金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第3回) 議事録

  • 1.日時:

    平成28年2月19日(金)9時30分~11時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

おはようございます。朝早くからお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。ちょっと定刻を過ぎてしまいまして、申しわけありませんけれども、開始させていただきます。本日は、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの第3回目の会合となります。

それでは、早速ですけれども、議事に移らせていただきたいと思います。本日でございますけれども、まず初めに、事務局から配付資料について説明をしていただき、その後、前回ご議論いただいていない、積み残しというか、時間の関係でご議論いただけていない論点がありますので、それについてまずご議論をいただいて、それが終わった後で、全体について順番にご意見をいただくという、そういう進め方でいきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

それでは、まず事務局からのご説明をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

それでは、お手元の資料1に従いまして、前回のご議論を踏まえまして、訂正いたしましたところと、それから、前回議論できなかったところにつきまして説明をさせていただきます。

前回できなかったところからご説明すべきか、最初からすべきか、やや悩んだのですが、本日は最初からご説明をさせていただいて、その後、後半部分から議論させていただければと考えております。

まず1ページおめくりいただきまして、構成については変更いたしておりません。もう1ページ進んでいただきまして、2ページ、見直しの視点でございますけれども、こちらにつきましては、ほぼコンセンサスをいただいたのではないかということで、基本的に記述は変えておりませんけれども、少し整理をさせていただいております。

1ページおめくりいただきまして、ここから具体的な内容に入ってまいりますけれども、まず、3ページ中ほどでございますが、各開示書類の役割に応じた見直しのあり方ということでございまして、これまでにいただきましたご意見を踏まえて、順次整理をさせていただいております。

まず決算短信でございますけれども、投資者の投資判断に重要な情報を迅速かつ公平に提供するものであることに着目しまして、記載内容について以下のような整理・合理化を行うこととしてはどうかということで、整理させていただいているところでございます。

まず1つ目といたしまして、情報については速報性が要求されるということでございますので、公表前の監査は不要であることを明確にするということでございます。

2つ目に、速報性がそれほど求められない項目(例えば、経営方針)についても、現在、決算短信に記載いただいているわけでございますが、こちらについては有価証券報告書で記載することとする。

また、記載を要請する事項につきましては、できるだけ限定するということにしていただきまして、その他は企業が任意に記載できることとするなど、義務・要請事項を可能な限り減らすということでございます。

4ページ目に移っていただきまして、事業報告でございますけれども、こちらにつきましては、株主・債権者に対して情報を提供するものである一方、確報としての性格が有価証券報告書と同一であるということでございますので、会社法施行規則の内容を満たしていれば、必ずしも経団連ひな型に従う必要はなく、有価証券報告書と同一の記載が可能であるということを明確化することで、有価証券報告書との共通化を図っていくことが適当ではないかということでございます。

それから、有価証券報告書でございますけれども、詳細な事業状況等、投資者の投資判断に必要かつ重要な情報を提供するものである一方、関連する情報が分散していてわかりにくいというご指摘も頂戴いたしましたので、対話に資する開示の充実を図りながら、体系立ったわかりやすい開示を行うための整理・合理化ということで、以下の3点を掲げさせていただいております。

まず、先ほど決算短信のところで経営方針のお話をさせていただきましたけれども、こちらにつきましては、確報である有価証券報告書に記載するように開示内容を整理するということでございまして、例えば、現在記載が求められております「対処すべき課題」を「対処すべき課題及び経営方針等」とすることにいたしまして、経営環境や経営方針・戦略等については、こちらのほうに記載いただくことが考えられるのではないかということでございます。

それから、「業績等の概要」とMD&A欄につきましては、内容が重なっているとのご指摘もございましたし、本来、重ならないような中身を書くべきであるといったご意見もございますので、こちらについては統合した上で、再整理し、重複を減らしながら記載を充実させるべきところは充実させるべきではないかと考えております。

それから、「新株予約権等の状況」、「ライツプランの内容」、「ストックオプション制度の内容」につきましても、やや重複感があるということですので、各欄を統合し、開示項目を合理化することが考えられるのではないかと考えております。

1ページおめくりいただきまして、これまで、そのほかにご議論を頂戴しておりました以下の事項、事業報告と有価証券報告書の「大株主の状況」、それから、「新株予約権等に関する事項」の関係でございますけれども、まず前者でございますが、前回の議論でやはり実質所有者か、形式上の所有者かという違いがあるので必ずしも統合になじまないのではないかというご意見を頂戴したところでございます。

また、後者につきましても、一方は、役員・使用人の区別なく書いているのに対し、もう一方は、役員・使用人の区別をして書いているということで、それぞれの対象の性格に応じた対応となっておりますので、真ん中の丸にありますように、これらについて記載を無理に統合するのではなく、それぞれの記載を基本的には継続し、もし開示事項を一体化する、つまり、1つの書類で提出し、あるいは記載をそろえるというニーズがある場合には両方の記載をすると、それはお任せするという形がよいのではないかということで整理をさせていただいております。

ただ、前者の「大株主の状況」ですけれども、事業報告では議決権に着目して自己株式を控除しておりますが、有価証券報告書では流通市場への情報提供などの観点から、これを控除していないという相違がございます。この点につきましては、有価証券報告書でも大株主の議決権の割合は重要でございますし、これは計算の仕方という面もありますので、差し支えない、あるいはそちらのほうがいいということであれば、自己株式を控除することで共通化ということも考えられるかと思いますので、ご意見を頂戴できればと考えております。

1ページ進んでいただきまして、6ページの日程・手続でございます。株主総会の7月開催についてもかなりご議論をいただきまして、基本的には、いつ開催するかは企業のご判断であるというご意見であったかと思います。

一方で、7月開催については種々メリットがあるということも、ご指摘を頂戴いたしました。その際、7月開催を選択した場合でございますけれども、やはり先ほどの大株主の状況の記載の基準日が問題となって、場合によっては、株主の確定を2回行う必要が出てくるとの指摘がございました。

この点については、なかなか難しい議論だと思いますが、一つの提案としましては、議決権行使基準日が決算日と別の日となり得るときに、例えば有価証券報告書と事業報告における当該項目の記載時点を議決権行使基準日にするということが選択肢として考えられるかと思います。いろいろお考えがあると思いますので、本日ご議論をいただければと考えているところでございます。

その下の事業報告・計算書類等の電子化でございますけれども、現行、事前に株主から同意を得ればこれらの書類を電子的に提供することが可能ですが、同意がなくても、できるだけ提供できる範囲を広げていくことはメリットが大きいのではないかというご議論が全体としてあったように思います。

一方で、デメリットといたしまして、個人の議決権行使率の低下やデジタルデバイドといった問題があるのではないかというご指摘も頂戴いたしました。そうしますと、事前の同意なしに電子的に提供可能な書類の範囲を拡大することが望ましいという考え方の下で、デメリットについて個別に配慮するということが考え方としては適当ではないかということで、整理をさせていただいております。

またこの点につきましては、経済産業省さん主催の研究会でもご議論されているとのことですので、そちらの議論の状況も後ほどご披露いただけると伺っております。

1ページおめくりいただきまして、7ページ。こちらから以降は前回ご議論いただけなかったところでございますので、本日まずご議論いただきたいところでございますけれども、企業のガバナンス強化、社会問題、環境問題、サステナビリティの問題への関心の高まりにより、ESG情報をはじめとする非財務情報の開示の充実が求められているところでございます。

ただ、こうした情報につきましては、任意で行われている開示について、定型化、標準化すると、創意工夫の余地がなくなるのではないかというようなご指摘もこれまでのご議論の中でいただいているところでございます。そういったご意見も踏まえまして、どういった形にしていけばいいかということについて、まずご議論を頂戴できればと考えております。

1ページお進みいただきまして、8ページでございますけれども、一方で、こういった情報について義務化していくことを考えた場合に、どういった考え方で義務化したらいいかということについての考え方も再整理させていただければと考えております。現在、こういった情報について開示の義務化を検討するに当たりましては、投資者の投資判断に真に必要な情報であるか、当該情報が証券市場において浸透し、投資者が誤解なく利用できるものとなっているか、また、コストの問題、それから、他の法律において開示が要求されているか、このようなことを総合的に勘案して、私どもとして取り組ませていただいてきたところでございますけれども、留意すべき点や他に考慮すべき点があるようでしたらご指摘を頂戴できればと考えているところでございます。

1ページおめくりいただきまして、最後、その他、企業情報開示に関する論点でございますが、まず第1回会合でご指摘を頂戴しました単体財務諸表におけるIFRSの使用を認めるべきかどうかという点について、ご意見を頂戴できればと考えております。

2点目でございますけれども、我が国におきましては、情報の選択的開示についてのルールがないとのご指摘をかねてからいただいておりまして、欧米においてはこういった制度が既に整備をされているということでございます。後ほど説明いたしますような事案もあったことから、公平・公正な開示の観点から、選択的開示を禁止するルールが必要ではないかというような点についてご指摘を頂戴したところでございますので、この点についてもご議論をいただければと考えております。

フェア・ディスクロージャー・ルール、(参考)のところに書いておりますけれども、「発行者等が、重要かつ未公表の内部情報を、第三者に選択的に開示することを禁止するルール」ということでございまして、欧米においては、証券の発行企業等が、その発行企業又は発行証券に関する重要かつ未公表の情報を特定の情報受領者の方に開示する場合には、意図的な開示の場合は同時に、意図的でない場合は速やかに公表しなければいけないというルールがございます。

我が国の金融商品取引業者につきましては、そういった規定があるわけでございますけれども、同様の情報を発行者等が提供することを禁止するルールは導入されておりません。そういった中で、業者さんにおかれても、そういった情報を提供して、行政処分を受けたケースがございます。

それから、よく問題になっております、海外投資家から非常に指摘が強いのが、一部の報道機関におきまして、決算短信の公表前に、会社が公表する数値に近い、ほぼ同じ業績予想を頻繁に提供しているということが指摘されていまして、欧米のフェア・ディスクロージャー・ルールにつきましても、メディアについては異なる取り扱いをすることがあるというように伺っておりますが、この点について外国人投資家の方を中心に、企業の情報管理について非常に不信感があるというのは私どもよく指摘をされているところでございますので、こういった点を踏まえてご議論を頂戴できればと考えております。

それから、3つ目でございますけれども、企業の急速な業績変化に応じた取引機会が投資家に公平に提供されることと、中長期的な企業価値の向上を通じた投資家の長期的な資産の増大、ともに重要なわけでございますけれども、特にショート・ターミズムの問題などが指摘されている中にあって、中長期的な視点からの投資を促すということについてどのような取り組みが考えられるかということについてもご議論を頂戴できればと考えております。

最後でございますけれども、企業情報へのアクセスの利便性の向上と書いておりますが、こちらも、特に外国の機関投資家の方などが私どものところに見えられたときに、開示内容がいろいろな報告書に分かれていて見にくいというご指摘をよく頂戴しているところでございます。また、欧米におきましては、統合報告への動きもあるところ、こういった情報をまとめて、できるだけわかりやすく提供してもらいたいというニーズがございますので、こういった要望についてどのように応えていくかということについてもご議論を頂戴できればと考えているところでございます。

事務局からの説明は以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、議論に進みたいと思いますけれども、本日は、資料と意見書を提出していただいておられる委員の方がございます。大場委員、静委員、関根委員、山内委員及び経産省から、資料ないし意見書等の提出がございましたので、皆様方の席上に配付させていただいております。

それで、議論の進め方ですけれども、冒頭少し申し上げましたように、前回、ご意見をいただく時間がとれなかった論点について、先にご質問やご意見をいただきたいと思います。それが終わった後、全体について、順番に、また項目ごとにご意見をいただきたいと思います。

そういうことで申しますと、まず前回やれなかったところは、スライドの7ページ目以降ということになりますので、まず最初にスライドの7ページ目と8ページ目にあります、非財務情報の開示という項目につきまして、事務局からのご説明は今いただきましたけれども、皆様方からご質問、ご意見をお出しいただければありがたく存じます。どなたからでも、どの点についてでも結構です。いかがでしょうか。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

ありがとうございます。いわゆる非財務情報のうち、とりわけ社会問題、環境問題、企業のガバナンスについては、有価証券報告書の記載事項として義務化する時代になってきたのではないかというふうに思います。その開示の内容の詳細については、各企業の創意工夫に任せる、あるいは当該企業によっては、特に記載事項なしというふうなことも当面はあるのかもわかりませんけれども、いずれにしても、有価証券報告書の項目としては義務化して、こういう事項について社会が関心を持っている、あるいは非財務情報というふうに名づけられるものではあるんですけれども、少なくとも長期的あるいはグローバルな資源配分の観点からは、重要な情報ではないかと思いますので、そのような考え方に移行すべきだろうというふうに思います。

いただいた資料、7ページ、8ページには、最初にその開示の充実が求められる状況となっていると、ご指摘はいただいているのですが、どちらかというと、その配慮すべき事項というか、消極的な要素が何か強調されているような気がいたします。ぜひ本格的な議論をすべきだというふうに思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

それでは、逆瀬委員、それから、熊谷委員の順で。逆瀬委員、どうぞ。

【逆瀬委員】

7ページ以降の積み残し分ということで、非財務情報の議論ですが、押しなべて申し上げて、発行体は、例えばホームページに法定開示や取引所開示とともに任意開示として、ESG情報などいろいろな、最近話題になっている、あるいは経営として注力しているアイテムについての対応ぶりを、任意に極めてわかりやすい形で開示しています。ちょっとパソコンをクリックすれば出てくる。そこは各企業の創意工夫が大変入っていて、特にこの非財務情報に関しては、極めて専門的な内容のものや、あるいはもう少し観点を変えて、簡便なものであることもある。専門性もボリュームも千差万別です。6月切りの有価証券報告書提出期限に合わせて、開示するイシューにふさわしいかどうかは、ちょっと考えればわかることで、情報に錯綜が生じるだけの話だと思います。

要するに、財務情報であれば、一定の尺度を持って、きちっとした規律ある形式的な要素も含めた水準を保てる。ところが、このたぐいの話は、各企業がまちまちに取り組む、あるいは関係省庁も違っているということもあって、金融庁さんが単独で仕切れるような話ではもともとなかろうと思うわけです。タイミングの問題もありますし、企業の株主政策に応じて、英訳情報をどこまで出しているかというのもまちまちです。そういうようなことも含めて、総合的に判断すれば、法定開示とするのは時期尚早です。自主開示をもう少しやってみて、ほんとうに問題があるのかどうか、あるいは財務情報との関連性について研究でも、実証でも行われて、裏づけがあるような状況になってから検討すべきだろうと思います。統合報告のガイドラインを見てもよく私もわからないわけですが、そういうものが十把一絡げに出てくるような法定開示はあり得るのかと懸念します。素直な感想でありまして、ぜひここは見識を持ったご判断を期待したいと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

では、熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

非財務情報の問題でありますけれども、逆瀬委員のおっしゃることもごもっともだと思いつつ、非財務情報といいましても、やはりいろいろあるというふうに思います。今、先生がご指摘なさった、いわゆるESG情報といったものに加えまして、やはりこの場でも申し上げましたけれども、日本企業において非常に残念なのは、MD&Aのセクションであります。

有価証券報告書にはMD&Aのセクションに加えて、営業、事業の概況ですとか、あるいはリスク情報など、関連する事項を記載する欄はありますが、これらが全体としてあまり有効に機能していないという印象を強く持っております。ここの部分はむしろやはり世界的に見ても、法定開示になっているケースが多いというふうに思います。アメリカしかり、欧州しかり、イギリスもストラテジックレポートという形で、非常に詳細な開示を行っております。あと、ESG情報の中でもガバナンスにかかわるところはやはり法定開示として出てきている。これらに関しましては、まさに株主総会の前に、有価証券報告書が今、出ていないわけですけれども、株主総会において議論していく上でも必要な情報であります。ですから、ここの開示に関しましては、諸外国の実例等もよく研究して、特にMD&Aのセクションを中心にむしろその開示の整理と充実ということをお願いしたいというふうに思っております。

こうした非財務情報については法定開示ではありますけれども、イギリスの事例あるいはアメリカの事例等を見ても、記載内容そのものの指定はあっても、記載ぶりは非常に自由で、まさに創意工夫が発揮できる場になっております。前回の会議で大場委員からストーリー性というようなお話がございましたけれども、企業がまさにストーリー性を持って、自分の会社が何を考えて、どういうふうに経営していきたいんだというような開示をしているところが多うございます。日本でそうした会社が皆無だとは言いませんけれども、やはり法定の開示においてそういうことがきっちりなされていくということが重要なことであると考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。非財務情報の開示に関しては、今、熊谷委員からもご指摘があったところでございますけれども、ESG情報といっても、全部が同じ内容ではないわけで、その中には投資家に対してぜひ開示すべきもの、あとは、企業の自主的な開示に委ねるべきもの、両方が含まれていると思いますので、ESG情報として、十把一絡げに議論することは必ずしも適当ではないのかなと思っております。

その観点からは、事務局のほうでご用意していただいた資料の8ページに、その義務化を検討するに当たっての考慮要素、考慮ファクターをお書きいただいているわけで、私は、おおむねこの考慮すべきファクターとして挙げられている内容はこういうことでいいのではないかなというふうに思っております。

要するに、このファクターに当てはまるようなものについては、義務化をしていって、それ以外のものについては企業の自主的な任意の開示に委ねるということでいいのかなと思うんですが、この考慮すべきファクターについて、1点ご配慮いただきたいなと思っている事項がございまして、要は、この中のどこかの文言に読み込めるのかもしれませんが、生煮えの情報を無理に開示を強制すべきではないと。例えば現在のように、いろいろ相場がものすごく荒れて動いているときとか、それから、それに限らず、企業の経済活動においては四囲の状況が日々変わってくることもございますので、あまりに早い時期での開示を強制し、生煮えの段階で情報が出ると、あとで状況が変わったときに投資家をミスリードしたものになりかねないという問題もあるかと思います。従って、そういう意味では、生煮えの段階で開示することを要求すべきではないというような視点もあると思っております。

あと、これに関連して、前から私の問題意識としてあるのは、この非財務情報の開示の中で、特に重要なのは、有価証券報告書において開示が要求されている、いわゆるリスクファクターの開示ではないかと思っておるのですけれども、日本の会社の有価証券報告書におけるリスクファクターの開示は、アメリカの企業とかのリスクファクターの開示と比べると、かなり個性がないといいますか、どの会社も相当似たようなことを書いている状況にあるのが実情ではないかと思います。ただ、各社それぞれ抱えているリスクの状況というのは千差万別ではございますが、一方で、これは一律のガイドラインでこれを書くなというのを示すのは極めて難しいのも十分理解できるところです。従って、こういうものについては、その開示の義務化というのとは少し違った角度で、ベストプラクティス的なものとして、リスクファクターの開示として優れた開示であるというようなものを、金融庁さんのほうで、公表する又は紹介することも考えてもよいように思います。そのような取組みを通じて、このリスクファクターに関する開示がさらに各社の抱えるリスクに応じた、投資家にわかりやすい開示になっていくように誘導していくということもあってよいのではないかと思っています。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

石田委員、どうぞ。

【石田委員】

非財務情報の開示についてですが、基本的には書かなければいけないというところまでを法定にするのはいいとは思うんですが、内容に関して、事細かく法定にするというのは非常に無理なところがあるので、企業の自主的な開示に任せるという方向に賛成であります。

機関投資家及びファンドマネジャーの実務の面から少し実態をご紹介しますと、ESG情報に関しては、データベンダー、つまり企業情報のデータを集めてインデックス提供と合わせて営業している会社がさまざまな形で膨大なデータを指数化して、その情報を基に機関投資家のファンドマネジャーなどにその情報を売るということが行われています。ESGインテグレーションと業界では言っていますが、グローバルに見ると、かなりきめ細かいアプローチで、業種ごとにどのファクターが重要なのか、例えば石油業界と普通のサービス業界で、CO2排出量なんかを同じ基準で比べてもしようがないので、セクターごと、国ごとに規制の違いなどを勘案しながら、非常にきめ細かく数字を集めるという活動がどんどん始まっていると聞いております。

行政として国として、日本企業の企業価値評価を高めていくというためには、海外投資家もしくはグローバルなスタンダードで見ると、どういうESG情報がどういう業種だったら注目されているのかということについて、しっかり調査をして、今度は発行体のほうに、実際はこういうところが見られているよという情報発信、もしくはベストプラクティスの紹介というような形で関与して、一定方向にリードしていく、主導していくということは考えられるのではないかなというふうに思います。どうも日本企業は自己表現が下手な部分がありますので。

あともう一つは、特にソーシャル・社会的責任の分野でワーク・ライフ・バランスとかジェンダーバランスに関しては、日本市場でも関連する非財務情報にのっとって、投資をして、超過収益が出ているという報告も出ております。ただ、そういうアクティブ運用の調査会社が何をやっているかというと、例えば転職や消費者の口コミサイトで、企業や製品がどのように評価されているかといった情報を基に銘柄を選択しているそうです。必ずしも企業の開示に依らなくても、超過収益に結びつくとなれば、株式のトレーダー達はあらゆる所から情報を収集し、利益を追求します。情報化社会では財務情報の開示とはまったく違う形で情報が伝播しますから、その企業のIR・広報の対応という面が強いのではないかと思っております。

あと、先ほどちょっとグローバルな事例をご紹介しましたが、やはり日本企業は非常に口下手なところがありまして、日本的経営の良さを主張される方はいらっしゃるんですが、なかなか海外の投資家には、組織的な強さがどのように収益性の高さ、品質の高さに結びついているのか、よくわからないと言われます。そこはやはりリサーチを投入して、忠誠心の高い勤勉な組織というのをつくり上げるということがいかに資本生産性を高めていくのかということについて、日本でまとまって対外発信していかないと、いくら頑張っても、海外からはなかなか見つけてもらえないファクターだと思います。そういう形で行政として、国として関与していくということは考えられるのではないかと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

小畑委員、どうぞ。それから、黒沼委員の順で。

【小畑委員】

ありがとうございます。この非財務情報の開示を考える際に、一つ考えていただきたいのは、法定開示として、有価証券報告書に載せるとなると、どうしてもあまりにもたくさんのことを書くわけにもいかないですし、提出の期限もあり、加えて、罰則つきであるということも考えますと、結局安全サイドに書きぶりが偏ってくると思います。結局、開示を求めても、いわゆるボイラープレート的な開示に終始すると、それでは開示を求めた趣旨がうまく達成できないと考えているわけでございます。法定開示を求めることのデメリットという点もよく考えていただきたいと思います。ESG情報とこういった非財務情報の中でも、その情報にもいろいろ性質があって、企業の将来の価値を高めていくようなよい情報と、もう一つは、リスク情報のように、将来の価値を毀損するような、悪い情報という2つの面があると思いますが、前者のよい情報については、企業に多くを語らせるべきだと思います。先ほどストーリーを語るというお話もありましたけれども、どのようにストーリーを語るかについては、単なる書き物だけで足りるのかどうかも含めて、いろいろと創意工夫できるところはあると思っておりまして、そのあたりは任意開示でさせたほうがより充実した開示ができるのではないかと思います。一方で、悪い情報というのは、どちらかといえば法定開示になじむことが多いのではないかというふうにも考えております。

ですので、その情報の中身をよく分けて考える必要があるという点をご勘案いただければと思っております。

それから、ここに義務化を検討するに当たって、投資家にとってどうなのかというところでありますけれども、ある特定の投資家にとっては、非常に重要な情報だと思っていても、ほかの大多数の投資家は、どうでもよいと思っているような場合もありますので、投資家といっても、一人残らず悉皆調査をするようなそういう話ではないということは確認させていただければと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

いわゆるESG情報については、現在の法定開示書類でも書こうと思えば書けるようになっていると思います。事業や業績に重要な影響を与えるのであれば、環境問題についても書くことができますし、それから、ガバナンス情報の開示というのもあるわけで、それから、リスク情報の開示もそうですね。そこで方向性としては、ここに書かれているように、現在、具体的な項目が挙げられていないような法定開示の開示項目について、もう少し項目を挙げるというのも一つの方法だと思います。他方で、そうすると任意の開示がかえって萎縮するとか、あるいは開示情報が多すぎて投資家にとって役に立たないものになってしまうという懸念もあろうかと思います。

そこでもう一つの方法としては、投資判断にとって重要な情報であれば全部書くと いうことが金融商品取引法の基本的な考え方になっているわけであります。そういったものについては、現在の法定開示でも一定のものは書かなければならないというふうに整理されると思います。

ただ、一つ、実効性を確保する点で問題と思いますのは、投資家にとっては、任意の開示でなされていれば、法定と任意とどちらに載っているかによって得られる情報は変わらないと思うのですけれども、法定開示にはいろんな法的な責任規制が掛かっているところであります。ただ、課徴金については、重要な事項の虚偽記載と、それから、重要な開示項目の不記載が課徴金の対象になっているだけでして、記載をしないことによって、記載項目について誤解を生じるおそれのある事項の不記載は課徴金の対象になっていないのです。その点については、監視委員会の審査が及ばないわけです。

ですから、ちょっと法的な話でギスギスするような問題で申しわけないんですけれども、開示項目を増やすことによって規制の対象を増やすということ以外に、開示項目を増やさないけれども、課徴金の対象を誤解を生じさせないために必要な事項の不記載まで広げるというのも一つのやり方だろうと思います。

意見としてちょっと申し上げました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにこの資料の7ページ、8ページの非財務情報の開示について、ご質問、ご意見等ございますでしょうか。

それでは、次へ移らせていただきたいと思います。次は、これもまだご議論いただいていないので、本日、初めてご意見をいただくことになるのですが、資料の9ページと10ページ目に、その他として、4項目挙がっています。それぞれの項目は違う話なので、全部について丁寧にご意見をお出しいただく必要は必ずしもないかもしれませんけれども、順番に行きますかね。1番目、これは第1回会合で指摘が少しありましたけれども、単体財務諸表におけるIFRSの使用を認めるべきと。この点についてもしご意見とかございましたらお願いします。

どうぞ、橋本委員。

【橋本委員】

私から。これは私が提起した件ですので。現在、連単分離ということで、連結のほうはIFRSが任意適用されていますけれども、単体のほうは日本基準ということになっています。当初はIFRSの任意適用会社が少なかったので、それでもよかったわけですが、本来は連単、あくまでも一体が原則でありまして、それから連単分離の場合でも収益認識の基準になると、単体への任意適用というものがないと、実務が連結と単体で違う売上の認識基準でいいのかというような問題も出てまいりますので、確かにこれは難しい問題で、単体のほうでやはり配当の問題とか税の問題もございますので、今すぐにということではないですけど、方向性として議論を進めて、将来的にIFRSの任意適用の積み上げを図るというような、そういう再興戦略のメッセージもありますので、それの弊害、支障にならないようにということと、それから、ほんとうにIFRS任意適用企業の側に、単体もIFRSでという要望があるのかどうかも確認した上で、ぜひこちらの方向に進めていただきたいと思っております。

また、先例といたしまして、韓国は既にIFRSを強制適用しておりますけれども、単体は連結に1年遅れて入っております。韓国でも単体の強制適用に際しては、税の問題とか、あるいは配当の問題もかなり多くの議論があったようです。韓国の制度は日本の制度にかなり近いものがありますので、そういう韓国の事例なんかも参考にこの際議論を進めて、特にこの2016年から18年ぐらいが日本にとって、IASBのいろんな活動に関しても重要な時期ですので、ぜひ検討を始めていただきたいということをお願いいたします。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにご意見ございますか。太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。単体のIFRSの使用に関してでございますけれども、これは今、ご指摘もございましたけれども、単体でIFRSを使用したいというニーズが実際上どこまであるのかを検証すべきなのかなと思っております。

といいますのは、今ご指摘もございましたけれども、単体についてIFRSに従うということになった場合には、会社法上の配当規制との絡みも当然出てきますし、確定決算主義を通して、当然租税法上の取扱いにも影響を及ぼすわけです。そういう意味では、非常に制度的波及効果が大きいことになるわけで、これを実際やろうとする場合には、会社法、それから、租税法の見直しが必須になってくると思われます。そういう意味では、費用対効果の観点から見ると、非常に大ごとであるように思っております。

ですので、この点についてはニーズがどこまであるのかという点を十分検証すべきなのではないかというのが1点と、あと、国全体としてIFRSを単体についても強制適用するということであれば、それはそれでいいのだと思いますけれども、単体の財務諸表が、ある会社はIFRS、ある会社は日本基準ということになった場合に、会社法上の配当規制の取扱いですとか、租税法上の取扱いが各社まちまちになるというような問題もあるように思います。従って、投資家にとっては、重要なのはいわゆる連結情報だけと言うと言い過ぎかもしれませんけど、連結情報のほうがはるかに重要なので、単体について、日本基準のものに加えて、IFRSによるものを追加的に開示することを禁じることは当然ないと思いますけれども、日本基準のものに代えて、IFRSによるものを使うことを認めるということになると、かなり大ごとになるので、そのようなニーズが本当に強く存在するのかということを検証してから取り組むべき事項なのではないかなというふうに思います。

【神田座長】

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょう。どうぞ、関根委員。

【関根委員】

ありがとうございます。単体財務諸表におけるIFRSの使用につきましては、企業会計審議会で過去に議論してきており、2012年7月に企業会計審議会から公表された「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」では、連単分離を前提にIFRSの任意適用の積み上げを図りつつ、IFRSの適用のあり方について、その目的や我が国の経済や制度などにもたらす影響を十分に勘案し、最もふさわしい対応を検討すべきとしていたかと思います。その中間的論点整理の中でもいろいろな意見が出ていましたが、その時点ではあまり導入が進んでいなかったということがあると思います。ですので、今まで出ました意見のとおり、まずニーズがどの程度出てきているのか、また、連単を異なる基準で作成すると、先ほどの収益の問題等もあるので、そういったことも含めて、障害になっていることがどの程度あるのかといったことも確認をしつつ、2012年7月に中間的論点整理が出て、もう4年経ってきていますので、再度検討をしていく、議論を始める時期に来ているのではないかと思っています。

先ほど税や配当の問題等が出ていましたけれども、さらにIFRSについては、世界的に使われているものの、主に連結で使われているということで、実際にIFRS単体に使ったときにどうなるかといったことも含めて、しっかり議論していく必要があるのではないかと思っておりまして、検討を始める方向性がいいのではないかと思っております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。大きな問題ですので、皆様方のご感触は大体よくわかりまして、今のような方向にあまりご異論はないと思いますし、会計基準というのは今4つありますので、とてもこのワーキングですぐどうこうということには必ずしもなじまないと思いますので。どうもありがとうございました。

次に、2番目です。フェア・ディスクロージャー・ルール、これは昔からの大変大きな問題かと思います。皆様方のご質問、ご意見をいただきたいと思います。

大崎委員、上柳委員の順で。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。今日はちょっと遅参しまして、大変失礼をいたしました。この問題について、公平・公正な開示をするという基本的な考え方には全く異論がないんですが、ただ、これをルール化するという話になったときに、具体的にどんなルール、例えば刑事罰を伴うような法による禁止という格好にするのか、取引所の自主ルールにするのかといったことでも随分違ってくるとは思うのでありますが、これをとりわけ刑事罰を伴うようなルールにすることについては極めて慎重に考えるべき、というか、私はそういうことはするべきではないのではないかなということを思っております。

もともと日本では、情報の出し方そのもので直接刑事罰がというような話は昔はなかったわけですけれども、インサイダー取引規制が改正されて、未公表の重要事実を誰かに利益を得させて、損失を回避させる目的を持って漏らす行為については、もう既に刑事罰が科されているわけでございます。これはもちろん取引が実際に行われた場合に限るということではあるわけですけれども、これをいわば拡張してしまうということになりかねないわけでありまして、インサイダー取引規制の改正を議論したときにも、単純に情報を漏らしたらすぐ処罰ということでは、あまりにも規制範囲が広くなるし、萎縮効果が大き過ぎるんじゃないかというご指摘もあったところでして、この点はさらにフェア・ディスクロージャーという観点から検討する場合でも十分意識する必要があると思っております。

事例が生じているということで、もちろん何もしなくていいということではないとは思うんですけれども、ここで挙がっているものを見ましても、一つはこれは証券会社の行為規制で対処できる問題で、実際に対処していただいたというふうに理解しております。それから、もう一つがまたこれは非常に気になるんですが、報道機関がということが書いてありまして、もちろん私も個人的には、業績情報なんかについてのいわゆるスクープ報道というものに、一体何ほどの価値があるのかという思いはあるんですね。実際に会社が発表する前の日とか2日前に報道して一体どういう意味があるんだと。別にほんとうに会社が秘匿しようとしていることをすっぱ抜くわけじゃなくて、いずれ公表することですから、待ってから書けばいいじゃないかというふうに個人的には思うんですが、ただ、報道機関の方と話していますと、そういったスクープ報道を取りにいくことで一生懸命取材をするというようなことで、人が鍛えられるとかいろんなことをおっしゃる方がいて、それはどこまでほんとうかというのは置いといてですが、ただ、これが仮に法令に触れる行為だということになると、これは報道の自由という観点からもどうなのかなと。少なくとも会社側がそういうことを盾にとって、取材に応じないというようなリスクもあるわけでして、この点はやはり慎重に考えるべきかなと思っております。

参考資料で、アメリカやイギリスの例というのをご紹介いただいておりますが、ちょっと私、イギリスのこの制度については、正直あまりよくわかっていないんですけれども、少なくともアメリカの制度について申し上げますと、アメリカではインサイダー取引規制において、詐欺的要素というのが非常に重視されておりますものですから、日本で通常考えると、インサイダー取引に該当するんじゃないかと思われるような行為が、例えば情報を提供した者が何らの対価も得ていなかったので、詐欺的要素がないというような理由で無罪になったりしておりまして、とりわけ情報受領者によるインサイダー取引が有効に規制されていないという問題意識があって、SECがこのフェア・ディスクロージャー・ルールをつくったというような経緯もございますので、慎重に考えるべきだと思います。

長くなって恐縮ですが、もう一点申し上げておきますと、今、投資家と発行会社の積極的な、前向きな対話ということが盛んに言われておりまして、その対話の過程では、どうしても重要事実にテクニカルに該当するようなことに触れるようなケースもあるのではないかなと想像するんですが、このフェア・ディスクロージャー・ルールがあまりに徹底されると、そういった対話をむしろ阻むおそれがありますし、また、会社側がフェア・ディスクロージャー・ルールを盾にとって、前向きな対話に応じないというようなことも懸念されるんじゃないかなと思う次第です。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、上柳委員、太田委員、神作委員の順で、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

このフェア・ディスクロージャー・ルールですけれども、資料の9ページに書かれていますように、意図的な開示の場合は同時に、意図的でない開示の場合は速やかにということで、金融商品取引法に導入すべきだというふうに思います。例えば刑事罰については、一定の場合に内部者取引と同様に限定するとか工夫可能だと思います。あるいは民事規制についても、これはやっぱり損害が立証できないと請求できないと思いますので、法律上、規定をしたからといって、副作用が大きくあるというふうには、私には思えないのですが、いかがでしょうか。

特にここに掲げられているような事例については、これは今でも、そのほかの規制に違反するということもありますけれども、これはやはり金融商品取引法上の公平性から言っても問題があり、あるいは金融商品取引法のバスケットルール上も違法なのではないかというふうに思います。

報道の自由については、これは尊重しなければいけませんけれども、やはり今は、まあ、私の偏見かもしれませんけれども、企業のほうがその報道機関が有力である、あるいはそれに実際上、投資家の方もたくさん反応されるということがあるのかもわかりませんけれども、少し緩過ぎるのではないかというふうに思います。

米国の選択的開示が認められる場面というのも大変参考になると思いますけど、いずれにしても、原則としてはやはり、今でも認められない行為だと思いますけれども、きちんと法定すべきだと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。私も基本的に上柳委員と同じように、フェア・ディスクロージャー・ルールは日本でも導入すべきなのではないかと思っております。方向性としては、上柳委員がご指摘のとおり、意図的な開示の場合には同時に、意図的でない場合には速やかに開示することを求めるということなのだろうと思います。もちろん大崎委員のご指摘のとおり、報道の自由との関係というのは、そこは慎重に対処すべき必要は当然あろうかと思いますけれども、私自身の問題意識としては、我が国ではどうも会社が情報のマニピュレーションを行っているのではないかと疑われる事例もあるのではないかと思っております。例えば非友好的なTOBがあった場合に、TOB期間の末日において大規模な自社株買いをやるというような情報が流れて、株価が急騰して、TOBが失敗に終わるといった事例もあったわけです。実際は、その大規模な自社株買いは1年以上あとに行われたわけなので、虚偽ではないのかもしれませんけれども、やはり、非常に不透明な形で報道がされている。従って、そういった情報のマニピュレーションといったようなこともあり得るので、報道の自由との関係については慎重な配慮をした上で、我が国でもアメリカ並みの、そういう意味ではフェア・ディスクロージャー・ルールを導入すべきではないかと私自身は思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

多数の方からご発言の希望をいただいていますが、神作委員、黒沼委員、石田委員、原田委員、熊谷委員の順でいきたいと思います。

神作委員、どうぞ。

【神作委員】

ありがとうございます。私も公平・公正な開示を行うという観点から、選択的開示を禁止するルールの導入について検討すべきであると思います。しかし、そのときに2つ、難しい問題があるのではないかと思っております。第1は、大崎委員からもご指摘があったところですけれども、規範の程度をどの程度強くするか。法令のレベルで定めるのか、取引所のルールで定めるのか等々、規範性の強弱については検討する必要があると思います。そして、そのことは次に述べるフェア・ディスクロージャーの対象となる情報の範囲をどのように画するのかということとも密接に関係するように思われます。

第2は、フェア・ディスクロージャーの対象となる情報の範囲です。仮に重要事実、内部者取引の禁止に当たる重要事実であれば、対象とすることには異論がないのではないかと思いますけれども、金融商品取引業者等に関する内閣府令の117条1項14号、資料の9ページで掲げられている法人関係情報にまで広げるということになると、現在法人関係情報の範囲は、明確な定義規定もなく範囲がはっきりしないということもあり、実務においてはわりかし広めに捉えられているのではないかという気もいたします。そうすると、法人関係情報にそろえてフェア・ディスクロージャーのルールをつくると、特にそれを法令のレベルで行うとなると、やや適切でないようにも思われます。

そこで、この開示すべき情報の範囲については、これまでもご指摘がありましたように、エンゲージメント、望ましいエンゲージメントに悪影響を及ぼさないか、また、報道関係、あるいはアナリスト関係の実務にどのようなインパクトを及ぼすのか、などについて、ルールが実務に与える影響を慎重に見極めながら、しかし、方向としては導入する方向でさらにご議論いただければと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

私もフェア・ディスクロージャー・ルールの導入に賛成であります。フェア・ディスクロージャー・ルールをインサイダー取引の防止の観点ではなくて、上場会社による情報の公平な開示を実現するという観点から組み立てていくべきだろうと思います。

そうすると、報道機関に対する情報の提供も、これは会社が情報が市場に伝わるように、意図的に提供しているわけですから、やはり公平にやってもらう必要があって、決算短信の公表前であれば、決算短信の公表まで待てばいいわけですから、これも規制の対象にしてよいと考えます。

規制の程度については、罰則の適用のあるようなものは望ましくなく、行政規制が一番望ましいと思うんですけれども、うまくそれが現在の法体系に乗るかどうかというのはなかなか、また別の技術的な問題があろうかと思います。

この問題、いろんな角度から議論はできるんですけれども、フェア・ディスクロージャー・ルールを厳しくすると、その企業と投資家との間の対話が妨げられるという観点から議論するのはあまり適当じゃないというふうな感じもしています。対話というのは、きちんと情報を公表した後に、その情報をもとにして対応すればいいわけでして、一部の者が公表されていない情報を基礎に対応すると。これは業務上の必要があればそれは別ですけれども、それは金融商品取引法の投資者保護の枠組みとは少し違うのかなというふうに考えます。

【神田座長】

ありがとうございました。

石田委員、どうぞ。

【石田委員】

皆さんとほぼ同じ意見なのですけれども、少し補足させていただきますと、やはり企業によってアナリストのカバレッジも全く違いますし、いろんな事情があると思います。英語だとフェア・ディスクロージャーですからそういういろんな事情を勘案していると思うのですが、日本語になって、選択的開示の禁止となった途端に、開示したくないことを隠している経営者の言いわけに使われてしまうのではないかと危惧しております。法的要件や罰則の適用範囲については非常に狭くやっていただきたいと思います。

特に小さな会社、アナリストのカバレッジがない会社で、経営者が企業価値をあまり気にしていない会社のところに行って、まず経営とは、資本市場で上場していることとは、みたいな基本的なところから説き始めなくてはなりません。企業価値の向上を働きかける、経営関与型のファンドに幾つか投資してきた経験から言いますと、そういう経営者の方ですから、何が重要事実かとか最初はあまり気にされていないケースもあります。アプローチする側も、最近、インサイダー取引の判例がちょっと厳しくなって以降、インサイダー情報をもらわないようにかなり気をつけてはいます。ただ、ほかにアナリストが行っていないので、君が初めて聞きに来たというようなケースもあると思います。誰かに言った以上は全員に言わなきゃいけないというような強い規範にしてしまうと、せっかくの対話が阻害されてしまうというおそれがあります。

一方、大きな会社でもアナリストの対応に合理的な差をつけている例はあると思います。カバーしているアナリストが100人以上いれば、ちゃんと宿題をしてくる優秀なアナリストから、数字だけもらいに来る中味のないアナリストまでいろいろな水準の人間に対応します。そのような差をランクづけして、社長に会わせるのはこの人だけとか、この人が来たら、技術のトップを会わせてもいいとかというような、企業IRの側からアナリストの力量というのを見極めて、それに合った開示をやっている例はあると思います。こういう質の違いまで規制してしまわないように、選択的開示という言葉がひとり歩きしないように、公正な開示、適正な開示という形でルールをつくっていただければというふうに思います。

また、報道の自由に関して思うのですが、海外では、企業の不正会計を調べて、それをレポートにして、空売りの推奨を出す探偵的な仕事をする株式調査会社というのもございます。そういう探偵的な調査活動というのも、本来、資本市場の役割だと思います。企業の側では聞かれたくない、聞かれたくはないんだけれども、やっぱり聞かれると答えないわけにいかない、という数字はあると思います。今は、まあ、聞かれたら答えるしかないというような形で対応していた企業が、あなたしか聞いていないけど、選択的開示になるから、あなたにだけ言うわけにいかない、というような断り文句をあたえてはいけないと思います。自由な調査活動、プラスもマイナスも自由に掘り下げて聞きたいという、深いアナリストの活動が阻害されないように、実際の規制をつくっていただきたいと思います。

【神田座長】

ありがとうございました。

原田委員、どうぞ。

【原田委員】

ありがとうございます。大勢の委員の方々がおっしゃっていらっしゃるように、私もフェア・ディスクロージャーには基本的に賛成でして、導入するべきであり、検討を開始するべきであろうと思っております。

9ページには、一部の報道機関とありますけれども、これは具体的には1社の問題であろうと思います。批判はどこから来るかというと、これは外国からであろうと、外国以外にはないであろうと考えます。ホームアドバンテージが東京にはあるという状況を、国際金融市場を目指すということを今も掲げているわけですから、こういう批判が来るような慣行を残しておくのは望ましくなく、ルール化するということであれば、どういう形になるのかという議論から、もう始めていっていいのではないかというふうに思います。

報道の自由とか、企業努力とか、プレビュー取材であるとか、いろんな言い方があるかと思いますけれども、今や大勢の人がおかしいと思っていることの一つであろうかと思います。どうおかしいか、ほんとうにおかしいかというところは難しい面があるかと思うんですけれども、一例をあげます。この報道機関の業績予想に基づいて株を買うと、どのぐらいの超過リターンが出るかということを実証分析している論文などがありまして、累積の収益率は有意にプラスであったりします。しかも、報道された日の1日前ぐらいからプラスであるという結果が出ていたりします。例えば相撲の八百長のような、全然話は違いますけれども、それも外国の人たちが実証分析をして、明らかにおかしいという結果が出ているものがあります。7勝7敗で迎えた千秋楽で勝ち越しがかかっている力士の勝率が8割に近いというような結果が出てきて、やはりおかしいということになりました。公正であるべきであろうと思いますので、議論していただきたいなというふうに思います。

以上になります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、熊谷委員、お待たせしました。

【熊谷委員】

皆さんがおっしゃっていたこととかなりかぶってしまうんですけれども、やはりその精神において、こういうフェア・ディスクロージャー・ルールというのは利用者あるいはアナリストですとか投資家としても反対はできないというふうに思っております。ですから、導入すると決めるということでなくて、まさに非常に、何ていうんでしょう、味わい深い言葉で書いてありますけど、「導入を検討する必要性」はあるというふうに思います。

ただ、一方で、やはり大崎さんとかあるいは石田さんからご指摘ございましたように、企業と投資家が積極的に対話して、企業価値の向上を目指していくことが、これから日本が目指していくべき大きな課題になっております。その辺がやはり阻害されないように、ぜひしていただきたいというふうに考えるところであります。

ここに挙がっております事例、典型的な事例が2つあるわけでありますけれども、上の事例に関しましては、先ほど大崎さんからもありましたけれども、まさに行政的な対応で対応されているわけでありますね。ですから、これに関しましては、今の制度が十分にワークしているんじゃないかなというふうに思います。一方で、後者に関しましては、なかなかやはり行政的な処分が難しい中で、どういう形で対応できるのか。いや、そもそもできないという結論になるかもしれないですが、やはりそういう問題が実際にあるわけでありますから、これをどういう形でフェア・ディスクロージャー・ルールをどういうふうに実現していくかという議論は必要だと思います。また繰り返しになりますけれども、対話を阻害しない、選択的開示ということを理由に、情報が出てこなくなるという経験があまりにも過去において多かったものですから、ここに関しましては、十分なご配慮をいただけたらなというふうに思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

この問題についてさらにご発言ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、次に移らせていただきます。時間の関係で恐縮ですけど、10ページの3、4とあわせてご意見等をお出しいただければと。3のほうは、投資家のリテラシー向上ですね。4のほうは、複数の開示書類問題というふうに言っていいかと思います。どなたからでもお願いいたします。いかがでしょうか。

どうぞ、山内委員。

【山内委員】

日本証券業協会の山内と申します。ただ今ご案内がありました、特に3の投資家のリテラシーに関し、本協会における取り組み状況についてご紹介させていただければと思います。

私ども日本証券業協会は、金融商品取引法に定める認可金融商品取引業協会として、同法に基づきまして、金融に係る知識の普及ですとか啓発活動等を通じて、金融商品取引業の健全な発展及び投資者の保護の促進に努めることとされております。

そこで、本協会の理事会のもとに、金融・証券教育支援委員会といった機関を設置させていただきまして、金融リテラシー、また、金融証券知識の普及啓発活動ということについて、社会人向け及び学校向けにそれぞれ精力的に取り組んでいるところでございます。

まず社会人向けでございますが、金融証券知識の普及に力点を置きまして、全国各地で金融リテラシー習得講座、また、若年層向けセミナーを、10月4日には投資の日といたしまして、前後1カ月にわたり、証券知識の普及のためのセミナーなどのイベントを協会員と協力して開催させていただいております。

また、私どものホームページ等を活用し、ウェブコンテンツを利用した取り組みも展開しておりまして、さきほどのセミナーの収録動画に加えて、投資、資産運用の重要性について、気づきとなるような動画や、リスクとリターンや金融商品の基礎知識について解説するような動画といったものの作成、発信を行っております。

さらに、証券投資の基本的なガイドや証券税制に関するリーフレットなどの刊行物を恒常的に作成し、無料配付等を行っております。本日お手元にある『投資入門』は、その中の主な1冊でございます。この冊子につきましては、特に投資の初心者を主な対象といたしまして、投資に当たっての基本的な心構えといったものを身につけていただくことを旨とさせていただいております。

また、事務局資料の3にもありますように、中長期な観点から投資を促すということにつきましては、私どもにおいても重要な観点だと考えております。例えばこの『投資入門』でご参考になるところでは、4ページをお開きいただきますと、「投資とは」のところで、長期投資と分散投資が基本だということをこのポイントとして掲げてございますし、見開き、次の4ページにわたっていただきますと、投資は余裕資金で行うべきということ、また、分散投資の大切さというものもあわせて紹介をさせていただいております。

また、同じくこの4ページの下のほうをごらんになっていただきますと、特にこの分散投資の種類ということで、資産の分散、地域の分散、時間の分散というものを紹介しておりますが、とりわけこの時間の分散ということにつきましては、ちょっとページが飛びますけれども、27ページの見開きをお開きいただきますと、いわゆるドル・コスト平均法といった中長期な投資に有効な方法といったものも紹介させていただいております。

また、本ワーキング・グループでのテーマに関連する内容といたしましては、ちょっと戻っていただきますが、17ページをご参照いただきますと、次ページにかけて、決算短信ですとか有価証券報告書、事業報告書などの開示書類につきましてもご紹介させていただいておりますし、また、次の19ページ、20ページにかけましては、さらに踏み込んで財務諸表の基本でありますとか、さらに21・22ページにかけましては、財務分析の基本ということも紹介させていただいております。

以上が社会人向けのコンテンツということでございますが、次に、学校教育現場における取り組みといたしましても、金融経済教育に役立つ各種学習教材の提供ですとか、教育関係者向けのセミナーといったものを継続して開設させていただいておりますし、また昨年度からは、小中学校向けの土曜学習ですとか、大学向けの出前講座といった活動も行っております。この土曜学習と申しますものは、文部科学省と協力して都内の小学校を中心に全国で展開しておりますが、昨年度から本年度にかけまして、約100校190クラスの小中学校において株式会社の仕組みやお金の流れを学べる学習プログラムを使っての出前授業を行っております。また、大学向けの出前講座に関しましては、昨年度から本年度にかけて、全国、約100校の大学におきまして、約140回の講義を実施させていただいており、証券市場や証券会社の役割ですとか資産運用の重要性等について解説させていただいているといった現状でございます。

証券に関する知識、しかも、この金融を活用できる能力を身につけるということにつきましては、将来、経済的に自立した生活を営むために必要不可欠だと考えておりますし、また、金融商品取引業の健全な発展のための重要な取り組みの一つであるという認識のもとで、引き続き活動を行ってまいりたいと考えているところでございます。

私からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

今、日本証券業協会からいろいろやってらっしゃるというお話があって、それは大変いいことだと思うんですが、私、この投資ということを考えたときに、一つは個別の銘柄、株式に対する投資というのが有力な手段になると思うんですけれども、その個別銘柄、株式への投資についてですね。まあ、比較的、社会全体の中ではリテラシーが高いと思われる方々に対して、法令ではないさまざまな規制がかけられ過ぎているのではないかという問題意識を強く持っております。

どうなんでしょうね。私の会社なんかでも株式投資については事前届け出ということになっておりまして、かつ、銘柄によっては6カ月以上保有するというのが原則ということになっております。正直、私がどの銘柄に関心があるかということを何で上司に説明しなきゃいけないのかなというのは非常に疑問に思っているんですが、会社のルールですからやっておるわけですけれども、例えば金に投資をするとか、マンション投資をするとかいう場合に、上司に届け出なきゃいけないという制度を置いている会社というのはまずないんじゃないかと思うんですね。

そのように考えると、やっぱり株式投資というのはほんとうはやるべきではないんだというメッセージを従業員に伝えているというのが多くの上場会社の実情なんじゃないかなと思っていまして。まあ、名目はインサイダー取引の防止とかいうことになっているんですが、果たしてそのインサイダー取引という犯罪を防止するためにそこまでやる必要があるのか。さらに言えば、例えば中央省庁の方々などは、多くの省庁では株式投資は自粛するとかいうようなことになっていると聞きますし、新聞社や弁護士さんなんかもそういうケースが多いと聞いておりまして、リテラシーが比較的高い方々が積極的な投資をしないで、リテラシーが比較的低い人たちのリテラシーを高めることばかりを言うのはおかしいんじゃないかというふうに前から強く思っております。ここはぜひ変えてですね。もちろん個別銘柄だけじゃなくて、投資信託もあるじゃないかというお話はいつも出てくるんですけれども、でも、何でそういうふうに決めつけなきゃいけないのかということを私は疑問に思っているということでございます。

【神田座長】

どうもありがとうございます。じゃ、変えるためにはどうしたらいいでしょうか。具体的に。別に法律で禁止しているわけではないので。

【大崎委員】

いや、私、正直、そういう個人の経済活動の自由を妨げるような規制を会社等々が雇用契約に基づいて行うことを禁止するべきじゃないかというふうに思っております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。

一般の個人投資家からしてみると、株というのは儲けるためのものであることはもちろんなんですけれども、今、世の中で期待されているのは、企業のガバナンスに個人の投資家が積極的にかかわることなのではないでしょうか。多様な価値観で企業を見つめる目が増えることで、日本の企業の価値が上がるということが期待されるようになっているように感じていますが、そのように考えますと、国民が身につけるべき金融リテラシーの項目として、自分自身もその作成にかかわっておきながら、この視点が欠けていたと申し上げるのは申し訳なく思っているのですけれども、やはり株は投資信託とも違いまして、議決権の行使があるわけです。この議決権を行使して、経営にかかわるというところの意義をもっと個人の投資家に対してお教えいただくことが必要なのかなと感じました。

例えば、いただきました資料の17・18ページのところですけれども、これはおそらく個人の投資家用の資料だと思いますけれども、決算短信や有価証券報告書をEDINETで見るということは一般の個人投資家はいたしません。見るのはやはり事業報告書だと思うのですが、この事業報告書をどのように読んでいったらいいのかというところを金融経済教育の中ではもっと充実させていく必要があり、そして、議決権行使は株主の権利であるわけですから、そこのところをもっと積極的にアピールしていく必要があるのではないかというふうに感じた次第です。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

原田委員、お願いします。

【原田委員】

山内委員からご説明いただきました、この冊子について少し、隣にいますので終わってから言えばいいのかもしれませんけれども、意見を述べさせていただきます。金融商品を販売するわけではないんですけれども、顧客適合性というものを考えてもいいのかなというふうに思いました。

といいますのは、事務局から送っていただいた資料を自宅で見ていましたら、最初のページを見て漫画かと思った子供がPDFをめくっていったんですけれども、内容がわからないと。「投資って何?」と小学生が聞くんですけれども、最初は絵があって易しい感じですけれども、そうかと思えば、とても難しいところもあったりしますし、例えばこれを小学生向けとか中高生向け、大人向けとか、字が小さくて読めないという人には老人向けですとか、いろいろなパターンがあってもいいのかなというふうに思いました。

すみません。少し感想めいたことを申し上げました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかに。どうぞ。小足委員。

【小足委員】

信託協会のほうでも、その金融経済教育という点について、ようやく協議会等にも参加させていただき、参画させていただいているところです。今日のこの資料で求められている本筋の話ではないのかもしれませんが、日本証券業協会さんの資料の中にも31ページに世代別の資産運用の考え方というようなことがございますけれども、投資商品や投資に至るところでのリスクをしっかりと、リスク認識をリテラシーとして高めましょうというのはかなりあるんですけれども、もともと個人の投資家の方についていえば、ご自分がいろんなライフステージ、ライフイベントがある中で、超長期にわたってどういうことが自分にとってリスクであり、もしくはどういうことが自分にとって利益であるということをしっかりと認識されているというのは多分、極めて少ないんだと思うんですね。

特に信託という業務でかかわっていると、非常に超長期に個人のお客様とかかわることが多くて、やっぱりそれぞれのステージでそれぞれどういうことがご自分にとって起こり得て、もしくはそれによってどういうリスクとか、どういう備えをしなきゃいけないということを一緒になって考えていくというですね。そういう取り組みがほんとうに必要だなということを最近、思いを強くしているところでございます。おそらく金融経済教育という中にもそういう視点をより取り入れていくということも重要であろうというふうに、特に最近強く思っているという、極めて個人的な感想でございますが。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

予定の時間からしますと30分ぐらい遅れ気味なのですけれども、もしこの縦3、縦4について、さらにご発言があれば承って、先へ進みます。

橋本委員、どうぞ。

【橋本委員】

4番の点ですけれども、これは一つ、統合報告という話にもなると思うんですけれども、報告書として一つにするという問題と、いろんな報告を関連づけてとか、あるいは財務情報と非財務情報の関連づけとか、この2つの問題はちょっと違うので、2つを分けて議論していただきたいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

石田委員はご発言ございますか。どうぞ。

【石田委員】

3番のところですが、確定拠出型年金の対象拡大を早く実現していただきたいと思います。今年度国会を通らなかったわけですが、早急にサラリーマンの配偶者及び公務員、こういった幅広い層にDC及びその投資教育が広がっていくとの政策の方向でありますし、投資リテラシー向上に寄与すると思います。

もう一つは、公務員、つまり地方公務員、国家公務員の3階部分、いわゆる公的年金の上に載っている部分ですね。これは2割しか積み立てられておりません。逆に言うと、8割は退職一時金として受け取っていると言われています。上場企業でも約半分だと言われており、退職所得控除などの租税措置が複雑に関係しているのですが、退職給付制度のイコールフッティングの流れの中でこの部分を年金化していくという政策的な努力も必要なのではないかと、年金関係者の方では感じております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大変恐縮ですけれども、時間の関係でさらにご意見がある場合には、お電話、電子メールその他で事務局のほうまでお伝えいただければ、大変ありがたく存じます。

それで、私の進行が悪くて申しわけありませんけど、これで全体を一通りご意見を承ったということになりますので、最初に戻って、前回ご議論をいただき、それを踏まえて、一部修正もさせていただいた、前のほうですね。これにつきましては事務局からのご説明は最初に一括していただいております。したがいまして、その部分についてさらに皆様方からご質問、ご意見がありましたらお出しいただきたいと思います。

まず最初にスライドというか、資料の2ページ目は見直しの視点なので、3、4、5ですね。もちろん2ページ目についてでも結構ですけど、3、4、5が開示内容の整理、共通化、合理化ですので、2ページから5ページまでについてご意見を承りたいと思います。

それで、これに関連しましては、静委員から資料をいただいておりますので、まずは静委員に内容をご説明いただいた上で、その後、その内容も含めて皆様方からご意見を承れれば幸いです。

静委員、よろしくお願いいたします。

【静委員】

ありがとうございます。皆様のお手元に東京証券取引所名の資料がいっていると思いますので、これに基づきまして、少しご説明をさせていただきます。

これまでこの場でのご議論をいただきました上で、またいろんなご意見も頂戴したということを受けまして、私ども取引所規則に基づいてご開示をいただいている決算短信につきまして、所管する取引所として具体的な見直し案をつくってまいりましたので、今日はご紹介をさせていただこうということでございます。

ページをおめくりいただきまして、2ページでございます。見直しの方向性につきましては、事務局からご説明いただいた資料を、もう一度同じことを申し上げる形になりますが、企業と投資家の建設的な対話を促進すると、こういう目的で、開示については、効果的、効率的な情報開示を実現するということを目指して、見直しをしたいということでございます。また、金融商品取引法、会社法、上場ルールに基づく、それぞれ開示書類、3書類あるわけでございますけれども、それぞれの目的を踏まえた開示内容の整理をするという全体的な方針にのっとっての見直しにしたいというのが2つ目の方針でございます。

具体的には3つ目に書いてございますように、取引所の決算短信につきましては、金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の法定開示を「確報」というふうに位置づけた場合の「速報」だと、こういう位置づけを明確化する方向で整理をしたい。こんな方針でまとめてきたものが以下の見直し策でございます。

見直しの概要につきましては、2ページの下半分に書いてあるとおりでございまして、速報として効率的な開示を推進するという観点から、2つの点について見直しをしたいというふうに考えております。

1点目が決算短信あるいは四半期決算短信の記載事項を整理するということでございます。具体的に申し上げますと、まず原則としては、速報性の要求される記載事項だけに限定するということでございまして、これによりまして、他の開示書類、特に有価証券報告書ですとか四半期報告書との重複を排除していきたいというのが1点目でございます。

そして、次に、見直し後に残る記載事項というのも少しございますので、こちらにつきましては、この際、効率化や自由度向上といった観点で再整理をするということにしたいと思います。これによりまして、速報性をさらに向上させたいというのが記載事項の整理の2つ目でございます。

大きな2つ目が開示システムの改善をやりたいということでございます。これまでも私どもは、実は上場会社の皆さんへ、うるさがられるぐらいアンケートを送ったりとか、ヒアリングしたりして、使い勝手の改善というのをこの四、五年進めてきたわけでございますけれども、実は予算上の制約とかその他がございまして、なかなかやりたくてもできなかった項目というのが幾つかあります。そこでこの際、そうした制約を取り払って、上場会社からの改善要望をたくさん頂戴しているシステム上の操作につきまして、特に手動操作を自動化するということを進めることで、皆様方の開示実務の負担軽減だとか効率化を進めるという意味合いでの開示システムの改善をしたいと、これが具体的な内容でございます。

以下、個別にごらんいただくようにいたします。3ページでございます。こちらが記載事項の整理でございますけれども、まず記載事項は、速報情報に限定するということでございます。原則として、速報情報として必要不可欠と言われるのは実務的に見て3つでございます。それはサマリー情報、これは一覧表としてのサマリー情報です。2つ目に、そのサマリー情報の定性的な説明になります経営成績ですとか財政状態に関する記載。3番目に、定量的な裏づけになりますけれども、財務諸表、この3点ということに限定したいと思います。

一方で、例外は一切ないのかということでございますが、例外といたしましては、上場政策上の目的で決算短信に書いていただいている情報というのが今ございます。例えば、今あるのは、その例に書いてある会計基準の選択に関する基本的な考え方というのを書いていただいているわけでございますが、こちらは政府の成長戦略の中で、取引所から上場企業に対して投資家に説明するよう促せというふうにご記載いただいたことを受けて、決算短信で開示していただいているわけでございます。今はこれだけですけれども、かつては、例えば配当政策を書いてくださいとか、あるいはコーポレートガバナンスの取組みを書いてくださいと要請をしていた時期もございます。そうした情報は今は有価証券報告書に移ったり、コーポレートガバナンス報告書という独立した報告書ができたりして、決算短信に書いていないんですけれども、今後もそういうような意味合いで、全上場会社に定期的に開示していただけるような、この決算短信という媒体を使って開示していただくということもあろうと思いますので、例外として、こういう項目は若干残していただくことにしたいというふうに思っております。

bでございますけれども、そうしますとかなり記載事項は減るわけですが、残った記載項目につきましてどうするかということでございまして、これを再整理していくことで、もう少し簡素化を進めたいということでございます。

1つ目が、サマリー情報のひな型でございます。こちらにつきましては今、8種類ぐらい用意して、どれでもお好きなものをお使いくださいというふうにしつつも、そのどれかを使うことを強制しているという形になってございますけれども、こちらにつきましては、要請のレベルのところまでレベルを下げまして、自由度を高めたいということが1つ目でございます。

2つ目は経営成績あるいは財政状態の記載でございますが、これにつきましてはできるだけ分析的な記載をしてくださいということをお願いしていたわけでございますけれども、あまり分析的な記載を求めますと、速報的な要素が薄れてしまうということもございますので、今後はサマリー情報を理解するのに必要な範囲で概況を書いていただくと、大ざっぱな記載に変えていただくというようなことにしたいというふうに思っております。

3点目が財務諸表でございます。決算発表時には必ず添付してくださいというのが今の要請事項でございますけれども、一定の場合、例えばということで申し上げますと、添付しなくても投資判断を誤らせるおそれがないというふうに判断されるような場合には、添付をしないで決算発表は終えていただきまして、後で精査が完了した段階で追加的に開示をしていただくといった形で速報性を生かしたいというふうに考えている次第でございます。

以上が記載内容の整理の項目でございます。

4ページは、今申し上げたことを図にしたものでございます。まず下のローマ数字の5とか6というところをごらんいただきますと、経営方針の記載ということでございますが、こちらにつきましては、先ほど事務局のご説明にもございましたように、新たに有価証券報告書に記載欄を設けていただきまして、こちらは速報性を要しないということで、有価証券報告書のほうの記載事項に移させていただきたいというふうに思っております。そのほかにも定性情報が6番、継続企業の前提に関する重要事象といったものがございますけれども、こちらについては既に有価証券報告書に記載欄があって、そちらにも記載されておりますので、こちらは記載は要らないという形にしたいと思います。

次に、ローマ数字の3番、財務諸表でございますが、こちらにつきましては先ほどご説明申し上げたとおりでございまして、一定の場合には開示は要らないということで、開示ができるようになった時点で追加的に開示をしていただくという形にしたいというふうに思っております。

あとは先ほどご紹介したとおりですが、一番上のサマリー情報を義務から要請へ。2番目の経営成績・財政状態・今後の見通しにつきましては、分析的な記載を概況の記載に変えていただくという形になっておるという次第でございます。これが全体像でございます。

最後、5ページでございますけれども、開示システムの改善ということをさせていただきたいというふうに思います。上場会社の皆様から改善要望が非常に多く寄せられているんですが、なかなかできなかったことということで、自動化・効率化を進めたいということでございます。

大きな1番、サマリー情報につきまして、入力データを削減するという内容でございますけれども、現在、決算短信には当期データと前期データを並べて書くことになっておりますけれども、これは両方とも手作業で入力していただいております。こちらにつきましては、前期データは私ども持っておりますので、自動的に入力ができるように、手入力の必要をなくすような仕組みにしたいというふうに考えております。

2番、PDFの自動作成・自動登録でございますが、まずマル1のサマリー情報につきましては、現在、皆様方にXBRLという形のデータの打ち込みをしていただいた上で、そいつをPDFに変換していただき、それをさらに体裁を整えていただいて、登録をしていただくというところまで全部手動でやっていただいております。これにつきましては、そのPDFの体裁の調整あたりが非常に面倒くさいというようなお話を伺っておりますので、全てが自動的に作成、体裁調整から登録までいくように自動化したいというふうに考えております。

マル2でございますけれども、サマリー情報と添付資料をあわせた全体の決算短信の結合情報というのがございますけれども、こちらにつきましても現在手動で結合PDFをつくっていただいて登録をしていただいているんですが、これを全部自動化したいというふうに考えております。これらを行うことによりまして、現在、上場会社の皆様に4つのファイルを開示システムに登録していただいているんですが、これが2つに減るという形になります。しかも、2つのうちの1つは、半分が自動入力されているということで、大分、手間の軽減になるのではないかというふうに感じておる次第でございます。

なお、システム改造を伴いますので、先ほどの開示内容の整理のほうはもうちょっと早くできると思うんですけれども、今申し上げている開示システムのほうは、予算の獲得をしなければいけないとか、あるいはシステム開発だけではなくて、上場会社でお使いになる皆様になれていただかなければいけないとか、使う側の情報のベンダーなどにも対応をお願いしなければいけないということもございますので、それを全て整えまして、できれば来年の3月期の決算発表から稼働するような形でもって進めていきたいというふうに思っております。

決算短信系の見直しの私どもの持っております案は以上でございますが、これを進めることによりまして、上場会社と投資家の皆様の対話が促進されて、さらに実りのあるものになるように期待していきたいというふうに思っております。

私からの説明は以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。今、詳細にご説明いただいたような方向でご検討をしていただけるということなので、大変結構なことではないかと思いますけれども、決算短信のところは事務局のほうの資料では3ページになります。今の東証からのご説明とあわせて、ご意見をお出しいただきたく存じます。時間の関係で、賛成の場合は賛成と言っていただく必要は特にないとは思いますが。何か留意すべき点とか注意すべき点とかそういうことがありましたらお願いしたいと思います。

大崎委員、関根委員、熊谷委員の順で。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。大変結構なことで進むなというふうに思うんですが、一方で、取引所としてどうするかというのは難しいんですけれども、今、決算短信の内容が非常に多くなっているというふうに一般に言われるわけですけど、その背景には個別の会社説明会等々でそういう資料を出してほしいというような要請があって、それに応えていったことの積み重ねというものもありますので、決算短信の制度が変わることが、いわば開示の後退の口実にならないように取引所としてしっかり監視をしていただきたいなという気がしております。

例えばこの取引所の資料の4ページの5と6のところが、これは記載不要になりますよというふうに説明されていて、ただ、例えば継続企業の前提に関する重要事象等なんかは、会社によっては非常にクリティカルに投資家から見られているケースもありまして、そういう場合に既にそういう何らかのことがはっきりしているのに、これは有価証券報告書に書くことだからということで、いわば2カ月ぐらい開示を先送りするような口実に使われないようにですね。そこのところは当然、取引所としても開示のやり方についての改善報告等々を求めるとかいうようなことは今後もやっていかれると理解しておりますので、ぜひしっかりやっていただきたいなと思います。

それから、1点、非常に細かいことで、つまらないことなんですけど、ぜひ伺いたいのがサマリー情報のひな型について、特段強制しないというふうにおっしゃったんですけれども、他方で作成のプロセスの自動化を進められるということなんですが、どんな書き方をしていても、自動でちゃんとできるんですかという、そこをちょっと教えていただければと思います。

【静委員】

今、世界に先駆けて、XBRLという言語を使っておる関係で、自由自在な記載は全くできなくなってしまったんですね。したがって、皆さんが自由な記載ができるようにひな型がどんどん増えていって、今、多分8種類ぐらいあるのではないかと思うんですね。例えば業績予想の書き方をレンジで書きたいといったら違うひな型になったりとかするわけなので、これは今のルール上はその8つのうちからどれか選んで、記載、入力してくれという話になるわけですけれども、このあたりについては若干柔軟性が持たせられるかなとは思っておりますので、例えばこんなふうにしたいというようなご要望があれば、新しいひな型をつくるぐらいのものになればつくっていくということはあるのかもしれないというふうに思っております。自由自在というのはなかなか、ちょっと難しいんですけれども、それに近い形になっていくということだと思います。

ただ、実を申しますと、そういうご要望が出たということもあんまりございません。これは実は強制になる前が要請だったんですけれども、その時代も少しも増えていないということがありますので、規範上の位置づけが強制から要請に変わるだけで、実務的にはほとんど変わりがないのではないかというふうには見ております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

関根委員、どうぞ。

【関根委員】

ありがとうございます。2点ありまして、1点目は、今の決算短信の話です。こちらについては、私が前回のワーキングのときに提出した意見書にも明記して、発言もしていますけれども、上場会社の4割が会計監査人監査報告書日以後に決算短信を公表していて、速報性にこそ意味ある決算短信に、確報に求められる信頼性までを求める慣行になってしまっています。その意味で、監査は不要であることの明確化、また、開示内容を整理といった方策で実務を動かすという方向性には賛成です。

ただ、少し気になるところが、財務諸表のところです。先程ご説明頂いた資料に、財務諸表の精査が完了していない場合とあり、これは逆に言うと、完了したら出すということになりますけれども、この点については、あくまでも決算短信ですから、速報値であり、確報値とは違うというふうに整理ができるのかということが気になっております。

財務諸表は、投資判断を誤らせるおそれがない場合には開示不要ということですけれども、今までも開示しているものの、かなり無理して、短期間に財務諸表をつくられている場合もあるかと思います。その場合、あとで修正をしたくないということから、監査を実質的に終了してくれという形になっていると、実効性がなかなかとれなくなってしまうのではないかと懸念しています。開示しなくても投資判断が誤らないということであれば、そういった会社であれば、財務諸表を後にして先に重要な情報のみ出すことも求められる、財務諸表を開示しないことが悪いことではないという趣旨だというふうに私は理解しているのですけれども、そのあたりにどういう実効性を持たせられるのか、実質的に現在とあまり変わらないというふうにならないようにどのようにしていったらいいかというのが気になっているところです。

それがまず1点で、それから、もう1点、事務局説明資料の4ページ目についてですが、「事業報告は、」として、「会社法施行規則の内容を満たすのであれば、必ずしも経団連ひな型に従う必要はなく、有価証券報告書と同一の記載が可能であることを明確化する。」ということですけれども、これは計算書類についても同様のことが言えるのかどうかということを確認したいと思っています。

これは、計算書類において、有価証券報告書の細かい記載まで全て同一にという話ではないのですが、例えば、比較情報やキャッシュフローの計算書のある有価証券報告書のフォームを利用したい場合には利用できるのか。あるいは有価証券報告書のサマリーという形でも可能という理解でよいか確認させていただきたいと思っております。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。後半の部分は次のテーマなので、もしお答えできることがあれば、後でちょっとお答えいただきたいと思いますけれども、前のほうの決算短信についてまずご意見をいただきたいと思います。熊谷委員、それから、逆瀬委員、橋本委員の順でどうぞ。熊谷委員。

【熊谷委員】

ありがとうございます。この東証さんのほうで、こういう決算短信の制度の改革といいますか、改定のご提案をいただいているわけでありますけれども、非常に違和感を感じているところがございます。この提案は、ディスクロージャーワーキング・グループの議論をベースにしているので、ちゃぶ台返しをするつもりは全くないんですけれども、やはりこの決算短信を利用しているのは、投資家特に機関投資家であり、それから、アナリストなわけですね。私を含めまして、石田委員ですとか一部代表している人たちもいるわけでありますけれども、東証さんがこの開示の見直しをされるに当たって、ぜひデュープロセス上もやっていただきたいのは、この見直しによって一番影響を受けるであろう、機関投資家ですとかアナリストの人たちに、東証としてはこういう提案で、こういう開示をしたい、こういうふうに整理したいんだけれども、それに関して何か問題点はないかということをきっちり、現場の意見を吸い上げた上で進めていっていただきたいということであります。

ここの部分は、早期化のために簡素化するんだという、そういう趣旨だろうというふうに理解しますけれども、多分ほとんどのアナリストですとか機関投資家にとって、これ以上の決算の発表の早期化によるメリットよりも、ご提案の決算短信の情報内容の削減、簡素化に伴うデメリットのほうが大きいんじゃないかというふうに思います。

こういう提案を東証さんがこのワーキング・グループの議論をベースにやっていただくのは結構だとは思うんですけれども、実際の実務に携わっている人たちを直撃いたします。従いまして、実際の制度の見直しに落とし込むに当たっては、やはりアナリスト協会などを通じて、よく現場の声をすくい上げて頂きたい。十分そこのところはご配慮の上、今後の見直しを進めていただきたいというふうに思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

逆瀬委員、どうぞ。

【逆瀬委員】

決算短信関係ということで、2点ほど申し上げます。四半期開示に関して、四半期決算短信と四半期報告書の統合という話がありました。これはまさにこの金融審議会、ディスクロージャーワーキング・グループの議論にふさわしい、開示の合理化に結びつく有効な一つのイシューだと確信して本会議に臨んでおりましたところ、なくなっております。この喪失感というものが今埋まっておらないわけでありまして、なぜそうしたのかということについては、きちっと議論を、腑に落ちるように、説明かたがたしていただきたい。できれば再考をお願いする。

それから、2点目ですが、皆さんも言われているように、長信と化して久しい決算短信について、今、静さんからご説明がございました。言葉尻を取り上げるわけじゃないのですが、財務諸表という言葉が残っています。財務諸表という言葉は法定開示の言葉でもあって、取引所開示で財務諸表というと、イメージとしては、関根さんご懸念のように、監査の信頼性担保を伴う、一連のワンセットの財務情報というふうに読まれかねません。実際は要約的な情報になっているわけだから、要約財務情報という言い方にするのが至当ではないか、できれば再考をお願いしたい。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

橋本委員、お願いします。

【橋本委員】

私も逆瀬委員と同じ四半期報告の決算短信の件ですので結構です。

【神田座長】

そうですか。どうもありがとうございました。

この決算短信に関して、ほかにもしご意見がありましたらお聞きしたいと思いますけれども。

どうぞ、関根委員。

【関根委員】

先ほど少し言葉足らずだったので、ひとつ付け加えさせて下さい。添付される財務諸表については、今、逆瀬委員がおっしゃったように、私も、サマリー情報、財務情報としても要約的なものを入れるというのが非常によいのではないかと思っております。それは、細かいものを公表しますと、公表する方としては、細かい数字であっても後で変わるとよくないだろうと考え、確報に近いものにしようと考えるというふうになってしまうのではないかと懸念しています。これは、実務において、真面目に行おうとしているからだと思いますが、ただ、実際には投資家の方たちもそれほど細かい数字が本当に必要なのかと思っており、もう少し要約的なものでもよいのではないかと思っていますので、その点はつけ加えさせていただきます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

どうぞ、熊谷委員。

【熊谷委員】

度々すみません。要約財務諸表という言葉を使うということでありますけれども、それ自体は別に反対するつもりもございません。また、これに関して監査が不要ということを明確にすることも重要だと思います。現行実務において、アナリストの中でも決算短信に添付の財務数値が非常に正確なものであるという期待値があると思いますし、これがある種、過剰な期待であるということは理解いたします。

ですから、その監査不要であるということに関して、そこは強調して、むしろユーザーの期待値を下げるということは必要じゃないかなというふうに思います。利用者としても決算短信の数字と有価証券報告書の数字に些細なずれがあっても、実は許容できると思います。しかし作成者がそうしたリスクが気になるので、決算短信の情報量が減るというのは、利用者の分析実務に非常に大きな影響を与えてまいりますので、ここに関しては先ほど申し上げましたとおり、十分その利用者の団体等々、協議をしながら慎重に進めていただけたらというふうに思います。

【神田座長】

大変申しわけないのですが、私の不手際なのですけれども、本日、いろいろな事情がございまして、11時半ちょうどに終了しなければいけない状況にございます。それで、まず事業報告等についての先ほどのご質問についての回答は、大変申しわけありませんけれども、次回にさせていただきます。

それから、決算短信については、大きく2つの点について、今日ご指摘がありました。いわゆる四半期についての話と、それから、熊谷委員から、簡単に言うと、決算短信を長信化されているので短信にすると、情報が減って、利用者にとってマイナスではないかというご指摘です。この辺はきちんと考え方を整理する必要があると思うのですけれども、前者につきましては、確かに四半期について、四半期という法定開示か、決算短信か、どっちかあればいいのではないか、あるいは統合できるのではないかというところはあり得るとは思うのですけど、前回のご議論では、直ちにそれを実現するほうへ詰めるというところまでは難しいのではないかということだったと思います。なお、再考を求めるというご意見もありましたので、引き続きご意見があれば事務局にお寄せいただきたいと思います。

後者については、本来、法定開示というのは時間が保証されているので、きちんとしたものをつくる。それが決算短信という、タイムリーディスクロージャーという名のもとで、同じものを早く求められてしまうと、そこにちょっと質の低下等が生じうるのではないかというのがもともとのロジックですよね。ですから、その長信を短信に戻すというのはタイムリーディスクロージャーの本来の趣旨に戻りましょうということなので、それで投資家にとってマイナスとはどういう意味かですよね。それはまさに法定開示がある期間を保証して、ちゃんとした情報を出してくださいと言っていることの意味も問われますけれども、おっしゃるとおり、理屈の話とは別に実際の話もあるでしょうから、実際どうなっているのかというあたりをもう一度整理した上で、先へ進められればと思います。

それで、大変勝手ですけれども、あと4分ぐらいしかございませんので、ご意見等ございましたら、事業報告と有価証券報告書については、特に4ページ目はいいと思うのですけれども、5ページ目の下のほうですね。下の丸、ただし書きのあたりについてご意見がありましたらぜひ事務局までお電話でも結構です。メール等でお寄せいただきたいと思います。

最後、3分半で、6ページについて、経産省から資料が出ていますので、日置室長、申しわけありませんが、2分程度でご説明をお願いできませんでしょうか。申しわけありません。

【日置企業会計室長】

恐れ入ります。むしろ当方が説明するよりもご議論いただいたほうがいいんじゃないかと思うところでございましたが、簡潔にということでご説明を申し上げます。

経産省企業会計室長の日置と申します。招集通知関連書類の電子提供に関して研究会で議論を行っておりまして、これのご紹介ということでペーパーを準備させていただきました。

1ページ目でございますが、研究会においては、招集通知関係書類の電子化のみならず、議決権行使プロセスの電子化、あと、株主総会の基準日設定に関しても、対話促進、対話の質の向上という観点から議論を行っています。この議論は、2ページ目にございます日本再興戦略にも基づくものでございます。

4ページ目でございますが、こちらは、今の議論の方向性について簡単にまとめたものでございます。招集通知の関連書類の電子提供を促進・拡大するという方向での議論をお願いしていますが、その検討の方向性といたしましては、株主の対話を促進するという観点から、法制度上においても、株主による議案の検討期間の拡大、情報提供の充実、あとは株主とのコミュニケーションの充実、こういったものに資するような方向で、電子提供について前向きに検討していくということでございます。

他方で、このワーキング・グループでもご指摘あったかと思いますが、どうしても紙で欲しい方、あとはインターネットにアクセスをされない方に関しては、この制度変更による不利益がある場合は、適切に手当を講じると。そうした観点から、では、どういった具体的な制度設計があり得るのか、といった議論を今展開しているところでございます。

なぜ電子提供が対話促進に資するのかということにつきましては、参考資料を幾つか準備させていただいております。まず、議案の検討期間の拡大ということでございますが、こちらは経団連さんに協力を依頼しまして、アンケート調査をさせていただきました。これによりますと、印刷や封入に関する時間というのが2週間、それ以上かかっているという現状がございます。これをなるべく印刷のボリュームを減らすことで早期発送というものができるのではないのか。もしくは、早期発送ではなく、情報開示の質や監査の質を高める上での時間を確保することができるのではないか。これが1点目でございます。

次に、2点目、情報提供の充実という点ですが、現実問題として、郵送料であったり、紙面上の制約によって、この情報開示のボリューム、質というのがどこまで担保されているのかという課題もあろうかと思います。

6ページ目でございますが、3点目、今、紙ベースでの情報提供が主流ということにはなっているのですが、これだけインターネットの利用が高まってまいりますと、これを活用したほうが株主とのコミュニケーションがやりやすくなってくるのではないかといった視点もあろうかと思います。検索がしやすくなるということもございます。比較分析がしやすくなる、XBRLによる分析可能性の向上といったお話もございます。インターネットを介して経営者が目に見える形でメッセージを発信するといったことも可能になるわけでございまして、もはや今のインターネット利用率を踏まえれば、この利用を拡大するといった方向でのアプローチというのは、企業にとっても、株主にとっても、有益なのではないかと、そのような理解で検討を進めています。

おめくりいただきまして、7ページ目、8ページ目でございますが、具体的な制度設計といたしましては、まず、原則的に電子提供とする範囲というのはどういったものかというもの。あと、やはり書面で欲しい方々への対応をどうするのか。こういった観点からの議論を今やっているということでございます。

方向性としては、全てが電子化されるということではありません。いつ株主総会が開催されるのかという情報、あと、議決権行使書、これは郵送するというご意見が今多いのかなと思っています。それ以外の情報に関しましては、ウェブ経由で提供するという方向です。他にも細かな議論はあろうかと思いますが、基本的にはそういうイメージでございます。

【神田座長】

さえぎって大変申しわけありません。もう予定の時間が過ぎましたので、また機会があれば設けさせていただきます。大変申しわけございません。

それで、会社法に関係する部分がございますが、もし法務省からご発言があれば手短にお願いします。

【竹林参事官】

恐れ入ります。事務局資料の6ページの1つ目の丸の点において、3月決算会社が定時株主総会を7月に開催する場合には、決算日と議決権行使の基準日が別の日となることから、事業報告の「大株主の状況」の記載の基準時点を決算日ではなく、議決権行使の基準日とすることをご提案いただいております。この提案によれば、議決権行使の基準日と事業報告の記載の基準時点を結びつけることになりますが、こういったことをする場合につきましては、議決権行使の基準日が事業報告を作成する前までに設定されることが予想されますので、事業報告の作成に要する期間が、議決権行使の基準日をできる限り後ろ倒しして、定時株主総会の開催日に近づけようとすることの障害の一つとなり得るという問題があり得るということについてご留意いただいて、この提案につきましてご検討いただければと考えております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

本日はちょっと事務局のほうのご都合もございまして、ここで終わらなければなりません。日置さんには大変失礼いたしました。

それで、皆様方には、資料の6ページ目に当たるのですけれども、経産省の研究会等の動向等もご参考にしていただいて、ご意見を事務局までお寄せいただきたいと思います。

私の不手際で、最後のほうがご意見を承る時間がとれませんで、大変申しわけありませんでした。多数、貴重なご意見をお出しいただきまして、ありがとうございました。本日の意見を踏まえて、先へ進ませていただきます。

最後に事務局からのご連絡をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

本日は時間の関係で、いろいろご無理を申し上げて申しわけございませんでした。次回のワーキング・グループの日程につきましては、また寄せられたご意見なども踏まえさせていただきまして、設定をさせていただきたいと思いますので、意見のほうはお寄せいただきますようによろしくお願いいたします。

事務局からは以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

これにて散会いたします。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課(内線3665、3802)

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