金融審議会公認会計士制度部会(第1回)議事録

平成13年10月23日
金融庁 総務企画局

○ 片田部会長

予定の時間が参りましたので、ただいまから、金融審議会・公認会計士制度部会の第1回会合を開催いたします。

本日は、ご多用中にもかかわらずご参集いただきまして、ありがとうございます。

私は貝塚会長から公認会計士制度部会長の指名を受けました片田でございます。よろしくお願いいたします。

それではまず、当部会のメンバーについてでありますが、お手元にお配りしております名簿のとおりでありますので、ご参照ください。

本日は初めての会合でございますので、委員及び事務局の方のご紹介をお願いいたします。

○ 細田企業開示参事官

それでは、私、事務局をさせていただきます企業開示参事官の細田でございます。それでは、委員の皆様方をご紹介いたしたいと存じます。

まず委員の皆様方から見て左側でございますが、まず、泉本小夜子委員でございます。

伊藤進一郎委員でございます。

鵜飼克委員でございます。

江頭憲冶郎委員でございます。

奥山章雄委員でございます。

加古宜士委員でございます。

岸田雅雄委員でございます。

佐藤淑子委員でございます。

関哲夫委員でございます。

高橋厚男委員でございます。

中條邦宏委員でございます。

千代田邦夫委員でございます。

鶴島琢夫委員でございます。

富山正次委員でございます。

松本滋夫委員でございます。

森田哲彌委員でございます。

山浦久司委員でございます。

脇田良一委員でございます。

渡辺茂委員はご出席ですが、ちょっと遅れておられるようでございます。

なお、内田士郎委員、中村芳夫委員にもお願いしてございますが、本日はご欠席でございます。

また、本日は貝塚金融審議会会長にもご出席いただいております。

次に、幹事といたしまして、法務省の始関正光民事局参事官にご出席をいただいております。

委員の皆様方につきましては以上でございます。

次に、金融庁のメンバーを紹介させていただきます。

村田金融担当副大臣でございます。

原口総務企画局長でございます。

三國谷総務企画局審議官でございます。

有吉企画課長でございます。

大森調査室長でございます。

そして、私、企業開示参事官の細田でございます。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

それでは、ここで、貝塚金融審議会会長からごあいさつをいただきたいと存じます。

会長、よろしくお願いいたします。

○ 貝塚審議会長

貝塚でございます。

省庁再編で審議会がやや複雑なことになりまして、金融審議会も一応形の上では――元来は公認会計士の審議会は独立していたと私は思っておりますが、金融審議会という名のもとのアンブレラの下に幾つか分科会その他ができまして、その1つとして公認会計士制度部会ができ上がったものと――もし正確でなければ後で事務局で訂正していただきたいと思いますが、そういうことになりまして、したがって私がこの席上に出ているというのはそういう意味で出ているということでございます。

金融審議会では1月の総会におきまして総理大臣と金融庁長官から、「公認会計士制度を取り巻く環境の変化を見据え、公認会計士監査の一層の充実強化及び環境の変化に適合した公認会計士制度の整備に向けて、公認会計士制度の改善に関する事項について審議を求める。」という諮問を受けまして、あわせてこの部会が設置されたということであります。

公認会計士監査は、言うまでもなく、財務諸表の信頼性を担保するための制度として、適正なディスクロージャーを確保するための重要なインフラストラクチャーでございまして、公認会計士監査の一層の充実強化及び環境の変化に適合した公認会計士制度の整備が非常に重要でございます。公認会計士の役割は平たく言えば従来よりも非常に重要になってきていて、簡単に言えば、従来の制度で十分かどうかという問題が当然あり得るわけであります。当部会におきましては専門家の方々にお集まりいただきまして公認会計士制度についてご審議をお願いするということで、片田会長を初め、本日お集まりの皆様をこの部会に属していただく委員等として、ご指名させていただいております。今後のこの部会が円滑に運営されますよう、皆様方のご協力をお願いいたしまして、簡単ではございますが私のごあいさつとさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

続きまして、村田金融担当副大臣からごあいさつをお願いいたします。

○ 村田副大臣

皆さんおはようございます。副大臣の村田でございます。公認会計士制度部会の立ち上げに当たりまして、一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

近年、公認会計士監査を通じた適正なディスクロージャーの確保とともに、公認会計士監査に対する国際的な信頼の向上が大変重要になってきております。また、公認会計士監査に対する社会的な期待の高まりを反映いたしまして、そのニーズは質的にも量的にも拡大しているわけであります。同時に、監査証明業務に関しまして求められる公認会計士の社会的責任も大変厳しいものとなってきております。さらに、監査対象会社におきます企業活動の複雑化や国際化が進む中で会計基準の抜本的な改革が行われておりますことから、監査におけるより実質的かつ高度な判断への要望もますます強くなってきているところであります。このような観点から、金融審議会においては、公認会計士試験制度も含めた公認会計士制度全体について、公認会計士監査の一層の充実強化及び環境の変化に適合した公認会計士制度の整備に向けて、公認会計士制度の改善に関する事項についての審議をお願いすることとなったところであります。

我が国の公認会計士制度は創設以来約50年を経過いたしまして、取り巻く環境も大きく変化してきております。当部会におきましては公認会計士制度全般にわたりまして幅広い観点から皆様の忌憚のないご審議をお願いいたしまして、私のごあいさつといたしたいと思います。ありがとうございました。

○ 片田部会長

どうもありがとうございました。

次に、本部会の部会長代理を指名させていただきたいと存じます。

金融審議会令によりますと、部会長代理は部会長が指名することになっております。私からは加古委員を部会長代理に指名させていただきたいと存じますが、加古先生、いかがでございましょうか。

お引き受けいただきましてありがとうございます。

続きまして、公認会計士制度部会の会議運営に関する事項につきまして、事務局の方からご説明をお願いします。

○ 細田企業開示参事官

初めに、公認会計士制度部会としての議事規則をお決めいただきたいということでございます。お手元に資料があるかと思いますが、その資料の右上の方に「1-1」と番号が振ってあるA 4の1枚紙がございます。これがこれから申し上げたい議事規則の案でございます。

第1条は、会議は部会長が招集する。

第2条は、議長。

第3条は、必要に応じ各機関からの意見を聞くことができるということでございます。

第4条でございますが、これは会議の公開ということでございます。これは金融審議会の総会と同様でございますが、審議の透明性の観点から、原則として会議を公開することができることとしたいということでございます。

第5条でございますが、これも同様の趣旨でございますが、議事録の作成及び公表についてでございます。ここで公表できるということにさせていただきまして、原則として会議終了後できるだけ速やかに議事要旨をインターネットで公表して、一切の議事録は原則として会議の都度、事務的に作業が終了してから――1~2カ月程度かかると思いますが、インターネットで公表することとさせていただきたいということでございます。

第6条でございますが、これはワーキンググループの設置ということでございます。より実務的あるいは専門的な観点からの調査検討を行っていく必要もありますので、この部会にワーキンググループ等を置くことができるということをお決め願えればと存じます。

なお、本日、この第1回目の会合から、公開という扱いにさせて頂いておりますので、申し添えます。

以上、議事規則の案をご説明させていただきました。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

ただいま事務局から説明がありました公認会計士制度部会の会議運営に関する事項につきまして、ご質問、ご意見等はございませんでしょうか。

○ 細田企業開示参事官

追加でご説明いたしますが、本日、この第1回目から公開となっており、報道関係の方も入ってございます。

○ 片田部会長

特にございませんでしょうか。

それでは、公認会計士制度部会の会議運営に関する事項につきましては、ただいま事務局からご説明いただきました議事規則をお認めいただくということでよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

○ 片田部会長

それでは、議事をさらに進めさせていただきます。

本日は、まず事務局の方から、当部会で今後審議を行っていただく公認会計士制度につきまして、その概要やこれまでの検討状況などについてご説明をいただき、それを皆さんの議論の材料にした上で自由にご討議を行っていただきたいというふうに考えております。

では、事務局の方から説明をお願いいたします。

○ 細田企業開示参事官

それではまた私の方から説明させていただきたいと思います。

お手元に資料があと2つございまして、資料1-2、「公認会計士制度の概要」と書かれたものと、その1つ下にややまた厚ぼったいものでございますが、資料1-3と書かれまして、「関係資料」というものがございます。主としてこの資料1-2に基づきましてご説明を行い、適宜1-3の資料の各ページをご紹介しますので、ご覧いただければというふうに存じます。

それでは、まず資料1-2に沿いましてご説明させていただきたいと存じます。

最初でございますので大変基本的なことから入って大変恐縮でございますが、まず1の「公認会計士とは」ということでございます。公認会計士とは、公認会計士法によってその資格が認められた職業専門家でありまして、他人の求めに応じて報酬を得まして、1つは、財務書類の監査証明の業務を行うということでございます。2つ目は、財務書類の調製、財務に関する調査、立案、相談等の業務を行う、こうしたものを業務として行う方が公認会計士でございます。特にマル1の財務書類の監査証明の業務、これにつきましては公認会計士の独占業務ということにされています。

2番目に、「公認会計士等の現況」でございます。

まず、「公認会計士・会計士補」でございますが、この公認会計士あるいは会計士補となる資格を有する者、これは基本的には公認会計士試験の合格者でございます。こういった方々が実際に公認会計士または会計士補となるためには、日本公認会計士協会に備えられた公認会計士名簿等に名前を登録していただく、こういうことで公認会計士になるということでございます。この人数でございますが、これは1-3の「関係資料」の方の表紙をめくっていただいて、一番下にページが打ってございますが、その1ページ目をごらんいただきますと――これは後でご説明いたしますが、制度発足以来の人数が書いておりまして、この一番下の13年9月現在では、公認会計士数は約1万 3,000人強、会計士補の方が 3,600人ほどおられるという状況で、合計しますと約1万 7,000人を超える方々がおられるということでございます。

次に、「監査法人」でございますが、監査法人は、公認会計士法に基づきまして、5人以上の公認会計士が集まって内閣総理大臣の認可を得て設立する法人でございます。監査法人は財務書類の監査証明の業務を主としてございます。先ほどの1.における公認会計士法で言うマル1の業務でございます。なお、この監査証明の業務に支障のない限り、定款に規定すれば先ほど申し上げましたマル2で掲げました財務書類の調製、財務に関する調査、立案、相談の業務を行うことができるし、あるいは、これとは別に、会計士補またはその資格を有する者に対しまして実務補習も行うことができるということでございます。

この監査法人制度といいますのは、経済が発展いたしまして企業の規模が大変拡大しているとか、あるいは多角化しているというような状況におきまして、充実した監査を行い責任ある監査証明を出すために公認会計士が集まって協同組織体としてこの監査法人ができているわけでございますが、こういう組織を通じまして組織的な監査を有効に行って監査水準の向上を図るということを目的としたものでございます。これは昭和41年の公認会計士法の改正によりまして創設されました。これも資料1の数字が出ておるとおりで推移しておるとおりでございますが、現在では 148法人ございます。

ちょっと資料の方を1ページおめくりいただいて2ページ目をごらんいただきますと、監査法人を規模別に記してございます。監査法人を規模によって、 400人以上から、一番上の数字の箱がございますが、 200人~ 399人、 100~ 199人と、ちょっとブランケットを分けて大手からやや小規模なものまで類型しておりますが、最近の傾向としては 400人以上の大手と言われる会計事務所に属する会計士さんの数がやや多くなっていて、どちらかといいますと間の3つの箱の会計事務所に属する会計士の数が少なくなっている、また、逆に、一番下の25人以下の欄の法人数あるいは会計士さんの数が多いという、そういう状況になってございます。ちなみに、大体今は公認会計士の半分の方はこの監査法人に属しておられるということでございます。

それで、資料1-2の概要の方の説明をさらに続けさせていただいて、1ページおめくりいただいて、3番目の「公認会計士試験」でございます。

公認会計士になるためには公認会計士試験に合格する必要がございます。この公認会計士制度は第1次~第3次試験に分かれておりまして、その執行は公認会計士法に基づきまして、公認会計士審査会が行ってございます。

資料の方で言いますと、さらに1ページおめくりいただいて、3ページ目にフローチャートでこの試験の状況を書かせていただきました。

まず第1次試験ですが、これは第2次試験を受けるのに相当な一般的学力を有するかどうかの判定を目的としておりますので、大学卒業者等はこの第1次試験が免除されております。現在では、大半の方は第1次試験を免除されて第2次試験から受け始めるということかと存じます。

次に第2次試験でございますが、この第2次試験は会計士補になるのに必要な専門的学識を有するかどうかを判断することを目的としておりまして、短答式を経て、短答式の合格者が論文式を受けられるという構成になってございます。

この第2次試験に合格いたしますと会計士補となる資格が得られるわけでございます。この会計士補と申しますのは――先ほど数字も出てまいりましたが、公認会計士となるのに必要な技能を修習するために会計士補の名を用いて監査証明業務につきましては公認会計士または監査法人を補助するという位置づけございます。また、会計士補は他人の求めに応じて報酬を得まして、先ほどの2番目にございました財務書類の調製、財務に関する調査、立案、相談を業務として行うことができるということでございます。

第3次試験が最終試験になるわけですが、第2次試験に合格した後は会計士補になるわけですが、1年以上の実務補習――この実務補習はフローチャートの方にも出てまいりますが、協会の実務補習所に通うとか、あるいは認定を受けた監査法人あるいは指導公認会計士の指導を受けるというようなことで実務補習を受けるとともに、2年以上の業務補助あるいは実務従事ということを終えた者が受験できるということでございます。ここで言う業務補助といいますのは会計事務所において業務を行うこと、実務従事は一般企業あるいは官公庁において関連する業務に従事するということでございます。

こういう経歴を経た後に第3次試験の受験資格ができまして、この試験は筆記とさらに口述試験というふうに分かれてございますが、この第3次試験に合格すると公認会計士となる資格を得るということでございます。

4ページ目に各試験の細かい概要を、試験科目等も含めて細かい概要が出ておりますが、ちょっとここは説明を省略させていただきます。

資料の5ページ目には、最近の、「公認会計士試験の実施状況」というものが書かれてございます。第1次試験は、先ほど申しましたように、最近は受験生も減っておりまして、大体はこの第1次試験は免除されているということでございます。次に第2次試験でございますが、受験生も1万 2,000人とかなり多く、合格者は 1,000人を切るぐらいという水準でございますので、合格率はことしでも8%ということで難関ということと言われておりまして、この第2次試験が試験としては中心をなすものであるというふうに言われてございます。それから、第3次試験でございますが、これは、先ほど申しましたように、既に会計士補の資格を得、さらに3年間の実務補習なり業務補助を経た方ということでございますので、合格率も高く、大体6割ぐらいの方が毎回の試験で合格されているという状況でございます。

次に、また説明資料の方で4番に戻っていただきまして、「公認会計士協会」について若干ご説明したいと存じます。

こちらの資料集の方では、1ページめくっていただいて、6ページでございます。公認会計士協会は、公認会計士の品位を保持し、監査業務その他公認会計士業務の改善進歩を図るため、会員の指導、連絡及び監督に関する事務を行う、これが1つの柱でございます。それから、先ほど申しましたが、公認会計士、会計士補等の登録に関する事務も行うということでございます。そして、この日本公認会計士協会は公認会計士法に基づいて設立されている法人でございます。そして、また、公認会計士の登録を行った者は公認会計士協会へ加入する義務があるという、強制加入方式をとってございます。

資料集の6ページの方に、この公認会計士協会の主な業務が書かれてございます。上の2つの箱が、今申しましたとおり、監査業務の審査、指導業務、登録業務とございますが、あと、その他、協会として、ここに書かれておりますように、研修・教育であるとか、綱紀の業務、実務指針の作成、国際業務、あるいは調査研究業務、広報業務と、幅広い業務を行っているところでございます。

次に5.でございますが、「公認会計士の業務」についてご説明いたしたいと存じます。

(1)は、先ほど申しましたとおり、まず、公認会計士は財務書類の監査証明業務を行っているわけでございます。企業は、証券取引法に基づきますディスクロージャー制度、その他の制度によりまして、その財務内容を損益計算書や貸借対照表などの財務諸表として公開することを義務づけられております。そして、株主や一般投資家等はそれらを見ることによりまして、その企業の経営成績あるいは財政状態を知ることができるということになっているわけでございます。公認会計士は、それらの財務諸表の内容が適正であるかどうかについて公平な第三者の立場から監査を行い、その財務諸表が適正であると認めた場合はその旨を証明する、これが監査証明ということの中身でございます。

その監査証明を行う行い方を幾つか分類してみましたものがマル1マル2マル3と書いたものでございます。資料では7ページ目に――同じことでございますが、これを表の形にしてございますので、その表をご参照いただきながらお聞きいただければと存じます。

まず初めに「法定監査」と言われる1群の監査主要グループがございます。これは、その名のとおり、法律の規定によりまして監査が強制されておりまして、会計士が監査すべき事項もその法律の規定によって定められている監査でございます。

基本となりますのがまずアで書きました証券取引法監査でございます。証取法の規定によりまして、証券取引所に株式を上場している会社等が、証券取引法の規定に基づき提出するこれは有価証券報告書や届出書等でございますが、あわせて提出される貸借対照表あるいは損益計算書、その他の財務諸表について監査証明を行うというものでございます。

2つ目が商法監査でございます。これは株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律で、監査特例法とも呼び習わされておりますが、これによりますものでございます。証取法の方は株式等を上場しているというところがポイントになっているのに対しまして、これは会社の規模による切り口ということでございます。資本金が5億円以上であるとか、あるいは負債総額 200億円以上の株式会社につきましては、商法の規定に基づきまして――いずれにしろ株式会社は貸借対照表、損益計算書を作成するわけでございますが、こうした一定規模以上の会社につきましてはさらに公認会計士の監査証明を受けるということがこの商法特例法に規定されておりまして、これに基づいて行っているということでございます。このアとイがかなり大きな業務となってございます。

その他、ウ以下にも幾つかございまして、例えば私立学校法人監査――これは私立学校振興助成法によって規定されたものでございますが、特に補助金の交付を受けた学校法人に対する監査というのが規定されてございます。

さらに、労働組合法によりまして、労働組合が作成する会計報告についても公認会計士の監査を受けるということになってございます。

オでは、政党助成法の規定によりまして、政党交付金の交付を受けた政党に対して必要な事柄についての監査を行うということになってございます。

カでございますが、これは協同組織金融機関につきまして、それぞれ、信用金庫法など、設立根拠法があるわけでございますが、それぞれの法律の規定に基づきまして、一定規模以上の法人が監査を受けるということになってございます。例えば預金等の総額が 500億円以上の信用金庫など、協同組織金融機関のうち一定規模以上のものにつきましては、貸借対照表、損益計算書等につきまして監査を行うということになってございます。

それから、マル2で、「その他の制度監査」というものがございます。これは法律には基づきませんが、それぞれの団体の規約などにおきまして監査を行うべしということが定められているというものでございます。例えば、中小企業投資育成会社につきましては、この会社の事業規定によりまして、投資先については監査を行うべしということになってございます。体育協会加盟団体につきましては、体育協会の規定によりまして、ウの東京工業品取引所商品取引員監査につきましては、この取引所の定款によりまして取引員が監査を受けるということになってございます。そういう一連の制度監査がございます。

それから、さらに、「任意監査」という1群がございます。これは、会社などと監査人の全くの個別の契約に基づきまして、その契約に定められている事項につきまして行う監査ということでございます。これは任意で行われるということでございます。

さらに説明資料のページをめくっていただきまして、監査証明のほかにもう1群の業務として、財務書類の調製、財務に関する調査、立案、相談等の業務を行うということでございます。公認会計士は、他人の求めに応じまして報酬を得まして、公認会計士の名称を用いて、会計・経理の指導あるいは助言またはコンサルティング業務などを行うことができるということでございます。

次に6番目でございますが、ここで若干、「公認会計士制度の沿革」について、簡単にご紹介したいと存じます。こちらの資料では8ページと9ページに年表ふうに事柄を並べてございますので、そちらもご参照いただきながらお聞きいただければと存じます。

まず、公認会計士制度の導入でございます。これは戦後の証券民主化が契機になりまして、昭和23年に証券取引法が制定されたわけですが、ここで経理のディスクロージャーということが言われ、その公開された経理の信頼性を担保するために法定の監査制度を導入しなければいけない、そのためには監査をする主体についても法整備が必要であるということで、23年7月にこの公認会計士法が制定されました。そして、25年3月の証券取引法の改正によりまして、公認会計士による法定監査が実施されることになったわけでございます。これが実際には26年から実施されているということでございます。

その後、監査体制の充実・強化が必要であるという観点から、昭和41年の改正によりまして、監査法人制度が導入されるとともに、公認会計士協会につきまして――従来は社団法人であったわけですが、これが、先ほど申しましたように、公認会計士法に基づく法人になり強制加入ということになったわけでございます。

次に、さらにその監査の充実が図られまして、監査制度を強化する観点から、昭和49年に監査特例法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律が制定されまして、当時は資本金10億円以上の株式会社について公認会計士の監査が義務づけられるということなりまして、56年の改正で、監査対象会社を資本金5億円以上または負債総額 200億円以上ということに拡大されたわけでございます。さらに、52年には連結財務諸表あるいは中間財務諸表に対する監査が行われるようになってございます。

さらに、監査制度の充実・強化でございますか、資料ではさらに次のページに出ておるわけですが、平成9年には公認会計士審査会の方から「会計士監査の充実に向けての提言」が公表されまして、この内容のうち継続的専門研修ですとか、あるいは品質管理レビュー制度などが公認会計士協会により実施されてございます。また、12年6月――昨年でございますが、公認会計士審査会から、監査制度及び試験制度に関して、論点整理が公表されてございます。これにつきましては後ほど若干触れたいと存じます。

さらに、この間に試験制度も若干見直されておりまして、公認会計士試験は昭和24年から第1回の試験が実施され実行されているわけでございますが、例えば、39年に、第3次試験に口述試験が導入され、試験科目に論文が追加され、平成4年には、第2次試験に短答式試験が導入されており、また、論文式試験には選択科目制が導入される等、大きな改正が行われてございます。

次に、「公認会計士の業務についての動向」についてご説明したいと思います。

最近では、やはり、公認会計士に対する量的なニーズが高まってございます。1つは業務監査でございますが、監査業務がかなり増加しているということでございます。これはいろいろございますが、例えば、資料の10ページでございますと、上場会社が非常に増加しているということがうかがわれてございます、あるいは、監査の義務づけ対象が広がっているということでございます。

それから、さらにいろいろ監査対象の業務が増加してございます。例えば、ことしの4月からは独立行政法人に対する監査業務が進められておりますし、あるいは、公益法人に対す

る監査ということもこの申し合わせによりまして進められているということでございます。

さらに、いわゆる監査業務のほかにもあるのでございますが、地方自治体に対する外部監査、これは一定の地方自治体について、監査対象と定めたものにつきまして進められておりますし、あるいは、例えばマザーズ等特定の店頭市場におきましては、四半期の財務情報を開示させ、これに対して公認会計士等が意見表明を行うということになってございます。

さらに、質的な面で申しますと、最近は、企業活動の国際化・複雑化が進められており、また、時価会計の導入等が言われておりますが、会計基準の抜本的な改革が進められる中で、公認会計士に対しましては、より実質的で、かつ、高度な判断が求められるというようになってきてございます。

最後に、お手元の資料集の方で簡単にご説明いたします。お手元の資料集の16ページをごらんいただきますと、先ほどちょっと触れましたが、従来は公認会計士制度につきましては公認会計士審査会で議論をしていただいておりまして、昨年、12年の6月には公認会計士審査会の方で2つの検討報告をいただいております。

1つが、このページと次のページなのですが、審査会の監査制度小委員会の方で1つの報告をいただいております。この16ページと17ページでは、今後の監査制度につきましての報告をいただいて、その要約がここについているわけでございます。例えば、1.「適正公正な監査の確保に向けて」ということでは、例えば(2)では、同一法人による継続的な監査について、一定程度のローテーション等が必要ではないかといった議論がされてございます。同じくこの(5)では、公認会計士の処分のあり方についての議論が行われているところでございます。

それから、2.「公認会計士の質の向上に向けて」ということでは、継続研修とか、あるいは登録制度、資格更新制度の導入等についてということが議論されてございます。

1ページめくっていただきまして、3の(1)の「監査法人制度のあり方」につきましては、有限責任パートナーシップ制等の有限責任形態の導入等についての議論が行われてございます。

さらに、最後の18ページでございますが、審査会では、もう1つ、試験制度につきましての検討も行われておりまして、基本的な考え方としては、公認会計士の質の充実を図りながら公認会計士数をふやすというそういう基本的な視点から、試験科目の見直しや科目合格制の導入の是非について指摘がされているということでございます。

以上、雑駁でございますが、私の方から先にご説明させていただきました。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

ただいまの説明を踏まえまして、今後、当部会の審議を行っていく上で、幅広く、公認会計士制度全般に係る審議事項、視点や基本的な考え方について、ご発言をいただきたいと思います。

今回は初回でございますので、今から40分程度皆さんからご自由なご意見をちょうだいしたいと思っております。よろしくお願いいたします。ご発言なさる方はこの前の名札をお立ていただいて、お名前をおっしゃった上でご発言いただくと大変ありがたいと存じます。どうぞひとつよろしくお願いいたします。

○ 関委員

関でございます。私はここに出ています「公認会計士試験制度のあり方に関する論点整理」のメンバーでこの仕事にあたったわけですが、論点整理をやった上での反省といいますか、どういうことだったのかなということを考えてみますと、これは試験制度だけではありませんが、どうしてもこういう具体的な議論をしていくに当たっては、将来の日本資本市場を見据えて本当にどれぐらいの量的規模の公認会計士が要るのか、それから、将来の資本市場のあり方を見据えて公認会計士の果たす役割からいってどういう資格要件のようなものが要求されているのかと――いわば量と質の問題が、量的なニーズの高まり、質的なニーズの高まりというのがこの書類にも出ているわけですが、これをきちんと整理をしてコンセンサスをつくっておかないと、試験制度1つとってみても、どういう試験制度にするのがいいかということがなかなか詰まってこないなという、そういう反省というか印象を実は強く持っておるわけであります。

したがって、この5ページに書いてありますが、今後、我々が、間接金融から直接金融にどんどんなってきて、資本市場をどんどん活性化していかなければいけないという観点に立って、例えば監査対象のようなものをさらに拡大していくというようなことなども含めて、一体どの程度の量的な規模というものを確保していくのか、しかもその量に要求される質というのは本当にどんなものなのか、何が求められているのか、そして今何が不足しているのかということについて、相当きちんと作業をして皆さんでコンセンサスをつくることが私は

大前提になるのではないかなというふうに思うということを申し上げたいわけであります。

以上です。

○ 片田部会長

ありがとうございます。

ご発言を希望なさる方は名札を立てていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○ 貝塚審議会長

ご発言がなければ――私に発言する資格があるのかどうかはわからないのですが。

外資系の監査法人というのはどの程度あるのでしょうか。要するに、この問題は国際化の話と非常に関係しているわけでして。

○ 細田企業開示参事官

外資系というか、監査法人は協同組織で外資系という言葉はなじみにくいのですが、いわゆる外国の大手と提携しているという意味では、先ほど、大手法人が4つばかりあるということを申し上げましたが、4つともいずれにしろ外国のいわゆる会計法人と提携関係にあるということでございます。

○ 貝塚審議会長

もう1点よろしければ。

CPAの制度と日本の制度はどの程度違うんですかね。要するに、サーティファイド・パブリック・アカウントというアメリカの制度がありますが、それとどういう違いがあるんですかね、資格要件その他で。かなりこれは……、要するに国際的な業務展開であって、日本の監査法人はどの程度活躍できるかということも関係すると思うのですが。

○ 細田企業開示参事官

アメリカでも会計士試験はあるわけでございますが、一般的に言いますと、かなり割合易しくて門戸が広くて、その結果、それほど難しくないということを聞いております。その結果として、アメリカの会計士資格をCPAと言うそうですが、資格を持っている方は30万人を超えておられると。したがって、先ほどの会計士補と会計士を合わせて今1万 7,000人ということと比べますと、結果として、相当多くの方が資格を持っておられるということかと思います。

○ 片田部会長

どうぞご自由にご発言なさってください。

どうぞ、富山委員。

○ 富山委員

会計士協会の富山でございます。

試験制度についてお話がありましたが、現在、会計士業界におきましては、先ほどお話がありましたように業務が急速に拡大してきており、人が足りないという状況が慢性化しております。日本の試験制度は全く変わっていないのですが、最近はアメリカのCPA試験を受けに行って合格した人たちを雇わざるを得ないという異常な状況になっております。このため、試験制度の改革については早めにやっていただけないかと考えています。基本的には、合格者をふやすということと、合格者の質を落とさないということとをどのようにバランスさせるかということだとは思いますが、現在は異常な状況になっているということをお話ししたかった訳です。

○ 片田部会長

奥山委員、どうぞ。

○ 奥山委員

会計士協会の奥山でございます。

私も実は公認会計士審査会で前に検討したときの委員を経験しておりますけれども、それから1年強たったわけですけれども、ぜひお願いを。抜本的な見直しというのは大変結構ですし、その必要性は十分わかりますし、また、私どもも当事者そのものとしてきちんと対応していきたいと思っておりますけれども、やはりスピードも1つは大事だと思います。そこで、現在抱えている問題をやはり解決していくのに、それなりの今の世の中の経済の変化に対するスピードというものをこの公認会計士制度の改革においてもぜひ連動していただきたいということで、なるべく公認会計士制度の改革の議論の進展をぜひスピードを持ってお願いできればと――大変当事者として言うのはおこがましいのですけれども、お願いしたいと思います。

○ 片田部会長

私も全く同感でございます。先ほど説明がございましたように、昨年の6月に公認会計士審査会で2つの問題についての論点整理が出ておる、それできょうの1年数カ月後に再立ち上がりということになっておるわけでございまして、その間に省庁の再編等々さまざまないきさつがあったのはわかるんですけれども、非常にスピードが遅いと、世の中の変化に対応して。だから、皆様方のご協力を得て、今後はひとつ――ご都合もいろいろあるかと思いますが、頻繁に部会の開催をしてスピードを上げていきたいと、こんなふうに部会長としては思っております。

どうぞ、伊藤委員。

○ 伊藤委員

伊藤でございますけれども、今、会長からいろいろお話がございましたけれども、私も実は監査制度小委員会の方の委員をしておりまして、奥山先生ともご一緒に参画をさせていただいたのですけれども、いずれにせよ、ここでいろいろな論点が整理されておりますので、これをぜひすばやくやっていただきたいと。

と申しますのは、企業は現在レジェンドクローズというのが――SEC基準でやっております会社は二十数社ございますけれども、それ以外の会社はみんなレジェンドクローズというのがつけられておりまして、警句というのが要するにつけられていると。これは要するにビッグ4からそういうことがつけられておりますけれども、その原因には、会計基準そのものもございますけれども、やはり監査に対する日本のあり方についての疑問点も出されております。そのために、例えば適正な監査日数の問題もいろいろあるのでございますけれども、我々としましては早くそういったレジェンドクローズが取れるような形でこの監査制度といったものを検討していただきたいと、このことはその委員会の中でも議論をされております。先ほど来皆様方のご意見にもございましたように、ぜひスピードを上げて何とか1年以内には決着をつけるような方向でご検討を賜りたいというふうに思っております。これは産業界としての――きょうは経団連はおりませんけれども、我々の大変な希望でございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

以上です。

○ 片田部会長

ほかにお願いいたします。

○ 富山委員

富山でございます。

実は私も去年の6月まで監査制度小委員会の委員をしておりましたが、あの中で見直しについて方向性が出されたと思います。1つは、法律をどういう方向へ改正するかというテーマです。そしてもう1つは、会計士業界の中でどういうふうに自己規制といいますかセルフ・レグレーションを高めていくかというテーマです。現奥山会長も委員として出席しておりましたので、我々は協会の改革方向性についていろいろ先取りする形でお話ししましたが、多分そこで提案されている事項はほとんど実現できたと考えております。これらについては、今後、会議の中で具体的に説明していきたいと思っています。我々が自らの力でできることは相当やり終えたので、今後は、法律をどういう方向で変えていくかということに焦点を絞れるのではないかと考えております。

○ 片田部会長

山浦先生、どうぞ。

○ 山浦委員

明治大学の山浦でございます。先ほど来お話が出ております監査制度小委員会の取りまとめにあたりました。

本日の資料でいいますと、1-3の16ページ~17ページにあります「監査制度をめぐる問題点と改革の方向」でございます。当時、先ほど伊藤委員からもご紹介がありました、我が国の企業が公表する財務諸表に対してレジェンドがつけられ、この財務諸表は日本の会計基準と日本の監査基準によってつくられ証明された財務諸表であり、その信頼性の程度は国際的な水準から見て事実上劣っているという意味合いともとれるような事態が生じたわけです。実際、その当時の日本の経済あるいは産業界の状況からして、また、今日もずっとその事実は続いているのですけれども、日本の会計制度、監査制度に対しては、国際的な目から見ますと、本当に違った世界の制度であるというふうに見られていたのは事実であります。そういう切迫感の中でこの論点をまとめてきたのですけれども、実は、その後、会計士協会としてはこの論点に沿った独自の改革努力をされてきておりますし、実際にその幾つかの成果が出ております。

ただ、この論点の整理に当たって私が非常に痛感しましたのは、公認会計士制度と監査制度のそれぞれについて、どういったスキームなり基本枠を目指すのか、そのあたりの考え方がもうひとつはっきりしない。海外のいろいろな制度を研究して、これはいいな、これはだめとか、様々の取捨選択をして、結果としてこの小委員会の報告書ができ上がったような次第なのです。時間が迫っておりましてかなり窮屈な状態で書き上げたということもあるのですけれども、やはり公認会計士という資格制度を我が国ではどのように位置づけるのか、また、監査制度への信頼をどのように高めるのか、という基本的な考え方の枠組みが大切です。それから、監査といいましても実はいろいろな意味で監査という言葉が使われています。監査と言いながら、実は保証水準が随分と違った制度が次から次へと取り入れられているというのが現状なのです。財務諸表監査はそれなりに伝統がありますし、国際的な意味でも、保証の水準、つまり監査人が監査証明をして、そしてその財務諸表についてこれこれの保証をします、この程度の信頼性についての保証をしますという、その保証の水準については大体合意されたものがあるのです。しかし、実は日本で導入されているいろいろな意味での監査制度と言われるものの中身というのは何も詰められないままに法律が優先されてそれに実務がくっついていっているというのが現状です。どういった監査をするのか、本当にそれは監査と言えるのかという点の検証がないままに法律あるいはニーズなりが先行しているというような状態なのです。

そういう証明業務に対する社会のニーズがこれから拡大するのは確かですし、それに応じて会計士の方々も業務を拡大して忙しい思いをされているというのはそうなのですけれども、やはり公認会計士という職業を社会の仕組みの中でどうとらえるか。例えば自主規制という形でCPE(継続的職業教育)であるとか品質管理とかの制度を取り入れているのですが、実はこれは一体何を意味するのか。また、資格登録制度というのがアメリカにあります。ヨーロッパでもそれに近いものがあります。それを日本でも取り入れようとするときに、一体どういう目的で資格登録制度を取り入れるのか。これは会計士という資格が監査業務なり証明業務なりを支える職業として社会に認められ、社会の自然のニーズの中でその証明というのがどうしても必要だから、それを信頼性の面で支えるために公認会計士という資格者が要るのであり、会計士自身はそういう社会の要望に対して自分たちは応え得るだけの鍛錬をし、または品質管理もしていると納得してもらえるように努力するための制度的枠組みが資格登録制度なのだ、といった考え方が明確にされるべきなのだと思います。

これまでの日本の会計士行政は、一定の公認会計士法のもとで資格を付与する、そして、その与えられた資格者が一種の独占業務として監査業務を自分たちの仕事として得るという仕組を担保してきました。しかし、会計士は会計士自身の自己努力で社会のそういう付託に応じた能力を開発し、社会の要望に対してその信頼にこたえるだけの自己規制あるいは自己改革を促すといった面がいつの間にか忘れられたのではないか。世界の証明業務に対するニーズ、それから保証水準、そして会計士という資格に対する世界での標準となっていることに対して日本はいつの間にか違う方向に向かうことになり、これが例えばバブルの崩壊のなかで会計士監査に対する批判となってあらわれたわけです。

この点を考えますと、試験制度もそうなのですけれども、一体、公認会計士制度を我々はどのような方向に持っていこうとするのか、それから、行政がこの問題にかかわるにはどういう範囲でかかわるのか、それから、会計士の方々は自分たちの職業として社会から信頼を得るためにどのような自己努力をし、品質管理をするのか、その品質管理や自己努力は一体何のためか。このような基本的な考え方を整理する必要があると思うのです。

公認会計士法というのはこれから先どう改革されていくかというのはまだ見えないのですけれども、社会のニーズにこたえるだけの会計士の資格者を生み出して、そして品質管理を行い、能力を高め、そして社会から信頼される資格にすることが法律の役割と考えます。これは、監査業務に対する独占を担保してあげることを目的とする法律趣旨では絶対にないと思うのです。前回の小委員会の論点整理のときも、その方向性というのが出席されている委員の方々間でどうしてもすれ違ってしまうんですね、それから、その後に論点をめぐっていろいろな方に意見を聞くのですけれども、やはりすれ違いがあります。だから、基本的にこの制度改革の論議をどのような方向に持っていくのかという、その枠組みを最初に明確にすべきではないかという気がいたします。

私の言いたいことがうまくまとまらないのですけれども、いずれにしても、基本的なスキームを決めた上でこの試験制度なり制度改革を考えるべきではないかと思っております。

○ 片田部会長

ありがとうございます。

江頭先生、いかがですか。

○ 江頭委員

私は従来の議論に参加をしておりませんのでピントが狂っているかもしれませんが、先ほど来出ているレジェンド問題につき、感想めいたことを申し上げます。レジェンド問題は困ったことではあるのですが、公認会計士制度を改革することによってどの程度のことができるのかということは1つの問題だと思います。恐らく、公認会計士制度をどうこうしただけでこの問題が解決するわけではない。発行体の問題もあるでしょうし、何よりも、公認会計士制度の受益者であるはずの投資家の問題もある。いいかえると、投資家が公認会計士にどれだけのことを期待してきたかという問題が、日本の社会にはあるのだろうという気がします。つまり、機関投資家等が監査の充実についてどれほど期待してきたか。投資家自身の要求によって自然発生的に監査制度が出てきた英米等とは、最初から違うところがある。日本の投資家の期待と外国の投資家の期待とがずれているところの帰結がレジェンド問題というようなことになってきているのではないかという気がいたしております。

ですから、これは日本社会全体の問題であって、公認会計士制度だけをいじって問題が解決するとは思いません。もちろん公認会計士制度の改善によってできることがあれば努力する、そういう話ではないかと先ほど来の議論を聞いておりました。

○ 片田部会長

加古先生、いかがでございますか。

○ 加古委員

私は、昨年、「公認会計士試験制度のあり方に関する論点整理」の委員の1人としてその会議に参加させていただきましたけれども、この会計士制度の見直しというのはいろいろな局面を含んでおりまして、多くの困難性を伴うわけであります。とりわけ重要なのは、公認会計士の数が諸外国に比べて絶対的に少ないこと、したがって、外形的にも、日本の会計監査というのは必ずしも十分な時間も人手もかけていないのではないかというような――先ほどレジェンドの問題がありましたけれども、その背景にはそういった数の上で我が国の監査に投入される人数が劣っているということがあからさまに指摘されているのではないかと思うのです。

では、どのような格好で公認会計士の数をふやしていくか、こうなりますとさらに一層問題は難しくなるわけでありまして、幸い今のところ毎年 1,000人程度の受験者がふえております。昨年は1万 2,000人をついに超えました。その意味では大変ありがたいことではありますけれども、これがこのまま続くかどうかについては保証の限りではないわけです。受験者にとってみれば、公認会計士業界というものがいかに魅力的なものであるかということが目に見える必要があるわけです。先ほども産業界の方からご発言がありましたけれども、そのレジェンドを回避するために、例えば監査報酬を大幅に引き上げる用意があるのかどうかなどについても、率直に再検討してみる必要があるのではないかというふうに思います。

それから、試験それ自体が、最近ではこれに対する予備校ができまして、大変重箱の隅を突いたような細かい問題などが出題されているわけです。会計士の試験を実施する側といたしましては、その予備校のペースに巻き込まれないようにこれに対抗する問題をつくっていかなければならないわけですけれども、それがなかなか難しいわけで、いわばこれからの会計士の資質の向上のためには、覚える会計ではなくて、考える会計を受験時代に十分やっておく必要があるわけです。そのような考える会計を誘導するような問題をどうつくっていったらいいのかということが一方で非常に大きな問題になっているわけです。試験の科目自体が従来どおりでいいのかどうかなどについてもこれから再検討していかなければならないだろうと思います。

以上、人数をふやすためにはどうしたらいいかということについて抜本的に考える必要があるということ、それから、試験の科目を含めて、優れた資質、基礎学力を培うのに適合する試験制度のあり方について、これからさらに勉強していく必要があるのではないかなというふうに感じております。

以上です。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

今しばらく時間がございますが、岸田先生、いかがでございますか。

○ 岸田委員

私も、昨年、監査制度についてお手伝いさせていただいたことがございますけれども、先ほど伊藤委員の方から会計士の数をふやすべきだというお話がございましたが、私もそれに賛成でございます。というのは、必ずしも証券投資家だけの問題ではなくて、12ページに書いてございますように、私ども国立大学の方も独立行政法人というのに2年か3年後になるという予定でございますので、そうすると、会計監査の需要が非常に増加するということは間違いないわけでございまして、そういう意味でもぜひ早く制度改革をしていただきたいと思います。

それから、今、加古委員からございました会計士の数、試験でございますけれども、大体1万 2,000人ぐらいで 900人と、法律の方では司法試験というのがございますけれども、司法試験は大体3万人で 1,000人、合格者の数では大体同じなのですけれども、受験者の数は司法試験は3倍でございます。加古委員のお話でございますと毎年 1,000人ぐらいだというふうにおっしゃいましたけれども、ただ、これは平成元年からすると倍になっているわけですね、10年で大体倍になっていますので、需要がふえて、しかも若い人に魅力がふえれば受験者の数も増大するのではないかというふうに思いますので、私としてはぜひこの審議を早めていただきまして、公認会計士の数をふやしていただきたいというふうに思っております。

以上でございます。

○ 片田部会長

佐藤委員、いかがですか。

○ 佐藤委員

私は前回の議論の方にも参加しておりませんし、また、このような諸先輩方の前で発言するのはちょっとおこがましいのですけれども、今回委員として参加させていただくに当たりまして自分なりに問題意識を整理しましたので、その点につきましてお話ししたいと思います。

私が携わっておりますインベスター・リレーションズ、IRという投資家向けの広報の世界では、財務諸表を中心とするディスクロージャー資料に加えて企業が自主的にさまざまな材料をつくり、それを情報発信することが活動の主体となります。したがいまして、そのディスクロージャー資料における公正性の担保という点で公認会計士の方々が独立性、公正性を確保するというのは大変重要なことだと思いますので、皆様方と一緒に議論をしていきたいと思っております。

ただ、昨今、スピードというものが先ほどのお話にもありましたように重視されておりまして、四半期ごとの情報開示を取り入れる企業もございますし、決算短信等につきましては、特に四半期ですけれども、監査をしないままに発表され、投資家、アナリストの方がそれを利用するというようなことが目立っております。その公正性の担保という意味で、この論点の中にも監査の日数を短縮するというようなことがございましたが、重点的に考えていきたいというふうに思っております。

それから、自主的な情報開示につきましては、それに監査を取り入れるかどうかというのはまだまだこれからの課題ではないかと思いますけれども、例えばセグメントの情報などにつきましてもしも監査が必要であるとすれば、その可能性などについて探ってまいりたいと思います。

最後に、最近、上場会社の中にベンチャー企業と呼ばれる比較的社歴の浅い会社が増えてまいりましたが、そのディスクロージャー資料が公正であるか否か、また、上場の際に公認会計士さん等がさまざまなコンサルティングを行っておりますが、そのコンサルティング業務と監査の区分、独立性の担保、このあたりも問題として考えるべきではないかというふうに思っております。

以上でございます。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

あとお一人ぐらい。

○ 泉本委員

泉本です。私は公認会計士の代表として今回初めて参加させていただきました。

前回からの委員の方たちのご意見等を伺いまして、ちょっととんちんかんで申しわけないかもしれないのですが、1つは、公認会計士は確かに人が足りないのですが、私たち1万3千人、会計士補まで入れますと1万6千人ほどいますけれども、その中で実際に監査している者が半分ぐらいなのですね。半分の人たちは個人で開業されていまして、税務だけ、あるいは監査も一、二社という方も大半でございます。そういうことで、会計士が足りないという議論をする前に、本当に監査でどれだけ人が必要で、どれだけ会計士が稼動しているのかという問題が少し見落とされているかなということで、ご報告しておきたいと思います。

それから、あと、監査日数、時間等をふやす、圧倒的に足りないということなのですが、先ほど加古先生から、魅力ある会計士業界ということで、監査報酬が上げられるのかというお話もあったのですが、現場にいて自分でもわかりますけれども、企業は、仕事はしてほしい、だけど監査報酬は上げてほしくないという、こういう純然たる法則がございまして、この中で監査にどれだけ時間をふやし報酬をふやしていくかということは物すごい大きな壁がありまして、そこのところも検討いただかないと進まない壁かなという気がいたします。

会計士制度、会計士法にはいろいろ問題はありますけれども、ちょっと前後して申しわけないのですが、レジェンドの問題も、監査法人等においてはそれなりにちゃんと、こういう自己研修ですとか品質保証、品質管理の問題は、ずっと昔からやっていたのですね。ある特定のところで特定の事故が立て続けにあったというそういう背景のもとに日本の監査は信用できないという、私たち現場にいる者にとっては物すごく屈辱的なレジェンドがついてしまったわけです。ここ2年ぐらいの間にすべて――すべてと申しますか、何%かわかりませんが、会計士協会全体としてこれを解決しようという努力をしてきたわけでして、そういう問題も踏まえまして今後ももう少し論点整理をし直してということを皆さんおっしゃっていまして、それは大いに賛成です。こういう現場のそういう実態のところも、代表で参りましたので、もう少し意見をこれから申し上げながら整理していけたらというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

副大臣あるいは金融庁からございませんか。

○ 村田副大臣

それでは、1点だけ。

スピードという話がありましたのですが、司法制度改革もそうでありますけれども、税理士も20年来の法律を改正しまして、こういう士族に対しましていろいろな改正がなされてきておりまして、そういう意味では、ご指摘がありましたように、どうかひとつこの問題についてのご議論の進め方の――今、スピードアップするという話でございましたけれども、できるだけ早く進めていただければいいのではないかというふうに思っております。

○ 片田部会長

ありがとうございました。

いろいろと貴重なご意見をいただきまして、本当にありがとうございました。

今後、当部会では、本日のご議論も踏まえまして、我が国のディスクロージャー制度の重要なインフラの1つでありますこの公認会計士制度につきまして、幅広く、かつ、皆様のご意見にもございますように、スピードを上げて検討を進めてまいりたいというふうに考えております。

こうした検討に当たりましてはより実務的かつ専門的な観点から調査検討を行っていく必要があると思いますので、先ほどご承認いただきました議事規則によりまして、この部会にワーキンググループを設置することにいたしたいと考えております。

そこで、公認会計士制度を、公認会計士監査制度及びその担い手である公認会計士の試験制度の大きく2つの切り口からご審議をいただくものとして、それぞれワーキンググループを設置して具体的、専門的な検討を行っていきたいと考えておりますが、よろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

○ 片田部会長

それでは、原則として委員の皆様には設置されます2つのワーキンググループのいずれかに所属していただきご審議に参加していただければと考えておりますが、ワーキンググループの人選や実際にどう運営するかという細目の問題につきましては、恐縮ですが私にご一任いただければと思っております。

そこで、早速でございますが、2つのワーキンググループにつきまして、あらかじめ、監査制度ワーキンググループの座長を江頭委員に、試験制度ワーキンググループの座長を加古委員にお願いすることにいたしたいと存じます。ご多忙中のところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。

また、各ワーキンググループのメンバーにつきましてはあらかじめ私の方で座長と相談をさせていただいておりますので、本日の会議終了後、事務局から配布させていただきます。

今後の開催予定につきましては、事務局からできるだけ早期に皆様にご連絡させていただきますので、ぜひご出席くださいますようよろしくお願いいたします。

それでは、終了の時間でございますので、本日の審議はこれにて終わらせていただきます。

なお、この後記者会見を行いまして、本日の当部会の模様につきまして話をさせていただきます。何かご質問、ご発言はございませんでしょうか。

ございませんようでしたら、以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。

どうもありがとうございました。ご苦労さまでございました。

(以上)

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