金融審議会総会(第14回)・金融分科会(第4回)合同会合議事録

日時: 平成14年9月30日(月)14時00分~15時35分

場所: 中央合同庁舎第四号館(9階)金融庁特別会議室

○ 貝塚会長

ただいまから、第14回金融審議会総会を開催させていただきます。

本日は、前回に引き続きまして、金融分科会の専門委員の方々にもご出席いただきまして、金融分科会との合同会合という形で開催させていただきます。皆様ご多用のところ、ご参集くださいまして、ありがとうございます。

本日は、前回に引き続きまして、我が国の金融システムの中期ビジョンについての議論を行いたいと思います。

中期ビジョンにつきましては、7月31日の総会において検討を始め、7月31日の総会及び9月9日の合同会合でのご議論などを踏まえ、このたびスタディグループで本日答申として取りまとめを予定しております「中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョン(案)」をまとめていただきました。これについて、スタディグループの座長を務められました蝋山金融分科会長からご説明いただき、その後、皆様からご質問あるいはご意見をいただきたいと思います。

それでは、蝋山分科会長、よろしくお願いします。

○ 蝋山分科会長

スタディグループでは、これまで与えられました、いわゆる中期ビジョン、中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョンをどういう形で成文化しようか、さまざまに議論いたしまして、今日ここに提出させていただきましたようなものにまとめることができました。スタディグループの先生方には感謝したいと思います。

今日お配りしたのは、まず頭の方にこの案の概要がついておりますが、その後、「中期ビジョンに関するスタディグループ報告」という、目次・表紙を入れて全体で32ページのものがついております。その本文は全体で29ページですが、さらにこの報告書(案)につきましてのコメントを、今日ご欠席の井口委員から頂戴いたしましたので、それを添付してあります。

今日は時間も十分ではありませんし、その概要というメモ書きに即して、この中期ビジョンの内容をご説明させていただきたく思います。

これは、柳澤大臣の私的懇話会の構成とほぼ同じでありまして、第1部が将来ビジョンを描く。将来どういう姿に日本の金融を持っていくことが望ましいのか、その将来ビジョンを描くというのが第1部。それから第2部。今日の状況から将来ビジョンへ、いわば橋をかけるわけでありますが、そのプロセスをどう考えたらいいだろうか、そこでの取り組むべき課題は何かということを整理したものということになっております。

そういう点では、私的懇話会での報告書の下敷きとして、その私的懇話会報告書を発表した後、頂戴いたしましたご批判等もある程度取り入れる形で、この中期ビジョンは書かれているとご理解いただいてよろしいのではないかと思います。従いまして、この私的懇話会の報告書をお読みになった方にとってみると、何だ、それの二番煎じじゃないか、こういう部分は少なからずあることは私も否定いたしません。しかし、例えばこの枚数が、私的懇話会の報告書は全部で62ページだったかと思いますが、それが29ページ、半分ぐらいになりました。いわばぜい肉は省いたつもりであります。

それから、「はじめに」という短いものではありますけれども、報告書の冒頭に、なぜ今こういうビジョンといったものを明確にしなければならないのかということの我々の問題意識も、この経緯とともに紹介してあります。

中身に入りますが、第1部の「将来ビジョン」において、私的懇話会でのビジョンとやや異なっているかなと思われる点は、「複線的金融システム」という言葉を多用しているからであります。もちろん、私的懇話会でもこういう表現を使っておりましたけれども、目次等その他において積極的に、全体像としてはこの「複線的金融システム」。現在でも、もちろん株式市場、債券市場はそれなりの機能を果たしているわけで、いわゆる直接金融、あるいは投資信託や、その他を経由しての市場型の間接金融も機能しているわけでありますけれども、基本は預金貸出、リレーション・バンキング、ここでいう産業金融モデルを中核にした金融システムになっている。そういう点では、今でも複線的金融システムという表現は、現状を表現するのに余り使われませんけれども、形の上ではそうなっているわけでありますが、これから目指すべきなのは、そうしたマーケットを経由する、ここでいう市場金融モデルと同時に、産業金融モデルもそれなりの変貌を遂げながら存続するという姿を明示している点であります。

しばしば誤解があって、将来ビジョンとして、マーケット・メカニズムを活用しよう、そして市場を通じる金融仲介、資金仲介を基本にしていこう、こう申し上げますと、例えば長野委員の属されていますような産業においては、一体どうなるのだ、こういうご疑問があって、我々は見捨てられるのではないかという、ある種のご理解をされるようなことを避けるために、ここでは「複線的金融システム」というものが市場金融を、産業金融モデルも存続するが市場金融モデルの役割がより重要になるという意味で、市場機能を中核とする複線的金融システムへ日本の金融をリストラしていく、再構築する必要があるということを明瞭にしている点、前回以上に気を配ったつもりであります。

こういう複線的金融システム、市場機能を生かす複線的金融システムに向けた取り組みをどういうふうにしたらいいだろうか。そのためには、こうした複線的金融システムのもとで、それぞれの金融主体、あるいは金融にかかわる経済主体がどういう行動をとることが望ましいのか、またそういう行動をとることによって、そうしたシステムへの再構築の取り組みということになるわけですが、その点を第2章のところで説明しております。金融仲介機関の基本的な姿はどういうものであろうか、それから企業、個人のかかわり方はどうなのか、行政の取り組みはどうなのかということであります。

ここで金融仲介機関と申し上げているのは、非常に広く意味する言葉としてとっております。すなわち、家計を中心とした貯蓄を企業や政府を中心とした投資主体に資金を移転する過程を円滑にするために存在する、さまざまな専門的な業務に携わる組織・企業全体を金融仲介機関と呼んでおります。

そういう金融仲介機関は、おおむね3つの基本的な方向を考えるべぎではないだろうか。第1は、適正なリスク評価に基づくリターンを確保するということ。コストやリスクに見合う適正なリターンを確保するということは、当然かもしれませんけれども、改めてこういうことを申し上げているわけであります。

それから、さまざまな業務がそこでは展開され得るわけであって、それを1つの組織がすべてやっていくということには無理があるだろう。金融仲介機関の機能の分化、専門化というものが生かされ、競争の中で展開されなければならない。

3番目は、個人や企業とのかかわりとも関係してくるわけでありますけれども、さまざまな対応で、魅力のある金融商品の提供というものがなされなければならないし、またそれらに対するアクセスの改善が必要である。こういう観点から、利用者保護ということも大変大事な課題になってくるということを述べております。

企業、個人のかかわり方につきましては、企業は成長段階等さまざまな企業が考えられるわけでありまして、多様な資金調達手段が提供される必要がある。しかし、そういう多様な資金調達手段をすべて利用可能な企業というのは、ごく限られたものではないだろうか。そして、相当多くのいわゆる中小企業といわれる企業は、マーケットとの関係においては一定の距離というものが置かれざるを得ない。しかし、そうであっても、たとえば企業の金融機関に対して発行した債務が証券化されて、金融機関は市場から資金を調達するというように、間接的な形だけれども、企業はこの市場からも資金が利用可能なようになる、そういう姿が考えられるのではないかというわけであります。

また、個人にとっても、個人が個々のさまざまな金融商品すべてを自由に選択できるということは、実現不可能な話であります。個人は、さまざまな金融サービスを経て加工された金融商品を、さまざまな形で利用される。企業の発行した債務を直接企業が取得する、いわゆる直接金融というのは、もちろん存在するでしょうけれども、それにすべてを任せるというわけではないと考えられるわけであります。

そして、利用者保護の観点から、安心して、そうしたさまざまな多様な金融商品というものを入手し、いわば投資できる、そういう環境の整備が重要であることを強調しております。

行政としては、こうした利用者保護の推進のみならず、競争促進のための環境整備とともに、金融仲介機関の機能分化、専門化の進展に応じた機能主義という観点から行政政策を実行することが必要だ。そういう点では、業態を前提にした行政というものについては、このレポートは批判的な目を向けているわけであります。

それから、市場機能を中核とする複線的な金融システムにおいては、市場が信頼性を国民から頂戴するということが大事でありまして、そのための市場整備が必要である。同時に、市場に対して十分な理解というものを得られるよう、消費者教育や利用者保護の推進ということも、大切な行政の課題として浮かび上がってくるわけであります。

さらに言うまでもなく、こうした市場機能を中心とした複線的な金融システムにおいてのシステミックリスクへの対応ということも、また行政の取り組むべき重要な問題であります。

さらに広く金融行政から離れて行政全般を考えますと、公的金融というものがこういう観点とも整合的な形で改革する必要があるだろう、という指摘も行っております。すなわち、公的金融というものの存在が、こうした市場機能を壊すようなものであっては、あるいは機能不全を起こすようなものであっては困るというわけであります。

こういう複線的な金融システムにおいてどういう資金供給が行われるかということを、規模の大きなネームのある借り手が登場するホールセール金融の場合、それからリテールの金融の場合、そして新たな事業を展開するベンチャー企業の資金調達がどんな姿になるだろうかということを、例示的に第3章では説明しております。

そしてまた、この複線的な金融システムにおいては、新しいタイプのさまざまなマーケットと個人、マーケットと企業を結びつける金融サービスの提供が行われなければならないし、またそこに1つの商機があると思うわけでありますけれども、そうしたマーケットと個人、マーケットと企業の間に介在するさまざまないわば金融サービス業について、ここでは市場型間接金融の役割という形で第3章の第2節で展望しております。

さらに、第3章の第3節では、日本の金融のこういう形の変貌の中で、特にアジアとの共生ということが大事な課題になるし、こうしたいわば市場金融モデルへの変質ということは、アジアとの共生という点から見ても望ましいことであるということが述べられております。

こういう複線的な金融システムを具体的にどんなふうに実現させていくのか、そのプロセスについてまず第1に考えられるのは、広い意味での金融仲介機関のビジネスモデルの転換ということであります。こういうマーケット中心の世界というものをみずから切り開いていくような新しいビジネスモデルというものを、金融仲介機関にはそれぞれの経営資源の得手不得手というものを考えながら期待したいと思うわけであります。それと同時に、証券市場の改革が促進され、複線的な金融システムにおいての中核的な存在となるよう、またそのことが国民から十分に信頼されるよう改革を促進していく必要があるというのが第2の点。3番目は、行政として、こうした複線的金融システムをより早期に構築するためにやれることは幾つかあるはずでありまして、そういうやれることはやっていこうということ。こういう3つの基本的な考え方を中核にして、具体的にそれぞれの内容を第2部の第2章から説明しているわけであります。

第2部の第2章では、金融仲介機関のビジネスモデルの転換ということで、いわゆる銀行、信用組合等も含めた預金取扱金融機関、広い意味での銀行についてどうなのか、証券会社についてはどうか、保険会社についてはどうか、また投資信託等の機関投資家についてはどうなのかということが、まず第1節でそれぞれの業務に分けて、現状そうなっているわけでありますから、それの架け橋としての機能の発揮を期待するべく内容を説明しておるわけであります。この辺は、柳澤私的懇話会においてはやや説明が不十分だった点だと我々は認識しております。

2番目に取り上げているのは、こういうビジネスモデルの転換ということ以外に、合併等の促進策の位置づけであります。合併をすればよくなる方向に進んでいくのだ、こういうふうに我々は必ずしも考えておりません。しかし、合併が1つの選択肢であるということは否定できないわけで、特に地域金融機関の将来像を考えたときに、得意分野への経営資源の効果的な投入に加えて、合併等による組織の再編ということは有力な選択肢である。そういう有力な選択肢が制度的にいわば阻害されては困りますので、合併等については手続面等の障壁があることから、それを支援する施策を講ずることが重要であると指摘しております。しかし、このことは金融機関の皆さん方に合併をしなさいと申し上げているわけでは必ずしもありません。

それから、ペイオフの解禁と決済機能の安定確保という点につきましては、金融システム全体の効率化という観点からは、預金保険制度が本来の趣旨、すなわち少額預金者保護の原則に戻るということが適切な判断であると我々は考えます。

しかし他方、現状の金融機関の経営状況を考えてみると、あるいは銀行の産業としての現状を考えてみると、決済機能の安定確保ということは一方で必要不可欠な公共的な使命であります。このため、金融機関が破綻したときに全額保護される新しいタイプの仕組みを設けて、決済途上にある取引というものを確実に完了させることが必要ではないかと考えまして、前の決済預金という新しい制度の導入というものについて、この部分においてもそれを支持するステートメントがあるわけであります。

4番目は、不良債権の処理ということであります。これは、それぞれの金融機関が市場原理を活用しつつ、迅速に処理を進めることが不可欠であって、同時に不良債権の問題は企業の過剰債務という側面があるわけですから、この点も無視できないだろう。また、マクロ経済全体としてのデフレ克服というものが重要な問題であると指摘しております。

こうした不良債権の問題の処理のためにも、銀行の収益力の強化ということはどうしても取り組まなければならない命題でありまして、そのためのビジネスモデルの展開、あるいは貸出債権の証券化の推進といった市場金融モデルへの転換自体もまた、不良債権との絡みでプラスに評価されるのではないか。また、不良債権の処理がそうした市場金融モデルへの転換を促すことになるのではないか。こういう両側面のあることを強調しております。

銀行監督行政については、銀行の経営の健全性を確保すべく厳正に検査監督を行う必要性があることは、引き続き現状でも変わらないわけであります。さらに、銀行監督行政の基本はあくまでも銀行経営の健全性の確保であって、経営の健全性というのは経営全体にわたり総合的に判断するべきことではないか、という指摘も行っております。

第2部の第3章では、証券市場の改革促進に向けた最近の取り組みを含めて紹介し、それをサポートする姿勢を示しております。

第1は、市場の公正性・透明性の確保を通して、市場に対する信頼性を高めるということであります。また、市場自体の安定性・効率性の向上である。3番目は、幅広く国民が市場に参加することを促そうということであります。

最後の第4章では、こういう複線的な金融システムへの転換、あるいはこのシステムを早期に構築するということのために、まだどういうことができるかということで、1つは公的金融の改革を具体的な形で念頭に置きながら、特に政策金融機関による貸出債権証券化の推進といったことは、複線的金融システムの早期構築に資することになるのではないか、という視点を明瞭にしております。

もちろん、郵貯・簡保の民間金融とのイコール・フッティングの確保が必要であるということも、見逃せないことであります。

さらに、最後に税制については、取引の実態を含めた、将来を見通した簡素でわかりやすい税制が必要である。同時に、これまでの貯蓄優遇から投資優遇への流れを促進するための税制が、金融にとっては大変大事だということを強調して締めくくっております。

以上、やや舌足らずになったかと思いますが、20分という時間の制限の中で、我々のスタディグループがまとめました中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョンについて、ご紹介をさせていただきました。

以上であります。ご清聴ありがとうございます。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございます。

それでは、中期ビジョン、「我が国金融システムの将来ビジョン(案)」につきまして、皆様からどうぞご自由にご発言、ご質問、ご意見をいただければ。どなたからでもどうぞ。

○ 蝋山分科会長

先ほど冒頭で触れましたが、今日ご欠席の井口委員からご意見を頂戴しておりますので、それを事務局の方からご紹介いただきたく思います。山沖さん、よろしく。

○ 山沖調査室長

井口委員から、お手元に2枚の紙が出てきておりますので、簡単にご紹介したいと思います。

まず、最初のページの前段の部分をご覧ください。3つ目の段落で、「9月9日に開催されました前回の会合で、私は、」ということで、3点ばかりお話をされています。1つ目は「市場機能を中核とした複線的金融システムの再構築」の要素として、「リスク」、「証券化」、「資本市場」、「機能別分化・専門化」及び「販売の融合」という5つの関係が挙げられており、2つ目が、損保会社はこうした要素についてかかわりを有しており、市場金融モデル構築の1つの担い手であるということ。3つ目が、損害保険固有の機能である損害のてん補を核として、あらゆるリスクについての解決を図るリスクソリューションビジネスへと進化し、市場金融モデルが目指す姿で多くの金融サービスを提供する金融事業を遂行することが損保の新しいビジネスモデルを構築することであるとの意見を前回述べられ、この報告書案を拝見して意を強くしておりますということです。

報告書案に盛り込まれた内容につきましては、今後の行政当局を中心に具体化に向けた検討が進められると思いますが、損保経営に携わる者として2点意見を申し上げたいということで、報告書案の今後についての具体化の検討に際しての意見をいただいております。

第1は、損害保険のセーフティネットについてということで、これにつきましては、いろいろ書いてございますけれども、次のページの3つ目の段落、「ご当局において、今後セーフティネットの制度の見直しをされる際には、損害保険のセーフティネットにつきましても見直しをしていただくことをお願いいたします。」と書かれています。

第2は、今後のビジネスモデルの展開について、「保険会社をとりまく関係者の皆様のニーズを把握し、革新的な戦略を企画し推進していくことが求められていることは言うまでもありません。」ということです。さらに続けて、「例えば、商品の開発・販売・運用についての機能別分化・専門化、販売面での融合などについて、お客様のニーズに合致し、事業効率を高めるような展開をして参りたいと考えております。」ということです。最後に、「行政ご当局におかれましても、規制改革などの環境整備の面で、我々の後押しをしていただきますようお願い申し上げます。」という意見をいただいております。

以上です。

○ 貝塚会長

ただいまのビジョンについて、皆様のご感想でもよろしいですし、あるいはご意見、こういう点、どうなのかというご質問……。

○ 奥本委員

ありがとうございます。若干、意見を申し上げさせていただきたいと思います。

行政の取り組みというところで、先生からのご説明、業態横断的な金融行政機構の必要、そういった方向を目指すということについて、理解できないわけではないのですが、せっかくいろいろ証券市場について、これからの問題点、いろいろ触れていただいている中で、我々の希望といいますか気持ちとしては、やはり証券市場の行政の重要性を考えるときに、証券市場を担う業態横断的な機能について、金融庁内でもう1つの専門部局というものがあってもいいんじゃなかろうかということを常に考えております。

つまり、先般、証券市場行政総括官という制度をつくっていただきまして設置していただいたことについては、私どもも大歓迎しているわけですが、証券行政全体を見ていく中で、もう一歩突っ込んだ格好で行政が出てきてもいいのではないか。つまり、証券市場の今後のビジョン、今後のあり方を考えるときに、やはり今の形が悪いというわけではないのですが、どうもやっぱり横断的な議論になってくると、証券市場というのが本当に中心になって考えていただけるのかということを感じておりまして、もうちょっと行政の役割を出してもよろしいのではないかという気がします。

○ 貝塚会長

ただ今のご質問は、うんと昔、大蔵省時代には、銀行局と証券局がやっていることでございまして、金融庁に移りましてからは、私は所管はどういう形になっているのか、正確なことはあれですが、現状の行政における証券の取り組み方について、局長お願いします。

○ 蝋山分科会長

僕も一言言わせてほしい。藤原さんも恐らく……。

今の奥本委員のご指摘は、幾つかの内容があると思うのです。1つは、現在の一定の金融行政に関するリソースが、与えられたものとして、リソースの使い方として、もうちょっと証券市場行政というものに力を入れてくれ、こういうご意見、そういう側面も言葉の端々には私は感じられました。非常に賛成であります。

2番目として、そういう金融行政全般のあり方として、証券市場行政も含めてどういう行政組織がいいのだろうかという点について、この9ページの行政の取り組みというところでは、ややイギリスに典型的に見られるような、イギリスのファイナンシャル・サービス市場局、金融サービス市場局に見られるような組織がいいのではないかというニュアンスが感じられる。しかし、奥本委員のご判断では、それよりもアメリカ的な、SECのような、あるいはSECと商品先物委員会を一緒にしたような市場局のようなものが望ましいのではないか、こういうご意見という面も……。

○ 奥本委員

SEC云々までは踏み込んでいないのですけれども。

○ 蝋山分科会長

私の解釈を拡大し過ぎているかと思いますが、ここでは確かにおっしゃるように、業界横断的なFSA制度のようなものにややフェイバブルな、好意的な表現になっていることを私は否定しません。その点について、それはちょっと問題じゃないかというご意見があるとすれば、それは十分あり得ることではないかと思います。

しかし、前半の方の証券市場行政は非常に大事ですよという点では……。

○ 奥本委員

だからこそ。(笑)

○ 蝋山分科会長

だからこそですか。だからこそ、専門化させるということに直につながるかどうかという点は、ここでは違う判断を示しておりますということを申し上げたい。ちょっといい過ぎた面があるかと思いますが、藤原さんにカバーしてもらいます。

○ 藤原総務企画局長

現実の我々が行政をやっていく場合、この答申にも書いてございますように、今や資本の側でもコングロマリットといいますか、銀行、証券、保険、信託、入り乱れて、持ち株会社等を通じて資本がかなり入り乱れた形になっている。商品の側でも、かなりハイブリッドな商品が出てきている。そういうものを検査監督していく場合、やはり縦割でやると非常に、というかもはやそれがなかなか難しいという世界に立ち至っているというのが事実であります。したがって、我々が現実に行政をやる場合、検査監督等をやっていく場合は、横断的にやらざるを得ないという状態になっているのは、1つご認識いただきたいと思っております。

他方、現下の証券市場の低迷、株価の低迷、いろいろな要素から、証券市場をもっと特別なものにして何とか活性化してほしいという要請については、私どもも十分認識しております。

従いまして、先程奥本委員からのお話にありましたような、ここにいる大久保証券市場行政総括官というようなことにしまして、金融庁全体の、証券取引等監視委員会も含めて総合的な窓口として、ともすれば今までどこに行ったら誰に話したらいいのかよくわからないじゃないかとか、あるいは誰に苦情をいったらいいのか、要望も誰に持っていけばいいかわからないとか、そういうものに対して、全庁的に窓口を1つにし迅速に対応できるというような体制は整えて、これからそれが動き始めるというところでございます。

従いまして、我々は決して証券市場の重要性を低く見ているわけではありませんし、むしろこの答申で書かれているように、これからやりますよということを決意表明しているわけでございますので、そこのところをもう少し成果をご覧いただければと思っております。

○ 奥本委員

ありがとうございました。

○ 貝塚会長

ほかに質問、ご意見。

○ 奥本委員

もう1ついいですか。ここに何カ所かで触れているのですが、教育という問題があると思うのです。いわゆる証券教育。

この答申の中に何カ所か証券会社の信頼の問題に触れられていまして、そのこと自身若干心外な部分もあるのですが、証券市場の信頼という点については、謙虚に思いますし、そのことの重みは十分わかるのですが、基本的にはやはり証券教育という問題があるのだと思っております。

このことについてここでも触れているのですが、もう一歩踏み込んで、例えばかつて戦後の貯蓄増強にどれだけのエネルギーを使ったかということを考えますと、証券教育の部だけの1つの部局、そういう担当窓口が金融庁の中にあってもいいのではないか。そのくらいの踏み込みを証券教育というものにしないと、なかなか難しい。

我々自身も、実はこのことについてはこの1~2年は大変な努力をしているつもりですが、壁というか、基本的に学校教育の部分でなかなか取り上げてもらえません。株式とは何か、株式会社とは何かというような基本教育ということの必要性というのは大変重要なのだと思うので、そのためにはやはり、もうちょっと積極的にといいますか、これも踏み込んでいただきたい面の1つであります。

○ 貝塚会長

この話は、以前からいつも話題にはなっているのですが、必ずしも証券教育という投資家に必要ないろいろなことですが、金融商品に関する教育が必要だというのは、金融進化論、あちこちの機会にそういうご意見はあるのですが、それは全くそのとおりなのですが、大学の教師として、社会科の入試には多少関係しますが、どうも結局なかなかその問題、教育のウエートは何となく低いのです。そういうこともあって、これはどういうチャンネルでやっていくのかということもありまして、おっしゃることはもっともだと思いますが、何か今の点について……。

○ 蝋山分科会長

僕よりも高橋委員に、現状についていろいろご説明を受けた方がいいのかと思います。

奥本委員のご指摘は、まさに的を射たご指摘であるわけでが、1つだけコメントすれば、必ずしも証券教育に限ったことではないと思います。金融全体についての教育は非常にレベルが低い、こういう認識を私はしております。

例えば、今はほぼゼロ金利だとはいっても、消費者金融からお金を借りたときに十数%の金利がつく。それがどういう意味を持っているのかということについて、明日返せばどうせ何十円の単位なのだから、という感覚以上のものはなかなかないわけです。

しかし、ベストセラーで、今なおベストセラーである宮部みゆきの『火車』という小説をお読みになればおわかりのように、ああいうものがあれだけたくさん売れているというのは、そうした問題に関する関心の厚さと、それに対する手だての不足ということの現れではないかと私は理解しております。

そういう点では、金融に関する生活者のための、消費者のための教育全体がもっとレベルアップされなければいけない。それは私は、総理大臣や金融担当大臣や文部科学大臣が、新内閣はどうなるのか知りませんけれども、この問題を提起して取り組まれてもいいような大きな問題でないかと思っております。

あとは高橋さんに譲りましょうか。最近、金融広報中央委員会では、ある種の調査をいたしまして、ガイドラインを示しているところでありますけれども、それですらもう半年以上たっておりますが、なかなか実現する目処はついていない。少しずつですが後退はしておりません。けれども目に見えた形でレベルアップまではいっていないというのが現状だと思います。全くご指摘のとおりでございます。高橋さん、どうぞ。

○ 高橋委員

ご指摘の件も含めまして意見を述べさせていただきます。

今回のビジョンは、私的懇話会の報告に比べて金融消費者にあたる個人に対する記述が大分深まっていると感じております。スタディグループにおかれましては、さまざまな注文をお汲み取りくださいまして、ありがとうございました。

競争促進と利用者保護というバランスのとれた環境整備が進められることを、深く願っております。その上で2点、要望を含め申し述べたいと思うのですけれども、1点目は、金融行政の面に関することです。今回、機能に着目した横断的なアプローチが求められるという記述が随所にございました。これは金融ビッグバンのシナリオ作りであったり、あるいは2000年までの法整備の際にも重要性が認識されながら、なかなか実行されなかった点でもあるのかなと私は思っております。

今回のビジョンでは、業態を前提とした行政手法からの脱却ということが、より明確に示されているわけですので、行政におかれましては、その辺につきまして国民により明確な表明をしていただきたいと私は思っております。

これまでの中で、横断的アプローチということでは、利用者に対して金融サービス法の第一弾である金融商品販売法というものを施行することで、その辺を示されたと思うのですけれども、先に発表になりました第32回の国民生活動向調査で、この金融商品販売法の認知度を調べているわけですが、これが何と3.2%という、消費者関連法の中では最低の周知度という調査結果が出ているのです。この周知されていないという問題と、この法律自体の効果が疑わしいと消費者団体等からご指摘があるところなのですけれども、そういう状況にございますので、短期間に金融商品販売法の検証をして、何が欠けているのかを検討し、必要な措置をしていただきたいと思っております。

2つ目は、先ほど奥本委員からのご意見に関連したことにもなるかと思うのですけれども、架け橋のプロセスをサポートする審議会も含めた体制について申し上げたいと思います。

前回蝋山先生の方から、ビッグバンのプログラムでは、証券、銀行、国際金融局という足し合わせだったけれども、今回それは違うのだというご説明をいただきました。大変心強く思っておりますけれども、そうしたアプローチが明確であるのであれば、例えばこの秋の証券市場改革プログラムも、前回の会議で第一部会の方で議論を深めてというご説明がありましたけれども、もっと幅広く議論していくべきものではないかと私は感じております。

先ほどご紹介しました国民生活動向調査では、国民の78%が、元本保証のない金融商品への関心がないという結果が出ているわけでございまして、この辺を踏まえますと、もう1つの別の部局でやるとか、証券教育という考え方もあるかと思うのですが、私は、それへの架け橋として、他省庁の審議会等でも消費政策部会とか消費者政策委員会を設けているわけですけれども、金融に関しても消費者対策を考える部会なり委員会を設けていただくのが筋道かなと感じております。

審議会も、来年から組織が改編されるということでございますけれども、少なくとも当初から問題が指摘されましたように、現在の第一部会、第二部会、特別部会のような制度では、とても横断的なアプローチはできないわけです。金融分科会がそんなに頻繁に開かれないので、今、1年半経って初めてこういう横断的な議論になってきているわけですので、来年は最初からそういう議論ができるような体制をぜひ組んでいただきたいと思っております。

以上です。

○ 貝塚会長

ほかにご意見あるいはご質問ありましたら、どうぞ。

ビッグバンに関しましては私は少数意見なんですが、なぜ少数意見かというと、ビッグバンというのは、イギリスは現在フィナンシャル・サービス・アクトないしはFSA(フィナンシャル・サービス・オーソリティー)でやっているわけですが、イギリスの法体系と日本の法体系は違っているわけです。日本はアメリカの方といいますか、要するに証券取引法があるわけです。証券取引法というのは、証券取引をやるあらゆる金融機関、取引者を規制している法律でして、特段どの業態とかそういう話ではないわけです。ですから、元々非常に横断的になっているところがあるわけです。

アメリカでは、先ほどお話があったように、SECという独立の規制機関がある。イギリスは最初から全部まとめてやっているわけです。日本はいろいろ複雑な経緯があるのですが、元来基本的にはアメリカ的なものだった。それがだんだん形が変わってきて現状まで来ているということでして、法体系上やや違うんじゃないかというのが元来の私の個人的な意見です。蝋山さんは「いやいや、そうじゃない」といわれるかもしれないけれども、一般法は日本は別にある。イギリスの場合は多分証券取引法というのはない。ですから全体を含んでありまして、その辺が多少ギャップがあるというのが私の個人的な意見で、その辺で、日本の場合今後どういうふうにしていくかいろいろ考えていく必要があるのではないか。これは全く私の個人的な意見であります。

あと、いかがでしょうか。

○ 福井委員

私は、ビジョン全体としてほとんどサポートし得る、賛成だと前回にも申し上げました。その意見に変わりはございません。その上で、今日のご説明ではなくて、分厚い方を読んで2カ所だけ気になるところがあります。

1つは、25ページの真ん中のところ、証券市場の信頼性を得るための監視機構の話です。「証券取引等監視委員会の機能の拡充・体制の強化」となっていますが、ここのところはもっと幅広い議論があり得る。先ほど蝋山先生もちょっと触れられましたけれども、いわゆる日本版SECという議論もありますので、ビジョンとしてはもう少し幅を持たせておいた方がいいのかなと思います。その点が1つであります。

もう1つは、前回のこの会合のときに、蝋山先生と田中委員との間で議論があったことに絡むところですが、15ページとか16ページあたりを中心に、債権の流動化あるいは証券化という非常に重要なテーマについて、読みようによっては、政府系金融機関の役割を少しプレイアップし過ぎているのではないかという点であります。

流動化、証券化は非常に大切なテーマである。私も真っ正面からそう思っているわけですけれども、政府系金融機関がその主役であるとは考え難い。もちろん、これから政府系金融機関の機能見直しが進められていく中で、政府系金融機関が持つ流動化のノウハウというものはある位置を占めていくであろう、それがこの新しいビジョンを実現していくための一助になったり、あるいは場合によってはそれが突破口になったりするという位置づけならば正しいと思いますが、何か少し過度に政府系金融機関の役割を強調するような文章になっていないか、と思われるのです。私自身の考え方にバイアスがかかっていると言われればそれまでですが、バランス感覚を正しく持つという意識で読んで、やはり少しそういうふう感じがいたしました。

以上2つであります。

○ 貝塚会長

ただ今のご質問の1つは、行政全体の将来のビジョンとしてSECがどういうふうに考えられているかということで、この間の蝋山・田中論争は中断したんですか、その点、ですから14ページのあたりについてのウエートづけというんですかね。蝋山先生どうぞ。

○ 蝋山分科会長

まず、前半の方の行政のあり方についてでありますが、先ほど奥本委員からもご質問が出ましたのは、今日お配りしたものの中では9ページの(4)「行政の取組み」という節であります。この文章は、私などが読むとややFSA的なもの、業界横断的なところにフェイバブルなように書いているように読めるわけですが、クールに読めば必ずしもそれに軍配を上げているわけではない。ややという程度だと思います。したがいまして、これからの日本において、市場機能を中核とする市場金融モデルを主にした複線型のシステムでどういう行政が望ましいのかということを、いわば日本版SECも含めて議論をしておく必要があるだろうと思います。

ビジョンとして、今日の段階では、1つの結論、あえて大別するとすればアメリカ型かイギリス型かと考えたときに、どちらだというふうにはまだ軍配は上げておりません。しかし、問題の提起はしているつもりです。藤原局長が言われたように、事実としてさまざまな金融の融合現象が商品面、産業面で出てきているわけですから、そういう問題提起もされていると思うわけであります。

ですから、ビジョンとして、非常に確定的にイギリス型に近いのかアメリカ型に近いのかどっちなのかといわれると、まだちょっと。これから議論しませんかということだろうと思います。しかし、現実から出発したら、行政はどこを重要視しなければならないかというと、先ほど25ページでご指摘のような証券取引等監視委員会の機能の拡充・体制の強化ということは当然ではないか。現状からどちらの方向に向かうにせよ、ここのところを足がかりにしていく必要があるのではないかと考えております。今の福井委員のご質問に対しては、こんなふうな私のリスポンスだということをご理解いただければと思います。

2番目の点は、私が1人で書くとすればもっとプレイアップしたいと思っているくらいなんです。それは相対的な問題であります。すなわち、証券化を促す時に、もちろん民間での証券化等々も考えられますし、また証券化のみならず、それを1つのきっかけにしてここで主張しているような新しい金融システムへの移行を推進していくプロセスも幾つも考えられます。国債の役割もある程度あるでしょう。新しいタイプの魅力のある投資信託の登場といったことも考えられるでしょう。しかし、そういう中で取捨選択していくと、今一番フィージブルなのは、期待できるのはこの点ではないかというのが私個人の判断であります。

こういう個人の判断がやや強くあるものですから、表現としては、そういう点に関して否定的な見方をされる側からすれば、この表現はプレイアップし過ぎだ、持ち上げ過ぎだというふうに評価されるかもしれません。しかし、私としては、さまざまな新商品が登場してともかく国民の預金離れを結果的に生じさせなければならない。結果的にですよ。自発的な預金離れというものが生じなければ、こういう新しいシステムへの移行は完了しないわけであります。そういう点で何が起爆剤になるのかということを考えたときに、今いろいろな起爆剤が登場し、挑戦して失敗してきた。最後に残されているのは、政府系金融機関の証券化作業を経ての新商品の登場ではないだろうか。これは極端に言えば、国民が国民のために良質な資産を提供するということであります。この点を余り重く見過ぎているのかもしれませんけれども、私はこの文章自体はそれほどプレイアップしていない、大いに妥協したと思っています。まだ不十分でしょうか。

○ 貝塚会長

福井委員、何か追加的に……。

○ 福井委員

私が読んだ感じではもう少しプレイダウンを……。(笑)

○ 蝋山分科会長

申しわけありません。例えば神田さんにいろいろ……。

○ 貝塚会長

神田さん、もしご発言がありましたら。

○ 神田委員

何か便乗するような形で済みません。私、前回欠席させていただいたと思いますので、蝋山先生と田中さんの論争というのを伺っていないのですけれども、今の証券化というのでしょうか、「貸出債権の証券化」という表現が使われていますけれども、それと、ついでに行政の点について私なりの感想をちょっと申し上げさせていただきたいと思います。

貸出債権の証券化は、今福井委員がご指摘になったような点とはちょっと違うのかもしれませんけれども、たしか前にビジョン懇の報告を蝋山先生がここにされたときに、日本の金融制度というのは人為的、政策的に推し進めていかなければならない部分があるのだという表現を使われたと思います。私もそれに賛成でして、そういう意味で、私は特に貸出債権の証券化という部分は、現時点で見てみますと、インフラ整備を金融庁として人為的、政策的に推し進めていくのにふさわしい分野ではないかと思います。

なぜそう思うかには幾つかの理由があるのですけども、1つは、何度も申し上げていることですが、アメリカを例にとれば、アメリカは1970年代に、住宅ローンの証券化を国が保証までして人為的、政策的に推し進め、その結果住宅ローンの約半数が1980年代の後半までには証券化されるという状況になって、その中でモーゲージ、日本でいえば抵当権付住宅ローンですけれども、それについての標準化というのでしょうか、元の商品についての標準化も進みました。これが非常に好循環というか、それがまた証券化を促進し、その後いわゆるABSと呼ばれているマーケットが1980年代の中盤から育ち、それがセキュリタイゼーションとして花咲いたわけであります。

金融の証券化というものは日本でもずっと議論しているのですけれども、実は一番元のところの住宅ローンの証券化、あるいは、もうちょっと広げていいますと貸付債権の証券化は、いろいろな理由があるのでしょうけれども、必ずしも十分ではなくて、そのメリットが市場、ひいては利用者に出ているというところへは未だどうも至っていないように思います。

これはいろいろな原因があるとはいえ、今の時点で考えてみますと、ここにも書かれていることですけれども、例えば住宅金融公庫による住宅ローンの証券化はある程度人為的、政策的に進めてはどうかと思いますし、もっと広く貸出債権の証券化のインフラ整備は、何度もいいますけれども、人為的、政策的に進めるのに値する。そういう意味では、金融庁としてもちょっとまとめて研究というか、問題点を洗い出して対応されるのがいいのではないかと思います。ただそのときに、福井委員ご指摘のように、後ろの方に書かれているようなやり方がいいのかどうか、私も直ちにはわかりません。そこは議論されるべきところだと思いますけれども、証券化そのものの推進ということについて言えば私はそういう意見を持ちます。

もう1つ、先ほど市場行政みたいな話が出たのですけれども、私はこれも今この時点で見ますと、むしろエンフォースメントの複線化というのでしょうか、余りいい表現ができないのですけれども、そういうことを一層検討するに値するのではないかと思います。証券取引法という法律だけ見ましても、民事の損害賠償責任等は規定はあるのですけどもほとんど使われていないですね。80年代の後半以降は、専ら刑事罰でやってきているわけです。証券取引等監視委員会も、犯則事件といっていますけれども、要するに刑事罰、刑事事件を調査することを主たる活動としているわけです。

それはそれで重要なことだと思いますけれども、諸外国ではいわゆる民事制裁金を含め、一般に民事の損害賠償責任を追及する訴訟なり実態があるわけであります。他方日本では、消費者と証券業者との間で例えばワラントならワラントをめぐって説明義務違反みたいな訴訟はあるけれども、アメリカでは、最近のワールド・コムを別にしますと、日本のワラント訴訟のような消費者の訴訟はゼロですね。なぜかというと、仲裁条項が入っているからです。イギリスなどでは、前に議論しましたようにオンブズマンという制度がありますから、訴訟は皆無ではありませんけれどもほとんどゼロです。ですから、日本の民事のエンフォースメントというのは、よくも悪くも消費者から見ても非常に不満があるものだと思いますし、国から見ても何か非常にバランスが悪いというところは否定できないように思います。

そういう意味でいうと、民事のエンフォースメントと行政的なエンフォースメントを強化する必要があるように思います。これは私いつも申し上げていることで、時間をとって恐縮ですけれども、証券取引法には192条という誰も知らない条文、一度も使われたことのない条文があります。これは裁判所に行く必要があるのですけれども、証取法違反行為がなされようとしているときには、行政は何人に対しても証取法違反行為を差しとめることができるという規定で、一度も使われたこともありません。いかにもアメリカ的な規定なのかもしれません。いずれにしましても、抽象的に申しますと、民事、行政、刑事といったエンフォースメントの強化というか、複線的強化というか、そういうことをぜひ真剣にご検討いただければ私などはありがたいと思います。

以上2点、意見を申し述べました。

最後に、蝋山先生へのご質問ですが、今回のレポートで人為的、政策的に特にここをやろうというのは、全部そうだとおっしゃられればそれまでだと思うのですけれども、何となく証券化のところは多少出ているように私は読んだのです。前のご報告のとき、今は放っておけば自然によくなるというものではない、やはりある程度人為的、政策的に動かしていく必要があるのだ、日本はそういう状態にあるのだということをおっしゃったと思うんですけれども、今回その考えというのは、このレポートの中では具体的に特にどの項目あたりに強く出ているのか。もしそのメリハリみたいなものがありましたら教えていただければありがたいのですけれども。

○ 貝塚会長

最後の点、どうぞ。

○ 蝋山分科会長

神田さんは、人為的、政策的に云々という表現について非常に好意的な解釈をしていただける数少ない識者の1人でありまして、大多数の方は「何だ、あれは」ということで非常に誤解を招きました。そういう点で、全体のこの文章の中で政策的に、あるいは人間の知恵で変えていこうということをにじみ出させ、表現として「人為的、政策的に」ということをキャッチフレーズに掲げるというのは後退させたわけです。それが1つです。

じゃ、相対的にどこがどうなんだといわれたときに、先ほどまさに福井委員が気になさったところあたりが、恐らく今でも依然として人為的、政策的にというところを色濃くにじませ過ぎていて、ああいうご質問を頂戴したのではないかと思っておりまして、私としてはややうれしいのですけれども、しかし、ビジョンとしてはちょっとまずかったかなと反省しています。

○ 貝塚会長

何かほかにご発言、あるいはご意見ありませんでしょうか。

住宅金融というのは、基本的に先進諸国は何らかの形で政策的に関与しているケースが多いですね。アメリカは、先ほどいわれたように政府がある程度住宅ローンを保障する。日本は、そういう形ではなくて住宅金融公庫があります。それから、その他いろいろ税制上の話とか、必ずしも金融の分野でやる必要があるかないかは別ですが、狭い意味で、いろいろな形で、住宅金融というのはやはりある種の政策的な分野であるという感想を私個人は持っているということだけ申し上げます。これは余分なことですが。

ほかに何かご意見があれば。

○ 高橋委員

話が少し前に戻りますけれども、先ほど金融の融合現象に対して、アメリカ型かイギリス型かという議論を今後やる必要があるのではないかというお話と、とりあえずは証券取引等監視委員会の機能の拡充強化というご説明をいただきました。その前に、私は投資家教育についてもっと話さなければいけなかったかなとは思っているのですけれども、実は話したくない理由がございまして、やはり投資家教育以前に環境整備でもっときちんとやっていただくべきことがあるのではないかと思うからでございます。

明日から銀行に窓販が解禁され、変額年金保険につきましては、第一部会とか金融トラブル連絡調整協議会で再三にわたり意見を申し上げてきております。例えばこれにつきましては、日本では新商品というとらえ方がされておりますけれども、海外で見ればもう1950年代から販売されている商品なわけです。日本に変額保険が入ってきたのは1986年でございますけれども、もう1970年代の保険審議会の当時から、証券規制が必要ではないかということはずっと言われてきたわけです。アメリカでは、保険として販売することはまかりならぬということで、保険の規制と証券諸法の規制と二重規制で70年代からずっとやってきているという歴史があるわけで、先ほどのお話でいえば、これから議論をするという話ではなくて、本来環境整備がされていなければいけないものができていなかったということで、急いで進めていただくべき問題だと私は思っております。

変額年金あるいは変額保険は海外では定着していて、日本では変額保険という不幸な事件を引き起こしてしまったわけですけれども、今後、変額年金が市場型間接金融の1つのいい姿として定着するかどうかというのは、その辺の規制をきちんとやるかどうかということにかかっていると私は思います。海外と比べて、イギリスは横断規制でやっていますよ、アメリカは証券規制と保険業法の規制と二重でやっていますよ、日本は保険という名の下に保険業法だけでやっていますよ、これではやっぱりまずいと思うんですね。

特別勘定のファンドの情報開示などは投資信託の受益証券並みにということで、ご当局の方でいろいろ規制はかけてくださいましたけれども、証券なのかどうなのかということが私どもとしては非常に気になるわけで、有価証券の概念の拡大という話もずっと出ているわけですが、議論されずに来ている。でも、もうここでタイムリミットではないかという感じが私はしております。ですので、法規制をどうしていくかという問題も急いで進めていただきたい。まさにビジョンへの架橋として私は重要なことだと思っておりますので、あえて申し上げました。

以上です。

○ 貝塚会長

今後やるべき課題という話をかなりご発言いただいて、ほかに特にいかがでしょうか。

原委員、どうぞ。

○ 原委員

遅れてきて申しわけございません。ただ、欠席にするわけにはいかなくて。

前回9日の日ですけれども、欠席ということで席上配付を突然お願いいたしまして、事務局の方に大変お手数をおかけいたしましたけれども、中期ビジョンの中に具体的に盛り込むことが考えられる事項ということで、包括的、横断的な金融サービス法の制定の議論をぜひ具体的に始めていただきたいと考えております。今回もこの報告書で、第2部の「架橋として取り組むべき課題」の3「証券市場の改革促進等に向けた取組み」の(3)のところに、それに関する記述が入ってきているのですけれども、証券市場だけではなくて、今高橋委員がおっしゃられたような全体的な観点から、包括的な意味での法整備が必要だと考えております。

27ページにその記述があるのですが、まずここのタイトルからして少し異論があります。「利用者保護と個人投資家の意識改革」と書いてあって、消費者教育を通じて意識改革をしたいというのは全体的なトーンとして流れてはいるのですが、私としては、座って待っていても個人投資家、利用者の意識改革は全くないと思っております。何が大事かというと、消費者教育、投資家教育と合わせて、消費者がきちんと守られているという社会的なルールが私は必要だと考えております。

先週ですか、証券業協会の大きい大会があって、私お伺いしたのですけれども、その時も証券業協会の会長さんのお話で3つポイントをおっしゃられて、最初に消費者教育の重要性をおっしゃられたのです。2番目が情報提供の大切さ、3番目に監視体制というようなことをおっしゃられて、私は、いつもこのあたりではつけ足しでしか話されない消費者教育が最初に来たのもびっくりしたのですが、監視体制は金融庁が言うのだったらわかるのです。証券業協会が言うのであれば、やはり社会的なルールの整備、個人が安心して市場に参加できるようなシステム作りを担うというふうになぜおっしゃらないのかという気がいたしました。大きなそういう視点が業界にも金融庁にも欠落しているのではないかと考えております。

一方で、消費者側、利用者側の自己責任ということが社会的によく言われて、こういった金融分野でも言われるのですが、私金融分野がちょっと異質な感じがするのは、金融を離れたところでは、今、企業の社会的責任という話が非常に言われているわけです。ところが金融の分野に来ると、企業の社会的責任という話がなぜか余り表に立って出てこない。

私たちが横断的、包括的な金融サービス法というときに、欠けている点で、よく適合性の原則と不招請勧誘の話をするのですが、適合性の原則というのは、利用者保護という観点だけではなくて、これは私は事業者としての責任だと感じております。リスクの高い商品を判断もつかないような高齢者に売るとかいうことは、結果としては利用者の保護ですけれども、基本的には事業者の社会的責任だと考えておりまして、そういう意味でも、私はここは「利用者保護と個人投資家の意識改革」と書かれていますけれども、「安心して参加できる市場システムづくり」となさるべきだと思います。そして、横断的、包括的な金融サービス法の制定の議論を始めていただきたいと思っております。

具体的にどういう内容を盛り込むべきかについては、9日の日に文書を提出しておりますので、そういったものも検討しながら中に盛り込むという作業は、日本の中で十分できる体制になってきていると考えております。

途中から入ってきたので、少しご説明があったのかもしれませんが、金融商品販売法が去年の4月からスタートしております。これについても点検作業に入るということです。この点検作業に入られるときには、ぜひ利用者側、消費者側の意見のヒヤリングも実施していただいて、蝋山先生はあれは第1段階とおっしゃられたわけですし、ぜひ第2段階、第3段階の議論を進めていただきたいと思います。

消費者がなかなか市場に上がってこないというのは、株価が低迷しているだけではなくて、証券業協会が襟を正すだけでもだめで、こういった基本的なルール作りだと考えております。それでないと、今年上半期、国内の1400兆円といわれているお金が外貨預金とか外貨建ての債券にかなり流れていっている。もう日本国内を素通りして海外へ行ってしまう可能性だって私はあるような感じがしております。私自身もここに座っていて、数年間もう本当にその責任を非常に感じておりますので、ぜひ議論をスタートさせていただきたいと考えております。

○ 貝塚会長

ある意味で以前から宿題になっている1つですね。したがって、金融界でこの点を今後どういう形で確立していくか考えなくちゃいかんと思っているんですけどね。

○ 蝋山分科会長

今の原さんのご意見、原さんが来られる前の高橋さんのご意見、私なりによくわかるのです。私は私なりにある程度まではわかっているつもりですけれども、非常に戦術的な問題なんです。今そのために希少な金融行政のリソースを使ってやることがどのくらい得策なんだろうかという点で、私は判断を異にしているわけです。

かつてのように、重要な問題だと、足りないときには、大蔵省、財政当局からもたくさん法律の専門家も呼んできて、ともかくにわか勉強でも法律をつくってくれ、そういうことができるならばともかく、現在の非常に限られた行政企画立案能力をどういう側面で使っていくかという点に関して、私はサードとはいいませんけれども、セカンド・プライオリティーの問題ではないだろうかと思っております。

消費者がどうでもいいとかそういうことを申し上げているわけではありません。特に、最後に原さんがいわれたことと奥本委員のは恐らく同じ判断にあるのではないかと思いますが、私は、きちんとした判断、情報の下に資金が海外に出ていくのは大いに賛成だと思うのです。それだけもう日本はだめなんですよ。それを覆すような力を日本は金融の面からはまだ持っていない。それを持てるようにしたいがどうしたらいいだろうかというのが、一番大事なことだと思うのです。ですから、ある場合には海外への資金の移動、大げさにいえばキャピタルフライトが起こるならばどんどん起こった方が、僕は日本はよくなると思っています。

そういう予兆があって、その予兆をどういうふうに危機意識としてとらえて、ここで述べたようないわばビジネスモデルの転換を日本の金融機関、企業にどう図っていただけるか、これがまずプライオリティーとして重視すべきことであって、その上で経済が少しずつよくなり、面白い商品、いい商品が次々と出てきたときに、いろいろな問題がその過程で出てくるでしょう。それを未然に防ぐような日本版金融サービス法の制定というものをやるべきではないか。架橋の段階で原さんのご主張のようなところと私がやや違うのは、限られたリソースの中の戦術展開論としてそういう判断をしているからであります。

○ 原委員

補足で、戦術的な問題ということで、蝋山先生の中には何かプランがあるのかもしれないのですが、私としては、今抱えている当面の課題には大変大きくて深刻な問題が多く、金融庁が大変なところにかかっているという意味では、確かに今同時に全部人手を割いてというようなところの困難性は感じてはいるんです。ただ、私はビジネスモデルの転換をしてから後でという話ではなくて、表裏の関係にあると思っておりまして、利用者を市場に安心して登場させるための仕組みづくりというところはビジネスモデルの転換と同時並行の課題だと感じております。

○ 貝塚会長

ほかにご議論はないでしょうか。

この中期ビジョンに関しては、今までいろいろな形で議論していただいて、全会といいますか、総会でも議論していただきました。今日のいろいろなご意見は、私の理解では残された問題、今後やるべき課題を指摘していただいたと理解しておりまして、蝋山さんを中心にご苦労いただいた「中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョン(案)」を、この総会の場で金融審議会の答申としたいと思いますが、その点よろしゅうございますでしょうか。

それでは、そういう扱いにさせていただきます。すなわち、金融審議会として正式に了承することにいたしたいと存じます。

それでは、本日は大臣が公務でご欠席のために、金融庁長官に金融審議会答申「中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョン」を提出させていただきます。

〔会長から答申を金融庁長官に提出〕

○ 高木金融庁長官

どうもありがとうございました。

○ 貝塚会長

それでは、ここで大臣のごあいさつを長官に代読していただきます。

○ 高木金融庁長官

それでは、大臣のごあいさつを代読させていただきたいと思います。

答申を頂くにあたりまして、一言ごあいさつを申し上げます。

委員の皆様におかれましては、日頃よりご多忙のところ、金融審議会の活動にご参加、ご尽力をいただきまして、まことにありがとうございます。

さて、今般答申をいただきました「中期的に展望した我が国金融システムの将来ビジョン」につきましては、7月31日の総会において検討をお願いしたところであり、その後、総会・金融分科会合同会合及び中期ビジョンに関するスタディグループにおいて精力的にご議論の上、報告書を取りまとめていただきました。それを先ほど金融審議会の答申としていただいたわけでございます。この答申につきましては、今後の金融行政を進めていく際の指針として活用させていただきたいと考えております。

また、この答申は、金融行政当局のみならず、我が国金融システムを支える金融仲介機関が新たなビジネスモデルを考えていく上での方向性を示すとともに、企業、個人などにとっても今後の対応の指針となるものと考えております。

ご多忙の中、短期間にこのような重要な答申をまとめるため審議会の運営の労をとられました貝塚会長、また、スタディグループの座長を務められました蝋山分科会会長をはじめ、委員の皆様方のこれまでのご尽力に改めて深く感謝を申し上げる次第でございます。皆様方におかれましては、今後とも従来と同様、ご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げて、簡単ではございますが、私のごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。

○ 貝塚会長

どうもありがとうございました。

本日の議事は終了に近づいておりますが、金融審議会に関連することで何かほかにご質問ございますでしょうか。

もしございませんでしたら、予定の議事はここで終了いたしましたので、以上をもちまして本日の会議を終了いたします。

なお、本日の模様などにつきましては、私の方から記者会見を行わせていただきます。皆様、本日はお忙しい中ご出席いただきまして、ありがとうございました。

以上

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