金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第4回) 議事録

  • 1.日時:

    平成28年3月14日(月)13時00分~15時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

それでは、予定の時間よりちょっと早いかもしれませんけれども、皆様方おそろいでございますので、始めさせていただきたいと思います。ただいまから、金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの第4回目の会合を開催させていただきます。いつも大変お忙しいところ、お集まりいただきましてありがとうございます。

早速ですけれども、議事に入らせていただきたいと思います。前回、経済産業省の株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会の検討状況等のご説明が、時間の関係により途中で終わりとさせていただきまして、大変申し訳ございませんでした。そこで、本日は、最初に経済産業省から前回に引き続き検討状況等のご説明をいただきたいと思います。その後、事務局から本日ご議論いただきます論点についてご説明をしていただき、続けて皆様方による審議をお願いしたいと存じます。

それでは、経済産業省よりよろしくお願いいたします。

【日置企業会計室長】

経済産業省の日置でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

前回に引き続きお時間をいただけたということで、ご配慮ありがとうございます。

前回、最後のほうで招集通知関係書類の電子提供に関する検討状況についてご説明させていただきました。その際に、電子提供というものには株主とのコミュニケーションの充実であったり、情報提供の充実、対話・議案の検討期間の確保といった効用があるのではないかということで、対話促進の観点から、法制度上も電子提供しやすい制度を整備すべきという方向で、ただいま研究会の提言の取りまとめを行うべく議論を行っていることをご紹介させていただいたところでございます。

本日は、先日提供したものと同じ資料になりますが、こちらの9ページ目以降を用いて、諸外国の制度の概要についてご紹介したいと思います。電子提供とはどういうものかというイメージを共有できればと思う次第でございます。

まず、9ページ目でございます。アメリカのNotice&Access制度というものでございます。こちら、2009年度から本格導入されたものでございまして、  制度のポイントとしましては、個々の株主の同意を得ることなくインターネット経由で情報提供するという点、必要最低限の情報は郵送で通知されるという点が挙げられます。これらは、これからご紹介しますカナダ、英国の制度についても共通する点かと思います。

詳しくは10ページ目をご覧ください。この制度は、上場会社が株主総会の委任状説明書や招集通知関連情報をウエブサイトに掲載した上で、当該ウエブサイトのアドレス、総会の開催日時と場所、そして議案情報のサマリー等が記載された通知を株主に提供するという内容となっています。

株主に郵送される通知イメージということで、日本語で翻訳したものを11ページ目以降に掲げさせていただいております。こういった情報が株主のもとには書面で届きます。それ以外の詳細な情報については、インターネットにアクセスしてご覧ください、ということになります。

この制度の利用状況でございますが、14ページ目をご覧ください。2015年度におきましては上場会社の約4割の企業が本制度を採用しているという状況で、全ての上場企業が採用しているというわけではございません。ただし、年々、このNotice&Access制度を採用する企業は増えています。また、右のほうのグラフでございますが、株主数が多い企業ほどNotice&Access制度を採用しており、大手であれば8割程度と高水準であるという実態がうかがえます。

続きまして15ページ目、カナダの例をご紹介します。カナダにおいても、2013年度から、アメリカと同様の制度が導入されております。アメリカと同様に、株主とのコミュニケーションの効率化やコスト削減、環境負荷軽減等を目的に制度が導入されていますが、米国とは違う点としては、個人株主の議決権行使率の低下を防ぐために、このNoticeに議決権行使書を同封することを義務づけているという点がカナダの特徴として挙げられます。実際、カナダでは、このNotice&Access制度を採用した企業における議決権行使率が、この制度を採用していない企業に比べて低くない、むしろ高い、といったデータも確認されております。

続きまして、16ページ目、英国でございます。若干アメリカ、カナダのNotice&Access制度とは異なっておりますけれども、まず、英国では総会前にインターネット経由で情報提供することについて株主から同意を求める通知を送ることになっております。この通知に対して返送が特になければ、インターネット経由での情報提供に同意をしたこととみなされ、この同意をしたとみなされた株主に対しては、総会情報がウエブに掲載された後に、そのウエブサイトのアドレス情報が書面で届くといった制度となっております。

このような制度の導入後の状況ということでは、17ページ目をご覧いただければと思います。ちょっとカナダの情報がないのでございますが、アメリカ、英国では約8割の株主が招集通知の関連書類を電子的に受け取っているというような状況が見てとれます。特に、米国においては全ての書類をEメールベースで受け取っている割合が45.7%と高くなっております。

このように、インターネットによる情報提供がベースになってきますとどうなるか、ということで事例をいくつかご紹介します。18ページ目、19ページ目でございます。アメリカでは、招集通知の受け取りから議決権行使にいたるまでのポータルサイトが構築されております。1つのサイトにアクセスすれば、自分の保有銘柄の情報が全て見られるようになっていまして、議決権行使もワンストップで行えるようになっております。また、20ページ目も参考でございます。コカ・コーラ社のウエブ開示の事例でございますが、相応に工夫されたものとなっています。こちら、あくまで諸外国の例ということなのでございますが、電子化を拡大すれば、今とは違った株主の利便性も高まるのではないかと期待されるところです。

なお、この研究会の議論ですが、我が国における具体的な制度設計のあり方に関しては目下、議論中でございます。ただし、制度設計の骨格としましては、ウエブアドレス等の必要最低限の情報が書面で株主に通知をされることを前提に、個別に株主からの承諾を得なくとも電子提供を行えるような枠組みを整備するという点では、共通認識が得られているところです。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

また、前回、時間が不足した関係から、委員の皆様にはその後、ご意見をお寄せいただいた方が何人かいらっしゃいまして、大変ありがとうございます。

それでは、今、経済産業省からご説明いただきました内容は、この後、事務局から説明していただきます資料1で申しますと、4ページ目の「事業報告・計算書類等の電子化」に関連し得るというか、関連する話でもあると思われますので、引き続いて、まずは事務局から本日の資料のご説明をしていただいて、その後、あわせて皆様方にご審議をお願いしたいと思います。

それでは、事務局からのご説明をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

ありがとうございます。

これまでご議論を頂戴いたしまして、私どもとして最終的に報告書を取りまとめていくに当たって4点ほど中心的にご議論いただきたい点がございまして、本日はその  4点につきまして資料を作成させていただきました。

資料の1でございます。1ページおめくりいただきまして、まず、「決算短信と四半期決算短信」にかかる論点でございます。2点目が「事業報告・計算書類と有価証券報告書との関係」でございます。3点目が「対話の充実に向けた開示・総会開催日程」。最後に、今、日置室長からもお話しいただきました「事業報告・計算書類等の電子化」でございます。それぞれの論点につきまして簡単にご説明をさせていただきます。

1ページでございますけれども、「決算短信と四半期決算短信」につきましては、これまでご議論をいただきまして、監査と四半期レビューが不要であるということを明確にすべきではないかといったご意見を頂戴したわけでございます。こういったことについては概ね、合意を得たということですけれども、記載を要請する事項の限定等による自由度の向上という観点につきまして、以下のような提案と意見がございましたので、この点について本日はご審議をいただければと思っております。

ご提案につきましては、東京証券取引所様から、決算短信につきまして、記載を要請する事項をサマリー、経営成績・財政状態・今後の見通しの概況や連結財務諸表、それから主な注記に限定して、その他は企業が任意に記載できることとする。義務的な記載事項と記載を要請する事項を可能な限り減らすことによって、それぞれの企業の状況に応じた開示を可能とする。また、適時開示ルールなども踏まえまして、投資者の投資判断を誤らせるおそれがない場合には、決算短信開示時点では連結財務諸表の開示を行わなくてもよいこととし、開示可能になった段階で連結財務諸表を開示することを認めるというご提案でございました。

この点につきまして熊谷委員などからは、企業が決算短信の開示時点で連結財務諸表の開示を行わない場合には任意の形で投資者が必要とする財務情報が提供されることが必要ではないかというご意見を頂戴いたしました。また、そういった形で決算短信の制度を変更するということであれば、その趣旨を踏まえながら、投資者と企業等との間で対話をしまして、投資者が必要とする情報が適時に提供されるような仕組みを確保する必要があるのではないかとったご意見を踏まえまして、こうした点について、まずご審議をいただければと思っております。

それから、2点目の「事業報告・計算書類と有価証券報告書との関係」ですが、この点につきましても、書類作成事務や監査事務の更なる合理化や早期化、それから欧米で見られるような、1つの書類で双方の開示を行うことをより容易にするという観点から議論を頂戴してまいりました。ご議論いただいた中では、経団連様の提供されている事業報告・計算書類のひな形と有価証券報告書との間で記載を求める内容に差異があるということで、その中身をできるだけ共通化すべきというご指摘がございました。この点につきまして、事業報告・計算書類の記載内容を規定しております会社法施行規則や会社計算規則は、かなりシンプルな記載になっており、その記載内容の詳細についてまでは書いておりませんので、経団連ひな形に即していなくても、会社法施行規則などの記載事項に即していれば有価証券報告書の記載事項と共通する記載を行うことで、両者の記載事項の共通化が可能なことを明確化すべきであり、これによって、先ほどのような書類作成事務や監査事務の更なる合理化、早期化、あるいは1つの書類での双方の開示がより容易になるのではないかというようなご議論を頂戴したところでございます。

また、会社法及び金融商品取引法の開示項目で、中身が異なり得るものにつきましては、個別にご議論を頂戴いたしました。例えば大株主について申し上げますと、会社法は名簿上の株主、金融商品取引法は実質的な株主ということで、これはなかなか共通化できないので、仮に一体化した1つの書類で開示ということになりますと、両方書かざるを得ないのではないかという議論が大勢だったと思います。ただ、そういう中にあっても、有価証券報告書で、現在、発行済株式に自己株式を加えて計算しているものについては、これを控除することで、事業報告と記載内容をあわせていくことが考えられるのではないかという方向性で大方コンセンサスをいただいたかと考えております。

こうした議論につきまして最終的にどう考えるか、また、このほかに現時点で取り組むべき課題がないかということにつきましてご議論を頂戴できればと考えております。

1ページおめくりいただきまして3ページ目でございます。「対話の充実に向けた開示・総会開催日程」につきましてもご議論を頂戴いたしまして、今まで以下のような議論が行われてきたと理解をしておりますけれども、この点についてどのように考えるかという論点でございます。

建設的な対話の充実という観点から、機関投資家の皆様から株主総会の開催前に有価証券報告書を開示すべきであるという指摘が寄せられているところでございます。実際に一部の上場企業におかれましては、株主総会の開催前に有価証券報告書を開示されているということです。また、有価証券報告書が事業報告・計算書類等と同時期に開示されると、監査手続の効率化につながるというご意見もございました。

それから、例えば3月決算会社が株主総会を7月に開催することによって、有価証券報告書の総会前開示ができる企業が増加することが株主との建設的な対話の充実につながるというご指摘もございました。

このほか、総会開催を遅らせることにつきましては、ここに書いておりますようなメリットとデメリットが指摘されており、このあたりにつきまして再度ご議論を頂戴したいと考えているところでございます。

なお、総会開催を遅らせることにつきましては、制度上、有価証券報告書と事業報告書における大株主の状況等の記載時点が事務年度の終了日となっているため、この関係で株主総会の開催を遅らせますと株主確定を2回しなければいけなくなり、事務負担の増加につながるのではないかというご懸念が示されております。この点につきましては、制度上、7月開催とした場合における株主総会の事務負担の増加が生じないようにするために、記載時点を議決権行使基準日とするというご意見を頂戴しまして、こういった形にすることによって7月開催を行うことの制度的なデメリットは解消されるのではないかと考えているところでございます。

最後の4点目の電子化でございますけれども、先ほど、日置室長のほうからもご紹介がありましたように、現行制度上、株主から事前に同意を得れば事業報告・計算書類等の全てを電子的に提供することが可能であるほか、株主の事前同意がない場合は電子的に提供可能な書類はこれらのうちの株主資本等変動計算書・個別注記表など、一部の書類のみに限られておりますことから、事前同意なしに電子的に提供可能な書類の範囲を拡大していくことについての議論をいただいております。

こうした書類の範囲を拡大することには、さまざまなメリットがある一方で、対象範囲や方法によりましては、個人の議決権行使率の低下やデジタルデバイドの問題を招くおそれもあるというご意見も頂戴いたしました。

こういった意見を踏まえますと、事前同意なしに電子的に提供可能な書類の範囲を拡大することが望ましいというのは一般論として言える一方で、デメリットについては各企業や株主の状況に応じた配慮が必要であろうかと思いますが、この点につきましてもご議論を頂戴できればと考えております。

以上、本日中心的にご議論いただきたい4点につきましてご説明いたしました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、審議に移らせていただきたいと思います。先ほどちょっと申し上げましたけれども、前回の会合の後、委員の多くの方々からいろいろなご意見をいただきましてありがとうございました。そのうち、本日の会合に向けて5名の委員の方々から意見の提出がございましたので、お手元に席上配付をさせていただいております。これらもあわせてごらんいただければと思います。

それで、議論の進め方ですけれども、今、事務局からご紹介のありました4つの論点について、論点ごとにご審議をお願いしたいと存じます。そろそろ取りまとめができればということなのですけれども、これら4つの論点につきましては、いろいろな角度から多様なご意見があって、また、この分野は言うまでもなく膨大な実務が存在しているという分野ですので、制度の問題とあわせて実務上の問題が当然、共存しておりますので、ある政策なりある方向感を理屈の上で持ったとして、それを制度と実務のどういう組み合わせで実現していくかというあたりも含めますと、なかなか文章を書くのも複雑なことになりそうであります。そういうこともございまして、本日はこれら4つの論点についてご議論をいただき、何とか取りまとめの方向を目指したいと思っております。

そういうことで申し上げますと、やや余計な発言かもしれませんけれども、今日ということである必要はありませんが、今後の取りまとめを意識したご発言なりご議論をしていただけると事務局は大変助かるということであろうかと思います。

ちょっと余計なことを申しましたが、まずスライド1ページ目にあります決算短信と四半期決算短信につきまして、先ほどの事務局からのご説明を踏まえて皆様方からご意見をいただければと思います。どなたからでもお願いします。それでは大崎委員、それから石原委員。大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。

2点ほど申し上げたいと思うのですが、基本的には私、ここの1ページに書いていただいているような事務局としてお考えの方向性で大変結構なのではないかと思っております。2点ほどそれに関連して申し上げたいと思うのですが、1つは、この連結財務諸表を決算短信及び四半期決算短信のときにどう扱うかということについて、四半期決算短信については四半期連結財務諸表でありますが、ここで適時開示ルールなども踏まえ、投資者の投資判断を誤らせるおそれがない場合には、決算短信の開示時点で開示しなくてもいいとするという、これは前回東京証券取引所からお話があった考え方をここへ書いていただいていると理解しておりまして、私はそれに基本的に賛成でありますが、今、非常に取引の自動化、電子化というものも進んでおりまして、デジタルデータがちょっと出ると、それに反応して売るの、買うのということが自動的にだだだっと行われるという、これはマーケットの現実ということもございますので、短絡的反応が間違った方向に向かった場合は、やはりそれを分析する人が出てきて、その分析された結果に基づく方向で違った売買をすることで価格が是正されるというのがあるわけでして、例えば予想よりも減益だという場合であっても、財務諸表を見れば、その理由が十分納得できるというようなことは日常よくあるわけでありまして、そういうときには必ず財務諸表をきちんと出すということが、ここで意味されていることだと思うんですね。その辺を、制度としてはこういうふうにつくった上で、取引所としてきっちり徹底していただくというか、それが非常に重要ではないかと思います。

それから、もう1つは、何名かの委員の方から出されているご意見を拝見しまして、四半期決算短信と四半期報告書の一本化というようなことが出ていないのではないかというご指摘、あるいはそうすべきではないかというご指摘が幾つか出ておるようなのですけれども、そこで、四半期報告書というのも、これも速報なんだというようなご意見があるようでございますが、私の理解では、四半期報告書というのは必ずしも速報性というよりは、年間の業績の中間報告というんですか、経過報告ということであろうと思っておりまして、速報性はやはり四半期決算短信のほうに求めるというのが筋ではないかと思いまして、その性格の違いということを踏まえて考えますと、四半期決算短信をなくしてしまえばいいというのは、やや乱暴な議論なのかなと。また、他方で、例えば四半期報告書制度をなくしてしまうということになりますと、これは著しい開示の後退というふうに見られても仕方がないと思いますので、強引に一本化するというのは慎重に考えるべきではないかと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、石原委員、お願いします。

【石原委員】

決算短信の件ですが、今の大崎委員の意見に近いかなと思います。決算短信は、そもそも法定開示ということではありませんので、決算発表や投資家との対話という観点、対話の目的を踏まえれば、速報性、任意性、これを徹底的に追究する形で見なおしていくべきであろうと思います。

実際に決算発表の場においても、決算短信はもちろん配りますけれども、決算短信という定まったフォーマット以外の資料を使って説明するケースも、当社も含めて非常に多いということで、全ての業種、会社を一律のフォーマットでくくるのはやはり非常にわかりにくいと思います。必要最小限のものをフォーマット化して、それ以外はできるだけ任意にする、それによって業種、業態に応じた分かりやすい開示が可能になる。これが決算発表をやりやすくさせますし、マスコミの皆様、あるいは投資家の皆様にもよりわかりやすい開示になり、建設的な対話に資するということであります。

したがって、決算短信の中で何が強制される最低限のものなのか、何が任意なのかということについては、今回、徹底的に明確にしていただければと思うところでございます。

一方、四半期報告書のほうは、法定開示書類ですので、監査法人のレビューを経た財務諸表の確報という位置づけです。その点を担保する中で、定性的情報等で簡素化の余地があるならば、これは見なおしていけばよいということでありまして、四半期決算短信と無理に一本化する必要は全くないと考えております。

いずれにしましても、今回の検討において重要なことは、取引所の規則、会社法、金融商品取引法、それぞれの目的、役割、そして開示書類はいつ、どういう形で使われるのかという実態を踏まえた議論を行うということだと思います。概念的な議論には実務やマーケットはついていけないということであります。

そういった観点から、熊谷委員からもご意見が別途出ておりますが、決算短信に連結財務諸表は必要なのかどうかという点に関してです。もちろん決算短信の時点で連結財務諸表はあるにこしたことはないということでありますが、その段階では監査法人のレビューを受けていないのですから、これを強制することはいかがかと考えます。

しかしながら、できるだけ任意の形でそれを補完するような情報が提供されることが必要というのはよくわかります。おそらくアナリストの皆さんがカバーされている会社は、上場会社の中で、MAX700社ぐらいかと思いますが、この700社ぐらいの会社、あるいはマスコミ等で取り上げられるような会社については、たとえ任意になったとしても連結財務諸表は開示し続けるのではないのかなと、これはあくまで予想にすぎませんけれども、それが投資家からの評価、あるいは社会からの評価を受けるということですから、強制ではなくてもおのずとそうするだろうと思われます。

一方で、アナリストにカバーされていない会社につきましては、10日ほど遅れたところで四半期報告書が出てくれば、そこで連結財務諸表が開示されるわけですから、実際のところ、コストとベネフィットの観点から選択の余地を持っていければいいであろうと、そのように考えます。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。

基本的に今の大崎委員、石原委員の考え方と、私のほうは全く同じでございまして、決算短信の問題も、今回の話全体に通底する話ではございますけれども、この制度のすみ分けというものを大事にすべきであると。それぞれの制度について、それぞれの意義があって、現在、ある意味でそれらが制度的に均衡状態にあると理解しておりますので、無理な一本化をすべきではなくて、それぞれの制度の、本来目指していたところを中心に開示制度の合理化を進めるべきであると思っております。

その意味では、今回、事務局のほうでお書きいただいた内容に私としては全面的に賛成でございます。とりわけ、この決算短信、四半期決算短信のスリム化というところで言いますと、丸の後の最初のポチのところの第1パラグラフに書いてございますけれども、義務的記載事項、それから記載を要請する事項を可能な限り減らすということは非常に大事かなと思っております。我が国の企業は非常に真面目でございまして、要請されていると、半ば義務のようにも考えるという傾向もございますので、あくまで任意の開示ということで整理して、それを超えて積極的に開示をする会社さんは、それはマーケットで高く評価されることになるでしょうし、他方、もうあくまで任意ということであって、コストベネフィットの関係でそこまで踏み込めないという 会社さんは、それは開示を行わないということで全く構わないという旨を明示するのがよいのではないかと思っております。

それから、その下の、「適時開示ルールなども踏まえて、投資判断を誤らせるおそれがない場合には、連結財務諸表の開示を行わなくてもよいこととする」という部分も、私は大いに賛成でございます。これもある意味で適時開示ルールとのすみ分けということであろうと思っておりまして、適時開示が必要な状況になれば、当然、適時開示を行わなければいけないわけで、それと決算短信の制度とは別物でございますから、投資判断を誤らせるおそれがない場合には、決算短信時点では必ずしも連結財務諸表の開示を行わなくてもよいということで何ら問題ないのではないかと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、小畑委員、日置室長、熊谷委員の順で、小畑委員、どうぞ。

【小畑委員】

ありがとうございます。

3点ほど申し上げたいと思います。1つは、四半期については、なかなか一足飛びにはいかないということはよく承知しておりますけれども、今後ともできるだけシンプルにしていく方向で検討課題として挙げていただければと思っております。

2点目ですが、決算短信・四半期決算短信について監査及び四半期レビューは不要であることを明確化することは非常に結構なことだと思っておりますが、決算短信で求められている監査手続の実施状況に関する表示は、東京証券取引所で廃止されると理解しておりますのでよろしくお願いいたします。

3点目でありますが、先ほど、太田先生からもご意見がございましたけれども、義務的な記載及び記載を要する事項に関して、記載を要請されると企業は基本的には義務だと思って対応しておりますので、その点からすれば、義務なのか任意なのかどちらかに整理していただけるよう検討していただければと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

日置さん、どうぞ。

【日置企業会計室長】

本日ですが、我々からは、この取りまとめに向けた議論を深めていくという観点から、資料を提供させていただいています。例えば1年前に対話研究会というものを行っておりました。こちら、神田座長にもご参画いただきながら、法務省さん、金融庁さん、東京証券取引所さんも一緒に議論してきたわけでございますが、その研究会の議論の状況であったり、また、同友会の意見、あと、ACGAというアジアを中心に投資をしている欧米を含めた機関投資家の意見、そして、投資家フォーラムという投資家有志からなる意見といったものも、参考までに資料を配付させていただきました。本日は、こちらの資料の中から、適宜、事実関係などをご紹介できればと思っております。

まず1つ目の論点、決算短信と四半期開示に関してでございます。まず、ファクツ としてお示ししたいと思いますのが、国際的に見た場合に、欧米ではアーニングリリースというものがあり、こちらを見ますと、必ずしも決まった様式はなく、開示の内容やその分量は企業の裁量に任されているといった点でしてこちらは対話研究会の中でも確認しているところでございます。こちらがファクツとして1点目でございます。

もう1点、四半期の開示に関してでございますが、こちら、経営サイドの意見ということで、同友会の意見をご紹介させていただければと思います。まず、四半期情報開示に関しては、短期業績の重視を助長しているのではないかといった見方があるといったことにも触れつつ、この一本化及び簡素化について提言がなされています。具体的には、四半期報告書と四半期決算短信については、内容、時期が重複しているので、四半期報告書を廃止し、決算短信に一本化した上でさらにその内容を簡素化すべきである、といった意見が提示されています。

あと、もう1点、投資家サイド、投資家フォーラムの意見でございますが、こちらは四半期開示に関しての意見はさまざまであるところ、業績予想に関してはショート・ターミズムを助長するという観点からも不要なのではないかとの意見が取りまとめられています。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、熊谷委員、お願いいたします。

【熊谷委員】

ありがとうございます。

前回、決算短信の簡素化に関しましては利用者である投資家、特にアナリストあるいは機関投資家の実務に影響を与えるので、その意見を十分踏まえた上で簡素化の検討を行ってほしいという意見を述べさせていただきました。

今回、追加で、先ほど石原委員からもございましたけれども、非監査であるということを明示しまして、財務諸表をつけてはどうかというような意見を提出させていただいております。やはり上場企業、特に投資家の関心の高い会社につきましては、連結財務諸表が一そろいのものという形で決算短信に添付され、開示された時点でそろっているということが今の実務の前提になっておりますので、やはりそのあたりはぜひご理解いただきたいということが1点です。

あともう一点、先ほど、日置室長のほうから、欧米でアーニングリリースは任意のフォーマットで行われているというご指摘がございました。これはそのとおりだと思います。ただ、この大前提としてございますのが、やはり海外、諸外国におきましては、有価証券報告書の開示のタイミングが我が国よりも相当早いということが前提になっておると思います。アーニングリリースの後、ほどなく、日本で言えば有価証券報告書レベルでありますけれども、それ以上と言ってもいいぐらいのインフォーマティブな情報が開示されるということが前提になって、非常に軽い開示で済んでいる。しかるに、日本の場合には有価証券報告書の開示・提出期限というのが、大体、今、株主総会の後で、決算期末から平均すると80日以上ということになっております。こういう状況を考えますと、今の実務が定着してきているのだろうと思います。

ですから、簡素化に反対ということではなくて、むしろ私自身の考えを改めて申しますと、やはり有価証券報告書の提出をより早く行えるような体制、絶対値としてのタイミング、株主総会を起点とした場合の相対値としてのタイミングの議論もあろうかと思うのですけれども、どういう形にすれば有価証券報告書の早期提出、株主総会前開示が可能になっていくのか。報告書の中では、会社法の開示等も含めまして、総合的に議論していただいて、その上でやはり企業と投資家の建設的な対話を促進するための環境整備というような方向でまとめていただけたらと思います。

開示の簡素化とか合理化そのものが目的ではなくて、企業と投資家の建設的な対話、これを促進するための開示制度確立に向けてどういう見直しが必要なのかという視点をやはり報告書の中では入れていただきたいというふうに考えている次第です。

どうもありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

逆瀬委員、どうぞ。

【逆瀬委員】

前回も申し上げましたけれども、四半期決算短信と四半期報告書の関係、四半期開示の統合がならないような様相になっているのは、極めて残念、これがまず素直な印象であります。

それから、資料の1ページですけれども、財務情報は決算短信開示時点で行わず、一定の要件のもとで判断を誤らせなければ、後で開示することを認めるとあります。それで、そういう場合、決算短信発表時点では財務情報が抜けているから、その後で開示する財務情報にかえて任意の形で必要とする財務情報が提供されることが必要ということですから、財務情報ないしここで、この資料上で言っている連結財務情報といった類いの数値情報を必ず出すのであるということです。2回ということです。1回目で任意の形で何を開示するのかというような判断も迫られるわけです。そこがはっきりしないと思います。

1回目のところで任意の形だけれども、任意の形と言っているのは、中身が任意という意味であって、開示はしろと言っているわけですから、改めてその情報については現在の決算短信開示実務でやっているようなものでいいのかどうかという話はここでは書いてないわけです。それは現行の実務と同じなのか違うものなのかということがよくわからないままになっているというのが1点。

ちょっと長く言いましたが、もう1点は簡単です。あまりこの速報性にこだわるあまり、現在行われている決算短信開示のタイミングや、あるいは先ほど熊谷さんのご発言でちょっと出ていました、法定開示のタイミングを早くするといった話につながらないよう、ここはあえて申し上げて念押しをしておきたいと思います。

後から出てくる、総会の7月開催に言われる話は、あくまでもベースは企業の判断であって、オプションにすぎないわけですから、押しなべて一般的に決算短信のタイミングなり法定開示のタイミングを前に持ってくるべきだというところまで筆が走らないように、先ほど座長からお話があったように、報告書を取りまとめるのに参考となるものであればしゃべってもいいというお許しが出ていますから、あえて申し上げました。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございます。ご意見は存分に言っていただければと思います。

静委員、どうぞ。

【静委員】

決算短信の件なので一言申し上げたいと思います。まず最初に、今日もそうなんですけれども、これまでもたびたび、このディスクロージャーワーキングでもご指摘があったとおり、それぞれ開示書類にはほかをもってはかえられない役割というのもあるということだと私は思っていますので、それに目をつぶって1つにしろというのは少々乱暴過ぎると、大崎さんもおっしゃっていましたけれども、私もそういう感想を持っております。もちろん、重複している項目ですとか、過不足感がある項目というのは、これは皆さんご指摘のとおりあるわけなので、それぞれの役割に従って最適化するということでよろしいんじゃないかという意味合いで申し上げますと、1ページにお書きいただいているような範囲での整理が基本的にはよろしいんじゃないかと思っております。

なお、監査やレビューについてですけれども、その完了前に決算短信を出してもらいたいということにつきまして、実は昭和49年ぐらいから、監査完了前の決算発表をお願いしますという形で取引所ではずっと要請をしてきております。要請は強制だとおっしゃる方もいましたけれども、そんなに効いていませんで、今でも同じ日に出している会社というのはいっぱいあるというのが現実でございます。今回、これにあわせまして、その完了の必要はないということを改めて明確化して周知をしたいと考えております。

一方で、主に、先ほどからちょっと出ていますけれども、会計士サイドの方の声として、早く監査を終えてもらいたい、あるいはレビューを終えてもらいたい、つまり、決算発表までに終えてもらいたいという上場会社の声があって、そのせいで十分な監査時間がとれないという声がありまして、それについては、関根委員からも今回、資料が出ていると思いますけれども、監査時間が足りないのに監査を終えているというのは多分ないんだろうと思います。そんなことがあったら本末転倒の過剰サービスであり、逆瀬さんのペーパーにもあるように、大問題だということなのだろうと思います。

したがいまして、これを機に今回、あえてもう決算発表までに完了する必要がないということの明確化をさらにやるということでございますので、決算発表のせいで監査時間が取れないといったような言い訳は今後は通用しないということを、金融庁さんでも結構ですし、日本公認会計士協会でも結構ですので、明確にしていただければなというのが2つ目でございます。

それから、3点目でございますけれども、先般、決算短信の見直し欄をごらんいただきまして、皆さんにもご紹介を差し上げました。その後、いろいろな方からいろいろなことを言われたのですけれども、あまり簡素化をやり過ぎるのだったら迅速化はしなくてもいいよという声がたくさん寄せられております。現実の問題として少なからず寄せられております。今回、金融庁さんの資料の中では、そういう場合には財務諸表にかわる任意の形の財務諸表の提供でもいいじゃないか、それが何かわからないという逆瀬さんのご指摘もありましたけれども、そんなことが提案されております。

そんな場合、どういう情報を提供すべきなのかということは、このワーキングの中で決めればいいのか、あるいは我々で詰めていけということなのかちょっとわかりませんけれども、いずれにせよ、利用者も含めて関係者の声を聞いて詰めていかなければいけないなという感を強くしたということでございます。

最後に、小畑さんのほうから出ている意見書をちょっと拝見しまして、サマリー情報だけにしてくれというような声があるというようなこともわかりました。これも経済界の方が多いと思うのですけれども、ただ、大崎さんもご指摘のように、サマリー情報だけを見せるというのは何を意味するかというと、売上と利益の数値のようなわずかな結果だけ見て価格を形成させるということですので、財務的な分析すらできないということは明らかだと思うんですね。これは単純に、短期志向の売買を助長するというおそれが当然あるわけでございます。今、むしろ中長期的な企業価値を高めて、それを評価するというような市場にしようと言っている中で、逆行する効果も極めて高いんじゃないかというふうに思っておりますので、私どもとしてはそんなことはしたくないというふうに思っておりますし、そういうことを取引所が考えているというふうに誤解されるのも困りますので、要請で今は財務諸表を求めていますけれども、これを任意に変えて、要らないと言っているように誤解されることも避けたいというふうに考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

どうぞ、お隣の関根委員。

【関根委員】

ありがとうございます。

私のほうは、前回も決算短信については意見を述べさせていただきましたが、今、会計士という話も出ましたので、確認の意味も含めてお話しさせていただきます。

まず、決算短信が速報という位置づけであることは皆さんご理解いただいていると思うのですが、実務上は、確報に求められるような信頼性まで求めるような形になってしまっています。これを本来に立ち返り、監査が不要であることの明確化をすることには賛成です。したがって、そのような形の方向性が出ましたら、私どもも注意喚起をしていきたいと思っております。

ただ、その際に、今、静委員が発言された後で恐縮ですけれども、サマリー情報と連結財務諸表及び主な注記を公表するとしますと、貸借対照表等の非常に細かい表示まで出るということになり、気になる点があります。そうした場合、一般に、後で変わらないようにと考え、これは今までも繰り返し申し上げているところなのですけれども、監査は不要と言われ、監査報告書は出さなくなったとしても、実質的に監査を求めるような今の慣行が同じように続くことにはならないか、そうだとしたら、意図したところとは違う結果になってしまうのではないかなと思っています。

私自身は、決算短信で開示する情報というのは、基本的にはサマリー情報というのが基本になると考えています。もちろんそれに追加した情報について、この会社にとっては必要だということで、会社の責任で出せるのであればそれはよいと考えております。

ですので、静さんのおっしゃっているのとは、その部分は逆なのかもしれませんが、監査を担っている監査人の立場からすると、そういった意見もあるということをご理解いただき、取りまとめに当たってはそういった双方の意見があったということになるのかもしれませんけれども、少しご配慮いただければと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

総論についてはあまりご異論はないと思うのですね。それを各論に落とすというか、各論にしたときに非常に難しいというんでしょうか、どこまでを法定の制度とし、ということだと思います。おそらく総論というか、見直しに当たってのものの考え方は事務局の資料の言葉で言えば、自由度の向上ということと対話、経済産業省の研究会の言葉で言えば対話促進ということだと思うのですね。それを具体的に理屈でどう整理をして、制度と実務の連携をどうするかということかと思います。おそらく現在の制度は法定開示という制度があって、これは有価証券報告書であり、四半期報告書であるわけですけれども、その前に決算短信という、制度とも言っていいかもしれないのですが、実務というものがあって、今回の自由度の向上・対話促進というのは、簡単に言えば、法定開示について何か期間を変更するということではなくて、それは維持しながら、その手前で行われる実務の部分を投資家と企業が対話を通じて自由度を向上していきましょうと。それに東京証券取引所さんもご協力いただけると、こういう整理だと思うのですね。

根本論を言えば、一本化という形式論でいくと、決算短信のほうを法定開示にすべきという話につながりかねないですよね。これは有価証券報告書がいい例だと思うのですけれども、熊谷委員がおっしゃったように、何で3カ月の期間を保障するのかと、2カ月でいいではないかと。私は古い人間ですので、昭和49年の商法の改正で公認会計士・監査法人の監査が総会前に入り、当時、上場会社は年2回決算していたのですけれども、年1回決算に移ったときに、やはり監査の期間を保障するという意味で3カ月を保障し、有価証券報告書の制度もそれにあわせたという経緯があるのですね。その後の実務の進展等を見れば、3カ月保障しなくても、2カ月で作ってくださいとすることも論理的にはあり得ると思うのですけれども、ちょっとそれは軽々には議論できないと思います。それは将来の課題かもしれませんけれども、法定開示のところはきちんと期間を保障する、きちんと監査を受けて出してくださいということとして、その前に行われる決算短信の部分とそれ以外の部分をあわせて自由度を向上させ、対話促進ということでやってください。そのために、実務が混乱しない方法というものを、――実務が混乱したのでは本末転倒ですので――、これは東京証券取引所さんのご協力を得て、決算短信の改善、それからそれ以外の対話促進ということを工夫してくださいというあたりではないかと思います。非常に難しい、制度そのものにもかかわる話だとは思います。もしよろしければ次の論点に移らせていただきたいと思います。追加でご意見があれば、またお出しいただければと思います。

それでは、次に、2ページ目になります。「事業報告・計算書類と有価証券報告書との関係」につきましてご意見をいただければと思います。どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。いかがでしょうか。日置室長、どうぞ。

【日置企業会計室長】

「事業報告・計算書類と有価証券報告書との関係」ということで発言させていただきます。まず、このワーキング・グループの中でも時折指摘がなされますが、法的な違い・制度的な違いから検討すると、実態としては類似している情報であっても、それぞれ制度は違うので異なる表現になっても仕方がないという話になり、共通化・合理化に向けた歩み寄りがなかなかできないような議論になってしまいがちです。そこで、この対話研究会におきましては、実際の開示実務から分析するとどうなのか、国際比較から見るとどうなのか、といった観点から議論をさせていただいておりました。

その1つのアウトプットとしては、今日お配りさせていただいた資料の中にある、会社法と金融商品取引法の開示の対照表が挙げられます。対話研究会で整理できたのはここまでだったのですが、実際の開示の実例を見ながら、どういうところは類似しているのか、共通化したほうがよりよいのか、というような議論の余地はまだあるのではないかという感じもいたします。

また、この対話研究会におきましては、実際の時間軸との関係の中でのモジュール型開示の方法も提示させていただいております。幾つかの類型がアイデアとして提示されているのですが、そこでは、全体を一本にするという話だけではなく、例えば有価証券報告書のうち投資家が求める一部の情報について切りだした上で、会社法開示と同じタイミングで提供していく、といった開示の仕方もあるのではないかという話が、報告書の中で掲げられているところです。

なお、国際的に見た上での論点としては、2つあろうかと思います。まず1点目でございますが、外形的に見て、日本では複数の類似する書類が時間差で公表されています。それぞれ目的があるから時間差で、ということかもしれませんが、これが特に海外の機関投資家から見れば複雑であると指摘されています。これらの書類を1つにまとめれば、投資家から見てもわかりやすいですし、企業から見ても1回で書類の作成ができるので効率的なのではないか。このような声があるという点を1点目として提示したいと思います。

もう1点でございます。監査についてでございますが、こちらも国際的に見て、同じ会計年度で監査報告が2回ずれて出されているという国は日本以外にありません。日本はちょっと特殊なのかなという感じでございます。こういったことが対話研究会の中でも明らかになったということもあり、日本再興戦略の中でも監査の一元化について触れられていますし、また、同友会意見においても、両法による監査の一元化、と指摘されていると理解しております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。石原委員、お願いします。

【石原委員】

今、経済産業省さんのほうからあったお話について、少し意味合いを確認させていただければと思います。情報は当然、順序立てて作成されてくるということが実務の現実なので、無理に時点をそろえるということは、そのタイミングでできるものだけに限定するということになります。当然、決算短信、それから事業報告・計算書類、それから有価証券報告書、今の制度であれば徐々に情報ができてくるわけです。無理にあわせようとすれば、事業報告を遅らせるということになりますが、それは投資家との建設的な対話に逆行する話だと理解しております。あるいは、有価証券報告書をより簡素化していかなければいけないということになります。それは有価証券報告書にとって必要な情報とは何なのかという議論によって決まってくる話なので、とにかく一本化すればいいということではないと理解をしております。

それから、監査の一元化という議論ですけれども、これも非常に誤解が多い、あるいはいろいろな意見があろうかと思いますが、私、初回に申し上げたとおり、会社法の監査と金融商品取引法の監査は実質的には一体化をしているということでありまして、会社法の監査というのは5月の中旬ぐらいに監査報告書をいただきます。それから、有価証券報告書の作成に移って、金融商品取引法の監査というのが会社によって多少違うかもしれませんが、6月に入ったぐらいのタイミングでおそらく数日間、追加的な監査手続が行われて、金融商品取引法の監査報告書につながっていくということだと理解をしております。もちろん、監査法人サイドに立てば、会社法の監査に対する監査法人内の手続、それから金融商品取引法の監査に関する監査法人内の手続、ここは確かに1回ではなく2回になっていると思いますが、それはよって立つ法律が別なので、監査報告書を2種類つくる必要がある以上はやむを得ない話だと考えます。

一方で企業側の実務といたしましては、これは事実上、実質的に一体化しております。1年間を通じて、今日は金融商品取引法の監査です、明日は会社法の監査ですと、そんなことにはなっていないのは重々承知だと思います。監査というのは、期末の監査だけで成り立つのではなくて、1年間を通じた監査の中で監査意見が形成される筈です。実質的にやっていることが同じにもかかわらず、一元化していないという理屈には全くついていけないところでございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

今の石原委員のご意見に全く賛成でございまして、それでちょっと、先ほどの関根委員のご発言で気になった点に戻ってしまうのですけれども、監査済みでないものだからサマリー情報に絞らなきゃいけないんじゃないか的なご指摘があったように思うのですけれども、監査っていうのはまさに石原委員がおっしゃったとおり、ある意味、通年で行われているものだというふうに思いますので、もう最後の監査証明を出すというための手続はもちろんそれはそれとしてある一定の期間に集中すると理解しておりますが、監査を受けていないからといって、監査を受けた途端にもう、天地が引っくり返るほど違うような数字が出てくるというようなことは、まともな企業であればあり得ないというふうに、私は思うんですね。

その点を踏まえて、やはり監査を受けなくていいということの意味をマーケット全体として理解しないと、逆に、監査を受けていない情報が出て、後で監査を受けると、何か全然違う、桁がずれていますみたいな話になってもおかしくないんだというようなことを前提に議論をすると、非常におかしなことになると思います。

その意味で、私は監査の一元化ということについても、まさに石原委員がおっしゃったことに全く同意でございまして、確かに2本の監査報告書をつくらなければいけないし、そのための監査法人内の手続があるというのは当然だろうと思うのですが、それは会社法と金融商品取引法が一本化でもしない限りは、それは当然、そういうことは続くであろうと思いますし、それを一本化しなければ企業の財務報告というのは効率化できないのか、あるいは投資家と対話できないのかというと、これは全然話が違うような気がしまして、あまり形式的な議論にこだわらずに、実質をどうよくしていくかを考えるべきじゃないかと思います。

【神田座長】

ありがとうございました。

お隣の太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。

まず、事務局から出していただいたこの資料ですが、事業報告・計算書類、それから有価証券報告書との関係でこれに記載されている内容については、私は全面的に賛成致します。この後の話も、先ほどと同じく石原委員と大崎委員におっしゃっていただいたこととほとんど同じなのでございますけれども、事業報告・計算書類と有価証券報告書との間で記載事項がオーバーラップしているものについてはできるだけ共通化をして、全体に合理化をしていくという方向性は、これは適切なものであると考えます。それ自体は何ら問題はない。したがいまして、ここで事務局のほうでお書きいただいた内容それ自体は賛成でございます。

しかしながら、それを超えた、先ほどの監査の一元化の話につきましては、私も石原委員、大崎委員と全く同じ意見でございまして、そもそも論として会社法の監査と金融商品取引法の監査は一体的に行われているのが実情で、上場会社を含む有価証券報告書提出会社について、会社法の監査からはみ出した部分について、プラスアルファで金融商品取引法の監査がなされるというのが実態であろうかと思います。会社法の書類と金融商品取引法の書類とは、それぞれやはり制度的役割は異なるところもございますし、どちらか一方に寄せるのも必ずしも適切とは思われません。例えばこれを金融商品取引法の方に、その方が全体的には情報量が多いのでそちらの方に寄せるということになりますと、先ほど石原委員がおっしゃっていたように、会社法上の事業報告等の開示が後ろ倒しになってしまって問題ですし、逆に、会社法上の事業報告等の方に有価証券報告書の記載内容を全部あわせようとすると、今度は情報量が少なくなってしまうので、やはりこれは具合が悪いということであろうと思います。

したがいまして、監査の一元化ということを過度に強調するのは、私はやはり本末転倒であろうというふうに思っておりまして、共通している部分についてはできるだけそろえて監査等ができるようにするという意味での合理化は十分考えるべきであろうと思いますけれども、それを超えて無理に一元化をするというのは、事業報告・計算書類と有価証券報告書とが各々果たしている役割をかえって損ないかねないものであると思います。そのような次第ですので、監査の一元化という命題の下に強引に両者を一本化するというのは適切じゃないと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

ありがとうございます。

皆様のこれまでのご意見というのは一体化ということに関して反対という意見が強いようなのでありますけれども、実は、こちらの会議に参加する前に、先月、2月22日、23日にロンドンでIFRS諮問会議という会議がございまして、一緒に副議長をしておりますのがHSBCの方なんですけれども、その会議の前日に決算発表があって参加が危ぶまれていました。ちょっとびっくりしましたのが開示書類の公表のタイミングと情報の質と量でした。彼らの年次の年報、アニュアルレポートは、決算期末、昨年12月末から、たしか51日というタイミングで開示されております。どれぐらいの内容のものかと申しますと、実に500ページ。この後ちょっと議論もあるかもしれませんけれども、MD&Aといったような書類をイギリスではストラテジックレポートと言っておりますけれども、これだけでも50ページもあるようなものが開示されておりました。

ただ、イギリスの場合は、今、HSBCは四半期ベースで財務情報の開示をしておりますけれども、四半期は義務づけられていないですとか、あるいは、決算速報といいますか、アーニングリリースといったものも省いた上でそこに一本化されているわけであります。私自身、ちょっと皆さんの意見を伺っていて疑問に思いましたのは、先ほど、神田先生から90日の監査期間というのは法定では必要だと。これはそのとおりだと思うんですけれども、まさに任意といいますか、それまでに出すことは可能なわけでありまして、先ほどの、我が国で会社法と有価証券報告書とを一体化しようとすると有価証券報告書にあわせざるを得ないというご意見も十分わかるのですけれども、諸外国において、たかだか50日程度の日数で500ページもの法定の開示書類が出てくるという現実があるわけであります。そういった意味では、ひょっとすると我が国の開示制度というのが硬直的になっておりまして、諸外国の制度に比べてやや競争力を失ってきているんじゃないかということを危惧いたします。

会社法と金融商品取引法の目的は違うということは全くそのとおりだと思うのですけれども、ただ、金融商品取引法の対象会社である上場会社は少なくとも非上場会社に比べまして、より重い説明責任を負っているのではないかと思います。

少なくとも株主総会前に有価証券報告書に記載されている程度の情報が株主に対して開示されるのは上場企業の責務ではないかと思いますし、そういうレベルの情報を株主総会前に必要としている株主がいること、今、ご紹介いたしましたように、諸外国では株主総会前に我が国の有価証券報告書と同等かそれ以上のレベルの情報開示が行われているということを我々は真摯に受け取るべきじゃないかと考えている次第であります。

どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。関根委員、どうぞ。

【関根委員】

ありがとうございます。

タイミングの議論と関連するので、もう少し後で発言しようかとも思っていましたが、監査の一元化という話を皆さんでずっとご議論いただいているので、少しそちらのほうをお話しさせていただきます。監査の実質的一元化について、監査手続というのはかなり一元化されているのではないかというご指摘がありましたが、それはそのとおりと思っております。実際、計算書類と財務諸表の本表自体は多少の表示の違いはありますけれども、内容は基本的に同じで、利益も同じですので、その部分についての監査の手続というのは、会社法の監査報告書が提出されるときまでに実質的に終わっていなければなりません。したがって、そこでもうかなり一元化されているのではないかというのは、そういう意味では、そのとおりです。

ただし、ここで私の方で一元化と申し上げているのは、そこで一元化されていない部分、財務情報の内容、財務情報でどこを見るかの一元化もありますが、それよりも、タイミングの問題と考えていただければいいと思います。これは、もう少し詳しくは、後でタイミングの議論があるときにお話ししたほうがよろしいかもしれませんが、ご発言いただいた方の中で、タイミングの議論をおっしゃっていた方も既にいらっしゃいますものの、監査手続等の内容の一元化ということもおっしゃっていた方がいらっしゃいますので、後者は二元的に行っているわけではないというご理解をいただければと思います。

それから、また、大崎委員から、私の先ほどの説明に対して、監査済みでないから要約というのはないのではないかというご発言がありましたが、それはおっしゃるとおりと思っています。この点は、前回も説明したので説明を省略してしまったのですけれども、会社によっては、会社の責任で、実質的な監査済みでないものを出していただくというのであれば、それは財務諸表、貸借対照表や損益計算書をかなり詳細なものまで出すということはあり得ると思います。ただ、そういうものを出そうとする場合、貸借対照表の数字の入り繰りとかに後で気がつくといけないから現場の監査人に見てほしいとして、実質的な監査を求める、確報に近いような信頼性を求めるような実務があります。そのため、やはり細かい数字まで公表することを要請してしまうと、実態があまり変わらないのではないかという趣旨で申し上げたものです。

やはりご指摘がありましたように、監査というのは期末前からずっと実施し、大きなところというのは事前に議論をしており、大枠のところが適切につくれるかというのは事前に確認していますので、それにのっとって会社がつくってきた情報、特に利益に関係するようなところというのは、実質的に監査は終わってはいないものの、会社の責任で公表しても、その後公表されたものが大幅に変わってしまうというようなことはあまりないのではないかと思っています。ただ、監査を実施しない速報値として細かい数字を出せば出すほど、確報値において多少変わってしまう可能性は高くなりますので、それでもよいのであればいいのですが、実務上は、やはり公表するほうからすると、変わってしまう可能性がないように、もう少し細かいところまで見てくださいというような話に、ほんとうはそれではいけないのですが、そういったことになるのではないかと懸念しています。ということで、サマリー情報ぐらいのほうが、速報という趣旨から考えても、監査人としても、後で市場を混乱させるようなことがないのではないかと、そういう趣旨で申し上げたものです。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

「事業報告・計算書類と有価証券報告書の関係」について、内容の共通化、合理化と関連して、時期の問題が今、議論されているわけです。時期が異なっていれば内容は異なって当然であるとか、時期が違って提出されるんだから、一本化するのは無理だというような議論もされています。それとの関係で、監査の一元化の話が出ているのですが、私はむしろ監査の一元化の問題のほうが重要な問題といいますか、もし日本の会社法監査が諸外国と比べてかなり短い期間で作成されているのだとすると、出せているんだからしっかりしたものを出しているんだろうという議論ではなくて、ほんとうにそれでいいのかということが出発点になるべき話だと思います。ただ、この場でそれをきちんと議論するだけの能力を私は持っていないのですけれども、もし、会社法の監査期間が短か過ぎるのであれば、会社法の事業報告を出す時期というのは動かせるはずなんですね。それは株主総会の開催日を動かせば動かせるわけです。これでは監査期間が足りないから株主総会の開催時期を遅らせてくださいというふうに言って、開催を遅らせるようにすれば、有価証券報告書と事業報告書を同時に出すこともできる。そうすることはむしろ両者の書類を一元化することに資するように私は思います。監査期間の確保ということの意味をきちんと捉えての議論だと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

次の3つ目のテーマにも関係するところかと思いますけれども、2つ目のテーマもおそらく見直しに際してのものの考え方は1つ目と同じだと思いますね。すなわち、自由度の向上ということと、その結果、投資家と企業との間の対話によって、よりベターなプラクティスを形成していただきたいというのが基本だと思います。それで法制度としてやるべきことというか、やれることは、この資料の2ページ目の下に書いてあります。他方、実務では何を目指すかということですが、記載事項の調整についてはこの資料に書いてあるとおりかと思います。監査の一元化というちょっとわかりにくい言葉ですけれども、これも今、皆様方からご説明がありましたように、抽象的に言えば投資家と企業と監査人が話し合って工夫をするということだと思います。法定の制度との関係では、熊谷委員が繰り返しおっしゃっていますように、有価証券報告書の提出期限の3カ月という期間を短くするというのは論理的にはあり得る話だとは思います。将来の金融審議会の課題としていただければと思います。逆に、黒沼委員がおっしゃるように、会社法のほうを遅らせるということもあり得る選択肢でしょうし、それは現在でも、法制度を変えなくても可能だという黒沼委員のご意見かとは思います。

いずれにせよ、タイミングの問題を含めて、このワーキング・グループの報告書としては、繰り返しになりますけれども、自由度を高めますと。そして、投資家と企業が対話し、ただ、監査人も対話に入らないと動かないと思いますけれども、よりベターなプラクティスを形成しましょうということではないかと思います。

あまりうまく言えませんけれども、3つ目のテーマが関係しますので、3つ目のテーマ、資料の3ページになります。「対話の充実に向けた開示・総会開催日程」でございますけれども、ご意見をいただきたく存じます。石原委員、大崎委員の順で、石原委員からどうぞ。

【石原委員】

3点目の論点について、まず有価証券報告書の開示の前倒しということについてですが、これは熊谷委員からもご指摘はありましたけれども、これについては現在でも総会前の開示というのは可能になっていると理解をしております。したがって、投資家との建設的な対話という観点から、そういう強いニーズがあれば、企業側の事前開示というのは進んでくるはずだと考えるのが基本ではないでしょうか。

ですが、その場合、実際に重要なことは、有価証券報告書のどの部分が株主総会、すなわち議決権行使にとって重要なのか、やはりかなり細かい情報が有価証券報告書において追加的に入ってくるわけで、大きな情報というのは既に基本的には開示をされております。大体、株主総会における議案というのは、取締役の選任、配当といったところになってくるわけですから、どの情報がどうかかわってくるのかということだと思います。現在、各機関投資家の皆さんが議決権行使に関する自分たちの判断基準というのを定められているところですが、その中でほんとうに有価証券報告書にしか載っていないような情報をもって、議決権の行使を決めるといったようなことになっているのだろうかということでありまして、どうしても必要な情報があるのであれば、その情報を前倒しに作成して、有価証券報告書という形に縛られることなく開示するような形も考えられるということですし、そういうニーズがほんとうに強ければ、有価証券報告書の開示の前倒しというのは自然と進んでくる筈ということであります。

そのように考えないと、ただ有価証券報告書を早く出せばいいということになれば、リソースをたくさん抱えている会社はまだしも、抱えていない会社にとっては相当に実務的な負担がやはり増えてくるというのが現実で、なかなか納得感が醸成されないだろうと考えます。

それから、第2点目は、監査の一元化というところでありまして、これは先ほど申し上げたとおりということであります。やはり一番重要なことは、黒沼委員のほうからもございましたように、要するに現在の会社法の監査は問題ありなのですかということが起点になろうかということです。現在の会社法監査、5月の中旬に終わる監査意見の形成、これが不十分ということであるならば、そちらの日程を若干遅らせざるを得ない。では、具体的に何が不十分なのでしょうか。1年間を通じてリスクアプローチで臨んできた監査の最終的な意見形成において、もちろんゴールデンウイークという休みの期間を挟むという日本特有の事情もありますので、連休明け早々に監査意見というスケジュールはかなり厳しいというのはわかりますので、営業日を追加的に何日か必要とするといった限界的な議論はあり得るだろうと思います。

しかしながら、それからあと、例えば1カ月間必要だということは信じられない話でありまして、では、その1カ月の間にどういう監査手続を行うのかが全く理解できないという話です。あくまで数日間の話であって、有価証券報告書と事業報告を一体化するという議論とは全く別次元の話であると理解をしております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

大崎委員、日置室長、太田委員、小畑委員の順で、大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。

ちょっと私、自分の全く勝手な都合なのですが、ぼちぼち退席させていただかなきゃいけないもので、大変勝手なのですが、3ページと4ページ両方について、ちょっと言いっぱなしで逃げ出すのもずるいのですけれども、発言させていただければと思います。

3ページの点については、もう皆様からいろいろご指摘いただいているとおりでございますし、それから、ここに書かれているような内容で全く問題ないと私は思っておりまして、1点だけ申し上げたいとすれば、株主総会のあり方についての、一つ、日本特有と言ってもいいと思うのですけれども、大きな問題は、開催日が集中しているということがございまして、7月開催が可能になったからといって、7月何日やらに集中してしまうということになると、何をやっているのかわからないようなことになってしまいますので、誰がどうするというアクションプランは非常に難しいのですが、そうならないように関係者のお知恵を出していただきたいというところを申し上げたいところです。

それから、これは今、議論する範囲とはちょっと離れちゃうのですが、4ページの「事業報告・計算書類等の電子化」について1点だけ、申し上げておきたいと思うのですが、ここに書かれていることに基本的に全く賛成なのでございますが、かつ、今から申し上げることは、会社法の領域に入ってしまうので、多分、金融審議会のワーキング・グループで議論するべきかどうかというのはちょっと疑問もあるのですけれども、私、事前の同意なしに提供可能な書類の範囲を広げるという根本的な方向には賛成なのですが、その広げるときの手続について、こういう点には留意すべきぐらいのことは金融審議会としても言ってもいいのかなと思っておりまして、私が思っておりますのは、一つは定款変更による規定が要るのか要らないのかですね。つまり、定款を変えて全部の書類を電子的に提供するというようなことをするのか、そういう手続は不要とするのか、これが大きなポイントだろうと思うのと、もう一つは、事前の同意なしに電子的に提供した場合に、株主に書面請求権を認めるのかということだと思っております。

私は、個人的には書面の請求権は認めないというのはちょっと乱暴なのではないかと思っておるのですが、ただ、いつまでに請求すればということについて何も規定がないということになりますと、会社としては宙ぶらりんになって危ないので、山のように書類を印刷して積んでおくということになりかねないので、一定の期間内に書面を請求した場合は渡さなければいけないというような制度をつくる必要があるんじゃないかなと思う次第です。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

恐縮ですが、ほかの委員の方々には3ページ目のテーマについてのご発言をお願いします。では、日置室長、どうぞ。

【日置企業会計室長】

ちょっと先ほどの議論に戻ってしまうかもしれませんが、対話研究会での議論の状況について先ほどご紹介させていただきました。その中で監査の一元化も含めてですけれども、先ほど石原委員や大崎委員からもご指摘があった実務の観点は大前提として、対話研究会でも議論がなされていたということを、まずは申し上げておきたいと思います。

その上で、研究会の問題意識といたしまして、他の諸国において書類が2回つくられるとか、監査が2回あるとか、そういうことがない中で、なぜ日本においてそれらが2回あるのか、というものがありました。これは太田委員のおっしゃるとおり、それぞれの書類の要請項目の役割の違いが、ほかの国と比べた著しい違いとの関係でどう考えるべきなのかということでありまして、これを追究することが、今後日本のあるべき姿を検討する上では重要と考えたため、先ほどご紹介させていただいた次第でございます。また、モジュール型開示についてですが、対話研究会の中では法定開示書類を全く一緒にする、ということだけが指摘されているわけではなく、いろいろな形が想定されていると理解しております。この点、まずは申し添えておきたいと思います。

続きまして、総会日程、3つ目の論点についてでございますが、この議論のポイントとしましては、投資家と株主さんとの対話を進めたいと思われる企業が、今申し上げたような諸外国と同様な一般的なプラクティス・対応をとろうと思えば、やはり今の総会日程、決算日から3カ月内に総会を開催するというスケジュールではかなり制約が多いという点が挙げられるかと思います。この点、海外の機関投資家の考え方は明確でございまして、対話研究会に寄せられたACGAの意見をご紹介いたします。

まず、年次株主総会に必要な時間を多く割くために、各企業にイニシアチブの幅を持たせることは望ましいと考えます、とあります。すなわち、各企業に選択の幅を持たせることは大事だということがまず1点目として挙げられます。その上で、ACGAは、基準日をもっと遅く設定することによって、総会が開催される時期を事業年度末後の4カ月超等に拡大することが可能になるといった案を支持していると指摘しています。つまり、対話の期間を設けるために早期に総会を開催しろとは必ずしも言っていないということでございます。また、特筆すべきファクツとして、年次株主総会の開催期限を厳格にしているのは韓国と日本ぐらいではないかという点が挙げられています。アジアの中での比較でございますけれども、シンガポールやタイでは決算日から4カ月、中国や香港、台湾などは決算日から6カ月といった幅の中で株主総会が開催されているわけで、それとの比較において、日本の状況は特筆に値するとされています。以上のような内容が、ACGAからの意見書で指摘されていることを、ご紹介いたします。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、太田委員、小畑委員の順で、太田委員、どうぞ。

【太田委員】

この3ページ目の、「対話の充実に向けた開示・総会開催日程」の点についてですが、事務局でお作りいただいた資料の方向性に、基本的に私は賛成でございます。この問題は、基本的には期末から総会の開催までの期間を長くとることが必要だと考える企業-そういう会社さんは機関投資家の持ち株割合が高い企業が中心になるのかと思いますが-そういう会社さんが7月開催などができるようにするための制度整備を進めるべきという話であると理解をしておりまして、この丸の2つ目に書いてございますように、大株主の状況の記載時点を議決権行使基準日とすることを可能にする等の手当てをすることによって、7月開催についての実務上の制約を外していくというのは望ましいことであると思っております。

一方で、先ほど少し大崎委員からもご指摘がございましたけれども、3月決算の全ての上場企業を7月開催に持っていくべきかというと、必ずしもそれはそういう話ではないと思っておりまして、ここにメリットとデメリット、両方書いていただいておりますけれども、デメリットとしては、この他にも、例えば7月開催にした場合には配当の支払い時期が遅れる場合が出てくるであるとか、会社の実務上のオペレーションとしては夏の非常に蒸し暑い7月とかに総会を開催した場合、出席する個人株主の方の熱中症対策とか、そういうものを含めて考えざるを得なくなる、といったものもあろうかと思います。したがいまして、定時株主総会の7月開催を実施したい企業はそれがきちんとできるようにするという手当てをしておいた上であとは、総会開催時期を6月にするか7月にするかというのは各社の任意で決めればよいという整理になろうかと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

小畑委員、どうぞ。

【小畑委員】

ありがとうございます。

3点ほど指摘いたします。最初の丸の下の、最初のポツでありますけれども、有価証券報告書が事業報告・計算書類と同時期に開示されれば監査手続の効率化につながるという意見があったということでありますが、論理はほんとうは逆だと考えます。監査手続の効率化がなされれば同時期に開示することも可能になるという論理だと思います。時期を早めれば効率化につながるかどうかは非常に疑問で、今までのとおり監査人の皆さんがブラック企業のようにへとへとになりながら監査されている中で、さらに時期を早めれば、もっとひどいことになると思います。むしろここは監査手続きの効率化が先だと思います。

7月開催については、この取りまとめですと、制度的な配慮はするが、7月開催にするか6月開催なのかはあくまでも企業の選択とする趣旨だと思っております。そういうスタンスであれば、この方向で賛成でございます。

このメリット、デメリットを書いていただいておりますが、メリットの3番目、提 供時期をおくらせることが可能となって、その場合には監査時間の確保に資すると書いてありますが、うがった見方をすれば、今、監査時間が足りていないのではないか、今の監査は見切り発車をしているんじゃないかという疑念が生じることになりますので、誤解を受けないような書きぶりにしていただければと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

逆瀬委員、どうぞ。

【逆瀬委員】

3ページのところで質問です。有価証券報告書が事業報告・計算書類等と同時期に開示されれば監査手続の効率化につながるとの意見とありますが、この意味が私にはくみとれません。まず、会社法上は監査役等の監査があります。これは重要な手続として位置付けられているわけでありますけれども、したがって、また金融商品取引法と会社法の法定監査の打ち切り日が一致するということはあり得ないと思います。監査役等の監査における結果を踏まえない限り、ステップが次に行かないわけですから、一致するわけがないのですけれども、一致させるために法律まで変えるのかという議論ではなかろうと思います。

したがって、同時期開示とここにありますけれども、それは監査日程の面では、会社法監査打ち切り日の後ろ倒しと金融商品取引法の監査打ち切り日の前倒しによって近づける、その近接を言っているにすぎないと理解いたしました。

まずその上で、ここで監査手続という表現があるのですけれども、監査基準上の意味合いというふうに捉えますと、議論としては甚だ問題が大きい記載になる。あるいは一般的に監査実務の作業面のことを言っているにすぎないというようなことかもわかりませんが、いずれかはっきりいたしません。私は、そのいずれであっても、効率化につながるという意味は理解できかねるということであります。監査基準上の監査手続という意味であれば、行うべき手続というのは2つの法定監査の打ち切り日が近づこうが離れようが、シュッドビーですから、やるべきことはやるべきなんだという大前提がありますので、効率化という表現はあり得ないはずです。やるべきことは決まっていますから、プラスアルファもマイナスアルファもないと思います。

私としては、期末日と会社法の打ち切り日との間の期間が延びますから、監査の面から見ると、後発事象の範囲が広がって、むしろ手続が増えるわけです。

さらに申せば、JICPAさんがご心配になっている後発事象のみならず、事後判明事実という監査上の言葉もありますけれども、事後判明事実については年1回の単年度報告である会社法開示においては、もともとそぐわないわけです。事後判明事実は未来永劫解決しないままです。金融商品取引法は訂正報告や臨時報告がありますから、継続開示でキャッチアップできる制度開示になっている。会社法はそうなっていないということを付言いたします。

ここは、企業内部統制の構築と運営のレベル、水準にもよるのですけれども、期末監査作業のピークという状況に関しては、私どももよく認識しておりますから、ピークの作業の平準化につながるというのが、事実に着目した的確な表現ではないかと思います。

それから、もう1点は、先ほど小畑さんからもちょっと言及がありましたけれども、メリットのマル3で、「提供時期を遅らせることが可能となり」ということになっているのですけれども、ただ遅らせるわけだから、「遅らせることとなり」ということのほうがよいと思います。

それから、マル3の後段につきましては小畑委員と同じ意見であります。

以上であります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

今、逆瀬委員や小畑委員から問題が指摘されたわけでありますけれども、私自身はこの事務局のご提案に賛成であります。これは必ずしも7月総会開催を義務づけるというわけではなくて、やはり今、6月に集中しているものを分散化させるというのが基本的な考え方でありましょうし、そのために、どういう問題点があって、どういう形で解決させていくかというのは今後の議論かなというふうに思います。その点に関しまして先ほど申し上げ損なったのですけれども、事務局資料の2ページ目に「欧米で見られるような1つの書類での双方の開示をより容易にする観点から」とございます。私自身も先日まで認識が違っておったのですけれども、有価証券報告書によって会社法の書類をほぼ同一にすることによって、ほぼといいますか、全く同一にすることは法律上不可能ではないというふうに、この文章は理解いたしました。

もし仮にそうであるのであるとすれば、やはり全く同じ書類が会社法の書類、あるいは金融商品取引法の書類として出てくるわけでありますから、今、逆瀬さんがご指摘になったような問題もひょっとすると解消できるんじゃないかなというふうに考えます。もちろん、私自身、株主総会の実務の専門家ではございませんので、専門家の方々から見れば、また違う問題点があるのかもしれませんけれども、やはり報告書のレベルでは、7月総会の開催に障害となっているような点を解決していって、株主総会の分散化、7月総会のマンデート化ということではなくて、やはりそこは企業のオプションとして残しつつ、分散開催ができるような形に持っていくというようなことを報告書に書いていただけたらと思います。

ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

この論点はそんなに議論が分かれていないと思いますが。関根委員、どうぞ。

【関根委員】

ありがとうございます。

本日は、この3ページの論点に加え、2ページも若干関係しますけれども、2つ意見を提出させて頂いております。1つは、2月19日に提出した意見について、発言の時間がなかったということで若干補足をした追加意見と確認事項であり、また、本日3月14日の議論に向けての意見です。

1つ目の意見は、2月19日と書かれているほうですけれども、これは内容的には2月19日に席上配付させていただいたものに、本日も若干ご紹介がありましたけれども、こういった意見についていろいろなところでもそのような意見を持っている方がいるということのご紹介をしています。それから、3月14日のほうにつきましては、監査の一元化について意見を述べさせていただいています。この意見につきましては、今までの議論の中でも出ていますので、こちらをご覧いただくことでこの詳細を説明することは避けたいと思います。

ここでは、1点、私自身が以前から気になっていることを述べさせて頂きます。私自身は、監査報告書が2回発行されることについて、会社法と金融商品取引法それぞれ異なる制度があるので、まあ、そういうものなのだというふうに以前は思っていたのですけれども、先程、経済産業省の方からご説明がありましたように、諸外国で工夫して一体化しているという実務を知り、日本は何故、2つのままなのだろうと疑問に思うようになりました。もともとの制度ができたころ、何十年も前は、財務情報も今ほど細かいものではありませんでしたし、連結も入っていなかったので状況は違っていたのかもしれませんけれども、非常に多くの情報を公表する現時点においても、内容もタイミングも異なる2つのものをずっと持ち続けていく努力を続けていくというのが、本当に求められているのだろうか。諸外国で1つにしているという例を見ますと、これはきちんと検討をすべきではないかというのが一番の思いであります。

監査について、今のタイミングでも監査報告書を発行しているのだから、監査の時間が足りないというのは監査をきちんとやっていないことになるのではないかというご指摘もありましたけど、そんなことは決してありません。しかし、制度ができたころ、例えば、会社法、商法の計算書類は単体だけだった時代でしたが、現在は、連結なども入って、非常に忙しく煩雑になっている中で、会社法の計算書類の監査報告書を5月の半ばまでに40日ぐらいで発行し、金融商品取引法の財務諸表の監査報告書を85日ぐらいで公表している、こういった実務を本当に続ける必要があるのかということです。これは監査人だけの問題ではなくて、作成者、利用者として、財務情報としても一元化できないのかというのをきちんと議論をしていただきたいということです。実務上、いろいろな問題があったり、また、監査についてのここの書きぶりなどは逆ではないかといった、そういうご指摘も検討すべきかとは思いますけれども、根本的なところの議論を続けていただきたいと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

なかなか根本的な指摘が出ておりますけれども、黒沼委員、何かありますか。どうぞ。

【黒沼委員】

先ほど発言したのですけれども、あまり理解してもらえなかったようなので、同じようなことになるかもしれませんけれども、もう一度発言します。

この第3点のメリットのマル3について批判が出ています。この点は先ほど私が申したように、本来は監査期間の確保に資するために事業報告・計算書類等の提供時期を遅らせることが望ましいということだと思うんですね。しかし、そういうふうに言うと、現在の監査が十分じゃないんじゃないかという批判が出ることから、ここでは遅らせればさらに一層、監査期間の確保に資することになりますよというふうに書いてあるわけです。それを、今のようなレトリックを使って攻撃するのはおかしな話で、問題の本質を見ていないのではないかという発言を先ほどさせていただきました。関根委員のご意見と近いのではないかと思いますけれども。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

この論点ですけれども、私どもも今回も、と言うとちょっと言い方が悪いかもしれませんが、3ページ目についての報告書の取りまとめの方向というのは、そんなに私は難しいとは思っていませんで、それは表題にあるとおり対話の充実に向けて、ちょっと何とかの一つ覚えで恐縮ですけれども、自由度を向上させるということだと思うのですね。それで、法制度としてやることは一番下に書いてありまして、あとは実務で、繰り返しになって大変恐縮ですけれども、対話を通じて工夫してくださいと。総会の開催時期、監査のやり方、そういうことは非常に複雑で、また言葉の使い方を含めて大変重要なご注意をいただきましたけれども、それはそれぞれの企業が投資家との対話の中でベストな道を探してください、それを応援しましょうと、こういうことだと思うのですね。

それで、法制度の問題としては、確かに関根委員のおっしゃるような、会社法による法定開示、それから金融商品取引法による法定開示、この2つが必要なのかということは論理的にはもちろんあり得る話だとは思いますけれども、少なくともこれまでの整理では、会社法は単体の開示について言えば、単体の財務諸表というか計算書類となりますけれども、それをベースに剰余金分配規制が行われているという、そういう規制の立てつけになっていますし、それでは、金融商品取引法の有価証券報告書制度をやめて会社法に一本化しますかというような話は聞いたことがないと思います。根本論は確かに将来の課題ですし、論理的に考えると、諸外国はどうしているんですか、単体と連結をどう整理するか、剰余金分配規制をどうするのか、それから日本でいう金融商品取引法に当たる法定開示、――四半期がある国とない国とありますけれども――、これをどうするのかというのは、確かに実務の現場からごらんになると、これまで当然のように思ってきたけど不思議に思い始めたということではないかと思います。大変恐縮ですけれども、これは金融審議会と法務省のほうで将来の課題ということにさせていただいて、そういうご指摘があったということはちゃんと議事録にももちろん残りますので、何かうまく書ければ報告書にも一言書いていただくということもあり得るかとは思います。そのあたりは事務局にお任せしたいと思います。

すみません、急ぐようで恐縮ですが、最後に4点目、4ページ目になります。「事業報告・計算書類等の電子化」についてであります。

どなたからでもご意見をいただければと思います。いかがでしょうか。それでは、神作委員、どうぞ。

【神作委員】

ありがとうございます。

「事業報告・計算書類等の電子化」の問題は、最終的には会社法の問題だと思いますが、先ほど大崎委員も言われましたように、事前の同意なく提供できる場合を拡大する、すなわち電子化を促進するという方向性については、これまでのご議論を伺っていても、ほとんど異論はなかったと思います。したがって、そのような方向は報告書でもぜひ打ち出していただきたいと思うのですけれども、その際、ややこれまでの論点と違うポイントがあると思うのは、これまでの議論の中で株主と経営者との対話の充実という観点が非常に強調されていましたが、そこで専ら念頭に置かれているのは、機関投資家であるという点です。

ところが、「事業報告・計算書類等の電子化」の話は、先ほど、会社法の問題に最終的には帰着すると申し上げましたけれども、株主が機関投資家かどうかということは問わず、個人株主もそのルールの射程に入ってくることになります。この会議でもデータが示されたと記憶しておりますが、日本の場合は個人株主の保有比率がわりかし高く、かつ、議決権の行使比率も高いということでした。個人株主が議決権を行使することは、対話以前の問題と申しますか、会社法において株主権が行使されることによって企業価値の向上が実現し得るという基本的な考え方を体現するものでございますから、個人株主の観点というのを決して看過していないというメッセージを発信することが重要だと思います。具体的には、これも大崎委員が言われたことと同じですけれども、手続をどうするかということと、とりわけ書面請求権を認めるかどうかという点が重要なポイントとなり得ると思いますので、そのような論点の指摘は本ワーキング・グループでも行い得るのではないかと考えております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

この部分について事務局からの報告案に書かれていること自体については特に異存がございません。事前の同意なしに電子的に提供可能な書類の範囲を、株主の議決権行使に直接大きく関係しない範囲内において拡大するということは、総会の効率的運営にも資するということでよろしいのではないかと思っております。しかしながら、マル3でご指摘をいただいておりますけれども、やはり、個人株主の存在感が強い日本において、個人の議決権行使率が低下しかねない施策を講じるというのは望ましくない、全般的に今回のワーキングの議論の中では株主との対話ということが強調されているにもかかわらず、個人株主については議決権行使が低下するような方策を実施するというのは、あまり首尾一貫していないと思います。

したがいまして、このような施策を実施する場合の大前提として個人の議決権行使率が低下することのないように必要な手当てをすべきであると思います。少なくとも、いわゆるオプトインではなくてオプトアウト、要するに電子化を望まない株主がそのように敢えて請求しないともう同意したものとみなされてしまうようにする対象から、いわゆる狭義の招集通知、それから株主総会の参考書類は外すべきであると思います。これらは議決権行使にとって極めて重要な対象ですので、あまりオプトアウトの対象にすべきではないのではないかと思っております。

他方において、事業報告の中で出てくるようなルーチン的な事項ですとか、テクニカルな事項といったものについては、可能な範囲で同意なしに電子的に提供可能な書類の範囲を拡大するということはあっていいのではないかと思います。但し、いずれにせよ、日本で金融庁の政策としても貯蓄から投資へということを謳っている中で、個人株主の議決権行使をディスカレッジする方向で制度を変えるというのは基本的には望ましくないと思いますので、電子化については個人株主の議決権行使比率の低下を招かない限度で限定的に進めるという方が望ましいというのが私の意見です。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

日置室長、どうぞ。

【日置企業会計室長】

ありがとうございます。

こちら、招集通知関連書類の電子化に関しては、対話研究会でも議論されましたし、先ほどご紹介いたしました総会プロセスの電子化促進等に関する研究会、こちらでも議論しているところでございます。今回事務局からご提示いただいた資料の中では必ずしも明確には記載はされていないのですけれども、電子化のメリットとしては、時間に限られないと思っております。事務局資料に事業報告・計算書類等の作成、監査の時間の拡大につながるという点が記載されていますが、こちらは、すなわち情報開示の充実といったものにも資するということかと思います。いたずらに時間をかけるという話ではなく、その分、投資家から求められる情報を開示するために時間を使うという、そういう効果も得られるということだと理解をしております。

現に企業サイドからも、電子化することによって、株主に提供したい情報をより提供しやすくなるんじゃないかといった声も聞こえてきております。例えば、書類にリンクを張ることで株主がほかの情報を見つけやすくするとか、どこまでが法定開示の書類なのかという議論は別途あるかと思いますが、いろいろ情報を見つけやすくなるというメリットが電子化の効果として挙げられるかと思います。そういう意味で、電子化は、個人株主との関係で対話の促進につながらない、ということには必ずしもならないと理解しております。むしろ、今は、電子化が進んでないが故にそういった状況が生まれていないのであって、電子化を前提とした制度が普及すれば、それを前提として新たな企業と株主との関係が構築されていく、対話というものが促進されていく、ということになろうかと思います。そして、そういう方向に促していくということが必要なのではないかと理解しております。

そういう意味では、対話研究会でもそうですし、我々、今の研究会でもそうなのですが、開示の質の充実という面で電子化のメリットをさらに引き出すという観点からは、単に書面をPDFで提供するのではなく、データ分析しやすいような形で情報を提供することが重要なのではないかという指摘がなされているところでございます。そういった形で情報が提供されれば、個人株主の方、機関投資家の方を問わず、こういう分析がしたいと思った情報について、情報ベンダーが加工して提供するというような可能性も生まれてくると思います。このように、紙とは異なるメリットというものが生まれてくるという点について、イメージを共有できればと思う次第でございます。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、永沢委員、それから原田委員の順で、永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。

経済産業省から前回に続き、本日も説明をいただきまして、資料のほうも拝読いたしまして、お考えになっている方向性というのはよくわかりましたし、電子提供という言葉がひとり歩きした感はありましたけれども、進めていただいている方向性というのは望ましい方向だと思いました。機関投資家と個人投資家との間の情報格差というのも、個人投資家が自分でいろいろやれることが進むような可能性があるということであるならば格差の是正にもつながる可能性がありますし、それは対話の促進につながるのではないかというふうに私も思いますので、方向性としては全面的に支持したいと思っております。

一方で、神作先生、それから大崎さんも退室前におっしゃっていましたし、太田委員もおっしゃいましたように、やはり個人株主の議決権行使比率が下がらないようにすることが重要で、電子提供によって個人の議決権行使が上がる方向に機能するような施策というのがむしろ必要なのではないかと思っております。

周囲の方に聞いてみましたら、電子提供にはおおむね賛成でありまして、検討時間が長くなるとか、より多くの資料がもらえるということはウエルカムだということでありました。ただ、本日のお話を伺い感じましたことは、欧米のケースが紹介されておりますけれども、アメリカなどですと、間に証券会社が介在して、企業と個人投資家との間のコミュニケーションや議決権行使に関して、それなりの役回りを演じているようです。資料を拝見しますと、個人向けにプロキシーボーティングのサイトを提供しているような会社もあるようで、インフラの部分が相当違うように感じまして、わが国でもそういったものもあわせて体制整備していかないといけないのではと思いました。

情報開示において、経済産業省でのプロジェクトをリードされているような企業というのは、情報開示や株主との対話の点で優等生の企業でありますが、そうではない劣等生企業というのも一方でかなり存在していることも事実でございまして、そういう劣等生企業を底上げして、全体に情報開示が進み、対話が進むというような文化づくりをしていくことがやはり必要かと思いました。金融審議会での審議の領域を超えていることかもしれませんが、経済界や政府にはその点はぜひお願いしたいと思います。

もう1つ、やはり太田先生からご指摘のあったことですが、招集通知と議決権行使については、やはりこれは書面でいただきたいと思います。紙がないとやっぱり人間忘れてしまうだろうと思うのです。そこは一つの、悲しいかな、歯どめかなと思っております。

電子提供には時間がかかると思いますが、率先する企業に模範的な事例を示していただく必要があると思っております。ある意味では特例措置となさってもいいのではないかとも思いまして、先ほど経済産業省からは制度化というお話がありましたが、特例措置でどこかの企業がパイロット的になさって、すばらしい情報開示や株主との対話を実験的に示していただければ、ほかの企業の株主、個人株主も賛同して、そういった企業を支持するということになるのではないかと思います。

長くなりましたが、以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

原田委員、どうぞ。

【原田委員】

永沢委員の発言に重なるところが一部ありますけれども、この4つ目の論点、電子化といいますのは、3つ目の論点にも関係するところでして、株主総会を7月に開催するということで対話の時間が図れるということと同じように、電子化の制度を設けるということによっても、株主総会議案の検討時間をより長く取れるということにつながっていきます。検討時間をとることは重要であります。

今まで電子化に対する認識のばらつきというものが委員の方々の中にあったかと個人的には思っておりますけれども、本日、経済産業省さんのほうからご説明いただきまして、共通の理解というのが大分浸透したのではないかと感じておるところでございます。

4ページの話でいきますと、株主から事前に同意が得られれば電子化可能というのが日本の制度で、これでは現状2.6%の電子化率です。イギリス形式で、ウエブ提供に同意すれば電子化可能ということであれば5%の導入率であると。アメリカは46%の導入率であるというふうに出てきておりましたけれども、これは先ほど永沢委員もおっしゃいましたように、通知は郵送であります。招集通知は郵送であって、その他のところを電子化でやるということなど、ようやく諸外国の電子化の制度と電子化率について簡単ではありますがご説明いただき、日本に電子化の制度を導入するのであればどういう制度が適切なものになるのかと、日本にはこういう制度が合っているんじゃないかという議論がスタートできるところに来たのかなというふうに感じました。

もう1点申し上げたいことは、今日の4ページの事務局説明資料の中には残念ながら入ってきていないところでありますが、前回、大勢の委員の方が賛成というふうにおっしゃったフェア・ディスクロージャー・ルールの導入に関することであります。少しだけ申し上げたいと思います。

このフェア・ディスクロージャー・ルールに関しましても、委員の方々での認識の違いというものが存在したように前回感じました。本日、参考資料として第3回目の2月19日のワーキング・グループの資料をつけていただいておりまして、該当するところは後ろのほうの9ページになるところであります。この中にその他の論点として入ってきておりますので、これは報告書の中でもおそらく残していただけるのではないかと思うところでありますけれども、この論点の中でアナリストの事例が、昨年の処分の話が1つ出てきておりましたので、アナリストについて言及なさっている方々もいらっしゃいましたけれども、アナリストのルールは既にできておるところであります。ですので、ここでいうフェア・ディスクロージャー・ルールというのは、一部の報道機関に対して企業側がどういう態度をとるかというところについての議論が主になろうかと思いますので、そういう点についてまた今後どこかで時間があれば、皆さんの共通の理解を図った上で議論をしていっていただければと思います。

以上になります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

小足委員、どうぞ。

【小足委員】

実務的立場から電子化について、これは今後、いろいろ技術革新とかを使って何か考えられないかという視点で議論していけばいいんだと思うんですけれども、電子化というのは多分、世の中的にはとめられない流れではないかと思っていることと、一方で、各委員がおっしゃるように、個人の議決権行使率の低下とかを招かないようにということで、そこではデジタルデバイドの問題が決定的に出てくる。プリミティブにデジタルデバイドの話をすると、やっぱり最後は紙で見たいというところだと思うんですね。その両方を両立させる手段というのがないのだろうかという話を考えたときに、かなり細かい話になって恐縮ですけど、信書以外であれば、メールで郵便局に送ったものを郵便局が最後、紙にして配達するという手段というのは、多分、信書以外であればだんだん行われつつあるという中で、招集通知とどこまでの範囲が信書で、もしくはそれがどこからは信書ではないというような区分けができるのであれば、最後は紙で渡すけど、出るほうはいわば電子の形でメール等を使うというようなことも可能ではないかなと思います。

もちろん、経済産業省さんの研究会で、サイトを活用するとか、いろいろ工夫はあるのだと思いますけれども、プリミティブに最後、紙であるということと、出すほうの電子化というのは何か両立できないかというのは、かなり技術的な話ですけれども、考慮の余地はあるんじゃないかなという気がします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

すみません、二度目の発言になってしまって申し訳ございません。先ほど、日置室長からのご発言の中で、若干気になった点がございましてコメントさせていただければと思うのですけれども、経済産業省さんがお出しいただいた資料の中で、招集通知の電子化等による株主メリットについて、データが検索しやすくなるですとか、分析がしやすくなるとされている点については、これは別に反対するものでも何でもございません。紙プラスITでこういうことをやれるようにしてあげますということであれば、これは何ら問題がないと思うのですけれども、この問題の本質は、そもそもIT化することによって紙をなくしますということを、一般株主の同意なく強制的にすることがよいかどうかという点でございまして、その面では、IT化によるメリットということと他方で考慮しなければならないのは、やはり書面が来なくなることによるデメリットでございまして、恐縮ながら経済産業省さんの資料の中ではその点についての分析が十分なされていないのではないかと感じております。

要は、平成12年に制定されましたIT署名一括法でも、基本的な法の枠組みというのは、電子化する場合にはデジタルデバイドの問題があるので、必ず同意を取得するというのが原則になっているはずで、紙が送られている人について同意なく電子化してしまう、オプトアウトの形にしてしまうというのは、かなり荒っぽい方法なのではないかと思います。私はそこまで一気呵成に制度全体を転換するというよりは、電子化して差し支えない、議決権行使の低下につながらないものについては、それは電子化のみで対応して紙を送らないということも十分合理的だと思いますけれども、それを超える対応については慎重に考えるべきではないかというのが趣旨でございます。したがいまして、IT化に関するメリットを何ら否定するものではないということは、一言述べさせていただければと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

いろいろ多様なご意見をいただきましたけれども、この4つ目については、見直しに際してのものの考え方は、電子化を推進するということが基本だと思います。いろいろな面でメリットがある。そしてプラスして、個人投資家への、シニア層も多いと思いますけれども、丁寧な配慮というのでしょうか。その具体的なあり方はいろいろなアイデアをいただきましたので、そういうご意見を紹介しながら報告書に少し書けるのではないかと思います。

その先は経済産業省の研究会でもさらに検討をしていただきますし、最終的には法務省の所管になる事項が多いと思いますので、法務省のほうでもまたご検討いただけるのではないかと思います。

予定の時間を過ぎてしまっており大変恐縮ですけれども、何とか4つの論点については皆様方からいつものように大変貴重なご指摘をいただきました。それ以外の点、原田委員からは貴重なご指摘をいただきましたけれども、もし内容全体につきましてどうしても言っておきたいという点があればご発言いただければと思います。どうぞ、    石原委員。

【石原委員】

このワーキング・グループのそもそもの目的というのは、企業の持続的な成長、中長期的な企業価値の向上に資する投資家との建設的な対話の観点に立った検討であったということを改めてよく確認する必要があろうかと思っております。建設的な対話というのは、あくまで制度開示だけではなくて、任意開示が当然含まれるということであります。主として事業戦略、財務戦略、市場環境認識、競争力の評価、こういった点に関する任意の開示と、それからワン・オン・ワンといったような特にロングを中心とした投資家とのミーティング、そして、それを定期的に繰り返すIR活動を通じてこそほんとうの意味での価値の創出、持続的な成長につながる対話ができるということであります。

そういう中では、議決権行使というのは極めて限られた時点ということでありますし、極めて限られたテーマについての、極めて限られた手続に過ぎないということになってきます。もちろん株主総会は個人株主との対話の場としての重要性はありますけれども、現実の株主総会の運営においては、多様な関心を持たれている個人株主の皆さんとの十分な対話というのはやはり難しい。したがって、個人株主との対話の機会を別に設けるようなことを企業としてはやっているところです。

さらには、IR活動を通じて価値を生んでいく観点からいえば、監査とか、あるいは実務的な開示様式等の統一、それ自体は全く否定しませんけれども、そういった問題自体は直接的には建設的な対話にはつながってこないということであります。そういった意味で、やはり制度開示に関する3つのルール、これを簡単に一本化できるのなら、それは官庁間で議論していただきたいと思いますけれども、簡単なことではないのは歴史が証明しているわけですから、その中でそれぞれのルールの目的を踏まえながら、ミニマムリクワイアメントの範囲を考えていくことが重要だと思います。なぜなら、制度開示というのは残念ながら建設的な対話の中で果たす役割は決して大きくないというのが現実だからであります。もちろん、参照情報にはなりますが、具体的に制度開示資料を使って投資家に説明する機会というのは殆どないわけです。もちろんこれから統合報告のような任意開示が進んでくれば、それを使うことはあるかもしれませんけれども、今の制度開示はその開示時点であくまでレファレンス的に使われる程度ということでありまして、1年を通じたIR活動における重要性は低いということであります。

したがいまして、3つのルールに基づく制度開示についてはミニマムリクワイアメントとし、企業の自由な任意開示を拡大していくという方向でぜひ取りまとめをしていただきたい。それがほんとうの意味で企業価値の向上に資する対話につながってくると考えております。ぜひその点、ご理解いただきたいと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、予定の時間をちょっと過ぎてしまいましたけれども、本日、皆様方にご議論いただきました内容につきましては、事務局のほうで整理させていただきます。

それで、大変恐縮ですが、今日で終わりというわけにはいきませんで、まだ報告書の案もつくっておりません。大変お忙しいところを恐縮ですけれども、もう一度はお集まりいただかないわけにはいきませんので、またお集まりいただいて、そこで最終的なご意見等をお伺いしたいと思います。

次回、いつお集まりいただくかということなのですけれども、その日程や詳細につきましては、大変恐縮ですけれども、後日、事務局からご連絡をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

それでは、本日は以上で散会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課(内線3665、3802)

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