金融審議会金融分科会第一部会(第9回)議事録

日時:平成15年9月25日(木)13時00分~15時00分

場所:中央合同庁舎四号館(11階)共用第一特別会議室

○ 神田部会長

それでは、そろそろ時間でございますので、始めさせていただきたいと思います。

ただいまから、第9回の金融審議会金融分科会の第一部会を開催させていただきます。

皆様方には、ご多忙のところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

本日は、本年の1月25日に金融審議会の委員が新たに選任されて以来、初めての第一部会ということになります。私は金融分科会の前分科会長の蝋山先生から引き続き第一部会長へのご指名を2月17日付で受けました、神田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

皆様もご存じとは思いますが、蝋山先生におかれましては、この6月19日に急逝されました。当部会におきましても蝋山先生の金融分野、特にこの証券分野におけるさまざまなご貢献に対し深く感謝するとともに、哀悼の念を表するものでございます。

当部会のメンバーにつきましては、お手元にお配りしております名簿をごらんいただきたいと思います。今回新たにご就任されました方々をここでご紹介させていただきます。まず、委員の方からご紹介させていただきます。あいうえお順にご紹介させていただきますけれども。

嘉冶佐保子委員でございます。きょうはちょっと遅れておられるようであります。

それから、次に、島崎憲明委員でございます。

次に、西村淸彦委員でございます。

それから、藤田太寅委員でございます。ちょっと遅れておられるようであります。

なお、その隣の淵田さんにおかれましては、これまで臨時委員としてご活躍いただきましたが、今回委員にご就任いただくと、よろしくお願いいたします。

次に、専門委員として本日からお加わりいただいておられる方々をご紹介させていただきます。

まず、板谷正徳委員。

次に、田口弥委員。

それから、永易克典委員。

安田新太郎委員。

どうもありがとうございました。新しい委員、それから専門委員の方々にも今後活発なご意見をご披露いただければと存じます。よろしくお願いいたます。

それでは、カメラはここまでということになっているようでございますので、よろしくお願いいたします。

それでは、次に、これまで部会長代理をしていただいておりました太田委員がこのたび退任されましたので、ここで部会長代理を指名させていただくという手続を踏まさせていただきたいと思います。

金融審議会令によりますと、部会長代理は部会長が指名することになっております。第6条であります。そこで、私といたしましては、淵田委員を部会長代理に指名させていただきたいと存じますが、淵田さん、いかがでしょうか。

どうもありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

それでは、今後このメンバーでご審議いただくということになりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。また、この場ではぜひ忌憚のないご意見を活発にご披露いただきますようお願い申し上げます。

なお、議事ですが、これは公開となっておりまして、報道機関の方々などのために後ろの座席を用意しております。

そこで、本日の議事に入らせていただきます。まず、本日は証券決済システム改革の進捗状況等につきまして、事務局からご報告をいただきたいと思います。

そこで、お手元の議事次第をごらんいただきますと、証券決済システム改革の進捗状況、これが最初ですね。それから、次に、ディスクロージャー・ワーキンググループの検討状況。そして、3番目に、証券市場の改革促進プログラムの進捗状況。そして、4番目に自由討議案というのがあるかと思います。これらを一通り事務局の方から説明していただきまして、その後残った時間で、今後この部会で審議していくべきテーマ等につきまして皆様方からフリーディスカッションということで自由にご意見を頂戴できればと思います。

それでは、まず1番目ですけれども、証券決済システム改革の進捗状況につきまして、事務局から説明していただきたいと思います。

山崎さん、お願いします。

○ 山崎市場課企画官

それでは、証券決済システム改革の進捗状況につきまして、簡単にご説明させていただこうと思います。お手元に資料1ということで、関連の資料を配布させていただいております。

証券決済システムにつきましては、もともと事務的な手続が割と中心な地味な分野ではございますけれども、金融証券取引が複雑化し、グローバル化した中で、証券決済システムの不備が起こった場合のリスクというものは大変多くなってきております。また、IT化の進展等も踏まえまして、決済を制するものは市場を制するとちまたでは言われるような形で決済制度の仕組みの優劣が一国の証券市場の国際競争力を左右しかねないといった状況になっております。

このような問題意識を背景にいたしまして、この部会におきましても4年前の平成11年9月から我が国における証券決済システム改革のあり方について検討いただきまして、翌年の平成12年6月に報告をまとめていただいております。

資料1の1ページ目はこのときのご報告の概要でございますが、我が国証券決済システムの問題として、まず第一に、証券決済制度が分立していると。その結果、証券決済が有価証券の種類ごとに異なる法制に基づいて行われており、また証券ごとに異なるルールや手続で決済が行われるという点は大変問題ではないかというご指摘を受けております。そのほか、ペーパーレス化の遅れ、それから電子化の遅れ、証券の引き渡しと資金の支払いが同時に行われる、デリバリーバーサスシスペイメント(DVP)の実現であるといったような問題点のご指摘をいただきまして、その基本的な改革の方向として、第一に、統一的な証券決済法制を整備すること。それから、包括的証券決済機関を実現すること。そのほか、電子化、DVPを実現すると、こうした報告をいただいております。

この報告を受けまして、金融庁といたしましては、統一的な証券決済法制の整備に早急に着手いたしました。次の3ページ目をごらんいただきますと、その進展、法制的な進展ということですが。まず、平成13年の通常国会におきましては、コマーシャルペーパーのペーパーレス化を行うために短期社債等振替法を提出させていただきました。これは、券面にかわる電子的な記録に権利の発生とか移転、消滅といった効果を付与すると意味で、現在の法制度の基礎ができたものでございます。

その後、より発展性のある形でまた多層構造の振替制度に改変するとともに、投資者保護の観点からセーフティーネットたる加入者保護信託を創設するなど、平成14年の通常国会におきましては社債等振替保護を提出させていただいております。

現在、証券決済システム改革第3段に当たる株式に係るペーパーレス法制につきましても作業をさせていただいております。

株式のペーパーレス化につきましては、法制審議会におきまして、昨年9月からご審議が行われておりまして、本年3月に中間報告を公表、その後パブリックコメントを経た上で、今月10日に法制審議会の総会で承認されました。

法制審議会で承認されました要綱の概要は次の4ページ目に書いてございます。現行の商法におきましては、株式会社の成立後、遅滞なく株券を発行しなければならないということにされておりますが、株式を譲渡するときにまた株式を交付しなきゃいけない、株券を交付しなければいけないということになっております。しかしながら、現実には株式の移転がほとんどない非公開会社においては、株券を発行する必要性がほとんどないということから、まず1つとしては定款変更によって株券を廃止することを可能にすると。それとともに、譲渡制限会社について株券を廃止しない場合でも、遅滞なくではなく、株式による請求があるまで株券の発行を行わなくてよいということとしております。

一方、公開会社につきましては、社債等振替法と同様な証券決済法制を構築いたしまして、ペーパーレス化を図るとともに、決済の効率性を図るために一斉にペーパーレスに移行するという方向性が出ております。

現在、この要綱をもとに法案化作業を進めておりまして、株式のみならず、エクイティー関連の有価証券について、当方としてはペーパーレス化の作業を進めているところでございます。

簡単ですが、以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございます。

2番目は、予定ではディスクロージャー・ワーキンググループの検討状況のご説明なのですが、ちょっと担当の羽藤さんが遅れておられますので、順序をかえまして、3番目と4番目ですね、すなわち証券市場の改革推進プログラムの進捗状況、それから自由討議案につきまして、大森課長の方からご説明をお願いします。

○ 大森市場課長

今回、おかわりになった方も結構いらっしゃいますので、経緯から簡単に申し上げますと。昨年末の当部会の報告も指摘しておりますように、5年前のビッグバン市場改革によって制度、競争条件は米国に比肩する水準に整備をされて、現に業者間の競争も激化しておりますけれども。肝心のマクロのマネーフロー構造の変化とか、個人投資家のすそ野の拡大といった目的は実態経済の低迷が続く中で実現をしておりません。

蝋山先生をとりまとめ役に神田先生、池尾先生、淵田委員にも参加をしていただきました金融システムの将来ビジョンの議論におきましても、市場の制度を変えただけで市場参加者の意識や行動が変わると期待するのはあまりにナイーブな前提であって、行政の役割というのはときどきの環境変化に応じてインフラ整備を着実に進めることが基本であるけれども、合わせて市場参加者の意識や行動に働きかけていくこともこの国においては必要ではないかという意見が多くございました。

そんな気持ちをもとに、昨年夏の時点で考えつくことをすべて並べてみたのがこの改革促進プログラムであり、法改正マターについては当部会でのご審議を経て、先の通常国会に提出をいたしまして、5月23日に成立をしております。

現時点の進捗状況を簡潔に、とりわけ、今後当部会でご議論をお願いしたい点に力点を置いて申し上げたいと思います。

資料3と4というのは、実は内容的にかなり重なっておりますので、資料4の方の1枚紙を横目でごらんになりながら3の方をかいつまんでご説明をさせていただきます。

ご案内のとおり、このプログラムは1つには投資家との接点をふやしていくということ。そして、その投資家が不公平な扱いを受けないという信頼性を確保すること。さらには、資金の運用、調達を効率的、安定的に、使い勝手がよい、そういう3つの柱に整理をしてございます。

最初の柱は、証券会社については、1ページにありますように、接点をふやすための、ここでは販売代理店という言葉を使っておりますが、証券仲介業制度あるいは資産管理型の営業に向けたラップ口座の導入。預金金融機関については、同じく接点をふやしていくための銀証の共同店舗ですとか、書面取り次ぎの範囲の拡大といったあたりが制度的には目玉になっておりましたが、法改正マターについては現在、来年4月1日の施行に向けて政令、内閣府令の改正の作業をしておるところでございます。

逐条的な説明はいたしませんけれども、1ページの真ん中にある信頼性向上に向けた、ここでは証券会社ですが、投資顧問会社についても信頼性向上に向けた業務の検証と、こういった発想はビッグバンのころにはなかったものでありまして、投資家も自己責任であれば、その投資家に見放される仲介者も自己責任という割り切りだったんですけれども、目先の短期的な営業姿勢に対する批判というのが昔から同じように繰り返されているのであれば、行政もサイレントマジョリティーの国民の視点に立ってともに考えていきましょうということでございます。

ちょっと余談になりますが、今、板谷さんのお顔を見てちょっと思いついたんですけれども。現在の板谷委員の立場にあったのがビッグバンのころには野村証券の斉藤副社長で、政策にも見識をお持ちの方でしたので、昨年このプログラムの原案をつくりましたときに論評をしていただいたことがございました。当時は投資顧問会社の経営に当たっておられましたが。日常的に経営に当たっては証券会社自体のデュティーコンシャスの埋め合わせをしたいという気持ちが常にあるけれども、なかなかままならないというようなことをおっしゃっていたのが非常に印象に残ってまして。証券界の良識を代表する方にしてそうなのか、だからこそそうなのか、いずれにしてもそういう方だから産業再生機構なんていうものにまたかつぎ出されたのかもしれませんけれども。

2ページ、3ページ、4ページ、最初の柱の残りは金融商品とか投資についての知識の普及、情報提供であって、一朝一夕で効果が上がるというものではありませんので、粘り強く取り組む必要があると思いますが。先ほど言及しました将来ビジョンの議論に際しても、日本国民は、例えばアメリカ国民に比べてリスクをとらない、そういう先入観が誤りであるのは、競馬とか宝くじとかパチンコの売上を見れば明らかであって、どの馬が勝つのか分析するエネルギーをどの企業が伸びるのかと分析する方向に向かわせるのが肝要ではないかといった意見もございました。行政的には文部科学省あるいはNPOとの連携と考えられますが、当部会でも投資教育とか啓蒙とか、ちょっと見下ろすような言葉が適当かどうかわかりませんけれども、この課題について有効な方法があればご意見をちょうだいしたいと思います。

2つ目の柱が5ページにある投資家の信頼が得られる市場の確立で。最初に、監視体制の強化と掲げてございます。アメリカのSECは日本とは桁違いで、年間500件ぐらの行政処分をするのが、日本のマスコミ的に言えば慢性的証券不祥事状態にあるわけですが。アメリカの投資家が愛想をつかして市場から離れると。いや、全く逆で、掟破りは割に合わないという規律が確立している、それが信頼の源泉だと思います。

日本の監視委員会もバブル崩壊後の損失補てん問題、言ってみれば、力のあるものだけが補てんを受けたという国民の怒りをきっかけに誕生しておりますから、とりわけ個人投資家が自分が不公平な扱いを受けることはないと安心して参加できる体制を確立する必要があって。そのためには、ここに書いてあるような、監視委員会の事業強化に引き続き取り組む必要がありますが。監視委員会の機能そのものも強化する必要があるのではないかという、もっと有効な武器を備える必要があるのではないかという意識を持っております。

というのも、監視委員会が誕生した平成4年には、まだ大蔵省の外に独立した機関を設けるということで、その機能が基本的に不公正取引の事実認定に限られているわけでありまして、例えばそれ以外の証券会社の健全性というのは金融庁の方で検査をすると。二重体制になっております。また、その不公正取引に対する有効なエンフォースメントとして、これは具体的には討議項目の真ん中あたりに書いてございますが、アメリカの民事制裁金のような仕組み、課徴金というんでしょうか、それが導入できないかとか、被害者の救済、再発防止のために裁判所に頼らない形での差止命令、是正命令、そういった行政命令ができないかとか。さらには、民事責任規定の見直し、特に違法行為の挙証責任を転換できないか。あと、先ほど申し上げたように、行政としての事実認定というのは検査局、監視委員会、一元化していくべきではないか。そういったことが神田先生の総合規制改革会議の答申でも指摘をされておりまて、当部会でもご検討いただければと考えております。

この2番目のカテゴリーのそれ以外の論点、会計監査とか不正な取引のための取り組み、ディスクロージャー、コーポレートガバナンス、いずれも重要でありますが、ちょっと時間の関係上、省略をさせていただきます。

1つだけ、コーポレートガバナンスを行政とかあるいは取引所が後押ししていくことに対しては、なかなか経営の自由度を制約されるという産業界の根強い警戒感がございますが、これも先ほどの証券会社などの業務の信頼性向上といったことと同じ構造、構図ではないかという気がいたします。ルールとか仕組みよりも経営者の姿勢や倫理観が大事だというのは、これは当たり前のことであって、ただ姿勢や倫理観というのはルールや仕組みにより形成される、いろいろな人がいろいろなことを言うことによって形成されるという面がありますから、いやいや始めてみたら結局はよかったということが多いのがこの国なのではないかなという気がしております。

3つ目の論点が10ページにある市場の安定性・効率性であって、最初に中長期的な市場のあり方を掲げてございます。以前からいらっしゃる委員はご案内のとおり、昨年の当部会では取引所の持株会社制度、あるいは海外端末といった喫緊の課題をご審議いただきまして、所要の法改正を行いましたが、そもそも論が積み残しになっているということでございます。

企業の発展段階に応じた資金調達は、日本においては小さいうちは信用金庫で、少し大きくなると地域の銀行で、もっと大きくなると都銀というか、メガバンク。そのうち限られた企業が市場調達をするという、そういう姿でありますが。企業規模が小さいうちから調達できる市場があった方がいいのは、これは当たり前で、ビッグバンのときの意図もそうであったわけであります。店頭市場を取引所と対等の存在と位置づけて、取引所集中義務を撤廃してPTSを導入して、未公開株のグリーンシートを設けるという改革は、ナスダックがナイスに匹敵する存在になっており、あるいは他の証券取引所もあり、ピンクシートもある。そういったアメリカモデルにならった改革でございました。

現実には、日本で証券市場というと東京証券取引所と同義であるという事態がますます進行しているのは、制度の問題なのか、運用問題なのか。また、そういった事態を市場原理の帰結として素直に受けとめるのか、やはりその競争施策として問題があると考えるのか、いろいろなとらえ方があると思います。制度論としましては、店頭市場とかPTSの仕組みの議論もありましょうし、神田先生が言われるように、その顧客があらかじめ支持した場合以外は取引所で執行しなければならないというルール。これは、証券会社の顧客に対する事前の自己か委託かという取引対応の明示義務とも密接に関係してきますが、そういったルールの議論もあると思います。

いずれにしましても、また池尾先生に取引所ワーキングの再開をお願いしたいと存じますが、大きな論点ですので、当部会においてもご議論をいただければと思います。

このカテゴリーのそれ以外の論点については省略をさせていただきますが、一番最後に証券化・流動化の促進とありまして、これが貸出債権の証券化・流動化ですが、先ほど申し上げた将来ビジョンにおいても圧倒的にその預金、銀行貸出というマネーフローのウェイトが高い現状から、市場機能を中核とする伏線的金融システムに移行していく上での決め手とされたものでございます。

この点については、蝋山先生がその政策金融でまず主導していくべきではないかといった強いご意見をお持ちでしたけれども、住宅ローンに限らず、中小企業ローンでも最近同様の取り組みが始まりましたし、5月から始動している産業再生機構も、不良債権まで含めた貸出債権市場の母体になり得るという意味では、極めて萌芽的ではありますけれども、新たな変化が生じているということだろうと思います。

以上、駆け足でプログラムの方の進捗状況をご説明しましたが、これをもって資料4の討議項目案の大半は言及させていただいたということになります。

この討議項目案の上の2番目の、集団的投資スキームというのは、真ん中の最初の有価証券定義と裏腹の話でございまして、会社型の投資信託とかSPCは最近では随分活用されるようになっております。これらは証取法上の有価証券ですから、取り扱う人が決まっている、証券業の登録を受けた証券会社あるいは金融機関であって、そこに所要の行為規制とかディスクロージャーが課されております。

したがって、その論点は今後法改正による機能強化、拡充を予定されている組合型の投資スキーム、あるいはここで「等」と書いて明示しておりませんが、信託受益権、こういったものの投資家保護をどう図っていくかでございます。例えば、商法の匿名組合というスキームを使いますと、世の中の大概のリスク、リターン事象は証券化して投資家に販売できる。プロジェクトの成功度合いに応じて多額の配当を得たり、逆に元本割れになったりということが現にあるわけで。これは証取法が適用されていませんから証券業登録がなくとも誰でもできる仕組みであるということがポイントでございます。

また、きょう、経済産業省の課長さんお2人に来ていただいておりますのは、商法の匿名組合あるいは民法組合と証取法の中間に位置するスキームとして、中小企業の投資事業組合法を所掌されているからでありまして。登記と比較的簡易なディスクロージャーでベンチャーの資金調達が行われております。今後、この仕組みを中小企業に限らず、ベンチャー一般に使い勝手をよく見直していこうという法改正を予定しておられますので、こういった金融サイドから見れば簡易投資信託とも言うべきスキームの投資家保護のあり方について問題意識を持って参加をしておられるわけであります。

この有価証券定義の話を始めますと、これまでは業際問題、縄張りの問題として紛糾するのが常でありまして、ビッグバンのときもカバードワラントや預託証書の追加指定にとどまっていたと思いますが、これは1つには追加するかしないかという二者択一の発想の議論だったことにもよると思います。今回の検討の対象は誰だって事業者になれるという一般スキームですから、これを制度を見直して既存の金融機関しかできないようにするというのは常識的ではありませんから、場合によってはその議論をしていきますと、有価証券に準ずる証券とか部分的証券業というような言葉がいいのか、あるいは限定登録制、そういったような概念が必要になってくるのかもしれません。いずれにしても、所管する省庁が違うとか、省の中でもかつて銀行局と証券局があったなんていうことは国民にとっては知ったこっちゃないんで。ただ、その現行制度は、まだその残滓を留めておるのは事実であります。

神田先生からもその経済実態に応じたシームレスな制度という歴史観を持って取り組むべしとご指導いただいておりまして、まずこのあたりからご議論をいただければと思います。

基本は、何が利用者にとって望ましい仕組みかという観点から、投資家保護とスキームの組成、運用に要するコスト、参入のしやすさといってもいいと思いますが、そういったものの兼ね合いだろうと思います。

いずれにしても証券取引法の構造の根幹にかかわる論点ですので、よろしくお願いいたします。

次の市場監視機能の強化は、先ほど申し上げましたが、何もアメリカにあるんで同じツールをというわけではなくて、やはり日本の市場、証券会社の実情に即して有効に機能するようなツールとして検討されるべきだと思います。

また、黒沼先生からインサイダーを初めとする不公正取引規制についても整理していく必要があるんじゃないかという意見、事前にいただいておりますので、また後ほど披瀝していただければと思います。

こういった行政サイドの監視機能強化に対応して、当然、真ん中の一番下にありますような取引所あるいは証券業協会の自主規制機能のあり方も検討する必要が出てくると思います。

協会については、ビッグバンの際には参考とすべきアメリカのモデルが揺らいでおりまして、NASDの持ち株会社のもとにNasdaqとNASDレギュレーションを分けてぶら下げたのがよかったのかどうかというような議論をしている最中でございまして。自主規制という理念そのものへの反対論は恐らくないと思いますけれども、具体的に誰が何をどういうやり方でやるのが有効なのかというのは、この行政サイドの市場監視同様、日本の市場、証券会社の実情に即した有効な方策が検討されるべきだと思います。

3番目についてはもう申し上げましたが。最後の社会投資への活用というのは、事前に西村先生からちょうだいをしたもので、後ほど披瀝していただければと思いますが。同じようなことを感じることは私どももございまして。例えば地場の証券会社というのはその地域の資産家の株の取り次ぎだけではなくて、例えば地域のPFIのプロジェクトの資金調達のスキームを組成して社会資本整備に貢献するということも仕組みとしては可能なわけですね。信頼関係を基本に今後ともやっていかれるというのであれば、売る商品は株だけじゃなくてさまざまな可能性があると思います。

事務局として考え得る論点は以上ですが、これに限る必要はございませんので、自由なご意見、ご提案をお願いしたいと思います。その上で、次回以降、論点を掘り下げていけるように事務局として準備をさせていただきたいと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ちょっと順序を戻して、羽藤さんがいらっゃいましたので、2番目に挙がっておりますディスクロージャー・ワーキンググループの検討状況についてのご説明をお願いします。

○ 羽藤企業開示参事官

参事官の羽藤でございます。遅れまして大変失礼をいたしました。

お手元に資料2をお配り申し上げておりますけれども、これは本部会のもとに設けられておりますディスクロージャー・ワーキンググループについてでございます。ディスクロージャー・ワーキンググループは、本日はご欠席でございますけれども、岩原委員に座長をお務めいただいておるところでございます。

昨年の12月に本部会に報告をさせていただいて本部会でおとりまとめいただいた大きな柱が3つございまして、それぞれディスクロージャーの制度ということについて提言をいただきました。その後、私どもとしましては、関連する政令あるいは内閣府令の手当てをし、制度改正の具体化を行ってまいりました。

お手元にございますこの資料の中の「信頼される市場の確立に向けたディスクロージャーの充実・強化」は、ここにございますように、事業のリスクあるいは財務状況や経営成績の分析、MD&Aあるいはコーポレート・ガバナンスの状況、こういったことを開示をしていただくということで内閣府令を改正いたしました。

そして、平成16年3月期から適用ということで手当てをさせていただき、早期適用も可能であるということで具体化をいたしましたところ、平成15年3月期の有価証券報告書には17社が記載をして出されておられますけれども、そういう形で開示の充実を図っておるところが1つであります。

それから、2番目の○でありますけれども、有価証券報告書等の記載内容の適正性に関する代表取締役の確認ということで、有価証券報告書に記載された事項が適正であるということを確認して、その旨を記載した確認書を有価証券報告書に添付するということで制度上手当てさせていただいたものであります。これは任意で提出を求めるという形の手当てになっております。

一方、昨年の金融再生プログラムで、主要行に対してはこの15年3月期から添付をするように要請が行われ、3月期の有価証券報告書に添付した会社は主要行も含めまして、21社でございます。そういうことで、まずディスクロージャーを充実するということで、トータルとしてマーケットが信頼されるということで具体的な措置をとらさせていただいたものであります。

それから、2番目の大きな柱は、「経済の活性化に資するディスクロージャー・ルールの整備」とございますけれども、これは例えば、1つ目の○は、いわゆるプロの投資家、「プロ私募」と言われておるところでの「適格機関投資家」の範囲を拡大をするということで手当てをさせていただきました。ここにございますように、ベンチャーキャピタル会社あるいは厚生年金基金など、「適格機関投資家」という要件の範囲を含めて拡大をさせていただき、そしてその旨を募りましたところ、さらに15社がベンチャーキャピタルあるいは事業会社を含めまして、「適格機関投資家」としての登録がなされたものであります。

それから、少人数私募ということで、少人数で募集を行うというふうな場合について、現行制度上は50名という一定の要件がございますけれども、今般の制度改正によりまして、この50名からはプロの「適格機関投資家」を除外するということで、勧誘の相手方からそういう投資家を除くことによって、50名のカウントという余地を広げていくという措置でございます。

それから、エクイティ関連商品について「プロ私募」の対象とするということで手当てをいたしております。2ページ目でございます。公開買付規制についても現行の制度上、事業再編の迅速化、あるいは手続の簡素化という観点から、証券市場の改革促進プログラムでも指摘があったものではありますけれども、一定のものを適用除外とするということで、公開買付規制の適用除外の事例を拡大をしております。

それから、株式移転により新設された持株会社の発行登録制度利用適格要件の緩和とありますけれども、これも手続を簡素化、そして迅速化をするというふうなことで要件を一部緩和したというものであります。

それから、「ディスクロージャーに関する手続の簡素化、迅速化」ということでございますけれども、ここに書いてございますような幾つかの手続的な面で改正を行っております。

以上が、昨年末に第一部会の報告を出していただき、それを受けての対応でございます。

以下口頭でのご報告になりますけれども、現在ディスクロージャー・ワーキンググループでは目論見書制度の見直しについて議論に着手し、検討をお願いしているところでございます。これは、昨年12月の段階で「今後の検討課題である」と位置づけられているものであります。投信に限らず、目論見書全般について交付の方法であるとか、あるいは制度上「要約目論見書」とか、「訂正目論見書」といろいろな制度が定められているわけでありますけれども、こういったものについてのあり方を全般的にご議論いただいているところであります。

それから、公開買付制度につきましても、今、ご紹介を申しましたように、一部適用除外要件の拡大ということで手当てをさせていただいたわけであります。制度全体について見直しをしていくというとによって事業の再編等々に資するために制度整備を行っていくということをディスクロージャー・ワーキンググループでご検討をお願いしたいと考えているものであります。

それから、3つ目はそのほかにも規制緩和として手続的なことがございます。そういったことを検討していただくということで、以上申しましたことについては、年内に結論を得るようにご議論をお願いしているというものであります。

また、このほかにも大きく2つの課題があるというふうに認識をしております。これらも全体の議論の流れの中で早急に議論を今後お願いをしていきたいと思っておる事項でございます。

それは、まず1つには英語によるディスクロージャーであります。既に構造改革特区提案においては一部の地域に限って英語によるディスクロージャーを認めていただきたいという要望が既に寄せられておりまして、特区全体についての対応の中で私どもとしましても検討いたしました結果、これは地域的に、物理的に一部の特区に限るというふうな検討を行うことよりも、むしろ全国的に実施する方向で検討を開始し、そして結論を得ることが適当であるという結論に至りまして、そういう方向で今年度中には検討を開始してまいりたいというふうに考えておるところでございまして。これは、投資者保護の観点、それから発行体といってもこれはさまざまな立場の発行体があり得るわけでありますけれども、そのコスト、あるいはグローバルオファリングという関係で課題を整理いたしましてご議論をいただきたいと考えておるものであります。

それから、もう1つ、今後ご議論いただく大きな課題としては、四半期開示の問題がございます。これは、やはり昨年末に第一部会の報告で「今後検討すべき課題」というふうに位置づけをしていただいているわけでありますけれども、先般、東京証券取引所において四半期開示について今後の実務の具体的な制度化が行われていくというふうになっておるわけであります。こういった実務の動向を踏まえて、四半期報告をそもそもどういうものとして性格づけるか。そして、その性格づけによって開示の内容をどのように求めていくのか。既存の半期報告制度というものがあるわけでありますけれども、その関係をどう考えていくのか。そして、そのような中で会計基準については企業会計基準委員会での検討ということも場合によってはお願いするということも将来的には課題になってくるとも思いますけれども、監査あるいは開示、こういった制度論それぞれについてどのように論点を整理していくのか、そういったことについてディスクロージャーという観点からご議論いただきたいというふうに位置づけておるものであります。

以上、お手元にお配りをしました点はこれまでの取り組みの点でございまして、今後の課題がございます点について、先ほどの討議項目の中にも一部ございますけれども、口頭でございますが、補足をさせていただきました。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

大変盛りだくさんの報告を要領よくしていただきましたので、ちょっと聞いてる方はやや消化不良のところはあるかとは思いますけれども、これからあと自由討議に入りたいと思います。

なお、最初に、先ほど大森さんのご説明の中にありましたことに関連して、1点、できればここでご承認をいただければと思うことがあります。それは、取引所のあり方に関するワーキンググループというものを今回、先ほど大森さんからご説明がありましたような形でというか、そういう課題等を検討するということで再開をさせていただきたと思いますけれども、それをここで第一部会としてお認めいただけると大変ありがたいのですけれども。いかがでございますでしょうか。

よろしゅうございましょうか。

はい、ありがとうございます。それでは、これは座長は池尾先生にしているのですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。昨年に引き続きでよろしくお願いします。

どうもありがとうございました。

それでは、今、事務局からのご説明についてのご意見、ご質問、あるいはその他、今後の証券市場改革についてのご意見、ご質問でも結構ですし。特に私としては、きょうは今後この部会で審議を行っていく上での視点ですとか基本的な考え方、あるいはこの資料4に討議項目案というのを事務局でつくっていただいております、資料4の1ページ目だけをごらんいただければ十分と思いますけれども。その中でどういう点をどういう視点あるいは考え方でこの部会で議論していったらいいか。あるいは、ここに挙がってない点でもこういう点が重要ではないかというその、つまり一言で言えば、今後の当部会でどういう審議をしていったらいいのかということについてのご意見を承れれば大変ありがたく思います。

ただ、もちろん先ほどの事務局からのご説明についてのご質問とかご意見も自由にお出しいただければと思います。

きょうは特にどなたから何かご発言ということはこちらでは考えておりませんで、皆様方から、できれば全員の皆様方から何なりかのご意見なりご感想をいただければ大変ありがたいと思います。

どなたからでも結構ですので、どうかよろしくお願いいたします。

上柳委員、どうぞ。

○ 上柳委員

特に資料4を見せていただいているんですけれども、この中でも項目としては2つ目になっておりますけれども、この投資家の信頼が得られる市場の確立ということがやはりこの場の大変大事な役割なのではないかというふうに思っております。毎年着実に改善は進んでいるんだとは思うんですけれども、やはりどうなんでしょうかね、ここにご出席の皆さんも含めて、今まで、あるいは10年前と比べて金融市場をもっと利用してみようとか、あるいは証券を買ってみようとかいうふうな気分に回りの方がなっておられるかどうか。これは市況の問題だけではなくて、私はやはり安心して個人あるいは日本国民がということかもわかりませんけれども、金融市場に参加できるあるいは金融市場を利用できるという体制が大事だと思います。

そういう意味でいうと、今回残念ながら項目には挙がっておりませんけれども、いわゆる金融サービス法ということで金融市場を横断的にインフラを整備するということが、これやはり大目標として掲げられるべきではないかというふうに思っております。

ちょっといきなり各論になるかもわかりませんけれども、最近、うちの弁護士会で法律相談を受けるんですけれども、いわゆる為替証拠金取引についての相談がたくさんあります。これもちょっと私の不勉強かもわかりませんが、なかなかどこの官庁が管轄されるか自体も、少なくとも最初はよくわからないようなことで、野放しというと言い過ぎかもわかりませんけれども、そんなこともありまして、やはり包括的に市場を整備する、あるはい不公正取引を監視していく、あるいはエンフォースメントを強化していくということが大事だろうと思います。

恐らくこの討議項目に書いてる趣旨も同じなんだろうとは思いますけれども、いわゆる法律をつくっただけでは意味がないわけで、それを実際に実施すること、いわゆる執行体制というんですか、エンフォースメントでしょうか、それを包括的にあるいは総合的にやっていくということが大変大事で。恐らくアメリカはもちろんですし、そのほかの国々でもここにあります民事的な制裁金であるとか、あるいは行政が消費者のかわりに差止命令とか是正命令をする。そこで一定のファンドをつくって、それをまた投資家、被害者の方に回復させていくというのが、そういう刑事、民事の中間的なシステムも含めて真剣に考えていかないと、大事な時期を逃してしまうのではないかというふうに思います。

そういう意味で、ぜひいろいろ柔軟に考えるということと。特にそこに私人の方、あるいは国民が参加していける。あるいは被害者から言えば申立制度とかいうことになるわけですけれども、金融庁なりあるいは金融サービスを監督される機関がもっと国民に近くなるように、ちょっと原点すぎるかもわかりませんけれども、再開に当たって考えられるべきことではないかと思います。

以上にします。

○ 神田部会長

非常に重要な点ですね。ちょっと1点、クラリファイのために。上柳委員の頭にあるのは、包括的、総合的とおっしゃるときには、業法的な規制ですか、それとも私法的なというか、民事、あるいは刑事、どういう意味ですか。

○ 上柳委員

答えでいうと、両方です。ただ、従来との関係でいうと、やはり私人があるいは民事的なといいますか、その取引法のルールとしてさらに整備されるべき面があると思います。

ただ一方で、業法というよりも、行政的手段というふうに言った方がいいかもわかりませんけれども、取引を円滑化するために行政が情報の提供あるいは情報の収集、あるいは加害者の特定なんかも含めてもう少しできることがあるのではないか、そういう問題意識ですね。そういう意味でこの民事的、行政的な制裁的負担賦課制度とかいうところに若干着目したんですね。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。どなたからでもお願いしたいんですけれども。

それでは、永易委員、どうぞ。

○ 永易委員

銀行の立場から言いますと、業際問題ととられるんですけれども、そういうことも捨象しましても、先ほど大森課長さんの方からご説明があった証券市場の改革促進プログラム、かなり多岐にわたって精力的にやられているとよくわかります。現実に銀行と証券会社の共同店舗に関する規制の撤廃とか、やはり証券仲介業制度というのはかなりエポックメイキングなやつだろう、こういう施策も盛り込まれております。これはもう大変評価するということですが、残念ながら銀行は適用除外というふうになっているのはご存じのとおりであります。もちろん、証券業務自体は原則として銀行はやっちゃいけないということは健全性確保の観点とか、利益相反の問題、こういうものからあるということは理解しておりますけれども、証券仲介業、仲介業として見た場合は、このあたりは注文の取り次ぎとか勧誘ということでございますので、必ずしも除外すべきものではないんではないかというふうに考えております。

一方、そういうマイナス面というんじゃなくて、プラス面からいうと、これは効果があるというのははっきりしていると断言できると思うわけであります。利便性向上という面からは飛躍的に前進する。現に株式投信というのがございますけれども、これは解禁されて4年半になりますが、ただいま現在ですと、もう50%弱、45%ぐらいは6月時点では銀行の窓販でやられておる。ということは、やはり個人投資家を育成するという観点、これは大変大きい問題だというふうに思いますけれども、この点からは不可欠な施策ではないかというふうに認識しているわけであります。

広義で証券仲介というのをとった場合には、その投資家、証券会社をつなぐという仲介だけではなくて、発行体と証券会社をおつなぎする役割というのも本当は入るのではないかなというふうに実は思っております。

ここまで想定いたしますと、いわゆる中堅中小企業の皆様方、こういうところに直接的にアドバイスをもし銀行ができるということでございますれば、そのあたりにある潜在的なIPO関係ですね、こちらの関係とかのニーズを発掘いたしまして、発行市場というのはとても活性化するんではないかなというふうにも思っておりますし。中堅中小企業の側からいっても資金調達の多様化、特にベンチャーさんなんていうのは本当に、先ほどちょっと話もありましたけれども、非常にいい手段になるのではないかなというふうに考えております。

先ほどの資料4からいったら、誰もが投資しやすい市場の整備の一環だと思いますけれども、やはりこの銀行による証券仲介業務の解禁という問題について、ぜひ議論いただきたいというふうに思っております。

以上です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、ほかにいかがでしょうか。

安田委員。

○ 安田委員

討議項目の2番目にあります有価証券定義の見直しという部分がございますけれども、これにつきまして、信託としてのちょっとお話をさせていただきたいと思います。

ことしの7月に第二部会の方で例の信託業のあり方に関する中間報告書がとりまとめられました。この中にも今後信託法の改正の動向等を踏まえて、いわゆる証券取引法上の有価証券でない信託受益権を証取法上の有価証券とするかどうかということを検討していきましょうという記述がございます。

それから、現実の事象を見ますれば、貸付債権の信託の受益権等見るとわかりますけれども、証取法上の有価証券になったというだけをもって流通性が非常に高まるとかいうことでもないところでございますし、我々としては信託の持つ多様性、柔軟性を生かした顧客ニーズに対応する商品設計を確保したいというような思いでこの問題を取り上げたいなというふうに思います。

また一方、2年後に予定されてます信託法の改正では、その信託受益権を私法上の有価証券化ということも検討されるというふうに聞いておりますので、これらの検討に当たりましては、そういう各論点を踏まえましてご検討をさらにしていただきたいというふうに思います。

なお、いわゆる投資家保護といいますか、販売とか勧誘に当たってのルールというものにつきまして、これを明確にしていこうということはこの度の信託業法の改正に当たりましても十分検討ができるというふうに考えております。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

それでは、西村委員。

○ 西村委員

私は若干皆様とは性格の違うことをお話ししたいと思います。

討議項目では、3番目の、効率的で競争力のある市場の構築というところに対応するわけですが。先ほど大森課長さんからご説明がありましたように、そのうちの2番目の証券化・流動化の促進というところの市場型間接金融の役割、その下の社会投資への活用という点について金融審議会でご審議いただければというふうに思っております。

というのは、金融審議会、この分科会もそうなんですが、どちらかというとやはり普通の国民からすると、自分たちにはあまり関係のない話という考えがちです。つまり、お金をもっているお金持ちがそのお金を使ってもうけるための仕組みの話をしていると考えているのではないかと思います。実は、証券市場というのはそのようなお金持ちだけの話ではなくて、普通の国民が、お金を持ち寄って、プロジェクトに投資する、そのための仕組みであるはずです。その中には社会的に意味のあるものもありますし、それからお金儲けになるものもあります。そういったプロジェクトに投資をするというプロジェクトファイナンスという内容が非常に強いわけです。したがって、そういった市場の本来的な役割というのを単純な手続論とはちょっと別個に根本的に考え直す必要があるのではないかなというふうに思います。

この文書には、誰もが投資しやすい市場というのがあるんですが、何に投資するかということはあまり考えられていないように思います。でも何に投資するかというのは実は重要なのです。単にお金儲けのプロジェクトだけではありません。それも含めて実はこういった証券市場の考える証券というのは社会的なプロジェクトのビークルになり得るんだということを含めて考えていくということがこれからは必要になってくるのではないかというふうに思います。

そういたしますと、金融というのは単純な金融だけではなくて、経済社会全体にわたる大きな潤滑油としての広い意味での金融システムという形で考えることが可能になり、そしてこの市場の中で誰もが投資しやすく、そして投資家の信頼も得られると、そういうものになっていくのではないかというふうに思いますので、この点についてご審議いただければと思います。必要であれば、私は個人的には社会投資ファンドというのを提唱しているわけですが、そういったものを含めてご説明をいたします。

PFIももちろんそうです。PFIはいまのところ一番わかりやすいわけですが、PFIのように、先ほど大森課長さんの方からご説明ありましたように、PFIのように非常に身近なものにこういった証券的なものがうまく使えれば非常にいいわけです。そして、そういったものはやはり地場、地方、そういうものと密接につながり、そしてそこに新しい証券に対する需要が生まれて、そしてそれで証券がいわば単に東京一極集中するだけじゃなくて、地方に明快な需要と供給を生み出すというようなことになれば、これは最も望ましい形の効率的で競争力のある市場という形になるのではないかというふうに思いますので、よろしくお願いします。

○ 神田部会長

ありがとうございました。今の問題については、西村先生には改めてゆっくりお話を伺えればと思いますけれども。ちょっと1点だけ、私差し出がましいかもしれませんが、ご質問なのですが。そのおっしゃったような社会投資PFIにしてもそうですが、現在証券というものがビークルとして使えないとか使いにくいという状態にあるのでしょうか。そういうことではないのでしょうか。ご認識をうかがえると。

○ 西村委員

現在のビークルで基本的にはやることは可能なんですが、運用の面でいろいろな障害があるというふうに思いますし、そしてそれから場合によっては新しいビークルをつくり出さなきゃいけない可能性もあります。例えば私が提唱している社会投資ファンドというのは恐らく新しいビークルをつくらなきゃいけないと思うんですが、そういったものがあります。

そういったものが例えば前例がないからとかそういった形でつくれないとすると、いろいろな意味で新しい市場創成というのが難しくなる可能性がありますので、そういった障害をできるだけ最初からなくすようなシステムを考えていきたいということが基本的な趣旨です。

先ほど、今日も私が専門委員をしておりますOTOの専門家会議というところであった話ですが、こんな話があります。規制改革ということで我々はいろいろなところに性能規定というのを入れました。建築基準法もその流れに沿って改正されました。ところがわざわざ性能規定にしたにもかかわらず、その性能規定を実際に運用するときに、実は性能規定ではなくて、ものに対する規定にしてしまっているケースがあるのです。そういったようなことがあると、何のために規制改革で性能規定にしたのかわからない。ですからそういったことがないような形の運用とかいうようなものをする必要があります。そして、その運用を担保するようなシステムを考えていかなければいけないのではないかと、そういうことです。

○ 神田部会長

それではまた改めてこの件は具体的な例を上げながら多少詰めた議論をぜひさせていただければというふうに感じます。

それでは、ほかの方々から。高橋委員、どうぞ。

○ 高橋委員

大森課長からご説明のありました討議項目、いずれも大変重要なご指摘だと思います。また、昨年のプログラム、市場活性化プログラムというのが非常に網羅的に大事なポイントをついていたものだと思いますし、それが着実に実施されているということで、そういうことが個人投資家が、今、市場に参入しつつあるという成果になってあらわれているんじゃないかというふうに思います。そういう意味で、引き続きこのプログラムの大筋に沿った点で検討していただく、テーマとして挙げていただいていることは大変適切なご提案だというふうに思います。

特に、審議するというよりも実行に移していくことで、投資教育のあり方、これは大変大事なことだと思います。一般的な啓蒙、啓発と並びまして、学校教育についての取り組みということが大事なことだと思います。これは、証券業界としても真剣に取り組んでいるところでありますけれども、政府におかれましても、ぜひ文部科学省に働きかけ等、よろしくお願いをしたいと思います。

それから、もう1つは、組合型投資スキームというのを挙げられました。投資家保護の観点からどういうふうにこれを証券取引法の枠内に入れていくか、大変大事なご指摘だと思います。組合型投資スキームというのは1つの例示ということだろうと思いますけれども、いろいろなこういう新しいタイプの投資スキームというものが出てくるということがこれからも考えられるわけでございますので、そういうときにタイムリーに対応できるような基本的なスキームづくりというものが必要だと思います。投資家保護という観点からの何らかの規制というものが必要だと思いますが、一方、これも先ほどご指摘がありましたように、誰でも自由にできるという性質のスキームでもあります。そういう特質、特性というものが失われることのないような形で何らかの工夫が必要なのかなというふうに思います。

それから、市場監視機能の強化、エンフォースメントの強化ということであります。これにつきましても、基本的に市場への信頼あるいは仲介業者への信頼という観点から、監視機能を強化する、いろいろなエンフォースメント、あるいは罰金等の罰則等の規定を通じて強化していくというのは必要なことだと思いますし、そういう観点から機能強化というのをご検討いただくということは大変大事なことだと思います。それは、投資家にとって安心して参入できるという、そういう市場にするということで大事なんだろうと思います。

一方、証券外務員といいますか、仲介業者が積極的にその役割を果たしていくということもこの市場の活性化、あるいは投資家にとって大事なことだと思います。そういう意味で、こういう市場監視機能の強化と合わせて、そのルールでありますとか、あるいは処分でありますとか、あるいは検査における指摘というようなものに対する予測可能性といいますか、何か自分だけが指摘されたじゃないかとか、今まではそうじゃなかったじゃないかとか、ほかと比べて違うじゃないかと、そういうような不信感がもし生まれているとすれば、そういうことがかえって投資勧誘業務というものを消極的にするということで、投資家のためにならない結果になってしまうということもあるのではないかというふうに思います。

もちろん、いろいろガイドラインを出していただくとか、あるいは、今、ノンアクションレターというような仕組みもあります。いろいろご努力をいただいているということは承知して申し上げているわけでございますけれども、このエンフォースメントの強化と合わせて大事なことは、そういうルールでありますとか検査でありますとか、そういことに対する予測可能性ということじゃないかと思います。どういう方法でそういうものを確保したらいいのかと、いろいろな工夫があるだろうと思いますけれども、そういう観点からの検討もぜひお願いをしたいというふうに思います。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。なかなか重要なポイントだと思います。

ほかにいかがでしょうか。黒沼委員、どうぞ。

○ 黒沼委員

討議項目はここに挙がっているとおりで、私は賛成なんですが。先ほどちょっとご指摘のあった、公正取引規制のあり方について、私がなぜその討議が必要かということを少し補足して述べさせていただきたいと思います。

特にインサイダー取引なんですが、日本のインサイダー取引規制は、アメリカ法にならって昭和63年に立法化されたんですけれども、その後EUでは続々とインサイダー取引規制が国内法化されまして、その内容が、日本やアメリカと相当違ったものになっています。アメリカでもその後に判例が変更されたりしまして、日本だけが少し特異な形態になっているのではないか。国際的なルールの調和という観点から問題があるのではないかというふうに思います。

例えば、重要事実が限定列挙プラス包括条項の形になっている。ということで、例えば連結情報の開示が重要だということになりまして、子会社にかかる重要事実が法令上の重要事実に列挙されますと、それについて軽微基準や重要基準が制定されてしまって、かえって包括条項を適用しにくくなるというような、ちょっと矛盾した事態が生じていると思います。

それから、第2次情報受領者が規制の対象になっていないとか、情報の伝達や取引推奨は規制の対象になっていないという点でもどうも不整合があるのではないかというふうに考えます。

こういった問題は、関係者の間からはあまり不満は出てこないのかもしれませんけれども、学者の間では従来から不備が指摘されているところですので、もしできれば取り上げていただきたいと考えております。

それから、民事責任規定の見直しも従来から研究者の間では問題点がいろいろ指摘されていたところでありまして、これは市場監視機能の強化の一環として見直しが行われるだろうと思いますけれども、証券発行者の流通市場開示についての責任規定がないとか、証券を売却した者の保護が十分でないといった点。さらに、もしできるならば、証券クラスアクションの導入あたりまで合わせて検討していただければというのが私の希望であります。

それから、もう1点だけ。ちょっと気になったことがあったので発言させていただきたいんですが。証券市場の改革促進プログラムの進捗状況のところの資料の10ページの一番下のところで、取引所間で共通化が可能な国内市場のルールの整備というのが挙がっておりまして、これは取引所ワーキングでは取り上げていなかった、討議していなかったことではないかと思うんですけれども。四半期開示の内容とか、適時開示の内容について、ルールの共通化を図るための規則の改正を実施というのがあります。これは多分、取引所が規則を改正したということではないかと思うんですが。確かにルールが違っていて困るということはあるかもしれませんけれども、こういう法令の規定を越えるディスクロージャーについては、私はディスクロージャーのルールの競争というのがあってもいいのではないか。あるいは、それが望ましいのではないか。もしルールを共通化することのメリットが大きければ、これは法令化すればいいわけで、法令の規定を越えるものについては取引所の自主性に任せて競争させるべきではないか、あるいは競争の余地を残すべきではないかというふうに思います。

一方で、市場間競争をうたっておきながら、他方で何か行政指導か、あるいは権限によって法令以外の部分のルールの共通化を図るとか、あるいは競争制限にとられかねないような行為をとることは問題ではないかと思います。

考え方としてはそういうことのないようにくれぐれもお願いしたいと思います。

○ 神田部会長

以上でよろしいですか。はい、どうもありがとうございました。最後の点はきちんと議論しないといけない問題だと思いますけれども、自主規制の例えばあり方みたいなものが、自主規制は法令と同じように考えるとすると、むしろ共通化ということもあると思いますし。今、おっしゃったように、ルールで競争をするような、それを自主規制ととりあえず呼んでおきますけれども、それが望ましいという立場に立てば、また違った見方になると思いますけれども。きょうはこれは具体的には議論できないと思いますけれども、重要な点だと思いますので、また議論したいと思います。

事務局の方から何かございますか。よろしゅうございますか。

では、齋藤委員、よろしくお願いします。

○ 齋藤委員

役目柄1点だけ質問させていただきたいんですが。先ほど羽藤参事官から今後の課題の1つとして四半期開示の検討というお話がございました。これはどのくらいのスケジュール感で検討することになるのかということをお伺いしたいんです。つまり、既に取引所の方でその開示を義務づける方向で作業を進める予定と書いてありますけれども、これ結構いろいろな難しい問題が絡んでまして、特にさっきお話のあった現行四半期開示との関係とか、特に監査のレベルとの関係が出てまいりますので、もしかすると金融審だけでも扱えないかもれないという感じがするんですね。ある程度の制度の枠が固まったところで企業会計基準委員会の方に会計基準の検討が多分依頼されてくると思うんですけれども、そのための準備といいますか、体制を考える上でもある程度のスケジュール感をお知らせいただけるとありがたいと思います。

○ 羽藤企業開示参事官

これは、もちろんディスクロージャー・ワーキンググループで各委員のご議論をいただきたいとは思っておりますけれども、心づもりとして考えておりますのは、やはりこの年度内には四半期開示をめぐってこれまでの経緯、それから、今、齋藤委員からご指摘ございましたような単にこれは開示だけの問題ではないという点、そして、議論を深めていくに当たっては、既存の制度との調和あるいは整合性あるいは連続性というものについてどこまで手当てをし、あるいはどこまでを所与のものとして議論をしていくのかという、そもそものことを議論をお願いしなければならないというふうに思いますし、そういう観点でディスクロージャー・ワーキンググループではディスクロージャーという観点からこの問題が取り上げられていますけれども、まず一度議論が広く及ぶものであるという認識を持っていただくという意味で議論をしていただく。その後に、それぞれ議論をするにふさわしい、あるいは既存のその課題を取り上げている組織あるいは討議の場というものが内外それぞれ金融審議会のディスクロージャー・ワーキンググループ以外にもございますものですから、そういうところにはさらに検討をそれぞれの主体性においてご判断をいただく、あるいは引き続きディスクロージャー・ワーキンググループとして議論ができるところは議論を深めていくというふうなことを考えております。

したがって、出口としてあるいは結論を得る時期についても、これはまだ何か決まった考え方や計画を持っているわけではありませんので、まずそういう意味ではその過程において取引所における実務がどのように周知されて実行されていくのかということもあると思います。

年度内にまずご議論をいただいて、そして、今、申しましたような点の整理をディスクロージャー・ワーキンググループでしていただくということになろうという心づもりではおります。

○ 斉藤委員

結構ですけれども、印象としては比較的ゆっくり構えてていいという感じに聞こえまして大変助かるんですけれども。一方では、その制度の枠の検討の進捗を待たずに企業会計基準委員会の方でこの会計基準の検討に入るべきだという外からのプレッシャーもございまして、大変我々も困惑しているところでありますので、その点の調整も含めてよろしくお願いをいたしたいと思います。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、吉野委員。

○ 吉野委員

マーケットに一番近いところで実務を行っている立場から幾つか申し上げたいと思います。先程、羽藤参事官からディスクロージャー・ワーキンググループで英文開示の問題が取り上げられるというお話がございました。私どもとしても上場外国企業数の減少に苦慮しているところでもあり、これをテーマに取り上げていただいたことについて、まずは御礼申し上げたい。また、その実施方についてぜひ努力をお願いしたいというのが1つございます。

それから、もう1つは不公正取引、先程、黒沼委員からもありましたけれども、不公正取引とは何ぞやということが明確でない部分がございます。これから様々な投資者が市場に参入するというときの障害の1つに不公正取引の概念が明確になってない、明瞭になってないという部分があり、これを明瞭化した上でどういう規制を図っていくかということを、合わせてご議論いただくとありがたいと思っております。

これは、市場開設者の自主規制のあり方とも関係をするわけですが、やはり実務がワークできるような形で、我々のつくったルールの位置づけを明確にするようなことも1つの視点としてあるのではないかと思っております。このような視点もあるということを取引所のあり方に関するワーキンググループの場などで、またお話を申し上げたいと思っております。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

それでは、田島委員。

○ 田島委員

一般市民の個人投資家を証券市場に呼び込みますためには、やはり投資家の信頼を得られる市場の確立というのが不可欠だと思います。ことに、市場監視機能の強化は避けて通れない問題だろうというふうに考えております。

現在、不公正取引を行われましたときのペナルティーとしては、刑事罰としての罰金、あるいは追徴金というものもございますけれども、刑事罰が課せられるまでのものというのは極めて悪質なものに限られていると思いますので、そこにいくまでのものについてもやはり民事行政的な制裁を課すという意味では課徴金的なものを制度化する必要があろうというふうに思います。

それから、差止命令、是正命令につきましても、裁判所を通さない行政機関の証券取引等監視委員会等に権限を持たせて、積極的に活用できるようにすべきじゃないかと思いますし、民事責任規定の見直しということにつきましては、民事の一般の不法行為規定との関係が明らかでない部分もございますし、証券取引法全体の構成の中で民事責任規定のついている条文とそうでない条文があったりというアンバランスがございますので、その辺の整備をしていく必要があるというふうに思います。

以上でございます。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

それでは、板谷委員、それから嘉冶委員の順番でお願いいたします。

○ 板谷委員

感想めいたことになって恐縮なんですけれども。討議項目として挙げられている項目、これは多岐にわたっておりまして、それぞれ議論していくことによって市場改革の促進ということが達成されていくんだろうなと。それぞれの中の論点もかなり多くなるので、それなりに大変な仕事になってくるかなというふうに思います。

それで、資料3のところを見ておりまして、タイトルが証券市場の改革促進プログラムの進捗状況ということで、昨年発表があった後、具体的な案が提言されて、かなりの進捗があるというふうに見てとれるわけでございます。ただ、そこで思いますのは、証券市場を改革しようということでこういうプログラムを立てたわけですけれども、このプログラムはこのような形で着実に実行されているんですが、市場の改革そのものはどれぐらい進んできたのかは疑問です。確かにメジャーできないものもたくさんあるんでございますけれども、じゃあ、メジャーできるもので個人がどれだけ市場に参画したかというところにつきましても、期待が強い、高すぎるということかもしれませんけれども、まだだなという部分もあろうかと思います。

したがって、これを進捗させるためにはさまざまなご苦労があるとは思いますが、市場の改革のためのテーマとして、あるいはそのテーマに取り組む手段として、ここで取り上げられている事柄、あるいはそれ以外のことがあるのかどうかを検討する必要があると思います。あるいは、中には着実に進んでるんだけれども、タイミングの問題、教育だとかそこら辺のところは多分時間のかかることなので、すぐ結果を求めても出てこない分野で、しかも同時に極めて重要なことだというふうに思います。そこら辺、やはりものによっては長い目で成果をはかっていかなきゃいけないものもあるのかなというふうな感想を持ちました。それから、何人かの委員の方から市場の信頼性ということがございましたが、この信頼性ということにつきまして極めて重要な事柄であると考えています。我々証券会社ということからしても、いかにして信頼を勝ち得ることができるかという努力は極めて重要なことで、最重要な課題であるというふうには考えております。

ただ、そこで同時に、少しそれも合わせて考えなくてはいけないかなと思っておりますのは、信頼性を高めるための努力、これさまざまな努力あろうかと思います。と同時に、効率性といったことも考えなければいけない。つまり、信頼性は回復するんだけれども、そのことによってそのサービスを提供することの効率性が全く失われるというようなことがあれば、そのサービスを提供するものがいなくなるということがあるかと思います。逆に、効率的だから誰もが提供したい、だけれどもそれは信頼性という観点からそんなことはよっぽどやらん方がいいということもあろうかと思います。信頼性、これが一番大事なことではありますけれども、と同時に効率性の観点をどのように取り込んでいくのかということが必要になってくるのではなかろうかなというふうに思います。この間のバランスをどういうふうにとっていくのかということではなかろうかというふうに考えております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、嘉冶委員、どうぞ。

○ 嘉冶委員

ありがとうございます。今、おっしゃった信頼性ということも大変大事だと思いますが、先ほど田島委員からも一般の普通の投資家にどうやって市場に参加していただくかというお話がございましたので、学者の立場よりは普通の一預金者としての話になってしまうかもしれませんが、申し上げたいことがあります。

これまで話題になった中には、投資家との最後のインターフェイスのところというか、投資家にわたる情報の部分についての視点がまだ不足しているのではないかと思われます。客観的事実として、銀行の預金通帳のほうが、証券に投資した結果届く書類と比べて理解しやすいという事実があります。この問題を論ずる際、背景に大きな問いが1つあります。それは、「証券市場に投資家として参加する人にどれだけの投資家としての能力を求めるのか」という問いです。銀行預金から直接金融の方に資金を移動したいということがあって、銀行になら自主的に預金する人にとって投資先として同じぐらい容易なものだと感じてほしいということがあるなら、もう少し証券に投資した結果届く情報のわかりやすさいということを考えなければいけないのかもしれません。預金通帳でしたらATMに入れてボタンを押せば記帳され、引き出し額と振り込み額と現在の残高が明らかになる。これに対し証券に投資した結果届く情報のほうは、投資家としての情報処理能力・情報管理能力がかなりある人でなければフォローできない面があります。

ただし、この問題は日本だけの問題ではなくて、例えばアメリカでもEU各国でも、やはり銀行から来るマンスリーレポートの方がわかりやすいということは厳然とあるかもしれない。ただし、日本以外の国でやっていないからといって日本でもやらなくてもいいかというと、それはまた考えてみなければいけない問題だと思います。

特に、今の日本においては、政策として間接金融から直接金融の方にもっと資金がまわることが望ましいという考え方が出てきているわけですから、そうであるとしたら、どこまでやるのか。ただし、預金者に対する情報提供はこうしなさいというのは1つの規制ですから、この規制緩和の時期に逆行するのかもしれない。マーケットからわかりやすい情報提供というものが自然に出てこないときに、それを規制というか、行政として促す必要があるのか。それはやはり考えてみるべき問いだと思います。そして、少なくとも今の日本では必要があるという結論が出たのだとしたら、やはり預金通帳と比べてわかりにくい情報という事実が厳然とあることに対して、どういうふうに介入していくということになるのか。それを考えないと、幾ら小学校とか中学校で株式投資・債券投資について習っていても、証券市場への参加者が増えるかどうか。やはり皆さんお忙しいわけですから、仕事や子育てに対するのと同じだけのエネルギーを投資に注ぎ込む余裕のある人、意思のある人というのは少ないと思われます。だから、そういう方たちを市場に呼び込むことが本当に重用だと判断したら、そこまで考えなければいけないときにきているのかもしれません。

○ 神田部会長

ありがとうございました。通帳というのは、日本は、私はよく知りませんけれども、銀行預金。アメリカなどは銀行預金に通帳を使わないですよね。さっきおっしゃったように、マンスリーステートメントと称してステートメントが来るのですけれども。日本人のメンタリティーに合っているかどうかわからないのですけれども、今のお話で、板谷さんにお聞きすべきでしょうが、証券会社だって通帳は禁止されてるわけじゃないので、それはもしそういうニーズがあれば、通帳の方は郵送代もかかりませんし、来てもらってATMに入れて記帳してもらえばいいわけですから、その辺何かできませんかね。

○ 板谷委員

ただ、銀行預金の場合、普通預金、定期預金でございますけれども、種類がある程度限られてますが、証券会社が取り扱っている商品というのは投資信託、あるいは株券にいたしましてもそれぞれ銘柄ごとに異なっているという特徴がございますので、どうしても増えてくる、多くなるというのがあります。

ただ、今の一覧性ということでいいますと、私どもで具体的にやっているサービスで、これパソコンを使ってというお客様になりますけれども、アクセスするといつでもその方がお持ちの資産の残高というものが一覧で出てくるというものがあります。そういう意味では銀行預金、預金通帳にかなり近い仕組にはなってます。ただ、冒頭申し上げましたように、銘柄の数がどうしても多くなりがちですから、それを全体として幾らもっているんだろうかというのは少し工夫が必要になり、もちろんそこは各証券会社やっているかと思いますけれども、通貨別であるだとか、債券なのか投信なのか、あるいは株式なのかとかいうのでグラフのような形で全体像ができるだけお客様に伝わるように努力はしております。ただ、葉書で取引の都度来るとか、そこら辺のところはある程度簡素化されてきてはおりますけれども、法定の書類をお届けしなくちゃいけないといったような限界はまだございます。

○ 嘉治委員

いろいろ理由があるということはよく理解できます。しかし理由があるがゆえに現状のままでいくのか、それとも証券投資を促進するならあと一歩出るのかという、そこのところの選択だと思います。パソコンからのアクセスありますけれども、パソコン上で自分の資産運用についての情報を見ることに対しては、パスワードがあっても今ひとつためらわれるという方も、特に年配の方に多いのではないかと思われます。

それから、銀行から届くマンスリーステートメントについてですが、これも銀行預金通帳ほどでないとしても、証券投資に関して送られてくる情報よりは理解が容易だと思われます。

○ 板谷委員

私の発言の仕方がうまくなくて誤解を受けたかもしれません。私ども基本的には、嘉冶委員がおっしゃられるのと同じ発想を持っておりまして、現状だからそれでいいというふうに思っておりません。こういう場で議論いただくのがいいのか、それ以外の場で具体的にご提案させていただければいいのかとありますけれども、お客様にとって使い勝手のいいものにしなくちゃいけないという問題意識は持っております。社内でも、今の通帳ではありますが、何で通帳にならないんだろうかというのが社員からも指摘を受けたりもしておるわけでございますので、そこについてはどこまでお伝えしなくちゃいけないのか、どこまで簡略化していいのかと、やはりどこでバランスをとるかということにもつながってくるかと思いますけれども、そうした議論はやっていく、ユーザーオリエンテッドな仕組みをつくっていくということを取り組んでいくべきであろうというふうには考えております。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

それでは、島崎委員、どうぞ。

○ 島崎委員

ディスクロージャーの関係で意見申し上げたいと思うんですけれども。先ほど羽藤さんの方からお話ありましたけれども、四半期の業績の開示につきましては、この業績の概況を開示するということについて、多少産業界の方からもいろいろ賛否あったわけですけれども、実際にこの年度の第一四半期を見てみますと、割とスムーズにいったのかなと思いますが。やはり開示の中身、大分まだばらつきもありますし、やはり開示するということになれば何かスタンダードなものが基準が欲しいというようなことにもなってくるんだろうなということで、先ほど齋藤先生がおっしゃった、基準委員会の方で何かそういうガイドライン的なものを検討していくということは必要なのではないのかなと思います。

それで、四半期の開示等々、あるいは決算の発表の早期化で、やはりディスクロージャーの充実・強化ということを発行体としてやっていかなければいけないということではありますけれども。一方、やはりいろいろな有価証券報告書、届出書ですとか、目論見書ですとか、いろいろ投資家に対する企業の経営情報の充実は充実でやっていかなきゃいけませんが、若干情報が過多になってて、見る方から見るとこういう情報が一体何なんだろうかというようなものもやはりあるのではないのかなという気もしますので。やはり、充実させる一方で合理化、このメモにも合理化ということが書いてあるわけですけれども、合理化の方もやはり進めていただく必要があろうかと思います。

それから、例えば目論見書の検討を、今、していただいているということですけれども、中身についていろいろ不具合なところがあると。例えば、開示情報の中でエクイティーストーリーについて将来の業績見通し等については記載できないと。実際に企業が、今、個人投資家のすそ野を広げるということでIRをずっとやってるわけですけれども、当然投資家から見れば、過去の経営状況もさることながら、将来どうなるんだというところに非常に関心があるわけでして、それをもって株式を買ってるということなんで。ミスリーディングな情報だとまた困るわけで、そこのところに何か規制がいると思いますけれども。やはりそういうようなことも目論見書等に入れられるような今日的な見直しを早急にお願いしたいなと思います。

以上です。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

それでは、淵田さん、どうぞ。

○ 淵田委員

先ほどの嘉冶委員の発言とも関連いたしますけれども、やはりアンケート調査を見ましても、証券市場というものに対する関心が非常に低いわけでありまして、ビッグバンから随分時が経ってもマネーフローが変わらないというのは、やはりそういう国民の証券市場に対する意識があまり高いものがないというのがあるかと思います。

アメリカを見ましても、昔から証券市場への個人の参加比率が高かったわけではありません。これが変わる上では、2つ大きなポイントがあったと思うのですね。1つは、預貯金からのシフトという意味では、預貯金に代替するようなローリスク、ローリターンの商品としてのMMFというものが発展したということがあると思います。

それから、もう1つは、個人が能動的に証券市場に参加していったというよりも、知らず知らずのうちに株主になっていった、あるいは投信保有者になっていたという、401Kですとか、あるいはESOPのようなそういうプログラムの存在というものが大きかったと思います。そういうものを経て、だんだん証券市場というものに個人が理解を示すようになったわけです。それプラス投資教育とかそういうことも当然あったかと思います。

最初のMMFに関しましては、1つはやはり日本ではノーリスク、ローリターンという預貯金という商品があったという点がアメリカと異なります。ここはやはりペイオフの全面解禁ですとか、郵貯の見直し等も関連するのかもしれませんけれども、そういうものも相まって進んでいかないとなかなかアメリカのような条件がそろうのは難しいと思います。預貯金とMMFのような預貯金と本来代替性の強い証券市場商品との間で、リスク・リターンの関係に制度上、大きな差異が生じないような枠組みをつくっていくということが必要だということと。

もう1つ、先ほどの話とも関連いたしますけれども、目論見書というものがMMFには必要とされているわけです。本当に預金代替的なものを目指すのであれば、そういうことも含めて整合性を考えていくことが必要なのかもしれません。逆に言えば、預金になぜ目論見書がいらないのかという議論あるかもしれませんけれども、そういう根本的なことも含めまして、何が本当に必要なのかということを先ほどのご意見も踏まえまして考えていかなくてはいけないかなと思っております。

それから、もう1つのESOPですとか401Kとかを通じた個人の証券市場への参加という点ですが、これは401Kの方はそれなりに進んでおりますけれども、ESOP方はいろいろご議論あり、なかなか実現していないわけです。これは引き続き検討の余地はあるのではないかと思います。

あるいは、そちらに時間がかかるとすれば、例えばもしかしたら今すぐもっと積極的にできるかもしれないこととして、事業会社さんにおいて、あるいは金融機関等において、従業員持株の枠組みというものをもっと使っていくという点があります。これは、もしかしたら法令レベルで変えなければならないことはあまりないのかもしれませんが、もしそうであればそうであったで、大森課長からもありましたように、金融庁としてもう少しそういうものの利用を呼びかけるとか、そういう形での旗振り役という機能が期待されるのかもしれないと思います。

あるいは、アメリカにあるもので日本にないものは何でも検討してもいいのではないかという立場に立ちますと、ダイレクトストックパーチェスプランといったような、株式を直接企業から個人が買うといったようなおもしろいプログラムもアメリカではあるようですし。こういうことも検討対象に今後なり得るかなと思っております。

それから、ちょっと別な議論で、自主規制の話ですが、ついでにつけ加えさせていただきます。自主規制が国で規制するよりもいいということの1つの理由としては、やはり専門的な分野だから専門家に任せた方がいいということがよく言われるわけですけれども、私は検査とか監督とか規制とかということは、もうそれ自体が極めて専門的なプロフェッションだと思っておりまして、証券会社で営業をやったことがあるから証券会社の公正を保つような規制をうまくできる人になれるかというと、必ずしもそうではないと思っているのですね。それがまず第一点です。

それから、先ほどちょっと議論もありましたが、ルールの共通化の必要性ということからも自主規制のあり方は再検討しなければならない面があると思います。いろいろな自主規制機関ごとにルールがあることが、創意工夫というレベル、例えば取引手法をこっちのマーケットはこういうやり方、こっちのマーケットはこういうやり方と、そういう創意工夫、アイデアの部分でしたらこれはどんどん市場間競争すればいいと思うんですが、これがこと投資家保護とか不公正取引の取り締まりといった分野にかかわることでしたら、これはやはり国としてきちっとしたものを出していく必要があるかなと思います。その辺、自主規制機関同士で、変な重複とか、あるいは相違といったものがあるとすれば、これは見直していかなくてはいけないのではないかと思います。

それから、もう1つ。昨今における環境変化として、今までの法律の枠組みにおける自主規制という考え方が生まれた時点では、取引所が上場するとか、つまり上場企業になるとか、あるいは店頭登録市場の位置づけが変わっていくといったようなことまで想定されていなかったと思うのですね。そういう環境変化を踏まえると、今の自主規制機関における自主規制といったものを今後どう位置づけていくのかということは当然考えていかなくてはいけないと思っております。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょう。池尾先生、どうぞ。それから、東委員、お願いします。

○ 池尾委員

最近よく思うんですけれども、制度をつくってそれを維持していくのにはコストがかかるんだという厳然たる事実をもっとやはりちゃんと考えないといけないなという気がしておりまして。先ほど、板谷委員が信頼と効率性のトレードオフみたいな形で少しその点に触れられましたけれども。要するに、我々日本の資本市場にやはりコストを十分かけてきてないんじゃないかというふうなイメージ、印象論で非常に申しわけありませんが、どうも何か安普請というイメージがあって。やはりしっかりした制度をつくろうと思うと、もっとリソースをそのために動員しなければいけないということがあると思うんですね。それは、国のレベルでの予算、人員という話もありますが、先ほどから出ている自主規制等を考えた場合も、その取引所の中でそのための人員をどれだけ割いているのかという。

それから、齋藤先生がやられている企業会計基準委員会についても会費を払ってくれる企業が非常に少なくて予算的に苦しいとかいう話を聞いたりしますが。やはり、惜しんでもいいコストは惜しんで効率化しなきゃいけないと思いますが、惜しむべきでないコストというのがあるはずで。私、間接金融と直接金融という言い方嫌いなんですが、銀行制度、金融機関の維持のために、制度という意味の銀行制度の維持のためにやはりすごいお金かけてるわけですね、それは最近の公的資金云々とか言わなくてもいろいろな意味ですごくお金をかけてるわけですが。社会としてですね。それに匹敵するだけのいわばお金を資本市場のためにかけてるかというと、日本社会はやはりかけてないじゃないか。そのことがルールを整備しても、そのルールをちゃんと守ってもらわなきゃいけないわけで、遵守してもらわなければいけないわけで。そういうエンフォースメントというのを考えると、そのための人員、予算というものがどうしても必要で、そういうところをやはりちゃんと手当てしていくということについて正面から取り上げないと、取り上げて詰めていかないと、本当の意味で信頼が得られる市場というふうなことにならないというふうに思うんですね。

そういうことで、金融審議会、そういうのを議論するのかどうかわからないんですけれども、社会として資本市場という公共財を維持するためのコストを負担するという、そういうところについての誰がどれくらい負担していくかというふうなことを含めた検討というのが、やはり絶対必要じゃないかというふうに思いますという感想です。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

それでは、東委員、どうぞ。

○ 東委員

急に細かい話のようになるんですが。先ほどの島崎委員に関連する話なんですが、将来予想に対してどこまで企業として情報提供するかというところの適格性というんでしょうか、適切さというところが、大変気になっております。マーケット環境も少し変化をしてきたこともあって、新規公開の会社の数がだんだんふ増てきている状況であります。そういう中で、先ほど羽藤参事官のお話の検討課題にも入っていたわけですけれども、目論見書自身にその予測数字を入れるということは現状ないわけであります。今後、どういう形でそれを投資家に伝達をするかというところは、非常に重要になってきたのではないかというふうに思います。現実的には、目論見書だけで投資判断をしなさいというのはなかなか大変でありますし、多分既に決められたリスク情報の開示についても、これだけで公開をしてくる会社に対して投資判断をしなさいというのはやや無理があるという気がいたします。

新規公開の会社の受け皿という意味での個人の重要性というのは、実は従来から変わっておりませんし、ここについては今後ともより重要性を増してくるという可能性があると思いますので、予想数字の取扱い及び伝達の方法といいましょうか、そこはかなり急いで議論をする必要があるのではないか、そんな印象を受けております。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

大体皆様方から一通りはご意見伺ったように思いますが、成川委員は何かご意見ございますか。

○ 成川委員

なかなか一個人としてこの資本市場に投資できないというのは、1つはリスク、ローリスク、ローリターンとかハイリスク、ハイリターンといいますが、リスクを今のところリスクを取らなきゃいけないという、ねばならない議論になってますが。そのリスクの社会性といいますか、認識が必ずしも個人に任されてしまって社会的にそのリスクについての共通の尺度といいますか、受けとめ方が必ずしも形成されてないというのがどうも日本の現状のように思うんです。

それに対して、預金の場合であれば、それなりの預金に対して金利ゼロでもいいというご意見もあるようですけれども、ある程度の共通の認識とそれなりの先行きの見通しがある。それに対してなかなかこういう証券市場の先行き見通しなり、あるいはリスクというものについての見通しなり判断が、教育すればできるかというと、必ずしも私はそうではない、この辺をどう考えるか。その辺は池尾先生がご指摘のような、ある程度の信頼性を担保するような仕組みなり社会的な仕組みをちゃんと整備するというのも1つの条件であったり、あるいはそういう不公正取引等についてのしっかりした制度を設けるというのも1つの条件だと思うんですが。

何がそういうリスクについてかなり社会的に共通認識として持つことができるのかというあたりについて、私としてはもう少し考える必要があるかなと思っております。

○ 神田部会長

ありがとうございました。

一通りご意見もいただきまして、大変活発に多様なご意見をいただいたのですけれども、そろそろ時間でもありますが、いかがでしょうか。さらに追加でご発言等はございませんでしょうか。

どうぞ、田島委員。

○ 田島委員

羽藤参事官にお尋ねしたいんですけれども。先ほど有価証券報告書等の記載内容の適切性に関する確認書を添付したのが主要行を含めて21社というふうにおっしゃいましたんですが、これは添付するのが当然だろうと私は思っておりましたので、少ないなという印象だったんですけれども。もしお差し支えなければ、その主要行を除く、純粋に任意で添付されたところが何社でどういった会社なのか教えていただけますでしょうか。

○ 羽藤企業開示参事官

制度としては任意であり、平成16年3月期からということでの早期適用を可能にしたというそういう制度環境がまずございます。主要行に関しては、これは18社でございました。そして、主要行以外では、野村ホールディング、野村証券と、それから山形しあわせ銀行の3者でございました。

○ 田島委員

ありがとうございます。

○ 神田部会長

ついでに便乗して私も。さっきのお話で、私募というのが非常に重要な1つの資金仲介の方法だと思うのですけれども。適格機関投資家ですか、範囲を広げて、たしか新たに20何社とおっしゃったか、が登録されたというふうに伺ったのですけれども。15社ですかね。全体でそうするとこのジャンルに、ここにはまってるジャンルは何社ぐらい、今、日本にあるんですか、ざっとで結構です。

○ 羽藤企業開示参事官

15社というのはベンチャーキャピタルが新しく4社であります。そして、事業会社については、これまで資本金の額で定めておりましたところもございまして、適格機関投資家というのは銀行、それから信用金庫、労働金庫、農林中金等と証券、保険、それからほかに年金資金運用、いろいろございますものですから、トータルで雑駁に申しますと、全体で何社ぐらい……、千数百に及ぶという数字でございます。

○ 神田部会長

ただ、それは金融機関の小さいところも含めてですね。小さいと言っては失礼ですけれども。

○ 羽藤企業開示参事官

そういうところも含めてですね。

○ 神田部会長

私がむしろお聞きしたかったのは、それ以外の、ここに挙がっているような、つまり具体的にはベンチャーキャピタルとか事業法人で、従来は7社ぐらいだったのが、今、22ぐらいになっているということですかね、簡単に言うと。

○ 羽藤企業開示参事官

そういう意味では、はい、そうです。2つございまして、1つは事業会社がそう膨らんだということと、ベンチャーキャピタルが新しく加わったということであります。

○ 神田部会長

どうもありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

では、今日はこのあたりにさせていただいてよろしゅうございますでしょうか。

大変多様なご意見出していただきまして、私も先ほどの嘉冶委員と板谷委員とのやりとりを伺っててちょっと感じたのは、制度として議論するのであれば、個人消費者というか、投資家との接点の部分、インターフェイスとおっしゃいましたけれども、それが本来は銀行預金が幾らで、かつ証券が幾らでと全部ですよね。ですから、そういうニーズがあるならば、サービスとしては日本で言えばファイナンシャルプラナーとかセービングスプラナーと呼ばれているそういうサービスを提供する人が出てくるはずで、これに関係して、アグリゲーションサービスなどというふうに最近言われているものもある、特にインターネット等を通じてなんですけれども。そういうものがもっと日本でも出てきてもいいように思いますけれども。そのあたり、法制度の問題もあるのかもしれませんし、そういった消費者と一番近いところの部分ですね、証券仲介業よりももっと手前の部分というんでしょうか、消費者から見れば、そういう部分の制度あるいは環境整備というのも非常に重要だと思いますので、そういう意味ではもうちょっとブレークダウンしてそういった項目について、アグリゲーションサービスとかそういうものも含めて議論した方がよいように思いました。

大変多様なご意見を出していただきまして、ありがとうございました。今後の進め方ですけれども、いろいろなご意見、それからこの事務局で用意していただいた討議項目案の中でも簡単なものもあれば、非常に難しいものもありますし、小さな項目もあれば、相対的にという意味ですけれども、非常に大きくかつ根本的な項目もあると思いますので、きょう、皆様方からいただきましたご意見も踏まえて、私の方で事務局のお手伝いを経て、ご意見を集約して、この部会で今後どういうテーマからどういう順番で審議していったらいいかということの案をできれば次回お出しして、お諮りしたいというふうに思います。そううまくいくかどうかわかりませんけれども、できるだけベストを尽くしたいと思います。

それで、先ほどちょっとご確認させていただきましたけれども、取引所のあり方に関するワーキンググループは早速再開していただきたいと思います。

そういうことで、そろそろ終了の時間ですので、本日の審議はこれまでとさせていただきたいと思います。

なお、恒例によりまして、この後記者会見を行いまして、本日の会合の模様等につきまして私の方から簡単にご紹介させていただきます。

最後に、事務局の方からご連絡等ありましたら。

○ 大森市場課長

今、部会長おっしゃいましたように、次元の異なるさまざまな問題をご審議いただくことになりますので、よろしくお願いいたします。

本日お伺いしました限りでは、現状認識や基本的な方向感におきましては、委員の皆様方と私ども事務局とそんなに大きな相違はないと思いますので、次回以降、具体的な施策に向けた議論ができるように準備をさせていただきたいと思います。とりあえずディスクロージャーと取引所の2つのワーキングの守備範囲以外の問題については、何回になるかわかりませんが、当部会においてご議論をいただきまして。また、ややその中で専門的な検討を要するというようなことがあれば所要のワーキンググループというようなことになるかもしれませんが、そのような見通しを持っていただければと思います。

次回のこの部会の日程につきましては、部会長ともご相談の上、改めてご連絡させていただきたいと思います。

事務局からは以上でございます。

○ 神田部会長

それでは、以上で散会いたします。

どうもありがとうございました。

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