金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第5回) 議事録

  • 1.日時:

    平成28年4月13日(水)15時00分~17時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

それでは、定刻でございますので、ただいまから金融審議会のディスクロージャーワーキング・グループの第5回目の会合を開催させていただきます。皆様方にはいつも大変お忙しいところ、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。

早速ですけれども、議事に移らせていただきます。お手許の議事次第にございますように、本日はこれまでのご議論を取りまとめた報告の案につきまして、皆様方にこのワーキング・グループとしての取りまとめをお願いしたいと存じます。

それでは、まず事務局から資料のご説明をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

それでは、お手元にご用意させていただきましたディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)につきましてご説明をさせていただきます。

1ページおめくりいただきますと「はじめに」から始まり、2ページ目の「建設的な対話の促進に向けた開示のあり方」、それから13ページ目の「非財務情報の開示の充実」、14ページ目「その他」、最終ページの「おわりに」ということで、全体として5部構成になっております。構成の中身に沿いまして順次ご説明をさせていただきたいと思います。

まず、1ページ目の「はじめに」でございますけれども、本ワーキング・グループの議論の経緯についてご説明をさせていただいておりまして、企業の経営環境の変化や株主構成の変化、こういったものを踏まえて建設的な対話を促進していく必要があるということでございます。この中で、企業情報の開示は対話の基盤となるものですので、今回、開示のあり方についてご議論をいただいたということでございます。問題意識といたしましては、開示の内容につきまして投資者が必要とする情報が全体として、より適時に、かつ、より効果的・効率的に提供できるようにする、企業の経営方針・経営戦略などの記載を拡充する、また、開示の日程や手続につきましては、情報提供の早期化や適切な株主総会日程の設定などにより、総会の議案の検討や対話をさらに充実させることができるようにする、総会招集通知関連書類の電子化を進めていく、といったご意見がございまして、そういった問題意識に従いましてご議論をいただいたということでございます。

2ページ目以降は、具体的な内容でございまして、II「建設的な対話の促進に向けた開示のあり方」ということでございますが、基本的な考え方といたしまして、建設的な対話のためには、株主・投資者の必要とする企業情報が全体として、適時に、効果的・効率的に開示されることが必要であるということでございます。我が国の開示制度につきましては3つの制度がございまして、年度の実務ということですと、事業年度末後の早い時期に取引所規則に基づいてまず決算短信が提出され、その後、株主総会の3週間程度前に会社法に基づく事業報告・計算書類が提供されまして、株主総会後に金融商品取引法に基づく有価証券報告書が開示されています。そのほか、任意の開示にも取り組んでいるというのが一般的な慣行でございます。

一方、欧米諸国の年度の制度開示を見ますと、米国におきましては早い時期に自由な様式で作成したアーニングリリースが公表され、その後、株主総会まで十分な期間をおいて証券法に基づく詳細な年次報告書が開示され、これを元に株主総会資料が提供されています。また、欧州(イギリス、フランス、ドイツ)の例を見ますと、同様にアーニングリリースが公表された上で、会社法に基づく株主総会資料と証券法に基づく年次報告書が事実上、1つの書類として作成される慣行がございます。

このような欧米の状況も踏まえまして、建設的な対話を促進するという観点から、機関投資家の方などからは、株主総会前に有価証券報告書を開示すべきであるとか、招集通知等の発送から株主総会までの期間をできるだけ確保すべきである、例えば総会の開催日を7月に遅らせるといったご意見を頂戴したところでございます。上場会社の皆様からは、株主総会におきましては役員の選解任や経営計画の賛否などが決定されますので、決算期末から株主総会までの期間が長くなりますと、企業の意思決定に遅れを生じさせる懸念があるということ、また、対話というのは株主総会のみならず年間を通じて行うべきものであるというようなご意見、それから決算短信や四半期報告書、四半期決算短信などについて重複排除などのご指摘を頂戴したところでございます。

こういったご意見をいろいろといただいた結果として、3ページの下にあるような考え方ではないかと思うのですが、1つ目のポツとしては、制度開示の開示内容について整理・共通化・合理化して自由度を高める。その結果、例えば我が国におきましても欧米に見られるような有価証券報告書と株主総会資料の共通の内容での、あるいは一体的な書類としての開示など、投資者にとってよりわかりやすく、効果的・効率的な開示が実施できる。また、例えば株主総会資料が株主総会までに十分な期間をおいて開示されるなど、対話に資する情報がより適時に開示されると。こういった方向で現在の開示制度を見直していくことが必要であるということではなかったかと思います。

また、これらの取り組みにあわせまして、対話に資する開示内容の充実が必要ということかと思います。このような取り組みの結果といたしまして、実際の実務が建設的な対話を促進する方向で見直され、我が国におきましても、先ほど例示させていただいたような一体的な書類あるいは共通の内容で効果的・効率的に情報が提供されるような実務が増えていくというようなことに向けて、関係者において継続的な取り組みを行っていくことが望まれるということかと考えております。

具体的な内容につきましては、その後、4ページ以降に開示内容の整理・共通化・合理化と書かせていただいておりますが、さらに具体的には5ページ以降に詳細を書かせていただいております。

まず、5ページの決算短信、四半期決算短信でございますけれども、ご議論の中で、開示実務において有価証券報告書の開示が比較的遅いということもあり、投資家ニーズに応える形で決算短信の記載事項を増やしてきたということで、速報としての性格に比しまして作成・公表の事務負担が加重となっているのではないかというご指摘があったところでございます。こういったご指摘を踏まえまして、次のような整理・合理化を行うことが適当であるというご議論であったと考えております。

1つ目は、監査及び四半期レビューが不要であることの明確化ということでございまして、決算に関する情報は投資者の投資判断の基礎となる最も重要な会社情報の1つで、上場会社の皆様には決算の内容が定まったときにただちにその内容を開示することをお願いしているわけでございますけれども、決算短信につきましては、約4割の会社が監査後に公表しているというご指摘がございまして、迅速に公表すべき決算の内容が既に定まっているにもかかわらず決算短信が公表されていない場合も多いのではないかとのことでした。また、四半期決算短信につきましては、四半期報告書と四半期決算短信の開示の日程が非常に近いのではないかというご指摘もございまして、四半期レビューによる確認を待っているからではないかと。むしろ待つのではなくて、早期の提出を促すべきではないかというご指摘があったところでございます。このため、決算短信と四半期決算短信による情報開示の意義が速報性にあるということを再度確認させていただきまして、監査・四半期レビューを待って短信の開示を行っている企業につきましては決算の内容が定まった段階での迅速な開示を求めるという観点からも短信公表前に監査や四半期レビューが終了している必要がないことを改めて明確にすべきであると記載させていただいております。

2点目が速報性に着目した記載内容の削減による合理化ということでございまして、速報性という性格に鑑みますと、現在、決算短信に記載しております経営方針につきましては、決算短信に載せるのではなく、有価証券報告書に記載することが適当ということであったかと思います。

3つ目が要請事項の限定等による自由度の向上ということでございますけれども、どういった形で速報性を高めていくのかという中で、記載を要請する事項につきましてはサマリー情報、経営成績・財政状態・今後の見通しの概況、それから連結財務諸表と主な注記に限定をするというようなことをご議論いただいたかと考えております。その他の点につきましては、企業が任意に記載できることとして、義務的な記載事項や記載を要請する事項を可能な限り減らすことで企業の状況に応じた開示を可能とするということであったかと思います。制度上、投資者の判断を誤らせるおそれがないという場合につきましては、決算短信及び四半期決算短信の開示時点では連結財務諸表の開示を行わなくてもよいということを確認しまして、開示可能になった段階で連結財務諸表を開示することを認めるということであったかと思います。

ただ、こうした見直しにつきましては、それぞれの企業の状況に応じた早期の開示を可能とするためでございますので、連結財務諸表の開示を行わない場合であっても任意の形で投資者が必要とする財務情報が提供されるということが期待されると考えております。また、連結財務諸表につきましては、開示が可能になった段階で早期に開示されることが適当だということかと考えております。

2つ目が7ページ、事業報告・計算書類でございますけれども、事業報告・計算書類につきましては、その記載事項の多くが有価証券報告書で提供される投資者の投資判断のための情報と同種の事項となっているということでございます。この記載事項につきましては、経団連において、いわゆる「経団連ひな形」というものを提供しておりまして、この内容が有価証券報告書との間で、同種の記載事項について差異があるのではないかというようなご指摘があったところでございます。また、この事業報告・計算書類と有価証券報告書について、できるだけ記載を共通化できるようにすべきというご指摘もあったところでございます。ご議論の中では、経団連ひな形に即していなくても、会社法上のルールに従っていれば、有価証券報告書の記載事項と同じ記載をするということができる、それから、そういったことを通じて両者を実質的に一体化して作成・開示すること、あるいは、開示時点もあわせれば一体の書類として開示することもより容易になるのではないかということであったかと考えております。また、この点につきましては、企業の間でも必ずしも共有されているわけではないということでございますので、こういったことを各企業の皆様にも周知して、実際にそういうことをされたいという企業の取り組みを行いやすくすることが必要ではないかと考えているところでございます。

それから、7ページ目、一番下からはじまる、有価証券報告書についてでございますけれども、具体的には8ページ以降、有価証券報告書につきましても整理・合理化、対話に資する開示内容の充実を図ることが適当であるということであったかと考えております。1つ目は、先ほどの決算短信と同じ話でございますが、経営方針につきましては、有価証券報告書の方がより記載する書類としてなじむのではないかということ。iiでございますが、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」、いわゆるMD&Aにつきましては、現行の有価証券報告書では「業績等の概要」、「生産、受注及び販売の状況」、それから「MD&A」ということで、歴史的経緯もございまして、3カ所に業績ないし業績の分析について書くような形になっているわけでございますけれども、1ページおめくりいただきまして、現在の開示の状況を見ますと、中身が重複している、あるいは、そもそも「業績等の概要」、「生産、受注及び販売の状況」や、「MD&A」の中では、業績について分析的に記載する、あるいは、実績について特記すべき事項を記載するといった要請があるわけですけれども、なかなかそのような記載になっていないというご指摘もございます。

こういったご指摘も踏まえまして、(ii)の見直しの方向性でございますけれども、重複については合理化を図りつつ、本来、意図されていた開示内容をより充実させることで体系立ったわかりやすい開示を行うことができるようにするということで、これらの3つをMD&Aに統合いたしまして、その中で、下に書いてありますように、セグメント別の経営成績などについて本来の趣旨に沿った記載をする、あるいは経営者の視点に立った分析的な記載を充実させるといことを求めていくべきではないかということであったかと考えております。

それから、10ページ目のiiiですけれども、新株予約権等の記載の合理化についても同様でして、「新株予約権等の状況」「ライツプランの内容」「ストックオプション制度の内容」ということで、買収防衛策や報酬として別の欄に記載する、別の事項として記載をお願いしてきたわけですけれども、現時点におきましては統合した上で、ライツプランやストックオプション制度の内容を記載するという方が合理的に記載できるのではないかということであったかと考えております。

このほか共通化できる項目ということで、マル4でございますけれども、事業報告の「上位10名の株主の状況」と有価証券報告書の「大株主の状況」につきましてもご議論いただきまして、形式株主、実質株主というところはそれぞれの性格に応じた記載ということになるのであろうけれども、発行済株式に係る自己株式の数の点については控除する形で事業報告に合わせることで共通化を図ることが適当であるというご議論であったかと考えております。

それから、10ページ目の一番下、IIIの開示のあり方の中の3で、対話の促進に向けた開示の日程・手続のあり方でございますけれども、具体的には11ページ以降で株主との建設的な対話を促進するという観点から考えますと、株主総会関連の日程の設定というのは非常に重要でございまして、この点につきましては先ほど述べましたように、上から1つ目から3つ目までのポツですが、こういうご意見を頂戴したところでございます。これに対応しまして、4つ目、5つ目のポツですけれども、上場会社におきましては、例えば、株主総会前にできるだけ早い時期に有価証券報告書を開示する、あるいは株主総会議案の十分な検討時間を確保するため、適切な株主総会日程の設定や事業報告・計算書類等の早期提供等を行うといった取り組みを進めることによりまして、建設的な対話を充実させていくことが望まれるということであったかと思います。こういった取り組みを促すという観点からいたしますと、1つ目としては各企業による適切な株主総会日程の設定に関して選択肢が広がるように、例えば3月決算の会社が株主総会を7月に開催する場合に支障となり得る開示書類の記載について適切な手当を行う。それから、12ページ、最初の段落の最後のほうですが、事業報告・計算書類等の電子化を進めるといった点についてご議論いただいきました。

1つ目の、ここで言うと(2)になりますが、株主総会日程の柔軟化のための開示の見直しという点について申し上げますと、3月決算の会社が7月に株主総会を開催する場合には、議決権行使基準日が決算日より遅くなるわけですけれども、その場合には、先ほども出ました、「大株主の状況」、それから「上位10名の株主の状況」と、これらの株主を確定するという事務が追加で生じますので、こういった事務負担が増えないように、制度面での手当をするべきであるというご指摘であったかと思っております。

それから2点目、ここでは(3)ということになりますが、電子化の促進について申し上げますと、株主総会議案の十分な検討期間を確保するなどの取り組みとして、電子化を進めるべきということでございますが、1ページおめくりいただきまして13ページにございますように、メリットが多くある一方で、個人の議決権行使率の低下を招くのではないといったデメリットを懸念するご意見もあったということでございますので、まとめといたしましては、事前の同意なしに電子的に提供可能な書類の範囲を拡大することが望ましいが、デメリットに対しては各企業や株主の状況に応じた配慮が必要と考えられるとさせていただいております。

3つ目のIIIでございますけれども、非財務情報の開示の充実でございます。非財務情報につきましては、先ほどから、申し上げておりますような経営方針、経営戦略、MD&Aのほかにも、ガバナンス、社会・環境に関する情報など、様々な情報があるということですが、いずれにつきましても、最近、関心が高まっているところではないかということであったと思います。現状、法定開示におきましても、発行体の事業や業績に重要な影響を与える場合には、MD&A、事業等のリスクの欄などで記載することにされておりますし、コーポレートガバナンス報告書、CSR報告書、環境報告書と、いろいろな形で開示が進められているということでございますので、今後ともステークホルダーのニーズに応じて企業の創意工夫を生かした開示というものが求められるであろうかと思います。また、こういった開示につきましては、制度開示ということもあるが、まずもって任意開示という形で行うことが望ましいのではないかというご意見であったと考えております。一方で、制度上、開示を求める事項も出てくることが想定されますので、その考え方について整理をするということで、13ページにありますが、制度開示の場合には刑事罰といったものもございますので、14ページの上にありますような5点をもって整理させていただいたということではないかと考えております。

1つ目は、投資判断に真に必要な情報か。2つ目は、市場に浸透した情報として投資者が誤解なく利用できるか。3つ目は、コストの観点。4つ目は、開示を求めることによって開示が萎縮するようなことがないか。5つ目は、他の法律などによって開示を要求されているかということでございます。

それから、企業情報については、先ほど申し上げましたように、いろいろな形で開示が進んでいるわけでございますけれども、海外機関投資家の方々を中心に投資者には複数の開示書類で開示されているものをできるだけわかりやすく、できれば1つで提供してほしいというニーズもございます。こういったニーズに応えられるような創意工夫の発揮というものが重要ではないかというご議論であったかと考えているところでございます。

それから、14ページ目、IV「その他」でございますが、3つの論点がございます。1つ目が単体財務諸表におけるIFRSの任意適用ということでございまして、その中の2つ目の段落ですが、現行の金融商品取引法上、IFRSの任意適用会社であっても、単体財務諸表につきましては日本基準で作成する必要があるところでございます。一部のIFRSの任意適用会社からは事務負担軽減のために、単体の開示あるいは会社法上の計算書類についてもIFRSに準拠して作成することを認めてほしいという要望があるところでございます。一方、この要望に対応する際には、会社法上、配当等に関する財源規制の話や、課税上の取り扱いなど、他の制度においても手当が必要となるということでございますので、まずもってどの程度上場会社の皆様にニーズがあるのかということが重要であろうかと思います。こうした上場会社等のニーズを踏まえながら、検討を始めていくことが重要ではないかと理解をしております。

2つ目が情報の公平・公正な開示についてのルールでございまして、株主・投資者との建設的な対話を充実させていく際に、公平・公正な情報開示ということも重要になってくることかと思います。諸外国におきましては、企業が情報をタイムリーに公表するためのルールとともに、公表前の内部情報を特定の第三者に提供する場合に、当該情報が他の投資者にも同時に提供されることを確保するためのルール、いわゆるフェア・ディスクロージャー・ルールが置かれているということでございますが、我が国におきましてはそういったルールが置かれていないということでございます。

16ページでございますが、こうした状況を踏まえまして、我が国におきましてもフェア・ディスクロージャー・ルールの導入について具体的に検討する必要があるものと考えられるというご議論であったかと理解しております。一方で、フェア・ディスクロージャー・ルールの導入につきましては、企業が情報を提供することに消極的になるのではないか、あるいは報道機関やアナリストによる正当な取材活動が困難になるのではないかというご指摘も頂戴いたしましたので、こうしたご指摘についても十分考慮した上で、内部情報の公平・公正な開示を確保するため、ルールが適用される情報の範囲、例外として特定の第三者への情報開示が許容される場面、違反に対するエンフォースメントの内容等の制度設計のあり方につきまして、諸外国における実務も踏まえた詳細な検討を行っていくことが必要であるとまとめさせていただいているところでございます。

その他の最後、3番目の投資者のリテラシー向上に向けた取り組みでございますけれども、企業が開示した情報というものが投資者による中長期的な視点からの投資判断に活用されるように、投資者のリテラシーの向上を促す取り組みを充実させていく必要があるというご議論であったかと考えております。こうした取り組みといたしましては、1つは「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」におきまして対話のあり方について議論をしていくことが考えられると思いますし、もう1点は、1ページおめくりいただきまして、長期の投資家として期待されています個人投資家に対して十分な投資に関しての教育を一層拡充させていくというようなことが考えられるのではないかという形でまとめさせていただいております。

最後、17ページ目、Vの「おわりに」でございますけれども、本提言の中で、提言の実現に向けまして関係者におきまして作業が速やかに進められることを期待する。それから、本報告書の提言をもって対話の促進に向けた取り組みというのが終わるものではございませんので、関係者における継続的な取り組みが不可欠であるという点について記載をさせていただいているところでございます。

以上、駆け足でございますが、報告書の内容につきましてご説明差し上げました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、今、ご説明いただきました報告書の案につきまして、皆様方からご質問、ご意見、その他のご発言等をいただければと思います。どなたからでも結構でございます。

それでは、川島委員、大崎委員の順でまずお願いします。川島委員、お願いします。

【川島委員】

どうもありがとうございます。

まず、報告書案に記載されている内容に賛成するということを申し上げた上で、非財務情報の開示の充実に一文追加をすることについてご検討をお願いいたします。

この部分は第3回目の会合における議論を踏まえて取りまとめられたものですが、その際に上柳委員がご発言されました社会問題、環境問題、企業のガバナンスについては有価証券報告書の記載事項として義務化する時代になってきたのではないかというご意見がありました。私も大いに共感するものであります。このようなご意見を受けて、報告書の中に、将来に向けての課題認識を盛り込む必要があるのではないかと考えております。ちなみに、昨年の4月に公表されました経済産業省の持続的成長に向けた企業と投資家の対話促進研究会の報告書は、概略、以下のような指摘をしています。投資家が企業の持続的な価値創造能力やガバナンス等を評価する観点から、ESG情報を含む非財務情報の重要性が高まっている。これは世界的な潮流であり、欧米各国における開示充実の動きや統合報告等の国際的な枠組の中でも重視されている、というものでございます。現在、PRIに署名している投資家は1,400を超え、その運用資産は約60兆ドルありますので、世界的に見ればESGについて既に十分な投資家の情報ニーズがあると考えます。また、EUの非財務情報開示指令をはじめ、英国、フランスなどでESG情報の開示の制度化が進んでおります。このような世界的な潮流の中で、日本の対応が大きく遅れをとるようなことがあれば、日本の市場は不透明だという海外投資家の認識につながるなど、日本市場の魅力や競争力にとってマイナスになると考えております。

とはいいましても、これまでの議論の中で、我が国においてESG情報の開示についての経験や知見などの蓄積が不十分であることも事実でありまして、今、ただちに義務化することについては、私も時期尚早であると考えております。そこで、将来に向けた課題認識についてこの報告の中で触れていただきたいというのが私の意見の趣旨でございます。

具体的には13ページ目の下から2つ目の段落にあります、「このような非財務情報については任意開示の形で充実させていくことが考えられる」という文に続けて、以下の1文を追加するというものであります。文案も用意してまいりましたので、読み上げさせていただきます。「あわせてガバナンスや社会、環境に関する情報の開示については、任意開示による今後の開示充実の状況や諸外国における開示拡充の動向を注視しながら、任意開示、制度開示の枠組の整備に向けて、引き続き関係省庁などにおいて検討が進められることが望まれる」というものでございます。

以上、ご検討をお願いいたします。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

ありがとうございます。

私、この報告の内容は非常に今までの議論をうまく取りまとめていただいたなというふうに思っております。ということをまず申し上げまして、ちょっと質問をしたいのですが、今後の対応でございますが、ぱっと見たところ、金融商品取引法の規定そのものを大きく変えなければいけないのはあまりないのかなというような感じがするのですが、その辺、今のところ事務局レベルでどういうご認識でおられて、仮に法律改正までは要らないとすると、例えば内閣府令等を早いタイミングで改正するというようなこともあり得るのかということ。それで、あわせて、例えば取引所における検討が必要となってくるものとかもあるので、それについての日程感も、これはもしあれでしたら取引所の方から教えていただければというのがございます。それから、関係省庁での検討ということが書いてありまして、それはもちろん金融庁も関係省庁の1つと理解しておるのですが、せっかく法務省、経済産業省にもご出席いただいているので、もしそういう検討の具体的な今後のやり方なりスケジュール感について、何か今、聞かせていただけることがあればぜひ教えていただきたいということでございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

【田原企業開示課長】

ありがとうございます。

まずもってはご報告書を取りまとめていただいてからということになるわけですけれども、この報告書を取りまとめていただいた上で、開示事項などについては、各種規則などの見直しということになってまいりますので、当然、実務に配慮しながら検討させていただいて、必要なタイミングで、もちろんできるだけ早くということになりますが、一方で開示を見直すということになりますと、どうしても年単位で考えていかなければいけないことになりますので、そういった影響も考えながら規則改正をしていくということかと思います。

また、検討事項の中には、例えば調査項目などにつきましては、できるだけ早いタイミングで調査を開始して、次なる検討につなげていくということでございますし、実務との関係でいろいろ、今回の研究の趣旨を徹底しなければいけないところにつきましては、実務家の方々と少し話し合いをするような機会を設けたり、あるいは要請があればこういった方々にこういった趣旨とか、新しい実務をやりたいということがあれば、そういう方々をサポートするようなことを少し考えてまいりたいところでございます。

【神田座長】

ありがとうございます。

東京証券取引所からコメントがもしありましたら。

【静委員】

決算短信については、今、実は3月決算が間もなくピークを迎えようとしており、今年の分に間に合わせることはほぼ絶望的になっているわけでございますので、すぐにというわけにはなかなかいかないと思います。先ほど田原さんがお答えになっていたのと同じなのですけれども、報告書がまとまってからになりますけれども、この方向でいいということであればできるだけ早めにやりたいというふうには思っております。

ただ、一方で、周知ですとか、あと、実務への影響の場合なんかも見ながら時期が決まると思うのですけれども、そういう意味で言いますと、遅くとも来年の3月決算には間に合うようにということを念頭に置いて検討を進められるように考えたいと思っております。

【神田座長】

ありがとうございました。

法務省と経済産業省さん、もしご発言があればお願いします。

【竹林参事官】

基本的には先ほど田原課長からご説明いただいたとおりであると思っておりまして、報告書で取りまとめていただいた内容を踏まえながら金融庁等と話し合いをしながら進めさせていただくことになろうかと考えております。特に、12ページの(2)のところでは、おそらく会社法施行規則の見直し等が必要になるのではないかと考えておりますけれども、そちらにつきましても、おそらく金融庁による府令の見直し等との関係もあると思いますので、時期等について協議しながら検討させていただきたいと考えてございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

経済産業省さん、いかがでしょうか。

【日置企業会計室長】

ありがとうございます。

このワーキング・グループの中でも説明させていただきました招集通知関連書類の電子提供については、新しい制度設計を求める方向で、研究会としての提言を取りまとめるべく鋭意調整中でございます。まずはこの取りまとめを議論のたたき台として提示するわけですが、今後、新たな電子提供制度の実現に向けて更なる議論もいろいろ出てくると思います。そういったところを詰めつつ、前に進めていきたいと思うところでございます。

あと、非財務情報の開示に関しましては、極めて重要だと思っております。基本的には我々、長期投資というものが必要だと思っていまして、特に人的投資や無形資産投資をどうやって評価していくのか、投資家による見方はどうなのか、ということに関してはもっと議論を詰めていく必要があると思っており、そういった検討も既に始めているところです。我々の検討の成果については、基本的には任意開示につなげていくことから始めるものとは思っておりますが、どのような形であれ、対話の促進に資するものとなればと思っている次第でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

よろしいでしょうか。では、熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

私の意見は、少数意見であったと自覚しておりますが、報告書全般に財務諸表利用者の視点も取り入れていただいて、いい方向にまとまっているのではないかと思っております。まず最初に、その点について一言感謝申し上げたいと思います。また今の大崎さんのご質問に絡んで、以前、私より関係者、利用者等の意見も十分聞いた上でという意見を述べましたけれども、金融庁において内閣府令を改正する場合、あるいは東京証券取引所においてこの決算短信の制度を見直す場合に、パブリックコメント等を利用して、やはり関係者の意見を吸い上げる努力をしていただけたらと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかに。上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

私も全体として早めの開示を促すという点と、それから、建設的な対話を促進するという観点から賛成したいと思います。ただ、その観点から言いますと、やはり非財務情報のところと、それから、フェア・ディスクロージャー・ルールももう少し強く踏み込んでもよかったのかなというふうに思います。非財務情報の点につきましては、先ほど川島委員のほうから丁寧に説明していただきましたとおりでございますけれども、ただ川島委員ご提案の結論部分についてはもう少し強い修文をご検討いただければと思います。

といいますのも、実際に情報が市場に提供されるかどうかということだけで言いますと、任意開示を促していくという方向でそれはそれなりに実現できるのかとは思いますけれども、制度開示が必要だと思います私のもう1つの理由は、やはり日本の金融当局なり、あるいは行政なり社会が、社会的項目あるいは環境的項目について関心を持っているんだと、そういうシグナルを示すという意味で大変意味があることではないかというふうに考えているところです。

それから、フェア・ディスクロージャー・ルールについては、これは当然のルールだと思います。今日の報告書案でも具体的に検討するというふうに書いてあるものですから、早期に実現できると期待しております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、小畑委員。

【小畑委員】

ありがとうございます。

まず、いろいろな意見が出される中で、ここまでまとめていただいたことに感謝申し上げます。

3ページの注3のところで、下の注意書きで、株主・投資家との対話が株主総会時のみならず年間を通して行うべきものであるということを特記していただいたということは非常に重要なことだと思っておりまして、私ども企業側としては、常に年間を通じた対話というのを心がけてきたところでございまして、そういった実態をよく特記していただいたと感謝申し上げます。

そうした観点からしますと、株主総会に、報告書本文がやや特化したような書きぶりのところもあるわけですけれども、あくまでも株主総会時の対話というのは年間を通じた対話の中のワン・オブ・ゼムであると考えております。もちろんその重要性が高いということは承知しておりますけれども、あくまでも1つであると考えております。そうした観点から、株主総会の時期の設定や、そこへ出される開示書類の統一的な運用などについてはいろいろ企業の工夫ができるように、今回の提言の中でさまざまな選択肢を用意していただいたと受けとめております。その理解が間違いなければということでありますが、そういう理解のもとで今回のこの取りまとめについては、賛成させていただければと思っております。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょう。逆瀬委員、どうぞ。

【逆瀬委員】

ありがとうございます。

本案をいただきまして、気づきとして申し上げたい事項は以下のとおりでございます。まず、基本的考え方ということで3ページに示されております、自由度を向上させること、これが全体を貫く1つのアイデアになっていると思うのでありますが、この点、異論なしであります。自由度を向上させるということによりまして、各企業のニーズに応じた対応が可能となる。この点こそ重要であろうと思います。また、こういう環境が整備された中で、建設的対話の促進に向けた実務が積み上げられるということが期待できると思います。

関連してですけれども、7ページの事業報告・計算書類と有価証券報告書の実質的一体化による開示、あるいは両者の一体の書類としての開示、さらには11ページにあります有価証券報告書開示のタイミングであるとか、総会日程の設定、あるいは事業報告・計算書類の早期提供などに関しましては、企業によって経営方針、株主政策、あるいは外国株主の存在の度合いなど、それぞれ区々であり特徴があるということが事実としてありますので、各企業のニーズに応じた自由度と幅のある選択が可能となることが肝心で、重要なことだろうと思っております。

したがいまして、一方に偏したあり方が全てなのであるというか、それが是であるというようなことを決めつけることが残念ながら科学的にはできないというのは各企業のマーケットに置かれた状況の示すところであろうと思うのです。7月総会が望ましいというようなことが仮にあるような場合は、それを模索するようなことが環境として許されるようなものになるのは、これは否定すべきではありませんから、それはそれで結構であります。しかし、そうはいっても、6月切りで総会をやって重要な意思決定をやって、過去の業績も整理して報告して、年次の報告もまとまってというような感じで1年を終えるというようなことがしみついている日本企業の中で、7月がいいんだとただ言われても、それはやっぱりそうはならないわけですから、その点は幅のある、自由度のある、ニーズに応じた選択を可とするというのが基本的なテーマとして打ち出されるべきだし、この報告書はそうなっていると理解をしておりますので、その点はよろしくお願いしたいと思います。

それから、言わずもがなかもわかりませんが、事業報告・計算書類と有価証券報告書の一体の書類としての開示、これについてはこの文書を作成するに当たって当局において、専門的な見地から十分詰められた上での話ではあろうかと思いますけれども、金融商品取引法と会社法それぞれの会計監査、それから並びに会社法における監査役等の監査、これも対象範囲がどこなのかというのを物理的に一体化しますと、読み手にはまあわからないだろうと思います。それから、財務情報は1本ということになると思いますから、これもどの範囲のものが会社法の話であって、どの範囲のものが金融商品取引法の話のものであるということは、どういうふうに割り切るのか、全部そうなのかと、会社法も金融商品取引法も同じく財務情報は1本だと言い切るのかどうかですね。そういう議論だとか、素朴に考えてわかりにくい、理解しがたいところもあります。

それから、もう1つは、財務報告のタイミングが問題ですね。金融商品取引法の継続開示はこれも皆さんの前で言うまでもない話ですけれども、有価証券報告書が当然ありますけれども、その有価証券報告書に絡んでは訂正報告により、事後的に訂正をするというようなことが仕組みの上で組み込まれた金融商品取引法のシステム、あるいは臨時的な情報も開示させるという臨時報告、こういう仕組みがある制度と、基本的には年1回という形で仕切られている会社法の開示のタイミングという話、これが実務的にはどのように交通整理されていくのであろうかといったようなことも整理すべき事項としてあろうかと思います。

申し上げたのは自明のことなんですけれども、今後、具体化のご検討に当たっては、その点もぜひ実務に混乱を生じないような格好での詰めをお願いしたいと思います。

それから、6ページのところの決算短信に関する自由度の向上のところですね。今ご説明があったわけですけれども、投資者の投資判断を誤らせる恐れがない場合と、それから、投資者が必要とする財務情報を提供することが期待されると、2つの要件が新たに設けられることになろうかと思うのですけれども、この2つの要件の意味が、前回も申し上げたかもわかりませんが、まだ私の理解には至っていないということで、甚だ難しい表現になっておりますので、実務で混乱が起きないような手当をお願いしたいと思います。

年に1回の、一番大事なタイミングでの財務情報の開示ですから、ここのところで実務者が困らないように、発行体が困らないような明確な仕切りができるような、そういう枠組にしていただきたいと思います。これは静さんにお願いであります。

それから、長くなって恐縮ですが、もう2点だけよろしいでしょうか。14ページ、IVの「単体におけるIFRSの任意適用」、大きな話が後段に記載されているところでありますが、私自身は、時期尚早と考えているところでありますけれども、大宗の委員のご意見によって、これがよろしいというのであれば、多少なりともで結構ですから、今少しつけ加えていただきたいという点がございますので申し上げます。

まず、この表現で、IFRSとありますけれども、いわゆるピュアIFRSとして読むべきなのかどうかというのがまずわからない。IFRSと書いてあるんだからピュアに決まっているだろうというふうに読めというのだったらそういうふうに読みますが、説明がない。なぜそういうことを申し上げるかというと、ご案内のとおりですけれども、まずは副次利用の話の前に、会計情報として単体のあり方はどうあるべきかという議論が第一義的に書かれるべきだと思います。例えば、JMISでカーブアウトした項目がありますけれども、これはよく言われる話ですが、それ以外に、単体の場合には、私が思うには、いわゆる子会社、関連会社、あるいはジョイントベンチャーとか、いわゆる関係会社投資勘定の会計処理ですね、これが今のピュアIFRSでは原価法オーケー、持分法オーケー、時価法オーケーということで、三者からの択一になっています。これが日本の単体にそっくり入ってきますと、今は日本は原価法でありますから、取得原価、それから評価損、評価減という事務しかないんですけれども、あろうことか時価評価したり、実価評価で持分法評価する。そうすると、日本の感覚からいくと、単体か連結かよくわからないバランスシート、あるいはPLができるわけです。これを単体と日本で言い得るのかと。長年、営々としてやってきた会社法の分配規制を議論する前に、まずもってバランスシートが連結と同然のようなことになるオプションがIFRSにはあるわけです。これがさま変わりの財務情報をつくりますから、各省庁に検討させるというのが文書のどこかにありましたけど、その前に、会計としてはこういう議論があって、ピュアIFRSに対してどういう修正が必要か、必要でないかというような議論をまずやって、そして、その後に分配規制とか税法の所得の問題等に移らないと、各省庁の皆さんは、ピュアIFRSといってもいろいろあるじゃないかということで、何を狙っているのかよくわからないと言われかねないところもあるかもわかりませんので、そこはひとつ大事なんじゃないかなと思いました。

いまひとつは、単体の議論をするときには、やはりもう五十数年前に出て、1回の修正も行われていない、いわゆる原価計算基準がクローズアップされてくると思います。原価計算基準は、一昔前のものでもありますし、IFRSが原価計算について多くを語っていないことも原因しまして、議論があまりされていなかった。連結の世界ではあまり問題にならないけれども、単体では浮き上がってきます。かつ、それは税務計算のほうにも関係してくるという構図ですので、IFRSと単体という話をつなげる場合には、会計の話プラス原価計算基準との話をまず仕切る必要がある。しかる後、副次利用の話に及んでいただきたいと、こう思いました。

最後、もう1点だけです。長くなって恐縮ですが、IIIの非財務情報、これについてはご意見が本日も出ておりましたけれども、本日の事務局の仕切りの文章は、まことに適当であるというように私は作成者として理解いたしました。米国においても、統合報告は法定開示の中ではまだ言っていないわけですし、ヨーロッパでもそうでもないという中で、日本は、今、非財務情報を深く議論する環境にはなくて、法定開示としてまず会計基準をどうするんだという話が1つあるわけです。4基準の併存のもとで非財務情報の議論を重ねますと、作成者にしてみれば、どういう法定開示なんだということになりますので、まず、会計基準を、今は過渡期的状況と言われているわけですから、これを数年かけておさめるところにおさめるという話をやりもって、非財務情報の話というふうになるのだろうと思います。今は、この報告書案で示された仕切りでいくのがマーケットの情報提供者である発行体の立場からも妥当であるということでございますので、よろしくお願いしたいと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どうぞ、橋本委員。

【橋本委員】

今回の報告案は非常に利用者志向といいますか、従来、他の審議会ではどうしても企業側の意見が多少強めに出やすいと感じできましたが、今回は利用者それも多様なレイヤ、階層の利用者の意見を反映できたと思っております。私はアカデミアに属しておりますけれども、非常にバランス感覚のいい報告書として取りまとめられておりますので、賛意を表したいと思います。

その上で、やはり海外への発信といいますか、最近では外国人投資家も増えてきておりますので、今回のこういった我が国の開示の改善へ向けた取組みが海外へ向けて発信されて、外国の利用者との対話の促進にも資するようにしていただきたいと思います。

また、先ほどのIFRSの件ですけれども、これは私も学界に身を置く者として、そういったいろいろな議論は承知しておりますので、実務界のいろいろな諸問題も踏まえた上で、ぜひこの機会にスタートさせて、先のほうに進んでいければと思っております。

また、特に周辺制度といいますか、金融商品取引法とかそういう本体のほうは多分これでかなり開示の充実へ向かっていくのではないかと思いますが、中にはやはり決算短信数字に依存するような、そういった実務が業種によってはまだかなり残っているのではないかというふうに危惧しておりまして、例えば決算短信の数字と有価証券報告書の数字が100万円単位で違ってもかなり問題を起こすような事例もないとは限りませんので、全体として周辺制度も踏まえた上でこういった方向性が実現するように今後、配意していただければと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

失礼しました、太田委員、どうぞ。

【太田委員】

すみません、遅参してまいりまして大変恐縮でございます。全体についてですが、私のほうも事務局のほうで取りまとめていただいた報告案は非常にバランスに配慮された、適切なものとなっているかと思いますので、全面的に賛同したいと思っております。

また、方向性として、例えば7月総会の話とかも、各社に強制するという話ではなくて、7月総会を可能にすることによって、機関投資家から強い要望があれば、会社がそれに対応する形で総会を7月に開催して、それで事前に有価証券報告書の開示等を含めて十分な対話を行った上で総会を開催する、ということを可能にするための制度整備をするという趣旨であると理解しているのですけれども、その観点からも、バランスのとれた形の報告書になっているのではないかと思っております。

なお、この株主総会の7月開催の問題に関しては、11ページのところでメリット、デメリットを記載しておられますけれども、メリットも多々ある反面、実務においては、私は前回会合でもご指摘させていただきましたけれども、夏の暑いさなかに総会を開催した場合、個人株主の健康面等への配慮の関係でどうなのかといった問題も実務上はございますし、総会に実際出席しますと、オペレーションとして非常に大変なことはご体感をいただけるかと思いますが、そういうあたりの配慮も必要だと思います。また、この報告書案に書かれていないその他のデメリットとしては、配当支払時期が遅くなるという問題がございます。即ち、指名委員会設置会社以外の会社では、定款の変更を経ない限りは総会に配当議案をかける必要があるわけで、そうした場合に、7月開催にしますと、配当の支払い時期が総会後になるということで、現在、6月総会直後に行われているものが、さらに配当支払い時期が遅れるといったような問題も実務上はあるかと思います。従って、これについては各社さんそれぞれ株主構成を見つつ、機関投資家への配慮が必要な会社さん、それから個人株主への配慮が必要な会社さん、それぞれの状況に応じて、6月総会のままでも7月総会でもどちらも会社が選択できるような形で制度整備をされるということがよろしいのではないかと思います。

1点だけ付言させて頂きますと、前回の会合では十分議論されていなかったところかと思いますけれども、今回の報告書の中では、フェア・ディスクロージャー・ルールの導入が触れられておりますが、これは是非導入すべきものと思います。勿論、これについては消極的な意見等も全くないわけではないとは思います。実際、企業が情報を提供することに消極的になるのではないかといった指摘ですとか、報道機関、アナリストによる正当な取材活動が困難になるのではないかといったような指摘もあるようでございます。しかし、現在の我が国の状況、要するに決算の数字が正式な公表の前に新聞等でバーンと出てしまうような状況は、諸外国から見ても、必ずしも望ましい姿とは思えませんし、現状、投資家との対話の中でも、企業さんの実務的な対応としては、インサイダー情報を開示してしまうことのないよう、十分な配慮をしている会社さんが多いと理解していますし、機関投資家の場合でも、逆に、インサイダー情報を聞いてしまうと、これはインサイダー取引規制にかかるということで、冒頭でインサイダー情報は教えてくれるなといったようなことを事前に念押しをした上で対話に臨むというようなプラクティスもあるかと思います。つまり実務上の問題は実務運用の中で相当程度解消していけると思いますので、そういう意味では諸外国にも導入されているディスクロージャールールを我が国でも早急に導入する必要性があろうかと思います。従って、この点の検討についてはぜひスピード感を持って行っていただければと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。失礼しました、原田委員、どうぞ。

【原田委員】

ありがとうございます。

ほかの委員の方々もおっしゃっておられるように、これまでの議論をうまく取りまとめていただいているというふうに感じます。ディスクロージャーワーキング・グループですので、開示のあり方についての部分に大半が割かれているのは当然であろうとは思いますけれども、先ほど、例えば逆瀬委員が「最後のほうに重要なことがさらっと書いてある」というふうにおっしゃいましたけれども、同じように思うところがあります。その他のところの2点目に当たります。情報の公平・公正な開示についてのルールに関するところです。先ほど、上柳委員も「フェア・ディスクロージャー・ルールはもう少し踏み込んで書いてあってもいいんじゃないか」ということをおっしゃっていましたし、太田委員も、このルールについてコメントなさっておられました。ここについて、1ページちょっとにわたって公正な開示についてのルールということで、フェア・ディスクロージャー・ルールについて書かれています。ほかの開示のあり方などにつきましては、最初に“基本的な考え方”について説明がありまして、開示の日程、手続のあり方につきましても最初のところに“考え方”、“あり方”についての前書きがありまして、その他のところは少し短く、考え方についての説明文がないというのが少し気になるところであります。もう少し書き加えていただいてもいいのかなというのが意見になります。

例えば、15ページの一番下には、日本にはルールは置かれていないということが書かれてありまして、その次のページを見ると、従来こういう意見があったという一文があり、「一方で」ということで、近年の事例として行政処分の事案があったということが書かれてあります。この証券会社に対する行政処分の事案というのは、かなり特殊であったというふうに私は理解しているのですけれども、これに過剰に反応している現実というのがどうもあるのではないかというふうに感じております。プレビュー取材などについて自粛するようなところが出てきているというのは、多分、ここで考えていらっしゃるルールのあり方とはちょっと別の話になるのではないかというふうに思いまして、“基本的な考え方”のようなものがここにもあるとわかりやすいのかなというふうに思いました。法人関係情報にしましても、日本では明確になっていないような点があったりしますので、既存の考え方に対してルールのあり方というような、ステップを踏んだ段落のようなものでも構いませんので、あるといいのかなとちょっと思いました。

以上になります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

関根委員、どうぞ。

【関根委員】

ありがとうございます。

私も、皆さんがおっしゃっていますように感じております。本ワーキング・グループは約半年にわたって活発な議論が行われてきました。議論の中では、かなり異なる方向性のものもあり、皆さんそれぞれの立場からおっしゃっている中で、バランスがとれた形で有意義に取りまとめていただいたと考えております。神田座長及び事務局の皆様には大変なご苦労があったかと思いますが、4月まで時間をかけ、よく議論をされたということでよろしかったのではないかと思っております。

私のほうでは、会社法と金融商品取引法の法定開示の一体的開示や基準日の後ろ倒しによる株主総会の開催日の柔軟化、あるいは決算短信の取り扱いなどのテーマについて意見させていただいていましたが、これが今回の取りまとめにおいて、まずはできる環境を整備した上で明確化し、そのような実務についてさらに継続的な取り組みを行っていくということで、この報告書の方向性に賛同いたします。

なお、先ほど、話がありました、できるところから府令や決算短信を修正していくということについて、これもこのワーキングで話した方向性で、例えば私に関係するところですと、監査不要ということが実際に実務で対応できるよう、後押しできるような形で進めていただければと思っております。

その上で、この報告書の理解ということを2点ほど確認させていただきたいと思います。まず1点目は、これは4ページや11ページで、「金融庁、法務省、経団連等の関係者において継続的な取り組みを行っていくことが望まれる」というところです。ここには、まずは対話ということで財務諸表の利用者の方々、もしくは私ども監査人や学識経験者の方々等、情報開示に携わる皆様方が直接言及されていませんが、適宜関係者と話していく必要があると思いますので、「等」の中に全て含まれていると思っております。これが1つ確認です。

それから、今回、報告書ということで一通り見させていただきましたところ、先ほど、最後のほうにいろいろ書かれているという話がありましたが、私も最後のところでひとつ気づいた点があります。投資者のリテラシー向上に向けた取り組みについてですが、これはたしか、以前、3回目ぐらいのときにご説明いただいて、時間が押していたのでご質問もしないまま過ぎてしまったのですけれども、改めて資料を読ませていただいて、確かにこの点、非常に重要だと思っております。と同時に、私ども会計士も会計に携わる者として、会計教育というのも非常に重要だと思っておりまして、投資教育の中に会計のことも入ってくるのではないかと考えると共に、こういう教育の重要性というのを非常に感じた次第でございます。

以上、この2点になりますが、今後の検討に向けた期待ということで最後に申し上げます。本ワーキングでは、先ほど話題になりました非財務情報の開示の充実なども含めて、幅広い議論が行われてきましたけれども、ここでの議論は、現在、同時並行で行われている経産省の研究会と関係するところもあるかと思います。特に株主総会のプロセスに関する議論が、経産省の研究会の方も終盤というふうにお伺いしていますので、両者の議論が次の検討の場につながって、よりよい方向性へ着実に進んでいくことを強く期待しております。

ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。失礼しました、永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。遅れての参加で申しわけありません。

今回の取りまとめ、事務局の方々のご苦労は大変なものであったと思っております。今回のワーキング・グループでは、さまざまな立場の方が忌憚のない、ほんとうにはっきりといろいろなことをお話しになり、ディスクロージャーという制度が、いかに、多くの、いろいろな方々によって支えられているのかということがよくわかりましたし、時代に求められているものに変えていくためにどうすべきかということが、今回のディスクロージャーワーキング・グループで議論され、一投資家としても、大変勉強になりました。また、こうした議論が金融審議会という場に上がり、議事録に残り、国民の目に触れるということは、必ずしも今回とりまとめていただいた報告書でご満足いたける方ばかりでないとは思いますが、大事な一歩であるということを感じましたし、読んでいただけることで次につながるのではないかとも思います。どうもありがとうございました。

2点ばかり、大変瑣末な点ですけれども、ちょっと引っかかったというところがございました。16ページの、最後の結論に当たる部分で、投資者のリテラシー向上に向けた取り組みというところです。何でもこの類いのものは最後の結論がいつもこれ(投資者のリテラシーの向上)になるのでございますけれども、まず、機関投資家の投資先との対話とか、議決権行使のあり方というのはリテラシー向上に向けた取り組みに該当するのでしょうか。違和感があります。

私は個人投資家ですので、後半のほうに関しても、もう一言申し上げたいことがあります。先ほどの関根委員のご指摘とも重なりますが、中長期的な視点からの投資に関する教育が必要なことは大前提なのですけれども、今回議論したのはディスクロージャーに関することでしたし、個人投資家については、情報開示がどんどんよくなっていって、使えるものになっているのに、使えないままとり残されているということが問題ではないかと思うわけです。個人投資家も、開示情報を利用できる力を身につけ、会計情報なども読んで分かるようになるということが必要だと思います。日本証券業協会等の業界団体の提供される投資教育の中に、開示情報を読む力をつけるような教育も入れていただけると、賢い投資家といいますか、中長期な視点で企業を応援する投資家を育むことにつながるのではないかと思います。可能ならばそのような一言をお願いしたいと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。大分重要なご指摘をいただきましたけれども、そろそろ取りまとめに向けてということで、もしよろしければ、本日いろいろいただきました具体的なご指摘を踏まえて、一部修正を事務局と私のほうでさせていただくということで取りまとめるという方向をご承認いただければどうかと思っております。

それで、ちょっと具体的な箇所は確認したほうがいいと思いますので、私の理解を順次申し上げます。

まず、川島委員から具体的な修文というか、追加の文章を含めてご提案いただいた点につきましては、上柳委員からも賛同というか、そういうご趣旨の発言があり、他方、現在のままでいいというご意見もございました。私の感触としては、川島委員ご指摘の文章を、ちょっとそのままだとほかの箇所とバランスが合わないので、ほかの部分とのバランスについて事務局で整理していただきますけれども、何か多少つけ加えられれば、そして、報告書全体のトーンは変わらないということで、そういうことができるのではないかと思います。

それから、逆瀬委員からいろいろご指摘のあったうちの、最後の点は重要な点だと思いますけれども、このワーキング・グループで正面から議論したわけでもなく、また、すべき話題でもないと思いますが、IFRSが純正IFRSなのか、修正国際基準を含むのかというようなことについては明確にしたほうがいいということと、それから、ご指摘のあったうちの、今後、単体の任意適用について議論するときには、まず会計の議論、原価計算の議論がまずあるという点は、もし一言書けるようであれば、一言ぐらい書けそうな気もしますけれども、事務局にご検討いただきたいと思います。

それから、多くの委員の方からご指摘をいただいた、フェア・ディスクロージャー・ルールについては、上柳委員、太田委員、そして原田委員からご指摘いただいたところなのですけれども、なかなか両論がある中で、このワーキングで正面からこれだけをテーマにしたわけではないので、メーンの部分でご議論いただいたことに密接に関連するけれども重要な課題だということでその他になっているという事情がございます。なかなか書き加えるのが難しいところかと思いますけれども、原田委員ご指摘のように、原田委員から見て基本的な考え方がちょっと感じられないということかと思いますので、2の、15ページの冒頭が基本的な考え方に当たる部分、8行目ですけれども、ちょっと一言工夫できないか、原田委員のご指摘がございましたので、ちょっと事務局で、一言ぐらいしか工夫できないので申しわけないのですけれども、と思います。

他方、その他はその他なので、全てについて基本的な考え方を書くのは非常に難しい。例えばですけれども、1の単体財務諸表におけるIFRSの任意適用なんかも、これ、また踏み込んで基本的な考え方を書こうと思うと大変ですので、2について原田委員ご指摘の点についてちょっと一言改善できないか工夫をさせていただきたいと思います。

最後の永沢委員ご指摘の点ですけれども、確かにおっしゃるとおりなので、ちょっとこれも一言ですけれども、ひょっとすると16ページの3のタイトルを含めて、あまり投資者のリテラシー、リテラシーと言うと言い過ぎなので、もうちょっと素敵な言葉、表現にして、あと、おっしゃった個人投資家のところについてはご指摘を踏まえて、一言ちょっと書き足すことができないか、事務局に検討していただきたいと思います。

そのほかにもいろいろご意見とご感想がございましたけれども、議事録にはもちろんきちんと残りますので、私のほうから、今、メモさせていただいた限りでは、以上について、一言程度で恐縮ですけれども、一部修正を事務局と私でさせていただくということにさせていただきたいと思います。そういうことで報告書の案を取りまとめということにさせていただくと、こういうことでご賛同、ご承認いただけますでしょうか。どうもありがとうございました。

なお、「てにをは」などの表現もございますので、これらにつきましては、今、申し上げました内容とは別に、もう一度、事務局と私のほうで確認をさせていただきます。

このワーキング・グループの取りまとめの結果につきましては、もちろん皆様方にご報告、ご連絡いたしますけれども、今後、しかるべき時期に金融審議会にご報告をさせていただく予定でございます。

以上でございまして、本ワーキング・グループは昨年11月10日以来、5回の会合を重ねてまいりました。本日、1つの区切りを迎えることができまして、委員の皆様方には、大変ご多忙なところ、極めて精力的、また忌憚のないご意見、違う角度から、違うお立場からのご意見を率直にお出しいただきまして大変感謝しております。回数はそれほど多くなかったかもしれませんけれども、非常に重要な問題について、重要なご指摘を多数いただきまして、制度の問題と実務の問題が非常に複雑に絡み合うこの分野につきまして、このワーキング・グループでの皆様方のご議論は、本日の取りまとめだけではなくて、今後、金融審議会、その他、関係する政府の場において非常に貴重なものとして生かしていただけるものと思います。私からも皆様方の積極的なワーキング・グループへの参加に対しまして厚く御礼申し上げます。

また、今後とも、金融審議会の場、あるいはそれ以外の場で、皆様方には引き続きご意見、ご鞭撻をいただきたいと思います。このワーキング・グループは、ちょっと4月にずれ込みましたけれども、本日をもって最終回ということにさせていただきます。皆様方、どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)

総務企画局企業開示課(内線3665、3802)

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