金融審議会「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」(第7回)議事録

  • 1.日時:

    平成27年10月21日(水)16時00分~18時00分

  • 2.場所:

    中央合同庁舎第7号館13階 金融庁共用第一特別会議室

【岩原座長】

予定の時刻になりましたので、ただいまより「金融グループを巡る制度のあり方に関するワーキング・グループ」第7回会合を開催いたします。皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

それでは、議事に移らせていただきます。本日は事務局より、討議資料「金融グループの共通・重複業務の集約」について、まずご説明をいただき、討議を行いたいと思います。

それでは、事務局から説明をお願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

それでは、私からご説明を申し上げます。皆様方、お手元に資料が配付されていようかと思います。討議資料(2)「金融グループの共通・重複業務の集約」と題された資料、5ページほどのものがございます。それに付加しまして、参考資料が1、2、3とございます。参考資料の方につきましては、内容について図示してご説明した方が分かりやすいかと思うようなところについて図示したものが2つと、あとは関係する条文の抜粋をつけております。必要に応じてこの参考資料も使いながらご説明を申し上げたいと思います。

この討議資料のご説明に入る前に付言いたしますと、前回の本ワーキング・グループにおきましては、金融グループの経営管理のあり方という、経営管理全般、ガバナンスの全般という大きなテーマについてご議論いただきました。今回はそれも踏まえて、金融グループの中で重複業務を集約したり、あるいは共通業務を集約したり、それに関するものの考え方についてご議論いただくことを考えております。

それでは、この討議資料について、「(1)基本的な考え方」のところからご説明を申し上げます。「(1)基本的な考え方」といたしまして、国内外において日本の金融グループを取り巻く環境が目まぐるしく変化する中で、日本の金融グループがこうした動きに戦略的に対応していくためには、グループとしての経営管理の実効性を確保するとともに、グループとしてより柔軟かつ効率的な業務運営を行うことも併せて重要である。

特に足許、地方においては、持株会社を活用し、県域の枠を越えた経営統合の動きが見られ、その中で統合によるシナジー・コスト削減効果を発揮することが期待されている。

こうした中、地域銀行を中心に、金融グループからは、例えばシステム管理や資金運用など、グループ内の各エンティティに共通・重複する業務を、持株会社あるいはその子会社に集約することで、コスト削減を図りたいとの声がある。金融グループ内の共通・重複業務を集約することは、グループ全体の業務運営におけるシナジー・コスト削減効果の発揮に資するものであり、ひいては、利用者利便の向上にも資する面がある。経営管理の実効性の確保と規制の趣旨には十分配意しつつ、各金融グループがこうした取組みを進めていく中、制度面からも見直しの余地がないか検討していく必要があるとの指摘についてどう考えるか。まず、こういった基本的な考え方でございます。

(2)におきまして、具体的な項目を(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と4項目記載しております。まず1ページの(2)の最初のところでございますが、各金融グループが様々な取組みを進める中、グループ内の共通・重複業務の集約に当たっては、銀行法令による規制等との関係で、例えば、以下のようなことについて、柔軟化が許容されないかとの声がある。

(イ)でございます。現行制度のもとでは、持株会社が行える業務は、「子会社の経営管理を行うこと並びにこれに附帯する業務」に限定されている。これは銀行法第52条の21というところで規定をされております。参考資料の3というものがございます。1枚目に関係の条文を記載しておりますが、銀行法第52条の21におきまして、「持株会社は、その子会社である銀行、第五十二条の二十三第一項各号に掲げる会社」等々、要するに子会社として持っている会社の経営管理を行うこと並びにこれに附帯する業務のほか、他の業務を営むことができないと規定されております。この第2項におきまして、「銀行持株会社は、その業務を営むに当たっては、子会社である銀行の業務の健全かつ適切な運営の確保に努めなければならない」とされております。

討議資料の方に戻っていただきまして、現行の銀行法の規定はこのように、持株会社の業務について限定をする規定を置いております。1ページ目の下から3行目のところ、続きでございますが、したがいまして、持株会社自身が業務執行を担うことは認められていない。他方、金融グループからは、グループ全体の資金運用や共通システムの管理など、グループ内の各エンティティにおいて共通・重複する業務について、持株会社が統括的・一元的に実施したほうがコスト削減につながり、また、グループ全体の効率的なリスク管理も行いやすいことが考えられることから、持株会社がこうした業務の執行を担うという選択肢も柔軟に認めてほしいとの声がある。

他方、持株会社が業務執行を担うことについて、これを無制限に許容することとなれば、本来、持株会社に期待されている経営管理機能の発揮が疎かになってしまうのではないか、また、子会社との利益相反が生じる可能性がないかとの見方もあり得る。

この点について、上記のように持株会社が統括的・一元的に実施することが、グループ全体の一体的・効率的な経営管理に資すると考えられる業務であれば、例えば持株会社の取締役会等に、「社外の視点」を取り入れるなどの工夫も行いながら、グループ全体に対する実効的な監督機能の発揮が確保されることを前提に、ここは前回もご議論いただきましたが、こういうことを前提に、持株会社が業務執行を担うことを許容していく余地があるのではないかとの考え方についてどう考えるか。まずこれが、(2)の第1点でございます。

続きまして、(ロ)でございます。グループ内の共通・重複業務をグループ傘下の特定の子会社に集約する場合、持株会社に課されている上記のような業務範囲上の制約は存在しないが、子会社に対する業務の委託元である銀行には、委託先に対する管理義務が課されている。これは銀行法第12条の2に規定がございます。先ほどの参考資料3の2枚目に書いております。

ちょっと長い条文ではあるんですが、ポイントだけご説明を申し上げますと、銀行法第12条の2第2項という規定がございます。銀行法第12条の2第2項におきまして、1行目の真ん中ぐらいにございます、「銀行は」で始まるところですが、「銀行は、内閣府令で定めるところにより」、最初はこの重要な事項の説明などが書かれていて、その次に下線を引いておりますが、「その業務を第三者に委託する場合における当該業務の的確な遂行その他の健全かつ適切な運営を確保するための措置を講じなければならない」と法律で規定をされており、それを受けて、銀行法施行規則第13条の6の8におきまして、委託業務の的確な遂行を確保するための措置、例えば、13条の6の8第1号では、「当該業務を的確、公正かつ効率的に遂行することができる能力を有する者に委託するための措置」や、2号以下につきましては、それが適切に実施されているか等々についての検証なり、問題がある場合の対応ができるような措置、こういったものを講じなければならないという規定になっております。

討議資料の2ページにお戻りいただきたいと思います。2ページの(ロ)の4行目の最後のところでございます。今、銀行法第12条の2についてご説明しましたが、このため、グループ傘下の複数の銀行からグループの共通・重複業務を傘下の子会社に集約する場合、委託元である各子銀行は、それぞれ別個に委託先の管理義務を負うことになり、グループ内の業務集約に際して大きな負担が生じることになる可能性がある。

この点については、委託先の管理義務を持株会社が一元的に担うことで、委託先に対する責任や指揮命令が一元化されれば、グループ全体の経営管理の実効性の確保にも資するとの考え方もあり、委託元である各子銀行それぞれに別個・重複して委託先の管理を求めるのではなく、グループ全体の経営管理を担う持株会社による一元的な管理に委ねることを許容してほしいとの声があるが、どう考えるか。

1枚おめくりください。3ページに、次の論点でございます。(ハ)と書いております。銀行がその特別関係者、具体的に兄弟会社ですとか子会社などとの間で取引を行う場合、特別関係者を優遇する条件、すなわち銀行にとっては不利な条件での取引、または特別関係者に不当に不利益を与える条件で取引を行うことは原則として禁じられております。これが銀行法第13条の2に規定されておりまして、いわゆるアームズ・レングス・ルールと称されております。

その下に注書きがございますが、具体的には内閣府令でどう書かれているのか、そのエッセンスだけここに書いております。銀行にとって不利な条件、特別関係者を優遇する条件というのは、内閣府令で「その営む業務の種類、規模及び信用度等に照らして、当該特定関係者と同様であると認められる特定関係者以外の者との間で、当該特定関係者との間で行う取引と同種及び同量の取引を同様の状況のもとで行った場合に成立することとなる取引の条件」より不利な条件で行うことが禁止されております。すなわち、同じような者との間で行う取引の条件と、基本的に同じ条件でもって特別関係者との間で取引を行いなさいと、こういうルールになっております。

アームズ・レングス・ルールは、平成4年の銀行法改正により認められた「業態別子会社方式」での銀行の他業態への参入に伴う弊害を防止する観点から導入された規定であります。

その趣旨は、銀行が自らと特別の関係がある者の利益を図ることによって、銀行の健全性を損ない、預金者等の利益が害されることを防止することにある。また加えて、銀行単体でのリスク管理のみならず、アームズ・レングス・ルールをグループ全体のリスク管理手段の1つとして機能させることで、ディシプリンの効いていない、いわゆる特定関係者間での不明朗な取引が銀行グループ全体としての健全性に問題を生じさせるような事態を防止することも目的としている。

一方、足許、金融機関のグループ化が進展する中、今日的にはグループ内の資源を有効に活用し、シナジー効果を発揮することで、グループ全体の収益の最大化を図ることも重要な課題として考えられる。これに関連して、例えば、金融グループ内で資金余剰の状態にあるエンティティから資金が不足しているエンティティに対し、例えば社内レートを活用して資金融通を行い、グループ全体の収益強化を図るといったケースが考えられる。

注書きで書いておりますが、例えば同一グループ内にA銀行とB銀行がある場合において、A銀行は余剰資金があり、これを日銀の当座預金で運用しているが、このレート、B銀行がもし調達するとなれば、このB銀行の調達金利よりは低いレートを基準にB銀行に資金融通を行う。B銀行は低コストで調達した資金をもとに、その営業基盤の地域においてサービスを展開し、グループ全体での収益向上を図るという、そういったものが例として考えられます。

今、文字と言葉で説明しましたが、これを図式化した参考資料1という、A4の紙をお手元に配っているかと思います。この参考資料1をご覧いただきたいと思いますが、同一グループ内にA銀行とB銀行が存在する場合を念頭に置いております。このA銀行、B銀行の上に持株会社が存在するとして、A銀行は、例えばα%で預金を調達して、その余資運用としてグループ外の、例えば日銀などに対してβ%で運用している。資金を比較的余裕をもって保有しているA銀行からB銀行に、余資運用先のβ%と同じパーセントでグループ内で融通を行い、B銀行はその営業基盤において比較的貸付先が多いとするならば、本来市場で調達するとするならばγ%で調達するところを、グループ内のA銀行からβ%という、より低い金利で資金を調達し、これを貸付などに生かすことによって、グループ全体で資金運用の効率化を図っていく、そういうケースでございます。

討議資料の方にまたお戻りください。討議資料の4ページの2行目からでございます。このようなケース、今申しましたようなケースにおいて、例えばA銀行の健全性を害してまでB銀行に収益を上げさせることは、銀行の健全性確保の観点から問題が生じるおそれがある。また、グループ内で収益・リスク管理に関する合理的かつ明確なルールを定めることなく、このような取引を無限定に許容すると、エンティティごとの収益・リスク管理を曖昧にするおそれもある。

他方、例えば、個別銀行の健全性を害することなくシナジー効果によって収益が生じ、このシナジー効果によって生じた収益をグループ内に配分することを基本とした上で、グループ内で収益・リスク管理に関する合理的かつ明確なルールが定められている場合には、アームズ・レングス・ルールに基づく条件での取引は、グループ収益の最大化の実現、及びその成果の適切な配分に適さない場面もある可能性がある。

また、アームズ・レングス・ルールが、銀行の他業態への進出に伴う弊害を防止する観点から導入されたとの経緯を踏まえれば、グループ外の他業態との競争条件に不均衡をもたらさないよう留意する必要があり、同一グループ内に複数の銀行が存在する場合の銀行間の取引にまで、こうした規制を及ぼすことが適当かとの議論もあり得る。

上記のような点を踏まえ、どのように考えるべきかということでございます。

その次が、(ニ)としているところでございます。邦銀や外国銀行支店が、外国銀行の業務の代理・媒介を行う場合には、委託元の法人、外国銀行ごとに認可を受けることが求められている。このため、同一グループに属する複数の外国銀行から委託を受ける場合であっても、委託元法人ごとに、その都度認可を受ける必要がある。これが現在、銀行法の第52条の2に規定されております、いわゆる外国銀行代理業務制度でございます。条文は参考資料3についておるのですが、その前に再び図式化したもの、参考資料2をご覧いただきたいと思います。

この図の中で、いろいろなプレーヤーが登場しているのですが、真ん中にミシン目がありまして、上のほうが日本、下のほうが海外における業務展開とご認識いただければと思います。国際的に展開する金融グループがあるとして、その本店が日本以外のどこかにある。一方で日本には、在日支店があるというケースをここで考えております。真ん中の上のところに、ピンク色で在日支店と書いておりますが、この在日支店と同じ金融グループの中で、外国にいろいろな支店があったり、あるいは現地法人で進出しているようなエンティティが考えられます。一方で、右側の方に事業会社、親会社と書いております。例えば、日本に本店を置く事業会社があるとして、この事業会社のグループ企業、あるいは支店が国際的に展開し、例えばA国には関係会社があり、B国には支店があり、C国にも支店があり、D国には関係会社があるというように複数の国にまたがるグループ展開をしている場合がございます。

そうすると、この進出先の支店、あるいは関係会社で、左側の金融グループの同一国に展開しているような支店や現地法人から、口座の開設の取引などを行う場合があると。ただ、この口座開設を行う場合に、右上の在日支店が日本国内にある事業会社の本店に対して、グループ内の企業の口座開設の勧誘などをまとめて行うような場合が想定されます。一方で、現在の制度上、上のところに書いてありますが、現行の外国銀行代理業制度のもとでは、例えば外銀在日支店が日本の事業会社に対し、各国拠点での口座開設等の勧誘をしようとする場合、所属銀行(法人格)ごとに個別に認可を受ける必要があるということになっております。

もう一度討議資料にお戻りください。4ページの(ニ)の5行目からでございます。今、参考資料3を使いまして、銀行法第52条の2の規定をご説明しました。その次に、「このため」とあります。このため、特にグローバルに経済活動を展開する金融グループからは、例えば、日本に本拠地を置く企業グループの世界各地の支店や関係会社に対し、当該金融グループの各拠点を活用して、グループ一体で機動的にサービス提供をすることが行いづらくなっているとの指摘がある。

一方で、外国銀行の業務の代理・媒介について、委託元法人ごとに個別の認可が求められている趣旨については、外国銀行に対しては、直接の監督権限が及ばないことから、国内においてその業務の代理・媒介を行う者に対する監督を通じて、問題のある外国銀行によって不適切な競争サービスが国内で提供されることを防ぐことなどにある。

この点に鑑みれば、不適切な競争サービスの提供などを防止することが必要であり、引き続き委託元である邦銀や外国銀行支店に対する当該業務に係る日々の監督等の徹底を図りつつ、例えば、委託元法人グループ単位での包括的な認可制のもとで、グループ全体として、その財務の健全性及び業務の適切性は担保し、グループ内の外国銀行が新たに委託元となる場合には、届出を求めること等の措置を講じる一方で、委託元法人単位での個別認可まで求めなくてもよいという考え方もあり得るが、どう考えるか。

その下に注書きで書いておりますが、上のほうにありました、日々の監督等の徹底の例でございます。例えば、委託元銀行(外国銀行)の職員が来日し、委託先の銀行、すなわち日本国内にある銀行や外国銀行支店による外国銀行代理業務をサポートする場合に、委託先銀行が委託元銀行の当該職員の活動について記録を実施する等、適切に管理・監督しているかをモニタリングする。こういった監督の徹底ということが例として考えられるということでございます。

以上、(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と4つの論点についてご説明を申し上げました。そのほか金融グループの共通・重複業務の集約のあり方に関して検討するべき点があるかということでございます。

事務局からのご説明は以上でございます。

【岩原座長】

どうもありがとうございました。それでは、これから討議に移りたいと存じます。本日の討議資料に関し、委員の皆様、どなたからでも結構でございますので、ご発言をお願いいたします。

川村委員、どうぞ。

【川村委員】

ただいまご説明いただきました、金融グループの中での共通・重複業務の集約についての論点につきましては、6月に私どもから要望させていただいたようなポイントも数多く反映された内容でございまして、ぜひ皆様のご検討をいただきたいと思っています。特に重複する業務を持株会社に集約をしまして、一元的に執行できるようになれば、複数の子銀行がある場合においては非常に大きく効率化が進むのではないかと思っています。これまでもお話ししていますけれども、横浜銀行では来年4月に東日本銀行と持株会社を設立して経営統合する予定でございまして、その件に関しまして、ここのところ海外の株主に説明に回っております。そうすると口をそろえて、なぜコストシナジーが大きい、コスト削減が大きくなるような合併でいかないのかということを、ほとんど質問されます。

これは地域金融機関の場合ですと、地元のお客様から、まさに地元の銀行という親しみをもってリレーションを構築しておりますので、ここが私どもの地銀の企業価値だということですので、相互に合併をして名前が変わったりしますと、こうした重要なお客様とのリレーションが薄くなってしまう。また、規模は違いますけれども、メガバンクとの差別化という点についても難があると思っています。

これに加えまして、それぞれの地銀の地域ごとの経済特性ですとか、若干のビジネススタイルの違いに基づいて、各銀行の人事制度ですとか給与水準などはそれぞれでありまして、これらを維持することも有用であります。こうした点から、欧米の投資家さんが言われるような単純な合併というようなことは、地銀においては非常にデメリットが大きいというふうに考えておりまして、今回、横浜と東日本では持株会社による経営統合をするという決断をしたわけであります。

ただ一方で、統合後の事業計画をつくるに当たりましては、極力合併と同じ程度のコストシナジーが出ないかという視点から、システム統合ですとか、バックオフィスの集約など、ありとあらゆるコスト削減策を検討いたしました。その結果、今回の私どもの例でいきますと、経営統合して5年後には、両行合わせて年間30億ぐらいの経費削減ができるというふうな結論に至りましたけれども、これは海外の投資家株主に説明しますと、これまでの銀行の合併事例なんかを見ると、コスト削減効果は経費比率で大体2割ぐらいあるぞというふうに言われまして、この30億というのを、今現在両行の経費に対する比率にすると2.5%ということですので、圧倒的に規模が違います。また、人員につきましても、本部事務の人員を200人削減できるというふうに計画をいたしましたが、これも現在の総人員の4%弱ということで、今回示されましたような資金運用ですとかシステム運営などの重複する、共通する業務につきまして、持株会社に集約が可能となれば、さらなるコスト削減、コストシナジーが大きく出ると期待しております。

もう一つ、アームズ・レングス・ルールのところにつきましては、金融グループ全体の収益向上ですとか、効率性の改善の観点からは、特に子銀行同士の取引につきましては、ぜひ大幅な緩和が認められたいというふうに期待をしております。先ほどの参考資料1で絵がございましたけれども、ご参考までに、これを横浜銀行と東日本銀行の場合の実際の利回りでご説明したいと思います。

こちらのA銀行というのが横浜銀行になりまして、預金の調達利回りは平均で、前年度ですけれども、0.03%でした。余資運用先は、先ほどもありましたように、日銀の当座預金に法定限度を超えた分で預けますと、今は金融緩和の関係があって0.10%の付利がございます。そういったような状況の中で、東日本銀行はB銀行になります。東日本銀行が実際に当時、マーケットで調達をしますと0.12%での調達金利になります。期間によって若干違いますけれども、短期ではそれぐらいになります。これはこの絵の中で、日銀に預けている0.10%の金利でグループ内に、ここでは東日本銀行に融通をすれば、マーケットで調達するよりも0.02%安く資金を調達できると、こういうことになります。

これはいわゆる機会利益といいますか、本来得られる利益との関係でありますけれども、要は0.12%で横浜銀行が東日本銀行に貸出をマーケットに出せば、横浜銀行の利益が増えて、東日本銀行の利益は減りますけれども、グループ全体であわせれば変わらないじゃないかと、こういったようなところが単なる利益移転ではないかというような論点かと思っています。

これはあくまでもいくらで融資をするかということで、市場レートを物差しに使っていますけれども、現実には東日本銀行は、マーケットでは調達が不安定になりますので、一生懸命預金を集めています。東日本銀行の預金の平均利回りは、同じ時期で0.07%ということで、横浜銀行の0.03%と比べて、かなり高いレートになっています。これは何かといいますと、普通預金のレートは今、0.02%ですので、1年定期が横浜銀行ですと0.025%とか0.03%程度。少し古いのがありますから、平均で0.03%です。東日本銀行の場合は、預金はかなり能動的に集めていかないと集まらない、知名度の問題等があって、特別定期みたいなものを用意していまして、それに例えば0.15%の金利の上乗せをするというようなことを、今もやっております。

したがいまして、何%が良いかというところはありますけれども、0.03%の預金をベースに、東日本銀行が特別な金利までつけてやっているような部分を横浜銀行が融通をすることによって、このグループ全体としての資金調達コスト、要は預金関係の資金の流出は減ってくるということで、グループ全体の収益改善、効率性改善には合理性があると思っています。ただ、何%で貸せば良いのかといったようなところにつきましては、極端な例で0.03%で横浜銀行が預金で集めていますから、0.03%そのまま横流しするという発想もありますし、この中でご指摘いただいているように、合理的なリスク管理ですとか、収益管理という観点からすると、例えば預金には預金保険料がかかっていますので、現在今年度、これが0.042%ありますので、0.03%のままで融通すると、預金保険料分だけ横浜銀行が持ち出しになりますので、そういったようなところはきめ細かく原価を積み上げていって、少なくとも損はしないといったような部分で、グループ全体の収益が向上できるというようなものが実現できればありがたいというふうに考えております。

ちょっと長くなりましたけれども、以上でございます。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょうか。野﨑委員、どうぞ。

【野﨑委員】

先ほどの川村委員のお話にちょっと関連して、投資家からの意見ということで、元株のアナリストという観点から申し述べさせていただきますと、最近やはり銀行の再編に係る投資家の期待が非常に下がっております。特に持株会社方式に関しては、全く効率性が向上しないといった意見が多うございます。その点でいうと、持株会社を梃子に使ったところの効率化効果に対して、もし規制上の制約があれば、そこは是正しても良いのかなと。ただ、個人的に先ほどの業務執行というところと経営管理のコンフリクトがあるというところを、もしなかなか克服できない問題とすれば、こちらの論点の(ロ)にありますような業務集約を子会社に一括して、それで持株会社のほうでそれを一括して管理するというのは、管理と執行というところが両立できるという意味では非常にすっきりする、次善の策かなというふうに考えます。

それから、(ハ)の論点、アームズ・レングスにつきましては、少し気にかかるところがありまして、やはり資金の効率性からいうと、こういった資金融通というのは自由にできるべきなんですけれども、いかんせん今の銀行ですと、私の記憶では連結納税を導入しているのが、たしかりそなホールディングスとか、あるいは地銀さんですと福岡フィナンシャルグループですか、かなり限定されると思います。そうすると、エンティティごとに利益の移転というところを考えると、税務上の問題が生じ得ないのかなというのが1つあります。

あと、そうはいっても、もしこの辺のポイントがカバーできるのであれば、やはり資金効率の極大化、それによってグループ全体としての利益の極大化という意味では、資金融通は極力スムーズに円滑に運んだほうが良いだろうとは思います。ただ、その点について、1つだけ留意しなければいけないポイントとしては、少数株主の利益ですか。100%の子会社だけで問題はなかろうとは思いますけれども、少数株主がもしそこで存在している場合については、これについても配慮する必要があろうかということであります。以上です。

【岩原座長】

ほかに。舩津委員、その後福田委員、お願いします。

【舩津委員】

4ページ目のアームズ・レングス・ルールについて、先ほど野﨑委員のお話とも関連するのですが、参考資料1に関して、事務局のほうからAとBの上に持株会社があるという前提のような形でお話しされておられたかと思いますけれども、(ハ)のアームズ・レングス・ルールの緩和の一般論は、それに限定されるのか、それとももうちょっと広い子会社に少数株主がいるというような、完全親子関係以外も想定しているのかというのが、まずご質問ということです。

といいますのも、先ほどの野﨑委員のお話と同じになるわけですけれども、少数株主がいる場合について、例えば業法上のアームズ・レングス・ルールというのを適用除外しますよというふうにしたとしても、一般私法上のアームズ・レングス・ルールといいますか、独立当事者間取引基準という言い方のほうが通っているのかもしれませんけれども、それが妥当するはずですので、それも排除しようという趣旨であれば、これは会社法上の解釈論としては、かなりドラスティックな話になるのではないかなという気がしております。先般の法制審議会会社法制部会の議論でもまとまらなかったぐらいの難しい問題ということですので、それに対して業法とはいえ法律で緩めるというのは、かなり勇気の要る話ではないかなと感じております。

あと、逆に一つお聞きしたいのは、仮に完全親子関係ですよという前提だとした場合に、おそらくそういった少数株主保護というような会社法的な観点は、差し当たりは置いといていいのかなと思うわけですけれども、そうすると不勉強で大変申しわけないんですが、参考資料1で挙げた事例ですね。先ほどの川村委員のお話とはまた別のお話として、この絵自体の問題として、αで預金を集めて、余資運用先がβで、グループ内融通もβで行い、市場での調達金利がγ%になると。αよりもβが大きくて、βよりもγが大きいという状況だったとして、これが果たして銀行法とかその他の業法において、A銀行、あるいはB銀行にとって不利な取引なのでしょうかというのがご質問です。

私の理解が間違っているのかもしれませんけれども、A、Bがともに完全子会社という前提であれば、シナジーの分配の公正性というのは、会社法的な観点からは置けるということになるとすれば、β以上の利率での運用が期待できないのであれば、A銀行は余資運用先であろうと、B銀行であろうと、βで運用できるのだから、それでいいのではないか。不利にはならないのではないかという気がしますし、他方で、B銀行はもちろんγよりも低いβで調達できるのですから不利ではないというふうに思うわけです。そう考えると、何となくAとB、いずれも不利ではないように思えるのですが、銀行法の解釈としてはそうではないのでしょうかということです。

もっともこれが――今般の話の枠を超えてしまうかもしれないのですけれども――銀行以外の子会社の場合は、少し違う観点が出てくるのかなという気がしておりまして、銀行法、あるいは金商法等のアームズ・レングス・ルールの中に、ひょっとしたら内部補助も禁止しているという、そういう規範があるのかもしれないと。そうであるならば、そこのあたりについてはだめだと。むしろ銀行ではないBに対して、γマイナスβ分の内部補助をすること自体がおかしいんだという議論になるのかどうかということかと思います。

例えば、B銀行がB証券だった場合などですと、A銀行とB証券というのは一体にはならないという現行法の立場を崩さないとするのであれば、そういう問題があるわけですけれども、他方、もう一度この参考資料1に戻りまして、A銀行とB銀行という銀行同士の関係であれば混ざり合えるのだから、制約なくやってよさそうにも見えると。ただ、銀行の合併には認可が求められているということからしますと、やはりそれを潜脱するような内容の融通というのまでは、さすがに行き過ぎなのではないかなという感触を持ちました。

2点、分かりにくくなりましたけれども、質問とご意見ということで、よろしくお願いします。

【岩原座長】

佐藤信用制度参事官、お願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず1点目のご質問で、100%子会社を念頭に置いているのか否かということでございます。まず、100%子会社か否かにつきましては、資料でも特段限定をつけて作成しているわけではございません。ただ、今のお話の中でも出てきましたように、100%子会社とそうでない場合とで、もし違いがあるとするならば、そういうところについてどう考えるのかという論点はあるのだろうと認識しております。そこも含めてご意見などを頂戴できればということで、この資料は作成をしております。まず、それが第1点目でございます。

それで第2点目、このβというのが有利なのか不利なのか、どっちでも不利ではないのではないかというお話がございました。ここはテクニカルにわたるところなのですが、条文の参考資料3の3ページをごらんいただきたいと思います。若干説明が長くなるのですが、順を追ってご説明申し上げますと、銀行法第13条の2という規定がございます。銀行は、その特定関係者――括弧がついておりますが、要するに銀行の子会社であったり、主要株主であったり、親会社であったりというところでございます。こういう特定関係者またはその特定関係者の顧客との間で、次に掲げる取引をしてはならない。「ただし」というのがありまして、やむを得ない場合について、内閣総理大臣の承認を受けたときは、この限りでないという規定がございます。

それで、「次に掲げる取引又は行為をしてはならない」の、その取引の内容がまず1号に掲げられておりまして、特定関係者との間で行う取引で、その条件が当該銀行の取引の通常の条件に照らして、当該銀行に不利益を与えるものとして内閣府令で定める取引とあります。内閣府令の中でさらに詳細な規定を置いているのが、その下にあります銀行法の施行規則第14条の10でございます。第14条の10で、冒頭に「法十三条の二第一号に規定する内閣府令で定める取引は」とあります。それは今申し上げました上のアンダーラインを引いているところのものでございます。「銀行に不利益を与えるもの」の内容については、「当該銀行が、その営む業務の種類、規模及び信用度等に照らして当該特定関係者と同様であると認められる当該特定関係者以外の者との間で、当該特定関係者との間で行う取引と同種及び同量の取引を同様の状況の下で行った場合に成立することとなる取引の条件と比べて」とありまして、1行目の「業務の種類、規模及び信用度等に照らして」と、わりと詳細かつ広範な判断基準を掲げております。

信用度というところで申し上げますと、例えば参考資料1のところで、A銀行の余資運用先が、例えば日銀など、あるいはそれ相応の信用度の高いところにβ%で貸していて、B銀行というのは余資運用先よりも信用度が仮に低いとするとなると、全く同じ条件ではない、同種・同規模の前提のもとでの取引ではないということなので、この規定との関係が問題になってくるということかと思います。ただ一方で、先ほどもご説明申し上げました、グループ全体の収益拡大をどう考えるかという問題もあり、そのあたりを含めてどのように考えていくのかという論点と考えております。

舩津委員の最後の方にお話がございました、銀行だけなのか、あるいはほかの証券などもということについては、討議資料の3ページの真ん中辺りに書いております。このアームズ・レングス・ルールが導入されたのは、平成4年の銀行法改正で、業態別子会社、例えば銀行が証券会社を本体で営むことはできないけれども、子会社として持つことはできるというような、業態別子会社方式での銀行の他業態への参入に伴って、それを防止するという観点から、当時導入されたものであります。その趣旨というところが下に書いてございますが、銀行については、銀行の特殊なステータスがあるということを踏まえた上で、自らと特別の関係にある者に対して利益を図ることによって、銀行の健全性を損なったり、あるいは預金者等の利益が害されることを防止するということにございます。

したがいまして、この討議資料の4ページにも書いてありますが、こういったことを踏まえれば――4ページの真ん中ぐらいでございます――グループ外の他業態との競争条件に不均衡をもたらさないよう留意をする必要がありやなしやというところも、論点として出てくるのかなと考えております。

ちょっと十分な説明だったか自信はありませんが、以上でございます。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは、福田委員、お願いします。

【福田委員】

私も、現状の持株会社の機能を、狭い意味での経営管理のみに限定すべきではないという、多くの方のご意見には賛成です。やはりグループ全体の利益の最適化というのが望ましい考え方ですし、それは金融がダイナミックに変わっていく中での対応もよりやりやすく、多くの方がご指摘されているようなシナジー効果というのも期待できるということで、基本、現状よりは持株会社の機能を広げるということには賛成いたします。

他方で、じゃあ何でも良いのかという話になると、やっぱり今、参事官からもご説明ありましたように、ある程度のアームズ・レングス・ルールというのはやはり必要だという面はあるかとは思います。それの1つの大きな理由として、やっぱり子会社があくまでも別のエンティティであるということだと思います。その1つの代表的な例は、皆さんがご指摘しているような少数株主がいるケースで、これは株主利益という観点からも、必ずしも正当化されるものではありません。また、少数株主以外にも、各子会社には様々なステークホルダーというのが存在しているわけで、A銀行とB銀行が1つの持株会社の傘下にあったとしても、そのステークホルダーというのは、当然株主に限らず違ってきているということだとは思います。

銀行であれば代表的なのは、先ほどの3ページの真ん中にもありました、預金者というのが当然その代表例ですし、融資先企業というのも、そういう意味ではA銀行とB銀行では違っています。様々な顧客、あるいは様々な関係者というのは、A銀行はA銀行でいて、B銀行はB銀行でいるわけですので、それを全く一体として必ずしも取り扱えないという問題はあるのだろうとは思います。

参考資料1の図で、先ほど川村委員からのご説明の例は全く問題ない例だとは思われますけれども、別の例としては、例えば仮にB銀行が破綻状態になったとして、A銀行がそれに対して非常に有利なレートで貸出を行っていたりすることまで認められるのかという話になると、やはりちょっとそれは先ほどのA銀行のステークホルダー等の関係からすると、適切ではないというようにも考えられます。やはりこれは程度問題ということだとは思います。ですから、現状の狭い意味での経営管理に限定すべきではないのだとは思いますけれども、ある種の歯止めをどこかでつけていくことも必要だと思われます。

【岩原座長】

ほかにいかがでしょうか。藤原委員、お願いします。

【藤原委員】

本日、まとめていただきましたペーパーの基本的な考え方に、非常に賛同いたします。実際に持株会社形式で金融グループを経営している者からしますと、1回目からずっと申し上げているんですけれども、やはり顧客志向、グローバル志向、そして未来志向の3つの志向が非常に重要かと思っております。とりわけ非常にマクロ環境がフラジャイルになってきて、これから我々の金融の安定性、あるいは仲介機能の発揮というのは一層求められる。そういう中で、グループの経営としての効率性というのは非常に大きなキーワードになっていると思います。

そういう観点からいたしますと、とりわけ(イ)と(ロ)の部分。これを分けて考えてみますと、(イ)のところにつきましては、持株会社が業務執行等を担うことを共有するというところについても賛成でございまして、ただしということで、これにつきましては、グループのガバナンスがやはりしっかりしているということが大前提、厳格なガバナンスがあるということが大前提だと思っております。先ほど経営管理の論点もありましたが、やっぱりグループとして全体のいわゆるガバナンスを担保するためには、経営管理の枠組みに加えて、社外取締役を含めたモニタリング機能ですとか、内部監査機能がしっかりしていると、グループとしてしっかりしているということが非常に大前提になると思っています。

そういう中で、従来、ともするとエンティティの自己完結性を求められていたものが、これも再三申し上げておりますけれども、グループベースでの全体最適を追求するということが1つのキーワードになろうかと思います。

これはコスト削減だけではなくて、業務運営の高度化を通じましたグローバル水準の経営を求めると。これはなかんづく、例えばオペレーションの専門性を高める、あるいはグループ目線を持った経営管理を強化する。これはやはりお客様のサービス、先ほど顧客志向と申し上げましたけれども、お客様のサービスの向上につながり、またコスト削減がお客様に還元されるといったことを強く意識して、この経営効率性があるということは忘れてはならないと思っております。またこの中で、持株会社に集約する場合、引き続き子会社で業務を重複して行う必要がない、あるいは子会社には銀行子会社のみならず、それ以外も含むということの中で、グループ全体のガバナンスを考えるべきだと考えております。

(ロ)のところについても同様に賛成でございまして、これは持株会社に管理義務を一元化するというスタンスでございますけれども、これにつきましても傘下のいわゆる主要子会社に加えて、例えば傘下の主要銀行に片寄せをしていき、その中でグループ業務を担うといったこともあり得るのではないかなと思っております。また、子会社をつくる場合には、収入依存度規制等、逆にそのほか世の中に役立つような、例えばITの技術を持っているのであれば、それを社会全般に役立てるというような発想も必要かと思っております。

いずれにいたしましても、厳格なガバナンスのもと、今日お示しいただいたような趣旨には賛同いたします。私からは以上です。

【岩原座長】

神作委員。

【神作委員】

ありがとうございます。(イ)から(ハ)について、それぞれ一言ずつ考えを述べさせていただきます。

(イ)につきましては、私もこれは非常に合理的な話なのではないか、持株会社が一元的・統括的に管理する方が、グループの戦略の策定と実行、それからリスク管理、これらの面から見てやはりメリットが大きいと思います。また、アメリカの持株会社においても、こういった業務等は持株会社においてなされている場合もあると推察されます。Bank Holding Company Supervision Manualなどを拝見すると、アメリカでも持株会社はこれらの業務等を行っているように思われます。そういう意味では、(イ)はぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

次に(ロ)でございますけれども、(ロ)についても私は賛成でございまして、もし委託に係るルールが(ロ)のような形、すなわち子会社の中にこういった共通・重複業務を行う専門の子会社をつくることの制約になっているとすれば、そのための障害は是正することが考えられると思います。先ほど申し上げましたように、こういった共通・重複業務について統括的・一元的に実施するということにはメリットがあると思われますし、(イ)と(ロ)を比べた場合には、(ロ)という選択肢も持株会社の考え方により適合的な考え方であるとの見方もあり得ますので、もし(イ)と(ロ)の選択の自由度・中立性を確保するという点からすると、(ロ)のような現在の規制が制約になっているのだとすれば、その見直しを考えることも十分あり得ると思います。

ただし、(イ)の場合も(ロ)の場合も、アームズ・レングス・ルールがより実効的に適用されるということが前提となるように思われます。純粋持株会社がそういった業務を行う場合は、まさに親子会社間で、本当に各子会社が受け取っているサービスに等しい対価を支払っているのかどうかをきちんと見ていかないと、対価という形式の下で実質的な利益の移転が生じる可能性があります。また(ロ)の場合も、兄弟会社間でそういった取引が行われるという意味では、親子の場合とややシチュエーションは違うかもしれませんけれども、例えば対価をとるというようなことがある場合には、適正な対価なのかが十分に考慮されるべきであって、(イ)も(ロ)も、いずれにしてもアームズ・レングス・ルールがより実効的に適用されるということが前提となるべきであると思われます。

それに比べますと(ハ)は、まさにアームズ・レングス・ルールに正面からチャレンジしているところがあると思われまして、もちろん考え得る選択肢の1つであるとは思いますけれども、より慎重に検討する必要があると思います。私の理解では、アームズ・レングス・ルールというのは銀行法上は3つの趣旨があると思われます。まず第1が、預金保険制度等のセーフティネットの漏洩の防止です。ただ、今回の議論の対象は銀行間を念頭に置いておりますので、例えばこれがB銀行が非銀行であるというような場合にはセーフティネットの漏洩が非常に深刻になってくるのだと思いますけれども、今日ご提示された限りでは、あまり問題がないようにも思われます。

第2の趣旨が利益相反の問題でございまして、これまでの先生方のご指摘のように、少数株主がいない場合には、確かに利益相反の問題というのは一部緩和されますけれども、利益相反というのは多数派株主と少数派株主の間にだけ生じるわけではございませんで、債権者と株主間等でも生じ得ますので、そういった場合についてはさらに検討する必要があると思います。

それから、第3のアームズ・レングス・ルールの趣旨は、エクスポージャー、リスクの管理という面があるかと思います。これについても既に諸先生方がご指摘かと思いますけれども、まさにB銀行が、例えば苦境に陥っているようなときに、A銀行としてBに、しかも低利で融資しているということがA銀行の健全性という観点から問題になると思いますので、アームズ・レングス・ルールにつきましては、今の3点を中心に慎重に考えていく必要があるように思います。

これまでのアームズ・レングス・ルールを、先ほど佐藤信用制度参事官からご説明がありました、現行のアームズ・レングス・ルールにできるだけ近づける形で考えていくのであれば、例えばA銀行からB銀行へのグループ内融通についても、きちんと担保をとって確実に回収できるようにしておく等々、余資運用先にβ%で貸すのと同じような状況をつくり出すというようなことが考えられますし、先ほどのエクスポージャーとの関係では、大口信用供与規制はありますけれども、それ以外にアームズ・レングス・ルールとしてのこういったエクスポージャーの管理について、何か追加的に考える必要がないかというようなことについて検討する余地があるように思われます。

【岩原座長】

小鈴委員、その後中村委員お願いします。

【小鈴委員】

私からは意見と確認を1点ずつお話しさせていただきます。1点目は、討議資料(2)の(イ)にあります、持株会社の業務執行に関する意見であります。前回の会合で議論された経営管理体制と同じだと思いますが、各銀行グループのビジネスモデルがまちまちである中では、グループ全体の利益の最大化を目的とした銀行グループ内での役割分担も、やはりグループによってまちまちであると考えております。

したがいまして、関連する規制もある程度柔軟にすべきと認識しておりまして、例えば持株会社の業務範囲は、グループ内で共通・重複するものはもちろんのこと、それ以外の業務も含めてある程度幅のあるものとしたり、持株会社に共通・重複する業務を集約する度合いも、100%集約をマストにするのではなく、幅をもって自由度を認めたりすることなどが必要と考えております。

2点目は、同じく討議資料(2)の(ロ)にあります委託先の管理義務についての確認です。資料では、特定の子会社に共通・重複する業務を集約する場合において、グループ内で重複して生じる委託先管理の負担を軽減する方法について言及されています。一方、今回焦点が当たっている持株会社に共通・重複業務を集約する場合においても、一義的には同じく委託先管理の重複という問題が発生すると考えられますが、資料にはその場合の負担軽減方法等に関する言及は特にないと拝見しています。

ここで確認ですが、持株会社に集約する場合は、そもそもそういった負担軽減措置を講ずる必要があるのか、あるということであれば、子会社に集約する場合と同様に何らかの負担軽減の手当をするつもりがおありなのかという点につきまして、念のため確認させていただければと思います。

以上でございます。

【岩原座長】

第2点はご質問ですので、佐藤信用制度参事官、お願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

第2点につきましては、確かにこの資料では特段その問題点は明示しておりません。一方で、(ロ)のケースについて大前提であるのが、子会社に集約する場合に、グループ全体を一元的に管理する持株会社がこのグループ全体を見るということであります。したがって、持株会社で見るということで、それと同じロジックを構築するとすれば、(イ)のところについても小鈴委員のご指摘のようなところがあるのかなと思います。

また、現実的に考えまして、持株会社は子銀行を監督していて、一方で委託した子銀行がまた持株会社を監督するということが果たしてフィージブルかというところもあるので、ここの資料では明記しておりませんでしたが、そういう論点もあるかと感じます。あるいは、もしご異論があれば、皆さんのご意見を拝聴したいと思っております。

【岩原座長】

よろしいですか。それでは、中村委員。

【中村委員】

ありがとうございます。外国銀行を代表いたしまして、(ニ)についてコメントを申し上げたいと思います。まず(ニ)の項目を取り上げてくださいまして、大変ありがとうございました。この代理・媒介業務については、この審議会では申し上げたことはないと思うんですけれども、IBAのメンバーが別の審議会で、この規制緩和について要望を申し上げてきておりました。IBAでは、この規制の撤廃を求めているのでございますけれども、ここにご指摘がありますように、外国銀行に対しては直接の監督権限は及ばないことから、国内においてその業務の代理・媒介を行う者に対する監督を通じて問題のある外国銀行によって不適切な金融サービスが国内で提供されることを防ぐことなどにあるという、資料にございますように、ある種こういったものに対して、何らかの規制が必要であるというのは、個人的には理解するところでございます。

今回、グループ単位で包括的な認可制についてお話をいただいたことは、大変大きな前進だというふうに考えておりますが、新たな委託元となる場合には届出を求める等の措置を講じるというご提案につきましては、届出という、解釈によるとは思うのでございますが、実質的に長い審査期間を求められる等々、運用のバリエーションが相当にございますので、この辺をできればもう一段お考えいただければと思っております。

その担保といたしましては、ここにございますが、当該業務に係る日々の監督等の徹底を日本の支店が行うということで、日本の支店、法人がより責任を持つという形で、担保をできないかというふうに考えておりますが、いかがでございましょうか。

【岩原座長】

最後のところはご質問ですか。

【中村委員】

質問、できれば要望ということでございますけれども、ご意見があれば、できればお伺いしたいということで、いかがでしょうか。

【岩原座長】

今、中村委員のご指摘の点について何かございますでしょうか。よろしいですか。特になければ、ご意見として承るということにさせていただきたいと思います。

それでは、大崎委員、どうぞ。

【大崎委員】

もう既に多くの委員の方からご意見が出ておりまして、私も若干重複するかもしれませんが、それぞれの論点についての若干意見を申し上げたいと思います。

まず(イ)のところについては、私はやっぱり持株会社というのが純粋に経営管理を行うものだという考え方自体が、本当に現実のエンティティの柔軟な運営ということに資するのかというのはかねがね疑問に思っておりましたので、こういった考え方は非常に現実に即した良いものではないかと思っております。

(ロ)は、言ってみれば持株会社に集約するかわりに別のところへ集約して、それを持株会社で実質的に動かしていこうという変形バージョンのようなものだと思いますので、これも積極的にこういった形を認めていくべきではないかと思います。

それから、(ハ)でございますけれども、先ほど神作先生のお話を伺っていて、なるほど、いろいろ留意すべき点もあるんだなとは思ったんですが、他方で、このA銀行、B銀行というのが、ともに1つの持株会社の下にいて、しかも100%子会社であるという状況で考えた場合には、先ほど来出ている持株会社でグループ全体の最適化を図りながら経営していくんだということがきちっと行われるという前提で考えれば、AとBとの間で若干どっちが損した、得したということが起きるかもしれないということを、過度に心配する必要はないんじゃないか。むしろグループ全体で経営体力が高まることによって、グループ全体の株主に対しても、またグループ全体のいろいろな意味のステークホルダーに対しても良い影響を与えるんじゃないかと思うわけでございます。

ですので、確かにアームズ・レングス・ルールというものを全体として緩めるみたいな考え方がちょっと乱暴なんだとすると、そこに持株会社が実効的な経営管理をやっていくとか、持株会社が実効的な経営管理ができるようなガバナンス体制を備えているというようないろいろな条件をつけつつ、こういった考え方を認めていってはどうかという気がいたします。

それから、(ニ)の点については、先ほど中村委員からもちょっとお話がございましたけれども、私、前に中村委員から、外国銀行の経営実態みたいなお話があって思ったんですけれども、あまり国ごとのエンティティの法人の違いということよりも、ビジネスラインということで全体として管理をしておられるというようなご報告がありまして、そういう実態を踏まえれば、確かに現在の手続というのは過度に煩雑になっているのかなという気がいたしまして、それを若干緩めたところで大きな弊害があることではないんじゃないかと思います。

さっき届出ということについてもどうでしょうというお話があったんですが、私の理解だと、届出というのは普通に届け出れば受理されるんじゃないかなというふうに思っておりまして、そこは実質的な適切性についていろいろ審査しなきゃいかん認可とはちょっと違うのかなと。もちろん届出のところに書いてあったエンティティが実在しないとかいうような話になってくると、それは大きな問題でしょうけれども、そういう確認だけで済むのではないかと思いますので、大体ここに書いてあるような考え方でよろしいんじゃないかなと思った次第です。

以上です。

【岩原座長】

ほかに。藤井委員、どうぞ。

【藤井委員】

私ども、ホールディングスカンパニーのもとに子銀行が2行あった時代を経て、今、2行合併で、最終的には現在の経営体制に至ったわけですけれども、その経験を踏まえまして、(イ)と(ロ)について意見を若干申し上げたいと思います。

(イ)につきましても(ロ)につきましても各委員のご意見と同様に、私どももここにつきましてはコストダウンシナジーの非常に大きなところでありまして、基本的には弾力的にお進めいただきたいなと思っております。とりわけ資料の冒頭にお書きいただいている、重複、あるいは共通する業務ということでございますが、私ども2行が合併をするプロセスの中で、合併の直前になりますと、基本的には本部機能はほとんど一体化して、重複しない形をつくり上げて、合併期日になるとそれが動き出すと。ですから、合併の直前におきましては、ホールディングスカンパニーの中の2つの子銀行というのは、限りなく業務の集約が済んだ状態で存在していると。その経験でいいますと、営業フロントにかかわる業務、それから営業拠点にかかわるところを除きますと、ほとんどの部分のいわゆる本部業務については、集約ないしは一体化が論理的には可能じゃないかなと。

あわせましてホールディングスカンパニーとの縦の重複、これは前々回の議論で出ていたと思いますけれども、法制上の問題として不可避的に存在していますが、ホールディングスカンパニーの子銀行での業務といいますか機能の重複、ここのところもホールディングスカンパニーにこういった業務を広範に集約すると、あわせて重複が解消するということで、コストダウンシナジーについては非常に大きなメリットが得られるというふうに考えています。

反面、先ほど申し上げましたように、しからばどの業務までを集約対象にするのか、ホールディングスカンパニーが認められるのかということについては、非常にある意味で仕分けが難しいという気がしておりまして、ここの辺をどの程度まで、あるいはどういった観点から集約可能とするのか、あるいは、集約の対象としないのかといったあたりの仕切りの議論が必要なのかなと思っています。極論をすると、先ほど申し上げましたように、もし許容されるのであれば、相当部分を本部的な機能のところというのはホールディングスカンパニーに論理的には吸い上げが可能ではないかと思っておりまして、その場合には、ホールディングスカンパニーが実態的に2ブランドの営業の銀行を持つというような、限りなくマルチブランドの銀行をそれぞれ地域ごとですとか、あるいは機能ごとにいろいろな経営戦略の中で営業する、経営すると、こういったような姿に非常に近づいた状態まで想定されるので、その段階で逆に個別の銀行の最大の債権者たる預金者から見たときに、個別の子銀行の実態がどの程度まで備わっていることが最低限必要とされるのかどうか、この辺の議論が1つ考えられるのかなと、こんな感想を持っています。

以上でございます。

【岩原座長】

家森委員、どうぞ。

【家森委員】

どうもありがとうございました。基本的な考え方という点で、私も賛成をしたいと思います。地方銀行の再編を考えていくときに、先ほど横浜銀行さんがおっしゃいましたように、全て合併で対応してくださいというのは今のところ現実的ではないということを考えると、この持株会社方式でいかにシナジーを実現していただくかということは非常に重要だろうと思います。その意味で(イ)、(ロ)について是非この方向で、これから議論を進めていただきたいと思います。ただ、以前に出ていた議論ですが、顧客の情報の問題ということも残っています。今日は、どちらかというと管理の側面ですけれども、持株会社を使って攻めていく方向にどういうふうに展開できるかも考えていただけるとありがたいなと思っております。

(ニ)について、私自身ちょっとよく制度が分からないので質問をさせていただきたいです。この外国銀行代理業の認可制度について、例えばAという日本の事業会社が、外国のBという金融法人とこういう契約を結びたいというときに、Bと結んでもいいですよという認可をされる、Bという銀行に口座を各国でつくってもいいよというのを、それぞれ許可をされるということですね。ここで、Cという事業法人があらわれて、Bという金融機関と取引をしたりという時に、同じことを繰り返していくんでしょうか。それとも金融庁で一旦、Bという国際的な銀行法人は信用ができると決まれば、もうそれ以降はいいですよとなっているのかというのを、まずちょっと教えていただけますか。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

今のご質問につきましては、まず銀行法の制度としまして、金融機関がどの事業会社との取引を代理するかということは、観念しておりません。あくまで金融機関が、どの金融機関から業務を受託するのかに着目をしております。したがいまして、例えば事業会社のグループとして、Aという企業グループがあり、Bという企業グループがあるといたしまして、仮定の話ですが、いずれの企業グループも、例えば日本、アメリカ、中国に拠点を置いているといたします。その場合に、今度は金融機関の側から見て、アメリカ、中国でもってAグループ、Bグループの現地法人にいろいろな金融サービスを提供する場合に、現地で全て話が済めば全く問題ないんですが、Aグループ、Bグループの日本の本社といろいろな折衝をしなければいけないといったときには、その金融グループの在日支店が、アメリカ、中国に進出している金融機関グループ内の、例えば現地法人が金融サービスを提供するに当たって、A会社、B会社の日本の本店といろいろな交渉をするとなると、現地での金融サービスの業務の一部の委託を受けることとなります。したがって、例えば中国にある拠点の業務を一部受託する、アメリカにある金融関連法人からの業務を受託するということで、それぞれどこから金融サービスの業務を受託するのか。それが今、個別に認可が必要ということになっています。

したがいまして、例えばアメリカにある関連金融機関グループからの業務を受託することで認可を受ければ、あとはアメリカ国内においてどういう事業会社を相手にした金融サービスに関連する事務であろうと、受託は可能になります。問題は、ここの参考資料2で申しますと、在日支店が現行の制度では、代理業を同じ金融グループに所属する、例えば兄弟会社であったり、あるいは親会社であったり、その個別に認可を受けなければいけないというところを、グループごとに包括の認可ということが考えられるかという論点でございます。

ちょっとうまく説明できたか自信ありませんが、もしご不明であれば、もう一度ご質問を頂ければと思います。

【岩原座長】

よろしいですか。

【家森委員】

ありがとうございます。そうすると、今までは、例えば大きな世界的なグループの在日支店があっても、その在日支店が免許を取るときには金融グループは別で、在日支店だけを信用して、そこだけを免許というか許可を出したけど、これからは当然グループ全体としての信用力があるから、在日支店を認可するときには、グループ全体を信用しているというふうな方向に変えましょうというようなイメージでしょうか。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず、在日支店の免許につきましては、これも今、銀行法の中では、外国銀行の支店は、それを日本国内にある1つの銀行と見なした上で免許をするということになっております。したがいまして、あくまで外国銀行支店を日本に置く場合には、そこについて問題がないかどうかを審査いたします。当然支店ですので、本体の財務状況がどうであるか、自己資本の状況がどうであるかなども審査をするということになります。したがいまして、在日支店の免許ということでは、そういう観点からまず審査が行われると。その上で、日本国内で免許を受けた上で銀行業務を行うのですが、ただ、外国にある金融機関からどういう業務を受託していいかどうか、それについては受託するときに別個の外国銀行代理業としての認可を必要という、そういうことでございます。

【岩原座長】

よろしいでしょうか。外国業務の代理業についての認可をグループ単位で認めるという話です。

翁委員、どうぞ。

【翁委員】

私もちょっと重複するかもしれませんけれども、意見を申し上げます。

(イ)と(ロ)につきましては、皆様のご意見と同じでございまして、やはりこういった持株会社形式で、特に地銀などについては、今後統合が進んでいくと思われますが、そのときにできるだけシナジーやコストの効率化というのが進む方向で、そういった統合が進められることがとても重要だと思いますので、こういったことができるように対応していくことが重要だというように思っております。

それから、(ハ)につきましては、基本的に先ほどの参考資料1のような資金運用の集約の例などは合理的に思います。ただ一方で、神作先生がご指摘になった3点の留意点というのも非常に重要な点だと思っております。特に少数株主の点というのは皆さんご指摘になりましたが、ここはもちろん分けて考える必要があると思いますし、あとリスクエクスポージャーとか、セーフティネットの漏洩の問題、こういった点に留意しながら、より柔軟にできるように考えていくということが望ましいのではないかと思います。

(ニ)の点につきましても基本的な考え方、グループ全体として包括的に認めていくということができるようにしていくのが、やはり大きな流れとしては必要ではないかと思います。私もちょっと質問したいのですが、外国には同様の制度があるんでしょうかということをちょっと確認したいのと、それから、多分個別認可というのは、非常に負担になっているのではないかというような感じを受けますけれども、このあたりについての実態はどうなっているのかということについても、もしよろしければ中村委員にも教えていただければと思います。

以上でございます。

【岩原座長】

佐藤信用制度参事官、お願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず、外国でどうなっているかということにつきましては、外国の全ての例を把握しているわけではありませんが、欧米主要国におきましてはこのような制度はないというふうに理解をしております。ただ、アジアの一部の国ですとか、あるいはアジアに限らず、その他の地域においても、いわゆる主要国ではないような国において、類似の制度が存在する可能性はあるとは思っております。

【岩原座長】

もう1点の個別認可のご質問についてはいかがでしょうか。

【石田監督局銀行第一課長】

認可の業務につきましては、当然個別でございますので、包括的ということとは違います。個々に申請があったことに対して対応しなければならないという点で、それなりの業務量ということには当然なっているとは思います。

【岩原座長】

中村委員、どうぞ。

【中村委員】

私で認識しておりますのも、先ほど佐藤信用制度参事官がおっしゃってくださいましたように、外国にはこういう規制はないという理解をしておりますので、そういった国際事情を鑑み、IBAとしては撤廃を要望しておったということでございます。

もう1点の認可制、これは金融庁の業務でございますけれども、双方に申請する側も時間を待たなければいけませんし、金融庁のほうでもきちんとやるということでお時間がかなりかかっていたという認識をしておりまして、例えばキャッシュマネジメント等々を中心に業務を展開しておると――グローバルなキャッシュマネジメントですね――こういったもののサービスを日本企業は非常に受けにくかったということで、緩和、撤廃があれば、そういったものを事業法人等がよりよくサービスを受けられるような形に変更なされるものというふうに信じております。

以上でございます。

【岩原座長】

ほかに。宮本委員、どうぞ。

【宮本委員】

先ほどからそれぞれの委員からご意見ありましたとおり、私も総じて賛成だと思っております。当たり前なんですけれども、金融は社会とか企業を支える極めて重要なインフラだと思っていまして、そこが競争力がある状態であることというのが非常に大きいなと思っています。

当然ながら統合――我々も統合会社なんですけれども――統合シナジーをいかに出すかということをやって、ほかの国との差をつける、競争力をつけるということをやっているわけなんですけれども、これがきちっと生きるように効率化するのは非常に重要なことだなと。ひいては効率化されれば、それがユーザーにも還元されるというふうに思っております。その中で資金運用とかシステムとかというのは非常にはっきりしているところなので当然でしょうし、それ以外も含めて範囲をどうするかという話はありますけれども、全体として賛成であります。

アームズ・レングス・ルールについては、当然ながら会社としていろいろな事業を見る上で、それぞれの事業会社の競争力を計るという意味でいけば、それぞれの事業会社の調達力がベースとなっているわけで、事業の選択を行う際には、実力に沿った調達に基づく評価が重要だと思いますけれども、銀行ということで全体でメリットがあるのであれば、提案の内容もあり得るのかなと思います。我々は、アームズ・レングスということを非常に重要視してやっておりますが。

それから、最後の点については、サービスを提供していただける裏には、いろいろ大変なことがあるんだなということでありますけれども、我々はサービスを受ける側ですので、手続きはよろしくお願いしたいなと思います。

以上です。

【岩原座長】

ほかに何かございますか。松井委員、どうぞ。

【松井委員】

ありがとうございます。皆様、(イ)、(ロ)、(ハ)のあたり、ここに示された方向でよいというご議論で、私も基本的な方向性として異論はございません。ただし、(イ)や(ロ)につきまして、仮にグループの頂点にある持株会社が業務執行等を行うということになれば、従来よりも利益相反等が起こる可能性が増えると考えております。要するに、できないということになっていれば、そもそも利益相反も起こりにくいという形ですから問題がない。しかし、これができるとなると、当然傘下にあるAという銀行にとっては好ましい措置だけれども、Bにとっては好ましくないという措置がとられる可能性が出てくるのだと思います。そうなりますと、今回示された方向性が好ましいからやりましょうというだけでなく、生じうる利益相反の問題をどうするかというのが、多分ここでの論点ではないかと思います。

その関係で、2ページには、「社外の視点」を取り入れるというご提案がございまして、これは前回も少し議論になった記憶がございますけれども、例えば具体的に、ある持株会社で行われる業務執行が利益相反性を含んでいる場合に、この社外の人は何をすればいいのだろうか。やはり利益相反的な性格があるから、それは取締役等の議論で止めなければいけないのか。そういったことが実際には問題になるのだと思います。取締役の議論でけん制することが期待できるので、社外の視点が入りさえすれば、この制度はこのままいけるということになるのか。あるいは、それでは十分に止めることが期待できないから、さらに何らかの利益相反を起こさないような、あるいはそれによる弊害を防止するような措置を設ける必要があるのか。このあたりは、(イ)や(ロ)について考えなければいけないのではないかという気がしております。

ただ、実際に難しいのは、グループ全体としてはプラスになるような判断であるけれども、個別には利益相反に見えるような判断が行われた場合です。会社法改正の議論の中でもありましたが、個々の措置としては利益相反に見える、あるいは利害が対立するけれども、別途の措置でそれは解消されているのだからそれで良いというような考え方を、ここで取り込んでいくのかというようなことも、多分検討する必要があるのではないかと思います。

ちょっと長くなりましたけれども、まずそもそもこういった業務執行を認める場合に、利益相反を防止するような措置を何らかの制度的な形でビルトインできるかという次元の議論がある。そして、利益相反に見えるような行為があったときに、それに対処するような措置をどうするかという次元の議論がある。このような議論があって初めて、業務執行を持株会社にも認めていくという判断ができるのではないかという気がしております。これは冒頭のほうで舩津委員からもありましたように、会社法改正のときにも一般的な議論としてありましたので、参考になる部分があるのではないかという気がしております。

これは(ハ)についても同じでございまして、先ほど川村委員でしたでしょうか、横浜銀行と東日本銀行の例を出していただいております。横浜銀行から、例えば東日本銀行に0.10%で融通した場合に、グループとしては、これは問題がないのではないかという話がありました。他方で横浜銀行の預金者にとっては、本当であれば0.12%で運用できるものが0.10%で運用される可能性もあるわけですから、好ましいことではないはずなのですね。そうしますと、東日本に0.10%で融通していることにはある種の機会損失があるのだけれども、グループとして東日本銀行をこのようにサポートしていくことが、他の形で横浜銀行の利益にもなる。それは具体的に0.02%の利益があるとはいえなくても、取締役の経営上の裁量判断として、これこれこういう利益があり得る、例えば、ブランド価値が高まる、あるいはグループとしての安定性が高まる、そして横浜銀行の信用も高まる。このような説明責任を果たせるのであれば、それをよしとするような考え方もあるのではないかという気がします。

そうしますと、制度設計として、説明責任を果たしているかどうか、あるいは利益相反を防止するような体制ないし考え方をグループ、銀行でどのようにとっているか、こういった方向に制度設計が進んでいく可能性もあるかなという感じがいたしました。

それから、長くなって恐縮ですが、最後の(ニ)です。これは私自身、なかなか制度に対する理解が進んでおりませんので、教えていただきたいのですが、海外で、欧米などでこういった制度がないというようなお話がございました。その趣旨が、欧米等でそういったことはそもそも問題として認識されていないから、あるいは問題にならないからそういった制度がないのか、あるいは、やはり海外にある委託元のグループ銀行等の業務について、別の形でコントロールを効かせられるからそれがないのか。例えば、参考資料2でいいますと、この背後にありますX銀行現地法人CD等を見なくても、例えば在日支店の行為規制なり何かを見れば、そういった背景にある問題点等がある程度コントロールできるというような価値判断があるのか。お分かりになる範囲で構いませんので、海外で制度がないというときに、なぜ「ない」状態になっているのかという点についてご説明いただけるとありがたく存じます。よろしくお願いいたします。

【岩原座長】

佐藤信用制度参事官、お願いします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

まず、海外でどういう考え方でこういう制度がないのかというところは、そこについて正確に理解しているところではございません。迂遠な話になるかもしれませんが、現行の外国銀行代理業制度は、約7、8年前ぐらいに、当時金融審での議論を経て導入されたものでございます。当時、この議論が出ましたのが、外国銀行の代理業務を日本の銀行が行うことが、制度上できると認められていなかったという背景があります。といいますのは、銀行の業務範囲に制限がありまして、その中で外国の銀行の代理業務というものが、業務範囲の中に入っていなかった、観念されていなかったということでございます。したがって、外国銀行の代理業をできるようにしようということで、ただし、そのときに、問題のあるような金融サービスが国内で提供されるというようなおそれをどう考えるのかということで、やはり何がしかのチェックは必要だろうということで、現行の銀行代理業制度ができているところでございます。

私の推測も入るのですが、おそらくあらゆるところで、銀行の制度にしましても、一般的な制度にしましても、いろいろなツールを重ね合わせることによって最適解を見出すということがあるのだろうと思います。究極的に言ってしまえば、例えば銀行の規制というものも、監督という中で全て満たすことができるのであれば、個別の規制、ルールというのは必要ないかもしれません。ただ、やはりそこは一定のルールや認可制などを用いることによって、例えば健全性というものを監督の中で見ようと思えば見れるのだろうと思うのですが、先ほどのアームズ・レングス・ルールにしましても、あるいは大口信用供与規制、あるいは自己資本比率規制という、いろいろなツールを併せ持つことによって弊害の防止を図っているということなのかと思います。

外国では、こういう代理業的なところを監督の中でしっかりと見るというアプローチなのか、それでどういう具体的な問題が生じているのか、あるいは生じてないのか、そこは正確には分からないところではありますが、事実だけ申しますと、先ほど申しましたように、欧米ではこういう代理業制度が存在しないと。ただ、欧米主要国ではない一部の国の中では制度を設けている国もあるということと認識しております。

【岩原座長】

よろしいですか。ほかに。神作委員。

【神作委員】

2回目の発言の機会を与えていただいてありがとうございます。

先ほど申し述べませんでした(ニ)について、私、よく分からないところもあるのですけれども、本日の議論を伺っての感想なのですけれども、外国銀行代理業の認可制度というのは、委託元が、例えば委託先との間で資本関係がどのような要件であることを要するのか、それから、委託される業務がどのようなものである必要があるのかという2点において、実質的には規制をする意味があると思います。それは規制する側にとっても規制される側にとっても、ルールが明確であるということには大きな意味があると思うのです。しかし、他方で、もし外国銀行代理業の実態として、例えば現在、外国銀行代理業制度に基づいて行政処分が出されているというようなことがなければ、規制の中心を事後的な規制に移していくことは、もちろん1つの可能性ですけれども、考えられるのではないかなと思います。

まして先ほど来のご議論ですと、認可自体に時間がかかる等の関係で、それを躊躇するというようなことがあるとすると、せっかく法的安定性を高め、透明性のある、むしろ他の国にはないとしても良い制度である可能性があるとも思うのですけれども、せっかくそのような制度があるのであれば、それがよく利用されるような使いやすい制度に変えてゆく工夫をしていくことが考えられるのではないかと思いました。

【岩原座長】

今のご発言の中で、外国銀行の代理業務について問題が起きているようなケースがあるかというご質問についてはどうでしょうか。

【石田監督局銀行第一課長】

特に個別の問題ということで、今すぐに申し上げるようなことはございませんけれども、むしろ先ほど中村委員からお話があったように、グローバルキャッシュマネジメントのようなサービスをやっていく際の手続なり、そういった面での不便さについては、よくいろいろなところからお話を伺うような状況でございます。

【岩原座長】

よろしいでしょうか。ほかに何かご発言ありますでしょうか。特にございませんか。

ないようでしたら、少し早いのですが、大体皆様、ほぼ(イ)から(ニ)につきましてご賛同する意見が多かったかと存じます。ただ(ハ)につきましては、神作委員から、アームズ・レングス・ルールを見直すことには慎重であるべきだというご指摘をいただいたところであります。確かにアームズ・レングス・ルールというのは、いろいろな金融機関の利害関係者に影響を及ぼすところも大きいわけですので、問題が生じないのかどうか、柔軟化するときに、どの条件で、どの程度まで柔軟化できるかというところは、なお議論の余地があるのかもしれません。

それから、同じような問題ですけれども、松井委員からご指摘のあったような、そういうグループの中での利益移転みたいなことを認めるとすると、それを認めるための、いわばそれがグループ全体にとってプラスになって、不利益を受け得る主体に何らかの補塡の措置というか、利益が補填されるようなことが考えられているかどうかということのご指摘もあったところでありまして、ここら辺は非常に難しいところだと思いますけれども、具体的な条件等、さらに詰めて考えていく必要があるかと思います。

そういう意味では、グループ全体のガバナンスがしっかりしていることを条件にというご指摘が多かったように思いますけれども、討議資料で申しますと、社外の視点を取り入れればという記載がありますけれども、さっき松井委員からもご指摘がありましたように、社外取締役に具体的にどういうことを期待し、またそれに関する制度的な担保をどうするか。ガバナンスがしっかりしているという条件を、どういう要件の下に認めたら良いのかというようなことを、さらに細かく考えていく必要があるかと思います。

何か皆様からさらにご指摘、ご意見ございますでしょうか。よろしいでしょうか。

それでは、今申し上げましたような点はさらに検討する必要があるかと思いますが、基本的には大体こういう方向で検討を進めるということでよろしゅうございましょうか。どうもありがとうございます。

それでは、少し早いようですけれども、以上をもちまして討議を終わらせていただきたいと思います。本日いただきましたご説明やご意見等を踏まえ、引き続き検討を進めていきたいと思います。

最後に事務局のほうから、連絡事項等がございましたらお願いいたします。

【佐藤総務企画局信用制度参事官】

私から、連絡事項としては日程の関係でございます。次回のワーキング・グループにつきましては、11月、来月開催したいと考えておりまして、具体的な日程につきましては委員の皆様のご都合を踏まえた上で、討議内容とあわせ、後日事務局よりご案内をさせていただきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上でございます。

【岩原座長】

それでは、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

以上

お問い合わせ先

金融庁 Tel 03-3506-6000(代表)
総務企画局企画課信用制度参事官室(内線3538、3582)

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