金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第1回) 議事録

  • 1.日時:

    平成29年12月11日(月)10時00分~12時20分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【田原企業開示課長】

それでは、皆様おそろいでございますので、始めさせていただきます。

本日は、冒頭のみ、カメラ撮影がございますので、よろしくお願いいたします。

それでは、座長、よろしくお願いいたします。

【神田座長】

それでは、ただいまから、金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」第1回目の会合を開催させていただきます。

皆様方には、大変お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。私は、このワーキング・グループの座長を務めさせていただきます学習院大学の神田と申します。よろしくお願いいたします。

このワーキング・グループでございますけれども、本年11月16日に開催されました金融審議会総会・金融分科会合同会合における麻生金融担当大臣からの諮問を受けて設置されたものであります。

麻生大臣からは、お手元の資料1にございますように「投資家の投資判断に必要な情報を十分かつ適時に分かりやすく提供することや、建設的な対話に資する情報開示を促進していくため、企業情報の開示及び提供のあり方について検討を行うこと」との諮問をいただいておりますので、よろしくお願いいたします。

それでは、次に、事務局から、メンバーのご紹介をお願いいたします。

【田原企業開示課長】

事務局を務めさせていただきます金融庁企業開示課長の田原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

もう撮影のほうはよろしいでしょうか。よろしければ、カメラの方々はご退室をお願いいたします。

(報道関係者退室)
 
【田原企業開示課長】

それでは、事務局から、ワーキング・グループのメンバーの皆様をご紹介させていただきます。座席順にご紹介させていただきます。お手元に配席図をお配りしております。

メンバーの皆様の右側から、青克美様です。

【青委員】

青でございます。よろしくお願いします。

【田原企業開示課長】

井口譲二様です。

【井口委員】

井口でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

太田洋様です。

【太田委員】

太田でございます。よろしくお願い申し上げます。

【田原企業開示課長】

小畑良晴様です。

【小畑委員】

小畑でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

貝増眞様です。

【貝増委員】

貝増でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

加藤貴仁様です。

【加藤委員】

加藤です。よろしくお願いします。

【田原企業開示課長】

神作裕之様です。

【神作委員】

神作でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

清原健様です。

【清原委員】

清原でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

熊谷五郎様です。

【熊谷委員】

熊谷でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

黒沼悦郎様です。

【黒沼委員】

黒沼でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

小林建司様です。

【小林建司委員】

小林建司です。よろしくお願いします。

【田原企業開示課長】

小林昭広様です。

【小林昭広委員】

小林昭広でございます。よろしくお願いします。

【田原企業開示課長】

三瓶裕喜様です。

【三瓶委員】

三瓶でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

高濱滋様です。

【高濱委員】

高濱でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

中熊靖和様です。

【中熊委員】

中熊でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

永沢裕美子様です。

【永沢委員】

永沢でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

中野貴之様です。

【中野委員】

中野でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

水口啓子様です。

【水口委員】

水口でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

柳澤祐介様です。

【柳澤委員】

柳澤でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

和里田聰様です。

【和里田委員】

和里田でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

また、本日はご欠席ですが、資料2のメンバー表にもありますように、石原秀威様、上柳敏郎様、川島千裕様にもご参加いただくこととなっております。

次に、オブザーバーの皆様をご紹介申し上げます。

法務省民事局の竹林参事官です。

【竹林オブザーバー】

竹林でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

財務省大臣官房信用機構課の堀田課長です。

【堀田オブザーバー】

堀田でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

経済産業省経済産業政策局企業会計室の松本室長です。

【松本オブザーバー】

松本でございます。よろしくお願いいたします。

【田原企業開示課長】

なお、事務局につきましては、時間の都合もありますので、お手元の配席表をもってご紹介にかえさせていただきます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、今日は初回でございますので、議事の進め方について、幾つかご確認をいただきたいと思います。

まず、このワーキング・グループですけれども、原則公開ということにさせていただいて、議事録も公表ということにさせていただきたいと思います。したがいまして、皆様には、公表を前提としたご意見をいただければと考えております。これまでも金融審議会のワーキング・グループは、今申し上げたようなことが伝統であるというふうに理解しております。このワーキング・グループにつきましても、このような形で議論を進めたいと思いますけれども、ご承認いただけますでしょうか。

(異議なし)
 
【神田座長】

どうもありがとうございます。それでは、そのように進めさせていただきたいと思います。

もう1点、私が万が一この会議に出席できないような場合に備えまして、座長代理をお願いしたいと考えております。座長代理は、恐縮ですが、神作委員にお願いしたいと考えておりますが、よろしゅうございますでしょうか。

(異議なし)
 
【神田座長】

どうもありがとうございます。それでは、神作先生、よろしくお願いいたします。

それでは、中身といいますか、本日の議事に移らせていただきます。お手元の議事次第にありますように、本日は、まず事務局からご説明をいただき、その後、質疑応答、討議ということで進めさせていただきたいと思います。

事務局からの説明をお願いします。

【田原企業開示課長】

それでは、お手元の資料3に従いましてご説明差し上げます。

表紙をおめくりいただきまして、目次がございますが、その次の2ページをご覧いただけますでしょうか。

この20年以上にわたりまして、我が国における資金の流れを最適化するための取組みを継続的に行ってきたということでございます。下の図をご覧いただきますと、こういった国全体の最適な資金フローを実現するため、近年におきましても、スチュワードシップ・コード、コーポレートガバナンス・コードの導入ですとか、顧客本位の業務運営の強化といった取組みを行ってきたわけでございます。

その間も上場企業、投資家の皆様を取り巻く環境は大きく変化をしております。こういった中で、資本市場の機能の発揮を通じて、企業価値の向上と収益向上の果実を家計にもたらしていくという好循環が必要だというご指摘を頂戴しております。

そういった観点から、投資家の皆様が適切に投資判断できるような情報の提供、投資家と企業との建設的な対話を促すような情報の提供ということにつきまして、再度考える時期に来ているのではないかということでございます。こういったことについて、大きな視点から、その資金フローを最適化していく果実を国民の皆様が受け取れるような形でご議論をお願いできればと考えております。

1ページおめくりいただきまして、先ほど申し上げました資本市場の変化の一例でございますけれども、左の図をご覧いただきますと、主要投資部門別の株式保有比率の推移をチャートで示しております。

ご覧いただければ分かりますように、青のラインの金融機関の持ち分が非常に少なくなってきている一方で、紫のラインの海外投資家が3割に達しているという状況でございます。したがいまして、開示の役割は従前に比して非常に重要になってきているということではないかと思います。

こういった中で、海外投資家の方々の投資判断や企業との対話に資する企業情報の開示・提供のあり方をどう考えるかということについて、問題を投げかけられているということでございます。

また、右側の家計金融資産の構成をご覧いただきますと、米国、日本における株式、投信とリスクマネーへの投資の額を黒の囲みで囲ませていただいておりますけれども、日本におきましても、個人投資家の方々の直接・間接の保有割合を増加させていくことが重要であるという指摘がございます。こういった個人投資家の方々、あるいは個人の資産を運用する機関投資家の方々の株式の運用をよりやりやすくしていく上で、情報提供が重要であるというご指摘を頂戴しております。

次のページには、コーポレートガバナンス改革についての記載をさせていただいております。

冒頭ご説明させていただきましたように、成長戦略の一環ということで、コーポレートガバナンス改革に向けた取組みを政府全体として推進しているところでございます。先週の金曜日に公表されました新しい経済政策パッケージにおきましても、対話の深化が必要であるということで、企業のガバナンス改革に向けた取組みを一層推進していく必要があるとされたところでございまして、今後、コーポレートガバナンスについての会議で、投資家と企業の対話の際のガイダンスの作成及び必要なコーポレートガバナンス・コードの見直しを行うこととされているところでございます。こういう建設的な対話に向けた取組みが進展する中で、対話をより建設的なものとするための企業情報の開示・提供のあり方も検討していく必要があるというご指摘を頂戴しております。

1ページおめくりいただきまして、5ページでございます。

以上のような問題意識を踏まえまして、私ども、いろいろな方々からご意見を頂戴しているわけでございますけれども、企業情報の開示・提供のあり方をめぐる課題としてどんなものがあるか掲げさせていただいたものでございます。あくまで例示でございますが、こういった論点を中心に、本日、ご意見をお聞かせいただければと存じます。

1点目でございますけれども、まずは「財務情報」と「記述情報」、いわゆる非財務情報、でございますが、そういったものを充実させていく必要がないかということでございます。

お手元に青のドッチファイルを配らせていただいておりますけれども、この中にグローバル企業の開示例を4社ほど入れさせていただきました。グローバル企業による開示は、非常に充実しているというご指摘を頂戴しております。こういったグローバルな比較をする中で、海外投資家からの指摘、日本企業の開示における中長期的なビジョンや見通し、業績に対する評価などについて、どのように考えていくのかということについてご指摘を頂戴できればと思っております。例えば、経営戦略について、どういう開示をするか。MD&Aについてどういう開示をするか。リスク情報はどうか。それから、金融審議会総会では、雇用関係の情報などについても充実すべきではないかというご指摘を、本日ご欠席の川島委員から頂戴しております。

2点目でございますけれども、先ほど申し上げたガバナンス情報の提供ということで、対話の観点から、提供されることが望ましい情報の開示を充実させ、また、提供方法も改善すべきではないかというご指摘を頂戴しております。こういった観点からは、政策保有株式ですとか、役員報酬の決定方針のあり方などについて、ご指摘を頂戴しております。

3点目でございますけれども、こういった投資判断ですとか、あるいは、議決権行使も含めてですが、建設的な対話に必要な情報が適時に提供されていくということはどういうことかということを、もう一度考えるべきではないかというご指摘も頂戴しております。また、その財務情報の信頼性、非財務も含めてかもしれませんけれども、そういったものについては、東芝事件などもございまして、さまざまなご指摘を頂戴しているところでございまして、そういったことについてもご意見をいただければと思います。

それから、最後、その他とさせていただいておりますが、情報通信技術の進展ですとか、あるいは国際化といったことを踏まえて、投資家のニーズに合った情報提供はどうあるべきかということについてもご指摘を頂戴しておりまして、例えば、EDINETの利便性についてのご指摘も頂戴しておりますし、英文による情報提供がまだまだ進んでいないではないかというご指摘も頂戴しております。

次のページ、現在の有価証券報告書の構成を掲げさせていただいておりまして、現在、申し上げたようなお話は、赤字のところに主に関連するのではないかということで、ご参考までに掲げさせていただいております。

それでは、7ページから8ページをご覧いただきまして、最初の論点でございます財務情報及び記述情報の充実についてお話をさせていただければと存じます。

8ページでございますが、まずは経営戦略でございます。

昨年4月に取りまとめいただきましたディスクロージャーワーキング・グループ報告におきまして、決算短信と有価証券報告書の役割の見直しをさせていただきまして、本年の3月以降に終了した事業年度に係る有価証券報告書からは、経営方針、経営戦略等につきましては、有価証券報告書に記載をいただくということになってございます。また、その際、経営上の目標を判断するための客観的な指標がある場合には、そういったものについても記載をお願いするということでございます。そういったことで、企業様にお取り組みいただいております。その中には非常に良い例もございますが、全体的には、企業の中長期的なビジョンに関する具体的な記載ですとか、MD&Aやリスク情報との関連付けがないのではないかというようなご指摘も頂戴しておりまして、こういった点が課題になるのではないかと考えております。

1ページおめくりいただきまして、この点でよく引き合いに出されるのがイギリスでございまして、イギリスでは、2013年に年次報告書の一部として、戦略報告書の作成が会社法により義務付けられております。また、財務報告評議会、ディスクロージャーを担当するイギリスの機関でございますけれども、こちらが2014年にガイダンスを策定しておりまして、ガイダンスでは、経営戦略について、会社の目的やビジネスモデルと関連付けて説明するとともに、企業の経営成績、財政状態、将来の見通しについての経営陣の考え方を示して、投資家による経営戦略の評価を可能とすることが求められております。また、リスク情報や重要な経営指標等との関連性の記載も求められているところでございます。

下のポンチ絵で、BT Groupの戦略報告書の経営戦略についての例を掲げさせていただいております。参考資料集、ドッチファイルの中では、最初のものがBT Groupになっておりまして、その16ページから54ページに、約40ページにわたって、これはリスク情報10ページも含めてということでございますが、戦略とリスク情報などを関連付けた記載が行われているということでございます。その内容については、ここに掲げさせていただいているところですので、説明は割愛させていただきますが、イギリスでは企業が体系付けた説明を心がけているということであろうかということでございます。

10ページをご覧いただけますでしょうか。2点目の経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析、いわゆるMD&Aでございます。

こちらにつきましても、昨年4月のディスクロージャーワーキング・グループ報告を踏まえまして、先般、パブリックコメントもさせていただき、来年から下のような形での開示を有価証券報告書でお願いをする予定でございます。1つ目は、現在、「業績等の概要」、「生産、受注及び販売の状況」と「MD&A」に分かれてございますが、その中身を統合する一方で、経営者の視点による、事業全体及びセグメント別の経営成績等に重要な影響を与えた要因についての認識及び分析、それから、経営者の方々が、経営方針・経営戦略などの中長期的な目標に照らして経営成績などをどのように分析・評価されているかということを、ご説明いただくということをお願いしているところでございます。

一方、現在の日本企業の開示例を下に掲げさせていただいておりますが、MD&Aも長く取り組んでいるわけでございますけれども、今でもやはり財務諸表をそのまま文章にしたような記載も目立つということで、記載内容について工夫をした方がいいのではなかいというご指摘を頂戴することが多いということでございます。

11ページをご覧いただけますでしょうか。アメリカの例でございますけれども、お手元のドッチファイルでは、2つ目の資料で、その17ページから50ページ、全34ページになるわけですけれども、3M COMPANYのMD&Aの記載内容の例を掲げさせていただいております。上の囲みですけれども、アメリカではSEC規則によりまして、企業全体及びセグメントごとの経営成績、キャッシュ・資本の支出見込みと調達源の説明のほかに、事業環境、オフバランス取引、契約上の債務についての説明も企業は求められているということでございます。また、ガイダンスでは、重要な会計方針及び見積りの説明や、経営指標に着目した分析も推奨されておりまして、こういった説明が行われているという状況になってございます。

この全34ページにわたる説明の中では、下にありますように、セグメントごとの経営成績が説明され、過去3年分の情報が記載されております。前年と比較した、関連製品ごと、地域ごとに売上の増減の関する分析が充実をしているということでございまして、事業譲渡・事業買収ですとか、為替の変動などが売上高に与えた影響の割合なども書かれているというものでございます。また、セグメントも6セグメントに分けて詳細に記述されているということでございます。

12ページ、イギリスの状況をご覧いただけますでしょうか。イギリスの例は、Rolls-Royceを挙げさせていただいておりますが、青のファイルでは3つ目の資料になりまして、その16ページから39ページがビジネス・レビューに当てられております。

イギリスでは、会社法に基づきまして、経営成績、財政状態の分析、重要な経営指標の説明を記載することが求められておりまして、ガイダンスでは、セグメント単位の経営成績の分析、キャッシュ・フローとの関係性や、将来のキャッシュ・フローに影響しうる要因を示す分析、流動性・資本調達の能力の説明などが求められております。

Rolls-Royceは5セグメントに分けまして、先ほど申し上げましたように、全24ページにわたって説明をされているということで、営業分析、市場分析などを詳細に行っているということでございます。

13ページをご覧いただけますでしょうか。3点目のリスク情報でございます。

リスク情報の記載も長らくお願いをしておりまして、大分実務に定着してきたと考えておるわけでございますけれども、よく受けるご指摘といたしましては、一般的なリスクの羅列になっていて、企業固有のリスクがしっかり示されていないのではないかというご指摘を頂戴しております。もちろん、しっかりと企業固有のリスクを示されている企業様もいらっしゃるわけですが、一般的にはそういう指摘を受けることが多いということでございます。また、経営戦略やMD&Aとリスクの関係が明確ではなく、投資判断に影響を与えるリスクが読み取りにくいというご指摘も頂戴しております。

14ページをご覧いただきますと、これはイギリスの例を掲げさせていただいておりますけれども、イギリスでは、リスクを羅列するのではなく、企業に固有のリスクについて、その対応策とか、リスク水準の変化、戦略等との関連性などの記載を求められているということでございます。

下にございますRolls-Royceの例ですと、48ページから52ページ、全5ページにわたって記載されているわけでございますけれども、左側の主要なリスクのところにございますようなリスクについて、それぞれどういったリスクがあり、それに対してどういう対応策をとっていて、その責任部署はどこであるのか、それに対してどういう内部統制をとっているのか、リスクの水準がどう変化したのか、そのリスクが関連する経営戦略は何かということについての開示が行われているということでございます。

以上が財務情報と記述情報の充実についてでございます。

次に、ガバナンス情報の開示についての課題の例をご説明させていただければと思います。

16ページをご覧いただけますでしょうか。1点目は、役員報酬に係る情報でございます。

現在の役員報酬についての日本企業の置かれている環境でございますけれども、ガバナンス改革もございますし、企業価値の向上に向けて経営陣にインセンティブを付与するために、業績連動報酬を導入する企業が増加していると承知しております。現在、上場企業の約3社に1社が導入しているという統計もございます。

一方、役員報酬の開示につきましては、2003年に有価証券報告書に「コーポレート・ガバナンスの状況」を新設しましたときに、「役員報酬の内容」を開示するということにされたわけですが、当初、その具体的な開示内容は企業によってかなり差があったと承知しております。

2010年には、そうしたことも踏まえて、開示内容をより具体的にいたしまして、以下のような情報を開示することとされまして、例えば、提出会社の役員の報酬等の額または算定方法の決定に関する方針ですとか、連結報酬総額1億円以上の役員の提出会社役員としての報酬総額、連結報酬の種類別の額ということで、個人の報酬額などについても、1億円以上の場合は開示をするといった形にされてきたということでございます。

ただ、こういった開示内容が、企業価値の向上に貢献した経営陣に対してそれに見合った報酬を提供していくべきというコーポレートガバナンス上の要請に合ったものとなっているかということにつきましては、いろいろなご指摘を頂戴しておりまして、その見直しにつきましてご議論をいただければと考えているところでございます。

1ページおめくりいただきまして、アメリカの例でございます。

アメリカでは役員報酬につきましては、SEC規則に基づきまして、CEO・CFOと報酬額上位3位までのエグゼクティブオフィサー、執行側の報酬に関して、報酬プログラムの内容や要素ごとの算定方法、株主総会決議の反映状況などを説明することが求められておりまして、過去1年分の報酬の一覧が開示されております。また、取締役につきましては、全取締役の報酬について、過去1年分の一覧を開示することとされております。ここでは、Procter and Gambleの記載内容を例として掲げさせていただいておりますが、全30ページにわたって報酬についての説明があるということでございます。これは手元の青のファイルでは、4つ目のProcter and Gambleのプロキシステートメントに記載されておりまして、その25ページから54ページにございますので、お時間のあるときにご覧いただければと存じます。

また、資料の18ページをご覧いただきますと、こちらはイギリスの例でございますけれども、イギリスにおきましても、会社法に基づきまして、全取締役の報酬について、報酬プログラムの内容や要素ごとの算定方法などの説明が記載されておりまして、過去2年分の報酬内容の一覧が開示されております。それから、業務を執行する取締役の報酬に関しましては、報酬プログラムを適用した場合の最大支払見込額なども開示されております。また、過去10年間のCEOの報酬額と、同期間のトータルシェアリターンの推移を対比できる形で開示されておりまして、その報酬の適切性を投資家が判断できるようになっております。

下では、Rolls-Royceの記載内容を例として掲げさせていただいておりますけれども、これもお手元のドッチファイルのRolls-Royceのレポートの72ページから95ページに報酬委員会のレポートがございますけれども、そちらの中から掲げさせていただいているものでございます。

1ページおめくりいただけますでしょうか。2点目の政策保有株式についてでございます。

現在、有価証券報告書における政策保有株式に関する開示につきましては、資本金の1%超の銘柄、30銘柄未満の場合は、保有額上位30銘柄までの銘柄について、銘柄名と銘柄ごとの保有株式数、貸借対照表計上額、保有目的を記載いただくこととなっております。

一方、この開示につきましては、右側に典型的な保有目的の開示例を掲げさせていただいておりますが、保有目的が定型的かつ抽象的な記載内容にとどまっているのではないかというご指摘を頂戴しているわけでございます。政策保有と思われるものが純投資に区分されていて、開示されていないのではないかというご指摘も頂戴しております。また、1%超の銘柄、あるいは30銘柄未満の場合は、上位30銘柄を開示いただいているわけですが、保有額が小さいものが開示されていないので、十分な対話が困難であるというご指摘も頂戴しております。時価変動などで貸借対照表計上額が変動するもので、実際に保有状況がどう変わったか分からないというご指摘も頂戴しております。さらに、近年のガバナンス改革の中で、持つ以上は議決権行使結果を個別に開示すべきではないかといったご指摘も頂戴しているような状況でございます。

コーポレートガバナンス報告書におきましても、政策保有に関する方針などの開示が求められているわけでございますけれども、こちらの保有理由もやや抽象的ではないかというご指摘を頂戴しておりまして、こういった点についても、本日、ご議論を頂戴できればと存じます。

20ページでございます。こういった点も含めましたガバナンス情報の提供につきましては、現在、有価証券報告書と東京証券取引所で提供いただいておりますコーポレートガバナンス報告書の2つに分かれた形になっておりまして、海外投資家の方などから、もう少し分かりやすく提供する方法はないのかというようなご指摘をよく頂戴しているわけでございます。こういった点についてもご指摘を賜れればと存じます。

3つ目の課題についてのご説明をさせていただければと存じます。提供情報の信頼性・適時性の確保に向けた取組みということで、22ページをご覧いただければと存じます。

まず、会計監査に関する開示についてでございます。

企業価値が、一義的には、過去の結果と現在の状況を表わす財務情報によって説明されるという観点に照らしますと、その信頼性を高めていく観点で、会計監査が果たす役割は非常に重要なものがあると考えられます。

一方、東芝の不正会計事案などを踏まえて設置されました「会計監査に関する在り方懇談会」におきましては、そういった観点から、会計監査についての情報提供が不足しているのではないかというご指摘を頂戴いたしまして、例えば、有価証券報告書において、以下のような開示内容の充実というものが提言されております。下の青で塗られた囲みのところにございますけれども、株主が会計監査の最終的な受益者でありまして、株主総会で監査人の方々の選解任を最終的に決定する役割を担っているわけでございますけれども、そういう判断をする上で必要な材料が株主の方々に十分に提供されているのかということで、例えば、監査役会・監査委員会・監査等委員会などによって、監査人の方々の評価はされていると思うわけですが、そういった情報が提供されていないのではないかというようなご指摘がありました。

その下にございますけれども、企業の方々が適切な監査の確保に向けて監査人とどのような取組みを行っているのかとか、先ほどの、監査役会などの方々が監査人をどのように評価しているのかということの情報提供はしっかりされていくべきではないかというようなご指摘を頂戴したということでございます。

しっかりした監査を行っていく上では監査人の独立性が重要ですが、その独立性を評価する上で、例えば監査人の方々がどれぐらいの期間従事してきたのかというような情報も、有価証券報告書に記載すべきではないかというご指摘を頂戴しております。

お手元にお配りしている青のファイルの、例えばBT Groupの例で言いますと、112ページから、監査委員会の報告書が入っておりますけれども、こちらの中では、こういった情報の提供が行われております。また、監査人の監査報告書につきましては、154ページ以降に載ってございますけれども、この点につきましては、この場の直接の議論の対象ではございませんが、いわゆるKey Audit Mattersということで、監査上の重要なリスクについての記載も行われております。こちらにつきましては、現在、企業会計審議会の監査部会でもご議論いただいております。

1ページおめくりいただきまして、開示書類の提供の時期についてでございます。

こちらの開示書類の提供の時期につきましても、先般のディスクロージャーワーキング・グループでもご議論いただいております。

年度の開示書類の提供時期に関する経緯と書いてございますけれども、日本の企業に関する開示は、事業報告・計算書類と有価証券報告書に分かれているという指摘がよくされておりますが、この2つの書類は、異なる目的を有していることから、その開示内容にも目的に応じた差異がございます。

ただ、諸外国では、この2つの書類が1つの書類として作成されて開示されている例が見られまして、日本でもこういった開示をすることは可能であると考えられております。

ただ、日本では、有価証券報告書につきまして、作成に時間がかかるということで、現在、期末後3か月以内に提供するということにされておりますので、会社法上の事業報告等と有価証券報告書が異なる書類として提出される実務慣行が定着しております。

その内容につきましても、それぞれの性格に応じて分化をしてきているところがございますが、一方で、その中身の共通化については、半世紀以上にわたって取り組んできておりまして、共通にできるところは共通にして出せるわけでありますが、書類としては現在分けて出す形になっているということでございます。その経緯につきましては、24ページに記載をさせていただいております。

25ページをご覧いただけますでしょうか。

昨年のディスクロージャーワーキング・グループでも、この点についてご議論を頂戴いたしまして、有価証券報告書と株主総会資料の一層の共通化、あるいは、一体的な書類としての開示をより容易にする見直しが必要ではないかという提言を頂戴いたしました。

この中で、事業報告などにつきましては、経団連ひな型に即している必要はない旨を確認いただき、事業報告等と有価証券報告書については、共通化、一体化をより容易とするように、記載項目の見直しなどを実施しております。

加えまして、現在、法制審議会において事業報告などの電子提供を進める制度整備に向けた議論が行われてございますが、この中で、事業報告等の記載事項を含む有価証券報告書のEDINET開示を、事業報告などの提供方法の1つとするということについての検討も行われております。

それから、昨年4月のディスクロージャーワーキング報告におきましては、株主と上場企業の建設的な対話の充実に向けた株主総会日程の設定が容易になるように、開示書類における「大株主」の記載時点を選択可能として、株主総会に係る開示の日程・手続について自由度を向上させることが必要ではないかという提言を頂戴しまして、こちらについても、現在、パブリックコメントを終了しまして、近々、内閣府令の改正をしたいと、そういう取組みを行っております。

以上のような取組みを踏まえまして、株主総会前の企業と投資家の対話の期間をどのように増やすか。また、企業と投資家の方々の対話をどういうふうに促進していくかという観点から、開示書類の提供の時期などについてもご意見を頂戴できればと存じます。

それから、四半期開示につきましても、先般のディスクロージャーワーキング・グループの中でご議論をいただきまして、先般、取引所において、四半期決算短信の見直しが行われ、業績のサマリー情報、これも記載内容は自由ということを確認いただきまして、これを先行開示すれば、その時点では短信に財務諸表をつけなくてもよい、それは企業と投資家の方々の判断にお任せするという改革をして、四半期の有価証券報告書との重複をできるだけなくすことができるような取組みをしているということでございまして、現在これがどう実務に定着するかを見ているところでございます。

それから、下の囲みでございますけれども、これも古くて新しい課題でございますけれども、上場企業の方々が、株価に影響を与えるような重要な情報は、適時に公表することが求められているわけでございます。一方、多くの上場企業のそういった情報についての公表タイミングが15時以降に集中しているのではないかというご指摘をよく頂戴いたしております。このご指摘は昔から頂戴しており、いろいろ取組みを行ってきているわけでございますけれども、結果的に、我が国の市場でそういった情報が昇華されていないということは、我が国の市場の競争力に非常に大きな影響があるのではないか、あるいは、我が国の投資家の方々の投資判断や投資の仕方に大きな影響を与えているのではないかというご指摘も頂戴しておりまして、そのタイミングなどについてもご議論を頂戴できればと考えております。

2ページおめくりいただきまして、最後のその他の課題でございます。

1点目は、ITを活用した情報提供、EDINETのあり方ということでございますけれども、先般の金融審議会の総会におきましても、若者はスマートフォンで情報を得るというライフスタイルが定着しているので、紙はもとより、パソコンでもなく、スマートフォンでの情報提供をどのようにすべきかを考えるべきではないかというご指摘を頂戴したわけでございます。情報通信技術の発展に伴い、情報の入手経路が多様化しておりまして、そういった中でどういう情報提供の仕方が求められているのかということについてもご意見を賜れればと存じます。

またEDINETにつきましては、導入以来、15年を超えまして、情報提供のインフラとして定着してきていると考えております。一方で、EDINETによる情報提供のあり方につきましては、先ほどのような事業報告を有価証券報告書の形でも提供できるようにしてはどうかという議論をしていたり、詳細タグ付けの範囲を拡大して利便性を高める取組みは継続的に行っているわけでございますけれども、検索機能をより充実してほしいとか、縦覧期間が短いのではないかとか、あるいは、先ほどのスマートフォンなどへの対応が遅れているのではないかというようなご指摘も頂戴しておりまして、ITを活用した情報提供の利便性向上が求められている中で、EDINETがどうした役割を果たしていくべきかについてもご意見を頂戴できればと存じます。

また、最後の課題の例になりますけれども、英文による情報提供につきましては、参考のところに日経225銘柄における英文による情報提供の数字を掲げさせていただいておりますが、企業が任意で提供されているアニュアルレポートは、ほぼ全部、9割以上の企業が翻訳を実施されているわけでございますけれども、これが短信になると7割、コーポレートガバナンス報告書になると4割程度になりまして、有価証券報告書を訳されている会社さんは、米国の20-Fを開示されている企業を除きますと1割に満たないという状況にございます。一方で、海外投資家の方々からは、英文による詳細な財務諸表データですとか、こういったものについての説明などへのニーズが示されておりまして、英文による情報提供のあり方についてもご意見を賜れればと考えております。

以上、私どもが、今回、審議をお願いします問題意識と、その際によくご指摘をいただいております課題の例についてご説明を差し上げました。本日は、幅広い観点からご意見を頂戴できればと存じます。ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ただいまの事務局からの説明に関して、皆様方からご質問、ご意見等をいただければと思います。今、課長からもご説明がありましたように、本日は初回ということでもございますので、この資料の範囲に限らず、皆様方から見て、幅広くご発言等をいただければありがたく存じます。

それでは、どなたからでも、どの点についてでも結構でございます。

水口委員、どうぞ。

【水口委員】

ありがとうございます。

環境認識から入らせていただきますが、多様で従来にないスピードで進展する技術革新、また、国内の人口動態の変化を伴う市場構造の変化など、企業を取り巻く環境は中長期的にも大きく変わっていくのではないかと思っております。したがって、さまざまな不確実性を伴う環境下で、将来を見据えつつ、持続的に価値を創造していくためには、企業が事業選択などを含む適時、適切な経営判断を行うことの重要性が増してきていると考えております。

企業の取組みにつきましては、資本コストへの意識が希薄であるとか、そのために事業選択などが進んでいない企業があるとか、ガバナンスの見直しが形式的にとどまっている面があるのではないかといった指摘があると認識しております。

こうした中、中長期的な視点を踏まえた継続的なキャッシュ・フロー、企業価値の創出といった観点から、投資家が企業と建設的な対話を行って、そして的確な投資判断を行っていくためには、さらに充実した非財務情報が不可欠であると考えます。

投資判断についての考えを申し上げますけれども、中長期的な視点を含めて、事業リスク及び機会などの観点から、事業環境と戦略の整合性、また、戦略の履行の状況のモニターや適時、適切な見直しを行うための経営能力などについて、アナリストとしては十分理解する必要があると考えております。また、個別の企業については、その競争面や技術面での脅威に対しての耐久力とか、商品、サービスの戦略的な位置付けや、顧客への遡及力などの諸観点から、事業モデルの持続可能性や脆弱性について判断することもポイントであると考えます。さらに、リスク管理に対する企業文化を含めたエンタープライズリスクマネジメントの観点や、ガバナンス構造がいかに企業価値創造を支えるかを示す情報も重要だと考えております。

以上のような諸観点からの分析に有用な情報を含む開示に大いに期待します。プレゼンスが高まっている海外投資家を視野に入れた投資判断に資する開示の中身としては、例えば、先ほどご紹介いただきましたところの英国のアニュアルレポートのような、中長期的な視点も含めた戦略レポート、企業価値を支えるコーポレートガバナンスのあり方、それから財務諸表なども一体的に開示するパッケージも検討に値するのではないかと考えます。

また、この際に、ボイラープレート化の回避も視野に入れて、開示の大枠を定める基準とガイダンスの組合せをもってステークホルダー等との建設的な対話を通じた開示の改善に向けたよいPDCAサイクルを視野に入れていけるような仕組みも考察に値するのではないかと考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、井口委員、それから小林委員の順でお願いします。

【井口委員】

ありがとうございます。全般的な見方と、今、事務局からいただいたポイントについて意見を述べたいと思います。

全般的な見方といたしましては、有価証券報告書は、まさに投資家にとっては最後の砦といいますか、一番重要な開示書類と認識しております。ただ、事務局からご説明があったような状況の変化の中で、特に非財務情報の開示のあり方というところは、今後、変えていく必要があると思っています。

現状、任意のアニュアルレポートがありますが、あくまで任意でして、開示情報の中にネガティブな情報とか、あるいは、やや不利になる情報を載せない傾向があります。ですから、こういう法的な書類で担保していく必要があると考えています。

最後に事務局からご説明ありましたように、アニュアルレポートは9割が英訳され、海外投資家に情報提供される中、有価証券報告書はほとんど英訳されていない。これは大問題でして、例えば、持ち合いのデータなどは、まずアニュアルレポートに全く載ってこないという状況です。そして、海外投資家はそれを知らないという状況になっていますので、この辺は改善する必要があると思います。

事務局からご説明のありました各ポイントについてですが、最初の経営戦略のところで、8ページに掲載されている例で申し上げますと、1つの気付きにはなるとは思うのですが、投資判断に活用することは難しいと考えます。まず、中期的な文脈の中で企業の現状のステージが分からないです。この文章の中に「経営環境の変化」と書いていますが、今まで想定していたところからどのように経営環境が乖離しているかということも分からない。あるいは、「働き方改革」で今後やっていくのだと書いていらっしゃいますが、何をするのかが具体的に分かりません。報酬体系の変更か、従業員を増加させるのか。また、その進捗状況をどのKPIで見ていかれるのかも分かりません。あと、法的な書類にどこまで入れていくかということはありますが、図表を活用し分かりやすくするということも重要と考えています。

MD&Aに関しましては、内閣府令を改正されるということで、この改正内容の視点を盛り込み、なぜこういう決算になったかということを部門ごとに開示していいただくことが大事と思っています。

リスク情報に関しましては、現状、リスク項目が羅列されているという状況で、気付きとしてはありがたいのですが、逆に、情報の有用性がかなり低減されていると感じています。リスクをどういうふうにマネジメントしていくのかという視点やリスクによる企業価値への影響の評価はすごく大事だと思っています。それらのことが開示されていればリスク情報は大変有用なものになると考えています。あと、海外で最近、TCFDとか、気候の変動リスクとか、そういうものを盛り込んでいく動きがあります、フランスでもエネルギー転換法でそういう情報を開示していこうという動きがありますが、こういうことも、今後、日本の企業の方が海外にIRしていく際に、非常に重要になっていく情報であり、これをどう盛り込んでいくかという観点もあると思っています。

役員報酬のところは、事務局からご説明ありましたように、業績連動報酬が入っていく中で、投資家にとっては中期経営計画の確信度を確認するという点で非常に重要になってきていると思います。海外でも、役員報酬の開示は、高額報酬の開示という面もありますが、もう1つは、同様に、中期の経営計画の確信度を確認するという意味で重要になっていると考えています。ということで、トリガーポイント、具体的にどういうポイントで役員の方の業績連動報酬が決まっていくかとか、実際、どのような報酬支払いがなされているのか、ということは、経営戦略と企業の経営者の方のインセンティブがつながっていることを確認できるという意味で、投資家として非常に重要と思っています。

次の政策保有株式のところに関しましては、別の会議でもご議論いただいていると思います。また、ここに上げられているポイントは非常に重要だと思いますが、私は、一番の課題は、先ほど申し上げたように、これが全然英文化されず、海外投資家に届いていないということです。それで、こういう話題がでると、「えっ?日本でそういう問題があったのか。」というようなことで大きな話題になっている状況ですので、まずは、これを英文化して発信するということが大事かと思います。

その次のガバナンス情報のところですが、日本のガバナンス情報は、議決権行使への情報提供から来ているということもあって、役員個々人の方の情報を中心に開示されていると考えています。海外ですと、チェア(議長)が、取締役会としてどういう役員構成が適正なのかを最初に語ります。具体的には、現状の経営戦略の中でどのような役員構成が最適なのか、そしてその中で現状何のスキルが足りないのかという全体的な視点の中で役員の方が選ばれ、そのプロセスが開示され、そして個々人の方の情報の開示になっていると思います。このような開示の方が投資家とっては分かりやすいと考えます。今の有報の構成で申しますと、5番の「役員の状況」いうのが、例えば、「6.コーポレートガバナンスの状況」に入ってくるということになると、これに近くなり、投資家にとっては分かりやすくなると思います。

最後、開示の時期ですが、一体化ということで、確かに重複している資料の一体化というのは望ましいとは思っております。ただ、その過程の中で情報量を落とすとか、そういうことになってくると、これは逆に投資家あるいは利用者にとってはマイナスとなり、投資判断が難しくなりますので、その辺はご配慮いただければと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

一部の委員にしていただいていますが、ご発言を希望される方には名札を立てていただくと分かりやすいので、そのようにしていただければありがたく思います。もちろん挙手をしていただくことでも、私の方でできるだけ気が付くように努力はいたします。

順番ですけれども、小林委員、太田委員、そして三瓶委員の順で、三菱商事の小林委員、どうぞ。

【小林建司委員】

ありがとうございます。

確かに有報、これは書かなければいけない範囲はもちろん法的に最低限のガイドラインは出てくるのでしょうけれども、実務の現場としては、やはり投資家と年間を通して恒常的に会話していますので、投資家から聞かれる内容は、都度変わってきて増えてきていますので、その聞かれる内容を対話の中で答えていくのですけれども、同時に、ほかの投資家も聞きたいということですから、これはなるべく有報の中に盛り込んでいきたいと、こういうふうに考えてやっています。

実際、海外及び国内の機関投資家との対話、これはIRの観点、SRの観点及びESGの観点から、それぞれの部門がそれぞれ、一緒にやることもありますし、個別にやることもある。対話は年間を通して恒常的にやっている。そういった中で、実務の現場で、特に機関投資家から言われることを幾つか申し上げたいと思うのですけれども、確かに取締役の報酬について求める声は大きいです。これの開示を求めてくるということは特に多くて、特にESGの評価機関がそれを求めてくるというのが現状であります。なので、これは多かれ少なかれ、1億円以上ということよりも、むしろ全ての取締役がその報酬を開示しなければいけないというふうにはなってくるだろうなというふうに見ております。

もう1つ、政策保有株式ですけれども、私どもと機関投資家との対話の中でですけれども、これは意外に言われません。もちろん一般的には、資本効率とか、そういうことは言われるのですけれども、あまり詳しく開示しろとか、細かく開示しろと言ってくることは実は少ない。ただ、言ってくるのは議決権行使のところを開示してくれと、こういうところは確かに言ってくるなという感覚を持っています。

あと、最近特に聞かれるのが、社会面及び環境面での付加価値というか、価値の向上、特にサステナビリティとかマテリアリティとか、そこのところをきちんと開示してくれという声はかなり多く聞きます。CO2とか、気候変動のところを盛り込んで開示してくれということでありますけれども、傾向としては国内の機関投資家はほとんど言ってこない。アメリカの機関投資家も実は少ない。ヨーロッパが圧倒的に多い。ほとんどのヨーロッパの機関投資家は、やっぱりここのところは言ってくるというのが現場での実感であります。

もう1つ申し上げますと、コーポレートガバナンスに関連するのですけれども、取締役会の実効性評価、ここのところの開示を詳しくやってくれ、こういう声は実はあります。実際、取締役会の開催頻度とか、あるいは、それ以外のいろいろなスモールミーティングであるとか、そういった細かいことの開示、それを求めてくるということで、観点としては、社外の役員、社外取締役がどれだけ意見を活発に言っていて、それを取締役会がどれだけ取り入れているか、そういう観点での開示をしてくれというような要請が現場としてはあるなというのが実感であります。

私からは以上であります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、太田委員、どうぞ。

【太田委員】

テーマが非常に多岐にわたっておりますけれども、私からは、非財務情報の開示と、政策保有株の開示に関して簡単に申し上げたいと思っております。

まず、非財務情報の開示、特にMD&Aとリスクファクターに関する開示は、やはり米英の大企業に比べると、日本企業は非常に立ち遅れているといいますか、開示はあるはあるにせよ、少しテンプレート化していて、企業固有の記述が非常に薄いなという印象を持っています。特にリスクファクターに関する開示については、日本企業は特にこのあたりは薄いのではないかと思っておりまして、このあたりを充実させていくという方向性は、私も正しい方向なのではないかと思っております。

例えば、米国などでは、上場会社で買収争奪戦みたいなものも非常に多く起きるわけですけれども、あの場合には、あまり十分なデューデリジェンスの期間とかもないわけですけれども、にもかかわらず、非常に早いスピードでそういうものが行われるのは、開示情報にリライできる度合いが高いという点もあるのかと思っておりまして、その背景には、このリスクファクターの開示とかが充実しているということも一因としてあるのではないかと思っております。従って、そのあたり、今後、開示を充実させていくというのは必要であろうと思います。

ただ一方で、ここで例として挙げておられますBTやRolls-Royceとかの開示は、MD&Aにしても、リスクファクターにしても非常に充実しているわけですけれども、日本の場合、上場会社が非常に数多くございますので、上場会社は約4,000社あるかと思いますけれども、これら企業が全部ここまで対応できるとはなかなか思えないところもございますので、このあたりは、法制度の建付けとしては、従来、余り例がないかもしれませんので、ガイダンス等で対応するしかないということかもしれませんけれども、日経225構成銘柄と東証一部上場会社、それから二部上場会社とでは対応を分けるべきではないかと思います。即ち、これらの企業の間で、開示に使うことのできるリソースにも大きな差があるのが実情ではないかなと思いますので、このあたりは企業規模等に応じて柔軟に開示の深度といいますか、そういうものを分けるというような工夫も必要なのではないかと思います。ただ全部充実させろということになると、とてもではないけれども実務としては対応できないといった点もあるように思うわけです。

それから、政策保有株式に関してなんですけれども、これは感想めいたところでございますけれども、現在、個別の銘柄に関しては、資本金の1%または30銘柄ということで開示されているわけですが、この銘柄の数については、これで相当程度カバーされているのではないかなというのが、実務家としての印象でございまして、これをこれ以上開示させるということに、それほど意味があるのかなという気もいたします。

あともう1つは、先ほどちょっとお話にも出ました議決権行使結果の開示に関しても、これも、機関投資家や運用機関がアセットオーナーからの受託を受けて、ある種、受託責任の観点から、この議決権行使結果を開示するというのは、これは個別にやるというのは理解はできるのですけれども、一般の事業会社がさまざまな理由で、資本業務提携とかに基づいたりして持っているようなものについて議決権行使結果を個別に開示させることに、主要なステークホルダーであるそれら会社の株主の側から見て、あまり意味があるとは思えないので、これを法的に強制することには相当違和感がございます。

ただ一方で、政策保有株と純投資に基づく株のこの区分が分かりにくいというご指摘をご紹介されていましたが、これはおっしゃるとおりかなと思っておりまして、純投資と資本業務提携に基づくもの、これは分かりやすいわけですが、この中間に政策保有株というような類型がございまして、これが一体何を意味するのかというのが、いまひとつ投資家とかの側から見ても分かりにくいということはあろうかと思います。このあたりは、その企業がもう少し保有目的について詳細に開示をするということであれば、投資家との対話も具体的に進展していくのかなと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、三瓶委員、小畑委員の順で、三瓶委員、どうぞ。

【三瓶委員】

ありがとうございます。

忘れる前に、今、太田委員がおっしゃった中で、4,000の全ての上場企業に対して詳細な開示を求めるのは、ちょっと難しいのではないかというところは、まさに英国の場合も、この詳細なレポートを要求しているのは、上場の大手企業であり、新興企業には、そのリクワイアメントを課していないという意味では、そのとおりのご指摘だと思います。そういう意味で、私たちもこの情報はそういうふうに使わなければいけないかなというのをちょっと思いました。

私が申し上げたかったのは、今回、この総論全体を通して見て、1つ共通の大事な軸があるのではないかなということです。それは、そもそもの目的は何かといことで、どの項目を見ても、それは企業価値向上への取組みというものについて、レポートしてほしいんだということ。それをちゃんと理解できると、それが投資判断につながる。または、その取組みの内容いかんで建設的な対話の重要な論点が絞られるということで、どこの項目も企業価値向上への取組みがどのようにできているのか、これからどうしていくのか、その結果どうなったのか、ということだと思います。

ですから、逆に言うと、いろいろな、できていないとか、不満であるという指摘は、むしろ部分的な話ばかりになっている。一体的になっていない。または統合的になっていないということだと思います。

それに基づいて申し上げますと、Ⅰの項目、「財務情報」及び「記述情報」の充実というところでいきますと、経営戦略はあってほしいなと、その経営戦略がどのように企業価値向上をするのかというふうに書いてほしいなというのがあります。

2番目の経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析のところは、私は正直言って、極論を言えば、有報になくてもいいという考えもあると思います。というのは、今のような中身であればなくていいと。表がそのまま言葉になっているだけなのでというところです。ただ、これが先ほど申し上げた企業価値向上にどうかかわってきているのか、それを財務情報と絡めて説明する文章であるのであれば、大いにそれは参考になるというふうに思います。

リスク情報もそういう意味では一緒です。企業価値向上に際して取り組んでいる中での将来の企業価値にとってのリスクは何であるかということを述べるということであれば、一般的なリスクの羅列ではなくなっていいと思います。

そして、Ⅱの建設的な対話の促進に向けた…というところですが、ここで具体的に言及されていない2つの項目があるのではないか、検討する価値があるのではないかというふうに思っています。

1つ、ガバナンス情報という意味では、先ほども取締役会の実効性評価をもう少し充実させてほしいというのがありましたけれども、そうする中であるのは、例えば、英国の例で言うと、取締役会の実効性については、取締役会の議長が述べるようになっています。それと、取締役会の諮問機関である、または一部の決定機関である委員会の各委員長が、その委員会はどういう仕事、先ほどの企業価値向上に向けた取組みをしてきたのかということをレビューして語るようになっています。これは日本でも法定の委員会はそんなに多くないかもしれませんが、任意の委員会はかなり数多くあります。その任意の委員会が独自に考えて立派に機能させていただいている会社さんがたくさんあります。ただ、それが聞いてみないと分からないので、ここでそういったことについて委員長が語るということがあると、随分違ってくると思います。

それと、もう1つの新しい観点というか、ここになかったものという意味では、政策保有株式に関連するのですけれども、有報の中に関連当事者間の取引という注記があります。ここにいわゆる持ち合いをしていて、それがお互いの営業のためになるということを言って、ある種の利害関係者になっているわけです。であれば、その取引はどのような規模であるとか、また、どのような成果を生んでいるのか、ほんとうに必要なのかということが書かれてもいいのではないかと。そうすると、それを取締役会で、本来は見ているはずなのですけれども、その評価があって、だから継続しているということになるのですけれども、そこの透明化という1つの手段になるというふうに思います。

政策保有株式に関連しますと、私は少なくとも異動は知りたいと思います。これは何回か会社とやりとりをしている中で、昨年はあったけれども、今年は明細から消えているのはどうしてかといったときに、わりといい加減な説明をされることがあるなという経験があったので、確かな情報が欲しいということです。

政策保有株式に関して、議決権行使の結果を個別に開示すべきというところは、私は正直、ここはちょっとねじれていないかなというふうに思っています。ただ、企業側の表現もねじれているので、最近そういう議論をしています。例えば、ガバナンス報告書の1-4に、政策保有株式についてどう考えているか、議決権行使方針はどうなっているか開示がありますが、まるで純投資保有しているような書きぶりのものがあります。政策保有で取引関係がというふうに有報に書いているけれども、CG報告書では、まるで純投資のような方針で議決権行使をする、どこかねじれていませんかと、本当にがっつり提携なり考え方があって、一緒に組んで仕事をしなければいけないんだ、そう簡単に誰かに買収されてしまっては困るんだとかということであれば、徹底的に守りますというのは、それはそれで理に適っているはずなんです。それを純投資のように議決権行使をしますというのは、本来の目的と違うのではないか。だから、多分、その辺が曖昧なものが実は政策保有というところでたくさん残っているのではないかというふうに思います。

30銘柄のリストのもっと下の方まで見たいというのは、その下の方は、僅少でどうでもいいじゃないかという意見もあるかもしれませんけれども、だからこそなんで持っているんだということにもなります。そういう意味で、異動明細なのか何らかもう少し違う開示の方法がないと、議論が深まらないというのはあります。

これは、後の方に出てくる情報開示のタイミングの論点とも関わるのですけれども、この話をするときには、持ち合いの相手方の明細も見ながら話をしています。大きい会社が対話の相手である場合には、その会社の10番目にある政策保有株式、ただ、その10番目の会社さんの有報を見ると、そこでは当該会社はトップに来るとか、そういう関係を両方とも突き合わせながらいかないと、なかなかこれはほぐれないのですけれども、それをするタイミングがほぼ1年前の古い有報ですることになる。例えば、議決権行使指図を決める段階であるとすると、タイミングが悪いなというのがあります。

役員報酬について簡単に。ここも先ほどの企業価値向上にどう取り組んでいるかということで見るならば、幾ら払ったかというのは、どうでもいいというか、あまり重要ではないです。ただ、達成度を知りたいのです。わりと開示のいい会社さんでありましたけれども、業績連動賞与の支給率が70%である。ただ、達成度はどうなんだというのか分からないです。達成度評価と支給率が透明になれば、例えば、達成度が50%なんだけれども、支払ったのは枠のほぼ90%である、そういうことを見ながら、KPIの設定が正しいのか正しくないのかというのを見ていくことができます。海外でも、あれだけ報酬開示が細かくなってきているのは、その達成度評価が妥当かどうか、支払われたものの遂行率と達成度がうまくかみ合っているかというのを見るためにそうされてきています。その都度その都度、やっぱりなかなかいいKPIが見つからないということで見直しがされています。ですから、そういう開示がされればよくて、何もかも個人ベースで幾らもらったのかというところに興味があるわけではないので、そこを無理して開示しろということではないと思います。

あと、ガバナンス情報の中で、CG報告書と有報の一体化のようなこともありますけれども、ここは非常に慎重に考えていただきたいなと思っています。ワンストップという考えでいけば、大きな考え方として適時に分かりやすく提供するということにつながるのかもしれませんが、それぞれ違う種類の開示書類なので、使い分けということがむしろ建設的な対話に資するということがあります。経験からも、CG報告書については、指摘をしたときに比較的速やかに、数か月もたたないうちに改善をしていただくことが数あります。有報の場合はそういうわけにはいかないです。年1回だし、その年1回に、今までと開示の仕方を変えるというのは、相当ハードルが高いので、受取り手が見たときの情報の質が上がるというスピードは、CG報告書の方が高いです。ですから、私は、個人的にこれを分けておいてほしいなというふうに思っています。

最後にしますが、開示書類の提供の時期について、これは株主総会に臨む考え方に関わってくるのだと思います。投資家からすれば、株主総会というのは、要するに、議決権行使の場です。議決権行使の目的は何か、いろいろな運用機関のホームページを見てみますと、大抵の場合、企業価値向上に資するような議決権行使、または企業価値が棄損されることがないように、企業価値の保全のための議決権行使ということで、企業価値ということを書いています。そうなると、事業報告も有報もそういうところに視点を合わせると、共通化が非常にしやすくなってくるのではないかというふうに思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

7人の方から札を立てていただき、今、8人目の方に立てていただきましたけれども、小畑委員、中熊委員、神作委員、高濱委員、中野委員、柳澤委員、大和証券の小林委員、そして永沢委員の順でお願いいたしたく思います。

小畑委員、どうぞ。

【小畑委員】

ありがとうございます。

まず、全体的な話といたしまして、私どもとしても投資家の適切な投資判断、あるいは投資家と企業との建設的な対話に資する開示のあり方を模索することに関しましては、まさにその通りだと考えております。ただ、提供する情報の中身はさまざまであり、それが全て法定開示である有報による開示に馴染むものなのか、あるいは、取引所で行われているいろいろな開示に馴染むものなのか、それから、任意開示、IR等々での個別の対話の中での開示、いろいろな開示のツールがあるわけです。それぞれのどのツールに一番マッチしているのかということをよく考える必要があるのではないかと思います。

特に有報すなわち法定開示につきましては、限られた期限内に提出しなければいけない。しかも、虚偽記載等の法的責任も問われるということになると、おのずと一番リスクの少ない書き方になってしまいます。判で押したようなボイラープレートになることは、法定開示である以上、どうしても避けられない道ではないのかと感じております。むしろ開示内容の充実を求める、自由な開示を求めていくということであれば、有報開示よりも、任意の、あるいは取引所の開示という方向もあるのではないかと考えております。その意味で、有報に対して過度な期待を持つのは、やめたほうがいいのではないかと思います。

それから、企業がいろいろな情報を提供することは、確かに重要だと思っておりますけれども、一方で、そういう情報に比べ有益性に比較的劣後する既存の情報についてはスクラップをするということも必要ではないでしょうか。企業においても、開示にかけるマンパワーには限界があります。また、昨今の働き方改革ということもありますので、過度に企業に負荷がかかるようなことはできるだけ避けていただきたいと考えております。

次に、各論について若干申し述べさせていただきます。まず、非財務情報の充実については、先ほど申し上げましたように、果たしてそれが有報に書くべきなのかどうなのかというところは、しっかりとご議論いただきたいと思います。むしろ任意の開示に重点が置かれるべきではないかと思います。

役員報酬に係る情報については、やはり、企業の戦略との関わりの中で、どういう報酬が支払われるのかというところが重要だということになりますと、報酬の算定の決定に関する方針、こちらの記述が重要なのではないか思います。現在は1億円以上という基準で個別の金額の開示がなされているところでございますけれども、果たして個別の金額の開示にどれだけ意味があるのかというところも含めてご議論いただければと思っております。

政策保有株式につきましては、その保有目的がボイラープレート化しているのではないかというご指摘もあるというところですが、保有目的について1個ずつ事細かに書きますと、それだけでページ数がものすごく増える可能性があり、やはりここは個別の企業、それから投資家との対話の中で明らかにしていくことが合理的なのではないかと考えております。

ガバナンス情報につきましては、先ほどご指摘がありましたけれども、証券取引所のほうで開示されているガバナンス報告は、機動的に情報を出せるという非常に良い面があると考えており、開示の重複等があるとすれば、むしろ有価証券報告書からガバナンス報告書の方に一元化していくと、そういう方向が望ましいのではないかと考えております。

そして、会計監査に係る情報ということで、契約期間の年数の開示という話も資料の中にありますが、長年にわたって監査をお願いすることで、監査人に会社の内容をよく知っていただく、実態に即した監査をしていただける面もあり、その意味では、監査期間が長い方が監査の信頼性を高めているという側面もあろうかと思います。仮に年数を開示し、それについて問われた時には、企業側としてはそういうご説明をすることになるのかと思っておりますけれども、そういうことのきっかけとなる年数の開示が、果たしてどれほど意味のある開示なのかということについては、よくご議論いただければと思います。

また、開示書類の提供の時期の点についても資料に言及がありましたが、やはり非財務情報の充実は、企業の中長期的な企業価値向上というところに関わってきます。中長期の観点が重視されるというのであれば、四半期開示については、むしろだんだん重要性が低くなっていくのではないかと思いますので、こちらについても、その存廃も含めてご議論いただければと思います。

さらに、重要情報の公表のタイミングについては、企業が15時以降に場が閉まってから開示するケースが多いのは、むしろ場があいているときに重要情報が公表されることによって、それを知っている人、知らない人、そういう投資家の間で不公平が生じるのではないかということも踏まえて、場が閉まってから開示しているのが現状ではないかと思います。従って、取引の最中に開示が行われるということによって、むしろ投資家の間に不公平が生じないかということが懸念されるということを指摘させていただければと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、中熊委員、どうぞ。

【中熊委員】

まず、今回のワーキング・グループの趣旨でございますが、私としては、我が国のディスクロージャーをスチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードの時代にふさわしい対話の促進に資する現代的なものに変えていこうということではないかと認識しております。

その意味においては、今回、事務局の方々からいろいろ資料を提供していただいておりますが、やはり英国のStrategic Reportの導入、その後のガイダンスであるところの「Clear & Concise」、これらに示されたディスクロージャーの概念というのは参考になるのではないかと思っております。

このときに、考えておかなければいけないのは、先ほど委員の方からも話がありましたが、まず、ゴールが何かというところを明確にしておく必要があるのではないかということです。あくまでも持続的な企業価値向上への取組みを説明することをゴールとして設定しない限り、ディスクロージャーはクリアでも、またおそらくコンサイスでもあり得ないと思います。こういうところは、きちんと合意をとっていく必要があるのではないかと思っております。

また、法定開示という観点、特に有価証券報告書との関わりで言えば、例えば短信の読みやすさであるとか、あるいは、アニュアルレポート、統合レポートにある経営のメッセージ、あるいはストーリー性、こういったものを有価証券報告書にどう取り込んでいき、よりよいものにしていくか、そういう議論ではないかと思っております。

その一方で、負担の軽減も非常に重要なことであると私も思っております。いろいろな開示資料が重複している部分については、統合によって効率化していく、そういったことが必要ではないかと思っております。

ただし、負担の軽減という観点で言えば、マイナス面についても慎重に考えるべきであると私は思っております。特に、機関投資家だけの視点ではなく、個人投資家の視点も含めてマイナス面がないかというようなことを慎重に考えるべきではないかと思っております。

個別のところでいきますと、先ほどの負担軽減という観点にも関連しますが、EDINETの活用については検討の余地があるのではないかと思っております。EDINETも従前に比べるとかなり使いやすくなったと思っていますが、とはいえ、事務局の資料でもありましたように、もっと長期にわたって記録を遡れるようにしていただくですとか、あるいは、スマートフォンなどで簡単にとれるようにしていただくですとか、そういったことは必要か思います。そのうえで、企業のホームページにおいて有価証券報告書はEDINETに登録したものをそのまま載せるようなことを、もっと積極的に行ってはどうかと思っています。

リスクに関しては、私ももう少し固有のリスクについて言及していただきたいと思います。特に、固有のリスクについての対処や、対応策はどういうものを考えているのかなどは、対話の中で必ず聞くところでもあります。である以上、これを一部の機関投資家に限られたものではなく、一般の方にも分かるような形で記述していくというのは、一つの方向性ではないかと思っております。

持ち合いについては、やはり今の形ですと、非常にボイラープレート化しており、あまり議論として膨らまないというところはあります。できれば、もう少し目的の詳細や効果の評価について記述していただければと思っております。戦略的な投資というものがないとは私も思っておりません。ただ、戦略的な投資である以上、その目的及び効果の評価は必要ではないかと思っております。

また、役員報酬に関わる話に関しては、これはKPIの問題でもあるのではないかと思っています。KPIについては、先ほどの「Clear & Concise」の中で結構触れられておりますが、非財務情報との関わりでも問われる部分であると思います。中長期の企業戦略は、必ずしも財務的な成果だけでは測れないと私も思っています。ただ、その途中経過を測る何らかの指標があった方が、議論としては具体性を持ってくるものだと思います。それらとの関わりにおいて、報酬についても議論されるべきではないかと思っております。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、神作委員、どうぞ。

【神作委員】

ありがとうございます。

私は、建設的な対話に資する情報開示の促進に関する論点について発言させていただきます。

建設的な対話の中心的な部分が株主総会における議決権行使にあることは、疑いのないところであると思います。事務局説明資料の23ページにもございますし、田原課長からもご説明がございましたけれども、現在、法務省の法制審議会会社法制部会で議論されておりますアジェンダの1つに、株主総会関連資料の電子提供という論点がございます。その議論の中でEDINETにおいて有報、もっとも会社法上要求されている情報を含む有価証券報告書であるということが当然の前提になっておりますけれども、そのような情報を含む有価証券報告書が提出されている場合には、会社法上も電子提供があったものとするという議論がなされています。もし、EDINETを使って有価証券報告書が株主総会の開催前に開示されるということになりますと、このことは建設的な対話にとって大変に大きな進歩であると思います。

これまで金商法上の開示と会社法上の開示は目的が違うということで、両者を完全に統合することは簡単にはできないで参ったわけでございますけれども、記載内容の共通化については、着々と努力が進められてまいりまして、現在でも、計算書類ですとか事業報告には含まれているけれども、有報には記載されないという情報は多少ございますけれども、これらの情報についてレファレンスをつけるというような工夫により、有報等で開示することによって、電子提供に代えるということは十分にあり得る考え方であると考えます。

そこで、第一に、ただ今申し上げたような制度が可能になるという前提のもとで、EDINETを通じて株主総会の開催前に有価証券報告書及び会社法が要求している追加の情報が有価証券報告書に含まれる形で提供されることは、大変望ましいと思います。それとともに、有価証券報告書等の開示の内容についても、さらに充実させるとさらに建設的対話に資することになると考えられます。特にコーポレートガバナンスに関する情報開示を充実させるということが望ましいと思われます。そのような観点から議論をしていく必要があると思います。

幾つか個別的な論点について申し上げさせていただきたいと思いますけれども、まず報酬についてでございますが、事務局説明資料の16ページでございますが、現実にインセンティブ報酬を導入する上場会社が増えているというようなこともあり、報酬プログラムについての基本的な考え方、当該プログラムがどのような要素と割合から構成されており、それぞれの要素を具体的に決定する要因が何であるのかといったことを、今日お配りいただいた外国の例ですと、表やグラフを駆使して非常に分かりやすく書かれておりますけれども、それを参考に分かりやすく提示するという点も含めて、開示を充実させるという方向で議論を進めていただければと思います。

また、政策保有株式につきましても、事務局説明資料の19ページに指摘されているように、保有目的が非常に定型的かつ抽象的な記載にとどまっているという点は、確かに非常に大きな問題であると思います。議決権行使結果を個別に開示するという点については、保有目的が何かということがより大事でると考えます。議決権行使結果を開示させるとしても、その前提として、一体保有目的が何であるかが明らかにされる必要があると思われます。逆に、保有目的が具体的、明確に定められているのであれば、議決権行使結果の個別的な開示を要求する必要があるのかどうかについては、別途、議論する必要があると思います。

また、目的とともに、その目的が実際に達成されているのかということについての開示ないしは評価も重要なポイントであるように思われます。

それから、これもほかの委員の方からもご指摘がございましたけれども、純投資との区別が必ずしも明らかではないことは、私も同感です。この点についてもワーキング・グループで議論をしていくことができれば良いと思っているところでございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、高濱委員、どうぞ。

【高濱委員】

ありがとうございます。

今回のワーキングの目的としましては、企業開示の役割という点をベースに、金商法の制度開示である有価証券報告書の開示の議論が中心になるという理解をさせていただいている上で、意見を申し上げさせていただきたいところがあります。

開示内容の充実についての議論は非常にいいことなのですけれども、先ほど来、いろいろな方から意見が出ているのですが、やはり有価証券報告書の開示のタイミングが適切でなければ、結局、この利用自体がなかなか促進されないのではないかということを非常に懸念しております。現行制度下におきましても、既に有価証券報告書の総会前の開示は可能であるという事実の理解があると思うのですが、現状では有価証券報告書の総会前の開示は極めて少なくなっております。したがいまして、今回のワーキングの対象から外れるかもしれませんが、ぜひ開示内容とあわせて、どのように現行の法制下においても、株主総会の前に有価証券開示情報を開示していくか、ということを検討できればと考えております。

それから、別の視点ですが、今回、資料の中に有価証券報告書以外にも、コーポレートガバナンス報告書、四半期開示、アニュアルレポート、短信と非常に多くの資料が例示をされています。ぜひともお願いしたいのは、こういった全ての企業開示全体をとらまえて、そのバランスをとるということを考えていただきたいと思うとともに、その中で、我々公認会計士が付しております監査報告書もしくはレビュー報告書という保証のニーズが、どのようなレベルにあるのかを検討いただけたらありがたいなと思っております。

具体的には、ご存じのとおり、有価証券報告書、四半期報告書には、監査もしくはレビューという保証をつけているのですが、それは必ずしも法定書類に限定されているわけではなく、現行、アニュアルレポートの財務情報部分には、我々の監査報告書が添付されている事例がほとんどだと思います。したがいまして、法定開示あるいは任意開示という議論とは別に、やはり保証のニーズという点について、利用者の視点からも検討いただく必要があるのではないかと思っております。

それから、最後に、個別に我々業界に関する事項として、資料22ページの会計監査に関する開示のところに、監査人の継続年数の記載に関わる内容が記載されております。これにつきましても、この開示が結果として利用者にとって、どのような情報になるのかを改めて十分に検討いただきたいと思っております。現行法制下におきましても、業務執行社員が代わるパートナーローテーション制度の中で、継続監査年数が7年を超える業務執行社員についての開示は、既に行われているところでございますので、この辺とのバランスをどのようにとるかということも検討いただきたいと思っています。若干の懸念事項としましては、我々の業界特有の事象ですが、もし監査法人の関与年数を開示するということでいくと、監査法人というのは合併を結構繰り返しておりまして、海外のように大きなファームが何個かあって、それがずっと続いているという実務にはなっておりません。結果として、海外の提携ファームとの関係で監査法人の名前が変わったり、あるいは、監査チームのメンバーが監査チームごと別の監査法人に動いたりすることもあり得るので、もし実質的な関与メンバーが継続している年数を開示するのが趣旨ということであれば、必ずしもそれが形式的に把握することができないケースがあるということについて、制度設計の際にご検討いただけたらと思います。

私からは以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、中野委員、どうぞ。

【中野委員】

研究者の立場から、MD&Aに限定して申し上げます。資料の10ページ以降の箇所について、3点申し上げます。

まず1点目は、事務局作成の資料の3Mのケースにおいて、セグメントがたくさんあるという事例をご紹介いただいているのですけれども、かつては、アメリカは多角化企業が主体だったのですけれども、市場規律が非常に強く、現在は多角化企業は比較的少ない割合になっています。大企業は確かに多角化しているのですけれども、市場全体で見ると、多角化企業は比較的少ない。それに対して日本企業は、私の計測では、上場企業の約7割がセグメントを開示しています。アメリカは専業企業が多いのに対して、日本は1つの企業の下に多くの事業を擁しているという実態があります。したがって、現在、改正を進めておられるセグメント別にMD&Aを記述するという点については海外と比べても、日本の場合は極めて重要な開示と認識しておりまして、この点は注視していく必要があると思います。これが1点目です。

2点目ですけれども、2000年から連結の開示が始まりまして、それ以降の期間を観察すると、海外の利益、つまり、現地生産等が進展した結果、海外で稼ぐ利益がどんどん増えており、2010年の段階で、上場企業の約4割が海外の利益に関するセグメント情報を開示していました。ところが、ご案内のように、2011年に基準が改正されまして、これを開示しなくていいという選択が現在は可能となった結果、海外利益の開示率は2010年時点で約4割だったのですけれども、現在は約1割まで下がっています。

海外の研究などでどんな影響が出たかということをご紹介しておきますと、投資家がモニタリングをできなくなっている。つまり、海外事業の業績に対するモニタリングができなくなっており、その結果、例えば不採算部門が海外において増えたとか、あるいは、ここの場での議論からは外れるかもしれないですけれども、租税回避行動が顕著になったという事実が報告されています。したがって現在の開示にはこうした問題点が含まれているということをご指摘させていただきたいと思います。

3点目ですけれども、MD&Aについて米国の事例が挙げられているのですけれども、この点について、米国でどんな役割を果たしているのかというのをごく簡潔に申し上げておきます。日本の場合、財務諸表だけがあって、監査はそこを見ていて、それとは距離をおいて補足情報という形でMD&Aがあるというように理解できるのではないかと思います。それに対して米国の場合は、財務諸表、MD&A及びリスク情報とが三位一体の思想で設計されておりまして、ご存知の方も多いかと思うのですけれども、MD&AをSECがレビュー、チェックをしています。しかも非常に厳しいチェックをしています。例えば、リスク情報の記述に基づいて財務諸表における退職給付引当金の金額の妥当性をSECがコメントし、監査人がそれに対して非常に緊張感をもって監査をしているという実態がございます。この点で、日本の開示のレベルが徐々に上がってきてはいるのですが、本格的にMD&Aが米国のように機能するには、やはり行政府が何らかのチェックを行う必要があると思います。MD&A及びリスク情報のレビューは監査には馴染まない面がありますので、いくつかのステップはあるかとは思うのですけれども、行政府がレビューを行うというのが、ある段階においては必要ではないか、このように思っております。

あと1点だけですが、セグメントやMD&Aとは別に、雇用関係についての開示が検討されるということで、教育の現場などで問題になっていることですけれども、現在、製造業の製造原価明細書を開示しないという選択ができる状態になっていまして、その結果、付加価値の計算ができないということで、テキストなどにも付加価値の計算があるのですけれども、製造業については現在できないと書いてあるテキストが多くなっています。働き方改革でも、生産性に焦点が当たっています。人件費が分からなければ、付加価値の計算はできないのですから、ぜひ開示していただきたいということであります。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、柳澤委員、どうぞ。

【柳澤委員】

ありがとうございます。

既にご発言された委員の方々の論点と重なるところもありますが、幅広い観点からの意見も許容されておりますので、総論的な課題認識につきまして、3点ほど述べさせていただければと思います。

1点目は、非財務情報の充実といった課題と表裏一体といえるかもしれませんが、非財務情報と財務情報のつながり、統合についての開示のあり方です。

中長期的な時間軸で見れば、非財務情報は、財務情報に転化していくと考えられますが、こうした非財務情報と財務情報の関連付けを有報の中でどのように示していくのか、さらなる工夫と検討の余地があるものと思います。

例えば、有報の「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」において、企業価値創造のストーリーを非財務から財務といった観点で記述したり、体系的な説明として、価値創造モデルを用いて図表で示したり、それぞれの企業に適した創意工夫で、さまざまな開示のアプローチが考えられると思います。有報で非財務情報を充実させる目的や方向性にも関わってきますが、基本的なロジックとしては、非財務情報と財務情報の関連性を考慮しながら、自社の企業価値創造プロセスについて、的確で分かりやすい開示の仕方を検討していくことが、中長期的な投資判断を促す意味でも有用と考えております。

また、非財務情報のうち、どのような情報を充実させていくのかについても、有報の目的と役割に沿って、投資判断に必要かつ重要な情報であって、それによって財務情報のより適切な説明、理解が可能になるといった財務情報との関連性を踏まえておくことが、企業と投資家の共通認識として、改めて求められると思います。その意味では、関心の高まっているESG情報につきましても、独立した項目として有報に反映されるのではなく、持続的な企業価値向上や投資判断に照らして、重要性の高いESGの要素が財務情報との関連付けの中で個々に織り込まれていくという整理になると考えております。

2点目は、情報の記載内容に関するガイダンスの必要性についてです。

有報の項目記述においては、基本的に内容の制約がなく、自由な記載が可能という反面、本来書かれるべき内容であっても記載がされていない、若しくは不十分になるといった傾向も一方で生じやすいように思います。そもそもMD&Aでは、経営者の分析的視点での記載が十分でなかったという実態もあり、今後の非財務情報の充実を効果的に進めていく上でも、記載すべき内容について、ある程度の方向付けを行い、何らかのガイダンスを設定しておく必要性は検討の余地があるものと考えております。

例えば、経営戦略やリスク情報、役員報酬の算定方法の決定に関する方針、政策保有株式の保有目的といった記載の仕方については、定型的で抽象的な記述にとどまることのないよう、投資判断に必要かつ重要な情報として、どこに焦点を当てて、どのように記載すべきか、事務局で整理いただいた海外の開示事例なども参考にしながら、ガイダンス設定の要否に関しても検討しておくことが考えられると思います。

3点目は、直接的な論点ではないかもしれませんが、制度開示と任意開示の効果的な連携のあり方といった課題認識です。

例えば、有報に任意開示のよい部分をどう取り込んでいくのかという観点が挙げられると思います。企業のアニュアルレポートや統合報告書では、経営ビジョンやトップマネジメントメッセージ、自社のビジネスモデルや事業ポートフォリオ特性、中長期的な企業価値向上策やロードマップなど、図表や写真なども用いながら、分かりやすく、かつ質の高い情報提供が行われている事例が数多く見られます。任意開示で提供されている情報のうち、財務を説明する記述情報として有用であり、投資判断に影響を与え得る情報であれば、有報においても効果的な活用方法を検討していくことが求められると思います。自社の特徴をより的確に伝え、建設的な対話を促すためにも、制度開示の領域で、こうした任意開示のコンテンツの活用や取り込みを検討する意義はあるものと思います。

また、制度開示と任意開示の役割分担や情報面での相互補完といった関係性も考慮に入れながら、より体系的に情報提供の全体像を整理しておく必要性もあるのではないかと考えております。。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、大和証券の小林委員、どうぞ。

【小林昭広委員】

小林でございます。

私は、1つ質問というか、お願いと、もう1つは、本日は第1回ということなので、今後にかけての思いというか、そういうものを述べさせていただきたいと思います。

まず1つ目です。先ほどの委員の方々もありましたけれども、米英の良い開示というか、この事例を使ってまねればいいのではないかという意見は当然あろうかと思うのですけれども、コストと効果というか、その観点も委員の方からありましたけれども、そういう観点も含めて、できれば米英の4社が主流派なのか、あるいは多数派なのかというようなことを、数字的なものをお示しいただければなというふうに思います。

それと、第1回目ということで、思いなのですけれども、開示を充実するソリューションとして、ガイダンスとか、そういうもので何らかの書くことを具体的に示すことで、いわゆる義務化の方向みたいな考え方がある一方、上場会社にとっては、経営戦略は当然種々さまざま違いますから、例えば、資本政策、資金調達、そういう面などでは、海外の市場での調達をメーンにしているとか、あるいは、国内重視の調達をメーンにしているとか、それぞれいろいろあろうかと思います。いわゆる自主性といいますか、そういう自主性をベースにした任意開示、自主開示、自主的な開示といったものがあるべき姿だという両方の考え方があろうかと思います。ですので、このあたり、なぜ開示が充実されないか。それがなぜなされないか、そういったところの解明も含めて、その実効ある議論を今後させていただければなというふうに思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。1点目の課題は宿題とさせていただきます。ありがとうございました。

あと7名の方に札を立てていただいておりまして、永沢委員、清原委員、熊谷委員、和里田委員、貝増委員、青委員、加藤委員の順でお願いしたいと思います。

永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。

私は、自分が代表的な個人投資家かどうか分かりかねますが、個人投資家の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。

今回のワーキング・グループでの審議は、最終的には、金融商品取引法に基づいて作成される有価証券報告書の見直しや改善というところにつながるのであろうと思いますが、個人が有価証券報告書に直接触れることは、普通はないとは思っております。個人が投資をしている会社について情報を得る媒体としては、「株主の皆様へ」と題して送られてくるもので、これは会社法に基づくものだと思うのですけれども、この書類と有価証券報告書との関係が私には整理できていない部分があるのですが、事務局資料を見ますと、他の委員からもご指摘ありましたけれども、いいところだけが書いてあって、会社にとって都合の良いことだけが記載され、不都合な情報、たとてば、なぜそのように企業価値が棄損したのかとか、無配に陥ったのかというような情報は、記載が少ないように感じております。個人の投資家や株主、特に株主ですけれども、なぜそのような決算になったのかというところや、そのの因果関係、具体的には先ほど三瓶委員がお話しされたようなところが知りたい訳です。企業価値についてどうしてこうなったのか、それは市場環境だけのせいではないと思いますので、そういったところの説明を求めたいと思っております。こうした説明は強制的なものではなく任意の記述になるのであろうと思いますが、個人の株主を育て、個人の株主が会社との建設的な対話にもっと参加できるためには、そういった説明、記述が手掛かりとして必要と思います。

個人の立場から欲しいと思う情報は、やはりガバナンスに関するところでございます。事務局資料では、監査に関するところのご提案がありましたが、これも先ほど、三菱商事の小林委員から海外の投資家からは要望が多いところとのご紹介がありましたけれども、個人の株主も役員の報酬には関心があります。もちろん、役員の報酬を見てどう思うかは個々人によって様々異なりますが、役員報酬について踏み込んで、経営者の言葉でどう説明してあるのかは、個人投資家といえども関心があるところでございます。

それからもう1点、社外取締役をもっと増やし、その役割にもっと期待していきたいという流れがあるわけですけれども、会社のガバナンスにおいてどう機能しているのかというところが見えてきません。例えばもっと数字を用いる等して、どう活動されているのかを説明をいただきたいと思います。社外取締役に関する記述には抽象的な表現が多いように感じており、例えば小林委員からお話が出たような、海外の株主が聞きたがっている項目が具体的にどういうものなのかということをまず出していって検討してはいかがかと思います。全ての会社に対してそれらの項目を強制的に開示いただくということはなかなか難しいかもしれませんが、さはさりながら、やはり比較も必要でございますので、これは最低限必要であろうというような項目をリストアップしてみて、その上で、どうしたら株主や投資家に使いってもらえるか、使い勝手がいいのはどういう開示の方法かというところの検討も必要なのではないかと思っております。

最後になりますけれども、次世代の個人投資家や株主を育てるという意味では、若い世代にも入手しやすい方法での情報の提供が必要です。今は紙媒体が中心の情報開示ですが、デジタル化に対応し、スマホやタブレットをベースにした開示がこれからの個人投資家・株主向けには必要なのではないかと思っております。

余談になりますけれども、投資信託の運用報告書の見直しを数年前に検討しましたが、結局のところ、印刷会社が決めた枠があり、様式をなかなか変えられないというのが現状でして、結局はあまり変わらなかったということがございました。情報開示の中身ももちろんですけれども、どんな見せ方をするのかという最終的なアウトプットの様式もイメージしながら、どういう情報開示がこれからの時代に求められるのかというところ、情報の受け手にどう見えるかというところも、検討の課題として入れておくのが望ましいのではないかと思います。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、清原委員、どうぞ。

【清原委員】

ありがとうございます。

今回議論されている有報の関係ですけれども、事業報告との統合ということも考えていくと、それぞれの性質がどうかという問題があるかと思うのですが、事業報告そのものは、今まで行ってきた当期の事業の結果を株主に対して株主総会で報告するというものであるのに対して、有報は、募集・売出し、有価証券届出書との接合性、連続性がある点で、販売勧誘資料という側面もあるという、そういう面が大きな違いがあるのですが、先ほどお話がありましたけれども、有報は財務情報のほか、MD&Aの記載などは、日本では付加的な情報というような位置付けであったのではないかと思われます。

他方、本来、投資判断に向けたものということであれば、将来情報、これからどうなっていくかということを、投資家が判断していくうえでの情報が重要であり、そこの観点で経営者の目を通した分析が重要ですので、その意味で、MD&Aを拡充するということ自体は非常に重要なポイントであると思います。ここで、そのMD&Aの記載には将来にも関連する情報が入ってくるものですから、ここの記載の充実を求めていくとすると、やはり法的責任の問題は避けれず、結果的に将来の予想にもつながる不確実性のある記載部分について、どのような場合に法的責任を問われるのか、または責任を果たしたことになるのか、ここの部分をクリアにしないと、なかなか踏み込んだ記載ができないないのではないかと。そして、事業報告などは、最近、特に株主総会に向けてプレゼンもしますのでグラフも入って充実した開示がなされる方向にありますけれども、有価証券報告書はやや無味乾燥なものになってしまっている、これをどう充実させて実際に読まれるようにするか、も考える必要があると思います。

ボードなどでも、事業報告は総会招集決議の関係で議論されるとしても、有価証券報告書は、株主総会で選任されてすぐに取締役会が開催されて翌日出されるような中で、果たして有報自体にどれだけボードの人たちが関心を持っているか、議論の対象となるか。本来であったら、MD&Aはマネジメントそのものの言葉で書かなければいけないし、事務局が作って終わりというものではないはずなのですけれども、そこら辺の考え方は大きく変わっていかなければならないのではないか。言い替えると、現在、ほとんどの会社で有報は役員に就任してすぐ翌日には提出されるという実情にありますけれども、そこの内容に対する法的責任が伴っていることを考えれば、本来は事業を行ってきた取締役・経営陣がいるわけですから、その方々が有報を提出してから退任し、次に交代していくというのが筋だろうと思われますが、そこが少しねじれてしまっているというところは、考え直してみる必要があるのではないかと思っております。

以上になります。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

お隣の熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

ありがとうございます。

前回のディスクロージャーワーキング・グループから引き続き参加させていただいておりますので、そういう立場でまず一言申し上げます。前回のディスクロージャーワーキング・グループで、非財務情報の充実ということが決まりました。しかし、前回は非財務情報の充実に関しては方向性のみが決まって、突っ込んだお話ができませんでした。今回それをやっていただけるということで、大変期待しております。

既に皆様からも出ておりますとおり、非財務情報に関しましては、欧米の先端的な開示に比べまして、我が国が法定開示において劣後しているように見えるというのは、そのとおりではないかというふうに考えております。

これは任意開示の方が馴染むのではないかというような議論もございますけれども、今、清原先生がおっしゃったところとも絡むとは思うのですけれども、やはり海外においてセーフ・ハーバー・ルールというようなものがあって、そういうことの中で書きやすくなっている。今、清原先生の言葉にもありましたけれども、マネジメントの言葉で語られる。我々読者が読んでいても、非常に響く言葉で書いてある。そういった意味では、よく言われることでありますけれども、我が国の中でセーフ・ハーバー・ルールがない中で、有報の開示の自由度が上がらないという問題があるわけであります。諸外国と比べたときに、やはり法的な環境、あるいは訴訟環境等が違いますので、そのまま持ってくるというわけにはいかないとは思うのですけれども、我が国の中で有報という法定開示の自由度を上げていくために何ができるかという議論は1つ必要なのではないかというふうに思っております。

それから、ガイダンスという議論がありますけれども、多分、ガイダンスだけでは、なかなか非財務情報の記載内容の充実は難しいかなというふうに思っております。日本でも非財務情報について非常に開示のいい、ベストプラクティスの事例が出てきているわけであります。そういうベストプラクティスは、現在のところ主に任意開示でありますけれども、こうした優れた実務をどうやって上場企業の間に広げていくか。制度的な枠組みの中でベストプラクティスを参照しながら全体の底上げを図っていくということが重要ではないかと考えております。技術的な議論になろうかとは思いますが、今回のディスクロージャーワーキング・グループでも、そのあたりの議論はあってもいいのではないかなというふうに思っております。

それから、先ほど来、いろいろな形で言及されておりますイギリスのStrategic Report、これは本当に企業戦略、あるいはビジネスモデル、あるいはバリュークリエーションのプロセスと経営戦略、それからリスク及び企業実績というのが非常に有機的に絡まったような状態になっている。これは誰が見ても非常に有用な情報であろうというふうに思います。ただ、イギリスは、ご紹介にもございましたように、会社法でやっておられるわけでありますけれども、全ての会社がこのStrategic Reportを出しているわけでもありませんわけで、この法的な位置付けといいますか、どういう形で上場企業についてこういう開示を求めることができているのかといったところについても、もし調べていただけるのであれば、調べていただけたらなというふうに考えております。

特に日本の場合、先ほど、上場会社は4,000社あって、全てにそういうレベルの開示を求めることができるのかという議論がございました。日本においてこういった制度を仮に移植といいますか、日本も目指す方向は一緒だということがあるとして、中間的な目標として、各社のリソースの限界を考えた場合に、どういったところ、どれぐらいの企業に関してそういう開示を求めていくのか。究極的なゴールは4,000社全体を目指すとしても、そういうことは、議論してもいいのではないかなというふうに思っています。

非財務情報は任意開示で十分という議論はあるのですけれども、やはりご案内のとおり、任意開示でこういう類の調査をしても、多分、アニュアルレポートを作成しているのは、全体で1割程度だろうと思います。それではなかなか全体のレベル感がアップしていかないと思います。

また、こういう経営戦略ですとか、バリュークリエーションのプロセス、ビジネスモデルというのが一体化された開示というのは、ある意味、投資家との対話に役立つばかりでなくて、日本企業の経営の質を高めていくという意味でも非常に大きな意味を持っているのではないかなというふうに思っております。

それから、あとは簡単に申し上げますけれども、英文に関しましては、財務諸表に関してはXBRLでかなり対応できると思っております。そういうコンピューターの言語がございますので、比較的簡単にできる。問題は、やはり非財務情報なわけであります。非財務情報についてボイラープレートがいけないという議論もあるのですけれども、先ほどの政策投資といったようなもの、ボイラープレート化することによって英文化しやすいような情報もあろうかと思います。そういったもの、記述的とは言えない非財務情報に関して何かできないかということを考えていくことは必要かなと思います。

それからもう1つ、EDINETでございますけれども、これは確かに以前使い勝手が悪かったものが、どんどん使い勝手がよくなってきてはいると思います。ただ、こういう電子的な情報の開示に関しましては、やはり金融庁さんがいくら頑張っても、多分、情報ベンダーさんの提供する情報の方が使い勝手の方がいい。ただ、その情報ベンダーに対して情報を流していく上において、このEDINETの仕組みがあり、有価証券報告書がEDINETに対応して作られたりあるいは東証の決算短信がXBRLで作られるということで、情報の流通は非常に早まっているわけであります。そういった側面で、使い勝手もあるのですけれども、もう一方で、先ほどございましたけれども、法定開示の年数が決まっているわけであります。せっかくこういう電子的な時代になって、法定開示の保存年限、しかも金融庁のデータベースの中にあるべきデータの年数が紙ベースの時代の取決めで上限が決まっているのは勿体ない。これはもっと長期化する方向で見直していただく、予算の関係もあろうかと思うのですけれども、そういう議論もあってしかるべきではないかというふうに思っております。

最後に、EDINETにも絡みますが、こういうデジタルな電子情報の媒体と、ずっと紙ベースの議論が多かったと思うのですけれども、やはり電子的な情報が一般化してくる中で、それぞれのパーツパーツをどういうふうに開示していくか、それで法的な一体性をどういうふうに保っていくのか、クロスリファレンスなどの利用も含めて、こういう電子的な媒体が一般的になる中で、金商法をはじめとして、法定開示と電子開示の関連付けというものも、もし可能であれば、議論をしていただけたらなというふうに思っています。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

予定の時間が来てしまっているのですが、あと5人の委員の方々からご発言いただければと思います。和里田委員、貝増委員、青委員、加藤委員、黒沼委員、できれば手短か早口で……。

和里田委員、どうぞ。

【和里田委員】

ありがとうございます。それでは、手短に申し上げます。

私どもは、個人向けの証券会社であること、また私は会社のディスクロージャー、IRを担当しているということから、この2つの観点から意見を申し上げたいと思います。

1つ目は、個人投資家という観点で、先ほど、永沢様からもありましたとおり、企業のディスクロージャーにあまり興味がない。興味がないというか、基本的には生データである有価証券報告書であるとか、例えば、半期報告書、決算短信、そういったものについて、あまりご覧になっていない。一次情報はご覧にならないけれども、それを加工した証券会社のアナリストレポートであるとか、金融専門誌の銘柄紹介、そういったものを参考にされています。今回の議論の中で、個人投資家を対象として入れるかという観点はあろうかと思いますが、もちろんこれはチキン・アンド・エッグでして、こういった情報がないから個人投資家が見ないという面もあるものの、現時点では、非常にその観点は低いのではないかと思います。現在、個人投資家の関心が高いのは配当であったり、優待であったりしており、そういったものが特集されると、非常にその専門誌が売れると、そういう状況になっております。また、当社におきましては、非常に短期的な投資家が非常に多い。これは事実でございます。なぜかといいますと、株を買うと、利益が出ればやはりすぐに売るんです。利益がでているのに売らないで持ち続けるということはなかなかしない。こういうことからすると、基本的に個人投資家というのは、これは対面証券であろうと、ネット証券であろうと、基本的には短期的です。1年以上持つというのは非常に難しい。なかなかあり得ない。皆さんが自分でお持ちになればそういう気持ちになると思います。ですから、今回の議論の対象としては、機関投資家などを対象にして考えていくべきではないかと思います。

次に、発行体のディスクロージャーの観点から申し上げます。法令に基づく有価証券報告書、取引所の規則に基づき短信、ガバナンス報告書等々あります。もう1つ、任意開示がございますが、私どもは、当方のホームページで、どの資料が見られているかというのをページビューで確認してきたところ、やはり一番少ないのは有価証券報告書なんです。なぜかというと、公表のタイミングが遅いということで、どうしても短信の方がよく見られている。最も見られているのは何かというと、IR資料でございまして、こちらの方が、先ほどからの議論にでてきております企業価値向上に関するストーリーが事細かく書かれている。さらに、自由度も高い。また訂正とか、そういったものが厳格でないということで、かなりの企業さん、こちらの任意開示の方に力を入れていると思います。これは月次の業務実績を開示したりとか、そういった点にも表れていると思いますし。今回の議論において、考え方として忘れてはならないのは、開示というのも企業の競争戦略の1つであるという点だと思います。任意開示を充実していくというのは、1つの競争でありまして、これが適切な株価形成を設定し、それに基づいていろいろな資本調達にも役立つという点があるんじゃないかと思っております。

3点目としましては、問題提起ですが、ちょっとずれてしまうかもしれませんが、私は前職時代、企業のグローバルオファリングの国内目論見書と海外目論見書のドキュメンテーションをしておりました。その際の感想ですが、明らかに国内目論見書は簡素だなと。参照方式がありますので、有価証券報告書を参照方式で届出書で出せる。一方、海外目論見書は、英米の開示のプラクティスに沿った内容とするので、外国人弁護士事務所に頼んで、かなりの労力と時間もかかって作る。内容が大きく違う。同時にオファリングをするのに、提供される情報が大きく違う点については、非常に違和感がありました。この開示内容の差が理由で、海外株主比率が50%もあるにもかかわらず、国内目論見書の方が開示が少ないので、国内で公募増資を選択する。そういうことが行われている。ですから、定期的な日常のディスクロージャーだけではなく、増資のようなオファリングをする場合の開示、こういう点も考えていくべきではないかというのが1つの問題提起でございます。

以上、早口ですみません。失礼いたしました。

【神田座長】

ありがとうございました。

貝増委員、どうぞ。

【貝増委員】

非財務情報の開示が今回の中心になるとは思うんですが、大体、開示の議論をしていると、必ず起こってくる話がありますので、あえて申し上げておきたいと思います。

まず、「連結重視だから単体は簡素化してもいいんじゃないか」と、この根拠なきことが言われた結果、先ほど、話がありましたように、付加価値分析が会計学の授業でできなくなってしまったということがあるのではないかと思います。

それから、「長期投資重視なんだから、四半期は簡素化していい、無くてもいい」という、これも単純ではないかなというふうに私は思っております。長期で見るということと、足元をチェックするということはイコールに論じてはいけないのではないかなと。

それから、「有価証券報告書と事業報告書の重複をなくしましょう」というときに、何でも「期間は短い方に合わせましょう、開示項目は少ない方に合わせましょう、それが効率的です」というのも、これもちょっとおかしくないかなというふうに思います。

さらに、大体、具体的な項目の話になってくると、必ず出てくるのが、例えば、企業の方から、「IR説明会とか、そういうところで質問をされたことがない。だから使っていないんじゃないか」という声です。逆に言うと、質問しなくていいほど、その情報がきっちり与えられているから質問が出てこないということもあり得るんじゃないかと思います。

さらに、開示の議論をしていくと、よく起こってくることなんですが、特にボイラープレートで「こんなものを出しておいても役に立たないのではないか」あるいは、「普段、斜め読みをしているだけだよね」という。つまり、平時においては、確かに斜め読みされている情報が、ある種、例えば突発的な事故があったり、不祥事があったり、そういう非常時になると、ものすごく重要な場合がある。ここら辺のことを、議論が白熱していくと、つい忘れがちになりそうなので、あえて初回に申し上げておきたいと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

青委員、どうぞ。

【青委員】

まず、事務局の方で提案されている投資家の適切な投資判断、それと企業の投資家との建設的な対話を促していくために開示について充実に向けて再検討するという、検討の方向性は大賛成でございます。

その際に、軸としては、企業価値向上に各社がどう向き合っているのかを投資家がしっかり理解してきちんと対話ができるように、そして、経営成績についても、十分に適切なタイミングで把握して理解できるということが重要かと思いますので、こうした観点からの検討が必要ではないかと思います。

今回の議論を通じて、有報の中で利用者にとって重要性が高くて、有用性が高く質の高い情報が提供されていくことが期待され、その充実に向けた議論をぜひ進めていければと思います。

そのときの前提として、有報に書きやすいということでないと、なかなか記載が定型的な簡素なものになってしまうということも、十分に考える必要があると思います。それから、先ほどから出ているとおり、会社によって、十分に体制が組めるところと組めないところもあるので、その内容の弾力性も念頭に置きながら、有報が充実するような環境づくりが重要と思います。

個別の論点について、MD&A、経営戦略、リスク情報というものは、投資判断上、極めて重要ですので、こうした重要な情報は積極的に開示の充実を考えていく必要があるのではないかと思います。

ガバナンスに関しても同様に、情報の重要性に鑑みて、より充実させていき、企業と投資家との対話がしっかりとしたものになることを目指していくことが大事かと思います。

有報とその他の任意の開示、例えばガバナンス報告書もそうですが、そうしたものとの棲み分けについては、より重要性の高いものについては、しっかり有報に書いていくということにしつつ、有報に書きやすい環境整備をしていく方向で考えることが適当ではないかと思います。そのため、有報とその他の開示の役割を明確にした上で、記載項目を整理していって、投資家の見やすいものにしていくということが大事ではないかと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】

ありがとうございます。3点ほどコメントさせていただきます。

最初に、本日の事務局の資料及びディスカッションでも、イギリスの開示の仕方がモデルケースのようなものと位置づけられていましたが、イギリスでも、おそらく制度を導入した当初から立派な開示が行われていたのではないと思います。ですから、どのような経緯でこういう立派な開示が行われるようになったかということが非常に重要だと思います。これは、これから我が国が政策パッケージを考える際に、開示を促進するための手段を検討する必要がありますが、この点に関する非常に有益な資料になると思います。

2点目は、ターゲットの話でありまして、これも既に他の多くの委員からのご発言と重なるのですけれども、例えば、本日の資料の27ページで、英文による情報提供の例として、日経225銘柄の話が挙げられております。この趣旨は、日経225銘柄でもこれくらいしかやっていないのか、それとも日経225銘柄は既にこれくらいやっているのか、これは両方の解釈があると思います。そして、日経225銘柄であれば、機関投資家の数がそれなりにいると思いますので、追加的な規制を設けなくとも、ゆっくりかもしれませんが改善はしていくと思います。ただ、その背中を押すために何らかの法改正は必要かもしれません。これに対して、問題となるのは、日本の株式市場の株主構成は、二極化していることです。1つの極には225銘柄のように機関投資家が非常にたくさん株式を保有している銘柄があり、もう1つの極には、バブル崩壊以降、ほとんど株主構成が変わっていない銘柄、おそらく政策保有株式が大半を占める銘柄があります。政策的には後者の銘柄をターゲットにした方が、費用対効果の観点からは有益だと思います。

3点目は、そういった観点から、政策保有株式に関する開示で何かできるかということなのですけれども、最近のさまざまな議論を見ていますと、そろそろ開示には限界があるのではないかという意見もあるようです。ただ、政策保有株式の開示が今は有報で求められているのですけれども、上場会社が政策保有している株式だけではなく、政策保有されている株式の開示も重要だと思うのです。たとえば、政策保有している株式の相手方が自分の会社の株式をどれぐらい持っているか、これは株主名簿を見れば分かるはずですので、その開示を考えてはどうか。これは個別的な開示というよりは、例えば、大株主の状況の開示の中で、どれくらい政策保有されているかということを開示してはどうかといことです。先ほど、どなたかのご発言の中で、機関投資家は自分で上場会社について政策保有されている株式の数を調べなければいけないという指摘があったかと思いますが、そのような作業を機関投資家に課すのは不親切な感じがします。有報で政策保有されている株式がどれくらいなのかということ、これは総額で十分だと思うのですけれども、それを開示させてみると、意外に不合理な政策保有というものを減らす効果はあるのではないかという印象を持っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、最後になりましたが、黒沼委員、どうぞ。

【黒沼委員】

初回ですので、総論的なことについて一言だけ申し上げたいと思います。

今回の議論をするに当たって、開示と対話の関係を見極めることが重要ではないかと思います。皆さんのお話を聞いていますと、法定開示の項目に上がっているけれども、不十分な一般的な記載しか行われていないような事項について、機関投資家が聞いた場合には、必ず答えてくれるような事柄は、その多くのものは、一般の投資家の投資判断にとっても重要な事項でしょうから、それだったら最初から法定開示のほうに記載してほしいというふうに思う反面、そういうような情報の中には、投資家判断にとってはあまり重要ではないものも含まれているかもしれない。そういったものであっても、今回は対話のための開示ということが問題となっているわけでして、対話によって企業価値を向上させることができれば、それは究極的には投資家の利益にもなるわけですから、対話を引き出すための開示というものもあってよい。それは何か。それが投資判断のために重要な開示ではないかということを、あるいは、その相互の関係を理解した上で法定開示に載せるべき項目の範囲を考えていくことが重要ではないのかと感じました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

初回から時間を15分以上延長してしまいまして、大変申しわけございません。将来の会合でお返ししたいと思います。

本日は、ご出席の委員の皆様、20名全員の方からご発言いただきまして、どうもありがとうございました。本来であれば、二度目、三度目とさらにご意見を述べたいという方もいらっしゃると思います。時間も限られておりますので、ぜひ追加でのご意見、ご質問、あるいは要望等がありましたら、事務局まで、メールとか、電話とか、その他、適宜の方法でご連絡いただければと思います。そういう形を採りつつ、ここでの議論を充実させていきたいと思っております。本日いただきましたご意見を踏まえ、次回以降、さらに議論を深めさせていただきます。

最後に、事務局からご連絡等ありましたら、お願いします。

【田原企業開示課長】

次回の日程につきましては、現在調整をさせていただいておりますので、最終的な決定は調整が終わったところでさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

また、机の上の青のファイルですが、重いと思いますので、こちらで保管いたしますが、もしお持ち帰りになられる場合は、次回、お持ちいただければと存じます。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

以上で散会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3846)

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