特徴について簡単に見ますと、システム上では中央管理機関方式であること。一言で言えばそうですが、それは金融共同網、いわば資金決済システムと同じネットワークを利用しますが、その業務処理のためのソフトウエアやハードウエアだけを別途構築した形で、発行や譲渡等を電子登録方式で行う方式です。それからシステム構築や管理を金融決済院の指導によって一元化することができます。それから、金融監督上のメリットということもあります。

そうすると、この金融決済院というところを選定した理由ですが、直接には2つ申し上げられますが、取引銀行が異なる場合にも使用できる銀行共同の決済手段であった。この決済院というところは銀行間の差額決済が行われる、そんなシステム運営者であるということです。それから未決済債権についてそれを管理することができます。つまり、この決済院はもともと手形交換所、今もそうです。それに準じて取引停止等の措置が可能なモデルであります。

利用企業の立場からいうと、自分の金融機関を経由した取引ということです。これはいわば企業インターネットバンキングということですが、それは政策的な理由も加わって、つまり発行者の発行限度を管理し、信用を管理するということと、それから譲渡先を保管銀行に限定することによって政策的にそれを管理することができるんだという政策当局による意思が含まれた制度でございます。しかし、電子金融取引法上では譲渡を制限する規定は現在削除されています。

法理上の特徴としては、まずこの電子債権は指名債権と構成されますので、先ほども申し上げましたように譲渡のときは対抗要件が必要です。

それから電子債権を発行するときには現在の約款上は、発行ということは変更権の行使だというふうに説明しています。その変更権の行使プラス登録ということで電子債権が発行されることですが、つまり変更ですからA、原因債権からBの電子売掛債権へと変更が行われるんだということですけれども、ここで同質性という表現ですけれども、それは消滅する事項が中断なく進行するとか、抗弁権がそのまま付着したままの債権という形の意味での同質性ということで、これは私なりにつけ加えた表現でございます。

それから原因債権との関連性はいわば有因性ということですけれども、販売企業の債務不履行等に対応することができる制度的な制度化がされているところです。例えば電子債権を取り消しするとか内容の変更を可能なことで、それから電子債権を発行した場合には販売企業が例えば販売企業の債務不履行と購買企業の決済を連携して、いわばエスクローの形で販売企業が自分の債務履行を行った上で電子債権の権利を行使することが可能な形の制度も現在はこの制度の中には入っています。

この利用の現況ですけれども、表も前回見たとおりで、今日は制度運用の特徴について簡単に前回の補足をしますと、2つ特徴がありまして、前回も申し上げましたとおり主な利用者として中小企業の利用が多いということ、反対に大手企業の場合には電子方式売掛債権担保貸出制度ということが多いんだというふうに説明申し上げました。この制度は、電子債権と類似した制度ですが、ただ管理機関に登録することはない。つまり販売企業と購買企業の取引銀行が同じ形の場合のみの制度であります。大手企業の場合には、購買企業が大手企業ですから、その信用度を利用して販売企業が貸し出しを受けることができます。ですから大手企業の場合には銀行の営業戦略によってこの制度の利用が多いということです。後ほどまた説明します。

それから、電子債権はもともと電子商取引との連携が想定に入っていた制度でしたが、実際見てみますとそれほど実績は多くない、低調している、微々たる数字にすぎないということがわかりました。ということは、購買方式と決済方式が現在のところでは分離している状況だと言えます。

ここまでが現在の状況でありまして、法律上の電子債権はどうなっているかについて簡単に整理しますと、4つの部分があります。定義の部分があります。それから対抗要件の電子化、それから電子債権管理機関、それからこの電子債権管理機関が民事ルールでは民法上の履行補助者になるんだという、そんな形の4つの領域の部分が入っています。

まず、電子債権の定義についてですが、これはまず債権者を指定する指名債権である、それから債務内容が記載されて必ず公認電子署名が必要で、金融機関を通じて登録することが必要な金銭債権である。それから定義のオの部分ですが、債務者が債権者に上の要件をすべて満たした電子文書を電子取引基本法上の関連規定により送信し、債権者がそれを受信することという要件がありますが、これは脚注1にありますが、要するに電子債権管理機関に登録しただけで債権者がそれを知らない状態では債権者の権利行使に問題が生じる可能性があるから、電子債権の発行事実を債権者に知らせる必要があるという趣旨から取り入れられたものだと説明されています。

続いて、電子債権譲渡の対抗要件の電子化についてですが、要するに債権譲渡の通知や承諾が公認電子署名をした上で登録されること、また時点確認までされると第三者対抗要件まで具備されるんだということです。先ほど図によって説明したとおりでございます。

続いて、電子債権管理機関ですが、管理機関は法律上、金融監督当局、金融監督委員会に登録する登録制度になっています。登録要件として、資本金や施設、財務健全性などが定められていますが、具体的な要件は施行令で決まることになっています。登録すると監督や検査の対象になります。また、行政措置の対象になります。管理機関は安全性遵守の義務や取引記録保存義務などを負います。それから電子債権の登録等に関する事項は施行令に委任しますが、したがって現の約款上の規定が一部は施行令に規定されるだろうと予想されます。

最後にこの制度の展望ですが、先ほど簡単に申し上げました電子方式売掛債権担保貸出制度ですが、これは電子債権制度よりは約1年前に開発された制度で、要は一括支払システム、一括決済システムと似たような制度として、ただ電子債権管理機関に登録だけはされていないモデルだと理解すればいいかと思います。

この実績が6ページの表で見られますように、銀行共同の、かつ登録モデルである電子売掛債権により約10倍以上利用されている状況であります。要は現在の銀行の営業では登録する必要性はあまり見当たらないということが現状、その原因だと思われます。しかし、法律の成立によって対抗要件が電子化したんだからこれからはこれを登録することによって、電子債権化する可能性が出てきています。この点につきまして簡単に補足いたしますと、電子金融取引法案が国会に提出されたそのとき、金融機関の間に自分がやっていたこの制度がもしかしてこの法律が通過すると、この法律の電子化の長所を利用できないじゃないかという危惧から、自分たちを直接登録機関、管理機関化しようとする動きがありました。自分たちを直接管理機関に登録しましょうという話がありましたが、政策当局との間でそれはあまりうまくいかなかったようです。結局、政策当局は中央管理機関モデルを法律上、法律になっているどおりそれを推進するんだというふうに現在は立場を整理したようです。

それからもう一つの制度として電子手形ということがありますが、この電子手形と電子債権、2つの関係をどうとらえるかも非常に難しい問題でありますが、この電子手形は電子債権の開発のさなかであった2001年11月に国会議員たちを中心に議員立法の形で成立しました。当時の政策当局は手形の縮小政策を長期的に推進していましたから、これには当然反対したわけでございます。しかし、結局はこれが成立したわけですが、2005年9月からスタートして電子手形割引業務や保証業務などが現在行われている状況です。

この両制度を比較してみますと、要は指名債権と有価証券という法理の大きな違いがありまして、そこから流通性を限定することと転々流通すること、また原因債権との有因性と無因性というふうに法理が違ってきます。また、電子手形の場合には善意取得や遡及などの手形法理もそのまま適用されます。この法律は手形の特別法であります。しかし、システム上は非常に似ている中央管理機関方式であるということで、両制度の関係はもともと手形を代替する手段でありましたから相互代替的であるということは確かです。しかし、では補完的であるということはどうかといいますと、やはり流通性の部分です。電子手形のメリットとして、転々流通することと分割・裏書きができること。ただ、現在の法律では分割・裏書きは削除されていますが、これを改正しようという改正案がもう既に国会に提出されているところでございます。

最後に電子売掛債権管理機関ですが、管理機関が今のような1つの管理機関を活用する場合にはその展望はどうかといいますと、先ほど申し上げましたように譲渡性を許容するような制度変更があるんじゃないかと、そんな考えがあります。法律上は可能でありますが、しかし電子手形との関係もあります。また、売掛債権以外の電子化の可能性はないかというと、銀行が持っている貸出債権を電子化すること、つまり電子貸出債権が考えられます。

それから複数の管理機関が登録する可能性が現在考えられます。例えば信用保証基金という金融機関がありますが、そこが現在第2の管理機関として名乗りを上げています。しかし、決済院と韓国銀行はこれに反対する立場であると聞いています。これについては現在進められている施行令作業中に韓国銀行を中心にそれを反対する条文を取り入れようとしているところですが、これには当然反対する声もありまして、今年中に多分激しいバトルがあるのではないかというふうに聞いています。

それから二重譲渡への対応。現在の実務的にはそんなに問題視されていないようですが、個人的にはそんな面も法律上必要ではないかと考えています。

以上、かなり重複した内容でしたが、発表を終わらせて頂きます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それではただいまの徐さんのご説明につきましてご質問等ございましたら、どうぞお願いします。

池田委員、どうぞ。

○池田委員

前回と今回と非常に関心の高いテーマについて詳細なご報告でありました。ありがとうございました。

私の方からは、3ページの4のところを少しご質問させて頂きたいんですが、恐らく管理機関のことについてはほかの方が質問されると思いますので。法理構成上の特徴で○が3つありますが、2番目の○、1番目の○、3番目の○という順番でお尋ねします。

まず電子売掛債権の発行というところなんですが、変更権の行使ということのご説明がくださいました。原因債権、普通の指名債権を電子売掛債権に変更する。したがって、原因債権が電子債権に変わるということだというご説明だったと思いますが、この変更権は誰が持つんでしょうか。

○徐参考人

債務者です。

○池田委員

債務者が変更権を持つと。それを債権者側が承諾して登録すると、こういう形ですか。

○徐参考人

承諾は債権の発行の申請と同時に承諾することが擬制される形です、約款上そうです。

○池田委員

では、もともと約款上で当事者が変更権を債務者に与えるような契約で売掛債権を発生させているということですか。

○徐参考人

そのとおりです。

○池田委員

そうすると、これで約款上の規定だから原因債権がなお二重譲渡されるリスクが残るというご説明があったんですが、当事者の間では一応は原因債権は電子債権に変わるという合意で当初から契約はしているということですか。

○徐参考人

そのとおりです。

○池田委員

ただ、契約だからそれを違反する人はいるかもしれないということですか。

○徐参考人

第三者が現れた場合にはやはりそれは対抗できないということで、法律上は必要ではないかという危惧です。

○池田委員

そうすると、これを法律的に規定しておけばもう原因債権は電子売掛債権に変わったんだから原因債権との二重譲渡はあり得ないと、こういうことですか。

○徐参考人

おっしゃるとおりです。

○池田委員

ありがとうございます。

そうしたら今度は1つ上の方の電子債権譲渡の対抗要件を電子化したということですけれども、これは4ページから5ページにかけて民法第450条1項、2項ということでの規定による対抗要件を満たしたものとみなされるというご説明だったんですが、この韓国民法第450条1項、2項というのは日本の民法の第467条1項、2項、債務者対抗要件、第三者対抗要件の規定なんですが、同じようなものでしょうか、それとも少し何か違いありますか。

○徐参考人

書いていないんですが、同じものです。すみません。

○池田委員

同じと考えてよろしいですか、ありがとうございます。

そうすると、日本で言えば確定日付のある通知が第三者対抗要件で何の要件もない通知承諾でも債務者対抗要件になる、そういう形のものが電子的に行われることによって電子化された形で電子金融取引法の中で規定されたということですか。

○徐参考人

そうです。

○池田委員

最後に3つ目の○のところの原因債権との関連性ということは、販売企業の債務不履行等への対応というのは、例えば電子債権にすることにあらかじめ約款上合意していて、変更権を行使して登録された電子売掛債権についてもなお、例えば品物が渡らなかったとかいうようなことがあればその履行を待ってというか、履行を待っている間は譲渡承諾を留保するとか、そういう形がとれるということですか。

○徐参考人

そのとおりですね。債務不履行などの事由があった場合には譲渡承諾、承諾ということは譲渡に対する承諾、事前承諾のことです。

○池田委員

それを留保しておいてしないでおくと。

○徐参考人

留保することが可能であります。

○池田委員

それからもし承諾しておいても、後で債務不履行があったときには電子債権を取り消したりすることができる、内容を変更したりすることができるということですか。

○徐参考人

その部分はもうちょっと詰める必要が実際はあります。承諾の留保の形になるということは、現在の約款上は事故申告という形になります。事故申告という形になりますと、要は購買企業が担保金を払う必要があります。担保金を払った上でどちらが債権者であるかどうかを確認して確定した上でその担保金の確定、どちらにそれが帰属するかを決めることが必要になるという形を今約款上取り入れています。ややちょっと複雑になっています。

○池田委員

ありがとうございました。とりあえず以上です。

○岩原部会長

ほかにご質問ございますでしょうか。

ほかにございませんか。では池田さん、もう一度。

○池田委員

もう1点ですが、これはお答えになりにくいかもしれませんが、韓国では電子手形の発行及び流通に関する法律、要するに電子手形法と電子売掛債権法が2つできる形になってしまったというか、なりつつあるといいますか、そういうことですよね。その点についての関係のお話が先ほどございましたけれども、個人的に徐さんとしてはこういうものが2つばらばらにできるのと、1つの法律の中に両方取り込まれたような形がもし可能であればそのどちらがよろしいと思われるかということなんですが。

○徐参考人

実は本当におもしろい主題でありまして、私がこの電子手形法に関する論文を書いている間に、この問題について非常に興味を持って執筆させて頂いた次第でございますが、私個人的には韓国の形は政策当局としては若干矛盾するような形も見えました。手形を縮小するような形でしたが、結局はこれを認めざるを得なかったという政治的な動きもありましたけれども、法理上とかビジネスモデルという側面でいいますと、現在は非常に法理上の2つの制度に分かれている状況にありまして、先ほど申し上げましたように流通性ということで2つに分けられているんですが、私はこれは1つにすることも可能ではないかと個人的には思っています。

ただ、その方法ですが、どの法理を選ぶかということが本当に難しい問題で、私の理解では日本のモデルは現在の韓国モデルの電子債権モデルに流通性を付与したモデルだと理解しているんですけれども、それが正しいんだとするとその流通性保護ということをどんな形で担保することができるか、それが非常に問題でありまして、要はそれは有価証券法理になるわけです。では、有価証券法理で賄いましょうということですけれども、そうするといろいろ詰める問題がたくさんあるわけです。ただ、韓国のように電子手形法、手形を電子化する形にすると問題は簡単に解決するかもしれません。要は手形法理が適用されるんですから。ただ、日本の場合は手形を電子化することにはちょっと難しい状況だと知っているので、その部分ではやはり法理上の準備が必要になるだろうと考えています。

○池田委員

それからもう1点、手形法の特別法として議員立法の方がされたということなんですが、素人考えだと手形というのは国際条約で決まっているもので、また紙をなくした形で手形法の特別法というのが成り立つのかどうかというのがちょっとわからないんですけれども、それは韓国ではどういう議論になったんでしょうか。

○徐参考人

実際議論がありましたが、僕は調べてみたんですけれども、直接的に条約に加入する形ではなかったようです。ただ、法律上は1962年あたりに成立したんですけれども、その条約の内容をそのまま取り入れた。日本の法律とほとんど同じである状況で、国内学者の間でも今おっしゃったとおりの議論がありまして、ただこれを推進した学者の場合には国内の約束手形だけですから問題ないということで成立を推進した次第でございます。

○池田委員

どうもありがとうございました。

○岩原部会長

ほかに何かございますでしょうか。

平田委員、どうぞ。

○平田委員

もしおわかりでしたらちょっと教えて頂きたいんですけれども、電子売掛債権の具体的な活用場面といいますか、私が想像しますに売掛債権を流動化するその局面において、流動化をしやすいように形を変えているという使い方なのかなと。流動化するかどうかはわからないですけれども、あらかじめその当事者の合意で電子売掛債権化するというよりは、流動化したいというニーズが具体化したときにこういうふうな形で当事者がこれでやっているというそういう使われ方なのかなと思っているんですけれども、実際、どういう場面で具体的に使われているのか、もしおわかりでしたら教えて頂きたい。

○徐参考人

ご質問の趣旨は、流動化のニーズがあるんですかということですか。

○平田委員

流動化というニーズが顕在化したときに初めて使われるということが多いのかどうかということです。電子売掛債権です。

○徐参考人

現在の電子売掛債権は流動化は制限されている状況ですから、要は自分の取引銀行に対して担保貸し出しを受けるために譲渡するだけに限定されています。ですから、流動化と現在の電子債権はあまりかみ合わない状況であります。ただ、それが流動化することが、法律上は限定はないですから、今後の展望としてそれができる可能性もあります。ただ、その場合は実際は電子手形との問題もあります。

○岩原部会長

ほかに何かございますか。

お話を伺っておりますと、日本でこの後、始関管理官からご説明がございますけれども、日本で今検討されている電子債権法とは大分違う仕組みも、法律的にも随分違うものではないかという感じがします。韓国の場合の電子売掛債権の一番大きい効力は、債権譲渡の対抗要件のところを電子化した点が一番大きい意味になるんでしょうか。

○徐参考人

あまり勉強不足でそんな発言してすみませんが、対抗要件ということは実際は民法上の指名債権譲渡の対抗要件という形になっているんですが、電子化する形では対抗要件とした意味は実際あまりないと私は考えております。ということは、成立要件とほぼ変わらない状況だと。それを言いかえますと、民法上の指名債権という形ではなくても可能なモデルだと、日本のような議論を踏まえた上での制度づくりも可能であったと私は思います。ただ、それが韓国では既存の法理に基づいてすることがもっとしやすいじゃないかという考えからそんな制度づくりになったと思われます。

○岩原部会長

また実際の利用から申しますと、結局、現時点では取引銀行に債権譲渡して買い取ってもらって金融を得るということだけです。

それと今おっしゃいました法的な意味もあわせて考えますと、今までの債権を電子的な方法でなくいわば担保に銀行から金融を受けるのと、あまり実際上大きい差はないのかなという感じもするんですが、いかがなんでしょうか。

○徐参考人

そのとおりです。

○岩原部会長

となると、あまり電子化したからといって特に大きい意味がつけ加わっているわけではないということでしょうか。

○徐参考人

この制度をどう評価するかの問題ですけれども、実際の実績からいいますとこの制度よりは登録していない電子方式売掛債権制度の方がはるかに多いですね。ただ、その場合には電子化が半分しかできていない状況ですから、それを補うための法律化が必要であったということで、今後はそれが電子債権化する可能性が非常に大きくなってきたというふうには言えると思います。

○岩原部会長

今おっしゃいました今までの電子債権担保の方の制度が半分しか電子化されていないというのは特にどの点……。

○徐参考人

それは債権譲渡がオフライン上で行うしかないということです。

○岩原部会長

この制度の特徴は、オフラインではなくてオンラインで行えるようになるという点が大きいということでしょうか。

○徐参考人

そうですね。すべての発行と譲渡、全過程が電子化されているんですが、ただ現在は譲渡だけは民法上の法理構成でありますから、その場合には現在の民法上では電子債権管理機関がまだ公務上としての位置ではないんですから、その面では法律上の裏づけが必要であった。電子債権管理機関をいわば公務上としての立場にすると、そこへの登録をもって指名債権の対抗要件が具備される形になりますから、その面の法律化が必要であったということです。

○岩原部会長

その点で考えますと、日本の場合、ただ韓国と違って債権譲渡特例法があり、しかもそれが現在ではオンラインで債権譲渡特例法上の対抗要件の具備もできるようになっていますので、いわばそれに近い効果をもたらしているのが韓国の電子売掛債権の制度ということと理解してもよろしいんでしょうか。

○徐参考人

そのような理解もできると思います。ただ、それをどうやってオンライン化するかは別問題です。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

ほかに何かご質問ございますでしょうか。

それではどうも本当に徐さん、ありがとうございました。大変有益なお話、ありがとうございます。

それでは続きまして、法務省民事局の始関民事法制管理官より資料3-1、3-2に基づきまして、法制審議会電子債権法部会におきます検討状況についてのご説明をお願いしたいと存じます。

なお、前回会合で金融庁よりご提出頂きました資料4-1、4-2もご参照頂きたいということでございます。

それでは始関さん、よろしくお願いします。

○始関法務省民事局民事法制管理官

法務省民事局の民事法制管理官の始関と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

若干のお時間を頂きまして、法務大臣の諮問機関であります法制審議会の電子債権法部会における電子債権法制の私法に関する部分でございますけれども、それについての検討状況についてご説明をさせて頂きたいと思います。

法務省におきましてはまず昨年の5月から12月までここにおいでの池田委員を座長とする電子債権研究会を開催させて頂きまして、そこで論点の洗い出しをして頂いて、昨年の12月にそれをまとめたものを公表したわけでございます。それを踏まえまして、本年2月に法務大臣から法制審議会に電子債権法制の整備についての諮問がされまして、それを受けまして同月に電子債権法部会というものがつくられまして、そして同月末から先週まで合計で6回、部会を開催して頂いたところでございます。

その第6回目の部会にお出ししたものが今日の資料3-2としてお配りさせて頂いている電子債権法制に関する中間試案(第一次案)というものでございます。

法制審議会におきましては、6回と申しましたけれども、当初は1時半から審議を始めていたのですけれども、1時半から始めまして7時を過ぎても終わらないという状況が続いたものですから前倒しをいたしまして、1時から審議を始めて頂くことにしたのですけれども、それでも毎回6時半を過ぎても終わらないと。ですから1回ごとに5時間から6時間の審議を6回やって頂いているという状況でございます。その結果がこの中間試案の第一次案ということになります。

これをご覧頂きますと非常に細かいということに驚かれると思うのですけれども、これは法制審議会というものはもともと明治時代からの法典調査会というものに端を発するものでございまして、法律の原案を作成するという性質のものでございますので、法律の全部ではないんですけれども、枢要な部分について条文に近い形でのご審議を頂いているということから、いわばこれに関与される法律学者や実務家の方でないとややマニアックで分かりにくいというものになっているわけでございます。

そこで今日ご説明するに際しましては、もう一回配付して頂いております4-1、4-2という資料がございますけれども、金融審議会でこれからご審議なさる事項、特に4-2にそれがまとめられているわけですけれども、それに関係する部分を中心としてご説明をさせて頂きたいと思いまして、それで中間試案の概要という横書きの紙をご用意させて頂いた次第でございます。したがいまして、主としてこの概要で説明をさせて頂いて、必要に応じ中間試案それ自体もご覧頂きたいというふうに思っております。

なお、この中間試案でございますが、第一次案でございまして、しかも先週ご審議を頂いたものでございますので、実は今日ここへ来る前、第二次案をつくっていたわけでございまして、ここに書いてあるものが第二次案ではかなり変わる部分もあるということを申し上げておかなければいけないわけでございます。その点はまたどういうところが変わりそうかというところもあわせてご説明をさせて頂きたいと思います。

それでは概要のペーパー、1枚めくって頂きまして下に2ページというページが振ってある電子債権(仮称)の概念というところをまずご説明させて頂きます。試案本体でいきますと1ページ、目次がありますので1ページめくって頂かなければいけないのですけれども、1ページの第1の1というところでございます。

電子債権とは何かというのがこの電子債権の概念でございますが、電子債権というのは2つ目の「◆」に書いています。仮称ですけれども、管理機関が作成する登録原簿、これは以前は電子債権原簿というふうに呼んでいたのですけれども、登録原簿という方がいいのではないかということで仮称を変更したものでございますが、中身的には同じものでございます。これは管理機関がつくる原簿のことでございまして、電子的な原簿です。この原簿に登録をすることによって権利が発生する、あるいは譲渡の効力が生ずるという債権、金銭債権でございます。ですから金銭債権であるということと、登録が発生、あるいは譲渡の効力要件になるというところが特殊な債権でございます。したがいまして、例えば売買でありますとか消費貸借、貸金等の電子債権の登録をする元となった債権、これは指名債権と民法上呼ばれているものでございますけれども、それとは別なものでございまして、そういう登録をすることによって別途発生する、そういう金銭債権であるという整理でございます。

そして3つ目の◆で書いていますけれども、先ほど申しました売買の売掛代金債権とか、あるいは貸金債権のような指名債権、これは民法上の債権でございますが、これともまた手形債権などとも違う全く別の新しい類型の金銭債権としてつくり出すと、こういうものとして整理されているわけでございます。

これはどうしてかということでございますが、前回この電子債権というものを考えるに至った理由について金融庁ご当局からご説明があったわけですけれども、その繰り返しになってしまいますけれども、要するに指名債権にも手形債権にも、メリットもあるけれども、相当なデメリットというか問題点があると。例えば、指名債権であればその存在自体が確認することが困難であり、それにコストがかかり債権不存在等のリスクもあるということ。それから債権を譲渡するについても、債権譲渡登記という先ほど部会長がご指摘された制度があるわけです。そのほかに確定日付がある通知・承諾という制度、これは民法上の制度でございますけれども、そういう複数の対抗要件の取得手段というものがあるわけですけれども、その対抗要件の取得についても二重譲渡のリスクというものが伴うということがございます。

それから手形につきましては、手形という、これは紙に権利を化体させることによって流通性を確保するという技術によってつくられた制度でございますけれども、紙というものの制約がいろいろとある。例えば書ける内容に限度があるということが一つでございますし、紙ですから紛失する、あるいは盗難に遭うというようなリスクもございます。そのための管理コストがかかるわけでございまして、今や売掛金、買掛金、それからいろいろな貸金なども全部コンピューターの帳簿で管理がされるわけですけれども、そうであるにもかかわらず手形を発行しようと思えば別途手形用紙に一々記入をしなければいけない。これだけをとっても大企業にとりましては物すごい数の手形用紙に毎月毎月、記入をしなければいけないというコストがかかるわけでございます。

そのような指名債権、手形債権が持っているそれぞれの問題点を両方とも克服した新しい金銭債権というものをつくり出せないかということでこの制度の検討がずっと行われてきたわけでございまして、その方法として管理機関への登録ということによって一つの債権は1個しか登録できませんから、登録されればその債権が存在するという極めて高い蓋然性が認められますし、それがどういう内容のものであるかというのは登録された原簿を見ればはっきりすると。それから譲渡するについても、一つの登録がされた債権は二重には譲渡の登録はできないようにしますので、二重譲渡のリスクは全くなくなると、こういう形で登録という制度を利用することによりまして、手形と類似の流通性が確保されるとともに、他方で、手形の持っているリスクであるとかコストの問題を克服できるのではないかということで、こういう概念の制度として検討が進められているということでございます。

1枚めくって頂きまして3ページの電子債権の発生と譲渡でございますが、先ほども申しましたように電子債権は発生登録をして初めて発生すると。譲渡につきましては、移転登録をして初めて効力が生ずるという整理になってございます。試案自体をちょっと見て頂きますと、発生については試案の8ページ、第2の1というところでございますが、「電子債権は、当事者の意思表示に加えて、発生登録をしなければ発生しないものとする」という整理になってございます。

それから譲渡の方でございますが、11ページの第3の1でございまして、譲渡による移転の要件ということで、「電子債権を譲渡する場合には、当事者の意思表示に加えて、移転登録をしなければ、移転の効力は生じないものとする」ということになっております。

なお、ここで11ページの末行から12ページにかけて注がついてございますが、譲渡のほかに権利の承継には一般承継というのがございます。相続がその典型であり、あるいは企業で言えば合併でございます。そういう場合は登録が要件ではなくて、死亡、あるいは合併であれば合併の登記がされるということによって権利が自動的に移転するということになるわけですけれども、譲渡については、登録をして初めて移転するという、移転登録が効力要件になるということでございます。

またもとの概要に戻って頂きたいんですが、※をつけてございますけれども、登録は当事者の申請に基づいて登録するわけですけれども、当事者の登録申請の方式等につきましては、法令による限定はしないで、管理機関が業務規程で定める方法等によるということにしようということになっております。これが試案の6ページの下の方でございますが、(3)申請の方式等というものでございまして、ちょっと読ませて頂きますと、「管理機関は、この試案に別段の定めがない限り、業務規程で、当事者の申請及びその撤回の方式並びに申請事項の内容を定めることができる」となっております。

どんなことが定められるかというのが注で7ページの方に具体例を挙げさせて頂いているのですけれども、申請やその撤回を行う方式としては、例えば書面によらなければいけない、あるいはインターネットでやらなければいけない、一定のID、パスワードを利用しなければいけないとか、電子署名を使わなければいけないとかいろいろなことが考えられるわけですけれども、そういう方法についての制限が考えられます。

それから電子メールを送る場合には、申請に使用するべき文字、例えばJISの第2水準までとかそういう制限が考えられます。

それから、どんな情報を申請の際に管理機関に提供しなければいけないかという添付情報に関するものがあります。

それから電子債権は金銭債権であると先ほど申し上げましたけれども、外国通貨の登録を認めるか認めないかとか、あるいは金額についてあまりにも安いものですと管理機関のコスト倒れになるおそれがありますので、あまり金額の低い電子債権は登録を認めませんよとか、逆に、あまりにも高い電子債権ですと、後で申しますけれども、登録に何らかの問題が生じたときに管理機関が責任を負わなければいけないというそのリスクが非常に高まるということもございますので、上限を定めることもできる。

あるいは譲渡につきましても、移転登録の回数の制限ということをマル9に書いております。

それからマル10で、移転登録の申請をすることができる期間、あるいは一部譲渡、これは分割譲渡という言い方もしますけれども、そういうものを認める、あるいは認めないということ、そういうようなさまざまなことを業務規程で各管理機関が定めることができると、そういうことにしようという話になってございます。

これは何のためかといいますと、多様なニーズに応じた多様な管理機関が出現して、いわゆる当金融審議会の情報技術革新ワーキンググループで昨年公表された座長メモによりますと、いわゆる柔軟性という要件なわけですけれども、そういう柔軟性を確保するという観点から業務規程でいろいろなニーズにこたえられるようにしよう。つまり、どんなニーズがあるかといいますと、電子債権につきましては1つには手形代替の方法として用いるということ、それから一括決済方式というものがあることは前回平田委員からご報告があったわけですけれども、一括決済の発展形として用いるというようなこと、それからシンジケート・ローンを中心とするローンの流動化のために用いるといういろいろなニーズがあるわけでございまして、そのニーズに応じていろいろな登録のバリエーションというものがあり得るわけでございまして、それにそれぞれ対応する、例えば、シンジケート・ローン専用の管理機関とか、あるいは手形代替専用の管理機関とか、そういういろいろなことができるようにしようという、それによってコストパフォーマンスに見合ったいろいろな電子債権管理機関ができるようになるだろうということでございます。

このことを今申し上げていますのは、この資料の4-2で1枚めくって頂いて、3の電子債権管理機関の業務の適正性の確保という論点があるわけですけれども、管理機関に対する行政当局による検査・監督のあり方、必要な行政処分等をどう考えるかという問題。それから、参入適格要件をどう考えるかという問題をお考え頂くに当たって、法制審議会の方でご議論頂いているところでは、各管理機関の業務規程に委ねることを非常に広く認めていると。それを考慮してご議論頂く必要があると思ったものですから、ご説明をさせて頂いている次第でございます。

いろいろなことができるわけですけれども、不公正なことが行われてはならないはずでございますので、そのために例えばよくあることですけれども、業務規程は監督官庁の認可を要するというような定めがあるものはしばしばあるわけですけれども、そういうことが必要になるのかどうかと、そのようなことをご議論頂く必要があるのではないかというふうに感じているところでございます。

それから次の◆に行きますけれども、「電子債権は、原則として、一部譲渡(分割譲渡)することもできる」と書いていますが、実は分割譲渡という言葉を昔は使っておりまして、金融庁さんの方で作られた部会資料4-1でも分割譲渡という言葉を使われておりますけれども、この試案では民法の概念に合わせて一部譲渡という言葉にしています。一部譲渡(分割譲渡)というふうに書かせて頂いておりますけれども、こういうこともできるということにしてございます。

そこは試案本体を見て頂きますと、13ページの上の方に電子債権の一部譲渡をする場合にどういう申請をするのかということが書かれていまして、14ページにいきますと、一部譲渡する場合の登録をどのようにするかという、かなりマニアックな話ですので中身をご紹介するのは省略させて頂きますけれども、そういうことにしているわけでございます。もっとも先ほど申しましたように一部譲渡というのは、これを認めますとコンピューターのコストを含む管理機関のコストが非常に高まるというふうに伺っておりますので、どういう範囲で一部譲渡を認めるのか、あるいは全く認めないというようなことも管理機関の選択を認めようという形になってございます。ですから、そこも業務規程でいろいろなことが定められるというものの一つでございます。

そのことを書いていますのがその次の◆でして、当事者間の合意、あるいは管理機関の業務規程の定めを登録することによりまして譲渡の回数、譲渡の相手方の制限などをすることができるということでございます。

このことは、試案の12ページの3、移転登録手続の⑴のbの法定の任意的申請事項というところに「業務規程に別段の定めがある場合、(業務規程による譲渡の制限については、その旨の登録がされている場合に限る。)を除き、」移転登録において一部譲渡ができると書いてあるわけですけれども、このように譲渡について一定の制約をかけることも管理機関はできるということでございます。

それから当事者間でも譲渡の制限を一定の範囲内で認めるということでございます。ただ、そこは同じ12ページの2の電子債権の自由譲渡性というところでございまして、ここは資料3-1の3頁の※で書いていますように全面的な譲渡禁止というものも認めるのかどうかということについては、A案は認めない、B案は認めるということで、法制審議会の中のご意見は分かれております。これは要するに電子債権という制度は金銭債権の流動性を高めようという制度なものですから、譲渡ができない電子債権というのは何のための電子債権なのかという問題意識があって、そういう考え方からしますと、全面的な譲渡禁止というのは認めるべきでないというA案が出てくるわけでございますけれども、他方で先ほど申しましたように電子債権の譲渡の相手方とか譲渡の回数とか譲渡の期間とか、そういうさまざまなことを制限する必要がある場合があるわけでございます。現に一括決済では2回までしか譲渡できないというシステムが稼動しているわけでございます。そういうものを認める必要があるだろうと。そうすると、2回に制限するのはいいけれども、1回はだめかと、あるいは1回はいいけれども、ゼロはだめということが説明できるのかという問題もございまして、そういう関係から当事者の自由に委ねていいじゃないかというB案という考え方もあって、ここは分かれているわけでございます。ただ、先程申しましたように全面的な禁止ができるかどうかについては議論がありますけれども、回数を制限する、あるいは分割して一部譲渡することは制限するとか、そういうことは広く認められるという形になっているわけでございます。

次に、1枚めくって頂きまして4ページでございますけれども、電子債権に係る取引の保護でございます。

ここは非常に重要なところでございまして、要するに指名債権にはならない流通性の確保のための取引の保護を図る、つまり手形が持っているような機能、ここに書いているものですと人的抗弁の切断ですとか善意取得というようなものを認めようというのがこの電子債権という制度の中核の一つでございますので、マル1に書いていますように、移転登録を受けた者を保護する規定、民法の第三者保護規定の特則、つまり第三者が現れると意思表示に瑕疵があったということを主張できなくなるというようなものを設ける、それから人的抗弁の切断を用意する、それから善意取得を認めるというような形をとろうということでございます。

それからマル2として書いてありますように、支払う場合でも登録原簿上に債権者として記録されている者に支払を行った場合には、債務者は、もしもその債権者として記録されている者が本当の債権者ではないとしても免責されるという機能を認めるということでございます。

それから3番目ですけれども、手形でもそうですけれども、例えば、原因関係が売買なら、売買の代金債務を支払うために電子債権の発生の登録をするわけですけれども、原因関係が無効なら電子債権も無効になるとしたのでは、電子債権の取引の安全は確保できませんから、原因関係の有効性は手形を発行した場合に手形債権の有効性に影響を及ぼさないのと同じように、電子債権についても原因債権が無効であろうとも電子債権は有効に発生する、あるいは移転するという形にしようというものでございます。

ただ、ここで問題になりましたのは、本文の方のただし書に書いていますけれども、債務者が消費者である場合にどうするかということでございます。これは前回の部会で配られました、今日の部会資料4-1の事例2でございますけれども、一般消費者(個人)が電子債権の債務者となる場合にどうするかというのが事例2という形で紹介されているわけですけれども、同じ問題を法制審議会でも議論したわけでございます。

実際にはこの電子債権の取引というのは先ほど申しましたように手形代替か一括決済か、シンジケート・ローンか、そういうものが具体的なニーズとして上がっていまして、これはどこにも消費者が現れる場面はないわけでございます。ですから、消費者が債務者として登場するということは、電子債権全体からすれば非常にレアであろうというふうには考えられているわけですけれども、しかし例えばですけれども、住宅ローン債権の電子債権化ということはもしかしたら行われるかもしれないと。そうすると、その場合の住宅ローン債務者というのは消費者なわけでございます。そこで、その消費者保護ということを考える必要があろうということで、ここに書いておりますように、消費者が債務者である場合には人的抗弁の切断とか善意取得が認められないものとすると。それによりまして、消費者は自分が持っている抗弁をすべて取得者に対抗することができることになり、住宅ローンそのものを第三者が取得した場合と同じ消費者の利益保護が図られるという形で決着してはどうかというのが、現在の法制審議会の考え方でございます。

次に、1枚めくって頂きまして、今度は電子債権の消滅の話を申し上げます。

5ページでございますが、電子債権は金銭債権ですから、その登録された債権額が支払われましたら、弁済されたので債権は消滅するはずでございますが、その消滅したことが登録されないうちに第三者に移転されてしまったらどうなるかというのが厄介な問題でございます。このことはこの部会資料の4-1の事例の1として当審議会でも問題が提起されているわけですけれども、抹消登録が適切に行われず電子債権の譲渡が行われた場合という形で挙がっております。

実はちょっとご説明しなければいけませんのは、昔はというか、直近ですけれども、抹消登録という言葉を法制審議会でも使っていたのですけれども、お金を払う人というのは発生登録における債務者とは限らないわけでございます。試案を見て頂きますと、電子債権の保証というものを用意していますけれども、保証人が支払うということもあります。保証人が支払った場合は、支払を受けた債権者の債権は消滅するのですけれども、その分保証人が求償権を持つことになり、原債権は保証人の求償権担保のために、法定代位という民法の制度がございますけれども、保証人に権利が移転するという形になっていますから消滅しないわけでございます。したがって、支払といってもいろいろな人が支払う場合があり得て、必ずしも権利そのものが全部消滅するとは限らないと、あるいは求償権に変容するとかいろいろなことがあるわけですので、そういうものに対応できるようにするために支払等登録、支払をしたことを登録するという形に改めようということでこの試案はできてございます。

そこで、この概要ペーパーでも支払等登録をしなければならないとか、支払等登録したときはとか、こういう書き方にしているわけでございます。

ちょっと前置きが長くなりましたけれども、したがいまして、払ったんだけれども、支払等登録をしないうちに第三者に移転登録がされてしまった、譲渡されてしまったという場合に、どちらがばばを引くかということが問題になるわけですけれども、はっきりしていることは、だれもばばを引かないで済むようにしてあげるということが最も大事でございます。つまり、払われればすべからく支払等登録がされるという、ITワーキングで同期性と言われたものでございますけれども、それが確保されるということが最も大事でございます。そこでそうするためにどうすればいいかということで考えられましたのが、この5ページの一番上に書いておりますように、管理機関が送金手続をする場合には、管理機関は入金手続を終えた後、直ちに職権で支払等登録をしなければならないことにするということでございます。

なお、送金手続をする場合というのは、管理機関がすべて送金手続をしなければならないという趣旨ではございません。送金手続をする管理機関もあればしない管理機関もあるのかもしれない、あるいはそこはこの審議会でまさにご議論頂くところで、同期性を必ず確保するためには送金手続を管理機関がしなければいけないという選択肢も十分あり得るところですけれども、そこは法制審議会の方で決めるべき事柄ではないということなものですから、「送金手続をする場合には」という書き方にしてございます。もしも当審議会での御議論の結果、すべての管理機関が送金手続をすべきであるということになれば、それに合わせて法制審議会の方の表現は変えさせて頂きたいというふうに思っております。ということで、同期性を確保する方策として管理機関の職権による支払等登録というアイデアを検討して頂いているわけでございます。

では、支払等登録がされなかった場合はどうなるかということですけれども、債務者が払ってしまえばその債務は、発生登録における債務者が払った場合にはその債務は当然消滅するわけですけれども、※に書いておりますように支払期日後、支払等登録が完了する前に債権者から移転登録を受けた第三者が現れた場合、先ほどの部会資料4-1の、審議会資料4-1の事例1の例でございますけれども、この場合にどちらがばばを引くかと先ほど申しましたけれども、取得した第三者が勝つのか、つまり債務者は二重払いしなければいけないのか、それとも第三者は権利を取得したつもりだったけれども、結局権利は取得できなくて払ってもらえないのかという問題をどう考えるかということにつきましては、法制審議会では議論が分かれているところでございます。

引き続き検討するということになっておりますけれども、具体的に申し上げますと、試案の15ページの一番下をご覧頂きたいと思います。(6)に支払期日後の移転登録というものを書いておりますけれども、支払期日が過ぎた後にされた移転登録であっても支払期日前の移転登録と同様の効力、つまり先ほど申しました人的抗弁の切断、それから善意取得が認められるという考え方がA案でございます。B案というのは、支払期日後の移転登録には善意取得及び人的抗弁の切断の規定の適用はないものとするという、16ページに入ったところですけれども、そういう考え方で、これは手形における期限後裏書、満期を過ぎてから行われる裏書を期限後裏書と呼んでいるわけですけれども、期限後裏書には人的抗弁の切断や善意取得がないのと同じ扱いにしようというのがB案でございます。

このB案をとれば債務者は必ず勝つということになって、第三者がばばを引くことになると。それに対してA案は、デフォルトになった債権の流動化ということも最近においては非常に重要な課題であって、デフォルトになった債権の流動化をよりしやすくするためには善意者保護をデフォルトになる前の、つまり支払期日前のものと同じように与えるべきだという考え方に基づくのがA案でございます。

そういう考え方の違いからA案、B案両論ありまして、引き続きご議論頂いているところですけれども、仮にA案をとりますと、債務者は本来は支払ったことによって債務を免れたはずなのですけれども、善意の第三者があらわれてしまうともう一回払わなければいけなくなるということで、これは債務者のために何としても支払と支払等登録との同期性の確保が必要になるわけでございます。

他方、B案をとりますと債務者は助かるわけですけれども、善意の第三者の利益が害されるということが起きますので、それを防ぐためにはやはり同期性の確保が必要になると。その観点から最初の◆に書いておりますように送金手続に管理機関が関与したときには職権で直ちにその登録をするという形をとってはどうかということにされているわけでございます。

1枚めくって頂きまして6ページでございますが、関係者の責任でございます。

これは申請をする場合、登録は申請に基づいてするということを先ほど申し上げましたが、無権代理とか他人名義の冒用というようなことが、そんな頻繁に起こってはならないわけですけれども、起こるかもしれないわけでございます。その場合の関係者の責任規定を整備する必要があるということでご議論を頂いてまいりまして、試案の3ページをご覧頂きたいのですけれども、3ページの下の方のbというところですが、他人のためにする意思表示をした者の責任ということで、他人のために電子債権に係る意思表示をした者に対する民法第117条、これは無権代理人の責任の規定ですけれども、この規定の適用については、「過失」とあるのは「重大な過失」と読みかえるものとすると書いています。これは、要するに相手方が重大な過失がない限り無権代理人は本人に代わって支払をする義務を負う、あるいは損害賠償責任を負うというのがここで書いていることでございます。

ですからまずは無権代理人、あるいは冒用した者が本人に代わって全責任を負うというのが原則でございますけれども、大体こんな無権代理とか冒用なんかする人は金なんかないのが普通でございますので、それでは本当の保護は図られないということになります。

そこでその次の◆のところですけれども、概要の方ですが、管理機関が申請内容と異なる登録や無権限者の申請に基づく登録を行ってしまった場合に関する管理機関の損害賠償責任に関する規定を整備するということにしていまして、ただどう整備するのかについてはご議論が非常に対立しているところでございまして、複数案掲記になっております。具体的に見て頂きますと、試案の6ページのcということですけれども、不実の記録についての管理機関の責任ということで、当事者の申請と異なる内容の登録をしてしまったという場合には、これによって生じた損害を賠償する責めに任ずると。その後にブラケットでただし書が書かれておりますが、このただし書がないという見解、これは無過失責任を負わせるという考え方でございます。ただし書を入れるという意見もありまして、これは過失責任なんだけれども、自分に過失がないということの証明を管理機関側がしない限りは損害賠償義務を負うというのがもう一つの考え方で、その両論が分かれているわけでございます。前回の部会でも議論をして頂きまして、両方の意見が鋭く対立してなかなか折り合いがつかないのですけれども、その中間的な解決はないかということがご議論されまして、ここでただし書として管理機関がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明すればいいということになっておりますけれども、それよりもさらに厳しいけれども、無過失責任ではないものとして不可抗力によるものであることを立証したときはこの限りでないという行き方もあるのではないかということで、その3案を今後引き続き議論していくということになるのではなかろうかというふうに思っております。

もう一つは、7ページの真ん中から下ですけれども、(4)の申請権限のない者の申請に基づいて登録をした管理機関の責任ということでございまして、ここは更に意見が分かれていまして、普通の民法の不法行為責任で損害を被った者の方が全部管理機関の故意、過失を立証しなければいけないというふうにすべきだという、これはどちらかというと管理機関になられる予定の立場の方々の意見でございます。

その正反対の意見がC案でございまして、無過失責任を負うべきである。管理機関に全幅の信頼を置いて登録を信頼して譲り受けるのだから、登録をした管理機関は無過失責任を負い、必要があれば保険等で賄うべきであるというのがC案でございます。その中間としてB案というのがございまして、過失責任だけれども、過失が推定されて自分に過失がなかったことを管理機関側が主張、立証できれば責任を免れる、そうでなければ損害賠償責任を負うという形にしてはどうかということでございます。

この問題は、当審議会でも事例の5という、これは変造だけが取り上げられております。変造というのは試案の方で言いますと6ページの不実の記録についての管理機関の責任の1になりまして、ですからここについては無過失責任なのか、挙証責任を転換した過失責任なのかということが法制審議会では議論されているわけですけれども、いずれにしてもハッキングなどが起きた場合には管理機関は大半の場合責任を負わなければならないということになるわけでございます。そうなりますと、無過失責任なら完全にそうなるわけですし、挙証責任を転換した過失責任でも自分に責任がなかったことを立証するのは非常に困難でありましょうから、多くの場合は責任を負うということになるわけでございます。そうなりますと、電子債権制度の信頼性の確保という観点からしますと、管理機関がその損害賠償責任を支払う能力があるということが非常に重要な信頼性確保の要件になってくるのではなかろうかと思うわけでございまして、その問題は当審議会の資料4-2ですと、2ページ目の3.の(1)として電子債権管理機関の参入適格要件をどう考えるかということが提起されているわけですけれども、そういう問題をお考え頂くに当たって電子債権管理機関が負うべき損害賠償責任の履行というものをどう考えるかということもあわせてご議論頂ければというふうに考えております。

それから次、7ページに移らせて頂きますけれども、では電子債権の管理というのはどのように行われるかということですけれども、一言で言いますと不動産登記簿をご覧になった方がおられれば不動産登記と同じであるというふうにお考え頂ければと思います。つまり、不動産登記では物的編成主義という言葉があるんですけれども、そういうものでございまして、要するに電子債権は、管理機関が各電子債権ごとに区分して作成する登録原簿で管理されるということでございます。

これは例えば社債等振替法という法律がございまして、社債等の振替が現に証券保管振替機構で行われているわけです。この社債等の振替制度は、債務者ごとに口座がつくられて、口座の増額、減額記帳方式がとられているわけですけれども、ここでは電子債権というのは原因債権とは別個のもので登録することによって発生する債権です。2つ登録されれば2つの債権が発生してしまうということでございますので、各電子債権ごとに番号を付して管理するという形をとることにしてございます。

移転登録はどうするかといいますと、番号が付された電子債権、発生登録がされている電子債権のその発生登録の次に移転登録を書き込むという形で1つの原簿に引き続いて記録がされるということになるわけでございます。

それからその次に書いていますように、登録原簿というのは、「管理機関の事業の承継等」というのは、例えば、会社分割とか事業譲渡とか、そういう場合を考えているわけですけれども、そういう場合を除いては他の管理機関には移転されないと。つまり生まれてから死ぬまでといいますか、支払等登録がされて権利が全部消滅するまで、発生登録をした1つの管理機関が1つの登録原簿に発生登録から順次移転登録とか支払等登録とか変更登録とかそういうものを書き続けていくというものであるということでございます。

それからその次でございますが、発生登録・移転登録その他の登録につきまして、必要的な登録事項以外に多様な任意的登録事項も認めるということにしてございます。

これは一々試案を見て頂くのは省略しますけれども、電子債権のニーズの一つとしてシンジケート・ローンの流動化ということが言われているわけでございます。このシンジケート・ローンは、弁護士の先生方もいらっしゃるので私が申し上げるのは僣越なのですけれども、非常に詳しい契約書がつくられます。その契約書のいろいろなコベナンツ条項をそのまま登録したいというニーズがあるわけでございます。それによってそのコベナンツ条項を十分見た上で機関投資家がローンをお買いになると、こういうことができるようにしようというニーズがございますので、それに対応することができるようにするために多様な任意的登録事項を認めようということでございます。

そしてちょっと戻って恐縮ですけれども、4ページに戻って頂きますけれども、マル1のところに※を書いておりますけれども、任意的登録事項を広く認めるということ。これはどこまで認めるか、ちなみに最初に申しました管理機関の業務規程でどこまでの任意的登録事項を認めるか、一切任意的登録事項を認めないという管理機関、つまり手形と同じようなものだけを扱う管理機関もあってもいいわけでございますけれども、任意的登録事項が認められればその登録がされるわけですが、その登録がされた場合にどうなるかということですけれども、4ページのマル1の※に書いていますように、登録された抗弁は登録されているわけですので、第三者にも対抗できるということになります。ですから、任意的登録事項をたくさん登録するのが流動性確保にとってよいことなのかどうかというのはなかなか難しい問題ということになろうかと思います。

それから次でございます。8ページですけれども、先ほど申し上げたのと同じことですけれども、管理機関は業務規程で当事者の登録申請の方式、登録事項の内容等を制限できるということでございます。これによって、先ほど申しましたように多様なニーズに対応したさまざまな管理機関が出現し、さまざまな態様の電子債権、例えば、シンジケート・ローン型、手形型といったようないろいろなものができてくることが可能になるということでございます。

最後でございますが、9ページ、その他の事項ですけれども、先ほど発生、移転、消滅ということを申し上げましたけれども、それが基本形でございますけれども、登録保証という手形における手形保証に相当するものでございますけれども、非常に独立性の高い保証というものを登録することによってできるようにしようというのが登録保証でございます。

それから、債権ですから債権質が認められなければなりませんで、質権設定登録制度というものを用意するということにしてございます。

それから登録事項の変更ということが考えられますので変更登録、それから間違って登録してしまった場合の管理機関による職権による訂正、そういうようなものも挙げてございます。

なお、この関係で一言申し上げておかなければなりませんのは、前回の審議のときに米澤委員からだったと思いますけれども、履歴を確保しておくことが必要であるということをご指摘がございましたけれども、この試案を見て頂きますと、あらゆる登録事項につきまして登録日、訂正の場合も訂正日を必ず書かなければならないという規制にすることにしてございます。

いよいよ最後の最後ですけれども、登録原簿の開示という問題がございます。まず、登録原簿に登録されている事項が訴訟で問題になるということがあるわけでございまして、その権利があるはずなのに登録されていないという者や、登録はされているが、そんな債務は負っていないという者が訴訟で争うという場合がございますので、その場合に決定的に重要なのが登録原簿の記録でございますから、管理機関が当事者になっている場合には登録原簿に登録されている事項を訴訟へ提出しなければならないという、民事訴訟法に文書提出命令という規定がありますけれども、それの特例の規定を設けようということになってございます。

それから訴訟の関係でついでで申し上げますが、手形には手形訴訟という簡易な訴訟があるわけですけれども、電子債権については特別の訴訟手続は設けないということになってございます。これは手形のように紙だけ出せばそれで物が片づくというものと違いまして、電子債権の場合は登録という形になりますので、手形と同じような意味でのいわば証拠制限のある訴訟手続というのは設けにくいということと、昨今の司法制度改革によりまして全体の訴訟自体も非常に早く終わるようになっていますので、特別の訴訟手続を設けなければ経済合理性がないほど訴訟に時間がかかるということはないであろうという考え方に基づくものでございます。

最後に登録原簿に登録されている者等による原簿の開示・保存ということ。これも時間の関係で省略させて頂きますけれども、33ページから34ページにかけて書かれています。登録原簿は、登記簿のようにだれにでも開示するというのではなくて、基本的には氏名、名称が原簿に登録されている者にだけ開示する。ただし、シンジケート・ローンなどは買受け候補者に登録内容を開示することによって、買ってくれる人を探したいというニーズもありますので、管理機関が業務規程で定める者にも開示をすることができるというような形にしてはどうかという議論になってございます。

なお、ここには書きませんでしたけれども、かつてITワーキングでご議論頂いた際に問題になったものとして不渡り処分、銀行取引停止処分ですけれども、それに相当するものを設けるべきかどうかというご議論がありましたけれども、この試案は一言もそれについては触れておりません。それはなぜかといいますと、銀行取引停止処分というのは現在の手形につきましても銀行実務の運用として行われているものであって、法律上の根拠を一切有しないものでございます。したがいまして、電子債権の法制をつくる場合にも、電子債権法制について不渡り処分に相当するようなものを設けるかどうかというのは銀行実務の問題になるのであろうと。ですから法律に定めるべき事柄ではないということで、先ほど冒頭に申しましたように法制審議会というのは法律の規定の原案を考えるという審議会なものですから、それについては一言も触れていないと、こういうことでございます。

今後の予定でございますが、最後のページをご覧頂きますけれども、今年の7月末には中間試案を公表させて頂いて、来年の2月初旬には要綱を法制審議会の総会で決定して頂いて答申をして頂くというような段取りで手続を進めさせて頂きたいと考えております。

どうも長時間ありがとうございました。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまのご説明につきまして皆様からご質問、ご意見を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。

なお、最後に始関管理官のおっしゃったことにつけ加えますと、確かに銀行の不渡り処分類似の制度をつくるかつくらないかというのは法律事項でありませんのでここに入っていませんが、この電子債権に関して手形訴訟のような特別な訴訟手続を設けるということも検討しないという方向で法制審議会では検討されていると理解しております。よろしいですね、そういうことで。以上です。

何か皆様からご質問、ご意見ございますでしょうか。

野村委員、どうぞ。

○野村委員

ご説明ありがとうございました。私法上の問題については法制審議会でご議論ということなので、私どもの方の議論にやや関連のあるところでのご質問をさせて頂きたいというふうに思います。

電子債権の消滅に関するところでございますが、今日頂きました説明資料の5ページ目のところに関連するご質問であります。

いわゆるITワーキングでも同期性の確保が非常に重要であるということは共通認識となっているわけでありますが、その際の、それを担保する制度として管理機関が送金手続をする場合には管理機関が入金手続を終えた後、実際上、債権者のところの口座に入金がなされたという確認がなされたということが前提になるんだと思いますが、それが確認された後、直ちに職権で支払等登録をするということで同期性を確保しようというアイデアであろうかと思います。そこで、ここの部分については法務省として必ず送金手続をする業者のみが管理機関になるかどうかということはペンディングになっているということでこのような「場合には」という表現になっているというご説明だったかというふうに思います。

そこでちょっとご質問なのでありますが、確かに送金手続ということを行うことのできる業者というのは為替取引ができる業者ということになりますので、金融機関の中でも一定の金融機関のみがそれに該当するということになることは承知しているわけでありますが、電子債権管理機関というのは先ほどのご説明にも若干触れられていましたが、債権管理機関のデータというのは動かない、債権が譲渡されても債権管理機関から動かないというコンセプトでありまして、そのあたりが社振法とほかの証券決済システムとやや違うというところがあると。そうしますと、最初に通常電子債権管理機関、いろいろな制約がありますからどこを管理機関に選ぶかというのはあると思いますが、特段不都合がなければ自分の取引金融機関というのを債権管理機関にして電子債権を発生させると思うんですけれども、その電子債権が後に譲渡等が行われていった場合には、現時点において最終的に支払が行われる時点における債権債務者にとりましては、必ずしも取引金融機関ではないところに電子債権に関するデータが残っているという状況が想定されるんだろうというふうに思います。そうなった場合に、電子債権管理機関がたとえ銀行であったというような場合であったとしても、その債権債務者の間での送金手続というのが別な銀行間で行われるという状況は当然想定されるわけでありまして、必ずしも管理機関がその送金が完了したかどうかを知り得ないという状況も想定できるのかというふうに思うんですが、そのあたり私の今の認識に誤りがないのかどうかということだけちょっと確認をさせて頂きたいというふうに思います。

法務省に聞くべきことなのか、あるいは金融庁に聞くことなのかちょっとわかりませんが、そこは全く電子債権管理機関とは切り離されたところで送金の手続が行われるという理解でよろしかったのかどうか、そこだけちょっと教えて頂ければと思います。

○岩原部会長

いかがいたしましょうか、どちらにお答え……始関さん、お答えになりますか。

では、始関さん。

○始関法務省民事局民事法制管理官

では、前座でまず私の方からお答えさせて頂いて、後でまた金融庁ご当局からお答え頂ければと思いますけれども、確かに例えば銀行が管理機関になられる場合でも送金元の金融機関の口座と送金先の金融機関の口座はそれぞれ管理機関となった銀行の口座とは別の口座であるということはあり得ると思います。ただ、そうなるのかどうかは先ほども業務規程でいろいろなことが定められると申しましたけれども、口座を全部うちの銀行にしてもらわないとだめですよという、独禁法の問題があるかもしれないのですけれども、そうすればそういう問題は起きないわけでございます。

それから、私どもが漏れ聞いておりますところでは、実務界におかれては債権者側が管理機関を利用するについては基本契約のようなものを締結されることに多分なるんだろうと思います。そこら辺も基本契約を締結した人でないと債権者としての登録はできませんよというようなことを規制することも業務規程でできるというふうに考えているわけですけれども、その基本契約を締結される際に、債権者の受取口座は管理機関の口座として、一たんその管理機関の口座にお金を入れた上でさらに管理機関から債権者の口座に再送金するというやり方をとるということもできるわけでございまして、そうすれば自分の口座にお金が入るわけですので、入ったということは絶対確実にわかると。そういう代理弁済受領権というもので確保するというようなことが検討されているやに承っております。

ちなみに、時間の関係で紹介を省略させて頂いてしまったのですけれども、当金融審議会の資料4-1の事例3というのがございます。分割譲渡を前提とした事例ですけれども、電子債権管理機関が間に入ってお金を受け取ってそれを債権者の口座に振込みをしていくと、こういう形でその管理機関の口座に入った時点で支払がされたことにするという、先ほど私が申し上げたような例がここに挙がっているわけでございます。ちなみに、お金を払われる債務者の側に立てば、自分の口座から外へ出たときに支払が終わったことになるのが最も望ましいわけでございますので、非常に近い形になるのがこの事例のような形であろうかと思っております。

前座は以上です。

○岩原部会長

それでは金融庁の方、お願いします。

○新川企画課調査室長

今、始関管理官からご紹介のあったいろいろな事例が考え得ると思います。まさに野村先生からお話がありましたように、同じ金融機関といっても別銀行になれば、仕向け銀行は実際本当に口座に振り込んだのかどうかというのは自行の支店間に比べてタイムラグが生じるというのは、今の銀行実務で言えばその通りということになろうかと思いますので、この話、実は管理機関が送金手続する場合にはと一部に書いてありますけれども、実はその管理機関にどういった方が実際なるのか、あるいは管理機関にどこまでのこういう送金業務とか資金を受領するといったことを認めるのか認めないのかというまさにこの当合同会議において議論して頂く中核的な議論になろうかと思いますので、もう少し夏にかけていろいろな事例研究をしてみたいと思いますけれども、まさにそういったいろいろな使われ方があるという前提で、例えばこういう実際に送金手続を実際やらすのかどうか、やらすとすればやった場合にどうやって職権でこの支払等登録をする場合にどういった実務との関係で電子債権管理機関が服すべきいろいろな規律があるのか、そういったことをお決め頂くということになろうかと思います。

○岩原部会長

野村委員。

○野村委員

確認ですけれども、そういうことになりますと結局、今の同期性を、もし同期性を確保するということを最大の至上命題として考えた場合には、電子債権管理機関というものを送金手続のできる者にするということを第一条件とし、さらに電子債権管理機関が送金手続に何らかの形でコミットするということを確保しなければいけないというのが一応の条件というイメージになって、後者の部分についてはやや自由度があってもよさそうな感じもしますし、前者についても自由度があってもいいのかもしれませんが、そこのところを詰めて議論するということでこの条件をどこまで同期性の確保につなげていくかということを議論すればいいという、そういう理解でよろしいわけですか。

○岩原部会長

それでは新川さん、お願いします。

○新川企画課調査室長

同期性の確保を第一条件とした場合にそれがイコール、一番それを確保するのに近道の手段は、実際管理機関が送金手続までやってしまうというところが近い手段だと思いますが、なおその点についても同期性確保のために送金手続によらずともできる方法があるのかどうか、あるいは同期性確保の求められる度合い、瞬時に同じというところなのか、あるいは一定のタイムラグまで許容されるようなケースがあるのかどうか、そこも含めてちょっとまだ私ども自身が整理ついていないこともございまして、いろいろなご議論をお願いせざるを得ない状況にあろうかと思います。

○岩原部会長

では、先に始関さん。

○始関法務省民事局民事法制管理官

今の関係で1点ご説明しておくべきことで忘れていたことがございますが、試案のどこだったかすぐ出てこないのですけれども、譲渡する場合に移転登録をするわけですけれども、支払期日の前後何日間かは移転登録に応じませんという業務規程を定めることもできるというふうに考えています。それによって、先ほど言われた同期性が、本当に瞬時の同期性というのは難しいわけですけれども、例えば、1日、2日というタイムラグがあるときに、そのタイムラグが最大2日であるとすれば、支払期日から2日間は移転登録には応じませんという形にしておくことによって、その間で確認をして支払等登録をしてしまうと。そうすれば支払がされたのにその後に移転登録を受ける第三者というものは現れないという形で取引の安全と静的な安全を確保するという方法も考えられるところでございます。そういうこともあるということも頭に入れながらご審議頂ければと思います。

○岩原部会長

ただいまの始関管理官のご発言は、さっきから議論されております管理機関が送金することによって支払がなされたとして支払等登録をするというふうに言っていますが、本来この債務は持参債務で、受取人の指定された口座に入金記帳がされないと本当は支払の効果は生じないはずなんです。厳密に言いますと、送金手続をしただけでは本当にちゃんと受取人である債権者の口座に入金記帳がされるかどうかはわからないわけです。そこでさっき始関管理官が1日、2日の時間的な余裕を置いてその間は移転登録等ができないようにするというのは、その送金手続が行われてから1日、2日たっても入金記帳がされなかったという連絡がなければそれでもって入金記帳がされたものと扱って支払の効力が発生したと扱っていいということを前提に、それを担保するためにそういう1日、2日の間は移転登録ができないようにするというようなことを業務規程で定めてはどうかということをおっしゃっているわけです。

ただ、これも厳密に言うと、そういうことを管理機関がどうやって確認するかという問題もあって、そういうことが確認できる立場の者でなければそういうことができないのかという問題にもなっていくというふうに思います。

ちょっとやや余計な説明をつけ加えました。佐藤さん。

○佐藤委員

同期性についてちょっと私の理解が足りなかったのかもしれませんが、同期性については大変重要だという認識を持っているのですが、法制審の議論では支払の方法については法令上、特別に規定を設けないという議論になっているわけです。従いまして、銀行の預金口座を使った支払が全てであるということは法制審では予定しているわけではなくて、それ以外にいろいろな支払手段というのが考えられるわけです。コンビニの支払もそうかもしれません、携帯電話による支払もそうかもしれません、いわゆるネッティング、相殺ということについてもそれ自体ではいわゆる人的抗弁で整理されていますので支払としての登録要件にはならないかと思いますが、相殺をもってして支払等登録をすることはできるはずですので、そういうような支払手段というのもできるわけです。したがって、同期性で重要なのは、情報が同期的に管理をされているということか重要なのであって、同一の機関が電子債権の管理と資金の管理、資金決済の管理を行うということをもって同期性というふうにおっしゃっているのではないだろうと思うんですけれども、その辺ちょっと私の認識が違うかどうかということなんですけれども。

○岩原部会長

始関さん、お願いします。

○始関法務省民事局民事法制管理官

それはもう佐藤委員おっしゃっておられた通りでございまして、お金が払われたということとその登録とができる限りタイムリーに同じ時期にやれるべきだというところが同期性というふうに私も理解をしておりまして、そのための方法としてはいろいろなものが考えられるのかもしれないと思っております。

○岩原部会長

吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

経済なものですからあまり専門ではないんですけれども、管理機関に関して8ページのところで多様な管理機関がある方がいいと最後に書いてあるんですけれども、ただこの場合、管理機関がある程度集中した方が規模の経済性があるような場合には必ずしもこういうことが言えないかもしれませんので、管理機関のあり方というのは諸外国を見て考える必要があるのではないかと思います。

それから4ページのところで、債務者が消費者である場合ということを先ほどご説明があったわけですが、住宅ローン債権の証券化に加えて中小企業などの債権も証券化されるわけですから、そうするとアマとプロといいますか、そういう形で分けた方が中小企業でも非常に冷静な方もおられるわけですから、グルーピングとして少しあるかなという感じがいたしました。

それから最後は、ほかのところでも議論されているかもしれませんけれども、こういう新しい電子債権のシステムを考える場合にいかに低コストでこれがワークするかということもぜひ考えて頂きたいと思いまして、例えば企業のIDナンバーとか、日本ではなかなかできないわけですけれども、そういう番号があることによってコストが最小限でできるかもしれませんから、そういう全体としてのインフラもぜひ考えて頂きたいと思います。

○岩原部会長

ありがとうございます。

確かに管理機関が多様な方がいいのか、それともむしろ集中して単一であったりした方がより効率的なのかというのは非常に大きい問題で、先ほど徐参考人からご説明のありました韓国はまさに一つであって、しかもそれを決済と結びつけることによって決済の機能までまとめてやれるということにしているわけでして、どっちがいいか大きいグランドデザインの問題としてあり得るわけです。法制審議会の方では多様なあり方が考えられるべきだということで検討が進められておりますけれども、そもそも遡って考えればグランドデザインとして韓国のような行き方もあるわけでありまして、そこら辺はご議論の余地があり得るかとは思います。

原委員、どうぞ。

○原委員

今の吉野先生が発言して頂いたので少し補足的なんですけれども、私もここ4ページで消費者への配慮まで含めて法制審の方で検討を進められてきているということは大変関心を持っておりますのでぜひ、不渡りのところも気にはなっておりましたけれども、岩原先生からご説明頂いたので状況はわかりましたけれども、検討をお願いしたいと思います。

それで今消費者というところでプロ・アマ論の話が出ましたけれども、中小零細の事業者というところの扱いが気になるということで、これが消費者契約法制定過程で随分消費者の概念の整理というのをいたしましたので、そちらもぜひ参考のために見て頂けたらというふうに思います。

それから全くの素人で大変恐縮なのですが、電子債権ということで検討していて、一番の基本になるのは管理機関で作成する登録原簿というところになるわけなんですが、電子となるとすぐ気になるのがシステムダウンとかこういったシステムトラブルですよね。そういったあたりはもちろん法制審の議論の直接の対象ではないというふうに思うのですけれども、でも業として何らか始まるとなればやはり金融庁としては考えておかなければいけないことではないかなというふうに思うのですが、大変素人っぽいですけれども、ちょっと基本のところなのでぜひお願いしたいと思います。

○岩原部会長

2つの問題点をご指摘頂いたわけで、第1のいわば消費者の定義の問題については法制審は法制審の中で議論があるわけでして、それは後で何でしたら始関さんにご説明頂きたいと思いますが、それと同時に多分制度設計として金融審議会で管理機関等のあり方を考える上で、こちらの立場としてもやはり問題になってくるであろうと思います。

後者の問題は、まさに恐らく管理機関の監督等の問題としてこの審議会でご議論頂かなければならない問題だと思います。

まず、前半の問題について法制審での議論について始関さん、お願いします。

○始関法務省民事局民事法制管理官

消費者の概念は第二次案からもうちょっとはっきりさせようと思っておりますが、消費者契約法に規定する消費者という整理にするつもりです。

ですから消費者であるかどうか、原委員は消費者保護法が制定された当時の国民生活審議会の委員であられて、私は国生審で説明させて頂いたこともあったのですが、消費者契約法上の消費者ですから、その場面場面によって消費者になる場合もあれば、そうでない事業者として活動する場合もあるという、そういう、人の属性ではなくて、ある行動における属性というんですか、そういうものであるという整理でございます。

○岩原部会長

それでは、前半と後半それぞれの問題について金融庁の方から何か。

○新川企画課調査室長

前半、消費者の定義の問題について、消費者契約法の消費者とする方向ということを下敷きにした上で、さらにこういった電子債権の当事者に消費者がなる場合における消費者としての権利をどうやって守っていくのかというようなこと、それから電子債権管理機関がそれをどのように対応していったらいいのかという両面ご議論頂くべきだと思います。

それからシステムダウンの問題ですが、これも2つあろうかと思います。1つは法制審で今ご議論が進んでおるところでありますが、システムダウンのその結果生じた損害をだれに帰属させるのかということが一つの大きな論点になろうかと思います。それを踏まえた上でその損害は帰属させるとして、その損害が埋められなければなりませんから、それについて先ほど始関管理官からもお話がありましたようにその損害を埋めるに足るような仕組み、あるいは電子債権管理機関としてどういった参入主体を許すのかというのがもう一つ。

それからもう一つ監督上の問題として、システムダウンを起こさないということが最も重要になってこようかと思いますから、そうした適切なシステム管理等するためにどのような監督上の措置が必要なのか、こういった論点についてまた次回以降ご議論頂くことになろうと思います。

○岩原部会長

和仁委員、どうぞ。

○和仁委員

全くのど素人の質問で2つお伺いしたいのは、電子債権の移転のときに一般承継が生じた場合、また法定代位が生じた場合には電子債権については別に移転登録は要件としないというんですが、一般承継の中には会社の合併も入れられるんですか、それから分割、それを入れられるのか、それが1つ目です。

2つ目の方は、すみません、弁済以外の消滅原因というのは相殺・混同はもう入れないというのが制度設計として頭から決まっているということでしょう。というか、結構これをやると債権者になる人の方からいって、リスク管理の見地からいって、要するにいざとなって相殺で自分のポジションを消すということが非常にできにくい債権をやってしまう。電子債権にするメリットがあるのかなというふうな感じもするんですけれども、すみません、両方とも、所与ではもうこれは決まりで、この中で制度設計で金融庁で我々が議論することもこれを前提として考えなくてはいけない、まだここも変わるのか、この辺はちょっと教えて頂ければ助かるんですが。

○岩原部会長

始関さん、お願いします。

○始関法務省民事局民事法制管理官

まず一般承継でございますが、合併は冒頭に申しましたように一般承継に当たると。つまり合併が生じればその時点で存続会社や新設会社にそのまま移転するわけですので、その場合には移転登録は要件でないということでございます。

会社分割の場合でございますが、一般に一般承継的なものだと言われているのですけれども、不動産登記でも移転登記が対抗要件であるというふうに考えられておりまして、分割の場合はどの事業をどういうふうに分割するかという問題がありますので、これは移転登録をして頂かないといけないというふうに考えております。

それから相殺と混同の話でございますが、中間試案の19ページをご覧頂きたいのですけれども、ここに書いているとおりでございまして、相殺は人的抗弁として取り扱われると、混同についても登録をしない限りは混同による債務の消滅は主張できないという形で整理をしているところでございます。

○和仁委員

要するに、ここはもう変えられないということですね。さっき何か始関さんのご説明だと、まだこれはドラフトで第2稿ができてとか何とかおっしゃっていたので動いていくのかなと思ったんですが、そういうことはないわけですね。

○始関法務省民事局民事法制管理官

この相殺・混同の部分についてはご異論はないところでございます。

○和仁委員

わかりました。

○岩原部会長

むろん、法制審の内部で異論がなくて、そういう形で中間試案がつくられるということで、この後パブリックコメントにかけられますから、そこで和仁委員からそれはまずいというご意見があれば当然考慮されるということになります。

ほかに何かご質問、ご意見ございますでしょうか。

やや専門的なことも多い、技術的なことも多いわけですが、しかし同時に大きい管理機関が集中する必要がないかとか、大きいグランドデザインの問題もありますし、先ほどの韓国の例を考えてみますといろいろな行き方があり得るわけで、はっきり言えばまだこれは途中の案の段階ですから、むしろグランドデザインとして電子債権としてもっといろいろなあり方があっていいんではないかというご意見があれば伺いたいと思いますし。いかがでしょうか。

○市川経済産業省産業資金課長

オブザーバーとしてちょっと一言だけですけれども、今のグランドデザイン的な話でございますが、先ほど来ご説明がありましたように例えば電子債権の具体的なビジネスモデルとして手形とか一括決済、あるいはシンジケート・ローンというようなことが言われておりますけれども、前にも、昨年のこちらの審議の中でも多少ご紹介いたしましたが、経済産業省でいろいろと過去にも勉強させて頂いた中でも、例えばグループ企業間で資金管理をする手法としてのキャッシュマネジメントシステムとか、ほかの形のビジネスモデルというようなこともいろいろと言われておりまして、昨年の金融審でも申し上げたんですが、金融審の野村座長のメモでもキーワードとして柔軟性というようなことを言って頂いていますけれども、やはり先ほど議論になっておりましたが、多様な主体が電子債権のいろいろな形で参加すると、いろいろなビジネスモデルに発展する、あるいは昨年の座長メモによれば成長といいますかそういうようなことも言われておりますので、いわばこれは経済産業省的な見方かもしれませんが、将来性のあるぜひビジネスモデルに対応できるような電子債権の仕組みということをご議論頂ければと、そういうふうに感じておるところでございます。

○岩原部会長

始関さん、どうぞ。

○始関法務省民事局民事法制管理官

今市川さんがおっしゃられたこととも関係があるのですけれども、先ほど吉野委員からご提議があり、また座長もご発言された電子債権管理機関の個数といいますか、中央集中型にするのかどうかという問題なんですけれども、法制審議会では多様なものが幾つも並立するというモデルで検討して頂いています。

その理由でございますが、まず先ほど来出ていますように一括決済とか手形代替とかシンジケート・ローンとかあるわけですけれども、これは市川さんの方でおやりになった経済産業省の研究会の報告書にも出ておりますが、例えばシンジケート・ローンですとエージェントという役割を果たす銀行があるわけです。銀行とは限らないで証券会社の場合もありますけれども、そこが電子データを管理してそこを通じて全部お金のやりとりがされるということになっていて、ですからそのエージェントが電子債権管理機関になるとすれば非常に低コストなものができるということが指摘されています。

それから一括決済ですけれども、一括決済というのは既存のシステムでございまして、各金融機関、それからノンバンクがそれぞれコンピューターシステムを持っておられまして、現に一括決済で膨大な何兆円という額のものを動かしているので、もう既にシステムがあって、そのコンピューターシステムにできるだけ手を加えないで法律構成を電子債権という形にすることによってその移転譲渡などの流通性についての安定性・安全性を高め、それによって低コストで非常に流動性の高いものをつくり上げようというのがこれまでの経済産業省さん、それから金融審ITワーキング、それから法務省での電子債権研究会、そして法制審議会という一連の流れの中ではそういう議論がされてきたと。そのためにそういう幾つもの電子債権管理機関が民間の機関として並立するということあり得べしという前提で議論がされている。そのためにこういう中間試案になっているということでございます。

○岩原部会長

吉野委員、どうぞ。

○吉野委員

今の例えばエージェントの問題なんですけれども、最近のリートですとやはりエージェントの中に相当質の悪い人が入ってきているというのも出てきていまして、管理機関のあり方というのはどういう人がなるかというのは一つ重要ではないかと思います。

それからあと、大きなグランドデザインということなんですけれども、ヨーロッパですとユーロクリアのような決済のシステムが十分できていまして、これがヨーロッパ全体で、彼らはそれをアジアとかに持ってきたいということを願っているわけですけれども、もし韓国でそういうようなシステムがあるのであれば、アジアを通じてある程度共通の決済のようなものをやり、あわよくば日本の金融機関がそこでいろいろ活躍できれば一番いいんではないかと思います。

○岩原部会長

佐藤さん、どうぞ。

○佐藤委員

集中と多様性について感想なんですけれども、恐らくシステムインフラ的なものとビジネスモデルとは違うのかなという印象を持っていまして、コンピューターシステムのようなインフラ的なものというのは恐らく集中した方が規模のモデル、経済性というのは働くんだろうと。ただビジネスモデル、どんなことをやるかということについてはいろいろな人がいろいろなことを考えるという効果は相当多いだろうと。電子債権というのは金融目的に使われるということも考えますと、金融のプレーヤーというのはできるだけ複線化をした方が好ましいのではないかというのが、既にいろいろなところで議論されている結果ではないかなという印象を受けておりますけれども。

○岩原部会長

ほかに。

小足委員。

○小足委員

グランドデザインというよりかなり外縁の議論になりますが、中間試案(第一次案)の32ページで、信託を検討課題ということで挙げて頂いております。ここでちょっと非常に素朴な質問になりますが、法制審で電子債権が信託財産に属するような場合に登録によって第三者に対抗するというご議論、この場合の登録申請者というのは、もともとの電子債権の発生登録、移転登録の場合の申請者ということが所与の前提になっているというご議論でしょうか。

○岩原部会長

始関さん、お願いします。

○始関法務省民事局民事法制管理官

そのとおりでございます。不動産登記なんかの場合でも移転登記をする際に、あわせて信託目的であることを登記するというのと同じコンテクストで考えております。

○小足委員

従来そうだったと思いますが、仮に成立した場合ということで、信託法の改正に伴う整備法案で不動産登記法の方でも、信託の登録について受託者が単独で登記申請できるという改正の内容になっていたかと思います。そういったこととの関連で、法制審ではどういう議論としてご整理されることになるんだろうかという質問でございます。

○岩原部会長

始関さん。

○始関法務省民事局民事法制管理官

今おっしゃられたのは、自己信託の場合でしょうか。、普通の信託の場合もそうなっていますでしょうか。

○小足委員

いえ、自己信託に限らなかったと思います。

○始関法務省民事局民事法制管理官

私の方でもう一遍確認をしてみたいと思います。どうもありがとうございました。

○岩原部会長

では、確認して頂くことにしまして、ほかに何かございますでしょうか。

柳川委員、どうぞ。

○柳川委員

先ほどの多様性の話で、佐藤委員の方からお話があったこととかなり共通する部分があるんですけれども、システムとしてということとの関連でいくと、最初の方のところでちょっとご議論のあった決済システムの部分とそれからこの管理機関とどう結びつけるのかというそこのシステム設計の部分、そこの部分の話と今の多様性と一貫性ですか、システムとしての一貫性みたいなところには行きそうな話だと思いますので、結局のところそこをどうリンクさせるのか、させないのかというようなところが結局のところ、どの程度ビジネスモデルとしての多様性を維持しつつ、全体のシステムとしての統一感を持たせるかというところに関わってくるんだろうというふうに思います。

それからそれとも多少関連するんですけれども、結局この取引の安定性をかなり管理機関に適切な管理をさせるということで責任を負わせるというところにやはりどうしてもこの話だと持ってこざるを得ないというところになってくるわけでして、そのことと今の多様性の確保、あるいは積極的なビジネスモデルの展開ということをどうバランスをとっていくのかということが参入要件ということでかなり重要になってくるんだろうと思います。

お話し頂いたところですと、結局のところ業務規程の定め方というところが今の試案の中では非常に重要なところだと思うので、今のところは具体的にはこんなことが考えられるというふうなところでおさまっているように思いますので、質問としてはその辺のところはどの程度、私はちょっとこういう法律のつくり方の分担というのはよくわからないものですから、法制審の方では将来的にはこの辺はどの程度詰まっていて、どの辺のところが金融庁なのかということをちょっとお伺いしたいということ。

それは質問ですけれども、コメントとしては、やはりどの程度、先ほどの原委員のお話もあったことと関連するんですけれども、電子的な媒体のものを民間機関に管理させるという仕組みにおいてどういうふうな安全性を確保するのかというのはやはり将来的にもっといろいろなこういうケースというのは出てくると思うので、そういうのはモデルケースになると思うんですけれども、なかなかいろいろ考え出すと難しいかなという気がしますので、その辺のところをうまく安全性のバランスをとりつつ、かつ個々の民間主体にとっては余り重い負担にならないようにするにはどういうふうな規制のあり方が必要なのかというのをちょっと真剣に考えています。

○岩原部会長

ありがとうございました。いいですか。

○新川企画課調査室長

今幾つか論点を頂きましたと思いますけれども、決済システムとの関係。決済システムというものの管理機関としていろいろ登録される中身という、基本的には別概念というようなことで議論が進んできたように思いますけれども、実際は業務、実務の場面にいけばかなりできるかと思いますし、それから決済システムという観点からいけば多様性というよりは安全性ですとかあるいは集中による効率化といったことが出てくるのかもしれません。そういったものを全部もろもろ含めた上で、実は今まさにご指摘頂いた管理機関がすべていろいろな責任を負うといった過程でそれがいわば登録業務とかあるいは移転に関する安定性というものが出てくるというのが一つの側面としてはあり得るんですが、他方、個々いろいろな主体を入れるということになりますと、そういったものの安定性を図っていくという場面になると監督上のいろいろな措置が必要になってくると思います。

それで業務規程でいろいろ定めるということは柔軟な対応の一つの方法だと思いますが、恐らくは例えばどの役所が監督するかまだ決まったわけではありませんけれども、例えば金融庁が監督する段になって、業務規程に書いてあることを当局がよく審査してくださいとただ丸々言われてもなかなか審査できない。恐らく業務規程の定める範囲というものも明確にしておく必要があると思いますし、その中にはそれは私法の方で定めるのか、あるいは業法に定めるのか、そこは中身によると思いますけれども、中には電子債権管理機関がやってはならない禁止すべきいろいろな事項もあるかと思います。あるいは電子債権がやっていい範囲というものも業務規程でなくて法令上ある程度制限を加えておく必要のあるものもあろうかと思います。

それから明確な制限でなくても業務規程の中で、例えばこれを認可するに当たり、例えば業務規程というものはこういう方向でつくられていなければいかんとか、あるいはこういうものになっているかどうかを当局はよくそういうものを見た上で認可しなければいけないとか、法令上のいろいろなつくりがあろうかと思いますので、そういう安全性というものと、あるいは実際いろいろな実務がうまくいくというものとうまく両立するような形でどういう制度設計して頂いたらいいのか今後よくご審議を頂きたいと思っております。

○岩原部会長

まさに当審議会で検討しなければならない課題だということだと思います。

何か特にございますでしょうか。

では野村委員、手短にお願いします。

○野村委員

すみません、時間が過ぎていて恐縮ですが、一応先ほどもちょっとご紹介があって、私どもの方のITワーキングで一応多様性の議論はさせて頂いたわけなんですが、もちろんここは格上の部会でやっていますのでまっさらなところからご議論頂くというのも当然必要なのかなというふうには思いますけれども、これまで経済産業省さん、法務省さん、あるいは金融庁ということでらせんを描きながらある程度議論を進化させてきたという事実もあるわけなので、そういった過去の審議の状況というものはある程度ご配慮頂きながら前に進んで頂くことがありがたいなというふうには思っております。

その上で、先ほどちょっと始関さんの方からもご説明ありましたように、既に電子債権の管理に関する機関というものにフルラインのサービスを必ず提供しろというふうにしますと、今持っているシステムをより一層強化させたりとか相当程度のシステムを持たなければ電子債権管理機関になれないという状況をつくってしまうわけなんですけれども、そういうことは要求しないという共通認識が確かにあったんだろうというふうに私も記憶しておりますので、そこのところは所与の前提にして頂ければありがたいなというふうに思います。

ただ、先ほど柳川先生の方からもご指摘ありましたようにセキュリティーレベルをどのぐらい上げるかとか、責任をどういうふうにとらせるかということによって最終的にはそんなにコストがかかるんだったら入らないという人たちが出てくるということは実態の問題としてあるかなというふうには思いますけれども、今のところ必ず管理機関は全業務に対して対応できるようなシステムを用意しろということは要求していないという議論だったということだけは再確認させて頂きたいなというふうに思います。よろしくお願いいたします。

○岩原部会長

ほかに何かご意見、ご質問ございますでしょうか。

では小野委員、手短にお願いします。

○小野委員

さっきの決済のところの議論なんですけれども、既存の制度利用とか送金の議論からすると、恐らく専業性を前提としていなくて銀行の場合にはできるという議論なのかな、と。それがいい、悪いという議論ではないんですけれども、他方、いろいろな機関に認めるということになりますと、ベンチャー的なところも出てくるということになりますし、果たして専業性でなくてもよいのかな、と。他方において結構情報が集中すると思うので情報管理という視点からすると、これは効率性からしたらあまりいい議論ではないかもしれませんけれども、やはり専業性的な議論も必要なのかなと思いますし、支払手段としては持参払いにするとかいろいろあると思うんです。

もう一つ考えられることは、エクスロー的な機能を果たすというんですか、そこにお金があって管理機関が瞬間かもしれませんし、数分か1時間か1日かわかりませんけれども、保有するということも。そうすると、他の信用リスクから切り離す必要から信託的機能を管理機関が担う可能性もあるのかなと思います。そうすると信託業法との関連で、あちらの方は専業性になっておりますし、専業をとらなくても信託法の法理によってその資金は守られるのかもしれませんけれども、というようなところをどう整理していくかな、また今後議論していく点なのかなと思った次第です。

以上です。

○岩原部会長

どうもありがとうございます。

よろしいでしょうか。すみません、私の不手際のために若干時間をオーバーしてしまいました。申しわけございません。

それでは時間もオーバーいたしましたので、本日の会合はこれで終了させて頂きたいと存じます。

なお、この後記者会見を行いまして、本日の会合の模様につきましてお話をさせて頂きたいと存じます。

それでは次回の開催予定を事務局からお願いしたいと思います。

○新川企画課調査室長

次回会合は9月に開催することで現在調整中でございます。会合の中身につきましては、電子手形サービスの概要等につきまして信金中金のご担当をお招きしてご説明頂くとともに、それから前回お示しさせて頂きました電子債権の管理機関に関しまして利用者の保護及び決済の安定性の確保についてご議論を頂きたいと思います。

具体的な日程等詳細につきましては、追ってご連絡を差し上げたいと思います。

以上でございます。

○岩原部会長

どうもありがとうございました。

それでは以上をもちまして、本日の会合を終了させて頂きます。どうも長時間ありがとうございました。

以上

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