金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第2回) 議事録

  • 1.日時:

    平成30年1月23日(火)10時00分~12時30分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【神田座長】

おはようございます。まだ定刻より少し早いのですが、本日ご出席の委員の皆様方、おそろいでございますので、始めさせていただきたいと思います。金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の第2回目の会合を開催させていただきます。

皆様方には、大変お忙しいところ、また本日足元の悪い中をお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

それでは、議事に移らせていただきます。手元の議事次第にありますように、本日はまず事務局から「財務情報」及び「記述情報(非財務情報)」の充実についての主な論点と昨年の12月28日に公表されました「事業報告等と有価証券報告書の一体的開示のための取組について」について説明をしていただきます。

次に、ゲストとしてお越しいただいておりますみさき投資株式会社パートナー/チーフ・エンゲージメント・オフィサーの新田孝之様とリサーチ・オフィサーの槙野尚様より、「長期投資家の視点から見た有価証券報告書」についてお話をいただきます。

新田様、槙野様には、大変お忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございます。

それでは、まず事務局から、ご説明をお願いします。

【田原企業開示課長】

それでは、まずお手元の資料1-1から資料1-4に従いましてご説明させていただきたいと思います。ご説明させていただくのは資料1-1でございますけれども、資料1-2が米国、英国における非財務情報開示についての資料、資料1-3が日本における企業内容等の開示に関する内閣府令及び開示ガイドラインから関係する部分を抜粋したもの、資料1-4が前回ご議論いただいた際の資料から関係する部分を抜粋したものでございます。また、お手元には別添で、英文の資料で恐縮でございますけれども、アメリカのSECの関係する規則とガイダンス、それから、イギリスの会社法の関係部分の抜粋と、戦略報告書に関するガイダンス、Clear & Conciseという戦略報告書の書き方についてのガイドライン、そして、Strategic Reportにつきましては、今改訂作業中ということで、それについての資料もお付けしておりますので適宜ご参照いただければと存じます。

それでは、お手元の資料1-1を1ページおめくりいただけますでしょうか。1ページにございますように、本日は、大きなローマ数字のI、「財務情報」及び「記述情報(非財務情報)」の充実についてご議論を頂戴できればと存じます。

2ページをご覧いただきますと、主な論点といたしましては、前回もご議論いただきました、経営戦略、MD&A、リスク情報、それから、金融審総会及び前回のご議論の中でご指摘を頂戴しました人的情報についての開示のあり方といったものにつきまして、ご議論を頂戴できればと存じます。

1ページおめくりいただきまして、3ページには、前回会合で頂戴したご意見についてまとめさせていただいております。

こういった企業情報の開示の充実は、投資家における投資判断に資するとともに、建設的な対話を促進するという役割があるのではないか。また、日本の記述情報の開示の水準は、米国、英国に比べるとまだ課題が多いのではないか。財務情報、経営戦略、MD&A、リスク情報などを有機的に相互に関連付けながら記載を充実させていくことが重要ではないか。それから、こういった情報を任意開示書類で開示するという考え方もあるわけですけれども、一方で、任意開示では企業にとって不利な情報が記載されない傾向があるので、法定開示での担保も必要ではないか。また、こういった開示を考えていく上では、任意開示において見られるベストプラクティスを制度開示の枠組みの中で浸透させていくことも重要ではないか、というようなご意見を頂戴したということを書かせていただいております。

4ページをご覧ください。本日ご議論いただきたい点の1つ目、経営戦略についてでございます。経営戦略につきましては、一昨年のディスクロージャーワーキング・グループで、その性質に鑑みまして、それまで記載されていた決算短信から有価証券報告書に記載を移すということをご議論いただきまして、昨年3月期からそういった形で運用させていただいておりますが、前回会合では、こちらに記載させていただいているようなご意見を頂戴しました。

現行制度におきましては、その下にございますように、経営方針・経営戦略等、あるいは経営理念やビジネスモデルといったものについて記載いただくとともに、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標などを設定されている場合には、そういったものについても記載をいただく。あるいは、事業上及び財務上対処すべき課題。これはもともとある開示項目ですけれども、そういったものとも関連付けて書くということをお願いしているわけでございますが、前回会合で頂戴したようなご指摘もあるということで、まだまだどのように記載していくか考えていく必要があるということかと存じます。

5ページをご覧いただきますと、この分野においておそらくトップランナーである英国FRCの戦略報告ガイダンスについて記載させていただいております。先ほど申し上げました資料1-2ですと2ページから3ページに抜粋をさせていただいておりますけれども、英国FRCの戦略報告ガイダンスでは、戦略報告書は経営陣としての考えを反映すべきである。また、戦略報告書の内容は、戦略的経営、事業環境、業績の3つに分類できるということですが、これらを相互に関連付けて記載すべきである。また、戦略的経営の中身につきましては、企業の目的、経営戦略、ビジネスモデルといった記載内容が定められているわけですが、こういったものを関連付けながら記載すべきであるというようなことが示されております。

それぞれの細かい中身につきましては、その下にも書いてございますけれども、私どもでいろいろ調べながら感じておりますことは、イギリスでもこの2014年の戦略報告ガイダンスの後、2015年にClear & Conciseということで、明確に、要点を得てということだと思いますけれども、こういうふうに書いたらいいのではないか、ああいうふうに書いたらいいのではないかということを、お付けしております参考資料1の4ページから5ページにも抜粋をさせていただいておりまして、やはりイギリスでもいろいろな課題があるということでございます。また、先ほど添付資料の中でご紹介しましたように、戦略報告ガイダンス自体も今改訂作業中ということで、適切な開示内容というものを実現していく上では、継続的な努力が必要であるということが1つございます。

それから、イギリスでは会社法の172条で「会社の成功を促進すべき義務」というものが規定されているそうでございまして、戦略報告書の中で、こういった義務を取締役がしっかり果たしているかということを評価するための情報を提供することが最優先されるべき目的であるということでございまして、そういう考え方というのも、日本の開示のあり方を考えていく上で参考になるのではないかということでございます。

2点目のMD&Aでございます。6ページをご覧ください。前回会合でのご意見といたしましては、記載の中身について会社ごとにかなり差があるということでございましたけれども、その中でボイラープレート化した記載も多いのではないかというご指摘を頂戴しました。また、分析について、まだまだ工夫の余地があるのではないか。それから、日本企業は複数のセグメントを有している企業が多いという観点から、海外企業と比較して、セグメントごとの分析の重要性が高いのではないかというようなご指摘も頂戴しました。

1ページおめくりいただきまして、ただ、実はこういったことにつきましては、私どももいろいろご指摘を頂戴しながら、どのように開示をしていただいたらよいかということで、現行制度でもいろいろ工夫をして、こういった形で記載上の注意を書かせていただいているということでございます。

また、一昨年のディスクロージャーワーキング・グループのご議論を踏まえまして、「業績等の概要」と「生産、受注及び販売の状況」を「MD&A」に統合して、その中でより深度ある記載をお願いする。それから、経営者の視点が非常に重要だということで、経営者の視点での認識、分析の記載が必要だということや、記載が弱いのではないかというご指摘を頂戴している資本の財源及び資金の流動性に関する情報といったものの記載が重要だということについて、今回明確化をさせていただいているとともに、先ほど経営方針・経営戦略等で客観的指標等がある場合には、そういうものに照らした経営者による経営成績等の分析・評価の内容を書いていただくというようなことを、新たにお願いするというような工夫をさせていただいているところではございます。

一方、8ページ以下に米国SECのMD&Aガイダンス、英国FRCの戦略報告ガイダンスを記載させていただいておりますが、アメリカ、イギリスでも相当詳しいガイダンスが出されていて、その中で、経営者の視点の重要性、企業トップレベルが初期段階から関与することの重要性、それから、MD&Aは単なる記述的記載ではなくマネジメントが認識しているさまざまな事象を株主あるいはステークホルダーの方に分かりやすく書くということの重要性、それから、セグメントごとのデータを示しながら分析すべきといったことが示されています。米英においても、工夫をしながら、開示の充実を図っているということであろうかと思います。

9ページ以降も、詳細について記載しておりますけれども、流動性と資本の調達源についての記載のあり方ですとか、重要な会計上の見積り、仮定についても記載をしていくということについての記述がございます。

それから、MD&Aの開示をめぐりまして、前回、企業の規模によっていろいろ配慮していく必要があるのではないかというご指摘を頂戴しまして、確かにご指摘のとおりでございますけれども、アメリカにおける開示の義務付けについて調査をしましたところ、MD&Aの開示につきましては、比較年数が大規模企業は3年、小規模企業は2年ということになっているわけでございますけれども、日本の場合はもともと2年ということでございますので、そういった点をどう考えるかということと、内容につきましても、小規模企業について、MD&Aでは、内容の一部の表などは省略できるという配慮はされているのですが、説明内容自体はそれほど変わらないということを聞いておりまして、そういう意味では、大規模企業は開示の内容が増えるということでしょうし、小規模企業は比較的少ないということで、その点はバランスがとれているのではないかと考えているところでございます。

それから、10ページ目には英国FRCの戦略報告ガイダンスの記載内容について記載をさせていただいておりますけれども、先ほどSECのところで申し上げたのと同様に、経営陣の考え方を反映した記載をすべきとされていること。それから、セグメント情報、流動性と資本の調達源に関する情報、企業の主たる有形・無形資産についての情報、あるいは主要経営指標を含むべきというようなことが記載をされていると承知をいたしているところでございます。

11ページご覧いただきますと、3つ目の論点でありますリスク情報でございますけれども、前回会合では、多くの日本企業の開示は、一般的なリスクについての記載が散見され、また、ボイラープレート化している点も見受けられるということがありまして、企業固有のリスクですとか、リスクが顕在化した際の影響度、あるいはリスクへの対応策の開示といったものが重要ではないかというご指摘を頂戴したところでございます。また、リスク情報につきましても、他の情報と関連付けて記載されるべきではないかというようなご指摘を頂戴いたしました。

リスク情報につきましては、現行のお願いをしている開示の中でも、記載上の注意やガイドラインにおいて、こういったことを開示してくださいといったことをかなり細かく記載させていただいているところでございますけれども、前回のようなご意見を頂戴しているということで、今後どういった工夫をしていったらいいかという点についてご指摘を頂戴できればと存じます。

12ページに英国FRCの戦略報告ガイダンスの記載内容を書かせていただいておりますけれども、日本での課題としてご指摘を頂戴したようなことについて、同じような問題意識を持って書かれておりまして、企業が直面する主なリスクについてその対応策を記載してください。財務や流動性への影響に対する評価やリスク水準の変化などについても記載をしてください。それから、経営陣が重要だと考えるものについて書いてください。また、企業に固有のリスクを書いてくださいというようなことで、そういう意味では、どの国でも同じようなところを悩みながら工夫を続けているのかなと考えている次第でございます。

1ページおめくりいただきまして、人的情報でございます。金融審総会、それから、前回会合におきまして、上の2つの丸の右側に書いてあるようなご指摘を頂戴しました。下の「現行制度における開示内容」に書いてあるような内容につきまして、現在開示をお願いしているわけでございますけれども、こういった開示内容のあり方、あるいは、今後こういったことについても開示すべきではないかというようなご指摘がありましたら、ご議論を頂戴できればと存じます。

14ページには、本日、この後のみさき投資さんからのご指摘も踏まえてご議論いただきたい点について、論点ということで書かせていただいておりますけれども、財務情報への理解を深めて、適切な投資判断をいただく、あるいは、建設的な対話を促進するという観点から、どういった情報の内容、構成、相互の関連付けといったことに配慮して情報提供を行っていくべきかということについてご議論を頂戴できればということでございまして、経営戦略、MD&A、リスク情報についてご議論いただきたい点などについて記載をさせていただいております。

また、その他の財務情報や記述情報についてもご指摘があれば頂戴したいと思いますし、内容にとどまらず、例えば今申し上げたように、アメリカやイギリスではトップレベルの関与についてかなり詳細に規定をされていましたり、ボードレベルでのエンゲージメントというのが重要であるとイギリスの方では書かれたりしておりますので、企業としての対応のあり方みたいなものについてもご指摘があれば頂戴したいと思います。

以上、1点目の資料についてのご説明でございます。

次に資料2-1、2-2、2-3についてご説明をさせていただければと存じます。

前回、大きなローマ数字のIIIの中で、開示書類の提供の時期についてのご議論を頂戴いたしました。その中でご議論いただきましたように、日本では有価証券報告書の提出期限について、過去、企業サイドの要望などもございまして、期末後2か月以内ではなく3か月以内に延長して、その中で有報についてしっかり準備をして開示していただくというような整理をされてきた観点から、総会前に事業報告、総会後に有報が出されるということが実務慣行として行われている状況でございます。

一方で、その記載内容につきましては、できるだけ共通化できるように半世紀にわたって工夫をしてきておりまして、一昨年のディスクロージャーワーキング・グループ報告におきましても、一層の共通化などを図って、この2つの書類の記載を共通化しやすくする、それから、この2つの書類を一緒に出すこともより容易にすべきというようなご指摘を頂戴しまして、その場でいただいた提言に基づく具体策と、それから、その後更に検討をしてきたということでございます。

その結果、昨年の12月28日に「一体的開示をより行いやすくするための環境整備に向けた対応について」という形で、具体策を法務省さんと一緒に出させていただきました。

この中では15項目、有価証券報告書と事業報告などで比較的開示の共通化が難しいというようなご指摘を頂戴したものについて、どうやったら開示内容を共通化して記載できるようになるかというような観点から検討しまして、取りまとめさせていただきました。その個別項目につきましては、ご説明を省略させていただきますけれども、資料2-1にその具体的内容、資料2-2は内閣官房さんにおつくりいただいた資料でございますけれども、それを表にしたとき、あるいはビジュアルにしたときにどういうふうになるかということで、非常に分かりやすい資料だと思いますので、こちらをご覧いただければと思いますけれども、そういった形で取りまとめをさせていただいたということでございます。

私どもといたしましては、こういった形で成案を見ましたので、この場でご指摘あれば頂戴したいと思いますし、これにつきましては、本年3月を目途として、共通の記載が可能であるということを更に明確化するとともに、内容につきましては、財務会計基準機構に有価証券報告書の作成要領というものをつくっていただいていて、これに基づいて各上場企業さんは実務をされていると承知をしておりますので、そういった形、ないしそれに近い形でひな型を作成して、周知をしていきたいと考えているところでございます。

それから、今後の取組みといたしましては、現在、法務省の法制審議会で会社法改正についての議論をされておりますけれども、こちらの方で事業報告等の記載事項を含む有価証券報告書をEDINETで開示した場合には、事業報告等の提供方法の1つにできないかというようなことについて問題提起をさせていただいておりまして、議論いただいております。こういったことが実現していけば、一体的開示というものが更に進んでいくのではないかと考えております。

また、記載内容を共通化したり、1つの書類として出すことをご希望される企業さんがありましたら、私どもとしても実務的な相談を積極的に受けてまいりたいと思いますので、そういったことについて希望される企業さんがあれば、私どもの方に申し出てほしいと考えているところでございます。

こういった形での取組みを引き続き進めていきたいということについてご紹介をさせていただきました。

以上、事務局からの説明とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、続きまして、みさき投資株式会社の新田さんと槙野さんより、「長期投資家の視点から見た有価証券報告書」についてご説明をいただきたいと思います。資料3をご提出いただいております。

それでは、新田さん、槙野さん、どうぞよろしくお願いいたします。

【みさき投資株式会社 新田パートナー/チーフ・エンゲージメント・オフィサー】

みさき投資の新田と申します。本日は大変貴重な機会をいただきましてありがとうございます。

私どもは日本企業への長期投資というのを標榜して運用しておる会社なのですけれども、有価証券報告書を実務の面でもかなり活用しておりまして、その観点から、私どもがどういう目的に使い、どういうふうに活用しているかということを少しご紹介させていただければと思います。

ページをおめくりいただきまして、最初に簡単に会社の紹介をさせてください。特徴が2点ほどございまして、1つは、日本の上場企業だけに投資をする会社なのですけれども、投資先の数が10社から15社と、かなり限られた数の会社さんだけに投資をいたします。その際に、PER、PBRですとか、他社と比べて安い、低いとかという相対評価ではなくて、あくまでその会社の長期的な稼ぐ力に着目をした絶対価値で投資をしていくというのが投資のスタンスでございます。

もう1つの特徴が、エンゲージメント投資を専門に行う投資家ということでございますけれども、「働く株主」という言葉を標榜しておりまして、実際に投資をして買って持ちっぱなしというだけではなく、会社がよくなるために一緒に汗をかいていこうということで、現在投資をしている会社、それから、これから投資をしようと考えている会社の経営陣と建設的な対話をかなり積極的に行っております。更に言うと、その中で、いろんな経営課題、経営テーマについて合意した場合には、経営者の方と一緒にプロジェクトをやって、例えば中期計画をつくっていくだとか、海外戦略を一緒につくるだとか、生産性を上げるだとか、そういったタイプの取組みを行っております。

といいますのも、私自身も10年強前に運用業界に入る前はもともと経営コンサルティング会社にずっと勤めておりまして、当社の運用フロントのメンバーが約10人ぐらいいるのですけれども、そのうちの7割ぐらいが元コンサルタントバックグラウンドの人間です。会社の株を売り買いすることよりも、一緒に会社のために汗をかいてよくしていくというのが大好きなメンバーが集まって運用をしております。

では、どういう会社に投資をしていくかというのが次の2ページに書いてありますけれども、一言で言うと、中長期的に事業価値が上がっていく会社かどうかということに尽きるわけです。では、中長期的に価値が上がっていく会社というのはどういう会社かといいますと、3つほど視点がございまして、1つはbのbusinessの部分です。会社が、言うまでもなく、いろんな強みを持っているかということなのですけれども、その中でも特に、障壁とか、競争優位とか、他社と競争しても負けない、勝てる、場合によっては競争そのものをしなくて済むような事業構造をつくり上げているかどうかというのが1点目でございます。

一方で、「企業は人なり」という言葉がございますけれども、やはり会社というのは、中で働いている経営陣であったり、経営陣を支えるチームであったり、更に言うと、従業員まで含めた企業文化、組織文化といったものが健全でないと長期的に安心して我々としては投資することができないという観点から、pのpeopleという点もかなり重要視をしております。

もう1点が、右上に小さく書いてあるm、これは掛け算というよりはべき乗をイメージして書いているのですけれども、management、会社の経営そのものがよくなっていくのかどうかということに注目をしております。managementには例えばファイナンスとか、ガバナンスとか、オペレーションとか、いろんなテーマがございますけれども、私どもとしては、会社の稼ぐ力を高めていく上では、事業の戦略、あるいは企業戦略そのものが大変重要と思っております。私どもが経営陣と対話をするときも、もちろんファイナンス、ガバナンス、さまざまなテーマについて対話をしていきますけれども、会社の稼ぐ力の現状というのがどうなっておるのか、さらに稼ぐ力を高めていく上での課題は何だということを真正面から分析し、それをディスカッションして、更にはプロジェクトにつなげていくと、そういった活動をしております。

では、今日のテーマである有報についてということなのですけれども、こういう活動をしていく上で私どもがどうやって使うかというのが次の3ページに書いてございます。

大きく3点ございまして、1つは、投資をする前の企業調査の段階です。私ども、「初期調査」という、100ページから150ページぐらいのかなり分厚い報告書をつくるわけなんですけれども、その段階で、有価証券報告書というのを数年分、場合によっては10年、15年と遡って、かなり細かく精査・分析をしております。これは先ほどのbusinessとかpeopleとか、あるいはmanagementというのを見ていく上で非常に有効なツールであるということと、当然その会社さんの競争相手、これは国内、海外問わず、上場している会社が存在する場合には、そういった会社の有報であったり、海外の資料であったりというのもあわせて分析をしておるというのが1点目です。

2点目は、実際に投資をした後に、私ども、長い期間投資をしたいと思っていますので、3年、場合によっては5年、10年と投資をしていくということになるわけですが、その間、毎年、有価証券報告書が出たときには、「有報チェック」というのを当社全体でやっておりまして、フロントの投資メンバー全員で投資先の有価証券報告書を読み込みまして、例えば、昨年、一昨年、その前から有価証券報告書の記載に、これは財務、非財務両方ですけれども、どういう変化があったのかなと。あるいは、文言の変化から読み取れる経営姿勢の変化って何だろうかといったあたりですとか。あと、あるいはそもそも改めて読み直すことによって、事業とか、組織とか、経営そのものであったりといった構造について何がしか新たな示唆はないかといったものを全員で読み込んで抽出するということをやっておりまして、これを数ページのメモに各自がまとめて、それを全員でやりますので、かなり膨大な量になるわけなんですけれども、そこから得られた論点であったり、示唆であったりというのをディスカッションしてまとめていくといったことをやっております。

ここまでは当社内の話ですけれども、3点目は、投資先企業との対話でもこの内容は使っておりまして、我々社内では「有報フィードバック」と呼んでおりますけれども、有価証券報告書が例えば3月決算の会社で6月に出た後に、経営者の方に時間をとっていただいて、先ほどの「有報チェック」の中身を抜粋をして、我々が重要だと思う論点に対して、それが経営レベルであったり、戦略レベル、あるいはリスクといった話であれば、経営者と直接対話、ディスカッションを行い、あるいは、もう少し細かい財務的なデータの確認であったり、この数字の動きがおかしいんだけどどうなっているのかなといった点に関しては、IRとか財務担当者の方とヒアリング、ディスカッションを行うといった形で有価証券報告書を活用しております。その一例として、次の4ページに、これは「有報チェック」というフロントのメンバー全員で読み込んだ後のコメントを一部抜粋したものを載せておりますけれども、businessであったり、peopleであったり、managementといった先ほどの視点に沿って、こういったものを取りまとめて、経営者とディスカッションするということを行っております。

ここまでが自己紹介なのですけれども、では、実際に有価証券報告書のどういったポイントに注目して、どういう読込み、分析を行っているかということについて、ここから後は、リサーチ・オフィサーの槙野の方からご説明をさせていただきたいと思います。

【みさき投資株式会社 槙野リサーチ・オフィサー】

槙野と申します。私は、セルサイド、投資銀行でのリサーチアナリスト業務を経て、現在、弊社でもリサーチを担当しております。

では、資料に沿って、我々が有価証券報告書をどのように見ているか、また、どのような情報が欲しいと思っているかということをお伝えできればと思います。

まず6ページをご覧いただきまして、バリューチェーンということなのですけれども、そもそも会社の利益がどのように生まれているか、誰に何をどのように売っているのかということ、そのとき川上ないしは川下のプレーヤーとの力関係がどのように生まれているのかということがビジネスモデルを理解する上での一番ベーシックなところなのかなと思っております。これによって、どこから付加価値が生まれているのか、ないしは、その反面、リスクがどこにあるのかということを分析しております。

具体的には、現状、日本の有報でよく開示されている事例というのが図の左側になるのですけれども、ご覧のとおり、仕入先と販売先が列挙してあるのですけれども、残念ながら、これだけですと、どこで付加価値が生まれているのか、ないしは、この事業をやる上でどこが難しいのかということがなかなか分かりづらいのではないかなと考えております。

ではこれが右側の決算説明会資料の中ではどうなるかということなのですけれども、著作権の関係で今回資料は載せられていないのですけれども、同じ会社でも、任意開示の中では、仕入先のさらにその手前にいるメーカーにどういった人たちがいるのか、ないしは、販売先のさらにその先にいるエンドユーザーがどういった人たちであり、どれぐらいの数がいて、どれぐらい分散しているのか、あるいは集約しているのかといった情報が開示されていたりします。これによって、バリューチェーン全体の中でこの会社がどこに位置しているのか、どこの付加価値をとっているのか、ないしは、仕入先がすごくたくさんある会社の場合には、これだけの仕入先をそろえるのはすごく難しいんだなということが分かったりですとか、販売では、なるほど、代理店を活用しているからこれだけ効率よく売れるのだということが分かったりします。このようなかなりリッチな記述になっているというのが任意開示での違いかと思います。

次の7ページは、参考までに海外ではどのように開示されている場合があるのかということなのですけれども、これはトヨタ自動車の20-Fという米国上場の場合の開示資料です。実は日本の企業でも、米国上場、SEC規定の中では、ディーラーの数ですとか、地域ごとのディストリビューターの数ですとか、かなりチャネル理解に関わる情報が開示をされているということが分かります。

では、次の8ページに行っていただきまして、今見た付加価値や収益というものがどのようにして生まれているのかということで、我々はこれを「事業経済性」というふうに呼んでおります。例えばですけれども、固定費と変動費というのはどのように分かれていて、規模を大きくすることによって薄まる固定費がどれぐらいあるのかということの理解を目指しています。

また、ビジネスの中でも、特に手厚くコストをかけている部分、こういうところには経営の意思が読み取れるかなと思っておりまして、例えば同業他社では、製造は外注してしまうというのが常識だけれども、この会社はどうも外注ではなくて中でつくっているですとか、販売、これも代理店に任せるのではなくて直販をしているですとか、こういったところは製造原価の中の人件費の多さ、ないしは販管費の中の人件費の多さといった部分にコストとして表れてきます。

現状ですけれども、2011年度、過去の有報の事例が左側の図になっておりまして、これはとある化学品メーカーですけれども、この会社の場合には、原材料の比率が製造原価の中で8割近くを占めているということが分かります。そうすると、例えばこの会社がグローバルなM&Aに打って出たとき、どうやらこのビジネスは原材料がコストの多くを占めているので、この原材料をどれだけ安く調達できるかが経営の鍵だと分かります。すると、グローバルに規模を大きくして、仕入先との力関係、交渉力を強めて、どんどんバイイングパワーを効かせていくというのがこの会社の戦略としては正しいのではないかということが、コスト構造から読み取ることができます。

しかしながら、この単体の製造原価の明細というものが、この後から任意開示になってしまいまして、現状、ほとんどの会社では開示されていないということで、2016年度有報ではN/Aというふうになっております。例えば、これがMD&Aの中で代わりに文章として表現されていればまだ理解することができるのですけれども、残念ながら、代わりにそういった技術がリッチになっているわけではありません。数字だけなくなってしまったので、投資家としては、なかなかこの経済性の理解が難しくなっているというところに現在の有報の課題が1つあるのではないかと思っております。

では、次の9ページですけれども、実はこの単体の開示というものは非常におもしろいなと思っておりまして、先ほどの事例は2011年度でしたけれども、それより更に遡って分析する場合もございます。

具体的には、80年代ですとか90年代、2000年度以前の有報の中では、工場の製造工程で、どこにどのような機械があったか、プレス機が何台あったかですとか、その次の塗装の工程というのは社内でやっているのか、社外でやっているのかといった製造プロセスですとか、原材料の価格が幾らなのかですとか、実際に販売価格は幾らなのかといったことが分かります。そうすると、例えばですけれども、牛丼という商品があったときに、実はお肉のコストよりも米のコストの方が大きいんじゃないかということがこういった数字から分析できますし、そうすると、この会社をモニタリングする上では、肉の価格よりも米の価格に注目し、その調達がどうなっているのかといったビジネスモデルにより根差した理解、対話というものができるのかなと思います。

しかし残念ながら、こういった開示はなくなってしまっているというのが現在の有報です。

次に10ページでは、そうした利益がどのように分配をされているのかということなんですけれども、ステークホルダーの中で、株主はボトムラインの利益を見るだけではなくて、それが実際どのようなステークホルダーに分配されているのか、それによってサステナブルな経営ができているのかということを見ているわけです。例えば法人企業統計の中ですと、人件費ということで、原価の方と販管費の方と合わせた人件費が把握できますし、よって、企業としてはどれだけ人に配分しているのかということが理解できます。しかし、事例の左側、日本企業の連結の有報ですと、販管費の中の人件費は抜き出すことができるのですけれども、原価の方の人件費、工場の生産員の方々の人件費は個別には理解できないものとなっております。そうすると、企業として従業員全体にどれだけ配分したのかというのが投資家として理解できなくなってしまいます。

一方で、右側、例えばドイツの同様のビジネスをやっている会社なんですけれども、この会社の場合には、連結の原価と販管費の中でそれぞれ人件費が開示されていますし、更におもしろいのは、従業員がホワイトカラーとブルーカラーに分かれて人数も開示されているわけです。そうすると、昨今日本でも働き方改革ということで、人々の働き方、ないしは生産性というのが非常にフォーカスされていますけれども、こういう情報があれば働き方や生産性に関する対話も充実します。しかし現状、投資家としては、生産性がどれぐらい改善したのか、どのぐらいの数値を出しているのかというのもモニタリングができないので、重要だとは分かりつつも、なかなか対話の題材にすることができていません。

では、次に11ページですけれども、ここまで見てきた利益、稼ぐ力というものは、P/Lの中だけで終わる世界ではなくて、どれだけの投下資本を投下したのかという、B/Sでとったリスクに対してどれだけのリターンをP/Lで得ているかということが投資家として重要だと考えております。

まず、B/Sの中なんですけれども、例えば投下資本では有形固定資産も要素の1つになるわけですが、これだけでは実は不十分で、例えば有報の中に開示されている主要な設備の状況とあわせて見ております。

具体的には、この会社の場合ですと、売上高が大体6,000億円ぐらいある会社なんですけれども、有形固定資産が400億円ということで、非常にアセットライトなビジネスをしているなということがこれだけでも分かるのですが、実はこの400億円の有形固定資産の中で、設備の明細を見ていると、ホテル事業部というものがございまして、これは福利厚生の一環としてホテルを持っているのですけれども、これが有形固定資産の実は1割近くを占めているということが分かります。そうすると、この会社の稼ぐ力を理解する場合には、有形固定資産からノンコアの部分のアセットの価格は控除して考えなくてはならないということが、こういった詳細な開示が現在有報で行われていることから分かります。したがって、こういった情報というのは残すべき重要な情報ではないかなと思っております。

では、次の12ページですけれども、この投下資本には有形固定資産だけではなくて運転資本も含まれるのですけれども、これも実は2011年度、以前の有報の単体開示では売掛金が決算期末の時点で幾らあったのか、取引先ごとにどれぐらいの期間だったのか、また、在庫の方だと、品目ごとにどれぐらいの在庫の金額があったのかということが分かりました。これによって、投資家としては、例えば、「御社、以前は3か月で回収していたものがどんどん長くなってしまって、キャッシュが寝て、稼ぐ力の効率が落ちていませんか。」といったことが議論できます。なかなか経営者の方ですと、個々の取引先との条件まで見ている場合も少ないということもありまして、投資家としてこういった部分が対話の焦点の1つになっておりました。我々はこれをCash Conversion Cycleと呼んでおりまして、キャッシュがどれだけ回転するかということなのですけれども、こういったエンゲージメントというのは実際これまでも行ってきたことがあります。

しかしながら、これが現在の有価証券報告書の中ですと、こういった単体の個別の売掛金、在庫の開示というものがなくなってしまっておりますし、では代わりにキャッシュ・フローの分析という項目がリッチになっているかといいますと、キャッシュ・フロー計算書を見てくださいといったかなりボイラープレート的な表現にとどまっている場合が多いです。したがって、以前できたような対話が難しくなっているというところに1つ課題を感じております。

次に13ページですけれども、こうした投下資本というのはどのように調達されたお金なのかということです。そして、事業に投下しているというのは、会社の資本配分の活動、キャピタルアロケーションの中の一部でありまして、そのほかにも、株主に還元するとか、従業員にもっと還元するとか、いろんなキャピタルアロケーションの活動があるのですけれども、これをもっと立体的に知りたいというのが投資家のニーズです。

現状の有価証券報告書の中ですと、調達サイド、どのようにお金を調達してくるかというのは、項目として書けるところがほとんどないと思います。反対に、では、このキャピタルをどのようにアロケートするかという、使い方でいいますと、配当政策や設備投資だけはあるのですけれども、それらが有機的に繋がっていないし、M&Aや従業員還元などその他のキャピタルアロケーションも含めた立体的な理解がしにくくなっています。資料は、アメリカの大手化学メーカーの事例、10-Kではなくてプレゼンテーション資料の中の事例なのですけれども、例えば営業キャッシュ・フロー、現預金、ないしは借入れでどれだけ調達をして、そして、中計期間中に調達したものをどのように配分していくかということが、入と出に分けてあることもあり、かなり具体的に理解できます。先ほどの事務局説明の中でもありました資本の調達というのもこういった部分と関わってくるのかなと思います。

では、次の14ページをご覧ください。先ほどの続きですけれども、手元現金というのは調達の1つの手段ではあると思うのですけれども、新聞報道でもございますように、日本企業の場合、手元現金が多過ぎるのではないか、内部留保が日本企業全体で見たときに溜まっていないかというのが1つ課題として認識されているかと思います。では、幾らの手元現金が適正な水準なのかということについては、会社と対話をしていましても、そこまで深く考えていらっしゃらない場合もございますし、そもそもそういった情報開示が求められていない以上意識の対象にもなっていないというのが現状かと思います。

例えばですけれども、ミニマムで運転資本としてはこれぐらい必要かなといった考え方ですとか、突発的に大きなM&Aをしたいとか、何か震災などのリスクがあったときに対応できるようにこれだけの現金は持っておきたいですとか、そういった基準というものがあるのであれば、もう少し説明していただけると、より理解につながるのかなと思います。

では、15ページに移っていただきまして、ここからは非財務の情報について幾つか見ていければと思います。例えば、沿革というページを私どもは非常に重視しておりまして、実際に私の調査活動の中でも、国会図書館に行って1日中、その会社の社史を、30年史、50年史と、ひっくり返して読んだりということもあります。それで経営者となるべく同じ目線に立ちたいと思ってリサーチしている場合もあるのですけれども、社史を開示している会社も少なくなってきておりまして、そうした観点から、有報の沿革というものは非常に重要な情報であると思っております。

単に歴史が分かるだけではなくて、過去、この会社が経営上、何を重要と考えてきたのかということも読み取ることができます。ですので、この会社の場合には、例えば物流のシステムですとか、取引先との手形の関係ですとか、普通は書かないようなこともここに書いていることによって、なるほど、この会社は歴史的に経営上こうしたことを重視していたのかというのが分かると思います。

では、次に、16ページをご覧ください。こちらはリスクについてです。現在の有報の中でもリスクの項目というのはあるのですけれども、ここはリスクを認識するということももちろんありますし、会社がリスクとして認識しているということは、おそらくその要素というのは、希少であったりとか、会社の強みだから、だからこれが損なわれるとリスクであるという、ビジネスモデルの強みの裏返しだというふうにも読み取れるかと思います。

具体的にこの会社の場合には、運送会社なのですけれども、車両の回転率とか、熟練した労働者というのが重要だということが分かります。

ただし残念ながら、多くの企業ではここも紋切型の表現にとどまっていたり、マテリアリティの順番になっているわけではないということが課題であると思います。

では、次に17ページ、ガバナンスですけれども、ガバナンスというのは、我々は、社外取締役の人数ですとか、取締役会の形態ですとか、そういった「ハードウェア」だけではなくて、その「ハードウェア」の中にどれぐらいの「ソフトウェア」を実装しているかということが重要であると考えています。

これも有報のガバナンスのところに書いている組織図の事例なのですけれども、この会社の場合には、「ハードウェア」としてはこういうものがあるのだけれども、その中で、一番下の、部門をまたぐ定期的な人の異動ですとか、この仕組みをどのように使うかといったソフトウェア的な記述があったりします。そもそも言葉使いの面においても、真ん中の「最高当事者会議」のように、なかなかこういった言葉を使っている会社はないと思いますし、監査指導室のことを「火の見やぐら」というふうに括弧書きしていたりもします。こうした言葉使いからも経営のこだわり、ユニークさ、本気でこのガバナンスというものを考えているんだな、ほかのところとは違う考えを持っているなというのが読み取れる事例かなと思います。

では、最後に18ページですけれども、先ほどの言葉のこだわりというところとのつながりでして、これは経営方針の中に書いてある事例なのですけれども、この会社も非常にユニークでして、1つ目の赤線のところには、「ステークホルダーとの価値交換性が向上すること」が成長だと考えているという文言があるんですね。これはなかなか普通に経営していると出てこない言葉だなと思っておりまして、経営者の方がどれだけ自分の頭を動かしているかということが読み取れる記述かなと思います。その下の、「多くのステークホルダーにとって、『甲斐』のある」会社になりたいというのもユニークでいいなと思っております。

19ページは、参考でお付けしているのですけれども、先ほどトヨタの事例がございましたが、今回はソニーの事例でして、実は、ソニーの有価証券報告書の記述もすごく充実していると思っております。左側がその抜粋ですが、例えば過去の中期経営計画が今どういうふうに走っているのか、今後どういうふうな将来を見通しているのかなど、現在だけではなくて、過去の分析、ないしは将来のことまで書いてあります。でも実はソニーの場合、右側の20-FのTrend Informationというところで、中計の振り返りですとか、今後の展望も書くようにというのがSECから求められておりまして、こういった20-Fでの記述を手厚く行っていらっしゃる会社さんは、日本の有報の中でもほかの会社よりも非常に手厚い記述ができているのではないのかなということを感じております。

【みさき投資株式会社 新田パートナー/チーフ・エンゲージメント・オフィサー】

最後の20ページに、少し雑駁ではあるのですけれども、有価証券報告書をもっとよいものにしていくためにどういうことが必要かということに対する私どもの考えを書いております。ここまでご覧になられてお分かりのように、我々は多少マニアックといいますか、ここまでやるのというご感想をお持ちの方もいらっしゃるかと思いますし、そもそも今回の有価証券報告書の内容の拡充、変更というものには、いろんなご議論があられるんだと思っておりますが、私どもが考えるに、何のためにこれをやるのかが重要だと思います。それを鑑みると、おそらく目的の大きな1つは、中長期的な企業価値を高めていくためにこれがどういうふうに資するのだろうかということにあると思います。もともとのこのワーキング・グループの発足の目的は長期投資家にとっての判断材料を増やすということであったり、建設的な対話を促進するということなんだろうなと考えておりまして、その観点から鑑みますと、伊藤レポートにあるように、日本企業の稼ぐ力をどうやって高めていくのかということが、企業さん側にとっても、私どものような投資家にとっても共通の目的であろうと思います。

では、その稼ぐ力を高めていくというところに焦点を当てたときに、現状の開示というのは、私どもから見ても、いろんなバリューチェーン、ビジネスモデル、エコノミクス、戦略、経営方針等々のところで物足りないなと感じるところがございますし、あと、それらも含めた企業経営そのものに関する開示というところに関しては、冒頭お話がありましたように、やや紋切型、あるいはボイラープレート型の文言に記載がとどまっているなと感じるところがございます。10年、20年前から有報を分析して使っていた者の立場として見ると、以前から比べると、分析、特に事業の競争力を分析する上でのファクトというか、材料そのものが減ってきていると感じています。その代わりに、MD&Aのような経営者側からの分析が拡充されていれば、もちろんそれはそれで構わないのですけれども、そちらの方もあまり内容が進化していないとすると、外部から会社、事業、競争力というものを見立てる上での判断材料が減少しているわけで、それらについての経営者とのディスカッションを行うための材料としては少し物足りなくなっているなというのが現在の評価です。投資家にどこまで事業、経営が分かるのかといったご指摘を企業側から頂戴することもあるのですけれども、将棋と同じで傍目八目でもあろうかなと思いますので、外部からいろんな会社、いろんな事業を分析している者の示唆というのが役に立つということもあるのではないかと思います。あるいは、そういったディスカッションが稼ぐ力を高めていくことにつながってくるんじゃないかなと思っているというのが1点でございます。

あと、もう一つ、開示のスタンスということでいきますと、日本は海外に比べると会社さんの裁量に任されている部分が多いのかなと思います。むしろ、アメリカの方がかなり細かく規定されていて、あれもこれも出さなきゃいけないというふうになっている部分が多いのかなと思います。もちろん自由裁量である程度会社側に任せてやることが望ましい面もあろうかなというふうには思いますけれども、現在の有価証券報告書の内容をもう少し企業価値を高めていく方向に動かすためには何が必要なのだろうかということを考えたときには、もう少し細かいルールを決めていくことも必要なのかもしれないなというふうにも思いますし、冒頭のご議論でもあったもう一つの点として、ひな型をかなりそのまま採用していらっしゃる会社も少なからず散見されます。これは、会社、あるいは人間の行動としてひな型に頼ってしまいたいというのはある程度やむを得ない部分はあるのかなと思いますけれども、ある種、ひな型を作成している方々も、この内容を進化させていくという目的においてはかなり重要なキーパーソンの1人でありますので、そういった方もこの内容の高度化にどう一緒に取り組んでいけるかということも考えていかれるのがいいのではないかと思っております。

少し長くなりましたけれども、私どもからの説明は以上です。ありがとうございました。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、これから討議に移りたいと思います。本日は、先ほどの事務局からの説明と今の新田さん、槙野さんからのご説明も踏まえ、事務局から提示していただいた論点を中心にご議論をお願いしたいと思います。ただ、質問があるかもしれませんので、ご意見をお出しいただく前に、まず新田さん、槙野さんからの今いただきましたご説明について質問がありましたら、それを先に伺いたいと思います。

上柳委員、石原委員の順で、上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

大変興味深く伺いました。私は、投資者なり、あるいは国民経済全体の立場からいうと、ご指摘のように、場合によっては細則主義と言われても、開示を充実させる、しかも強制的に、法定的にやった方がいいのではないかという私見は持っているのですが、ただ、どこまでを任意でやるのか、どこまでを法定でやるのかというのは結構難しいことだろうと思います。法定開示には載っていないけれども任意的には開示されている、あるいは、事業会社と対話をすると、そこではデータが出てくるということであれば、それでいいのではないかという見解は十分あると思いますし、あるいは、出そうと思えば出せるのに出さない会社に対して、投資家が見向きもしないということであれば、それはそれで経済原則としていいのではないかという突き放した態度もあると思うので、そのあたり、法定的に開示させる、つまり、日本の上場会社全部かどうか分かりませんが、手間暇をかけさせて開示させることが、日本なり、あるいは投資家なり、あるいは企業自体にとってもよいのかどうかという点でご意見があれば頂戴したいです。

もう一つは、いわゆる紋切型、ボイラープレート、あるいはテンプレート重視になってしまうという問題ですけれども、全部を細則に落とし込んで、経営分析に必要なデータを全部法定開示させればいいのですけれども、そうでない場合は、ある程度のところは、プンリシプルベースというか、できれば開示してください、あるいは分かるように開示してくださいというような言い方にならざるを得ないと思うのですが、御社が例えば質問をされるときに、なるべく経営陣に重要な情報を開示させるようなインセンティブを与えられるような、そういう規則なり法律の決め方ができるといいなと思うのです。抽象的ではあるけれども、なるべく必要な情報を開示してもらうように、インセンティブになるような、そういう工夫がもしあれば教えていただきたいと思います。

以上、2点です。

【みさき投資株式会社 新田パートナー/チーフ・エンゲージメント・オフィサー】

ありがとうございます。

私どもは投資とエンゲージメントのプロで、ルールをつくるプロではございませんので、どこまでお役に立てるコメントができるかどうか分からないのでけれども、1点目のご質問、どこまで細則で縛ることが必要なのか、あるいはそれが重要なのか、あるいは任意開示をしていればいいんじゃないかというご指摘に関して申し上げますと、私どもが投資している会社の中でも、有報には書いていないけど任意で積極的に開示しているので、それで私どもなりに事業の構造であったり競争力であったりの分析が可能だから、それでいいかなと思うことも多々ございます。

ただ、日本の中でも、そうやって開示が進んでいる会社さん、積極的に自社を取り巻く環境であったり、競争力であったりというのを開示しようと思っていらっしゃる会社さんというのはまだそれほど多くはないのかなと思います。ごく一部の先進的な、あるいは意識の高い会社さんにとどまっているのかなと感じているのが実感でございまして、決算説明会は、例えば10年、20年前と比べると、かなり多くの会社さんがやっていらっしゃいますけれども、そこで出てくる話というのは、決算数字の増えた、減ったというところにとどまっていて、本当に自社を取り巻く事業の競争環境を説明できているか、自社のバリューチェーン上の強みを理解できているかというと、そうではない会社さんの方がやはりまだ多いのかなと思っているのが実態でございますし、あるいは、中には未だに説明会をやっていらっしゃらないような会社さんもいらっしゃると思います。

全体の日本の資本生産性の山自体をもっと高いところに持っていくという目的を考えたときには、それが本当に最終的にいいかどうかは分かりませんけれども、現段階の日本の企業経営の実態を踏まえたときには、法定開示を強化するといったことも必要な打ち手なのじゃないかなと感じているというのが実感でございます。

あと、もう一つ、プリンシプルベースで対応して、インセンティブを設けるのか、ペナルティを設けるのかということでいきますと、我々投資家の立場からすると、もっとたくさん出してほしいというのが本音でございますし、おそらく企業側からすると、あまり出したくないなというのが本音であろうかなと思います。

そうした中で、海外では、今、日本でいうところのスチュワードシップ・コードであったり、エンゲージメントであったり、運用者、投資家側からの企業への働きかけとか、場合によっては圧力であったりといったことがより積極的に働いてきたことによって、細則で求められていないことでも能動的に開示をしていくという流れが出てきたのではないかなと思いますけれども、日本はスチュワードシップ・コードが発足してからまだ期間もわずかですし、そこで働きかけている内容というのも、まだこれからどんどんどんどん進化をしていかなきゃいけないステージにあるのではないかと思っています。そうすると、会社さん側にとって自発的にそういう開示を進めていくというところのインセンティブが大きくはない会社さんもまだまだいるのではないかなと感じておりまして、そういった観点から、これは一投資家の意見としてとどめていただければと思うのですけれども、私どもとしてはそういう何がしかのルールが必要なのではないかなと感じているということでございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、石原委員、どうぞ。

【石原委員】

大変参考になるプレゼンテーションをありがとうございます。私自身は、情報開示の議論をするときに、一口に投資家との建設的な対話とは言いますが、投資家といっても皆同じでは全くないという認識を持っておりまして、投資家のカテゴリー、類型に応じて、必要な情報や情報収集のやり方、投資判断のやり方は異なると思っております。したがって、総論で投資家を語るというのは難しいのではないかというのが基本認識です。そういう観点から、今回、みさき投資さんの有報の使い方というのは大変参考になりますが、それでは、御社は、自社のご紹介のページで長期・厳選・バリュー投資、あるいはエンゲージメント投資と書かれていますけれども、長期というのは大体何年ぐらいをイメージされているのでしょうか。

それから、エンゲージメント投資、バリュー投資ということは、全体として比較的割安な株、しかも投資先が10から15社ですから、それほど大規模ではなく、比較的中小規模で比較的割安に放置されている会社に対して、どのくらい出資をし、どういうリターンを求めているのでしょうか。

また、比較的割安な価格を本来の価値、あるいは、皆さんのコンサルとしてのリソースを投入してバリューアップしたもので、何年ぐらいでイグジットしてリターンを狙うといったような、どういう投資家のカテゴリーなのかということを差し支えない範囲で教えていただければと思います。

【みさき投資株式会社 新田パートナー/チーフ・エンゲージメント・オフィサー】

ありがとうございます。

私どもは、運用を委託されている資金の性質が、公募投信のような形ではなく、国内、あるいは海外の年金基金であったり、大学の基金であったりという機関投資家が主体でございまして、お客様との守秘義務がある関係上、あまり具体的なことはご説明ができないという立場であることをご理解いただければと思うのですけれども、差し支えない範囲でご説明ができるとすれば、長期というのは、私どもみさき投資という会社はできてからまだ4年強で、今、運用しているファンドは運用を開始してから3年強なのですけれども、この3年強の中で、投資を開始してから今でもまだポートフォリオの中にいるという会社がかなりの数ございます。実際最初に投資をする際の1つの目線が3年から5年で、実はこのみさき投資という会社を立ち上げる前に別の運用会社で似たような運用戦略をやっていたことがあるのですけれども、そのときには約8年ぐらいずっと同じ会社に投資をしていたということもございました。

もう一つの割安という観点ですけれども、あくまで世の中でいうPERが低いとかPBRが1倍を切れていると割安とかという手法を使っているわけではなくて、世の中的なPERが例えばそこそこある会社さんであっても、その会社の稼ぐキャッシュ・フローと成長力を考えたときに、絶対価値から見て割安であれば投資をするということなので、一般的に想定される、例えばPERが10倍以下とか、PBRが1倍割れみたいな会社ばかりに投資をしているというわけではございません。

投資先の会社でいうと、時価総額のレンジでいきますと、下が数百億ぐらいから上が数千億、1兆円までいかないぐらいといったところかなと思います。

【神田座長】

よろしゅうございますでしょうか。

【石原委員】

出資比率は大体どのくらいなのでしょうか。

【みさき投資株式会社 新田パートナー/チーフ・エンゲージメント・オフィサー】

発行済み株数でいくと、大量保有報告が出て、上限が10%から15%ぐらいというようなイメージかなと思います。

【石原委員】

ありがとうございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

熊谷委員、どうぞ。

【熊谷委員】

ありがとうございます。最初にお断りしておきたいのですけれども、実は本日所用がございまして、11時15分か20分ぐらいに退席させていただきたいと考えております。

その上で、田原課長、それから、みさき投資のお二人、大変ありがとうございました。今、新田さんや槙野さんのお話を伺っていて非常に感動していたといいますか、我が意を得たりと聞いておりました。まず、今回のディスクロージャーワーキング・グループというのは、2015年のディスクロージャーワーキング・グループからの流れで、非財務情報の開示の充実ということを議論しているわけでありますけれども、新田さんもご指摘になっておったとおり、まず、開示制度改革そのものの目的というのは企業と投資家との建設的な対話の促進ということであり、さらに、その建設的対話促進の目的というのは、稼ぐ力、先ほど資本生産性というようなお話がありましたけれども、それが究極の目的になっているということは忘れてはいけないんじゃないかなと思っております。

今、石原委員からもございましたように、実は私自身も、みさき投資さんのような投資がある一方で、資本市場そのものは非常に多様なプレーヤーが、投資家としての多様なプレーヤーがあるべきであると考えております。そういった意味では、いろんな投資家がいていいし、one-size-fits-allというわけにはいかないと思います。しかし、こういう非常に詳細な分析をされる投資家がいて、そのニーズに応えるような形にしていかなきゃいけないのではないかなと思っている次第であります。

M&Aをはじめとして、経営戦略、MD&A、それから、リスク情報について、出してほしい情報というのは、今、お二人からご指摘があったとおりだと思います。ここに出席されている方の中には、今でもこれだけの分析ができるんだからいいんじゃないかとお考えになる方もいるとは思うのですが、みさき投資さんの投資というのは、ある意味、かなり特殊な投資スタイルではないかと思っております。今ご指摘もございましたとおり、いわゆるアクティブ投資の中でも、特にエンゲージメントに特化されているということで、10から15社の投資をされていると承りましたけれども、一般的にはアクティブ投資といったとき、40銘柄とか50銘柄の投資対象で運用していて、さらに、絞り込むためにもっとたくさんの企業を見ているわけであります。

みさき投資のお二人にお聞きしたいのは、そもそも10社から15社に絞り込むに当たって、どれぐらいの企業をまずご覧になって絞り込んでおられるのか。これだけディープな分析をしようと思うと、時間もかかります。一方で、よりたくさんの銘柄を運用している場合には、多分ここまでの分析というのはできないことが一般的でありまして、それゆえに、私は財務、非財務、特に今回は非財務が中心になっているわけでありますけれども、その開示の充実が必要じゃないかと思っております。

それから、先に出てしまいますので一言申し上げておきますと、先ほど来、田原課長のプレゼンテーションでも、みさき投資のお二人のプレゼンテーションでもご指摘がありましたが、非財務情報を開示するに当たってのキーワードは、やはりトップのコミットメント、あるいは経営陣の関与ということだろうと思います。残念ながら、今、我が国企業による非財務情報の開示は、有価証券報告書に限らず、トップの関与が感じられないケースが多いです。もちろんそこは任意の開示でやっておられる会社も多々あるというふうには承知しておるのですけれども、やはり任意の開示の場合、そもそもアニュアルレポートをつくっていない会社もたくさんあるわけです。法定開示の場合は、上場会社全社に適用されるということで、かつ、これだけの開示をするのは非常に大変ではあるのですけれども、先ほど田原課長からご指摘ございましたように、スケーラビリティといいますか、規模の面に関して言えば、中小型で比較的事業構造がシンプルな会社というのはおのずと記述も簡潔になってくると思いますし、それで多分多くの投資家は納得すると思います。従いまして、企業のコミットメント、トップのコミットメントがあった上で経営者自身の言葉で分析がなされているということが非常に重要だろうと思います。

ということで、ちょっと長くなりましたけれども、先ほどの質問に戻りまして、一体どれぐらいの会社からスクリーニングをかけられて10社から15社まで絞り込まれているかということをお聞きしたいと思います。

【みさき投資株式会社 新田パートナー/チーフ・エンゲージメント・オフィサー】

ありがとうございます。

実際に投資に至るまでにどのぐらいの数を見ているのかということかと思うのですけれども、あと、そのためのリサーチの重さとの兼ね合いでということかと思うのですけれども、本日ご説明をしたようなかなり深い有価証券報告書の分析というのは、投資をする直前、これは本当に投資をするかどうか最終的に決めようというところで行うプロセスでございまして、そこに行くまでにもう1段階、もう少し簡易なプロセスがあります。私ども社内では「BPMチェック」と言っているのですけれども、先ほどのbusinessとpeopleとmanagement、それぞれに関して、ざっと1社当たり2日から3日ぐらいで会社を全体的に見て、その事業の競争力、経営人材のクオリティ、それから、今どういう経営をやっているかということに関して、次の本格調査というか、ディープリサーチの方に進めるかどうか判断するスクリーニングというプロセスがございます。

そこにかける会社さんの数でいくと、我々、投資先が10社から15社ですけれども、そんなに頻繁に売買してポートフォリオの会社が入れ替わるということがございませんので、毎年毎年新しい会社をどんどん入れなきゃというニーズがそれほど多くはないのですけれども、年間数十社ぐらいはざっくり新しい投資先候補を常日ごろ見ているかなと思います。その中で、この会社はおもしろそうだな、競争力がありそうだなとなり、経営者と関係をつくれそうだなとなったら、関係構築を進めていき、先ほどの本格調査を経て投資をするというプロセスになってございます。

【熊谷委員】

ありがとうございます。

10社から15社まで絞り込むに当たって数十社ごらんになっているというお話なのですけれども、一方で、上場会社は4,000社、3,000社ですか、ほどあるわけであります。こういうルールをつくるときに、市場全体でどういうレベルの開示をしていくかという観点も非常に重要だろうと思います。

以上です。どうもありがとうございました。

【神田座長】

ありがとうございました。

和里田委員、どうぞ。

【和里田委員】

興味深いプレゼンテーションありがとうございました。お話を聞いていて、非常に深い分析で、有価証券報告書の使い方みたいなものをご披露いただいたと思うのですが、本当にこれは「やっぱりな」と思うところがありまして、といいますのは、有価証券報告書というのは、ある意味読み物のようなものになっていないと。実際その企業について一定レベルの理解があるような、皆様投資家さんだとかアナリストさん、そういった方々が詳細なデータを収集するためのものにしかなっていないんじゃないかなと思います。

一方、アメリカの20-Fを見ると、データも当然あるのですけれども、それよりも圧倒的に文章が多いです。有価証券報告書に比べるとストーリーがあります。つまり、それを読みさえすれば、その企業及び業界について一切知らなくても、それだけで大体会社についてのストーリー、今後のマーケットも含めて全て分かります。私なんかも過去両方比べたりとかしたときに思ったのが、まず、明らかにその会社がどの市場にいるのか、その市場に競合相手がどの程度いて、自分たちの位置付けがどうなのかということは、有価証券報告書においてはほとんど語られていることがありません。一方、20-Fとかについては、非常に多く書かれている。例えばグローバルオファリングをするような日本企業ですら、和文目論見書の方にはそれはない。英文目論見書の方には非常に充実している。この違いは非常に大きいのではないかなと思います。

ですから、分からない人は放っておけというような感じが有価証券報告書の方は感じるのですが、例えば、今日みさき投資さんにご質問させていただきたいのは、皆様が全く何も知らない企業、その市場についても何も知らない場合、そういった企業について有価証券報告書だけでその企業を評価できるかと、もしくは評価される前にいろいろな情報を様々なソースからとってきているのか、その辺を伺いたいと思います。

【みさき投資株式会社 槙野リサーチ・オフィサー】

ご質問ありがとうございました。

率直に申し上げて、有価証券報告書だけだと相当難しいというのが実際にリサーチをしている者の意見かなと思います。我々、分析の中では必ず有価証券報告書を読んでいますし、取材のときにも間違いなく読んでから臨みますが、その前に、例えば記事検索なんかをして10年から15年、あるいはそれ以上の過去の記事を読んでおります。記事ですと、記者さんがいて、それに対して経営者さんが答えているという形なので、かなりストーリーとしてその会社のビジネスやリスクの情報が出ていますし、そのほかにも、証券会社のアナリストレポートも一部活用しておりまして、特にイニシエーション段階のもの、その会社を初めてカバレッジするときに書かれているレポートというのは、5年前のものでも10年前のものでもかなり有用かなと思います。ないしは、逆に同業の米国企業の10-Kみたいなものから先に読む事例というのもあります。そちらの方を読んで、業界の構造を理解してから日本企業の有報を読んで、やっと肉付けができるみたいな、そういった現状は間違いなくあるかなと思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、皆様方からご意見をお出しいただきたいと思います。事務局説明の資料1-1でいいますと14ページ目、最後のページに論点ということで掲げさせていただいておりますので、この論点を意識してというか、この論点についてというか、ご発言をいただければ大変ありがたく思います。

たくさん、ほぼ同時に札を立てていただきましたので、それでは、貝増委員からお願いいたします。

【貝増委員】

どちらかというと、資料3についてなのですが、非常に感激をいたしました。というのは、私、アナリストの仕事を始めたのは40年ぐらい前だったのですけど、当時、IRも何もなかった時代に新人研修でやらされたことというか、やったことは、十数年分の有価証券報告書を読み、かつ、社史を読み、で、一生懸命考えた分析レポートを書き、それに基づいた質問表を作って、先輩に「これで会社に話を聞きに行っていいでしょうか。」と。「おまえ、こんなことしか有報から読み取れていないんじゃだめだ。」と言って、やっとこさオーケーが出て、当時、IRがありませんので、経理部長の所にお話を聞きに行っていました。

その意味では、今みたいなしゃれた言葉はありませんでしたけれども、まずは有報を全て読みこなすところから物事が始まるという意味では、プレゼンに非常に感激しました。また、よく言われる「単体財務諸表は質問がないから使われていないんじゃないか。」という話について、今日のお話の中で、むしろかつての単体にはいい情報がいっぱいあったということを事例をもってご説明いただいたのは、非常によかったと思います。

それで、特に8ページ、それから10ページがすごく重要だと思います。8ページで、単体の製造原価明細表が任意開示になった。その時に言われた理屈は確か、「連結でセグメント情報が充実していくのだから、省略しても困らないはずだ。」というものでした。その時というのは、IFRSの強制適用が秒読みのような雰囲気の中で、強制適用が始まれば10ページにあるようなセグメント別で詳細な情報が出てくるのだから、これをやるために作成者の方も大変だから、単体のここら辺の開示が任意になってもしょうがないなと思っていました。しかし、いつまでたっても、この10ページのような連結情報は出てきませんし、単体は現状ほとんど出してくれないという状態になっているんじゃないかと思います。

それで、論点の中で、確かにこうやって、槙野さんがおっしゃるようにマニアックに読んでいくと、これは私自身も昔やったし、好きなのですが、逆の意味で言えば、幾つか指摘事項にありましたように、セグメントごとに示される記述情報、MD&A、リスク情報、要は財務情報を含めまして、セグメントごとのマトリックスの形で的確に読み取れるものを目指せば、いろいろな投資家のニーズに合うんじゃないかなと、私は思っております。

ですから、財務情報を含めまして、セグメント別、要は、A、B、Cというセグメントと財務情報、それからMD&A、リスク情報といった、このマトリックスを作って、有報を読めばここにポンポンポンとその会社の特色が書き込める形、これが、どんな投資家にとっても使いやすい。まず有報の目指すべき姿は、これじゃないかと思います。

それから、記述情報で何かというと出てくるボイラープレートという話があるんですが、実は私自身が、例えばうちの協会の事業報告書で自分のパートを書くときに、やっぱり去年のバージョンをパッとコピペして、数値だけ変えてとついやっていますので、ボイラープレートになりがちなのも分からないではないんですね。これを防ぐためには、どういうルール付けをするかということが大事だと思うのですが、2つの視点が必要じゃないかと思っております。

1つは、「前年とどこが変わったんだ」ということをきっちり書きなさいということ。それから、「同業他社とどこが違うか」をきっちり書きなさいということ。この2つが強調されていけば、自然とコピペだけでは済まなくなっていって、だんだん各社の個性が出てくるのではないかなと考えております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、差し当たり右の方へ行きたいと思いますので、太田委員、上柳委員、石原委員、井口委員の順でお願いします。

太田委員、どうぞ。

【太田委員】

ありがとうございます。私の方から4点申し上げさせていただきたいと思います。

1つは、全体に関する話でございますけれども、MD&Aに関しては、アメリカのSECではトップレベルの関与が必要であるというようなことがガイダンスで明記されていたりしますし、今回取り上げている非財務情報については、MD&Aはもちろんのこと、経営戦略ですとか、リスク情報ですとか、そういう意味では、経営陣のまさに認識が問われる情報が非常に多くなっているところでございますので、現在、日本企業の一般的なプラクティスとしては、有価証券報告書というのは事業報告と違って取締役会で審議をされてその内容を確定するというときに決議までとっている例というのはなかなかないと思いますけれども、どこまでそれを実際にやるかどうかは別にして、取締役会の中で、特に経営戦略やMD&A、リスク情報といったあたりは経営の根幹に関わる部分ですので、有価証券報告書のそういう部分について取締役会の中でも実質的な審議がなされる方向に誘導していくべきなのかなと思っております。それが1点目でございます。

それから、各論でございますけれども、MD&Aの中では、私、法律実務家でございますので、ビジネスの中身よりも、どちらかというと制度面に関するところを申し上げたいなと思っています。まず、MD&Aの中では、資料1-1の9ページ目に出てくる「重要な会計上の見積り、仮定」に関してでございますけれども、昨今いろいろな形で会計上の不祥事といいますか、突如大きな損失が出るといったような上場企業の例がございますけれども、最近の会計上の問題は、見積りとか、そういうものに関係するものが非常に多くなっているように思います。判例の中でも、会計上の見積りとか、そういうもの自体が経営判断であると判断された事例があるかと思いますけれども、会計上の見積り、仮定として、経営陣がどのような前提を置いているかということは経営判断にも直結するところでございますし、投資家にとって予期せぬような会計上のインパクトがある事象が発生するということがないようにするためにも、このあたりは非常に重要ではないかと思います。ちなみに、アメリカの方では、このあたりも20-Fの中で開示されている対象なのかなと思っておりますので、このあたりは盛り込んでいただく方がいいのではないかと思っております。

それから、3点目はリスク情報に関してでございますけれども、これは一般論的な話でございますが、今、資料1-3に付けていただいている開示ガイドラインでも、かなり細かく具体例を出していただいていて、そういう意味では、今の日本企業の多くがやっているボイラープレート的な開示ではなくもう少し踏み込んだ形で具体的に開示をせよという方向性は、既に開示ガイドラインの中でも出てきているのかなと思いますけれども、特に、放っておくと日本企業はリスク情報に関しては毎年毎年同じ内容を開示して、年ごとにそれがどう変わっているのか全く分からないような開示が非常に多いわけですけれども、当然外部環境の変化に応じてリスク水準というものが大きく変わってくることがあるわけなので、まさに資料1-1の12ページに英国FRCのガイダンスから4点抽出していただいた、この辺りが非常に重要ではないかなと思います。即ち、主要リスクの大幅な変化について説明されるべきであるとか、企業の将来の見込みについて重要であると経営陣が考えるものに限定されるべきという点であるとか、あまり総花的に全部何でもかんでも書けばいいよということではなくて、特に経営陣が重要であると認識しているものはどういうものなのかに絞って開示すべきであるといった点です。こういう全般的なガイダンスというのは非常に重要かなと思っていますので、リスク情報に関してもこういった形での開示がなされるように促していっていただければなと思っております。

それから、最後に、非財務情報の中で、資料1-1の14ページの論点として掲げられているものとしては5つ目の中に入るのだろうと思うのですけれども、現行の開示の中で私が従来から問題意識を持っておりますのは、経営上の重要な契約という開示がございますけれども、これは広い意味でいうとリスク情報に関係する部分もあると思いますし、MD&Aに関係する部分もあるかと思うのですけれども、例えば主要な株主との間で経営に関する契約を結んでいる場合であるとか、資本業務提携契約や経営指導契約のようなものが典型ですけれども、日本企業の場合、経営上の重要な契約に関する開示として、こういう名前の契約を結んでいます、ということで終わりにしてしまっている例が非常に多いと思います。しかし、契約の中身というか、詳細まで開示する必要は当然ないとは思うのですけれども、非常に重要なそういう経営の根幹に関わるような契約については、契約の概要といいますか、その辺りまでは開示すべきではないかと従来から思っているところです。もともと今の有報の記載の開示についても、経営上重要な契約の「概要」を開示すると書いてあるのですが、「概要」の開示が、多くの企業にとって、ライセンス契約という契約を結んでいます、終わり。ということになってしまっていて、契約の名前は分かっても、その契約の中身までは分からないという形になっているのが実情かと思います。しかしながら、これは本来的に制度の目指しているところとはやや齟齬があるのではないかなと思っていますので、その辺りも開示を充実させて、有価証券報告書がいろいろな意味での経営陣と投資家、株主とが対話をしていく共通の基盤として意味のあるようなものになるように、さらに記載を充実させるという方向に持っていっていただければと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

上柳委員、どうぞ。

【上柳委員】

ありがとうございます。

資料1-1の14ページで示していただいた論点について、いずれも積極方向で見直しをしていくことが重要だと思います。特にMD&Aのところに一番関わると思うのですけれども、リスク情報ときちんと関連付けるであるとか、あるいは定量的な情報、KPIなんでしょうか、も含めて、具体的に記載していく方向はぜひとも必要だと思います。もう1点、トップレベルの関与、太田委員からもご指摘のありましたマネジメントが関与をきちんとしているということで、取締役会で審議していただく、あるいは、最初からトップレベルの人たちがつくるものだということを意識していただくというところが大変重要だと思います。

その上で、留意点というか、2つなのですけれども、1つは、先ほどみさき投資の方からご指摘があった、いわゆる細目の方ももう少し研究して、場合によっては開示が必要だと、復活させるような事項もあるんじゃないかということで勉強したいとは思っているのですが、どうしてこういう改革が必要なのかというプリンシプルをきちんと示すということが大事だと思います。企業の経営者は投資家から資産を預かり、受託者として働いておられるということからしても、資本市場の効率化という観点から見ても、どういうところで企業価値を向上しようとしているのか、その戦略にどういうリスクが、定性的な情報だけではなくて定量的なことも含めて開示するということは、開示の大原則だと思います。それは、要は、各企業のマネジメント、あるいはトップの方が日常、会社の中で声を枯らして部下の方々、あるいは全社的に、今ここで頑張ろうと、そのためにはこういうリスクがあるから注意をしようというふうにおっしゃっていることをそのまま出していただくと、その中で最も重要なものを出していただくということで、ある意味簡単なことだと思いますし、それから、それを衆人環視の中で、投資市場の監視の中で言っていただくということがやはり企業規律をきちんとすることじゃないかと信じております。そういう点からすれば、上場企業全部ということになろうと思いますし、ためらうことなくやる必要があると思います。

もう1点は、こういう制度改革の議論がどうしても欧米の後追い的な雰囲気になるのが、悔しいと言うと語弊がありますけれども、何となく抵抗があるところなので、むしろ、日本発で世界の手本になるようなところを見つけたいなという気持ちはあるのですが、これはなかなか難しくて、それがなかなか難しいとすれば、欧米の中で一番いいところをきちんとコンパクトに日本は選択しているんだと、そういう意味でのベストミックスを持っているんだというところに誇りを持って、制度改革をしていく必要があると思います。そういう意味でメリハリを利かせて欧米の教訓を取り入れるということが必要だと思います。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

石原委員、どうぞ。

【石原委員】

ありがとうございます。

私、第1回目は欠席で大変申しわけなかったのですが、ついては、最初に今回の検討全般についての基本的な認識について若干申し上げた上で、本日の論点について触れさせていただきたいと思います。

まずそもそも企業の持続的な成長、中長期的な企業価値の向上に向けて建設的な対話を促進していこうということは、今、日本経済にとっても企業の活力にとっても極めて重要なテーマであると認識をしております。ただ、先ほども申し上げましたように、一口に投資家と言っても、その投資方針や投資や売買の判断基準、それから売買判断のタイミング、頻度、そういったものは投資家によって全く異なるということでありまして、それによって株価形成への影響も全く異なると認識しております。言うまでもなく、ロング、バリュー、ヘッジ、アクティビスト、パッシブ、それから、個人の投資家さんまでいらっしゃるわけでして、投資判断基準などはさらに細分化が可能と思います。したがって、それぞれの投資家の類型に応じて必要な情報、関心事というのは当然異なってくるということがありますし、その情報収集の方法や欲しいタイミングも当然異なってくるということだと思います。

したがいまして、建設的な対話に向けた情報開示のあり方を検討するに際しては、投資家類型ごとに、どのような情報をどのように活用して投資判断をどのようなタイミングで行うのかという実際の投資家行動をしっかりと踏まえることが極めて有効だろうと考えております。その上で、投資家が広く共通して関心を有するような情報はミニマムスタンダードとして制度開示とし、投資家の類型によって関心の所在が異なる情報、言いかえれば、投資家ごとに異なるであろう、各企業との建設的な対話を通じてより深く確認をしたい、より深く意見交換をしたい情報については、むしろ任意開示ないし任意のミーティング、これを最大限活用していくということが、全体としての情報開示の効用を最も高めるのではないかと、そう考えるところでございます。

言うまでもなく、これまでも開示については少しずつかもしれませんが着実に改善されてきていますし、一方で終わりはないということだと思いますけれども、ぜひ今回の検討が生産的なものになるように、総論で語るのではなくて、各論で、何の情報をどう使って投資判断されているのかということをしっかりと踏まえた検討をしていただきたいと思っています。

そういう中で、今回の論点として非財務情報が5点ほど挙げられております。もちろん今の開示で十分だということではないだろうとは感じます。一方で、一体何をどのように書いたらいいのかということに対する迷いもある。また、それを書いたからといって本当に投資対象となるのかよく分からないところも多々ある。ただ、書け、書けと言われても、それはまたそれで企業側としても困ってしまうところもあるわけです。今回、一定のガイドラインを示していただくということはもちろん有効だと思いますが、要は、書く側にとっても、それから情報をとる側にとっても、そこにニーズがあるということが一番実質的に開示の有効性を高めるということだと思いますので、ぜひ先ほど申し上げた投資家類型の観点を踏まえつつ、ベストプラクティスと思われるような開示、欧米の開示はかなり提示されておりますけれども、日本国内であっても、こういう開示があれば我々はこういう視点で投資ができるといったような、そういう具体的な議論に結びつくようなベストプラクティスのモデル、この辺をぜひ大いに出していただいて、それをみんなで共有していくということが望ましいのではないかと思います。一つ一つガイドラインを示しても、本当に有意義な開示になるかどうかというのは、これまでの経験上も疑問を感じるところでありまして、書き方一つによって、すぐにボイラープレート化する可能性があるわけですので、ぜひ双方のニーズに応じた任意開示を重視して、投資家と企業の対話の中で必要性が確認されて開示の改善が進むような方向を目指していただきたいと思うところでございます。

最後に、今回の検討スコープの範囲外かもしれませんが、AIによる投資判断がどんどん進んでくる、いずれ投資判断の大半をAIが行うようになるのではないかといった声もよく聞くところです。そうなったときに、建設的な対話というのはどうなっていくのか、企業のIR活動はどうなっていくのか、この辺は大いに関心があるところです。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、井口委員、どうぞ。

【井口委員】

ありがとうございます。

みさき投資さん、どうもありがとうございました。

まず任意開示の話もございましたので、それについて少しコメントさせていただいて、あと、14ページにあります事務局からご提示いただいたポイントについて意見させていただければと思います。

任意開示についてですが、一番代表的なものとしては、投資家にとってアニュアルレポートがあると思います。私は日経アニュアルレポートアウォードの最終審査委員をやっておりまして、年末年始、かなり多くのアニュアルレポートを読みました。価値創造ストーリーという点ではすごくいいレポートがありまして、企業の方にはこのようなすばらしいレポートを作っていただいたことに感謝する次第です。ただ、一方で、財務諸表が全く付いていないとか、あるいはリスクの指摘が数多くのレポートでない、2、3社くらいだけがリスクを明確に指摘されていたという状況でした。なので、先ほど委員の方とか、あるいはみさき投資さんがおっしゃっていたように、私も、それを読んだときに企業の価値創造が一貫して分かる、制度的な開示に担保された非財務情報の開示の拡大というのは必要と思っております。

本日の議題の14ページのところの特に1つ目から3つ目について意見させていただきます。まず前提として、最初に、事務局がおっしゃったように、経営戦略、MD&A、それからリスクの開示というのは相互に関連付けていただくというのが一番、投資家の理解に資すると思っております。

最初の経営戦略ですが、私が考える実効的な開示は、まず、経営理念の説明がありまして、その次に利益獲得手段としてのビジネスモデルの説明、その後に、今回改訂された内閣府令にもありますように、経営計画の説明と経営目標の開示がくると思います。

ただ、それに加えて私が必要と思っておりますのは、当年度において経営計画の目標が達成できたのか、あるいは未達成だったのか、進捗はどうだったのかということを、先ほどから出ておりますように、経営者の方の視点で語っていただくということです。それに加えて、経営計画の達成や未達成に対する評価を踏まえた上で、今後の経営環境認識の中での新しい経営計画、新しい経営目標が示されれば、投資家にとってすごく実効的な開示につながるのではないかと思っております。

さらに、複数のビジネスを抱えていらっしゃる企業さんもいらっしゃるわけで、今、申し上げたことをセグメント別に、あるいはビジネスモデルごとに、ビジネスラインごとに開示することが望ましいと思います。また、図や表もぜひ積極的に活用していただきたいと思っています。

こう言うと、制度開示なので、このようなことは非常に難しいのではないかというような意見も出てくると思います。ただ、先ほどベストプラクティスというお話もありましたが、例えば三井物産さんの有価証券報告書を見ると、まさに中期計画を振り返って、新しい中期計画を出されて、しかも図や表をふんだんに使われていらっしゃるということで、私から見るとすごく分かりやすく、ここまでやっていらっしゃる企業様はないと思いますが、非常にいい例ではないかと思っています。ということで、現状の制度の中でも、ベストプラクティスを通じて非財務情報の開示を推進するということは可能ではないかと思っています。

MD&Aのところでございますが、今回の内閣府令の改訂で、セグメントを通じて説明していただくなど重要なポイントはすでに入っていると認識しております。ただ、すでに内閣府令にもあるところではありますが、強調したいのは、米国の事例にもありましたが、売上高とか利益が増えた、減ったというのも、もちろん書いていただきたいですが、それが何故増えたかという原因ですね。そして、それに対する分析というのもぜひ付け加えていただきたいと思います。例えば一時的な要因なのか、あるいは構造的な要因なのか、内部要因なのか、外部要因なのか、ということもあると思います。変化の要因をブレイクダウンして開示していただくということが重要と思います。

あと、スチュワードシップ・コードが導入されて、投資家の目線というのが中長期化していると思っておりますが、その中ではキャッシュ・フローというのがすごく大事になってまいります。この資料にあります、資本の財源など、資本の活用、調達についてのキャッシュ・フローに関する情報も有用と考えます。これは、任意のアニュアルレポートでは、CFOメッセージということになると思いますが、そういうものもぜひ必要かと思います。また同様にここでも図表等を入れていただくと、投資家の理解に資するようになるかと思います。

3つ目のリスク情報です。投資家にとってのリスクというのは、経営戦略、1とか2にありますところの達成においてのリスクというふうに認識しております。このリスクを分かりやすく説明していただくとすると、リスクの重要度とか、あるいは、英国のリスクの開示の例でもありましたが、企業はどのようにリスクを低減されようとしているのか、あるいは、リスクに対してどう対応されようとしているのかということもあわせて開示いただくと、すごくありがたいと思っています。リスクを経営戦略やビジネスモデルと結びつけていただくのも重要と思います。

あと、前回も申し上げたのですが、企業さんも最近はESGとか、あるいはSDGsということをかなり言われておるのですが、残念ながら有価証券報告書であまりこの言葉を見たことがありません。これから入ってくるのかもしれないですが、このESGやSDGsには、当然、リスクの側面も入ってくると思います。最近、TCFDとか、いろんな枠組みが出てきておりますが、このようなリスクも書いていただくというのも重要と思っております。

最後に、望ましい情報開示のあり方ということで3つほど挙げさせていただければと思います。

1つ目は、今ほど石原委員からもご指摘ありましたが、ベストプラクティスにどんなものがあるのかということを共有化することは大事かなと思っています。

2つ目は、パッシブ運用では当然ですが、アクティブ運用においても、実は比較的小さな企業に投資するということもあります。ですから、この審議会で議論されている枠組みを、企業の大小の区分けなく、全上場企業に適用するというのが私は望ましいと思います。当然、実際の有価証券報告書の記載内容において内容の濃淡は出てくると思います。それはそれで致し方ないと思っていますが、枠組みとしては全上場企業に適用するというのがいいと思います。ただ、中堅企業でも大企業に負けないぐらいすばらしい開示をされているところはあるので、機会を共通化するということでよいのではないかと思っています。

最後、3つ目でございますが、任意のアニュアルレポートは、企業さんの努力もあってすごくよくなっていると思います。ただ、企業さんの努力もあるのですが、投資家の関与もかなりあったと自負しております。有価証券報告書についても、今後外部から企業に気付きを与える仕組みがあれば、非財務情報の開示に関しては、すごくよくなっていくのではないかと思っております。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、中ほどから左のほうへ行きたいと思うのですが、初めの方に札を立てていただいた方4名、川島委員、三瓶委員、永沢委員、水口委員、その後札を立てていただいた方が6人いらっしゃって、高濱委員、中野委員、柳澤委員、そして清原委員、中熊委員、和里田委員、最後に青委員で、11名の方から、残り20分でございますので、お一人最大2分を意識して、手短に、あるいは早口でお願いできればありがたく存じます。

川島委員、どうぞ。

【川島委員】

ありがとうございます。

私は論点の4つ目、人的情報について意見を申し上げます。

まず企業と投資家との建設的な対話を通じて持続可能な企業価値の向上や企業の中長期的な成長を促す上で人的情報の開示を充実させていくことは重要であると考えます。と申しますのも、我が国の労働力人口が減少していく中で、企業において優秀な人材の確保、定着を図ること、また、従業員一人一人が働きがいを感じながら能力を発揮することができるような労働環境を整備することは、企業経営においてますます重要な課題になっているからであります。このように、人的情報は企業における非財務情報の中でもとりわけ重要な項目の1つであり、投資家との関係においても、これらの取組状況を分かりやすく発信していくことは、従来にも増して求められていると考えております。

また、その積極的な開示を促すことで適切な人事労務管理を行う企業が評価される環境を醸成することは、我が国における人的投資の促進を通じて社会全体の生産性向上や経済の持続的な成長にも資するものと考えております。

今後、人的情報の内容について、人事労務管理、労働安全衛生、労使関係、女性の活躍に関する方針やその実施状況などを中心に、当ワーキング・グループにおいて具体的な開示のあり方に関する議論を深めていただくことをお願いいたします。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

三瓶委員、どうぞ。

【三瓶委員】

ありがとうございます。

2分ということなので、どこをはしょったらいいかなと思いながら考えていたのですが、まず、大きな前提で、開示の仕方は企業によって裁量があるというのは、それはもちろんだと思うのですが、そこでだめならだめでいいというのは従来のウォールストリートルールという考え方です。ただ、今は、全世界の時価総額の7割以上がスチュワードシップ・コード、またはそれに準ずるものを導入していて、そのスチュワードシップ責任ということで言えば、上場企業に対してだめならだめで放っておいていいのではなくて、働きかけて価値創造に向かってもらうという責任も、投資家としては負っているということです。その中で、日本がそれを率先してやらない、スチュワードシップ・コードを導入したにもかかわらずやっていないとなると、これは世界の中で低迷していくということで、そういうことになってはいかんのかなと思います。

先ほどの中で、経営トップの関与が大事だということがありましたが、これは例えば英国の例で、法的根拠が書かれている部分がありますけれども、これがとても大事な部分だと思います。配られた英文資料の「[Draft]Guidance on the Strategic Report」のSection 4に書いてあります。先ほど田原課長からも冒頭説明がありましたけれども、英国のStrategic Reportは、取締役の働きぶりを評価するためにあるとSection 4の4.1に書かれています。「to assess how the directors」というところから始まっていますけれども、「to promote the success of the company」これが大事であると。「success of the company」というのは、4.2にまた「success of the company」って何だというのが書いてあって、それはいわゆる価値の創造と価値の保全というふうに書かれています。これこそ取締役がやらなきゃいけないことですけれども、同時に、これは最終的に取締役の報酬と関わってきます。これをやっているか、やっていないかで報酬が決まるということで、これは英国ですから、コーポレートガバナンス・コードの精神とも親和性があるというか、一致しているところですね。そういうことになって報酬に関わってくるとなると、経営トップが関与せざるを得ません。だから、そのリンケージというのがとても大事になります。

一方で、こちらの、これも配られた英文資料の「Guidance on the Strategic Report」というものですが、これの20ページ以降、Section 7を見ていただくと、青い囲みでLinkage exampleというのが幾つも出てきます。これがまさにどういうふうに一つ一つの物事を、ばらばらに開示するのではなくて、意味を持たせて関連付けるかということの例です。

そこにたくさん書かれているのは、例えば戦略とリスク、そういったことが多く書かれています。ですから、リスク情報というのは、単にありそうなことを全て言うのではなくて、リスクがあるから、それに備えるものとして戦略があるとかいうことに関連付けて説明すべきだということが書いてあります。それと、このリンケージの中で、その1つには報酬との関連というのも27ページには書いてあります。

ということで、関連付けというところがまず1つとても大事で、関連付けてぐっと一回りしていくと、報酬にもつながっていって、これは昨今報酬についてもいろんなところで議論されていますけれども、これはどんどんインセンティブという形で入ってくるんだと思います。そうすると、マネジメントの関与というのはおのずと引き出されるのではないかと思いますので、そこのリンケージを常に念頭に置いておくのが重要かと思います。

時間がないので、簡単にですが、先ほどみさき投資さんの説明の中で、私はまさにこれは大事だと思ったのは、資料3の12ページにある、かつての単体注記の中で、売掛金明細、どこに残っているかというこの明細は、実は粉飾を見抜く、または粉飾を警戒したとき、備えるときにとても大事です。取引先どこどこと契約があって、そこの売掛金が残っている。ところが、私たちから見て、そんな実態、本当にあるのかなと思って、幾つかの会社に確認しましたけれども、そんな取引をしたことがないし、そんな会社聞いたこともないということで、疑義を持った会社はやっぱり粉飾で消えました。ですから、今はそれが見抜きにくくなっているという問題があります。

あと、リスクに関していい例として、日本郵船さんのリスクの開示は非常に具体的に書かれています。平成88年まで続く契約について開示されています。また、例えば法定開示についてミニマムしかやらない会社がありますが、そういった会社がどのように有報を書いているか。ミニマムだからこそ、アニュアルレポートの代わりにそこに十分に書いているのかということで見ると、ある会社さんはリスク情報は表題を抜いたら7行しか書いていない。重要な契約というのは該当なしとなっている。一方で、法定開示、ミニマムにしかやらないほかの会社さんは、逆に有報でリスク情報についてフルに3ページ割いて書いていて、重要な契約についても契約相手まで書いて開示している。ですから、今言った後者の会社については、任意開示を使うかわりに法定開示で十分に開示している。ただ、もう一つの方、7行しか書かなかった方は、本当に法定も何もかも全ての開示についてミニマムしかやっていないということだと思います。

最後に、範囲についてですけれども、英国の場合、従業員500人超か、それ未満かということで分けていて、そういう意味では、一定の線引きをしているとはいっても、相当数の上場企業をカバーしているということになると思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、永沢委員、どうぞ。

【永沢委員】

ありがとうございます。みさき投資のお二人にはとても感動しました。ありがとうございましたということをまず申し上げたいと思います。お話を伺いまして、私は情報開示は改善、いい方向に向かっているのだと思っておりましたけれども、後退した部分もあることを認識いたしました。おそらく連結会計への対応などで割愛された部分も多く、任意開示に回さざるを得なかったものもあったかと思うのですが、やはりこの機会にもう一度復活すべきものがあるのではないかというところを検討し直す必要があるのではないかと思いますし、その復活の仕方については、今後まだ議論が続くと思いますので、そこで議論していく必要があると思っています。

それから、先ほどからいろいろな方から多様な投資家がいるというお話がありました。私は今回個人として参加させていただいているわけですけれども、今日、正直な話、みさき投資さんのスタイルにかなり厳しいご意見、こういうスタイルは生き残れるのかみたいな意見があるようににも聞こえたのですが、日本の株式市場のためにはこういうスタイルが生き残れなければいけないと思いましたし、、個人の投資家も、みさき投資さんのされているスタイルと同様のスタイルで株式投資をしている伝統的な個人の株主が残っていて、そういう投資家を育てていくことが、日本の市場をどうするかというところに必要なのではないかと思っております。

それから、短期、長期というお話も出てきました。前回、個人の投資家は短期で、どうせそんな情報なんか見ないんだというご意見がありまして、持ち帰りましたら、うちのグループでは、そのような意見には反論してこいという意見がありまして、本日の議論から外れますが、一言申し上げたいと思います。もちろん、情報関係なしで売り買いする投資家もいるとは思います。そういう方々には、それこそFXなど、投資対象もいろいろ増えてきているわけですから、投機をやりたい方はそちらをされればいいわけです。個人投資家を株主としての投資家として残し育てるような制度改革が必要なわけです。長期か短期かというのは、持っている期間ではなくてウォッチしている期間なんでございまして、みさき投資さんは15とかと言われましたけれども、個人でも、人によりけりですが、ウォッチし続けている会社を3社とか4社とか決めていまして、ここまで来たら上がる、ここまで上がったらここで1回売るというような投資をしているのです。でも、ずっとウォッチし続けて、下がったら買うわけでして、会社の情報をずっとウォッチして、この会社の価値を自分なりに形成しているわけでございます。そういう個人の投資家を応援していただくような情報開示をお願いしたいと思っております。

最後に1点、ミニマムスタンダード化することがいいのかどうかというところは、いろいろ意見が分かれるところだと思います。任意開示という言葉も出てきましたが、強制開示の部分をミニマムにしてその他は任意開示にするという方法だと、結局は今の日本社会では出さない方に収斂されてしまうのではないでしょうか。法定開示にすると形骸化するのではないかとも思いますので、法定開示というのはなかなか難しい問題かとは思いますが、その辺、もう少し工夫が必要だと思います。あえて言えば、こういうことができるのならばということですが、コンテストでもいたしまして、情報開示の優れている会社を褒めてさしあげて、投資家から表彰状を差し上げるみたいなことはできないでしょうか。あるいは、国からというのも考えられないでしょうか。ちょっとそれは難しいかもしれませんが、表彰状を差し上げるようなシステムをつくって、いいところを褒めるということで、優れている企業を他企業がまねて追随するということしか、より良い方向に動かすには期待できる方法はないのかなと思ったりもします。また、企業を褒める人は、普通の投資家では企業や金融機関は動きそうにないので、国、金融庁とかだったら企業も動くのかなというふうには思っております。余計なことを申し上げましたが、以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

水口委員、どうぞ。

【水口委員】

みさき投資の皆様、どうもありがとうございました。

1点目、経営戦略及び重要リスクなどの開示についてまずお話しさせていただきます。経営戦略につきましては、企業の目的、理念を掲げて、事業機会と脅威も勘案した上での競合状況、競争上の優位性などの事業環境認識に裏付けられた事業モデル、経営戦略に係る開示を期待します。こうした長期ビジョンを踏まえた利益成長や資本コストを上回る資本効率向上などに向けた事業モデルや経営計画等を記述した上で、その策定や達成に向けて活用する経営管理手法のあり方についても明記していただくと非常にありがたいと思います。

ここでいう経営管理手法の例といたしましては、リスク概念を基軸として意思決定をあらゆる局面で織り込み、リスク対比での資本基盤とリスク対比での収益性を経営の意思決定の指標として活用し、企業価値を拡大していくことなどが考えられます。

こうした経営手法を活用した上で、どのような事業選択をして資本効率の向上を目指し、リスク耐久力を維持しつつもROE向上を図り、どのように持続的成長を実現していくのかといった記述は非常に有用だと思います。こうした経営管理手法に関わるプロセスを経て決定された具体的な諸施策の記述にも期待するところでありまして、こうした記述の例としては、資本効率の向上につながる政策株式のリスク削減とか、資本効率の高い新規事業投資や将来の収益基盤の構築に向けた先行投資などが挙げられると考えます。

さらに持続的に企業価値を創造していくには、リスク耐久力を維持することも肝要でありますが、特定企業のリスク耐久力を理解するために、リスクの潜在価値とそれと対比した資本基盤について、企業がターゲットとする水準などにも関心があります。この際に、企業がストレス事象も含めたさまざまなシナリオ下でリスクに耐え得る力を維持し続けられるか否か、それから、十分な流動性を確保できるかなどの観点からも、企業がさらされている重要なリスクの影響のあり方の理解の深化につながる開示が有用であると考えます。

重要なリスクの特定に当たっては、今々の状況だけではなくて、環境の変化によって新たにあらわれてくるリスクも含め、定量、定性、あらゆるリスクを網羅した上での重要なリスクの洗い出しに期待します。先ほどありましたけれども、重要度のメリハリのないリスクの列挙は有用ではないと思っております。

2点目は、法定開示のあり方についてです。一定レベルの企業開示の質を法定開示で担保することが必要であろうと考えます。開示要件の大枠を法定開示で規定して、任意開示のベストプラクティスを法定開示の枠組みの中で浸透させ、PDCAを通じて改善するといったような仕組みを工夫することの意義が大きいと思います。こうした考えの背景としましては、我が国を拠点とする複数の企業が、前述したような財務諸表利用者の視点から望ましい要件の幾つかを満たした任意開示を行っている一方で、企業群全体の開示状況に目を向けると、ネガティブな情報が記載されない傾向があり、任意開示に任せるだけでは企業開示のレベル向上につながらないことが懸念されることがあります。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、高濱委員、どうぞ。

【高濱委員】

ありがとうございます。

私の方からは全体について1点と、MD&Aについて2点ほどお話をさせていただきたいと思います。

スライド14に論点が記載されていますが、非財務情報全般は、基本的には経営者の方々がストーリー性を持って語っていただくものだという理解をしておりますので、個別に論点を切り出していくというよりは、それを超越するようなプリンシプルベースのフレームワークのようなものを策定しておくことが有効ではないかと考えております。実際に英国FRCの戦略ガイダンスにおいては、重要性という基本原則とその他の原則を開示されており、それに沿って開示をしていくという方が、それ自体で読みやすい非財務情報が形成されるのではないかと考えております。

それから、個別論点ですけれども、スライド9のところで、どなたかもご指摘されていましたが、重要な会計上の見積り、仮定という点については、重要な情報だと思いますので、ぜひこれは残す方向で議論をいただきたいと思っています。

ただ、この論点につきましては、IFRSベースでいうと、財務諸表の注記情報での記載とする方法もあり、MD&Aについては、皆さんご存じのとおり、我々公認会計士の監査の対象ではないといった差が出てくる論点でもございますので、議論の中では、そういった保証についての議論もした上で、最終決着を見たらいいのかなと思っております。

それから、3点目として、スライド10のMD&Aの記載のKPIについてですけれども、財務、非財務のKPIを含むというのは重要ということはそのとおりなのですが、特に財務のKPIの中に、最近はよくEBITDAとかNon-GAAPメジャーの話がいろいろなところで議論されており、これらについては、開示財務情報との関連性がしっかり担保できるような、そういった措置をとっていただけるといいのではないかなと思っております。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

時間が過ぎておりますが、中野委員、柳澤委員、清原委員、中熊委員、和里田委員、青委員がまだ終わっておりませんので、手短にお願いできれば幸いです。

中野委員、どうぞ。

【中野委員】

MD&Aと人的情報について申し上げます。研究者は、開示情報が実際に役に立っているのか、本当に有用なのかどうかという点について検証しております。一般的に証券市場全体を対象として検証するのですが、例えば米国の場合、財務諸表に加えて、MD&Aが充実している。研究によれば、財務諸表の情報を所与としてもなお、MD&Aは価格形成に資する情報を提供していることが明らかになっております。他方、我が国は、もちろん財務諸表は有用な情報を提供しているのですが、非財務情報は必ずしも充実していない。ただし他方で、東京証券取引所の適時開示制度により業績予想が開示されており、価格形成上、これが決定的な役割を果たしていると理解しています。

財務諸表及び財務諸表に関連付けられた非財務情報(MD&A)により企業内容等の理解を図るのが本来ですが、我が国の場合には、必ずしも非財務情報が充実していない一方で、将来情報である業績予想が価格形成上決定的な役割を果たすという実態があります。グローバルな時代を迎える中、非財務情報の充実が求められているのですが、MD&Aにおいて、例えば損益計算書については売上高、売上原価、販管費、営業利益、経常利益及び当期純利益の変動要因を説明いただくとともに、セグメント情報については、売上高、利益、資産、のれん等の変動要因を記述していただくということをお願いできればと思います。

次に企業と投資家との建設的な対話の促進という、本審議会の目的に関して意見を申し上げたいのですが、ご紹介がありましたように、日本企業はセグメントの数が多く、また質的に見ても事業の多角化が進展しており、先進主要諸国、すなわち米国、英国、ドイツ及びフランス企業に比べ、日本企業は最も多角化の程度が高い現状にあります。

こうした状況下、日本企業は、生産性の低い部門を抱えているのではないか、この点が国の政策上も大きな問題になっていると理解しています。そこで、投資家との対話を図るという観点から言えば、不採算部門の議論では雇用調整の問題が焦点の1つになるので、セグメント別に売上原価と販管費に分けて人件費のデータを開示することがまず必要だと考えます。生産性の向上の議論の根底には雇用調整の問題があるので、人的情報の充実は投資家と企業の間の建設的な議論の促進につながります。

さらにみさき投資さんや貝増委員のご指摘のとおり、製造原価明細書は有用ですが、親会社単体の時代はやはり終わったと捉えるべきだと思います。製造原価明細書についてもセグメント別に開示されるのが望ましい、これは間違いないところだと思います。

最後に海外事業の利益について申し上げたいのですが、セグメント情報の会計基準の改訂により、現在、財務諸表の注記において、海外事業の利益については全企業の10%しか開示されていない、ということを前回申し上げました。ただしこれは会計基準が決めている問題ですからとりあえず置いておくとして、ただ、財務諸表とMD&Aの関連性ということで言えば、少なくとも海外事業については、売上高と固定資産は財務諸表の側において開示されております。これらの2つの項目について、なぜこの地域の売上高がこのように変動したのか、固定資産をこの地域に重点的に置いているけれども、どのような戦略、計画の中でこれを置いているのか。これらの点をMD&Aの側において記述していただければ、海外事業の利益が財務諸表の側において開示されていない問題を少しでも改善できるのではないかと思います。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

柳澤委員、どうぞ。

【柳澤委員】

ありがとうございます。

まず、全般的な情報提供のあり方ですが、経営戦略、MD&A、リスク情報に関しては、それぞれが有機的に相互に関連性を持って説明されることが望ましく、その際の基軸として据えられるべきものが企業価値創造という共通の視点になると考えております。企業が自社に固有の価値創造プロセス、もくしは価値創造ストーリーを示した上で、中長期的な企業価値創造と関連づけて経営戦略の内容を説明し、その進捗状況や目的達成に向けた課題やリスクについてMD&Aの中で経営者の視点から分析するという記載の流れが考えられます。こうした構成は、PDCAサイクルを回すといった経営の意思決定プロセスからも整理がしやすく、分かりやすい記載の仕方になるのではないかと思います。

次に、各項目における情報提供のあり方につきまして、投資判断に関わる観点から簡潔にコメントさせていただければと思います。

経営戦略に関しては、企業の目的や理念が明確に記載されることで、提示された戦略との適合性を確認する手立てとなり、戦略立案の適切性をチェックするための情報にもなります。ビジネスモデルについての説明は、経営戦略の実現可能性を考察する上で重要な情報であり、価値創造プロセスを把握する視点からも欠かせない要素と言えますが、特に競争優位性と持続可能性に関して他社との差別化要因と関連づけて説明することがビジネスモデルに対する投資家の理解を深めるために有用と考えられます。

また、企業が中期経営計画を作成している場合には、どのようなKPIを作成しているのか、さらに、そのKPIが戦略的目標の達成状況を定量的に把握するために適切と判断している理由、についても説明すべきと考えております。

なお、経営戦略の遂行に際して想定されるリスクに対しては、あらかじめリスク回避、もしくはリスク抑制に向けた対応策を示すとともに、可能であればリスクシナリオと採るべき戦略の概要に関しても言及されることが望ましいと考えております。

MD&Aに関しては、経営トップが関与したもので、あくまでも分析的な見地に立って経営者の視点から記載されることが求められると思います。事業戦略をベースとしたセグメントごとの計画対比での達成状況や、財務及び非財務のKPIからの振り返り、目標達成に向けた課題と今後の見通しといった情報は、遂行中の戦略の有効性や計画の達成確度を判断するために有用であり、企業の課題認識に関しては、建設的な対話を促す情報にもなり得ると考えられます。

また、MD&Aの記載に当たっては、財務情報の単なる記述ではなく、主要な財務数値に変化が生じた場合には、その背景や理由を明らかにし、例えば一過性の要因か、構造的な要因かといった分析も含めて、将来の業績見込みの実現可能性を考察していく上で、的確な判断に資するような情報提供がなされる必要があると思います。

その意味では、現状で開示が求められていない事項になりますが、市場の動向や競合相手、事業機会といった企業を取り巻く外部環境に関する情報に関しても、要因分析などを記述する中では必然的に記載される内容と言うことができます。

なお、経営戦略との関連性も踏まえて特に記載を充実すべき項目として、資本の財源及び資金の流動性に関する情報が挙げられると思います。現状ではキャッシュ・フローの状況説明を淡々と記載するようなケースが多いように見受けられますが、経営戦略遂行の中で想定される設備投資や研究開発費などの資金需要に対して、キャッシュ・フロー・マネジメントの観点から資金調達の源泉について将来の見込みを示していくことは、投資計画の実効性や経営計画の目標達成確度を図る上でも有用な情報と位置づけられます。企業との対話においても、フリー・キャッシュ・フローの見通しやその使途に関してアジェンダとなる場合も多く、内部留保の問題や成長投資と株主還元の配分バランスなどについて建設的な対話を深めていくためにも、流動性と資本の調達源に関する情報はより適切な記載が求められるものと考えています。

リスク情報に関しては、一般的なリスクの羅列ではなく、重要性に応じた企業固有のリスクが説明されることが経営戦略の実現可能性を考察する上で必要性の高い情報と言えます。さらに、リスク特性に関わる内容として、リスクの発生可能性や発生タイミング、リスクが顕在化した場合の業績への影響などの説明は投資判断を行う際に考慮しておくべき有用な情報となります。また、リスク管理手法やその有効性、主要なリスクについての変化の状況や経営陣の認識といった情報に関しても、可能な限り説明されることが求められると思います。

最後に人的情報に関してですが、ESG情報のSに該当する社会要因への着目といった観点からも、従業員に関する情報を充実させていくことが望ましいと考えております。連結全体での労働生産性を把握するために必要な人件費の開示や、提出会社が持ち株会社の場合には、主要な法人について、現行制度で求められている人的情報を把握できるようにすることが企業の実態的な分析を行う上では不可欠な対応と言えると思います。

以上でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

それでは、清原委員、どうぞ。

【清原委員】

ありがとうございます。時間を超えていますので、概括的なコメントを少しさせていただければと思います。

弁護士ですので、制度面について総論的にコメントさせていただきますが、まずは、今回、資料の中で詳細な内容のイギリスとアメリカのガイダンスの日本語訳をご用意いただきまして、事務局の方々の作業には感謝と敬意を表したいと思います。その中で、これら2つの国があがっているのですけれども、共通する点と異なる点とがあると思われますので、コメントさせていただければと思っています。

先ほどありましたように、イギリスの方は会社法の枠組みの中でのものとして戦略レポートというものがあって、取締役の義務としての会社の成功を促進する義務について、どのように義務を履行しているか、その説明を求めるという形になっているところ、アメリカの方は、投資としての証券法の枠組みでのもので、今までの日本の証券法制では、こちらの方をむしろ参考にしてきたというものがあると思いますが、それぞれ、会社法、それから証券法と違いがありますけれども、共通しているものについて、次に若干コメントをしたいところがあります。

まず、MD&Aですけれども、過去の情報などの記述そのものを求めているというよりも、その分析や討議ですから、説明責任を果たしていただくという観点が重要なポイントになってくると思います。日本ですと、言葉は悪いですけれども、義務化されて、ガイドラインとか留意事項とかがあるので、そこに合わせた開示をしているというのが、もしかすると多いのではないかと。ここのところは、エンゲージメントを含めて、説明責任の観点から、もう一度見直していくべきことがあるのだろうと思われます。

その中で、記述としては、やはり分析が大切ですが、それから将来の見込みとか見通しが重要なのですが、そういうものにはなっていないところ、ここについての考え方を少し整理しなければいけないのではないかと思います。英語の表現で言えば、prospectとかforward lookingというものが原文の方にもありますし、こちらの資料では、将来の見込み、見通しという言葉が多く使用されているというところは、この開示項目の性質を表しているポイントだろうと思っています。

先ほど資料1-1、8ページのところで田原課長がさらっとお話しされたところに関してなのですけれども、1つ重要だと思うのは、例えば分析をした上で経営陣が認識している重要な傾向、英語でいうKnown Trendというところですが、これをきちっと書いていくということ。ソニーさんの開示例のところでTrend Informationとありましたけれども、こういったところは、我々の日本の中での実情ではまだ欠けているところではないかと思います。

トップの関与、それから取締役会の関与ということを言う場合に、それが必要だといっても、どうやったらそれを促すことができるかという視点、これも想定をしていかなければいけないと思うのですが、そうすると、イギリスのガイダンスの方は、取締役がボードの義務を果たしていることについての報告というものでありますし、また、プリンシプルベースということもあって、コーポレートガバナンス・コードの中に、リスクに関する取締役会の役割というのもありますけれども、そういった点に関しても、イギリスのガイダンスというのは、かなり整合性もあるし、我が国のボードのメンバーなどが改めて見てみるとすごく参考になる、そういうガイダンスとしては意味があるだろうと思っております。

アメリカの状況を見てみたときに、MD&Aとリスク情報についてちょっと特徴があるなと思いますのが、MD&Aに関しては、SECのレビューとコメントというプロセスがあって、そしてかなり長い歴史の中で培われてきた実務といいますか、この方向に持ってきたという背景がある。そのように、レビューした上でのフィードバックがあったりして、ガイドラインとか、こうしてはいけないということが積み重ねられてきているということが、開示の充実につながっているという面はあるんだろうと思います。

また、次に、リスク情報のところについては、資料でいうと、非常に短いものしか出ていなくて、Regulation S-Kの503項のところだけが出ているかと思うのですけれども、むしろ実情としてどうなってきたかというと、将来情報については、セーフハーバーのことを考えると、cautionary statement、注意情報、注意事項というものをちゃんとやっていかなきゃいけないということがあることもあって、どうも訴訟対応の中でのリスク情報の開示の充実が進んできたという側面がアメリカの場合は特に強いんじゃないかと。そうすると、確かにボードの中でもリスクというのは考えるのだけど、どうも訴訟に偏った書き方になっているのだとすると、本来投資家が求めているものとも違うし、また経営陣、またボードのメンバーも、そこの中で事業計画を練ったりする中でも、過去のトレンドも見るし、これからどうしていくかというところでも、リスクのアペタイトは見るし、分析はするし、それに対してどう対処するかという施策まで本来は議論しているので、開示のところでそういう検討プロセスを踏まえた開示にうまく持っていければ、また、ガイダンスもイギリスの場合ははっきりしていますので、ボードの中での議論の参考にもなるようなガイダンスにもなっているので、参考にしていけば、このところというのはもう一度深掘りしてみると重要なポイントが出てくるんじゃないかと思われるところでございます。

開示がまだ日本で十分じゃないという中でちょっと気になっているところは、アメリカのSEC登録をしたりしている会社、ソニーのところが先ほどみさき投資さんの資料にも挙げられていましたが、例えばアメリカでは3年分の数値を基にした比較分析があると。ところが、それが日本に持ってきたときに、日本語になったときに、場合によると2年程度になってしまったりとか、そういった形で、開示が、矮小化という言葉がいいかどうかは別とし、縮減しているということ、それはむしろ日本の開示のルールの方が開示を狭くしていて、本来やろうと思っている情報を開示しようにも、それを押しとどめてしまうというような、そういう側面がもしあったとすると、非常にもったいないなと思います。

MD&Aなどは、アメリカでも実は、アメリカはルールベースと言われているところがありますけれども、プリンシプルベースの考え方に基づくとすら言われている部分が実はあって、ガイダンスもいろいろ出されてはいますけれども、個々の会社の実情に合わせて柔軟な開示・記載が本来求められるというところが出発点にあるので、そこのところを考えてみると、日本の開示ガイドライン、資料にも入れていただいていますけれども、詳細かつしっかり留意点が挙げられているんですけれども、他方、やや厳格に、義務として書かれている面があるので、これをまじめに読んでしまうと、ちょっと窮屈さも感じかねないのではないかと。もっと開示を充実することを促進するようなガイダンス、ガイドラインのあり方というのも、あわせて考えていくことが必要ではないかと考えます。

最後に、今般4月に施行されるRegulation FD、フェア・ディスクロージャー・ルールの関係ですけれども、アメリカではご案内のとおり2000年に導入されて、その後、このFDの関係もあって、選択的開示ができないがゆえに開示が充実したと。MD&Aなんか、例えばアサンプションなんかも含めてだと思いますけれども、開示が充実したという面もあって、個別に、選択的な開示ができないがゆえに、重要な部分については開示書類で先に出しておくというところがあると。日本も4月以降、このルールの実施によって開示のあり方が変わるきっかけになっていて、今、ちょうど岐路に立っている、ということを踏まえて考えていくことが重要ではないかと考えています。

以上です。

【神田座長】

ありがとうございました。

中熊委員、どうぞ。

【中熊委員】

まず、みさき投資の方のお話ですが、我々が先輩からこうしなさいと言われたことをしっかりやっておられ、感銘を受けました。我々自身は全部の会社についてここまでできてはいませんが、分析の仕方や知りたいこと、ディスカッションしたいことなどに大きな違いはございません。みさき投資のような分析の仕方あるいは視点というものは、長期のバイ・アンド・ホールド型の投資スタイルを持った方だけではなく、おそらく運用業界で長くアナリストとして証券分析を行っている方々の多くが持っているものだと思います。

槙野様の提案については、ほとんど全部に同意したいところではありますが、これを全部やれと言ったら企業さんは相当大変だろうと思います。その意味では、何をどう開示するかを現代的なコンテクストでもう一度考えてみるということだと思います。

例えば先ほどの単体にあって連結にない数字の問題などは、セグメント情報の充実という方向性で考えられるのではないかと思います。セグメントごとに原価や投資の内容をきちんと開示し、戦略を示す。そういう情報が充実していけば、長い目で見て日本企業の再編にもつながるのではないかと思います。英国や米国におけるセグメント情報の開示は日本より進んでおり、この辺りは検討の余地があるのではないかと思います。

あと、リスク関係の記述ですが、こちらは、先ほど委員の方からお話がありましたように、米国と英国ではだいぶ記述の仕方が違うなという感覚を持っています。日本がボイラープレート的だと言われますが、米国のリスク開示もマクロ的なものが結構多く、わりと通り一遍なところがあります。一方、英国のリスク開示は、より具体的に企業固有のものが書かれており、問題にどう対処するかということや、問題を把握するシステムみたいなことも記述されています。目指すならやはり英国の方ではないかと私は思います。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、和里田委員、どうぞ。

【和里田委員】

私の方から、先ほど清原委員からご指摘のあった、ガイドラインをつくるということもあるんですけれども、開示を充実していく環境づくりが必要だと、そういう点についてお話し申し上げたいと思います。

私自身としては、先ほどのみさき投資さんの質問の際に申し上げたように、会社として、事業をやっている市場であるとか、その中での競合環境、そこの位置付け、これは非常に重要な情報であり、それに基づかなければ経営戦略というのはなかなか語れないんじゃないかなと思っております。ただ、そういった、ここに書いてあるビジネスモデル、他社との差別化要因、競争優位性、バリューチェーン、こういったものの説明を充実させていくということになれば、これまでの法定開示資料に盛り込む内容と性質がかなり違うので、戸惑う企業が多いんじゃないかと思います。先ほど石原委員からもありましたように、結局ガイドラインをつくってもボイラープレート化してしまうというおそれもあるんじゃないかと。実際、米国上場の日本企業さんで、SECのガイダンスに従って継続開示していても、投資家さんから開示が悪いと言われていて、実際、株価もディスカウントされて、PBR1倍ぐらいを推移しているような企業もあって、結局、「仏造って魂入れず」ということじゃ駄目で、そんなものは簡単に見透かされちゃうのかなと思います。

実際、各企業さんでIR担当と財務担当というのは、開示についての綱引きがあると思います。IRの方は開示を充実させたいと。ところが、財務担当というのは、法定開示資料というのは非常に重みがあって、リジッドに考えてしまうので、どうしても最低限の内容で済ませたいというような傾向があるのではないかと思います。実際、修正、訂正があった場合に、関財に電話して確認をすると、関財も重要性を判断できないので、「訂正してください」とおっしゃる。そうすると、いろんなレイヤーでリスク回避をすると、どうしても保守的になってきて、訂正を非常にやり過ぎちゃっていると思います。そうなると、財務担当の方もどうしても最低限で済ませたいなと思ってしまうのではないかなと思います。

そういうことを考えると、欧米のプラクティスを入れた形での有価証券報告書、法定開示資料に変えるというのであれば、あわせて、その背後にあるような思想も変えていく必要があるのではないかと思います。あくまでビジネスモデルというのは、企業の経営者さんの考え、見方を示すものであって、これが合っているとか、間違っているとか、そういうものではないと思います。ですから、開示する当事者の企業もそうですけれども、当局さん、取引所、あと、投資家さんも、従来の法定開示に対するリジッドな考え方は変えていかなければならないのではないかと思います。

今日、事業報告と有価証券報告書の文言統一が資料にありましたが、この文言統一とか一例ですが、非常にリジッド過ぎるなという印象があります。こういう状況であれば、どうしても企業さんというのは、法定開示資料について非常にリジッドに考えてしまいがちになると思います。この辺も含めて思想を変えていかなきゃいけないのではないかなと考えている次第でございます。

【神田座長】

ありがとうございました。

青委員、どうぞ。

【青委員】

私の方から3点だけ簡単にご指摘させていただきたいと思います。

まず1点目ですけれども、有報による開示の基本的な位置付けについてですけれども、投資者にとって重要性が高い情報、マテリアリティの高い情報につきましては、法制度で一定の担保がされている下で広くあまねく全ての投資家が見ることができることが可能な状況にするということが重要かと思われますので、重要性の高い情報につきましては、アニュアルレポートのような任意開示だけということではなくて、法定開示である有報に記載していくべきであって、有報の開示自体が実際にユーザから使われていくような形に持っていくことを意識することが重要ではないかと思います。

それから、2点目として、何がマテリアルかということにつきましてですけれども、基本的には、単なる保有期間の長短ということではなくて、企業評価の目線が長期の目線を持っている投資家を念頭に置きまして、彼らとの間で建設的な対話が充実したものとなっていくようにという、そうした発想の下に、どうした情報が基礎的な情報として必要かというところをベースにして考えていくことが大事じゃないかと思います。

とりわけ、近時、経営陣が何を目指していて、それが実際にどのように経営されて、その結果として財政状態、経営成績がどうなっていったのかといったことを一連のものとして理解できるようにするということが非常に重要かと思われますので、例えばビジネスモデルですとか、事業ポートフォリオの構築の仕方、あるいは資源・資本の配分ですとか、財務情報、こういったものをきちんと理解できるようにすることが重要かと思われます。とりわけ、そのときに経営陣の考え方がきちんと反映される情報開示を模索していくことが適当かなと考えます。

そのときの具体的な設計としましては、何がマストかというところをどのように規定を設けるかというところが1つ難しいところと、最低限のものを規定した上で、そこから先に各社が任意で充実した方向に実際の開示が向かっていくようにするためにどのような仕組みをつくるとよいのかというところを十分に意識しながらよくよく考えていく必要があるのかなと考えます。

それから、3点目としましては、有報は重要性の高い情報を社として責任を持って記載すべきということでございますし、それも、経営戦略ですとかMD&Aは経営陣でないと無味乾燥なものになってしまって深いものは書けないということになるかと思いますので、その作成に当たりましては、先ほどから出ておりますように、経営陣が関与すること、とりわけ早い段階から関与するということが重要なことではないかと考えます。

以上です。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

それでは、最後に小林委員、どうぞ。

【小林昭広委員】

最後ですので、私の意見を簡単に述べたいと思います。

今日私の意見で思うのは、法的規制によるミニマムスタンダードの設定と、ベストプラクティスの設定、それとこれらの運用というんですかね、それを考えていく必要があるんじゃないかなと思いました。

今申し上げた運用のところ、先ほど委員からありましたインセンティブとでもいうんですかね、報奨を与えたらどうだというのがありましたけれども、これ、考え方としてああいいなと思ったんです。SECの場合は、SECの関与のような形で指導とでも言うんですかね、報奨がいいのか、指導がいいのかというような方策も、今後考えていく必要があるんじゃないかなと私は思いました。

例えば指導であれば、日本の皆さんの横並びみたいな認識があろうかと思いますから、それぞれの業界の影響力の高いところだけに例えば指導するとか、そういうようなやり方等もあるんじゃないかなというのが私の意見でございます。それらを進める上で、法的規制ですとか、ガイドラインの具体的な案というものをベースに今後は議論していく必要があるのではと思いました。

以上でございます。

【神田座長】

どうもありがとうございました。

大幅な時間延長となり、大変申しわけありませんでした。さらにご意見がありましたら、事務局の方へお寄せいただければと思います。

本日いただきましたご意見を踏まえ、次回以降、さらに議論を深めさせていただきたいと思います。

最後に事務局からご連絡等ありましたらお願いします。

【田原企業開示課長】

本日は時間を超過いたしまして申しわけございませんでした。

次回の日程につきましては、引き続き調整させていただきます。よろしくお願いいたします。

【神田座長】

それでは、散会いたします。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企業開示課(内線3665、3846)

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