金融審議会総会(第9回)議事録

日時: 平成12年12月21日(木)10時02分~11時52分

場所: 中央合同庁舎第四号館(4階)共用第1特別会議室

○ 貝塚会長

それでは、時間がまいりましたので、ただいまから、第9回金融審議会総会を開催いたします。

本日は、年末御多忙のところ、皆様、御参集くださいまして、ありがとうございます。

本日の議事を始めますが、本日は、各部会より、金融庁移管後これまでに御検討いただいてきた事項について御報告をいただきたいと思います。

第一部会の方での審議の成果につきましては、蝋山第一部会長から御報告いただきます。どうぞよろしく。

○ 蝋山第一部会長

第一部会長の蝋山です。

第一部会は、二つテーマを取り上げました。銀行業における異業種の参入の問題、あるいは主要株主の異動の問題、これをどう考えるか。それから、銀行に新しいビジネス・モデルが導入される。そういう問題と規制緩和の絡みに関してどう考えるか。こういう二つのテーマを与えられまして、9月12日以降、神田委員を座長とするワーキング・グループでの議論も含めまして、先週の12月15日まで合計14回の審議を行いました。議論の場には、実務界からのオブザーバーの方にも御参加いただきました。そして、そのワーキング・グループの議論を踏まえまして、報告を踏まえまして、15日に我々の部会としての報告を総会の場に提出できるということになったわけであります。

まず、銀行業における異業種の参入の問題に関しましては、基本的に異業種の銀行業参入の動きということは評価すべきことであると、こういう認識の下に議論をいたしました。その理由としては、銀行業に新しいビジネス・モデルが導入されることによって銀行業の競争が活発になる。金融市場の活性化も結果されるだろうし、当然利用者の利便の向上にもつながる、こういう理由で異業種の銀行業参入の動きというのは基本的には評価すべきと、こういう共通認識の下に議論をしたわけであります。

そして一方では、バーゼル銀行監督委員会が実効的な銀行監督のためのコア・プリンシプルといったものを提言しておりますし、また、主要な各国においてこうした銀行業の異業種からの参入について、それなりのルールがございます。株主に対するルールがございます。そういうルールを参考としつつ、銀行経営の健全性の確保ということを狙いとして議論をしてまいりました。その結果、銀行株主の一定割合以上を保有する株主を「主要株主」と位置づけまして、当局の適正な監督対象とすることが適当であるという結論に至りました。細かな内容については、後ほど報告を読み上げさせていただきます。

このようなルールの整備は、銀行あるいは銀行業に対する信頼を高めるというふうに期待されます。ただし、余りがちがちにルールを整備いたしまして、異業種から銀行業へ入ってくるという意欲が削がれるということでは困るわけでありまして、こういう点は十分配慮したつもりであります。

次に、二つ目の銀行の新たなビジネス・モデルと規制緩和という問題に関しましては、銀行業は日々変貌しようとしております。例えばIT化の促進。そのIT化促進の中で消費者保護をどう考えるか。あるいは銀行の支店というものに対する今まで認可制でありましたけど、それを見直す。あるいは銀行の業務範囲を弾力化する。こういう問題を幅広く議論を行い、一定の方向性を個別のテーマについて見出すに至りました。

また、こうした議論の中には、横断的な金融サービスのあり方を今後どう考えるかといった、今後の検討を行うべき課題ということも指摘されたわけであります。

銀行に続きまして、保険業についても集中的な議論を、審議を行いました。そして、銀行業における主要な株主に関するルール整備や、業務範囲といったものに対する問題の所在と処方箋というものは、保険会社についてもほぼ適用可能であるというふうに考えるに至りました。

もう一つ重要な金融サービス業には証券業がございますが、証券業については、株主をチェックする何らかの仕組みが必要であるという意見もありましたが、これに関しては、証券業が登録制であるということを踏まえまして、今後一層の検討を望むということにさせていただきたく、部会の報告はまとまっております。

ともあれ、部会の報告で具体的な提言を行っている事柄につきましては、金融庁において、その速やかな実現というものを望みたいというふうに思います。

最後に、部会長としての私の立場から、3カ月間、非常に精力的な審議をお願いいたしましたこの第一部会の委員、さらにはワーキング・グループのメンバー各位に対してお礼を申し上げたく思います。

以上であります。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

それでは、事務局の方からこの文章を読んでいただきたいと思います。

○ 事務局

それでは、読み上げさせていただきます。総会資料9-1「金融審議会第一部会報告」でございます。1枚目に目次がございますが、2枚おめくりいただきまして、ページ1でございます。


  • 1.はじめに

    • (1)「IT革命」の進展など金融取引のインフラの変化等を背景として、事業会社等のいわゆる異業種による銀行業への参入の動きが始まり、また、インターネット専業銀行に代表される新たな銀行ビジネス・モデルの構築の動きが加速している。

      このような動きは、資本形態、業務形態、店舗形態などの各面において新たな要素を含み、従来の伝統的な銀行業においては想定する必要がなかった様々な観点から改めて検討すべき論点を提示している。

      金融再生委員会・金融庁は、こうした新たな形態の銀行業に対する現在の銀行法の下での免許審査・監督上の対応として、本年8月3日、「異業種による銀行業参入等新たな形態の銀行業に対する免許審査・監督上の対応(運用上の指針)」を策定し、既に新たな銀行がこの指針に基づき営業を開始している。

      本指針においては、現行法令では対応できない事項として、既存銀行の主要株主の変更を事前に把握し、銀行の健全性に支障をもたらす不適格な株主を排除し得る権限を監督当局に付与すること等について、金融審議会等において早急に検討を行うことが適当との考え方が示され、併せて、銀行業の新たな動きに対応した銀行の他業禁止等の規制の緩和についても、金融審議会等において検討を行うべきこととされた。

    • (2)8月4日の金融審議会総会において、金融再生委員会、金融庁長官及び大蔵大臣より、「経済・金融を取り巻く環境の変化を見据え、安定的で活力ある金融システムの構築及び金融市場の効率性・公正性の確保に向けて、金融に関する制度の改善に関する事項について、審議を求める」との諮問がなされるとともに、第一部会が設置され、異業種参入に伴う銀行法等の整備や他業禁止の緩和等について、次期通常国会での法制化を目指した事項を中心に審議を行うこととされた。

      第一部会では、9月以降、有識者等からのヒアリングや委員相互の議論を行い、「異業種の銀行業参入の動きについては基本的に評価すべきこと」との共通認識を確認した上で、個別の問題点の洗出しを行った。そして、専門的・実務的な観点から検討を行うためにワーキング・グループを設置し掘り下げた議論を重ねた。

      部会とワーキング・グループを合わせた開催回数は、合同会合2回を含め14回に及んだ。この間、メンバーである委員はもちろん、オブザーバーとしての参加者からも多くの有意義な意見が提示された。

      この第一部会報告は、ワーキング・グループの議論において示された基本的な枠組みに立脚しつつ、本年9月から12月までに進めてきた検討結果をとりまとめたものである。

  • 2.全体的な展望

    • (1)昨今、いわゆる異業種による銀行業への参入の動きが本格化するとともに、インターネット専業銀行が出現し、コンビニエンス・ストア等の店舗網にATMを設置し主に決済サービスの提供を行う業務形態を設立する動きが本格化するなど、これまでになかった新たな形態の銀行業が登場している。

      これらは、既存銀行の経営効率化の動きとともに、銀行業の新しいビジネス・モデルを追求するものである。そして、このような新たなビジネス・モデルが追求されるひとつの大きな理由は、金融サービスの提供者が異業種として銀行業へ参入することにより顧客基盤や店舗ネットワークの共有を通じてシナジー効果を得ることが期待できるからである。

      このような銀行業の業務形態の変化の背景には、インターネットの普及・拡大等金融取引のインフラの発達や顧客である国民のライフスタイルの変化等があると考えられる。

      いずれにせよ、このような最近の動きは、21世紀に向けた金融の新たな展望の中で、顧客(消費者)への優れた金融サービスの提供、決済コストの低下によるeコマースの促進、さらには金融業の活性化にもつながるものであり、基本的に歓迎すべきことである。

    • (2)以上のように、異業種が銀行業へ参入するなどの新しい動きは積極的に評価すべきであるが、同時に、銀行経営の健全性確保の観点から、このような動きにマッチした適切なルール整備も必要である。その場合、単に事業会社を念頭に置いた「異業種」ということだけでなく、個人等であっても、銀行の経営に影響力を及ぼし得る者(典型的には一定以上の株式を保有する者)が不当に影響力を行使することがあるとすれば、それをどのように防止するかが主要な課題となる。

      すなわち、バーゼル銀行監督委員会の「実効的な銀行監督のためのコア・プリンシプル」や主要各国の事例を踏まえ、銀行と主要株主との取引ひいては株主資格そのものをチェックする仕組みを構築することが必要である。そして、このような株主の適格性の問題は、その趣旨から既存銀行の既存株主についても基本的には異なるものではないと考えられる。

      また、インターネット専業銀行などの場合、顧客との非対面取引が行われるので、このような場合における適切な商品情報の提供など消費者保護の側面に留意すべきである。

    • (3)銀行業が新しいタイプの金融サービス業に変貌しつつある中で、銀行の業務範囲や店舗等に関する規制については、銀行経営の健全性の確保や顧客利便の向上、預金者保護等の観点を踏まえ、これからの新しい時代に適合したあり方を検討する必要がある。

      銀行の他業禁止項目の見直しなどの規制緩和や銀行グループとしての業務範囲の検討に際しては、銀行業務に専念することによる効率性の発揮、利益相反取引の防止、他業の有するリスク回避などの他業禁止規定の趣旨を踏まえつつ、ワンストップ・サービスの提供等による顧客利便の向上、銀行業の収益源の多様化、さらには銀行の国際競争力の強化といった観点から今日的な見直しを行うことが適当である。

      また、消費者保護の点に留意しつつ、現在、金融取引に際して、顧客に対する書面の交付を義務付けている規制については、電子的手段で代替することを推進するなどの政策的支援を積極的に実施すべきである。

    • (4)保険業についても、銀行業と同様、インターネット取引の発達などビジネス・モデルに変化が見られ、保険株式会社における株主の状況を踏まえると、基本的には銀行と同様のチェックの仕組みを検討することが適当である。その検討に際しては、顧客(=保険契約者)との契約期間が長期に及ぶことやリスクを引き受けるビジネスであることに加え、契約内容が原則として変更されない等の保険業務の特質を踏まえる必要がある。

  • 3.銀行等の主要株主に関するルール整備

    • (1)ルール整備の必要性

      銀行については、その業務の公共性に鑑み、新たに営業を開始する場合には免許を取得する義務が課されており、その審査に際して免許申請者の財産的基礎・人的構成等をチェックし得る仕組みとなっている。

      これに対して、既存銀行の株式を取得して銀行業に参入する場合には、発行済株式の50%を超える株式が一の会社により取得される場合に届出が行われるとの規定があるのみである。

      このような現状を踏まえると、銀行経営の健全性の観点から、新規に免許を取得して銀行業を開始する場合にとどまらず、既存銀行の相当程度の株式を取得して銀行経営に関与しようとする株主については、法人であれ個人であれ、取得時及び取得後を通じた行政による適切なチェックの仕組みを整えることが必要と判断される。この仕組みは、個々の規制の間の相互関連性に留意して、全体としてバランスのとれた体系として構築すべきである。

      このことは、銀行業への新規参入のルールの透明化にも資するものであり、金融市場の活性化を促進する効果が期待される。さらに、銀行機能を悪用することを意図する不適格な者を排除することにより、金融業への信認、ひいては金融システムの安定性の向上にも役立つものである。

    • (2)チェックの対象となる株主の範囲

      以上の趣旨より、当局に株主権の行使や人的関係により銀行経営に実質的影響を及ぼし得る株主を何らかのチェックの対象とする権限を与えることが適当である。

      我が国における銀行の株主構造の実態を見ると、一の経済主体(単体)で議決権の5%を超える株式保有者の数は極めて限られていることから、その株主は銀行経営に相応の影響力を及ぼし得るものと考えられる。従って、単体で5%超保有の株主から行政によるチェックの対象とし、株式取得について当該株主に届出を義務付けることが適当と判断される。

      5%超の株式保有者であるが、以下に述べる「主要株主」には当たらない株主については、事業会社等の銀行業への参入意欲を阻害しないことなどの観点から、行政の関与は銀行経営に対する影響力の有無の確認等にとどめることが望ましい。

      次に、企業会計の実質影響力基準による株主(法人のみならず個人等を含む単体又はグループの株主で20%以上の株式を保有する者。ただし、人的な関係や融資等の取引関係等を通じて重要な影響を与えることができる場合は15%以上等。)になろうとする者については、銀行の経営に対する実質的な影響力に着目して、「主要株主」と位置付け、株式取得に関し認可制とした上で、行政による適切な監督の対象とすることが適当である。

      なお、5%超保有の株主が、上記の実質影響力基準に照らして、実質影響力ありと判断される場合には、「主要株主」として認可の対象となる。

    • (3)主要株主及び銀行の取締役に求められる適格性

      公共性の強い銀行業の主要株主の適格性の審査基準の作成に際しては、その明確化に留意することとし、諸外国の例(英国のフィット・アンド・プロパー原則等)も参考にしつつ、主要株主自身が反社会性や公序良俗などの観点から問題がないか、主要株主の財務面の健全性(株式取得に係る資金調達も含む)の観点から問題がないか、経営方針(株式取得の意図も含む)が銀行の健全性を阻害するものでないか等を重視すべきであると考えられる。

      また、主要株主だけでなく、一般に銀行の取締役等についても、経営に影響力を有する者との観点から、主要株主としての適格性と類似の適格性を有することが求められる。

    • (4)株式保有者に対する報告徴求・検査

      銀行株式の保有者に対する報告徴求・検査のあり方についても、実質的影響力の度合いに応じた仕組みとすべきである。

      すなわち、単に5%超保有の株主に対する報告徴求は上述の実質的影響力の有無の確認等の目的に限定した書面によるチェックにとどめ、立入検査は書面のみではどうしても実質的影響力の有無を認定することが困難な場合などに限って行い得ることとすることが望ましい。

      次に、主要株主に求める報告については、定期的報告と特別な報告とを区別し、定期的報告については、株主の負担軽減にも配慮し、有価証券報告書などのディスクロージャー資料を基本とし、それに銀行との取引関係を示す書類などを若干加えた程度とすべきである。特別な報告は、株主が子銀行等に対して不当な影響力行使を行うことなどにより、子銀行等の経営の健全性が損なわれるおそれがある場合等に限って当該個別事案に即した報告を徴求することとするのが適当である。

      主要株主に対する立入検査についても、上記の特別な報告の徴求と同様の趣旨の下に、特に必要な場合に限り必要な限度で検査を実施し得ることとするのが適当である。

      なお、以上のような行政の関与を適切に実施し得るような当局の体制整備が必要であることは言うまでもない。

      以上の報告徴求や立入検査により不適格と認定された主要株主に対しては、株式保有に関する認可の取消しを行うなど所要の措置を講じることとするのが適当である。

    • (5)主要株主との取引関係など

      銀行と主要株主との関係は、単に株式保有を通じた資本関係にとどまらず、人的関係や融資関係、営業基盤の共有関係など多様なものであり得る。例えば、銀行とその主要株主が営業基盤を共有することはシナジー効果の発揮の観点からは望ましい。だが反面、主要株主の経営悪化が子銀行等の営業基盤を危うくする可能性もあり、リスク遮断に留意する必要がある。

      したがって、銀行が主要株主に対して行う融資などの取引については、現行の大口信用供与規制やアームズ・レングス・ルールなどを基本にしつつ、主要株主が不当な影響力を行使することによる「機関銀行化」の弊害を防止する等の観点から、主要株主に対する信用供与等について適正な量的規制を設定するなどの追加的な措置につき検討することが適当である。

      また、人的関係についても、現行の役員の兼職制限を遵守することにより不適切な関係が生ずる余地を減らすことが適当である。

    • (6)銀行経営悪化時の対応

      経営が悪化し、債務超過に陥るとか、預金払戻しの停止を迫られるおそれが大きいなど回復の見込みがなくなった銀行は、極力早期に破綻処理手続に入ることが適切である。しかし、その段階に至らず、何らかの支援措置により銀行経営が改善することが見込まれる場合には、主要株主にその支援を求めることが適当か否かがひとつの論点となる。これについては、株主有限責任の原則との関係に留意しなければならない。

      諸外国の例を見ると、例えば、英国ではコンフォート・レターという手法で一定の株主に対しあらかじめ支援の意思の確認を求めている。

      また、銀行の破綻はセーフティネットの存在により、預金者全体の負担やさらには公的な負担に結びつく可能性があることに留意する必要がある。

      したがって、特に50%超保有の主要株主の場合には、単独で銀行の支配力を有しているのであるから、銀行持株会社に対する現行法上の規定を参照し、銀行経営の健全性確保のための何らかの措置を求めることが考えられる。

      それ以下の主要株主については、原則として、特段の措置は求めないが、銀行と実質的に一体となって経営が行われているような場合には、何らかの協力を求めることについて検討することが適当である。ただし、その場合においても、異業種からの参入に対する障壁とならないよう留意する必要がある。

    • (7)罰則

      諸外国の例も参考にしつつ、法令に違反して主要株主となった場合、あるいは、虚偽報告及び検査妨害等に対しては、罰則を科すことが必要である。

    • (8)保険会社に係るルール整備

      保険会社については、取り扱う金融商品の商品性や決済システムへの関与の度合いにおいて銀行と違いはあるが、両者は営業免許制・業務範囲制限などに関する規制体系において共通したものが存在すること、破綻の際のセーフティネットの存在により、契約者全体の負担やさらには公的な負担に結びつく可能性があること、海外における主要株主規制を見ても基本的には類似していること、主要株主に対する規制の国際的なルールとして保険監督者国際機構の「保険コア・プリンシプル」が存在することなどから、保険会社の株式保有者に関するルールは基本的には銀行と同様のものとすることが適当である。なお、保険相互会社については、総代等にどの程度適格性原則を義務付けることが適当かについて検討すべきである。

    • (9)証券会社に係るルール整備

      証券会社については、登録制となっているなど銀行・保険会社とは異なる面はあるものの、預託された顧客資産の返還に備えた投資者保護基金制度が存在することや証券監督者国際機構が「証券規制の目的と原則」を明示していることを踏まえ、規制体系の相違点に留意しつつ、主要な株主、取締役の適格性に係るチェックのあり方を今後検討することが適当である。

  • 4 .銀行業等における新たなビジネス・モデルと規制緩和

    • (1)新しい時代における銀行等の業務の考え方

      • マル1銀行及び銀行子会社の業務範囲等については、平成10年のいわゆる金融システム改革法において、銀行等による投資信託販売の導入や子会社の範囲そのものの拡大が行われるなど、決済社会の変化に応じて柔軟な対応が図られてきており、今後とも、利用者ニーズの多様化や他業禁止の趣旨などを勘案しつつ、規制の今日的意義に照らし不断の見直しを行うことが適当である。その際、銀行業が新しい金融サービス業に変貌しつつある中、財務力やリスク管理が十分な銀行については、業務範囲の弾力化を柔軟に図っていくという観点も必要である。また、ワンストップ・サービス促進等の観点から横断的な金融サービスのあり方についても、今後検討することが望ましい。

      • マル2銀行法等においては付随業務として債務保証なとが例示されているが、これ以外の業務が「その他の付随業務」に該当するかどうかの基準が現在は示されていない。これを当局が提示し、行政の透明性を向上させるとともに、銀行等が新たな付随業務を開始することを容易にすることが望ましい。その際には、本業との機能的な親近性、リスクの同質性、顧客利便等の観点を考慮することが適当である。また、その過程などにおけるいわゆるノー・アクション・レターの活用が検討されるべきである。

        銀行等が本来業務を遂行する中で正当に生じた余剰能力(エクセス・キャパシティ)については、他業禁止の趣旨や本来銀行にどのような業務が求められているのかといった観点に留意しつつ、その適切な範囲での活用を認める方向で検討することが適当である。

      • マル3銀行等の従属業務を行う子会社については、親銀行等の持株比率が100%とされ、親銀行等への収入依存度が原則90%以上とされているが、これらについては独占禁止法に係る規制緩和等を踏まえた見直しを検討することが適当である。また、現在禁止されている銀行子会社等における従属業務と金融関連業務の兼営についても、柔軟に対応する方向で見直しを行うことが適当である。

    • (2)金融取引のIT化の促進と個人情報保護

      金融取引に際して、電子的手段を活用することは、銀行のビジネス・モデルの多様化に役立ち、また、いわゆる異業種の銀行業への参入誘因ともなり得ると期待される。さらには、インターネット・モールにおける売買代金の決済もインターネットで可能となるなど、消費者利便の向上にもつながる。他方、電子的手段による金融取引の場合でも、従来の手段による場合と同等の情報提供等を確保するなど、顧客保護にも十分留意する必要があることは言うまでもない。

      この点に関して、本年11月27日に公布された「書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律」において、民間同士の書面交付等の手続きを義務付けている各種法律について、書面の送付を受ける側の承諾等を条件に、従来の手続きに加え電子的手段によることを認めるための改正が行われるなど、金融取引のIT化のための対応が図られてきている。これは歓迎すべき方向である。

      個人情報の第三者との共有に関しては、本人が認識しないまま情報が流用される可能性があることなどに鑑み、プライバシー保護等の観点から、適切に対応する必要がある。当面は、「運用上の指針」に従い、金融機関が顧客情報の相互利用を行うことについては、利用目的等を明確にした上で本人の同意を得ることを求めるなど、個人情報の保護を図るとともに、個人情報保護基本法制の検討状況を踏まえ適切に対応すべきである。

      なお、業務範囲や顧客保護の観点から検討すべき論点における検討結果は、保険会社についても、ほぼ同様に妥当するものと考えられる。

    • (3)銀行預金の引出しの弾力化

      現在は銀行預金の引出しは銀行の営業所のみで行うことができるとされている。しかし、金融サービスのデリバリー・チャネルが多様化する中で、利用者利便の向上の観点から、顧客情報保護や安全性確保等に留意しつつ、ノンバンクCD等での預金の引出しを認めることが望ましい。

      また、諸外国においては、スーパーなどの小売店において、カードにより現金を受け取ることができる(そして買物代金と現金が合計してチャージされる)サービス(=キャッシュ・アウト)が行われている。これについては利用者利便の向上の観点から評価できるものの、顧客情報保護の観点やカードの悪用やトラブル等による損害の補償を関係者がどのように分担するか等、慎重に検討すべき問題が含まれている。

    • (4)銀行の支店その他の営業所の規制見直し

      現在、銀行の支店その他の営業所の設置、位置の変更又は廃止は認可制となっているが、情報化の進展や銀行業における経営の効率化の要請などの観点から、より柔軟な規制とすることとし、届出制に改めることが適当である。

    • (5)新しい形態の銀行業のリスク管理等

      資産の運用として貸出しに重点を置かない業務形態等を採る新たなビジネス・モデルの銀行のリスク管理については、その財務の健全性を示す指標として、現在、規制の対象となっている信用リスクを中心とした自己資本比率が必ずしも十分に適合しない場合があり、金利リスク等それぞれの状況に応じたリスクを考慮することが適当である。また、銀行の業務範囲が、経済社会の変化に応じて見直されることにより、リスクも多様化することとなる。これからの方向性としては、銀行の内部管理モデル等に基づく自主的なリスク管理を行うこととし、監督当局は、そのリスク管理体制・プロセスを審査するというあり方が望ましい。

      このような新しい状況を踏まえた監督当局の体制整備も必要である。

    • (6)銀行の社債発行手続きの見直し

      銀行の資金調達手段としての社債については、普通銀行の長期貸出の増加に対応する長期資金の調達手段の多様化や投資家保護等の観点に留意しつつ、一定の要件を付した上で、発行手続きの改善の余地がないかについて検討することが考えられる。これについては、商法や証券取引法の規定との関係も整理する必要がある。

  • 5.おわりに

    金融審議会第一部会は、新しい銀行業等のあり方に対応すべく、主要株主に関するルール整備及び新しいビジネス・モデルと規制緩和等に関連する論点を以上のように整理した。

    短期間ではあったが、集中的に審議を重ねることにより、主要株主に関する新たなルールの整備をはじめ、制度改革の方向性を具体的に提示することができた。だが、横断的な金融サービスのあり方や銀行の発行する社債の見直しのように、引き続き検討が行われていくべきものとされた課題も少なくない。

    ともあれ、本報告で具体的な提言を行っている事項については、その速やかな実現を要請したい。


以上でございます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの御報告につきまして、御質問がございましたら、御自由にお出しください。どなたからでも。

江頭委員。

○ 江頭委員

1点お尋ねしたいのは、4ページの「チェックの対象となる株主の範囲」のところにいろいろ書いてあって、ちょっと頭が混乱しているんですが、例えば、ある法人が単体で5%超を保有していると銀行経営に対する影響力の有無が確認される対象になる。かつ、20%以上株式を保有していると「主要株主」と位置づけられ、認可等の対象になる。もっとも、人的な関係等を通じて重要な影響力を与える場合は15%以上で主要株主ということなんですが、下の方を見ますと、5%超の株主が、実質影響力基準に照らして、実質影響力ありと判断される場合は、「主要株主」として認可の対象となる。20%と5 %の間が微妙なのですけど、典型的には、ある株主が5%以上持っていて、かつ、人も送っているというような場合が問題になると思うのですけれども、5%の場合は、人を送っているけれど、実質的な影響力あるのかどうかということを調べるんですか。

しかし、そのほかに15%以上という基準がまた一つありますので、その基準がどういうことなのか、もう少し御説明いただければと思います。

○ 貝塚会長

どうぞ、事務局。

○ 樋口信用課長

それでは、今の御質問の点についてお答えをしたいと思います。

御質問の点は、第一部会、さらにはその下に置かれましたワーキング・グループでも議論が行われたところでございます。ここの認識というのは、報告にもございますように、単体で5%超の株式を持っている方については、銀行経営に相応の影響力を及ぼし得るものと考えられると書いてございます。つまり、5%持っていることで直ちに影響力ありとは認定はしていないということでございます。

一方で、既にある一つの考え方としまして、先生御専門でございますけれども、企業会計の実質影響力基準というのがございまして、これは企業会計の世界ではありますが、20%以上持っている場合には、グループ規制でございますが、その影響力ありと。一定の場合には、その20%が15%まで下がっているというような感じになっております

これと類似の考え方というのは銀行法にもございまして、例のアームズ・レングスのところにも類似の考え方が既に入ってきているということでございます。

したがいまして、ちょっと大ざっぱな言い方をしますと、20%以上の株式を持っている方というのは、まず影響力があると。すなわち、ここで言う「主要株主」と位置づけたらどうですかということをまず言っているわけでございます。

そうした中で今度、5%のところでございますけれども、5%のところが、先ほど朗読しましたように、まず届出をしていただく。それを受理をする。受理をした後に、ここで書いてあります「上記の実質影響力基準に照らして」と。ここの基準が企業会計の基準と全く同一のものかどうかということにつきまして、今後、この報告を頂戴しましたら、私ども事務局なりに、もう一度考えてみようと思っておりますが、そういったことを踏まえて、影響力があるという場合には、この「主要株主」として位置づけていったらどうかというような報告内容となっているわけでございまして、そういう意味で、つまり5%超の株式保有者に対する影響力基準というものについて、現存の企業会計の基準といったものを念頭には置いておりますけれども、さらにこれからこの5%超のところについて、どういう基準を置いたらいいのかということについて、もう一度私どもなりに勉強して、そして、できる限りその基準を明確にして、何らかの形できちっとお示しをしていくと、そんなようなことを考えているわけでございます。

○ 江頭委員

では、まだ、頭取を送ったらどうかとか、その下の地銀への派遣ならどうかとか、具体的なことは決まっているというわけではないわけですね。

○ 樋口信用課長

一応現時点でございますのは、企業会計原則なり、現行銀行法の規定がございますので、そういったものも念頭に置きながら、具体的な基準については、これから明らかにしていきたいというふうに考えております。

○ 貝塚会長

ほかに御質問ございませんでしょうか。

それでは、この報告書につきましては、第一部会名で、この会議の終了後に行われる記者会見の場において対外公表させていただきたいと思います。

この報告書を精力的におまとめいただきました蝋山第一部会長はじめ、第一部会の委員の皆様、また、ワーキング・グループのメンバーの皆様に、厚く御礼申したいと思います。

それでは、第一部会の報告につきましては以上でございまして、次に、第二部会の審議状況について、倉澤第二部会長より御報告をお願いします。どうぞよろしく。

○ 倉澤第二部会長

第二部会長の倉澤でございます。

第二部会につきましては、8月に開催された総会において、個人信用情報保護・利用に関する制度整備について議論をすべきこととされ、10月3日に金融庁移管後初回の部会を開催いたしました。

なお、第二部会では、金融庁へ移管する前、本年6月に、「保険会社のリスク管理について(保険会社会計を巡る論点整理)」という報告書を公表しておりますが、この保険会社における金融商品の時価評価導入の問題について、10月3日の部会において意見集約を行いました。これにつきましては、お手元にお配りしております資料を御参照ください。番号がございませんけれども、平成12年10月3日、金融審議会第二部会という資料でございます。

さて、個人信用情報保護・利用の在り方については、本年10月にとりまとめられました「個人情報保護基本法制に関する大綱」を踏まえ、個人情報保護基本法制に加えてどのような追加的な措置を講ずる必要があるという観点から審議を行いました。

具体的な審議状況につきましては、私の名前で「審議状況の報告」をとりまとめ、お手元に配付いたしておりますので、まず、これを事務局から読み上げていただきたいと思います。

○ 貝塚会長

どうぞよろしく。

○ 事務局

それでは、お手元の資料9-2を読み上げさせていただきたいと思います。


審議状況の報告

  • 1.これまでの経緯

    • (1)消費者向け信用供与が拡大し、国民生活に深く関わるものとなっている状況の下で、与信業者等による個人情報の取扱いについては、業界団体等において自主ルールを整備し、対応してきているところである。しかし、近年、一部の与信業者や信用情報機関からの情報漏洩をはじめ、個人情報の不適切な取扱いがみられ、プライバシーや個人の権利利益の侵害に対する懸念が高まっている。

      他方、多重債務に起因する自己破産の問題も深刻化しており、消費者向け信用供与の適正化の観点から、与信業者が与信判断を行うに当たっては、適切な保護措置を前提に個人信用情報の利用の促進を図ることが必要との指摘もある。

      こうした事情を背景に、大蔵省・通商産業省共同の「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」が開催され(平成9年4月から10年6月まで計16回)、報告書がとりまとめられた。さらに、同懇談会の提言を受け、制度整備の在り方について具体的な検討を行うため、当審議会、産業構造審議会及び割賦販売審議会が合同で「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」を設置し、平成11年1月から計6回の会合を経て、同年7月に「論点・意見の中間的な整理」を公表した。

    • (2)また、IT革命の推進による電子商取引の急速な進展及び情報処理能力の飛躍的な拡大が今後見込まれるとともに、国際的にも個人情報保護強化のための体制整備が図られてきている中で、昨年来個人情報保護基本法制の制定に向けた検討が進められている。本年6月2日には、政府の情報通信技術(IT)戦略本部の下に設置された個人情報保護法制化専門委員会が、「個人情報保護基本法制に関する大綱案(中間整理)」を公表し、当部会においても内閣内政審議室からその内容紹介が行われた。

      さらに、10月3日にも当部会において、再度内閣内政審議室から「個人情報保護基本法制に関する大綱案」を基に、同専門委員会における個人情報保護基本法制のその後の検討状況について説明を受け、質疑応答を行った。

      (注) 10月11日に同専門委員会において「個人情報保護基本法制に関する大綱」(以下「大綱」という。)の最終的なとりまとめ・公表が行われ、10月13日、情報通信技術(IT)戦略本部は、同大綱を最大限尊重し、次期通常国会への提出を目指し、個人情報保護に関する基本法制(以下「基本法制」という。)の立案作業を進めることを決定した。

      「大綱」では、個人信用情報を含め凡そ個人情報を事業の用に供している民間事業者等(ただし、専ら小規模の個人情報データベース等のみを取り扱う事業者等を除く。)に対し、個人情報の適正な管理や第三者提供の制限、本人の求めに応じた個人情報の開示・訂正・利用停止等が義務付けられている。また、こうした義務規定の施行に関しては、各業の所管大臣等がガイドラインを示すこと等を想定した上で、改善命令等を含む主務大臣の監督権限や、その違反に対する罰則を設けることが明記されている。

      このように、基本法制は、個人情報取扱事業者全般に対して所要の規制を課す内容となっており、個人信用情報の保護について実効性ある制度を構築することに資するものであると考えられる。

      さらに、「大綱」では、個人情報であって、その性質、利用方法等に照らし、特に厳重な保護を要する等、別途の措置が必要なものについては、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとされている。

  • 2.審議状況と挙げられた論点(第二部会で出された意見のまとめ)

    • (1)11月15日に開催された当部会では、「大綱」を踏まえ、個人信用情報分野における保護・利用に関し、基本法制に加えてどのような追加的な措置を講ずる必要があるかという観点から審議を行った。

      その際挙げられた意見のうち、検討に当たっての基本的方向性に係るものを整理すると以下のとおりである。

      • 「大綱」において個人情報を取り扱う事業者に対して課されている義務規定等は、これまで個人信用情報の保護のために必要であると議論されてきた法律事項を取り込んでいると評価できることから、基本法制が整備されれば、業者が自主ルールを運用することにより、金融の分野においても情報の保護は確保できるのではないかという意見があった。
      • これに対し、マル1上記義務規定の適用除外事由等が曖昧で不十分である、マル2取り扱う情報の性質等にかんがみれば、保有するデータベース等の大きさによって規制対象の例外を設けることは適切でない、守秘義務を課す等の特別な措置を講ずる必要性があるといった理由により、業者による自主ルールに加えて、個別法を整備する必要があるのではないかという意見もあった。その際、業態ごとの縦割りではなく、例えば、金融商品販売法のように取引内容に着目して統一的に規制する形でルールを整備すべきではないかという意見があった。
      • 自主ルールについては、業者にこれを策定・遵守させるため、どのようなインセンティブを与えるかを議論することが重要ではないかという意見や、自主ルールに基づく事業者の自主規制に実効性を持たせる観点から、ディスクロージャーの在り方や監督当局の一定の関与を含めた仕組みづくりを検討し、検討結果によってはこれを法的に措置できないかという意見があった。
      • これまでの議論では、「与信との関連で収集・保有・利用される情報で返済能力・支払能力を判断するための情報」とされる個人信用情報を対象に議論してきた。しかしながら、今般、個人情報の全分野を包括する基本法制が制定されることとなったことや、金融サービスが与信に限らず資産運用や資金決済等生活全般に密着したサービスであることにもかんがみれば、従来の「信用情報」という枠組みにとらわれずに金融分野における情報の保護・利用の在り方について議論してはどうかという意見があった。
    • (2)上記の他、具体的な規定の在り方等について以下の意見が出された。

      (第三者提供の制限について)

      • 金融ビッグバン以降、業態の垣根がなくなりつつある中、グループ内の会社間で情報を相互利用するニーズがある一方、プライバシー保護の見地から業務内容を踏まえたファイアーウォール規制等の措置を講ずる必要があるとの指摘があり、金融機関等が取り扱う個人情報については、金融サービスの特性や将来の動向に適合した第三者提供制限の在り方を検討する必要があるのではないか。

      (苦情の処理等について)

      • 「大綱」の苦情の処理等を行う団体の認定については、事業者の論理のみならず利用者側の利益を擁護するための工夫が必要であり、裁判外紛争処理制度と併せて検討することが有用ではないか。

      (罰則について)

      • 個別法制において刑罰を規定する場合、その必要性及び構成要件の明確化を図る必要があると思われるが、行政処分を待たずに刑罰を課すことや、外部者による情報窃取も刑罰の対象にすることが考えられるのではないか。
    • (3)以上のように当部会においては幅広い観点から様々な意見が出されたが、基本法制の施行を前提に個人信用情報に関してどのような追加的な措置を講ずるべきかということについては、基本法制の法案の内容との整合性に留意しつつ、個別の論点を具体的に細部まで検討することが適当ではないかという提案があり、了承された。


以上でございます。

○ 倉澤第二部会長

どうもありがとうございました。

私の方から簡単に補足させていただきます。

この個人信用情報保護・利用の在り方については、平成9年4月に設置された「個人信用情報保護・利用の在り方に関する懇談会」や、平成11年1月に設置された「個人信用情報保護・利用の在り方に関する作業部会」において議論それてきております。その際に挙げられた論点、個人情報の目的外利用の禁止、適正な管理、第三者提供の制限、開示・訂正・利用停止といったこの論点につきましては、次期通常国会に提出予定の「個人情報保護基本法制」に織り込まれて、所要の規制が個人情報取扱事業者に課せられることとなり、また、改善命令等を含む主務大臣の監督権限や、命令違反に対しては罰則を設けることとなりました。

このように個人情報の全分野を包括する基本法制が制定されることとなったことを踏まえまして、第二部会におきましては、基本法制に加えてどのような追加的な措置を講ずる必要があるかという観点から検討を行いました。この含意は、基本法というものが、環境基本法とか教育基本法なんて見ますと、基本理念だけ定めて、具体的な、あるいは実体的な規制というものを個別法規に任せるという例が多かったので、そういう一種の思い込みといいますか、予測の下で今まで作業をしてきたところが、この基本法というのが、基本法というよりも、個人情報全体の普通法といいますか、あるいは共通法といいますか、そういうような形で具体的な規制内容を定めたような案が提示されましたので、そうしますと、これは個人信用情報については追加的な措置を講ずる必要があるかどうかという観点から検討が必要になったというわけでございます。

その際には、「審議状況の報告」において述べましたとおり、追加的な措置の必要性やその具体的な内容、手法、自主ルールの在り方、議論の対象とすべき情報の範囲等について、幅広い観点から様々な意見が出されました。しかしながら、基本法制の施行を前提としますと、現在、内閣内政審議室において具体的な詰めが行われている基本法制の法案の内容との整合性が問題でございますので、それに留意しつつ、個別の論点を具体的に細部まで検討することが適当であるということとなった次第でございます。それがこの状況報告の一番最後の3)のところの意味でございます。

以上でございます。どうもありがとうございました。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

ただいま部会長が申されましたように、やや複雑な状況になっているということでありますが、個人信用情報の保護につきましては、信用情報も含む個人情報一般を保護するための基本法制が制定されるわけでして、金融庁も主務官庁としてこれを施行するということが従来の議論に付け加えて新たに付け加わった前提でありまして、したがいまして、基本法制の内容が固まって、それもやや具体的な内容も含んでいるわけですが、金融庁も主務官庁としては、個別の論点を具体的に議論する必要があるということになりました。

他方、第一部会では既に御説明がありましたが、第三者との間で顧客の個人情報を共有することに関し、プライバシー保護の観点から適切な対応が必要であるということも指摘されております。

以上のことを踏まえますと、当審議会としては、金融分野における個人情報の保護等の在り方について今後の検討をどういうふうに進めていくかということで、とりあえずその考え方を整理しておきたいというふうに思います。したがいまして、事務局の方から、簡単な案文でございますが、今後どういうふうに進めていくかについて考え方を整理するということになりますので、事務局より御説明をお願いします。

○ 棚橋企画課調査室長

それでは、お手元に「総会9-3」という一枚紙がございます。それを御覧いただきたいと思います。読み上げさせていただきます。


平成12年12月21日
金融審議会総会

金融分野における個人信用情報保護・利用の在り方に関する今後の検討の進め方(案)

個人信用情報保護・利用の在り方に関して、当審議会第二部会では、「個人情報保護基本法制に関する大綱」を踏まえ、個人情報保護基本法制(以下「基本法制」という。)に加えてどのような追加的な措置を講ずる必要があるかという観点から、その具体的な内容及び手法や、基本法制を施行する上での自主ルール・ガイドラインの在り方等について検討を行った。

また、第一部会においては、異業種参入に伴う銀行法等の整備や他業禁止の緩和等について審議する過程で、顧客の個人情報を第三者と共有することに関し、プライバシー保護の観点からの適切な対応の必要性が指摘された。

他方、基本法制の施行に当たっては、主務大臣が所管業界の個人情報の取扱いの実態を勘案した監督上のガイドラインを示すこと等が想定されており、こうした観点も含め金融庁の所管する事業者を対象に総合的な検討が必要になると考えられる。

以上を踏まえ、当審議会としては、基本法制の各規定との整合性の確保や、全体としての実効性確保に配意しつつ、従来議論の対象としてきた個人信用情報にとどまらない金融分野における個人情報の保護・利用に関し、取り扱われる個人情報の特性等に応じた重層的な措置を講ずることを念頭に、基本法制の今後の立案作業の進捗状況をみながら、法制上の措置その他の必要な措置について鋭意検討を進めていくべきと考える。


以上でございます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

先ほどの倉澤部会長の審議状況の御報告と、今の事務局のとりあえず金融審議会としてどういうふうに検討を進めるかということについての案文がございますが、以上のような事柄につきまして御意見ございますでしょうか。御意見ございましたらお聞かせいただきたいと思います。

○ 原委員

よろしいですか。

○ 貝塚会長

原委員、どうぞ。

○ 原委員

私、第二部会に本来ならばオブザーバーとしても参加をしたいということで、ところが、日程の調整がつかなくて、11月の確か15日だったと思うんですが、出席ができなくて、それで、一応第二部会としての結論がこのペーパーになっているかと思うんですが、やはり懸念として2点申し上げておきたいんです。

部会長の方の意見というんでしょうか、審議の経過の中にも入ってはいるんですけれども、審議の中で、実際に基本法制で検討しているものの中の、私は非常に弱い点だというふうに思っているのが、一つは、適用除外がかなりあるんですね。だから、事業者の義務は課せられてはいるんですが、適用除外が非常に多いというところと、それから、もう一つは、正当な業務とか正当な利益は、それを超えてまでの負担は求めてないといったような表現があるんですけれども、そうすると、かなり金融業の部分を排除されるんではないかということを基本法制の側から懸念をしておりますので、ぜひ個人信用情報の個別法ということの検討はしていただきたいと思っております。

それから、もう一点なんですけれども、第三者との共有のところでのこの第三者の考え方なんですが、一つは、実際に本体の業務とこの個人信用情報が直接関わるので、本体の業務に付随してやっていらっしゃるという個人信用情報の取扱い方と、それから、もう一つは、子会社とか関連会社とかを通じて、この個人信用情報を管理するというやり方も出てくるかと思うんですが、そのやり方。

それから、三つ目の形態として考えられるのが、個人信用情報の売買だけを業とする者があると思うんですね。第1とか第2のところは、私はある程度の網というんでしょうか、チェックをしていくところはかけられると思うんですが、その第3番目のところをもう少し。私、確かどこかの段階でもお話し申し上げたかと思うんですけれども、実態を把握をして、特にインターネット関連の関係では、ほとんど実態の把握すらまだなされてないというふうに思いますので、その3点目のところについて、ぜひ、法制化をするまずその大前提としての情報収集ももっと必要ではないかということを追加的な意見として述べさせておいていただきたいと思います。

○ 貝塚会長

ただいまの御意見の最初の方は、部会長の御報告の2ページの下から、ここに大体尽くされていることだと思います。

○ 原委員

ええ、そうです。書いてあります。

○ 貝塚会長

それ以外の部分について、部会長あるいは事務局で何かございませんでしょうか。ただいまの原委員のご発言で。

○ 倉澤第二部会長

貴重な御意見として承りましたが、結局、適用除外の問題にしろ何にしろ、例えば、個人信用情報といいますか、今日のこの案で言いますと、これを金融分野における個人情報の保護・利用というふうに対象とするかどうかということもありますけれども、そういった個人信用情報ないしは金融分野における個人情報の保護・利用について、基本法における適用除外というものが、この個別分野に適切かどうかという判断の上で、我々としては個別法規を作るか否かということも、そして、例えば、正当なということについて、これをもっとうまい基準があるかどうかということも、基本法ができましたら、それを考えていくというようなことになろうかと思いまして、それがこの今日お出しした「審議状況の報告」の一番最後の3)の「整合性を踏まえて」というような表現で、それが的確に現れているかどうかわかりませんけれども、その「整合性」という言葉の意味の中に付け加えるべきものがあれば、付け加えるということも含めた意味と御了解いただきたいと思います。

○ 貝塚会長

有吉課長。

○ 有吉企画課長

ただいま部会長のおっしゃったことに尽きるんですが、10月この議論をいたしましたときに、内閣の方で法案を担当している方の御説明を受けたのですが、そのときもやはり「正当な」とかいうところは、一体具体的にはどういうことなのかという質問が随分出まして、そこは実はまだ検討中ということでしたので、これが、どういう形で出てくるかということを踏まえながらということになろうかと思います。

また、御指摘いただいたその他のいろいろな取り扱われ方。例えば、インターネット関連ということになりますと、むしろ一般的な通信とか情報事業みたいなところにおいてというところも実ははね返ってくるので、恐らくそこは郵政省なり何なりもお考えになるような話ではないかと思っておりますので、少なくとも今後の金融審の議論としては、金融というところで集まった情報について、いかにしっかり管理していくかというような観点で、御指摘のあった関連会社とか、あるいはインターネット的なものの取扱いとか、本体も含めてどういうような仕組みができるんだろうか、適切なんだろうかということを御議論いただけるのではないかなというふうに考えております。

○ 貝塚会長

何か追加的な御質問あるいは御意見ございませんでしょうか。

○ 原委員

意見なんですけれど、インターネット関連が、例えば大括りとして、通信・情報という扱いで郵政省になってしまうと、インターネット関連にあるほとんどの情報は全部郵政省に行って、郵政省は絶対やらないんではないかって思うんですけれど、そこのところは、金融でインターネットにかかっている情報は、やはり私は取り込んでいただきたいと思います。

○ 貝塚会長

御趣旨はよくわかりました。

ほかにございませんでしょうか。

この問題はかなり複雑な側面があって、金融庁だけではなくて、他省庁も含み、相当全体のいろんな、個人情報というのは非常に複雑な側面ありますので、結構注意して、今後、金融業務に関しての部分は考えていく必要があるのではないかということではないかと思います。

それでは、第二部会の審議状況に関連した議事を終わらせていただきまして、次は、「金融の基本問題に関するスタディグループ」における議論の状況につきまして、私もアドバイザーとして入っておりますので、簡単ではございますが、御紹介させていただきたいと思います。

お手元にメンバーの表がございまして、蝋山委員と私、アドバイザーで、ちょっと冗談めかして言えば、アドバイザーというのは、どういうふうにちゃんとアドバイスしているかという問題がないわけでもないんですが、会合に蝋山さんも出て、私は意見を申し述べました。

このメンバーは、ここにございますように、かなり若手の方で、簡単に言うと、割合と経済の方では助教授ぐらいのばりばりの若手の方が入っておられて、実務家の方も入っておられるということであります。

このメンバーの趣旨については、こういうスタディグループを作りました設置の趣旨については、前にも御説明したことでありますが、中長期的な展望の下で、時代のニーズを先取りして制度整備等に取り組むためには、今後の我が国の金融システムの方向性についてどういうふうに考えたらいいのかという、その基本的な考え方の整理を行う必要があるのではないかということで、その論点整理と自由なブレーンストーミを行うということで設置されたものでございます。

これまでの議論の状況は、10月20日に第1回がスタートしまして、第1回会合では、どういうことを議論すべきであるかということについて、皆さんからの問題提起、フリーディスカッションをお願いしたところであります。そこの議論のおおよその感じは、第1の点は、現状認識として、現在の金融システム全体として、リスクの負担が適切に行われていないのではないか。ですから、マネーフローは依然として、別の言い方をする銀行部門にかなり集中していて、マーケットの方に十分移ってきていないのではないか。その結果として、銀行の収益性が低いのではないかという問題提起がございました。

それから、2番目には、今後の方向感として、金融システムの中でマーケットの役割、市場の役割が大きくなっていくわけですが、その中で機関投資家の役割はどういうものであるか。「エージェント」という言葉を経済学者は割と使うのですが、要するに一種の代理人でありますが、その機関投資家がどういうふうに、普通ガバナンスといいますか、統治されているかという、その機関投資家のガバナンスの問題も、あり方もかなり重要な話ではないか。さらに、やや別の論点ですが、金融セクターにおける、金融機関が実際かなり合併その他で一見するところ、非常に巨大化するわけですが、それとともに競争的な問題、寡占化の問題も生じてくる。これをどう考えるかということです。

それから、さらにもう一つまた別の側面ですが、国際化が進展していく中で日本の金融機関の国際競争力の問題をやはり考えていく必要があるのではないか。そういう御意見がございました。これは2番目の問題提起です。

それから、3番目には、公的当局の関与の仕方として、金融システムに対して公的な関与をどういうふうにしていくか。インフラの整備が必要ですから、そういう意味では公的当局の関与があるべきですが、その辺をどういうふうに考えるか。それから、民間金融機関の経営強化が第三者的にみれば必要であるということはそのとおりなんですが、どのようにそれを図っていくべきか。あるいは考え方として、従来日本では、どちらかといえば、通産省が所管してきた産業政策という考え方があるんですが、金融行政にもそのニュアンスを、そういう視点を取り入れるべきか否かということです。金融業としての産業政策の視点が必要であるかどうかという点です。

以上のところが大体の第1回の研究会における問題提起の、全てを尽くしてはいないわけですが、おおよそそういう感じはなかったかというふうに思います。

あと、第2回、第3回の会合がございまして、第2回会合は、臼杵委員と淵田委員からプレゼンテーションが行われました。この議論もかなり割合と難しいように思いますが、カスタマー、顧客のために投資情報を加工するとともに、金融機関に対する切りつけの役割を担い、投資家とマーケットを結びつけるものとして、そういうエージェントとしての役割をどういうふうに仕組んでいくかということ、これは重要じゃないかという御指摘がありました。

それから、2番目には、ビッグバン開始から4年たった現在においても、金融市場の運用・調達の両面において、市場商品、金融商品の中における預金、社債、CPですね、これが市場の証券と一応考えますと、それに対して貸出が依然として優位に立っている。その点をどういうふうに考えるか。先ほどの問題提起と関係しておりますが、以上が大体第2回の会合でございまして、第3回の会合では、小田委員と柳川委員から、公的規制の枠組みに関して報告がなされて、それをもとに議論されました。

今後の公的な規制の枠組みを考えていく際には、規制当局と民間の側の情報のギャップというのがあり得るわけですし、当然あるわけですが、そのとき、どの程度情報を取ってそのギャップを埋めていくかということが考えられるわけですが、しかし、情報収集のコストは、狭い意味でも広い意味でも結構あり得るわけで、そのコストをどういうふうに考えるべきかという問題提起がございました。

それから、2番目は先ほどの銀行の経営の話になるというのが経営の話ですが、内部的な統制といいますか、内部統制が非常に重要になってくるということは、それはますますそうであるわけですが、金融機関が一応見たところ、非常に巨大化していくという感じがあるわけですが、これをどのように内部的な統制を確保していくかということが重要ではないかという議論がございました。

それから、金融機関に対する規制の根拠とか、規制当局のガバナンスですね。規制当局が統治しているというのが当然ですが、その規制当局をいかに統治するか、そこをどういうふうに考えていくか。これも本当言うと、ちょっと脱線になりますが、従来の金融行政における一つの問題点であったということは否定しがたい。

以上がおおよそのディスカッションの内容でございまして、今後は、年内は総会の後になってしまうのですが、来週の月曜日に第4回の会合がございまして、岡崎東大教授と渡辺一橋大学助教授の2人によって、産業組織論とか、あるいは産業政策的な側面について議論がなされる予定であります。

今後、来年1月以降は、審議会がいろいろ統合されるようでありまして、金融審議会は再設置されるということになるわけですが、そのことを前提といたしまして、改めて今後のこのスタディグループの意見をどういうふうにまとめていくかは、部課長あるいは事務局と相談の上、考えていくことになると思います。

以上、非常に簡単ですが、スタディグループの状況につきまして状況を御報告いたしました。

何か蝋山委員、補足されることありますか。

○ 蝋山委員

いや、ありません。

○ 貝塚会長

何かスタディグループに関して御注文あるいは御質問がありますか。どうぞ御自由に。

それでは、現在までのスタディグループのディスカッションがどのように進んでいるかと、その内容について中間報告的に御説明したということで、次の議題に移らさせていただきますが、ただいま検討が行われておりますBIS規制の見直しにつきまして、事務局から説明がございますので、大久保参事官、お願いします。

○ 大久保参事官

お手元に「総会9-5」と書いてあります資料を御覧いただければと思います。BIS規制の見直しにつきまして、現在、バーゼル銀行監督委員会で作業が行われておりますので、その現状を御報告させていただきたいと思います。

資料の1ページを御覧いただきますと、いわゆるBIS規制、国際的には「バーゼル合意」と言われておりますけれども、その見直しの経緯が書かれています。これは、1988年に合意されまして、我が国を含め多数の国で採用されておりますけれども、これが合意から10年以上たっておりまして、これについての見直し作業が1998年の3月にバーゼル委員会において開始をされております。その間、市場リスク、いわゆるトレーディング業務のリスク等に関する修正等が行われまして、1996年には市場リスク規制がこのバーゼル規制の中に盛り込まれたわけでございますけれども、基本的には1988年のバーゼル合意がそのままの形で現在も適用されているというような状況がございます。けれども、この間国際的な環境の変化等も非常に大きいものがございますので、見直し作業が開始された経緯がございます。昨年の6月に第一次市中協議文書というのが公表されております。

これに対しまして、我が国を含め多数のコメントが寄せられております。今年の3月末にこのコメントを締め切ったわけでございますけれども、全世界からは約 200を超えるコメントが出されておりまして、こうしたコメントも踏まえながら、バーゼル委員会は、様々な作業部会等も含めまして精力的な作業を進めてまいっておりまして、来年の始め、早ければ1月の半ば頃にも第二次市中協議文書を公表いたしまして、コメントを求めるというような日程で作業が進められております。数カ月間のコメント期限を設けまして、さらに作業を進め、最終案を固めるという作業が何カ月かかかるかと思いますけれども、そういった最終案が固まってから、2~3年後にこの見直しの内容を適用していこうというような作業日程が念頭に置かれております。

次に、2ページを御覧いただきますと、BIS規制をめぐる導入の経緯等を図式化したものを上げさせていただいております。詳しい説明は省略させていただきますけれども、いわゆるBIS規制というのが、英米等の合意によってそれが日本に押しつけられたというような考え方の方がかなり多うございますけれども、実際には我が国においても金融自由化を進めるに当たりまして、金融制度調査会等で自己資本の充実ということを検討してきたわけでありまして、1986年には、自己資本比率規制の改正が行われています。他方で1982年頃から米銀での銀行破綻等の急増があり、米国でも自己資本の規制を強化するというような動きが片一方であったわけでございます。これが1987年のいわゆる米英共同提案という形で出されましたが、これは、国際的に競争条件を等しくするというような観点も併せて、自由化の環境に合わせた自己資本規制をできるだけ国際的に統一していこうというような動きが活発化してきたことがそもそもの背景にあったということであろうかと思います。

お手元の資料の3ページ目を見ていただきたいと存じますけれども、「BIS規制」は、国際的な活動をしている銀行に適用されるということでございまして、我が国について見ますと、銀行等28行庫に適用されております。他の国内金融機関には別の基準が適用されています。いわゆる8%基準というのが国際基準でございますけれども、国内基準には4%というような基準が適用されております。ただし、自己資本の定義、例えば債権の含み益部分が後者には含められていないというようなこともございますので、単純に比較することはできないわけでございます。ただし、分母のリスクの評価の仕方等につきましては、基本的には同様な基準がとられているわけでございます。

これが現状でございますけれども、見直しを行いますと、これが国際的な基準につきましては、銀行の選択を容認して、内部格付を利用する方式とか、あるいは標準的手法と申しまして、外部の格付を利用する方式とか、そういった選択を認めていくというような方向になるわけでございまして、これを国内基準にどこまで反映させていくかというのは、今後国際基準の最終案を見極めつつ検討していく課題になっているわけでございます。

次のページを御覧いただきますと、今回の見直しの基本的な考え方についての説明がございます。見直しの作業の結果第二次市中協議に出されるペーパーというのは、恐らく主要なものだけでも 100ページを超えるようなものでありまして、全体を合わせると、細かな点も合わせますと、かなりのページ数になるものですから、細部で全体を見失いがちなわけでございますけれども、見直しの基本的な考え方というのをあえて大胆に図にしてみたものが、4ページのものでございます。

すなわち、金融自由化前につきましては、リスクのテイク自体を当局が制限するという、当局管理型の金融のシステムであったわけでございますけれども、これが自由化が行われることによりまして、リスクテイクは金融機関自身の判断に委ねていくことになるわけですが、リスク管理の方法については、当初は当局が指定するというような方法がとられてきたわけでございます。

それが次第に変化してまいりまして、リスク管理の方法自体も銀行が工夫することが次第に容認されるようになっております。今回の見直しは、リスク管理の態勢・プロセスを当局と市場がチェックしていくというような大きな流れの中に沿った見直しです。

ちょっと説明を中段させていただきます。

○ 貝塚会長

柳澤金融再生委員長がお見えになります。

〔金融再生委員長 入室・着席〕

○ 貝塚会長

柳澤金融再生委員長がお見えになりました。

それでは、私から、先ほど御議論いただきました第一部会の報告書を再生委員長に当審議会を代表してお渡しいたします。

〔貝塚会長より柳澤委員長に報告書を手交〕

○ 貝塚会長

それでは、委員長より御挨拶をいただきます。どうぞよろしくお願いします。

○ 柳澤金融再生委員長

まず冒頭、自己紹介ということで、改めて一言申し上げますが、私、このたび、金融再生委員会委員長を拝命いたしました柳澤でございます。

一言金融審議会のこの場で、委員の皆様に御挨拶を申し上げたいと存じます。

金融審議会の委員の皆様方には、御多忙のところ、日頃より金融審議会の活動に御尽力をいただいておりまして、また、本日は、ただいま貴重な御報告をいただきまして、誠にありがとうございます。

さて、金融再生委員会・金融庁といたしましては、これまで市場規律と自己責任の原則を基軸といたしまして、明確なルールに基づく透明かつ公正な金融行政という方針の下で、金融機関に対します厳正な検査・監督等を進めますとともに、金融再生法に基づく破綻金融機関の迅速な処理、あるいは早期健全化法に基づく公的資本増強の実施等の措置を講じてまいりました。

こうした取組みと各金融機関における経営の改善に向けた御努力も相まちまして、不良債権の処理や金融機関の再編等もかなりの進展を示し、金融システムは一時期と比較して、格段の安定性を取り戻したような気がいたしておりますが、しかしながら、一方で景気回復の足取りがなお本格化していないというようなこと等を背景といたしまして、新しい不良債権が発生している状況にあると認識をいたしております。

私といたしましては、平成14年4月のペイオフ解禁を控えまして、さらに揺るぎのない金融システムの構築に向けまして、一層気を引き締めて取り組んでまいる所存でございます。

また、このような金融安定化の努力と並行いたしまして、経済活動の基盤をなす金融システムが国民経済の活性化に資しますよう、競争を促進し、活力ある金融システムの構築を図るとともに、国民が多様な金融サービスの便益を安心して享受するための枠組み、さらには産業に円滑な資金供給を可能とする直接金融市場等を整備していくことが重要な課題と考えております。

さらに、金融技術や情報通信技術の発達、金融・経済のグローバル化の進展等の中で、新世紀をリードする金融インフラの整備を図る必要がありまして、こうした面で金融審議会には極めて大きな役割を担っていただかなければならない、このように考えておるところでございます。

金融審議会の各位におかれましては、8月4日の総会以来、この年末までを目処といたしまして、第一部会では、異業種参入に伴う銀行法等の整備・他業禁止の緩和等について、短期間に精力的な御審議をいただき、御報告をおとりまとめいただきました。また、第二部会では、個人信用情報の保護・利用に関する制度整備等について、熱心に御議論を賜りました。

審議会の運営の労をとられました貝塚会長、蝋山・倉澤両部会長をはじめとする委員の皆様方のこれまでの御尽力に深く感謝を申し上げたいと、このように思います。

異業種による銀行業参入の動きや、インターネット専業銀行等、新たな形態の銀行を設立する動きにつきましては、金融技術の革新、競争の促進等を通じまして、21世紀の金融の新しい展望の中で、消費者に優れた金融サービスを提供するとともに、金融業の活性化につながるものと考えられます。

このような基本的な考え方の下で金融審議会におかれましては、銀行経営の健全性確保等のための主要株主に関するルールを整備すること。また、銀行等の新しいビジネス・モデルを構築すること等、新たな流れに対応した規制緩和策について御提言をいただいたものと承知をいたしております。

政府といたしましては、今回の金融審議会の報告を踏まえまして、法律改正を要する事項につきましては、次期通常国会に、銀行法、保険業法等の改正法案を提出するなど、適切に対応してまいる所存でございます。

また、他方、個人信用情報の保護・利用の在り方につきましては、これまでの金融審議会における御議論等と本日の御提言を受けまして、今後、個人情報保護基本法制との整合性にも配意しつつ、金融分野における個人情報保護・利用の在り方につきまして、審議会に別途改めてお諮りしつつ、鋭意検討を進めてまいりたい、このように考えております。

なお、金融審議会につきましては、来年1月以降、役所側の中央省庁等再編に伴う審議会の統合という事態がございますので、新たな金融審議会が発足すると、このように御認識をお願いいたしたいと思います。現在の体制の下で委員の皆様方には、およそ2年半の期間にわたりまして、精力的に御審議をいただきましたことを改めて重ねて御礼を申し上げる次第でございます。

皆様、諸先生におかれましては、今後とも様々な形で我が国金融の安定化、それからまた、前向きの金融システムの構築に向けまして、御指導、御鞭撻を賜りますよう心からお願い申し上げまして、私の御挨拶とさせていただきます。

どうぞよろしくお願いします。また、誠にありがとうございました。

○ 貝塚会長

どうも委員長、ありがとうございました。

委員長は公務多忙のため、ここで御退席されます。

○ 柳澤金融再生委員長

どうもありがとうございました。

〔金融再生委員長 退席〕

○ 貝塚会長

それでは、先ほどのBIS規制の説明の途中から、4ページ目ぐらいですか、続けて説明をお願いします。

○ 大久保参事官

それでは、引き続き説明を続けさせていただきたいと思います。お手元の資料の5ページ目を御参照ください。

今回のBIS規制の見直しにつきましては、三つの柱というのが昨年の第一次市中協議ペーパーで提言されております。

すなわち、第1の柱は、リスク計測の精緻化というところでございまして、いわゆる自己資本規制の8%最低基準のなかで、この分子の自己資本の定義につきましては、今回の見直しでは差し置きまして、分母の方にありますリスクアセット、この測定を精緻化していこうというのが基本的な考え方の第1の柱でございます。

第2の柱は、銀行自身による自己資本戦略の策定を当局によってレビューしていくということでございます。

また、第3の柱は、自己資本に関する開示を充実していくということでございまして、これによりまして市場規律を働かせていくという考え方になっているわけでございます。

このリスクの測定を銀行自身の責任で精緻化するということになりますと、当局としてもそのやり方をよく見ていく必要が生じますし、さらに各銀行のとっているリスクの管理内容を市場に開示することによりまして、規制の実効を上げていくというところがありますので、この第2の柱、第3の柱は、現在の作業でもかなり連関した形で検討が進められているのが現状でございます。

資料の6ページでございます。

信用リスクの計測の精緻化のまず一番直截的な方法といたしまして、標準的な手法というのが提言されております。これは、現在の規制で、一律の信用リスクの計測の方法がとられているのを、外部格付を用いて、より精緻化して考えていこうという考え方でございます。すなわち、現行の規制におきましては、例えば政府に対する与信につきましては、OECD加盟国の政府であれば0%、その他の諸国であれば 100%のリスク・ウェイトを用いて計算をするという形になっておりますが、見直し後におきましては、これをいわゆる外部格付に応じてリスク・ウェイトをより細く見ていこうという考え方でございます。

例えば、事業法人につきましては、その事業法人に対する与信をどのようなものであれ、リスク・ウェイト100 %としているわけでございますけれども、これも外部格付があるものにつきましては、そういったものを参照してリスク・ウェイトを調整していこうという考え方でございます。ただし、格付を取ってない企業等もございますので、そういった未格付の企業につきましては、事業法人については 100%のリスクが現在と同じように適用されるということになります。

なお、政府・中央銀行の自国通貨建ての借入れにつきましては、当局の裁量により、低いリスク・ウェイトが採用され得るということでございますので、例えば、日本の国債につきまして外部格付けによりリスク・ウェイトが変わるということではございません。

ただ、この標準的な手法につきましても、やや見直す点がないかどうかということにつきまして現在作業中でございます。この表は昨年の6月の市中協議案のものであり、やや変更されると思われますが、基本的にこうした方法をまず導入するというのが標準的手法でございます。

資料の7ページ目は、これを図式化したものでございます。リスク・ウェイトが例えば20%であるとか、50%であるとか、 100%である、 150%であるというと、若干わかりにくいので、与信に対して例えば8%の資本が必要だということで、与信の種類に応じて必要な資本のパーセンテージで見たものが、この7ページの図式化したものになるわけでございます。説明は省略させていただきます。8ページ目を御覧いただきますと、これは内部格付を用いるという考え方を図示してございます。この考え方の基本にありますのは、銀行の内部にありますデータ、取引データ、担保データ、財務データ等があるわけでございますが、こういったものを参考にいたしまして、与信額、デフォルト確率、また、デフォルト時の損失率というようなものを算出して自己資本を求めていくというものです。この中でいわゆる予期できるような損失につきましては、自己資本以外のものでカバーしていくものでありますけれども、統計学的に考えて予期せざる損失が出てくると考えられるような場合には、これを資本で本来カバーすべきであるという考え方です。これは、リスク管理について金融工学等を反映した考え方です。この内部格付を使うに当たりましては、銀行のリスク管理の状況等に応じまして、どの程度のものを銀行自身のデータを使って容認するのか、どの程度のものを一定の規制として扱うべきかというようなことについて、現在議論がなされております。

なお、例えば、倒産確率が同じでありましても、小口でたくさん貸しているというような場合には、全体としてのリスクが低くなるという効果がございます。例えば、中小企業等にたくさん貸しているというような場合には実際に理論的にもリスクが少なくなると考えられるわけであります。当方はこういった主張をいたしまして、中小企業等への円滑な資金の流れを充分確保され得るような仕組みを作るべきであるというようなことを主張してまいっております。

9ページ目でございますが、ここで昨年、「リスク管理モデルに関する研究会報告書」から抜すいしたデータが出されております。これは、邦銀の現在の内部格付手法への対応状況をアンケート調査したものでございまして、例えば、債務者格付の実施状況につきまして見ますと、都銀・長信銀等とか信託につきましては、債務者格付は 100%実施しておりまして、利用している格付としても、内部格付のみで70%以上、内部格付と外部格付を併用して見ますと、 100%というような回答が寄せられているわけでございまして、格付の段階も10段階以上の段階をつけてやっている銀行が90%

以上ございます。

地銀・第二地銀等につきましても、債務者格付の実施状況は、約70%に及んでおりまして、2年以内に実施予定であるというようなことをお答えになったところが 100%になっておるわけでございます。

次の10ページ目になりますけれども、今回の見直しに合わせまして、オペレーショナル・リスクを計量化していくべきではないかという議論が活発化しておりまして、何らかの方法でこういったリスクにつきましても自己資本規制に取り入れるとの考え方をまとめまして、各界の御意見を仰ぐという方向になっております。

このオペレーショナル・リスクは、事務事故や不正行為などによって損失が発生するリスクでございますけれども、こうしたものをより積極的に見ていこうという背景には、三つほどの背景が考えられるのではないかと思います。

一つは、オペレーショナル・リスク自体が増大していると考えられることでありまして、業務の高度化とかアウトソーシングの拡大とか、ITへの依存、訴訟等に伴うリスクが増大しているということでございます。

2番目は、銀行毎のリスク特性が非常に多様化しているということでございまして、今までは一律の規制で見ていたわけで、信用リスク等のオペ・リスクというものははっきりと意識化しなかったわけでございますけれども、リスクの特性は実際には銀行の業務の内容によってかなり違い得るのではないかというのが第2の点でございます。

第3に、信用リスクの計測を精緻化していくということになってまいりますと、オペレーショナル・リスクにつきましても、精緻な見方をしていく必要があるというような考え方が出てきているわけです。

現在、当方としては、日本銀行の御協力も仰ぎながら、バーゼル委員会の検討に積極的に対応しておりますけれども、冒頭で申し上げましたように、来年の1月には第二次の市中協議という形で一般に公開されて、さらにコメントを求めていくというような作業が予定されておりまして、今後また必要に応じまして、随時御報告させていただきたいと存じております。

以上でございます。

○ 貝塚会長

ただいまの御説明、BIS規制の見直しについて、だんだん規制の内容がかなり高度、技術的な側面が加わりつつありますが、何か御質問ございましたら、どうぞ御自由に御発言ください。

蝋山委員。

○ 蝋山委員

かつての88年のバーゼル合意に至るプロセスでは、日本は大変おもしろい役割を演じたというふうに世上言われているわけで、本当かどうか知りませんが、しかし、それがよかったかどうかは別にして、少なくともある種の国策としての戦略があったと思うんですね。何をこういう自己資本比率規制の中で日本としてかぶせているのが望ましいかというのを持っていたというふうに言われるわけですね。

今回の場合、金融庁は、どういう基本的なスタンスでこのBIS規制の見直しというものにいわば取り組んでおられるのか。今回はむしろそういう国策みたいなものは、国としての戦略みたいのはなく、戦術はなくて、全体の流れの中にアダプティブに適応していくんだと、こういうようなことも一つのスタンスなのかもしれませんけれども、教えていただきたいというふうに思います。

○ 貝塚会長

どうぞ、ただいまの御質問。

○ 大久保参事官

世界共通の資本規制を作るという作業、あるいは見直すという作業でございますので、単にG10、いわゆるバーゼル委員会に参加しているメンバーだけではなく、幅広い世界の動きを念頭に置きながら、リスク管理あるいは競争条件の著しい違いがないというようなことを念頭に置きながら国際的な作業が行われているわけでございますけれども、そういった全体的な見直しの中で、我が国としてどういうところを重要視しているかということをあえて申し上げるといたしますと、そういった全体として適用可能であると同時に、我が国の実態というものをよく考慮したものとする必要がある、ということがまずいえると思います。金融機関自身のリスク管理手法が進んでいるというような現状を踏まえますと、一律の規制をいつまでもやっていくことは、望ましいと言えませんので、金融機関の選択というものをできるだけ盛り込むというようなことが一つの視点になろうかと思いますし、また、間接金融の非常に重要な部分である中小企業、個人への融資という点について、小口への貸付のリスクの分散とか、あるいは中小企業向け、個人向け融資の特性というようなものにもできるだけ配慮した扱いになるようにというような視点を念頭に置きまして、精力的に交渉しているというのが現状でございます。

そのほかに細かな点で申しますと、例えば、オペレーショナル・リスクについての議論が活発化しているわけでございますけれども、邦銀の場合のオペレーショナル・リスクの管理の仕方というのは、いろいろな計測の仕方があると思いますけれども、基本的に事務ミス等は少ないわけでありまして、そういったものは外国でも参考になるわけでありますから、そういった特性も反映されるような余地があるのではないかといったようなことも主張しておりますし、また、格付機関の利用方法等につきましても、我が国の実情に即した形になるようにというようなことを念頭に置きながら当たっているのが現状であろうかと思います。

○ 貝塚会長

ほかに御質問あるいは御意見ございませんでしょうか。

吉野委員。

○ 吉野委員

関連してといいますか、前に福間委員がちょっとおっしゃったんですが、協同組織金融機関のような小さいのところの、ここでは第二地銀までは非常に精緻化が進んでいると思うんですけれども、今後とも中小のところもきちんとできるようにやっていただければと思います。

要望ですので、よろしくお願いいたします。

○ 貝塚会長

ほかに御意見あるいは御質問ございませんでしょうか。

田中委員。

○ 田中委員

グローバルなリスクがいろいろあるんですけれども、例えば、ごく最近で言うと、ヨーロッパでモーバイルフォンについて入札が行われて、日本円にして10兆円ぐらいで取得したところに対して大手銀行が融資されているようですけれども、モーバイルフォン・システムというのは一体どのぐらいのキャッシュフローを生み出すかについて、それほど経験値はないわけで、今、日本の企業が何かを話して世界が聞くということは、残念ながらほとんどないんですけれども、NTTドコモがiモード等の経験を踏まえて、彼らが話すと世界中はそれを聞くということになっているんですが、このケース。

例えば、ヨーロッパで大きなシンジケーションが行われて、どうも貸金が回収できないんじゃないかというのがマーケットに流れますと、相当な影響が出ていますね。そういうのはこのBIS規制の中で共振的といいますか、振れちゃうという一つの大きなシンジケーションが行われて、実際にはどこの国というのではなくて、横断的に大きな影響が出る。もし大きな影響が出たら大変なことになりそうだという雰囲気がありますね。リスクプレミアムが社債についても、最近、情報関係について、非常にリスクプレミアム高くなってきているんですけれども、そこはどうなるのかな。

これを見ますと、債券についての格付と、それから信用格付とが何かごっちゃになっているような気もしないでもないんですが、これは区別して、そういう社債についての格付と、それから、商業銀行が持っています別の形での情報に基づいて信用格付というのがあるんだと思うんですが、これは区別されて議論されているんでしょうか。そこのところ、最近の情勢に絡んで気にしているものですから、ちょっと教えていただければと思います。

○ 貝塚会長

今の点、いかがですか。

○ 大久保参事官

直接のお答えになるかどうかわかりませんが、そもそもの自己資本比率規制というのは、信用リスクの規制ということで導入されたわけでございます。信用リスクという、文字通り統計的に言えば、倒産のリスクといいますか、そういうことが最も念頭にあったわけであります。しかし、御指摘のように証券化が進んでまいりますと、単に貸出先、あるいは持っている債券の保有先が倒産するという確率だけではなくて、その債券の値段の変動が非常に大きなリスクのエレメントになってまいりますので、それをどう管理するかという問題も出てくるわけでございまして、市場リスクの見直しというようなことが90年代半ばに行われたのも、そういったことが一つ念頭にありまして、トレーディングブックになるものにつきましては、これを別の扱いをして、そういったところを別の考え方でよく見ようという扱いになっていったわけであります。

そういう意味では、今回の見直しも基本的には信用リスクの規制の見直しでございますけれども、証券化の進展に応じて、そういう側面についてどの程度焦点を当てるかというのは、全体としてかなりのテーマになっておりまして、これはいろいろな側面でそういったことの問題意識は出てきているかと思います。

なお、自己資本規制は、個別の貸付等につきましての規制するというような性格ではなくて、銀行自身全体が持っているポートフォリオ全体のリスクを見ていくというような考え方でありますので、個別のものについての感度の問題は、またちょっと別の視点で考えていく必要があるんだろうかと思います。

○ 貝塚会長

ただいまの田中委員の御質問は、一応形の上では信用リスクの中に入るという話だと思いますね。

ほかに何か御質問ございませんでしょうか。

もしよろしければ、BIS規制の話は、この辺で終わらせていただきたいと思います。

それで、先ほどもいろいろ話が多少出ておりましたが、事務局から、今後の金融審議会の体制につきまして、御説明いただきたいと思います。

有吉課長。

○ 有吉企画課長

先ほど再生委員長の挨拶にございまして、また、8月に金融庁に移管された冒頭も御説明申し上げたかと思いますけれども、来年の1月6日、中央省庁等の再編が行われます。それに伴いまして同時に、この審議会の統合といったことがされまして、基本的に各省で政策審議機能を持つ審議会は一つに統合すると、こういう考え方でございます。それに伴いまして、現行で言います金融審議会、金利調整審議会、自動車損害賠償責任保険審議会、これの政策審議機能、それから公認会計士審査会、これの政策審議機能、これら四つの審議会が統合されて、新たな拡大された──というのですか、──金融審議会というのが内閣総理大臣・金融庁長官及び財務大臣の諮問機関として新たな体制になってスタートするということになります。

こういったことで、金融審議会の体制が抜本的に変わります。そういうことから、本日が今体制というか、現金融審議会での最後の会議ということになります。平成10年8月の、これは大蔵省での時代でございますが、当審議会の発足以降2年半、また、この8月、金融庁に移管されましてから半年間でございますが、皆様の御尽力に厚く御礼申し上げたいと思います。

どうも大変ありがとうございました。

○ 貝塚会長

私からも一言だけ御挨拶させていただきたいのですが、今課長から御説明ありましたように、中央省庁がかなり目まぐるしく変わりつつありまして、それに応じて審議会の体制もかなり変わりつつありまして、金融庁は中央省庁の再編の先陣を切って設立された組織ということになります。金融庁移管後は、前にもお話がございました「経済、金融を取り巻く環境の変化を見据え、安定的で活力ある金融システムの構築及び金融市場の効率性、公正性の確保に向けて、金融に関する制度の改善に関する事項について審議を求める」これが審議会に対する諮問でございまして、この年末を目処にして精力的に審議を行ってまいったということでございます。

第一部会では、先ほど来御説明ございましたが、柳澤委員長にお渡ししました報告書をおまとめいただいたわけでありまして、ワーキング・グループを含めて数多くの会合を開いていただきまして、精力的に御審議いただきました。

現在、金融のシステムというのは依然として非常に流動的、あるいは非常に変化しつつありまして、その中で喫緊の制度整備が必要となるものはいろいろありまして、この報告書もその点に関する提言でありまして、意義の大きなものだと考えております。

当局におかれましては、本報告書を踏まえまして、法令改正等所要の制度整備に速やかに取り組んでいくことを期待いたしたいと思います。

以上が第一部会でございますが、第二部会につきましては、保険会社における金融商品の時価評価の導入の意見の集約、それから、先ほど来御議論がございましたけれども、個人信用情報の保護・利用の在り方につきまして御審議をいただきました。個人信用情報につきましては、先ほど来御議論がありましたように、大綱はとりまとめられたわけですが、法制的にどういうふうになるかということは依然としてまだ未確定な部分が相当ありまして、それに対応して金融分野の個人情報の保護について考えていく必要があるということでございますが、第一部会においてもこの点は御検討いただくという整理でありまして、第二部会あるいは第一部会の御議論も踏まえまして、この検討を今後とも最大限活用していただけるものであると思い、そういうふうにしていただきたいと思います。

それから、先ほどちょっと御説明しましたが、基本問題に関するスタディグループでは今も議論が続いておりまして、来年1月以降、新たな金融審議会の再設置ということに多分なると思いますが、スタディグループもそのまま引き続き、自由闊達な御議論を期待したいと思います。

金融庁へ移管しましてからこれまで、期間はわずかでございますが、いろいろ多角的な活動を行うことができましたことは、蝋山・倉澤両部会長、第一部会のワーキング・グループの神田座長はじめメンバーの皆様が、御多忙にもかかわらず審議会の活動に熱心に御参加、御尽力いただいた賜物であろうと思います。審議会の会長として改めて御礼申し上げて、簡単ながら私の御挨拶を終わらせていただきます。

どうもありがとうございました。

それでは、今日の審議会の総会は、これで終わらせていただきます。

以上

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