金融審議会「保険の基本問題に関するワーキング・グループ」(第39回)議事要旨

1. 日時:

平成19年11月8日(木)13時00分~15時00分

2. 場所:

中央合同庁舎第4号館9階 金融庁特別会議室

3. 議題:

保険法改正への対応について

4. 議事内容:

  • 保険法への対応について、保険会社に対する監督規制という観点から、3名の委員(原委員、松澤委員、村田委員)及び1名の参考人(木下孝治・同志社大学教授)がそれぞれ資料を用いて説明を行い、その後、自由討議を行った。

【自由討議における主な意見等】

  • 民事法と監督法規である保険業法の取り扱いについて4名の説明者間でも意見が異なる部分があるようだが、はっきりとした仕切りを設け、あまりオーバーラップしないような形を取るべきではないか。契約法に関してはおよそ100年ぶりの改正となる一方、業法は随時改正されている。契約法については、将来の社会の変化、諸外国の影響などを展望し、違和感のないものにすべき。

    現物給付について、委員の方々も慎重に対応すべきとの事だが、基本的には金銭給付と現物給付がどちらでも選択できるというのが望ましいと思われる。また、現物給付の場合、例えば、将来保険会社の破綻等があった場合に、PPC(保険契約者保護機構)は、これに対してどう対応するのか。

  • 現物給付については、商品性の設計段階でいろいろな工夫をしていくということになるのではないか。やはりある程度、金銭との選択を可能とすることを中心として、商品開発がされていくのだろうと想定している。ただ、今後どのような展開を見せるのか不明確なところもあるので、あまり拘束的なものとすべきではない。

    現物給付に関して、破綻をした場合のPPCの対応については今後の検討課題だが、恐らく基準保険金のようなものを作り、その中で対応することを考えていくのだと思う。これに関しては、まだ結論を得てはいない。

  • 消費者、サービス利用者の観点からすると、現物給付の是非については、さまざまな生活リスクにどう対応していくかということについて、私的な生命保険と公的な社会保険とあわせて、トータルな意味での消費者、利用者にとって、どういうメリットがあるかという観点も必要である。公的な医療保険でカバーされていない分野を現物給付でカバーするというような考え方、端的には公的な医療保険の三割自己負担分または介護保険の一割自己負担分を私的生命保険で現物給付するという考え方があるが、そうしたことはできるのか。政策判断ではあろうが、社会保障制度の各種公的な保険制度と私的保険との関係をどう見るか。保険料の負担と給付の長期的な将来的な給付の内容のバランスという収支相等の原則の観点からだけではなく、トータルな意味で国民の生活リスクをヘッジするという観点が必要である。事例としては有料老人ホームへの入居権といったものが検討されているようであるが、これ以外に、現在、生保各社で具体的に現物給付の商品を検討しているのか。

  • 医療の自己負担部分については、第三分野の話であって、生保だけでなく、例えば現状でも、ある損保会社の方では、がん保険で実費補てんするという保険契約がある。生保としても、団体保険の一部であるのだが、実費補てん的な商品を持っている。

    高齢化社会を迎え、医療保険については現状のままいくかどうかについて議論のあるところだが、アメリカはちょっと特殊だが、イギリス、フランス、ドイツといった欧米諸国でも民間保険会社が一部、公的保険を代替しているような形態もあると認識している。医療団体とか厚生労働省と相談しなければいけないが、医療機関には経営が厳しいところもあり、そのあたりで何かサポートができることがないかなどという視点も含め、検討していく余地があるのではないか。

    第一分野に関して、過去のケースとなるが、老人ホームの入居権で、商品としては即時払いのものがあった。すなわち、老人ホームに入居が決まった方が加入をし、老人ホーム入居に関して発生する一時金と毎月かかる費用のうち、この費用を定額で支払うという終身年金の形になる。現物給付になると例えば仮に月額の経費が値上がりしても、保険会社が入居権の保障をするというような形態が考えられる。リスク管理としては、業者と交渉しリスクを抑えるということや、会社の中に一定の金額を貯めておいてリスクに備えるというようなリスクヘッジが考えられるのではないか。他には、例えば高齢者マンションというのが最近盛んだが、この賃料、介護サービス、家事補助のサービスを介護保険とセットして、介護保険の点数に民間保険を上乗せするなどということもアイデアとしては考えられる。現物給付が可能となれば、各社創意工夫の中で、このような商品の開発のきっかけになると考えている。

  • 現物という名の実損をてん補するということだけであれば、以前、損害保険会社が販売していた医療費用保険の構成と同じである。損害保険の構成でも考えられるので、リスクをちゃんとさばけるという形でやっていけるのであれば、生損ともにいろいろな商品構成ができるのではないか。

  • 保険法中間試案が出たときのマスコミの記事には、定額の現物給付を認めるということで、「六十何歳になったら世界一周旅行」というような記事が踊っていたが、そういうことを考えているのではなく、現実に即したような、しかし今までの保険のスキームではできないようなものを認めていってはどうかということを、今、検討しているということ。

  • 資料1の10に関連するが、募集時のルールはいろいろあるが、保有期間については非常に手薄になっていると感じている。契約内容の説明の仕方だが、単に契約の概要を説明するのではなく、この1年けがや病気、入院や手術などの保険事故が発生しなかったかどうかを確認するようなものにすべきではないか。

    現在、総合保険代理店というのができ始めており、公平にいろいろな保険会社を取り扱い、自分のニーズに合った保険を勧めてくれるということで良い制度だと思っているが、数が非常に少ない。また、相談するときに有料であると相談しにくいというところもあり、消費者に向けてのサービスとして、無料相談とすることを検討できないか。また、自治体では総合相談があるが、保険に関しての相談コーナーがないので身近には相談しにくい。

    資料2の10ページに関して、「失効は保険者側の解除と見ることができる」とあるが、中には気づかずに失効している場合もあるので、一律に失効が解除であるとはいえないのではないか。

  • 契約期間中のご案内に関して、契約内容の通知については、契約内容、支払いが発生する場合、配当、契約者貸付の限度額など、かなり詳細に書いてあるものが年1回発行される。また、全顧客訪問活動をしている会社もあり、今年は何かありましたかということをルール化して、保険事故の発生の有無を確認している。総合相談に関しては、加入していない会社もあるが、一部の会社では全国の主要都市に相談所のようなものを配置している。

  • 資料2について、ここで、失効を解除と見ることができるというのは、消費者契約法の適用を認めようとするためには、失効が解除に該当するという判断が必要であるからである。理論的には、約款では保険料不払いのときには保険者が何らの措置も取らずに保険金を支払わないとすることを契約で定めているわけだが、民法上、その反対給付を拒絶するためには同時履行の抗弁権しかなく、そうでなければ契約の解除をするしかない。同時履行の抗弁権でいくと、引換給付判決という妙な話になってしまい、これは保険では適当ではない。そうすると、解除でいくしかないということである。我妻先生の民法によれば、あらかじめ契約で約しておいて、ある時期が来たら反対給付をしないというのも、それも解除の一つの方法であるとの説明があり、これは解除であるということである。

  • 解約返戻金の中で過大なペナルティーが科されないようにしようという規定が消費者契約法にあるが、そこは消費者が解除したということが規定の文言上要件になっている。失効というのは、ストレートにはそれに当たらないが、同様に解釈して、契約者の保護を図るべきだろうということ。

  • 資料1に関して、昨今、ベターレギュレーションの説明の中で、ルールベースとプリンシペルベースの適切な監督のかなめは自主規制機関であるというようなこともいわれているが、カルテルと自主規制は必ずしも一致しないが、自主規制機関、しかも業界ベースの自主規制機関ということになれば、やはり上位会社の意向にフォローするという形となってあまり好ましいことではないのではないか。保険会社にとって自主規制機関が必要だということをいっているのか。

  • 自主規制機関という言葉が適切かどうかは分からないが、金融商品取引法では自主規制機関についての規定があり、保険も生保協会、損保協会、外国損保協会などがあり、その中でいろいろなガイドラインを出している。それについての規定が業法の中にあってもいいのではないか。

  • 業法で決めるまでもなく、今後の監督の大きな流れとなると思われるプリンシペルベースの中で、それぞれの業界ないし会社の自主的な取り組みに任せるべきではないか。引き受けのガイドやクレームになどを公表するにしても、個々の会社を縛るものであるべきではなく、情報として提供するのが良い。一種のファッショになってしまわないように、十分に気をつける必要がある。

  • 強制加入であれば確かに独禁法上の問題も出てくると思うが、そうではなく、任意でボランタリーなものを想定している。

  • 資料3に関して、内部管理態勢が整備されている前提で書かれているが、そうであれば経営層を含めた抜本的な体制の立て直しなりが図られているのだろうが、具体的にどのような取り組みがされているのか。

  • 資料3に記載されているのはごく一部であるが、経営管理態勢のところでいえば、例えば、社外取締役を導入する、検査担当の取締役、社外取締役及び社外者の合計7名で契約者の声やコンプライアンス態勢などをチェックして、経営の方に改善提案するという経営監視委員会を設け、月1回開催して、経営の方に申し入れるというようなことを実施している。また、取締役の数を大幅に削減し、執行役制度をとったり、社外監査役を導入している。それから、契約者の声をつなげるために、取締役中心の委員会、部長会など設けるなどしている。さらに、保険金が支払えない場合、原則として支社の職員が契約者のところへ赴き、説明をし、異議のある場合に本部で説明を行い、さらに納得されない場合は社外の弁護士に相談できるようにしている。

  • 再開した法制審議会では、この規律を保険法に置くのか、それとも保険業法に置くのかということでの検討が進められているというような印象を受けたが、資料1であげたものは、必ずしも業法にというふうに考えているわけではなくて、保険法が適切であれば保険法の方で手当てをして頂きたいし、業法が適当であればということをいっているということを確認しておきたい。また、保険法を契約関係、私法関係の法律として整備をするということであれば、保険業法であれば行政処分をかけたりできるが、保険法に持っていった場合に、資料2では取消の話が指摘されているが、取消よりプラスアルファのことが考えられないのか。例えば金融商品取引法であれば課徴金の制度で制裁的仕組みも考えられているが、保険の場合もそういう仕組みを検討する余地はないのか。

  • 法制審議会における検討状況からコメントさせていただくと、現物給付については、これまで法制審では、金銭以外の給付も認めるか認めないか、あるいは許容すべきかすべきでないかといったような論点の設定をしてきてしまったが、よくよく考えてみると、契約の世界は契約自由の原則があるので、公序良俗に反しない限りはどのような契約も可能であり、法律、契約法、この後改正後の保険に関する法律で現物給付を想定した規定を置かなかったからといって、それを禁止したとか、認めなかったということにはならないので、契約法に関する議論でも若干混乱している嫌いがあったと反省している。

    これまでの法制審議会の議論で医療行為の現物給付に関しての議論は一切されていなかったが、医療行為なり診療行為なりを直接想定した場合、公的な保険制度との関係を抜きには論じられないので、医療行為そのもの、診療行為そのものを民間の定額保険における保険給付として想定して規律を置くか、置かないかと言われれば、少なくともそういった医療制度そのもの、あるいは公的な保険制度との関係を抜きにそういうこと想定した規律は考えられないと思われる。

    法制審議会の議論でいえば、どこまで契約法で書くかということについても同様で、これまで業法に、あるいは業法にゆだねてはどうかみたいな言い方をしてきてしまった嫌いがあるが、これもよくよく考えてみると、契約法というのは、私人間で行われる契約について、どのような契約ルールを設定するかという問題であり、契約法で書かないから業法ということになるかということにはならないと思われる。たとえば、283条の保険会社の損害賠償責任などは、そもそも募集人という概念と恐らく切り離せない問題だと思うが、契約法の方ではそもそも募集人を使うか使わないか、使うとして募集人にどういう人を認めるかということは、およそ契約法の世界では想定しておらず、その想定していないにもかかわらず損害賠償責任は私人間の法律関係のことだから契約法に移せるかというと、消極的に考えるべきなのではないか。また、契約内容の通知についても、その違反の効果の観点から契約法に規定するのは若干消極的かなと思われる。

    別の理由として、もし仮に契約法でそういうルールを一方の当事者である保険者側だけに課すのも望ましくない。契約のルールとしては、あくまで契約当事者間にどのような権利義務があるかを整理して、あるべきルールを定める必要がある。今後、残された期間が短いが、一応、今現在、契約法と監督法の線引きについては整理すべきではないかなと考えて、ちょっと整理にかかっているところである。

  • 資料2に関して、8ページのところの、ゆがみというところについては、若干認識の相違があるかなと思っている。消費者保護という場合に、2つの軸があると思っている。具体的には、マル1消費者は弱者であり劣位者であるという点と、マル2契約者が契約の時点で持っている私的情報を保険者はコストなしで知ることができないために、結果的に消費者にコストがかかるという点があり、保険契約の性格に基づく独特な規律としてマル2にも配慮すべき。保険金請求者は前提として性悪説であり、保険者は性善説であるという捉え方には無理があり、あえて言うと、両方とも性悪説という前提で一番合理的な仕組みや契約をつくっていくという形が理想なのではないか。

  • 法制審の議論についてよくご存知の上での発言かと思われるが、保険金請求時の不正請求の問題を軽んじているわけではなく、保険会社側に意図的な不払いの問題があったときの規律についても設けようという動きがあったにもかかわらず、それが通らなかったということを指しての指摘である。

  • 業法と契約法の役割に関連して、業法283条以下の保険募集等に関するいわば私法的な規定は、むしろ保険契約法の中で規定した方がいいのではないかという点については、業法は私法的な効果と別に監督、検査、そして刑事罰等を含めた全体的な規制で、保険契約者等の保護が図られるような仕組みをつくっており、それとある意味では283条以下の私法的な規定が結びついた形で規定されているので、それが全体として実効的に働くためには、現在の業法のような規制の仕方はある意味で効率的であって、それを私法の方だけでカバーし切るというのは難しく、もし仮に私法の方で規定するとなると、業法の方にそれに対応するものをかなり入れなければならないと考えられる。

    例えば、保険業法300条等の規定に反したときについての行政的なペナルティーや刑事罰と結びついているわけだが、恐らく保険契約法の中にそのような私法的な規定を入れても刑事罰と結びつけることはできず、監督法的な規制、あるいは刑事罰等をあわせた形でその機能が損なわれないように十分配慮する必要がある。そのような観点からすると、私法である保険契約法と業法というのはそれぞれの役割があり、それぞれを補い合って、全体として契約者の保護、その他、あるいはモラルリスクの防止等、保険の制度が健全に運営にされていくように図る必要がある。

    未成年者に関する契約、被保険者の同意に関する問題や、モラルリスクに関する問題などについては、私法、業法両方で適切な措置をし、もし私法上の方で十分な規定の用意ができないのであれば、監督法の方でそれをカバーするような努力がされるべきではないか。 現在でも、被保険者の同意、例えば未成年者などについて、実質的にどこまで意味のある同意がとれて、モラルリスク防止が図られているのか、さらには、重大事由解除に当たるようなモラルリスクの高い契約を防止する体制をどこまでつくっているのかということは、監督体制の方からも十分検討されるべきである。例えば、危険性の高い契約者等については、一保険会社だけでなく、保険会社の間で情報を共有するようなことも考えられていいのではないか。例えば、ここまでいくかどうかは別として、証券会社についてはインサイダー取引や相場操縦等を防止するために、証券会社の間で、証券業協会や証券取引所を介する形で顧客情報を、いわば集約してそういった不正な取引を行われることをチェックする体制をつくろうということを、監督局の懇談会で検討したこともあると思う。

    保険料積立金の支払に関して、専ら解約返戻金のことが議論されているが、保険料積立金を払い戻すという場合は様々あり、中には保険契約者に問題がなく、保険者側の方の問題もある。極端な場合、保険会社の破産だが、それ以外に商法643条等に規定されている保険会社側の事情によって契約が無効になるなどして払い戻す場合もある。ここは教えてほしい点なのであるが、業法116条のもとで、例えば施行規則の10条3号で、返戻金の額その他の被保険者のために積み立てるべき額を基礎として計算した金額、契約者価額を保険料及び責任準備金の算出方法書の記載事項の一つとして出させているが、これはどのように決められているのか。それがそういったいろいろな無効事由等の原因に応じて公平な形で定められているか。具体的な問題から詰めて、そういった保険料積立金の払い戻し等の現在の態勢がフェアか、あるいは契約者にとって適切なものになっているかを検証して見直してほしい。先ほどのモラルリスク対策を含めて、今回の保険契約法との改正にあわせてすぐできることは多くはないと思うが、中長期的には諮ってほしい。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局 企画課 保険企画室(内線3571)
本議事要旨は暫定版であるため、今後変更があり得ます。

サイトマップ

ページの先頭に戻る